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●事情によりこちらでSSを投下するスレ 2●

642/2:2008/03/23(日) 21:57:44 ID:h8tcObMg
「あっ、こら! 何をするか!」
 タカシはまつりを抱きかかえると、一目散に逃げ出した。
「あっ、テメェ待ちやがれ!」
 しばらく男の追ってくる音が聞こえていたが、それもやがて聞こえなくなった頃、タカシはまつりを降ろした。
「何故戦わぬ! あの程度の輩、ちょちょいのちょいじゃろう! スキだらけじゃったろうが!」
 降ろした瞬間、まつりは噛み付かんばかりの勢いでタカシに詰め寄った。
「ぜーぜー……いやほら、刃物怖いし」
「情けない……なんと情けないことか。はぁ、おぬしもつまらぬ男じゃのう」
 まつりは呆れたように首を振った。
「それに、まつりが巻き込まれて怪我しても嫌だし」
「ぬ……」
「という言い訳を今思いついた」
「そういうことは言わなくていいんじゃ、たわけっ!」
 叱りながらも、まつりは自分の身を案じてくれたタカシに感謝した。この人は不器用なのでこんな言い方しか出来ないが、実際はこれが本音なのだろう。
「ま、誰も怪我なくてよかったじゃん。な?」
 タカシはまつりの頭に手を置き、にんまり笑った。
「ぬ……ふ、ふん。別にタカシの助けなぞなくとも、わらわ一人で切り抜けられたのじゃ。まったく、いらぬ世話を」
「助けろって言ったの誰だっけ」
「うっ、うるさいのじゃ! ほれ、帰るぞタカシ! お供せい!」
「あ、いや、俺買い物の途中なんだけど……まいっか。お供しますよ、お姫様」
「うむ、苦しゅうない」
 まるで本物のお姫様のように鷹揚に頷くまつりを見て、タカシは苦笑した。
「そだ、おてて繋いで帰りましょう。なーんて」
「……ま、まぁ今日はおぬしもわらわが怪我せぬよう頑張ったからの。と、特別に許可してやるのじゃ」
 まつりは頬を赤く染め、タカシの手を握った。冗談のつもりで言ったことが成功してしまい、少し驚いたタカシは、思わずまつりの顔をまじまじと見つめてしまう。
「……な、なんじゃ、その目は。……い、嫌なのかえ?」
「や、ちょっと驚いただけ。嫌なわけないじゃん」
 まつりの不安げな顔に、冗談なんだけど、という言葉を飲み込む。
「そ、それもそうじゃな! わらわに手を握ってもらえるなぞ、特別の特別なんじゃぞ? 感謝せい!」
 嬉しそうににっこり笑うまつりと一緒に、タカシは帰途に着いた。




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