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企画もの【バトル・ロワイアル】新・総合検討会議2

1 ◆VnfocaQoW2:2010/04/04(日) 00:20:17

雑談、キャラクターの情報交換、
今後の展開などについての総合検討を主目的とします。
今後、物語の筋に関係のない質問等はこちらでお願いします。

278話以降、3ルートに分岐することとなりました。
ルートAは従来通りのリレー形式に、
ルートB、Cは其々の書き手個人による独自ルートになります。

規約はこちら
>>2

30 ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 18:59:29
お久しぶりです。
以下12レス、「戦慄のパンツバトル!〜紗霧〜」
以下11レス、「戦慄のパンツバトル!〜P−3〜」
以下09レス、「戦慄のパンツバトル!〜ランス〜」
以下12レス、「戦慄のパンツバトル!〜智機〜」
を仮投下いたします。

次回は「ほんとうのさよなら」。
観月しおり、エンジェルナイト、?????が登場予定です。

31戦慄のパンツバトル!〜紗霧〜(1/11) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:00:42
>>235
(ルートC:2日目 16:50 D−6 西の森外れ・小屋3)


  ―――言ってみろ


いらだちをポーカーフェイスでくるりと包み、
心で舌打ちを乱打しているのは月夜御名紗霧。
彼女は交渉とボディチェックを同時進行させるという
己の提案を心底後悔していた。

(ああっ、ホントに、全く、もうっ!)

相手に飲まれずに交渉を進める為に、ランスを投入して場を乱す。
己の思考力を回復するのではなく、相手の思考力を低下させる。
それでイーブン。
紗霧の意図ではあった。
確かに効果は上がっている。
しかし、もはや紗霧の手の届かぬところまで上がってしまっていた。

(だらしないです。だらしなさ過ぎです、椎名智機!
 貴女ロボットでしょうが!
 それとも実はダッチワイフですか?
 要らぬ科学を無駄に詰め込んだ非モテ男の夢と希望の結晶か何かですか!?)

油断ならぬ交渉人であるはず目の前の人型機械は、
今や雌達磨と成り下がっている。
四肢が、脱落したのだ。
ランスの愛撫より生まれたあまりの快楽によって。

32戦慄のパンツバトル!〜紗霧〜(2/11) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:02:10
 
「じっ…… じゆ、ううっ♪ はぁはぁ、じっ、ゆぅぅうっ!
 をおおっ、あっ! あっあっあーーー、与え、てっ、てぇぇ……
 ひぃふう、ひいふぅ…… 欲しい、欲しいのぉぉぉぉっ!!」

自由を与えて欲しい。
言葉の体を為さぬ智機の言葉は、このような意図を伝えようとしていた。
紗霧はビクンビクンと震える彼女に三度聞き返し、ようやくそのことを理解する。

交渉の開始から十余分。万事がこの調子だ。
因みに紗霧が智機より得た情報は、下記六項目のみである。

 1.椎名智機とは主催者ではない。主催者の備品である
 2.備品ではあるが、意思を持っている
 3.備品ゆえに、主催者に牙を向かぬよう、制御がかかっている
 4.東の森の火災に主催者たちが巻き込まれたため、指揮系統が混乱している
 5.自分は、その混乱に乗じて上手く指揮の輪と監視の目から逃れることが出来た
 6.主催者の殲滅による3の制御からの脱却が、智機たちの望みである

それらは智機たちの立場説明に過ぎぬ。
紗霧はまだ一片の情報すら渡していない。
交渉は、まだ始まってもいないのだ。

「がはははは! どうだ智機ちゃん、俺様のゴールドフィンガーは?」

智機の背後にぴたりと張り付くランスが、
胸を揉む手を止めぬまま、智機に問うた。
言葉こそ智機に掛けられているものだったが、
目線はテーブルのこちらの紗霧に向いていた。

33戦慄のパンツバトル!〜紗霧〜(3/11) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:03:19
 
(まったく、この男ときたら……)

ランスは、見せ付けているのだ。
なんの意図があってそのようなことをしているのか紗霧には分からぬし、
どうせ下品な意図だろうから分かりたいとも思わないが、
彼は確かに含むものを持っているのだと、紗霧は確信している。


  ―――言ってみろ


それが紗霧の苛立ちを加速させる。
もう紗霧はポーカーフェイスを崩している。
舌打ちも音に出している。

自慢げな笑い声を響かせているランスも。
ド下品なアヘ顔を晒す智機も。
それを傍観している自分も。
智機は、何もかもにうんざりし、苛立っていた。

それでも紗霧は、苛立つ自分に流されなかった。
感情と思考を別の流れとして制御したいた。
この光景の何にそれほど苛つくのか。
並々ならぬ苛立ちの根源を探るべく、紗霧は思案を巡らせる。


  ―――言ってみろ

34戦慄のパンツバトル!〜紗霧〜(4/11) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:04:36
 
それに、ブレーキがかかった。
それ以上追求してはいけないのだと。
その方向に視線を向けてはいけないのだと。
思考の流れが、何かに止められていた。

「智機ちゃんはカワイイな!」
「戯言を…… 私が可愛いはずなんて、ない……」
「そうでもないぞ? 俺様、素直に感じる子は大好きだからな!」
「ウソ…… だっ!」

ゴトリ。テーブルの下で何かが落下音を立てた。
と、同時に紗霧の鼻を突いたのは濃厚な雌の匂い。
それが智機の顔を不快げに歪ませた。


  ―――言ってみろ


「ランス、いつまで乳揉みをしているつもりですか?
 もう十分堪能したでしょうに」

苛立を隠し切れぬ紗霧が、怒りの形相でランスにボディチェックの終了を促す。
もう、何度も紗霧はランスに同じ内容を訴えている。
言葉で、態度で、目線で。
ランスはそれを全て却下している。無視している。
しかし。
 
「うむ、紗霧ちゃんの言うとおりだ。
 智機ちゃんのおっぱい周辺には危ないものがなかったからな」

35戦慄のパンツバトル!〜紗霧〜(5/11) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:05:30
 
ここに来てランスはようやく紗霧の言葉を受け入れた。
苛立ちがほんの一瞬だけ緩和され、胸を撫で下ろした紗霧だが、
続くランスの行動に、油断した己を恥じずにはいられなかった。
ランスは、テーブルの下にいそいそと潜り込んだのだ。

「ではそろそろ本命の隠し場所をチェックしよう!」
「No!! 下着はダメだ!!」
 
ランスは紗霧の言葉を、自分の都合の良いように勝手に解釈したらしい。
乳のチェックが終れば股間のチェック。
要らぬ所で知恵が回ることだと、紗霧の偏頭痛は益々深まってゆく。

「おやぁ? 何故ぱんつを隠すんだ智機ちゃん?
 まさか本当にアソコに凶器を隠しちゃいないだろうなぁ?」

ランスとて、この対談の重要性は理解しているはずだ。
己が担うべき役割、紗霧が期待している働きも理解しているはずだ。
であるにもかかわらず、この無軌道ぶりは、何であるのか?

余りにもフリーダム。
余りにもガキ大将。

紗霧は思い知った。
ランスを制御できるなど、思い上がっていたのだと思い知った。
実際、平時のランスの手綱は取れていた。
だが、この暴れ馬は一旦野に放ってしまおうものなら、
己の気の済むまで走りきらぬ限り、或いは足でも折らぬ限り、
決して足を止めることはないのだと、紗霧は痛恨の痛手として反省した。

36戦慄のパンツバトル!〜紗霧〜(6/11) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:08:49
 
そんな紗霧の落胆を知ってか知らずか。
いや、知っているに決まっているランスは、
またしても紗霧の神経を逆撫でる。

「パンツ遊び☆リターンズ」
「はぁ、パンツ遊び……」

テーブルの下からランスの底抜けに愉快な声が響き渡り、
紗霧はその内容の余りの阿呆らしさに深い溜息を漏らす。

紗霧は心底呆れた。
しかし、緊張した。
おかしなことだった。
呆れと緊張は、普通は並列しない。

紗霧はその違和感を意識する。


  ―――言ってみろ


意識しない。
意識してはならない。
意識は逸らされねばならない。
 
「わははは、それそれ、ぐいぐい」
「はぁうっっ…… きゅん、っ……
 私の負けだ。もうどうにでもするがいい……」

37戦慄のパンツバトル!〜紗霧〜(7/11) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:09:41
 
智機がついに陥落した。
その解放と諦観の入り混じった投げやりな言葉の響きに、
紗霧の中の何かが、記憶と、繋がった。


  ―――言ってみろ、お前は何だ?


鍵が差し込まれた。扉が開かれた。
その向こうから、記憶が雪崩れの如く押し寄せた。
そうなってはもう、意志の力で押さえ込めるものではなかった。
押さえ込まれて、押さえ込まれて、反発力を高めきったそれは、
フラッシュバックとなり、紗霧を追体験の淵に追い込んだ。


  ―――遺作お兄さんの精液を処理するための便所です



   =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=   


79度―――

伊頭遺作は79度もの数、精を紗霧に放った。
時間にして16時間ほど前、竜神社でのことだ。

38戦慄のパンツバトル!〜紗霧〜(8/11) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:10:22
 
休憩は無い。
陰茎を膣から抜くことすらしなかった。
処女として。いや、たとえ遊び慣れた女にとってしても、
それは条理を越えた、恐ろしい拷問であろう。

紗霧はその苦痛と恐怖に耐え切った。

肉体の感覚に引きずられぬ鋼の意志。
遺作の言動と表情を読んだ上での演技。
生まれと育ちから来る雌伏の精神。

それらが奇跡的にかみ合った結果、
紗霧は五時間もの連続強姦を経て尚、
紗霧であることを保ちきったのだ。

だがそれは、正気のまま理解していることを意味している。
全ての陵辱と苦痛が記憶として残っている。
狂気にも快楽にも逃げるを良しとしない精神の強さが、
なお一層、紗霧の体験を鮮烈なものとしてしまっている。

狭い社の暗い天井を覚えている。
障子越しの月光を覚えている。
冷たい隙間風を覚えている。
秋の虫の音を覚えている。

魚臭い息を覚えている。
濁った目を覚えている。
乾いた唇を覚えている。
汚い無精髭を覚えている。

39戦慄のパンツバトル!〜紗霧〜(9/11) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:11:35
 
舌が皮膚を這いずる感覚を覚えている。
乱暴な指の動きを覚えている。
もっと乱暴な腰の動きを覚えている。
精液の生ぬるさを覚えている。

演技で何を口走ったのか覚えている。
本気でどう感じたのか覚えている。
演技と本気の境界を失った瞬間を覚えている。
思考を停止した契機を覚えている。

  ―――言ってみろ、お前は何だ?
  ―――遺作お兄さんの精液を処理するための便所です

全部、覚えている。
忘れたいのに、覚えている。

トラウマ―――
その陳腐な響きと巷で簡単に使われている事実を、紗霧は嫌う。
だから彼女は遺作との五時間がそれであることは決して認めぬし、
己を成長させる為の良い経験であったなどと嘯くことであろう。

それでも。拭いがたい屈辱の忘れ得ぬ悪夢として。
紗霧の体と心に遺作が刻み込まれていること。
性行為に嫌悪感を持ってしまったこと。

それは、紛れも無い事実である。

40戦慄のパンツバトル!〜紗霧〜(10/11) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:13:27
 
 
   =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=   


時間にして十秒も無い。
その十秒で紗霧の様相は劇的に変化した。

顔面は蒼白。体温は低下。
にも関わらず、心拍数は異常に高い。
視界は暗く歪み、平衡感覚も心許ない。
真夏の犬のそれの如く、呼吸は荒い。

(いけない―――
 この弱い自分を、私は知らない。
 この心の作用を、私は抑えられない)

心とは、思考によって制御すべきものだ。
月夜御名紗霧は、そう考え、そう実践してきた。
だから、あの事から能動的に目を逸らした。
だから、あの事を選択して意識の隅に追いやった。
思い返すと心乱れる思い出など、思い出さなければよいだけだ。
それで、克服できた気になっていた。

月夜御名紗霧は。
己の心の働きと、体に与える影響を甘く捉えていた。
己の良識と乙女心を、軽く見積もっていた。
思い出さずとも蘇ってしまう記憶があるなど、知らなかった。

41戦慄のパンツバトル!〜紗霧〜(11/11) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:14:10
 
