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【場】『 星見スカイモール ―展望楼塔― 』 その2

89 隼士 賢『パンテオン・ロココ』:2021/05/22(土) 12:11:16
>>88

鈴蘭パーカー みょ〜〜〜に鈴蘭の強い匂いが噎せ返るぐらいする感じの
パーカーだったっショ!

けどUFO仲間が増えたのはうれしいし、最後のほうは警備員が駆け付けるぐらいの
大盛況だったっショ!!!

 ・・・・
 けどさぁ


「やぁぁぁぁぁっっっっっっぱ
いまのままじゃ…………UFOは降り立たない気がすんだよなぁ〜〜」

あんなに大盛況だったのに綺麗な星以外に、未確認な光の筋も
不規則な星には無い動きっぽい輝きも見えなかった。

「んんっ? はっはははは ダンシングフラワーキッズ おっちょこちょいだ。
このパーカーのマーク。鈴蘭ってより『スノードロップ』っぽいっショ」

 スノードロップ:花言葉は希望 慰め……又は


「…………やっぱ『地上絵』には『素材』が居るぜぇ。
フラワーキッズは断ったけど、もしも、『素材』になっても困らなさそうなのが
居たり、周りに望まれてんのが居たらだぜぇ?
 ――それって悪い事じゃないし、慈善事業だよなあ キッズ」

 
  スノードロップ:あなたの死をのぞみます


 「ショッ! ショッ!!
さぁ〜〜〜UFOを呼ぶのに更に心機一転!! 一念発起で頑張るっショォォ〜〜!!」

両手を掲げ、力強く叫びつつ闇夜を力強く歩く。

鈴蘭の残り香を通り道に残しながら。

90関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/29(土) 05:58:16

リュックを背負い、ワンピースの上にエプロンを付けた、
お団子頭と泣き黒子が特徴的な少女が、
モール内のスーパーマーケットから出てきた所だった。

「…………ええと」

       キョロキョロ

              『部屋ノ虫除ケヲ 買イ替エタイ』
              『ト 言ッテイタ』 

「ああっそうでしたそうでした!
 フニクラ、ありがとうございます」

              『買イ物ハ 早クスマセテ』
              『血ヲ探スノガ 合理的』

                  スタスタ

声は途中から『スタンド音声』で
独り言を言う奇人とは思われない。          

――――むしろスタンド使いから見た方が、奇妙に映るだろう。

※『あなたの血が必要とされています!』参照
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1617983099/70

91眠目倫『ノワール・デジール』:2021/05/29(土) 07:01:02
 関の近くで気怠げな黒髪の女性がビラを配っている。

「『Quince Nail』ですぅ、よろしくお願いしますぅ」

 歓楽街にある『ネイルサロン』のチラシである。
 よく見るとその女性の爪もネイルがされているようだ。
 梅雨をイメージしているのだろうか。紫陽花のたらしこみに雫を散らした水滴ネイルだ。なぜか右手の薬指だけ鈴蘭のネイルになっているが。

>>90

「あれ? 今なにか変な声がしたようなぁ…。
 血を探す…ってなにかしらぁ…」

 電話にしては普通に会話が聞こえる。
 片方はお団子の少女からだとは思うが、『血を探し』ている声はどこからだろうか。眠目は思わず周囲を見回す。

92関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/29(土) 14:37:52
>>91

声が聞こえてくるのは――やはり『姿』は見えない。
が、よく観察していれば一種の傾向が見えてくる。
その『会話』の時、彼女はほんの僅かに後ろを向く。

「……………」

           …………と、目が合った。

「あのう、チラシ一枚いただいていいですか〜?」

温和な口調で声をかける。
ネイルサロンに足繁く通うほど浮いた金はないが、
爪や手のケアには、それなりに気を遣っている。

体験で安くやってもらえるコースなどがあれば…………

93眠目倫『ノワール・デジール』:2021/05/29(土) 15:03:57
>>92

 先程の声はどこから聞こえたのだろうか。
 スタンドによる声の可能性も考えるが、姿は見えない。眠目は気にしながらもチラシを渡す。

「はい、どうぞぉ。
 クーポンもついてるから、もしよければお気軽にねぇ」

 受け取ったチラシには<まつエクとネイルの店『Quince Nail』>という店の詳細とメニュー、割引クーポンが書かれている。
 メニューはネイルに深爪矯正、ハンドマッサージ、睫毛エクステ等々。下の方に『メンズネイルやってます』との文字が踊る。
 メタ的だが、費用は生活費からの支出になるのでクーポンは無視してもいいだろう。実質無料だ。

 渡した後、先程の声の主が見当たらないことに、小首を傾げつぶやくように疑問の声を漏らす。

「それにしてもぉ、さっきの『血がどうたら〜』ってなんだったのかなぁ…?
 幻聴…? それとも…『アレ』かしらぁ…」

 どうやら、幻聴か超常的な力を疑っているようだ。

94関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/29(土) 16:03:59
>>93

「まあっ、そうなんですねえ〜。
 こういうお店って、普段はご縁がないもので、
 クーポンでお試し出来るなら助かりますねえ」

関が倹約するのは寧ろ『生活費』だ。
ゆえに割引クーポンの存在は有り難い。

「爪を整えてもらうのも興味はありますし、
 ハンドマッサージなんかも、素敵ですけど……」

爪に装飾などはなく、切り方も素人だ。
チラシに視線を落とすヘーゼルアイも、
睫毛に何か特別の工夫をしている様子はない
書かれているメニューに目を通していた、が……

「……ああ!」 「血、ですかあ、ええと」

       『聞コエテイルナラ』
       『隠ス意味ガナイ』

……眠目の耳に、間違いなく聞こえる。
近付いている今なら分かりやすい。
この声は『リュックの中から聞こえる』

       『血ガ必要』『ナルベク早ク』

「……『幻聴』じゃあ、ないですよう。
 あまり大声で大っぴらに言うものでも無いですけど」

             グイッ

関はリュックをおろし、前に抱え直す。

「実は……私の方も、『営業』をしているんです〜」

          フワ…

そして、その蓋を開けると……『何か』が『中にいる』。
ボールのような……『動いている』『普通の生命体ではない』。

95眠目倫『ノワール・デジール』:2021/05/29(土) 16:40:46
>>94

「ハンドマッサージなら、ネイルのお客様にはサービスするからもしよかったらどうぞぉ」

 興味があると理解して、眠目は勧誘にかかる。
 そして、続く言葉にリュックの中身をまじまじと見て答えた。

「あらぁ、幻聴じゃなかったならよかったわ。
 『営業』していたのねぇ。まだ学生さんなのに偉いわぁ」
「もしかして、その子はお嬢さんのスタンドさんかしらぁ?
 営業って言って見せてくれるってことはぁ、その子でなにかするのがお仕事かしら…?」

 話しながら念のため、眠目も『ノワール・デジール』を発現した。
 もしそのスタンドからなにかが射出されたとしても『ノワール・デジール』で触れられるよう、隣に待機させる。
 『血を探す』と言ってる以上、血を見るような結果が想定される。警戒は当然だ。

96眠目倫『ノワール・デジール』:2021/05/29(土) 16:41:17
>>95

97関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/29(土) 21:32:17
>>95

「あぁ、そういうのもあるんですねえ!
 ますます興味が湧いてきましたよう。
 ゆっくり聞かせて貰いたいです……ただ、その前に」

だが、まずは『これ』の説明がいる。
『これ』の話をしながらにして、
ネイルの相談もするのは難しい。

「ふふ、偉くなんてないですよう、
 でもありがとうございます――――ええと、この子は」

              『私ハ フニクラ』
              『本体ハ 別ニイル』

「この『フニクラ』は……
 私のスタンドじゃあないんです。
 私のスタンドは――――」

      ポン

「この『帳簿』……『ペイデイ』の方ですので〜」

説明の前に自分のスタンドを出し、無害をアピールする。
一冊の『本』に過ぎないそれは、実際、危険性も無い。

「私の営業は、『フニクラ』の本体の方のために行ってまして。
 あのう……お時間よろしければ、あちらのベンチで話しませんか?」  

                ス

その帳簿で、少し離れた位置にあるベンチを指す。

お互いビラや買い物袋で手が埋まっているし、立ち話もなんだ。
『献血』と『ネイル』の話をするなら、座ってする方が良いだろう。

98眠目倫『ノワール・デジール』:2021/05/29(土) 21:53:29
>>97

「そうなんですねぇ。お嬢さんのスタンドじゃないんですかぁ…。
 ええ、せっかくですから、ベンチでお話ししましょうかぁ。
 ビジネスのお話になるか、どうかはわかりませんが…」

 帳簿のスタンド、となると攻撃性は低く思える。
 だが、その言葉を信じるにしても情報は足りない。
 それにもう片方のスタンド――『フニクラ』は血を欲しているのだ。警戒は解かない方がいいだろう。

「私の子は『ノワール・デジール』といいますぅ。
 ネイルオフしたりするのに便利な子なんですよぉ。
 このネイル、薬指だけこの子にネイルチップを外してもらってぇ…だからここだけ違うネイルなんですよぉ」

 嘘はついていないスタンドの説明をしながらベンチに腰掛ける。『ノワール・デジール』は隣に立たせたままだ。

「それで……『営業』についてお聞かせいただいてもよろしいですか…?」

99関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/29(土) 22:32:36
>>98

「まあ、お仕事にも使えるスタンドだなんて素敵ですねえ。
 私の『ペイデイ』も『お買い物』に便利なので、重宝はしてますけど」

                ボ ス

「『フニクラ』は『本体が自由に使えない』スタンドなので、
 本体の人は、凄く困っているんですよねえ…………」

眼目の後からベンチに腰掛けて、
買い物袋は自分の脇に置いておく。

「『営業』ですけど……ハッキリ言ってしまうと、『献血』です。
 『フニクラ』は、『スタンドの血液バンクのスタンド』なんですよう」

              『少シ 違ウ』
              『血液バンクハ 公共ノモノ』
              『私ハ 本体ニ 血ヲワタス』

「ああ、そうですね……他にいい表現が見当たらなくって。
 要は、『スタンドから血を採って』『フニクラに溜めて』『本体に渡す』」

リュックの中から浮上する『フニクラ』――――
そのヴィジョンは丸い、まさしくボールで、どこから喋っているのかは謎だ。

「私が任せられてるお仕事は、そう言う事なんです。
 ……ああ、『スタンドの血』っていうのは『フニクラの能力』でして〜、
 普通の献血みたいに、あなたの腕とかから血を採るわけじゃあないんですよう」

と、そこまでで一旦話を切り――――

「この後は、『なんで血を欲しがってるのか』を説明しますけど、何か質問はありますか〜?」

100眠目倫『ノワール・デジール』:2021/05/29(土) 22:52:13
>>99

「本体が自由に使えない……そんなスタンドがあるんですねぇ…」
「お買い物に使えるスタンドって素敵ですねぇ。今の季節なんてお買い物に出るのも憂鬱ですし…」

 浮遊する『フニクラ』に一瞬驚きながら、ただ話しているだけだと理解して様子を見る。

「はい、お話についてぇ、よくわかりました。
 『ノワール・デジール』からその子で血を抜いて、本体の方に血を届けるのがお嬢さんのお仕事なんですねぇ」
「ということは、私の子…それと本体である私に悪影響とか…あったりするのかしらぁ?
 人間だって献血でふらふらしたりするでしょう?」

 献血は眠目も行ったことがある。
 血が抜かれればそれなりに怠くなるものだし、月の物のつらさとはまた違うそれはあまりしたいものではない。
 そのことを思い出し、眠目はあまりしたくはないなと考える。

101関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/29(土) 23:08:17
>>100

「『なんでもできる』わけではないんですけどね〜。
 私自身、こうしてモールまで買い物に来てますし……
 ただ、『フニクラ』は本当に、本体の人には何にも出来ないんです」

             『制御デキテナイカラ』
             『制御ニハ 血ガ必要』

「ええ、そういうわけでして〜。
 そうですね……悪影響は、無いとは言えないですね。
 『ペイデイ』みたいな『モノのスタンド』はあんまりないですけど、
 『人型のスタンド』の人は、少しだけクラっとするみたいです」

自分自身は体験していないのでよくわからない部分もある。

「ちょうど、貧血みたいに。
 ……アレと違って、すぐ治まりはするみたいですけど、
 この後運動する予定があるとかでしたら、おすすめはしません」

だが、『朱鷺宮』の様子などを考えるに重い症状ではない。
とはいえ、それを『軽いので平気です』と言うつもりはなかった。

「ただ……血を集める理由も、そこに関係がありまして。
 今フニクラが言ったように、このスタンドは『制御できていない』……」

  「そのせいで、本体の人は『常に貧血になっている』状態なんです」

それは誠意もだが、『貧血を軽く見る』事は『加宮』を軽く見る事になるからだ。

102眠目倫『ノワール・デジール』:2021/05/29(土) 23:22:51
>>101

「それでも、便利ですよぉ。買い物って大変ですからねぇ」

 なんでもできる訳ではない。買い物するのに制限があるのだろうか。
 それでも便利そうなスタンドだ。

「なるほどぉ。つまり『ノワール・デジール』から血を採ると私もくらくらしちゃうんですねぇ…」
「この後は、チラシがなくなったらお店に戻るだけなのでいいんですけどぉ…。
 私、あんまり献血のくらくら感って好きじゃないんですよねぇ…」

 手元にあるチラシはそんなに厚くない。
 スカイモールという人の多い場所であることを考えればそう時間もかからず終わるだろう。


「つまり、本体の方は常に貧血でくらくらされていて困ってらして、
 なんとかするために『フニクラ』さんを通して血を分けてあげないといけないんですねぇ」

 眠目は悩むそぶりを見せる。
 貧血のつらさは女性であれば誰だろうとわかるものだ。助けてあげられるのであれば助けてあげたい。
 そう思っている時点でもう警戒は解けているのだろう。

「わかりました。では、具体的な『営業』内容について教えていただけますかぁ…?
 お嬢さんは『血』という利益を得るために、どうしますか?」

103関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/29(土) 23:47:00
>>102

「そうですねえ、あんまり『気持ちのいい』感覚ではないと思います。
 本体の人が困ってるのは事実なんですけど……
 そのために、あなたが困ることになったら、収支は結局ゼロですし〜」

「私の方も、もちろん『報酬』は出しますよう。
 本物の献血だって、お菓子とジュースくらい出しますもんねえ」

そこまでドライに物事を考えている訳じゃあない。
だが、ここはあえて利益と損害をはっきりさせよう。

「まず、1つ。貴女の営業に乗らせていただきます。
 『ネイルサロン』……以前から興味はありましたけど、
 血をいただけるなら、必ず『顧客』にならせていただきますよう」

関はあくまで『倹約家』であり『赤貧』に喘いでいる訳ではない。
勿論余裕はないが、ネイルサロンに行けないほど苦しいわけでもない。
無論、それは倹約の賜物でもあるわけだが――――

「それと……私の『ペイデイ』を1度、あなたのために使いましょう。 
 能力は『あらゆる日用品や食料品を、好きな値段で買える』事。
 上限は1万円で、値段に応じて品質は上下します……
 『経営者』のあなたになら、この『有用性』は分かると思います」

        「もっとも、使えるお金にも制限がありますので、
         『いつでも自由に』……とは、言えませんけどね。
         小口で良いならこの場でも出来ますけれどお、
         大口なら、この仕事が終わるまではお待ちください」

報酬――――『20万円』。その一部を使うのは本来なら避けたい。
本末転倒でもあるからだ。だが、慈善事業にならない範囲でなら『使うべき』とも考える。

104眠目倫『ノワール・デジール』:2021/05/30(日) 00:09:51
>>103

 ふむふむと声を出しながら提案された条件を吟味するように眠目は目を閉じた。

 まず第一の条件。
 『顧客』となってくれること。顧客が増えるのは純粋に喜ばしいことだ。
 そしてそれが若い女性であれば、口コミから新しい顧客を呼ぶ可能性もある。
 リード顧客の広がりは今後の経営を考えると『美味しい』と判断できる。
 その上で、眠目自身の趣味もある。若い子の目玉は白目が青白いことが多い。それがなかなかに美しいのだ。

 そして第二の条件。
 一度だけスタンドで買い物をさせてもらえる権利。これは品質を高めることもできるらしい。
 なにを買うとしても、損になることはないだろう。

「……わかりましたぁ。
 とてもいいお話だと思います。『営業』をお受けしましょう」
「ただし、『買い物』については今すぐには思いつきませんのでぇ…。
 またいつかまで保留とさせていただければと思います」

 買い物できるのは『日用品』だけらしい。
 一番に思いついた『ガラスの目玉』はどう考えても『日用品』ではない。
 ビスクドールから目玉を剥ぐのもはばかれるのでイブリアイを頼もうと思ったが、残念だ。

「『血』は今ここで採りますかぁ?」

「あ、そうだ…。
 それと、とてもいい条件をいただけたのでぇ、もう一つこちらもサービスさせてください。
 私の子も、輸血ができるみたいなので、もしかしたら本体の方のお役に立てるかもしれませんよ?」

 年下の女の子が、これだけいい条件を出してくれたのだ。
 これくらいのサービスはしてもいいだろう。
 とはいえ、『ノワール・デジール』を実際に輸血に使ったことはまだないのだが。

105関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/30(日) 00:28:01
>>104

「まあっ、いいお返事をありがとうございます〜。
 きっと、本体の人も喜んでくれると思いますよう……!」

会心の笑みが浮かぶ。
『遊部』ほど上手くはやれていないが、
これでまた一歩前進させる事が出来た。

「ええ、『連絡先』を後で伝えておきますので、
 買い物が決まったらまたその時に教えてくださいね。
 もちろん、少しお待たせする事もあると思いますけど」

「血は〜、そうですね、ここだと少し目立ちますけど」

              キョロ …

           『目立ッテモ スタンド使イニダケ』
           『次ノ 人間モ 見ツカルカモシレナイ』
           『合理的』

「まあ、そうですねえ……特に、人が多いわけでもないですし。
 ……? サービスですか? ええと、それは『ノワール・デジール』の能力で?」

「どうでしょう、ありがたい申し出ですけど、具体的には『どういう』?」    

と、『フニクラ』に『注射器』を出させつつ問いかける。
『ノワール・デジール』――――ネイルに作用する事しか、今のところは分かっていない。

106眠目倫『ノワール・デジール』:2021/05/30(日) 00:45:36
>>105

「本体の方に喜んでもらえるのなら嬉しいですねぇ…」
「わかりました。
 では、ここで今。さくっと採ってもらいましょうかぁ」

「連絡先についてはぁ、こちらの連絡先がチラシに書いてありますので。
 そちらにスタンプを送ってくだされば、こちらで登録しておきますねぇ」

 今はチラシに店舗用のアカウントを記載するのも当たり前の時代である。
 便利な世の中になったものだ。

「ちょっと、私の子は能力を使うのに音がしてしまうので今ここでお見せできないんですがぁ…」
「この子は物を瓶詰にしてしまうことができるんです。
 たとえばネイルチップとか、血液とかぁ…。
 瓶詰にしたものはぁ、他の方に移植することができましてぇ…」
「たとえばその方の血液型がとっても特殊でぇ、
 輸血を受けられないという状況でもこの子を使えばぁ、他の人の血を拒絶反応なしに輸血することができます」

 普通の人であれば貧血は輸血すれば済んでしまう。
 もし、血を作る機能が弱いのであれば様々な方法を使う必要はあるだろうがそれまでだ。
 つまり、普通の人ではないから輸血を受けられないのではないかと眠目は考えたのだ。

「もちろん、本体の方に会わせたくない等あるとは思いますので、
 これはぁ、あくまでも提案ですね。いかがですか?」

107関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/30(日) 01:09:25
>>106

「ああ、そうなんですか!
 それじゃあ私の方からスタンプを入れておきます〜」

チラシをリュックの中に入れておく。
公式アカウントは双方向で無いものもあるが、
個人経営ならそうでは無いのだろう。

そして、『ノワール・デジール』の能力だが……

「なるほど……つまり、貴方を本体の元に連れて行って、
 そこで『私の血を』瓶詰めにして移植できれば……
 少しくらいは、楽になるかもしれないって事ですね」

特に何か意図があるわけではなく、
関の常識の範囲での献身として、
瓶詰めにする血は『自分の物』だ。
それは『前提』だった。

「……少し考えさせてください、というより、
 本体の方に一度確認を取ってみますね。
 とりあえず今日は、『フニクラ』の力を使いましょう」

加宮が『通常の輸血』で助かるとは思えないが、
短期的に楽になる可能性はゼロではない。
彼女への確認次第では、違った一歩も踏み出せそうだ。

             ……が、まずは。

「それじゃあちょっとだけチクっとして、
 クラっとすると思いますけど……
 少しの間、我慢してくださいねえ」

      『貴方ノ血ガ 必要トサレテイマス』

          シュッ

注射器を抜き取り、構える。
これについては勿体ぶる方が申し訳ないので、
眠目の準備が出来ていれば、そのまま採ってしまおう。

108眠目倫『ノワール・デジール』:2021/05/30(日) 05:52:56
>>107

「私の子で輸血する血は同じ生物ならいいらしいのでぇ、
 たまたまそこにいる人でも、私でも、病院で死にそうな人でも採れちゃうとは思います。
 ただ、輸血が必要な状況があまりないのでぇ、私の経験不足はあるのですがぁ」

 確認を取るという言葉に頷きながら、『ノワール・デジール』を『フニクラ』に近付ける。

「では、『営業』上手なお嬢さん。どうぞぉ」

 眠目は献血を受け入れるようだ。

109関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/30(日) 21:31:20
>>108

「今回は、他の人を巻き込むのも悪いので……
 それをするなら、私の血が良いとは思います。
 でも……すごく沢山の人が助かる、素敵な能力なんですねえ」

勿論何か条件はあるのだろうが――――
完全な輸血や移植が出来るだけでも、夢の能力だろう。
もっとも医者や患者にとって、と言う話だが。

「ふふ、上手にやれてればいいんですけど……はあい採りますよ〜」

       プス

            キュウウウウウウウウ ・・・

注射器の中には少しずつ、『血』が溜まっていく。
そして、『眼目』には『疲労感』が。
血液そのものを抜かれる脱力感、という風ではなかった。

「……よし、こんなものですねえ〜。『献血』へのご協力、ありがとうございます」

                ペコ

           『コレデ マタ一歩 制御ガ近付ク』
           『ダガ マダマダ 必要』
           『時間ハ ソレホド 長クハ ナイ』   

「ええ、そうですね……早速、今日明日にでも、これを届けに行かなくっちゃあ」   

『フニクラ』に注射器を戻しながら、眼目に一礼し――――大きな三歩目を喜んだ。

110眠目倫『ノワール・デジール』:2021/05/30(日) 21:53:04
>>109

「もし、お手伝いできそうなら教えてくださいね。
 確かに、私が医者であればいろんな人が助けられたかもしれませんねぇ」

 眠目は『ノワール・デジール』から抜かれていく血を眺めながら、少しずつだるくなっていくのを感じた。
 普段からどこかだるそうな印象のある眠目だが、今はいつもより気怠げだ。

「ふぅ…。『営業』お疲れさまでしたぁ。
 では、来店お待ちしていますねぇ。歓楽街の大通りから一本入った裏通りでやってますのでぇ」
「これでぇ、『フニクラ』さんの本体さんがよくなるといいんですが…」

「うーん、なんだかだるいですし、チラシ配りはもう切り上げて帰っちゃおうかなぁ…。
 うん…。そうしましょう…」

 眠目は自営業ならではの気軽さで今日は仕事を切り上げることにしたようだ。
 このままなにもなければ帰るだろう。

111関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/30(日) 21:58:06
>>110

「あっ、でも、ネイルサロンでもお役立ちでしょうし……」

自分の言葉が『皮肉』になっていた、
そんな気がして少しだけフォローした。

「今日はありがとうございました。
 『お返し』はどちらも忘れませんので、
 近いうち、お店の方伺わせていただきます〜」

「私……『関』と言いますので、
 その名前で予約も入れますね」

ベンチから立ち上がり、改めて頭を下げ直す。

「多分今日中には治るとは思いますけど、
 帰り道はお気を付けてくださいねえ。それではまた……」

『フニクラ』をリュックの中に戻して、まずは買い物の続きに行こう・・・

112眠目倫『ノワール・デジール』:2021/05/30(日) 22:21:54
>>111

「そうだ、私も名前を…『眠目倫(サッカリン)』といいます。
 では、ご予約お待ちしておりますねぇ。『関』さま」

 そう言い残し、眠目はゆっくりと帰路についた。

113宗像征爾『アヴィーチー』:2021/06/05(土) 18:53:40
>>766

かつて俺には生きる意味があった。
それを失った時、俺の中で別の目的に置き換わった。
それを果たした時、俺には何も無くなっていた。

       ザッ ザッ ザッ

今の俺にとって『仕事』が全てだった。
他にやるべき事が無いからだ。
だから、休みの日が来る度に困らされる。

       ザッ ザッ ザッ

苦肉の策として、何かやる事は無いかと街を歩く。
大半は徒労に終わる。
そして、俺は『次の仕事』に向かう。

          ザッ

「何か見つかるといいが――」

展望台に立ち、そこから街を見下ろす。
『何か』を探す為だ。
それが何なのかは俺にも分からない。

114遊部『フラジール・デイズ』:2021/06/05(土) 19:12:21
>>113


詳細↓
【対応してくださる方々へ】
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1617983099/70n

「どうかなされました? そんな所で」

後ろから声を貴方はかけられる。振り向けば、居るのはフードで顔が影で
見えない黒の外套と白い手袋で素性を隠してる怪しい恰好の人物だった。
声は、年長の女性のように感じられる。そして、背にはリュックを背負っている。

「ここら辺の景色を眺めてるだけでしたら、余計なお節介でしたが。
もしも、何か身投げのような事を考えてたり深い悩みが
おありのようなら、私としても放っておけませんでしたので」

そう、少しだけ困った声色で女性は告げた……。

115宗像征爾『アヴィーチー』:2021/06/05(土) 20:33:08
>>114

しばらく街を見下ろしていたが、目に付く物は見当たらない。
最初から見つかる筈は無いのかもしれない。
俺自身、何を探しているのかも分からないのだから。

「気にしないでくれ。別に深い理由は無い」

          ザッ

振り返り、相手の姿を一瞥する。
その風体からは、『普通ではない』という印象を受けた。
だからといってどうという事も無いが、
『奇妙な人間』なのは確かだ。

「俺よりも、あんたの方こそ何かありそうに思えるが」

『灯台下暗し』という言葉を思い出す。
展望台の『外側』には見つからなかったが、
『内側』には見つかったようだ。
心の中で、目の前に立つ相手が、
俺が探していた『何か』である事を期待していた。

「――――違うか?」

116遊部『フラジール・デイズ』:2021/06/05(土) 23:02:49
>>115

>俺よりも、あんたの方こそ何かありそうに思えるが
>――――違うか?

「いえ、違いませんよ。
ある物を収集してるのですが、少しばかり集まりが悪くてね。
時間制限もあるので、少し焦りもあるのが実情で」

そう、女性らしい人物は軽く小首を傾げる感じでつぶやく。

「『スタンド』
その物体より血を集める事で、とある人物を治療すると言う
任務にあたっていましてね。
 貴方、心当たりはありませんか? この単語に対し」

(私の勘が正しければ……この人物。
凄まじい力が内側に感じられる)

 色々な思惑を秘めつつ、迂遠な会話より直球な問いが
好ましい事を信じて問いかける。

117宗像征爾『アヴィーチー』:2021/06/05(土) 23:35:20
>>116

「ああ、『心当たり』はあるな」

『スタンド使い』は『スタンド使い』と遭遇する可能性が高い。
そういう話を聞いた事がある。
恐らくは、これも『その一例』といった所だろう。

「そして、俺が『スタンド使い』なら、
 俺の『スタンド』から『血』を採る」
 
「――――そういう話か?」

この女の話が本当なら、
俺のスタンドが役に立つという事になる。
『アヴィーチー』の能力は、
傷付けるか殺す事しか能が無い。
誰かの命を救う事に使えるなどとは、
今まで考えもしなかった。
少しでも足しになるのなら、受けるべきなのだろう。
だが、心の奥には『迷い』もあった。

「一つだけ聞かせてくれ」

「もし『血』が集まらなかった場合、その人間はどうなる?」

『俺の血』が誰かの体に入る。
思い浮かべたくも無い考えが頭を掠め、
いささかの躊躇いが生じた。
『どんな食べ物も入ってしまえば同じ』とも言えるが、
それでも考えずにはいられなかった。

118遊部『フラジール・デイズ』:2021/06/06(日) 00:19:33
>>117

>もし『血』が集まらなかった場合、その人間はどうなる?

「そうですね……まず、実際に見せるべきでしょう。
――フニクリ」

 『アナタノ 血ガ 必要ト サレテ マス……』

 女がリュックを広げると、その中からバレーボールサイズの
注射器が生えたスタンドが出てくる。

「私のスタンドではありません、このスタンドの本体が重度の貧血で
活発に動けないので私が代行してスタンドから血……もといエネルギーの塊を
採取してるんですよ。
 あと1月程が、スタンドに聞いたところタイムリミットのようです。
時間が過ぎると本体に対して自動操縦らしい、このスタンドが何かするか。
もしくは周囲から無差別に人間の血を奪おうとするか……」

どちらにせよ良い事は起きそうにないですね。と締めくくる


「いまのところ、数人のスタンドから注射器で血のようなものを
集めて本体に投与しましたが、特に問題はないので気がかりなのは
タイムリミットを迎える事だけですね。
 残り2、3人に献血を望まないといけないので悠長にしてられないんですよ」

これは全て本心だ。
 出来る限り、早く加宮には『治療』を施し、その『結果』を見届ける。

失敗例も貴重だが。想像出来うる最悪の形を見るより、未知なる回復を
観察するほうが有益だ。

119宗像征爾『アヴィーチー』:2021/06/06(日) 00:40:53
>>118

「『事情』は分かった」

話を聞く限り、何が起こるかは分からないが、
良くない結果を招く事だけは確かなようだ。
『俺の血』が誰かの体に入るというのは、
決して好ましい事とは言えない。
だが、不鮮明な問題を看過するよりはマシだろう。

       ――――ズズゥッ

傍らに『アヴィーチー』を発現する。
『右腕』に『ノコギリザメ』の意匠を持つ人型のスタンドだが、
そこに『鋸』は見えない。
今は出しておく必要が無いからだ。

「多少でも誰かの役に立つなら『俺の血』を渡そう」

          スッ

       「やってくれ」

おもむろに『アヴィーチー』の『左腕』を差し出す。
『右腕』を出さないのは、せめてもの配慮だった。
どちらを出そうが『採る物』は変わらないだろうが、
『気持ちの問題』だ。

120遊部『フラジール・デイズ』:2021/06/06(日) 01:00:17
>>119(特に何もなければ次で〆ます)

「判断が早く助かります。それでは」

 『ゴ協力 二 感謝 イタシマス』 

  ズ  ギュ   ゥ  ン……。

『アヴィーチ』に対し『フニクリ』の生えた注射器によって『採血』

(これで、残り2名程がノルマだな……)

彼女『関』が、自分より上手くやってる事を祈りつつ
『フラジール』として演じつつ告げる。

「ご協力、感謝します。
お礼 と言うには少し違いますが。私は『フラジール』
『アリーナ』で働いており、幾らか鍛えてる方達には『紹介状』を渡してます。

主に闘技場に出たい方へ渡すんですが、今回、献血にも協力してくれた手前
有事の際にアリーナと伝手を持ちたい時に、この場所への連絡をしてみれば
もしかしたら手助けになるかも知れません」

121宗像征爾『アヴィーチー』:2021/06/06(日) 01:16:57
>>120

『アヴィーチー』から『血』を採られた直後、
全身に虚脱感を覚え、片手で手すりを掴んで体を支える。
だが、幸い意識は鮮明だった。
ここから歩いて戻るだけの余力があれば十分だ。

「『アリーナ』の人間とは、何度か顔を合わせた事がある。
 必要になるかどうかは分からないが、貰っておこう」

『アヴィーチー』を解除して、『紹介状』を受け取る。
喉から手が出る程に欲しい物でもないが、
持っていて邪魔になる物でも無い。
俺にとって何よりも有意義だったのは、
探していた『何か』を見つけられた事だ。

「あんたのお陰で『意義』のある時間を過ごせた」

       スッ

「――――感謝する」

手すりから手を離し、姿勢を正して『フラジール』に一礼する。

122遊部『フラジール・デイズ』:2021/06/06(日) 09:05:28
>>121(ご協力に感謝いたします)

「えぇ、お気を付けて」

宗像の去る後ろ姿を見届け、その人影が完全に見えなくなってから
そう言えば、彼に自己紹介もしてないし名前も聞かなかったなと
今更ながらに思う。

(まぁ、良い。この街の力が働くなら引かれあう可能性も高い。
それにしても、少し『ライ』に近しい気配を感じる気がした。
……次に会う事があれば、気に掛けるとするか暫し)

暫し彼が眺めていたように自分も見える景色の街並みを眺めてみた。

何時も通り 『私』には何の感慨も衝動も感じえない風景だ。

あの男(宗像)は何をこの景色に思っていたのだろう。

風景の中で流れる雲が目の端に移る間ほどに、その事を考えて。
そして、無意味な事だと結論付けて足を展望台と反対に向ける。




「……行くか」

123ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/06/09(水) 22:26:34


モール内のベンチに座り、なにやら色々と荷物を広げている金髪の子供がいた。


「これをこうして」


すぐそこに別のベンチがあるが、邪魔といえば邪魔だ。

124夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2021/06/10(木) 19:46:56
>>123

「ゲンキか??『フェアチャイルド』??」

『図書室で見かけた子供』に話しかけた。
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1453647476/917-938

「ナニこれ??『フェアチャイルド』??」

荷物の一つを手に取って見る。
そんなコトより、
『フシギのクニのサカサマぶ』にはいらないか??
げんざいのブインは、アリスと『ミルドレッド』だ。
イマはいると、オリジナルボールペンもついてくる!!
ただし、『さかさまのクニ』にチョウキタイザイすると、
アタマにちがのぼってズツウがするらしいぞ。
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1614349342/69-79

125ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/06/10(木) 22:00:29
>>124

「ぬお……?
 アリスちゃん? お久しぶりじゃな。
 わしは……あまり元気ではないの。最近、暑くてな……ここは涼しいが」


自分を不思議な呼び名をする女の子。心当たりがある。
そう思って振り向くと見覚えがある顔。
以前会った時は制服だったのだろうか? 今はどうだろう。
この子供は相変わらずぶかぶかの服を着ているが、夏だから薄着だ。


「それは看板……いや旗? なんて言うんじゃろうか。
 ここにくっつけるんじゃが」


夢見ヶ崎が手に取ったのは、ハンカチ……だろうか。
手触りの良い生地で端にレースがついている。ちょっと高そうだ。
その真ん中にはデカデカと黒く『ん』と書いてある。
それから、子供の指さす先に置いてあるのは、竹刀。

同時にどこかから電波が飛んできたが、この子供が
スタンド会話というある種のテレパシー能力を有する超能力者であっても、
地の文に反応する能力は無く、『不思議の国〜逆さまの裏技〜』に入部する事は出来なかった。

126夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2021/06/10(木) 22:55:17
>>125

振り返ると、そこに『アリス風のファッション』で立っていた。
だが、どことなく『パンキッシュ』なイメージだ。
頭の上にはリボン結びにした派手なスカーフ。
青いサングラスを掛け、
両手の爪にはカラフルなネイルアート。
ちなみに、前に図書室で会った時も同じ格好をしていた。
そういえば、セイフクをきてたバメンなんか、
イマまであったか??
『なかった』に300エンかけよう!!

「あ〜〜〜!!わかる〜〜〜!!
 じつは、アリスもウミのちかくでブッたおれたコトがあるぞ。
 たのしくなってはしりまわってたら、
 きゅうにクラッときてな…………」

『あの時』の事を思い出す。
たしか、ダレかにたすけてもらったんだっけ??
ぐたいてきにいうと、こんなカンジ↓だ。
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1453049221/711-729

「おいおいおいおいおい。
 いくら『カンジ』がよめないからって、
 さすがにコレぐらいはよめるぞ」

        「『ん』ってかいてある!!」

      ドォォォォォォォ――――――ンッ!!

『ん』じゃあ、つづけられないじゃないか!!
つまり、アリスの『かち』だ。
いや、まてよ??
『ん』っていってしまったから、アリスの『まけ』なのか??
まさか、こんな『しんりトリック』をしかけていたとは……。

「よし!!じゃあ、はやくつくろうぜ!!」

ハンカチと竹刀を両手で持って、フェアチャイルドを急かす。
でも、ちょっとジミだな……。
『あ→ん』とかどうよ??
『あ』から『ん』までゼンブあるってイミで。
おん??コトバにしなきゃわからんのか。

「――――『あ→ん』とかどうよ??
 『あ』から『ん』までゼンブあるってイミで」

というコトで、コトバにだしてテイアンしてみよう。
ジッサイにコトバにしないとつたわらない。
ダイジなコトだ。
このまえ『ふくろうカフェ』でみかけた『シロフクロウ』も、
コトバにしてないから、アリスにつたわらなかったんだろう。
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1607077443/266-275
こんどあったら、
コトバにするたいせつさをキョウユウしたいトコロだ。

127ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/06/10(木) 23:09:09
>>126

学校で放課後に勉強している時もその恰好ということは、
授業もそれで出ていたのだろうか……その真相は、子供には知り得ないことだが……


「なんと。それは気を付けなくてはいかんぞ。
 熱中症というやつじゃろう。テレビでやっておった」


言いながら、子供は手元を動かす。
ベンチには、リュックの他、同じようなハンカチが数枚に、万年筆が置いてあった。


「なるほど。全部ある……よろず屋というわけじゃな?
 じゃが実際、なんでもあるわけじゃないからの……
 それにやっぱり看板はわかりやすさじゃ」


3枚のハンカチに書かれた文字は『こ』『う』『か』
それを、夢見ヶ崎が持つ竹刀の竹の隙間に挟む感じで差し込んでいく。
とりあえずくっつくが、安定性は微妙だ。

128夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2021/06/10(木) 23:43:01
>>127

アリスはアリスだからアリスなのだ。
つまり、アリスはアリスってコトになるな。
ナットクした??

「なんだ〜〜〜。
 ソレをさきにいいたまえよ、フェアチャイルド」

ゼンブあわせると『カンコウ』になるな。
つまり、フェアチャイルドは、
あたらしい『ツアー』をキカクしているのか……。
どこにいくかがモンダイだ。
やっぱり『サカサマのクニ』かな??
あそこはニュウコクシンサがキビシイぞ。

  「『ドクター』――――」

      ズギュンッ

          「――――そして『こう』だ!!」

               シュッ

『ドクター・ブラインド』を発現し、
『爪』の先でフェアチャイルドを軽くつつく。
それによって、『超人的四感』の一つである、
『超触覚』を移植する。
つまり、手先の感覚が超人的に鋭敏になる事を意味する。
つまり、なんとなく『キヨウさ』がアップするんじゃない??
ってカンジだ。
で、ジッサイのトコどうよ??

129ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/06/10(木) 23:53:12
>>128

どういうことだってばよ!?


「ぬわー!
 なんじゃ!? これは一体!?」


器用さがアップ!
鋭敏になった感覚に驚いた声を上げる子供。
それはそうと、竹刀の隙間に挟むという方法がゴミなので、結果は変わらない!


「おおおお、できた」


引っ張ると取れそうだが、とりあえずくっついた。
上から順に『こ』『う』『か』『ん』だ。
『かんこう』ではないらしい。
そして竹刀をリュックに入れ、背負う。
リュックからはみ出た竹刀にはためく『こうかん』の文字。
子供の脳内イメージ的には桃太郎の背負った『日本一』と書かれた旗みたいな感じだ。
実際は支えが無いのでハンカチは垂れ下がり、非常に読みにくい。

130夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2021/06/11(金) 00:11:52
>>129

「うんうん、これでフェアチャイルドもイチニンマエだな!!」

完成した旗を前にして、満足そうに頷く。
けっきょく『イショク』したイミがあったかって??
きくんじゃねーよ!!

「わるくないけど、もっとビシッとしたほうがイイな。
 ぜんたいのバランスと、
 フォルムとシルエットがうんぬんかんぬん…………」

「――――あ!!」

        ダダダッ

何かを思いついた顔で、唐突に走り出し、
近くのコンビニに入った。
少しして戻ってきた手には商品が握られている。
『接着剤』だ。

「『コレ』とかどう??よくない??」

とりあえず固定に関しては多少マシになるかもしれない。
ならなかったとしてもセキニンはもてない。
そのまえに『ジニン』してセキニンのがれしよう。
いわゆるオショクジケンだ。
フェミレスでつかえるかな??

131ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/06/11(金) 00:24:53
>>130

「ダメかの?」


バランスだのフォルムだのシルエットという話はよくわからなかったが、
その反応に不安になったらしい。
しかし位置的に子供から旗は見えない。
自分の尻尾を追う犬のように、その場でくるくる回り、旗を視界の端に収めようとする。


「おや? アリスちゃん……どこへ?」


回っていると夢見ヶ崎がいない……
しばし、どこへ行ったかと不安そうにキョロキョロと見渡していると、
コンビニから出てきたので小走りで駆け寄った。


「こ、これは……わざわざ、わしのために?」


チラチラと夢見ヶ崎の顔と『接着剤』を交互に見る。

132夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2021/06/11(金) 00:43:45
>>131

ちなみに『フェミレス』っていうのは、
さいきんオープンしたファミレスのコトだ。
けっしてまちがえたワケじゃないぞ。
きづかなかったヒトは、きかなかったコトにするように。

「じゃあさじゃあさ、コレ『こうかん』しない??
 しんきオープンきねん『だいいちごう』だ!!」

『こうかん』って書いてるくらいだし、
『交換』した方がいいのだろうと考えた。
アリスはクウキがよめるのだ。
『ふくろうカフェ』で『あまこう』にもチューイされたし。

「で、ナンかイイのない??」

接着剤を差し出しつつ、リュックを見る。
シンソウカイテンしたみせにはいるのって、
なんかトクベツカンあるよね。
イチバンブロにはいるのににてるな。
いや、つもったユキにアシアトのこすのににてるか??
それとも、バケツプリンのひとくちめを、
スプーンですくうときににてるかもしれない。
そうか、わかった!!
『フェミレス』にはいるときににてる!!

133ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/06/11(金) 00:56:23
>>132

気づかなかった……!


「それはグッド、ナイス、良いアイディアじゃの!
 ヘイラッシャイ」


お客が来た時の歓迎の呪文を唱え、いったんリュックを降ろし、中を漁る。
まあ、『記憶交換』なのだが、それにしたって交換のタネが必要だからだ。
タネ自体はなんでもいいのだが。


「これはどうじゃ? 『シオタブレット』
 美味くない菓子かと思っておったが、
 最近見たテレビによると熱中症に効くらしい」


と、取り出したのは、包みに入った白い錠剤のようなものだ。


「ふうむ、これだけではちと寂しいか?
 夏ははじまったばかりじゃし、もっと沢山だすか?
 それともお菓子かの? お菓子なら結構色々あるんじゃが」

134夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2021/06/11(金) 01:12:58
>>133

いかなるときでもビジネスチャンスをのがさない。
それが『セイコウシャ』のヒケツだ。
コレさえあれば、タワーマンションのさいじょうかいで、
ガウンをはおってワイングラスをころがせるぞ。

「う〜〜〜ん………………」

「もうひとこえ!!」

悩んだ末に、他の商品を要求した。
『シオタブレット』だと、ちょっとイマイチなカンはいなめない。
ウサギにたとえると『ネザーランド・ドワーフ』くらい。
セカイさいしょうのウサギらしいぞ。
セカイさいだいの『フレミッシュ・ジャイアント』とはいかないまでも、
もうちょっとほしいトコロだ。

「めずらしいヤツとかない??
 え〜〜〜と、ナンかこう……パッとしたヤツがいいな!!」

そこはかとなくフワッとした注文をつける。
センスというかフィーリングというか……。
まぁ、フェアチャイルドにオマカセでイイんじゃない??

135ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/06/11(金) 01:34:09
>>134

『フレミッシュ・ジャイアント』はアカン。アレはデカすぎや。
その点、『ネザーランド・ドワーフ』は立派やね。自分が小動物やと心底理解しとる
(ヘイトスピーチ)


「一番凄いのは……アレじゃが、時間が経つと消えてしまうからの……
 となると……うーむ、これでどうじゃ!」


と、出現したのは、一抱えほどもある茶色い塊。
柔らかそうだ……クッションだろうか?


「ピーィィ」


いや、これは……『ぬいぐるみ』だッ
羽は無いが足と嘴がついている……キーウィという鳥の『ぬいぐるみ』


「ピーィィ」「ピーィィ」「ピーィィ」「ピーィィ」「ピーィィ」


押すと鳴くらしく、子供が抱えている間、ずっと音が再生されている。
しかしデカい。子供の顔は埋もれてしまっている。
凄いと言えば凄いが、持ち帰るには邪魔だろうか?
炎天下でこれを抱えて帰るのは暑苦しそうだ。


「これがダメなら……うーむ、アイスとかもあるが」

136夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2021/06/11(金) 01:49:11
>>135

    バァァァァァァァ――――――ンッ!!

とつじょとしてあらわれた、きょだいな『ナニか』……。
ワレワレは、ついに、
そのすがたをとらえるコトにせいこうした!!
こんや、そのゼンボウがマボロシのベールをぬぐ……!!
チジョウハはつほうそう!!
ほんぺんノーカット・オリジナルふきかえつき!!

「ナニこれ??『フェアチャイルド』??」

        ガシッ

奇しくも、最初のセリフと同じ事を喋りつつ、
ぬいぐるみを掴む。
その瞬間に音が鳴り出した。
アリスのココロにひびくワンダーなサウンドだ。

「『コレ』にきめた!!『コウカン』だ!!」

        ズイィッ

『キーウィぬいぐるみ』と引き換えに接着を手渡す。
巨大なそれを抱えて満足げな顔だ。
どうでもイイけどウマそうなナマエしてるとおもった。

   「ピーィィ」「ピーィィ」「ピーィィ」「ピーィィ」「ピーィィ」

その間、ずっと音は鳴り続けていた。
通り過ぎる人が、それを見たりしている。
シュールな光景だ。

137ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/06/11(金) 01:55:45
>>136

「これは……トリじゃ!」


知らないのか忘れたのか、名前は伝えられなかった。
羽が無いので、実在の動物と知らなければ、何かのキャラクターと思うかもしれない。


「これをこれにつければよいわけじゃな」


道行く人に奇異の目で見られる、謎の音を発する茶色い塊を抱きしめる少女。
一方子供は、そんな光景を気にせずリュックを降ろし、旗を接着剤で補強しようとしていた。
まだ効果が残っているならば、今度こそ『触覚の鋭敏化』が役に立つだろう。
効果が消えているならば指にくっついた接着剤で大変なことになるかもしれないが。

138夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2021/06/11(金) 02:12:24
>>137

  「ピーィィ」「ピーィィ」「ピーィィ」「ピーィィ」「ピーィィ」

「――――『トリ』か!!」

『キーウィ』の存在は知らなかった。
ゆえに、謎の生物と認識していた。
もしかすると、ミチのセイブツかもしれない。
だいいちはっけんしゃとして、
ナマエをつけるひつようがあるな。
あとで、ガッカイにテイシュツしよう。

  「ピーィィ」「ピーィィ」「ピーィィ」「ピーィィ」「ピーィィ」

「うんうん、ソレをソレにつければいいワケだ」

ぬいぐるみを抱えたまま、旗の完成を見守る。
前が見づらいが、何とか見えている。
そして、まだ解除していないので、
『超人的触覚』は残っていた。
きっと上手い事いくだろう。
もしうまくいかなかったとしても、セキニンはとらない。
オショクジケンで『フェミレス』にいくよていだからだ。
『フェアリー・ミトン・レストラン』のりゃくらしい。

  「ピーィィ」「ピーィィ」「ピーィィ」「ピーィィ」「ピーィィ」

139ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/06/11(金) 02:23:32
>>138

「完成じゃ!」


竹刀にハンカチがしっかりと接着された。
リュックに竹刀を突き刺し、背負いなおす。
相変わらず布が垂れて文字が読みにくいが、
これで少なくとも気が付いたら取れているということはないだろう。


「これでよし、じゃな。
 さっそく外で営業……いや……それは暑そうじゃな。
 やはりさっきのベンチに居ようかの。
 アリスちゃんも涼みに来たのかの?」


旗を作るという目的は達成したが、まだ帰る気は無さそうだ。
夢見ヶ崎の予定など知る由も無い子供が問いかける。

140夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2021/06/11(金) 02:41:09
>>139

しかたねえなぁ〜〜〜。
せっかくだから、つきあってやるか!!
このオショクジケンはライシュウまでつかえるから、
またこんどでいいや!!

       ストンッ

「まぁ、そういうコトだ。
 もうちょっとしたらすずしくなるから、
 それからエイギョーしたらいいんじゃない??」

             ドサァッ

「ネッチューショーでたおれたらタイヘンだからな〜〜〜」

フェアチャイルドについていって、自分もベンチに座る。
隣には『トリ』という名の謎生物のぬいぐるみを置いてある。
『トリ』……いったいナニモノなのか……!!

「ヒマだから、すずしくなるまで『しりとり』しない??
 『こうかん』からスタートで」

おい、チョットまてよ……。
『ん』じゃあ、つづけられないじゃないか!!
そんなこんなでジカンはすぎていったという。
あらたな『はたあげ』とともに、
あのでんせつのコンビがかえってきた!!
アリスとフェアチャイルド・再会編――――完!!

141ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/06/11(金) 02:57:45
>>140

「うむうむ。熱中症には気を付けんとな」


レストランに行くところだったなど、これまた子供が知る由もない。
しかし、これから食事に行くところを撤回したとなると、お腹がすいてしまうのではないだろうか……


「しりとりじゃと?
 なんとなくは知っておるが、するのは初めてじゃな。
 『ん』から始まる言葉を言えばよいんじゃな?」


しりとりも満足にできたかどうか怪しいが、そうして時間は過ぎて行った。
この日、陽が落ちれば多少は涼しくなるのか?
何時までいるつもりなんだ? 熱帯夜だったらどうする?
そもそもそんな時間になったら家に帰れ。
夢見ヶ崎の空腹の行方は?
この後、2人がどうなったのか、それはいつか語られるかもしれない(語られないかもしれない)

142村田 瑛壱『ディズィー・スティック』:2021/06/15(火) 01:29:17
展望台から外を見やる。
少なからず、おれの闘いがこの平和を守ったのだと。
その事実を咀嚼しておきたかった。
『アリーナ』に所属するスタンド使いは増え、それによってまた、彼らの影響力は良くも悪くも増すだろう。

しかし、冬川の口ぶりから言って、あの組織も一枚岩ではないらしい。
さもなければ自分たちを指して『漣派』などと、派閥めいた言い方をするはずはない。
予測にしか過ぎないが『アリーナ』には複数の派閥が存在しているのだろう。

 「組織というのはそういうものってことか。
 『会社』や『学校』とさして変わりはねえ。」

冬川という男のことは信用に値するだろう。
しかし、未だ姿を表さない『上の連中』は?『他の派閥の連中』は?

浮いては消える思考と付き合いながら、街を見下ろしている。

143扇原映華『シルバーダスト』:2021/06/15(火) 20:21:35
>>142
「やはり、当初の計画通りに進めるしかないでしょう」

村田に声が聞こえるぐらいの距離で、『自然公園』の方を
手持ちの双眼鏡で覗きながら、スーツ姿の男が話している。

「素直に計画を進めた方が……いや、爆破はやはりマズいですよ」

声のする方を見れば、無線イヤホンをした男が
誰かと話しているのがわかるだろう。

――『左耳』を見たならば、軟骨にも開いた
ピアスホールを透明なピアスで維持しているのがわかるかもしれない。

144村田 瑛壱『ディズィー・スティック』:2021/06/15(火) 22:37:00
>>143
ピク ピク
「(…なんの話か知らないが…すげえ内容だな)」

とんでもなく物騒な台詞を吐いている男を横目で見やる。
額面通り捉えるならこいつは明らかに『危険人物』。
とはいえまさか、そんなコトをしでかすヤツがベラベラと喋るわけもなし…

 「(…『警備員』、呼びに行くか…)」

145扇原映華『シルバーダスト』:2021/06/15(火) 22:48:49
>>144
「いやいやいや、
 どうせ埋めなきゃダメなのわかってて言ってますよね?」

双眼鏡を覗き込んだまま、『左耳ピアス』の物騒な男は会話を続けている。

「下見したから大丈夫って、ビール飲んでただけじゃないですか。
 いや、一通り説明できますけど後始末はいつもこっちじゃないですか」

物騒な会話はどうやらヒートアップしてきたようだ。

「郊外って言ったってですね、こっちの自然公園から
 最寄りの生活圏までを考えると、どう考えても重機を」

       クルッ
                             「……あ」

双眼鏡を構えたまま、振り向いた結果、
村田とレンズ越しに目が合ってしまった。

146村田 瑛壱『ディズィー・スティック』:2021/06/15(火) 22:59:36
>>145
男と目が合う。目つきの悪い、高校生くらいの男だ。
明らかに怪訝そうな目つきで、そちらを見ているのがわかるだろう。

「…ごゆるりと…」

目線を切って、足早に警備員たちがいる方へ歩いていく。

147扇原映華『シルバーダスト』:2021/06/15(火) 23:13:19
>>146
人がいた。そういう気まずさの「あ」だったが、
村田の行く先に気づき、何を思われたかを察し――

「ま、待てッ!違う!合法だッ!
 産業廃棄物を吹っ飛ばしたりはしないッ!掘り起こすだけだッ!
 ただのしがない建築業だッ!ちゃんと名刺も有るッ!」

回り込んでその行く先を阻止しようとする。

148村田 瑛壱『ディズィー・スティック』:2021/06/15(火) 23:47:42
>>147

「…そうか。まぁ、あんたが何者かどうかはこの際どうでもいいが…
 このご時世に爆破だのなんだのと…表でいうのはどうかと思うぜ。」

歓楽街で何度か実際に爆破を行なっているおれが言うのもなんだが、
おれは実際に行っただけで、口にはしていない。
最早それを目撃した人間も口を割ることはできないし、棚にあげても問題ないだろう。

149扇原映華『シルバーダスト』:2021/06/15(火) 23:57:19
>>148
村田の言葉を聞いて息を細く長く吐いて、一安心する。

「これだけのどかな町であんな事を言っていれば、
 物騒だと思われても仕方なかったな。
 上司の無茶振りがくると、ヒートアップしてどうもいけないな」

今度は細く長い溜息を吐いて、額に手を当て、頭を横にふる。

150村田 瑛壱『ディズィー・スティック』:2021/06/16(水) 00:30:47
>>149
「歓楽街のゲーセンで、事故があったって話だ。
 老朽化してたそうだから、配線が燃えたとかなんとか。
 あんた業者なら、そういうとこ当たってみちゃどうだい。仕事になるかもしれないぜ。」

先だっての戦いで燃やしたゲーセンのことを思い出す。
施設がダメになったわけではないし、修理業者さえ入れば、まだ稼働するだろう。

 「あのあたりはよく行くんで言うんだが、そういう施設はかなり多いし…
 あんたらみたいなのからしたら、仕事は山ほどあるんじゃないか?」

151扇原映華『シルバーダスト』:2021/06/16(水) 00:58:50
>>150
「ああ……そんな話を上司がしていた気がするよ。
 まあ回ってくるとしても、ウチに直接じゃなくて本社からの下請けかな」

思ったよりものどかじゃ無かったな、と思いながら
仮に入ってきた時の仕事の段取りを
ザッと頭に並べた後――皮算用だなと思い直した。

「不景気だなんて言われてる中でありがたいことだよ。
 あとは上司が仕事に好き嫌い言わないで、
 建てる方もやってくれるといいんだけど」

152村田 瑛壱『ディズィー・スティック』:2021/06/16(水) 17:07:25
>>151
「『建てる方は面倒だから』…か?
 壊す方がよっぽど面倒ごとに見えるがね、おれには…」

ちらりと展望台の外…『歓楽街』の方に目線をやる。

 「一つ壊して済めばいいが、それだけで済めば世話はない。
 あれもこれもと、壊して捨てていくうちに、手元にゃ何も残らなくなる。
 そのうち自分の持ち物以外も…壊して回るのに躊躇しなくなる。
 …いや、ガキの戯言だ。気にしないでくれ。」

仕方のないこととはいえ、随分多くのものを壊した。物も、人も、絆も。
後悔はない。迷いもない。だが懸念はある。
倒した彼らと同じ存在に、いつか自分がなってしまったなら。
…見張りを気取ったおれのことを、一体誰が見張るのだろう?

153扇原映華『シルバーダスト』:2021/06/16(水) 21:53:42
>>152
「建てるためにただ壊すだけじゃ
 ダメだってのが、上司の持論でね。
 俺たちは歴史を壊して、歴史を建てるんだから、
 壊す方に気合を入れる奴が
 1人はいなきゃいけないって息巻いてるんだ」

村田の目線に釣られて、歓楽街の方を見やる。

「まあ、どこまで本気かはわからないけど、
 だからって何でも爆破解体を第一案にするのは
 やめてほしいところだね、ハハハ」

数々の無茶振りを思い浮かべながら、口元だけ笑っている。

154村田 瑛壱『ディズィー・スティック』:2021/06/16(水) 23:14:52
>>153
「…『歴史』か。確かにな。
 やりようが物騒でも、その言葉は本当なんだろうさ。
 出まかせで出てくる類の言葉じゃあないからな。」

何をするにも、『矜持』というものは人を支えるものだ。

 「ま、あんたはそれに振り回されてるらしいが。
 …『社会人』ってのは大変なんだな。
 理想や矜持だけで食っていけりゃ世話はなし、当然か。」

いずれくる自立の時を、目の前の男から想像して少しげんなりした顔をする。

155扇原映華『シルバーダスト』:2021/06/16(水) 23:29:35
>>154
「普通の上司よりかは、まあ愉快な人だから
 飽きなくはある。無茶苦茶な人だが、
 立場を笠に来るような女々しさも無いのは良いところだ」

苦笑を浮かべながら、双眼鏡を懐にしまい込む。

「霞を食べて生きていければ、
 こんな苦労も無いのかもしれないが、
 残念ながら、仙人としての素質は無かったみたいでね。
 汗水を賃金に替えられるように、頑張ってるだけさ」

スマホの時計を確認し、カレンダー機能を確認した。

「っと、そろそろ次の仕事だった。
 物騒な電話で勘違いさせて悪かった。
 次からはこっそりとやることにするよ」

156村田 瑛壱『ディズィー・スティック』:2021/06/17(木) 00:52:57
>>155
「おっと、そういえば『仕事中』か。面倒な勘違いして悪かった。
 おれが勘違いすることは今後ないだろうが…
 そうだな、『物騒な連中』が勘違いしないこともないだろうしな。」

苦笑に合わせるようにはにかむ

 「…アンタ、名前は?
 おれは『村田 瑛壱』。見ての通り学生だ。」

157扇原映華『シルバーダスト』:2021/06/17(木) 01:17:14
>>156
「『扇原映華(おうぎはら えいが)』だ。
 映画が華やかと書く。まあ、しがないサラリーマンだよ」

     「じゃ、これで」

回り込んで乱れた服装をスッと整えると、展望台を去っていった。

158りん『フューネラル・リース』:2021/07/11(日) 06:30:34
「言いたい事も言えないこんな世の中じゃ、ポイズン」

ショッピングモールの中を、歌いながら練り歩く10歳くらいの少女
何の事は無い普通の光景だが、変わった所があるとすれば

『頭に鈴蘭柄のエコバッグを被っている』という事だ

159りん『フューネラル・リース』:2021/07/12(月) 09:25:57
>>158
「すずらんちゃ〜ん… すずらんちゃ〜ん…
 でておいで〜… でておいで〜…」

りん「…」

エコバッグを被っていなければ見つかって研究施設に連れていかれて解剖されていただろう

    _
    \)    ()フ
     Y) (\/
     /    ̄Zフ
     |    |
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     \  | \_
      \/  _/
       L<\/
        ヘ
       | \
       | |
       ロ/  (
   ___/Z/  <
  ∠___   n/
/\ ヘヘロ/ n_/
L |L_/ L/
`Ln/
    十ヽ -|-、レ |
    d⌒) /| ノ ノ

160飯田 咲良『シスター・ゴールデンヘアー』:2021/07/15(木) 12:16:18
茶髪を二つに結った少女が展望台から清月館の方向を見ていた。
どことなくその顔は物憂げで、悩んでるように見えた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「お姉ちゃん…」

お姉ちゃんには、まだ会えてない。
隣の部屋の子に聞いてみたら、お姉ちゃんは部屋からあまり出ていないようだった。
白い髪の男の子があの部屋を出入りしてるのはちょくちょくあるっぽいけど…。

「私は、会えたとしても…お姉ちゃんを越えられるのかな…」

『お姉ちゃんを越えたい』
いつから考えていたことなのか、どう越えたいのか、気付けば考えていたこと。
クソ親父よりも、お母さんよりも。
『半分同じ』で、あの二人よりもまともなお姉ちゃんを、私は越えたい。

思考はまだ続く。
赤月さんの言葉を聞いて、考えたこと。

>……お姉ちゃんが、『乱暴』な『アリーナ』の人に酷い目に遭わされたら。

もちろん、そんなことはないと思う。
お姉ちゃんは少なくとも『スタンド使い』じゃなかったから『アリーナ』に関わりがあるとは思えない。
それでもなにがあるかなんてわからないのが人生だ。

私は急がないといけない。
お姉ちゃんがまたどこかに行く前に。赤月さんのお兄ちゃんみたいに会えなくなってしまわないうちに。
私はお姉ちゃんを越えなければならない。

161りん『フューネラル・リース』:2021/07/15(木) 12:57:23
>>160
「おねえさんどうかしたの?」

飯田の隣から、悩んでいる飯田を心配するような声が聞こえた
それは、鈴蘭模様の入った白いワンピースを着た10歳程の
『頭に鈴蘭柄のエコバッグを被った少女』だった

162飯田 咲良『シスター・ゴールデンヘアー』:2021/07/15(木) 13:14:27
>>161

一人でつぶやいてたつもりだったから、ちょっと驚いた。
小学生くらいの女の子…かな?頭に変わった帽子?被ってるけど…。

「ごめんね、心配させちゃって…。
 ちょっとね、家族のことで悩んでて…」

163りん『フューネラル・リース』:2021/07/15(木) 13:31:14
>>162
「家族かぁ〜
 うちの家族、今みんな眠っちゃってるんだよね…」

そう言うながら、何か『小さな赤い果実』を食べるりん
飯田に知識があるかは分からないが、これは

           『 鈴 蘭 の 実 』 だ

「あっ、おねえさん良かったら食べる?」

そう言って頭のエコバッグを取る
すると、少女の頭には『 鈴 蘭 が 咲 い て い た 』

エコバッグからりんごを一つ取り出し、飯田に差し出す

「ほんとはうちの家族を食べてほしいけど、おねえさんにはこっちね」

164飯田 咲良『シスター・ゴールデンヘアー』:2021/07/15(木) 14:02:31
>>163

「ね、眠って…??
 よく眠る家族さんなの?」

聞きながら、変わった帽子をはずした彼女を見る。
頭に…花??『すずらん』みたいに見えるけど…。

「もしかして『姫リンゴ』…?
 『リンゴ』と『姫リンゴ』って家族みたいだもんね。
 じゃあ…もらってもいい?」

『うちの家族』って言葉には引っかかりを覚えたけど、美味しそうなリンゴが気になって受け取ろうとする。

165りん『フューネラル・リース』:2021/07/15(木) 14:23:24
>>164
「うん、うちの家族ねぇ〜
 春の間しか起きてられないんだ…
 ずっと起きてられるのうちだけから、ちょっと寂しい」

>じゃあ…もらってもいい?

