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【場】『 湖畔 ―自然公園― 』 その3

1『星見町案内板』:2021/08/28(土) 08:40:03
『星見駅』からバスで一時間、『H湖』の周囲に広がるレジャーゾーン。
海浜公園やサイクリングロード、ゴルフ場からバーベキューまで様々。
豊富な湿地帯や森林区域など、人の手の届かぬ自然を満喫出来る。

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                 ミ三ミz、
        ┌──┐         ミ三ミz、                   【鵺鳴川】
        │    │          ┌─┐ ミ三ミz、                 ││
        │    │    ┌──┘┌┘    ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
        └┐┌┘┌─┘    ┌┘                《          ││
  ┌───┘└┐│      ┌┘                   》     ☆  ││
  └──┐    └┘  ┌─┘┌┐    十         《           ││
        │        ┌┘┌─┘│                 》       ┌┘│
      ┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘     【H城】  .///《////    │┌┘
      └─┐      │┌┘│         △       【商店街】      |│
━━━━┓└┐    └┘┌┘               ////《///.┏━━┿┿━━┓
        ┗┓└┐┌──┘    ┏━━━━━━━【星見駅】┛    ││    ┗
          ┗━┿┿━━━━━┛           .: : : :.》.: : :.   ┌┘│
             [_  _]                   【歓楽街】    │┌┘
───────┘└─────┐            .: : : :.》.: :.:   ││
                      └───┐◇      .《.      ││
                【遠州灘】            └───┐  .》       ││      ┌
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★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
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127高島田 文緒『24kゴールデン』:2021/11/10(水) 12:12:02

「おああ……こりゃキッツい……めっちゃSAN値削られるわぁ……」

たっぷり袖を余らせたぶかぶかパーカーの少女が、
ベンチに座ってため息をついていた。

手元には飾り気のない男物の財布。
お札の代わりにたくさん詰め込まれていた名刺を抜いては湖に投げ捨てていた。
名刺はなぜか画数多めのお姉ちゃんの名前が書かれた、派手な柄のものばかりだった。

「いやも〜〜〜〜っ、紛らわしいことせんでくれ〜〜〜〜……」

128小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/11/11(木) 21:52:00
>>127

いつの間にか、背後に『黒い女』が立っていた。
『喪服』を着た女だ。
黒いキャペリンハットを被っており、顔の上に影が差している。

         スッ

やがて、音もなく隣に腰を下ろす。

129ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』+猫『マシュメロ』:2021/11/11(木) 21:59:19
>>127

「こらー!」


金髪の女児が横からいきなり怒鳴り込んできた。
髪にも服にも頬にもシールを張り付けまくっており、
傍らには灰色の猫を抱えている。


「湖にゴミを捨てるのでない!」


財布がどうとか、細かいことまでは見えていない。
だが名刺のポイ捨ては明白だった。
そういうと子供は、怒って猫を投げつけてきた。
猫に配慮してか、単に膂力が足りないのか、ポーンと放る程度だが。


            「ンナッ…」

130高島田 文緒『24kゴールデン』:2021/11/11(木) 23:04:44
>>128

「ンンッ!? なんだぁぁっ!?」

背後にきゅうりが置いてあるのを見つけた猫かってくらいにびっくりして飛び跳ねた。

パーソナルスペースが侵されているぞと内なる陰キャが囁いたのと、
『喪服』っていうのがホラー感あってぞわっとしたためだった。

(何だァ!? いんや、しかしよく見ると……足があるでな……)

ちょうど数日前に世にも奇妙な物語を見たせいか、デリケートになっていたか?
霊を見たみたいに驚いてしまって、なんだか逆に申し訳ない気持ちになってしまった。

「ッスゥ〜〜〜〜〜〜〜〜っ……。
 あぁいやあの、すいやせん、なんか……。
 過剰な驚き方しちゃったみたいで……ヘヘ……」


>>129

「何やァッ!?!?!?!」

猫やんけ! キャッチせな!

「待て待て待てコラガキィ!
 確かに湖にゴミ捨てんのは褒められんかもしれんけどなァ!
 だからって猫を投げんなや猫を! かわいそやろがい!」

掴んでやる! 両手を広げて掴んでやる!

131小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/11/11(木) 23:39:45
>>130

  「――……こんにちは」

隣に座る相手に向き直り、丁寧に頭を下げる。
いくらかの陰があれど、その表情は穏やかな微笑。
驚いた事を気にした様子は見られなかった。

>>129

『見知った相手』を見つけ、挨拶をしようとした時だった。
その直後に、灰色の猫が飛んでくる。
不意を突かれたように目を見開き、
猫が受け止められる様子を見守っていた。

  「『ナイ』さん……」

小さく呟くような声色で、少女に声を掛ける。

132ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』+猫『マシュメロ』:2021/11/11(木) 23:50:59
>>130

     わしっ

  「ニャーン」


驚いた直後だったが、大した球速ではなかったため猫をキャッチすることに問題はなかった。
ちょっと長毛気味の猫でもっふりしている。柔らかい。
投げられた直後だが、暴れることもなく大人しくしているようだ。胴が伸びている。


「大丈夫じゃ。知っておるか?
 猫は落ちてもちゃんと着地するらしいぞ」



>>131

「ん? おうおう。
 わしもこんにちわするぞ」


見知った顔を見つけ、2人の座るベンチに近づいていく。


「2人は知り合いかの?」

133高島田 文緒『24kゴールデン』:2021/11/12(金) 00:28:52
>>131

あんれェ〜〜〜〜? なんか特に気にならなかったみたいだぞ。
なんかあーしがひとりでキョドってるだけみたいになってて、かなり恥ずかしい。

とりあえず挨拶だけしとこか。古事記にも挨拶は大事って書いてあるしな。

「あっ……ど、ドーモ…………」

            ペコォ〜〜〜〜ッ

こちらも深々と挨拶をする。

こっちの表情は陰の者そのものだけど、身なりだけはギリ陽っぽいかもしれない。
髪はピンクだし、肌は陶器っぽい感じに塗ったくってるし、
目元は彼ピに殴られてパチ代むしられたその後みたいに腫れぼったい。
唇はプールの中で百年過ごしたみたいに真っ青通り越して真っ黒だし、
靴底はそのまま殺人に使えそうなくらい分厚い。
原宿とかSNSの病みアカとかででよく見る量産型地雷系って感じだ。


>>132

「いやいやいや、そんなドラゴンボールで生き返るみたいに言うてもなァ?
 かわいそうやろ……もっと大切にしたれやなぁ……」

ともあれちゃんとキャッチできてよかった。
掴まれても暴れないってことはたぶん飼い猫なんだろうし、
変な虫とかついてないだろうという希望的観測のもとでモフっとこ。
これも役得じゃい。

       モフモフモフモフモフモフモフモフ
        モフモフモフモフモフモフモフモフ
       モフモフモフモフモフモフモフモフ
        モフモフモフモフモフモフモフモフ
       モフモフモフモフモフモフモフモフ
        モフモフモフモフモフモフモフモフ

たっぷりモフって、ついでに吸った。
猫吸いは万病に効くって言うしな。
健康度を高めておく。


>>131-132

「知り合いィ? いや、知り合いではない……ッスね」

(つーか、このふたりは知り合いなんか?
 ついついガキ相手だとイキってしまいそうになるけど、
 ふたりが知り合いだったらなんか気まずいしちょっとヘコっとくかぁ)

少女は1対1対であればまぁ相槌打ったり軽く世間話したりくらいはできるが、
2体1になるとなにも喋れなくなる陰キャ特有のアレだった。

(つーかアレやな……スッた財布を見られてる可能性あるのがそもそも気まずいよな……。
 つつかれんようにポケット入れとこか……)

             ススッ……

男物の財布をそそくさとパーカーのポケットに忍ばせる。

134小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/11/12(金) 00:47:14
>>132-133

  「……いいえ」

ナイの問い掛けに、小さく首を横に振る。
彼女は、『湖にゴミを捨ててはいけない』と口にした。
それは間違いではないと思う。

  「ナイさん……」

それから、受け止められた猫に視線を移す。
生き物を投げるのは『良くない事』だ。
湖にゴミを捨てるのと同じように。

  「『猫を投げる』のは……止めていただけませんか?」

  「もし――ナイさんが誰かに投げられてしまったら……」

  「……痛い思いをするかもしれません」

少女に撫でられる猫を見ながら、諭すようにナイに語り掛ける。
その時、ポケットにしまわれた財布を目にした。
ただ、猫に気を取られていた事もあり、
『事情』には気付かない。

135ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』+猫『マシュメロ』:2021/11/12(金) 01:25:14
>>133

