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【添削】小説練習スレッド【キボンヌ】

482 ◆vGygSyUEuw:2006/07/27(木) 18:21:53
「…お前、そんな手あるんだったら逃げてねえで端っから使えよ…」
「……だって、これすごい疲れるんだよ…それにさっき急だったし…」
呆れた顔で言う板倉の足下で、俺はへばっていた。
あの男はコントに引き込んで落ち着けた後、田中の能力で大人しくなった。
どうやら男の能力は少しの間だけ防御力を高めるようなものだったらしく、しばらくしてから痛い痛いと転がっていた。
さっきの板倉の攻撃が効いていたのは不意打ちだったかららしい。
拍子抜けするぐらい弱々しい男の姿に、板倉はビビって損したと悪態をついた。
転がっている間に石を浄化すると、憑き物が取れたようになって、心当たりのない痛みに首を傾げながら去っていった。
そして今に至る。
「…つっかれたあー…」
力を使いすぎてまだ動けない。
まだ残っていたスポーツ飲料を一気飲みすると、少し楽になった。
「白、来んの?」
「…行く、けど」
「けど?」
「戦うのはヤだな…。弱いし。黒怖いし」
「けっ、ビビリ」
返す言葉もないが、言い過ぎな気もする。
堤下は同じく寝転がっている田中の隣にいる。
板倉が腕時計を見た。
「あ、おい堤下、時間」
「あっ、そっか」
「つーわけで、じゃーな。いつまでも廊下で寝てんなよ」
「お疲れ」
「おつかれー…」
「おつかれ…」
インパルスの二人はすたすたと去っていく。
「どうするー…?」
「…とりあえず、くりぃむさん所いこっか」
「え、今から…?」
「じゃあいつ行くの」
「…行こう」
疲れた体を引きずりながら、来た道を戻っていく。
「ついでに襲われたって言おうか」
「ああ、そうだね。一応」
「…今回一人だったけど、何人もいたら無理だろうな〜」
「そりゃね…俺ら力弱いもん」
「…もし、あそこにインパルスいなかったらさあ、」
「うん」
「どうする気だった?」
「お前を差し出して逃げた」
「や〜ま〜ね〜」
上滑りの声で抗議するように呼ばれて、俺は思わず笑った。
「冗談だよ」
「あーもーびっくりしたあ…」
「…何、信じたの」
「そういうわけでもないけどー…」
体を落ち着けるように、のろのろ歩く。
でも走っていた時のように半端なく長くは感じなかった。
余裕があるからだろうか。追われていないからだろうか。
「…あんな、戦いがさあ」
「うん」
「ずーっとあるんだよね」
「うん」
田中の言葉に淡々と相づちを打つ。
能力を使ったせいか頭が微かに痛む。
我慢できない程ではないけど、不快だ。
「終わらせたいね」
「どうやって?」
「…ずーっと肩ぽんぽんしていけばいいじゃん」
「石構えて真っ赤な目してる人の列を?」
「うん」
無理でしょ、と思ったが口には出さなかった。
代わりに出て来た言葉は、
「じゃ、俺はその横で敵さんとコントしとくよ。」
なんて、お気楽なものだった。
自分でも何でこんな台詞が出て来たのかよくわからなかったが、隣で田中が体を折り曲げて笑いをこらえているので、まあいいか、と思った。
こんな能力も、芸人としては決して悪くない。
まだ笑っている田中を置いていくように歩を進めると、慌ててついてきた。
「ねえねえ、敵がいっぱいいたらどうすんの」
「お前に任せる。」
「ひどっ。
 …あ、でもジャンガジャンガぐらいならできるんじゃない?」
「みんなで?」
「うん。」
「あー、それいいね」
「でしょ。みんな緊張感なくすよ。」
「味方もなくしちゃわない?」
「…うーん。」
じゃあもういっそ、黒も白も自分たちのぐだぐだした色で染め上げてしまおうか。
なんて格好つけたような微妙につけられていないようなことを言うのは、普通に恥ずかしいのでやめた。
「戦わずして勝つ、みたいな感じでかっこいいんじゃない?」
「無血革命、って感じ?」
「そうそう」
無難な言葉でお茶を濁して、ふと「ああそれは穏便でいいなあ」と思う。
どうにもぐだぐだふにゃふにゃした自分たちに一番向いていると思う。
そうこうしてる内に目指す楽屋が見えてきたので、「白に入れてくださーい」と気の抜けた声で言うためにドアを叩いた。


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