「どうぞ〜、うちも食べたけど凄い美味しかったよそれ!」

飯田が受け取ったそのリンゴ、りんの『頭の鈴蘭の毒』が付着しているため
食べるとちょっと危ないのだが、りんは気付いていない

「あのさ、良かったらおねえさんの悩み、うちに言ってみない?
 うちが役に立つが分かんないけど、人に言ってみるとちょっとは楽になるかもしれないよ」

にっこりと朗らかな笑顔を浮かべつつも
「かかってこい」というようなオーラを出して飯田の悩み相談を受ける気満々な感じだ

166飯田 咲良『シスター・ゴールデンヘアー』:2021/07/15(木) 15:02:23
>>165

「春の間だけ…?
 確かに…それだと寂しいね」

……『家族』は春だけ戻ってくる仕事してるからそういう風に教えられてる…とか…?
よくわかんないけど…。

「ありがとう…。
 初めて会うのにこんな話すのは変だと思うんだけど…」
「私には…最近会ってない家族がいるんだけど、
 私はたぶん、その人に私を認めてもらいたいんだと思うの。
 でもどうやったら認めてもらえるのかとか、どうしたらいいのかとか全然わかんなくなっちゃって…」
「……ごめんね、変なこと言ってる…」

リンゴを手でもてあそびながら、私はその子の様子をうかがう。

167りん『フューネラル・リース』:2021/07/15(木) 15:27:06
>>166
赤い実を食べる手を止め、真面目な顔で飯田の声に耳を傾ける

「全然、変な事じゃないよ」

優し気な眼差しと声で、飯田に語り掛ける

「おねえさんは、その人の事が大好きなんだね
 好きな人には自分を認めてもらいたいって思うのは、当たり前の事だと思うよ」

一呼吸おいて

「うちもね、どうしても認めてもらいたい人がいるんだ
 認めてもらいたくて、いっぱい頑張ってるんだけどね、
 どうしたらいいか分かんないんだ」

どこか、自分と飯田を重ねているようだ

「おねえさんが認めてもらいたい人って、どんな人なのかな?」

168飯田 咲良『シスター・ゴールデンヘアー』:2021/07/15(木) 15:57:13
>>167

「大好き。……言われてみたらそうなのかも。
 好きじゃないって、嫌いだって今まで思ってたから…。
 なんだかそう言われると不思議な感じ」

お姉ちゃんのことは…『嫌い』だったはずだった。
妬ましかった。『半分同じ』なのに全然違う環境で育ったあの人が。
でも、改めて『大好き』だってラベリングされると…妙なことにしっくりきてしまった。


「がんばってるんだね、えらいね。
 えっと、認めてほしい人はどんな人?」

頭を撫でようと手を持ち上げて、下ろす。
花のアクセサリーがズレたら嫌だろうし、急に触るのもよくないなと思って。


「お姉ちゃんは…。
 優しい人だよ。料理もできて勉強も私よりできて、いろいろ教えてくれる。
 『私の境遇』を気にしないでいてくれる。優しい人」

私は片親で、クソ親父がいつも通ってくるから母親とクソ親父がそういう関係だって周囲には知られてた。
お姉ちゃんも知ってるはずで、なおのこと嫌っておかしくないはずなのに気にしないでくれてる。興味がないだけかもしれないけど。

「……気にされてないから私は『嫌い』だったのかも」

ぽつりとそう呟いた。

169りん『フューネラル・リース』:2021/07/15(木) 16:37:00
>>168
「本当に嫌いだったり、どうでもいいって思ってる人だったら
 『認めさせたい』なんて思わないよ」
「おねえさんのお姉ちゃんに思ってる『嫌い』は、
 『好き』だから、こっちを向いてもらえないイライラを
 『嫌い』って思っちゃうんじゃないかな?」

少し、ほんの少し考える間をおいて
再び語り掛ける

「えーっとねぇ〜…
 うちも、姉妹がいたような気がするんだ…
 どんな子だったか思い出せないんだけど…
 けど、うちは思うよ」

飯田の目を見て、真剣な表情で

「妹の事を気にしないお姉ちゃんなんていないよ
 貴方のお姉ちゃんは、きっと貴方の事を思ってるよ」
「貴方がどんな境遇かはうちは分かんないけど…
 自分の事を思ってくれるお姉ちゃんだから、貴方はお姉ちゃんが好きなんじゃないかな?」

そう言って、ほんの少し沈黙するりん

「ははは、ごめんねぇ、よく分かんないくせに分かったような事言っちゃってぇ
 うちの認めてもらいたい人はね、うちの事うち以上によく知ってて
 一緒にいると安心する優しいおねえさんなんだ
 うちはそのおねえさんにね、美味しい鈴蘭料理を食べてもらうのが目標なんだ」

170飯田 咲良『シスター・ゴールデンヘアー』:2021/07/15(木) 17:08:28
>>169

「うん、そうだね…。
 …私はお姉ちゃんのことが好き…」

私は小さく頷いて、その子の方に顔を向ける。
もしかしたらすこし目が潤んでるかもしれない、恥ずかしい…。

「お姉ちゃんは、思ってくれてる…。
 そうだったら本当にいいと思うし…そう信じたい…かも。」
「ありがとう、ちょっと答えが見えてきたかもしれない。
 『よくわかんないくせに』なんてそんなことないよ。
 本当にありがとう」

まっすぐ目を見て感謝を伝える。
ちょっと…この子の姉妹についても気になるけど、覚えてないってことは早くに別れたのかもしれない。
あまりつっこむのはやめておくことにする。

「優しくて素敵なおねえさんなんだね。
 『鈴蘭料理』ってどういう感じなの…?
 鈴蘭デザインのカップケーキ…みたいな?」

私は手持ち無沙汰に手でもてあそんだりしていたリンゴを一口かじってからそう問いかけた。
……リンゴって服とかで拭ってから食べた方がよかったんだっけ?

171りん『フューネラル・リース』:2021/07/15(木) 18:05:13
>>170
「えへへぇ、人間の役に立てたみたいで嬉しいな〜」

照れ臭そう頭を掻きながら
飯田の役に立った事が本当に嬉しいというような顔で言う

「えっとねぇ、『鈴蘭料理』っていうのは
 本物の『鈴蘭』を使った料理なんだけどぉ
 普通の人間には『鈴蘭』は食べられないんだよねぇ…」

本当に残念そうに、寂しそうに

「おねえさん達にうちの家族を食べて美味しいって言ってもらいたんだけどね…
 だから、うちはおねえさん達が食べても大丈夫な鈴蘭料理を研究してるんだ」

お前は一体何を言っているんだ?と言いたくなるような
毒殺宣言とも取れるとんでも発言をかますりん

>リンゴを一口かじってからそう問いかけた

とうとう、『毒リンゴ』を食べてしまった
それを口にしてしまった飯田は、吐き気や痺れ等の症状に襲われるかもしれない

172飯田 咲良『シスター・ゴールデンヘアー』:2021/07/15(木) 18:25:08
>>171

「『鈴蘭料理』…。その、鈴蘭って毒があtt」

……話している途中で急に吐き気が出てきた。
なんで!?お昼ご飯は…いつものように缶詰食べたし…。おなか壊すようなこと…いたたた…。

「ご、ごめんね!
 ちょっと具合悪くなっちゃって…ま、またね!!」

そう言って私はスカイモールのトイレに向かって走り出した。

173りん『フューネラル・リース』:2021/07/15(木) 18:41:58
>>172
「あ…」

慌てて走り去る飯田の様子を見て思い出す
おじさんが自分の鈴蘭の毒を舐めた時と同じ症状だ

ようやく、自分の渡したリンゴが毒リンゴと化していた事に気付く

「ごめんねおねえさん!
 すぐにリンゴ吐いて!緑茶も飲んで!
 それからすぐ病院に行って!」

もう聞こえないかもしれないが、大声で毒の対処法を教える

「うぅ…
 折角役に立ったのに…
 また人間傷付けちゃった…」

意気消沈としながら
頭にエコバッグを被り悲しい顔を隠して展望台を後にした

174ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/07/19(月) 21:48:55

「ちょっとそこを行く通行人さんよ。
 ケーキが欲しかったりせんか?」


モールの通路にある座椅子。
そのひとつが占拠されていた。
占拠主であろう金髪の女の子の言う通り、椅子の上にはケーキが並んでいる。


「ふーむ、売れんの……?」


やや手作りっぽいが美味しそうなケーキ。
ただし、むき出しだ。
冷蔵棚に並んでいるならばともかく、座椅子の上では印象は悪かろう。


「ちょっとそこの通行人さん……」

175『ニュー・エクリプス』:2021/07/19(月) 23:36:34
>>174

エッ子「おっ? おっ?
のりさん、ムーさん! サっちゃんも来てきて!
 ケーキ売ってる!」

城生「こんな所で? あっ、本当だ……おままごとより
本格的だね」

ムーさん「今日はそこまで暑い感じじゃないけど、
早めに食べないと腐るぞ」

朝山「おー! それじゃあ私達ニュー・エクリプスで
買い占めるっす! 幾らっスか?」

ワイワイと賑やかな女子高校生三人と、中学生らしい女子グループが
ナイのケーキに気づいて立ち止まった。

言い値で買い取ってくれるかも知れない。

176ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/07/19(月) 23:47:10
>>175

おままごとなら子供のする事と見てもらえる分、マシだろうが、
ヘタにちゃんと食べられそうなものが並んでいると逆に色々怪しいものである。
そもそもモール内の椅子で営業しているのがアウトだ。


「おお……いらっしゃいませ」


そんなものに興味を示す者も普通ではない。
一般通行人から見たら胡乱な光景だろう。
まあ、外見的に女子供の戯れで済むかもしれないが……


「わしは『交換屋』なので何かと『交換』じゃ。
 なんでもいい……とは言わんが……何か珍しいもの持っておるか?」


背負ったリュックから伸びた棒に垂れ下がった布をアピールする子供。
そこには『こうかん』と書いてある。現金のやり取りをするつもりではないらしい。
たしかに、商品の事を考えなければおままごとだ。
ちなみに抹茶ムースケーキ、アイスケーキ、餅パンケーキ、ミニアイスケーキがある。
アイスケーキはまだギリギリ溶けてはいないようだった。

177『ニュー・エクリプス』:2021/07/20(火) 00:35:44
>>176

エッ子「交換っ? それじゃーねぇ!
この『トランプ』と交換しよー! アイスケーキ貰っちゃうよ!」

そう、黄色い髪の明るい女子高生は『トーストトランプ』を差し出した。
普通のトランプでない、ちょっとおもしろいタイプの玩具だ。

ムーさん「ふーむ、それじゃあミニアイスケーキに私はしよう。
代わりに『防犯ブザー』をプレゼントだ」

そう、長身で少しダウナーな雰囲気の女子高生は
『防犯ブザー(防水 LEDライト付き)』を差し出す。

城生「面白いね、お金じゃなくて交換なんて。抹茶に私はしようかな
それじゃあ、これをどうぞ。家族の人と一緒に気を付けて遊んでね」

落ち着いた雰囲気の女子高生は『花火セット』を差し出した。

佐生「ふーむ! 餅パンに、それじゃあ自分はするっス!
それじゃー小さなケーキ屋さんに、これを贈呈するっスよ!!」 ドン!

少女は『パンチングミット』をドン! と置いた。

ムーさん「なんでそんなもんを持ってるんだ」

朝山「運動部に、色々お手伝いしてたら、もうあんまり使わないから
良かったらあげるって言われたんすよ!」

城生「さおちゃんは、色んな場所に顔を出すもんねー」

和気藹々とした女の子たちから四つの品物を貰った。

各自、美味しい美味しいと舌鼓を打ちつつケーキを食べるぞ!

城生「ねぇ、色んなものを交換して。何か欲しいものでもあるの?」

ナイに、一人の女子高生が興味本位で聞いてきた。

178ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/07/20(火) 00:56:41
>>177

「おお……大人気じゃな、一抹ちゃんのケーキ……」


その場でケーキを食べだす女子たち。立ち食いするには違和感のある食べ物だが……
いや、ケーキを置いていた椅子が空いたので座って食べてもいいが。


「パンの絵の束……?」

「防犯ブザーはもう持っておるが……まあいいか」

「これは……あれじゃ。火を付けると爆発するやつ……?」

「……? なんじゃこれは?」


子供は大喜び、というほどではないが、興味津々で品物を確認している。


「欲しいもの……?
 わしは『わらしべ長者』のようになりたいと思っておるが……
 つまり……そうなるために必要なもの……?
 なにか、こう……家? 金銀財宝? あと……俵?」


『パンチングミット』の片方に、小さな手を両方とも入れて囚人みたいになっていた子供は、
問いかけられて、悩みつつも答えを返す。
漠然とした夢らしく、昔話の成功者っぽいフワフワしたイメージだ。

179『ニュー・エクリプス』:2021/07/20(火) 01:28:34
>>178(次で〆ます)

>パンの絵の束……?

エッ子「トランプだよーっ、絵柄でお腹も空くから食事前に
遊んだら、御飯も何時もより倍楽しめるよー!」

>防犯ブザーはもう持っておるが

ムーさん「ライト付きだが、不満だったか。なら、プラスでこれも
渡そうじゃないか」

本当は、子供に余り渡すもんじゃないが。と『催涙スプレー』を
ナイに渡したぞ!

>火を付けると爆発するやつ……?

城生「うん、ロケット花火が多めだから気を付けてね」

>なんじゃこれは?

朝山「パンチをガードっス! どっかに取り付けて叩くのも
良いかも知れないっス! さいきょーの悪の首領になるには
パンチ力も鍛えないといけないから貰ったっスけど。ケーキも
美味しいし、これはフェアーな交換っスよ!」

>『わらしべ長者』のようになりたいと思っておる

城生「へー、わらしべ長者なんだ。
それじゃあ、最終的に大きな家を貰えたらいいねー」

ムーさん「大きな家か。ながい道のりだな」

エッ子「一攫千金で、なんか凄い化石とか手に入れたら
近道になるかもね!」

朝山「なんだったらニュー・エクリプスも協力するっスよ!
うちゅーとーいつ部は、不思議探検もしてるから。なんか
凄い拾いものをいずれするかもっスからね!」

女子グループは好き勝手に言いつつ、わらしべ長者を応援してる。
どうやら今後も、交換を出会ったらしてくれそうだ。

180ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/07/20(火) 01:44:58
>>179

「くれるのか?
 じゃあわしからはこれを渡そう。『交換屋』じゃからな」


『催涙スプレー』と引き換えに、リュックの中から出したのは、
食べ物が喜んでもらえそうと思ったのだろうか、美味しくて強くなりそうなビスケットだ。
パッケージに描かれた少年の生首が不気味である。
ケーキを食べたばかりという問題点はあるが、ケーキと違って持ち帰るのが容易なので大丈夫だろう。


「おお、応援ありがとう。
 しかし、悪のしゅりょう?
 そういえばエクリプスってワルモノの名を聞いた気がするの……
 お嬢さん方の名前? と似ておるな」


似た名前であるとは認識しても、その関連まで理解が及ばないらしい。
見た目的に小学校低学年くらいだろうか。
ニューという単語の意味を理解していないのかもしれない。


「……ぷしゅっ……んあ……
 中にずっといると寒いか……ちと外に出るかの」


唐突にくしゃみをする。
子供は夏らしく薄着だ(というかTシャツ一枚のように見える)が、
モール内は冷房が効いていて寒いくらいだ。
いったん店じまいをして日にあたりに行く気らしい。

181『ニュー・エクリプス』:2021/07/20(火) 11:25:13
>>180(お付き合い有難うございました)

朝山「そうそう! 自分たちはニュー・エクリプスで
とーーーーっても悪い存在として華々しく今後も星見町を盛り上げる
活動をしているんっス! 今日は近くのスイーツ店を網羅する悪の活動に
大忙しなんスよっ」

城生「大丈夫? 暑いからって余り薄着だと風邪ひいちゃうから
早く、家に戻って少し上着でも羽織ったらいいよ。
 あっ、佐生ちゃん。タオルあげたら? 汗かいたら直ぐに拭けるし
ちょっと寒かったら、巻けば丁度いいだろうし」

朝山「あっ、そうっスね! それじゃあ、今後も我がニュー・エクリプスを
宜しくと言う事で、タオルをあげるっス!
 交換はしなくていいっスよー」

そう、ナイへ首領は ニューエクリプスと刺繍してるタオルを渡した!

『それじゃー またねー!(っス)』

そして賑やかな女子四人組はスイーツ店へと手を振りつつ去っていく……いずれ
縁があれば、また会えるだろう。

182ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/07/20(火) 12:01:09
>>181

「悪い人たちじゃったか!」


悪さの内容はともかく、警戒態勢に入る子供。
しかし渡されたのはタオルだった。


「悪い……?」


刺繍まで!?
自分たちで縫ったのだろうか?


「う、うむ。ではな」


判断がつかないうちに、勢いに気圧され、そのまま見送った。
女三人寄れば姦しいというが、あのテンションに対抗するという点では難敵かもしれない。
しかも、これからさらにスイーツを食べるという。ある意味で恐るべき集団である。


「うむむ、寒い」


子供は、そんな悪の組織を思いながら、日を浴びにその場を後にするのだった。

183夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2021/07/29(木) 00:51:05

「なんか『みみよりなハナシ』とかないかな〜〜〜??」

スカイモール外のベンチに座っていた。
傍らには、両手に『メス』のような『爪』を持つ、
『盲目』の人型スタンド。
『超人的四感』の一つである『超聴覚』を駆使して、
『情報収集』を行っているのだ。
『アリス』は『不思議』を追うもの。
こうやって、日々『アンテナ』を張り巡らせているのである。

                    「おん??」

                クルッ

    「この『ニオイ』は――――――」

不意に『超嗅覚』がキャッチした『匂い』に反応し、
それが流れてくる方向を振り返る。

「『ソーセージ』のこうばしいカオリ…………。
 『ケチャップ』と『マスタード』…………」

            ビシィッ!

「――――ズバリ、やきたての『ホットドッグ』だ!!」

勢い良く立ち上がり、スタンドと共に『匂いの方向』を指差す。
遮蔽物の陰に隠れて見えないが、
事実そこには『ホットドッグのフードトラック』が停車していた。
キョリにして『300m』!!
ホウガクは『ナンセイ』!!
これは、かなりイイしょくざいをつかっているな……。

184ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/07/29(木) 22:44:27
>>183

「はひ、はひ……
 アリスちゃん、座るにしても、中の椅子にせんか……?」


別に遊ぼうとかいう約束があったわけではなく、偶然知り合いが居たので、だろうが、
特に何をするでもなく、一緒に横で座っていた。
というか暑いので活発に何かをする元気は無かった。
モールの外なので暑いのだ。


「焼きたてか、熱そうじゃな。
 アイスの屋台とかは無いのかの。
 まあ、わしは金なぞ無いが」


夢見ヶ崎の向いた方向に顔を向ける。
ベンチからは見えない位置だし、子供の感覚ではニオイもキャッチできないので、
顔を向けたところで何も確認できないのだが。

185夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2021/07/30(金) 04:58:28
>>184

「まぁまぁ、フェアチャイルド。
 アツいときにアツいモノをくうのも『オツ』なものだぞ」

         「よし――――――かってくる!!」

               ダダダダダダダダダダッ

言うが早いか、匂いの方向を目指して駆け出していく。
まもなくして戻ってきた手の中には、
『サルサチーズドッグ』を握っていた。
ピリ辛のサルサソースを使ったホットドッグだ。
パリッと焼かれたソーセージの上に、
たっぷりの野菜と共に乗せられている。
チーズもトッピングされていた。

       クン クン

「うーむ……『トマト』……『オニオン』……『ズッキーニ』……」

               ムッシャ ムッシャ

「それから『チェダー』と『ゴーダ』と『モッツァレラ』だな!!」

自分自身に『移植』した『超嗅覚』と『超味覚』を駆使し、
評論家並みの精密さでホットドッグを分析する。
だが、『辛いソース』のせいで、どうしても喉が渇く。
真夏の太陽の下にいるのだから尚更だ。

    「あぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ」

          ダンッ ダンッ ダンッ

せわしなく足踏みしつつ舌を出し、喉の渇きを訴え始める。

「なんか『ノミモノ』もってない??フェアチャイルド??」

『前回』と『前々回』の邂逅により、
色々と出せるらしい事は知っていた。
もしかすると『ミルクティー』とかもってるんじゃないか??
それか『ジンジャーエール』でもいいぞ。

186ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/07/30(金) 12:50:23
>>185

「アツいときにアツいものを……?
 そういえばテレビでもそんな事を言っておった気がするの」


駆け出していく夢見ヶ崎を見送る。
日陰のベンチから動く気は無いのだ。


「旨そうなにおいじゃが……
 いや、やっぱり良さそうにはみえんの」


近距離になったことで美味しそうなにおいが漂ってくるが、、
熱いし辛いしで大変だろう。子供は懐疑的な視線を向ける。


「うむ……まあ、アリスちゃんが良いなら良いか。
 そういうことなら、ほれ」


アツいときにはアツいものを、という言葉に理解を示した子供が差し出したのは、ココアだった。
まるで自販機から出てきたばかりというアツアツの『ホットココア』だ。
そもそもホットドックにココアが合うのか、という問題はあるが……
アツいのでハンカチ越しに持っているため、渡す前の段階では何の缶なのかは夢見ヶ崎には見えないだろう。

187夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2021/07/30(金) 19:31:03
>>186

「おぉ、きがきくじゃないか」

       スッ

満面の笑みで『ホットココア』を受け取ったが――――。

      「あつッ!!あっつッ!!」

思わぬ『熱さ』に、うっかり缶を落としかけた。
今が寒い時期なら丁度良かっただろう。
だが、この気温だ。
普段よりも余計に暑く感じられる。
おい、コロスきか??
いや、まて……いがいとコレはイイかもしれない……。
ためさずにモンクいうのはよくないぞ。

     カシュッ

           ズズズ…………

缶を開け、火傷に気を付けて熱々の『ココア』を口に含む。

       ムッシャ

続けて、ホットドッグを頬張る。

「――――『ビミョー』だな!!」

やっぱりナツは、つめたいモノにかぎる。
ダレだよ??アツいときにアツいモノとかいったヤツは??
ぜんぜんダメじゃねーかよ!!

「アツイしさぁ、『フェミレス』でもいく??おごるけど」

『フェミレス』とは『フェアリー・ミトン・レストラン』の略称である。
その名の通り、『妖精の世界』がモチーフになっている店だ。
決して『ファミレス』ではない。

188ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/07/30(金) 21:59:03
>>187

「……?」


目の前の光景をぽかんと口を開けて眺める。
「なぜアリスちゃんは急に一人コントを……?」
そんな言葉を実際には口に出さない理性が子供にも存在した。


「良いのか?
 わし、ふぇミレスに入るのは初めてじゃ」


そしてコントに続けて発せられた夢見ヶ崎の提案に、すんなり乗ってきた。
遠慮が無いのは、友達と認識しているからか、
あるいはなんでもいいからさっさと涼しいところに行くべきだ。というのもあるかもしれない

189夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2021/07/30(金) 22:33:44
>>188

「『ナニやってんだコイツ??』ってカオしてんなァ〜〜〜??」

      シュバッ

「こういうコトだァァァァァ――――――ッ!!」

              ――――ピトッ

『ドクター・ブラインド』で『ホットココア』を掴み、
缶の表面をナイの頬に触れさせる(ス精BB)。
まだ中身が残ってるし、この暑気で熱せられているので、
とりあえず『熱かった』事だけは伝わるだろう。
子供相手なので、ちょっと触れる程度にしておくが。

     「よし!!いざ『フェミレス』へ!!」

          ムグ ムグ ムグ

残ったホットドッグを口の中に押し込み、
噂の『フェミレス』に向かって歩き出す。

        ザッ

「――――『ココ』だぞ、フェアチャイルド」

そして、アリスとフェアチャイルドは、
『フェアリー・ミトン・レストラン』に到着した。
外観や内装からは、『御伽噺』をイメージさせるような、
ファンシーな雰囲気が漂っている。
店内は冷房が効いていて、とても涼しく快適だ。

    「で、ナニにする??」

          ビシッ

「わたしは『スペシャルストロベリーサンデー』!!」

メニューの一点を指差しつつ、
向かいに座るナイに注文を振る。

190ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/07/30(金) 22:58:07
>>189

「アアアアアア゛ー!」


避けられるわけがない!
大げさにダメージを食らった。
普段は外見だけ金髪青目で、日本に馴染んでいる感のある子供だが、
今回は外国人のリアクションっぽかった。


「……」

「わしはこれじゃあ!」


『ティターニアロイヤルジャンボパフェ』
『フェアリー・ミトン・レストラン』限定の、妖精女王の名を冠したやたら豪華なパフェである。
どうやら夢見ヶ崎のいたずらに怒っているらしく、
店に入るまでは不機嫌そうな顔をしていたのが、今はニヤリと口元をゆがめている。
「高そうなものを頼んでやろう」という魂胆らしい。
自分がこのパフェを食べきれるのかどうかという加減は分かっていなさそうだが。

191夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2021/07/30(金) 23:26:32
>>190

  ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド

こいつ……『やりやがった』……!!
『ティターニアロイヤルジャンボパフェ』!!
『自分の胃袋』や『人の財布』も省みずッ!!

        ザワッ…………

注文を受け取った店員の表情にも、にわかに緊張が走る。
食べ切れるかどうかに対する危惧だろうか?
それとも、作るのに手間が掛かるのが理由かもしれないが。

「――――なら、わたしは『コレ』だ!!」

           ビッ!!

注文をキャンセルし、
『オーベロンノーブルデラックスパフェ』に切り替える。
『ティターニアロイヤルジャンボパフェ』に劣らぬ、
妖精の王の名を与えられし豪勢な一品である。
財布は少なからず打撃を受ける事になるが、
ここで負ける訳にはいかない。
謎の気勢に後押しされた結果の行動であった。
心なしか、二人の横で、
店員の緊張感は更に高まっているように見えた。

「大変お待たせ致しました。
 『ティターニアロイヤルジャンボパフェ』と、
 『オーベロンノーブルデラックスパフェ』でございます」

          ドン! ドン!

やがて、聳え立つ二つの『パフェ』がテーブルに置かれる。

192ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/07/30(金) 23:40:11
>>191

夢見ヶ崎の正しい行動は、子供を止めるか……
あるいは、自分のパフェをキャンセルし、
子供とジャンボパフェを分け合う事だったはずだ。
だが、夢見ヶ崎は逆に! もう一つジャンボパフェを頼んだ!
愚行権……!
人には正しくない行動をする自由がある!


「なんかでかくないかの?」


早い……!
大変お待たせしましたと言いつつ、後悔する暇もなくパフェは運ばれてきた。
子供はまだのんきなことを言っている。
写真から大きさが想像できなかったのか、思ったより大きいなぁと思っているようだ。

193夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2021/07/31(土) 00:02:29
>>192

実際はそこそこ待たされたような感じだったが、
冷房が効いた店内でノンビリしていたので、
何だか早く来たような気がしたのかもしれない。

「――――デカイ…………!!」

        パシャッ

「これは『ヒマラヤ』なみにあるな……!!」

スマホを取り出し、テーブルの様子を写真に収めた。
二つのジャンボパフェが並び立つ光景は、なかなか壮観だ。
次の問題は、どうやって食べ切るかという事である。

       モグ モグ モグ

「さいきんどう??なんかオモシロいコトとかあった??」

       モグ モグ モグ

「アリスはさぁ、このまえ『しあい』みにいったよ。
 なんか『チケット』もらったから」

スプーンでパフェを崩しながら雑談を始める。
いつ果てるともしれぬ戦いが幕を開けた。
それは食という名の戦いである。

194ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/07/31(土) 00:13:28
>>193

「うむ? 食いにくいの」


デカいので座ったままだと手が届かない。
椅子の上に膝立ちになって食べる子供。


「おお、甘いの。
 わしは最近、花火とかしたぞ。
 凄い爆発すると思ってたんじゃが、そうでもなかったの」


パフェの美味さにご満悦なようだ。喜んで食べている。
とりあえず始めのうちは。


「しあいって戦うやつじゃろ?
 サッカーとかボクシングとかああいう感じの……
 何で戦うやつ見たんじゃ?」

195夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2021/07/31(土) 00:39:00
>>194

「『ハナビ』かぁ〜〜〜。そういや、しばらくしてないな〜〜〜」

         モグ モグ モグ

「じつは、このところ『カラダがなまってる』カンジがしてさぁ。
 『ボウケン』がたりないっていうの??」

最近、割と日常は穏やかだ。
スタンドをフル活用するような場面に出くわしていない。
やはり、ブランクが空くと、どうしても『カン』が鈍ってくる。

         モグ モグ モグ

「だから、これから『しあい』にでるまえに、
 『ヨシュウ』と『フクシュウ』でもしとこうかなって」

細かくは言わないが、概ねそんな所だ。
別に『アリーナ』でなくてもいいのだが。
ただ、同じような状況に出会ったとしたら、
やる事は一緒なので、参考にはなる。

         モグ モグ モグ

「フェアチャイルドは、そういうのない??
 なんか『ボウケン』みたいなの」

196ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/07/31(土) 00:51:52
>>195

「ヨシューフクシュー?
 よくわからんが、アリスちゃんが『しあい』にでるのか?」


この子供、学校に行っていない。
そのためか予習復習という言葉がよくわからないらしい。
情報源であるテレビでも、あまり頻出する単語ではないのだろう。


「冒険する競技ということか?
 わしは別に冒険はしておらんが……
 毎日が冒険のようなものと言えばそうかもしれん。
 森とか湖畔の方に行ったりもするしの……いや、最近は暑いからあんまり行かんが……」


ホームレスの人は毎日がサバイバルです。みたいな事を言う。
学校も行かずにうろついているのだから、そうと言えばそうなのかもしれないが。


「ふぅ……」

197夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2021/07/31(土) 01:17:19
>>196

「まぁ、そんなトコだ!!いま『2しょう』してるぞ!!」

「『つぎのよてい』は『みてい』だけど」

       モグ モグ モグ

そもそも『アリーナ』の試合に参加したのは興味本位であり、
特に戦いたかった訳ではない。
しかし、試合以外にも、
『アリーナ』からの仕事を引き受けた事もある。
パイプを保っておく事は、
『未知の不思議』を見つけるきっかけにもなるのだ。

「『まいにちがボウケン』かぁ〜〜〜。
 フェアチャイルドも、なかなかやるもんだな」

       モグ モグ モグ

ナイの生活は詳しく知らないが、何となく察する部分はある。
毎日が冒険という言葉にも説得力があった。
それを敢えて口にはしないが。

「どうした??フェアチャイルド??」

さっきからスプーンを動かし続けているが、
自分でさえコイツは手強い。
フェアチャイルドには、さすがにキツいか??
ギブアップか??

198ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/07/31(土) 01:31:34
>>197

「2勝とな!
 アリスちゃんは強いんじゃな」


何戦2勝なのか、そもそも何の試合なのか、
子供視点では詳しい話がまったくわからないが、
なんか勝ってるらしい=強い。という単純な計算だ。


「うーむ。
 アリスちゃん、こっちとそっち、交換せんか?」


子供は何かを悩んでいる風だったが、夢見ヶ崎が話を促すと、
ティターニアとオベローンのトレードを申し出た。
ただ、「そっちも美味しそうだからちょっと交換しない?」というキャピキャピした感じでは無い。
ちょっとさすがにつらくなってきたけど、味を変えればまだ食べられるんじゃないか?
という切実さが感じられる頼み声だ。
そもそも豪華ジャンボパフェが色んな食材や味付けを楽しめる一品なのだが。

199夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2021/07/31(土) 01:51:49
>>198

「そうじゃろう、そうじゃろう。
 『バッ!!』とやって『シュッ!!』だしな!!」

          「フハハッ!!」

褒められて悪い気はしないので、高笑いで答えた。
気分は鼻高々だ。
このままハナをのばしていけば、
いつか『クレオパトラ』になれるかもしれない。
ゆくゆくはセカイをうごかして『ふしぎのくに』をつくろう。
ユメがひろがるぞ。

「ほうほう、ワルくないとりひきだ」

「よし、コーショーセイリツだな」

       ズイッ

『味変』は食道楽の基本テクニック。
取引に応じ、『ティターニア』を引き取る代わりに、
『オーベロン』を差し出した。
『妖精の王と女王のトレード』というと、何だか物凄そうだが、
実際は『パフェの交換』である。

「あとは…………なんか『かわったモノ』とかみてない??
 『かわったヒト』でもいいけど」

      モグ モグ モグ

『ティターニアロイヤルジャンボパフェ』をつつきながら、
『情報収集』を続行する。

200ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/07/31(土) 02:04:39
>>199

「こっちはチョコが多めじゃな」


ティターニアはフルーツが多めでカラフルな感じ、
オベローンは全体にチョコがかかっている。そんな感じだ。
ていうか2種類もジャンボパフェをメニューに置くな。


「変わったもの、か。
 ふぅ〜む?
 別段、思い当たらんが……」

「そういえば、『エクリプス』って知っておるか?
 わしはよく知らんが、なんか悪い奴ららしいの。
 それと関係あるのか知らんが、この間、『ニュー・エクリプス』とかいう女子達に会っての。
 ケーキを食べた後にスイーツを食べに行っておった。
 あの子たちならこのパフェもぺろりと食べてしまうのかもしれんの」

201夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2021/07/31(土) 02:29:58
>>200

「『エクリプス』――――」

     ムシャ ムシャ ムシャ

その名前は聞いた事がある。
どんな連中かも知ってる。
再現された『亡霊』ではあるが、戦った事もある。

「フェアチャイルドもきをつけろよ。
 『アブないヤツら』だから」

「でも、『ニュー・エクリプス』はあぶなくないぞ。
 おもしろいし!!」

そして、『そっちの方』も覚えがあった。
だいぶ前の事だが、『いつかのパーティー』で出会ったのだ。
会場内で、一緒に踊りまくっていたような…………。

「わたしらは『ニュー・エクリプス』ッス!!
 にちや『アクのかつどう』にいそしんでいるッス!!
 『わがそしき』にはいれば、
 いまならオリジナルグッズもプレゼントッス!!」

      ムシャ ムシャ ムシャ

「――――こんなカンジだった??」

記憶を辿り、『朝山の口調』を思い出す。
大体近い――と思う。
会った回数が少ないので、曖昧な部分はあるが。

202ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/07/31(土) 02:47:40
>>201

「なんじゃ知り合いか?
 わしも悪そうには見えんかったが、
 でも自分たちで悪の組織って言っておるということは……
 つまり、どういうことじゃ?」


パフェには量だけでなく、時間の問題もある。
アイスが溶けてくるのだ。
子供も頑張って食べているが、その食べるペース自体が遅くなっている。


「ふう。
 ああ、そうじゃ、わしもタオルを貰ったわ。
 わざわざ『ニュー・エクリプス』と刺繍がしてあったの」


『交換』したわけではないのでタオルは量産できないが。

203夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2021/07/31(土) 03:07:38
>>202

「いや、わたしもショージキよくわからん」

       ムシャ ムシャ ムシャ

「つまり――――きにすんなってコトだ!!」

朝山は顔見知りだが、
『ニュー・エクリプス』については詳しくない。
分かるのは、悪人ではないという事くらいだ。
それ以上は分からないし、特に知ろうという気もなかった。

        「タオル??」

まぁ、朝山のやりそうな事ではある。
色々とヘンなヤツだが、害はない。
もらったタオルとやらも、真っ当なモノなのだろう。
わたしもほしいぞ。
アンケートにこたえたらもらえるかな??

       ムシャ ムシャ ムシャ

                   カキンッ

「フェアチャイルド!!『ソコ』がみえたぞ!!」

スプーンの先が、器の底に当たった。
長い戦いの末に、
『ティターニアロイヤルジャンボパフェ』を攻略しつつある。
『アリス&フェアチャイド:パートⅢ』も、
ぼちぼちエンディングが近い……のかもしれない。

204ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/07/31(土) 03:25:54
>>203

「まあ、そうじゃな……ふゅ……」


夢見ヶ崎に比べ、子供は苦戦しているようだった。
許容量の小ささもあるが、それを言ったら夢見ヶ崎だって
先んじてホットドックを食べココアを飲んでいる。


「くっ」


器がデカく、座ったままだとうまく食べられないので、膝立ちで食べていた子供だが、
さらに中身が減ってくると、器に腕を突っ込んで掬わなくてはならない。
これが中々重労働だ。
しかも、溶けてきたせいで、スプーンでは食べられなくなってきている。


「はあはあ」


こうなれば、器を直接持って溶けたパフェを飲むしかあるまい。
空だったとしても重たいジャンボ用の器に、子供の細腕がプルプルと震える。
膝立ちの不安定な姿勢が見るものに不安を与える。

                               グラッ

205夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2021/07/31(土) 03:49:52
>>204

実は、合流する前からあちこち走り回っていたので、
腹が減っていたのだ。
ホットドッグとココアで多少は埋まったものの、
まだ幾らかは余裕があった。
そのために、恐るべきジャンボパフェを、
完食近くまで持っていく事が出来たのだ。

      「――――――ッ!!」

これは『アレ』だ。
まちがいなく『アレ』だな。
だが、モンダイはない。

「『バッ!!』とやって『シュッ!!』だ!!」

        シュババッ

スピードと精密さを活かし、
『ドクター・ブラインド』でフェアチャイルドを支える。
非力なスタンドだが、子供くらいなら何とかなるだろう。
あと器もあるが、多分大丈夫だ。

         チョンッ

ついでに『超人的触覚』と『超人的味覚』を『移植』。
『超触覚』の方は、前にやったように、
『何となく器用になるんじゃないか??』という感じだ。
『超味覚』は、味覚を『鋭敏化』する事で、
『味変』と同等の効果を与えようという意図だった。

「がんばれフェアチャイルド!!
 ウチらの『ショウリ』はちかいぞ!!」

      ムシャ ムシャ ムシャ

スタンドで支えつつ、自分の『ティターニア』を『完食』した。
『妖精の女王』を制したのだ。
残るは片割れである『妖精の王』のみ――――。

206ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/07/31(土) 03:59:06
>>205

「〜〜〜!」

            ガシィッ!


『ドクター・ブラインド』の的確なサポート!
支えるだけでなく、能力も使用し、子供を助ける。


「もが……」


さすがに一気飲みはつらい。
だが『ドクター・ブラインド』に支えられているため今更やめることも出来ない。


「……はひ、はひ」


『完食』!
瀕死だ。お腹いっぱいなのもあるが、一気飲みで物理的に酸欠になったのもある。

207夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2021/07/31(土) 19:35:22
>>206

長きに渡る戦いの果てに『妖精の王』は倒れた……!!
『王』と『女王』を制したのは『アリス』と『フェアチャイルド』。
二人のコンビネーションで『妖精の国』を制覇したのだ!!
食った!!
『フェミレス編』完ッ!!

「フェアチャイルド、しぬんじゃないぞ!!
 このたたかいがおわったら、
 『こきょうにかえる』っていってたじゃないか!!」

『ドクター・ブラインド』でフェアチャイルドを抱え、
席を移動する。
横になれる場所に横たえさせておこう。
小さい子供だし、店側も文句は言うまい。

        ――――スッ

伝票を取り上げて、『金額』を思い出した。

        ドサッ

そしたら何か気が遠くなったので、
フェアチャイルドと一緒に横になる。

「じつは、わたし…………
 このたたかいがおわったら、
 『レストラン』はじめるんだ…………」

「『みせのナマエ』は…………そう…………」

かくして、『アリス・イン・ファンタジーキッチン』の
一号店はオープンした。
同時に、ライバル店との熾烈な生存競争が幕を開ける。
次回『キングとクイーン』にご期待下さい!!

208ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/07/31(土) 19:50:36
>>207

「故郷とか知らんし……」


運ばれつを何か言う。
人には触れちゃならん設定があるのだ!
いや、いいけど、そこはシリアスな領域なのだ!


「トホホ〜
 もうジャンボパフェはこりごりじゃよ〜」


どこかで見たアニメの真似か、夢を見ているのか、そんな言葉が漏れた。
2人はうわごとを言いつつフェードアウト。
レストラン激闘編 『完』!

209関 寿々芽『ペイデイ』:2021/08/03(火) 02:30:04

         スタスタ

           …ピタ

モールで買い物をしていた時、
サマーグッズのコーナーで足が止まる。

「海開き……」

去年の水着はもう入らなくなったのだが……
そもそも関にはプールに行く機会自体が少なく、
海に行くとしても多くは釣りが目当てだった。
財布の紐を緩めるかどうかは悩み処だ。

他人からは、ショーケースに縋り付き、
楽器を眺める少年のようにも映るかもしれない。

210ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『ディスタント・ラバー』:2021/08/03(火) 21:55:43
>>209

「……」


ぺたぺたとサイズの大きいサンダルを履いた金髪の子供が
通りかかった……のが、ショーウィンドウに映り、関の目に入った。


「ん?」


子供も関に気づいたのか、近寄ってくる。
しかし関本体より関が何を見ているのだろうか?ということに意識がいったのか、
二、三度、関とショーケースを見比べ、
そのまま横に並んで、一緒にショーケースを眺めだした。

211関 寿々芽『ペイデイ』:2021/08/03(火) 23:40:13
>>210

「…………あらっ」

関の視線の先には『水着』を着たマネキンの他、
ビーチバッグやファミリーサイズの浮輪など、
海遊びのグッズが並んでいる。

そこから視線を外して、子供に視線を向けた。

「ユキシラさん、こんにちは。
 なんだかお久しぶりですねえ。
 今日は……モールでお買い物ですか〜?」

こちらから近寄る前に話す距離になったので、
その場で少しだけ姿勢を屈め、話し掛ける。

212ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『ディスタント・ラバー』:2021/08/03(火) 23:51:08
>>211

「うむ? こんにちわ」


あいかわらず大き目のシャツをワンピースのように着ているが、以前と違い、女物のようだ。
背負ったリュックからは竹刀が突き出ており、張り合わされたハンカチに『こうかん』と書かれている。


「すずめちゃんは風船を買うのか?
 わしは買い物はせん。
 金を持っておらんからの」


ショーケースは浮き輪に注目したようだ。
イルカやサメ型の浮き輪は確かに子供の関心を惹きそうである。
ただし浮き輪と風船の区別があまりついていないらしい。

213関 寿々芽『ペイデイ』:2021/08/04(水) 00:16:49
>>212

「えっ、風船? ……ああっ、浮輪ですか〜!
 そうですねえ、あの浮輪もかわいいですけど、
 あれじゃあなくって、水着を見てたんです〜」

一瞬なんのことやらと思ったが…………
ナイの視線を追えば、風船が何かは分かった。

「去年着ていた物が着れなくなったので……
 ただ、私もお金はそんなに無いので、
 買うかどうかは迷ってたんですけどねえ」

それからナイの姿を足先まで見て。

「あら……そのお洋服、よく似合ってますよう。
 それにその竹刀も。新しく交換したんですか〜?」

なんとなく小綺麗になったな、と思った。
交換がますます進んだ、という事だろうか。

214ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『ディスタント・ラバー』:2021/08/04(水) 00:34:10
>>213

「ほう、水着。
 この下着の……見た目が細かくないやつのことじゃな」


下着と水着は似ている。布面積が。
そして下着は装飾がついているが、水着は比較的シンプルだ。
そのくらいの認識らしい。


「うむ。この服は『交換』したものじゃ。
 なので濡れても新しく出せばよい。
 つまりわしは水着は無くても大丈夫ということじゃな」

「この、これは……あれじゃ、広告? 看板? の旗じゃ。
 『交換』って書いてあってわかりやすいじゃろう」


自慢げに、子供がその場でくるりと回ると、シャツと金髪がひるがえった。
髪の毛が関に当たって1ダメージくらい入ったり、
回転したはいいが、その後よろけてショーウィンドウに体を軽くぶつけたりしているが。

215関 寿々芽『ペイデイ』:2021/08/04(水) 01:18:44
>>214

「ふふふ……確かに見た目はそうですねえ。
 刺繍とかも入ってないですし。
 でもああいうのだけじゃあなくって……
 ほら、あれなんて普通の服みたいでしょう〜?」

        スッ

「私はああいう方が好きですねえ」

ざっくりとした理解を微笑ましく思いつつ、
ほぼ服に見えるワンピース型の水着を指し示す。

「あっ! ちょっと、危ないですようユキシラさん」

       トトッ

「竹刀も、どこかに引っ掛かりそうで……
 たしかに看板には便利そうなんですけどねえ」

よろけた体をやんわり支えつつ、
『交換』の二文字に視線を向ける。

「ううん、ユキシラさんの能力なら、
 そうすれば濡れても平気ですけど……
 それだとちょっと、泳ぎにくそうですねえ。
 それにしても……ユキシラさんも、
 海とかプールにはよく行くんですか?」

水着の役割は濡れることだけでなく、
泳ぎやすさという面もある。
ユキシラが泳げるのかはまた別の話だが……

216ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『ディスタント・ラバー』:2021/08/04(水) 01:27:34
>>215

「おとと……すまん」


服はとりあえず1着手に入ったが、靴は大きいサイズしかない、というのもコケやすい原因だ。
今日はサンダルだからまだマシだが。


「海は時々貝殻とか石とかを拾いに行くの。
 プールはいかん。金が無いし」


泳いだことはあまりなさそうだ。
この町に無料プールとかあるのだろうか?


「じゃがわしはもう長者じゃからの!
 プールも出せるぞ」

217関 寿々芽『ペイデイ』:2021/08/04(水) 01:48:49
>>216

「いえいえ〜。足元気を付けてくださいねえ。
 こけちゃったら危ないですから……」

ユキシラがバランスを取れたら、手を離す。
やはり、放って置けない感じはする。

「あぁ、そうなんですねえ。
 私も、『魚釣り』とかはしに行きますけど、
 泳ぎはあまり……だから、買うのを迷ってて。
 市民プールも意外とお金が要りますし………….」

買ったとしてもあまり着る場が無いなら、
それは無駄な買い物になりかねない。
とはいえ欲しくないわけでないのだが……

「…………えっ!?
 ぷ、プールって……ああ! ああいうの、ですか?」

          スッ

少し離れたところにある、
子供用のビニールプールコーナーを手で示した。

「それともまさか……わらしべ長者みたいに、本物を?」

ユキシラは底知れない。あり得なくは無いが……

218ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『ディスタント・ラバー』:2021/08/04(水) 02:05:44
>>217

「金か……わしに案がある……が、それはひとまず置いておいて。
 あんなのではないもっと深いやつが出せるぞ」


金が無いのに長者を名乗るのは、間違っている気がするが、何か腹案があるらしい。
忘れなければ披露してくれるだろう。
店の前で商品のビニールプールをあんなの呼ばわりしながら、話を進める。


「ふふん、特別に見せてやろう。
 これがわしの『屋敷』じゃ!」

                     もっ


っと、床に現れたのは、豪邸だ。庭にはプールがある。
プール付き豪邸……のミニチュアだ。


「凄いじゃろう。
 『入っ』てみるか?」


入れるらしい。
またしても自慢げな子供。
ただし、どうやらこの『屋敷』。実物……というか実体化スタンドのようだ。
そしてここはスカイモールの店の前だ。通行人も普通にいる。

219関 寿々芽『ペイデイ』:2021/08/04(水) 02:20:11
>>218

「ええと、深いやつ……というと――――」

幸いにしてビニールプールを売る店の店員は、
家族客の相手をしておりこちらに気付いていない。
気付いていれば果たしてどうなったか…………

「まあっ……!? これ……は。お家ですか?
 こういう『スタンド』を交換して貰った……
 っていうわけじゃ、ないですよねえ〜?
 あ、見せてくれてありがとうございます」

今までのユキシラの能力とは明らかに違う、
謎めいた『ミニチュア豪邸』――

「入る……この家に、私達が、ですか?
 そういう能力なのはなんとなく分かりますけど」

これがおもちゃではないのは分かる。
ナイの能力の隠された一面なのか、
それとも、『新たな一面』なのか。

「でも……ここでは、どうなんでしょう〜?
 私もユキシラさんも入っちゃったら、
 おもちゃのお家と思って、誰かが片付けちゃうんじゃ……」

通行人は無視するかもしれないが、
モールには清掃員なども巡回している。
そうなると、どうなるのだろう……気にはかかる。

220ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『ディスタント・ラバー』:2021/08/04(水) 02:46:59
>>219

「んー、固定されてるから捨てられはせんじゃろ」


子供が手で『屋敷』をぐいぐい押すが動く様子は無い。
床に置いてある、といより、生えているらしい。
家なので基礎が打ってあるというべきか。
とりあえず勝手に片付けられることはなさそうだ。
不審物ではあるし、注目はされるかもしれないという問題は解決していないが。


「入らんのか?
 ……まあ、プールがあっても、水着も買っていないしの」


入れば新体験なのだろうが、実際、入った後の事を考えると、特にする事は無い。
もちろん関が豪邸を堪能したいとか、服のままでいいから、あるいは全裸でプールを楽しみたいというなら、
入れてと言えば入れてくれるのだろうが。

     チョコチョコチョコ

ミニチュアの『屋敷』の庭にはメイドっぽい小さいのがプールへ向かって歩いている。

221関 寿々芽『ペイデイ』:2021/08/04(水) 03:09:42
>>220

「あぁ、そうなんですねえ。
 それなら、そこのところは安心ですね」

動かない屋敷を上から眺める。

「ううん、この服で泳ぐわけにも行きませんしねえ。
 水着を買って……も、やっぱり、お外ですし、
 ……どこか人目の無い所なら素敵なんですけど〜」

ここが誰も見てない場所であるとか、
着替えを持って来ているとかなら、
プール遊びもやぶさかではないが、
いかんせんモールの真っ只中だ。

「そうですねえ、泳がなくても、見学だけなら……」

厚意に応えたい気持ちと、一般常識の狭間で、
逡巡しながら『家』を見ていたが…………

「……あら? …………?
 ユキシラさぁん、今何か中で動きましたけど、
 もしかして、もう誰かを入れてるんですか〜?」

発現したばかりなので無いと思うが、
確かに中を歩く人影らしきものが見えたのだった。

222ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『ディスタント・ラバー』:2021/08/04(水) 03:26:47
>>221

「? プールも海も外じゃろう」


どちらかというと、ここはモールの中なので、屋内だ。
そういう問題ではないのだが。


「おお、これは『ディスタント・ラバー』さんじゃ。
 『屋敷』に住んでおる。
 ほれ、すずめちゃんに挨拶せい」


               チョコチョコチョコ

小さいのは、豪邸に合わせたのかメイド服を着せられているが、『屋敷』と違い非実体のようだ。
つまり大きさはともかく普通の人型スタンドと言える。

        ガッ
                          バシャバシャバシャ 

「あっ」


『ディスタント・ラバー』さんは関によく見える位置に近づこうとしたのか、
というか子供がそう動かしたのか、プールに近づくと、そのままプールに落ちた。
操作に失敗したらしい。


「……ところで金なんじゃが、わしは金は増やせないんじゃが、
 金の入った財布は増やせるらしいんじゃ」


子供は『屋敷』を解除すると、何事も無かったかのように話し始めた。

223関 寿々芽『ペイデイ』:2021/08/04(水) 03:51:50
>>222

「ま、まあそれは、そうなんですけどお〜…………」

反論に窮する関。
そういう問題ではないのだが、言葉に迷う。

「ああ。この人も『スタンド』なんですねえ。
 わざわざありがとうございます、
 『ディスタント・ラバーさん』……初めまし」

           「――――わっ、落ち」

「あっ……」

かわいそうなので助けてあげて――――――
と言うより早くいなくなってしまった。
いや、『無くなってしまった』というべきか。
とはいえ、再発現すれば問題は無いのだろう。

「……えっ、あ、へえ〜〜〜。そうなんです……え!?」

突然の事態に困惑している所に、更なる困惑が襲い掛かる。

「そ、それって……お金を無限に増やせるってこと、ですよねえ?」

そうとしか思えないが思わず口に出して聞いてしまう。
それから、周囲を二、三回見渡した。

「あのうユキシラさん。その話……私以外の人に、しちゃったりしました?」

224ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『ディスタント・ラバー』:2021/08/04(水) 04:11:00
>>223

「そうじゃな。
 財布、というか、金単体ではなく何かの一部なら良いらしい。
 例えば、『交換』した服のポケットに金が入っておったとか。
 そもそもなんで金は交換できんのかよくわからんが」


肯定しつつ、首を傾げる。
本人にもよくわからないスタンドのルールらしい。


「この話をするのは……んー、すずめちゃんが初めてじゃったと思うが……?
 まあ、すずめちゃんが協力してくれればすぐ大金持ちじゃ。
 いくらでも良いが、この貝殻と交換でどうじゃ? なんか裏側が虹色で綺麗じゃろ」


言うまでも無く、お金の偽造は重罪だ。
紙幣と違って、硬貨ならばバレないのだろうが……

225関 寿々芽『ペイデイ』:2021/08/04(水) 18:30:01
>>224

「あのう、その……それは…………………………」

いけない事ですよ、と即座に言い切れず、
関の頭の中に多くの可能性が渦巻いては消える。
彼女の能力は、自分の能力以上に世界を変える。 
その力を独占すれば全ては逆転するかもしれない。
悪に手を染めれば決定的な破滅が来るかもしれない。

「よッ……良くない気が、します。
 これから先も、私以外の人には……
 すごく信用できる人以外には、
 話さない方がいい気が……しますよう」
        
       「だって……危ないから」

ユキシラが危険な目に遭うかもしれない…………
その理由を浮かべて初めて否定することが出来た。

「お金を無限に出せるなんて、もし有名になったら、
 ……みんながユキシラさんの事を狙ったりして、
 きっと、とっても危ない事になっちゃいますから」

無限の金を得られるのは彼女にも得な事だし、
能力で出来ることをやるなという権利は無い。
ここではない何処か、いつか、誰かが、
彼女にそれを持ち掛けるのも容易に想像がつく。

           だが・・・

「今までの物と違って、お金は、
 何にでもなっちゃいますから」

あるいはそれは自分の保身なのかもしれない。
つまり、ユキシラをより危険な領域に進める、
その背を押す存在になる事を避けている……と。

「私は……………だから、お金の交換はしませんよう」

いずれにせよ、今選んだ言葉はどれも、
危ういユキシラに言い聞かせる以上に、
自分自身を制止するために膨らませた善性だった。
嘘ではないが、全てが本当ではないという事だ。

226ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『ディスタント・ラバー』:2021/08/04(水) 22:26:06
>>225

「危ない?
 ……ふうむ、ふむ。
 なるほど。そうかもしれん!」


眉根を寄せて一瞬考えた子供は、納得した様子を見せる。
物分かりがいいようだが、考えたのが一瞬すぎて逆に本当にわかってるのか怪しい。


「すごく信用できる人以外には、すごく秘密にした方がいいかもしれん。
 とりあえずはすずめちゃんとわしの秘密ということに……」

「うん?」

「……ええ? なんでじゃ?」


と、お金の『交換』を秘密にするところまでは理解したようだったか、
関が『交換』しない。というのは理解できないようだった。


「うーーーん、よくわからんが……まあ……嫌なら……仕方ないんじゃが……」


とはいえ、しぶしぶ引き下がる子供。本当に理解できない様子で不本意そうにだが。
『交換』はあくまで双方の合意があってのもので、無理強いするものではない。
という基本姿勢があるのかもしれない。


「しかしすずめちゃん、どういうやり方なら金を手に入れていいんじゃ?
 何か他に方法とかあるかの?」

227関 寿々芽『ペイデイ』:2021/08/05(木) 01:28:11
>>226

「ど、どう…………って、それは………………」

答えに窮する。
関の感覚ではやはりこれは『避けるべき』事だが、
なぜそうなのか、を言語化しようとした。

「働いたりとか…………
 何かお手伝いをしたり、とか」

言いながら、奥底に潜む感情を探り当てようとした。

「だって、お金を『増やす』事は、
 なんだか、良くないような気がして……
 法律とか、それに」

すぐにそれは己の『矮小』に基づく物だと気付いた。

「……それに」

「……ごめんなさいユキシラさん」

     「わ」

「私は、お金が『増える』のが、なんだか、怖くて。
 それをしたら一瞬でお金持ちになれるのが、
 それが……それが怖くて……」

それでユキシラが『何でもできる』ようになるのが、
それこそが、怖いのかもしれない。
結局は金銭を介してのみ物を手に入れられる、
『ペイデイ』が象徴するかのように――
関の中にある、一種の矮小さに行き当たった。

「法律とかは、結局、それを……
 理由を付けたい、だけで……」

法が許さないと言うなら商品の複製だってそうだし、
物を増やせるというだけで悪人が狙うのは同じだ。
そもそも正式な取引を経ずに買い物をしている、
自分のスタンドだって、本来『いけない事』なのだ。

だから、それは捻じ伏せるべき感情に思えた。

         「だから……」

「…………………………交換…………しますよう。
 やっぱり……きっと、しても大丈夫、
 他の物と本当は、そんなに変わらないんです。
 嫌とかじゃあなくて、私、驚いて、それだけで」

『金の増殖だけはダメな理由』を探した時――
行き当たるのは自分の、ある種の矮小さだけ。
超えられない線を他人の前に勝手に引いているだけ。

その答えに気づいた時、ゆっくりと、
エプロンのポケットから、小さな財布を取り出す。

「あの、よく考えたら、しちゃいけない理由が、思い付かなくて……」

そんな感情はいつも通りなあなあに。そうするべきだ。

228ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『ディスタント・ラバー』:2021/08/05(木) 02:23:08
>>227

「うーん、働く、か。わしはあんまりむかん気がするの」


年齢を考えれば一般的な労働で雇ってくれるところは無いだろう。
そもそも、スタンド能力を抜かせば技能も特に無い。
それでも一応、腕組をして考えてみているようだった。


「わ、そんな顔せんでもいいじゃろ」

「理由とか無いのかもしれんが、嫌ならええよ」

「そりゃ『交換』してくれたらいいし、すずめちゃんが何が嫌なのかはよくわからんが……
 わからんが、嫌なら嫌で仕方ないしの。
 わしだって野菜は嫌いじゃが、なぜと聞かれても困るし……
 味が嫌いなんじゃが、じゃあなんで野菜の味が嫌いなのか……?
 好き嫌いって不思議じゃな。
 他の者の感じる味はわしと違うのか?」


唐突にクオリアについて考えだす子供。
だが、今はその時ではないと思い直したのか、頭を振って気を取り直す。


「えーと、働いて金を得るのはOKなんじゃろ。
 わしは『交換屋』じゃから、いつも働いておると言える。
 つまり、『交換屋』で普通に金で物を売るのもアリにしたらいいというわけじゃ。
 すずめちゃん、何かすごく売れるものはないかの」


それだと結局、関が考えるように、商品を増やしているのだから大差無いのだが……
『交換』はしてほしい。関が嫌な理由は理解できない。
だが生理的に嫌なら、嫌であることを否定しないし、実際に嫌々に見えるのだろう。

229関 寿々芽『ペイデイ』:2021/08/05(木) 03:20:19
>>228

「あぁ、ごめんなさい私……
 深刻に考えすぎちゃってたのかも。
 そうですよねえ、ユキシラさんの歳だと、
 流石にお仕事っていうのは…………」

取り乱してしまった事を自覚し、
財布を一旦自分の手元に引き戻す。

「……」     (ああ)

そしてユキシラの話を聞いて、ゆっくり頷いた。
危なっかしい彼女に、諭されているようだった。

「そう……ですね。交換屋さん、良いと思いますよう。
 お金を直接増やすんじゃない方が、私は……
 おかしいですよねえ、それだって……
 私の能力だって、人が知ったらルール違反なのに。
 能力で出した物を売るのは、私も、ずっと考えてて」

        (私、この子のことを、   
         保護もしないのに……
         それなのに保護者みたいに)

突き詰めて考えると『増やした物を売る』よりも、
『金そのものを増やす』方がリスクは高いのだが、
それ自体は関の中でそれほど大きな要因ではない。

「私、そこはなあなあに出来るみたいで。
 ……お金をそのまま出す方がずっと早くて、
 暮らすのも楽になるんだとは思うんです」

「…………でも」

ある種究極のコスパを誇る『稼ぎ方』であっても、
心情が邪魔をするのは『ある』事だと、
子供の話で己に納得させられる。

「売れる物……ううん。
 やっぱり、珍しいものは売れると思いますよう。
 あとは……物だけじゃあなくっても、
 さっきのプールの入場料を取る、とか」

だが……自分は彼女の金稼ぎを邪魔したのだから、
その対価にも何かの責任は必要に感じた。

「それだって、怖い人に目を付けられたりとか、
 そういうのはあるかもしれませんけど……
 お金を直接出すよりは、安心するような、気がして」

だから考えるが――関自身はともかくとして、
ナイの『商売』に無責任にアイディアだけを出して、
実行した彼女が傷付いたら、どうすれば良い?

           「……あ」

「…………ユキシラさん。
 いえ、『交換屋さん』…………
 私、私が貴方の役に立てるとしたら」

         「…………『組み』ませんか?」

その思考の果てに、ふと、そんな言葉が口をついて出た。

230ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『ディスタント・ラバー』:2021/08/05(木) 03:38:42
>>229

「ふうむ」


子供は静かに関の話を聞く。
といより、感情が落ち着いていくのを見ていたようだった。


「『組む』?」


それを聞いた子供は、ゆっくりと関に近づき、
床に四角いビルのようなもの――さっきと形は違うが『屋敷』だ。
スーツ姿の『ディスタント・ラバー』さんが窓から関を見ている――を発現すると、
踏み台のように、ビルに登り、関に向かって腕を伸ばし……

        グッ

肩を組んだ。
ビルを踏み台にして高さを合わせても腕の長さが足りずに不格好だ。


「組んだが……どうじゃ? これでよいのか?」

「ところですずめちゃんって『スタンド使い』って事なんじゃよな?」


子供は、関の能力は知らない。使っているのを見たことも無い。
言葉の端々から、『スタンド使い』なことをうっすらと感じる程度だ。

231関 寿々芽『ペイデイ』:2021/08/05(木) 04:00:02
>>230

感情――言いづらい靄までを吐露したことで、
またユキシラがそれを咎めなかったことで、
関としては己の狭量に押し潰されずに済んだ気分だ。
もちろんそうした性根が簡単に変わる事はないが、
付き合い方を知れば、少しは楽になる。

「…………あ、そういえば私の能力のことは、
 ユキシラさんには話してませんでしたっけ。
 私の『ペイデイ』は――――」

        グッ

          「あらっ」

と、説明する前に肩を組まれた。
振り解く気もしないので、ユキシラが崩れないよう、
少し身を屈め気味にしてそれに応じる。

「もうっ、ふふ……そういう組むじゃあなくってぇ。
 私たちが、スタンドで力を合わせたら、
 もっと儲けやすくなる気がするって事ですよう。
 それに、お金を直接出すよりは、たぶん安全に」

         ポン

「あのう、一応……人目のない所に行きませんか?
 私の能力、普通の人にも見えちゃいますので〜」

やや和らいだ笑みを浮かべながら、
少し離れた位置の柱の影を『本』で指し示す。
そう、本……帳簿がいつの間にか手に発現している。

「先に説明だけしておくと、私の『ペイデイ』は、
 お金さえ払えば殆どのものを買える能力なんです。
 私…………これを使ってお店をしようと、
 こっそり考えてまして…………」

移動に応じてくれるなら移動するし、
応じてくれないなら、ひそひそと話だけしておく。

232ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『ディスタント・ラバー』:2021/08/05(木) 10:08:49
>>231

「わしのも見えるぞ」


『屋敷』は実体化スタンドだ。
『ディスタント・ラバー』は非実体人型スタンドのようだが。

そして関が誘うと、子供は『屋敷』を解除して素直についてきた。
柱の影……隠れているとは言い難いが、よほどの事がなければ通行人は気にしないだろう。
というか店の前が隠れていなさすぎるだけだ。


「ふむ?
 買う能力……店に行かないでもいいということか。
 しかし金を払って買ったものを金で売るということか?
 それだと変わらんのでは……」


過去の『交換品』の他は、それこそ、今手に持っている貝殻のように、自力で拾った物を商品にしているのだろう。
時給を考えなければ原価はゼロだ。
仕入れの大変さは体感しているので、『ペイデイ』の便利さはわかるが、
一方で、関の能力だけで店をやる方法はよくわからない。
差額で儲ける方法が理解できない。


「つまりすずめちゃんの商品をわしが増やすということか」


ただし、そこに自分の能力を足せば、1つ分の値段で商品が量産できる=儲かる。
という図式はわかるらしい。
普通の店がどうやって稼いでいるのか理解していない事を除けば大体問題ない。

233関 寿々芽『ペイデイ』:2021/08/05(木) 20:06:57
>>232

「えぇ、お屋敷も目立っちゃいますよねえ〜っ」

陰に移動すると、少しは人目につきづらくなる。
少なくとも実演販売のような状況にはならない。

「いえいえ……安く買って、高く売るんですよう。
 もちろん騙したりするのは良くないですけど、
 例えば『今は市場に売ってない物』なら、
 普段のお値段より高くても欲しい人はいますし、
 私の能力は、今この場で冬の野菜も買えますから」

「ただ、買った値段で売って儲かる方法もあって」

『ペイデイ』の強みは価格設定もだが、
市場に出回らない物を仕入れられる点だ。
それも本来の市場からすればルール違反だが、
取引を介する事が、関の罪悪感を薄れさせる。

「……そう! ユキシラさあん、鋭いですねえ。
 ユキシラさんに商品を増やしてもらえたら、
 仕入れ値は一度分で済みますし……
 ユキシラさんは、交換した物が増えますし。
 もちろん売上もお分けしますし……
 それに、他にも手を組める所はありますよ」

ビジネスプランの提起に、やや饒舌になる関。
いまや、表情からも強張りはほぼ消えていた。

「ユキシラさんが『出せる』物の中で、
 価値のありそうな物も一緒に出品するんです。
 それ目当てで買い物をする人に、
 私の物を売り付けることも出来ますし、
 逆に私の物を買おうとしている人に、
 ユキシラさんの品揃えを見て貰う事も出来ます」

      「私にも仕入れられない物は、
       実はそこそこありますので……」

やはりお金は節約するにせよ、稼ぐにせよ、
『まっとうに思える』方法で貯めるのが関には良いのだ。

234ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『ディスタント・ラバー』:2021/08/05(木) 23:28:07
>>233

「なるほど?」


関の説明を聞き、なにか想像しているのか、
口を半開きにして空中に視線をさまよわせる子供。


「しかし……実を言うと、わしはあんまりうまくいかない事が多いんじゃ。
 大丈夫かの?」


『交換』実績は1年で50個ちょっとだ。
メタな事を言うと、サザエさん時空なので1年とはっきり言うのははばかられるし、
NPCとの交換で勝手にラインナップが増えるのはNGなので、
PCとの交流以外ではまったく『交換』が成立していないということなのだが……
子供の感覚としては売れない時の方が多い。ということになる。


「やっぱりお店が必要なんじゃろうか?
 わしの『屋敷』は最近出せるようになったんじゃが、お店としては……
 ちょっと小さすぎるかの。中には入れるが……」

235関 寿々芽『ペイデイ』:2021/08/06(金) 00:11:10
>>234

「ううん、交換が上手くいかなくっても、
 一応、大丈夫な気はしますけど〜……
 とりあえず、お店は出すつもりはないんです。
 建物を借りるにもお金がかかりますし、
 危ない人とかが来るかもしれませんし……」

子供二人で商売の話をしているのは、
側から見れば遊びのようにも見えるだろう。

「その点ですよ、通販にしちゃえば、
 こっちが誰かを教えずに物だけ送れますし、
 どうやって物を増やしたり出したりしてるのか、
 気にされる事もありませんからねえ」

   「サイトを用意するツテはありますし……」

実際には非常に危険なやり取りだが……

「そこで交換に出せるラインナップとか、
 お金で売っても良いラインナップを載せたら、
 今までより交換が進みやすくなる気はします〜」

「……ユキシラさんの能力のルールで、
 直接顔合わせしないとだめなら難しいですけどお」

関としては、希望に満ちた展望だった。
後ろ盾というには弱いが特殊な許諾も得ている。
初期費用も手に入れた。動き出す機運は高い。

236ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『ディスタント・ラバー』:2021/08/06(金) 00:22:46
>>235

「つーはん?」

「テレビで聞いたことあるような気もするが……
 んうー、まあ、そこらへんはすずめちゃんに任せる」


小首を傾げる。わからなかったようだ。
口調はともかく喋りは達者だが、
旗のへたくそな平仮名で書かれた『こうかん』の文字を見るに、
読み書きは怪しいかもしれない。


「『交換』は顔を合わせなくてはいかんということはないの。
 電話越しでも大丈夫じゃと思う」


リュックからスマホを取り出す。
ちょっと画面にヒビは入っているが、壊れてはいないのだろう。
このスマホでネットにも繋げられるはずだが、通販については知らないらしい。

237関 寿々芽『ペイデイ』:2021/08/06(金) 00:42:15
>>236

「通販は、ネットでお買い物をするんですよう。
 もちろん、売るのも出来ますし……
 そうですねえ、その辺りはまた準備が出来たら、
 きっとユキシラさんにもお声を掛けますね」

       コクリ

「ああっ、電話越しでも大丈夫なら……!
 多分……無理なくお互い『得』が出来るはずです」

皮算用の段階ではあるが――
二つのスタンドが組み合わされば、
単純な足し算以上の結果を出せる気がした。

「少し先になるとは思いますけど、
 お友達としてだけじゃあなくって、
 お仕事のお仲間としてもよろしくお願いします〜。
 まあ、今日のうちは何も出来ませんけど……」

        スッ

手を差し出す。特に意味はないが、握手のつもりだ。

「……そうだ! 手を組んだ記念に、
 よかったらお菓子か何か食べますか〜?」

そして水着のコーナーとは逆方向にある、
ちょっとしたカフェの方に視線を向けた。

238ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『ディスタント・ラバー』:2021/08/06(金) 00:53:55
>>237

「おお、よろしく」


わしっと手を掴んで振る。


「菓子なら色々と出せるぞ。
 前に駄菓子を袋ごと交換しての。
 それからチョコモナ○ジャンボじゃろ、
 一抹ちゃんが作ったケーキじゃろ……」


やはり幼いからか、お菓子を貰う事は多いようだ。
『交換品』がいくつかあるらしい。
関自身、クッキーを『交換』したことがある。
あの時のクッキーを今出したなら、
『交換』時のままのものを出せるので鮮度は問題ないだろうが、
袋に書かれた賞味期限は切れているだろう。

関がカフェに向かうなら、ついていくだろうし、
今まで『交換』したお菓子を食べたいと言えば出してくれるだろう。

239関 寿々芽『ペイデイ』:2021/08/06(金) 01:17:20
>>238

「あぁ! ちょうどいいですねえ。
 飲み物は私がご馳走しますから、
 お菓子はお任せしても良いですか〜?
 あそこのカフェ、お菓子を持ち込めますので」

買うと言ってもスタンドでではなく、
普通にカフェのドリンクを買う気だ。
多少割高にはなるだろうが…………

「あそこで私たちの協力関係をお祝いしましょう〜」

        ニコ……

それくらいなら喜んで、だ。
カフェに向かった後のことがあるとすれば、
あとは単に飲み食いをするだけ。

「それじゃあ、行きましょうか〜。ユキシラさん」

大きな事が動き出すなら、また別の場所で、だ――

240ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『ディスタント・ラバー』:2021/08/06(金) 01:32:38
>>239

「じゃあ菓子と飲み物、『交換』じゃな」


いくらでも増やせる。とは言うが、無から生み出しているわけではなく、
実際は、錬金術のように価値の無いものを『交換』しているので、
お菓子も、元は石ころとか糸くずだったりするのだが……
交換後の品に影響するわけではないので、気にしなければ問題ない。


「うーん、わしはりんごジュースが良いの」


ゴミや汚物でもリサイクルある意味でリサイクルできる能力だが、
商売していく上でそれがバレたらイメージはダウンするだろうか。
金銭を直接量産するほどではないが、
スタンドで稼ぐ以上後ろ暗いところがあるのは仕方ないのかもしれない。

ともあれ、そんな先の事はともかく、
今日の所は2人はカフェに入って今後の希望に満ちた展望を語り合うのだった。

241合歓垣 瑛『ブラス・コンストラクション』:2021/09/23(木) 07:43:19
 まだ子供としか言えないような年齢の少女が展望楼塔の上に立っている。
 かなり高いところだが大丈夫だろうか。

242『エド・サンズ』:2021/09/23(木) 11:28:24
>>241

『絶景カナ! 絶景カナァ〜ッ!』

通常、人が立ち寄る事のない塔の上
そこにきっぷが良さそうな男の声が響く

『ア〜〜・・・「泥棒」ノ台詞ヲ俺ガ言ウノハチョット違ウカナ・・・・ン?』

だが、その声は常人には聞こえず、声の主の姿が咎められる事もない
何故ならその男は『スタンド』だからだ

『嬢チャン、ココハ危ネエゼ・・・・・ト言ッテモ聞コエル訳ガナイカ』

『和風の意匠を持つ人型スタンド』が合歓垣に話しかける

243合歓垣 瑛『ブラス・コンストラクション』:2021/09/23(木) 12:10:39
>>242

 その少女――合歓垣は声をかけられたことに驚いたように振り返り、いつでも逃げられるようにと足に力を入れる。
 足にはパイプが巻き付いたような変わった『ブーツ』を履いている。金属光沢を帯びてどうにも眩しい。

「パパ、またおばけのふり? おどかそうとしてー」
「…………あれ? パパじゃ、ない…?」

 声をかけてきた人物が見知った相手ではないことに気付いた合歓垣はカバンにつけられた『防犯ブザー』の紐を握りしめて睨めつける。

「だれですか、おじさん。
 変なかっこうして、『へんしつしゃ』ですか」

 子供だからだろうか、『本体が近くにいない声をかけてくるスタンド』を『人』だと勘違いしているようだ。

244『エド・サンズ』:2021/09/23(木) 12:51:04
>>248

『オ?ドウヤラ嬢ちゃんハ俺ノ事ガ見エルミテーダナ』

『和風の人型』はスタンドである
そのため、半透明で薄っすらと向こう側が透けて見える・・・・『幽霊』のように

『お嬢ちゃん、モシヤとっつぁんトハグレタノカ?
 イイヤ・・・・コンナ所マデとっつぁんが追ッテ来レル訳ネーワナ』

245合歓垣 瑛『ブラス・コンストラクション』:2021/09/23(木) 13:02:14
>>244

「はぐれたんじゃないし!
 急に後ろから声かけてきたからパパかもって思っただけだもん」

 いつも父にそのように驚かされているらしい。唇を尖らせながら合歓垣はそう言った。
 そして『防犯ブザー』の紐を握りしめ、足に力を入れたまま、合歓垣は誰何する。

「『俺ノ事ガ見エル』ってことは…おじさんは、おばけ?
 それとも『スタンド』? 本体さんは??」

 先日出会った水宮とそのスタンドのマリーのように、本来スタンドは本体のそばにいるものだ。
 『幽霊』か『スタンド』か。合歓垣には判断がつかず、疑問に思っているらしい。

246『エド・サンズ』:2021/09/23(木) 13:13:52
>>245

『ハハハ!親カラハグレタガキハ皆ソウ言ウンダゼ?
「俺は迷子じゃない」・・・・ッテヨウ!』

防犯ブザーを握りしめる様子が見えたが『エド・サンズ』は人間ではない
当然、警察に捕まるわけもないので余裕綽々の態度で話し続ける

『オット、流石ニ嬢ちゃんハ「スタンド」ノ事ヲ知ッテルカ
 俺ノ本体ネェ・・・・ドコニ居ルト思う?』

からかうような口調で問いかける

247合歓垣 瑛『ブラス・コンストラクション』:2021/09/23(木) 13:50:49
>>246

「あたしは迷子じゃないもん」
「おじさんはそれじゃあ『スタンド』なんだ?
 本体さん…? そんなに遠くじゃないでしょー?」

 合歓垣は自身の常識に沿って答える。
 スタンドは本体の近くにいるものであり、離れるにしてもそれほど遠くに離れるものではないだろうと思っているようだ。

 からかわれているように言われた合歓垣はどうにかして本体を探そうと思ったらしい。
 きょろきょろと周囲を見てから、つぶやいた。

「あ、そうだ!
 いーこと考えちゃった!」

 合歓垣はその言葉と共にぴょんと楼塔から飛び降り、1.5mほど落下したところで『ブラス・コンストラクション』から音を響かせた。
 足をばたつかせ、低音を小さく響かせながら周囲の『空中』を走り回って様子を見る。
 本体らしき人がいないか、探しているらしい。

――そんなに遠くにいないはずだもん。
――スタンドがいる上の方、気にしてる人がいたらきっと本体さんでしょ?