「ンニャン」


モフッていると、猫が前足をつっぱってきた。
高島田の顔だか体だかに肉球の跡がつく。


「ふーん。
 さっきのは何をしておったんじゃ?
 紙しゅるけんか? 湖に投げたら回収もできんが……やはり捨ててただけか?」


ベンチから湖までどのくらいの距離だろうか。多少距離があれば、
紙だし、うまく飛ばずに湖にINしていないものもあるかもしれない。
地面に落ちた名刺を探す。


>>134

「む……」


地面に目線を落とし、名刺を探す子供。
小石川の言葉にわずかに反応した様子から聞こえていないわけではないらしい。


「……まあ、たぶん、平気だったと思うが……
 うむ……ちょっとよくなかったかもしれんの。
 猫を投げるのは……」


しばらくして、そっぽを向いたまま小さくそう言った。
素直な反省の言葉も謝罪の言葉も出なかったが、
小石川の人徳か、さすがに2人に同じことで注意されたせいか、悪かったとは思ったようだ。
2人は知らないことだが、ナイには怒られた経験がほとんど無い。
何か思うところがあったのだろうか。

136高島田 文緒『24kゴールデン』:2021/11/12(金) 08:22:34
>>134-135

「せやせや、かわいそうなことはやめときやぁ、も〜〜〜〜!」

地の利を得たぞ!
毛とか肉球の跡とかにまみれながらプリプリ叱ってみた。
数的優位ってのは気持ちがいいなあガハハ。

人徳を使って優しく諭す『小石川』に比べて、少女の小物感たるや半端じゃなかった。



ベンチから湖へはなんかいい感じに距離がある。
5メートルくらいかな。適当に離れていて、適当に名刺も落ちている。

「あ、やめときやめとき! そんなん見たら目ぇバカになるで!」

猫に肉球を押し付けられながら、名刺を探そうとする『ナイ』を止めようとした。
名刺は知らんオッサンが通う夜のお店のお姉ちゃんの名刺だからな……。
配色もドギつければ、ギラギラしたお店の名前にギラギラした源氏名が書かれてるからね。
明らかに未成年者の入店禁止ってお店の名刺って感じだ。

そんなモンをいたいけな幼女に見せるワケにはいきませんて。
教育的配慮ってやつだ。


逆に言えば、そんなものが花のJK様の財布からポンポン出てくるってのもおかしいな?


「バッチいてやめときィ! 幼女先輩の指が穢れてまうやろ!」

137小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/11/12(金) 19:07:07
>>135-136

それ以上、何かを付け加える事はなかった。
彼女は幼い。
きっと、まだ知らない事も多いのだろう。
色々な事を、これから学んでいく事ができる。
この出来事が、少しでも気付きの機会に繋がったのなら、
それだけで十分だった。

  「……ナイさんの『お友達』ですか?」

抱かれている猫を眺めながら、
地面を見下ろすナイに問い掛ける。

  「――……」

同時に、そこに落ちている『名刺』が視界に入った。
生き物を投げる事は良くない。
自然公園に物を捨てるのも。

  「『ご不要』なら――」

       スッ

おもむろにベンチから立ち上がる。

  「あちらに屑入れがありますので……」

  「差し支えなければ……私が片付けておきます」

やんわりと告げ、ナイが拾い上げてしまう前に、
率先して名刺を拾い集める。
捨てていた少女が、それを持っていた理由までは聞かない。
人は、それぞれの事情を抱えている。
安易に踏み込めば、その心を傷付けてしまうかもしれない。
この場で詮索するような事はしたくなかった。

138ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』+猫『マシュメロ』:2021/11/12(金) 20:26:30
>>136-137

「友達……うむ、まあ、なにかよく爺の家に来る猫じゃ」

    「ナン」


飼っているわけではないらしい。首輪もない。
とはいえ、今も高島田の腕の中で大人しくしている通り、人に慣れている。
半野良、といったところか。あるいは本宅があるのかもしれない。


「目がばか……? 綺麗な紙じゃと思うが。
 なんで投げておったんじゃ。
 あ……」


ドギつい配色というが、味気ない名刺より好感度は高いようだ。
内容は……この子供はそもそも難しい漢字が読めない。
しかし拾おうとしたところで小石川に?っ攫われてしまう。


「まあ、ゴミ箱に捨てるなら悪くはないんじゃろうが……
 いらないならわしが貰ってはダメか?
 今落ちたばっかりのものなんてそんな汚くないと思うが……
 落ちてるものを拾うのはわしの主な仕入れじゃし。見るか?」


ほれ、と背負っていたリュックから、色々と取り出して、ベンチの端に置く。
ライター、ネジ、パチンコ玉、木の枝、雑誌のページなど、
確かに道端に落ちていそうなラインナップだ。

139高島田 文緒『24kゴールデン』:2021/11/12(金) 21:18:05
>>137

「『ご不要』て……いや確かに、ご不要ですけども……」

あーしなら絶対見て見ぬふりして知らんぷりだけど、
奇特な人もいるものなんだなぁ。

なんつうか服も全体的に小ぎれいな感じで、金持ってそうなおばさんだ。
山の奥の洋館とかに住んでそうっつーか、そんな感じ。

財布もってきてるかな? あとでちょっと見てみるかぁ。
じろんっ、と。文字通り、値踏みするみたいなじっとりした目つきでな。

「いやぁ、なんかすいやせんねぇ……。
 もう全然いらないんで、名刺はテキトーに捨てちゃってください……へへ……」

へらっと意地汚く笑って、くしゃくしゃと髪を掻いた。
少女自身は面倒なゴミ拾いをするつもりはなさそうで、『小石川』に追従する様子はなかった。

自分で拾い集めて捨てろって言われたらめんどくさいなぁって思ってたけど、
逆に拾い集めて捨ててくれるっていうんならラクチンこの上ないなぁ。
ご厚意はありがた〜く受けとっとこか、ゲヘヘへ。


>>138

「そぉ〜〜〜〜だけどなァ、確かにまぁ、キラカードっぽいっちゃあポイよなぁ……」

確かにキラキラしててちょっとゴージャスに見えるかも知れんがな、
それが何なのか知ってるあーしにとっちゃあ、
ギトギトした欲望が手垢みたいにへばりついてそうでだいぶ汚いんよな……。

子供のころの宝物って大きくなってから見るとしょーもないなぁって思うものだが、
それにしたって、あれを宝物みたいに大事にしてたなんて黒歴史を背負わせちゃあ、
将来の『ナイ』が不憫ってもんよな。

「はぁ……まぁいらんって言った手前、あんたにはやらんって言うのも不義理やしなあ……。
 しゃーないなぁ、好きに持ってってや。言うとくけどなぁ、返品は受け付けんでえ!」

(なんやこのガキ、えらい収集癖やな……。
 なんかベタベタとシールも全身に貼ってるし、あとで剥がすの大変そうやな……)

『ナイ』のリュックから出るわ出るわのガラクタもまぁゴミみたいなもんだけど、
まぁ、この名刺をその中に加えたならば、ちょっとはレアモノだと言えるんではなかろうか。
行くとこ行けばたまに落ちてるのを見かけないでもないけども、
そもそもそういうのが落ちてるところって、子供が行っちゃいけないところやしな。

こんなものがどうして欲しいんかな……と少し呆れ気味にため息をついて、『ナイ』に許可を出す。
まさか財布スられたオッサンも、そのオッサンに名刺渡したお姉ちゃんも、
全然関係ないガキに名刺が渡ってるとは思わんやろなあ。

140小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/11/12(金) 21:41:38
>>138-139

ナイの手に渡る前に、名刺を全て拾い集めた。
それから、並べられた品々に目を向ける。
彼女と初めて会った時、
ここで『トンボ』と『香り袋』を交換した事を思い出す。

  「お渡しした『あれ』は……」

  「――まだお持ちですか?」

その事を口に出したのは、話題を変えるためでもあった。

  「……この公園には『捨てる場所』が用意されています」

  「それは『そこに捨ててもらうため』です」

少女に向き直り、その顔を正面から見つめる。

  「これからは――『そちら』にお願いできますか……?」

『喪服の女』はハンドバッグを持っていた。
バッグの中には『財布』が入っている。
もし『窃視』したなら、それが見えるだろう。

141ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』+猫『マシュメロ』:2021/11/12(金) 22:03:14
>>139-140

「ほら! 貰ってよいと言っておるぞ?」


許可を出した高島田を指さし、小石川に抗議する。
直接に奪い取ろうとまではしていないが、じたばたと手足を無意味に動かした。


「アレ? ……アレ? ええと、花の?
 ……ある! 出すか?」


『ラベンダーのサシェ』
仮に大事に持っていたとしても、匂いは抜けきってしまっているだろう。
だが、小石川はすでにナイの『ベター・ビリーブ・イット』を知っている。
今この場に無いとしても、いつでも、何個でも取り出せる。
それをナイは、『ある』と判定したようだ。


「でも、『いらない』から捨てておるんじゃろ……?
 いらなくないと思ったなら、
 無理に捨てんでもいいんじゃないかの??」


いつのまにか高島田の手から逃れた猫は、我関せずとベンチの横で毛づくろいをしていた。

142高島田 文緒『24kゴールデン』:2021/11/12(金) 22:38:22
>>141

「ま、まぁ良いとは言ったけども……。
 やめときってぇ、なんか怒らせると怖そうやん……」

『小石川』に食ってかかる『ナイ』をぎょっとした目で見る。
知り合いだからじゃれあってるみたいなものなんか?
あーしが勝手にビビってるのは後ろ暗いところがあるからで、
純真な少女からしたらそんなヒェッってなるような人じゃないってことか……?


