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二つ名を持つ異能者になって戦うスレ避難所5
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「──あぁ、さっきまで妙な娘と闘ってたところさ。
お前のスキャナーにも、南のACU-276地点で反応があっただろ?」
先程の公園からざっと1km東に位置する海に面した廃ビル──
そこの屋上で、海の潮風にその青い特徴的な髪をサラサラと靡かせながら、
一人ぶつぶつと呟く氷室の姿があった。
誰もいない屋上で、肩から出血した女性が、顔に変な機械をつけて独り言を呟く……
もし誰か見ている者がいたら、何とも薄気味悪い光景に見えることだろう。
しかし、周囲には誰もいないとはいえ、氷室は決して独り言を言っているわけではない。
「ああ、やたらでかい反応が二つな。その片方がお前だったのか?
フッ、まぁそんなところだろうとは思ったがな」
氷室の顔に装着されたスキャナーから少々斜に構えたようなクールな男の声が漏れる。
スキャナーについている通信機能を使い、会話していたのだ。
相手は当然同じカノッサの人間。それもただの構成員ではない。
『ディートハルト・アイエン(藍園)』──日本人とドイツ人の血を引く異能者であり、
『冥界の傀儡師(ハデスマリオネイター)』の異名をとる四天王の一人である。
「しかし、お前が闘っていたその娘は、一体何者だったんだ?
俺のスキャナーが故障していなければ、その数値は確かに2000を超えていた……
カノッサの戦闘員でもない小娘にしては異常に高い数値だ」
「妙なのは数値だけじゃない。あの娘はカノッサのことも、『無間刀』のことさえ知っていた」
「なんだと? 『無間刀』についてはカノッサでも上級以上の者でしか知りえぬことだ。
一体どこからどうやってそんな情報を……」
「さぁね。結局、正体もわからずじまいさ。
ただ、筆頭が言うには、少なくとも同じようなレベルの使い手はまだ他にもいるらしい。
ディー、お前も気をつけた方がいいんじゃないか? 油断するとその首、危ないかもね」
と氷室が鼻先で笑うと、一方のディートハルトも「ククク」と笑い声を漏らした。
「冗談を言うな。中級を圧倒できるレベルだろうが、所詮この俺の敵ではないさ。
そいつらもいずれそれを思い知るだろうぜ」
「相変わらず血の気が多い奴だな。ま、お前が張り切ってくれると私も楽ができるからいいけど」
「おっと、そろそろ通信を切るぞ。油を売ってるとまた筆頭に言われるからな。
とその前にだ、白済の爺さんから秘密裏に新たな命令が下ったそうだが、聞いたか?」
「何だって?」
「筆頭は思ったように戦果が出ぬ現状にお怒りのご様子。
事後処理はワシが受け持つ故、これまで以上に徹底的に、無差別にやることを許可する。
……だ、そうだ」 アイツ
「……フン、相変わらず雲水も気が短いね。子供の時と変わってな──」
突如、ドーンという爆音が響き渡る。
爆音の方向を見れば、東地区市街にある建物から赤い炎と黒煙がもうもうと立ち昇っている。
それは、カノッサが本格的な無差別殺戮に乗り出したことを示す、合図であった。
「……ククク、部下どもも発破をかけられてその気になったか。
化身を捕獲した頃には、この街は消えてなくなってるかもしれん。
こりゃあ爺さん、自分で言い出したこととはいえ、処理が大変だろうぜ。同情するねぇ。
お? 爆発に刺激を受けたか、早速あちこちで強い異能が発生し、動き出したようだぜ。
さぁーて、ゴキブリ狩りに行くとするか……!」
というディートハルトの嬉々とした声を残して、スキャナーは交信を終了した。
「……」
いつもの様にその表情に変化はない氷室だったが、
悲鳴と絶叫の入り混じる炎の色を映し出すその瞳は、どこかおぼろげに見えた。
【氷室 霞美:現在地、東地区に佇む廃ビルの屋上。】
【四天王の三人目の名は『ディートハルト・アイエン』と判明。カノッサの攻撃が一層苛烈になる】
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