248『エド・サンズ』:2021/09/23(木) 14:45:11
>>247

『ハハ!スグ近くネェ?ソウサナァー答えハ・・・・アッ!』

もったいぶって答えを出し渋る『エド・サンズ』
彼の目の前で突然少女が落下した!

『あ、危ネェ!?』

大慌てで合歓垣の姿を追う『エド・サンズ』を嘲笑うかのように
少女は自由自在に空を歩いていた・・・・

『マジかよ・・・・』

眼下を見下ろしながら『本体』を探す合歓垣だが、ここは展望台のさらに上
周囲一帯に『本体』らしき姿は見当たらない

249合歓垣 瑛『ブラス・コンストラクション』:2021/09/23(木) 14:58:44
>>248

「みつかんなーい!」

 一周見回ってそれらしき人物が見当たらなかったらしく合歓垣は頬を膨らませて楼塔の上に戻ってきた。
 周囲に鳴り響く音は先ほどの低音からすこし上がっているようだったが、合歓垣が戻ってくると同時に音は止まった。

「……ねー。答えおしえて?」

 合歓垣は降参とばかりにそう口に出す。
 自分の考えていた通りにいかなかったからか、どうにも不満げだ。

250『エド・サンズ』:2021/09/23(木) 15:50:39
>>249

『空ヲ飛ブ能力カ・・・・随分ト便利ソージャネエカ・・・・』

んー、と小さく唸りながら合歓垣の姿を追いかける
左手には図書館から借りた(無許可)『サンタクロース』の絵本
ページは『サンタクロースがトナカイに乗って空を駆けるシーン』が開かれている

『オッ、戻ッテキタカ
 ソウダナ、答エハ・・・・「いない」ダ』

『「夏の魔物」ッツー「スタンド」にシテヤラレテナァ
 俺ノ「本体」は「かき氷」ニサレチマッタッテワケダ・・・・
 ソイツノセイデ、俺ハ自由気ままニ動ケルヨウニナッタって事』

『トコロデ、嬢ちゃん・・・・「サンタクロース」ハ好キカイ?』

251合歓垣 瑛『ブラス・コンストラクション』:2021/09/23(木) 16:00:20
>>250

「『かき氷』? 『夏の魔物』??
 おじさん変なこと言うねー」
「…って、言いたいけど、
 おじさんもその『夏の魔物』も『スタンド』なんだもんね。
 それならきっと、本当だよねー…」

 合歓垣は自分がスタンドに『かき氷』にされてしまうことを想像したのか、「うげっ」と漏らして嫌そうな顔をした。

「『サンタさん』?
 好きだよ! 去年はね、こーんなおっきなプレゼントくれたんだー」

 合歓垣はそう言いながら手で箱の大きさを示す。
 ちなみに去年もらったのは『大きなクマのぬいぐるみ』だ。

252『エド・サンズ』:2021/09/23(木) 16:26:41
>>251

『ホホー!ソレハ「サンタ」の爺ちゃんモ思い切ッタモンダゼ
 ソンナニ大キナ「プレゼント」を貰エテ良カッタナア!』

可愛らしく『プレゼント』の喜びを表現する様子を見て声に笑みが混じる

『ソンナラ話ハ早エ・・・・モノハ相談ナンダケドヨォ
 嬢ちゃん・・・・「サンタ」の仕事ヲ手伝ウ気ハネェカ?』

『実ハ「夏の魔物」ヲ倒シテ俺の「本体」ヲ取リ戻スタメニ
 季節外レナ「夏のクリスマス」ヲスル必要ガアッテヨォ・・・・
「サンタの爺ちゃん」ト相談シテ俺ガ「夏のクリスマス」ヲヤッテイイッテ事ニナッタンダ』

『トコロガヨォ・・・・肝心ノ「トナカイ」がイナクテナァ・・・・』

ちらりと合歓垣の方を見る
どうやら少女は『サンタクロース』を信じているようだ
子供の夢を壊すわけにもいかない・・・・少しだけ方便を交える

『嬢ちゃん・・・・俺ノ「トナカイ」ニナッチャアクレネエカ?』

253合歓垣 瑛『ブラス・コンストラクション』:2021/09/23(木) 17:06:38
>>252

「ふぅん?
 おじさん、『サンタさん』の友達なの?」

「あたしが空飛べるからトナカイさんをやってほしいってことだよねー?
 女のコにおっきなおじさんが乗っかってサンタさんごっこするのって変じゃなぁい…?」

 合歓垣は事情はわかったようだが『不審スタンド』だと思っているのだろう、訝しげな顔で『和風のスタンド』を見ている。

「ほんとーに『サンタさん』から頼まれたならお手伝いしてもいいけど…」

 合歓垣は足を動かし『怪しんでます』といった音を響かせる。
 今度は空を飛ぶ様子はない。
ttps://youtu.be/szWF5k0GsPA

254『エド・サンズ』:2021/09/23(木) 17:19:02
>>253

『ウ〜〜〜ン・・・・ソレモソウダナァ・・・・
 コンナニチンマイ女の子ノ上ニ俺ガ乗ッカッテタラ、オカシイヨナァ〜〜』

合歓垣の全身を眺めながら、右手の指先で小さな輪を作る
こんくらい小さい、というジェスチャーだ

『マア仕方ネェカァ
 嬢ちゃんノ才能ヲ生カセナイノハ残念ダガ他ヲ当タルシカネェカァ
 残念ダケドショウガネエヨナァァ〜〜〜〜』

押して駄目なら引いてみろだ
残念そうな声を出しながら、顔を背ける

255合歓垣 瑛『ブラス・コンストラクション』:2021/09/23(木) 17:53:53
>>254

「……!!
 あたしそんなにちっちゃくないし!」

 身長を揶揄されたことが辛抱ならなかったらしい。
 憤慨したように地団駄を踏み『演奏』を始め、『和風のスタンド』の頭より高い位置まで浮き上がった。

「おじさんさ? そういう風に言うけど、
 あたし以外にトナカイできる人、知らないんでしょ?
 そうじゃなきゃはじめて会った女のコに頼んだりしないもんね?
 仕方ないから、じょーけん次第だけどしてあげてもいいよ」

「あたし、ほしいゲームがあるんだけどパパがだめって言うんだー」
 
 働かせるなら賃金を寄越せ。つまるところ、そういったことだ。

256『エド・サンズ』:2021/09/23(木) 18:17:00
>>255

『ハッハッハ! チッコイ奴ハ皆ソウ言ウモンダゼェ!
 デモヨォ、お前さんノ力ガ必要ナノハ確カダシ、条件次第デハ・・・・』

地団太を踏みながら、宙に浮く合歓垣を笑いながら見つめる
ここまでは概ね『エド・サンズ』が予想した通りの反応だ
そして、出された条件を聞き、手を組みながら考え込む

『フゥーン・・・・「げぇむ」ネェ・・・・
 マア、俺ノ本体ガ復活シタ暁ニハソレクライノ金ヲ出シテヤッテモイイガ・・・・
 ソレッテ「パパ」ニ見ツカッタラ言い訳ガ出来ナクナラネェカ?
 買ッテモイナイモンガ家ニアルワケダシヨォ』

257合歓垣 瑛『ブラス・コンストラクション』:2021/09/23(木) 18:48:45
>>256

「あっ…ホントだ…」

 盲点だったらしく合歓垣は悩んだように腕を組み空中を往復し始めた。

「……パパはにぶいからいいとして、ママはきっと気付いちゃう…。
 この間もこっそりYouTube見たのなんでかバレちゃったし…」

「……あ! そーだ!
 ゲーム、ダウンロードしちゃえばバレない気がする!
 本体さんに電子マネーでもらっちゃえばだいじょーぶじゃない?」

 どうやら合歓垣の中で結論が出たようだ。
 ダウンロードされたデータがあればおそらく母は気付くだろうが言わない方がよいかもしれない。
 
「ってことで、本体さんに『おこづかい』もらえるなら、
 してあげてもいいよ?」
「いつ、どこでするの?」

258『エド・サンズ』:2021/09/23(木) 19:03:23
>>257

『マ、親ニ黙ッテ何カシヨートシテモソウハ問屋ガ・・・・』

>「……あ! そーだ!
> ゲーム、ダウンロードしちゃえばバレない気がする!
> 本体さんに電子マネーでもらっちゃえばだいじょーぶじゃない?」

『ハ? だんろおど? 電子まね?』

現代的な概念にうっかりとぽかんとした言葉が漏れてしまった
本体である氷山はともかく、『エド・サンズ』はこの手の概念が苦手なのだ

『・・・・・ナンダカヨクワカンネェケドヨォ
 多分、「本体」ノ奴ヲ助ケテヤレバワカルダロ』

『イイゼ! 俺ノ「本体」ガ無事ニ「かき氷」カラ戻ッタラ奢ッテヤルゼ』

『「場所」ト「時間」ハオッテ連絡スルガ・・・・
 駅前ニ「掲示板」ガアルノ知ッテルカ?
 開催の日取りガワカッタラソコニ書イテオクカラ忘レズニ見テクレヨナ!』

259合歓垣 瑛『ブラス・コンストラクション』:2021/09/23(木) 19:26:08
>>258

「いいって言ったんだから、約束ね!
 ゆーびきーりげーんまーん、嘘ついたらはーりせんぼんのーます、ゆーびきった!」

「掲示板…、あれのことかな?
 わかった、お出かけするときに見るようにしとく」

 勝手にエア指切りをし、合歓垣はもらえる予定のゲームに思いを馳せるように微笑んだ。
 そしてなにかに気付いたようにポケットからスマホを取り出して時計を見た。

「あっ、そろそろ帰んないと!
 おじさん、じゃーねー!」

 それだけ言うと合歓垣は楼塔から飛び降り、地面すれすれで浮遊して去っていった。

260『エド・サンズ』:2021/09/23(木) 19:45:56
>>259

『ハァ〜〜・・・・ナンダカヨクワカンネェケド、これで「トナカイ」モ確保出来タナ
 ソレニシテモ、「げぇむ」ニ「電子まね」ニ「だんろおど」ダノ・・・ヤヤコシイ世の中ダゼ』

落ちる様に飛び跳ねながら去って行く合歓垣を見る
周囲に響くような金管の楽音が徐々に遠くへと消えていった

『ソンジャア、俺モ帰るトスッカア。帰る場所ネエケドヨォ』

そして、『エド・サンズ』もまた鹿の様に塔から飛び降りて消えていった

261門倉『ソウル・ダンジョン』:2021/09/30(木) 19:31:27
『電波塔』の周辺をあてどなく散歩していた。

「うゥん………いつのまにか大変な事になっていたみたいだね」

ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1619194604/58n

という放送(『エド・サンズ』の夏の魔物言及)がなされた事を
風の噂で聞きつけたが、ここのところ、他の案件で忙しかったので
特別に関与はしていなかった。

「『歓楽街』の楽しそうな店がチラホラ『クリスマス』っぽい雰囲気だったのは
 見かけたけど、今のところ、町の人みんなが噂している
 ってほどではなさそうなんだよな………」

この放送を元に様々な『スタンド使い』が動いているのだろうか?
夏も次第に終わりに近づいているし、もしかすると『門倉』が知らないところで
『夏の魔物』とやらはもう退治されてしまっているのかもしれない。

「『夏の魔物』か………どういった『スタンド』かはちょっとは興味はあるけどね」

無駄に大きい『門倉の独白』を誰かが聞きつけるかもしれない。

262門倉『ソウル・ダンジョン』:2021/10/10(日) 23:44:01
>>261
『門倉』はいつのまにか姿を消していた。
『真夏のクリスマス計画』―――その結果は、ほどなく出るのかもしれない

263小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/11/05(金) 14:13:50

人気のない展望台。
いつの間にか『黒い女』が佇んでいた。
洋装の喪服を身に纏い、黒いキャペリンハットを被っている。

  コツ コツ コツ……

『喪服の女』が、ゆっくりと歩き出す。
静かな空間に靴音が小さな響きを立てた。
その足取りはどこか控えめで、
必要以上に前に出ない印象を与える。

  「――……」

やがて立ち止まり、静かに眼下の景色を見下ろす。
その姿は、自らを一歩引いた位置に置いているように見えた。
視線の先にある何かを見守り、
行く末を見届けようとしているかのように。

   ヒュォォォ……

緩やかな風が吹き、スカートの裾が微かに揺れる。

264天内寅『アンリーシュ101』:2021/11/07(日) 00:13:42
>>263

きゅ、と乾いた音が鳴る。
きゅ、きゅ、きゅ、と音が続く。
ガウチョパンツが風と持ち主の動きに合わせて揺れる。

「……」

小走りで展望台へと飛び込んでくる。

「あれ、先客」

265小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/11/07(日) 01:47:03
>>264

しばらくの間、街の方に気を取られていた。
そのせいで、背中から聞こえる足音に気付くまでに、
多少の時間を要した。
静かに振り返り、音の主に視線を移す。

  「――……こんにちは」

         スッ

視線の先に立つ人物に向けて、丁寧な会釈を送る。
つばの広い帽子が、その顔に薄っすらと影を落としている。
どこか儚さが漂う両の瞳は、憂いの色を帯びていた。

266天内寅『アンリーシュ101』:2021/11/07(日) 02:04:06
>>265

「どうも」

薄く微笑んで頭を下げる。
白い肌の少女だった。
おもちゃのようなカラフルな靴。
黒いガウチョパンツと腰から垂れる帯のような赤い布。
そして真っ白なシャツと黒いパーカー。
そして、光の無い瞳。

「お散歩ですか」

くすり、と笑んだ。

267小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/11/07(日) 02:38:53
>>266

無意識に少女の姿を見つめていた。
一瞬、光のない瞳に目を留め、微笑を返す。
物思いを含んだ表情とは対照的に、穏やかな微笑みだった。

  「『街』を――見ていました……」

  「『この街』を……」

『星見町』――ここに来てからの記憶を振り返っていた。
この町で自分がすべき事は、『見守る事』と『見届ける事』。
今まで過ごしてきた時間の中で、いつしか、
そう感じるようになっていた。

  「……あなたは?」

少女に向き直り、遠慮がちに問い掛ける。

268天内寅『アンリーシュ101』:2021/11/07(日) 08:45:33
>>267

「私は……いや、うん」

「なんでもありませんよ」

薄い笑みを浮かべたまま、息とともに言葉を吐き出す。
事実、来ること自体に理由なんてなかったはずだ。

「あなたに会いに来た、ということにしましょうか」

「ところで、なんで街を? バードウォッチングならぬヒューマンウォッチングですか?」

269小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/11/07(日) 15:09:19
>>268

  「――私に……」

少女の答えに目を細め、小さく頷いた。

  「私は『小石川』です」

        コツ

  「一緒に……お話をしましょう」

        コツ

慎ましく歩み寄り、少女との距離を縮める。

  「そうかもしれませんね……」

  「私は――この街を『見守りたい』のです」

  「そこで暮らす人達の事も……」

  「街と人の行く先を『見届けたい』と……」

  「……そう思っています」

270天内寅『アンリーシュ101』:2021/11/08(月) 00:38:21
>>269


「おっとこちらでも先んじられましたか」

「天内寅(あまない・とら)です」

ぺこりと一礼。

「はぁ……そうですか」

「私にはわかりかねる価値観ですが……」

見守るとかそういうのはよくわからない。

「慈善団体の方で?」

271小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/11/08(月) 01:00:16
>>270

  「……『天内さん』ですね」

問い掛けに軽く目を伏せ、小さく首を振る。

  「この街で……私は『多くの方』と出会いました」

両手の薬指には『銀の指輪』があった。
飾り気のないシンプルな装飾。
どちらも同じデザインだった。

  「そして――『沢山の力』をもらいました」

            フッ

不意に、左手に『ナイフ』が現れる。
それは無意識の発露だったのかもしれない。
あるいは、この街に来た時の事を思い出していたせいか。

  「私は『それ』を返したいのです……」

帽子の下で、淑やかな微笑を浮かべる。

272天内寅『アンリーシュ101』:2021/11/08(月) 01:15:32
>>271

「うおっと」

思わず、と言った感じで後ろに飛び退いた。
近寄られた分だけ距離を離す。
イーブンだ。

「来た理由があなたを倒す為にならないことを願いますよ」

白く長い指先が赤いくちびるの上を滑っていく。
なにか考えていますよ、という風だ。

「表情から見て、敵対心がないことは分かりますけど」

「あえて言います『それをしまってください』」

「突然のことに私も困り顔ですよ」

273小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/11/08(月) 01:32:56
>>272

  「――『あなたも』……」

      フッ

  「……ですか」

その言葉と同時に『ナイフ』が消えた。

          スッ

  「――……ごめんなさい」

居住まいを正し、深く頭を下げる。

  「いつの間にか……『出てしまっていた』ようです」

少しの間、自身の『左手』を見つめる。
国や宗教によっては、左手は『不浄の手』とされている。
関係があるのかどうかは分からないが、
もしかすると『何か』があるのかもしれない。

  「……この街で多くの『出会い』を得ました」

  「天内さん――あなたも『その一人』です……」

スタンド使いは惹かれ合う。
そんな言葉を、どこかで聞いたような気がする。
この出会いも、その一つなのだろうか。

274天内寅『アンリーシュ101』:2021/11/08(月) 13:51:25
>>273

「なるほど。そういうこともあるようですね」

「とはいえ、私がそれを自覚したのはそんなに前のとこでもないのです」

「新人といったところ」

そんな風に言って、目を細める。

「出会いですか」

「私もこれから多くの人に会うでしょう」

「幸か不幸か、多くの人に」

ストン。
足を前に放り出すと真っ直ぐに体が落ちていく。
そのまま床に座った。

「出遭ってしまう」

「……左利きで?」

275小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/11/08(月) 17:42:36
>>274

  「――ええ……」

              スゥッ

問い掛けに応じて、左手を軽く持ち上げる。
この『不浄の手』から『スーサイド・ライフ』は発現した。
それは『自殺願望』という根源に由来するものだったのだろうか。

  「……お祈りしています」

出会いは一つではなく、様々な形を伴う。
『スタンド使い』であっても、それは変わらない。
時には、お互いに相手を傷付けてしまう事もある。

  「『出会い』があなたに『幸』をもたらす事を……」

人の数は『想い』の数。
それらを見つめ、見守り、見届けたい。
今は、それが私の願い。

  「そして――『この出会い』が『幸』となりますように……」

276天内寅『アンリーシュ101』:2021/11/08(月) 21:40:21
>>275

(これはまた……はぁ……なるほど……)

伸ばした足を折りたたんで胡座をかく。
すりすりと自分のアゴを撫でた。
目の前の人間とは初対面だ。
それ以上でも以下でもない。

(不思議というか……怖い人だな)

「ははは。では私もなるたけそれが幸になるように生きさせてもらいましょうかね」

277小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/11/08(月) 22:35:26
>>276

  「――……私も生きます」

穏やかな表情で、少女に微笑み掛ける。
この街で多くの出会いを経験した。
一度しか顔を合わせなかった相手も少なくない。
それでも、それらの一つ一つが、
今でも記憶の中に残っている。
自分の一部となって、確かに息づいている事を感じる。

         ソッ

白いハンカチを取り出して床の上に敷き、
その上に腰を下ろした。
彼女とは、今日ここで初めて会った。
けれど、今は同じ場所で同じ景色を眺めている。

  「この出会いが幸になるように……」

278天内寅『アンリーシュ101』:2021/11/09(火) 09:03:43
>>277

「ふふ、うふふ、あはは」

(危険だけど……めちゃくちゃ面白いな。この状況)

少女は笑っていた

279関 寿々芽『ペイデイ』:2021/11/16(火) 21:00:01

今日はスカイモール内のショップに来ていた。
冬支度には少し遅いくらいの時期だが、
今年も着るつもりだったセーターに穴が開き、
冬のセールが始まる前に、買う羽目になった。

「…………」

が、店に入ると物欲も刺激されるもの。
妙に高いところに掛かっている
マフラーに手を伸ばす――が、
僅かに手が届かない。

脚立でもあるか? 店員に声を掛けるか?
いずれにしても……ひとまず周囲を見渡した。

280大神 或真『ネヴァー・グローイング・アップ』:2021/11/16(火) 21:48:44
>>279
するとそこへ黄リボン付シルクハットを被った緑髪・右青目・左赤目・改造済清月学園黒制服の男装少年(16歳 女子)が現れ、助け舟を出した。

「レディ、こちらですか」(↓イケボイス↓)
大神はスッと関の手の先にあるマフラーを手に取り、関に差し出す。

大神:163cm(これはウソ。シークレットシューズを履いているので大神の本当の身長は158cmである)
関:159cm(記録スレ参考)

(くっ…あまり無理をするとシークレットシューズが…!)

281関 寿々芽『ペイデイ』:2021/11/16(火) 23:04:52
>>280

対照的に関は枯れ葉のようなエプロンに、
白いセーターという地味な格好だった。
おだんごを作るヘアゴムも、無地で、黒く、
泣き黒子のある穏和な顔立ちにも、
飾りのない、温和な笑みが浮かんでいた。

「あらっ……まあ、ありがとうございます〜」

               ニコ〜

「ちょうど届かなかったので……
 とっても、助かりましたよう。
 ふふ……レディだなんて、
 なんだか、照れ臭いですけど」

ド派手な見た目に一瞬面食らうが、
声と態度で相殺された、という所だ。

          スッ

「……冬服探し、ですか〜?
 色とりどりで、おしゃれな格好ですねえ」

すぐに別れてもいいのだろうけれど、
なんとなく雑談を振る事にしたのは、
冷たく感じさせるのは嫌だったから、かもしれない。

282大神 或真『ネヴァー・グローイング・アップ』:2021/11/16(火) 23:34:51
>>281
「なーに、その笑顔が1番の報酬というものですよ、
ミス(未婚)・シンデレラそれともミセス(既婚)・シンデレラ?」(↓イケボイス↓)
芝居がかった口調で関をシンデレラ(ガラスの靴を履く前のバージョン)と呼ぶ大神さんなのであった。

「そう、服だよ服。
そいつはボクの心と体を迷わせるモノの一つさ。
なにせ人間は、初対面の外見にして第一印象で8割のレッテルを貼ってしまうと言う生き物だ。
そうなると手品師(マジシャン)は外見の時点で、相手を魔法(マジック)にかけてしまいたいところだね」(↓イケボイス↓)

「うーん、それに今日はボクの服だけじゃなくて、ハーちゃんとポッポくんの服も買ってあげたい気分だな」(↓イケボイス↓)

「ああ、忙しい忙しい」(↓イケボイス↓)
そう言うと、大神さんは不思議の国のアリスの『白ウサギ』のように懐中時計を取り出して眺め始めた。
忙しいのやら、忙しくないのやら…?

283関 寿々芽『ペイデイ』:2021/11/17(水) 00:19:33
>>282

「ふふふ! 既婚に見えますか〜?
 私、まだ、子供ですよう。
 お上手なんですねえ〜っ」

勿論世辞だとはわかっているが、
大真面目にぶつけられる分には、
そうした文句に弱い部分はあるのだった。

「ええと……ああっ、そうですねえ。
 人は見た目だけじゃないとはいえ、
 やっぱり、見た目が変だと、
 中身を見て貰えませんから……」

奇抜な口調も――――
以前に会った女性ほどではなく、
『大家族』の姉を努める関には、
読み取るのはそれほど難しくはない。

(ちゃんとくん、妹と弟……か、ペットかしら)

「あぁ、私も、自分の服だけじゃあなくって、
 家族の服も…………あっ。
 ごめんなさあい、話が長くなっちゃって……!」

が、それゆえに『時間の大事さ』を知るから、
時計を眺めているのも、そのまま捉えた。

「あのう、マフラー……ありがとうございました〜。
 それじゃあ私、向こうのセーターを見に行きますので……」

マフラーを籠に入れ、頭を下げてから歩き去ろうとする。
特に呼び止められたりしないなら――――という感じだ。

284大神 或真『ネヴァー・グローイング・アップ』:2021/11/17(水) 08:10:53
>>283
「お気になさらず、ミス・シンデレラ。
それではまた会う日まで」(↓イケボイス↓)

大神さんは関に仰々しい挨拶をして別れた。

すたすたすた…。

……と思ったら大神さんは関と同じ方向に歩いて来た。

「……む?
これは向かう先が偶然同じと言うシチュエーションではないだろうか?」(↓イケボイス↓)

どうも向かう先が偶然同じ方向だったようだ。

てくてくてく…。

そうこうしているうちに大神さんは『セーター』と近い売り場の『毛糸製品』を見始めた。

「うーむ、今年の毛糸は何色がいいだろう…今年の冬は冷えると言うからヒートなテックを…なんだい今年は妙にサンタ柄が多いな…例のサンタブームのせいかな…七篠さん上手く行ったのかな…この赤白の毛糸いいな…緑もある…おお炭治郎柄に禰豆子柄に善逸柄にいも助柄…毛糸売り場でブームとブームが対決してる…」(↓ハスキーボイス↓)

「ポッポくんはともかくはーちゃんには『腹巻』を買ってやりたいが…大体靴下くらいの大きさの…でもあの子すぐ脱ぐからな…箱の暖めを重視したものも…」(↓ハスキーボイス↓)

「ポッポくんのイケメン度を上げる小物なども欲しいところだ…あ、このサンタのミニ帽子かわいい…羽のお掃除もしないと…ブラシブラシ…」(↓ハスキーボイス↓)

「ボクが冷え性になって風邪をひいては元も子もないので…あ、この毛糸いいかも…カイロ入れ、そういうのもあるのか…ボクのポケットを暖めておけば相棒も暖かいので一石二鳥いやこの場合は一石一鳥一匹一人?」(↓ハスキーボイス↓)

大神さんは色々と商品を手に取り、お買い物に迷っているようだ。

ぶつぶつぶつ…。

君は声をかけてもいいし、声をかけなくてもいいふいんき。

285関 寿々芽『ペイデイ』:2021/11/17(水) 22:37:27
>>284

「ええ、またお会いしましょう〜」

            「……」

         「あら……」

              「……ふふっ!」

「思ったより早い『また』に、なりましたねえ」

ほとんど『また』でもないくらいだ。
が――――

(七篠さんのお知り合い……で、
 もしかしたら、『スタンド使い』?
 でも、なんだか集中してるみたいだし、
 お邪魔するのは悪い……ですよねえ。
 あの場には、いなかった人ですし)

「冬物はた〜くさんあって、目移りしますねえ。
 ふふ、それじゃあ……
 お互い、良いものが見つかりますように」

          ペコリ

「次の『また』も、あったら嬉しいです。それでは〜」

買い物に没頭している相手に、
あえて声をかける理由は、買い物中の関には無かった。

セーターの並ぶ通路に入り――後は、各々の買い物を楽しんだのだろう。

286りん『フューネラル・リース』:2021/12/04(土) 10:38:24
家電売り場

「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛〜゛〜゛〜゛」

頭から鈴蘭が咲いた10歳くらいの少女が
マッサージチェアに座り込んでいる

287ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』:2021/12/04(土) 22:50:19
>>286

「おっ、りんちゃんじゃ……
 なんじゃこれは」


特に用もなくうろついていたら知り合いを見かけた金髪少女。
しかし忙しそう……忙しそう(?)だ。
マッサージに精神が持っていかれている声を出している……


「ふーむ、わしもやろう」


もう1台あったりしたらそっちに座ってみる。
空いてなかったら順番待ちしよう。
堪能しているようなので邪魔はせず、横でじっと見つめながら待つ感じで。

288りん『フューネラル・リース』:2021/12/05(日) 08:46:25
>>287
「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛〜゛〜゛〜゛
 ナ゛イ゛ち゛ゃ゛ん゛久゛し゛ぶ゛り゛ぃ゛〜゛〜゛〜゛」

マッサージチェアに揺さぶられ、
頭の花をぶらぶら揺らしながらナイと話すりん

「こ゛れ゛気゛持゛ち゛い゛い゛よ゛ぉ゛〜゛〜゛〜゛」

丁度隣に空いてる椅子があるので座ってみると良いだろう
しかし…ナイは動かし方分かるのだろうか?

289ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』:2021/12/05(日) 10:27:45
>>288

「うむ、こんにちわ」


動かし方?
わかるわけがないッ
文字もあんまり読めないし。
まあ、売り場の展示商品がそんな複雑なわけがないだろう。
適当にボタンとか押してればなんとかなるはず。


「気持ちよいのか? ほんとうに?」


りんちゃんとナイは身長は同じだが……
サイズ的な問題は大丈夫なんだろうか?
肩叩き機能が頭叩きとかの位置になりそうな気がする。
あんまり信じてなさそうな声色だが、好奇心で座ってみるナイ。
スイッチON!

290りん『フューネラル・リース』:2021/12/05(日) 10:50:22
>>289
小さめのサイズだし、
ちゃんと肩に当たるように適切な座り方をすれば大丈夫かもしれない
それでもちょっと位置がズレれば頭叩き機になるかもしれないが

スイッチを入れるとナイの座っている椅子が動き出して後ろからナイの体を指圧する
適当に押したのでパワーはどれくらいとか、位置は大丈夫かとか
そもそもナイに肩こりとかあるのかとかは知らないが…

「う゛〜゛〜゛〜゛ん゛
 日゛頃゛の゛疲゛れ゛が゛飛゛ん゛で゛く゛み゛た゛い゛だ゛よ゛ぉ゛〜゛〜゛〜゛」

指圧の気持ち良さからか、
気が抜けてちょっと位置がズレるりん

291ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』:2021/12/05(日) 11:07:09
>>290

「ほう……これは……」



ドコドコドコドコと動き出すマッサージチェア。
中々無慈悲で機械的なパワーだ。
具体的に言うと


「い゛」
「だ」
「い゛」


痛かった。
案の定位置がずれて頭部が激しくノックされている。
というか、肩に当たっていても別に気持ちよくはなかっただろう。
凝ったところとか特にないのでマッサージの必要がない。
逆にりんちゃんは肩こりとかあるのか? その年齢で?


「うひい」


床に倒れこむナイ。
お行儀はよくないが、子供のすることだ。
買い物客や店員もおおめに見てくれるさ……


「りんちゃんはそんなに日頃の疲れとかあるのか?」

292りん『フューネラル・リース』:2021/12/05(日) 11:36:26
>>291
「あ゛ぁ゛〜゛〜゛〜゛
 ナ゛イ゛ち゛ゃ゛ん゛大゛丈゛夫゛〜゛〜゛〜゛?゛」

椅子に頭部をボコボコに殴られ床に倒れるナイを心配するりん

「う゛ち゛は゛仕゛事゛と゛か゛家゛族゛の゛お゛世゛話゛が゛あ゛る゛か゛ら゛ね゛ぇ゛〜゛〜゛〜゛」

子供だって労働してれば肩凝りにもなるかもしれない
一人暮らしで家事全般も全部自分一人でこなさなきゃいけないし…

だら〜んとしてきて少しずつ位置がズレる

ドゴドゴドゴ

「お゛っ゛?゛」

さっきまで肩を叩いていた椅子が、今はりんの頭部をぶん殴っている
ぶん殴られ続ける頭部の花がゆらゆら揺らめいている

「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛〜゛〜゛〜゛〜゛〜゛〜゛」

293ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』:2021/12/05(日) 11:56:46
>>292

「家族の世話?
 小さいのに偉いんじゃな。
 犬とかか?」


同じくらいの小ささの子供がいう言葉ではない気がするが、
常套句ではあるし、ナイも誰かに言われたことがあるのかもしれない。
想像する世話の対象が動物なのも、常識的な考えだろう。


「わしも交換屋をしておるが、そんなには疲れんな。
 りんちゃんは何のお仕事をしておるんじゃ?」


ナイの交換屋は、道端に落ちてるいい感じのものを拾って、
道行く人に声をかけるような感じであり、運動量は散歩と大差ない。
りんちゃんが頭を叩かれていることについてはスルーした。
りんちゃんならあれも気持ちいんだろう多分。

294りん『フューネラル・リース』:2021/12/05(日) 12:46:46
>>293
「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛〜゛〜゛〜゛〜゛〜゛〜゛」

どう見ても気持ちよさそうな表情ではない
流石のりんもこれは痛いようだ

「い゛た゛、痛゛い゛っ゛」

ピッ
緊急停止!

「う〜〜〜ん、うちにはちょっとサイズが合わないかなぁ…」

購入を考えていたがサイズが合わないのでやめたようだ

>犬とかか?

「わんちゃんは飼ってないよぉ
 うちの家族はねぇ、これっ」

止まった椅子に座りながら鈴蘭柄のスマホケースに入ったスマホをナイに見せる

「これっ」と言って見せつけられた画面には『鈴蘭畑』が映っている
その画面に人間はいない
これが家族だというのだろうか

>わしも交換屋をしておるが、そんなには疲れんな。
>りんちゃんは何のお仕事をしておるんじゃ?

「交換屋かぁ〜、ナイちゃん交換得意だもんね
 うちはねぇ、公園のお花を育てたり、売ったりしてるんだ」

「後ね、たまにうちの体の一部や血が欲しいっていう人にあげたりもしてるよ」

295ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』:2021/12/05(日) 13:20:44
>>294

「ほう、なるほど。大家族……というのかこういうのは?
 しかし花が家族か……もしかして会話出来たりするのかの?」


動物も家族、というのは普通だろう。
それが飼育してる虫とか、熱帯魚になると……
逆に熱意がある人で下手な犬猫より大切にしてるかもしれない。
しかし観葉植物も家族というのは中々いないように思える。
りんちゃんの場合はかなり特殊なので、どういう感覚なのかはよくわからない。


「りんちゃんの血とか欲しがるやつがおるのか?
 何に使うんじゃ?
 献血ってやつか?」


自 分 を 売 る。
というか話の流れからすると家族も売っていることになるような気がするが……

296りん『フューネラル・リース』:2021/12/05(日) 13:48:43
>>295
「うちは『人間』だから話は出来ないんだ、ちょっと寂しいかな
 うちは『人間』だからね…」

りんは自分を人間だと思い込んでいる精神異常花だが
花同士であっても会話出来るのだろうか?
花は言葉を持っているのか、持っているとして、どのように会話をするのだろうか…

「うちの体ってちょっと変わってるみたいでね
 研究用にうちの血が欲しいっていう人が定期的に来るんだ」

頭から花が咲いている奴の血液なんて得体の知れないもの、とても医療用には使えないだろう
だが、研究用としてはこの得体の知れない生物から採取出来る血液は貴重かもしれない

>というか話の流れからすると家族も売っていることになるような気がするが……

立派に育てた自慢の家族を人間にあげて喜んでもらう
その人間に家族を大切に育ててもらう
それこそがりんの歓びなのだ

花に人間と同じ倫理観を期待するのは間違っているのかもしれない

297ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』:2021/12/05(日) 14:04:50
>>296

「ふうむ。まあ家族と言っても犬とか猫も喋れんしの」


植物と動物、意思表示すらできるかどうかではだいぶ差がある。
魚の方が近いだろうか。人に懐く魚もいるのかもしれないが。


「変わっておるのか。
 確かに見た感じそうじゃな。
 そういえば前に『交換』した『押し花』もりんちゃんの頭の花の一部じゃったか。
 なにか変わった効果あるのか?」


通行人に邪魔そうに見られて、
倒れこんだままだったナイはようやく家電売り場の通路から立ち上がった。

298りん『フューネラル・リース』:2021/12/05(日) 14:25:47
>>297
「う〜ん
 変わった効果とかは無いし、普通の花だと思うんだけど…」

頭の鈴蘭をさすさすと擦りながら答える
普通の花よりもしなやかで、並の衝撃では折れなさそうだ
ナイが気付くかどうかは分からないし、気付いてもどうでも良い情報だが

「けど、この花が切れると
 体がだるくなって動けなくなっちゃうし
 やっぱり普通じゃないのかな…」

自分の頭の花について考え込むりん

―――
本当は分かっているのかも知れない
自分の本質は人間の体ではなく、この花の方だという事を

299ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』:2021/12/05(日) 14:42:37
>>298

「変わった効果ないのか」


ちょっとがっかりした。
実際は『スタンドに干渉できる』効果くらいは多分あるはずだが。
本人がそんな機会がなかったのか知らないままなのか。


「どう変わっているのか、研究してる人に聞けばいいんじゃないかの?
 どんな人なんじゃ? やっぱり眼鏡なのか? 白衣とか着ておる?」


りんちゃんはマッサージチェアに座っているので、
立っているナイからすればちょうど目の前に鈴蘭がある。
触ってみよう。

300りん『フューネラル・リース』:2021/12/05(日) 15:30:53
>>299
「そうだね
 あんまり気にしてなかったけど、
 言われてみると気になってきちゃった」

本当に今まで気にしていなかったのか
意識的に気にしないようにしていたのか…

「う〜ん、眼鏡はしてるけど白衣は着てな…
 ひゃぁっ!?」

唐突にナイに花を触られてびっくりするりん

「あっ、あのね、ナイちゃん
 触ってもいいけど、触るならちゃんと言ってね…」

頭の鈴蘭はりんにとっての急所だ
いわば体外に露出した心臓を他人に触られるようなものだ
いきなり触られるのはあまり気分は良くないだろう

実際に頭の花に触る事で、普通の花よりもしなる性質がある事が改めて分かる
それ以外は、まぁ普通の花だ

…もし引っこ抜こうと思えば、抜けるかもしれない
ただ、子供のナイの力ではかなり力を入れなければならないが

生殺与奪権は今、ナイに握られている状態だ

301ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』:2021/12/05(日) 15:51:10
>>300

「おお、そうか。
 触っておるぞ」


注意されたので素直に従った。
今更言っても仕方がないが。


「花って感覚あるのか?
 どんな感じじゃ?」


さすがに以前「引っこ抜くと死ぬ」と言われたし、つい今しがた、
花になにかあるとだるくなって動けなくなると聞いたので、乱暴な扱いはしない。
感覚がないと、気づかずひっかけて、そのまま引っこ抜けて死、とかになりそうだ。
ということは、痛覚があるのだろうか? 温度は感じるのだろうか……
触覚があるならくすぐったかったりするんだろうか。


「触ってもなにか特殊効果がありそうな感じはしないの。
 やっぱり花じゃなくてりんちゃんの血が何か変わっておるのか?
 浴びると溶けるとか。逆に塗ると怪我が治るとか」

302りん『フューネラル・リース』:2021/12/05(日) 16:26:19
>>301
「こうやって触られるとくすぐったいっていうか…
 何かちょっとドキってしちゃう」

このドキっとする感覚は、
命を掴まれているという恐怖から来るものだろうか
もっと全幅の信頼を置ける、心を許せる相手になら恐怖を感じずに
安心して花を触らせる事が出来るかもしれない

(花の感覚等に関してはあまり詳しく質疑してなかった気がするが
 後で聞いておく事にしてこの場はとりあえず何かくすぐったいくらいに感じる事にしておく)

「血の方かぁ〜
 えとね、うちの血…血だけじゃないんだけど
 うちね、体液に鈴蘭の毒を一つだけ混ぜる事が出来るんだ
 でもちょっと時間が経つと消えちゃうんだけどね…」

「ちゃんと使えば薬にもなるんだよ」

303ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』:2021/12/05(日) 16:57:48
>>302

「なに? このすずらんってやつ、毒があるのか」


ぴゃっと手を引っ込める。
花の名前とかは知らないので、なんとなく「花」と認識していたが、
ここでやっとりんちゃんの頭に生えているのが鈴蘭であり、その効果を認識した。
鈴蘭を触っていた自分の指が溶けていないか確かめている。


「薬にもなる?
 ではやっぱり触ったら溶けたり、怪我が治ったりするってことじゃろ」


毒と薬に対するイメージが貧困である。


「そういえば薬とか持っておらんな。毒もじゃが。
 わしもちょっと欲しいぞ。
 いつも研究の人に渡す時の相場はどのくらいなんじゃ?」


一方、商売関係になるといくらか知能が働くのか、そんなことを聞いてきた。

304りん『フューネラル・リース』:2021/12/05(日) 18:28:42
>>303
「アッハハ…
 そんなに簡単に溶けたり治ったりはしないよ
 万能薬じゃないんだから」

触っただけで溶けるような毒草なんてあるんだろうか…?
カエンタケですら溶けたりはしないぞ
とはいえ鈴蘭は猛毒だ
素手で触ったらかぶれるかもしれないし、出来るだけすぐに手を洗った方が良いだろう

間違ってもその手を舐めたりしてはいけない

「ん〜と、いつも血を買ってくれる人は1万円くらいで買ってくれるよ」

血液の売買は現在禁止されているが、
もしも今血液を売ったとしてもそこまで高額になるだろうか

305ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』:2021/12/05(日) 20:32:43
>>304

ナイはとりあえず手が溶けていないことにホッとしているようだった。
あとでかぶれて困るかもしれない。


「つまり初級ポーションとか低ランク毒薬みたいな感じ……というコトじゃな?
 量とか保存とかはわしなら問題ないからの」


今度は何かのアニメの影響だろうか。
そんな簡単に〜という事は大量にあれば代替できるんだろうという発想だ。
時間が経つと効果が消えてしまうのも『交換』した時点のものが出てくるので無問題。
チート主人公かな?


「一万円か……結構高いの!
 わしの『ベター・ビリーブ・イット』は『物々交換』のスタンドじゃから、
 お金はダメなんじゃが、一万円に匹敵となると……
 うーむ、お菓子で1万円分とか多すぎるしの……」


血が1万円というのは高いのかどうか。量にもよるか。
わからないが、ナイ的には高かったらしい。


「この腕時計が1個5千円くらいらしいぞ。どうじゃ?」


ポケットに手をつっこみ、取り出してきたのは新品の腕時計だ。
両手にそれぞれ持って2個で1万円分。

306りん『フューネラル・リース』:2021/12/05(日) 20:52:48
>>305
一般常識は知らないのにアニメ(ゲーム?)の知識はあるのか(困惑)


「…え〜と、どうじゃって言われても…」

総額1万円の腕時計を見せて来るナイに
困り顔で頬を掻くりん

どうじゃって…ひょっとして交換しようというのか!?
腕時計と血液を!?

「えっ、ひょっとしてうちの血が欲しいの…?」

交換すると言っても今この場に採血用の道具は無いし
いや『ベター・ビリーブ・イット』ならそんなの関係無く交換出来るのかもしれないが
りんはそんな事は知らない

というか、りんの血液を手に入れて果たしてナイにとってどれだけ役に立つだろうか?
欲しがるのはりんの存在を知っている一部の研究者くらいだろう
誰にでも売れる物でもない

いや、りんの毒入り血液が欲しいのか?

307ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』:2021/12/05(日) 22:05:56
>>306

ナイの情報源は主にテレビや拾った雑誌なので偏りがあるのだ。
そのうえ興味でチャンネルを変えるし、漢字もあまり読めない。


「そうじゃが?」


欲しいと言ったら特に捻りもなく欲しいという意味なのだ。
腕時計をメリケンサックのように装備してシャドーボクシングするナイ。
そのパンチはへろへろだ。


「む。大丈夫じゃ。
 この間のように、実際に『交換』はせん。
 すると腕時計がりんちゃんの体の中に入り込むことになってしまうからの。
 いや、そもそもそのスペースがないから無理なんじゃが」


以前にりんちゃんと会って、押し花とぬいぐるみを『交換』した時は、
位置ごと入れ替わっていたが、今回はしない。というか出来ないようだ。


「わしがりんちゃんの血を出せるようになるだけじゃな。
 ……やっぱり腕時計よりお菓子の方がよいか?
 あ、お菓子なら細かく砕けば『交換』で体の中に入れられるかもしれん」


血管からお菓子を注入る事も出来るらしい。
とりあえず可能なことを言ってみただけだろう。
セールストークのつもりなら酷すぎる。

308りん『フューネラル・リース』:2021/12/06(月) 11:22:14
>>307
「う、う〜ん…
 お菓子はいいかな…」

マジで血管にお菓子入れられたら死んでまうわ

「『交換』してもいいけど、ナイちゃんは普通の血が欲しいの?
 うちの毒入りの血が欲しいの?
 『交換』するとしたら、どれくらいの量が欲しいの?」

この辺は血をあげるのなら当然の質問
量によっては命に関わる

「毒を混ぜられるって言っても、効果は一つだけだよ」

「えと、それと…
 ナイちゃんはうちの血を…何に使うのかな…?」

309ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』:2021/12/06(月) 12:08:15
>>308

「? 普通? 効果が一つ?
 薬と毒どっちかということか?」


ナイの方も『フューネラル・リース』がどういう能力なのかさっぱり把握していない。
さきほど言った通り、アニメで見たポーションと毒薬の、
なんか怪我が治るやつ、なんか苦しくなるやつ程度の認識だ。


「じゃあ、薬?
 何に……は、怪我した時に使う……じゃろ?」


具体的な考えがあるわけではないらしい。


「量は、多いほうが効くのか?
 別に少なくとも、複数回出せばよいだけじゃが……
 多くても今回『交換』でりんちゃんから血をとるわけじゃないから、りんちゃんは困らんだろうし……
 よくわからんから任せるぞ」

310りん『フューネラル・リース』:2021/12/06(月) 12:54:20
>>309
お互い能力を把握していないため苦労するが
この場合、ナイの知識の偏りに更に苦労させられる

「薬…じゃあ強心効果を混ぜておくね」

鈴蘭毒の強心効果だけを自分の血液に混ぜる
強心剤は、気付けにはなるが怪我を治す効果は無いぞ!

「じゃ、じゃあ量は100mlで…」

10歳くらいの子供が献血する事は法律上禁止されているので
実際このくらいの子供が献血をするとしたらどれくらいの量が適切なのかよく分からないが
とりあえずこれくらいに…

「それで『交換』っていうのは、その時計とするのかな?」

311ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』:2021/12/06(月) 13:07:35
>>310

「キョーシン効果?」


ゲーム脳というかアニメ脳なナイだが、
一般人でも鈴蘭の薬効を知っている人は多くは無いだろう。


「うむ。時計……2個も同じのいらんか?
 時計以外だと……あまり金目のものはないんじゃが……
 これとか……これとか?」


万年筆やハンカチ(シルク)、防犯ブザーなんかをポケットから取り出す。
実際はポケットにあった毛玉や糸くずを種に『記録』から『交換』しているわけだが。

312りん『フューネラル・リース』:2021/12/06(月) 13:49:23
>>311
ナイは薬効がどういうものか分かってないようだが
まぁこの際、細かい事はいいだろう
ナイがこの血でどうしようと、それはもうりんの知る所ではない

「うん、じゃあそれと『交換』で…?」

時計含めてナイが取り出した万年筆やら何やらと適当に『交換』する事に

残念ながらりんには審美眼があるわけではないのでどれがどの位の価値があるとかはよく分からない

313ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』:2021/12/06(月) 14:20:28
>>312

ナイも大概だが、りんもりんで、
ナイが血をどうしようと知ったことではないという、
子供ゆえの適当さというかなんというか……
将来、回復する薬と思って怪我人に使って酷いことにならないのを祈ろう。


「それってどれじゃ?
 全部か? 全部欲しいのか?
 『交換』は1対1じゃから、時計と、あとはオマケという扱いじゃが」


そんなわけで、時計やら万年筆やらがりんちゃんに手渡された。
マッサージチェアを買おうとしていたくらいの
金があるりんちゃんには大したものではないかもしれないが……
いや、本当、マッサージチェアって安くても10万円くらいはするんじゃあないか?
金もそうだが、公園の一角の管理を任されてたり誰が認可してるんだ……本当

314りん『フューネラル・リース』:2021/12/06(月) 14:43:32
>>313
「えへへ、おまけいっぱい貰っちゃった♪」

時計とおまけの万年筆やら何やらを受け取りニコニコ顔のりん
物自体に大した価値は無くとも、人間から何かを貰ったという事が嬉しいのかもしれない

「じゃあナイちゃん、『交換』お願い」

このまま『交換』すると、りんの血液は何処へ行くのだろうか?
突然、ナイの手がりんの血で真っ赤に染まる…
という事に…?

315ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』:2021/12/06(月) 14:57:46
>>314

「うむ」


とく何も起こらない!
先ほども言ったが、ナイの手に血が出現するように位置ごと『交換』する場合、
交換である以上、腕時計がりんちゃんの血のあった場所に入れ替わってしまうのだ。
そして血管に腕時計が入るわけがないので、スペースの関係上、それは不可能なのだ。
いや、心臓の中とかならいけるだろうか!?


「さっそくちょっと飲んでみるかの」


それはそれとして、『交換』が成立すると『ベター・ビリーブ・イット』の
『交換記録』に載り、いつでも『交換』で出せるようになる。
りんちゃんは血を消費することなく、ナイの手のひらに(糸くずと『交換』で)
『りんちゃんの血(強心効果)』が出現!
ナイは難しいことは理解していない。単なる回復薬だと思っているぞ。


 グィィー(口に含む効果音)

316りん『フューネラル・リース』:2021/12/06(月) 15:32:47
>>315
心臓の中に腕時計…
想像するだけでゾッとする
やはり『ベター・ビリーブ・イット』は怖い

「う〜ん、血が減ったような感じはしないけど…
 ほんとに『交換』したの?」

ナイから貰った腕時計を嵌めつつ、不思議そうにナイを見てると…

突然ナイの手のひらに血が!
やっぱりちょっと微グロな展開になったじゃないか!

「あっ、ナイちゃんそれ」

制止する間もなく血液を飲むナイ
君は吸血鬼か何かか?

強心剤……
それは心臓の機能が低下した者に処方する薬だ
心不全の患者にはいい薬になるだろうが、健康な人間が飲めば
多分過剰に心臓の機能を向上させエラい事になるんじゃないだろうか?(適当)

317ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』:2021/12/06(月) 15:56:34
>>316

貧血とかでもなければ、出血もなく血が減っても、自覚できないんじゃあないだろうか。
まあ、実際減ってないわけだが……


「ぐびィー……ゴク」


心臓が爆発しちまうーッ!
とまではいかないだろうが、健康にはよくないだろう。
それ以前に、薬効は別として、血であることに違いない。


「ブッ
      ゴボッ
   げほっ    けはっ」


味の問題か、即効で効いて気分が悪くなったのか、単に気管に入ったか、吹いてしまった。
幸い、りんちゃんにはかからなかったが、家電売り場の床に血が垂れる……

 
   ナンダナンダ?                   ざわ
                  オイ、アノコ…
     ざわ
          キュウキュウシャヨベェーッ

318りん『フューネラル・リース』:2021/12/06(月) 16:10:46
>>317
「あぁぁぁーーーっ!?
 ナイちゃん大丈夫!?」

口から血を吐き散らすナイ

大 惨 事 だ

「ちょ、ちょっと待ってて!今お水持って来るから!」

ここは家電売り場!
ウォーターサーバーも置いてあるのだ!

急いでウォーターサーバーから持ってきた紙コップに入った水を
ダッシュでナイの元に運ぶりん

しかし床にぶちまけられた血はつるつるで

「あっ」

319ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』:2021/12/06(月) 16:26:41
>>318

「あっ」ってなんだ!?
滑ったのか? 滑ったんだな!?


「けほ、えほ う?」


目の前で滑ったりんちゃんを、むせていたナイが避けられるはずもなく。
2人はもつれこむように床に倒れる!
(血で)ヌルヌル幼女ドッキングだ!
大惨事だ。


       「ちょっ、君たち、大丈夫かい?」

  「救急車呼んだからね?」


親切な大人たちが声をかけてくる。


「救急車……? ま、まずい。
 わしはコセキとかホケンショーとか、そういうの持っておらんのじゃ。
 りんちゃんは……?」


ナイは逃げる気のようだ。
りんちゃんはどうする?

320りん『フューネラル・リース』:2021/12/06(月) 16:52:28
>>319
>(血で)ヌルヌル幼女ドッキングだ!

絵面だけ見ると
グロいというか、軽いホラーな気がする

「えっ、うちはその…」

戸籍 保険証
そういった言葉にやや困ったような表情を見せるりん

「うちは別に問題無いけど…
 ナイちゃんが救急車はまずいっていうんなら
 一緒に逃げちゃおっかな?」

りんとしては病院に行く事自体には何も問題無いが
別に怪我も何も無いのにな…という思いもある
だからナイが逃げるなら一緒に逃げるつもりだ

呼ばれた救急隊員にはいい迷惑だが

321ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』:2021/12/06(月) 17:16:44
>>320

能力とか存在よりも、社会的に問題がないという事が、逆に謎すぎるりんちゃん
戸籍を調べられても平気ということは、苗字とかもあるのだろうか……


「では逃げるぞッ」


りんちゃんの手を引いて、店を走っていく。
子供2人だ。捕まえようと思えば可能なのだろうが、
万引き犯とかならばともかく、血まみれの少女2人だ。


「騒がせてすまんかったのー」


カラスが鳴いている。ずいぶん店に長居してしまったらしい。
呆然と見送る人たちを後目に、日が落ち始めた街に2人は消えていったのだった……

322りん『フューネラル・リース』:2022/02/11(金) 11:32:15
「やBみザ !(ぺーユくユシペ」

年齢10歳ほどの頭部から鈴蘭を咲かせた少女が
バグったような歌を歌いながらショッピングモールを練り歩いている

323美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2022/02/12(土) 08:56:20
>>322

買い物の途中、妙な歌声を耳にして、そちらを向いた。
思わず頭の鈴蘭に目が行く。
奇抜なファッションか何かなのだろうか。

「…………『鈴蘭』?」

同時に、『以前の放送』を思い出した。
いつだったか『鈴蘭を食べさせたい』という相談を受けた事を。
そういえば、何となく『声』も似ているような気もする。

「――――『りん』さん?」

何かの偶然だろうとは思いつつも、
無意識に『少女の名前』を呟いていた。

324りん『フューネラル・リース』:2022/02/12(土) 11:52:54
>>323
「ジ」

少女のバグソングに反応して声の方に振り向く美作
鈴蘭柄のワンピースを着た少女は至って普通の人間だ
頭に鈴蘭が咲いている以外は

「す」

>――――『りん』さん?

「?」

自分の名前を呟く声に振り向くりん
りんの方もこの声には覚えがある
この声は、ラジオでよく聴いている声だ

「この声…くるみちゃん?」

325美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2022/02/12(土) 13:18:07
>>324

「そう、私は『美作くるみ』。分かってもらえて嬉しいわ」

明るい笑顔を浮かべて、
頭に鈴蘭を咲かせた少女に近付いていく。

「本当にりんさんなのね。
 こんな所で会えるなんて思わなかったけど――――」

頭上の鈴蘭から、りんの顔に視線を移す。

「『お姉さん』にプレゼントした『お花』は喜んでもらえた?」

『鈴蘭の日』に相談を受けた時、
『鈴蘭を贈ったらどうか』と勧めたのだ。
電話で話しただけなので、その後の状況は知らない。
あの後も、ずっと気になっていた。

326りん『フューネラル・リース』:2022/02/12(土) 13:43:18
>>325
「生くるみちゃんだぁ〜」

いつもラジオで彼女の声は聴いているが
生身のくるみは初めてだ

「うちの事覚えててくれたの?
 嬉しいなぁ〜」

著名人に生で会っただけでなく、
自分の事を覚えていてくれた事に感激するりん

>『お姉さん』にプレゼントした『お花』は喜んでもらえた?