「てか、いろんな人から要らないもんを貰っとるんやなぁ。
 なんか元気でええなぁ、人見知りしない感じで、羨ましいなぁ」

モノを知らんだけかも知れんけどな。
いやでも、自分のガキの頃を思い出すとだいぶ内気だったし、
やっぱあれか、三つ子の魂百までって言うか、陽は子供のころから陽なんか?


>>140

「うっ……!」

こ、これは……!
直接的にそうだとは言ってこないが、直接的でないだけになおのことたちが悪い……!

「『圧』、ッ……!」

圧を感じる……!
京都人がそうするように、言外に意味を込めてきやがるっ……!

「や、やぁだなあもぉ〜〜〜〜っ! そんなのトーゼンじゃないですかぁ〜っ!
 もちろん、ゴミはゴミ箱にっすからぁ、ちゃんと捨てますよォ〜〜〜〜アハハハ〜」

ヒヨヒヨに日和ってしまった。
携帯ショップのお姉さんがタチの悪い客にそうするような、
全然気持ちの入ってないおべっかを言うみたいな寒々しさだった。


(怖っ……てか、圧が強えぇ……ハンドバッグ持ってたからちらっと見せてもらおうと思ったけど、
 思わず引っ込んじまった……でもさぁ……ビビらされたぶんのお礼くらいは、せんとなぁ……!)

「うあっ目にゴミがぁ! 痛ってててぇ!」

わざとらしく叫んで、腕を目を押さえる。
たっぷりダブダブと余らせた袖を手繰るように、手のひらを目元に近づけて……。

(――『24kゴールデン』……あのおばさんのハンドバッグの中身、金目の物がないか見せてもらいますかぁ〜!)

手を余り袖の中に隠し、こっそりとハンドバッグを『窃視』してみる。
こっちはげんなりするような財布を掴まされて萎え萎えなんだ……ここで取り戻させてもらうで……!

143小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/11/12(金) 23:15:49
>>141-142

『ベター・ビリーブ・イット』。
一度『交換』したものは、いくらでも増やせる能力。
その力には大いに助けられた事がある。

  「そうですね……」

ベンチに置かれた品々から目線を上げ、ナイに声を掛ける。
彼女の事は、よく分かっていなかった。
どういう生き方をしてきたのか、何も知らない。

  「……見せて下さい」

彼女の事を知る機会になるかもしれない。
軽々しく踏み入ろうとは思わない。
ただ、ナイの『幼さ』が気に掛かるのは確かだった。

  「――大丈夫ですか……?」

喪服の女は、全く気付いた様子はない。
ただ心配そうに、少女の様子を見つめている。
『窃視』を行うと、ハンドバッグの中に財布が見えた。

144ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』+猫『マシュメロ』:2021/11/12(金) 23:34:47
>>142

「ちゃんと『交換』しておる。
 わしは交換屋さんじゃからな!」


聞こえていたらしい。
今度は高島田に抗議の声が飛んだ。


「まあ、貰うこともあるが……
 今回のこれは、お前さんが捨てたからであって……
 まだキラキラした紙、持っておるなら何かと『交換』してもよいぞ」


>>143

「ん? 一度『交換』したものを?
 まあ、いいがの……」


一度手放したものを出してと言われる事に不思議そうにするナイ。
そもそも別に小石川は「見せて」と言っただけで「欲しい」とまでは口にしていないのだが。


「何を材料にするかの。これでよいか」


ベンチに置いた雑誌のページが、一瞬で『ラベンダーのサシェ』に入れ替わる。
匂いも交換した時のままだ。
派手なエフェクトもヴィジョン発現も無いが、特に隠す様子もなく能力を発動した。
高島田が見ていたかどうかは、彼女次第だろう。別の事に夢中のようでもあるし。


「どうじゃ?」


単純というかなんというか、話をそらされて、
先ほどまでの争点だった小石川に取り上げられた名刺の事はもう忘れた様子だ。

145高島田 文緒『24kゴールデン』:2021/11/12(金) 23:46:37
>>143

(うっっっし、お財布めーっけ! とりあえず目をつけて、っとォ!)

ラッキー! 首尾よく見つかった財布に『目をつけて』おく。
これであとはそっと手を差し入れるだけで、いつでも頂戴できるって寸法よォ!

「ふんぐうううう! まつ毛ェ! ああ痛っあい」

146高島田 文緒『24kゴールデン』:2021/11/13(土) 00:00:41
>>143

(うっっっし、お財布めーっけ! とりあえず目をつけて、っとォ!)

ラッキー! 首尾よく見つかった財布に『目をつけて』おく。
これであとはそっと手を差し入れるだけで、いつでも頂戴できるって寸法よォ!

「ふんぐうううう! まつ毛ェ! ああ痛っあい!
 す、すんませんっ……よくあることなんす、あーしのまつ毛、すげー元気いっぱいで……」

本来のまつ毛は貧弱で、元気そうに見えるまつ毛はつけまつ毛なのだが……。

「ううっ前が見えねぇ……前が……」

暗闇で掴めるところを探すみたいに、目を覆っていない方の手を闇雲に前に伸ばして、手探りで掴めるものを探そうとしてみる。

なーんて、ホントはスケスケで見えてるんすけど、
回りから見ればブカブカの袖で目をゴシゴシしてるように見えるだろうから、そんな違和感はないだろうと思う……。

ハンドバッグが手を伸ばせば触れるくらいの距離にあれば、偶然を装って触って、中の財布を『窃盗』してしまおう。
ブカブカの袖もハンドバッグの生地も、『切れ目』を通して無視できるんだから、
あからさまにバッグに手を突っ込んで財布を抜き取るみたいな露骨な犯行と違って、目の前でやったってバレやしないだろう。


>>144

「いて、いて、痛てええ……!」

すまねぇ、『ナイ』にはいまは構えないんや!
なんてったってミッション中だからな!

雑誌のページを『ラベンダーのサシェ』に変える決定的瞬間も、残念ながら目に入らない……もったいない……。

147小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/11/13(土) 00:17:48
>>144-145

  「……以前にお話しましたね」

静かに手を伸ばし、『ラベンダーのサシェ』を拾い上げる。

  「『落ち着く香り』だと……」

ラベンダーには鎮静作用がある。
乱れた気持ちを鎮める香り。
『発作』に襲われる度、これに助けられてきた。

  「時々は……出してみて下さい」

そこまで言って、香り袋をナイに返す。

  「きっと気持ちが落ち着きますから……」

それだけ言って、もう一人の少女の方を振り返る。
彼女の痛がり方は普通ではない。
純粋に心配し、その様子に意を払っていた。

        ス……

伸ばした手が何かに触れた。
おそらくはハンドバッグだ。
このまま財布を引き抜く事も可能だろう。

148ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』+猫『マシュメロ』:2021/11/13(土) 00:28:03
>>147

「そうじゃったか?」


細かいことは覚えていなかったのか、小首をかしげた。


>>146

「なんじゃ? どうした?」


突如騒ぎ出したベンチの少女に顔を向ける。
毛づくろいしていた猫もビックリして警戒した様子だ。


「目にまつげが入ったのか?
 洗い流すか? 水……は無いの。
 お茶ならあるが……目に入れても大丈夫かの?」


とりあえずよって行って、ちょうど手にあったサシェを少女の鼻に押し付ける。


「落ち着くか?」


いい匂いではある。

149高島田 文緒『24kゴールデン』:2021/11/13(土) 00:55:02
>>147

(フィ〜〜〜〜ッシュ! 指先に当たったぁ!
 これであとは、ちょいとつまめばそれだけでェ〜〜〜〜!)

ハンドバッグの中は実質見えているんだから、取りのがしなんてないんでね!
ささっと指先で財布を挟んで『窃盗』し、『特殊な空間』に放り込んじまえば無事ゲットと!

