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●事情によりこちらでSSを投下するスレ 2●

2702/2:2009/03/07(土) 23:25:15 ID:???
その彼から耳を疑うような言葉が聞こえた。泣き顔である事も忘れ、慌てて顔を上げる。
私を射抜くような真剣な眼差し。
「一人ではやり通せる自信がなくてさ。でも、お嬢が待っててくれるなら・・・目指すよ、メジャーリーガー」
『だって、貴方・・・地区大会で』
「甲子園にも行けないようなヘタクソさ。けどな、登る山がでかいほど燃えるのが男だろ」
元気付けるにしても、もっとまともな事を言うべきだと思う。普段ならバカな事・・・と一蹴しているが、何故
かこの時は実現する予感がした。
『カッコつけて・・・バカみたいですわ』
「あぁ、バカだ。いや、バカになる。野球バカに・・・そして、リナバカになる」
『メジャーに行ったところで活躍できる日本人は多くないですわ』
「ま、神野のお嬢様を奪い取るには、それに相応しい活躍をしないとな」
『確か、投手でしたわね?デビュー戦、何が何でも勝ちなさい。勝てたらデートくらいして差し上げますわよ?』
「まじで?勝った名誉とお嬢をもらえるなんて、そんな良い話があって良いのかよ?」
『もう勝ったつもりですの?地区大会敗退の弱小高校エースの貴方が?』
「あはは、これからいっぱい練習するさ。約束だからな?」
『ふふふ、それで上手くなるなら、誰も苦労しないですわよ』
気が付けば笑いあっていた。願わくば、この時間がずっと続けば良いと思った。
けれど時間は無常にも過ぎていき、出発の時間になってしまった。
「・・・待っててくれよな?」
『ま・・・無理だと思いますが、せいぜい頑張る事ですわね』
彼に背を向け、発着ロビーで手続きを済ませる。振り返りたい気持ちにはならなかった。
次に会うのは向こうで・・・そう約束したから。

大歓声で回想から現実に戻される。あろう事か、先頭打者にヒットを許していた。
『まったく・・・最後まで気が抜けない試合になりそうですわね』
「左様ですな」
真剣な眼差しでバッター見る彼。何だか少しだけ、相手チームの選手に嫉妬してしまう。
私にすら真剣な眼差しをみせたのは、あの時のたった一瞬だけだったのに。
この試合が終わったら、心行くまでその眼差しを独り占めしてやろう・・・そう思った。




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