「うん!
 おねえさんには一番綺麗に育ったうちの家族をプレゼントしたんだ
 おねえさん、喜んで受け取ってくれたよ」

家族(鈴蘭)をおねえさんに渡した事を報告するりん

「くるみちゃん、この前はカード(500円分)ありがとう
 何故か音のおねえさんの所に届いちゃったみたいだけど
 今はおねえさんに預かってもらってるよ〜」

327美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2022/02/12(土) 14:20:33
>>326

「ふふ、喜んでもらえたのね。
 私もアドバイスした甲斐があったわ」

上手くいったのなら何よりだ。
ただ、『家族』という言葉に引っ掛かりを感じた。
文脈から判断すると、『鈴蘭が家族』という事になる。
鈴蘭柄の洋服といい、頭の鈴蘭といい、
この少女は何かと鈴蘭が目立つ。
確かに気にはなるが、不躾に尋ねるのは少し気が引けた。

「あ、そうだったの……。ごめんなさい。
 送る時に手違いがあったみたいね」

カードが届いた相手が、
電話で聞いた『お姉さん』だったのだろうか。
滅多にない事だろうが、無事に渡った事に安堵する。
しかし、ミスがあったのは事実。

「ええと――――」

スタジャンのポケットを探り、スマホを引っ張り出す。
そこには番組のイメージキャラクターである、
『電気カナリア』のキーホルダーが付いていた。
それを外して、りんに差し出す。

「良かったら、これどうぞ。
 間違えちゃったお詫びと、今日出会えた記念に」

「カードはお姉さんの所にあるのよね?
 せっかくだから、りんさんにも何か持っていて欲しいから」

キーホルダーは、
『Electric Canary Garden』のノベルティグッズ。
非売品だ。
高級品ではないが、作りはしっかりしているので、
安っぽくは見えない。

328りん『フューネラル・リース』:2022/02/12(土) 14:48:39
>>327
「あぁ、気にしないでいいよぉ
 間違いは誰にでもあるんだし!」

とは言っても、
全く違うりんと音仙の住所を間違えるのは一体どういう事なんだろう
その疑問が私の心を捉えて離そうとしないのである(ノムリッシュ)

>良かったら、これどうぞ。
>間違えちゃったお詫びと、今日出会えた記念に

「あっ、お詫びなんてそんないいのに」

美作がお詫びにと差し出したキーホルダーを、一瞬遠慮するが

「でも、折角だし、貰っちゃおうかな」

今日、美作くるみという人間に出会えた記念にと
キーホルダーを喜んで受け取るりん

「えへへ、ありがと〜♪
 貰ってばっかりだし、うちからも何かあげるね〜」

受け取ったキーホルダーと引き換えに、何かあげられる物を取り出そうとするりん

329美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2022/02/12(土) 15:07:27
>>328

実際、不思議な事ではある。
間違って届いたものが、ちゃんとりんに渡った事は、
さらに驚くべき事だろう。
また、『音のお姉さん』という言葉には、
何か感じるものがあった。
『プラン9・チャンネル7』を目覚めさせた人物。
まさかとは思うが――――――。

「気にしないで。くるみからりんさんへのプレゼントだから」

笑顔でキーホルダーを手渡した。
こうしてリスナーと触れ合える事は、自分にとって大きな喜びだ。
この仕事をしていて良かったと、心から思える瞬間だった。

「あはは、『プレゼント交換』ね。何をもらえるのか楽しみだわ」

微笑ましい表情で、りんの様子を見守る。
一体どんな品物が出てくるのだろう。
相手が相手なだけに想像がつかない。

330りん『フューネラル・リース』:2022/02/12(土) 15:29:22
>>329
キーホルダーと交換でりんが取り出した物、それは

「えへへ、これ色んな人にあげてるんだけどねぇ〜」

押し花だ、鈴蘭の

「うちの頭の鈴蘭で作った押し花
 たまに事故で千切れちゃう事があるから押し花にしてるの」

彼女の手作りのようだ
キーホルダーとつり合いは取れているのだろうか
自分の体の一部を渡すとか色々大丈夫なのか

331美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2022/02/12(土) 15:41:55
>>330

頭の鈴蘭で作った『押し花』。
謎は深まったが、彼女の気持ちは伝わった。
だからこそ、笑顔でそれを受け取る。

「ありがとう、りんさん。大切にさせてもらうわ」

受け取った押し花を、『名刺入れ』の中にしまっておいた。

「そういえば――さっきの『歌』なんだけど……」

現在は『ラジオ』の仕事をしているが、元は『アイドル』だった身。
今も昔もボイストレーニングは欠かしていない。
歌には、ついつい関心を引かれてしまう。

「あれは何ていう歌なのかしら?」

聞いた事のない歌だったが、何か由来があるのだろうか。

332りん『フューネラル・リース』:2022/02/12(土) 16:07:57
>>331
「『GO!GO!森部大王』っていう歌だよ!」

美作がその歌を聞いた事が無いのは当然だろう
知っている人の方が少数派だと思う

「ライブ・ア・ライブっていうゲームの
 『GO!GO!ブリキ大王!!』っていう歌が元なんだけどね
 ゲームをバグらせて遊ぶプレイ動画で歌がバグって出来た歌なんだよ」

知る人ぞ知るゲームのチートバグ動画(大分前に消された)
に出て来るバグった歌なんて一般的に知ってる人の方が少ないだろう

「ライブ・ア・ライブがリメイクされるって聞いて
 動画(保存してた)を見返して懐かしくなって歌ってたの」

333美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2022/02/12(土) 16:58:33
>>332

「へえ…………」

りんの解説を聞いて、ため息を漏らした。
実際、全く知らなかったのだ。
歌には詳しいと自負しているが、『専門外』はある。

「私も歌は好きなんだけど、
 まだまだ知らない事はあるものね。
 とっても勉強になったわ」

       パチンッ

その時、何かを思いついたかのように指を鳴らした。

「ちょっと私も歌いたくなってきちゃった。
 良かったら、りんさんに聴いて欲しいな」

      ――――コホン

そう言ってから、軽く咳払いをする。

334りん『フューネラル・リース』:2022/02/12(土) 18:14:51
>>333
「お〜、くるみちゃんの生歌!」

声のプロによる生歌だ、聞かない手は無い
その場に座り込んで彼女の歌を聴かせてもらう事にしたりん
頭の鈴蘭を揺らしながらわくわくしている
…座る場所がないなら大人しく立っておこう

しかし美作がここで歌っていいのだろうか?
周りにも人がいると思うのだが

335美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2022/02/12(土) 19:25:05
>>334

「えっと――それじゃ、あっちの方で聴いてもらおうかな」

りんのようにラジオを聴いてくれているなら別だが、
声だけだと気付かれない事も多い。
とはいえ人は通る。
りんと一緒に目立たないように片隅に移動し、
『ミニコンサート』を披露する。

「Every single boy I know」

「Is thinking that he's in control」

「Nothing you can do to break his stride」

「〜〜〜〜〜♪♪♪」

歌ったのは以下の曲だ。
(ttps://www.youtube.com/watch?v=SK6pu3bu24U)
タイトルは『Automatic』。
美作の歌声は、よく通る澄んだ声色だった。
『カナリア』のような声と呼んでもいい。
元々の才能もあるのだろうが、
訓練を積んでいる事も大きな要因になっているのだろう。

「――――――ふぅッ」

歌い終わった後で、小さくため息をつく。

「『ご清聴』ありがとうございました」

頭に被っているキャップを片手で取り、りんに頭を下げた。

336りん『フューネラル・リース』:2022/02/12(土) 19:50:15
>>335
「お〜〜〜」

パチパチパチ

美作の見事な歌唱力に感動し、拍手を送るりん
英語だから歌詞の意味はよく分からなかったのが残念だ
英語の勉強もしようと思ったりんだった

「凄いよくるみちゃん!
 『カナリア』みたいに綺麗な声だったよ!
 流石声のプロは違うね〜
 森部大王を歌ってたうちとは大違いだよ」

いや比べるのも失礼だろう

「ええと、こういう時は帽子にお金を入れる決まりなんだっけ?」

そう言うと鈴蘭柄の財布から小銭を取り出して美作のキャップに入れようとするりん

     ∧_∧
     ( ゚ω゚ ) 支払いは任せろー
 バリバリC□l丶l丶
     /  (   ) 
     (ノ ̄と、 i
        しーJ

337美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2022/02/12(土) 20:13:18
>>336

「あはははは、りんさんは良く知ってるのね」

砕けた調子で気さくに笑いながら、キャップを被り直した。

「でも、今回は『特別』だから大丈夫よ。
 聴いてくれた事が何よりの報酬だから」

「だから、そのお金はりんさんのために使って欲しいの」

それから、モール内を軽く見渡して。

「私は買い物の途中だったんだけど……。
 もし時間があったら、一緒に見て回らない?」

喋る事は自分の『仕事』であり、同時に『楽しみ』でもある。
だからこそ、色々な相手と会話をしたい。
それが自分の『財産』にもなるのだから。

「りんさんと、もう少しお喋りしたいから」

338りん『フューネラル・リース』:2022/02/12(土) 20:33:44
>>337
「くるみちゃんと一緒に買い物かぁ〜
 良いよ、一緒に行こぉ」

美作が何を買いに来たのか分からないので
りんの行こうとしていた所と違うかもしれないが

「もうすぐバレンタインだから
 チョコレートの材料を買いに来たんだけど
 鈴蘭チョコレート作れないかなぁ…」

突然毒殺用チョコレートを作りたいと言い出すりん

「うち用の鈴蘭チョコは作るけど、
 音のおねえさんにも食べられる鈴蘭チョコが作りたいんだけど」

う〜ん、と考える毒料理人

「あっ、そうだ!
 食べられる鈴蘭チョコが出来たらくるみちゃんにもあげるね!」

りんと関わったばかりにロックオンされた美作
美作の運命やいかに…!?

339美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2022/02/12(土) 20:45:21
>>338

「あ、いいわね。私も手作りに挑戦してみようかな」

言われてみれば『そろそろ』だ。
日頃お世話になっているスタッフに配らなければいけない。
いつもは市販品で済ませているが、
たまには自作してもいいかもしれない。

「あはははは…………」

『鈴蘭チョコ』には思わず苦笑いをこぼす。
やはり諦めてはいなかったようだ。
彼女の情熱を止めるのは、
ちょっとやそっとでは無理なのだろう。

「えっと――とりあえず売り場に行きましょうか」

どうやって鈴蘭の混入を止めようかを考えながら、
りんと共にチョコレートの売り場に向かうのだった。

340度会一生『一般人』:2022/03/16(水) 06:29:36

顔に深い『傷』のある男が、ベンチに腰を下ろしている。
足が悪いらしく、『鷲』の彫刻が施された『杖』を持っていた。
一見して目立つ容姿と言えるだろう。

「『羊の中の狼』……いや、『羊の皮を被った狼』か」

行き交う客を眺めて、ぽつりと呟く。
この中に、どれだけ『狼』が混じっているのやら。
『持たざる者』には、それを知覚する術がない。
『一般人』が『スタンド使い』に対抗するのは難しい。
理由は幾つかあるが、
最も大きいのは『見えない』という事だ。
大抵の場合、『スタンド使い』に『襲われた一般人』は、
『一方的に虐げられる』しかない。
逆に言えば、『スタンドが見える』だけで、
『対処できる可能性』は飛躍的に上昇する。

          ゴソ

取り出したスマホを顔に近付け、おもむろに口を開く。
傍目には、通話しているようにも見える。
しかし、その素振りは見せ掛けに過ぎない。

「――――『見えた』ら合図しろ」

ロングコートのポケットからは、
『ピノキオ』を模した小さな『人形』が顔を覗かせていた。

341度会一生『一般人』:2022/03/17(木) 06:37:18
>>340

ポケットの中に『いる』のは、『ただの人形』ではない。
『リトル・メリー』という名の『生きる人形』から、
『魂』を移した『仮初の体』だ。
それは間接的に、
一般人に『スタンドを視認する力』を与える。

(憂が見つけてきたのは、とんでもない『掘り出し物』だった)

『スタンド使い』を嫌悪する自分でさえ、
『メリー・バッドエンド』の有用性は認めざるを得ない。
まさしく打ってつけの人材だった。
正確には『人』ではないが、それがいいのだ。
『人間のスタンド使い』は信用できない。
『円谷世良楽』や『飯田咲良』のように、
利用するだけならまだしも、
それ以上となると危険が大き過ぎる。

(完璧に制御するのは神経を使うが、
 コストパフォーマンスを考えれば、
 骨を折るだけの値打ちは十分にある)

「ねえ――――」

ポケットから声が聞こえ、止むを得ずスマホを下ろす。

「退屈だわ。何かお話しましょうよ」

心中で舌打ちする。
『実線投入』する前のテストとはいえ、
まだ『メリー』を連れて来るのは早かったか。
くれぐれも静かにしているように言い含めてあったが、
ずっと黙らせておくのは無理があったらしい。

342度会一生『一般人』:2022/03/18(金) 06:14:02
>>341

「青い目をしたお人形は♪アメリカ生まれのセルロイド♪」

       (…………マズい)

          グイッ

歌い始めた『メリー』を、急いでポケットの奥に突っ込む。
『メリー』は実物の人形と同化している上に、
いざとなれば人間並みの力でも押さえ込める。
その点は制御しやすいのだが、
『性格』や『振る舞い』まで変える事は出来ない。

(今後の行動には『工夫』が必要だな)

「日本の港へ着いた時♪いっぱい涙を浮かべてた♪」

(何か考えるか…………)

        コツ コツ コツ コツ コツ

なおも歌い続ける『メリー』を見られない内に、
杖をつきながら、その場を立ち去っていった。

343ふらつき『一般人』:2022/03/26(土) 10:42:28
この日は、昼間なのにとても暗い曇天だった

静まり返ったスカイモールの展望台
人っ子一人いないように思えるこの場所に一人、人間がいた
性別は女、年齢は5、6歳くらいの子供のように見える

展望台から見ているのは人か?景色か?
―――あるいは、何も見ていないのか

344ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』+猫『マシュメロ』:2022/03/26(土) 22:11:29
>>343

「なんか今日は天気悪いの」

  「ンナン」


のこのこと展望台にやってきたのは、金髪の子供だ。
小脇に灰色の猫を抱え、リュックを背負っている。
服はぶかぶかで、体中にシールをくっつけていた。


「おっ。誰かおる。
 なんじゃお嬢ちゃん、迷子か?」


言ってる方からして一人で出歩く幼子だ。
この場に第三者が居れば、おそらくどっちも大差ないような目で見られるだろうが、
それでもおそらく少しだけ金髪の子供の方が『お姉さん』だろう。
女の子に近づいていく。

345ふらつき『一般人』:2022/03/27(日) 08:54:53
>>344
展望台から街の眺めていた子供…ふらつきと仮称しよう
ただぼんやりと眺めていた所に子供…ナイの声が響く
声のする方を振り向くと、金髪の子供がいた

ふらつきはぼんやりとしたような
何を考えているのか読めない表情でナイを見る
…何も考えていないのか?

とことことナイに近付き、少しだけ首を横に振る
迷子ではないという事を言いたいのかもしれない

その後、ナイに抱えられている猫を見るふらつき
じっと、顔を近付けて猫の様子を観察する

346ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』+猫『マシュメロ』:2022/03/27(日) 11:28:24
>>345

「迷子では無いか?
 それならそれでよいんじゃが」


ふらつき……なにか……ふらふらしているのだろうか?
見た感じだとぼーっとしてそうな子だ。


  「ナオッ」


顔を近づけると、猫はパンチを繰り出してきた。
爪は出ていないし勢いも無いので当たっても大して痛くはないだろう。


「なにも困っておらんというなら……いや、困っていてもそれはそれでじゃが……
 とにかく普段ならわしの商談が火を噴くところじゃが……」


とりあえず子供もふらつきを観察し『客』として品定めする。
どんな子なのだろう。何か持っているだろうか?

347ふらつき『一般人』:2022/03/27(日) 12:30:20
>>346
ふらふらしているといえば、しているかもしれない
少なくとも、しっかりした足取りではない
漠然とした表現だが、ぼんやり・朧げといった言葉が合うかもしれない

パンッ

顔を近付けて猫を覗き込むと、顔面にパンチが繰り出された
特に痛いものでもないが、HPが1くらいは減ったかもしれない

それに対抗してなのか?ふらつきのはたく攻撃が猫へと繰り出される
ゆったりとした遅い一撃なのでかわすのも余裕、当たっても痛くも痒くもないだろうが


ふらつきを『客』として観察すりナイ
金持ちそうにも見えないのであまり金目の物は期待出来なさそうだが
服のお腹の部分のポケットに何か物が入ってるのが分かる
この子の着ている服にはポケットがいっぱいついているが、全部のポケットに物が入っているようだ

348ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』+猫『マシュメロ』:2022/03/27(日) 13:16:56
>>347

ふらつきの頬に『肉球のマーク』が刻印される
……まあ本人からは鏡でも見ないとわからないだろうが。


「お嬢ちゃんの服、ポケットいっぱい――おっ!?

    「フニン!」

 ぬあ!?」


ふらつきのはたく攻撃――避けるのは容易――だが猫は子供の脇に抱えられていた。
突如ふところで身をよじった猫に体勢を崩し、目標がズレたはたく攻撃が子供にヒットする。


「……!
 …………!?」


そのままさらにバランスを崩し、悲劇の女優のように展望台の床に崩れ落ちる子供。
ダメージはほとんど無いのだろうが、ショックを受けた表情をしている。
猫は華麗に着地して毛づくろいを始めた。

349ふらつき『一般人』:2022/03/27(日) 13:47:49
>>348
頬に『肉球のマーク』が刻印されるが確認のしようがない
まあ、気付いても気にしないかもしれない
むしろ良い記念と思うかもしれない

バシッ

ナイを身代わりにして華麗に避ける猫
毛繕いまでしやがって小癪な奴だ
そんな猫を見ても眉一つ動かさないふらつきだが
猫にやられっぱなしは気に食わないのか?
どうやら猫をどうにかするつもりのようだ

叩かれ床に倒されてショックを受けている様子のナイをよそに
ポケットから小さいカラフルなボールと取り出して猫の方に転がす

350ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』+猫『マシュメロ』:2022/03/27(日) 14:17:31
>>349

まあ……『肉球マーク』は数分で消えるので
記念になることも気づかれることもなく消える運命なのだろうが……


  「ナッ!」


転がってくるボールに気づいた猫は、シャッと手を出し、ボールを叩いた。


「もぎゃっ」


ぽよんと跳ねたボールは、倒れた子供の鼻先へ。
これまた痛くはないだろうが、顔にボールが飛んでくればびっくりする。


「なぜわしがこのような仕打ちを……」

351ふらつき『一般人』:2022/03/27(日) 14:33:36
>>350
猫はボールに気付き、跳ね飛ばした

バッ

その猫の一瞬の隙を付き、ふらつきは猫の体のどこかを掴み取り
一気にその毛をぶち抜こうとする
上手く行けば『記念品(毛)』ゲットだ

子供にはたかれ、ボールをぶつけられ、さっきから踏んだり蹴ったり
哀れなナイだが、ふらつきはあまり気にしていない様子
こうなったのはふらつきのせいなのだが、罪悪感とかは無いのだろうか?
さっきから全く表情が変わらないので、そこの所の感情を読むのは難しい

352ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』+猫『マシュメロ』:2022/03/27(日) 14:52:40
>>351

  「ンナッ」

  「フギャッ」


すかさず猫に手を伸ばし、毛を引っ張る!
灰色の猫が長毛っぽいということもあり、
抜け毛くらいブラッシングすれば取れたかもしれないが、
ぶち抜くとなれば毛が引っ張られて痛い!


  「シャーッ!」


ふらつきは『猫毛』を入手した!
しかし怒った猫の反撃が襲い来る!
本気パンチ……爪が出ている! まともに当たれば流血は必至!(破ス精猫猫猫)

353ふらつき『一般人』:2022/03/27(日) 15:10:20
>>352
まんまと猫の毛をぶち抜いてやり、
生意気な猫に一泡吹かせてやる事が出来たが、
当然そんな事をすれば、猫からの報復がやってくる

人間の子供が猫と搗ち合えば、当然猫の方に分があるだろう
勝てるわけがない、もう血塗れの流血沙汰だ
しかし掠め手を使えばどうだろう?

先程ナイを痛めつけたボールを咄嗟に蹴り上げ、
猫の顔面にぶつけ、ポケットから指輪を取り出してぶん殴りで応戦しようとする
スペック上では完全に負けているが…いけるか?

354ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』+猫『マシュメロ』:2022/03/27(日) 15:33:19
>>353

なるほど、完璧な作戦っスね―――ッ 不可能だという点に目をつぶればよぉ〜

まずボールを蹴り上げて猫の顔にぶつけるというのが難易度が高いのはわかるだろう。
タツジンの所業である。


「えっ」


かろうじて蹴ったボールは観戦していた子供に当たった。
さすがに都合よく(悪く)、またも鼻に当たるということはなく、
胸元に当たったが、驚いて手を振り回し、そのままバランスを崩してあおむけに倒れていった。
時系列的には猫の攻撃の後になるだろうが。

さらに、ポケットから指輪を取り出してぶん殴ろうとするふらつきだが……
先手を取られた上に速度で負けている相手にそれは迂遠すぎた。
ポケットに手をつっこんで、自ら手を封じただけに終わる。
そもそも指輪をどうするつもりだったのか……握りこんでも拳と大差ないだろうし、
メリケンサック代わりに指に嵌めるには隙がありすぎる。
というか指輪を装備するくらいなら、ボールではなく直に猫を蹴った方が威力はあるだろう。

まあ、猫の爪もまともに当たれば流血必至とはいえ人間は服を着ている。
さすがに服を切り裂けるほどではないので、肌に当たらなければいいのだ。
手はポケットに隠しているし、顔はさすがに届くまい。
ダメージがあるとすればもう片方の手か、足か……もし服装がズボンだったなら怪我の心配はほとんどいらないだろう。

355ふらつき『一般人』:2022/03/27(日) 15:56:09
>>354
スピード・精密動作性、共に足りなさ過ぎた競り負け

ザクッ

服装はズボンではなくスカート
諸に肌を猫の爪が抉る

猫が怒りに任せて放つ本気の一撃は
その肉を深く切り裂き、血をダラダラと流させる
猫の爪には僅かな肉片が付着し、
飛び出た返り血は灰色の毛の猫に赤い斑点を付けた

痛みは感じているはずだが、それでも尚表情は変わらない
痛みの声一つ上がらない
僅かによろめく程度にしか反応しない
それでも、しっかりダメージは受けているので歩くのに支障が出るだろう

お互いに大打撃を受けて痛み分けといったところか?
満足したのか飽きたのか、猫との戦いをやめて
ゴム紐で毟り取った毛を束ね始める

猫の方はどうかは分からないが

356ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』+猫『マシュメロ』:2022/03/27(日) 16:28:55
>>355

  「フシーッ」


猫は弧の字になりながら毛を逆立ててぴょんぴょんと跳ねて距離をとった。
恨みがましそうな視線を送るが近寄ってくる気配はない。


「うう……一体なんなんじゃ……
 ってお嬢ちゃん、大丈夫か?」


起き上がった金髪の子供が、おそるおそる近寄ってきた。
猫とふらつきの争いで被害を被った子供だが、目の前の人間が血を流していればさすがに心配が勝る。


「痛くないのかの?
 ……猫の毛が欲しかったのか?」

「欲しい物があっても、いかんぞ無理矢理は……
 わしのようにスマートに……そうじゃな
 なんかくれたら『バンソーコー』をやろう。『交換』じゃ。どうじゃ?」


と、リュックを下ろして手をつっこんで漁りだす。


「知っておるか? 『バンソーコー』……怪我した時に傷口に貼るやつじゃ」

357ふらつき『一般人』:2022/03/27(日) 16:52:11
>>356
フシーッと声を出して威嚇する猫だが、相手は意にも介していない
いや、最早視界に入れてすらいない
もう興味が無くなったのだろうか?

束ねた猫毛をポケットに収納した所に、ナイが近寄って来た
この子供は猫毛を手に入れてどうするつもりだろうか?
いや、本当に毛が欲しかったのか?
ただ単に、毟るという行動の結果入手しただけかもしれない

アクションを取る事そのものが重要なのであって
毛はあくまで副次的に手に入れた記念品かもしれない


『交換』という言葉に反応したふらつき
服のポケット色々な物を出して並べてみる
この中から絆創膏と『交換』しようという事か?

果物ナイフ・ホイッスル・目玉の付いた腕の玩具・綺麗な石

358ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』+猫『マシュメロ』:2022/03/27(日) 17:16:10
>>357

「ほう。中々の品ぞろえじゃな。
 うーむ、選び難い」


リュックから取り出したのは、『絆創膏』『2Lペットボトルお茶』
『薄桃色のTシャツ』が2枚、それから『棒付きキャンディー(メロン味)』


「ここはサービスを全開にして『バンソーコー』だけでなく
 複数の『交換』を成立させてしまう作戦じゃ。
 この飴を舐めておれ。痛み止め代わりじゃ」


まず『棒付きキャンディー(メロン味)』を与え、気を紛らわせる。
それから『2Lペットボトルお茶』で傷口を洗う。


「安心するとよい。水じゃなくてお茶でもよいとテレビで言っていたぞ」


展望台の床はびちゃびちゃになるが気にしない。
『薄桃色のTシャツ』を一枚使って水気を拭き取り、
それから『絆創膏』を複数枚贅沢に貼り付ける。
その上でもう一枚の『薄桃色のTシャツ』を巻いて縛り付ける。


「どうじゃ、わしの手際は」


猫はぺちゃぺちゃと床のお茶を舐めている。

359ふらつき『一般人』:2022/03/27(日) 18:27:54
>>358
全部欲しがるとは中々欲張りだ

ふらつきはナイから渡されたキャンディーを遠慮なく口に入れる
キャンディーを舐めていても表情が変わらないので、
美味いのか不味いのかも分からない
まぁ、大人しく舐めているという事は美味いのかもしれない

ドボドボドボ

ペットボトルのお茶で傷口を洗浄する
お茶でも構わないとはいえ、実際にお茶でやる奴もそういないだろう
出来れば水の方が良いんだし

展望台をお茶で汚したり、好き勝手やるナイ
清掃員の身にもなれという話だ

絆創膏を複数枚張り付けた贅沢Tシャツで縛って応急措置完了か?

こくりと一度、首を垂れる
感謝の意を表しているのだろうか

絆創膏、お茶、Tシャツをフル活用しての治療
これ等の物品とふらつきの出した品、全部『交換』完了だろうか

360ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』+猫『マシュメロ』:2022/03/27(日) 22:08:26
>>359

「お嬢ちゃんが良いなら『交換』完了じゃな。
 まだお菓子欲しいか?
 ボールと『交換』してもよいが」


転がっていったカラフルなボールを拾ってくる子供。
ぽよんと跳ねたとか書いてしまったが、ゴムボールでいいんだろうか?


「それにしてもお嬢ちゃん、無口じゃな。
 表情も変わらんし。
 実はロボット……は無いの。血が出ておったし」


ぷよぷよとふらつきの頬をつついてみる。
『肉球マーク』はすでに消えていた。

361ふらつき『一般人』:2022/03/28(月) 15:49:26
>>360
ナイが拾って来たカラフルボール
どういう物かは詳しくは書いていなかったが
まぁ、ゴムボールという認識で良いんじゃないか

うん、と一度頷く
ボールとお菓子、『交換』してほしいという事か

ぷよ ぷよ

頬をつついてみると、
温かくて柔らかく餅肌という感触がする
ロボットではなく、ちゃんと血の通った人間であるようだ
血が出るなら殺せるはずだ


パラ
    パラパラ
          パラパラパラ


天から水滴がパラパラと降り注いできた
田舎育ちなら匂いで雨が降る事が予測できたかもしれない(偏見)

362ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』+猫『マシュメロ』:2022/03/28(月) 16:28:38
>>361

「お、『交換』するか? お菓子好きかの?
 と言ってもお菓子にも色々あるからの」


リュックから取り出したのは、ビニール袋だ。
中には『駄菓子』が詰まっている。


「甘いのとかしょっぱいのとか……」

「すっぱいの……この赤い入れ物の……こんぶ? とか。
 これはわしはあまり好きじゃないの。というかこれはお菓子なのか?」


駄菓子をお茶でびちゃびちゃになった床から離れて、
展望台備え付けの椅子に『駄菓子』を広げる。
好きに取ったらいい。


「ん? 雨か……
 そういえばわし、傘は無いの……
 お嬢ちゃんは……さすがにポケットに傘は入らんか?
 誰か迎えに着たりするのかの?」


モールの展望台というのは……高層階のガラス張りの部屋で、
つまり屋根があるイメージなのだがそれでいいんだろうか。
選択肢としては、慌てて帰るのか、ここで雨宿りして過ごしました、のどちらかだろうか……

363ふらつき『一般人』:2022/03/28(月) 16:56:57
>>362
床に広げられた『駄菓子』から一つ選び取る
ナイが好きじゃないと言った赤い入れ物のお菓子(?)
酢こんぶだ

酢こんぶを咥内にぶち込み、モグモグ嚙む
やはり美味いのか不味いのか読み取れない顔だ

展望台のイメージは屋根付きで問題無いだろう
ふらつきに傘を期待するナイだが、どうやら持っていないようだ
折り畳み傘ならポケットに入るだろうが


しばし、展望台から雨の降る街の景色を見つめる
ふと、空を見上げる

厚い雲 暗い町 冷たい雨
ふらつきの心の中を表している様だ
こんな日は、まだ『死に日和』じゃない

人間が死ぬには、相応しい場所・時が必要だ

しばらく雨降りの街並みを見ていたふらつきは、
やがて静かにどこかへと去って行く

次は何処を彷徨おうか

364ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』+猫『マシュメロ』:2022/03/28(月) 17:18:07
>>363

「帰るのか?」


結局、一言も発さなかった女の子を見送る。
傘は持っていなさそうだが、保護者が居たりするなら問題ないだろう。
そこまで付いていって確かめるということはしない。


「わしは雨がやむまで待つかの」


1人になった子供は椅子に寝転がった。
猫がやってきて、腹に乗る。


  「クア」


猫があくびをして丸まると、
子供は雨の音を聞きながら、目を閉じ、しばらくの間展望台で雨宿りして過ごした。

365龍美丹『チーロン』:2022/07/23(土) 15:14:27
「ふーむ」

ある休日、スカイモールの前で腕を組む。

「どっちがいいかな」

目にしているのは看板。
『博物館』の臨時展示について書かれている。
それともう一つはショッピングモールの夏のセールについてだ。

「うーん……家に帰ってお金を使わないというのも手か……」

ぶつぶつと言いながらふらふらしている。
もしかしたら人にぶつかりそうになるかもしれないし、そのおかしな様子が目を引くかもしれない。

366ダイアナ『オンリー・ガール』:2022/07/23(土) 18:38:08
>>365

「――――ふぅん」

プラチナブロンドの髪にエメラルドグリーンの瞳。
その風貌は、見る者に豪奢な印象を与える。
小さな両手で大きな『テディベア』を抱えていた。

「『博物館』では何を展示してるのかしら?」

美丹の隣に、いつの間にか一人の幼い少女が座っていた。
そう――『座っている』のだ。
椅子も何もない場所に。
まるで『空気椅子』をしているかのようだが、
両足は完全に地面から離れている。
普通に考えれば、有り得ない光景だった。

367龍美丹『チーロン』:2022/07/23(土) 22:37:03
>>366

「む?」

(子供……迷子かな? ませた雰囲気だし、一人かな)

こういう時、下手な気は回さない方がいい。
ただし目線は合わせて。
彼女に合わせるように空気椅子で。
幸い、今日はパンツスタイルだった。

「絵の特別展をしてるんだよ」

「素敵なお嬢さん?」

368ダイアナ『オンリー・ガール』:2022/07/23(土) 22:54:53
>>367

「『絵の展示会』なのね?」

少女の年齢は『幼稚園児』程だ。
近くに保護者らしき人間はいない。
どうやら一人で来ているらしかった。

「フフン!あなた、なかなか分かってるじゃない!」

相手の対応に、少女は気を良くしたらしい。
よく見ると、彼女の下には『椅子』がある。
ただし、普通の椅子ではない。
半透明の『空気の椅子』だった。
『椅子形態』の『オンリー・ガール』の上に腰掛けているのだ。

「せっかくだし、わたしも『博物館』に行ってみようかしら」

           ――――ストッ

『オンリー・ガール』から降りると、美丹の隣に立つ。

369龍美丹『チーロン』:2022/07/23(土) 23:00:33
>>368

(あぁ……なるほど)

いわゆるこっち側というものだろう。
だから納得した。
そして、相変わらず空気椅子で視線を合わせつつ。

「良ければエスコートさせていただけるかな?」

そう言って手を差し出す。

「水墨画の展示を二人で見てはいけないなんてルールはないんだから」

「いまお一人で、この後の予定がないなら……どうかな?」

370ダイアナ『オンリー・ガール』:2022/07/23(土) 23:16:04
>>369

当然ながら、ダイアナの方は、
美丹が『スタンド使い』であるとは気付かなかった。
『オンリー・ガール』は実体化しているため、
『誰にでも見える』というのもあるかもしれない。
それを差し引いても、ダイアナは普段から隙だらけなのだが。

「――――『水墨画』?」

初めて聞く言葉だった。
知らない事なら、素直に尋ねた方がいいのだろう。
しかし、ここで『知らない』というのはプライドが許さない。

「そ、そうね。『水墨画』なら、わたしもキライじゃないから」

          ソッ

「予定もないし、付き合ってあげるわよ!」

強がりながらも、美丹の手を取った。

「『ダイアナ』よ。だから、あなたもそう呼んでね」

最低限の『弱み』を見せないようにするという意図はある……。

371龍美丹『チーロン』:2022/07/23(土) 23:25:25
>>370

「……」

なんとなく、知らないんだろうなぁと思った。
特別展の内容を自分に言わせたのは、恐らく文字がちゃんと読めなかった可能性があるからだろう。
その年頃であれば水墨画は読めないと思われる。

「ダイアナ。すごいね、王妃様みたいだ」

「ボクは龍美丹(ロン・メイダァン)」

「龍でいいよ」

それから、手を引いて。

「行きましょうか」

特に何も無ければ博物館に入ることになるだろう。

372ダイアナ『オンリー・ガール』:2022/07/23(土) 23:36:39
>>371

「フフン、そうでしょう?
 わたしは『バレエ』を習っているのよ。
 『筋がいい』って褒められてるんだから!」

ダイアナは『金持ちの家柄』であり、
両親から質の高い教育を受けていた。
しかし、正確には『成金の娘』だ。
実の所、その素養には、
かなりの『粗』があると言わざるを得ない。

「ええ――ええ、行きましょう」

            「――――フフン!」

鼻に掛かったような笑いを漏らし、美丹の後に従う。

       シュンッ

『オンリー・ガール』は解除する。
博物館の中まで連れて行っては、
さすがに騒ぎになりかねないだろう。
隙の多いダイアナも、そのくらいの知恵は回るのだ。

373龍美丹『チーロン』:2022/07/23(土) 23:47:51
>>372

「バレエ! どうりで背筋がいいと思ったんだ」

始めはどうしたものかと思ったが年相応の子らしい。
スタンド使い故か元の性格なのか不遜とも言えるような面はある気がするが。

「ふむ」

館内の特別展示。
水墨画がガラスケースに入れられて並べられている。
龍はそれの一つ一つの前に立ち止まって解説だったり画だったりを見ている。
自然体のままだが、目の奥の光は強くなったように思える。

「ダイアナはどんなのが好き?」

374ダイアナ『オンリー・ガール』:2022/07/24(日) 00:02:17
>>373

ダイアナは態度こそデカいが、いなすのは簡単だ。
今までに何度も『他のスタンド使い』にケンカを売っては、
その度に『ワンパン』でのされている。
『オンリー・ガール』自体は十分に戦えるスタンドなのだが、
本人が使いこなせていないのだろう。

「ふぅん――結構キレイじゃない。気に入ったわ」

美丹と共に、順番に展示を見て回る。
年齢もあるのだろうが、その感想は至って表面的だ。
同時に率直でもあった。

(…………?)

心なしか、美丹の目の奥に宿る光が強くなったように感じる。
何となく、それが気に掛かった。
だが、その意味までは分からない。

          「えッ!?」

(ど……どんなのって言われても……!)

急に話を振られ、あからさまに動揺する。
水墨画の良し悪しなど理解の範疇外だ。
しかし、ダイアナは無理にでも『通ぶりたい』のだった。

「そ、そうね……やっぱり見栄えがいいのが好きね!」

目を泳がせながら、精一杯の答えを出した。

375龍美丹『チーロン』:2022/07/24(日) 00:40:33
>>374

「ふふ……っ」

動揺しているのを見て、つい笑みを浮かべる。
今日初めてあった者同士だが、その様子が心と頬を緩ませた。

「写真のように雄大なものは、確かに美しいよね」

「墨に五彩ありとまで言われるほどだしね」

「ボクもそういうのが好きだよ」

「濃淡だけの世界がこんなにも力強い」

少し黙って。

「あはは……ボクの話ばかりしてしまったね」

「君の話も聞きたいな、ダイアナ」

376ダイアナ『オンリー・ガール』:2022/07/24(日) 01:00:36
>>375

「そッ…………」

分からない事は多い。
しかし、ここで弱みを見せる訳にはいかない。
どうするべきか考えて――――。

「そうね!そう言われてるものね!」

ひとまず『安易に同意する』という結論に至ったのだった。

       「わ、わたし!?」

            タラリ…………

内心、冷や汗が流れる。

       「わたしは…………」

正直に言うと、全く分からない。
『成金趣味』のダイアナは、
もっと派手な方が見栄えがいいんじゃないかとも思っている。
『濃淡』のみで表現される『水墨画』の世界は、
彼女にとっては完全に『理解の外』だった。

「こ、『これを描いた人』に興味があるわね!」

「だって、ほら!その人には、
 世界がこんな風に見えてるかもしれないじゃない!」

思いついた事を、そのまま口にする。
分かったような事を言っているが、まるで分かっていない。
客観的に見ても、それは明らかだろう。

377龍美丹『チーロン』:2022/07/24(日) 01:29:47
>>376

「ふっ……」

「はは……っ!」

「あはははっ」

博物館ゆえ、あまり大きな声ではなかったが、龍は笑った。
声を殺しながら笑って、それからダイアナを見る。

「ごめん。君を笑った訳じゃあないんだ」

「なんだか、こんな事をしてるのがおかしくてね」

申し訳ない、というように手を合わせた。
その精神に嘘はなく、事実龍の中にはそういう謝意というものがあった。

「ダイアナ。君には難し……あぁ、いや、この言い方は正しくないな」

「そうだ、少しつまらなかったかな」

「いや、ボクが悪いんだ。君がボクの言うことに乗ってきてくれるから」

「少しイタズラな気持ちになったんだよ」

半ばわざとダイアナを困らせていたことを告白する。
これ以上彼女を振り回してもしょうがないからだ。

378ダイアナ『オンリー・ガール』:2022/07/24(日) 01:46:22
>>377

「――――…………?」

急に笑い出した美丹を、きょとんとした顔で見つめた。

「か、からかったわね!このわたしをッ!」

            ダンッ!

しばらくして、その意味に気付き、地団駄を踏んで抗議する。
周りの客から視線を向けられるが、所詮は子供のやる事だ。
特に咎められる事もなく、誰もが水墨画の鑑賞に戻った。

  「よくもッ――――――」

                 ズギュゥンッ!

感情に任せて、反射的に『オンリー・ガール』を発現する。

          「………………え?」

しかし、先に謝られてしまったので、怒りの矛先を見失った。

「フ、フン!まぁ、いいわ。許してあげる」

         ――――フッ

「だけど、今度だけよ!次は許さないんだから!」

鼻を鳴らしながらも、スタンドを引っ込めた。
ダイアナを言いくるめる事は難しくない。
許す事で、度量の大きさをアピール出来ると思ったらしい。

379龍美丹『チーロン』:2022/07/24(日) 02:27:06
>>378

「っ!」

瞬間。
瞬きする間、それくらいの時だ。
足が動いた。
何かが出ようとしているのが分かったから、反射的に龍の体は反応した。
まるであらかじめそうするように決まっていたかの如く。
居合抜きのような速度のハイキック……が、行き場を失う。

「ごめんごめん。そうだ、君がいいのなら予定を変えよう。展示はまだ先もやってるからね」

スタンドが消えたのを確認すると、折りたたまれ上がりかけていた足を下ろす。

「お詫びと言ってはなんだけど、ショッピングモールかどこかで甘いものでもご馳走しよう」

「それと、あまり『それ』を出さない方がいいよ、多分ね」

「淑女とはあまり自分の持つ美しさを見せびらかさないものさ」

「それが、黙っていてもにじみ出るものだからね」

380ダイアナ『オンリー・ガール』:2022/07/24(日) 20:11:45
>>379

『オンリー・ガール』が、多くの人型スタンドと異なる点は、
『実体化』している事だ。
一般人でも見えるし、生身による攻撃も食らってしまう。
『オンリー・ガール』自体のスピードは速いが、
動きは『素人』だった。
美丹には、それが分かる。
おそらくは『チーロン』なしでも迎撃できただろう。

       「――――――ッ!?」

駿馬を思わせるような、鋭く無駄のない蹴り。
年齢や体格の差も勿論あるが、
『練度』が違いすぎる動きを目の当たりにして目を見開き、
思わず身を固くする。
そのままなら『オンリー・ガール』に直撃していた。

            ペタンッ

そうならなかったのは、蹴りが中断されたからに他ならない。
次の瞬間、全身から力が抜け、
その場にへたり込んでしまった。
まざまざと『実力の差』を見せ付けられたからだ。

      「………………」

一言の文句も言わずに、美丹の話を黙って聞いている。
ダイアナは口より先に手が出るタイプだ。
その性格が災いして、何度もケンカを売り、
何度も敗北していた。

         「………………ッ」

今回も『また負けた』。
これまでとは違い、明確にダメージを受けた訳ではない。
しかし、今までよりも衝撃は大きかった。
ダイアナからすれば、
『スタンドすら使っていない相手』に『圧倒』されたのだから。
それが意味するところは『精神的な敗北』である。

「フ…………フフン!」

「そうよ、わたしは美しいのよ!
 『わたしの美しさ』を見られた事を喜んでいいわよ!」

「ご馳走したいならさせてあげるわ、フフン!」

しかし、強がる事は忘れていない。
その代わりに、立ち上がる事は忘れてしまっていた。
相変わらず、床の上にへたり込んだままだ。

381龍美丹『チーロン』:2022/07/24(日) 23:43:37
>>380

龍美丹は赤い心を持っている。
丹心、まごころを持っている。
少なくとも、そう信じている。

「さぁ行こう」

膝をつき、手を差し出す。
何事も無かったように。

「君の美しさを独り占めしにね」

382ダイアナ『オンリー・ガール』:2022/07/25(月) 00:20:29
>>381

「――――――フフン」

      ソッ

「あなたは運がいいわ。
 このわたしの手に触れられたんだから!」

ダイアナは美丹の手を取った。
彼女は『気位』が高い。
だからこそ、美丹の手を取ったのだ。
そうする事が『当然』だと思っている。
少なくとも、ダイアナ自身は、そう考えていた。

「言っておくけど、きちんとした店じゃないと、
 私は納得しないんだから!」

       トッ トッ トッ

「あなたの『センス』が試されるのよ」

美丹と共に、ショピングモールに向かう。
そこで『甘味』を奢ってもらった。
結果として、『龍美丹』は、
『ダイアナのブラックリスト』入りを免れたようだ――――。

383聖川篤虎『ドゥルセ・ネクタル』:2022/07/26(火) 14:36:33


         グビッ

「いやァ、しかし。
 なんだね、これは…」


平日昼下がり、モール内のチェーンのコーヒーショップにて。
端正な顔立ちのホスト風の男がコーヒー片手に、テーブルの上に横置きしたスマホに映るYouTubeの映像を観て苦笑している。



「この間遊びに来てくれた『お嬢様』がお勧めしてくれたから観てみたが…。
 袋に入れた『小麦粉』チラつかせてお巡りさんの職質を待つ…?

 んん〜〜?一体これの何が面白いんでェい…
 いやぁ〜〜…俺には理解できねぇセンスでさぁ。シハハ…」

384猿田 大輝『ザ・ライフライン』:2022/07/26(火) 21:17:05
>>383
過激な内容で注目を集めようとする動画を見終えると、次に別の動画が目に入った。
今さっき配信が始まったばかりのライブ動画で、チャンネル名は「エクストリーマーDAIKI」。
動画タイトルは「ゲリラで挑戦!ビルダリング」となっていた。

動画の場所に見覚えがある……他でもない、それはまさに今いるこのショッピングモールだった。
ショッピングモールの外観を少し離れた距離から撮影しているらしきその動画には、
モールの外壁を身ひとつで登攀していく人物の姿が映し出されている。

動画の解像度が足らず詳しい背格好は判別できなかったが、髪が赤い事だけはわかった。
なにか紐のようなものを伝うようにしてロープウェーさながらに上昇しては、
紐の上端に達すると新たな紐を上に向かって投げ縄のように投じ
そしてまたそちらに乗り換えて滑り上がっていく……そんな動きを繰り返していた。

よく見ていると、乗り換えた後の用が済んだ紐が掻き消えるように消滅している。
そもそも紐をどこから取り出しているのかも不明で、掌からいきなり出現しているように見えた。
それらはスタンド使いであれば「スタンド能力か?」と思うところだが、一般人には単に「CGで作った証拠」に見えるのだろう。
動画のコメント欄には早くも視聴者から「フェイクだ」等といった感想が寄せられ始めていた。

385山百 次言『バッド・ハビッツ』:2022/07/26(火) 21:17:20
>>383
ショッピングモールで買った食品を大量に持ち込んだ男がそんなホスト風の男の対面に座っている。

「若い者と言うか・・・学生の好み、という奴だろうな。子供の悪い癖だ」
「背徳的に見えるもの、大人をからかえる類のものに喰いつきがよい。不謹慎ネタは子供が好むものだ」

そういってガサガサ、と食べ物を広げていく。

「とはいえお嬢様に見えるような層でもそういうのを見るのか」
「星見は一見文化的で治安が良さそうな町だと思ってたが・・・それなりに若者文化は入り込んでるのかね」

386聖川篤虎『ドゥルセ・ネクタル』:2022/07/27(水) 00:07:54
>>384>>385


 「ほう」

「何だこりゃあ。よくわからねぇが、
 最近の『CG技術』ってのは凄いねェ」

とりあえず動画を流してはいるが、
さして興味を惹くような内容でもなかったが、
目の前の知人との話のネタにはなるであろうからそのまま垂れ流しておく。


「へへッ…旦那。
 俺ァ『ホスト』ですぜ。
 俺からすりゃあタトゥーガッツリ入ってるギャルだだろうが、
 この間街頭演説していた女性政治家サンだろうと、
 世にいるオンナは『お嬢様』や『奥様』でさぁ」

387猿田 大輝『ザ・ライフライン』:2022/07/27(水) 00:23:39
>>385
>>386
山百といくつか言葉を交わした後で聖川がふと見ると、
何らかのルールに抵触していたのか、いつの間にか動画とチャンネルはBAN(削除)されていた。

(ここでフェードアウトした方がよければ遠慮なく言ってください>お二人)
(問題なければこのあと乱入します)

388山百 次言『バッド・ハビッツ』:2022/07/27(水) 04:11:06
>>386-387
こちらは特に問題なく乱入していただいて可能です。

「なるほど・・・字面をそのまま受け取ってしまう。俺の悪い癖だ」
「とはいえ俺はこの街が一見『お上品』だとは思ってるんだよ」

そういって目の前の食べ物を聖川篤虎に勧める。
それらの品はほとんどが期間限定とか新製品ばかり。
この辺の名物である鰻、ぶどうを使ったものが多く、目先を変えたおしゃれさがあるがその分食いでがなさそうだ。

「この辺は商工会全体の意向でね、『女性向け』且つ『おしゃれ』な方向に町起こしを狙っている」
「久しぶりに顔を見たし、奢るからべしゃりついでにホストの君にこの辺の感想でも聞きたかったんだが―――」

そして動画と、それがいきなりBANされたことに顔をしかめる。

「―――どうにも『お上品』じゃないものがこの町では頻繁に見受けられるな」
「『見た目」と『実態』が妙にチグハグだ。星見(ここ)はそれなりの伝統がある町のはずだろう?」
「ヤクザとかも『わきまえた』人たちが多い筈だし、チンピラも少ないなんだがなあ・・・」

がぶり、と新商品の『鰻の娼婦風ボモドーロバーガー』とか言う
ニンニクも唐辛子もがっつり効かせた、イタリア風のおしゃれさを狙おうとして骨折を起こしているしネーミングも最悪な代物を齧る。

「どうにもキナくさい。公園をチラリと見て回ったがそこの住人すら妙に治安が悪い」
「だと言うのに近づいてみると妙にお上品と言うか『わきまえてる』・・・なんだろうなこの座りの悪さは」
「まるで新しい『何か』をそれなりの手続きで試している最中のようだ。そしてその内容はかなり『治安が悪い』ぞこれ。」

389聖川篤虎『ドゥルセ・ネクタル』:2022/07/27(水) 11:46:44
>>387-388
(※レス遅れ気味になると思いますが、
  それでも良ければこちらは問題ないです)


「あらら…垢BANされちまッた。
 まァ、若いお嬢様との話のネタにはなるか」


既に動画に対しての興味は失せた。
最近機種変更したばかりの最新機種のスマホをケツポケットに捻じ込み、
テーブルの前に置かれた『ご当地グルメ』の試作品の包装紙を開き、口に運ぶ。



「別に俺ァ3食コンビニでも全然苦じゃねえ、
 メシなんて味が濃ければ濃いほど良い典型的なバカ舌でさァ。
 味なんて『美味い』か『凄い美味い』くらいしかわからねェですし、
 ぶっちゃけた所『美味い』ッて事しかわかりませんがね、
 これはァ、ちょっと『お嬢様』向きじゃあないんじゃないですかねェ」


         「いやァ〜…ハハハ」


「こんなバカデカくて油ギトギトのモン頬張ったら、
 塗った『リップ』が剥がれちまうし、腹も膨れちまう。

 旦那は食い出のあるモンを出してェと言ってるが、
 こー言う所に来る「観光客のお嬢様』達ァ、日中の観光ついでの『ご当地グルメ』は色んなモンをちび食って『写真』を撮りてェだろうし、
 これで喜ぶのは、男連中や食に旺盛な『お嬢様』だけじゃあねェかなァ。

 そー言う『ウナギ』やら『海の幸』は旅館や商店街のホテル連中に任せちまッて、
 無難に『葡萄』や『スターフルーツ』を使った『フルーツサンド』でも出しておきゃあいいんじゃねェでしょうか?
 今、流行りらしいですし『お上品』ですぜ?」


一通りの感想を述べた後に、
コーヒーを一口飲み口内に残った濃い味を流し落とす。


「まァァ、俺ァ所詮他所の土地から流れ着いたしがねェ『ホスト』だ。
 職場が夜の歓楽街だから、どうにも旦那の言う事がピンと来ないねぇ、ハハハ」

390猿田 大輝『ザ・ライフライン』:2022/07/27(水) 15:50:59
>>388-389
(ありがとうございます)

「あぁ〜〜〜〜ッ!
なんだよもォ〜〜〜〜〜〜BANされてるゥ〜〜〜〜〜!!!」

大声を上げながらスマホ片手に入店してきた少年が一人。
年の頃は小学生低学年か中学生といったところか。中学生だとしたら身長が低い。
体格も大人の男にはまだまだ程遠い細身で、『小猿』といった表現がぴったりだった。
作業服か登山着のようなポケットの大きいズボンにTシャツの上から半袖のジャケットを羽織り、
土木作業員かアウトドア趣味人、もしくはワイルドを履き違えたゲーセンのオタクのような恰好をしている。
目につくのはその頭髪だ。染めたかのように赤く、鶏のトサカかひと昔前の少年向けアニメの主人公か、という感じに逆立っている。
聖川がさっきの動画で見た「ビル登り」をしていた人物と同じ色だった。

「チクショオ〜〜〜〜〜なんでだよォ〜〜〜〜〜!
『スタンド』で配信すりゃ人気者だと思ったのによォ〜〜〜〜〜〜」

この町はもちろん、世界どこでも『スタンド』の存在すら表沙汰にはなっていない。
情報化社会のいま、その裏ではそうなっていくように人知れず尽力している誰かがいるということだ。
チャンネルがBANされたのはスタンドを大っぴらに見せびらかすような動画がマズかったのだろう。

「まァいいやユーチューバーは諦めるかァ。
オバちゃん!コーヒーひとつね!」

まだオバさんという年ではない女性店員を引きつり笑いにさせながらコーヒーを購入した少年は、
鼻歌混じりで席を探しながら二人の方へ向かってくる。

391山百 次言『バッド・ハビッツ』:2022/07/27(水) 22:54:17
>>389-390
「・・・・・・・・・・」

あっちゃー、という表情をしたあと聖川篤虎に『ごめんね?』とでもいうような視線を送る。
というのも。

「やあ、そこの少年・・・少年?人間?人間よ!」
「先ほどBANされた動画の投稿者かな?いかんよ『スタント』は危険な技術だからねえ!」
「海外でも事故が多く最近はあの辺を危険とする風潮が強い・・・とはいえ日本でああいうことをやるとはなかなか豪胆じゃないか!」
「奢らせてくれないかね、なあに次はこの新商品たちの食レポでも投稿すればよいではないか!」

この目の前のサル顔の少年と関わろうとするからだ。
だってあれじゃん、さんざん『スタンド』に警戒してきたロールとかやってるじゃん自分。
こんな危険そうなのとりあえず確保して事情とか聴きたいじゃん?

392聖川篤虎『ドゥルセ・ネクタル』:2022/07/27(水) 23:43:38
>>390-391



     「なッちゃあいねェ」

「まるで、なっちゃあいねえぜ坊ちゃん」


入店してきた猿田少年に興奮し持て成そうとする山百氏とは対称的に対し、
ただただ冷めた態度を見せる。


「『客』にだってそれなりの態度ッてもんがあらぁ。
 特に、あんな綺麗な『お嬢様』を捕まえてオバサン呼ばわりした挙句、不躾な注文をする所なんて全然なっちゃあいねェ。

 どーいう『トリック』を用いてあんなすげェ『鉄塔登り』をカマしたかはしらねェが、
 女性への態度がなっちゃあいねぇ輩が、『テッペン』取れるとは思えねぇなぁ」

393猿田 大輝『ザ・ライフライン』:2022/07/28(木) 00:25:48
>>391
「おっ!おじさんオレの動画見てたの?やったッ!チョー嬉しい!」

「違うよスタントじゃないよ『スタンド』!そりゃまあ落っこちたら危険だけどさ。
オレの『ザ・ライフライン』ならそんな危険はないんだ。使いこなせたらの話だけど……
まだ良くわかんないから練習ってわけ。で、ただ練習するより配信してバズったら面白いじゃん?」

どうも少年は『他人にスタンド能力を知られるとマズイ』という意識が希薄なようだ。
一度痛い目を見るなり誰かから教えられる機会なりがあれば身に着けるものだが、
まだそういった経験をしていないのだろう。『スタンド使いになりたての素人』という雰囲気がにじみ出ていた。

「おっ!それ食っていいの!?ラッキー!」

ガタガタ

遠慮というものもなく二人の席についた。

>>392
「え、何が?」

『何を言っているのかわからない』という顔で聖川を見る。
猿田は14歳の男子中学生。早熟な少年ならそういう機微もわかろうという年だが……
聖川には知りえないこととして、病気がちで最近まで入院生活を送っていたのだ。
そのため精神的な成長が遅く、色恋沙汰や女性への礼儀といった知識と経験が足りないのであった。

「オバちゃんはオバちゃんじゃん。
ユーチューブはBANされたけどスカイモールのてっぺんは取ったよ。
オレの『ザ・ライフライン』のロープなら登れない場所はないもん」

そう言いながら手に嵌めたグローブを見る。
『空と入道雲』を思わせる青と白の模様が描かれたグローブは
一見すると普通の手袋にも見えるが、どこか『奇妙』なうねった形状をしていた。
聖川の諫言に口を尖らせながら悪態をつく。

394山百 次言『バッド・ハビッツ』:2022/07/28(木) 03:58:40
>>392-393
「・・・・なーるほどねえ、素人、覚えたて・・・」

パシッと顔面を叩いて渋面を隠す。え、なに?スタンド使いは引かれ合うから?それで調べようとしたら早速こんなことになんの?

「いやまあ少年よ、そこの彼の言うことは正しいわけよ。面白くはないだろうけどな」
「人気者ってのは人に好かれる人のことだ。スゲー上で優しいってなりゃあそりゃあもうモテモテよ」
「かくいう彼はモテすぎて生計を立てれてるわけだしな。いわば『人気者』のパイセンよ。奢られながら薫陶を受けるのもいい」

聖川篤虎が割と面倒見がいいと見込んではいた。囲ってる客の好感度も結構高いと思ってもいた。
今回の町起こしの件、店長にでも流してもらって色町にも伝わればなと思ってたのだ。
何せ余裕も金もある女性を誘致する町起こしだからな。色町も商機に乗れれば必ず儲かる。
こういった案件に関われればいずれ店長にでもなれるかなーっていう種まきも兼ねてたわけだが・・・

「しかしまあ、公園もだがちょっと動くだけでこの有り様なのはすげえな・・・もしかするとだが・・・」
「今、この町。『スタンド使い』が大量に誕生しかけている・・・?」
「その上で。それを制御できるシステムもまるで存在していない・・・?」

395聖川篤虎『ドゥルセ・ネクタル』:2022/07/28(木) 08:54:48
>>393-394


「フッ…坊ちゃんにはまだ早かったようでさァ。
 『スタンド』だか『スタント』やら『ライフライン』やら、俺にァなんの事かサッパリだがね」


猿田少年が見せてきた『グローブ』には特に反応はしない。
聖川篤虎は『スタンド』の概念については殆ど理解していないが、
誰に教わった訳でもなく『隠しておくに越したことはないモノ』だと認識しており、
誰にも自らの『異能』の存在を打ち明けた事もないし、
それどころか『スタンド』を発現した経験もないし今の所使う予定もない。


「まァいいでェい。
 坊ちゃんももうちょいしたら俺の言っている事がわかるだろうにィ」


       「山百の旦那?」


「随分と『興奮』してらしてるけれども…、
 一体どうしたんで?」

396猿田 大輝『ザ・ライフライン』:2022/07/28(木) 13:51:11
>>394
「べ、別に女にもてたいわけじゃねーし……」

ちょっと頬を赤らめて目を逸らしながらそう言った。
本心ではもちろん『モテるに越したことはない』という気持ちはあるが、
思春期特有の『モテにがっつくのはカッコ悪い』という思考により照れが勝ったのだ。

ガサガサ

「お、見た目はアレだけど悪くないじゃんコレ」  モグモグ

山百の持ち込んだご当地バーガーを食べだす。

「なんだ、スタンド使い知ってるんじゃん。
オレはまだ他のスタンド使いと会ったことないけどなあ。まあ目覚めてから何日も経ってないけど。
って、公園?他のスタンド使いに会ったってこと?ひょっとしておっさんも実はスタンド使いなん?」

>>395
「ふーん……女にモテるのが仕事なんでしょ?
オレ病院暮らしが長かったんだけどさ、看護師のねーちゃんがそーいう人に推すだの貢ぐだの言ってたのを聞いたことあるよ。
そーいうの、正直もっとこう……イヤな奴を想像してた。アンタは悪いヤツじゃなさそうだね」

生意気なガキといった感じの猿田だが、背は低く体は細い。その体格が経歴を物語っていた。
病院という閉鎖空間で長く過ごしてきたので世間についての理解が偏っているのだった。
聖川の客がどうだったかはともかく、激務でストレスフルな看護師はホスト通いをする者が多い。猿田の周りの者もそうだったのだろう。
それを見て、ホストという職業には『女に貢がせてしゃぶり尽くしたら捨てるような下衆』といった偏見を抱いていた。
もちろん実際に会ってみたらそこにいるのは一人の普通の人間に過ぎない。いま起きているのはそんな『どこにでもある話』だ。
聖川が『スタンド使いでもあることを隠している』のを除けば。

397山百 次言『バッド・ハビッツ』:2022/07/28(木) 19:39:26
>>365-366
「あー・・・」

チラリ、と聖川篤虎の方を見た後改めて猿田大輝に向き直る。

「その、な?こう見えても俺はジャーナリストでな、動画投稿の話とかそう言うのにはそれなりに詳しいんだ」
「『スタント』が流行ったのはしかるべき設備や準備があったからであって、まずはそういう集まりに・・・」

そうやって当たり障りのないことを言いながら

『もうその単語知ってるの確定じゃないの・・・お前さん、スタンド使いなんだな、本当に・・・』
『横の彼は無関係だ、巻き込むなよ?いや、巻き込むという意味もまだ分からないか?』
『分からないなら頷いてくれ。頷かなくても後で彼がいないところで落ちあって詳しい話をしてやろう』
『少年、お前さんこのままスタンド使いについて何も知らないままだと危険だぞ?』

スタンド会話で少年にだけ聞こえるつもりでコンタクトを取るとかいう器用なことを試そうとして見る。
ただしこんなことやったことがないので素人が腹話術を試そうとしているかのような有様でどっちもたどたどしく不自然な喋り方になるだろう。意味は通じるだろうが・・・

398聖川篤虎『ドゥルセ・ネクタル』:2022/07/28(木) 22:54:08
>>396

「そんな大層なモンじゃあねェな。
 世の中の女性にメシを食わせて貰ってるだけでさァ」


     「坊ちゃん」


「坊ちゃんだって、
 病院の看護師サンやお医者サンのおかげで今こうやって元気になって、
 タワーに登るなんて無茶な事ができてるんだろィ?
 ならば、『感謝』と『敬意』を忘れちゃいけねぇってそれだけの話ですぜ」


>>397

「旦那ァ、そこの坊ちゃんと意気投合したみてェだなぁ。
 つもる話もあるだろうに、ッと」


『スタンド』について深く知ろうと言う気持ちは今の所ない。
見える物を見えないフリを、聴こえるものを聞こえないふりを続けられる程器用でもないし、
興味のない話を盗み聞きする程『野暮』じゃあない。
ゆっくりと立ち上がり、座っていた椅子を引く。


「俺ァちょっくら『喫煙所』に行ってきますぜ。
 …ったく、この『分煙』ってのには未だに慣れやしねぇやァ」


幸い今日は手荷物もない、このまま店を後にしよう。

399猿田 大輝『ザ・ライフライン』:2022/07/29(金) 09:33:09
>>397
「じゃーなり……ユーチューバーのギョーカイの人ってこと?」

解像度の低い『ジャーナリスト』像で、半信半疑の返事をしていたが

「何それ!スゲー!俺それできねーよたぶん」

『スタンド会話』に驚いて声を上げる。
猿田のスタンドは『器具型』であるため、スタンド会話はできない。
それもあって、そのような技術があることを知らなかったのだ。

「あっ、うん」

驚いてしまったので台無しではあるものの、山百の話には素直に頷いた。

>>398
「わかった。店員のオバちゃ……おねーさんにはあとで謝る」

大人の世界の話はわからなくとも、感謝と敬意という話なら分かる。
腑に落ちた様子で頷いた。

「また会おうぜ、モテモテのおっちゃん!」

『ホスト』という言葉を知らないので珍妙な造語を生み出しながら
去っていく聖川を見送った。

400山百 次言『バッド・ハビッツ』:2022/07/29(金) 11:09:02
>>398-399
「あー・・・ホント済まないな。こういうの見るとほっとけない。俺の悪い癖だ」
「・・・俺はね、この『星見町』はWINWINであってほしいと思ってるよ。誰も損のない、得しかない世界だ」
「星を見る町だからな。誰もが勝ってないと不公平ってもんだ・・・じゃあまた、悪くない話があったら持ってくるから」

そういって聖川篤虎を見送る。そして。

「さて、少年・・・君のそれ、かなり危険な代物なんだ。」

そういって、周囲を確認したのちに懐の知恵の輪を一つ取り出して・・・
『バッド・ハビッツ』のヴィジョンにより、パス精BBCで
その知恵の輪をねりけしみたいにこねて歪なパチンコ玉のようにしてしまう。

「割とこういうことができる奴がスタンド使いにはゴロゴロいる。更にね・・・?」

※猿田 大輝PCへ。
何も問題なければここで『スタンド使いは引かれ合う』話を少ししたいと思いますが大丈夫でしょうか?

401猿田 大輝『ザ・ライフライン』:2022/07/29(金) 23:02:40
>>400
「おお、すげぇ……」

驚いた。その理由は複数あり、まず『人型のスタンドヴィジョン』というものを初めて見たということ。
もう一つは猿田のスタンドは破壊力:Cであるため、『バッド・ハビッツ』のパワーにも驚いた。

「なんだこれ、透けてんじゃん。かっこいー」

さらには『ザ・ライフライン』は実体化しているため、『実体化していないスタンド』も初めて見た。
興味津々だ。半分くらいは『その見た目に』というところも否めないが……

※もちろん構いません>『引かれ合う話』

402山百 次言『バッド・ハビッツ』:2022/07/30(土) 08:18:49
>>401
感謝。では・・・

「これが『スタンド』。何でこう呼ばれているのかはあやふやでよく分かってない、ただなーんとなく最終的に皆この呼び方に行きつく」
「使い手の才能や精神性の発露とも言われ、スタンド使いは能力を使わなくても『目立つ』奴が多いね」
「いわゆるこういうのは人型ヴィジョンという。持っているスタンド使いの中では割と一般的でね」
「・・・こういうのは『普通に』暴力的な人間が持っていることが多い感じがするね」
「きみのようなタイプは特殊だ。優しかったりなんだったりで余り暴力に頼る発想がない人間が持つ傾向が多い感じがする」

まあ一般論ではないけど。あまり暴力的な発想に至って欲しくもないのでこういう説明にしよう。
※ヴィジョンが特殊な奴は監禁とかに向いてたり暴力性の発露が穏当じゃない奴とか原作でも多いですよね!

「そして困ったことにな?こういう能力って悪用しやすいだろ?」
「・・・狙われやすいんだよ、スタンド使い。いわゆるヤクザな商売の人達の人材として」
「そういう連中が動いていたりするからか、もしくは目立つ人間がよく発現するからか」
「『スタンド使いは引かれ合う』なんてよく言われてる」
「私はこれから星見に根付こうとしているジャーナリストだ。なんでこういった関係の治安も探っているんだけど・・・」

「断言するけど星見町は『異常』だ。軽く調べようとしただけでスタンド使いにこういう風に出会うなんてのはかなり珍しい」
「幸いなことにまだ暴力的なタイプのスタンド使いには出会っていないけど、楽観視はしていられないな・・・」

と、この辺で話を切って咀嚼する時間を作ろう。

さて。問題は自分にも彼を守るほどの組織力はないことと、
彼の承認欲求がスタンド由来だったらこの程度の発言じゃ全然重石にならないだろうことだ。

『彼を守る』のに最適なこちらが取れる手筋は何か。彼の反応を持って見極める必要がある――――

403猿田 大輝『ザ・ライフライン』:2022/07/30(土) 21:32:47
>>402
時折「うん」とか「へぇ」等の相槌を入れながら、山百の言葉を興味深く聞いている。

「そっか。確かにオレ、ケンカに強くなりたいとかじゃなくて探検……『冒険』がしたかったんだ。
病院通いで身体が弱くなって自信なくしてたからさ」

「なるほど……『悪いスタンド使い』……」

猿田には(危険行為をYoutubeにアップロードすることや、『バズり』のために能力という『ズル』をすることは
見方によって『悪いこと』なのは置いといて、『悪気』の話として)
そのように悪行にスタンドを用いるのは想像もつかなかったことだ。

「『引かれ合う』っていうのが起こる理屈はよくわかんないけど、現にオレたちこうして出会ってるもんね。
おっちゃんは調べて……どうするの?ユーチューブで動画作るとか?
でもBANされちゃうんじゃない?オレのさっきの動画みたいにさ」

先程の猿田の動画がBANされたのは『少年がビルを生身で登るような危険行為の動画だったから』という可能性もあるが、
『大っぴらにスタンドを使っている動画だった』せいである可能性も確かにあるだろう。
猿田自身にそこまでの意図はないが、『この町の実態をジャーナリストとして調査しても発表する場は持てないのではないか』
……これはそういう意味を孕んだ問いだった。

さらに続けて猿田は連想ゲームのように何かに気が付いた、という顔で続ける。

「あっでも、悪いスタンド使いならわざわざBANしないで泳がせて自宅とかに凸してくるよな。
これって悪いスタンド使いに見つからないように『善意の誰か』が『BANしてくれた』かもしれないのか。
軽率だったなぁ。ぜんぜん深く考えてなかった」

猿田はそこまで強い自己顕示欲に基づいて動画配信をしたわけではなく、
ネットが身近なこの年頃の少年として軽い気持ちでやっただけだ。
『自信をなくしていた』……この言葉の通りだろう。自信を得られればなんでも良かったのだ。

404山百 次言『バッド・ハビッツ』:2022/07/30(土) 23:39:48
>>403
「これはさっきも言っていたし俺の持論でもあるんだが」
「大事なのは『Win-Win』であることだと思っている。正義だろうと悪だろうと、損を与える取引は必ず破綻する」
「持っているものに一つ加えて別の誰かに与える事。積み上げて積み上げて受け継いで引き継いで――――」
「それこそが、人が関わり合いになる意味だと、俺は思っている」

「少年、何も関わるなと言っているわけじゃない。さっきも言ったようにスタンド使いとは引かれあうものなのだから」
「だから関わったその時に重要なのは『損をしない』ことだ。その出会いを不幸とするのではなく――――」

ぴ、と名刺を取り出す。

「幸福に変えるための『ヴィジョン』を持て。覚悟を持てとも言いかえることができる」
「さしあたって俺はこの出会いを幸福に変えるつもりだ。俺の連絡先を渡しておこう」

役に立つかどうかは分からないが、これから自分の『ヴィジョン』を持つにいたりその相談や手助け位はしてやれるだろう。
これが俺にできるおそらく最大の手助けだ。

「俺はこの星見のスタンド使いの状況を調べ、『商売』に組み込むつもりでいる」
「得をする『Win-Win』な取引において、それをブチ壊そうとする奴はそうそういない」
「複雑そうに見えて、最も最短且つシンプルな『平和への道』だ」

405猿田 大輝『ザ・ライフライン』:2022/07/31(日) 00:10:51
>>404
「難しい理屈はよくわからんけど……『みんなで幸せになる方がみんなが得』ってこと?
とりあえず、おっちゃんがいい人なのはわかった。うん」

14歳という年齢以上に経験が足りない猿田には『取引』とか『損得』みたいな社会的な話はピンとこない様子だったが、
それでも誠意は十分に伝わったようだ。
ただし、『ヴィジョン』と『覚悟』を持て、と言われた事に対しての明確な返答はなかった。
『持て』と言われて『はいと答えた』から『明日から持ってます』というものではないからかもしれない。

名刺を受け取る。

「やま……やまひゃく?なんて読むの?
オレは猿田大輝(さるた だいき)、清月学園中等部二年。まあ病気で入院してたから編入したばかりなんだけど……
あ、オレの連絡先も教えるね」

スマホの番号を教える。

「商売かぁ。中学生のオレに手伝えることがあるのかはわかんねーけど……応援してるぜ!おっちゃん!」

笑顔でサムズアップ。

406山百 次言『バッド・ハビッツ』:2022/07/31(日) 06:46:51
>>405
「山百 次言(やまひゃく じげん)。伝統と歴史ある商売の本場、『堺』を源流とする名字だ」
「少年よ、君のヴィジョンがどうなっていくのか。それは今俺がどうこう言うものでもない」
「だが願わくば、そのヴィジョンが確固たるものになることを祈ってるよ」

※以後山百は『星間通信』などの手段を利用して、危険人物、組織を確認したら伝達を行う予定です。

407猿田 大輝『ザ・ライフライン』:2022/07/31(日) 13:57:32
>>406
「あ、そろそろ帰らなくちゃ」

「……うん!元気でな、おっちゃん!」

山百と別れ、コーヒーショップを後にした。

408『スフィンクス・チャレンジ』:2022/09/19(月) 16:46:01

『展望台』に一匹の『猫』がいる。
毛と髭のない『スフィンクス』。
『誰か』を待っているかのような面持ちで佇んでいた。

           ズ ン

傍らに控えているのは『スフィンクスのスタンド』だ。

――――――――――――――――――――――――――――

タイトル:『スフィンクス・チャレンジ』
GM:小石川
危険度:E(危険は一切なし)
難易度:D(しっかり考えなくても分かるレベル)
報酬:1万円相当の宝石or2万円相当の宝石彫刻
募集人数:1名
進行:場スレと同程度
期間:場スレと同程度
概要:
『スフィンクス』の『ロダン』は『謎』を好む。
彼は気紛れに町を歩き、『声が聞こえる者』に『謎掛け』を行う。
『今日の舞台』は『ここ』だ。

備考:
『どこかの場スレ』に現れる『ロダン』を見つけたPCが参加できます。
出される問題に答えられたらクリアです。
問題数は『一問』です。

409『スフィンクス・チャレンジ』:2022/09/26(月) 16:44:39
>>408

いつの間にか『スフィンクス』は立ち去っていた。
また『別の時』、『別の場所』に姿を現すだろう。
それを見つけた者だけが、
『ささやかな謎』に挑戦する資格を得る――――。

410勇者『リィン・カーネイト』:2022/10/15(土) 09:34:30
スカイモールの屋上から下を見下ろす勇者
その手には一振りの剣が握られている

「うわぁ…」

勇者は今、屋上から飛び降りようとしている
勇者が聖剣を握っている限り、勇者は聖剣と同じ耐久を得る
聖剣は屋上から落としても壊れないだろう
つまり、勇 者 も 屋 上 か ら 転 落 し て も 死 な な いという事だ

これは…痛みに耐える訓練だ!