ブッダやイエスが相手だろうと、盗めるもんは盗みますよって。
ちょいちょい話したからって盗みのターゲットから外してやろうなんて甘い考えはないワケ。

(ほいじゃいっちょ、『窃と――――)


>>148

「っブゴォ〜〜〜〜ッ!?!?!?」

鼻先に押し付けられたサシェ。
ほのかな香りだったとしても、わりと主張強めなその香りにむせてしまう。

「おおおああ!? ら、ラベンダーかぁっ!?」

ラベンダーの香りは好き寄りの好きではあるが、
しかしいきなり呼吸器を塞がれてしまうと戸惑ってしまう。

サシェで暗殺未遂を喰らう前に『窃盗』を完了できたか……?
たぶんできていた、いやきっとできていた、できていたと思う……。
できてる! できてるはず……! できていてくれ!
そんな気持ちで、チラッとハンドバッグの中を『窃視』する。
果たしてその中から財布はなくなって……いるのか――――!?

150小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/11/13(土) 01:51:24
>>148-149

見守るような眼差しで、二人のやり取りを見つめていた。

  「――……」

相手が余所見していたなら、目的を遂げる事は簡単だった。
ただ、『喪服の女』は少女に注目している。
袖で手を隠していても、抜き取る動作まで隠し通すのは難しい。

  「一つ……」

密やかに、ハンドバッグの中身を『窃視』する。
そこから財布は消えていた。
すなわち『窃盗』は成功した。

  「……お聞きしてもよろしいですか?」

          フ ッ

ふと、『喪服の女』の『右手』に『ナイフ』が現れる。
刃渡りは『25cm』。
記憶が残っていれば、ナイには見た覚えがあるだろう。
以前、『トンボ』を両断した刃だ。
真っ二つにされたトンボは、そのまま何事もなく飛んでいった。

151ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』+猫『マシュメロ』:2021/11/13(土) 11:38:52
>>149

「お? そうそう、ラベンダーっていうんじゃったな。
 よくわかったの」


ラベンダーを詰めた袋。
フィルターのようなものだし、呼吸出来なくなるというほどではないだろう。
口は空いているし。死にはしない。


>>150

「……んん?」


一瞬びっくりしたが、確か、あれは切られても大丈夫な『ナイフ』……多分、きっと……
花粉症の人は目玉を取り出して丸洗いしたくなることがある。
とテレビだか落ちていた雑誌だかで見たことをぼんやりナイは思い出す。
目玉を切り離すんだろうか?
なんとなく怖くなって、ナイは少女から数歩離れた。
高島田の鼻は解放される。

152高島田 文緒『24kゴールデン』:2021/11/13(土) 13:38:44
>>150-151

(よぉぉぉ〜〜〜〜っしゃ! 盗ったどぉぉぉっ!)

お財布、ゲットだぜ!
きょうは豪勢にイタリアンと行きますかぁ〜〜〜〜!
まだ中身は改めてないけんども、それなりにお金が入ってそうなニオイは感じてるしなぁ!
今日は何にするかなぁ〜、やっぱ豪勢にイタリアンとかにしとっかァ?
子羊背肉のローストとか……じゅるりっ、想像しただけでよだれが……。

「目が……目が……へぇ、なんすか、お聞きしても、って……?」

なんかおばさんが言っているぞ。
いまはキッチリとスリに成功して気分がいいんだ、なんでも答えたろか。

    チラッ……

「――――ヒィィィッ!?」

『小石川』を袖の脇からチラッと見たら、いきなりナイフを突きつけられていた――?
唐突に始まった修羅場に、思わず悲鳴を上げてしまう。

153高島田 文緒『24kゴールデン』:2021/11/13(土) 13:43:33
>>151

(ちょいちょいちょい! 待ってくれぇいきなり脅されてるなんて聞いとらんぞォ!?)

横でこっちを見ているはずの『ナイ』にヒュンヒュンヒュンッと首を振って目配せをする。
目の前で今まさに凶行が繰り広げられようとしてますよォ!

というか助けて! 頼む!

「た、タスケテェ〜〜〜〜……」

消え入りそうな声で助力を求めた。
もともとメイクで真っ白の顔だが、それに輪をかけて顔を青くしていた。

154小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/11/13(土) 22:58:25
>>151-153

ナイは回想する。
『喪服の女』の手の中にあるのは、
確かに『斬られても平気なナイフ』だった。
その刃は誰も傷付ける事はない。

  「『他』にも――」

右手は下ろされている。
『ナイフ』は決して突きつけられてはいない。
ただ、そこに存在するだけ。

  「……ご覧になった事はおありですか?」

相手が『一般人』なら容易い仕事だっただろう。
しかし、そうとは限らない。
もし『スタンド使い』だった場合、大きな『代償』を払う事になる。

  「――『スタンド使い』を……」

そうなれば、傷付くのは彼女だ。
だからこそ、問い掛けた。
他でもない『彼女自身』のために。

155ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』+猫『マシュメロ』:2021/11/13(土) 23:20:13
>>152-154

「……」


キョロキョロと2人の顔を見比べる。


「のう……やっぱり目玉をほじくりだすのはやめたほうがよいと思うが……
 洗う水も無いし」


何か助けを求められているので、一応、とりなしてみた。
小石川の服の裾を掴んで控え目にひっぱる。


「なんじゃ急に? 『スタンド』がどうか……
 ああ、お嬢ちゃん、『スタンド使い』なのか?
 ……それがなんじゃ?」


『スーサイド・ライフ』……ナイはこの名前を知らないが……の『ナイフのヴィジョン』が見えている
ということは、少女は『スタンド使い』ということになる。
……だからどうしたというのか? ナイの視点ではわからない。

156高島田 文緒『24kゴールデン』:2021/11/13(土) 23:52:28
>>154-155

ナイフは突きつけられていなかったか……すまねえ!(PL謝罪)
でもよく知らん人がいきなりナイフ持ってたらビビらんか……?
夜道で包丁持って立ってる人見かけたら結構ヤベェってなると思う……!
だから突き付けられていなかったにせよ、結果的にビビっていたぞ!
だから問題なし!(問題はある)

というか、『ナイ』の言葉から導き出される推測として、
この人はあーしの目玉をえぐろうとしてんのか!?
ひええええ、イタイイタイイタイ! 想像するだけでぞわわ〜ってする!

『ナイ』のとりなしが逆効果だったのか、あらぬ想像をしてもっと震えあがってしまった。


「ス、ススス、スタンド、使い……?」

(――ってなんだ……?
 あんガキはあーしのことをスタンド使いなのか?って言って納得してるし……)

もしかして、『24kゴールデン』みたいなもののことか……?
やばい、見てないドラマの話を振られたときみたいに、
アレのことかなってなんとなくの察しはついても、詳しいことがよく分からんぞ……!?

「そ、そそそそそ、そ、そッスねぇ〜〜〜〜……」

これもしかして、選択肢間違えたらあーし用済みか!?
スリがバレるどころじゃねえ! もっとハードな土壇場に立たされてたんか!?
とりあえず、知らないって言ったら話が終わっちゃうし、
どうにか適当に話を繋いで、活路を探さんとヤバいで!

「あ、あーあー、スタンド使いね、スタンド使い!
 いやどうだったかなー! あっ、なんとなく見たことあったかも! 確かあれは……えーと……。
 いや見たことある! 絶対見た! アレ、アレアレアレェ〜ッ、喉元まで出かかってんすけどねぇ〜ッ!」

(よぉ〜しこう言っておけば、ひとまず誤魔化せるやろ!
 食いついてくれたら適当に話合わせて切り抜けたる!
 タモさん顔負けのスーパー話術にかかれば、ここはもうお釈迦様の手のひらの上よぉ!)

実際のところ少女は自分以外のスタンド使いを見たことはなかったのだが、
とにかく否定せずに話を繋ごうという意識だけが高じてしまった結果、あまりにも演技がお粗末すぎて、
『よく分からないけど知ったかぶりをしている人』感をあからさまに醸し出してしまっていた。

そもそも、得た能力にスタンドという枠の名前があるだとか、スタンドはスタンド使いにしか見えないだとか、
そういう基礎中の基礎を道具屋さんに聞いておくのを忘れていた、気がする……。

(っそお〜〜〜〜! こういうのちゃんと気をつけて聞いとけばよかったァ〜!
 大いなる力には大いなる責任が伴うってベンおじさんも言ってるしよぉ〜!
 自分の手に入れた力に対しての体系的な知識くらい、入れとくべきだったよなァ〜!)

