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【場】『 湖畔 ―自然公園― 』

1『星見町案内板』:2016/01/25(月) 00:04:30
『星見駅』からバスで一時間、『H湖』の周囲に広がるレジャーゾーン。
海浜公園やサイクリングロード、ゴルフ場からバーベキューまで様々。
豊富な湿地帯や森林区域など、人の手の届かぬ自然を満喫出来る。

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                 ミ三ミz、
        ┌──┐         ミ三ミz、                   【鵺鳴川】
        │    │          ┌─┐ ミ三ミz、                 ││
        │    │    ┌──┘┌┘    ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
        └┐┌┘┌─┘    ┌┘                《          ││
  ┌───┘└┐│      ┌┘                   》     ☆  ││
  └──┐    └┘  ┌─┘┌┐    十         《           ││
        │        ┌┘┌─┘│                 》       ┌┘│
      ┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘     【H城】  .///《////    │┌┘
      └─┐      │┌┘│         △       【商店街】      |│
━━━━┓└┐    └┘┌┘               ////《///.┏━━┿┿━━┓
        ┗┓└┐┌──┘    ┏━━━━━━━【星見駅】┛    ││    ┗
          ┗━┿┿━━━━━┛           .: : : :.》.: : :.   ┌┘│
             [_  _]                   【歓楽街】    │┌┘
───────┘└─────┐            .: : : :.》.: :.:   ││
                      └───┐◇      .《.      ││
                【遠州灘】            └───┐  .》       ││      ┌
                                └────┐││┌──┘
                                          └┘└┘
★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
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473『ニュー・エクリプス』:2018/07/23(月) 23:47:25
>>472

 あぁ……ココロ ココロよ。君はムーさんが
何か黒っぽい布とかで目隠しをしたと思い込んでいる。

 だが、違う。……ムーさんんは『ただの両手』で君の
目元を覆っているのだ。凄く この暑さでべとっとした手だ。
余計に君の暑苦しさを引き立てている。

城生「あっ 棒が右に寄りすぎ― もうちょっと左ー!」

エッ子「そのまま前だー! そんでもって左に左、もうちょっと左
んでもって斜め四十五度に棒を構えて〜!」

朝山「思いっきりズドンっと振り下ろすっスー!」
権三郎「パゥー!」

 約一名、わかり難い指令があったものの。スイカの位置を
教えてくれてはいる。さぁ フィニッシュだ!!

474ココロ『RLP』:2018/07/24(火) 00:43:18
>>473

「……………??」

(あ、あら……なんで目隠しされたのに、
 まだ背中にくっついてるのかしら……って、
 も、もしかして、目隠しが布じゃなくて……手!?)

     (そ、そうだわ! 妙に暑いと思ったら……
       ど、どうすればいいの……あ、歩きづらいし……)

            (でも、ぬ、布が無くてもスイカを割りたいという、
              この人たちの気持ちに私は答えてあげるべきよ)

     フラ
              フラ

(…………こ、答えてあげるべきよね。
 そうよ、きっとそう……別に悪い事とか、
 嫌な事をされているというわけではないわ……)

(嫌と言えば……う、後ろの子、熱中症になりかけてた子よね?
 大丈夫なのかしら、こんな暑いことして……い、嫌じゃないかしら?)

あまりの急な事態にやや混乱はしているものの、
言われるがまま歩いていく……分かりやすい指示だ。

(犬も何か指示をしてくれてるのかしら……
 い、いえ、犬に気を取られ過ぎては駄目よ、
 彼女たちの大事な仲間なんでしょうけれど、
 スイカ割りをする上では……犬は関係ないわ)

        「こっ……」

                  「ここっ……ね!」

     ブン!

ココロは気が小さいが体は大きいので、威力は問題ないはずだ!