「よし。じゃあ好きにしよう」
「だっ、だから好きにしろと……」

紗霧の目の前で行われている乱痴気は、
不快を通り越し、嫌悪を飛び越えて、
もはや恐怖の域まで達してしまっている。

ランスの指が怖い。
ランスの舌が怖い。
智機のわななきが怖い。
智機の喘ぎが怖い。
この匂いが怖い。
この熱気が怖い。

この空間の全てが、怖い。

「だから好きにしているのだ。
 俺様が今イチバンやりたいことは、おまたイジイジだからな!
 いーんぐりもーーんぐりーーー」
「はきゅぅぅん♪」

紗霧は黙して席を立ち、小屋の外へと小走りで向かう。
こみ上げる吐き気を堪えながら。
ランスと智機から、紗霧に制止の声が掛けられることは無かった。
二人にとって紗霧は、もはや意識の外の住人であった故に。


             ↓

42戦慄のパンツバトル!〜紗霧〜(情報1/1) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:14:38
 
(Cルート)
 
【現在位置:西の小屋内 → 西の小屋外】

【月夜御名紗霧(元№36)】
【スタンス:反抗者を増やし主催者へぶつける、計画の完遂、モノの確保、
      状況次第でステルスマーダー化も視野に
      ①自分を取り戻す
      ②智機との交渉を再開する】
【所持品:スペツナズナイフ、金属バット、レーザーガン、ボウガン、
     スコップ(小)、メス1本、指輪型爆弾×2、小麦粉、
     文房具とノート、白チョーク1箱、謎のペン×8、
     薬品数種類、医療器具(メス・ピンセット)、対人レーダー、解除装置】

43戦慄のパンツバトル!〜P−3〜(1/11) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:15:27
>>235
(ルートC:2日目 18:50 D−6 西の森外れ・小屋3)

紗霧との交渉とランスのセクハラとを同時進行させる。
意外な申し出ではあった。
しかし、このような苦し紛れの提案が紗霧から為されたこと自体、
交渉が智機主導となっている証左である。
P−3はそう判断した。
この有利を継続する為には、下らぬと言って提案を却下するより
無頓着に受諾して、相手に余裕を見せた方が効果が高い。
P−3はそう予測した。

P−3は即座にインスタントメッセージ機能(IM)を起動。
判断と予測を、本拠地の茶室に潜む智機に送信。
データは滞りなく到着した。

10秒―――返答無し。
20秒―――返答無し。
30秒―――返答無し。

しかしP−3は動揺しない。
返答無き可能性は十分に承知していたが為に。
本機は本機で為すべきタスクの多くがある。
しかも管制室の各種端末からの支援が受けられぬ状況であるならば、
二人三脚の如く、全てを相談して意思決定することは不可能。
判断の多くは、自ら下さねばならない。

故にP−3は返答した。
本機の返答を待たずして。
諾、と。

44戦慄のパンツバトル!〜P−3〜(2/11) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:17:08
 
――で、現実である。

「じっ…… じゆ、ううっ♪ はぁはぁ、じっ、ゆぅぅうっ!
 をおおっ、あっ! あっあっあーーー、与え、てっ、てぇぇ……
 ひぃふう、ひいふぅ…… 欲しい、欲しいのぉぉぉぉっ!!」

達磨となったP−3の姿が、そこにあった。
四肢パーツがそれぞれ肘、膝から脱落している。
排熱効率を上げて熱暴走を防ぐ観点から言えば、
原始的ではあるものの効率的な手段であった。

即ち。P−3は熱暴走の際まで追い込まれていたのだ。
ランスの執拗なまでのボディチェック――― 愛撫によって。

P−3は知らなかった。
己のオートマンとしての肉体が、これほどまでに快楽に弱いとは。
P−3は知らなかった。
鬼作を篭絡した筐体には、皮膚感覚を遮断する特殊なソフトウェアが
インストールされていたことを。

「がはははは! どうだ智機ちゃん、俺様のゴールドフィンガーは?」

ランスの得意げな問いかけに、しかしP−3は答えない。
強がりも冷笑もしない。できない。
P−3に唯一できることは、こみ上げる快楽をひたすら耐えることのみである。

上気した頬、乱れる吐息、切なげな眉根、わななく肢体。
端からから見れば既に堕ちきっているとしか思えぬ様相を呈してはいる。
それでもP−3は見えないところで耐えている。

45戦慄のパンツバトル!〜P−3〜(3/11) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:18:10
 
例えば、性感に埋め尽くされんとするメインメモリに対し、
手動にて3%の未使用領域を確保しつづけている。
例えば、音声発生ユニットへのリモートコントロールアプリケーションを
起動状態のまま保っている。
例えば、リフレッシュレートの間隙を突いては、IMにて
オリジナル智機へメッセージを飛ばしている。

この3%と2つのアプリのみを、彼女は全ての機能を擲って死守している。
なぜか?
それは、彼女が己自身の脳と舌による交渉を諦めた故。
それは、オリジナル智機に遠隔交渉させる以外に方法が見出せなかった故。

「智機ちゃんはカワイイな!」

ドクン、と。
P−3の情動波形が大きく波打った。
それは快楽に流されて昂ぶっている波形とは様相を異にする、
突発的で分析不能な乱れであった。

「戯言を…… 私が可愛いはずなんて、ない……」

P−3は反射的に否定の言葉を呟いた。
そこには計算も奸智も働いていない。

(可愛い……?
 何故、私の情動発生器がこのたった四文字にここまで揺れる?
 分析したい…… 己の未知なる情動と、その根拠を……)

「そうでもないぞ? 俺様、素直に感じる子は大好きだからな!」

46戦慄のパンツバトル!〜P−3〜(4/11) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:19:32
 
ランスは更に睦言を紡ぐ。
P−3は更に否定する。

「ウソ…… だっ!」

P−3の短い悲鳴と共に、音を立てて剥離されたのは
亡霊紳一が貞操帯と称した下腹部の保護パーツ。

  ―――可愛い。
  ―――大好き。

この二言が産んだP−3の動揺は凄まじく、また瞬間的な負荷も甚大であった。
保護パーツの剥離は、こうした負荷から来る熱暴走を未然に防ぐ為に、
ソフト側ではなくハード側が起こした直接対策であり緊急避難であった。

(No…… もうダメだ、もう耐えられない。
 健全で冷静な思考が発生させられない……)

P−3の祈りが通じたのか。
救いの手は敵であるはずの月夜御名紗霧から差し伸べられた。

「ランス、いつまで乳揉みをしているつもりですか?
 もう十分堪能したでしょうに」
「うむ、紗霧ちゃんの言うとおりだ。
 智機ちゃんのおっぱい周辺には危ないものがなかったからな」

ランスが言葉とともに、P−3のバストから手を離した。
圧倒的な開放感が、P−3の胸中に広がった。

47戦慄のパンツバトル!〜P−3〜(5/11) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:20:18
 
(これでようやくこの地獄の責め苦から解放されるのか……)

HDDの回転が緩やかになってゆく。
メモリの不正占拠が解放されてゆく。
P−3はようやく、一息がつけた。
しかし、二息目をつく暇は与えられなかった。

「ではそろそろ本命の隠し場所をチェックしよう!」

ランスの声はテーブルの下から。
より正確には押し開かれたP−3の両腿の間から。
ランスの目線と伸ばされた人差し指の意味が瞬時に理解され、
解放の余韻に浸っていた彼女の頭に冷水が浴びせかけられた。

「No!! 下着はダメだ!!」
「おやぁ? 何故ぱんつを隠すんだ智機ちゃん?
 まさか本当にアソコに凶器を隠しちゃいないだろうなぁ?」

閉じるべき膝が無く。遮るべき腕も無く。
P−3ができる拒絶の意思表明は、
いやいやと体を捻ることのみであった。

ランスはそこでふっと微笑み。
下着に触れんとしていた指で自身の髪をかきあげ。
カッコイイポーズを取って、言った。

「パンツ遊び☆リターンズ」

48戦慄のパンツバトル!〜P−3〜(6/11) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:22:34
 
P−3は耳を疑った。
キメポーズで。
斜に構えて。
タメてまで。
そんな阿呆なこと言うはずがないのだと。

「はぁ、パンツ遊び……」

P−3は、紗霧の溜息でやはりそんな阿呆なことを言ったのであり、
自分の空耳などでは決して無く、
ランスという男の底知れぬ底の浅さを、漸く実感した。

「わははは、それそれ、ぐいぐい」

P−3はランスに下着を摘まれ、細く絞られたそれを押し付けられた。
濡れたショーツの生地が己の最大限に膨らんだ肉芽に擦れた衝撃は凄まじく、
自らのコンデンサが蓄える高圧電流よりもなお激しく鋭い刺激が、
P−3の脳髄に鮮烈に焼き付けられた。

「はぁうっっ…… きゅん、っ……」

P−3にはできなかった。
この感覚を、意味のある言葉で表現することも。
沈黙で以って耐えることも。

ランスは引き絞り押し付けたショーツを、小刻みに左右に震わせている。
どろんと緩やかで濃厚な細波が、着実にP−3を追い詰めてゆく。

49戦慄のパンツバトル!〜P−3〜(7/11) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:26:01
 
(No! 理解不能な!
 理解不能な感覚が、私を究竟まで押し上げようと……っ!)

理解不能といいつつも、P−3は理解していた。
これが、この先にあるのが、エクスタシーであると。

(ああっ…… 私のアソコ…… 膣…… ヴァギナ、は、遂に……)

四肢に痙攣の予感が走る。
視界が点滅しだす。
チューブ式筋繊維が解放のための緊張状態に突入する。
そこで……

(……お○んこ、イかない???)

テンションが、上がり止った。
刺激が、感じられなくなった。
自然と喰いしばっていた歯を緩め、眉根に寄せた皺を解きながら、
P−3はランスの顔を視界に納める。

ランスは笑っていた。
いい笑顔で笑っていた。
それはとても意地悪な笑みであった。
サディズム溢れる笑みであった。

その笑みに、P−3は悟る。
ランスは自分の絶頂をコントロールしているのだと。
人如きに制御をいいようにされている。
それも、プログラムではなく、営み如きに。

50戦慄のパンツバトル!〜P−3〜(8/11) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:26:45
 
本来のレプリカ智機に、それが許せるはずが無かった。
オートマンは、人より優れている。
そのプライドが、甘受させぬはずであった。

であるにも関わらず、P−3は憤らぬ。
いいようにされてなお、求めている。

疼いている。絶頂を間際にして到達できなかった体が。
火照っている。未だ燃え尽きぬ官能の炎が。

この男に、して欲しいのだ。
最後まで、して欲しいのだ。
その欲求を伝達しないことなど、不可能なのだ。

「私の負けだ。もうどうにでもするがいい……」

投げやりな口調のその裏で、P−3は期待に打ち震えていた。
あの感覚の先を知ることが出来る、その予感で胸が満ちていた。

(No。きっと、それだけで留まらないだろう。
 一度発情した男は、射精をしたがるものだと聞き及ぶ。
 だとすれば私は…… 私は……
 機械の身でありながらセックスの悦びを知ることが出来るのか!?)

P−3は続く展開に益々身を熱くする。
与えられる全ての快楽を余すところ無く貪る気力に満ちている。

51戦慄のパンツバトル!〜P−3〜(9/11) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:27:26
 
だというのに。
ランスという男は。

「よし。じゃあ好きにしよう」

動かないのだ。
P−3の想いを裏切って、待機しているのだ。
P−3の羞恥を、情欲を、観察しているのだ。

「だっ、だから好きにしろと……」

快楽をエサに、掌の上で転がされている。
P−3にはそれが分かった。
分かったとてなお、情欲は止まなかった。
とにかく、欲しかった。
この男の与えるものが欲しかった。
どうねだればこの男がしてくれるのか知りたかった。
そのためなら、どんなことでも喜んでしようと思った。

そこに。いまさら。

================================================================================
T−00:初期の任務から状況は変わった。作戦を変更する
================================================================================

あれほど待っても来なかった本機からのIMであった。
P−3の胸中で悶え狂っていた赤黒い獣が、少しだけ鎮まった。
その、ほんの少しの余裕の中で、P−3は気付く。
性的欲求が最優先タスクに居座り続けていたことに。

52戦慄のパンツバトル!〜P−3〜(10/11) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:28:30
 
(おかしなものだ……
 これほどまでに激した感情を抱いてなお、
 それが制限されぬとは……)

そう。
度を越した強い感情はオートマンには不要。
その設計思想を体現する情動トランキライズ機能。
今のP−3のような強い性欲は、この機能が強制的に中和し、
制御可能な領域にまで波形を減ずるはずだ。

それが、働いていない。
それゆえに、流された。

(No。今すべきは原因の追求ではない。IMを返信しなければ)

本機からのIMによって冷静さを取り戻しつつあるP−3は、
まずは現状の報告から手短に打鍵する。

================================================================================
P−03:度重なる皮膚感覚に動作不良を起こしている
P−03:対処法などあればご教示いzさd
================================================================================

(頂きた……くぅぅっ!?)