157小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/11/14(日) 00:15:17
>>155-156

喪服の裾を引くナイを、静かに見下ろす。
その表情には、剣呑な色は微塵も見えない。
ただ、変わらず穏やかな表情があるだけだ。

  「いいえ――」

     ニコ……

  「……そんな事はしませんよ」

微笑みながら、安心させるように軽く首を振る。

  「そうですか……」

答えを聞いた『喪服の女』が小さく頷く。
何事か納得したような声色だった。
しかし、その顔からは内心の考えは窺えない。

  「……拾って下さってありがとうございます」

         スゥッ

少女に向かい、遠慮がちに『左手』を差し出す。
『落とした財布』を受け取るために。
『右手』には『ナイフ』が握られている。

158ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』+猫『マシュメロ』:2021/11/14(日) 00:27:58
>>156-157

「『スタンド使い』を……見た?
 どこでじゃ? わしら以外の?」

「いや、見たことがある、ということは、今の話ではない……?
 そうするとなぜ、今その話を……??」

「え? 拾った?
 ……何をじゃ? いつ?? そんな動きしておったか???」

「?????」


2人の会話は何もかも意味不明だ。
ナイは首を傾げすぎて体ごと傾いていてしまった。


           「ニャーン」

159高島田 文緒『24kゴールデン』:2021/11/14(日) 01:05:18
>>158

「あ、アァ〜うん、えっとなぁ……いつ、どこ……だったっけなぁ、ウン……!」

おおっとぉ思わぬ方向から反応を頂いてしまった。
いつどこでと言っても、実は見たことないなんて、言えねぇ〜……。
意味不明もさももありなん、自分自身でもよく分からずに喋っているのだ……。

(いたいけな幼女先輩を騙すようで悪いが、こっちは命かかってるんや……!
 でたらめでもなんでも喋って、この場を切り抜けたるで!)

「拾った? ほぁぁ? えっ、名刺……?」

これにはあーしも目がテンだ。
だってなにも拾ってない……名刺を拾うのさえも横着してたからなぁ……。
『ナイ』と同じように、少女の頭の中も?????だった。


>>157

(そんなことしないって、ホンマにかぁ〜〜〜〜?)

なんかニコッとしてるけど、その前にナイフを取り出されているだけに、
信じていいもんなのか判断つかんなぁ……。
敵意があるって風ではないけど、息をするように首を掻っ切るようなサイコパスじゃないとも言えんしなぁ。

「ってエッ!? あ、あれ……? あの、え……?」

そして納得されてしまった。
まだ追及が続くと思っていただけに、面食らってしまった。

(エッ、これは見たことないって言ってたらイベント続行ってパターンだったやつか?
 わ、分かんねぇ〜〜〜〜! 納得した風だけど、なに考えてんのか分かんねぇ〜〜〜〜!)

エイヤッとコイン投げたら偶然当たりの面が出たみたいな決まりの悪さがある。
あるいはすべてお見通しで、なにも知らないというのを見透かされてたのか……?
よく分かんねえけど……まぁ生きてるならそれで良しよ! ガハハ!


「拾って……? アッ、ハイ……」

(えっえっえっ? なんも拾ってないぞ!?)

少女は言外の意図を汲み取るのが苦手なタイプだった。
直接的に言われなかっただけに、『財布を返せ』と暗に言われていることに気づいていない。

(なんか拾ったかァ? もしかして財布落としちゃった!?
 いんや、それはない……だってちゃんと『特殊な空間』に放り込んだしな……。
 文字通り、現在財布はこの世界に存在してないんだから、身体検査されても見つけられませんて!)

とりあえず……手を出されたし……握手しとこか……。

             グッ……

出された手に握手を返す。

(いやなにやってんだろ、あーし……)

少女は混乱している。

160小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/11/14(日) 01:33:44
>>158-159

  「……『秘密』ですよ」

      クス……

柔らかい表情で、困惑するナイに笑い掛ける。

       スッ

少女は『喪服の女』と握手を交わした。
二人の手と手が握られる。
今、少女の手は『喪服の女』の手を掴んでいる状態だ。

  「――……『財布』を拾って下さいましたね」

『喪服の女』の手も、少女の手を握っている。

  「『藤色』の――」

語り掛ける女は、口元に穏やかな微笑を湛え、
真っ直ぐな視線で少女を見つめている。
目に見える激しい感情は皆無だ。
悪意や敵意といった類も感じられない。

  「『三つ折』の財布を……」

それは、先程『窃視』で見た財布と同じ特徴だった。
『喪服の女』は、それきり言葉を閉ざした。
握手した手は離れていない。
右手の『ナイフ』も消えていない。
女は動かず、少女の反応を待っているようだった。

161ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』+猫『マシュメロ』:2021/11/14(日) 01:49:16
>>159-160

「なるほど〜? 秘密……?」


とりあえず小石川が財布を落とし、少女が拾った。
ということは理解したので、いったん疑問が収まる。
それが真実かどうかはともかくとして。


「そういえばさっき紙を取り出しておったの、財布っぽかった気がするの。
 ふじ色? かどうかはちょっと忘れたが……というか、ふじ色ってどんな色じゃ?
 ん? となると、人の財布から紙を取り出して捨てておったのか?
 だから怒っておるのか?
 しかし結局ゴミ箱に捨てておるし……」


他人の財布なのは当たっているが、違う。
そして小石川は行動も表情も、怒っているのかどうかよくわからない。
足元に寄ってきた猫を抱き上げ、傍観する。

162高島田 文緒『24kゴールデン』:2021/11/14(日) 11:32:30
>>160-161

「――――!?!?!?」

ひどくわかりやすく動揺してビクビクビクッと震えてしまった!
なんでだァ!? あーしの仕事は完璧なはず! いったい何故バレたァ!?

握手している手にじんわりと汗が浮かぶ。
『24kゴールデン』の黒い手袋って手汗通すんか……? よく分かんないけど手汗べたべたな人って思われたら嫌やな……。

(待て待てい! 言うてそんなにバレるなんてこと、あるかぁ!?
 バッグの外側にちょんと触れて、中まで指を透過させてピトッと財布を摘みゃあ、
 それだけでお財布くんは亜空間に転送完了なんや……シロートが見てわかるような手口やないで……!)

となれば……カマをかけられている!?
おばさんの顔にはあんまり感情がなくて推測つかないが、
こいつ……どこまで分かってやがるんだ……!?
                       
(そういえば、あのガキは『どこでわし【ら】以外のスタンド使いを見たか?』と言っていた……?
 おばさんも『スタンド使いを見たことはあるか』と言っていた……?
 つまり、目の前のおばさんも、あーしと似たような『力』を持っていて、それで見破ったってのかァ!?)

なんだどんな能力なんや……!?
あーしの動きを監視するような……いや、あーしの心を読んで……!?

(わ、分からねぇ〜〜〜〜! いやマジ、相手の出方が分かんねぇよなぁ〜〜〜〜!
 つーかいつの間にかワンハンドシェイクデスマッチみたいになってるし……!
 ナイフ持ってる相手と握手してるとか、それはもう自殺行為なんよ!)

よくよく考えると、これってかなり危険すぎるよなあ!
ブンブン手を振って、握手を振りほどこうとしてみるぞ!

「ッスゥ〜〜〜〜〜〜〜〜っ……。
 ふ、『藤色の三つ折りの財布』ゥ……っすかァ……?
 い、いんやぁ、見てないし拾ってないっすねェ〜〜〜〜!
 な、なぁそこのガ……えー、お、お嬢さん……!?
 アンタもそんな財布落ちとんの見かけとらんよなァ!? なァ!?」

助力を乞おうって相手にガキ呼ばわりは良くないよな。
お嬢さんこと『ナイ』にもそんなの落ちてないって証言してもらうぜえ!
実際『ナイ』はその財布を見てないだろうしな。なんたってあーしが秘密裏に盗んでんだから。

>「ん? となると、人の財布から紙を取り出して捨てておったのか?」

「ってぇ、おいおいおいおいおお〜〜〜〜い! ちょっとちょっとォ〜〜〜〜ッ!?
 そんな人聞き悪いこと言わんでくれるかァ〜〜〜〜!?
 そんなのまるで、『あーしがスタンドを使って人から財布をスッてる』みたいじゃぁねーかよォォォォッ!?」

『高島田』は突然キレた――――
ひとからモノをとったらどろぼうなんだぞ!(はいあーしが泥棒です)

『高島田』は薄汚いコソ泥のくせに、どうも誤魔化したり嘘をつくのがヘタすぎるきらいがあった。
図星を突かれるとすぐに深い墓穴を掘ってしまうような……そういうタチだった。

     ポロッ……
   ボトッ     ボトッ    ボトッ……

「あっ……………………」

動揺で挙動不審だったからか、握手を振りほどこうと無理に体を揺らしたからか、
『高島田』のパーカーのポケットから財布が何個か、零れ落ちてきた。
ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ……どれも男物の財布で、地雷系女子が持ってるようには見えないものだった。
これは……やってますねぇ!?

