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二つ名を持つ異能者になって戦うスレ避難所5

401 ◆ICEMANvW8c:2010/07/05(月) 22:06:55
>>84
炎──それは氷室にとって呼水。
心の奥底に封印した、かつての記憶を呼び覚ます、呼水でしかない。
絶え間なく鳴り響く銃音、人々の悲鳴と絶叫、そして焼かれゆく──

「……クッ」
氷室は目頭を押さえ、肩を震わせながら脳裏に浮かぶ幻影を懸命に振り払う。
「久々に……きたか。ようやく克服できたと思ったんだが……」

目頭から指を離した時には、氷室は既に平常心を取り戻していた。
それまでにかかった時間はほんの数秒と言ったところだろうか。
しかしその間、スキャナーが一瞬だけ迫り来るオーラを感知していたことに、彼女は気がつかなかった。

「そこの人、少し良いかな?」

突然の背後からの声に、氷室はいつもの余裕の表情なく、驚いたように振り返った。
と、そこには、黒いワイシャツにジーンズを穿いた、若い男の姿。
「顔も可愛いね、パーフェクトだ。」
ナンパでもするかのような台詞を吐きながら近付いて来る男には、
依然としてスキャナーは何の反応も示さない。
だが、かといって一般人ではないのは明からである。
というのもこの廃ビル、老朽化のため途中で階段が崩れており、
屋上まで一般人では決して登ってくることができないからだ。
(異能者か……。しかし、スキャナーにまるで反応がないのはどういうことだ……?)

疑問を感じている氷室に男は和やかな表情のまま続けざまに言う。
「君の血を飲ませて欲しいんだ。」
「フッ……」
氷室は表情を変えずに鼻で笑って見せた。
果たして、ここで「はい、わかりました」という奴がいるだろうか?
力づくを前提にした要求以外の何物でもないだろう。
つまり、事実上の宣戦布告である。少なくとも氷室はそう解釈した。

「『お前を殺す』と、なぜストレートに言わない? 私は回りくどい奴が嫌いでね」
瞳孔が見る見る開いていき、目つきが一層の鋭さを増す。
遥か格下の相手ならばそれだけで威圧され畏縮してしまうところだろう。
だが、彼は違った。それは彼の実力がそこらの雑魚とは違うという証明である。
氷室はまた鼻で笑った。

      私ら
「何だかカノッサと同じ臭いがするよ、お前。どうやら立場は違えど、生きてきた世界は似てるようだね。
 だが、だからこそ、私らにとっては危険だ。──お前は殺すよ」
両の指から、鋭利な爪が形成された。

【氷室 霞美:闘いを開始する】




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