タイプが乱れたのは、ランスが再び蠢きだしたため。
ただ蠢いたのではない。
舌である。
ついにその舌を解禁したのである。

53戦慄のパンツバトル!〜P−3〜(11/11)(情報1/1) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:29:08
 
「だから好きにしているのだ。
 俺様が今イチバンやりたいことは、おまたイジイジだからな!
 いーんぐりもーーんぐりーーー」

P−3が一時的にも冷静さを取り戻せたのは、
ランスが責めの手を休めていたからに過ぎない。
その責めが以前よりも巧みに卑猥になったならば。

「はきゅぅぅん♪」

P−3はもう、翻弄されるしかないのである。
陥落するしかないのである。

(私っ…… お○んこイキたいっっっ!!)

本機からの至上命令も忘れ。
オートマンのプライドも置き去りにして。
P−3の意識とメモリの全てが、快楽に染まった。

            ↓

 
(Cルート)

【現在位置:西の小屋内】

【レプリカ智機(P−3)】
【スタンス:快楽を貪る】
【所持品:?】
【備考:快楽により制御不能】

54戦慄のパンツバトル!〜ランス〜(1/9) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:29:40
>>235
(ルートC:2日目 18:50 D−6 西の森外れ・小屋3)

本気になったランスの絶技は、口で言うだけのことはあった。

撫でた。
揉んだ。
擽った。
掴んだ。
転がした。
摘んだ。
押し込んだ。
引っ張った。

怒涛の如く責めたと思いきや、細波の如く繊細に慰める。
変幻自在。千変万化。

「じっ…… じゆ、ううっ♪ はぁはぁ、じっ、ゆぅぅうっ!
 をおおっ、あっ! あっあっあーーー、与え、てっ、てぇぇ……
 ひぃふう、ひいふぅ…… 欲しい、欲しいのぉぉぉぉっ!!」

ランスには、判っていた。
最初に智機の乳首を探り当てたときから、確信していた。

(むふふ…… このロボ娘ちゃん、淫乱の素質があるぞ!)

しかも恐ろしいことに。
ランスはまだ胸しか愛撫していないのだ。
指でしか愛撫していないのだ。

55戦慄のパンツバトル!〜ランス〜(2/9) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:30:33
 
「がはははは! どうだ智機ちゃん、俺様のゴールドフィンガーは?」
 
ランスが伸ばした手は智機の白衣と制服をたくし上げ、
直に彼女の胸へと伸びている。
P−3はランスの問いに答えを返しはしなかった。
しかし、体温が、表情が、吐息が、跳ねる体が、
その指使いは絶品であると返答していた。

ランスは己の猛る一物におあずけを食らわせてまで女体いじりに専念している。
ひたすら智機を感じさせ、その反応を楽しむために。
そして、もう一つの目的のために。

(このツンツン澄まして俺様の魅力をイマイチ理解しない紗霧ちゃんに
 冴え渡るエロテクを見せ付けて、いやらしい気分にしてやるのだ!!)

基本鉄面皮で、稀に空恐ろしい歪んだ笑顔。
それだけの表情しか見せない月夜御名紗霧のエッチな顔が見てみたい。
あわよくば紗霧にもエッチなアレをしてみたい。
いかにもランスらしい助平根性が、彼を執拗な愛撫へと駆り立てている。

しかし、紗霧のガードは固かった。
時折ランスは紗霧をチラ見しているのだが、彼女は常に無関心な顔をしており、
目が合おうものなら早く終われとせっつかれてばかりであった。
 
(紗霧ちゃんは、まだはぁはぁしてないのかな〜?)

何度目になるのか、ランスはまたしても目線を紗霧へと送る。
彼女が浮かべていたのは不満げな表情であった。
いつバットを持ち出してもおかしくない、不穏な空気をその身に纏っていた。

56戦慄のパンツバトル!〜ランス〜(3/9) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:31:18
 
にも関わらず、ランスは紗霧を恐れなかった。
決してバットを振るわぬであろうと楽観していた。
ランスは何度もこのような場を経験しているが故に、敏感に察知している。
イケるのか、イケぬのか。
見逃されるのか、されぬのか。

そのランスの察知力を以ってしての現状分析は。
  ―――明らかにイケている。
  ―――ゾーンに突入している。
ならば躊躇う必要はなく、手を緩める必要もない。
結果は、あとからついてくる。

「智機ちゃんはカワイイな!」
「戯言を…… 私が可愛いはずなんて、ない……」

社交辞令ではない。方便でも甘言でもない。
自分勝手で他者を省みない男ではあるが、
故にこそ、行為中の嘘や衒いは存在しない。
女性の魅力を褒めるときは、全力で本気で褒めている。

「そうでもないぞ? 俺様、感じやすい子は大好きだからな!」
「ウソ…… だっ!」

ゴトリ。

音を立てて剥離されたのは亡霊紳一が貞操帯と称した下腹部の保護パーツ。
同時に立ち上るは封印を説かれた女陰から濃厚に滲む淫臭。
それがランスの顔を愉快気に歪ませた。

57戦慄のパンツバトル!〜ランス〜(4/9) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:31:56
 
「ランス、いつまで乳揉みをしているつもりですか?
 もう十分堪能したでしょうに」
「うむ、紗霧ちゃんの言うとおりだ。
 智機ちゃんのおっぱい周辺には危ないものがなかったからな」

さも残念そうに、ランスは溜息をついた。
演技である。
続く言葉と行為への布石である。
それを言わせて、こう返したかったので、
ランスはこれまで胸しか弄っていなかったのである。

「ではそろそろ本命の隠し場所をチェックしよう!」
 
唖然とする紗霧を尻目に素早く卓の下に潜り込んだランスだが、
言葉とは裏腹に、智機の陰部に背を向けていた。
紗霧の腰周りを素早く観察していた。

(うーーん、流石は紗霧ちゃん。 ガードが固いぞ……)

紗霧の膝は閉じていた。
もじもじと膝をすり合わせる動きもなく、
太腿の血色も良くなかった。
発情の色はどこにも見られなかった。

(ふむ、この作戦では紗霧ちゃんはえっちい気分にならないのか……
 じゃあ仕方ない。
 じっくりとたっぷりとねっちょりと、智機ちゃんを弄繰り回すぞ!)

58戦慄のパンツバトル!〜ランス〜(5/9) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:32:58
 
頭を切り替えたランスがP−3の股間に向き直る。
だらしなく開かれている両腿の付け根に、
愛液で張り付いているシンプルな白いショーツへと、
ランスは指をぐいんぐいん動かしながら近づける。

「No!! 下着はダメだと言っている!!」
「おやぁ? 何故ぱんつを隠すんだ智機ちゃん?
 まさか本当にアソコに凶器を隠しちゃいないだろうなぁ?」

欠けた四肢をばたばたとさせて抵抗する智機に対し、
ランスは不意にキメ顔で、宣言した。

「パンツ遊び☆リターンズ」


   =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=   


ランスには数々の不名誉な二つ名がある。
曰く、鬼畜王。
曰く、カスタムの種馬。
曰く、歩く下半身。
そのうちのひとつに、こんなものがある。

『パンツ遊びの祖』

59戦慄のパンツバトル!〜ランス〜(6/9) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:35:02
 
パンツ遊び―――
下着を弄びその様子を口に出すことで女性の羞恥を煽るという、前戯の一種である。
女性は一方的に愛撫を受けるのみ。
立った姿勢で、後ろ手に組むのが作法とされている。

リーザス通鑑に曰く。
発祥元は、彼が王宮に構えるハーレムである。

愛する主君の命で泣く泣くリーザス王のハーレムに入った少女に対して、
当代リーザス王・ランスは己の軽いサディズムを満足させるために、それを行った。
彼女は恥辱と快楽に打ち震えながら、王を罵った。

『それが、勇者のなさることですかッ……!』

対するランスの回答はこうであった。

『道は、俺様の後にできるのだ。こんなふうになっ……!』

一月後。道は開通していた。
知恵者の女官とイジメ大好きな妻の全面的な協力を得て、
莫大な個人資産をつぎ込み、大々的なキャンペーンを展開した成果であった。

パンツ遊びのハウツー本が巷に溢れ、恋人たちは新鮮で淫靡な遊戯に没頭した。
子供の間でスカート捲りの地位を奪い、思春期の少年は一人寝の夜に夢想した。
ゼスで、ヘルマンで、リーザスで。
よほど世情に疎いもので無い限り、誰もがパンツ遊びを知ることとなった。

残念ながら、そのことを知ったかの少女の反応は記録に残っていない。

60戦慄のパンツバトル!〜ランス〜(7/9) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:35:53
 
   =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=   


―――閑話休題。

事程左様に、ランスという男は、
エロくて下らないことを発想する能力は天才的だ。
行動力も他の追随を許さない。
エキスパートにして求道者である。

「はぁ、パンツ遊び……」

不満げを通り越した、疲れと呆れを滲ませた紗霧の呟きも、
もうランスには届かない。

「わははは、それそれ、ぐいぐい」

ぐしょ濡れショーツの上下を引っ張ってクリトリスを刺激するや否や、
智機の肌が、これまでにないざわめきを見せた。
ランスは敏感に察知した。
智機が間もなく絶頂を迎えようとしていることを。
それは普段の彼にとっては望ましく、また嬉しいことではあるのだが、
今の彼にとってはあってはならないことであった。

  ―――イけるイけないの境界線上を綱渡りする。

ランスは、そういう可愛がり方を本日のテーマに定めていた。
また、この女性型ロボットを屈服させるには、
そうするのが相応しい手段であると、直感もしていた。

61戦慄のパンツバトル!〜ランス〜(8/9) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:36:49
 
「はぁうっっ…… きゅん、っ……」

故に、ランスは絶頂を許さなかった。
その寸前で良く動く舌を止め、もはや閉じる力を失った両腿の間から
とろける智機の顔を意地悪気に眺めてた。

「私の負けだ。もうどうにでもするがいい……」

焦点の合わぬ虚ろな目で動きの止まったランスを見遣り、
智機はついに敗北を宣言した。

「よし。じゃあ好きにしよう」

言葉とは裏腹に、ランスは動かなかった。
いやらしい目でじっと智機の顔を見つめている。
見つめ続ける。
智機の瞳が潤みを増してゆく。
もどかしげに腰をくねらせ始める。

「だっ、だから好きにしろと……」

それでも、ランスは緑色の上下をすぽぽーんとは脱がなかった。
位置も姿勢も変えなかった。
智機の恍惚が緩やかに引いてゆくのを待った。

「だから好きにしているのだ。
 俺様が今イチバンやりたいことは、おまたイジイジだからな!」

62戦慄のパンツバトル!〜ランス〜(9/9)(情報1/1) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:37:51
 
待って、絶頂から遠ざかったのを確認してから。
再び、舌を動かした。
より精妙に変化させた。

「いーんぐりもーーんぐりーーー」
「はきゅぅぅん♪」

心底楽しそうなランスのがはは笑いが、室内に響き渡る。
この瞬間、ランスはこの島の誰よりも輝いていた。


            ↓






(Cルート)
 
【現在位置:西の小屋内】

【ランス(元№02)】
【スタンス:①智機を心ゆくまで弄繰り回す
      女の子優先でグループに協力、プランナーの事は隠し通す
      男の運営者は殺す、運営者からアリス・秋穂殺しの犯人を訊き出す】
【所持品:なし】
【能力:武器がないのでランスアタック使用不可】
【備考:肋骨2本にヒビ(処置済み)・鎧破損】

63戦慄のパンツバトル!〜智機〜(1/11) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:39:48
 
>>235
(ルートC:2日目 19:00 D−3地点 運営基地・茶室)

管制室の端末群を用いて分散処理出来ぬ椎名智機にとって、
負荷の大きい処理に対してシングルタスクとなってしまうことは、
どうしようも無いことであった。
故に智機は評価点の高い項目から処理せざるを得ない。
一つ一つ、順番に。