「うわぁ…」

だがあまりの高さに飛び降りる勇気が出ない勇者
誰かに背中を押されれば降りられるかもしれない

411勇者『リィン・カーネイト』:2022/10/16(日) 20:46:29
>>410
ドンッ
誰かが背中を押した音がする

次の瞬間、勇者は宙を舞っていた
いや、落ちていた

勇者が屋上から地面へと落下する時間はほんの数秒程度だっただろう
しかし、強烈な風圧を受け息苦しいその時間は勇者には途轍もなく長い時間に感じられた

                   グチャ

やがて地面へと叩きつけられる勇者
勇者は確かに死ななかったが、死ぬ程の痛みを感じた
無造作に掴まれて床に思い切り叩きつけられてぐちゃぐちゃに潰されるトマトはこんな気分なのだろうか?

しばらく痛みで動けず、その場に倒れていた勇者だったが
やがて立ち上がり、この場を後にした
一部始終を見ていた人間達は誰も助けてくれないばかりか
面白がってスマホで撮影する奴らもいた

生きているが死に匹敵する痛みと恐怖を覚えた勇者が
この経験をどう活かすのだろうか

412カリヤ『タイプライター・トーメント』:2022/10/17(月) 19:16:41
  「………」

           「ーーー!」

『星見スカイモール』の展望台で、
小柄な女性がもう1人に行く手を塞がれ、しつこく声を掛けられている。
『迷惑行為』だッ。
女性は周囲に視線を向けるが、現状助け舟を出そうとする者はいないようだ。

413宗像征爾『アヴィーチー』:2022/10/18(火) 05:30:25
>>412

無骨な安全靴の底を響かせながら、
一人の人間が近付いてきた。
カーキ色の作業服を着た中年の男だ。
年季の入った革の手袋が、その両手を覆っている。

「取り込み中に悪いが、聞きたい事がある」

状況を知ってか知らずか、男は『もう一人』に声を掛けた。

414カリヤ『タイプライター・トーメント』:2022/10/18(火) 12:37:57
>>413
「『見た』んだろぉー、きみがさぁ。
ねえ、教えてくれたっていいじゃあないか………ム?」

声を掛けられて振り向いたのは灰色髪の女だ。
ロイド眼鏡の奥から怪訝そうな瞳を宗像に向ける。

「なんだい、きみ。
今、『良いところ』だってわからないかなぁ〜。
『取り込み中』だよッ……って、あああッ!」

「せっ、『台詞』が被っちゃったよぉ〜〜!
『取り込み中』って言いた過ぎて……
私としたことが、なんてことを…………あっ!逃げるな!」

腰に手を当ててチンピラ然とした台詞を吐いたかと思えば、
量の多い長髪を掻き乱し一人でブツブツとつぶやく女の背後では既に女性は逃げ出していた。
閉まりかけたエレベーターに飛び乗った女性と宗像の顔を交互に眺めた後、
長い溜息をついて恨めしそうに宗像へ向き直る。

「…………なんだい、聞きたいことって」

415宗像征爾『アヴィーチー』:2022/10/18(火) 13:37:04
>>414

逃げていく女を一瞥し、目の前の相手に視線を移す。

「いや――俺の用事は終わっている」

感情的なカリヤとは対照的に、何気ない口調で返す声色は、
限りなく淡々とした響きを伴っていた。

「この辺りで落とした『写真』について聞こうと思っていた」

おもむろに腕を伸ばし、『それ』を拾い上げる。

「だが、見つかったらしい」

探していた物は、女の足元に落ちていたのだ。
今まで気付かれなかったのは、
話に気を取られていたせいだろう。
表面を拭い、汚れを軽く払い落とす。

「どうやら邪魔をしたようだな」

       スッ

「――申し訳なかった」

女に向き直り、詫びの言葉と共に一礼する。

416カリヤ『タイプライター・トーメント』:2022/10/18(火) 20:13:23
>>415
「『写真』?
………じゃあきみは、本当に用事があって声を掛けてきただけ?
あははぁ………なぁんだ、本当に私の邪魔しに来た、まともな人かと思っちゃったよ」

律儀に頭を下げる宗像を物珍しげに観察する。
そして、にんまりと悪い笑みを浮かべた。

「ねぇ、今拾った『写真』。
それって何なんだい?
私は『カリヤ』という。 わけあって(本当は無いけれど)さっきの女の子を取材してたんだ。
きみのおかげで逃げられちゃったのは事実なんだからさぁ〜
その『写真』。 それって何なのか教えてよ。
普通は写真を持ち歩いたりしないよねぇ。
どんな『物語』(ストーリィ)があるのかをさぁ〜〜」

下手に出たのを後悔するほどに、馴れ馴れしく絡んできた。

417宗像征爾『アヴィーチー』:2022/10/19(水) 04:24:47
>>416

これまで顔を合わせた事はなく、互いに初対面だ。
だが、カリヤの年齢によっては、
男の風貌に見覚えがあったかもしれない。
『朱鷺宮笑美』のように、
当時の報道を知る人間は少なからず存在する。

「――『宗像征爾』だ」

しかし、その事実が明確に認識できるのは、
カリヤよりも上の世代になるだろう。

「それで気が済むなら話してもいい」

手の中で『写真』を引っくり返し、表側をカリヤに見せる。
若い女が微笑みながら写っていた。
概ねカリヤと同年代だろう。
フィルムカメラで撮られた物らしい。
入っている日付は二十年以上前だ。

「当人にとって掛け替えのない記憶でも、
 長い時間が経てば薄れて消えていく」

「こいつの姿を忘れないために『写真』を持ち歩いている」
 
「逆に、思い出したくもない記憶は、
 いつまでも頭の中に焼き付いて離れない」

その話し方は断片的で、
聞く者に読み取りづらさを感じさせる。
刑務所で過ごしていた期間、
外部と交流を持った事は一切ない。
服役を終えて戻ってきた時、
社会の変化から取り残されたのみならず、
適切な会話の感覚さえも大きく欠落していた。

418カリヤ『タイプライター・トーメント』:2022/10/19(水) 17:50:19
>>417
「宗像さんかぁ。うん、話してよ。
きみの話が聞きたい。
……ふうん、古い写真だねぇ。
この人はきみの恋人? 昔に亡くなったとか、そーいう話しかい?」

写真を覗き込み、日付を見る。
宗像の言葉に耳を傾けながら遠慮のない言葉で問う。

「ふんふん、それで?
なにか奥行きを感じさせる話だねぇ」

続きを促すようにじぃと宗像の顔を見る。

419宗像征爾『アヴィーチー』:2022/10/19(水) 23:52:03
>>418

カリヤと向き合う瞳に、感情の色は見受けられない。
ただ、虚無的な光のみが宿っている。
その目線は近くを見ているようで、
どこか遠くを眺めている風でもあった。

「もう『終わった話』だ」

付け加える事はないというように、『写真』をポケットに戻す。
自身の感覚として、既に『説明』は済んでしまった。
後に残るのは、『どう解釈するか』という問題だけだ。

「『続き』はない」

現代において、大抵の調べ物に不自由する事はなくなった。
その気があれば、詳しく調べる事は難しくないだろう。
本人に尋ねるより、よほど要領がいいかもしれない。

「だが、『今も続いている話』がある」

カリヤから視線を外し、展望台の向こう側を見やった。
この町の中に、『五人を殺したスタンド使い』が紛れている。
少なくとも、その可能性は否定できない。

420カリヤ『タイプライター・トーメント』:2022/10/20(木) 00:52:44
>>419
「その『終わった話』が聞きたいんだよぉ〜ッ!
結論だけじゃあ『ストーリィ』じゃあないッ!
全然何もわかってないぞ、私はぁ〜ッ!」

視線を外す宗像を追うように体全体で回り込み、
身長差から両手を上げて宗像の目の前でブンブンと振る。

「私は空気が読めないし、行間も読まない!
ただ知りたいだけなんだ、知らない話を!
気になるじゃあないか! このままじゃあ生殺しだよッ!
責任取ってもらうぞッ!責任をさぁ〜!」

無責任な事を言いながら、宗像の気をひこうと周りをぐるぐると回る。

「何、まだ『話』があるのかい?
それじゃあ、そっちから聞こうか!
勿体ぶらずに話してよッ!ほら!」

自認どおりの態度で、目をギラギラさせて宗像を見つめた。

421宗像征爾『アヴィーチー』:2022/10/20(木) 01:36:37
>>420

カリヤを見下ろす瞳に、若干の『羨望』が混じる。
脇目も振らず、ただ一つを追い求める『熱意』は、
かつて自身が持っていた物だ。
そして、今は失われた。

「この町の『廃ビル』で、
 『四人の死体』が見つかった事件がある」

それが騒がれたのは、少し前の話だった。
報道はされていたものの、それなりに時間が経った事で、
世間の話題に上る機会は目に見えて減っている。
だが、関係者達にとっては、『まだ終わっていない』。

「――丁度『あの辺り』だ」

淡々と言葉を続けながら、『現場』の方向を指差す。
町の外れの方角だった。
巨大な墓標のように佇む『廃墟』が小さく見える。

「死んだ四人の中に、俺の『知り合いの知り合い』がいた」

『アリーナ』の一派である『桜島派』に属する『吾妻常喜』。
奴には聞いておきたい事がある。
いずれ折を見て、連絡しなければならない。

「そいつは個人的に事件を調べている」

吾妻は『復讐』を考えていないと言った。
ただ『黙っている気はない』と。
あるいは『理由』を知りたいのか。

「俺も『そうしている』」

カリヤからしてみれば、
およそ『中身のある話』とは言い難いだろう。
しかし、『コミュニケーションの不得手』は、
長い年月を掛けて染み付いてしまった。
今になって矯正する事は、もはや『不可能』と言っていい。

422カリヤ『タイプライター・トーメント』:2022/10/20(木) 21:33:02
>>421
「ふぅん、『四人の死体』?
あっちの方、『廃墟』のあたりで、きみの知り合いの知り合いが亡くなったんだ」

宗像の視線につられて外を見る。
そうしてから、スマホを取り出して事件の詳細を調べる。

「そいつって、きみの『知り合い』の事?
あははぁ、宗像さん。きみ、話が下手だねえ」

スマホに目を落として記事を読みながら、
ずけずけと言う。
そして、宗像の口調を真似て、スマホから視線を上げて大真面目な口調で言う。

「そっか。それじゃあ、私もそうしよう」

423宗像征爾『アヴィーチー』:2022/10/21(金) 06:32:16
>>422

事件の発端となったのは、
五人の大学生が行方不明になった事だった。
その内の四人は死体で見つかり、
一人は未だに見つかっていない。
警察の捜査も進展していないようだ。

「――――そうか」

カリヤに返したのは、
『肯定』とも『否定』ともつかない一言だった。

「一つだけ聞かせてくれ」

『犯人らしい者』の素性は聞き及んでいる。
だが、『その話をもたらした者』にも、
腑に落ちない点が存在する以上、鵜呑みには出来ない。
現時点においては、
どちらも『確実な根拠』に欠けていると言えるだろう。

「あんたなら、この一件をどう見る?」

記事を読み終えたカリヤに『所感』を尋ねる。
俺個人の視点には、既に『先入観』が混ざってしまった。
全体を客観的に俯瞰するためには、
完全な『第三者』の見解が必要だ。

424カリヤ『タイプライター・トーメント』:2022/10/21(金) 21:29:33
>>423
「どう見るって言われてもなぁ。
私は読み専だから、話を作るのは苦手なんだ。
だけど、パターンとしては……そうだな。
その残った一人が犯人じゃあ意外性がないよね。
きっと、なんらかの第三者!
それが、四人を死に至らしめた事故か……あるいは事件を起こしたんだよぉ。
そして、残った一人は第三者に捕らえられている。
そんなところじゃあないかなぁ?」

考え込みながら、なんとなく思いついた事を話す。

「私に求めてた事って、こんな感じでいいのかい?
その事件について、もっと教えてくれたら色々話ができるんだけど」

425宗像征爾『アヴィーチー』:2022/10/22(土) 05:01:14
>>424

死体が『四人分』しかない点は、確かに不可解だった。
別の場所で死んでいる可能性もなくはないが、
それなら死体が出てくるのが自然だ。
仮に生きているなら、
何らかの手段で自分の生存を伝えるだろう。
伝えたくないか、伝えられないか。
どちらかという事になる。

「有り得る話だな」

熊野は『五人が死んだ』と言う。
全員が『鈴蘭の怪物』に殺され、自分だけが逃げ延びたと。
その部分に関しては、
『フォー・エヴァ・ロイヤル』も同意した。
しかし、あくまでも状況から予想しただけに過ぎない。
全てを疑うのなら、
残った一人は生きている可能性も考えられる。

「『目撃者』がいる」

「『得体の知れない存在』に襲われて、
 その場から逃げ出したらしい」

「そいつが言うには、それが『犯人』だという事だ」

淡々と口に出していた言葉を切り、カリヤを見つめた。
この事件にはスタンドが関与している。
『スタンド使いではない人間』が関わるのは好ましくない。

「――信じられるか?」

カリヤの反応を確認するように、そう問い掛けた。

426カリヤ『タイプライター・トーメント』:2022/10/22(土) 15:07:38
>>425
「『得体の知れない存在』」

「あははぁ、面白そうだねぇ、それ。
私は面白そうな話なら、フィクションでもノンフィクションでも大好きだけど、
うーん、信じるかどうか?だよねぇ」

首を捻り、宗像の断片的な話からとりあえずの答えを出そうとする。

「私からしたら何とも言えないかなぁ。
宗像さんにその話をした人は『信用できる人』かい?
話を信じるかどうかは、語り手の信用だよ。
語り手が信用できないなら、いくら本当っぽい話でも信じたくはないよねぇ。
ただ、嘘をつかなそうな……信じるに値する相手なら、
それがどんな突拍子もない事でも信じちゃうなぁ、私なら」

427宗像征爾『アヴィーチー』:2022/10/22(土) 16:34:57
>>426

カリヤの言葉を受け、少しの間を置いて答えを返す。

「『ある面』では信用に値する」

『スタンドの言葉』には一定の信頼性がある。
本体よりは、まともな人格を備えているからだ。
また、『魂そのもの』に近いスタンドが『嘘をつく』というのも、
やや考えにくい事だった。

「その人間と俺は『赤の他人』だ」

「しかし、ある程度の『性格』は分かっている」

『熊野風鈴』との二度の対面を、頭の中で思い起こす。

「そいつは『危険』を好み、
 『安全ではない場所』に踏み込みたがる」

「『刃物』で威嚇されても平然としていたが、
 『殺す』と宣言された時には身構えていた」

『アヴィーチー』が『鋸』を振り上げた時には、
身じろぎ一つしなかった。
しかし、『殺すつもりで攻撃する』と警告した時は、
スタンドを発現して距離を取った。
『危険』を求めているが、死にたがってはいない。

「少なくとも『自殺志願者』ではない」

それが熊野という人間に対する一つの見解だった。

428カリヤ『タイプライター・トーメント』:2022/10/22(土) 22:54:56
>>427
「ふーん、良くわからないなぁ。
でも、宗像さんが物騒だって事はなんとなくわかったよ。
殺すと宣言したのはきみだよねぇ? どう考えても」

宗像の心の内を覗くようにその顔を覗き込む。

「私は話が面白い人が好きなんだ。
そういう意味では宗像さんはタイプじゃあないけれど、
しかし、面白い話を持ってそうって意味では興味がある。
こういう時はどうしたら良いのかな?
そうだなあ、私の話でもしようか」

「この街には奇妙な話が多い。
さっきの彼女は、この建物の上から女の子が飛び降りて、そして元気に歩き出したのを見たんだって。
見たし……あははぁ、動画も撮ってたんだよねぇ。 びっくりだよ。
そういう話をね。色んな人から聞くのが好きなんだ。
私は薄っぺらい人間だけど、面白い『物語』を知る時だけはそれを忘れていられる」

滔々と語りながらスマートフォンのカバー裏から少しよれた紙を取り出す。
真っ白な長方形の紙には『カリヤ』という文字と、そして電話番号とメールアドレスが載っている。

「はい、私の名刺。結構レアなんだよ。
私は職業柄、ちょっとは記者とかにも顔が効くし、
そういう『調べ物』も、まあまあ得意なんだ。
一緒に調べさせてよ。面白そうな『物語』に繋がりそうな、これは第一歩だ」

429宗像征爾『アヴィーチー』:2022/10/23(日) 08:15:19
>>428

覗き込むカリヤを見下ろし、その瞳を見つめ返す。
探るような視線ではない。
ただ、ありのままの姿を受け止めるためだけのものだった。

「俺も似たようなものだ」

刑期を終えて街に戻ってから、
『生き甲斐』と呼べるものがない。
いや――実際には、復讐を終えてしまった時点で、
生きる意味はなくなっている。
それでも服役中は、『務めを果たす』という意義があったが、
それさえも今はない。
俺に残されているのは仕事だけだ。
仕事をしている間だけは、空虚な時間を忘れていられる。
『仮初の意味』に過ぎない。
だが、何もないよりは幾らかの救いがある。

「『飛び降りても死なない人間』か」

ここから落ちれば十中八九命はない。
幸運な偶然が起きたという可能性もなくはないが、
確率はゼロに等しいだろう。
普通は『見間違え』か『狂言』だと考えるのが自然だ。
しかし、普通でなかった場合、話は違ってくる。
『自分自身』という最も身近な心当たりが、
その事実を裏付けていた。

「そういう事もあるのかもしれないな」

名刺を受け取り、その内容を一瞥してからポケットにしまう。

「生憎、『電話』を持ち歩いていない」

以前に使っていた携帯電話は焼失している。
使いこなせない代物だった事もあり、
買い換える気にならなかった。
不便といえば不便だが、持っていなくても死ぬ事はない。

「『仕事用の連絡先』を教えておく」

「――『配管工』だ」

口頭で『勤務先の電話番号』を伝える。

「あんたが関心を持ちそうな話は多少あるが、
 それを始めると長くなる」

        ザッ

「俺の事を忘れていなければ、いつか教えよう」

そう言い残し、踵を返してカリヤの前から立ち去っていく。

430カリヤ『タイプライター・トーメント』:2022/10/25(火) 21:45:58
>>429
「ふーん、まだ、面白そうな『話』があるのかい?
それじゃあ帰すわけにはいかないなぁ〜。
話したくなるまで何時間でも……ム!」

別れを告げる宗像に立ち塞がろうとしたが、
先程の女性が警備員と共に現れたのを見て回れ右をして、
ばたばたと逃げていった。

431度会一生『一般人』:2022/10/29(土) 14:12:52

顔に『古傷』のある男が、フードコートの一隅に座っていた。
握りの部分に銀の鷲が付いた黒檀の杖が立てかけてある。
テーブルの上にはスマホが置いてあり、
『チェス』の対局中のようだ。

「どこから攻めていくか…………」

(『アリーナ』を糾弾する動画――――あれは『使える』)

頭の中で計画を練りながら、駒を動かしていく。

       ポーン    クイーン
「…………『最弱』でも『最強』は討ち取れる」

最弱の『ポーン』で最強の『クイーン』を倒す。
度会一生は、この戦術を好んで用いる。
『プロモーション』というルールでは、
ポーンをクイーンに昇格させる事も出来るが、
あくまでも『最弱』のままで『最強』に勝たねばならない。

432度会一生『一般人』:2022/11/01(火) 13:48:06
>>431

「――――とはいえ、
 いきなり『クイーン』を狙いに行くのは悪手だ」

スマートフォンを上着のポケットに戻し、
代わりに『杖』を手に取る。

(また『憂』に動いてもらう他ないか…………)

       コツ コツ コツ…………

(それとも『仲間』を増やすか?)

(いや……あまりにもリスクが高すぎる……)

(本当に信用できる『スタンド使い』は『憂』だけだ)

               コツ コツ コツ…………

後姿は小さくなり、やがて消えていった。

433小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/02/21(火) 01:42:22

フードコートの片隅に、『喪服の女』が静かに腰を下ろす。
膝の上には、黒いハンドバッグが置かれた。
ツバの広いキャペリンハットの下で、周囲に目線を配る。

    ……『誰か』を待っているようだ。



(※知人という事にして頂いて大丈夫です)

434朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』+妹:2023/02/22(水) 20:02:38
>>433
「すいませーん。遅れましたー。」
聞き覚えのある声が聴こえてくるだろう。
声の聴こえる方からやってきたのは、学生服を着込んだ少女。小石川にとっては見覚えのある少女だろう。

「本日はどうもありがとうございます。
 父も母も同窓会の予定が外せなくて…
 お世話になりますー。」
そう言って歩いてくる少女は
笑美の娘、涙音



「こんにちはー!ゆらです!」
涙音に連れられてやってきた更に小さな少女だ。

…笑美から同窓会の旅行があって外せないため
少し二人の世話になって欲しい…という連絡を小石川は受けているかもしれない。

435小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/02/22(水) 21:16:51
>>434

そちらに視線を向けた時、ちょうど二人と目が合った。
『待ち人』が来たようだ。
柔らかい微笑を浮かべ、涙音に会釈を返す。

  「いえ……こちらこそお会い出来て嬉しいですよ」

きっかけは笑美から受けた連絡だった。
旅行で不在の間、娘達を預かって欲しいと。
滅多な事は起こらないとは思うが、心配する気持ちも理解できる。
友人である笑美からの頼みを断る理由はなく、涙音や由楽とも話をしたいと思っていた。
だから、二つ返事で引き受ける事にしたのだ。

  「はじめまして――『小石川文子』です……」

簡単な自己紹介と共に、由楽に声を掛けた。
彼女の事は笑美に聞いていたが、実際に会うのは初めてだ。
預かるに当たって、どういう子なのかを理解しておく必要がある。

436朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』+妹:2023/02/22(水) 21:31:16
>>435
「どうもすみませんねー。
 うちの母は結構心配性で…
 私が居るから大丈夫、とは思うんですけどねー。」
そう言って頭をかく涙音。
とは言え彼女は彼女で楽しみにしていたふうである。

「わー、おねーさんがおかぁさんのおともだちですねー。
 こいしかわ、さん…」
そう言ってじっと小石川を見る。

「まっくろでカラスさんみたいです。
 カラスのおねーさん!」
そう言って彼女の服にポンポン触ってくる。
どうやら由楽は彼女の服装に興味津々のようだ。

437小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/02/22(水) 22:10:07
>>436

もし自分にも娘がいたなら、きっと笑美と同じように心配していただろう。
しかし、自分には子供がいない。
二人を預かる事を了承したのは、母親になりたかったせいでもあったのだろうか。

  「――ふふ……」

黒ずくめの服装は、確かに『烏』を連想させるかもしれない。
喪服に触れる由楽を失礼だとは思わなかった。
無邪気な振る舞いを見ていると、自然と心が解きほぐされ、頬が緩む。

  「ええ、私は『由楽さんのお母さん』のお友達です」

  「……どうか仲良くして下さいね」

由楽に告げた後、改めて二人に向き直る。

  「今日は、これから『夕食の買い物』をしようと思っているのですが……」

  「何か食べたいメニューはありますか?」

材料さえ揃っていれば、大抵の料理は作れる。
二人の希望に合わせた食事を用意するつもりだ。
誰かをもてなせるのは、自分にとっても楽しい事だった。

438朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』+妹:2023/02/22(水) 22:39:53
>>437
「カラスのおねーさん、とても楽しそうなのです!」
由楽はそう言って無邪気に笑う。
どうやらすぐに慣れてしまったようだ。

「よかったー。由楽はすぐに小石川さんに懐いたみたいですね。」
その様子を涙音は嬉しそうな顔で見ている。

「この調子なら由楽ともお友達になれそうな気がします。」
そう言って由楽を撫でる。
「うー、もちろんルネおねーちゃんも大好きだよー!」
そう言って涙音の服もポンポン叩いている。

「夕食のお買い物でしたね。
 それだったら…って、由楽のリクエストを優先しましょうか。」
そう言って涙音は由楽の顔を見る。

「ゆらが言っていいんです?
 それならゆらは」
そう言って考える。

「ゆらはカレーが大好きです!
 おかぁさんのカレーも好きです、でも
 カラスのおねーさんのカレーも食べてみたいです!」
キラキラした目で由楽は小石川の顔を見ている。

439小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/02/22(水) 23:13:27
>>438

涙音と由楽の希望を聞いて、『夕食のメニュー』に考えを巡らせる。
それが心から楽しいと感じられ、穏やかな微笑みが零れた。
今の時間だけは、まるで二人の母親になったかのように。

  「では、今夜は『チキンカレー』を作りましょう。
   『バターライス』を添えて……」

カレーとバターライスは相性が良い。
白米の代わりに用いる事で、より風味豊かな味わいを生み出せる。
由楽の年齢を考えると『甘口』がいいだろう。

  「由楽さんは『トマト』はお好きですか?」

実家の農園で育てられた『フルーツトマト』が、自宅に届いていた。
水分を飛ばして甘味を凝縮した『ドライトマト』を使うつもりだが、
トマトは好き嫌いが分かれやすい。
食べて欲しいとは思っているが、もし苦手なら入れない方向でレシピを検討する。

440朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』+妹:2023/02/23(木) 00:19:02
>>439
「わーい!嬉しいです!
 おねーさんのカレーはどんな味がするんです!」
ニコニコしながら答える由楽。
だいぶカレーが好きらしいことがうかがえる。

「それじゃあ私もカレーを作るのお手伝いしましょうか。
 ある程度なら出来ますよ。」
そう言って小石川の後をついていく涙音。
炒飯など簡単な料理ならば作れるのだ。

「え、トマトです?
 うーん…ちっちゃいトマトなら好きです。」
そう言って小さく指で丸を作る。
プチトマトのことを言っているのだろうか。

「ちっちゃいトマトは甘くて美味しいです。
 ほかにも美味しいトマトあるんですかー?」
そこまで嫌いではなさそうだ。
フルーツトマトも気にいるかもしれない。

441小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/02/23(木) 00:51:37
>>440

手伝いを申し出る涙音に向き合い、口元を綻ばせる。

  「ありがとうございます。
   せっかくですから……三人で作りましょう」

       スッ

  「――行きましょうか」

席から立ち上がり、二人と共にモール内の食料品店に足を運ぶ。
買い物かごを手にして、カレーに使う材料を吟味していく。
メインの食材に選んだのは、骨付きの鶏もも肉。
骨から染みた出汁が、より味に深みを与えてくれる。
育ち盛りの二人にとっては、食べ応えもあるだろう。

  「由楽さんは『フルーツトマト』を知っていますか?
   とても甘くて美味しいトマトです……」

  「水分の少ない畑で作ると、実は小さくなる代わりに、
   たくさん栄養が詰まったトマトに育つんですよ」

人間も同じ。
苦しさや悲しさを乗り越えるからこそ、他の人に対しても優しくなれる。
自分が幼い頃に、両親から聞いた言葉だった。

  「……涙音さんには食べていただいた事がありましたね」

『夏の魔物事件』後の食事会。
その時に出された料理の中には、実家のフルーツトマトを使った『マリネ』があった。
笑美と涙音は、それを口にした事がある。

442朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』+妹:2023/02/23(木) 01:04:27
>>441
「そうですねー、由楽にはどんなお手伝いをしてもらいましょうか。
 由楽は結構お手伝いが好きみたいなんですよね。」
子供の頃は割とよくあることかもしれない。
由楽は積極的にお手伝いをしているらしい。

「たのしみたのしみ!」
そういいながら由楽は後をついていく。
涙音も後に続いていく。由楽は小石川にくっつくようについていっている…

「フルーツ?フルーツというのはお菓子?ですか?
 カレーといっしょだと美味しいんです?」
初めて聞いたようで興味津々だ。

「そういえば食べたことがありますね。
 お姉ちゃんが保証するわよ由楽。
 小石川のお姉ちゃんのお野菜は美味しいわよ。」

「おねぇちゃんは先に食べてたの?ずるいー。
 とっても気になる!」
「心配ないわよ。すぐに食べられるから。
 楽しみはその時にとっておくのがいいでしょ?」
姉妹はトマトに関することでとても盛り上がっている。
ふたりともとても仲が良さそうだ。

443小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/02/23(木) 04:02:16
>>442

      コツ コツ コツ……

傍らに寄り添う由楽が遅れないように、歩調を緩めて店内を歩く。

  「『フルーツ』は『果物』という意味です……」

  「『果物みたいに甘いトマト』ですよ」

こうして由楽と話していると、幼い頃の自分を思い出す。
『トマトは野菜なのか果物なのか』という質問をして、父と母を困らせた事があった。
実家の農園で育てられるトマトが、とても甘かったからだ。
両親の答えは『人によって違う』というものだった。
事実、トマトは非常に区別の難しい作物であり、日本では野菜に含まれているが、
果物として扱う国も存在している。

  「由楽さんには――『皮剥き』をお願いしましょう」

      ソッ

  「……『切る』のは任せて下さい」

そう言いつつ、玉ねぎをカゴに入れる。
『玉ねぎの皮剥き』なら、何も危ない事はない。
それでいて調理には必要な作業なので、手伝ってもらうには丁度いいだろう。

  「お二人は……とても素敵な姉妹ですね」

          ニコ……

二人のやり取りを眺め、その様子を微笑ましく思う。
そして、彼女達と同じ時間を過ごせる事を嬉しく感じた。
自分を信頼して子供達を預けてくれた笑美に、心の中で深く感謝する。

444朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』+妹:2023/02/23(木) 11:05:06
>>443
「おー、それはとても甘いトマトなのですね!
 ぜひたべてみたいです!
 おねーちゃんもそういってるなら、期待します!」
興味津々にフルーツトマトの話を聞く由楽。

「まかせてください!
 ゆらはかわむきがとても得意です!
 おかぁさんもほめてくれます!」
どこか自慢げに由楽は語る。
その様子を隣で眺める涙音。

「えぇ、それはもう…
 たまに二人で遊んだりするんですよ。
 えーと、例えばゲームとか。」

「ちなみにゲームは、ゆらのほうがうまいです!」

「いや、由楽が得意なのはレースゲームで
 格ゲーは私のほうがうまいからトントンでしょう?」

「ざんねん!レースゲームのほうがすごいのでゆらのほうがうまい!それでキマリです!」
二人は楽しそうに語っている。
二人で一緒にゲームをして遊び、それもとてもいい思い出となっているようだ。
理想的な姉妹、にも見えるかもしれない。

445小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/02/23(木) 20:46:29
>>444

  「ふふ――凄いですね……」

話の腰を折らない程度に相槌を打ちながら、二人の会話を眺める。
何気ない光景、当たり前の日常。
最近、それを忘れかけていたのかもしれない。
周囲を気に掛けるあまり、自分自身を蔑ろにしていた。
精神的に疲れていたのだ。
しかし、だからこそ気付く事が出来たのだろう。
『普通の幸せ』の大切さに。

  「いつか私にも教えてくれますか?」

そして改めて思う。
こんな娘達を持って、笑美は幸せだと。
そして、彼女達と『友人』でいられる事は、自分にとっても大きな幸せだ。

  「――レジに行きましょうか」

その他の材料を入れていき、重くなった買い物かごを持って、会計に向かう――。

  ……………… ……………… ……………… ……………… ………………

買い物を終えた三人は『小石川家』に到着した。
由楽は初めて訪れる場所だが、涙音は『三度目』になるだろう。
キッチンに立ち、調理の準備を整える。

  「由楽さんは、玉ねぎの皮剥きをお願いします」

さっき言った通り、由楽には皮剥きをしてもらう事にする。

  「……涙音さん、もし難しそうな時には手伝ってあげて下さい」

由楽には聞こえないように、涙音の耳元で小さく囁く。

           ト ン

自分はまな板と包丁を用意し、骨付き肉の下ごしらえを始めた。

446朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』+妹:2023/02/23(木) 21:03:13
>>445
「うーん、それならパズルゲームでどっちがうまいかで決める?
 それなら文句ないでしょう?」
「もちろん!ゆらはにごんなし!」
そんなふうに微笑ましい会話を繰り広げた二人。
そして小石川に対しても

「いいですよ。この際一緒にゲームしませんか?
 きっと由楽も喜ぶと思いますけど…」
「はい!ゆらはとてもよろこびます!
 ゲームはひとが多いほど楽しいです!」
ふたりとも優しく声をかけた。
いずれ楽しいことがまたありそうだ。
そんな雰囲気を醸し出しながら、二人もレジへと向かう。

場所は代わって小石川家。
「なんだかすっかり馴染みになってきた気がします。」
涙音が来るのは三度目だ。
最初にこの家に来たときはとても緊張したが
今はもうなれてきた感じがした。

「おじゃましますー!」
由楽には緊張というものがなさそうだ。
始めてきたにも関わらず、すぐに入っていった。

「あーい!かわむきの天才のゆらにおまかせですー!」
由楽は自信たっぷりにいいながらキッチンの前に立つ。

「…まぁ由楽はちょっとぼんやりしてるところがありますから。
 目は離せませんよ。」
軽く苦笑いしながら、涙音は由楽の視線に合わせる形で隣に立つ。

「ちょっと届かなそうだから、踏み台が必要ですかね。」
キッチンの高さは由楽には少々高いかもしれない。

447小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/02/23(木) 21:54:27
>>446

ここに来た人間は少なくないが、涙音と笑美は特に多い。
二人とも三回だ。
『慣れる』のも自然な成り行きだろう――。

  「そう――ですね……」

涙音に言われて、由楽の身長に気付いた。
当然ながら、キッチンは大人の背丈に合わせた作りだ。
小さな子供が使いやすいようには出来ていない。

  「奥の部屋に踏み台があります……。
   涙音さん、持ってきていただけますか?」

  「『上に置いてあるもの』は、除けて下さって構いません」

教えた場所には、木製の踏み台があった。
温かみを感じさせる天然木を使用したシンプルなデザイン。
ただ、それは足場としては使われていない。
天板の上には、一輪挿しの花瓶が飾られていた。
その為の台座として使われているのだ。

  「――少しだけ待っていて下さいね」

        トン トン トン

由楽に声を掛けながら、鶏肉を食べやすい大きさに切り、塩コショウで適度に下味を付ける。
コンロには、ホーロー鍋とフライパンがセットされていた。
鍋でカレーを煮込んでいる間、フライパンでバターライスを作るつもりだ。

448朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』+妹:2023/02/23(木) 22:14:56
>>447
「わかりましたー。
 今から持ってきますね―。」
涙音は言われるまま奥の部屋の方へと向かっていった。

たしかにそこに踏み台はあったが
その上にあるのは花瓶のようだ。

「踏み台ではなく花瓶置きにか…
 結構風情があるなー。」
そんなことをつぶやきながら
涙音は花瓶をとりあえず安全なところに置き、
踏み台を抱えて戻ってくる。

「ふーん、ゆらのおしごとはこれからです!」
待つことは特に気にせず、由楽は隣でじっと待っている。

「ほらー、由楽。
 踏み台持ってきたよー。
 あ、花瓶は部屋の別のところに置いときましたー。」
「やっときたー!
 いいにおいがしてきたから、はやくおしごとしたいの!」
戻ってきた涙音は踏み台をキッチンに置く。
ちょうどいい高さのようだ。

449小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/02/23(木) 22:44:46
>>448

陶器製の花瓶は、壊れないように安全な所に置かれた。

  「――ありがとうございます……」

踏み台を手にして戻ってきた涙音に、軽く目礼を送る。

  「皮剥き名人の由楽さん――」

        ニコ……

  「よろしくお願いしますね」

改めて、由楽に皮剥きを任せる。
それからフライパンで鶏肉の両面を焼く。
表面に焼き色が付くと同時に、香ばしい匂いが漂う。

  「涙音さん、のちほど『バターライス』を作ってみていただけませんか?」

  「『手順』をお教えしますので……」

作り方としては、さほど難しくはない筈だ。
『ある程度なら出来る』と聞いていたので、問題ないと判断した。
この機会にレシピを覚えてもらえれば、笑美の為にもなるだろう。

450朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』+妹:2023/02/23(木) 23:08:03
>>449
「あの花瓶、手入れされてるみたいですね。
 雑に扱うわけにも行かなくって。」
そう言って微笑んだ。

「がんばります!
 ゆらのうでまえみせるんです!」
元気いっぱいに声を出し、玉葱の皮を剥き始めた。

「たまねぎさんのこうげきにもまけないですー!」
皮むきは子供らしく多少おぼつかないものの
割と丁寧に作業している。言うだけのことはあるようだ。

「私はバターライス担当ですか。
 いいですよ!やります。」
涙音も手を洗いながら応じる。

「炒飯はよく作りますからね。
 そういうタイプなら私は余裕です!」
自信満々に涙音は答える。
その様子は妹の方に似ていた。

451小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/02/23(木) 23:43:42
>>450

綺麗に焼き目が付いた鶏肉を取り上げ、ひとまず小皿に移す。

  「――最初にフライパンでバターを溶かします。
   それから、そこにお米を入れて、弱火で炒めて下さい。
   一粒一粒に、まんべんなくバターを馴染ませるように……」

            スッ

  「充分に炒めたところで水を加えて、塩を一つまみ……。
   今日は――ターメリックも使いましょう」

            スッ

  「……あとはフライパンに蓋をして、しばらく炊くだけです」

必要な材料を用意しながら、涙音に手順を説明する。
バターライスにも色々あるが、今回は生米から作る方法だ。
炒飯よりは、どちらかというと土鍋御飯に近いかもしれない。

  「由楽さん……とても上手に出来ていますよ」

涙音に語り掛けながら、由楽の様子にも気を配る。
丁寧な仕事振りを見て、心の中で安堵した。
この調子なら、横から手を出さなくても大丈夫だろう。

452朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』+妹:2023/02/24(金) 00:13:14
>>451
「ふーん、なるほどー…
 大丈夫です。お任せください。」
どうやら彼女には余裕なようだ。

「炒飯よりも簡単に、やってみせますよ。」
と言いながら手順通りバターを溶かして
米を炒める。

「ふふん、ゆらはめいじんです!
 このままいっぱいむいてみせるんです!」
得意げに由楽は玉ねぎを剥いていく。
あまり落ち着いてる感じではないが大丈夫そうだ。
とは言え、ぐらつきそうな台の上だと少々危ないかもしれない。

「由楽。足元にも気をつけてね―。」
一応涙音にも気を配っているようだ。

453小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/02/24(金) 00:34:02
>>452

もし倒れそうになった時は、由楽の身体を支えるつもりで横に立つ。

  「――涙音さん、お願いします……」

また、涙音にも声を掛けておく。
とはいえ、彼女は何も心配は要らなそうだ。
そのように、しばらくの間、由楽と涙音の様子を見守っていた。
普段は一人で暮らしている家が、今日は少しだけ賑やかな雰囲気に包まれている。
そう感じるのは、一緒に料理をする二人の存在が、寂しさを埋めてくれているせいなのだろう。

  「……由楽さんがお手伝いしてくれたので、とっても助かりました」

  「ここからは――私に任せて下さいね」

      トントントントントン

由楽に皮を剥いてもらった玉ねぎと、モールの食料品店で買っておいた生姜を、
手際良くみじん切りにする。

          ジュゥゥゥ……

鍋に油を敷き、刻んだ玉ねぎと生姜を炒め始める。
色が変わったら先程の鶏肉を加え、カレー粉・トマトピューレ・ガラムマサラを足して、
更に炒めていく。
そこに水を注ぎ、コンソメとココナッツミルクを入れて火に掛け、ドライトマトを投入した。
これらのトマトは、実家の農園で育てられたものだ。
あとは、アクを取り除きながら煮込めば、『骨付き肉のチキンカレー』が完成する。

  「『出来上がり』まで30分ほど掛かりますが――」

  「その間……何をしましょうか?」

  「ゲームはありませんが、『トランプ』なら……」

ゲームの話題が出ていたが、生憎ゲーム機の類は置いていない。
トランプくらいなら、この家にもある。
三人で出来る遊びといえば、それくらいだろうか。

454朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』+妹:2023/02/24(金) 01:07:45
>>453
「お騒がせしてますね。由楽が。
 でもまぁ…大丈夫そうですね。」
小石川の様子を見て、涙音は安堵した表情で言う。
まるでもう一つの家族のように楽しげな空気がそこにはあった。

「ゆらのだいしょうりです!
 おねーちゃんよりうまくできましたです!」
「お姉ちゃんもバターライスをちゃんと作ったからね―?」
得意げな由楽に対し、軽く笑いながら答える涙音。
下準備は概ね完了したのである。

小石川の調理が始まり、
キッチン内からはいい音と、いい匂いが漂い始めてくる。

「いい匂いです。おなかがすきました!」
「こらこら、カレーは出来るまでちょっと待つんだよ。
 …小石川さんの作り方、色々参考にさせていただきますね。」
どうやら涙音はちゃんと調理工程を見てたようだ。
結構熱心なようである。

「トランプ、とはカードのことですね。
 ゆらはしってます!強いカードを集めるゲームです!」
トランプのことを聞いて軽く知る限りの知識を披露する由楽。
一応ゲームのうちの一つではある。

「じゃあトランプで遊びましょうか。
 しばらくやったことありませんでしたけど…
 久しぶりにやってみましょうかね。」
ふたりともトランプをやることに乗り気のようだ。
待つ時間も楽しくなりそうである。

455小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/02/24(金) 02:25:26
>>454

調理を行いつつ、小石川も涙音の腕前を見届ける。
彼女の所作から本当に慣れているのが分かった。
おそらく『仕上がり』は上々だろう。
バターライスが炊けるのも、数十分の時間は掛かる。
カレーの完成と同じタイミングで出来上がる筈だ。

           ピッ

キッチンタイマーを『30分後』にセットする。

  「――それでは『あちら』で……」

微笑と共に小さく頷き、二人をリビングに案内する。
そこは料理の匂いとは別に、芳しい香りが漂っていた。
涙音が良く知っている『ラベンダー』の芳香だ。
その大元になっているのは、一つのガラス瓶だった。
『アロマディフューザー』。
電気や熱を使わない『リードディフューザー』と呼ばれるタイプで、
アロマオイルが入った瓶の中に、数本の細長い棒を挿して使用する。
容器の中にあるオイルを棒が吸い上げ、香りを拡散させる仕組みだった。

  「……由楽さんに分かりやすいように『ババ抜き』をしましょうか」

               シャッ シャッ シャッ

二人と向かい合うようにソファーに座り、シャッフルしたカードを均等に配っていく。

  「『同じ数字』があったら、揃えて出して下さいね」

テーブルの上に、同位のカードを出していき、残った手札の束を由楽の前に差し出す。

               ソッ……

  「由楽さん――この中から『一枚』引いてくれますか?」

自分の手札に『ジョーカー』はない。
つまり、由楽か涙音が持っている事になる。
こればかりは『運』の問題だろう。

456朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』+妹:2023/02/24(金) 15:31:56
>>455
「了解です。それじゃ由楽もこっちに行こうか。」
由良を連れ、涙音は小石川の示すリビングの方へと向かっていく。

「この香りは…」
「なんだかとてもいいかおりがするんです!」
二人はリビングにあふれるかぐわしい香りをかいで
少しリラックスした気分になる。

見てみるとそれはアロマディフューザーだった。

「なんだか懐かしく感じますね、これも。」
かつて夏の魔物の騒動のときにあちこちで駆けずり回ったときを思い出した。
あのときはクリスマスの香りを漂わせていたものだろうか…

「それじゃあしょうぶです!
 ゲームはとくいなんです!」
早速由楽と涙音は席に座り、トランプをする体制に入る。

「ババぬきは…やるのはじめてですけど、
 とてもたのしそうです!」
そう言って由楽は言われたとおりカードを一枚引く。

「由楽もがんばってねー。
 私はもちろん『ズル』はしませんよ。」
そう言って涙音は微笑みかける。スタンドを使った覗き見など言語道断ということだろう。

(さて、こういうのも久しぶりだけど…)
涙音は目線を自分のカードに向けた。
…涙音の手にジョーカーのカードがあるのだ…。

457小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/02/24(金) 23:12:59
>>456

夕食の出来上がりを待つ間、リビングで三人による『ゲーム』が始まる。

  「……これは『ラベンダー』というお花の匂いなんですよ」

  「『私の好きな花』です」

由楽が引いたカードは――『スペードの10』だった。

  「最後まで『ジョーカー』を持っていた人の負け……。
   そういう『ルール』になっています」

次は小石川が涙音から引く番だ。
ゆっくりと、その指先が『ジョーカー』に伸びていく。
しかし、すぐには触れない。

  「――……」

      スゥッ

迷うように手を動かしながら、同時に涙音の表情を観察する。
そこからカードの予測を試みていた。
何か分かる事があるだろうか?

458朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』+妹:2023/02/25(土) 00:00:13
>>457
「この匂いは、私のお家でも嗅いだことがある気がしますね。」
「たしかに、おかぁさんがおみやげにかってきたのとおなじにおいです!」
二人は気づいた風である。
おそらく旅行に行った先のお土産。それと同じ香りがしたのかもしれない。

「ふんー!」
バレないように表情を変えてないのだろうか、
由楽の顔は常に自身有りげである。

「さて…」
じっと涙音は小石川の表情を見ている。
その様子はどこか緊張感がある気がする。

(すごく見られてる…
 うー、ポーカーフェイスはあんま得意じゃないかも…)
…ジョーカーがないならそこまで緊張感ある表情をすることもないだろう。
果たしてそれが演技か本気かわかるだろうか…

(触りそうだな―…)
指が動くたびに表情が少しこわばる。
バレてしまいそうだ。

459小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/02/25(土) 00:37:49
>>458

  「ええーーそれと『同じ匂い』です……」

  「同じ畑の種から育った花ですから……
   涙音さんと由楽さんのように『姉妹』なのかもしれませんね」

        ニコ……

室内を包んでいる豊かな香りは、確かに『旅行先』のものと同じだった。
あの『ラベンダー畑』で育てられた花から作られた精油。
考え方によっては、これも一つの『家族』と呼べるだろう。

  「……『これ』にしておきます」

      ソッ

穏やかな微笑を浮かべ、束の中からカードを引く。
躊躇なく引いたのは『ジョーカー』だ。
それを確認し、手札に加えた。
この時にも、涙音の表情を確かめておく。
『安心したような顔』をしているかどうか。

  「次は……涙音さんが由楽さんから引く番ですね」

そう言い置いてから、二人のやり取りを眺める……。

460朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』+妹:2023/02/25(土) 01:12:29
>>459
「姉妹ですかー。
 なんだか他人の気がしなくなりますね。」
「このにおいはだいすきなんです!」
ふたりともその匂いでとても和んだようだ。
ラベンダー畑もまた、一つの家族なんだろう。

「…(ふー、まさかババを引くなんてね…)」
小石川がカードを引いた時、涙音はどこか安堵したように見える表情だった。
一応気取らせないように振る舞っているのだが、隠しきれるものではないようである。

「おねーちゃん!いま、あんしんしてる!」
突然ビシッと指さしてくる由楽。

「え、いや別にそんなことはないって!」
びっくりした涙音は慌てて表情を引き締めた。

「ゆらはジョーカーをおそれないんです!
 おねーちゃんはびっくりしすぎ!」
そう言ってカードを見せてくる。

「言うじゃないの…
 負けないわよ!」
そう言って涙音はカードを由楽から引く。
8を引いたが…

(揃ってないな…)
カードの数は増えたままとなっている。
揃っていないらしい。

461小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/02/25(土) 01:44:12
>>460

姉の態度を鋭く指摘する由楽と、慌てふためく涙音の様子を、どこか嬉しそうに見守る。
こんな時間を過ごすのは、随分と久し振りに思えた。
二人と一緒にいられるのは、本当に楽しい事だ。

  「由楽さんは『皮剥き』だけではなく、『ババ抜き』も得意なんですね」

         クス……

全員がカードを引き、これで『一周』した。
現在、『ジョーカー』は涙音から小石川に移っている。
しかし、最後は誰の手に渡るかは、まだ分からない。
重要なのは『最終的に処理できるかどうか』。
そこに至るまでに、相手の『癖』を見抜いておく事が、『ババ抜き』のコツだ。

  「――由楽さん、どうぞ……」

        ソッ

カードの束を扇形に開き、再び由楽に差し出す。
当然、その中には『ジョーカー』が混ざっていた。
ちょうど『真ん中辺り』に差し込まれている。

  「……お好きなカードを選んで下さいね」

小石川の表情に、大きな変化はない。
静かに微笑んだまま、朱鷺宮姉妹を見つめている。
幼いながらに勘の鋭い由楽が引いたカードは、一体何だっただろうか……?

462朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』+妹:2023/02/25(土) 14:37:21
>>461
「ゆらにできないことはあんまりないです!」
得意げになりながら由楽は答える。
小石川に豊かな表情をよく見せつけているようだ。

「なので、カラスのおねーさんもみぬいてやるんですよ!」
そう言ってじっと由楽は彼女の顔を見た。

(…私は見る限りではわからないけど…)
涙音は彼女の様子を見るが、わからないようだ

(由楽は見抜いたりするのかな…)
そう思い、由楽の表情を見る。

「ちょっとまってくださいーね。
 さっきおねーちゃんにやったことをやってみるんです」
そう言って手をのばす。
どれにしようかと選ぶような動きを見せ、小石川の様子をうかがう。

「ねらいどおり、ねらいどおりですー。」
果たして彼女の表情を読み取らんとして

「こっちですー!」
ジョーカーの隣を引きに行くのだった。

463小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/02/25(土) 22:45:30
>>462

由楽の指が『ジョーカー』に触れかけた時、小石川の表情は微妙に変化していた。
それを彼女に取らせてしまっていいものかどうかという『迷い』が生じたのだ。
おそらくは、それを読み取られたのだろう。
由来が引いたのは『ダイヤのJ』。
偶然も含まれてはいるが、確かに小石川の『癖』を見抜いたのだった。

  「――……涙音さん、よろしいですか?」

          スッ

宣言しつつ、涙音の手札から一枚を選んで引く。
出来たペアをテーブルに揃えて置くと、手元に残ったのは二枚だけだった。
『ジョーカー』と『ハートのQ』。

  「『次の一周』が『最後』になりそうですね……」

由楽のカードを引く涙音を見つめながら、ぽつりと呟く。
決着が近付いている。
今のまま進めば、『ジョーカー』を持つ小石川が不利だ。

464朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』+妹:2023/02/25(土) 23:14:15
>>463
「ふふん。」
どこか由楽はリラックスしている。
遊び感覚ということがわかっているからなのだろうか。
ある意味一番強いかもしれない。

「…もちろん私は勝ちますよ…
 こういう勝負は運頼みじゃないんです!」
カードを一枚引き、あと少しとなる。
由楽からカードを一枚引く。

(うーん…緊張がないな。由楽。
 いつものんびりしてるせいで、こういうときは有利ね…)
どうやらペアが揃ったようで、カードを出す。
残り枚数はわずかだ。

「…ここでゆらがひいてしまうと
 カラスのおねーさんのしょうりです。」
再び小石川のカードを引く順番となった。

「ここでおねーさんの目を見ればよいのです!」

465小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/02/25(土) 23:33:55
>>464

先程の経験を活かし、小石川の目から『情報』を得ようとする由楽――。

  「ふふ……どちらにしましょうか?」

由楽の手が『ジョーカー』に伸びると、小石川の表情が僅かに変化した。
先程と同じく、それを参考にすれば、『ジョーカー』を引かずに済む。
由楽は、そう思ったかもしれない。

  「――……」

しかし、今回の場合は少し違った。
さっきとは異なり、意図的に表情を変えて、『誤った情報』を流したのだ。
由楽が『表情の変化』を頼りにしているのなら、
逆に『ジョーカー』へ誘導されてしまうだろう。

              グツグツ……

その間にもカレーは煮込まれ続け、キッチンタイマーは着実に『残り時間』を減らしていく。

466朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』+妹:2023/02/26(日) 00:13:18
>>465
「ふふー、もうゆらにはわかってるんです!」
小石川の目の動きを見て、由楽はカードを引き当てようとする。

「こっちがあたりです!」
そう言ってカードを引いた。そこにあったのは…

「…!」
びっくりした表情を見せる。
どうやらまんまと小石川の策にハマってしまったようだ。

「おや?どうやら引いてしまったみたいねぇ?由楽」
涙音にもはっきりと見て取ることが出来た。
「ちち、ちがうの!
 これは、しんりせん、なんです!」
といって得意げになりながらカードを見せる。

「まぁ、由楽に駆け引きなんて出来るとは…
 思わないけど?」
そう言って得意げな顔をしながらカードを取ろうとする涙音。

「しんりせん、してるの!」
そう言ってカードを前に出す由楽。
この様子だと次で決着だろうか。

467小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/02/26(日) 00:34:37
>>466

その後、涙音の手札からカードを一枚取る。
引いたのは『ハートのQ』――揃ったペアをテーブルに並べ、『あがり』を迎えた。
どうやら最後の戦いは『姉妹対決』にもつれ込んだようだ。

        ……スゥッ

しばらく二人の様子を眺めていたが、不意に立ち上がった。

  「――『料理の具合』を見てきます」

  「もう少しで出来上がると思いますので……」

そろそろ『完成』は間近の筈だ。
タイマーの残り時間を確かめずとも、おおよその頃合は感覚で分かる。
カレーとバターライスの仕上がりをチェックする為に、一足先にキッチンへ戻っていく。

        ガチャ……

  「……楽しみにしていて下さいね」

ドアを開けると、ラベンダーの香りとは違う食欲をそそる匂いが、緩やかに漂う。

468朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』+妹:2023/02/26(日) 00:38:40
>>467
「さてさて、そろそろ決着ね…」
涙音と由楽は真剣に向かい合っている。
ここで勝負が付きそうだが…

「あ、はーい。
 カレーたのしみにしてます!」
「お世話になります。
 もう少しで終わりになりますからね。」
二人は小石川に向けてほほえみながら声をかけた。

「それじゃあここで終わりに…!」
そう言って涙音は声をかけた。
そのままゆっくりと手を伸ばし…

「うー…」
涙音の様子を緊張しながら見つめる由楽

「やっぱりいける…!
 こっちか!」
そう言ってカードを引く!
…果たして決着はいかに?

469小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/02/26(日) 00:38:44
>>467
☓:ハートのQ
○:スペードのQ

470小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/02/26(日) 01:02:43
>>468

『運』と『策』が交錯する緊張の一瞬。
やがて、涙音は一枚のカードを選び出した。
その『絵柄』は……!

  ドドドドドドドドドドドドドドドドドドド

涙音の手の中で『道化師』が笑みを浮かべている。
これは――『ジョーカー』だ!
『姉妹対決』の勝者は……『朱鷺宮由楽』!

       コト コト コト

同じ頃、小石川は夕食の準備を始めていた。
ダイニングテーブルの上に、食器とスプーンを並べていく。
そして――。

           pipipi……

まもなく、タイマーの残り時間が『ゼロ』になる。
それは奇しくも、『対決の決着』と同時だった。
コンロの火を止めて、二人を呼ぶ為にリビングに向かう。

  「――……『出来上がりました』」

  「お二人に手伝っていただいたお陰で上手に仕上がりましたから……皆で食べましょう」

涙音と由楽を促し、引き続き食事の支度を進める。

471朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』+妹:2023/02/26(日) 01:20:47
>>470
「ぐうぅぅ!」
バタリとテーブルに倒れる涙音。
「表情で確信できていたはずなのになぜこのような…」

「ふふん、カラスのおねーさんをおてほんにしたんです!」
得意げな顔で由楽は答えた。
「まさか、あの一瞬でもう覚えるなんて…」
由楽の飲み込みは早かった。
あっという間に駆け引きがうまくなってしまったようだ。

ピピピピ…
「あっ、ご飯ができたみたいね。」
「わーい!」
だが二人は、ご飯ができたのを見計らってすぐに切り替える。

「待ってましたー。どうもありがとうございます。」
「ありがとー、カラスのおねーさんのおかげでかてたんです!」
二人の様子を見れば、どんな結果になったかは理解できそうだ。

「それじゃあ、そっちに行きますね。」
「ごはんなのです!」
促されるまま、二人は食事の場へと向かう。

472小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/02/26(日) 01:50:50
>>471

由楽の勝因は、やはり『飲み込みの早さ』だろう。
幼い子供は新しい物事を吸収しやすいという。
同年代の中でも、由楽は特に優れているのかもしれない。

         フワァ……

そして、出来立ての料理の匂いが二人を出迎える。
キッチンに併設されているダイニングスペースには、既に準備が整っていた。
『バターライスと骨付き肉のチキンカレー』。
見栄え良く盛り付けられた外見は、レストランで出されても違和感がない。
肝心の味も十分に期待できそうだ。

  「『おかわり』もありますから――たくさん食べて下さいね……」

          ニコ……

自分の席に腰を下ろし、涙音と由楽に微笑みかける。

  「――『いただきます』」

食前の挨拶を済ませ、スプーンを手に取った。
それから、さりげなく二人の反応を見る。
喜んで食べてもらえる事が、何よりも嬉しい。

473朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』+妹:2023/02/26(日) 08:55:58
>>472
「次はお姉ちゃんが勝ってみせるからね!」
「ふふん、またかっちゃうの!」
そんなふうなやり取りをしながらダイニングへとついた。

出来上がったカレーはバターライスと骨付き肉のチキンカレー。
とてもかぐわしい香りが食欲をそそる。

「これは、とてもいい匂いですね。」
「とてもおなかがすいたんです!」
楽しそうに二人はカレーを見る。
見栄えも最高だ。とても美味しそうというのが見た目でもわかる。


「食べる前にはいただきますをしなきゃね」
「もちろん、する!」
そう言って二人は手を合わせて
「「いただきます!」」
と丁寧に挨拶をした。

カレーをもぐもぐと食べ始めた二人は
しばらく口を動かし…

「これは…とても美味しいです!
 甘口ですが、なんというか深みがあるっていうか…」
「とてもおいしいですー!
 おかぁさんのカレーと『コーオツ』つけにくいですー!」
ふたりともその表情は満足げだ。
カレーの味をとても気に入っているらしい。

「このカレー、作り方を後で教えてくれませんか?
 色々アレンジしてみたくなります!」
涙音は真剣な表情をして小石川に尋ねる。

「そんなことよりおいしいです。
 もっとたべます!」
由楽の方はカレーに夢中でドンドン食べていっている。

474小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/02/26(日) 09:51:57
>>473

骨付き肉から染み出した旨味と、フルーツトマトの豊かな甘味。
それらがカレーに溶け込み、奥深い味わいを醸し出す。
煮込む際にココナッツミルクを加えている為、まろやかな辛さに仕立てられていた。
多くの要素を含んでいながらも、綺麗に纏まっている印象だ。
客観的に見て『美味』である事は間違いない。

  「喜んでもらえて――とても嬉しいです」

二人の言葉を聞き、表情を見て、花が開くように笑う。

  「ふふ……」

美味しそうにカレーを頬張る姉妹の姿を目にして、こう思った。
『いつまでも眺めていたい』と。
しかし、それでは自分の分が冷めてしまう。
せっかく涙音と由楽が手伝ってくれたのだ。
温かい内に食べなければ失礼に当たる。

         カチャ……

  「涙音さんが作ってくれたバターライスも、美味しく出来ていますよ」

涙音が担当したバターライスも上出来だ。
バターの風味が米の一粒一粒を包み込んでいて、チキンカレーに良く合っている。
これは涙音の腕前の賜物だろう。

  「ええ、喜んで……」

涙音に頷きながら、由楽の方を向く。

  「――まだまだ用意してありますからね」

掛け替えのない『幸せな時間』。
ただ、永遠には続かない。
笑美が旅行から帰ってくるまでの間だけ。
いや……それは『違う』。
笑美や涙音や由楽は、これからも『大切な友人』なのだから。

475朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』+妹:2023/02/26(日) 10:51:49
>>474
「これはとてもおいしいんです!
 おかぁさんにもたべてもらいたいですー!」
そう言ってドンドンとご飯を食べていく。

「おねーちゃんがお米を作ったのー。
 これも美味しい!」
「フヒヒ、なんだか嬉しい事言うわね。
 ありがとう、由楽。」
由楽は涙音に対しても微笑みかける。
仲睦まじい様子は見ていて微笑ましいものだろう。

「おかわり、おかわりです!」
そう言って由楽は皿を差し出した。
「ちょっと!もう食べ終わったの?
 もうちょっと味わったほうが…」
「おいしいのであっという間に食べてしまうのです!
 なのでおかわりです!」
由楽はあっという間におかわりを要求してきた。
それをみて笑いかける涙音。

このもう一つの家族は
きっとこれからも、笑美が旅行から帰ってきた後も続くはずである。

その後も…きっと楽しい時間を過ごしたに違いない。

476真横田ニケ『エンジェル・ウィッチ』:2023/03/15(水) 00:28:21

展望台から星見町を見下ろす。
地図上では驚くほどに小さな町なのに、
これほど高くからでも見渡しきれない。


     「…………」


        タン トントントン

カールした長い髪を揺らすのは、
無意識のうちに地面を叩いている足のせい。
猫の耳のように立てた大きなリボンも、揺れる。

   その姿は、ある程度…………目立つだろう。

477カリヤ『タイプライター・トーメント』:2023/03/15(水) 16:45:10
>>476
そんな真横田から少し離れた場所で同じように景色を見ていた男性が、
先程から突然現れた女にあれこれと話しかけられている。
迷惑そうに男性が立ち去った後、真横田と偶然に目が合ったその女は、
ロイド眼鏡越しの目を光らせて近づいて来た。

「……やあ!そこのリボンのきみ。
こんにちは、元気かい?
あははぁ、ここからの眺めは絶景だねぇ」

軽く手を広げ、薄ら笑いを貼り付けて馴れ馴れしく話し掛ける姿は、
かなり胡散臭く、不審者然としている。

478真横田ニケ『エンジェル・ウィッチ』:2023/03/15(水) 23:03:05
>>477

「やーやー、どーもどーもです。
 見ての通り、お元気ですよ。
 お元気なのと、お顔が良いのが、取り柄ですので」

猫のようなのはリボンだけでなく、
目付きも――――野良猫のように悪い。

「眼鏡のお姉様もお元気みたいで何よりです。
 あちらの御仁には、御縁無かったみたいですけど、
 こちらにも来られたってコトは、お雑食でいらっしゃる」

              「ぇっへっへぇ」

え、ともへ、ともつかない気の抜けた笑いとともに、
少女は『カリヤ』に向き直った。

「――――まぁ、そういう訳じゃあないんでしょうけど。
 こう見えてまだ未成年なんで、そういう訳じゃ困りますし」

         「そうなるとー、ご勧誘ですか。
           それとも、おアンケートですか?」

あからさまな不審者に警戒をしていないのか、
それとも不審者だとも思っていないのか?