163小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/11/14(日) 18:47:08
>>161-162

少女――『高島田』は、
大袈裟に痛がる芝居を打ってみせた。
それは相手の注意を引く事に繋がる。
ゆえに『喪服の女』は、高島田に視線を向ける結果となった。
相手の隙を誘うのは『常套手段』だが、
少しばかり派手にやりすぎた。
『喪服の女』は、『本気』で高島田を心配していたのだ。

『窃視』するという事は、周りが見えなくなるという事でもある。
『窃視』の最中だった高島田は、
『喪服の女』が注目していた事に気付けなかった。
素早い動作が可能な『24kゴールデン』だが、
途中で『ナイ』の邪魔が入ったために、
多少もたついたのも原因の一つだ。

『手袋』に包まれた両手を袖で隠す。
それは適切な隠蔽方法だろう。
ただ、『手を突っ込む』という都合上、
『袖の先』がバッグの中に入る事は避けられない。
『腕』が『袖』に変わるだけなのだから。
『喪服の女』は高島田を注視しており、
ごく自然な流れで『一連の動作』を目撃していた。

もう一つの理由は、
『喪服の女』が『スタンド使い』であったという事だ。

  「――……」

振り払おうとして腕を激しく動かす。
『離れない』。
少なくとも、相手に離そうという意思はないらしい。

  「――……」

『喪服の女』は、憂いを帯びた物悲しい瞳で、
ただ高島田を見つめている。
一言も発さず、手も離れない。
その様子を見て、高島田には何となく理解できた。
おそらく『喪服の女』は、このまま『何時間』でも『待ち続ける』。
日が暮れても、夜が訪れても、握った手を離さないだろう。

  「――……」

『小石川文子』は、決して『怒らない』人間だった。
その代わりに、彼女は『悲しむ』。
『自分』に対してではなく、目の前にいる『相手』に対して。

164ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』+猫『マシュメロ』:2021/11/14(日) 21:37:14
>>162-163

「……? だから、さっきの財布がそうなんじゃないのかの?
 わしが来たのは紙を投げていた時じゃから、
 お前さんが拾ったのはわしが来る前って事になるの」


この子供は、名刺を抜いて捨てていた財布=小石川の財布と勘違いしている。
小石川の財布に怪しい名刺がいっぱい入っていた事になってしまうが、
意味を理解していないのでノーカンだ。


「落とし物を拾うのは別に悪くないじゃろ……
 そんなに怒らんでも……」

「お? お前さん、財布をいっぱい持っておるの。
 どれがふじ色じゃ?」


異様なアトモスフィアに包まれたベンチだが、
少女と、落ちた財布に目をやる子供は背後の小石川の様子には気づかない。
少女が似つかわしくない財布を複数持っている事に違和感も特に感じない。
落ちた財布のどれかが小石川のモノなのだろうと財布を物色する。

165高島田 文緒『24kゴールデン』:2021/11/14(日) 22:56:16
>>163

「…………ッ!」

(やべえっ! コイツ……手を離す気ないぞッ……!?
 どういうワケだか知らんけど……あーしが盗ったの、確信してやがるな……!?)

しかし、なんて言うか妙な気もする……。
そこまで分かってるんだったら、ズバリと指摘して糾弾されても仕方ない気がするが……。
それとも、ナイフで脅してるんだから言いたいことは分かるよな、ってことか……?

「…………?」

いや、どうだろうな?
もしかして、あーしが慚愧の念に堪えず自ら罪を認めて財布を返すのを待ってんのか……?

(だとしたら、とんだドSなんじゃあねぇのォ〜〜〜〜ッ!?
 がっしり掴んで離さず、刃物をチラつかせて譲歩を迫ってるってのは、
 結局のところ『脅迫されてる』ってェことじゃあねぇか〜〜〜〜ッ!)

素直に刃先を向けようとしないのは、子供の目があるからってことかぁ?
暴力を以て相手を従わせようって輩のやることとしては、違和感あるよなぁ。
あーしならペロォ〜って切っ先をねめつけて、ピトッと首に添えてるようなシチュエーションだ。

(それがどんな事情だってよォ〜〜〜〜!
 実力行使に出てこないってーんなら、まだまだやりようはあんぜェ〜〜〜〜!
 決定的な証拠を突き付けられるまでは、あーしはスッとぼけて認めねェ……!
 面の皮の厚さなら、負けやしねェ〜〜〜〜ッぜ!)

「ア、アハハハハ……え、ええっとォ……財布ゥ……でしたっけぇ……?
 アァ〜ッ、いやぁ〜〜〜〜偶然なんすけどォ、いまいっぱい財布持っててェ……。
 もしかしたらそのうちのどれかに混ざっちゃってるんかもしれないですかねェ〜〜〜〜?」

「いやこれはちゃんと探してみないとだなぁ〜〜〜〜!
 だからそのォ〜〜〜〜……手ぇ……離してもらえませんかねぇ……?」

ひとまず、『小石川』に直接的に『手を離してほしい』とお願いをしてみるぞ。

とはいえ、おばさんの方は泣く子や地頭もかくやって感じで真正面から行ってもなびきやしなさそうだ。
だけど、ガキん方は幸いにして……あーしの罪を分かってねぇ感じがするな……!
そんなら、まず、味方につけるべきはこっちなんじゃねぇのかァ?


>>164

「ッ、ああ〜〜〜〜すいやせんっ! いきなり怒鳴られたらビビるよなぁ〜〜〜〜!
 ごめんてお嬢ちゃん、あーしの方がお姉ちゃんなのに大人げなかったわ……スマンっ!」

空いてる方の手で、相撲で買った方がよくやってる『ごっつぁんです』のポーズをして謝罪するで。
まずはこっちから味方につけたるわいて! 数的優位を作りゃあ、話は変わってくるよなぁ!?

「『財布集め』がさいきんのJKの間じゃトレンドでなぁ、ムダにいっぱい持つのが流行ってんねや。
 こっちのネーサンが財布落としたとかで、それがあーしの財布と混ざっちゃったかも知れんくてな……。
 嬢ちゃん、スマンけど探すの手伝ってくれんかぁ……? 藤色ってのはなんつーか、ムラサキっぽい感じでな……」

猫撫で声で『ナイ』を懐柔しようと演技するでぇ!
当然『小石川』の財布は落ちた財布の中には含まれとらんがな!

本気で困っているのは間違いないので多少は真に迫ってはいるが、
やっぱり演技は例の如くめちゃくちゃわざとらしい……


「なぁ、どうやぁ……? 藤色の財布なんか、見かけたかねぇ?
 お嬢ちゃ……あー、こういうのもなんか他人行儀でイヤいやなぁ……。
 なぁ嬢ちゃん、名前はなんて言うんや?」

「あーしは『フミオ』って言うんや。『ミオちゃん』って呼んでくれなぁ。
 JKなのにソーリ大臣のオッサンとファーストネームが一緒ってのはキッツイからなぁ。
 おばさんの名前通り越して、こんなんおじさんの名前やんか、フェヒヒヒヒッ!」

フレンドリーに、自己紹介なんかも挟んだるでぇ!
小粋なジョークも込みでな! ガハハ!

166小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/11/14(日) 23:32:15
>>164-165

  「ええ……その通りです」

高島田の説明に、『喪服の女』は静かに同意を示した。
同じ場に居合わせたナイを気に掛けているのは確かだ。
そして、おそらくは、高島田が自ら告白するのを待っている。

  「――……分かりました」

          スッ

意外な程に呆気なく、握っていた手が離された。

  「お手数ですが……」

  「探していただけますか……?」

『喪服の女』は、依然として高島田を見つめている。
その表情からは、脅すような雰囲気は感じられない。
切なげな瞳の奥には、
むしろ相手を『気遣う』ような色があった。

  「『小石川』――」

  「『小石川文子』と申します……」

高島田がナイに名乗った後に、
『喪服の女』が自身の名を告げ、丁寧に頭を下げた。

167ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』+猫『マシュメロ』:2021/11/14(日) 23:49:06
>>165-166

「ふみ……みおちゃんか。
 わしはナイとか呼ばれたりしておる。
 この猫は……いろんな人に色々呼ばれておるようじゃ」

  「ナーン」


子供がアイサツに応じ、抱えた猫が答えるように小さく鳴いた。


「ふうむ。むらさき色……はこの中には無いの。
 小石川さんの勘違いじゃったか?」

「まあ、それならそれで……
 『所有権』を持っておる者がいるなら探すまでもない。
 小石川さんは知っておると思うが、わしは位置ごと『交換』できる。
 香り袋と財布を『交換』するか?」


『交換』すると、ナイの手に小石川の財布が、
財布のあった『何処か』へサシェが移動する事になるわけだ。
『ただ財布を取り戻すだけ』なら、これで解決である。

168高島田 文緒『24kゴールデン』:2021/11/15(月) 00:34:30
>>166

「あっ……ど、ども、すいやせん……」

意外ッ! なんと手を離してもらえた……!
だがしかし、依然としてあーしをマークしてるな……目がそう言ってやがる……!