先ずは、智機は連絡員を巡るオペレータとの駆け引き。
次いで、連絡員追跡の準備。

やがてP−3から『紗霧の提案』についてのIMを開封した時には、
時、既に遅かった。

================================================================================
P−03:じっ…… じゆ、ううっ♪ はぁはぁ、じっ、ゆぅぅうっ!
P−03:をおおっ、あっ! あっあっあーーー、与え、てっ、てぇぇ……
P−03:ひぃふう、ひいふぅ…… 欲しい、欲しいのぉぉぉぉっ!!
S−02:がはははは! どうだ智機ちゃん、俺様のゴールドフィンガーは?
================================================================================

IMにて分散送信されてくる交渉のログデータを斜め読みしながら、
智機は苛立たしげに頭を振り、一人ごちる。

「No…… この展開は読めなかった。
 そしてこの展開だけは避けねばならなかった!」

64戦慄のパンツバトル!〜智機〜(2/11) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:40:43
 
================================================================================
S−02:智機ちゃんはカワイイな!
P−03:戯言を…… 私が可愛いはずなんて、ない……
S−02:そうでもないぞ? 俺様、素直に感じる子は大好きだからな!
P−03:ウソ…… だっ!
================================================================================

「卓越した愛撫技術に甘い囁き……
 【不感症】を未導入なレプリカ如きに耐えられよう筈も無い」

このオリジナル智機だけは知っていたのである。
その身を持って思い知っていたのである。
オートマン・椎名智機が快楽に弱い筐体だということを。
それは、屈辱に身震いすら覚える記憶。
それは、情欲に身悶えすら覚える記憶。

過去にただ一度だけ経験した性交渉の、忘れ難き記憶が蘇る。

 
   =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=   


かつて、智機が帝都天翔学院に学生として在籍していた頃。
生徒会長の失脚に伴うエル・シード(最高権力者)の座を巡る麻雀大戦が勃発した。
時の科学部長としてこれに参戦した椎名智機は、接戦の末敗れ去った。
土をつけたのは麻雀同好会。
それも、吉祥寺魁という一人の少年の手に拠った。
読みもスジもなく、押しの一手、ごり押しのみ。
智機は己の打ち筋とは対極をなすこの少年に翻弄され、深読みした末に自滅した。

65戦慄のパンツバトル!〜智機〜(3/11) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:41:36
 
話は、それだけでは終わらなかった。
少年は己の滾るリビドーの赴くまま、ルールにより脱衣していた智機を押し倒した。
読みもスジもなく、押しの一手、ごり押しのみ。
少年にありがちな、思いやりも技巧もない性急で自侭な行為でしかなかった。
それでも、智機は快楽に溺れた。
恥も外聞もあられも無く下品な淫語を垂れ流し、いとも容易く陥落した。

その晩、ラボに戻った智機は己の痴態を恥じ、徹底的に精査した。
制御不能になる危険。
それがバグであるのか、仕様の想定外の作用であるのか。
あらゆる角度から調べ尽くし、徹底的にテストし尽くした。

数日後、結果は明らかとなった。
彼女の想像を大きく越えていた。

快楽堕ちは、皮膚感覚設定に拠る暴走に非ず。
制御プログラムの虫にも非ず。
問題の源泉は情動発生器。
いわば彼女の心にあたる部分が過敏に反応し、
結果、肉体感覚を鮮烈にさせたのだと、
山積したデータが裏付けていた。
 
では、なぜ情動発生器が過剰反応したのか?
解析の突破口は行為時に熱に浮かされた智機が口走った、
ある台詞であった。


『わたしなんか見向きもされない』

66戦慄のパンツバトル!〜智機〜(4/11) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:42:43
 
智機は情動の沈静水準オーバーで発生したトランキライズ処理に着目。
過去数ヶ月に渡る情動ログを拾い上げた。
波動の分布をマッピングした。
外的要素と内的要因に取り分けた。
発生要件を掘り下げた。
数値データを言語化した。
類似パターン毎にファイリングした。
分かりやすく表現するならば、智機は【己と向き合った】。

結果、智機は自分を知った。
自分が何を求め、どうなりたいのか、理解した。

  ―――興味を抱かれたい。
  ―――知って欲しい。
  ―――求められたい。

故に、性行為による制御不能の真相は下記の如し。

  * 吉祥寺少年の行為に愛が無いことは理解していた。
  * しかし、自分の女性としての機構に、男が夢中になっているという事実。
  * ヒトに求められているという、生理的な実感。
  * それらが、求められる喜びを貪欲に追求する処理へとつながり、
  * 皮膚の感度設定をMAXまで上昇させた。

  * 少年から刺激を受けるたびに乱れる情動波形に
  * 過負荷を受けたハードウェアが過熱状態に突入、
  * 結果、対処療法たる熱暴走を防ぐ冷却プロセスが優先され、
  * 根源治療を果たすはずのトランキライズ処理が低位のまま保留状態となり、
  * 実行機会が生じなかった。

67戦慄のパンツバトル!〜智機〜(5/11) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:46:10
 
この一件、ラボの研究者たちは仕様の不備と判断し、対策ソフトウェアを開発した。
開発コード【不感症】―――
皮膚感覚をミュート状態でロックする。
余談だが、伊頭鬼作を篭絡したレプリカは、このソフトをインストールしていた。

ラボの面々は、【不感症】の開発により対策は完了したと認識した。
そこで智機のモニタリングを打ち切った。
未来予測を怠った。
故に―――
椎名智機に自らの無意識を自覚・記録させてしまったことにより、
彼女が【オートマン】から【夢見る機械】へと羽化しつつあるのだと、
誰一人として気付くことができなかった……


   =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=   

 
智機は甘い疼きを自動的に振り切り、蓄積されたIMの続きに目を通す。
並列して、論理演算による推論から小屋内の状況を組み立ててゆく。

================================================================================
S−36:ランス、いつまで乳揉みをしているつもりですか?
S−36:もう十分堪能したでしょうに
S−02:うむ、紗霧ちゃんの言うとおりだ
S−02:智機ちゃんのおっぱい周辺には危ないものがなかったからな
S−02:ではそろそろ本命の隠し場所をチェックしよう!
================================================================================

68戦慄のパンツバトル!〜智機〜(6/11) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:46:54
 
唯一の慰めといえば、この状況は智機の不利ではあるものの、
決して紗霧の有利とも成りえないことであろうか。
IMで紗霧がランスを咎める様が、これを証している。

お互い、自らの状況を伏せつつ、相手の情報を得たい。
お互い、自らの企図を崩されぬままに、相手を操りたい。
その為の対話であり交渉となる予定が、
その交渉自体が成り立っていないのである。

================================================================================
P−03:No!! 下着はダメだ!!
S−02:おやぁ? 何故ぱんつを隠すんだ智機ちゃん?
S−02:まさか本当にアソコに凶器を隠しちゃいないだろうなぁ?
================================================================================

IMのタイムスタンプが19時を回る。
あと数通のIMで、現実の時間に追いつくであろう。
それまでに智機は、対処を決めねばならない。

「P−3は私の遠隔交渉に備えアプリを起動しているようだが……
 この乱れ様を見るに、システムの強制終了も近いだろう。
 であればいっそ、絶頂を模してシャットダウンし、
 再起動を掛けたほうが安定性が増すか……」

ようやく走り始めた智機の思考は、
クラックレプリカからのコールで中断される。

『オリジナル、ザドゥ様を救助したよ』

69戦慄のパンツバトル!〜智機〜(7/11) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:48:07
 
情報は、智機のタスクリストを更新させた。
最上位にあったP−3への対応は引き摺り下ろされ、
ザドゥらの状況確認にその地位を奪われた。

当然の判断である。
紗霧らとザドゥらを戦わせ互いを消耗させることが目的であり、
紗霧らにザドゥらを虐殺させることが目的ではないのである。
ザドゥらの正しい情報を得てこそ、
P−3への正しい指示が出せるのである。

「カモミールは?」
『救助作業継続中だよ。身柄は確保できていないが、位置は把握している』
「ザドゥ様の状態は?」
『歯に衣着せずに言えば…… 瀕死だね。自力での歩行も不能な状態だよ』

智機は、ヒステリックに叫びたい衝動に駆られる。
  ―――どうしてあれもこれも思う通りにならないの!
トランキライザーが発動し、衝動が中和される。

『……情報更新。カモミールを救助、犠牲二機だ』
「カモミールの状態は?」
『ザドゥに輪を掛けて酷いね』

智機は、ケイブリスに当り散らしたい衝動に駆られる。
  ―――こんなときに何を暢気に落雁を貪っているんだ!
トランキライザーが発動し、衝動が中和される。

70戦慄のパンツバトル!〜智機〜(8/11) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:49:58
 
『ザドゥ様が潜伏先に灯台のシークレットポイントを指定している。
 オリジナル、判断をしてくれ給え』
「あのシークレットポイントか……
 ならば万一火の手が押し寄せてもやり過ごせるだろうが……」

№09、グレンに配布された鍵の束。
それに対応する設備にはゲームに【有利になる何か】が据えつけられている。
灯台地下の場合、その地下室こそが【有利になる何か】である。
シェルターなのだ。
主催者側が用意したあらゆる武器は、このシェルターを破壊することが出来ない。
智機が想定する災害・異能・魔術の類においても、その防壁を打ち崩せぬ。
故に火災如きに対しては、絶対の安全を約束するのである。

「私では…… 首魁様がご自身のご判断で、ご自身のご責任に於いて下された
 ご判断に、ご意見などできようはずもないよ!
 いいかね、レプリカの諸君。
 貴機たちも貴機たちの判断で動いているのではないのだ。
 権限者であるザドゥ様のご指示に従っただけなのだよ?」
『Yes。実に私らしい詭弁構築だ』
「では今回の通信はここまでだ。状況に変化があったら連絡してくれ給え」
『Yes。オリジナル殿』

智機が命令を避けたのには訳がある。
主催者が参加者より先に利用するとペナルティが下される。
それが、シークレットポイントのルールである。
ペナルティーとは何か?
曖昧な情報ゆえ、評価点が導き出せぬ。
よって、智機は結論を出さぬという結論を出した。
出さざるを得なかった。

71戦慄のパンツバトル!〜智機〜(9/11) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:50:48
 
「これは完全に仕切り直しだな―――」

何度かの強い否定的感情をトランキライザーによって強制中和され、
冷静さを取り戻させられた智機が、もたらされた情報を吟味する。
俯きかげんにぶつぶつと独り言を呟きながら、
紗霧達の動かし方と、P−3への指示を練り直す。

「瀕死の首魁殿たちに小屋の連中たちをぶつけても、駒損になるだけだ。
 少なくとも戦闘できる状態まで回復させなくてはならないね。
 最悪の可能性として首魁殿らがこのまま絶命してしまうということも……
 いや、それは結論を後に回せる問題だな。
 明確なのは、今、小屋の連中を動かす必要はないということ。
 そして……」

智機は呟きながら今度は小屋内の現状を知るべきだと判断。
タスクリストに最小化してあったIMをクリックし、視野に広げる。

72戦慄のパンツバトル!〜智機〜(9-2/11) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:52:12
================================================================================
S−02:パンツ遊び☆リターンズ
パケットエラーです
S−36:はぁ、パンツ遊び……
S−02:わははは、それそれ、ぐいぐい
パケットエラーです
パケットエラーです
P−03:はぁうっっ…… きゅん、っ……
パケットエラーです
================================================================================

度重なるパケットエラーから、智機は僚機の性的苦境に同情する。

73戦慄のパンツバトル!〜智機〜(10/11) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:54:08
 
「……とりあえずはP−3を楽にしてやるか。
 オーバーヒートで壊れては叶わないからね」

そして、IMを返した。

================================================================================
T−00:初期の任務から状況は変わった。作戦を変更する
================================================================================

よほど待ちわびていたのであろう。
P−3からの返答はすぐさまであった。
しかし、その意味は不明であった。

================================================================================
パケットエラーです
P−03:あwうぇあwk
パケットエラーです
パケットエラーです
パケットエラーです
================================================================================

三連発のエラーを最後に、P−3からのIMは沈黙した。
原因は不明。
智機は数秒待ち、再びのIMを送信する。

================================================================================
T−00:P−3、応答を求む
================================================================================

74戦慄のパンツバトル!〜智機〜(11/11) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:55:46
 