どちらにせよ――――『馴れ馴れしさ』では、負けていない。

479カリヤ『タイプライター・トーメント』:2023/03/16(木) 19:53:17
>>478
「……おお、ノリがいいね。
面白い子だなぁ〜。意外な反応で、ちょっとびっくりしちゃったよ。
でも嬉しいなぁ、話が早い」

自分で話し掛けておきながらなぜか驚いたように口を開け、
まじまじと真横田の顔を見る。

「『雑食』? いやいや、そーゆーのじゃあないよ。
それとも、そういう感じの方が面白い『話』になったかなぁ……?
『ありきたり』って『王道』も、たまには良いのかな……とか、考えちゃうよねぇ」

ぶつぶつと呟きながら1人でしばし考え込む。

「じゃなかった。何だっけ?
うん、その中では『アンケート』が近いかなあ。
『インタビュー』でもいい。
きみ、こういうとこで、景色を眺めるって楽しいかい?」

「……いやいや、別にケチつけようってのじゃあないし、
なんとなくなら想像はできるよ。
だけど、いまいちピンと来ないんだよねぇ。
きみは景色を眺める時、どういう気持ちなのかとか、
そーいうことを教えてくれたら嬉しいんだけどなぁ〜〜」

480真横田ニケ『エンジェル・ウィッチ』:2023/03/17(金) 09:16:13
>>479

「ノリがお悪くっていいことなんて、
 自分のご満足ぐらいしかないじゃないですか?
 結局ー、人間って社会の生き物なんですし」

目付きは悪いが――――悪い顔ではない。
じ、と見上げるように顔を覗き返す。

「インタビュー……されて悪い気はしませんね」

           スッ

「もっとおめかししてくればよかった」

リボンに手を添えて整え、
少しだけ思案してから口を開く。

「そうですね、楽しいとはー、少し違うかも。
 最近、色々お整理したいときにここに来るんです」

           「次に何をしたいか――――」 
        「何をした方がいいのか――――」

人生には確固たる目標があり、
日々の行動や選択はそこへの経路だ。

「広い視野を持つには、お高いとこに登るといいかな、って」

真横田ニケの特異な『スタンド能力』は、
これまで描いて来た人生の絵図を上書きした。

「何となくのお話ですけどね。
 これがお姉様のお役に立てるご回答でしたらよろしいんですけど」

481カリヤ『タイプライター・トーメント』:2023/03/17(金) 20:41:15
>>480
「あははぁ、そうだねぇ。
私は自分の興味がある事以外は興味がないから、耳が痛いなぁ」

へらへらと笑いながら、意味のないような事を言って相槌を打つ。

「ふーん、『広い視点を持つ為に、高いところに登る』かぁ。
私にはそーゆー考えはなかったな。
予想外の答えだよ。オモシロイ話だねぇ。
物理的に遠くまで見渡せると、考え方も変わるのかい?」

「今日はどういうことを『整理』しに来たんだい。
これも……うん、インタビューの一環だよぉ」

482真横田ニケ『エンジェル・ウィッチ』:2023/03/17(金) 23:09:03
>>481

「わたくしも結局は自分の為ですから、
 それほどお卑下なさる事もないですよ。
 ええー、それほど」

多少はある――――って言い方だ。

「お部屋にこもってるよりは、いい考えが浮かびます。
 それに。こうして、出会いもありますから。
 お姉様のようなお人は、お初にお目にかかりました」

          「えっへっへ。
           ……これはおべっかではないですよ」

実際、カリヤのような人間は決して多くはないし、
少なくとも学生が接する人間社会ならなおさらだろう。

「整理のご内容……そうですね。
 お姉様のような方のほうがー、よく、ご存知かも」

              ゴソ

「目下わたくしの関心ごとは、こいつになります」

ポーチから『ファイル』を取り出す。
そこに挟んでいるのは、一枚の『ビラ』だ。
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1607077443/913

「歓楽街で拾いました。
 単刀直入にお聞きしますけど、これ、どうお思いしますか?」

483カリヤ『タイプライター・トーメント』:2023/03/20(月) 20:09:03
>>482
「ふうん、きみはそういう派かぁ。
体験が創作の原動力って感じの。
あははぁ、それって褒めてるのかなぁ?
いやいや! 答えなくて結構。
良く言われるんだよねぇ。『きみみたいな非常識な人は初めて見たよ』とかね。
なになに?」

興味深そうに一枚のビラを受け取る。
半ばまで読んで、何かを探るように真横田の顔を見た。

「………」

「あははぁ……中々、面白い『設定』だねぇ。
漫画にしたら、結構良いところまで行くかも知れないなぁ。
私の知り合いの編集者に渡してみようか?
ちょっと『地味』だから、もうちょっとテコ入れが必要かも知れないけどねぇ」

「きみはどう思うんだい?
こういうの好きなタイプなんだねぇ。少し意外だけど」

ビラをぺしぺしと指で叩きながら、少しも信じてないような態度で応える。

484真横田ニケ『エンジェル・ウィッチ』:2023/03/20(月) 23:09:10
>>483

「『持たざる者は持てる者の存在にすら気付けない』
 ――――仕組みとしては、わたくし嫌いじゃあないですね。
 ただ、これが『創作』の良いアイディアだとして……
 それをどうしてひけらかす御必要があるのでしょう?
 その点については気に食わないです」

そう言いながら、ビラから視線を上げ、
カリヤのリアクションの方に視線を向ける。

「秘密は秘密のままの方がお美しく、機能的だと思うんですけどね。
 わざわざビラにするあたり、話題を広めたいとしか思えない」

         「どういう御目的なんでしょうね?」

真横田ニケは『やるべきこと』が2つあると考えていた。
ひとつは己を知る事。
もうひとつは己を取り巻く環境を知る事。

「それにしても、話しぶりからするにお姉様は作家か何かですか?
 それとも出版社の御方? わたくしも、本は好きです……ぇっへっへっへ」

このビラを撒いた人間を見つけられれば――――どちらも叶うかもしれない。

とはいえ、知らないのなら深入りする物でもない。
別の興味へと話題を変える。……あるいは別の角度から切り込むためにも。

485カリヤ『タイプライター・トーメント』:2023/03/21(火) 21:07:05
>>484
「そうだよねぇ。こんな突拍子もない設定を書き散らかす狂人だから、
行動も突拍子もないんだよ。
ーーーーとは、私も思わない。
狂人には狂人の行動原理があって然るべしだよ」

『物語』(ストーリィ)的にもね。と付け加えて話を続ける。

「目的か、そうだなぁ。
この人がこれを『作り話』と考えてるか、
『本当の話』だと信じ込んでるかによるよねぇ。
『作り話』だと考えてるなら、単に自分の『創作』の……第一幕ってとこで、
次の展開があるかもね」

「逆に本気で信じ込んでるなら、
この話を知らない私たちに教えてあげようってとこじゃあないかな?
でもおかしいよねぇ、この人が『スタンド使い』なら、
その存在は伏せておいた方が自分の『得』になると思うんだけど。
そのあたりに、何か……この話の肝があるのかもねぇ。
とか、そんな感じでどおかなぁ〜」

だらだらと話をしていたが、本と聞いて目を輝かせる。

「そう!鋭いねぇ〜……とか、流石に失礼かな。
そんな感じだよ。作家未満ってとこかな。
それよりも『本』が好きかい!あははぁ、嬉しいねぇ。
『小説』はコスパが良いよね。『物語』が凝縮されてて濃厚だ。
『漫画』は読み進め易くて過剰摂取しちゃうよねえ!
きみはどんな『本』が好きなんだい?
……『物語』がある奴だよね?もちろんさぁ」

486真横田ニケ『エンジェル・ウィッチ』:2023/03/22(水) 00:50:05
>>485

「はあ、なるほど……『ストーリィ』ですか。
 なんのご意味も無くやることにしては大がかりすぎますしね。
 つまりー、つまるところ、『スタンド使い』が本当なら、
 『それをご公表して得をする人間』―――――――――
 何かお仲間を探している? ……ならビラは非効率だし、
 答えはお分かりになりませんね。でも、まあ、いいでしょう。
 本当の事のわけはありませんからね」

       「バズのためのマーケティング。
        文字通り火種を撒いている。
        そう考えるのがご自然ですかしら」

少なくともここで答えを決めた所で、
ビラを撒いた人間以外に正否判定は出せない。

「ご参考になりました。ええーとても。
 お姉様こそ、たいへん、ご知的でいらっしゃる」

                 スッ

「わたくしのためになりました。どうもありがとう」

ファイルをカバンにしまい、スカートの端を持ち上げる、
いわゆる『カーテシー』のようなわざとらしい仕草をした。

それから――――質問に少しだけ考えるそぶりを見せて。

「『勉強』の為に読むこともありますけれど、
 もちろん、『物語』のある本も好きです。
 買うのはもっぱら、電子書籍でばかりですけど」

          「例えばそう―――― ……」

もう少しだけ考えて。

「…………えへぇー。好きな本を言うのは、なんというか。
 自分のお腹を切り開いて中身をお渡しするみたいで、照れますね。
 あんまりそういうお話って、しなかったですし」

「人なみに、学生らしく……ファンタジー小説なんて、けっこう、好きですけど」

487カリヤ『タイプライター・トーメント』:2023/03/22(水) 15:43:19
>>486
「そおぉだよッ、『物語』さぁ!
どんな人もそれなりに大小『物語』を持っている。
側から見たら突拍子もない行動でも読み解いて見れば、
何かしら文脈の繋がる、意味のある行動なんじゃあないかなぁ。
『物語的』にはね……あははぁ」

何がおかしいのかにたにたと笑い、
『物語的』と小さく呟く。

「知的かぁ、それはあんまり言われた事がなかったなぁ。
でも知的そうな方が良いよねぇ。ほら、私、眼鏡キャラだから」

何故か自慢げに指でロイド眼鏡のフレームを押し上げる。

「『媒体』なんて気にしないよぉ。
私、ビブ……ブブ………なんとかマニアって奴じゃあないからね。
あっ!それ、すごく素敵な表現だねぇ!
『ファンタジー』かぁ……私も好きだよ。『ドラゴン』とか、格好いいよねぇ。
あれ、何の話だっけ?」

好きと言う割には浅そうな反応をして、
ふと我に返ったように顎を撫でる。

「……ああ、そうだ。『スタンド』。
その話をもう少ししたいんだった。
きみ、その紙に書いてある事が『本当』だったら良いと思うかい?
それについて考えてるってことは、少なくとも全くの荒唐無稽な『落書き』だと思ってないんだよね、きみは」

488真横田ニケ『エンジェル・ウィッチ』:2023/03/22(水) 20:53:46
>>487

「物語の中より、現実の方がずっと……
 物語に満ちてるのかもしれませんね。
 いろんな人が頭で考えて動いてるんですから」

              「知的な貴女も」

       「愚鈍な誰かも」

「1人の頭の中に拡がる夢と幻の世界より、
 共有された世界(シェアワールド)の方が広いですからね」

勿論考えずに動いている者もいるだろうが、
考えないという選択も、人間が決める物語ではある。

「はあ、このスタンド、というものが『本当』だったら――――――」

真横田ニケは楽をして生きたい。
だが、『歩くことをやめて這っていたい』のではない。

「―――――ええー、イヤですね。
 わたくしはそんな力、持ってませんから。
 自分が持ってない力を他人が持ってて、
 しかも、それを知る事も出来ないって。
 それは相当イヤじゃないですか?
 なにせ、わたくしが一方的に損するんだもの」

          「えっへっへ、損はしたくないですわ」

重要なのは『分を知って、わきまえ、相応の位置に収まる』事だ。
そのためにはもっと調べ、考え、歩み寄らなくてはならない。

                  パラ

もう一度取りだしたファイルを指先で少しだけめくる。

「この紙……続きを見つけたら、また教えましょうか。
 その代わり、知的なお姉様が続きを見つけた時も教えてくれません?」

489カリヤ『タイプライター・トーメント』:2023/03/25(土) 22:15:48
>>488
「あははぁ、それはそうかもねぇ。
だから私も、飽きずに生きていられるってわけだね。
『物語』は無限だよ!
無限の『物語』の中に私達はいるのさ」

真横田の『スタンド評』を聞いて、腕を組んで大仰に頷く。

「それはそうだねぇ。
私も、自分の知らない『物語』があるのはイヤだなぁ。
私ときみで一緒に調べてみようか、『続き』を」

そして、名刺と思わしき自分の連絡先が記された紙を真横田へ突き出す。
表面には『カリヤ』とだけ書かれている。

「申し遅れちゃったけど、私は『カリヤ』という。
その提案、喜んで受けるよ。
きみは何ていうんだい?」

490真横田ニケ『エンジェル・ウィッチ』:2023/03/27(月) 06:15:08
>>489

「自分が主人公の物語に生きられたら、
 本当は一番シンプルなんですけど。
 そうはいかないから、読み解かないといけませんね」

           スッ

名刺を受け取り、ファイルの中の別のページに挟んだ。

「――――『ニケ』です。わたくしはニケ。
 みなさんの『勝利』を助ける存在というわけです。
 おこぼれは少しだけで、かまいませんの」

薄い笑みを浮かべて、ファイル自体も鞄にしまう。
チラシの撮影などを求められたのであれば、
もちろんそれには応じた上で――――だ。

「わたくしも名刺を作るべきですね。
 今は持ってないので、代わりにこちらをどうぞ。
 連絡はいつしてくれてもいいです」

そして、カバンから取り出した破いた紙に、ボールペンで連絡先を書いて渡す。

「有意義で、お得な出会いになるといいですね。これが、お互いに」

491カリヤ『タイプライター・トーメント』:2023/03/28(火) 13:21:36
>>490
「『ニケ』ちゃんかぁ。ああ! 読んだことあるよ。
ええと、何神話だったかな。女神さまの名前だよねぇ……まあいいや。
あははぁ、私がきみの役に立てれば良いけどねぇ。
良い話が聞けてよかったよ。
今度はきみ自身の話ももっと聞きたいなぁ。またねぇ」

メモを片手に握ったまま、にやけ顔で手を振って展望台を立ち去った。

492真横田ニケ『エンジェル・ウィッチ』:2023/03/28(火) 16:07:47
>>491

「わたくし自身のことなんて、
 そんなに面白い事はまだ起きてませんから。
 面白くなってきたら、お話ししますの」

        スッ

「ええー、それじゃあ、また」

そうして再び『展望』に戻り、思索に耽り始めた。

493斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2023/05/15(月) 20:08:34
天気のいい日にはラジオ片手に展望台に登る
丁度いい2本の木を見つけて、鎖を繋いでハンモックを作り
自販機でスプライトを買ってラジオをかけてハンモックに寝転ぶ。

ここから寝転んで見わたす光景は、とても素晴らしい物だ
何も考えなくて済むくらいの……。

494???『???』:2023/05/16(火) 20:52:47
>>493

鎖のハンモックから街を見渡していると、不意に目の前を何かが横切った。
一瞬だったので鮮明には見えなかったが、薄い布のような物だ。
どうやら風に乗って飛んできたらしい。

    「フミィ」

        …………頭の後ろで『動物の鳴き声』がする。

495斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2023/05/16(火) 21:50:46
>>494

 「……?」

身体を僅かにハンモックから起こす
誰かのハンカチでも飛んできたのだろうか?

 (不幸な客だが、珍しくも……)

その瞬間だった、何かの声が背後から聞こえたのは
人間……ではない、人間なら足音で分る筈だ、だから、解らないのであれば
人間以外の生き物だ。すくなくとも、ハンカチじゃあないのは確かだった

 (背後……というより、後頭部か?今の『声』は?)

好奇心か、或いは恐怖か 僕はゆっくりと頭の後ろに手を伸ばし……
『それ』を掴んで目の前に持ってこようとした。

496???『???』:2023/05/16(火) 22:15:06
>>495

果たして、あれは『ハンカチ』だったのだろうか。
思い返してみれば、確かに似たような雰囲気ではあった。
だが、何となく『形』が妙だった気がする。
『ハンカチなのだがハンカチらしくない』というか…………。
ともかく腕を伸ばし、そこにいるであろう『何者か』を掴み取った。

     フ ワ ッ

手の中に柔らかい感触が伝わる。
やはり『布』に近い。
だが、『獣毛』に触れているような感覚もあった。

    そして――――――

            (・ω・)

次の瞬間、『それ』と目が合った。
ハンカチを『猫の形』に切り抜いたようなシルエット。
ほんのりと『体温』を感じる。

       「フミィミィ」

完全に『平面』だが…………紛れもなく『生物』だ。

497斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2023/05/17(水) 20:13:25
>>496

それと眼が合う
上を見る、それを見る、下を見る、それを見る

「……はぁ?」

情けない事に第一声は音程の外れた間抜けな声が
唇から滑り出しただけだった。

いるかどうかは兎も角、モモンガ辺りかな、等と当たりをつけていた予想が外れてしまって。
人間、予想外の事が起こると……こうも間抜けになるらしかった。
 
 「なんだこれ……グレムリンの親戚?」

誰かがみっつの誓いを破ってこんなことに?目頭を抑える。
電導エレベーター椅子のオバサンの如く僕もシャーする羽目になるのか
 
 「先日こっそりジジイの晩酌をご相伴に預かったのが悪いのか?
 それともとうとう僕の脳みそがいかれちまったのか……!」

手にした体温はもはや忘れようとしたすべてを現実に引き戻し
目の前にフミフミ泣いてる猫型のハンカチがいるという妄想みたいな事実を叩きつけてきた。
助けてお爺さん!今の自分にはモグワイを飼う資格が多分ナイ!

498???『???』:2023/05/17(水) 21:08:43
>>497

         「フミミィ」

奇妙な『ハンカチ猫』は、自身を摘み上げた斑鳩を見つめている。
ペラペラである以外にも、そいつには幾つかの特徴が見られた。
まず『模様』だ。
それは『道化師』を思わせる『ハーリキンチェック』を纏っていた。
また、その片隅に肉球を模した『刻印』が施されている。

             タッ タッ タッ

自然界の摂理を丸ごと無視したような『不思議生物』に混乱させられていた時、
視界外から『足音』が近付いてきた。
今度こそ『人』が来たらしい。
足音が止まると同時に『聞き覚えのある声』が響く。

       「よ!!」

「ヒサシブリじゃん!!ゲンキだった??
 ちなみに、わたしはチョーゲンキだった!!
 『フレミッシュジャイアント』10ぴきブンくらいゲンキだったぞ!!」

「わたしのコエおぼえてるよねぇ〜〜??
 『おまつりデート』して、
 『バレンタイン』に『てづくりチョコ』わたしたヤツのコト、
 フツーわすれねーよな??
 いや、わたしだったらわすれてるかもな!!」

「でも、『ショウくん』はわすれないってしんじてるぞ。
 だって、そんなヤツじゃないし!!」

    「――――――だよね??」

499斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2023/05/17(水) 21:50:06
>>498

「そ、その声は……」

手のひらサイズの不思議生命体に混乱させられてた所に無情にも追い打ちが光る
おお神よ、僕が何をしたというのか……『僕は』まだ何も悪い事をしてない筈である。たぶん、まだ。

しかしこの声なら聞き覚えがある。
忘れる筈もない、このおもむろに奇妙な例え方と喋り方
そして背後から忍び寄るのが大好きな(おそらく約2回)人間は……。

「……『夢見ヶ崎明日美』ッ!!」

手元のちいさな命を壊さないように両手で優しく包み
そう断定してハンモックから下りざまに振り向いた。
 

「…………」
「というか、学校では普通に会ってるだろ?」

500夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』:2023/05/17(水) 22:41:06
>>499

ついにナゾのベールにつつまれた『アリス』のショウタイがあかされる…………!!
なんと!!『アリス』は『アリス』だった!!
『アリス』は『アリス』だから『アリス』だったのだ!!

「あってねーよ!!『ガクネン』がちがうだろ!!
 『ガ・ク・ネ・ン』がよぉ〜〜??」

「でも、『セイカイ』したからユルしてやろう。ウンがよかったな!!」

           グッ!!

振り向いた先には、力強く親指を立てる『アリス風ファッション』の少女が立っていた。
金色の髪に結んだリボン代わりの『スカーフ』。
ブルーのレンズが嵌まったバタフライ型の『サングラス』。
指先を彩るカラフルな『ネイルアート』。
まさしく『夢見ヶ崎明日美』だ。

「『コッチにいる』って『コミミにはさんだ』から、
 ひさびさに『アリス』のほうから『あいにきた』」

そして、その傍らに佇む『スタンド』。
本体は見慣れた姿だったが、そちらは大きく変貌していた。
長い『金髪』が風に靡き、
全身を飾る色鮮やかな半透明の『リボン』は、美しく輝く『光』を連想させる。
目元は『青いリボン』で覆われ、指先には華美な『ネイル』を装着していた。
『本体自身』に近付いたようなヴィジョンは、
『ドクター・ブラインド』が持っていた無機質なイメージとは対照的に、
極めて有機的なフォルムを備えている。

「つーワケで!!イッショにナンかしようぜ!!」

       シ ャ ラ ァ ン ッ

『金髪のスタンド』が、『ヘアスタイル』を整えるように髪を掻き上げる。

501斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2023/05/17(水) 23:28:45
>>500

YES I AM!

 「態々僕に会いに来たの?そいつは光栄だな。それにしても相変わらずエネルギッシュな後輩だねー、
 光の国で光合成してるに違いないな。」

グッドラック、コール
正直、目の前の女の子を一度見て忘れるのはアラビアのロレンス見てる途中で寝ないくらいには難しいだろう。
ロスト・アイデンティティ製『ハンモック』を解除すると、首元のスカーフを弄……ろうとして両手が塞がってる事を思い出した。

 「遊びの誘い?うーーーん……いいぜ!って言いたいんだけど……
 今、何か奇妙な命を手の中に捕まえてしまって。」

視線を手の中に向ける
夢見ヶ崎が出てきたので、一周回って冷静になってしまったが
結局これがまだ何かわからないままだ、新手のUMAかグレムリンか、はたまたスタンド…なのか?
今のところ一番の容疑者は、目の前の少女だが。

 「今のところ僕はグレムリンの親戚じゃないかなと。
 ……そういえば、夢見ヶ崎なんか変わった?」

そういえば、目の前の少女は鎖の上でぐーすか寝てた自分と違ってなにやらキラキラして見える。
まあネイルがキラキラに決まってるのは何時もの事として……。

502夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』:2023/05/18(木) 00:20:42
>>501

「――――――おん??」

            ズ イ ッ

手の中を覗き込み、その存在を確かめると、納得した様子で大きく頷く。

「ナニかとおもったら『チェシャ』か〜〜!!
 しってる??『もとアリスのハンカチ』」

案の定、『容疑』は濃厚になる気配を見せ始めた。

    「そんで、いまは『ハンカチネコ』。
     たまに『アリス』のトコにくるシンシュツキボツなヤツ」

            「フミィ」

『誕生した理由』は不明だが、要するに『そういう事』らしい。
『夢見ヶ崎の周りにいる不思議な生き物』のようだ。
おそらく『元々の持ち主』だったからだろうか。

「ジャマだったら、はなしちゃえば??
 だって『チェシャ』って『ジユウ』じゃん」

斑鳩の下に現れたのは偶然だろうし、特に害があるようにも見えない。
風に乗って移動できる体なら、どれだけ高所から落ちても平気だろう。
少なくとも、ずっと捕まえておく必要はなさそうだった。

「ん〜〜〜〜〜〜」

「『わたしがかわった』っていうかさ――――」

投げ掛けられた言葉を反芻するように、
隣に立つ自らの『精神の象徴』に視線を移す。
『ドクター・ブラインド』は、非常に特殊なスタンドだった。
ヴィジョンや能力ではなく、『本体との関係性』が。
本来なら、『視力を持たない本体』を補助する為に生まれる筈だった。
発現が遅れたせいで、本体とスタンドの間に『齟齬』が生じていたのだ。

「『ドクター・ブラインド』が、わたしに『おいついた』」

今、その『距離』は完全に埋まり、『新たな形』となって結実している。

  「だから、これからは、こうよんでくれる??」

       「『ドクター・アリス』」

             「――――――って」

『光』を身に纏うスタンド――『ドクター・アリス』は、
文字通り『視力を得た後の夢見ヶ崎明日美』を象徴していた。

503斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2023/05/18(木) 02:10:25
>>502

 「ふーん……頭だけじゃなさそうだが、成程、グリフォンとジャバウォックによろしくな。」

ハンカチ猫……そのうち一種の都市伝説になりそうだな。
容疑者がほぼ犯人になった所で『チェシャ』を放してやる事にした。
好きに生きるがよい、僕もそうしていたい所だ。
 
 「僕の知ってる猫とかアレだものな……人の釣った魚勝手に食うわ、寝床を占拠するわ
 頭突きしてくるわ、都合が悪くなったら平らになって逃げるし。……それにしても」

おかしいな、あいつ良い所が一つもないぞ?
隣の芝が青いどころか黄金色に見えそうだ。
……まぁこれは置いておこう。それがいい。

 「『ドクター・アリス』か。」

陽光を浴びてたなびく髪は、本体同様に美しい。
片言で光を求めていた、あの無機質な頃とは大違いだ
その光の陰になっている、自分には随分と眩しい。

……自分の右腕を一瞥すると、ハンモックを伸ばした際に使った『鎖』がまだ巻き付いていた
『ロスト・アイデンティティ』の鎖……『枷』としての鎖。

 (自分にとっては他人がつけたどうでもいい枷だから、ダメージのフィードバックもないし、簡単に切り捨てられる。)

これが目の前の少女のようになる日などあるのだろうか?
あの両親を救えるような物に……。

 (たぶん……ならない、俺は今でも、俺の事ばかり考えているからだ 
 何処まで行っても、お前の鎖の下にあるものは俺の『影』だ、反吐がでるな。)

 「随分と美しく振る舞うんだな、僕の目が潰れちまうぜ。」

氷のような瞳を瞬かせる。
ラジオを手に取り、飲み干したスプライトをゴミ箱に放る。ストライク。

 「それで?何処にエスコートさせて頂きましょうか、Missアリス?」

 「映画もいいし、新しくできたカフェや、鈴蘭畑でも 釣り堀で大物狙いもいいし、書店でお気に入りの一冊を探してもいい」
 「それとも、商店街でウインドゥショッピング?……お付き合いしましょう。」

504夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』:2023/05/18(木) 12:34:58
>>503

『視覚』を得た『ドクター・アリス』が、
遮光の役割を果たす『リボン』の下から、目の前の少年を見つめる。 
『リボン』と『鎖』――細長い形状こそ似ているものの、
その特性は全く違う『似て非なる物』。
『リボン』は『鎖』の代わりにはならないし、その逆も同じだろう。

    フ ワ ァ

         「ミミミィ」

              ――――パサッ

「あ、『チェシャ』もイッショにくるカンジ??」

解放された『ハンカチ猫』こと『チェシャ』は『元持ち主』の肩の上に乗った。
子供の落書きのような顔からは、絶妙に表情が読み取れない。
何となく底知れない雰囲気が漂う辺りは『チェシャ猫』に似ている。

「へ〜〜!!ショウくんのトコにも『ネコ』いるんだ。
 エプロン??トートバッグ??いがいにクッションカバーとか??」

『平らになって逃げる』という部分から、
『チェシャ』と同じ『スタンド生物』だと認識されたようだった。

「『スズランばたけ』っていうとさぁ、
 このまえ『りんちゃん』と『カニなべ』たべたんだよね〜〜。
 『スズランのアジ』ってしってる??
 なんか『ピリッ』としてて、いままでにないフウミだったよ」

同じ場所で同じ相手に遭遇していた斑鳩翔が、
危うく『生命の危機』を回避した事は、もちろん知らない。

「いきさきはショウくんにまかせる!!
 『クサリのおうじサマ』のセンスがためされるぞ!!」

サングラスの奥にある瞳を輝かせながら、満面の笑顔を見せる。
どこまでも明るい表情は、以前と少しも変わっていない。
『スタンドの方が本体に追い付いた』という事実を体現するかのように。

505斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2023/05/18(木) 20:30:14
>>504

……考えるのはやめろ斑鳩翔
今この日には忘れた方がいい思索だ。
霞を振り払うかのように頭を振ると、人懐っこい笑顔を漏らす。

 「いやいや、フツーの食い意地のはった猫よフツーの……ただバラバラになる特技があってさ」
 「それよりぃ……お友達と鈴蘭蟹鍋ぇ〜?鈴蘭クッキーといい最近の流行りなのォ?スゲーな最近の世界のセンスは。」

もちろん斑鳩は知らない……というより結びついてない
スズランのフレーバー付きな闇鍋の親戚かな?等と考えている。
まあ恐らく些細な事だ、これからする事に比べれば。

 「アハン、チェシャ猫の見張りもいる事だし?下手なとこでハートの女王様に首を斬られたくもないし、
 僕のとっておきの場所でもご紹介しましょうかねぇ。」

ラジオ片手にアリスをエスコートする。
5月という数字に置いては、夏はまだ始まったばかりの日々だ。
 
(ま、僕の趣味だと穴場の小さな映画館なんだけどね。
 その前に新しくできたカフェとやらに寄るのもいいな……)

506夢見ヶ崎明日美『ドクター・アリス』:2023/05/18(木) 21:56:24
>>505

「いやぁ〜〜『りんちゃん』は『トクベツ』だからさぁ〜〜。
 『トクベツなウサギ』だって、みたらイッパツでわかるもん。
 なんてったって『ハナのさいたウサギ』だぜ??」

「ソレをおいかけられる『アリス』も『トクベツ』だけどな!!」

『鈴蘭料理』を出すのは、少なくとも星見町内では『りん』しかいないだろう。
そして、それを安全に『味見』できるのは『ドクター・アリス』だけだ。
よいコはゼッタイわりとマジでマネすんなよ!!

「わたしさぁ、サイキンおもったコトがあるんだよね」

斑鳩の後ろで、思い出すように呟く。
まだ『ドクター・ブラインド』が傍にいた時の記憶。
止むを得ない事情で、自分と価値観の違う相手と戦った時に考えた事だ。

「『えがおじゃないヒト』がいたとするじゃん。
 でも、そのヒトをムリに『あかるいカオ』にしようとするのはまちがってる。
 『わらいたくないのにわらう』って、
 『ココロ』と『カラダ』が『ズレてる』ってコトでしょ」

『齟齬』を解消した自らのスタンドに視線を向ける。

「そういうのって、ケンコーによくないよね。
 ヒトそれぞれイロイロあるんだしさ。
 だから、そのヒトのキモチをだいじにして、
 『ジブンでえがおになれる』までまつの」

『ドクター・アリス』から目線を外し、これから歩いていく『先』を見つめる。

「だけど、みんなが『くらいカオ』してあるいてたら、
 『セカイぜんぶ』がくらくなっちゃうとおもわない??」

   「『アリス』は、そんなの『イヤ』だからさ」

            ス ッ

おもむろに顔を上げ、青空に輝く『太陽』を見上げる。

「そういうときは――――
 わたしが『みんなのブン』まで『セカイ』をあかるくする!!」

        タ ッ

エスコートする斑鳩の背中を追って、軽やかな足取りで歩き出す。

     「――――なんつって〜〜!!」

屈託のない笑顔を浮かべ、緩やかに初夏の兆しが見え始めた街を、二人並んで歩く。

「よし!!イチバンよさげなスポットをたのむぞ。
 アリスのチェックはキビシイからな〜〜。
 『バッチリ』じゃなかったら『バッサリ』だ!!」

久方ぶりの『再会』は、こうして『幕を開けた』のだった――――。

507白岸・N・トーリ『ダムゼル・イン・ディストレス』:2023/05/28(日) 21:48:35

中層階に入っている『書店』に来ていた。
目当ては『レシピ本』――『お菓子』のそれだ。
無限に広がるインターネットで検索するのとは違い、
本という指針には、限りがあるのが良かった。

「…………」

その日は学校の帰りであり、
清月学園の学生服はそれなりに目立つ。
あるいは牛乳を溶いた紅茶のような色の髪や、
深い青色の瞳が目立つ、と考えても良い。

声をかける理由はそれなりにある、という意味だ。

508白岸・N・トーリ『ダムゼル・イン・ディストレス』:2023/05/31(水) 12:54:35
>>507
『書店員おすすめ!』のポップに従い、一冊買って帰宅した。

509小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/05/31(水) 15:25:43

夕日に照らされた『展望台』。
ここには一つの思い出がある。
自らのスタンド――『スーサイド・ライフ』を『把握』してから、
初めて赴いた場所だった。
いわば『スタンド使い』としての『始まりの場所』。
その時と同じように、どこか憂いを帯びた表情で、
静かに街を見下ろしている。

  「――……」

人の数はまばらであり、洋装の『喪服』に身を包んだ姿は目に付きやすい。

510小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/06/02(金) 16:59:06
>>509

ここに立っていると、『あの時の自分』を思い出す。
『自覚した力』で何をするべきなのか考えていた。
多くの出会いや争いを経て、私は『自分なりの答え』を見つけ出した。

どんな人にも、『その人を愛する人』がいる。
『愛する人』が傷付けば、そこに『悲しみ』が生まれてしまう。
小石川文子が戦うのは、目の前にある『愛』を守る為だ。

しかし、『不可能』な事もある。
どれだけ頑張っても、精一杯努力しても救えない場合がある。
それは『事実』であり、理解し、受け入れている。
もし全てが助かるなら『彼』も救われていた筈だから。
『あの子』も残りの人生を生きる事が出来ただろう。

だが、『理解している事』を、
『力を尽くさない言い訳』に使う事は間違っている。
最後の瞬間まで諦めずに頭を回すからこそ、
困難を切り開く新たな考えが生まれるのだ。
たとえ僅かな可能性であろうと、
それを試しもせずに切り捨ててしまうのは、
自らの手で希望を握り潰す事に他ならない。

だから、小石川文子は『戦い続ける』。
『愛』の為に。
この『命』が終わりを迎える日まで。

511空井イエリ『ソラリス』:2023/06/05(月) 12:57:29

悪天候などで久しぶりの外出だ。
内向的なイエリだが、努めて外向を目指しており、
加えて言えば――――『かわいい服を着た自分』は割と好きだ。

フリルだらけのワンピースを着て、
それに合わせた帽子まで被り、
髪を止めるゴムもいつもの白いボンボンでは無く、
リボンのついた物にする『徹底』の着飾りだ。
もっとも、顔つきはいつも通り眠たげな物だが。

小さな猫用のおもちゃを買った後、
今は、なんとなしに『展望台』にいた。

           ヒュオ ―――

「――――おっと」

久々に被った帽子だったからか、
吹いた風に咄嗟に手が動かず、
今にも飛んでいきそうなそれを。

        ズギュ

『ソラリス』の手で掴もうとしているのを――>>512は目撃する。

512百目鬼小百合『ライトパス』:2023/06/06(火) 02:29:33
>>511

その日、『普段と違う服装』で出歩いていたのは偶然だった。

        ザッ

『白百合の紋様』が入った『和装』。
色は『銀鼠色』。
無彩色の銀色に近い明るい灰色だ。
江戸時代に『奢侈禁止令』が発布され、
派手な色の着物が禁止されていた時期に流行した歴史がある。
帯には『生地扇子』が差してあった。

         バ ッ

その傍らに『白い人型スタンド』が発現した。
帽子を受け止めようとしたのだ。
スピードは互角だが、動いたのは相手の方が早く、それを見て腕を引っ込める。

「余計なお節介だったみたいだねえ」

そう言って、改めてイエリに目線を移す。
互いの関わりはないに等しい。
それぞれの格好も、まるで違う。

513空井イエリ『ソラリス』:2023/06/06(火) 05:57:31
>>512

「……いいや、そいつは結果論ってやつさ。
 おれが今のを失敗してたとしたら、
 おまえさんの小さな親切に助けられてた」

     「大きなお世話なわけないよな。
      礼を言うよ、ありがとう」

    スッ

帽子を深めに被り直しながら、
現れた女の容貌に視線を走らせる。

「それにしても、だ」

「すげーカッコいい格好じゃないか?
 『着物』ってやつはおれは知らない世界だが……
 今日はなにか、良いことでもあった日なのかな」

率直に伝えつつ、風を避けるように、
『百目鬼』のいる方へと、ゆっくりと近づいていく。

514百目鬼小百合『ライトパス』:2023/06/06(火) 15:52:40
>>513

「そう言ってもらえると、手を出そうとした甲斐があるよ」

        スッ

            ――――パッ

鷹揚に笑って返し、帯から扇子を抜いて片手で開くと、
生地の柄にも『白百合』が描かれていた。

「ちょいと畏まった場に呼ばれちまってね。
 面倒だけど、多少それらしい格好をしていかなきゃならなくなったのさ」

「ただ、普段から着てないもんだから、どうにも不安でねぇ。
 どこか変に見えやしないかと思って、人がいる場所を歩いてみてる訳だ」

扇子を軽く扇ぎながら、イエリの服装を注視する。

「随分と可愛らしい洋服じゃないか。
 アタシは専門外だけど、隅々まで行き届いてるのは分かるよ。
 よくお似合いだ」

「挨拶が遅れたね。
 礼儀として名乗っておくよ。
 アタシは『百目鬼小百合』――――」

       ライトパス
「こっちが『 正 道 』さ」

『白百合の紋章』を宿す『ライトパス』が握っているのは、
風情のある『扇子』ではなく、『警棒』という明確な武器だ。

515空井イエリ『ソラリス』:2023/06/06(火) 16:04:00
>>514

「なるほどな。
 お洒落じゃなくて大人の責任か――いや
 責任の範囲でやる大人のお洒落ってやつか」

    「お返しだから言うわけじゃねーが、
     おまえさん『も』よく似合ってる」

     クル…

視線を感じ、ゆっくりと体を一周させる。
背中にも大きなリボン。手入れの大変な服だ。
臨時収入が無ければ絶対に買わなかっただろう。

「もちろん、おれ『も』だ。
 自分の見た目に似合う服を着るのは、
 とびきり……いいことだよな?」

          フッ

「こちらこそ、自己紹介ってやつをさせてもらうぜ。
 おれは『イエリ』……『空井イエリ』
 さっき見せちまったのは、『ソラリス』」

        「……いや」

「はじめまして。かと思ったが。
 違うな。おまえさん……『夏』にも会っているな」

服装が違うのもあり――加えて関わりの薄さもあり、
あまりピンと来ていなかったが、今なら分かる。

「その節はどうもだ。
 もっとも、お互い、あの場では『傍役』ってとこだったが」

516百目鬼小百合『ライトパス』:2023/06/06(火) 16:46:49
>>515

「正直に言うとね、アタシも最初は分からなかった。
 なにせチラッと見た程度だったからねえ」

「それがあったお陰で、こうして知り合えたんだ。
 『袖すり合うも多生の縁』とは、よく言ったもんさ」

イエリの服装を見ながら思うのは、向き不向きがあるという事だ。
自分が彼女くらいの年頃だったとしても似合わなかっただろう。
それと同じように、若い頃の自分に今の格好は似合わなかった。

「ハハハ、まぁ出る幕がなかったからねえ。
 アタシなんか、それこそ端っこに立ってただけだよ」

「『必要な時』に『必要な動き』が出来れば、それで十分さ」

『鬼の小百合』と呼ばれ、非合法の連中からは、
すこぶる評判が悪い百目鬼小百合だ。
あまり目立つと、向こうからの警戒が強くなる。
だから、必要がなければ、それに越した事はない。

「ところで、イエリさん。
 アンタ、『スタンド使いの知り合い』は多い方かい?」

517空井イエリ『ソラリス』:2023/06/06(火) 17:04:09
>>516

「魔物のお陰――と言う気はしないけど。
 ま、壊した縁だけじゃあなかったらしいぜ」

『人でなし』の挙げた成果としては、
それはきっと上出来だろう。

「ま、卑下することでもないとは思ってるよ。
 あの場所から何か出来る能力者ってのは、
 ぜんぜん、ちょっとの奴だけだったしさ。
 それに……『いざとなれば動く人間』が、
 あれだけいるってことがわかった。
 それだけでも意味はあったんじゃないかな?」

慰めの言葉ではなく、ある程度の本心ではあった。
『小石川』が呼び集めた人間が大半だろうが、
彼女は『駒』として自分たちを集めたのではない。
自由意志に任せてきっかけを与え、多くが応えたのだ。

「ただ、まあ、残念ながらおれは……
 見ての通り、社交的なタチじゃなくてね。
 少なくとも一声かければ人が集まるような、
 そういう期待はしてもらえないだろうな」

「そういう質問をしたって事は、
 おまえさん、『スタンド使い』を集めたい理由があるのかな」

518百目鬼小百合『ライトパス』:2023/06/06(火) 17:44:22
>>517

「ま、『怪我の功名』ってヤツだねぇ」

百目鬼自身も連絡を密にしているスタンド使いは多くない。
最も関わりが深いのは『三刀屋』になるだろうか。
『魔物事件』に関わった切っ掛けも彼だった。

「どちらかというと、欲しいのは『情報』さ」

「アタシは『ある男』を探してる。
 正確には、そいつの『持ち物』に関心があるんだ。
 特別な『刀』だよ」

「アンタの知り合いに、そんな噂を聞いた人がいないかと思ってねぇ」

        ――――――パチン

扇子を閉じると同時に『ライトパス』を解除する。

「それを抜きにしても、こうして『再会』できたのは僥倖だ。
 邪魔じゃなかったら名刺を渡しとくよ」

         スッ

  『大門総合警備保障:主任指導官』

そのような肩書と共に連絡先が書かれた名刺を、イエリに差し出す。

519空井イエリ『ソラリス』:2023/06/06(火) 19:19:42
>>518

「『刀』……さて、どうだったかな?
 そんなやつがいたら覚えてそうなもんだ。
 少なくともおれの知り合いに、
 刃傷沙汰に会ったってやつはいねーぜ」

記憶にある範囲では、覚えがない。

「だが、今覚えた。
 ま……深く事情は聞かねーが、
 これくらいのことは背負っておくよ」

      スッ

「おっと。こいつは……大物だな? 
 おれみたいなのが余計な気を起こしたら、
 ぱたっと畳まれちまいそうだ」

       「その『刀の男』にも同情するよ」

名刺は受け取り、うさぎのぬいぐるみを模した、
小さな肩掛けカバンの中にしまいこんだ。

「気になる話が聞けたら、おまえさんにも伝えよう。
 おれが抱えてるおくよりは、ずっといいことだろうし」

520百目鬼小百合『ライトパス』:2023/06/06(火) 20:49:25
>>519

「アタシは『選り好み』はしない主義でね。
 その男じゃなくても、
 もし人様に迷惑を掛けてるヤツがいたら教えてくれないかい?
 身体が動く内は『街の美化』に貢献したいんだよ」

「もっとも、アンタがいればアタシの出番はないかもしれないけどねぇ」

実際に確認した訳ではないが、荒事を苦手としているようには見えなかった。

「さて――――そろそろ行くとするよ。
 約束の時間に遅れると都合が悪いからね。
 アンタのお陰で、自信を持って顔を出せる」

閉じた扇子を玩び、再び帯に差し直す。

「イエリさん、ここで会えて良かったよ」

           ザ ッ

おおらかに笑うと、着物の裾を翻して、展望台から立ち去っていく――――。

   ……………… ……………… ………………

             ……………… ……………… ………………

「せいぜい『ボロ』が出ないように気を付けなきゃいけないからねえ」

実の所、この格好は『変装』に近い。
『反社会的勢力』の『密談』が行われるという情報を、
事前に『顔馴染みの情報屋』から得ていた。
現場である『料亭』に、これから『乗り込む』のだ。

「『虎穴に入らずんば虎児を得ず』――――か」

521空井イエリ『ソラリス』:2023/06/06(火) 21:13:03
>>520

「はは、は。美化とは。おまえさん。
 マトモな大人じゃあないな?
 ま、悪い事をしないうちは……頼りになるよ」

       「とはいえ……
        落ちてるゴミの責任を、
        背負い込むのは、分かるぜ」

本質的に百目鬼とイエリは大きく違う。
例えば荒事に対する姿勢や、
何かを背負い込むことの前提が。
ただ……『荒事に向いた人格』なのは同じだ。

「そいつはよかった。
 ぜひとも素敵なお披露目になると、いいことだ」

       クルッ

「また会おうぜ。できるだけ、味方同士……いや。
 敵も味方もないところで、次もな」

                   スタスタスタ

この後の予定が何か、に踏み込むことはない。

百目鬼が去ったのを見送ってから、自分も下階に降りた。

522白岸・N・トーリ『ダムゼル・イン・ディストレス』:2023/06/06(火) 22:05:52

今週はスカイモールで懸賞をやっており、
その抽選会場に来ていた。
1等はハワイ、2等は温泉旅館だが、
お目当ては5等のワッフルメーカーだった。

「……」

くじ引き券(1枚)と、整理券を手に、
案外混んでいたせいで手持ち無沙汰になった時間を、
所在なさげに、壁に寄り掛かって過ごしていた。

523白岸・N・トーリ『ダムゼル・イン・ディストレス』:2023/06/08(木) 13:55:58
>>522
ハズレ賞のティッシュ一箱をもらって帰った。

524白岸・N・トーリ『ダムゼル・イン・ディストレス』:2023/06/19(月) 01:52:20

設置されたフロアマップと睨めっこをしていた。
『目当ての店』があるのだが、それが載っていない。
真相は――その店は『フロア移転』をしたのだが、
少し来ない内に案内の掲示は終了していた。

「……」

所在なさげに辺りを見渡す。

スマホで調べれば済む話ではあるのだが、
『指示の誤り』は『白岸・ノエル・トーリ』が特に苦手とする物だ。

解決策に気づくまでの間、そうしているだろう・・・

525白岸・N・トーリ『ダムゼル・イン・ディストレス』:2023/06/20(火) 13:16:25
>>524(継続)

やがて『白岸・ノエル・トーリ』が至った結論は、
近くにいる誰かに教えてもらう――というものだった。

         キョロ

       キョロ

誰か『聞けそう』な相手はいないだろうか――?

526尾藤 風花『ハーベストムーン・メランコリー』:2023/06/20(火) 20:31:27
>>525
「〜〜〜〜♪」
近くを歩いてきたのは、ロングヘアーを三つ編みでまとめ
メガネを掛けたセーラー服の少女だった。

「にゃーにゃにゃにゃーにゃー♪」
謎の鼻歌を歌いながら、彼女の近くに歩いてくる。
見た感じ、このあたりに慣れてそうに見えるかもしれない。

527白岸・N・トーリ『ダムゼル・イン・ディストレス』:2023/06/20(火) 22:10:05
>>526

「……」

見つめすぎない程度にその姿を認めて、
いつも伸びている、しかしもう少し伸ばした背筋で、
その『三つ編みメガネ』の少女の視界へと、
わざとらしくない程度に、ゆっくり進入する。

「あの」「すみません」
「道を。尋ねたいのですが……よろしいでしょうか」

     ペコリ

頭を下げて、お願いをする。

「そこの地図には。それが、載っていなかったのです」

どれも染み付いた仕草で、無理なく引き出せるものだ。

528尾藤 風花『ハーベストムーン・メランコリー』:2023/06/20(火) 22:26:24
>>527
「…あっ、あたしのことですかにゃー?」
白岸の方に視線を向けて微笑みかける。
見た感じ、ちょっと遊んでそうに見えなくもない。

「ふむふむ、かまわないよー。
 あたしはひましてたところだからにゃ。」
そう言ってフロアマップを確認した。

「そのお店は、たしかもっと上の階の方に移動してたんだったかにゃー。
 案内できますよー。」

529白岸・N・トーリ『ダムゼル・イン・ディストレス』:2023/06/20(火) 22:44:45
>>528

「はい。トーリは、貴女に助けを求めました。
 もし、ご迷惑をおかけしてよければ――――」

首肯する。
その顔には表情が見当たらないが、
『笑みがない』ことは明らかだった。
真剣に頼んでいる、という意味だ。

「――ああ、とても。……助かります」

       チラ

「『移動』……そう、なのですね。
 トーリは、知りませんでした。
 前に来た時は、まだ、この階にあった頃で」

上のフロアに向かう階段はすぐそこだ。
雑貨を扱うフロアはこの辺りなのだから、
登って、見てきても良かったのだろう。

「案内。お願いを、してもよろしいでしょうか。
 一人でいると、また迷ってしまいそうですから」

      「たくさん。ご迷惑をおかけします」

少しだけ考えて、厚意に甘える事にした。

「……『お菓子作り』を。貴女も、されるのですか?」

向かう先の店舗は『製菓用品店』だ。
くらしの雑貨フロアから、趣味のフロアに移転したらしい。

530尾藤 風花『ハーベストムーン・メランコリー』:2023/06/20(火) 23:02:06
>>529
「トーリと言うんですにゃー。
 よろしく。」
対しての風花は常ににこやかな表情を浮かべている。
常に楽しそうに見える。

「そーそー、まぁ同じスカイモールの中だから
 行くのは簡単だよー」
そう言って階段の方を指さした

「お菓子作りかー、興味がないわけじゃないにゃ。
 穏やかな生活のためにもとりあえず覚えときたいかもにゃー」
そう言って、フロアの方へと歩き出す。
相手側と歩幅を合わせようとしているようだ。

531白岸・ノエル・トーリ『ダムゼル・イン・ディストレス』:2023/06/21(水) 09:12:15
>>530

「はい。『白岸・ノエル・トーリ』と、申します。
 長い名前、ですので。どうかトーリとお呼び下さい」

     「トーリは……貴女のことを、
      どうお呼びすればよろしいですか?」

指示を乞いつつ、ついて歩く。
表情にも声色にも喜色は滲んでこないが、
少なくともネガティブなニュアンスはない。

「そう、なのですね。
 案内のお礼になるかは分かりませんが、
 トーリは、お菓子を作るのが好きです。
 必要な道具は。教えられるかも、しれません」

互いが歩幅を合わせるタイプだと、
歩みはどうにもぎこちない。
意識的に少し後ろをついて歩くようにする。

「この時期なら。『あじさい』や『雨のしずく』
 透き通った水色。自然な薄紫の『ゼリー』や……
 『琥珀糖』のような和菓子も、良いかもしれませんね」

         「トーリの。好みの話ですが」

相手が『話好き』に映ったからか、
『白岸・ノエル・トーリ』は話題を投げかけるのを止めない。
あるいは、趣味の話ができてテンションが高いだけかもしれない。

532尾藤 風花『ハーベストムーン・メランコリー』:2023/06/21(水) 20:05:48
>>531
「はーい、トーリさーん。」
そう言って手をふる。
ちょっと頭が悪そうな返し方である。

「あぁ、そう言えば名前を言ってなかったにゃー。
 私の名前は尾藤風花(びとうふうか)って申しますよ。」

「呼び方はおまかせするにゃ。
 ちゃんとか『っち』とかでも構わないにゃー。」
後ろ歩きをしながら手をふる。

「はーん、和菓子かぁ。
 あたしはそこまで難しいのは考えてないけどにゃー。
 そう、簡単にできそうなとこから始めたいにゃ。」

「そーゆーのだとどういうのがあるかにゃー?」

533白岸・N・トーリ『ダムゼル・イン・ディストレス』:2023/06/21(水) 20:18:59
>>532

「では。トーリは、尾藤さんとお呼びします。
 尾藤さん。改めて、よろしくお願いいたします」

         ペコリ

『頭の悪さ』を感じたかどうかは、
その所作からは窺い知れない。
仮に感じたとして、変わらないのだろう。

「そう。……ですね。難しいお菓子の話でした。
 トーリは。お菓子の話をする相手が、多くなくて。
 つい、気分が高まってしまったようです」

        「失礼を、いたしました」

          スタスタ

「……簡単な。気軽に作れる物で。
 『製菓』の醍醐味を味わえる物なら……
 尾藤さんは、自宅に『オーブン』はお持ちですか?」

階段に差し掛かりながら、少し考えて、問いかけた。
『簡単なものを』 そう指示されたのだから、そうする。

534尾藤 風花『ハーベストムーン・メランコリー』:2023/06/21(水) 20:44:48
>>533
「んまぁ、趣味を段々と上達させてくってのも
 わるくないかにゃー。別にそういうのは機にしなくていいにゃ。」
と言って微笑みかける。
後ろ歩きしながらも周囲を把握するかのように人混みを避けているようだ。

「うーん、オーブンは持ってないけど…
 電子レンジならあるなぁ。
 電子レンジでも作れるタイプのお菓子?」
じっとトーリのことを見ながら質問をする

535白岸・N・トーリ『ダムゼル・イン・ディストレス』:2023/06/21(水) 20:57:17
>>534

「お心遣い。ありがとうございます。
 趣味は……上手くならなくてもいいものですが、
 向上心を持つことは、とても。尊いことだと」

        フ…

       「トーリは。そう思います」

口元に僅かに笑みが浮かぶ。
そうするべきだと思ったから。

「そう、ですね。
 オーブンは使わず、レンジは使う、
 暖かいお菓子でしたら……例えば。
 マシュマロと牛乳、チョコレートで作る『プリン』」

      「そのようなものは、お好きですか?」

『白岸・ノエル・トーリ』もまた、
話に集中して、視線を合わせていても、
歩いている人にぶつかる事は無い。

『できる』人間同士だ。
ぎこちない歩みは既にごく自然に修正されている。

536尾藤 風花『ハーベストムーン・メランコリー』:2023/06/21(水) 21:34:16
>>535
「まぁねー、趣味に夢中になれるのはとても平和的だと思うからにゃー。」
どうも平穏を臨んでいるふうである
「だからこそ、向上心を持つのはいいことですにゃー。」

「甘いものなら何でも好きだけど、
 プリン!それはとても美味しいにゃ!」
どうやらプリンは好きなようである。
風花は楽しそうに返事を返す。

「他にも出来るものがあったら色々教えてほしいにゃー
 お菓子専門の家電製品は持ってないから、その範囲内で。」
階段を登りながら会話も弾んでいく

537白岸・N・トーリ『ダムゼル・イン・ディストレス』:2023/06/21(水) 21:40:19
>>536

「平和的。……そうですね。
 大衆が趣味に打ち込んで。
 仕事でないものごとの腕を磨けるのは、平和の証で」

「とても。素晴らしいことだと、トーリも思います」

フレーズ選びにやや独特な物は感じたが、
あえてそれを指摘はせず、首肯に留めた。

「他には……『ティラミス』
 甘いお菓子が好きでしたら、
 冷蔵庫と。時間さえあれば作れます」

      「材料は…………少し。
       専門的な物が、ありますが。
       地階にある輸入食品店になら、
       質のいいものが売っていました」

『マスカルポーネチーズ』はティラミスの必需品だ。
代用もできなくはないが、『違う』ものだ。

「ご案内のお返しを。あとでさせて下さい。
 もちろん、それも……ご迷惑でなければですが」

階段を上り切ると、すぐに『製菓用品店』が見える。

「ああ……トーリの行きたいのは、あの店です。
 階段を登れば、ほんのすぐのところだったのですね」

近くにあっても、目に見えない物は見つけられない。
道を探すのが苦手な『トーリ』にとっては、それは尚のことだ。

538尾藤 風花『ハーベストムーン・メランコリー』:2023/06/21(水) 22:04:40
>>537
「お、トーリも理解してくれるかにゃ?
 そう言われるとあたしも嬉しい!!」
楽しそうに返事を返す。
よほど共感されるのがよかったのだろうか。

「ほうほうー、ティラミスかぁ。
 苦味もあって最高だにゃー!
 それの作り方もぜひとも知りたいにゃー」

と、話しているうちに製菓洋品店が見えてきた。

「思ったよりも到着が早かったにゃ―。
 あ、お返しならあたしは…もちろんもらうにゃ!」
楽しそうに返事を返す

539白岸・N・トーリ『ダムゼル・イン・ディストレス』:2023/06/21(水) 22:53:32
>>538

「トーリは思った事を言っただけですが。
 尾藤さんがそんなに喜んでくださったのなら、
 思っているだけでなく、口に出して良かったです」

どこが琴線に触れたのか――も、
無理に掘り下げはしない。
言葉通り、喜んで貰えたならそれでいい。

「ええ、甘苦い味がお好みでしたら。
 トーリはとても、おすすめします。
 お菓子作りは分量が命ですが…………
 コーヒー粉の量や種類は、お好みに出来ますので」

「こだわるほど好みの味に仕上がることは。
 きっと、とても。素敵な体験になるでしょうね」

――『言葉では』それを理解している。
『白岸・ノエル・トーリ』の製菓にアレンジはない。

「それでは。まずはトーリが、道具をご案内します。
 ティラミスと、プリンなら……『泡立て器』と。
 お持ちでなければ、冷やすための『バット』
 形を綺麗に整えたければ……お好みの器もあれば、
 とても。高揚した気持ちで、仕上がりを待てますよ」

『製菓用品店』にゆっくりと歩いていきながら、
『尾藤』に、一つ一つ、ゆっくりと説明をしていく。

  「泡立て器は機械の方が、とても楽です。
   手作業の醍醐味を、否定はしませんが……
   値段が理由であれば、『ハンドミキサー』を。
   トーリは……心から、お薦めします」

      「他のお菓子にも、使えるものですから」

この『買い物』はその後も、そうした顛末で進んでいくのだろう――

540尾藤 風花『ハーベストムーン・メランコリー』:2023/06/22(木) 00:13:26
>>539
「なーに、そう思うってことは平和主義者ってことだにゃ。
 あたしはそ〜言うのと友だちになりたいと思ってるの!」
どうやら友だちになりたいというのは本心からのようだ。

「ティラミスの重要なところは苦味と甘味のバランスだからにゃー、
 あたしはどっちかと言うと甘さが多い方がいいかも!」

「ふむふむ…・
 勉強になるにゃー。
 とりあえず一式揃えてみようかにゃ。
 初心者だしハンドミキサーを選んで見る!」
どこか微笑ましいやり取りを繰り返しながら買い物は続く

「せっかくだし、レシピ本とかも買ってみようかにゃ」
そんな感じで二人の会話は続いていく。
もしかしたら別のお店でも買い物をすることになるのかもしれない。

541功刀 初雪『サクラ・ブルース』:2023/07/02(日) 22:18:57

              スタスタスタ

その少女が歩くのは速い。
小さな体で、人の隙間を抜けるように歩く。

「…………」

長い白髪――――その左右に一房ずつ、黒い房があり、
白いリボンのついた、大きな鍔の黒い帽子をかぶっていて、
目には主張の薄い丸めがね。両耳には、『吉祥結び』の黒い耳飾り。
和のエッセンスを取り込んだゴシックなワンピースの上に、
『羽織り』を纏理、足元はブーツ――――所謂『和ゴス』のファッション。

       説明に時と文字を要するその装いは、
       その分だけ厚く少女を包む、十重二十重の『戦衣装』だ。

         スタスタ …スタ
  
脚を止めたのは『アイスクリーム』の店の前だ。

今は混んでいるなら>>542の後ろに並ぶかもしれないし、
あるいは、目立つものやことがあるなら、それに目を止めるかもしれない。

542烏丸 レイ『グレゴール・ザムザ』:2023/07/04(火) 19:56:20
>>541
「楽しみだなぁー…!」
初雪の眼の前にいるのはマフラーを首に巻いた少女。
何かを楽しみにしているようでチラシを見ながら
混み合ったアイスクリーム屋の前で順番が来るのを待っているようだ。

チラシには何らかのヒーローのコラボ商品のようなものが見える。

543功刀 初雪『サクラ・ブルース』:2023/07/05(水) 11:17:36
>>542

特に何も言わず、『烏丸』の後ろに並んだ。

         ガヤガヤガヤガヤ

少しずつ列が進んでいく・・・
ちょうど『烏丸』がチラシを見ているタイミングで、
グループ客が何かの理由で列を抜けたようだった。

「…………」

        トントン

後ろから、ごく小さく背中をつつく。

「前。列っ。ちょっと進んでるんですけどぉ?」

言われなくても『烏丸』もすぐ気づくような事だが、
『言えること』があるなら言わずにいられない。

「そんな夢中になるほど面白いもんなのぉ? ソレ」

別にそんなに夢中ってほどの話でもないのだ。
一つだけ確かなことがあるなら……『烏丸』は何も悪くない。

544烏丸 レイ『グレゴール・ザムザ』:2023/07/05(水) 15:29:29
>>543
後ろから声をかけられて
夢中になっていたチラシから視線をそらす
「えっ?」
ふと顔をあげると、たしかに列が一つ空いているようだ。

「すいませーん、足を止めてるつもりはなかったんだけどなぁ…」
軽く後ろの人(初雪)に向けて謝ると、列を詰めるために歩く。

「面白いかと言うと、面白いです!
 一度見れば深みにハマりますよもう!
 特撮はいいですよ!一見子供向けなんですけど
 結構深い設定があったりして奥深いというか…」
夢中になるか、という返答をした結果
どうやらレイは本当に夢中になり始めたようだ。
よっぽど特撮が好きなんだろう。

545功刀 初雪『サクラ・ブルース』:2023/07/05(水) 19:42:49
>>544

「でも、私が歩くのよりも遅かったじゃない。
 早い人より遅いっていうのは止まってるのと同じよ」

無茶なことを言いながら、自身の口元に袖を当て、
『烏丸』の歩みにぴったり沿うように前に進んだ。

「ふぅ〜ん。トクサツ、特撮ねえ。
 そういうのはあんまり見てこなかったわ。
 ヒーローが悪役を倒して、爆発するんでしょう?」

列はまた、進むのがゆっくりになり始める。
しばらくは話をする事に……あるいは羽目になった。

「爆発するのは『子供向け』よねぇ。
 大人向けの『深い設定』ってのは例えばどんなの?
 男女がドロドロの恋愛劇をしたりするのかしら。
 それとも『イデオロギー』の違いで闘争をするの?」

『そんなの無いだろ?』というナメを感じる語調だ。
赤いメイクで整えた目を細め、『烏丸』の返答を待つ。

546烏丸 レイ『グレゴール・ザムザ』:2023/07/05(水) 20:16:35
>>545
「えー、まあそんなもんなんですかね。
 遅れないように気をつけます…」
少しめんどくさそうな感じで答える。

「まぁ基本的なプロットはそうだけど…
 それだけじゃなくてロボットに乗ったりもするし
 必殺技も色々とあって、絵的にも見て飽きないものですよ」

「お、鋭いですね。まさにそんな感じです。」
驚いたようにレイは答える。まさかの返答だろうか?

