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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】
156
:
ロシアン・シュー </b><font color=#FF0000>(dkDoE4AQ)</font><b>
:2005/03/20(日) 13:45:54
「ねぇ山本さん。俺の石はすげぇ弱っちくて、ひとりで戦ったりとか出来っこ
ねぇんですけど、でもそれでも藤田がホンモノかどうかぐらいは見破れるんで
す。俺はそれが出来ればまぁ十分かなって思ってます」
その場に立ち尽くしたまま、山本は動かない。テーブルの傍らで立ち尽くす
男を、店の客が胡散臭げに見上げている。この山本は確実に幻覚ではないらし
い。
「俺がホンモノかどうか、このモジャが分かんのかどうかアヤシイもんですけ
ど、でもやっぱりちゃんと見破るんじゃねぇかなって、変に信じてる部分もあ
るんですよね」
大村の言葉に、藤田が怒ったり照れたりしているのが見えたが、今は構って
いる場合ではない。
山本は、彼らにじっと背を向けたまま黙っている。彼の傍らのテーブルの客
が、立ち上がって、店を出て行った。そのくらいの時間をじっとしたまま待っ
て、それから山本はゆっくりと藤田と大村を振り返って。
「…相方のことが分かる、ゆうんか」
「そうですね」
「今日は俺が相手やったからそれも出来たかもしれん。せやけど、似たような
能力の石を持ったやつが、俺よりもっと周到に相方のニセモン送り込んでくる
かもしれへん。しかも、その日がいつ来るかもしれん」
「もし、ホンモノ藤田の中に一日だけニセモノが混じってたとしても、俺はイ
ヤでも気付いちまうんだと思いますよ」
「ロシアンルーレットみたいだな」
大村の今日の悪戯を思い出して、藤田が呟く。彼のジーパンをベットリとよ
ごした、辛子入りのシュークリームが脳裏をよぎったのだろう。
「俺の石の能力があれば、山盛りのシュークリームの中から辛子入りを選び出
すことだって可能だからな」
大村が、ニヤリと笑って藤田を見る。藤田は、これから先ロシアンシューの
罰ゲームをすることがあれば、自分は必ず「アタリ」を引いてしまうのだろう、
と悲壮な覚悟を決めた。
「…お気楽なヤツら」
山本が呟く。けれどその声音は十分に笑いを含んだもので、二人は安心する。
「それでですね。何が言いてぇかっていうとですね。…俺も藤田も、白でも黒
でもぶっちゃけどっちでもいいんですけど、でも…白に入って石を封印できん
のなら」
「そんで、それが“いろんな人”の希みだってんなら」
藤田の言う「いろんな人」には、大好きだった先輩も含まれるのであろう。
そして、自覚の無いまま「元相方」の思いを汲み取ってトータルテンボスを白
にいざなおうとしていた、目のまえの山本のことも。
「俺らは、白に入ってもいいと思います」
「困ったことに、俺も大村とおんなじ意見でっす」
アフロを揺らして、藤田が明るく挙手して賛同する。
一瞬、あっけに取られた顔をした山本が、次の瞬間、泣きそうな顔をして、
すぐにそれから弾かれるように笑い声を上げた。大きな笑い声はしかし、居酒
屋の中では埋没する。
ひとしきり笑った後で、目じりを濡らすわずかな涙を指先で拭って、山本は
ウンとひとつ肯いた。
「頼むわ。俺はもうしばらくは、石使う気はないし」
「俺に任せてください」
「藤田に任すんは、ちょっとな」
「なんですかそれ!」
笑い合い、居酒屋の喧騒の渦に飲み込まれていく感覚を味わいながら、藤田
は思った。
俺は今晩のことをずっと忘れないだろう。事あるごとに思い出すんだ。…辛
子入りシュークリームを見た時なんか、特に。
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