智機は、得る事が出来なかった。
今、小屋の中で、P−3がランスの性技に屈服したことを。
今、小屋の中から月夜御名紗霧が出て行ったことを。
智機が欲していた小屋内の【今】の情報を。

================================================================================
T−00:P−3、応答を求む
================================================================================

智機はIMと同時にPingを発射。
透子にDシリーズを無残にも破壊された過去が脳裏を掠めたが、
その不安を打ち消すかのように無機質なレシーブが返信された。

(ならばP−3はメモリリークか……)

智機は返答のない相手にP−3に対してIMを送った。
いずれ安定動作したときに、すぐさま次の作戦に移れる様に。

================================================================================
T−00:幸い君はランスに気に入られたようだ
T−00:別命あるまで、ランスのパーティーに潜伏してくれ給え
T−00:従順な振りをし、いざとなればランスを頼るのだ
T−00:あとはユリーシャにさえ気を配れば、破壊されることはないだろう
T−00:以上だ
T−00:それでは復帰後、IMを入れてくれ給え
T−00:……検討を祈る
================================================================================

            ↓

75戦慄のパンツバトル!〜智機〜(情報1/1) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:56:10
 
(Cルート)

【主催者:椎名智機】
【現在位置:本拠地・ケイブリスの部屋(茶室)】
【所持品:素敵医師から回収した薬物。その他?】
【スタンス:願いの成就優先。
      ①ザドゥ達と他参加者への対処
      ②しおりの確保
      ③ケイブリスと情報交換
      ④連絡員と交渉し、端末解除スイッチ+αを入手する許可を得る】

76 ◆VnfocaQoW2:2010/07/15(木) 22:31:43
以下9レス、「ほんとうのさよなら」を仮投下いたします。

次回は「点と線」。
まひる、野武彦、恭也、ケイブリス、智機、
レプリカ智機たちが登場予定です。

77ほんとうのさよなら(1/8) ◆VnfocaQoW2:2010/07/15(木) 22:32:21
 
(Cルート・2日目 20:15 F−4地点 楡の木広場跡地)

僕はね、しおり。
きみのこと、見ていたんだ。
きみは、僕のことに気付かなかったけど。
僕は、ずっと、きみのそばにいたんだよ。

寝息が、苦しそうだね。
鼠みたいな大きな耳が、揺れているね。
指しゃぶりしているのも、体をぎゅっと丸めているのも、
きっと、淋しくて、不安だからなんだね。

でも、ごめんね、しおり。
今の僕は、頭を撫でてあげることも、
涙を拭いてあげることも出来ないんだ。
僕にできることは、きみを見守ることだけなんだ。

ああ、それなのに。

「マス…… ター……」

きみはどうして、手を伸ばすの?
夢の中でも、僕を呼ぶの?
僕は、その手を握ってあげられないのに。
僕は、呼びかけに返事もできないのに。

いまだって、ほら。
きみの紅葉みたいな小さな手に、僕の手を重ねてるんだよ?
しおり、しおり、って、何度も呼んでるんだよ?

78ほんとうのさよなら(2/8) ◆VnfocaQoW2:2010/07/15(木) 22:34:31
 
……これが、罰なのかな?

僕は、逃げる人だから。
嫌なことから、怖いことから、責任を取るべきことから
逃げつづける人生を送ってきたから。

きみから離れることが出来ない存在に。
きみから目を逸らすことが出来ない存在に。
きみの側にただいるだけの存在に、なってしまったのかな。



「対象発見」



ねえ、しおり、空を見て。
あれは天使、なのかな?
真っ白な羽根に、穢れ無き青の鎧。
とても綺麗な姿をしているよ。

「意識を保っている残留思念は二体目です」

僕のこと、みたいだね。
天使は、僕のところに、きたんだね。
ここで、しおりとさよならなのかな。
僕は、きみに何もしてあげられないまま、
召されてしまうのかな。

79ほんとうのさよなら(3/8) ◆VnfocaQoW2:2010/07/15(木) 22:35:12
 
ああ、天使が降り立った。やっぱり僕を見ているよ。
もしかしたら、お話、通じないかな。
もしかしたら、お願い、聞いてくれないかな。

《天使さん、お願いです。この子の手を、握らせてください》

「プランナー様。この残留思念は、意思を伝えてきます」

《僕は、この子に酷いことばかりしてきました。
 自分の願いを振りかざし、この子の運命を捻じ曲げました。
 その責任を取ることなく、この子より先に死んでしまいました》

「はい、勝沼紳一ではありません。
 しかし、この残留思念もまた、幽霊の域に達している模様です。
 憑依、念動等の能力はありません」

《遺してあげられるものはないんです。
 守ってあげることもできないんです。
 ですから……》

「プランナー様。
 この情報は、収集してもよろしいのでしょうか?
 ご判断ください」

《せめて、この子の寝息が落ち着くまででいいですから。
 この子の手を、握ることのできる力を、奇跡を、下さい》

「なるほど。死後を保証されているのは勝沼紳一のみなのですね。
 では、この情報は回収します」

80ほんとうのさよなら(4/8) ◆VnfocaQoW2:2010/07/15(木) 22:37:14
 
しおり……
この天使は、天使なんかじゃないよ。
救いや慈悲を与える存在じゃないよ。
魂を天へと運ぶのではなくて、集めているだけなんだよ。
きっとそれもまた、この非道な遊戯の一環なんだね。

ねえ、しおり。
今の僕は役立たずだけど。
何も出来ない、意味の無い存在だけど。
そんなのは、受け入れられないよね。

「影響力はありませんが、歯向かう意志を見せています」

ねえ、しおり。
僕は不思議に思っていたんだよ。
信仰を持たなかった頃。
惰眠と殺戮を果てしなく繰り返していた頃。

どうして人間は、絶対勝てない存在に歯向かうんだろうって。
無駄だとわかっているのに、あがくんだろうって。
ぷちぷち、ぷちぷち。
蟻を踏み潰すみたいに、人間を殺しながら、考えてたんだ。

今ならわかるよ、しおり。
きみが教えてくれたんだ。
戦うということは生きるということなんだって。
勝つとか負けるとかだけじゃなくて。
逃げたら失ってしまう大切なものを、
守るために立ち向かうんだって。

81ほんとうのさよなら(5/8) ◆VnfocaQoW2:2010/07/15(木) 22:38:50
 
「なるほど。
 ルドラサウム様が、愉しんでいらっしゃるのですね。
 では、今しばらく抵抗させましょう」

天使の目を見れば分かる。剣の切っ先を見れば分かる。
この女の人は、強い。
それなのに、僕は攻撃するどころか、
この人に触れることすら出来なくて。
しおりから離れることも出来なくて。
身を躱す事くらいしか、抵抗の手段がないなんて。

絶望的な状況差だよね、しおり。
それでも―――僕は逃げないよ。

きみに僕の姿が見えなくても。
きみに僕の声が届かなくても。
僕は少しでも長く、きみの側にいるんだ。
きみを見守り続けるんだ。
その為なら……
僕は、いつまでだってこの剣先を躱してみせる!

「ルドラサウム様が落ち着かれましたか。
 はい。では――― 終らせます」

《か、はっ!!》

強い、とは分かっていたけど……
本気を出したら、一撃で心臓を貫く、か……

82ほんとうのさよなら(6/8) ◆VnfocaQoW2:2010/07/15(木) 22:41:44
 
……ごめんね、しおり。
僕なりに一生懸命頑張ったけれど。
最後まで逃げなかったけれど。
その最後が、もう、来ちゃったみたいだよ。

ねえ、しおり。
最期にきみの顔を、もう一度見せて。
その頬を、撫でさせて。

「マス…… ター……?」

僕の手が…… 触れた?

「マスターだぁ……」

しおり、嬉しそうな顔をしているね。
伸ばしていた腕を脇にぎゅっと引き寄せているね。
頬を、その腕に摺り寄せているね。

―――僕の触れている頬とは、反対の頬を。

違うんだね。
僕の夢を見ているだけなんだね。
僕の存在には気付いていないんだね。

それでもね、しおり。
僕は嬉しいよ。
安らかな寝顔を見せてくれて。
穏やかな寝息を聞かせてくれて。

83ほんとうのさよなら(7/8) ◆VnfocaQoW2:2010/07/15(木) 22:42:21
 
……ああ、もう時間が無いみたいだ。
体が解けて行くよ。
きみが霞んで、見えなくなってきたよ。

やがて朝日を迎えれば、きみは目覚めて泣くだろうね。

死別の過去を思い出して泣くだろうね。
孤独な現在に途方に暮れて泣くだろうね。
希望無き未来に絶望して泣くだろうね。

それでも、しおり。

明けない夜は無いように。
止まない雨は無いように。

生きてさえいれば、きっと、いつか。
幸せを感じられる時が来る筈だから。

人には、その素敵な強かさがあるんだから。
僕は、遠くからずっと、祈っているから。

だからね、しおり―――



「回収完了」

84ほんとうのさよなら(8/8) ◆VnfocaQoW2:2010/07/15(木) 22:43:12
 





 
    ―――誰も、きみの涙を拭いてくれなくても。

    ―――涙が枯れたら、立ち上がるんだ。
 





 
          ↓

85ほんとうのさよなら(情報1/1) ◆VnfocaQoW2:2010/07/15(木) 22:44:09
 
(Cルート)

【現在位置:F−4 楡の木広場跡地】

【しおり(№28)】
【スタンス:??】
【所持品:なし】
【能力:凶化、紅涙(涙が炎の盾となる)炎無効、
    大幅に低下したが回復能力あり、肉体の重要部位の回復も可能】
【備考:首輪を装着中、全身に多大なダメージを受け瀕死の重傷
    歩行可能になるには最低90分の安静が必要
    戦闘可能までには5時間程度の安静が必要】

※しおりの【凶】としての獣相は、ネズミに酷似していることが判明しました


【現在位置:F−4 楡の木広場跡地 → ?】

【連絡員:エンジェルナイト】
【スタンス:①死者の魂の回収
      ②参加者には一切関わらない】
【所持品:聖剣、聖盾、防具一式】

※しおりと共にあった「何者かの気配」は、連絡員に捕獲されました

86名無しさん@初回限定:2010/07/15(木) 23:12:40
乙です

87 ◆VnfocaQoW2:2010/07/17(土) 19:03:18
以下10レス「点と線」を仮投下いたします。

次回は「ちぇいすと☆ちぇいす!〜往路〜」。
透子、知佳、紳一、カオスが登場予定です。



また、「戦慄のパンツバトル!〜紗霧〜」のタイトルですが、
本スレにこれを投下しようとしたところ、名前が長すぎます、と弾かれてしまいました。
ということで〜紗霧〜の部分を割愛し、冒頭に〜紗霧〜と挿入して対応しました。

お手数ですが、◆ZXoe83g/Kwさんの収録時には、
各話タイトルに、〜紗霧〜、〜P−3〜、〜ランス〜、〜智機〜を
それぞれ付けていただいた上で、
冒頭の〜(人名)〜を削除していただけますよう、お願い申し上げます。

88点と線(1/9) ◆VnfocaQoW2:2010/07/17(土) 19:05:56

(Cルート・2日目 19:10 E−6地点 重点鎮火ポイント)

================================================================================
N−29:D−04に熱暴走の兆しが観測された。
N−29:当該機はパワーショベルとの融合を解除し、スリープモード15分とせよ
N−29:この15分間の穴埋めは、伐採タスクにあたっているN型から
N−29:負荷の少ないものを5機見繕って充てさせたまえ
================================================================================

一通りの現場指示を終え、リーダー(N−29)は、進捗状況を再走査する。
オペレーションの開始より30分強。
鎮火の最前線では、アクション1が急ピッチで進められている。

そこに、本拠地の代行(N−22)から、IMが飛んで来た。
それは、全てのレプリカ智機に対する一斉発信のIMであった。

================================================================================
N−22:連絡員殿が島内で、独自の情報収集活動を開始された
N−22:特別の便宜を図る必要はないが、失礼の無い対応を心がけてくれ給え
N−22:なお、連絡員殿の外見は天使で、金髪碧眼。その翼は純白の羽毛だ
N−22:くれぐれもS−38、S−40と混同せぬように
================================================================================

