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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

451名無しさん:2006/12/08(金) 03:06:20















―― SONY TIMER


「…うわっ。」
それは、11月の初めの事。
暖房なのか、人が集まった事による熱気なのかはわからないけれど、それなりに過ごしやすい室温に
保たれていた建物から一歩外に出るなり、身体を包み込んでくる季節相応の冷たい空気に
彼らは揃ってぶるりと身を震わせた。

3連休の最終日の、しかも夕方にも関わらず。建物…ラフォーレ原宿の周辺は流行のファッションに身を包んだ
多くの若者達でにぎわっていて。
そんな中で30代の半ばという彼らの姿は、表参道を職場とするビジネスマンのようなスーツ姿でもない事も
手伝って、多少違和感もあるかも知れないけれど。
それぞれ程度の差こそあれ、安堵の色を浮かべた彼らにはそんな事など気にならないようだった。
何せ、彼らはこの建物の最上階のホールで今もなお行われているM-1グランプリの2回戦を戦い終えたばかりなのだから。

「しっかし、まぁ、ねぇ。どうなる事かと思いましたよ。」
一緒に、というよりも行き先が同じだから仕方なく、といった案配で原宿駅の方へ歩き出しながら、
焦げ茶めいた茶髪の方の男が傍らの黒髪の男へと話しかける。
「ネタはちょこっと被るし誰かさんは台詞トチるし。」
『さべけ』って何なんですか…ま、ウケてたんで結果オーライですけど。
本来なら『叫べ』と言うべき箇所で発せられた謎の単語を持ち出して、からかうような弾む口調で告げる
茶髪の男に対し、黒髪の男の表情は自然と憮然とした物になる。
「…言っとくけど、お前だって、細かいトコ、色々アレだったからね。」
辛うじてそう言い返す黒髪の男の子供っぽい対抗意識に、茶髪の男は軽やかに笑ってみせて。
「ここからが正念場ですからね…去年みたいに噛み噛みにならへんよう、次はお願いしますよ。」
まだエントリーされた全組のネタが終わっていないため、結果はわからないけれど。
間違いなく3回戦には進めただろう、という確信が故にそう言葉を紡ぎ、手のひらで黒髪の男の背をぽむぽむと叩く。

そういえば去年の3回戦のネタ中で、緊張のあまりに台詞を噛み倒した末に、自ら緊張していると
自己申告した事もあっただろうか。
忘れようとしていた記憶が無理矢理引き出され、更に不機嫌そうな表情になる黒髪の男の背中で。
茶髪の男の手と、その手首に揺れるブレスレットにあしらわれた石が、パッと淡い緑色の光を放った。


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