(ンンッ……? いやでも、なんか腑に落ちないって言うか、よく分からんよなァ〜〜〜〜?
 日頃の行いからして、胡散臭げに見られてるときの目ってのはなんとなく分かるもんやけど、
 この人の考えてることが、どうにも掴めんなぁ……喉に小骨刺さってるみたいに気持ちワリィ……)

自慢じゃないが自己中心的で、徹底的に自分本位に生きてきたあーしとは価値観がぜんぜん噛み合わないっつーか。
自分が正反対の立場だったとして、絶対に相手に向けることのない瞳の色をしてんだよなぁ……?
初見の漫画を7巻目くらいから読み始めたみたいな、前提が抜けてて話が分からないみたいな置いてけぼり感だ。

「アー、『小石川』さん、っすかぁ……へへ、なんか、なんとなく名前の響きが似てっすねぇ……。
 あーし、苗字は『高島田』って言うんすよぉ……大正生まれみたいな古臭さで、あんま好きじゃないんすけど……」

漢字二文字に形容詞が付け足されてる感じがなんかニュアンス近いなぁ。
あとは、読みは違えど名前の漢字がひとつ被ってるのとかなぁ。

「あー、財布……ええっと、藤色っすかぁ……。
 イヤァ〜〜〜〜、ほんとそんなの、ぜんっぜん見覚えなんてないんすけどねェ〜〜〜〜?」

そうは言いましても、形式上探すくらいは手伝わんとなぁ。
どこを探したって現在亜空間の中に安置されてるワケでございますから、見つかりゃあしないんですけどねェ〜〜〜〜!


>>167

「おぉ〜〜〜〜、『ナイ』ちゃんなぁ〜〜〜〜!
 ほらほら猫ォ〜〜〜〜お前もかわええなぁ〜〜〜〜!」

    グルグルグル……

めでたく自由になった手で猫の喉をゴロゴロするで。
自由ってすばらしい!

「やっぱ藤色の財布なんてないよなぁ〜〜〜〜!
 『小石川』サンンッ〜〜〜〜!? やっぱ見つかりませんわぁ、いやぁ残念やなぁ〜〜〜〜」

(当ったり前やろがい、財布はしっぽりパクらせてもろてんねんやでェ〜〜〜〜!
 そない簡単に見つかりますかいなって――――)

>「香り袋と財布を『交換』するか?」

「ホ、ホヘェ〜〜〜〜ッ!? なんや『ナイ』ちゃん、あんたそんなことできんのかァ〜〜〜〜!?」

そんなぁ! それが『ナイ』の能力だって言うのかァ!?
よく分からんが、『特殊な空間』にある財布まで引っ張り出してこられんのかいてェ!?
これは『特例』的な処理が挟まるんやないか……気になるし『道具屋』さんに聞いとこかなぁ……。

「そ、そいつァスゲェ〜〜〜〜っすネェ〜〜〜〜」

動揺で声カッスカスになってしまった。

(待てよぉ、この手で財布が手元に返ったら、あーしが盗ったってことはもう完全に証明できなくなるんやないか……?
 いやでもなぁ〜〜〜〜ッ……せっかく盗めたモンをみすみす返してやるって言うのは、なんかイヤやなァ〜〜〜〜!
 仕方ねぇ、かくなる上は、『24kゴールデン』を解除するかァ……?
 そうすりゃ財布は暗黒空間で粉みじんになって消えるからなァ……)

ぐぎぎ、悩む……。
とはいえやっぱり、戦利品を自ら捨てるってのは悩むよなぁ……。

169小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/11/15(月) 00:45:32
>>167-168

『喪服の女』は高島田を見つめていた。
『助けようとしている』ような瞳で。
やがて、視線が傍に立つナイに移る。

  「――ナイさん……」

ナイの申し出を受け、心の中に躊躇いが生じる。
『ベター・ビリーブ・イット』の能力は理解していた。
ただ、幼い彼女を、出来る限り巻き込みたくはなかった。

『当人同士で解決したい』という思いもあった。
これが『一般人』なら、気付かれる事もなかったかもしれない。
けれど、相手が『スタンド使い』だったとしたら。
『スタンド使い』の中には、
他者に危害を加える事を厭わない人間もいる。
そういった相手と出会ってしまったら、困るのは『本人』だ。
だからこそ、ここで思い直して欲しかった。
将来『取り返しのつかない事』になってしまう前に。

  「……『交換』をお願いします」

しかし、最後には、ナイに頼る事を選んだ。
襲ってきてもいない相手に、『ナイフ』を振るう事はできない。
自分には、『これ以上』はできなかった。
ナイの能力で財布が戻ってくれば、少なくとも、
『スタンド使いを相手にするリスク』を分かってもらえるはず。
自分には、それだけしかできなかった。

170ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』+猫『マシュメロ』:2021/11/15(月) 01:28:33
>>168-169

  「ゴロゴロゴロ」

「……あー、そうじゃ。
 すまん、忘れておったが……わしの『ベター・ビリーブ・イット』
 お金は交換できないんじゃった。
 物体の一部として、多少ならできるんじゃが……
 財布の中身全部そのまま戻ってくるのは難しいかもしれん。
 それでもよいか?」


謎の制限だ。
小石川としては、財布に札束だけが入っていた場合、中身が帰ってこない可能性がある。
とはいえ、カードや免許が入っていた場合、それらを取り戻す意味は十分あるだろう。

高島田としては財布を取り戻されるのが癪なら、消滅させてしまってもよい。
だが、この謎の制限により、財布本体を取り戻されても、お札が残る可能性がある。
それならお札だけでも貰ったほうが得だろう。

高島田は財布を消滅させるのか?
小石川は完全な財布を取り戻すためにやっぱり『交換』をやめるのか?
奇妙な駆け引きが成立する。

171高島田 文緒『24kゴールデン』:2021/11/15(月) 14:30:27
>>169-170

「なぁにぃッ!? てことは……財布は交換できてもお金は元の場所に残るかもってコトォ!?
 よっっっっっっ、し…………いや、喜んでないんですけどねェ〜〜〜〜!
 イヤァ、それは残念すねぇ〜、でもカードとか、免許とか、そういうのだけでも帰ってきたらいいっすよねぇ〜」

(おいおい勝ちの確率が高まったでぇ!
 つーか、どんな能力なのかは分からんけど、『特殊な空間』の中のものも交換できよるんかなァ〜?
 結局交換自体が成立しなくって、坊主丸儲けってこともあり得るんやないかァ〜〜〜〜!?)

初めて見た自分以外の能力者なだけに、どんなことが起きるのかさっぱり分からんなぁ。
なんか話を聞いてると、この状況で財布を消滅させるってのは、なんか守りに入りすぎてる気がするなぁ。
せっかくカルマすり減らして盗みやってんねや、どうせなら最大取ってかんとなぁ!

「いやぁでも財布なくすんは大変やもんなぁ。
 それをズバ〜ッと見つけ出せるなんてなぁ、『ナイ』ちゃんホンマやるやんけぇ!」

(決めたでェ〜〜〜〜! あーしは『財布を消滅させない』でぇ!
 全ロス回避率がわりかし高いんなら、大きく勝てるとこに張らんとギャンブラーじゃねぇ!)

わくわく……!
ニチアサ見てる幼稚園男児みたいにそわそわしながら見守るで!

172小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/11/15(月) 23:34:22
>>170-171

一瞬だけ高島田に視線を移し、再びナイに向き直る。

         コク……

控えめに頷き、改めて『交換』に応じた。
『ベター・ビリーブ・イット』を発動させれば、
ナイの手に『藤色の財布』が現れるだろう。
それと引き換えに、『ラベンダーのサシェ』が、
『何処か』に移動する事になる。

  「――……ありがとうございます」

謝辞を口にしながら、ナイに頭を下げる。
ナイが手にした『財布』は、細かな傷一つ見当たらない。
真新しく、まるで『新品同様』のように見えた。

  「『見つけていただいて』……」

よく見ると、端に小さな『タグ』が付いている事が分かる。
それは『値札』だ。
『買ったばかり』だったため、まだ外されていなかった。

  「高島田さん――」

当然、中身は『空』。
『カード』の類は一枚も入っていない。
それだけでなく、『小銭』も『紙幣』も何一つ。
『新しい財布』を購入した帰りに、自然公園に立ち寄った。
支払いは『スマートフォン決済』で済ませており、
今は『現金』の持ち合わせはない。

  「……お手数をお掛けしました」

高島田に向き直り、居住まいを正して一礼する。

173小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/11/15(月) 23:44:19
>>172

『右手』の『ナイフ』――『ビー・ハート』は消えていた。
何も持っていない手に見えるのは『指輪』だけ。
シンプルなデザインの銀の指輪。
それが『薬指』にはめられている。
『左手の薬指』にある指輪と同じもののように見えた。

174ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』+猫『マシュメロ』:2021/11/16(火) 11:13:17
>>171-173

意外! それは新品ッ!