「ドロドロの恋愛劇は見ていてなかなか心に響くんですよ。
 そして敵と味方で信念のぶつかりあいもあり、なかなかかっこいいというか。
 子供が見栄えで楽しむなら、大人はその裏にあるストーリーを読み取って楽しむように
 できてるんだなーと感心してますよ。」
どうやら初雪はレイの言う『深い設定』を言い当てているようだ。
余計に楽しそうに話し始めている。

547功刀 初雪『サクラ・ブルース』:2023/07/05(水) 21:41:46
>>546

「分かればいいのよぉ。
 人は少しずつでも進歩していくもの。
 昨日より賢く……明日はもっと賢く。
 それが人生というものだから」

           フフフ

めんどくさいヤツに引っかかったのかもしれない。

「え? …………ああ、そう、まあそんな感じよね?
 私は、作劇も、少し。齧っているから。博学なの。
 だからそういうの、ある程度分かってしまうのよね。
 そう、子供向け番組とはいえ……………ああ!
 大人も一緒に見るのだから、そうするものよねぇ」

袖は口元のまま、少し目を泳がせたが、
褒められて悪い気をする人間はいないものだ。

「で? その『特撮』のチラシを、
 なんだッて……こんなところで見ているのよぉ。
 おもちゃ屋さんの前だったら分かるけれど?」

少し前に進みつつ、そっとチラシを覗き込もうとする。

548烏丸 レイ『グレゴール・ザムザ』:2023/07/05(水) 21:57:52
>>547
「まぁそのー、はい。
 まぁこれからも頑張っていきます」
なんだか得意げな初雪をみて、少し苦笑いしながら答えを返す。

「まさにそんな感じです。それならば話が早い。
 実際に大人と一緒に見るためのものだからああいう作りになってるんですよ。
 親子で一緒にヒーローの話をしたりするのはとても楽しいですよー。」
どこか感慨深そうにうなずくレイ。
どうやら経験があるようだ。

「おや、知らないんですか?」
そう言ってチラシを見せる。
「このアイスクリームのお店でコラボしてるんですよ。
 ホラ、キャラデコ付きのアイスケーキ。」
指さした先にはヒーローのデコレーションが施された
ミニサイズのアイスケーキの写真が描かれていた。

「おまけでグッズももらえると聞けばいても立っても居られなくて。
 でも結構人が多くて驚いてます。」
そう言って視線を行列に向ける。
前が空きそうになったので、再び前に進んだ。

549功刀 初雪『サクラ・ブルース』:2023/07/05(水) 23:46:15
>>548

「そうしなさいな。ええ、そうするといいわ。
 そうしたら……あなたが頑張ってる間に、
 おサボりしている雑魚どもの事は追い抜ける。
 『天水桶』の小魚から、『龍』にならなくては……ね」

笑いもせずに返した。

              「けほ……」

小さく咳をしてから、袖を口から離す。

「あぁ……そうか、だから妙に親子連れが多かったのね。
 いい迷惑。私はアイスが食べたいだけなのに!
 ファンも潤い、お店も潤う、干からびるのは部外者だけ……」

                       フン

「……ま、家族団らんと商業主義にイライラする程子供でもなし」

アイスケーキを確認すると、
それ以上は特に興味を示さずに、
列に並ぶ人間達に目を走らせた。

「……親子でッて事は、あなたの特撮好きは親譲りかしら?
 だとすれば、随分幸せな『一子相伝』」

進むのに合わせて進んだ。少しずつ、注文を取る場所が近付いてくる。

550烏丸 レイ『グレゴール・ザムザ』:2023/07/06(木) 00:08:23
>>549
「なるほど、よくわかりませんけど
 応援されてる、ってことですね。
 どうもありがとうございます!」
彼女の言葉に感謝の言葉を述べるレイ。
頑張れば頭一つ抜けられる。という意味に捉えたんだろう。

「うーん、人混みは苦手な方ですか?
 自分としては、子供が多くて賑わってるのは見てて愉しいですけど。」
あたりの子供の様子を見ながら答える。

「まぁ、普段から来てる人にはちょっと迷惑なのかもしれないけど…」
急に人が増えるのは驚くことかもしれない。と察する。

「そりゃもう!」
親譲りか、と聞かれ大きくうなずく

「お父さんはいろんな怪人役を演じてきたスーツアクター!
 そしてお母さんも子供の頃からずっと特撮ドラマを見てきて大ファン!
 結婚したのは必然だったんです!」

「それにかっこいいマフラーも誕生日にもらえましたし
 実に素晴らしい一子相伝ですよ!」
そう言ってマフラーをたなびかせる。

551功刀 初雪『サクラ・ブルース』:2023/07/06(木) 09:23:43
>>550

「……あなた、ばかに素直なのね。つまんない。
 いいわぁ、そういう事にしておきましょう」

「案外、あなたみたいのが龍になるのかしら?」

目を細めて呟き、顔を上げる。

「人混みが得意なんていうのは…………けほ。
 感覚が麻痺してるだけ。偉いことじゃない。
 ……まぁ、けれど、文句は言わないわぁ。
 あなた達のお陰で、この店が長く続けば良いのよ」

口元を抑えつつ、また一歩進んだ。
メニューの紙冊子を一枚取りつつ――

「へぇ、驚いた。本当に『相伝』なのね。
 お父君の……『スーツアクター』というのは、
 とてもフィジカルエリートだと聞いているから。
 あなたもさぞかし……体が、強いのでしょうねぇ」

            じ・・・

その足先から頭までに、舐めるような視線を向けて。

「将来はスーツアクター……いえ、特撮女優かしら。
 あなたは器量が良いから。隠すのは勿体無いわ」

堂々とたなびく布に視線を戻してから、そう続けた。

552烏丸 レイ『グレゴール・ザムザ』:2023/07/06(木) 18:47:55
>>551
(なんかバカって言われたような…?)
「龍かー、ドラゴンも結構魅力あっていいなぁ。
 …いっそ拳術もまなんでみようかな…」
龍になる、という言葉に興味を惹かれるようだ。

「うーん、まぁ人が多すぎる場所は私も好きとまでは言わないですけどね。
 まぁ、賑やかぐらいなら歓迎ですよ。」
そう言って一歩先へ進んでいく。

「うちのお父さんはもう体力おばけで、偶に一緒に運動したりしますね。
 体は、まぁ強いかも…変身、いや…鍛えてるつもりなんで!」
そう言ってマフラーをたなびかせる。
(うっかりスタンドのことを言いそうになっちゃった。
 こういうのは普通の人にはわからないし…黙っとこう。)

「嬉しいですね、そんなことを言われると。
 将来は、そんな職業やってみたいです。」
真っ直ぐな目をしながら告げた。

「あ、そろそろ注文できそう。」
視線を前に向ける。
どうやらカウンターは近いようだ。

553功刀 初雪『サクラ・ブルース』:2023/07/06(木) 19:33:59
>>552

「けぇんじゅつぅ……?
 ……ま、お猿さんみたいに殴り合うのよりは、
 ずっと文化的で、護身にもいいんじゃなぁい?
 ヒーローも武器を使うのがメジャーみたいだしぃ」

鼻を鳴らし、間延びした口調でややズレた回答を返す。
店頭には『特撮ヒーロー』のポスターが飾られており、
どの戦士も斧やら銃やらでしっかり武装していた。

……口元を抑える。

   「けほ」

「いいわねぇ、『変身』する程、鍛えられるなんて」

すぐ前の客が注文を取られている――――
やはり家族客なので、多少の時間はかかるだろうが。

「真っ直ぐすぎて……何にも引っ掛からなくて。
 あなたは本当に龍みたい。……もしくはウナギね」

        フン

「ほら、あなたの番が来るわ。お返事はその後でいい」

そう言うと、アイスの並ぶケースの方に視線を向けてしまった。

554烏丸 レイ『グレゴール・ザムザ』:2023/07/06(木) 21:37:07
>>553
「いやまぁ、殴り合いの方の拳術の話…だったんですけどね。
 …でもまぁ武器を使った戦いも悪くないかも。」
少々ズレたことを言っていることに気づくが
武器の使い方を覚えるのもいいか、と初雪の言葉を聞いてうなずいた。

「あーそうそう、変身に必要なのは鍛え続けることですからね!
 ウナギ…?うーん…褒められているのか…」
ヌルヌルしているイメージが有るウナギ
果たしてどのような理由があるのか…と少し考えてしまう。

「あ、順番が来たんですね。
 ありがとうございます。」
感謝の言葉を述べて、ケースの前に立つ。

「どうもすみませーん、これをおねがいしまーす。」
そう言ってケース内に並んでいるアイスケーキを指さした。
写真に写っていた通りのデコレーションが施されている。

555功刀 初雪『サクラ・ブルース』:2023/07/07(金) 08:31:55
>>524

「……あら、そう?
 でもまあやっぱり殴り合いより武器の方がいいわぁ。
 格闘は勝負を成立させる為に体重制限が必要。
 競技なら良いけれど、実戦ではどうしても不利よ」

    「武器術なら手弱女でも益荒男を御せる。
     『薙刀』はその為の武器とも言われるわ」

誤解に気づいたが謝ったりはせず、
さらに講釈を重ねていくのがこの少女のスタイルだ。

「さぁ? 貶されてると思うならそうなんでしょう。
 私はウナギ、嫌いじゃないわ」

龍にそれ以上言及はせず、アイスのケースを眺める。
どの味にするかを選ぶため――など、に。

『烏丸』が注文を済ませると、後に続く。

「それ。あと、それも」

        スッ    スッ

「ワッフルコーンにしてちょうだいね」

手短に注文を済ませ、あとは多少待てば双方会計だろう。

556烏丸 レイ『グレゴール・ザムザ』:2023/07/07(金) 21:15:48
>>555
「まぁ…男女でも同じくらい鍛え上げた人間同士だったら
 男側のほうが上回るらしいですし…
 ある程度武器の使い方を覚えといたほうがいいかも…」

「長物は悪くなさそう…薙刀かぁ…
 槍は調達が難しそうだけど、そのへんの棒をうまく使えるようになれば…」
彼女の言葉を熱心に聞いているようだ。

「ウナギは、私も大好きですね。
 うな丼なかなか食べられないけど…」
そういいつつ彼女の選んだものを眺める。

「そっちも美味しそう…」
そういってもっと注文しようかと迷っているらしい。
「いや、流石に買い過ぎになりそうだからやめとこう…」
とりあえず会計を支払い始めたようだ。

557功刀 初雪『サクラ・ブルース』:2023/07/07(金) 22:52:22
>>556

「らしいも何も……」

二段重ねのアイスクリームを受け取って、
店の前から少し離れる。人混みのは好きじゃない。

「……でも、あなた、着眼点はいいわねぇ。
 そう、棒は町のどこにでもあるから。
 それに、持ち歩く方法も多いものね」

視界の端には『雑貨屋』の軒先の傘が見える。
易く扱える武器としては最も手に入れやすいだろう。

「うな丼も、私も好きだわ。
 最近は少し大声では言いづらい好みになったけれど」

       「けほ」

「悪いけれど、分けっこしてあげる気はないわぁ。
 私はこれが好きでこれを頼んだのだから」

             シャク

上に乗った季節のフルーツジェラートを少し齧り、
咀嚼する口元を袖で隠しながら続ける……

「そういえば名前を聞いていなかったわね、ウナギちゃん」

『先に名乗れ』という意味だろう。そこで言葉を止めてしまった。

558烏丸 レイ『グレゴール・ザムザ』:2023/07/07(金) 23:30:54
>>557
「最近は棒を持ち歩いてるだけでも職質されるような世の中ですからねー。
 あるいはカバンを武器にするとかのほうがまだやりやすいのかな…」
どうやら、棒などをカバンに入れることを考えているらしい。
どちらかと言うと暗器使いになってしまいどうである。

「ウナギが希少になったから食べるの難しいんですよね。
 そのうち増やせるようになればいいのに…」

「…まぁ、流石に分けてもらおうとは思ってないです。
 なんか、申し訳有りません。」
そう言ってケーキを手に取る。
ドライアイス入の箱に入れてもらったようだ。

「あ、すいません名前はウナギじゃないです。
 私の名前は…烏丸レイと言います。
 この辺の学校で学生してます。よろしく…。」
そう言って頭を下げる。

「えーっと、そちらの名前は…」

559功刀 初雪『サクラ・ブルース』:2023/07/08(土) 00:18:53
>>558

「された経験があるのかしらぁ?
 まぁ、特別な事には理由か、
 隠す方法を用意しておかなきゃね」

踵を返す。

「思ってないなら。……けほっ、謝らなくていいのに。
 気が強いんだか弱いんだか。でも嫌いじゃないわ」

     「あなたは私が嫌いかもしれないけどぉ。
      それだったら名前は名乗らないわよね」

そして歩き出す前に、一度だけ振り向いた。

「『初雪』」

  クヌギ ハツユキ
「『功刀 初雪』
 この辺の学校で学生をしているわ。
 だから、また会う事もあるでしょう」

          スタスタスタ

「次にあったら棒術の腕でも見せてもらおうかしら」
          
           「それじゃ、またね。  
            ウナギのレイちゃん」

目的はアイスを買う事、話はそれまでの過程だ。

今はそれ以上は無いが……
過程が何かに繋がる日も、いずれ来るかもしれない。

560烏丸 レイ『グレゴール・ザムザ』:2023/07/08(土) 00:41:42
>>559
「ん、まぁ…あるかな…」
どうやら経験があるらしい。

「いやー、別に嫌いなわけではないけど…
 特に気にしないでください。」
と言ってうなずいた。

「初雪さんですね。
 …同じ学校の人かな。
 またどこかで会いましょうか」
そう言って手を降った。

「ウナギじゃなくてー、烏丸ですー」
最後に一言添えて見送った。

いずれまた出会うことになるのだろうか…
それはまだわからない。

561パンドラ『ブレインボックス・P』:2023/09/23(土) 13:02:17
ショッピングモールの売り場
ふかふかのベッドに銀髪の少女が寝転がっている

562パンドラ『ブレインボックス・P』:2023/09/25(月) 21:43:43
>>561
ふかふかのベッドの柔らかな感触に身を任せていると思い出す
エクリプスに身を置いていた頃は、こんなベッドで寝ていたなと

優しい感触に包まれ、つい眠ってしまったパンドラ
もうこんな時間か…
お腹が空いた…

このショッピングモールのフードコートにはモスバーガーがあったはずだ
月見も近いし、CMでやっていた月見フォカッチャが食べたいな

そう思い立ち、フードコートへと向かうパンドラ

ところが…

「!?」

パンドラは絶句した
モスバーガーに張ってあったポスター
そのポスターのタレントの写っている部分が、テイクアウトのシールで隠されている

これは一体どういう事なのだ?
どうしても気になったパンドラはすぐさまスマホで調べた

自分が封印されている間にジャニー喜多川が死んでいた事にも驚いたが
性加害で絶賛炎上中とは、開いた口が塞がらない
この間のビッグモーターといい、ジャニーズといい
調べれば調べる程闇が深まり底が見えない、奈落にでも繋がっているのではないか?
同族経営の悪いところが諸に出てしまっている

自分が封印されている間にこんな事になっていたなんて…
パンドラには一瞬の出来事でも、長い時が経っていた事が伺い知れる
とんでもない時代に目覚めてしまったな…

エクリプスで楽しくやってた頃に戻りたい…
昨日の事のような過去を懐かしみながら、フォカッチャとティーサングリアを堪能したパンドラだった

563『ルート選択式の場スレ交流(試験導入)』:2023/10/21(土) 13:38:14

本日の天気は快晴。
気持ちの良い爽やかな秋空が広がっていた。
ここ『スカイモール』は、今日も来場者達で賑わっている。
言い変えれば、多くの『可能性』が存在する状態だ。
もしかすると『今から行く場所』によって、
『この後の時間の過ごし方』も変わってくるかもしれない。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

・『ショッピングモール』に行く→『鵲愉子』と出会う
・『展望台』に行く→『百目鬼小百合』と出会う
・『フードコート』に行く→『美作くるみ』と出会う
・『博物館』に行く→『小石川文子』と出会う
・『外』に出る→『ラッコ』と出会う

564水瀬海恋『FFwF』:2023/10/22(日) 07:56:01
>>563

(アホほど混みだしたな……)

ある日のフードコートにて。
トレイの上にハンバーガー屋のセットを乗せた女がうろついていた。
ボサボサの長髪と、クマの目立つ目、ジャージ。
社会的な点数が低そうだがそんな人間でもフードコートを使用する権利はある。
あるのだが

(どっか座れるとこないか……?)

流石にここで立ち食いをする気にはなれない。
この際相席になっても構わないので席を探す他ない。

565美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2023/10/22(日) 10:21:57
>>564

適当な場所を探していると、ちょうど空席が見つかった。
首に『ワイヤレスヘッドホン』を掛け、
メンズライクな『アメカジ』でコーディネートしたファッションの女。
整った顔立ちをしており、それを引き立てるメイクにも隙がない。
外見から窺い知れる共通点はないに等しいが、年齢だけは近そうだ。
その向かい側の席が空いている。

(そろそろ門倉さんと話し合っておきたいんだけど…………)

テーブルの上にあるトレイには、
チキンのホットサンドとカップ入りのスープが乗っている。
それらと共に一台のスマホが置かれ、
画面に表示されているのは『有名動画サイト』。
『電気カナリアの止まり木』と名付けられた『美作くるみ』のチャンネルだ。

      スイッ

不意に気配を感じて、テーブルから目線を上げる。

「――――あ、どうぞどうぞ」

気さくに声を掛ける顔は、画面に映る顔と同じだった。

566水瀬海恋『FFwF』:2023/10/22(日) 10:35:25
>>565

「すいませんね」

軽く頭を下げて席に座る。
その時、視界に画面が飛び込んだ。

「ん……」

(動画投稿者か……最近そういう人も増えてるんかな。一億総発信時代やったか)

とはいえ少し物珍しがったらしく、動きが止まっていた。

567美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2023/10/22(日) 11:25:09
>>566

チャンネル内には別チャンネルのリンクも貼られていた。
そちらは『Electric Canary Garden』とある。
併記された説明書きを見る限りでは、
星見町で放送しているラジオ番組の公式チャンネルだ。
その番組のパーソナリティーが個人的に動画をアップしているのが、
この『電気カナリアの止まり木』らしかった。
いわゆる投稿者や配信者とは少し事情が異なるようだ。

「…………?」

動きを止めた相手の視線の先を、自身の目で追った。

「あはは…………」

まもなく理由を理解し、取り繕うように苦笑する。

「お恥ずかしいです」

そして、軽く会釈する。
当該チャンネルの中では名前も出ており、
『美作くるみ』というのが向かいに座る女の名前らしい。
画面の中では自信に満ちた笑顔を浮かべており、手慣れている感があった。

568水瀬海恋『FFwF』:2023/10/22(日) 18:30:51
>>567

「いや」

「うちも人のスマホを見るんはマナー違反やし」

そう言って、カップの蓋を外して口をつける。

「まさか、芸能人の人に会うとは思わなんだけどな」

569美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2023/10/22(日) 19:31:32
>>568

登録者数は、すごく多いという訳ではないが、極端に少なくもない。
有り体に言えば『それなり』だ。
最新の動画のタイトルは、
『電気カナリアはアンドロイドの夢を見るか?』であり、
サムネイルから読み取れる内容は『AI』に関する話題だった。

「見えるような形で置いていた私も悪いですし――――」

ホットサンドを取り上げ、端の方から齧る。

「ここはおあいこという事で」

先程の苦笑いとは違い、明るい表情で付け加えた。

「今、企画の一環として、ちょっとした『アンケート』を実施してるんです。
 お時間は取らせませんから、もし差し支えなければ、
 ご協力をお願い出来ないでしょうか?」

動画内で視聴者から募集している『コメント』。
『仮想アイドル』を作り上げる為の『事前調査』として集めた情報だが、
せっかくならネット以外の意見も取り入れてみたい。
美作にとって、全ての機会はチャンスなのだ。

570水瀬海恋『FFwF』:2023/10/22(日) 21:56:49
>>569

「……別にええですけど」

包み紙を剥がす。
ダブルチーズバーガーだ。

「なんか、意識調査的な?」

「たまに駅前で声掛けてる人おりますけど、そんなん?」

571美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2023/10/22(日) 22:46:07
>>570

「意識調査というほど大袈裟じゃないですけど、似たようなものではありますね」

「ここ最近、『AIの進歩』が話題になってるじゃないですか。
 どんどん人に近付いていってるというか。
 そこで、逆に『人をAIに近付けてみたら?』と考えた訳です」

    「見てもらった方が早そうですねぇ」

          ススッ

指先でスマホを操作し、『最新の動画』を再生する。
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1688976640/24

「こんな感じで、『理想のAI案』を募集して、
 私が『AIを演じる』という企画なんですよ。
 動画にもコメントを頂いてますが、
 それ以外のアイディアも取り入れておきたいなぁと」

       スゥッ

話の途中で、スープの入ったカップを口元に運ぶ。

「だから、『どんなAIがあればいいと思うか』について、ご意見を伺いたいんです」

572水瀬海恋『FFwF』:2023/10/22(日) 23:02:09
>>571

「思ったよりも壮大なんが来たな」

割合本音だった。

「AIなんやから生活を良うしてもらう方がええでっしゃろ」

少し、食べるのをやめて思案する。

「あーあれやな。肯定してくれるやつ」

「そういうのちゃう」

573美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2023/10/22(日) 23:30:18
>>572

「なんといっても人の作るものですから、
 人の為になってくれなきゃ困りますよねぇ」

朗らかに微笑を返しつつ、ホットサンドを頬張る。

「『肯定』――――ですか?
 つまり、励ましてくれるとか背中を押してくれるとか…………」

何気なく投げ掛けられたのは、想像していたよりも意表を突く答えだった。

「物理的に役立つだけじゃなくて、精神面のサポートもしてくれるAI。
 とっても素敵なアイディアじゃないですか。
 『生活を便利にする』とか、物質的な部分は割と思い浮かびますけど、
 そういう『形のない部分』となると、なかなか考えつきませんよ」

人間を応援してくれるAI。
それも、個々人に合わせた最適な方法で。
これは『仮想アイドル』の設定に組み込めそうだ。

「特に、日頃からストレスを抱えがちな現代の人達には、
 どんな機能よりも望ましいのかもしれませんね」

574水瀬海恋『FFwF』:2023/10/22(日) 23:56:20
>>573

「励ましてくれるって言うか」

「そういうポジティブなんやなくて」

「ほんまに『肯定』してくれるってだけやけど」

ポテトをかじり。

「まぁ調理は任せますわ」

「うちより得意そうやし?」

575美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2023/10/23(月) 00:41:29
>>574

「あぁ、何となく分かりました。
 『頑張れ頑張れ!』じゃあなく、『それでいいんだよ』って感じですね」

          ――――――ピッ

納得したという意思表示を込めて、人差し指を立てる。

「積極的に支えるというよりも、そっと傍に寄り添うというか」

徐々に方向性が固まっている気がした。
この着想を中核に据えてもいいかもしれない。
多様な意見を集める事には大きな価値があると再認識する。

「私も一応プロの端くれを名乗ってますから。
 『お喋り』なら得意分野ですよ」

       パクッ

「進化する『AI』に負けないように、
 『日進月歩』の気持ちで前進を続けていくつもりです」

          クイッ

「『初心忘れるべからず』とも言いますから、
 それも心掛けつつになりますけど」

言葉の合間に、ホットサンドを綺麗に食べ終わり、
それと同時にカップの中身を空にした。

「貴重なご意見ありがとうございます。とても参考になりました」
 
        「ええと――――」

「良かったら、お名前を聞かせてもらえませんか?」

576水瀬海恋『FFwF』:2023/10/23(月) 06:24:20
>>575

「水瀬海恋」

「ミナセカレンや、美作さん」

カップの中身が空になり、包み紙に包まれていたハンバーガーも無くなった。

「あんじょうよろしゅう」

577美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2023/10/23(月) 06:49:52
>>576

「水瀬さん、ですね。改めてご協力に感謝します」

       ガタッ

「お陰様で有意義な時間を過ごせましたよ」

気持ち深めに頭を下げると、スマホをジーンズのポケットに入れ、
トレイを持って椅子から立ち上がる。

「それじゃ、この辺で失礼します。
 いつか時間が空く時があったら、一度『ラジオ』も聴いてみて下さい。
 私の『本業』ですから」

別れ際に改めて振り返り、くだけた笑みを向けた。

「――――良い一日を」

578小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/11/05(日) 17:53:39

展望台に立つ人影。
『喪服の女』が街を見下ろしている。
その横顔は物憂げで、誰かを案じるような色を帯びていた。

  ――『小林さん』……あなたは……。

『小林丈は生きている』。
特殊な伝手と友人の協力を通して、
小石川文子は『小林の消息』に関する手掛かりを得た。
彼は『アポロン・クリニックセンター』の『旧病棟』に運ばれたという。
何らかの『治療以外の目的』の為に。
詳細は不明ながら、彼が生きている事だけは事実のようだ。

  ――きっと『彼を待っている人』がいる……。

『真実』を公表すれば、『救われる人間』がいるだろう。
しかし、それは出来ない。
小林が自らの意思で人々の前から姿を消したとしたら、
彼の思いを無為にしてしまう。

  「――小林さん……」

思考の一部が、思わず口をついて出る。
『自分の言葉で救える人』がいるのに、それを明かす事が出来ない。
小石川文子は、胸の奥に秘める葛藤に悩まされていた。

579朱鷺宮 笑美『トループス・アンダー・ファイア』:2023/11/07(火) 20:52:20
>>578
「すいません。隣…いいですか?」
不意に声が聞こえてくる。

「展望台の景色、きれいですよね。」
そう言って展望台に身を乗り出すように外の景色を見る女性。
見慣れた人物であるとわかるだろう。

580小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/11/07(火) 21:18:01
>>579

風景を見つめて佇んだまま、小さく頷く。
『声の主』が誰なのかは見なくとも分かった。
最も親しい友人の一人。

  「私も、この景色が好きです……」

二人の眼下には、秋の深まる星見町の街並みが広がっている。
無意識の内に往来する人々を眺めていた。
もしかすると、そこに『彼がいるのではないか』と思えて。

  「……小林さんも、どこかで同じ景色を見ているのでしょうか?」

どうしているかは知る由もないが、間違いなく彼は生きている。
きっと同じ空の下にいる筈だ。
今、彼は何を思っているのだろう。

581朱鷺宮 笑美『トループス・アンダー・ファイア』:2023/11/07(火) 21:38:48
>>580
「フヒヒ、実を言うと私はたまに子どもたちの世話にちょっとつかれることがありまして。
 そういう時はここで景色を眺めたりするんですよ。
 色々な疲れもどうでもいいかなーってなります。」
小石川に視線を向けて微笑む。
そして改めて、展望台から望む人々の喧騒を眺めた。

「…多分そうなんじゃないでしょうか。
 生きている限り、見える景色は一緒ですよ。
 同じ場所で、と行かなそうなのは少々残念ですけど。」
小石川の言葉に対して、いつもの調子を崩さないまま答える。
小林という人物がどこかで生存しているということは笑美にも理解できる。
ならば、同じように街の何処かでその景色を見ているはずであると考えた。

582小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/11/07(火) 22:09:09
>>581

  「私も……そんな気持ちだったのかもしれません」

          ス…………

やがて景色から目線を外し、笑美の方に向き直る。

  「――大きなものから『前に踏み出す力』を分けてもらうのは、
   とても素敵な事だと思います」

小林丈が何処で何をしているかは分からなかった。
しかし、だからといって、
自分まで沈んでしまっていては元も子もないだろう。
また笑美を心配させてしまうし、
いつか彼と再会できた時に暗い顔をしているのは良くない。

       ニコ……

  「また『同じ場所』で『同じ景色』が見られるといいですね……」

            ――――ピコッ

穏やかに微笑すると、黒いキャペリンハットから『猫の耳』が立った。
どうやら、それは『帽子猫』の『撫子』らしい。
前に見た時のように眠っていたが、目を覚ましたようだ。

583朱鷺宮 笑美『トループス・アンダー・ファイア』:2023/11/07(火) 22:25:33
>>582
「…案外簡単なものなんです。
 一歩踏み出すっていうのは。
 きっと、小林さんも踏み出す一歩を探しているのだと思います。」
視線を小石川に向け、向き合う形となる。

「まぁ、きっとうまくいきますよ。
 ちょっと楽観的かもしれませんが…
 あの夏のクリスマスの時みたいに、同じ場所に居られるときが着ます。たぶん。」
どこか頼りないような、しかしどこか頼もしい口調で笑美は答えた。
自分たちができることに限りがあるだろうが
なんとかなる、という思いは常に抱いているようだ。

「あら、猫ちゃんも一緒だったんですね。」
そう言って帽子を軽く撫でる。

「起こしちゃったかなー?」
楽しそうに撫子ちゃんを撫で回す。

584小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/11/07(火) 22:52:38
>>583

『リヴィング・イン・モーメント(今この瞬間を生きる)』――――
それが小石川文子の知る『小林丈のスタンド』だった。
薄いガラス球にも似た『水槽』の中を漂う『金魚』を思い出す。
少し前の自分と同じく、彼も『自らの道』を模索している途中なのかもしれない。

  「いえ……笑美さんの言う通りでしょう」

  「……上手くいきます」

  「きっと……」

『幸運のおまじない』のように、笑美の言葉を繰り返す。
信じ続けていれば叶えられる。
少なくとも、最初から諦めていては、どんな希望も成就させる事は不可能なのだから。

    ソッ…………

        「――にゃあ……」

黒い帽子を脱いで、胸の前で抱える。
大人しい性格の『撫子』は、頭を撫でられて控えめに鳴く。
細く開いた両目が、静かに笑美を見上げていた。

585朱鷺宮 笑美『トループス・アンダー・ファイア』:2023/11/07(火) 23:41:54
>>584
「まぁ、私達にできるだけのことはやりましたし、
 あとは天命を待つのみですよ。」
彼女の様子を見てどこか励ますように答えた。
笑美もまたいつか、良い方向に実を結ぶことを願っているのだろう。

「うーん、なんというか、いつ見ても可愛いですねこの子。
 ペットと言うかパートナーと言うか…
 こういうかわいい子と一緒だと、ちょっと楽しいかもしれませんね。」
撫子を見ながら楽しげに答える。
笑美は流石に子供のことで忙しく、ペットを飼う余裕もないのかもしれない。

586小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2023/11/08(水) 00:08:06
>>585

小石川が被っていたのは『帽子に擬態した撫子』。
そして、笑美は『撫子を撫で回した』。
すなわち、『撫子を被っている小石川の頭を撫でた』という形になる。
小石川の身長が『170cm』に対し、笑美の身長は『160cm』。
腕が疲れるだろうと思って『撫子』を脱いだのだが、決して嫌な訳ではなかった。

   ――確か……『いつか』も……こうして……。

小石川にとって、それは『幼少期の思い出』を想起させるものでもあったからだ。
まだ幼い頃、当時は高校生くらいの年頃だった笑美に、
優しく頭を撫でてもらったような記憶が、おぼろげながらある。
大人になってから、また頭を撫でられるとは思っていなかったが、
不思議と落ち着く気分になれたのは、笑美が持つ『包容力』のせいだろうか――――。

  「ずっと『一人暮らし』を続けていたものですから……」

  「……この子がいてくれるお陰で『寂しさ』が紛れます」

『ナイの猫の能力』によって生まれた『撫子』は、
あまり活発な方ではなく、家の中でも寝ている事が多かった。
しかし、『一人ではない』。
それだけでも随分と心の持ちようが変わってくるものだ。
今まで自分しかいなかった家に『小さな家族』がいる。
そして、今は隣に『昔からの友人』もいてくれる。

  「『撫子』も笑美さんと一緒にいたいでしょうから――」

          ニコ……

  「……みんなで『お散歩』しませんか?」

『撫子』を抱きながら、心からの表情で笑美に微笑みかけた。

587朱鷺宮 笑美『トループス・アンダー・ファイア』:2023/11/08(水) 18:27:05
>>586
高校生だった笑美と幼少期の小石川。
あの時は笑美のほうが大きく小石川が小さかった。
いつの間にか笑美の身長を追い越してしまったようだ。
「…大きくなったね。」
なんとなく呟いて、ハッとする。

「あ、すいません!なんか失礼なこと言っちゃったみたいです!」
どこか恥ずかしそうな様子で手を放した。

「そ、うですね。…ひとりじゃないってとても心の支えになりますからね。
 撫子ちゃんも、一緒に居られてすごく嬉しいでしょうね。」
そう言って微笑んだ。
ひとりじゃないことは心の支えになる。というのは
小林のことを思ってのセリフでもあったのだろうか。

「いいですね。私もしばらく撫子ちゃんと一緒にいたいですし。
 二人と一匹でのお散歩、今からしましょうか。」
そう言って小石川の隣に並び立つ。

「撫子ちゃんの好きな場所にいきましょうか。
 ちょっと遠くてもお付き合いしますよ。」
そう言ってともにあるき出す。
その日は、多少なりとも小石川にとって安らげる日となるに違いない。

588『スフィンクス・チャレンジ』:2024/01/31(水) 23:57:31

駐車場の片隅に一匹の『猫』が座っている。
『スフィンクス』と呼ばれる『毛のない猫』だ。
どことなく知的な顔立ちをしており、
青みがかった体色と黄金色の瞳は神秘的な雰囲気を醸し出す。
まるで誰かを待っているかのように、遠くの方を見つめていた。
その特異な姿は、ここを訪れた者の目に留まるだろう。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

タイトル:『スフィンクス・チャレンジ』
GM:小石川
危険度:E(実質なし)
難易度:D
募集人数:1名(先着)
報酬:『1万円相当の宝石』or『2万円相当の宝石彫刻』
タイプ:巻き込まれ型(このレスに返した時点から開始)
形式:随時進行(一日一レス以上)
期間:超短期(通常の場スレと同等)

概要:『ロダン』が出題する『謎』を解く。一問一答。ヒントあり。

備考:希望があれば『ステュアート派』と関わりが出来るかもしれない。

589『スフィンクス・チャレンジ』:2024/02/06(火) 08:22:53
>>588

後方から現れた一匹の猫が、『スフィンクス』に近付いていく。
『マンクス』という品種の『尻尾のない猫』だった。
その中でも完全に尻尾を持たない個体は『ランピー』と呼ばれている。
『ノアの方舟』に乗り込んだ際に、
尻尾を扉に挟んで切断してしまった猫の子孫と言われているが、もちろん伝説だ。
最も可能性の高い仮説は、『突然変異の固定化』だとされている。

「君の方から来るとは珍しい事もあるものだ。そうは思わないかね?」

          「――――『ノア』」

『旧友』の気配を感じ取ったロダンは、振り向く事なく『猫語』で語り掛けた。
若い頃は『別の名前』で呼んでいた事もある。
同じ『異端の野良猫』として、行動を共にしていた間柄だ。

「我々の縄張りで複雑な問題が起きている。
 お前の知恵を借りる事に対しては反対する者もいるが、
 『人間』を使うよりは『裏切り者』を動かす方を選ぶ」

皮肉めいた言葉で応じつつ、ノアは踵を返す。

  「『方舟』まで来い。詳しい話をする」

神話上の話ではなく、ノアが率いる『野良猫の集まり』は、そう名付けられている。

「私は『人間の味方』ではなく『知性の信奉者』だよ。
 『種族の違い』など些細な問題に過ぎない」

「『歓迎』は期待できないが、『古巣』に戻らねばならないようだ」

『毛のない猫』と『尻尾のない猫』は、揃って駐車場から立ち去っていった。

590聖川篤虎『ドゥルセ・ネクタル』:2024/02/07(水) 16:58:46


「いやァはやァ」


スカイモール低層のショッピングモールエリアの中心部にある『フードコート』、
明らかに『水商売』を生業をしているであろうスーツ姿の男が、
2人がけの席に1人で腰掛けモール内を行き交う雑踏をぼんやりと眺めている。


「いつもより早く起きちまったから、
 散歩がてら久しぶりに『スカイモール』に寄ってみたが、
 此処はいつ来ても混んでるねェ」

591真雅致 ありや『デビルズインレイ』:2024/02/07(水) 19:54:53
>>590

 配膳トレイを両掌に載せた『シスター』が、
 ふらふら〜〜〜と聖川のいる座席の方向へ歩いてくる。

 『両掌に』というのは文字どおり、片手に『一枚ずつ』という意味だ。
 ジャンクフードで山盛りのヘビーなトレイを、修道女が『二刀流』している。


 「今日は朝から清掃も布教もがんばったんだし……」

     「これぐらいの『御賜』を拝受しても、
      きっと『主』はお許しになるでしょうぅ………」

   「カロリーは『主』が吸い込むから実質ゼロになるというし……」


 しかしほんとのほんとに疲れているのか、足許が覚束ない。
 次の瞬間にはコケそうだ。

592聖川篤虎『ドゥルセ・ネクタル』:2024/02/07(水) 20:41:59
>>591

「さてと、それじゃあ食べるとするかねぇ。
 『500km』も離れた場所で『故郷』の味を頂けるなんてありがてぇ限りだ」

パチン

既に注文した『ソースかつ丼』を食べる為にトレイに置いた割り箸を割ろうとした所で、
目の前を通る『欲張りシスター』に気付いた。


「ちィっとばかし危ないですぜ、お嬢様」


すっと立ち上がり、
シスターが運んでいる両方のトレイを背後から手に取り、
自分の確保しているテーブルの上に置きたい。

593真雅致 ありや『デビルズインレイ』:2024/02/07(水) 23:09:59
>>592 (聖川様)

「―― はえッ!?」

 足をひっかけてトレイが傾く……その瞬間、
 フッと両手が軽くなり、前傾姿勢が安定する。
 
 気づけば両手のトレイが抜き取られて眼前の卓上にあった。
 これは…… なんと優雅な『手練』だろうか……?


                       ト… トゥンク


  「あ、あらぁぁ…………すみませぇん、
   ご親切にありがとうございます……ぅ……」


 ペコリと頭を下げると、男の『靴』に目が止まった。
 そのまま視線を、彼が身にまとう豪奢なスーツに沿って上げていく。
 その『出で立ち』から、なにか感じとったような顔をする。


 「………………あのー……ひょっとして、
  ど、どこかでお会いしたありましたかねぇぇ……?」


 泥酔した上でのハデな夜遊びをいくつもしてきたせいで、
 『記憶にない心当たり』がありすぎた。
 まさか……出禁食らったあの夜の店か……?

 聖職者の『儀礼的微笑』をこわばらせながら、
 目の前の『色男』の親切の真意を推し量るように訊ねる。

594聖川篤虎『ドゥルセ・ネクタル』:2024/02/08(木) 00:07:06
>>593

ちなみにこちらが履いている靴は『ザ・ホスト』なイメージのある『尖り靴』ではなく、
シックなデザインの手入れの行き届いた『革靴』だ。
スーツもゴテゴテの派手なデザインでこそないが、
明らかに20代のサラリーマンの着るそれではない洗練されたデザインのものではある。



「ありゃりゃ、そう言うそちらこそひょっとして。
 以前、何処かでお見かけしたかもしれねぇでさぁ。
 貴女みてえな『お嬢様』一度見たら忘れる訳ねぇと思いますが。
 『tarantula』って店知ってますかね?」


『tarantula』ーー【歌舞伎町四天王】と呼ばれるホスト『神城聖』が経営する、
『神城グループ』系列の『ホストクラブ』。
『歌舞伎町』は勿論『大阪』『中洲』『仙台』『名古屋』の日本の主要歓楽地に進出しており、
つい最近ここ『星見町』の夜の一等地に店を構えた。


「いやはや、そんな事はどうでも良くて
 お嬢様は随分と『健啖家』のようでさぁ。
 折角のお楽しみのお食事が『台無し』になりそうだからちぃと差し出がましい真似をしちまっただけだ…。
 兎にも角にも、まずはお食事しましょう」

595真雅致 ありや『デビルズインレイ』:2024/02/08(木) 01:24:24
>>594 (聖川様)

「えぇッ!?
 あの『Tarantula』の方でしたかぁ……!?
 はえ〜〜〜〜っ! ど、どおりで……」

 感心の吐息とともに身を引くと、
 聖川のルックスを控えめに見つめる。


 素面の自分に行った記憶はないが、店の名前ならよく知っていた。
 星見の夜に行き場のない女は、誰だって一度くらいあの不夜城の前で夢を見る……
 (もし『神城聖』が『tiktok』とか『17』やってるならメチャ見てるだろう)


     「あ、あ、いや…………
      今のは聞かなかったことにしてくださいぃ……
      修道長の耳に入ると、とってもとっても怒られるのでぇ……」


「そ、そうですねぇ〜〜〜……っ
 まずはお食事をいただきましょうぅ……」


 流れで、自然と聖川の対面に腰を下ろす。
 一瞬『こんなことして無料でいいの?』という邪な考えが頭を過ぎるが、
 すぐに昼の顔を取り繕う。


 「えぇっと……そういえば自己紹介がまだでしたねぇ。
         マガチ
  わたくし、真雅致ありやと申します。

  見てのとおり(修道服の肩をつまむ)、ここ星見の小さな教会で
  シスターをやらせていただいておりますぅ……」

596聖川篤虎『ドゥルセ・ネクタル』:2024/02/08(木) 15:13:55
>>595

聖川のルックスを見つめる真雅致。

年齢はおそらく『20代半ば』だろうか。
指輪・時計などやはりシックなデザインのもので統一された装飾品。
それなりに高い身長に、まるでスーツの方に合わせた様な痩躯。
逆三角形のフェイスラインに垂れ気味に配置された大きな瞳に彫りの深い目鼻立ちで、
個人の主観はあれど所謂『色男』と呼んで差し支えない程度には整った容貌ではあるが、
真雅致に向けた曖昧な笑みも相まってか、何処となく憂いを帯びている印象を受ける(かもしれない)。



「あァ、ご存知でしたかい。ありがてぇ。
 こんな素敵な『お嬢様』に認知していただいてるなんて嬉しい限りだ。
 俺みたいなくだらねぇ男を『ご奉仕』の精神で喜ばせてくれたんだから、
 きっと『修道長』だって『神サマ』だって許してくれるでさァ」


空のグラスを手に取り水を注いで、
対面に座った『真雅致』の手元にすっと置く。



「どうも初めましてェ。
 性は『聖川(ひじりかわ)』、名は『篤虎(あつとら)』。
 『tarantula』に所属するしがねぇ『二流ホスト』でさぁ。

 折角、『神サマ』が俺と『ありやお嬢様』を引き合わせてくれたんだ。
 こんな僥倖、恐らく2度とねぇ。
 『奉仕活動』の一環だと思って、俺と一緒にメシ食ってくれやしませんか?」

597真雅致 ありや『デビルズインレイ』:2024/02/08(木) 16:45:18
>>596 (聖川様)

(ううぅ……ッ ま、マズイ……
 この人……『顔』が……)


    (『顔が良すぎる』…………ッ)


  (どこか淋しげな痩顔の垂れ目の男……
   たぶん『同年代』ぐらいのハズなのに
   『庇護欲』ムクムク刺激されとっちゃけど……ッ)


 (でもこういう人って『篤虎もっとご飯食べな〜?』が口癖の女を
  何人も囲っているタイプだから絶対……ッ
  す、好きに……好きになってはいけませぇん……ッ)



「ま、まぁぁ…………」

  「そ、そんな風に誘われてはぁ……
   主の敬虔な御使いとして、
   お断りするわけにはいきませんねぇぇ……」


 なんなら誘われる前から着座してたし離席する気もなかったのだが、
 これで『免罪符』を得たとばかりに頬に手をあてて背筋を伸ばす。


「しかし、こう言ってはなんですがぁ……
 『聖川』様のような方でも、
 こういう場所でお食事をなさるんですねぇぇ……」

 フードコート特有の茶色味の濃いポテトをつまみあげ、
 首を傾けて眼前のポテト越しに聖川の顔を見やる。

 「なんだか意外といいますかぁ……
  お仕事帰りとかですかぁ……?」

598聖川篤虎『ドゥルセ・ネクタル』:2024/02/08(木) 17:15:43
>>597

「いやいやァ、これから出勤でさァ。
 お陰様でホスト一本でなんとか食えてこそいるが、 
 俺もまだまだ未熟で毎晩『同伴』を貰えるランクじゃあねぇ」


真雅致が茶色い食べ物を手に取ったのを確認してから、
自らが頼んだ『ソースカツ丼』に手を合わせ、軽く頭を下げる。


「けれどたまの『同伴』では、
 寿司やら『カタカナの食い物』を食わせて貰うんですが、
 所詮これしかねぇと思って『水の世界』に飛び込んだ、
 何処まで行っても中卒で片親の田舎モンのイモホストでさぁ。
 こんな俺にご馳走してくれる『お嬢様』方には申し訳ねぇが、
 メシは『茶色ければ茶色い程美味ェ』。
 ありや様の『ポテト』なんて俺からしたら『ロレックス』や『フランクミューラー』なんかより、
ずぅとずぅと綺麗ですし、
揚げ物の油でてかった『お嬢様』の唇は『石原さとみ』のそれよりずーっとセクシーでさァ…」


          「頂きます」

パチンと割り箸を割り、ソースにひたひたと遣ったとんかつとその下に敷き詰められた千切りキャベツ、
そして更にその下のホクホクに炊けた白米を纏めて掬い、
口の中に運び、ゆっくりと咀嚼し、恍惚の表情を浮かべる。


「嗚呼、美味ェ…。
 最近は『閉じないカツ丼』だの流行っているらしいですが、
 北国生まれの俺からしたらそもそも『カツ丼』もの自体が邪道この上ねェ…。
 俺の中で『カツ丼』って言ったらやっぱり『ソースカツ丼』でさァ。
 このソースに浸って甘ッ辛いカツがありゃあ、
 いくらでも米が食えるし、コレを喰ればいくらでも『夜の世界』で戦える……。
 
 お嬢様も『シスター』の割には、随分と『エネルギッシュ』な物がお好きな様ですが、
 これはちィっとばかし『無粋』な質問でしたかねぇ…。
 何にせよ、美味しくご飯を食べる女性ってのはとても『美しい』と思いますぜ」

599真雅致 ありや『デビルズインレイ』:2024/02/08(木) 22:28:11
>>598 (聖川様)


 …………… … ゴクン (ポテトを飲み込む音)


( ウ チ こ の 人 の こ と も う す で に だ い ぶ
  好 き に な っ と ぉ と で す け ど 〜 〜 〜 〜 〜 ッ !)


 九州の片田舎で眉の太い女学生やってた頃の
 『少女ありやの幻影』が心のなかで愛を叫びだしているが、
 そんな内心の動揺を表に出さないよう表情筋にグッと力を込める。


 外面はスマートでアンニュイな都会のオトコって感じなのに、
 内面は北国の純朴でどこか垢抜けない好青年のまま。

 ……狙って演出しているとしたら、天性のジゴロと呼ぶほかない。
 (↑それ一番わたくしに効くやつ〜〜〜〜〜〜ッ)



「ま、まぁぁ……お上手ですねぇ……
 この手のお世辞は、ずいぶん言い慣れてらっしゃるみたい……
 …………んぐっんぐっ」

 赤みとツヤを増した唇の動揺を隠すように、
 サーブされたグラスのお水をゴクゴク飲み干す。


「……ぷはっ。
 で、ではわたくしも、いただきますねぇぇ……。
 主が賜りくださる日々の糧に、感謝いたします……」

 『主』に対して明らかに見返りの合わなそうな短い祈りを捧げると、
 トレイの上の『ダブルチーズバーガー』に手を出しはじめる。
 (聖川の前なので『両手に持って交互食べ』は自重している)


「……それにしても、そんなに幸せそうにお召し上がりになられると、
 お料理される方も、ご同伴される方も、とっても嬉しいでしょうねぇぇ……。
 わたくしも、なんだかカツ丼が食べたくなってきましたぁ……」

600聖川篤虎『ドゥルセ・ネクタル』:2024/02/09(金) 08:18:19
>>599


「俺らホストっていうのは世のお嬢様に飯を食わせてもらっているカスですぜ。
 特に俺みてぇな『夜の世界』に飛び込むしかなかったロクデナシなら尚更だ。

 ところがどっこい世の中の『お嬢様』達は
 こんな俺なんかに『愛』を注いでくれて、お陰でちぃとばかしの『価値』を与えてくれてるんだ。
 愛してくれる人を愛すのはそりゃあ必然でしょう。
 
 ーーまァ『世辞』と捉えられるのはきっと俺が『未熟』だからでしょうねェ。
 この『敬愛』の気持ちを『お嬢様』に伝えられねぇのが悔しいでさァ。
 
 あらまァ、随分と豪快な飲みっぷりで。
 もし良かったら飲みますか?まだ封は空けてねぇんで」


一旦、食べ進める手を止め
まるでカウンター越しに艶やかな酒の注がれたカクテルグラスを提供するバーテンダーの様な所作で、
手元に置いていた未開封のペットボトルのお茶を差し出す。


「これから出勤なんでそれなりのおべべで着飾っていますがねぇ、
 やっぱり何処まで言っても根っこが『貧乏人』なんで、
 メシなんて『美味い』か『すげぇ美味い』のどちらかにしか感じない『バカ舌』で
 「ご馳走しがいがない」なんて言われたりもしますがねェ」
 
 「あぁもし良かったら俺の食べますかい?食いさしで良ければですが」

601真雅致 ありや『デビルズインレイ』:2024/02/09(金) 16:47:48
>>600 (聖川様)

(えっ で、デヘッ……い、いいんですかぁぁ〜〜〜ッ!
 これってつまり『脈アリ』ってこと〜〜〜〜〜ッ!?」

   「あっ、いえいえぇ……!
    さすがにそれは申し訳ないのでぇぇ……!
    ご厚意だけ、あっ、『お飲み物』だけ拝受いたしますぅぅ……」


 好感を抱く異性の『厚意』に対して
 浅ましい『欲望の嬌声』が心中で沸き立つが、
 そこは腐っても聖職者……

 ググッと我欲を抑え、なんとか常識的な範囲で厚意に応じる。
 (でも半分くらいは実際に声に出ていた)



「なるほどぉ……『愛』……ですかぁ」

  「どうやら聖川様は、
   いろいろと『愛』をご存知の様子ですねぇぇ……」


 グラスに移したお茶で『ホットドッグ』を流し込んだあと。
 紙ナプキンを唇にあてながら、目を細めて聖川を見つめる。


「『ホストとシスター』というのは、
 ある意味『鏡の表裏』、
 『相似形の交点』なのかもしれませんねぇぇぇ……」

  「『聖職者』がこんなこと言ったら、
   ホントはダメなんですけどねぇぇ……」


 顔の前で『割り箸』をパキリと左右に割ると、
 そのままクロスさせて『×印』を形作ってみせる。
 自らの唇にその『失格印』をあて、聖川へと微笑みかける。

   口元で直交させたその『罰点』は、
   おのれのベールに下げられたロザリオの『十字』と、
  すこしだけズレて重なっていた。


 「聖川様にとって、
  『真実の愛』とは『何』だと思われますかぁぁ……?」

602聖川篤虎『ドゥルセ・ネクタル』:2024/02/09(金) 17:27:03
>>601


  「へい」


顎に片手を添え考え込む仕草をするが、
その目線は空虚ではなく『真雅致』に向けられている。
ホストという生き物の『習性』なのだろうか、
邂逅してから『真雅致』から視線が外れる事が極端に少なく、
その目線はまるで『狙撃手』の『スコープ』の様に『真雅致』の瞳にぴたりと張り付いている。


「『愛の戦士』を自称しちゃあいるが、俺ァまだまだ『修行中』の身でさぁ。
 『シスター』である『お嬢様』が納得してくださる答えが出せるかは自信がねぇですが…」

          「うぅむ」


「『無償の愛』なんてムシの良い解釈をする資格はありゃあしねぇ。
 現に俺ァ『愛』を喰らって生き延びてるワケですし…。
 今度は『お嬢様』達に俺の『愛』をお渡しして、
 そのお返しに『お嬢様』にまた『愛』を頂戴し、喰らう……
 
 生憎、学がねェもんで上手く伝えられねェし理解もできねェが、
 その『真実の愛』ッての正体を知る為に、『愛』に生きているのかもしれねェが…、
ちィッとばかし、失礼しますぜ……」


             スッ

『真雅致』が口元で作った割り箸の『十字架』をすっと取り上げ、握り締める。


「例え相手が『キリスト様』であろうと、
 お嬢様が折角俺に向けてくださった最高の『微笑み』を遮る権利はねぇ筈でさァ…。
 その美しい口元を隠す『十字架』なんざ要らねェ」

603真雅致 ありや『デビルズインレイ』:2024/02/09(金) 20:46:07
>>602 (聖川様)

「へっ……?」


 テーブル越しにすこしだけ互いの顔が近づき、
 十字架を介して一瞬だけ手が触れた(たぶん……気のせいじゃなければ)。


     「(え―――――――ッ!!?!)」   『ヒュッ』


 それだけで心臓が跳ね上がり、反射で勢いよく身を引く。
 赤くなった頬を隠すようにうつむき、聖川の『麗句』にも
 口をもごもごさせるばかりでうまく応答できない。


   (しゅ……)


          (しゅきすぎる…………ッ)



  それにしても……
  『観察者』である聖川には自明なことだっただろうが、
  『愛』という言葉を口にした瞬間、
  目の前の相手の反応が明らかに違っていた。
  彼女にとって特別な『何か』がそこにはあった。


「……む、『無償の愛』を『ムシの良い解釈』とおっしゃる
 『聖川』様にとっては、
 『愛』とは『返報性』なんですねぇぇ……」


  「『与えれば、返されるもの』」

     「『受け取れば、明け渡すもの』」


「だとすればぁぁ……
 『聖川』様が先ほどからわたくしに対して施してくださる
 『美しい言葉』や『品物』の数々……。
 こうした『ご厚意』もすべて……」


  聖川が渡した『ペットボトル』を持ち上げ、
  聖川がサーブした『グラス』へと中身を注ぐ。
 
  そうして『空っぽ』になったお茶の容器を卓上に寝かせると、
  ちょっとだけ赤くなった指先で
  つん、と聖川に向けて押し転がす。


「『無償の愛』から生じることはなく、
 すべてわたくしからの『見返り』を欲してのもの……。
 ということになるんでしょうかぁぁ……?」

604聖川篤虎『ドゥルセ・ネクタル』:2024/02/10(土) 18:03:56
>>603

「『無償の愛』ってのは確かに存在するんでしょうが、
 少なくとも『ホスト』である俺にァ、それを語る資格はねぇ。
 いくら着飾ろうと所詮は『女衒』でさァ」


何処となく影のある自嘲めいた笑み浮かべ、
空になったペットボトルを受け取り、
五指の腹で押し、そのギシギシとした感触を確かめる。


「大事な事だから何度でも言いますがァ、
 この世界に『女性』という概念が存在しているからこそ、俺ァなんとかこの『世界』で生きていけてる……
 『女性』が居なければただの『カス』で『人間』ですらねェ。
 『お嬢様』達はただこの『世界』に居てくれるだけで俺に『愛』をくれている。
 俺を『人間』にしてくれた世界中の『お嬢様』達は謂わば、俺にとっての『女神様』でさァ……。


 そんな事言われても…って思うかもしれねェですが、
『ありやお嬢様』は産まれてきてくれた瞬間から既に俺に『愛』を注いでくれているんですよ。
 だから俺ァ、全ての『お嬢様』への『敬愛』の気持ちが溢れて止まらねェんでさァ。
 金だの品物だなんてそんなの『オマケ』だ。
 ただ、この世界に存在してくれるだけで俺ァまだ生きていける……。

 ーー『お嬢様』の前でご高説を垂れちまいましたねェ…。
 お恥ずかしい所をお見せしちまッて、申し訳ねェ」


テーブルの上に両の掌を置き、深々と頭を下げる。

605真雅致 ありや『デビルズインレイ』:2024/02/10(土) 22:20:37
>>604 (聖川様)

  「!?」  


       「えっ!?」


  『ホスト』と呼ばれる人たちが、
  『夢の仮面』を巧みに使い分ける『虚飾のプロ』であることを、
  ありやは人よりちょっとだけよく知っていた(なぜか) (その身を持って)。

 だから実は今まで……
 彼がときおり垣間見せる『素朴な実直さ』すら、
 ほんとうは計算された『職業的演出』ではないかと、
 心の片隅にほんのちょっぴり疑う気持ちがあったのだが――



   「お、おお、 お顔を上げてくださいぃぃ……!
    そんな、聖川様が頭を下げるようなことは
    何もありませんよぉぉぉ……!!
    ちょっとした雑談の延長のつもりだったんですぅぅ……!!」


 眼前の、真っ直ぐな『叩首』と『吐露』には、
 そうした『疑念』を軽々と吹き飛ばす『誠実さ』に満ちていた。


 ありやの脳内に、
 ある『気持ち』がムクムクと湧き上がってくる。


     『ブブ…』 
                   モワモワモワ……
             。

              ◯

⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒

 『 こ、この人は夜の世界に生きるにはあまりに純真すぎるのでは……』

                ↓  1マス進む

 『こんなにも純粋な人をあの過酷な伏魔殿から救い出せるのは
  自分しかいないのでは……』

                ↓
                ↓  3マス進む
                ↓


    『 いや違う……そうじゃないッ

      篤 虎 が 星 見 一 の ホ ス ト に な る た め に
       . . .
      ウ チ が 篤 虎 を 支 え て や る ん ち ゃ !!! 』



        【ホス狂になるダメ女の思考すごろく】

⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒

                 『ギュンッ』


 「『篤と……あ、いや『聖川』様……
  聖川様の『愛』についてのお考え、とてもよく伝わりましたぁぁ……」


   「『あっ君…… じゃなかった、あの、お顔を上げて……
    お食事の続きに、しましょうぅぅ……?」


 卓上に身を乗り出し、聖川が突いた両手の上に、
 スス……と右手を伸ばす(どさくさ)。

606聖川篤虎『ドゥルセ・ネクタル』:2024/02/11(日) 10:26:50
>>605

「ーーご清聴ありがとうございましたァ。
 やっぱりチィっとばかし気恥ずかしいし、
 何よりせっかく相席してくださったお嬢様に恥をかかせちまいましたねぇ」


顔をゆっくりと上げ


「『聖川』って苗字は言わずともがな『珍苗字』で、
 『篤虎』って名前も『母』から授かっ『ギフト』。

 この業界は『源氏名』を名乗るのが当たり前ですが、
 骨を埋める『不転』と『ステゴロ』の覚悟を示す為に本名で『ホスト』をやらせていただいてます…。
 つまり何が言いてェかって言うと……
 この『聖川篤虎』って名前は結構気に入ってるんでさァ。
 だから『篤虎』でも『聖川』ても『あッ君』でも、
 『お嬢様』のお好きな様に呼んでくだせェ。へッ」


手首を軸に寝かせた左手をゆっくりと起こし、
そのまま手の甲に添えられた『真雅致』の右手の指に重ね絡め、所謂『恋人繋ぎ』の形に持って行き、
哀愁と感謝など様々な物が入り混じっているであろう蠱惑的な笑みを向ける。


「…おっと、いけねぇ。
 すっかり忘れちまっていた。では、いただきます」


           スルゥ


惜しむ様にゆっくりと握った手を放し、
その左手を器に持ち帰え、右手で箸を持ちゆっくりと食べ始める。

607真雅致 ありや『デビルズインレイ』:2024/02/11(日) 14:12:47
>>606 (聖川様)


「びょぇっ……!?!?」 


   意外! それは『恋人繋ぎ』ッ!


 こんな『愛の返報』は完全に予想外だッ!

 先刻をリプレイするみたいに一瞬で顔を真っ赤にして、
 反射的に手を引こうと身をよじる……
 だが、繋いだ手は………………離すことができない。


   「聖川様……!?
    え、あ、あの、あっ、『篤っ……」


 だから……
 そうして強引に身を引こうとした焦りと反動で、 
 『左手』に握りしめていた『もの』が手放され、
 卓上へすとん、と滑り落としてしまう。


             『ド ズッ』


 『それ』はバンズを縫い留める『ピック』のように……
 しかしそれ自体を傷つけることのない不思議な『力』で、
 トレイ上のハンバーガーに突き立っていた。


 それは『鉄杭』だった。



   「あぁ――――――……」



         「残念……」      『ブブ…』



 聖川は―――
 指を絡める眼前の相手から、
 先程まで確かにそこにあった『あるもの』が
 失われていることに気づく。


   それは『ホスト』である聖川にとって、
   きっと道具のように馴染み深く、
   同僚のように慣れ親しんだ一つの『色』。

 数多の女たちが視線や態度や言葉に込めて、
 聖川へと貢いできた『甘い炎』。


 『叩首』により聖川の『スコープ』が外れた一瞬の隙に――
 その『感情』が、その『衝動』が、その『熱』が、
 目の前の瞳から跡形もなく消え去っていた。



              スルゥ


 繋いでいた指先が離れ、ゆっくりと手を引き戻す。
 その手の感触は最後まで、赤子と掌を重ねる母親のように
 穏やかで透明な愛情に満ちていた。


  . . .
「『聖川様』――」     『ブブブブ…』


   「『お箸』、お返しいただいてもよろしいでしょうか……?」

608聖川篤虎『ドゥルセ・ネクタル』:2024/02/11(日) 14:56:47
>>607


「……おおっと、これは失礼。
 マナーがまるでなっちゃあいなかったですねェ」


先程まで自身に注がれていた『熱』が途端に失せた事は、
その向けられた『眼差し』から『感覚』で理解できた。
割った箸を『真雅致』の手元へと返す。



「『失礼』ついでと言っちゃあなんですが」


『真雅致』から『熱』が失せた事、それは『仕方がない』。
人間の感情は決して不変的なものではないし、
自身への興味が失せようがそれは『真雅致』の自由であり、彼女の感情の変化を咎める権利など一切ないし、
この世に生きてくれているだけで嬉しいという気持ちに一切の偽りはない。真実の感情だ。


            『ズギュン』

「もう1つ『マナー違反』させてもらいますぜ」


聞き慣れない『ノイズ』めいた音に、
零れ落ちた『鉄杭』とそれが突き刺さる『ハンバーガー』。
明らかに『異常』であるこの状況は目の前の彼女の『生命』を脅かし得るかもしれない。
『お嬢様』達に嫌われようが罵られようがそれは『仕方がない』が、
目の前の『女性』の『危険』を見過ごす事だけは『できない』。
自身の傍らに人型のスタンド『ドゥルセ・ネクタル』を発見し、
『鉄杭』の刺さったハンバーガーを取り上げたい。

609真雅致 ありや『デビルズインレイ』:2024/02/11(日) 16:17:41
>>608 (聖川様)

「えっ……!?」

 突如として聖川の傍らに立つ『人型』に、
 目を見開き、身をのけぞらせる。


 「せ、『聖川様』も『同じ御加護』を
  お持ちだったんですねぇぇ……
  『主』の『祝福』を拝受なされたお方……」


 「だとすれば、
  わたくしは『懺悔』をしなくてはなりませぇん……
  あなたが『見えない』ことを良いことに、
  一つの『不正』を働こうとしたことを……」


     『ブブ…』

       『ブブブブ…』


 トレイの上、積み重なる食料品の隙間から、
 『虫の羽音』の重奏が漏れ出す。
 山盛りに膨らんだトレイの底に、無数の『複眼』の
 赤い反射光が灯っていた。


「この子たち、そしてその『杭』が、
 わたくしの『祝福』のかたち……」

 「わたくしの『浅ましい欲望』をその杭に封じ込め、
  ひとときだけ、『主の理想のしもべ』に近づける……」


 『ドゥルセ・ネクタル』が、
 トレイからハンバーガーを取り上げる。

 『長さ9.7cm』、『直径4cm』の『鉄杭』は、
 『強固な力』でバンズに『固定』されていた。

 もしも『引き抜く』としたら、
 『ドゥルセ・ネクタル』の『妥協なき全力』が必要であることを、
 聖川はその手触りから直感的に理解する。


「お返しいただけますかぁ……『聖川様』?
 それは『敵』ではありません……ですが、
 忌むべきわたくしの醜い欲望……」

 「『聖川様』のように純真で高潔なお方が
  持つようなものではありませぇん……」


 聖体を拝領する信徒のように、
 聖川に向けてすっと両手を差し出す。

 先ほどとは違う、『遮るもの』のない微笑み。
 慈愛に整えられ、しかし何かが欠けた微笑を、
 ふたたび聖川へと向ける。

610聖川篤虎『ドゥルセ・ネクタル』:2024/02/11(日) 17:45:04
>>609

「俺のは『ご加護』なんてありがてぇモンじゃねぇ。
 ちょっとした『呪い』でさぁ。
 もし『コレ』が『神さん』からの贈り物だとしたら、
 いくらなんでも『残酷』すぎますぜェ」


艶消し処理の施されたジェットブラックのボディに、
その体の各所にはネオンの様に光る管が備えられており、
まるで『夜の街の光景』を連想させるデザインをしている。


        グッグッグッ


自らの『分身』に『鉄杭』を触らせてみるが、
引き抜くには中々に『骨が折れる』と直感的に理解する。


「ーー成程ねェ。
 とどのつまり『お嬢様』は『欲』に塗れちゃあいけねぇと考え、
 己を律する為にこのでけぇ『鉄杭』と『それ』でどうこうしているッてわけかい…
 流石は『シスター』、『神さん』の為に立派なレディで居ようとする精神は素晴らしいですぜ…。

 けれども、ええっと…『アガベー』でしたっけ?
 『神さん』は我々『人間』を無限の愛で無条件に愛してくれるとか何とか…
 今の『お嬢様』も素敵ですが、先程までの『欲』にまみれた『お嬢様』も綺麗でしたぜェ」

「どっちも素敵ではあるんですが、
 先程『神様』は『十字架』でその綺麗な口元を塞ぎやがったでさァ。
 折角ですし『神さん』には離席してもらって2人でお話ししてェ」


           『ビシュ』

 ドゥルセ・ネクタル
 「『堕落』」


『ドゥルセ・ネクタル』の人差し指を『真雅致』の、その欠けた笑みを構成する『唇』に触れ、
指先から『ドゥルセ・ネクタル』の『妥協の霊水』を放出。
粘膜から直接『シャンパン』の味に酷似した『霊水』を摂取させる事で、
『真雅致』を一時的に『妥協体質』にする事で『鉄杭』の固定を緩める、
あるいは『鉄杭』を操作する『真雅致』の『精神』を緩めたい。

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<削除>

612<削除>:<削除>
<削除>

613真雅致 ありや『デビルズインレイ』:2024/02/12(月) 10:57:42
>>610 (聖川様) (自レス訂正)

「!? んぐっ、んぶぶっ……!?
 ゴホッ、い、今なにを……!?」


 とつぜん『霊水』を口内に注がれ、反射的に顔を背けるありや。
 『ドゥルセ』の『銃口』から身を離し、口元を修道服の袖で拭う。

 だが『妥協体質』によりその抵抗も『中途半端』なものになったことで、
 『一口分以上』を注ぐことができた。

 そのまま『鉄杭の固定』への『妥協』を引き出そうとするが……

 それはどこか、
 『銃弾が着弾した後』に『狙撃手』を妥協させるのに似た感覚――
 すなわち、一度打ち込まれた『鉄杭』の『固定度』に関しては、
 ありやによる『操作』の意志の外にあるのではないか……
 現段階では、そんな印象を覚えた。

  だとすれば、『より妥協を深めさせる』のか、
  『意識を喪失させる』のか、あるいは……
  『引き抜く』以外に『鉄杭を放つ』方法があるのだろうか?


「あ、あれぇぇ…………?」


 一方で『霊水』がもたらす『妥協体質』は、
 確実にありやの『精神』に浸潤していく。

 見栄や虚勢といった自衛の意志を『妥協』し、
 本来話すつもりのなかった心の奥底の『本音』を……
 どこか微酔にも似た心地よい『堕落感』の中で
 静かに吐露しはじめる。


「わ、わたくしが『己を律する』……とか……
 『立派なレディ』……だなんてぇぇ……
 そんなこと、ぜったいに、ぜったいにありえませぇん……」


 「だって、わたくしは……その『鉄杭』を……」


     . . .
    「あなたに……
     打ち込もうとしたのですよぉぉ……」



 見ず知らずの自分にもまっすぐに向き合い、
 頭を垂れる聖川の姿を見て、
 あの瞬間『湧き上がってきた気持ち』。(>>605

 それは決して『この人を支えたい』などという
 献身的な奉仕の欲求だけではなく―――


「せ、聖川様があまりにも……
 『純粋』で『誠実』すぎるからぁ……」

  「わたくしの……浅ましく醜い『色欲』を……
   あなたに……その杭で、押し付けて……」

 「そ、それで……わたくし、と…………」


 ありやの独白に呼応するように―――
 『色欲の鉄杭』に貫かれた『ハンバーガー』の隙間から、
 異常な量の『肉汁』がだくだくと溢れ出した。
 聖川の手の中から、艶めく肉の雫がこぼれ落ちていく。


 「あぁあぁぁ……恥ずかしいぃぃ……
  なんでわたくし、こんなことまで、話してぇぇ……?