475『ニュー・エクリプス』:2018/07/24(火) 18:18:31
>>474

 ムーさんが何故、適当に鞄を漁れば目隠しになる布はきっと
見つかるだろうに、ソレをしない事。
それは真夏の太陽が醸し出した悪戯心なのかも知れない。
 もしくは、単に暑すぎてダル過ぎて面倒だったからも知れない。

まぁ、十中八九後者で。殆ど意味のなさない行動だから気にしなくていい。

 犬の言ってる意味についても考えつつ、貴方は三人と一匹の声援と
指示に従い、憑依した幽霊のように、べったりくっ付くムーさんと
共に歩きつつ、棒を振りかぶる!!

       ――パコンッッ!!

     『割れたーーーー(っス/パーァ ウン)っ!!!!』


 暑い日差しの下、湖畔公園に女の子達の歓声が轟いた。


     ・ ・ ・ ・


 シャリシャリ

 「美味しいねぇー」

 「冷えてるっスねぇ〜」

 「極楽だ」

 「あーまーいーぞ!」

 スイカを割ったら、当然割れたスイカを食べ始めるタイムだ!
ベンチに座って仲良くスイカを食べ始める。飼い犬も、スイカの切れ端を
美味しそうにモグモグしている。

 あと、ココロの分も当然用意している。何か振る雑談がなければ
きっと、このまま仲良くスイカを食べ終わった後に別れるだろう……。

476ココロ『RLP』:2018/07/24(火) 21:47:26
>>475

        パ

               コン!


棒を振り抜いた感覚が、空を切らなくて本当によかった。
そして――――このスイカを叩き割った感覚の、なんと爽快な事。

「やっ、やった…………やったわ!」

         (夏にみんなスイカ割をしたがる理由……
           こ……こういうことだったのね!
            今日知るとは思ってなかったけど)

     ・ ・ ・ ・

       ・ ・ ・ ・

「こんな季節でも、水だけでここまで冷えるのね」

              「なんだか不思議だわ」

        シャリシャリ

「あっ、きょ、今日はありがとう、私のことも混ぜてくれて……」

       「スイカまで貰ってしまって……本当に、嬉しいわ」

お礼を言うばかりではつまらないだろうし、
雑談をする事もあったかもしれないが、
なにせこの暑さ、そして倒れかけた者もいる。

(あまり長く引き止めるのも良くないわね……
 スイカで体が冷えている内に、涼しい所に帰りましょう)

            (この子達も暑いのは同じでしょうし……)

ココロ的にもやっぱり暑いものは暑いので、食べ終えたら家に帰ろう。
ひと夏の思い出と言うには小規模だが、なんだか忘れられない日にはなりそうだ。

477『ニュー・エクリプス』:2018/07/25(水) 15:39:03
>>476

 「そんじゃー バイバーイ!」

「あっ 名前を聞くの忘れちゃったねぇ」

 「なーにっ! また今度会えるっスよ!」 『パーウッ!』

「まぁ、適当にぶらついていればな」

 夏は始まったばかりだ!
ニュー・エクリプスの悪の進撃もまだまだ開始したばかりなのだ!!

 「うおおおぉぉぉ!! 真夏に出来る事を全部やりきるっスぅぅうう!」

燦燦と輝く太陽に負けず劣らず! 悪の首領は暴れ(遊び)まくるのだ!!!

478夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2018/09/05(水) 20:34:12

「ない――」

      ササッ
          ササッ

           「ない――」

                ササッ
                    ササッ

                      「ない――」

『パンキッシュなアリス風ファッション』の少女が、地面に屈み込んで、
手探りで『何か』を探していた。
少し離れた所には『ブルーのサングラス』が落ちている。
手を伸ばしても届かない距離だが、その位置は『視界の外』ではない。

今から約一分前――大型犬と、それを散歩させている子供が、
不意に背後から駆けてきた。
咄嗟に避けることはできたのだが、問題は『その後』だ。
バランスを崩してスッ転び、同時にサングラスが外れてしまった。
強い光を遮るサングラスなしでは、自分の視力は皆無に近い。
だから、今こうして手探りでサングラスを探しているというワケだ。

479冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』:2018/09/05(水) 23:07:26
>>478

「探し物はこれかな?」

そういって、サングラスを拾って目の前まで持ってくる。
耳に黒いリングのピアス。
右手の人差し指と左手の中指に銀のリング。

「明日美、だよね?」

「どうしたの。大丈夫? 元気?」

480夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2018/09/05(水) 23:46:39
>>479

「ほほう――」

「そのこえはレーゼーくんじゃないかね??」

反射的に、声の聞こえた方向を振り返る。
その視線が、声の主の方へ向けられている。
しかし、実際には彼の姿は見えていない。

「あー、そうそう。コレコレ。コレをさがしてたんだ」

「サンキュー!!」

手を伸ばしてサングラスに触れる。
指先の感覚で、それが探していたものだと分かった。
感謝の言葉を述べて、それを受け取ろうとする。

「ん??ゲンキだよ。ゲンキゲンキ。いつもとおんなじ」

「ちがいがあるとしたら、ソレがあるかないかってコトくらい」

サングラスを指差しながら、黒目がちの瞳で、そう告げる。
その瞳には、どことなく光が欠けているように見える。
サングラスがない状態だと、それがはっきりと分かる。

481冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』:2018/09/06(木) 00:01:44
>>480

「そ。冷泉君だよ。冷泉咲ちゃんだ」

にっこり笑ってみせる。
多分相手は見えてないんだろうなと思いつつも。

「じゃあこれで元通りだ」

相手が触れたのを確認して手を離す。
目を丸くして彼女の顔の前で手を振ってみる。
ちょっとした確認作業だ。

「これかけたら見えんだよね?」

「割れたりしてない?」

482夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2018/09/06(木) 00:21:54
>>481

「そういうコト――」

「コレさえあれば、コーディネートはパーフェクト」

受け取ったサングラスを元通りかけ直す。
すぐには視力は戻らない。
徐々に、目の前に世界が戻ってくる。

「やっぱコレがないとね」

「なんといっても、このファッションのポイントだから」

「そのピアスとリングみたいにね」

冗談を言いつつ、同じように笑う。
目の前で振られる手に反応して視線が動いた。
確かに、それが見えている。

「レンズにキズは――ついてないね。
 このサングラス、けっこうイイやつだからさ」

「だから、ひざしがつよいひでも、バッチリみえるってワケ」

483冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』:2018/09/06(木) 00:46:22
>>482

「パーフェクト、素晴らしい」

「んー……確かにこれはポイント、というか僕の好み」

ピアスを指でつまむ。
黒と銀のリングが並びあう。
幼い十六歳の少年が多少大人びて見えた。

「へぇ……僕はサングラス使わないからわかんないけど、色々あるんだねぇ」

未知との遭遇だ。
未知、というと少し大げさかもしれないが意味合い的にはそんな感じだ。
冷泉咲の視力は悪くない。
メガネにも縁はなかった。

「今日は散歩? それともサングラスを探しに?」

484夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2018/09/06(木) 01:14:25
>>483

「きょうはね――ちょっとした『ぼうけん』だよ」

「まだみたことのないモノをさがしに、ともいうかな??」

パンパンと軽く手の汚れを払う。
そして、少年の顔を見つめる。
今は、しっかりと彼の顔が見えている。

「それで、いまはレーゼーくんをみつけたトコ」

「レーゼーくんは??さんぽ??」

「せっかくあったんだし、ちょっといっしょにあるかない??
 ほら、このヘンはさんぽコースだし。
 さっきはイヌとコドモが、バババッとココをはしってった」

そう言いながら、片方の手を横にサッと素早く動かして見せる。
そんな感じだったというジェスチャーだ。
それから、頭の中で一つ思い出した。

「あ――」

「そういえばさ、『おねえさん』はゲンキにしてる??」

一度、電話を通して話したことがある。
独特な雰囲気のある特徴的な人だった。
だから、そのことはよく覚えていた。

485冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』:2018/09/06(木) 01:40:27
>>484