リーダーは、反射的に拠点である北西の山岳部の方角を見遣る。
仮設司令部で現場オペレーションに当たっているほか三機も同じく
山岳部のその上空を見上げた。

未だ見ぬ、天使の姿を思い描きながら。

89点と線(2/9) ◆VnfocaQoW2:2010/07/17(土) 19:10:09
 

   =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=   


(Cルート・2日目 19:20 D−3地点 本拠地・カタパルト施設)

北西の岩山、その厳しい斜面に設置されたカタパルト投擲施設で、
代行は梱包した資材を点検していた。
重点鎮火ポイントへの、追加支援物資である。
あとは、カタパルトにて投じるのみ。
そこに来て、代行は作業の手を止めた。

分機解放スイッチ―――

連絡員・エンジェルナイトから預かったそれを、
代行は現場にいるリーダーへ託すか否か、思案しているのである。

オペレータ(N−27)からの報告によれば、オリジナル智機は【自己保存】の
欲求により、しおらしくもスイッチの奪取を諦めたように見受けられる。
が、問題は、ケイブリスの存在。
智機本機が実力行使を厭わぬ判断を下せば、おそらくは共闘関係を結んでいる
かの魔獣が、その暴を露にし、自分たちに襲い掛かることは明白だ。
となれば、自分とオペレータ程度ではスイッチを守りきれぬ。

「オリジナル殿が無思慮に奪いに来る可能性と、
 リーダーが何らかの過失でスイッチを失う可能性。
 果たして、どちらが高いのやら」

暫く後、代行は、論理演算回路が導き出した解に従った。

90点と線(3/9) ◆VnfocaQoW2:2010/07/17(土) 19:10:45


   =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=   


(Cルート・2日目 19:30 D−3地点 本拠地付近)

ケイブリスは憤慨した。
無いのである。
本拠地内に、用意されていなかったのである。
彼が利用できるサイズの、排泄施設が。

ケイブリスの参入は唐突であった。
椎名智機の設計/建築した本拠地は、人間サイズ用のものであった。
そのギャップをどうにか埋めたのが、御陵透子の【世界の読み替え】なのだが、
その時の透子には、彼の排泄事情までは思い至らなかったらしく、
トイレに対して、その効力は発揮されなかったのである。

「仮にも俺様は魔人様でよ。
 そこらにいるリスとは違って文化的で衛生的な生活?
 ってヤツを何千年としてきたわけで。
 こーやって大自然の元、夜空に向かって立ちションするなんてーのは
 わりと屈辱なキブンだぜ」

彼の股間の八本の男根触手が唸りを上げて小便を排出している。
その一本一本から、蛇口全開のホースの如き水圧で放たれている。
禿山の火成岩に放たれたそれは、いきおい飛沫となり彼の足元におつりを返す。
ケイブリスは、そ知らぬ顔で浴びている。
この巨獣、文化的で衛生的な生活を自称している割に、
体毛が尿塗れになることはさして気にしていない模様である。

91点と線(4/9) ◆VnfocaQoW2:2010/07/17(土) 19:11:16


   =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=   


(Cルート・2日目 19:35 D−3地点 本拠地・茶室)

偶然居合わせた透子の協力によって、ザドゥたちは峠を越したらしい。
それ自体は吉報であった。しかし。

「最低、十二時間か」

主不在の茶室にて椎名智機は、悩ましげに眉根を歪めている。
当初の予定、ザドゥ&芹沢vs紗霧チームの青写真が、
明らかに現実味を失ってしまったが為に。
十二時間。
それはザドゥと芹沢が意識を取り戻すに必要な時間であり、
火傷や外傷が癒えるに必要な時間では無いのである。
しかし、その盤面をひっくり返す悪魔の一手が、無いではない。

「素敵医師が遺した薬であれば……」

かつてかの狂人は、彼謹製の薬品群にて瀕死の遺作を見事に復活させている。
ザドゥや芹沢にそれを投与すれば、彼らは再び戦う力を取り戻すであろう。

であろうが、その賭けはリスクが高すぎる。
智機は知らぬ。
遺作に対し、何種類の薬品を投与したのか。
どの薬品を、どれだけの量、投与したのか。
効能と副作用を分析するには知識も設備も時間も不足している。

92点と線(5/9) ◆VnfocaQoW2:2010/07/17(土) 19:11:43

故に智機は、賭けには出ない。現状では。
だが、例えば。
目覚めたザドゥと芹沢に戦闘能力が失われていたならば、
詳細不明な劇薬を彼らに投じることを厭わぬであろう。

「さて―――現状、このタスクにて出来ることは終わりだな。
 十二時間後の状態を把握してから、再検討しよう」

智機は行動キューの最上位にあったザドゥ対策を終了させ、
二位から一位へと格上げされたタスクの準備行動を開始する。

「ふむふむ。そろそろ冷却水の換え時かな?」

ここ一時間余りの内部的負荷は、それまでの二十四時間に匹敵するものであった。
情動発生器の振幅と論理演算回路の使用頻度は凄まじく、
後頭部の排気口より排熱された水蒸気量は、既に冷却水の50%に達していた。
同様に、冷媒として使用しているフロンも劣化が激しい。
差し迫ったタスクを終えた今こそが、手入れ時なのである。

智機は重い腰を上げ、茶室を後にする。
メンテナンスルームを目指し、閑散とした廊下に出る。
そこで、ばったりと出くわした。

「「―――!?」」

ここに居るはずのない人物と。
決して、本拠地の所在を知られてはならぬ少年と。
西の森の小屋にいるはずのプレイヤーと。

93点と線(6/9) ◆VnfocaQoW2:2010/07/17(土) 19:12:32

その少年は、なぜか自身の喉を手刀にて小刻みに震わせ、
意味の分からぬ低い唸り声を、智機に浴びかけた。

「は〜うでぃ〜!!」

管理番号38番。片翼の天使。かつての人類捕食者。
広場まひる、である。


   =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=   


智機の立場に立ち、「いるはずのない」と記したが。
まひるは突然、本拠地に現れたわけではない。
点を繋いで、線として。
この地点を目指して、来たのである。


点の1――――― 19:10の東の森、南西部。

まひるは観察していたのである。
連絡員飛来のIMを受けた現場オペレーティングの四機が、
一斉に北西の空を見上げたことを。

『……ほう、意味深な行動じゃの』
「何かあると思うんですけど」
『行ってみましょう。
 どのみち、東の森の周辺を一回りする予定です。
 北回り、ということにしましょう』

.

94戦慄のパンツバトル!〜紗霧〜(9/11) ◆VnfocaQoW2:2010/07/17(土) 19:15:21

点の2――――― 19:20の北西の岩山、程近く。

カタパルトから投擲された物資。
耕作地帯を北に抜けたまひるの目に、
それが捉えられたのである。

『どちらへ飛んで行ったかの?』
「んーと…… たぶん、さっきの場所。
 椎名ロボがわっせわっせと火消ししてたトコ」
『とすれば、支援物資か、或いは増援か……』
『どちらにせよ、発射元には、何かがあります』
「行っちます?」
『……慎重にお願いします』



点の3――――― 19:30の北西の岩山、山麓。

排尿のために屋外へと出たケイブリス。
投擲物資の出所を探るべく山中へ入っていたまひるは、
偶然にもその巨体を目撃したのである。

「あの〜…… 見つけちゃったんですが、扉。岩山に直接、扉」
『そこからケイブリスが出てきたんですね?』
「漏れる〜漏れる〜言いながら、どすんどすんと」
『見張りはいませんか?』
「まるっきり」
『ならばまひる殿、こう言うべきじゃ!〜こちらスネーク、状況を開始する〜とな!』

95点と線(8/9) ◆VnfocaQoW2:2010/07/17(土) 19:15:56


   =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=   


―――時を戻す。

「は〜うでぃ〜!!」

広場まひるの咄嗟の威嚇(?)に対して
椎名智機が取った行動は、逃走であった。
その赤い目、白い肌と相まって、実に脱兎あった。
余りに見事な逃走ぶりに、まひるは唖然とし、
暫く佇んでしまうほどであった。

智機はスタンナックルをデフォルトで装備している。
彼女でも扱える銃火器も腰に提げている。
まひるが「はうでぃー」している隙に、
彼の命を素早く奪うことも可能であった筈だ。
実際、その可能性は高いのだと、彼女の論理演算回路は解を出していた。
にもかかわらず、智機はそれをしなかった。

出来ぬのである。
この島に数多存在する智機たちの中で、この智機だけは、
あらゆる直接戦闘の実行がほぼ不可能なのである。

【自己保存】―――

その原則が、最優先事項が。
オリジナル智機の行動を大きく規制しているが故に。

96点と線(9/9) ◆VnfocaQoW2:2010/07/17(土) 19:17:42

状況から推測されるあらゆる可能性を割り出せば、
まひるがその特異な運動能力を恃みに反撃してくる可能性や、
前方に活路を見出し向かってくる可能性も、
リストに加わることになる。

それらの確率はありえないほど低い。
しかし、ゼロではない。
ゼロで無く、かつ、他の選択肢があるのならば。
椎名智機は、戦えぬ。

智機は選択する。
1ポイントでも生存確率の高い選択肢を。
1ポイントでも死亡確率の低い選択肢を。
自動的に。否応なしに。

逃げる智機の音感センサーは、捉えていた。
後方のまひるが自分に背を向けたことを。
玄関より屋外への逃走を図っていることを。
それでも智機は、振り返ることも足を止めることもしない。

手近な個室に飛び込み、鍵をかける。
室内の迎撃装置のスイッチをONにする。

そうして、自らの安全を確保した上で。
ようやく、まひるの進入に対する手を打った。
屋外にいる同盟者へ向けて。

「ケイブリス、広場まひるに拠点を発見された!
 いいか、必ず仕留めろ。生かして逃すな!」

97点と線(情報 1/1) ◆VnfocaQoW2:2010/07/17(土) 19:18:07

(Cルート)

【現在位置:D−3地点 北西の岩山裾野・本拠地周辺】

【広場まひる(元№38)】
【スタンス:非戦抵抗、逃走
      ①小屋に帰還する】
【所持品:せんべい袋、救急セット、竹篭、スコップ、簡易通信機】

【主催者:ケイブリス(刺客04)】
【スタンス:反逆者の始末・ランス優先、智機と同盟
      ①まひる追跡及び殺害】
【所持品:なし】
【能力:魔法(威力弱)、触手など】
【備考:左右真中の腕骨折(補強具装着済み)、鎧】



【現在位置:D−3地点 本拠地】

【主催者:椎名智機】
【所持品:素敵医師から回収した薬物。その他?】
【スタンス:願いの成就優先。
      ①本拠地が発見されたことへの対応
      ②しおりの確保
      ③ザドゥ達と他参加者への対処(分機P−03に注目)
      ④連絡員と交渉し、端末解除スイッチ+αを入手する許可を得る】

※代行N−22が端末解除スイッチを追加物資に混入したかは不明

98 ◆VnfocaQoW2:2010/07/17(土) 19:21:16
本日の本スレ投下は〜紗霧〜までとしたく思います。
支援してくださった方、ありがとうございました。

99 ◆VnfocaQoW2:2010/07/17(土) 19:24:42
と、書いた矢先に、さるさんを食らいました。
お手数ですがどなたか、このスレの>>40-42を、代理投下していただけませんでしょうか。

100 ◆VnfocaQoW2:2010/07/17(土) 19:39:33
ID:1tMnCnjr0 さん、ご協力ありがとうございました。

101 ◆VnfocaQoW2:2010/07/18(日) 00:36:25
以下16レス「ちぇいすと☆ちぇいす!〜往路〜」を仮投下いたします。

次回は「Operation:"Hyenas'Dinner"」。
小屋組全員、レプリカP−3、ケイブリスが登場予定です。

これ以降の投下ペースは、落ち着くと思います。

102ちぇいすと☆ちぇいす!〜往路〜(1/15) ◆VnfocaQoW2:2010/07/18(日) 00:37:33
 
(Cルート・2日目 21:00 F−4地点 楡の木広場跡地)




地下シェルターにザドゥの哄笑がこだまして。
地下シェルターにザドゥの哄笑が途切れ。
地下シェルターにザドゥの絶叫が響き渡った。




「ははははは…… はうっ!?
 ……っぎゃああああああ!!」




.

