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二つ名を持つ異能者になって戦うスレ避難所5

488 ◆ICEMANvW8c:2010/08/24(火) 03:43:57
代行お願いします。


「はぁぁぁぁッ!!」

暗闇の中からアルトヴォイスが響き渡る。普段であれば可憐に聞こえるその声も、
今ばかりは激しいばかりの殺気にコーティングされて聞く者を威圧する。

「うぅぅ〜〜」
「あぁぁ〜〜」

しかし、闇の中、不気味に呻き続ける“彼ら”が怯むことはない。
既に死した彼ら亡者は、痛みを感じることがない、死の恐怖を感じることがない。
与えられた命令(プラグラム)に忠実に従うことしかできないのだ。
故にタチが悪い。闇の中でも的確に敵のオーラを視認し、機械的とはいえ素早く動く。
そして一発一発の拳撃が極めて重い。
例え異能者であっても戦闘に不慣れな者であれば即座に肉塊へと変えられてしまうだろう。

だが、プログラムに従う彼らの利点はそのまま弱点へと繋がる。
戦闘に卓越している者であれば、彼らの動きの法則性を即座に見極め、
まるでゲーマーがやり飽きたゲームソフトを容易くクリアすることができるのと同様に、
ほとんど何の苦もなく撃破することができるのである。

事実、先ほどから殺気混じりの声を発し、
群がる亡者達に向けて容赦なく白刃を振るう女、海部ヶ崎 綺咲がそうであった。
「はっ! てやっ!」
その一声一声が暗闇で発せられると同時に、
亡者達が一人、また一人とその白刀によって肉体を欠落され無残に伏していく。
その数は既に海部ヶ崎の前に現れた亡者の数である9に到達していた。
「やっぱり操作されているのか。動きが極めて機械的だ。
 如何に速く重い攻撃だろうと当たらなければどうということはない!」
だが、亡者はそれだけでは倒せない。致命傷を受けても即、再生するのだ。
それでも海部ヶ崎の圧倒的優位は変わらない。
彼女の傍らには亡者の『天敵』ともいえる男がいるからだ。

「南無阿弥陀仏……。成仏せぇや」
もがれた四肢が地に横たわる胴体に向けて動き出すところを狙って不知哉川が手をかざす。
するとそれを合図にしたかのように、亡者達の肉体やその一部からどす黒い湯気のようなものが立ち昇ると、
それらは全て吸い込まれるようにして彼の手の中へと消えていった。
途端に亡者達の肉体がピタリと動きを止める。
不知哉川の能力『心理の収集家』の前には、オーラによって操作される存在は敵ではないのだ。

ふぅと息をつき、刀を納めながら海部ヶ崎は亡者達が横たわる背後を振り返る。
だが、不知哉川の能力を知ってる彼女が、もはやその視線を亡者達に向けることはない。
視線の先にあるのは不知哉川。
彼女が気になったのは彼が吸収したオーラの持ち主の情報であった。

「どうです?」

海部ヶ崎が訊ねるも不知哉川は無言のまま何の反応も示さない。
『心理の収集家』で得られる情報は吸収したオーラの量に比例する。
不知哉川がオーラを吸収したゾンビの数は9体。相当な量である。
これだけの量であればゾンビを創り出した者の今日一日の行動から会話の内容、
果ては少しでも頭を過ぎった過去の記憶さえも把握することができるが、
その膨大な情報量故に今の不知哉川の脳は処理に追われ、意識が一瞬飛んでいる状態なのだ。

「……」
目を開いたまま一言も発さずに、電池の切れた玩具のように静まる不知哉川。
その見た目とは裏腹に、彼の脳内では様々な情報が映像化され、
それらが次々と再生されては入り混じるという混沌とした状態に陥っていた。




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