  あぁぁ……なんか……でも…………」


 『色欲』が欠落した透明な微笑の中に、
 『ドゥルセ・ネクタル』の『妥協の雫』が混ざり込む。
 複雑で曖昧な混色が、聖川を見つめる瞳に宿る。


        妥協して
   「もう 『ど う で も いい』……のかなぁぁ……」



 トレイ上に盛られた山の中に手を突き入れ、引き抜く。
 その手の内に、さらなる『鉄杭』が握られていた。


「……『デビルズインレイ』……」

614聖川篤虎『ドゥルセ・ネクタル』:2024/02/12(月) 18:00:38
>>613


「これは」


自らの手を艶々と濡らす『肉汁』に何かを察し、
持ち上げていた『鉄杭』の打たれたハンバーガーを手元に置き、
自らの『傍ら』に目配せをし、『ドゥルセ・ネクタル』を解除する。
『真雅致』の中に残る『妥協の衝動』は緩やかに消えていくだろう。



「やれやれ、やっぱ俺ァ『人間』『男』『女衒』として『三流』も良いところだ…。
 確か、ええっと『スタンド』って言いましたっけ?
 こんな『呪い』を使わなきゃあ『お嬢様』の本音を知る事もできやしねェし、
 何よりも『お嬢様』にかけなくても良い負担をかけちまった。
 こりゃあ、いけねーなァ。いけねェーよ」



自分の右手を眺め、そこに付着した肉汁を舌で舐め取り、
そのまま腕を『真雅致』の眼前へとまるで『プレゼント』のように差し出し、
憂いを帯びた笑みを浮かべる。




「まァ、だが…何でしょうね。
 結局、『お嬢様』がやりてェ事をやって貰うのが、俺のやりてぇ事でさァ。

 こんなロクデナシの身一つで『お嬢様』が喜んでくれるなら嬉しい限り。
 その『鉄杭』を打たれたら何が起こるか分かりやしねェが、
 それもまぁーーーー『仕方がねぇ』。
 『ありやお嬢様』ーーーーどうぞ『召し上がれ』」

615真雅致 ありや『デビルズインレイ』:2024/02/12(月) 23:01:08
>>614 (聖川様)


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ―― イエスはパンを取り、祝福し、それを切り分け、
 弟子たちに与えて言いました。

                   . . . . . . .. . .
 『取って、これを食べなさい。これは私のからだです。』 ――

 ━━━━━ 『マタイによる福音書:26章;26節』 ━━━━━




 己が理想とする『高潔』で『正しい』人間に、
 みずからの『醜い欲望の鉄杭』を打ち込み、
 自身と同等の卑小な存在へと『堕落』した姿を見下ろす。

  そうして堕ちた愚物に『無償の献身』を尽くすことで、
  欲深く不完全な自分も、その間だけは
  『無欲で完全な聖職者』に近づける気がする。

 ――それが『真雅致 ありや』が魂の奥底に隠してきた、
 『本当の欲望の姿』だった。



     グググ……ッ


 秘すべき暗い欲動の蓋が、『妥協の雫』によって緩む。
 己が憧れる『高潔な標的』の左胸へ、
 さらなる『堕落の鉄杭』を突き立てようと
 振りかぶったところで――


  「なっ……!?」


 みずからの腕を躊躇なく差し出す聖川の姿に面食らい、
 振り上げた鉄杭が、皮膚一枚の寸前でビタリと止まる。


 「なっ……なっ、なにを………なんで……?」


  「う、打たれても『仕方がない』って……
   『召し上がれ』って……」


 「な、なんで…………なんでぇぇ……」


 溢れだす当惑を口にしながらも、
 これまでの『聖川』とのやり取りから、
 ありやはその行動の意味を心中で理解していた。


「自分の身体を、差し出す……なんて……」


 その行為は、ありやが憧れつづけ、
 しかし決して自分の力では成り得なかった、
 『無欲で完全な聖職者』のそれと同じだということを。


 『無償の愛なんてムシのいい解釈をする資格はない』――
 ありやの質問に、かつて聖川はそう嘯いた。


      . .   .. . .
   だがこれを、この献身を、
       . . . .
   人は『無償の愛』と呼ぶのではないのか。



「う、うぅ、うぅ………」


 頑然たる『格の差』を、魂の底から悟った瞬間――
 左手に握りしめていた『怠惰の鉄杭』と、
 バンズに突き刺さっていた『色欲の鉄杭』が、
 ボロボロと崩れるように消えていく………

616真雅致 ありや『デビルズインレイ』:2024/02/12(月) 23:02:26
>>614 (聖川様・2/2)


「………………。
 ごめんなさい、聖川様………」


 『鉄杭の解除』により、『封印』した欲望が心の内へと還流し、
 真雅致ありやは、ただの『欲にまみれたお嬢様』に戻る。


 「わたくしの身勝手な欲望に……
  あなたを巻き込んで、しまいましたぁ……
  聖川様の、女性に対する『優しさ』につけ込んで……」


「…………なんと、お詫びしたらよいのか……
 本当に……すみませぇん………」


 うなだれ、聖川に視線を合わせることができないまま、
 深々と卓上に頭を下げる。

617聖川篤虎『ドゥルセ・ネクタル』:2024/02/13(火) 21:41:10
>>615-616


      「まァ」


謝りたいと思っている人間に「面を上げろ」と言える程出来た人間ではない。
相手を上げるのではなく自分が目線を『下げ』るのが聖川篤虎の流儀だ。
その場にしゃがみ込み机に顔を伏せている『真雅致』の顔を覗き込む。



「他人の足を引っ張る事しかできねェ『スタンド』、
 こんなのが俺の精神の顕在化した姿だなんて知った時は、
 流石にテメェの腐った性格と環境を呪いましたがこうやって役立つなら、
 まァ使ってやらねェ事もねぇかなァって感じでさぁ。
 よっと、あァこのジャンキーさ、美味ェじゃねぇかァ」



すっかりボロボロになったハンバーガーを口に運び、
まるで『真雅致』に邂逅から起きた様々な出来事を口内で反芻するかのように、
ゆっくりと咀嚼して、飲み込んだ。


「俺には難しい事はよぉくわかりませんが、
 謝られるような事は一切されていませんぜ。
 むしろ、こぉんな素敵な『お嬢様』と『濃密』なやり取りを交わさせてもらって、
 逆に俺が感謝してぇくらいだ。ありがとうございます。
 
 いつ野垂れ死ぬかわからねぇ吹けば飛ぶような日々を送っている俺ですが、
 今日の『濃密』な出来事……
 それに『蜜月の関係』になれた事は一生忘れられねぇ。
 早起きは三文の徳なんて戯言だって思っていたが、
 今日の事を考えたらあながち嘘じゃねぇなァ」


          「さッ」

「これもせっかくの縁だ。
 ご自宅の方まで送らせていただけませんかねェ?
 生憎、今日は車じゃなくて徒歩ですが、
 時間がかかる分その分沢山お喋りができらァ」

618真雅致 ありや『デビルズインレイ』:2024/02/13(火) 23:16:57
>>617 (聖川様)

「…………はい……はいぃぃ……」


 聖川の優しい声かけに、
 伏せたまま何度もうなづくありや。

 その顔を覗き込んでみると…… 
 眉根に力を込めて、ありやはギューッと瞳を閉じていた。
 そしてその顔は、『何かしらの感情』で真っ赤に染まっていた。


(……襲おうとした相手に、こんな風にいたわられて……
 優しい言葉までかけられてぇぇ……)


  (それでいま目を合わせちゃったらぁぁ、
   ほ、本当に、本当に、)



   ( 好きになっちゃうからぁぁぁぁ………! )



 ……どうやら顔を上げられないのは、
 『罪悪感』のせいだけではないようだった。


 修道服の『ベール』をぎゅっと掴み、
 目線を隠すくらいに深く被りなおす。

 それでやっと顔を上げられるようになり、
 聖川の出発の誘いに応答する。


「は、はぃぃぃ……
 わたくしが、聖川様とご一緒、
 してもいいのでしたら……」


 そう言って椅子を引き、
 頬を染めて立ち上がるが――


   \ グ゙ギュゥ〜〜〜 /
       (腹の音)


 「……………。
  ……え、えへへ……。
  こ、これは、あ、あの、そのぉぉ……」

619聖川篤虎『ドゥルセ・ネクタル』:2024/02/14(水) 01:17:01
>>618



    「あらら」



フッと微笑むと『真雅致』が顔を上げたのならば
再び対面に座り直す。



「そういえばメシの途中でしたでさァ。
 やっぱ俺ァまだまだですねェ。
 折角だし、『欲』を満たさなきゃならねぇ」


トレイの上の『ソースカツ丼』を差し出す訳でもなく、
だが手をつけ始める訳でもなく、
鳴った腹の虫を誤魔化すために笑う『真雅致』を見つめる。
恐らく『お好きにどうぞ』という事なのだろう。


「まァいいや、
 兎にも角にもーー『召し上がれ』」

620真雅致 ありや『デビルズインレイ』:2024/02/14(水) 08:39:52
>>619 (聖川様)

 ズッコケるみたいにガクーっとズレ落ちたベールを、
 両手でいそいそと整え直しながら、
 居心地悪そうに座り直すありや。


「お、お恥ずかしいぃぃぃ…………」

 「わ、わたくし……
  やっぱりちょっとその、聖川様の『それ』が
  どうしても食べたくなってしまってぇぇ……」

 羞恥で顔をさらに真っ赤に染めながら、
 聖川の前の食べかけの器をもじもじと指差す。


「う、うぅぅ……わ、わたくしって、
 やっぱり『欲深い』んですかねぇぇ……」


 「………で、でも……これからは……
  これからは、ちょっとぐらい『妥協』することも、
  覚えます。わたくし……」


「な、なのでぇぇ……」


 自らの前にまだまだ山高く積まれたトレイ。
 その『二つ』あるうちの『一皿』を、
 聖川に向けてススス……と遠慮がちに両手で差し出す。

 被りを深くしたベールの裾を両手でぎゅっと握り、
 おそるおそる視線をあげて、上目遣いに聖川を見つめる。


「いっしょに、『半ぶんこ』、とか……どうでしょうぅぅ……?」


 その顔には、なんともニヤけてしまって不恰好な――
 しかし自分の本心から形作られた、
 精一杯の『微笑み』があった。

621聖川篤虎『ドゥルセ・ネクタル』:2024/02/14(水) 14:24:21
>>620



「へへッ」


           ススッ


手元の食いさしの『ソースカツ丼』の器を、
やはりカクテルを提供するバーテンダーの様な品のある所作で『真雅致』へと差し出す。


「普通の所謂『カツ丼』は冷めると卵が不快な食感になっちまうし、
 電子レンジで温め直そうとすりゃあ折角トロトロにした卵に火が通って固くなっちまうし、
 やっぱり『出来立て』が1番美味ェ食べ物なんでしょうが、
 その点『ソースカツ丼』は冷えても『甘辛いソース』がより染み込むし、
飯の上に敷かれたキャベツのおかげで食感も劣化しねぇし、これはこれでまた『オツな味』だ。

俺の『ソウルフード』を是非『お嬢様』に食べて頂きてェでさァ」


差し出された一皿を手繰り寄せ、手元に置き、
目の前の食事に対して、そして『真雅致』に頭を下げる。



「これはこれはありがてェ。
 公衆の面前でもなけりゃあ、
 その綺麗なお口に『あーん』してぇくらいだ。

 そして更に『欲』を言うなら、
 そのとびきりの『笑顔』を見ながらメシを頂ければより、嬉しいですかねェ。

                ではーーー『いただきます』」

622真雅致 ありや『デビルズインレイ』:2024/02/14(水) 18:57:40
>>621 (聖川様)

「は、はい……えへ、えへへ……
 どうぞ、『召し上がりましょう』。ご一緒に……」


     ・
     ・
     ・
     ・


 やがて、ありやにとって
 何より幸福な恵みの時間は終わりを迎え……


 聖川とともに、並んで歩きながらモールを発つ。
 送ってもらった『教会』の前で、
 あらためて謝罪とお礼を伝えて別れた後―――


 朝日の射す『分かれ道』に消えゆく遠い背中に向かって、
 ありやはひとり、真剣な表情でつぶやく。


「…………
 『聖川』様……わたくし、誓います……」


「もう二度と、この『鉄杭』を悪用して、
 他者に『欲望を押しつける』ような真似はしないと……」


 「そして……聖川様があのとき、
  わたくしに施してくださったような『無償の愛』を、
  いつかわたくしからも差し伸べられるように……」


 「立派で高潔な『聖職者』に、なってみせると……!」



「だから……もしそうなれたら、そのときは………

 『そのときは』…………!!」



    ……。 ……。 ……。


「…………や、やっぱり、ちょっとくらい
 『妥協』してもいいかなぁぁぁ……?」


  「せ、せっかくわたくしが『主』から
   授かり賜った『能力』ですしぃぃ……え、えへ……」


 それは決して変わることのない本人の『堕落した気質』によるものか、
 はたまた注がれた『ドゥルセ・ネクタル』の『妥協の残滓』によるものか?


 今日の出会いに立てた誓いを、この先も彼女が守り抜けるかどうか。
 その答えは――――『神のみぞ知る』。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  神からいただいた『賜物』や『能力』は、いつかは尽きるだろう。
  しかし、『愛』は永遠に続く。

━━━━━━━━ コリント人への第一の手紙:13章;8節 ━━━━━━━━

623七瀬流子『メモリーズ』:2024/02/24(土) 21:24:40
「はぁ……はぁ……」

息を切らせて椅子に座る人間がある。
顔には汗が浮かび、疲れている様子だ。

「しんど……」

具合が悪いのだろうか……

624七瀬流子『メモリーズ』:2024/02/27(火) 12:44:46
>>623

「財布落とすとは……」

「まぁ……あったからいいけど……」

625美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2024/03/05(火) 21:04:44

スカイモール内に店舗を構える『セレクトショップ』。
そこに男女の二人連れがいる。
一人は二十代半ば程の成人女性で、もう一人は高校生くらいの少年だった。

「『モチベーション』を高めるには、まず『形から入る』。
 私がコーディネートしただけあって、『いい感じ』になったじゃない」
 
         「よく似合ってるわ」

『門倉不動産』を出た後、『美作くるみ』が最初に行ったのは、
『情報収集』ではなく『衣装合わせ』だった。
最終的な『悪魔召喚方法』については、もうプランが確定している。
その第一段階として『衣装』を用意したのだ。

「『魔法使いの装束』――――『こう来たか』という感じだが…………」

          ザ ッ

「フ……なかなか『ソレっぽくなった』じゃあないか……!」

試着室から出た『キリシマ・アキト』は『モードストリート』に身を包んでいた。
モノトーンを基調とする『モード系』と、
カジュアルが特色の『ストリート系』をミックスしたファッションを指す。
『レザーキャップ』、『ジップアップパーカー』、
『カーゴジョガーパンツ』、『ハイカットスニーカー』。
全身を『黒一色』で統一した『オールブラック』だ。
『黒』という『魔法使いのイメージ』を踏襲つつ、
『現代風』にアップデートしたスタイルが、
美作の演出する『魔法使いとしての衣装』だった。

  「――――これで『お揃い』ね」

          ザ ッ

       「『試験』に挑むのはキリシマ君だけど、
        これは『私の戦い』でもあるから、
        ちょっと『気合』を入れていくわよ」

服装を変えたのはキリシマだけではなく、
美作も同様に『モードストリートファッション』に着替えていた。
『レザーキャップ』、『フライトジャケット』、
『スキニージーンズ』、『ショートブーツ』。
やはり『オールブラック』で、『候補生』のキリシマに合わせている。
普段の『アメカジ』とは一味違い、どことなく艶っぽさの漂う装いだった。
負けられない戦いに臨む『勝負服』だ。

「『お色直し』も済んだ事だし、
 いよいよ『情報収集』に移りましょうか。
 それなりに『知り合い』は多い方だから、
 その辺りから手を付けていきましょう」

「具体的な『説明』については全面的に任せておいて。
 私は『アイドルのスカウト』もやってたの」

『パートナー』に声を掛けながらスマホを操作し、『一人目』にメッセージを送る。

626朱鷺宮笑美&朱鷺宮涙音:2024/03/05(火) 23:01:11
>>625
スカイモールの駐車場に2つの靴音が響く。

「…くるみさんが呼んでるって
 お母さんはともかく、私にはなんの用があるんだろう…」


      「それについては、きっとついたときに教えてくれるわよ。
       とにかく会いに行ってみましょう?」

そこにいるのは制服の少女と
ゆったりとしたワンピースを着た女性。
見た感じだとそこまで年の差が離れていないように見え、姉妹にすら見えるかもしれない。
だが、二人は親子である。

涙音「しかし、ここに来るんだったら買い物もついでにしておいたほうが良かったかな」

 笑美「まぁ、用事が済めばそうしましょう。」

くるみに呼ばれた二人はそのまま来るのを待っている様子だ。

627美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2024/03/05(火) 23:01:40
>>625

『駐車場』に一台の『バイク』が停まっている。
いつもの『ベスパ』ではなく、イエローカラーの『ホーネット』だ。
その隣には『オールブラック』を身に纏う美作が佇み、『朱鷺宮親子』を待っていた。
キリシマは近くにいるが、第三者には見えない位置から観察してもらう。
彼がいない方が、話をスムーズに進められると考えたからだ。

628美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2024/03/05(火) 23:06:37
>>626

二人が近付いてくるのを見て片手をヒラヒラさせる。

「わざわざ来て頂いてすみません。助かります」

美作の格好は普段とは異なり、乗り物まで違うようだ。

629朱鷺宮笑美&朱鷺宮涙音:2024/03/05(火) 23:18:53
>>627-628
笑美「あ、こんにちはーくるみさん。」
 涙音「どうもこんにちはー」

二人は合わせるようにくるみに向けて手を振った。
キリシマの姿は二人からは見えていない。

そのままくるみにむけて二人は近寄っていった。

笑美「えーっと、くるみさん。アイドル探しの件…ですよね。
    相談というと…?」
 涙音「ついでに、私に対しての用事も教えてください。」
二人は大声で話さなくても大丈夫な距離まで近づくと
くるみに向けて質問をぶつけてきた。

630美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2024/03/05(火) 23:55:13
>>629

「こんにちは、早速ご説明しますね」

明るい笑顔で挨拶し、不要な前置きは抜きにして『本題』に入る。

「実は『アイドル探し』と並行して、更にショーを盛り上げる為に、
 『サポートスタッフ』も募りたいなぁと思ってるんですよ。
 分かりやすく言うと『裏方さん』です」

『魔法使い試験』の事は明かせない。
それゆえに『あらかじめ用意しておいた理由』を二人に告げる。
『門倉派』の一員として、美作は以前から『スカウト活動』を行っていた。
その話に絡める事で、あくまで『自然な流れ』で話を切り出せるだろう。
同時に『アイドルショー』の企画も進められるというオマケ付きだ。

「アイドルの子達みたいにステージに立つ訳じゃなく、
 ほんの少しだけ『演出面』で手伝って欲しいんです。
 涙音さんなら『アイドル』として参加する事も出来そうですけど…………」

『用意した理由』は『サポートスタッフのスカウト』。
『アイドルとして舞台に上がる人材』ではなく、
『裏方としてショーを盛り上げる為の人材』を探すという名目だった。
この理由なら幅広い能力が対象になり、一見して不自然には思われない筈だ。

「とりあえず、ここまでは分かって頂けましたか?」

631朱鷺宮笑美&朱鷺宮涙音:2024/03/06(水) 00:05:01
>>630
うんうん、と二人はくるみの話を相槌を打ちながら聞く。
アイドル探しに加えて裏方も担当してほしい、ということらしい。

笑美「なるほどー、サポートスタッフを探してるんですね。
    確かに、スタンド能力とかで応用ができたら演出も盛り上がりそうですね。」

 涙音「アイドル…私はあんまり歌が得意じゃないしダンスも別にできるわけでもありませんから…
     アイドルの参加は…」
どこか自信なさそうに涙音は答える。

笑美「つまり、私達にスタッフを募る手伝いをしてほしい、ということでいいでしょうか?」

632美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2024/03/06(水) 00:36:44
>>631

『アイドルのスカウト』には『若い女の子』という条件が付く。
一方、『サポートスタッフ』なら『老若男女』を問わない。
そういった意味でも便利な言葉だった。

「あはは、気にしないで下さい。でも惜しいですねぇ。
 涙音さんなら『アイドル候補』にもなれそうですから」

いずれ『アイドル探し』も再開しなければならないが、
現状では『最終試験』の方が優先だ。

「いえ、ちょっと違いますね。
 『スタッフを募る手伝いをして欲しい』というよりは、
 『お二人に裏方をやって頂けないか』と思っているんですよ」

「もちろん『裏方』であっても『適性』はあります。
 そこで、お願いなんですが――――
 もし良かったら、少しだけ『能力』を見せて頂けませんか?
 お二人のスタンドが『演出』に適しているかどうか知りたいもので…………」

重要なのは『ここから』。
『魔法陣作成』に必要な情報を集めなければならない。
『四つの内の一つ』が『スタンド能力』だ。

633美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2024/03/06(水) 06:52:23
>>632

【対応してくださる方々へ】

ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1655987686/319

634朱鷺宮笑美&朱鷺宮涙音:2024/03/06(水) 18:10:13
>>632
涙音「アイドル候補ですか…そこまで言われるのは悪くないですけど…」
どうやら、まんざらでもなさそうだ。
アイドル探しでは彼女にも目をつけておいても大丈夫…かもしれない

笑美「私達が裏方を…ですか?」
 涙音「力仕事とかそういう?」
少し意外そうな顔をしながら二人は答える。

涙音「能力ですか…私は別にいいですけど、
    演出向きかはわかりませんよ?」
笑美「私の場合は、演出に使えそうではありますけど…
    あんまり近くでやると危ないかもしれません。」
そう言って二人が顔を合わせる。

笑美「でもまぁ、とりあえずスタンドは見せてみますね。」
 涙音「まずは見た目から、って感じかな?」
そう言うと二人はスタンドを出すつもりのようで、
少しくるみから離れる

『フォートレス・アンダー・シージ』!
                            『トループス・アンダー・ファイア』!

ドォン!!

二人のスタンドが同時に二人の背後から現れる。
笑美のスタンドは特殊工作兵を思わせる見た目、
涙音のスタンドは日本兵を思わせるような見た目である。

635美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2024/03/06(水) 18:58:42
>>634

今の内に、朱鷺宮親子の『外見』を改めて観察しておく。
『ヴィジョンの特徴』だけでなく、『本体の特徴』も、
『魔法陣』に組み込む要素に成り得るからだ。
さりげなく『最も特徴的な部分』を探してみよう。

「あぁ、そうですね。
 『舞台の設営』とか力仕事もあると思います。
 どちらかというと『演出』の方が重要ですけど」

そして、『二人のスタンド』に目を向ける。
能力までは知らないが、ヴィジョンを見た事はあった。
『涙音のスタンド』は『初詣』に行った時に、
『笑美のスタンド』は『道の駅』までドライブした時に。

「ありがとうございます。
 ええと――それでは、涙音さんからお願い出来ますか?」

軽く頭を下げてから、まずは涙音に『実演』を求める。

636朱鷺宮笑美&朱鷺宮涙音:2024/03/06(水) 19:07:59
>>635
涙音「パワーに関しては自信がありますから、
    そっち方面の出番も期待してますよ」
笑美「私も、そういうのは得意です。」
そう言って二人は微笑んだ。
そして能力を見せてほしいという場面で涙音は少し考える。

涙音「えーと、それじゃあやってみましょうか。
    私の能力は…まずはこのライフルを使っての能力ですね。」
そう言うと、涙音のスタンドはライフルを構えた。

涙音「まずは、このライフルの弾が命中したものに対して『的』を設置します。」
そう言って涙音は適当なものを探す。

涙音「とりあえず、これにしましょうか。」
そう言って涙音は、自分の持っていたカバンに狙いを定め

バシュッ
     弾丸を発射。

するとカバンに『的』が浮かび上がる。

涙音「そして、これに対して攻撃を狙うことで」
更に、手持ちのおみくじをカバンに向けて投擲。

シュッ!

カバンはそれにぶつかりに行くように移動する。
そして、おみくじに命中した途端に動きを止めた。

涙音「設置できる『的』には色々な種類が選べます。
    …まぁ大まかにはそんな感じですかね。」
そこまで言ってくるみに視線を向ける。

涙音「…どうでしょうか?
    何か役に立ちそうでしょうか。」

637美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2024/03/06(水) 19:57:06
>>636

一連の動作を行う『フォートレス・アンダー・シージ』の動きを、
神経を研ぎ澄まして注意深く見守る。
『ライフル』はインパクトがあって『モチーフ』に使えそうだ。
『兵士』という特徴も活かせるかもしれない。

「パッと見た印象ですけど、『物が動く』というだけでも、
 やり方次第で演出に活かせると思いますよ。
 『一般人』にも見えますから、
 より多くの人に楽しんでもらうにも良さそうですねぇ」
 
     「とても参考になりました」

涙音に笑いかけ、続いて笑美に視線を向ける。

「笑美さん――――よろしくお願いします」

『フォートレス・アンダー・シージ』と『トループス・アンダー・ファイア』は似ている。
『血縁関係のあるスタンド』というのは、個人的にも少し興味があった。
『近くでやると危ない』らしいが、一体どのような能力なのだろうか?

638朱鷺宮笑美&朱鷺宮涙音:2024/03/06(水) 20:27:35
>>637
涙音「まぁ、そこまで自由には動かせませんけど
    何かしらの指示を出していただければ、そのとおりに動かせるように
    頑張ってみます。」
少し嬉しそうに答える。

涙音「参考になったようで、私も嬉しいですよ。」
そう言って今度は笑美に視線を向けた。

笑美「ええ、それでは今度は私のスタンドを…」
そう言って笑美はちょうどいいものが近くに無いかとあたりを見回すが

笑美「うーん、やっぱり自分のものを使うしかないですね。」
そう言って持っていたカバンから『ボール』を取り出した。

笑美「念のために持ち歩くようにしているんですよね。
    それで、私の能力はこのように」
そう言ってスタンドにそのボールを触れさせると

スッ…
ボールは笑美やスタンドの手を離れるにも関わらずゆっくりと浮上した。

笑美「この状態で衝撃を加えると…」
そう言って近くに転がっていた石ころを…涙音が投げた。

ドゴォン!
接触した瞬間、衝撃が石ころを貫くように走った。
爆発が起こったような音とともに石ころは弾け飛んだ。
離れていたため全員被害は受けていないようだ。

笑美「このように炸裂してダメージを与えます。
    言うなれば『機雷化』させる。というのが私のスタンド能力です。」
ボールはコロコロと床を転がっている。どうやらもう能力の発動は終わったらしい。

笑美「うっかり触ると危ないので、ちょっと離れさせていただいたんですけど…
    役に立ちますか?」

639美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2024/03/06(水) 21:12:06
>>638

『機雷の炸裂』を目の当たりにして、しばし沈黙する。

「………………『なるほど』」

これは確かに『近付き過ぎると危険』だ。
『狙撃』に『機雷』というのは、やはり『親子』と言うべきだろうか。
ともかく『良い素材』を仕入れる事が出来たようだ。

「涙音さんにも似たような事を言いましたけど、
 『その場に浮かぶ』というのは、ヴィジュアル的に面白そうな気がします。
 安全性を確保した上で、その『炸裂』も『クラッカー』みたいに使えれば…………」

        スッ

ボールを拾い上げ、それを笑美に返しつつ、二人に向き直る。

「お二人共、どうもありがとうございました。
 他の人にも声を掛ける予定があるので、まだ確定ではないんですが、
 もしかしたら今後『裏方』をお願いするかもしれません」

             フフッ

    「涙音さんは『アイドル候補』の可能性もありますしね」

『スタンド名』、『スタンドの動作』、『モチーフ』。
これで『三つの要素』が集まった。
しかし、まだ足りないものがある。

「あ、もう一つだけお聞きしても大丈夫ですか?」

「もし自分が『パフォーマー』としてステージに立ったとしたら、
 どんな『決め台詞』を言いたいか『アンケート』を取ってるんです。
 ショーの『プロデュース』の参考にしたいので」

「『もしも』の話ですから、気軽に答えて下さって構いませんよ」

『最後の一つ』は、自発的に発せられた『スタンド使いの言葉』だ。

640朱鷺宮笑美&朱鷺宮涙音:2024/03/06(水) 21:40:30
>>639
笑美「まぁ、使い方次第では愉しいことには使えそうですねぇ。
    私もそういうふうな使い方は大歓迎ですよ。」
扱い方が難しいデリケートな能力だが
それでも他の人に使い方をプロデュースされる。
そうなれば笑美にとっては嬉しい限りだった。

笑美「どうもありがとうございます。
    裏方のお仕事も楽しみにさせていただきますね。」
返されたボールを手に取りながら答える。

涙音「アイドルかー…一体どんな事するんだろう…
    ダンスとか、練習したほうがいいのかな」
ぶつぶつと涙音は呟いている。
自信はないものの、気にはなっているのかもしれない。

「「えっ」」
パフォーマーとしてステージに立ったとしたら?
その言葉に思わず親子ともに少し驚いた顔になる。

笑美「ちょっと待ってくださいね。」
と、笑美が言うと二人はボソボソと相談を始めた。

涙音「決め台詞か…あんまり考えたことなかったかも…」
 笑美「そういうのって結構、景気のいいものがいいと思うわ。」
…そんな会話がしばし続いたあと

涙音「それじゃあ…その」
 笑美「二人で言いましょうか。」
と、二人でいってうなずくと、
せーの、と同時に前を指さした。

「「不幸なんて吹き飛ばす!幸運を呼び寄せる!
  スーパーラックパフォーマー!参上!!」」
と、二人は同時にセリフを言った。

涙音「ちょっ、やっぱり恥ずかしいじゃんこれ…」
 笑美「あら?涙音ちゃん結構乗り気だったじゃない〜♪」

641美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2024/03/06(水) 23:02:10
>>640

「即興とは思えないくらい、息がピッタリと合ってましたよ」

        パチパチパチパチパチ

二人の『名乗り』を見届け、小さく拍手を送る。

    「――――とっても良かったです」

自分の知る限り、『スタンド使いの親子』は貴重な存在だ。
この二人がステージに立つ姿も、きっと『映える』だろう。
今の台詞を『最終試験』だけに使うのは勿体ないと思ったくらいだった。

「私からは『以上』ですね。
 涙音さん、笑美さん――今日は来て頂いて本当に助かりました。
 お陰様で『より良いショー』をお見せ出来ると思います」

涙音と笑美からは『一通りの材料』を揃えられた。
一気に『二人分』を確保できたのも大きい。
総合的には、まずまずの滑り出しと言えるだろう。
しかし、『六人分』というのは、あくまでも『最低条件』。
それなりに『知り合い』がいる優位性を考えれば、
『六人分を集める』というのは『達成できて当然』であり、
『その上』を目指す事が美作の目標なのだ。

「のんびりお話したいんですけど、
 他の場所も周らなきゃいけないので、今日の所は失礼します。
 本業の『ラジオ』もよろしくお願いしますね。
 『動画サイト』の方に、私の『チャンネル』もありますから、
 お時間のある時に覗いてみて下さい」

停車中のバイクに歩み寄り、シートに跨ってヘルメットを被る。
バイザーとゴーグルの付いたハーフヘルメットだ。
差し込んだキーを回し、セルモーターのスイッチを入れると、
エンジンが始動してアイドリング音が鳴り響く。
愛車のベスパは『キックスタート』だったが、ホーネットは『セルスタート』。
ボタンを押すだけで始動するのだから楽なものだが、
手間が掛からなくなったせいか、若干の『寂しさ』は否めなかった。

   ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ

          「では、また――――」

                 ギュオオオオオオオオオオッ

朱鷺宮親子に会釈すると、力強いエンジン音と共にバイクを発進させた。
残りは最低『四人』。
それも『目星』はつけてある。

642朱鷺宮笑美&朱鷺宮涙音:2024/03/06(水) 23:27:47
>>641
笑美「こちらこそ、なにか助力になれたなら私も嬉しいです。」
 涙音「ちょっと恥ずかしくはありましたが…そういうふうに褒められるなら悪くないかも…」
お互いに思い思いの反応を示す親子。
どちらも嬉しそうである。

笑美「本当に忙しいのですね。
    アイドルのプロデュースというのはそんなに大変なんですね。」
涙音「あー、それじゃあその、いい結果になるといいですね。
    あ、裏方の仕事に関してもなにか必要ならぜひお願いしますー!」
ベスパに乗り込んだくるみに向けて二人は手を振りながら見送っていく。

激しいエンジン音は少し驚かされるものだったが
その音が去っていくと、すぐさま静けさが駐車場を支配した。

 涙音「しかし、スタンドを使ったパフォーマンスって…結構楽しそうかも。」
笑美「そうねぇ。私もそう思うわ。
    …じゃあそろそろお買い物して帰りましょうか。」
そう言って二人は買い物をするために駐車場から去っていく。
実際に何が起こっているのかは、まだ二人は知らない。

643ゆきみ『ブランシュ・ネージュ』:2024/03/31(日) 12:50:18
3月31日

    イースター
本日は復活祭
しかし敬虔なキリシタンの少ない日本では、誰の復活を祝うという事もなく…

うさぎを思わせるような少女は、
誰もいないスカイモールの屋上で月を見上げながら
一人、たまごアイスを食べている

644『ザ・モーニングマウンテン』:2024/04/01(月) 09:32:49
>>643(遅レスとなりますが、宜しくお願いします)

 「お ぉ? これは、これは! なんと私たち以外で
大号外ビラ大作戦を行おうとしている人が居たっス!」

 スカイモール屋上の入り口近くから、賑やかな明るい女の子の声が
君の背中を叩く。でかい声量は、叩くより、叩きつけるぐらいの勢いだ。

 「うーん…たぶん、別用なんじゃないかなぁ」

遅れて、のんびりとした男の子の声も聞こえてきた。

振り返れば、十字の絆創膏を額にした小学生ぐらいの男の子と。
 顔を、どうやらソゲキ〇グ的な仮面をつけた凡そ男の子と同年代が
少し上らしい背丈の子が飛び跳ねるようにして存在感をアピールするだろう。

なお、朝山の片手には大量のチラシらしいものが携えてる。

 文字通り、スカイモールの上からチラシを降らして
スタンド使いの人たちを集める大作戦! を、周囲のスカイモールの
人たちが迷惑になるのも、お構いなく決行する気のようだ。

645ゆきみ『ブランシュ・ネージュ』:2024/04/01(月) 19:10:15
>>644
たまごアイスを吸い切る

やっぱり何が良いのか分からない

自分以外、誰もいない屋上で月を見上げる

イエスみたいにこの子も復活したらいいのに


背後から叩きつけられる声にゆっくり振り返る
…もしもこれが声ではなく物理的に背中を叩きつけてきたなら
屋上から叩き落されて殺人(?)事件に発展していただろう

「…何?」

月が出ている事からも分かる通り、今は夜中だ
それも、そろそろ月が4月になる時刻

そんな時間帯、こんな所に明らかな不審者が登場する
(こちらの方も十分不審者だが)

うさぎのような少女は、頭からうさぎの耳のような物を生やし辺りを見渡している

646『ザ・モーニングマウンテン』:2024/04/02(火) 11:52:04
>>645

 >何?

「こんばんわーっス! 自分は悪の首領! 知る人ぞ知る、この町を統べる予定である
モーニングマウンテンと言うんっスよ!」

 ふふん! と威張るように胸を張る少女と共に、のんびりとした間延びした声で
隣の男の子は呟く。

 「うん・・・ぼくは、木崎 ゆだね。・・・『うさぎ』かぁ
月には、うさぎが似合うよね」

 少年は、そう君(ゆきみ)の兎耳を見て、そう呟くだろう。

 「兎っスか? 月見団子は美味しいっスけど、今はそれよりもビラを
屋上からばら撒くのが大事っスよ!!
 このまま屋上から、何でも屋の悪のニュー・エクリプス活動を宣伝して
いろーんな人から、お願いを聞いて回って、がっぽり稼ぐっス!」

 「広告は、やっぱり。ぼくは・・・穏便に駅前とか、適当な場所を
探すべきだと思うけどな」

 そんな、テンション高い少女と。マイペースな、のんびり屋な感じの
少年の会話が君の視界の中で行われるだろう。

647ゆきみ『ブランシュ・ネージュ』:2024/04/02(火) 18:31:23
>>646
「ゆきみ」

何か知らんが名を名乗る二人に対してうさぎのような少女は名を告げる


>今はそれよりもビラを
>屋上からばら撒くのが大事っスよ!

「ゴミをばら撒くのは確かに悪の組織らしい」

にしてもしょっぼい悪事だが
街の景観を汚す迷惑行為ではあるがしょぼい悪戯程度だ

>このまま屋上から、何でも屋の悪のニュー・エクリプス活動を宣伝して
>いろーんな人から、お願いを聞いて回って、がっぽり稼ぐっス!

悪の何でも屋とは一体…
殺しだとか強盗だとか犯罪専門の何でも屋だとかだろうか?
それはつまり

「闇バイト?」

それにしてはオープンにしすぎだが
何にせよ、まともじゃない事に違いはない

648『ザ・モーニングマウンテン』:2024/04/03(水) 12:40:05
>>647

>確かに悪の組織らしい

「おおぉ〜! 話がわかるっスね! ゆきみちゃん!
 そうっス! 我が悪の活動によって、この星見街は今まさに絶賛震撼中なんっス!」

 そう、『ザ・ハイヤー』を発現しつつ調子にのって朝山は
『ニュー・エクリプス・ダンス』をのりのり♪ で披露し始めるだろう。

 隣の木崎は、まだ短くも悪の首領の調子に慣れてきたので
それを緩んだ顔で眺めつつ、ゆきみに声をかける。

>闇バイト?

「うーん…闇の付くバイトじゃなくても、お金が稼げればいいんだけどね。
……ねぇ……なにか困ってる事とか、そう言う人を知ってたりしない?
 主に、ぼく……人を助けれたら良いなーって、思うんだ。
お金も…出来れば、欲しいけど」

 初対面であるが。魔法使いの試験の期限も半分を切ってる。
一抹と木蝋だけでは足りない。あと五人の魔法(スタンド)使いと
召喚の道具と立地を整えるのにも、見ず知らずの人間に対しても
遠慮せず少年は聞く。

 朝山はともかく。木崎が屋上に来たのは、人気が無く召喚に適してる
かも知れない為に下見したくて訪れた。とは言え、ゆきみが居る以上
 本番で召喚するには厳しいだろうなぁとも思ってるが……。

649ゆきみ『ブランシュ・ネージュ』:2024/04/03(水) 18:37:19
>>648
>我が悪の活動によって、この星見街は今まさに絶賛震撼中なんっス!

そうだったかなぁ?と言おうとしたが
普段星見街にいないゆきみは
この街の治安についてそんなに詳しくないのでなんとも言えない

>そう、『ザ・ハイヤー』を発現しつつ調子にのって朝山は
>『ニュー・エクリプス・ダンス』をのりのり♪ で披露し始めるだろう。

「むっ」

ピク

スタンドの発現に対してうさみみをピクリと動かし反応する

>木崎

アホみたいに実に頭の悪そうなダンスを舞う少女(無礼)
彼女がスタンド使いだとしたら、こっちの彼もスタンド使いなのだろうか?

そんなスタンド使いの悪の何でも屋なら

「君達さ」
「死んだ人生き返らせられる?」

650『ザ・モーニングマウンテン』:2024/04/04(木) 13:33:09
>>649

>死んだ人生き返らせられる?

「ん? 死んだ人っスか……それは、難しいっスよね。
 大怪我してる人とかなら、病院で治療費払ったら治せそうっスけど」

 真面目な質問だと受け取ったのだろう。ニュー・エクリプス・ダンスをピタっと
止めてモーニングマウンテンも真剣そうに首を傾げて答える。

 「……しらない。……でも、ぼくも……生き返らせらるなら、生き返らせたい人……いるな」

 木崎も、また同じように其の手段を持ち合わせてない。
ただ、その方法を真に知りたい君と同じ願望を切実に持ち合わせてるのだろう。
 回答の中で一瞬翳りが顔に見え隠れした。

「うーん、でも星見街には沢山の凄い力を持つ人たちが居るっス!
 そん中には、過去に戻ったりとか神様みたいな力を持つ人も居るだろうっスからね!
諦めるのには早すぎるっスよ! このまま悪の活動を続ければ、そう言った
人たちとバッタリ鉢合わせる事もあるかも知れないっス!!」

 「……うん、そうだね……朝山さん」

 だが、悪の首領は出来ない、御免なさいでは済ませはしないのだ!

まったく保証など無いものの、希望的観測が真実だと言わんばかりに胸を張って
宣言する。木崎も、先ほどまでの沈痛を薄っすら浮かべた顔を柔らかに戻していた。

 「あ! ゆきみちゃんは、スタンドは何て名前なんっスか!
私のは『ザ・ハイヤー』って言うんスよ!」

 兎耳や、ザ・ハイヤーが見えてそうなのも有ってグイグイと朝山は
スタンドについての情報を迫る。そう言う、遠慮のない所は流石に首領たる所以か……。

651ゆきみ『ブランシュ・ネージュ』:2024/04/04(木) 18:47:37
>>650
「そう」
「そうだね」

最初から期待はしていなかった
ただ、もしかしたらこの子を…
『ゆきみ』を生き返らせられるかもしれない
少しそう思っただけだ

ゆきみはわたし、わたしはゆきみ
これからもわたしはゆきみと一緒に旅をする
けど……もしゆきみが生き返ったら
その時はお別れなのだろうか?


>あ! ゆきみちゃんは、スタンドは何て名前なんっスか!
>私のは『ザ・ハイヤー』って言うんスよ!

「わたしはゆきみ」

わたしはゆきみになり、ゆきみはわたしになった
一緒に旅をするために

「『わたしの名前』は」

朝山達にゆっくりと歩み寄るゆきみ
離れていると分からないかもしれないが
近付くと気付くかもしれない、ゆきみから冷たい空気が漂っている事に

「『ブランシュ・ネージュ』」

名前を教えるくらいは大したリスクではない
だから『自分の名前』教えてもいい

652『ザ・モーニングマウンテン』:2024/04/05(金) 13:07:52
>>651(長らく付き合わせて頂き申し訳ありません。
宜しければ、次で〆させて頂きます)

「『ブランシュ・ネージュ』っスか!
すごい格好良い名前っス!」

 そう、喜びの表現を伝えるエクリプス・ダンスを披露するモーニングマウンテン。
先程のニュー・エクリプス・ダンスとどう違うのか見た目では
激しさの強弱に幾らか差は見られる気はするが……誤差の範囲だろう。

悪の首領(朝山)には、君の背景を察する事は出来ないし。君(ゆきみ)にも
目の前の悪の首領が、どのような目的をもって首領を志してるのかを
知る術は今は無い。ゆきみや、朝山が抱く願いも、いずれ叶うか叶わないかは
この夜空のように、標は今は見えないのだろう。


 「よーし! それじゃあ屋上からビラをばら撒くっスよ!
なんか寒くなってきたし、善は急げっス」

 「うん……朝山さん。でも、夜中だから道を走ってる車の前方ガラスとかに
もしかしたら張り付いたら事故になっちゃうかも知れないよ?
 それに、変な隙間に挟まったりすると、のちのち工事とかしないと
いけなくなっちゃうかも知れないし」

 「……うーーーん、それじゃあ屋上からバラ撒くのは
止めるべきっすかねー。確かに、ちょぴっと風も強くなって
飛んでいった先が運悪く人通り多い所だったら大変っス」

 木崎に、そう諭されて。少し悩みつつ、チラシを仕舞い込んだ。
多分、そう根は悪くないのかも知れない。

 「うーん! 悪のピラ撒き大作戦は中止になっちゃったス!
けど、ゆきみちゃんとも友達になれたし、結果オーライっスね!!
 ゆきみちゃん、連絡先交換するっス! 今度友達の家か自分家で
パーティするっス! 友達に、すっごく美味しい料理や、お菓子
作ってくれる人を私は二人も知ってるっスよ!」

 悪の首領は、身振り手振りで明るい感情表現を伝えつつ
ぺらぺらと、ゆきみに話しかける。
 これ以上は、他愛ない雑談だけだろう。自分本位に勝手に話し終えたら
木崎を連れて、意気揚々と屋上から去っていくだろう…。

653ゆきみ『ブランシュ・ネージュ』:2024/04/05(金) 17:55:36
>>652
>けど、ゆきみちゃんとも友達になれたし、結果オーライっスね!!

「え?」

何か勝手に友達認定されてるけど
名前を教え合えばもう友達!!っていうノリなのか?
……まぁ別に構わないが

>ゆきみちゃん、連絡先交換するっス!

「…う、うん」

凄い勢いで話しを進めていく朝山に押されて
勢いのままに連絡先を交換してしまったゆきみ

まさか、こうやって手に入れた個人情報を利用して
犯罪に使う気じゃないだろうな!?
だとしたら

「まさしく悪の首領」


ピクッ!

その時、ゆきみのうさ耳がピンっと逆立った
懐中時計を懐から取り出して時間を確認する

午前0時
丁度今、4月に入ったところだ

「急がないと」

今の今までのんびりと話し込んでいたゆきみだが
時間を確認するなり、いきなり何か急ぎだす

言うが早いか、朝山達が去るよりも先にこの場を後にするゆきみ


4月は卯月
卯月とは卯の花の月なのだが
卯は兎なので、4月もまだまだゆきみの季節だ

654美作くるみ『プラン9・チャンネル7』&キリシマ・アキト『候補生』:2024/05/10(金) 20:57:38

展望台に二人の男女が立っている。
高校生くらいの少年と二十代半ばの女という取り合わせだ。
どちらも『オールブラック』の『モードストリート』を身に纏っているが、
少年の方には『アラクネ』と『ライオン』を象った『刺繍』が施されていた。

「確か、あの高架下辺りに『ウォールアート』があったはず…………」

        スッ

女が一点を指差し、少年に告げる。

「違法な落書きじゃなく、治安向上の目的で、美術関係の学生達が手掛けた絵でね。
 街の景観にアートを取り入れる事で、犯罪を抑止する効果があるそうよ」

「フ……まさしく『カッコ良さ』が重要な意味を持つ事を証明しているな……。
 オレが舞う『儀式』の舞台には相応しい……」

そのような会話を交わしながら、二人は街を見下ろしている。

655美作くるみ『プラン9・チャンネル7』&キリシマ・アキト『候補生』:2024/05/12(日) 14:18:43
>>654

まもなく、『黒』を纏った男女は展望台から離れ、『目的地』に向かった。

656朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』+妹:2024/05/12(日) 18:54:05
「ちょっと大きいなこれ…
 まぁ大丈夫だよね。
 あとは…ケーキかな。買うのは」
涙音はそう言ってスカイモール内を歩いていた。
その手にはカーネーションの花束を抱えており、前がよく見えないようである。

「おねぇちゃん、ちゃんとまえをみてね!
 おねぇちゃんはいつもあぶないけど、『ふちゅーい』のときはさらに危ないです!」
隣には涙音よりも年下のような少女。
涙音の妹である。

「大丈夫だってー。
 私はここ最近ツイてるんだから。
 というかなにがこようが華麗に避けてみせるってば!」
涙音はよくわからない自信を見せながら歩いている。
が、前はよく見えていなさそうだ。

657美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2024/05/13(月) 19:31:41
>>656

『店』を探しながら歩いていた。
ちょっと余所見した直後、ぶつかりそうになってしまい、その手前で立ち止まる。
目の前いっぱいに広がっているのは、まるで花畑のような光景だ。

  「おっとっと――――」

        「あら、涙音さんじゃない。こんにちは」

               ニコッ

見知った相手である事に気付き、笑顔で挨拶する。

     「こんにちは、お嬢さん。妹さん?」

それから身を屈め、涙音の隣にいる小さな少女に向き合った。

658朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』+妹:2024/05/13(月) 20:39:21
>>657
「む、おねぇちゃん、前に人がいるんです!」
前方を確認していた妹が声を上げた。

「おっと、っと…!!」
思わずぶつかりそうになったのを感じたのか
涙音は足を急激に止める。

「あぶなっと…!!」
どうやらギリギリでぶつかるのを回避できたようだ。
かなり近くまで来ていたが、接触はせずに済んでいる。

「あぁ、すいませんその…
 前がよく見えなかったもので」
涙音がそう言って花束越しから前を見る。

「あっ、くるみさんじゃないですか。
 どうもこんにちはー。」
知り合いだったことにどこかホッとした表情を浮かべた。
ちらりと、妹の由楽を見て、答える。

「その子は私の妹です。
 名前は…」

由楽「はじめまして、おねーさん。
    ゆらと言う名前なんです!」
そう言って由楽は丁寧にお辞儀をした。

由楽「おねーさんは、おねぇちゃんとおともだちなのですね?」

659美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2024/05/13(月) 21:48:37
>>658

『魔法使い試験』が始まった時、最初に声を掛けたのが涙音と笑美だ。
あれから色々と奔走して、限りなく『完成』に近付ける事が出来た。
それに関しては言えないが、心の中では大いに感謝している。

「お姉ちゃんのお友達で、お母さんともお友達よ。
 少し前に、一緒にお出掛けした事もあるの」

「由楽ちゃんはしっかりしてるのねぇ。
 私は『くるみ』。良かったら仲良くしてね」

幼いながら礼儀正しい仕草を見て、こちらからもお辞儀を返す。
涙音に妹がいたとは知らなかった。
『試験』を控えている状況もあり、一瞬『スタンド』の事が頭をよぎる。
笑美と涙音が『スタンド使い』なら、由楽にも可能性があるかもしれない。
しかし、既に『材料』は揃っているし、自分から言うのは止めておいた。

「涙音さん達は『母の日のプレゼント』ってところかしら?」

カーネーションの花束に視線を移し、思い浮かんだ直感を言葉にする。

660朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』+妹:2024/05/13(月) 22:33:10
>>659
由楽「おかぁさんともおともだちですか!
    ぜひ、ゆらともおともだちになってほしいんです!」
どこか嬉しそうな表情で由楽は駆け寄っていく

涙音「ちょっと由楽、初対面なのにそんな急に…」
由楽「おねぇちゃん、なんの問題もないと思うの!
    おねぇちゃんとおかぁさんのおともだちなら、きっといい人です!」
涙音は少し申し訳無さそうにくるみに頭を下げる。
由楽は初対面の人であろうとお構いなしに声をかけているのだろうか。
姉と母の友達であると聞いて、すぐにでも仲良くなりたそうである。

由楽「おねーさんはくるみというのですね。
    ゆらはくるみも大好きです!なので仲良くします!」
そう言って握手しようと手を伸ばしてくる。
多分大好きというのは、ナッツの方のクルミのことだろう。

涙音「ええ、はい…とりあえずカーネーションは購入しまして、
    あとはお祝いのケーキでも買おうかなというときなんですけど」
チラチラと花束の向こうから涙音の顔が見える。

由楽「おそらくおねぇちゃんはちょうどいいケーキを買いに行こうとしているんです。
    お花がいっぱいなおかげであんまりちゃんと歩けてないです。」

661美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2024/05/13(月) 23:17:42
>>660

由楽には気付かれないように、涙音に向かって笑いかける。
純粋な好意を持ってくれているのだから、積極的に来られても悪い気はしない。
こういったコミュニケーションは、丁度いい気分転換にもなるだろう。

「あはは、私も『クルミ』は好きよ。なんだか私達って気が合いそう」

           ――――――キュッ

      「お友達の印に握手しましょうね」

由楽の手を取り、優しく握手する。

「それじゃあ、お母さん思いの二人に私からのアドバイス!
 『クルミを使ったケーキ』なんてどうかしら?
 一番のオススメは『クルミとコーヒークリームのケーキ』だけど、
 由楽ちゃんも食べるなら『クルミ入りのチョコレートケーキ』がいいかもしれないわ」

       ピッ

人差し指を立て、すぐ近くにあるケーキ屋を指し示す。
店頭のショーケースには『クルミを使ったケーキ』が並べられていた。
時々そこを歩くのだが、自分と同じ名前なので、自然と覚えてしまったのだ。

662朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』+妹:2024/05/14(火) 00:06:55
>>661
涙音「フヒヒ、どうも。」
涙音も返すように笑いかける。
何だかんだ仲が良いのは確かだろう。

由楽「おー、くるみおねーさんも好きなのですね。
    これは仲良しどうしになれます!」
そう言ってきゅっと握手をし返した。

由楽「お友達どうし、さらに好きなものが一緒どうしの握手です!」
彼女の表情はなかなか嬉しそうであった。

由楽「クルミのケーキですか!」
くるみの提案を聞いて、由楽はまた目を輝かせる。

涙音「あーそれ、とても良さそうですね。
    幸いうちにはそういうアレルギーの人はいませんから。
    きっと由楽にとっても嬉しいことだと思いますよ。」
ちらりと涙音が顔をのぞかせて答える。

由楽「そうと決まったら、『でんわいそげ』ですよ!
    さぁいくのですおねぇちゃん!」
グイグイと、由楽が涙音を引っ張り出した。

涙音「わ、ちょっと待ってって…
    全く…スタンドさえ使えたら…」
危うく躓きそうになりながら涙音は由楽に引っ張られている。
結構人がいる場所ではスタンドが使えず困っているようだ。

663美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2024/05/14(火) 16:10:13
>>662

微笑ましい光景だが、これでは少々危なっかしい。

「あはは、由楽ちゃんの言う通り『善は急げ』よ」

         ス ッ

「だから、その花束は私が持っていてあげる」

空いている両手を涙音に差し出し、彼女の代わりに花束を抱える。
そうすれば二人はケーキに集中できるだろう。
これで問題解決だ。

「ただし、私の買い物にも付き合ってもらおうかな。
 ちょっと二人の意見を聞いてみたいから」

ここに来た目的は『それ』だった。
『魔法使い試験』の為に用意したい物がある。
何にするかは決めてきたが、せっかくなので二人の感想も欲しいところだ。

「でも――――先にケーキを買っちゃいましょう」

クルミのケーキは幾つか種類があり、さっき言った二つも陳列されていた。

664朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』+妹:2024/05/14(火) 18:08:09
>>663
涙音「あっ、どうもありがとうございます…
 すいません、こんな大きいのを…」
差し出された両手に花束を渡し、涙音は頭を下げた。

由楽「おねぇちゃん、くるみおねーさんはとてもいい人。
    すごく感謝するのがよいです!」エッヘン
涙音「って、そこで何で由楽が偉そうにしてるのよ。
    くるみさんと先に友人になったのは私であって…」
少し嬉しそうにふんぞり返る由楽と、どこか呆れたようにツッコミを返す涙音。
話し方から見ても、仲の良い姉妹のようである。

涙音「意見…って一体?」
少し首を傾げる涙音であったが

由楽「あとできく!でよろしいですね!
    ほら、いくのおねぇちゃん!」
涙音「わ…っと…」
と、質問に対し割り込むように由楽は涙音を引っ張っていく

665美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2024/05/14(火) 19:34:11
>>664

まだ小さいせいもあるだろうが、由楽は笑美や涙音とは毛色が違う。
初対面の相手にも礼儀正しく、物怖じしない堂々とした性格は、
なかなか『アイドル向き』かもしれない。
ただ、さすがに年齢が若すぎる。
しかし、方向性としてはアリだった。
高宮や林檎と被らないようにする為には、こういうタイプをスカウトするべきか。

「それについては後でね。さぁ、『プレゼント』を選んできて」

心中で考えを練りながら、花束を持って後ろに下がり、二人の買い物が終わるのを待つ。
その間、涙音の服装を見ていた。
正確にはポケットから溢れる『開運グッズ』を。

「――――何を買うか決まった?」

しばらくして、カーネーションの隙間から覗き込み、涙音と由楽に声を掛ける。

666朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』+妹:2024/05/14(火) 20:46:21
>>665
由楽「りょーかいでっす!」
涙音「分かりました、それじゃあちょっと待ってください」

二人はクルミのケーキに視線を向ける。

由楽「ゆらはコーヒーというものに興味が…」
涙音「いや、そういうのはカフェオレを飲めるようになってからのほうが…」
由楽「む、おとなの味はゆらにはまだ早いということで…」
涙音「背伸びするのはお姉ちゃんくらいの年になってからね…」

色々と相談をしている様子である。
由楽はちょっと大人びたい年頃なのだろうか。


由楽「ふむ、ここはぜんいんがしあわせになれるチョコレートケーキを選ぼうと思うんです!」
くるみに対して由楽が答えた。
色々話をして納得したんだろう。

涙音「ちょうどホワイトチョコのやつもあるみたいですし、コレにしようかと。」
そう言ってホワイトチョコのくるみケーキを指さした。

667美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2024/05/14(火) 21:32:05
>>666

由楽と同じぐらいの頃、美作は引っ込み思案で大人しい性格だった。
転機が訪れたのは、入院中に時間を持て余し、『ラジオ』を聴き始めた時だ。
パーソナリティーの声に励まされ、退院を迎える頃には何かが変わっていた。
少しずつ積極的になり、自己表現に対する欲求が目覚めたのだ。
その結果、ついに『アイドル』としてデビューするに至った。

「コーヒーの味を楽しむのは、ちょっと由楽ちゃんには早いかもねぇ。
 でも、チョコレートケーキも美味しそうだし、それでいいんじゃないかしら。
 きっとお母さんも喜んでくれるわ」

二人が会計を済ませた後で、ポケットから『名刺入れ』を取り出す。

「私の買い物なんだけど、アクセサリーを作ろうと思ってるの。
 大きな仕事を控えてるから、『成功祈願のお守り』としてね」

名刺入れの中から出してみせたのは『鈴蘭の押し花』だった。
以前、『キーホルダー』と交換で、『りん』から受け取った物だ。
これは『彼女の一部』であり、『魔法の産物』と言っても差し支えない。
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1614349479/330-331

「『お友達』からもらった『押し花』を、アクセサリーに加工したいのよ。
 それで、どんなのがいいか意見を聞きたいんだけど…………」

押し花を見せながら、涙音と由楽に問い掛ける。

668朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』+妹:2024/05/14(火) 22:59:34
>>667
由楽「ゆらは、こうみえてもお茶のケーキは食べられるんです!おとなですよ!」
また少し得意げな顔になっている
涙音「…アレは結構甘いタイプの抹茶ケーキだったような…
    と、とりあえずコレを買うことにしますね。」
早速注文する二人。

涙音「あら、コレってすずらんの花…
    キレイですね。コレはお友達のものですか…
    …鈴蘭といえば…」
じっと鈴蘭を見つめる涙音。多分彼女にもなにか思い当たるところがあるのだろう。

由楽「わぁ、とてもきれいなお花です!
    ゆらも欲しいです!」
近寄ってきた由楽も興味深そうである。

涙音「成功祈願のお守りですかー。
    となると色合いも考えるのが良いですね。」
そう言ってジャラジャラと自分のお守りの一つを手に取る。

涙音「ピンク色とかスカイブルーとかが一番いいみたいですよ、そういう願掛けの場合は」
どこぞの神社のお守り袋のようだ。スカイブルーの色合いをしている。
由楽「でもおねぇちゃん、こううんになってない。」
真顔で由楽がぐさりとくる一言を告げてきた。

669美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2024/05/14(火) 23:51:15
>>668

「…………もしかして『りんちゃん』を知ってるとか?」

涙音の反応を見て、直感的に事情を察した。

「あははは…………でも、お姉ちゃんは、
 由楽ちゃんやお母さん達と楽しく過ごしてるでしょう?
 きっと、お守りが支えてくれてるのよ」

『幸運になってない』というのは、裏を返せば、
『大きな不運にも陥っていない』と解釈する事も出来るはずだ。
いい方向に考えれば前向きに生きていける。
そのような意味を込めて、由楽に微笑みかけた。

「私が考えてるのは、この押し花を透明な素材に挟んで、
 チェーンを付けて『ペンダント』にしようかと思ってるの。
 それから、今の格好と合うかどうかも大事にしたいわね」

美作は『黒一色』で統一したファッションを身に纏っていた。
その胸元に押し花を当てる。
頭の中に描いているのは、大体こんなイメージだ。

「アクセントとして、他の色を取り入れるのはいいアイディアだと思うわ。
 その場合も『鈴蘭』が見えるようにしておきたいんだけど、
 色付きの素材を使うと見えづらくなるのが難点ねぇ」

ジャラジャラと出てきたお守りを眺めながら、思考を掘り下げていく。

「『形』については、何かアイディアはないかしら?」

670朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』+妹:2024/05/15(水) 18:30:04
>>669

涙音「りんちゃん…もしかしてあなたの知っているりんちゃんは…
    こう、頭からスズランの花が生えている女の子ですか?」(自分の頭を指差す)
由楽「む、それはきっと妖精さんです!
    おねぇちゃんは妖精さんともお友だちということになる、と思うんです!」
どうやら涙音の知っているりんとくるみの知っているりんは同じ人物のようだ。
由楽が入っている通り、見た目的には妖精に見えなくもない少女だろう。

由楽「ほう、そのかのうせいはありえるのです。
    おかぁさんはとてもラッキーなので、お守りはおかぁさんの力にちがいないです!」
涙音「いや…普通にご利益があるかと…」
どこか由楽のはっきりという態度には姉である涙音もどこか頭が上がらないようである。

涙音「ふーむ、ペンダントですね。
    そしてくるみさんのファッション…」
じっとくるみのファッションを見ながら考える。

涙音「他の色を取り入れるとなると、
    鈴蘭の色となるべく被らないようにするのが良いですね。
    だとしたら、ちょっと薄めの色合いだと良いかもしれません。
    黒と合わせるならアクセントで明るめにするのも良いかもしれませんね。」

涙音「形となると…押し花を中に収める形にしたりしても良いかもしれませんね。
    おんなじようなスズランの花のデザインを加えてみるのはどうでしょう?」

671美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2024/05/15(水) 20:03:13
>>670

「そうそう、その『りんちゃん』よ。
 確かに『妖精さん』に見えなくもないかもねぇ」

頭に鈴蘭の花が生えている。
そんな特徴を持つのは一人だけだろう。
間違いなく『りん』だ。

「りんちゃんとは何度か会った事があるの。
 バレンタインの買い物をしたり、流しそうめんをしたり、
 鈴蘭畑で話した事もあったかしら。
 それからラジオでお喋りした事も――――」

そこで言葉を切り、手にした押し花を、顔の高さに持ち上げる。

「鈴蘭は『幸せのシンボル』だけど、『毒』もあるから注意しないとね。
 でも、昔は『薬』としても使われていたから、
 考え方によっては助けになってくれる」

「『幸運を呼び寄せる』、『不幸は吹き飛ばす』。
 なんだか『どこかの誰かさん達』に似てると思わない?」

今は由楽がいるのでぼかしたが、朱鷺宮親子から聞いた『決め台詞』だ。

「…………鈴蘭の花を模したデザイン」

涙音のアイディアは悪くない。
問題は『どうやって作るか』。
その為には細かい作業が出来る人材が必要になる。

「ありがとう。とっても参考になったわ。
 ところで、これは念の為に聞くんだけど、
 誰か『彫刻』が出来る人に心当たりはない?
 私の『力』じゃあ、ちょっと難しそうだから」

672朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』+妹:2024/05/15(水) 21:24:24
>>671
涙音「あの子は何なのかよくわからない子ですねぇ。
    鈴蘭を入れた食べ物とかを作ったりしてますし…」
鈴蘭は猛毒ということは知っている。
彼女はなんだか平気そうに見えたが。

涙音「そうなんですねー。そんなに何度も人付き合いを…
    あの子は結構友達が多かったりするのかもしれませんね。
    私はつい最近カフェで知り合ったばかりです。
    そこのマスターさんと結構仲良かったみたいですね…」
どこか羨ましそうな様子で答える。

涙音「毒にも薬にもなるか…
    ん、その言葉は…
    …たしかにそうかも知れませんね。」
かつて親子で言った決め台詞を思わせる言葉に
どこか恥ずかしそうな顔をする。

由楽「おねぇちゃん、いまのことばはなんだかいいことばです!
    キメゼリフにするべきです!」
涙音「その…まぁそうするかな…」
どうやら由楽は気づいていないようだ。
少し嬉しそうな顔で涙音が返事を返す。

涙音「参考になれたなら嬉しい限りです。
    …彫刻ができる人かぁ…私はそういうのやったことないですし、
    お母さんはそういうのが趣味ではないし…」
少し悩んだ顔をする涙音、そしてふと顔を上げる。

涙音「うーん、『人』じゃなかったら心当たりがあるんですけど…」
少し意味深な感じで涙音が答える。

673美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2024/05/15(水) 21:56:23
>>672

特に求められるのは『エラッタ・スティグマ』のような『精密性』。
それだけではなく『道具』も要るだろう。
例えば『刃物』のような物を持っているスタンドが適しているはずだ。

「それを探すのは私の仕事だから気にしないで。
 『知り合い』を当たってみる事にするから」

今の時点で該当するような人材は思い付かない。
しかし、『知り合いの知り合い』の中に見つかる可能性がある。
見込みがありそうな『知人のスタンド使い』に連絡してみる事にしよう。

「『人じゃない』…………?それって一体…………?」

涙音の言い方に違和感を覚え、その意味を聞き返す。
『夏の魔物』も人ではない存在だったが、そういう話ではなさそうだ。
心当たりがあると言うぐらいだから、コミュニケーションは成り立つのだろうが。

674朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』+妹:2024/05/15(水) 22:51:19
>>673
涙音「まぁ、分かりました。
    でも一応協力させていただきますね。」
由楽「ゆらは『ずこう』がとくいです!」
気をつかうかのように由楽も声をかけてくる。

涙音「ああ、その…私の知り合いにいるんですね。
    彫刻に関するスタンドを持っている人が…
    まぁその、人というよりも…『猫』なんですけどね」
思いついた知り合いというのはどうやら
『猫』のスタンド使いであるらしい。

涙音「確か名前が『ロダン』と言いましたか…
    毛が殆ど無い種類の猫なんです。」

675美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2024/05/15(水) 23:23:21
>>674

涙音と笑美の二人からは、既に『情報提供』を受けている。
その時点で十分な協力だ。
しかし、せっかくの厚意を受け取らないのは失礼に当たってしまう。

「あはは――もし見つからなかったら、由楽ちゃんにお願いするかもしれないわねぇ」

もちろん本気で頼むつもりはなく、あくまでも場を和ませる為のジョークだった。

「へぇ、『毛がない猫』…………。
 なかなか興味を引かれる耳寄りな情報じゃない。
 もう少し詳しい話を聞きたいところだけど――――」

          ソ ッ

ずっと腕に抱えていたカーネーションの花束を涙音に返す。

「長く引き留めるのも悪いし、私は行く事にするわ。
 二人からのプレゼント、喜んでもらえるといいわね」

          ニコッ

「今日は色々ありがとう。良かったら、またお話しましょう。
 あぁ、もし『アイドル』になりたがってる子がいたら教えてくれる?」

押し花を名刺入れに戻し、笑顔で涙音と由楽に手を振る。
特に止められなければ、そのまま歩いていくだろう。
『アクセサリー』の材料を買いに向かうようだ。

676朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』+妹:2024/05/15(水) 23:43:02
>>675
由楽「おまかせくださいです!」
と、胸を張りながら答える由楽。

涙音「参考にしていただけたなら幸いです。
    あの猫さんに会えたら良いですね。
   …腕前は保証します。」

やがて、花束を返してもらうとにっこり微笑んだ
涙音「ありがとうございました。
    色々お手伝いいただけたこと感謝します。」

由楽「アイドルですか!じゃあおともだちにきいてみます!」
涙音「はい、私もちょっと探してみますね。
    アイドルか…」
そういった跡で彼女に向けて微笑みかける。

涙音「それじゃあまたお会いしましょう!」
由楽「またおあいしましょー!」
二人は花束とケーキを手に取ると

「「じゃあまたー!」」
二人同時に元気な声で見送っていった

677美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2024/05/25(土) 21:58:03

フードコートの一角で、数枚の用紙と向き合っていた。
『本番』までに、この内容を覚えなければならない。
つまり、これは一種の『台本』だ。

「…………どうしたものかしらねぇ」

ふと『小林丈を捜して欲しい』という一抹の言葉を思い出す。
美作は『小林が今どこにいるか』を知らない。
しかし、『最後に行った場所』なら把握済みだ。
以前、朱鷺宮笑美に頼まれて、『電子カルテ』を調べた事がある。
その結果、彼が『旧病棟』に運び込まれた事実を掴んでいた。

(ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1453646843/332-353)

少なくとも小林丈は生きているのだろう。
それを教えなかった理由は、美作自身が『情報の取り扱いに慎重だから』だった。
そもそも依頼されて行った調査であり、
依頼者の確認も取らないまま、安易にリークは出来ない。

「でも、頼まれたからには手伝わないとね」

情報は簡単に渡せないが、力を貸す事は出来る。
ただし、『魔法使い試験』を含めた『門倉派』の活動も疎かに出来ない。
諸々の仕事が一段落ついたら、また改めて考えてみよう。

「今は『こっち』に集中しないと…………」

テーブルの上には、ハンバーガー・フライドポテト・レモネードが置かれている。
ファストフードのセットメニューらしい。
ハンバーガーは『アボカドチーズバーガー』だ。

678美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2024/05/26(日) 17:33:02
>>677

台本をテーブルに伏せて、レモネードに口をつける。
まもなくハンバーガーに手を伸ばしかけたが、その途中で考えが変わった。
ポケットからスマホを取り出し、『門倉良次』に電話を掛け始める――――。

679美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2024/05/28(火) 05:59:39
>>678

遅めの昼食を済ませ、台本を手にして席を立つ。
ざっと暗記したが、まだまだ足りない。
形は違えど『アイドル時代』と同じ。
ただ上手く歌うだけではなく、感情を込めるからこそ訴求力が生まれる。
ここからは『表現力』の問題だ。

「門倉さんも楽しみにしておいて下さいね」

同じく『エンターテインメント』を志す彼の参戦は、一つの波乱となるだろう。
しかし、予想外のアクシデントは望むところ。
越えるべき『ハードル』は高い方が魅力的なのだから。


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