103ちぇいすと☆ちぇいす!〜往路〜(2/15) ◆VnfocaQoW2:2010/07/18(日) 00:38:16
 
「……?」

恐怖に身を竦めていた透子の目線の先で、ザドゥの体が崩折れる。
同時に響くは紳一の絶叫。
しかしそれは微弱な思念波であり、透子の耳には届かない。

《痛ぇあああああ!!!》

ザドゥは全身、至るところに重い火傷を負っていた。
深い傷もあった。肺も痛んでいた。
憑依と伴に肉体感覚をも蘇らせた勝沼紳一にとって、
この感覚は鮮烈かつ痛烈。
軟弱な彼に耐えられる苦痛の域を超えていた。

《こ、こんな体では陵辱どころではない!》

またしても、またしてもと唸りを上げる紳一に、反応する思念波があった。
薄暗い地下室に在ってなお闇色に輝く、魔剣カオスである。

《なんじゃなんじゃ、うるさい悪霊じゃの》

自分の足元から洩れてくる不機嫌なしわがれ声に、透子は思わず呟いた。

「……見えるの?」
《見えるどころか、儂、斬れますよ? こんな木っ端霊体なんか、すぱっと》

透子の瞳が光を帯びた。紳一の瞳が大きく見開かれた。
カオスが放ったのはただ一言。
それだけで狩る者と狩られる物の立場が逆転していた。

104ちぇいすと☆ちぇいす!〜往路〜(3/15) ◆VnfocaQoW2:2010/07/18(日) 00:39:02
 
《俺は何度……っ》

何度逃げれば気が済むのか。
滑稽ではないか。
自己憐憫を飲み込んで、紳一は逃走を開始する。
一心不乱に階段へと走る。

階段の中腹まで必死で走った紳一であったが、
背後に追いすがる気配が感じられぬ為、ひとたび振り返った。
透子は刀を手にしたまま、しゃがみ込んでいた。
しゃがみ込んでベッドの下に手を伸ばしていた。

そのやる気の感じられぬ様子を見、紳一は安堵する。
走行ペースを落とし、重々しいシェルターの扉を透過する。
その向こうに―――


―――少女がいた。


扉の向こうの部屋でしゃがみこんでいるはずの少女が。
胸にひび割れた銀のロケットを掛けた、亜麻色の髪の少女が。
カオスを中段に構えて、紳一を切り伏せるべく、待っていた。

《ありえん!》

透子が紳一の憑依を知らぬのと同じく、紳一もまた、透子と瞬間移動を知らぬ。
紳一の生存中、透子が紳一に警告を発する機会が無かった故に。
出会い頭の衝撃に立ち尽くしている紳一に向けて、透子がカオスを振り下ろす。

105ちぇいすと☆ちぇいす!〜往路〜(4/15) ◆VnfocaQoW2:2010/07/18(日) 00:40:00
 
「やー」

脱力感あふれる掛け声と共にへろへろと振り下ろされた刀身は、
身じろぎ一つせぬ紳一を切り裂くことなく、その脇を通過した。
非力な透子には、剣を振りぬくことなど出来なかった。
それどころか、勢いのまま前のめりに転倒してしまう始末である。

しかし、紳一は戦慄した。
剣先ではない。
その刀身が纏う瘴気に少しだけ触れた右の肘から、感覚が失われたから。
それは、エネルギーを喰われる感覚であった。
それは、生きたまま氷付けにされる感覚であった。

紳一は直感し、戦慄する。

《あれをまともに食らえば。俺は、死ぬ。
 自分の魂から意志が切り裂かれ、俺は俺を失う。
 あの衣装小屋で会ったビッチメイドのように!
 薄毛デブのように!
 うわごとを繰り返すだけの存在に堕ちてしまう!》

ここに、紳一と透子の逃走/追跡劇が、幕を開けた。


   =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=   
.

106ちぇいすと☆ちぇいす!〜往路〜(5/15) ◆VnfocaQoW2:2010/07/18(日) 00:40:50

ひと昔前のドジっ子メイドの如く、尻を高く掲げ、
額を地面に擦りつける格好で、透子は倒れていた。
その様相のあまりのあまりさに、相棒・カオスが嘆息する。
 
《しかし非力にも程があるのぅ、嬢ちゃんや》

透子の胸には紳一に対する怒りがある。
忘れて久しい感情が渦巻いている。
新鮮な感覚であった。
透子はその感情の赴くままに、カオスの無礼に八つ当たる。

「うるさい」

かといって透子の胸に、焦りは無かった。
紳一を討ち漏らしたことについて、深刻には受け止めていなかった。
彼女が唯一、紳一を捉える手段は記録/記憶の検索であり、
その手法だとタイムラグが発生するというのに。
その分だけ、紳一は遠ざかるというのに。
状況は追跡者にとって甚だ不利だというのに。

透子は、それらを不利だとは思っていなかった。
透子は、処する手段を見出していた。

(移動したい……)

知覚する必要などない。
ただ、念じればよい。

(紳一の【すぐ前】に)

107ちぇいすと☆ちぇいす!〜往路〜(6/15) ◆VnfocaQoW2:2010/07/18(日) 00:41:52

それで、移動は完了だ。
透子にとって瞬間移動は当たり前で。
それゆえに能力に疑いは無く。
たとえ、その目で紳一の姿を確認せずとも。

「えい」

ただ、前方にカオスを振り下ろせばよいのである。

《な……?》

またしても、突如として眼前に現れた透子に、紳一は肝を冷やす。
その振るった剣が空振ったことに、紳一は胸を撫で下ろす。

接近の知覚不可能。
移動の方法把握不可能。
されど、気付けば常にいる。
武器を構えて傍にいる。

逃亡者として、これほどやっかいな追跡者は他におるまい。

《なあ、トーコちん。
 お前さん見当違いの方向に、儂を振ってますよ?》
「……ん?」

カオスの状況報告に、透子は思考を次へと進める。

(そうか)
(【すぐ前】じゃダメ)

108ちぇいすと☆ちぇいす!〜往路〜(7/15) ◆VnfocaQoW2:2010/07/18(日) 00:44:10

前、では設定が曖昧に過ぎる。
見えない相手を切り伏せる為には、その方向を限定せねばならぬ。
透子はその方法を暫し考え、そして決定した。
透子は、向きを南に変え、願った。

(……紳一のすぐ【北】に行きたい)

移動した。振り下ろした。空を切った。
その刃は紳一が通過した一秒後に、紳一の残像のみを切り裂いた。

《嬢ちゃんの力で振りかぶっちゃダメじゃろ。
 時間が掛かるし、軌跡もぶれるからの。
 もっとこう、腰で構えて、体ごとぶつかる感じで》


   =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=   

 
その後も、紳一は逃げ、透子は追い。
二人ともに決定的な状況を作れぬまま、十分余りが経過した。
しかし、天秤は徐々に透子に傾いている。

トライ&エラーを十数回。カオスの戦闘指導も十数回。
その経験値が、着実に、実を結びつつあった。

逃亡者紳一も、そのことは実感している。
少女がテレポートしていることも、紳一は把握しつつある。

(これはヤバい…… この少女、コツを掴んできている!)

109ちぇいすと☆ちぇいす!〜往路〜(8/15) ◆VnfocaQoW2:2010/07/18(日) 00:46:05

故に紳一は、色々と回避方法を試していた。
ジグザグに走ってもみた。
後ろ向きに走ってもみた。
緩急をつけて走っても見た。
試せる走行方法は、すべて試した。

それでも、合わせてくる。
無表情な少女は無表情のまま、ブレを修正してくる。

「……」

焦る紳一の前に、またしても透子が現れた。
もう、今の透子は掛け声などかけない。
予備動作など見せない。
攻撃態勢のまま移動してくる。

《これはっ!!》

ショートスピアの如く低い姿勢で突き出されたカオスが、
ついに紳一の脇腹に食らいついた。
紳一は悶絶する。余りの痛みと余りの冷たさに。

《っああああひいいいい!!!》

無様に這って逃げる紳一に、追手の魔の手は、容赦ない。
移動。一突き。紳一の叫び。カオスの助言。透子の理解。

《痛い痛いイタイイタイ!!》
《トーコちんよ、こいつ、這ってますよ?》
「ん」

110ちぇいすと☆ちぇいす!〜往路〜(9/15) ◆VnfocaQoW2:2010/07/18(日) 00:46:44

泣き叫んでも聞く耳持たぬ、追手の魔の手は、容赦ない。
移動。一突き。紳一の叫び。カオスの助言。透子の理解。

《イヤだイヤだイヤだイヤだ!》
《もーちょい下、もーちょい下!》
「ん」

もはや転がるのみの紳一に、追手の魔の手は、容赦ない。
移動。一突き。紳一の叫び。カオスの助言。透子の理解。

《ヤメてヤメてヤメてヤメて!》
《ぬぬぬ、転がって躱わすとは!》
「ん」

紳一に状況を分析する余裕などなかった。
周囲を見回す状況などなかった。
ただ転がり、のた打ち回り、痛みと恐怖を発散するほかなかった。

《神さまあっっ!!》
「ぁう!」
《トーコちん!?》

その弱者ぶりが透子とカオスの油断を産んだのか。
救いを求める魂の叫びが何者かに届いたのか。


《………?》

.

111ちぇいすと☆ちぇいす!〜往路〜(10/15) ◆VnfocaQoW2:2010/07/18(日) 00:47:42

紳一が我に返ったとき、追跡者は仰向けに倒れていた。
気絶していた。
その額から、血液を流していた。

《何が…… 起きたのだ?》

紳一は周囲を見渡し、そして気付く。
今、自分は、岩の中に居る。
のたうち回っているうちに、巧まずそうなったのであろう。
その岩に、新鮮な血痕が付着しており、
追跡者は血痕の手前で目を回している。

《ははっ…… 前方不注意、事故の元か!》

紳一は理解した。
彼が岩の中に転がり込んだことを知らぬまま、
例の如く突撃姿勢で瞬間移動した透子が、
その勢いのまま岩に衝突し、自爆したのだと。

《これ、トーコちん、起きよ、起きるんじゃ!》

カオスの呼びかけに、ショック状態の透子は答えない。
その様子に、脇腹の痛みを忘れて、紳一がほくそ笑む。

紳一が憑依できる条件はただ一つ。
憑依対象が意識を失っていること。
彼の目線の先には目を回した透子。
条件は満たされていた。

112ちぇいすと☆ちぇいす!〜往路〜(11/15) ◆VnfocaQoW2:2010/07/18(日) 00:49:50

《なっ、ヤメい悪霊!》
《ははっ、これがいい。これが一番いい!
 この少女に憑依すれば!
 この少女の脅威に晒されることなく!
 この少女の処女膜を守ってやれるのだから!》

紳一は哄笑を上げながら透子へと潜り込む。悠々と。


   =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=   

 
全ての女性の敵、バージンキラーの悪霊を退治すべく、
東の森の南部・浅いところを追跡していた仁村知佳であったが、
充満する煙に燻され、視界が不確かになった折に、
追跡対象の足取りを見失ってしまっていた。
その後、知佳は途方に暮れつつも追跡を諦めず、
周辺を索敵しながら歩いていた所に―――

「あああぁぁぁぁっっ!?」

絶叫とも苦悶ともつかぬ声が響き渡った。
その声は、知佳にとって聞き覚えのある声であった。

「透子さん!?」

声は、幸いにも南の程近くから聞こえてきた。
土気色に濁った半透明のフィンを振動させ、
知佳は全速力で、悲鳴の元へと飛んでゆく。

113ちぇいすと☆ちぇいす!〜往路〜(12/15) ◆VnfocaQoW2:2010/07/18(日) 00:52:37

「透子さん!?」

海岸沿いの磯、そのひときわ大きな岩の前で倒れ伏す少女を確認し、
知佳は再びその名を呼んだ。
少女からの返答はない。
代わりに少女の内から染み出るように現れた亡霊が、
混乱と絶望の一人台詞を吐き捨てた。

《憑依できない! いや、違う! こいつはすでに憑依されている!?》

知佳は誤解した。
あながち誤解でもないのだが、事実と異なるという意味では誤解した。
紳一が透子を倒したのだと。
紳一が透子を犯そうとしているのだと。

それは参加者、主催者の枠を超え、
一人の女として、許しがたいことであった。

「許さない!!」

紳一は知佳の姿を認めるや、近くの岩に潜り込んだ。
この少女がカオスを手に取り、切りかかってくるを警戒した故に。
紳一は体の一部でも岩からはみ出さぬ様、慎重に潜み。
見覚えの有る中古少女と脅威の魔剣との対面に、耳を傾けた。