「財布には……最初から何も入っていなかった……!
 まあ、財布自体も安いものではあるまい。
 失わずに済んでよかったの」


本来、『交換』したものの所有権はナイにあるが、
こういう場合にまでそういう事を言い出すつもりはない。
新品の財布を小石川に渡す。


「この色がふじ色かー」

   「ンニャニャ」


ところで『ベター・ビリーブ・イット』の『交換』は異空間にまで届くのか?
時に、正しさよりも速度が優先されることもある。
場スレという環境においては……
もし後から間違いだということになっても、気にしないでいただきたい……

175高島田 文緒『24kゴールデン』:2021/11/16(火) 22:09:32
>>172-174

「空ッ――――ぽやてぇぇぇ〜〜〜〜ッ!?!?!?」

(それじゃ何かァ!? あーしは最初から何も得ずだったってワケかぁ〜〜〜〜っ!?)

自分が手のひらの上で踊らされていた哀れなピエロたっだことに気づき、
顔を真っ赤にして悲鳴を上げてしまう!
メイクバチバチだか、それをも貫通するくらいに耳が真っ赤に燃え上がる!

(クソクソクソっ! こんなことなら財布を消しとけばよかったァ〜〜〜〜ッ!
 疲れただけでご褒美なしとか、勤労奉仕ですかァ〜〜〜〜ッ、オイっ!)

『ナイ』から『小石川』へと渡される財布を強引に奪い取るか?
ないない、あーしの専門はこっそり盗むことであって、強盗は門外漢だ。
だいいち、空っぽの財布なんか奪ったり消滅させたところで、対して痛くもないだろうしなぁ。

(指輪をこっそり『窃盗』するか……? 左手の薬指って言ったらよぉ、
 価値がそれなりだったとしても、精神的ダメージってやつは見込めへんかァ〜〜〜〜?
 でもなぁ〜っ、指に嵌ってる指輪を『窃盗』できるか、試してなかったよなぁ〜〜〜〜っ……)

ちら、と『小石川』の手を盗み見てにわかに色気づくが、しかしすぐさま考え直す。
うまく抜き取れるかどうか、今までに試したことがないだけに確証がないのが辛かった……。
それに、これ以上やるとそろそろヤバいのではという空気的なサムシングも感じていたので、
爆発しそうなぐらいに悔しいのを抑え込んで、ギリギリと歯ぎしりすることしかできなかった。


「グギ……ギギギ……ギギ……よ、よがっだっすネ゛ェ……ッ!
 財布、ちゃんと見つがっで……ギギッ……いやほんド…………ッ!」

えげつないぐらい引き攣った笑顔で超ぎこちなく拍手をしていた。
全然良かったと思っているようには見えなかった……あまりにも演技が下手すぎるのだ……。

176小石川文子『スーサイド・ライフ』&ビー・ハート『』:2021/11/17(水) 00:03:25
>>174-175

ゆっくりと頭を上げ、高島田を見つめ返す。
その表情は、決して晴れやかなものではなかった。
目の前の少女に、
思い直してもらう事ができなかったのだから。

  「――……ええ」

彼女は、これからも繰り返すのだろうか。
いつか『危険なスタンド使い』と出会ってしまわないだろうか。
心の中にある迷いを噛み締めながら、ただ短く答える。
瞳には、やはり高島田を案じる色が浮かんでいた。
それから躊躇いがちに振り向き、ナイに視線を移す。

  「ナイさん――私の家へ遊びに来ませんか?」

  「『お友達』もご一緒にどうぞ……」

           ニコ……

  「財布を見つけて下さったお礼に……
   『シフォンケーキ』をご馳走します」

やがて口元に微笑を湛え、ナイに呼び掛けた。
彼女が同意すれば、小石川はナイと共に歩き出す。
この『奇妙な出会い』も終幕に向かおうとしている。

177ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』+猫『マシュメロ』:2021/11/17(水) 00:22:47
>>175-176

「ど、どうしたんじゃ?
 おなか痛いのか?」


高島田の異常に、心配そうな様子を見せるナイ。
一方、小石川はペースを一切崩されないクールっぷり。


「お! ケーキじゃと。
 おなか大丈夫か? 食えるか?」


高島田を家へ招く小石川……これは……『誘い』!?
家の中なら盗めるものは多種多様、
小石川がケーキの準備をしている時や、高島田がトイレにたった時など、
窃盗チャンスはいくらでもある。
一方で室内となれば逃亡は難しい。
小石川が咎めるチャンスもまた多いというわけだ。
戦いはまだ……続いているというのか!?


   「ナーン」

「お前も腹が減ったか?
 のう、小石川さん家には猫が食えそうなものもあるかの?」


もっとも、ナイと猫には関係無い! ご相伴に預かろう!

178高島田 文緒『24kゴールデン』:2021/11/17(水) 01:11:09
>>176

「グギギッ……! ち、違うんや『ナイ』ちゃんンン〜〜〜〜ッ……!
 これはな……ッ……おなか痛いんや、のうてなァァ…………ッ!」

(舐め腐りよってぇぇぇ〜〜〜〜ッ! そいつは社交辞令ッ……! 政治的配慮……ッ!
 懐の広さをアピールすることを目的とした、来ないことを前提とした勧誘やァ……ッ!
 よしんば行くなんて言われても、『友達』とは猫を指していた言えるような保険付きのなァ〜〜〜〜ッ!)

分かるでぇ、これはあーしも学校で経験あるからな……!
来ると思ってないけど、むしろ来ないでほしいけど、
周りにいい顔したいからカラオケに誘うとか、そんなやつや……!

『小石川』の器の広さに比べ、『高島田』のなんたる矮小なことか。
打算と金勘定なしに物事を考えるやつなんかいやしないという圧倒的卑しさが生んだ、
ルサンチマン丸出しの歪んだ妬み嫉みがそこにあった。


「グギギギギ……ギッ!」

   バッ!
      バッ! バッ! バババッ!

歯噛みしながらのいびつな笑顔を浮かべつつ、突然素早く落ちた財布を拾い始める『高島田』!(スB)
慌てて戦利品(という名の犯罪の証拠)をパーカーのポケットに押し込んで、
案じるような目でこちらを見つめるふたりに、ばっと背を向け、そして振り返る!

「こっ、これでッ!
 これで勝ったと思うなやァァァ〜〜〜〜ッッ!」

(クソクソクソ! クソがァっ! この借りはいつか絶対に返したるでェェェッ!
 首洗って待っとれやァ〜〜〜〜ッ! ボゲェッ!)

    デケデケデケデケッ!

小物くさすぎる捨て台詞を残して、厚底靴をドタドタ鳴らしながら走って逃げ去った!
50mくらい走ったところで盛大にコケて、「ぶええええぇぇぇ!」という泣き声が響き渡ったが、
それはきっと罰が当たったのだろう。天網恢恢疎にして漏らさずだった。

179小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/11/17(水) 01:38:19
>>177-178

  「高島田さん――」

高島田に向き返り、口を開きかける。
その時には、既に彼女は走り出してしまっていた。
徐々に遠ざかる後ろ姿を見届ける。

  「――また……いつかお会いしましょう」

そして、最後に深々と一礼した。
もし再会できた時には、彼女に思い止まって欲しい。
何よりも彼女自身のために。
それが自分にできるのかは分からない。
ただ、それでも――。

  「ナイさん……」

      スッ

  「行きましょう」

発端となった『藤色の三つ折り財布』をバッグに戻し、
ナイの手を取って歩き始める。

  「……『鶏肉』はいかがでしょうか?」

しばらくして、ナイは閑静な一軒家に招き入れられた。
以前にも訪れた事のある場所だ。
ナイには手作りの『シフォンケーキ』が、
猫には茹でた『ささみ』が振舞われる。
小石川は穏やかな微笑みを絶やす事なく、
一人と一匹を見守っていた。
ある日に起きた奇妙な出会いは、
こうして幕を下ろすのだった。

180ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』+猫『マシュメロ』:2021/11/17(水) 01:54:09
>>179-178

高島田はゲームを降りた……
リスクが高すぎた、というより単にその可能性に気づかなかっただけか。


「なんじゃ、変な娘じゃの。
 やっぱりおなか痛いんじゃ?
 あ、転んだ……」


おなかは痛くないと言いつつ、変な顔をして、捨て台詞を吐いて去っていった。
ナイ視点では意味不明な行動だ。


「鶏肉じゃと。どうじゃ?」

  「ニャーン」


連れだって小石川の家へ向かう。
無欲(?)の勝利というのだろうか。
子供と猫は幸せなひと時を過ごしたのだった。


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