したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が1スレッドの最大レス数(1000件)を超えています。残念ながら投稿することができません。

●事情によりこちらでSSを投下するスレ 2●

362・ツンデレにお前の嫌いなものは何って聞いてみたら:2009/05/15(金) 23:02:05 ID:???
「なぁ、お前の嫌いなものって何?」
 下校の途中、ちょっと距離をとって並んで歩くあいつが、興味なさ気にたずねてきた。条件反射で答える私。
「……君に、決まってる」
「ですよねー。って、そうじゃなくて。人は無しの方向でよ」
 それなら答えは簡単だ。二人の、この距離。
 自分の気持ちを知っているくせに、今のお互いを失う事を恐れて近づこうとすらしない。
 そしてそんな自分を否定しながら、仕方がないの一言でごまかし続けている、私自身の弱さも。
「君以外…………か」
「あ、いや、別にそんな真剣に考えてくれなくていいんだけど……。まぁ、マイナスな事が思い浮かばないのはいい事だしな」
 嫌いなものが沢山ありすぎて、一つに選べない……とは思わないのだろうか。
 ちらりと彼を見る。優しく笑いながら語りかけてくれている。そんな風に考えられるのか……と、彼がとても素晴らしく思えた。
 こんな私のまま、彼のそばにいてもいいのだろうか。自分の弱さをごまかすために、好意を持つ相手にその弱さをぶつけて、自分も相手も傷つけて……。
「だからまぁ、そんな考え込まなくていいっての。な?」
 いまだ無言を保つ私に、何気ない風に優しさをくれる。
 嫌いなものは、弱い自分自身。それが生み出すこの遠さ。……それなら、克服しなくちゃ。
「……あった。嫌いな、もの」
「ん? 何々」
 問いかける彼に答える代わりに、私は二人の間の空間を指差した。
「……これ」
「……どれ?」
 何もないアスファルトを覗き込む彼。その隙に、私は一歩そちらに踏み出した。
「今、消えた……よ」
「……? どういう……?」
 さっぱり分からない、という表情の彼を見て、私は少し笑ってしまった。
「……なんで笑うんだよ。全然分からないぞ」
「だろう、ね……。……だったら、これで……どう……?」
 さらに一歩。はたから見たら、寄り添って歩く恋人に見えるくらいに近づいてしまった。
「……嫌いなもの。一つ、無くなって……。……好きなものに、替わった」
 答えは、距離。それは縮んで、縮んで……縮みきった後、大好きなものに替わってしまった。
 やっと答えが理解できたのだろう。彼は小さく「……おう」と呟くと、私と同じように前だけをカチコチの表情で見てるのだった。




掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板