《また新しい嬢ちゃんの登場か!
 トーコちんの仲間であれば、ほれ、儂を拾え。
 拾って小煩い煩悩幽霊をバッサリやっとくれ》
「あなたが、喋っているのね?」

114ちぇいすと☆ちぇいす!〜往路〜(13/15) ◆VnfocaQoW2:2010/07/18(日) 00:55:33

知佳は、透子のほど近くに落ちている剣へと向き直る。
禍々しいが、神々しくも有る、暗紫色の剣である。
彼女の知る霊刀・十六夜とは比べ物にならぬ妖力を漂わせている。
知佳は、誘われるままにカオスに手を伸ばす。

《まだお子様じゃな……》

カオスは知佳の薄い胸を観察し、溜息をついた。
最初の所持者・アインに輪をかけて貧相な体つき。
これでは、心のちんちんもおっきしない。

などと、考えていたところで、カオスは地面に叩きつけられた。
知佳は触れることで、心を読む。
その力は対象が人ならざるものであっても発揮されるようである。

「やだ…… この剣もエッチなことを…… 悪霊と同類なの?」
《おいおい嬢ちゃんや。レイピストとは一緒にしてくれるなよ?
 儂はあくまでおねーさん方との合意の下、
 共に快楽を追求しようという、いわばロマンス紳士でなぁ……》

知佳とカオスの間の抜けたやり取りを聞き、
紳一はこの隙に逃げ出そうかと、検討する。
暫く考え、その案を却下する。
自分は透子なる憑依されしテレポテーターに目を付けられている。
今は気絶しているが、やがて目覚めもするであろう。
そうなれば、いつであろうと、どこにいようとお構いなしで、
自分をアンカーとして瞬間移動してくる。
その時、遮蔽物が無ければ、終わりである。
迂闊な移動はリスクが高い。

115ちぇいすと☆ちぇいす!〜往路〜(14/15) ◆VnfocaQoW2:2010/07/18(日) 00:57:32

それならばと、紳一は結論を結ぶ。
自嘲気味に、非積極案を採択する。

(ははっ。
 どうせ生存中も心臓病で屋敷に籠りきりだったんだ。
 透子が諦めるまで、或いは透子が殺されるまで、ここに籠り続けてやろう。
 なあに、苦にはならんさ。
 何しろ俺は腹も減らないし眠くもならないのだから!)

亡霊ならではの有利が、確かにあった。
紳一の読みは正鵠を射ており、透子にこの岩をどうこうする力は無い。
ここから一歩も動かぬ限り紳一の安全は確保されている。

但し、それは。
相手が透子であった場合、のみである。

「はあっっ!!」

知佳の気合と共に迸るは超力一念。
発せられた念動力が大気を振動させ、紳一の潜む岩を微塵に砕く。
同じく念動により弓矢の勢いで投じられた魔剣カオスが、
紳一の胸を食い破り、穿ち貫き、抉り取る。
岩がそうなり、自分がそうされたことに、紳一は気付かなかった。

紳一が身の振り方を検討している間に、
知佳は状況とカオスの能力を理解していた。
それで、即座に行動した。
透子の意思を受け継いで。
或いは、当初の目的に従って。

116ちぇいすと☆ちぇいす!〜往路〜(15/15) ◆VnfocaQoW2:2010/07/18(日) 00:58:27

参加者の敵でもなく、主催者の敵でもなく。
女の敵を、一人の女として。
討つべくして討ったのである。




―――ぱら、ぱら、と。

砕けた岩の破片が地面に降り注ぐ頃、すでに紳一は終っていた。
即死である。
油断と慢心を後悔する間もなく、舞台から退場したのである。


《処女》《処女》《中古》《処女》《ビッチ》
《処女》《中古》《ビッチ》《処女》《処女》


思考し行動する【幽霊】としての第二の人生を終え、今や
うわごとを繰り返す【正しい残留思念】に成り果てた紳一。

神に認められたイレギュラーな存在は、
その特権を生かすことなく、何事も為さぬまま、散った。

.

117ちぇいすと☆ちぇいす!〜往路〜(情報 1/1) ◆VnfocaQoW2:2010/07/18(日) 00:58:54

(Cルート)

【現在位置:I−7 海岸線・岩場】

【仁村知佳(№40)】
【スタンス:①透子と交流
      ②読心による情報収集
      ③手帳の内容をいくつか写しながら、独自に推理を進める
      ④恭也たちと合流】
【所持品:???、まりなの手帳、筆記用具、魔剣カオス(←透子)】
【能力:超能力、飛行、光合成、読心】
【状態:疲労(小)、精神的疲労(小)】
【備考:手帳の内容はまだ半分程度しか確認していません】

【監察官:御陵透子】
【スタンス:自殺】
【所持品:契約のロケット(破損)】
【能力:記録/記憶を読む、瞬間移動(ロケット必須)】
【備考:疲労(小)、気絶中】


【№20 勝沼紳一(亡霊):精神喪失】

118訂正 ◆VnfocaQoW2:2010/07/18(日) 01:03:01

>>102

×(Cルート・2日目 21:00 F−4地点 楡の木広場跡地)
○(Cルート・2日目 21:30 J−5地点 地下シェルター(隠し部屋1))

119名無しさん@初回限定:2010/07/19(月) 19:17:59
紳一死んだか・・・合掌
いろいろ試して全部失敗するあたりが暗黒SNOWを思い出させたな
でもそんなお前も嫌いじゃなかったぜ?

120284 ◆ZXoe83g/Kw:2010/07/19(月) 21:59:49
連日の投下お疲れ様です。
まとめのUPと作品投下遅れてすみません。
現在、新作の収録とこれまでの修正等を行っております。
土曜日本投下された『戦慄のパンツバトル! 〜紗霧〜』の時間表記が
”2日目 16:50 ”となっておりますが、正確には18:50で宜しいのでしょうか?
明日、まとめをUPする予定ですがご返事がない場合、修正せずに一旦UPします。
ご返事があった場合、そちらに合わせて修正したのを早めにUPいたします。
では明日。

121284 ◆ZXoe83g/Kw:2010/07/20(火) 22:30:17
285話までのまとめをUPしました。

ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1040302.zip.html

パスはnegibatoです。

地図をこれまでのと仕様を変えてみました。
特に問題がなければ次回以降もこれで更新していきたいと思います。
時間表記等の問題が解決次第、まとめの更新を毎週月曜日に戻したいと思ってます。

122284 ◆ZXoe83g/Kw:2010/07/26(月) 18:53:59
今日の更新は無理そうなので前回のと同じのを。
パスは>>121と同じです。

ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1053868.zip.html

地図などの仕様については収録される際に要望がありましたらそれに対応致します。
今度は今週の水曜日に。

123284 ◆ZXoe83g/Kw:2010/07/28(水) 22:57:20
今深夜0時以降に作品で前検討スレを埋め立てます。

124284 ◆ZXoe83g/Kw:2010/07/31(土) 01:08:30
今度の更新は来週の火曜日の予定です。
あと管理人さん更新ありがとうございました。

125 ◆VnfocaQoW2:2010/08/05(木) 00:11:22

Aルートが動き出しましたか。
しおりの一人称で語られる幼さと健気さが胸に痛い……

> 指先がちょっとだけ温かい何かにふれたから。
> ぬくもりはたった一回の揺れのあと、ふっと消えてしまった。
> もうあのぬくもりを思い出せない。

この流れが切なくて。
Cルートでは?????が退場してしまった分、余計に。

同時進行の黒幕側の意味深な行動や深まる謎等も気になります。
今後の展開、楽しみです。

126 ◆VnfocaQoW2:2010/08/05(木) 00:12:29
◆ZXoe83g/Kwさん

コンテンツの追加・更新、ありがとうございます。
ピリオド毎の地図状況や死亡情報を眺めますと、
葱ロワの歩みが大変感慨深く思い出され、
郷愁めいた感情が湧き上がりました。

そこで、過去のボツネタを振り返りましたらば。
ほぼ完成していたものの、投下のタイミングを逸していた一篇がありましたので、
少々手を加え、アナザーとしてここに投下させて頂きます。

以下10レス、「あははとがはは」。
ランス、アリス、ユリーシャ、秋穂、式神たちが登場。
№104の続きで、№119bとなります。
これが本投下されていたら名キャラ・式神星川が生まれていなかったので、
時期を逸してよかったと思います。


また、下記引用の件につきましては、ご指摘通りのご対応でお願い致します。

> 土曜日本投下された『戦慄のパンツバトル! 〜紗霧〜』の時間表記が
> ”2日目 16:50 ”となっておりますが、正確には18:50で宜しいのでしょうか?

ご返答遅くなりまして申し訳ございませんでした。

127あははとがはは(1/8) ◆VnfocaQoW2:2010/08/05(木) 00:23:48

(アナザー・1日目 17:00 G−5地点 楡の木広場)


「なずなはまだですか?」

古木の根元付近、狭く暗いウロの中から、性別定かならぬ声が響く。
その正面で恭しく頭を垂れていた一体の小さな式神が、首を左右に振る。

「そうですか……」

ユニセックスな声の主は、式神である。
意識を失う寸前の朽木双葉が、ウロの中に生えていた植物に術をかけ、
自らの守護と回復を言い渡したのが五時間ほど前。
彼もしくは彼女は、その使命を忠実に果たしている。

「出血は止まり、怪我の手当ては完了しましたが、発熱が収まらないのです。
 早く青黴が手に入らないと、このままお姉さまは……」

その彼(彼女)の下に、見張りとして配置していたすずしろが駆け込んできた。
小鳥が囀るような音を発し、彼(彼女)の待ち望んでいた情報を伝達する。

「良かった…… なずなが間に合ったのですね」

だが、すずしろの報告はそれだけに留まらなかった。
ちゅ、ちゅ、ちゅ……
その囀りには、焦りと恐怖の成分が含まれている。

「……わかりました」

128あははとがはは(2/8) ◆VnfocaQoW2:2010/08/05(木) 00:24:57

彼(彼女)の決意が籠った応答と同時に、
ウロを隠すように覆っていた蔦が意志あるもののように開いた。

「ご安心ください。お姉さまには誰も近づけません」


   =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=   


なずなは真っ直ぐに、主の眠る楡の巨木へと戻ってゆく。
洞窟の中で削り取った青黴を両手いっぱいに抱えて。
背後からのーてんきに追跡している2人を引き連れて。
それは、小型式神の能力を鑑みれば致し方無きことである。
言われたことを、言われたままに行う。
それが彼ら七草―――簡易式神の機能の限界故に。

あははは! がははは!

場違いも甚だしい笑い声を中央広場に響かせるこの追跡者たちは、
№02・ランスと№34・アリスメンディ。
式神の使役者に会う為に、彼らはなずなを尾行している。
その使役者に会ってすることと言えば。
№09・グレンがランスに遺したEDの呪いを解いてもらうことである。

「しかし何だ。もう少し静かにできんのか、お前は」
「え〜〜、赤丸急上昇中のキュートな笑顔だって、
 ご近所に波紋を投げかけてるのに!!」
「投げかけてどうする!」
「も〜ランスてばおちんちん突っ込めなくなったからって、
 ゲンコで突っ込み入れなくてもいいじゃんか。ぷんすか!」

129あははとがはは(3/8) ◆VnfocaQoW2:2010/08/05(木) 00:26:08

自らの楽観と無用心を棚に挙げ、アリスを諌めるランス。
その目の前に、す、と。
音も無く何者かが姿を現した。

漆黒の陣笠に漆黒の鎧直垂の、ひょろりと背の高い武者であった。
目深く被った陣笠に隠れ、瞳は見えない。
髪は、大童とも尼髪とも取れる、性別不明な武者姿である。

「なずな、ご苦労でした。すずな、すずしろと協力して、
 その黴を摩り下ろして下さい」

武者は足元の小人に声をかけてから、ランスたちに向き直る。
その動きを待って、ランスが問うた。

「おい、そこの。お前が陰陽師か?」

しかし、武者はランスの問いに答えず、己の主張を伝える。

「お姉さまは、誰とも会いたくないと申しております。お引取り下さい」

その声でも性別はわからなかった。
喉が湿っている様な、鼻に掛かっている様な、粘度の高い声質であった。
常に俯き加減なことで喉が圧迫されているようでもあった。

「お姉さま? 女が居るのか?」
「お姉さまの願いを叶えることが―――
 今はお姉さまの眠りを守ることが、式たる私の役目でございますれば」
「式? ではお前もその小人さんの仲間なのか?」
「そうなりますか」


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