「冒険……?」

「明日美ってアグレッシブだね。結構」

手の汚れを払っているのを見て、他に汚れている場所がないか探してみる。
見つけたとして気安く触れないとは思うが。
勿論、相手に気を遣うという意味で。
相手は年頃の乙女であった。

「冷泉君は散歩ー。一人ぼっちで家にいるのも寂しいから出てきたの」

「だから一緒に歩くよ」

「……犬ね。なるほどね」

彼女の言葉一つ一つに反応を返す。
合いの手という奴か。
相槌という奴だろう。

「お姉さんは元気。ただ最近会ってない。部屋こもりっぱ」

「だから、遊んでくれる人いない」

486夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2018/09/06(木) 02:04:09
>>485

青いジャンパースカートに土が付いているのが見えた。
少年の視線を見て、その汚れに気付いて払い落とす。
リボンのように頭に巻いているスカーフが風を受けて揺れた。

「ありがと――」

「わたしはさ、いつかセカイのゼンブをみてみたいとおもってるんだ」

「――だって、わたしは『アリス』だから」

「いまは、このマチのゼンブをみるのが、とりあえずのもくひょう」

肩を並べて歩きながら、自分の夢を語る。
突拍子もない目標だが、簡単に叶ってしまっては面白くない。
自分にとっては、それは一生かけても叶えたい夢だった。
ライフワークと呼んでもいいかもしれない。
要は、そういう生き方をしたいということだ。

「こもりっきりかぁ〜〜〜。なんかのジッケンとかケンキュウとか??」

「じゃ、わたしとあそぼうよ」

「んー」

「『かくれんぼ』しない??わたしがオニやるから。
 じつは、わたしとくいなんだ〜〜〜」

487冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』:2018/09/06(木) 02:37:37
>>486

「世界の全部か……いいじゃん」

「この街だけでもかなりかかりそうだけど」

一生の内、自分は本当にこの街のすべてを知れるのだろうか。
それくらいなら出来てしまいそうな気がするが、本当に可能なんだろうか。
それよりも広い世界のすべてを知るというのは、壮大だ。

「……多分ね」

少し間があって、冷泉は答えた。
正直、彼女と会えていない理由は本人にも分からない。
ただ、何の返答もなくなったのが唯一の事実だ。

「かくれんぼ? いいよ」

488夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2018/09/06(木) 17:54:22
>>487

「……ふ〜〜〜ん」

彼のお姉さんと前に話した時は、色々と言われた。
難しいことは分からなかったが、
彼女の心中には複雑なものがある様子だった。
ひょっとすると、その辺りに原因があるのかもしれないとも思った。
しかし、今は黙っておくことにした。
あまり気軽に踏み込むようなことでもない気がしたからだ。

「よし!!じゃ、かくれてよ。
 はんいは、だいたいこのまわりにしよう。フィーリングでいいから」

「いまから10――いや、やっぱ15かぞえるから、そのあいだにね」

自然公園という場所だけに、隠れられる場所は幾らでもあるだろう。
自分は、少年に背中を向けて目を閉じる。
そして、数を数え始めた。

「いーち、にーい、さーん……」

口で言いながら、同時に両手の指も折っている。
その調子で15秒ほど数え続ける。
それが終わったら、目を開けて振り向こう。

489冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』:2018/09/06(木) 22:14:41
>>488

「はーい、隠れまーす」

冷泉咲はそれ以上彼の隣人の話はしなかった。
特に聞かれもしなかったし、特にしたい話でもなかったからだ。

「んー……」

(時間かかっちゃうな)

背の低めの木に近づいた。
登れるかと思ったが、時間的に厳しそうだ。
陰に隠れよう。

490夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2018/09/06(木) 23:45:13
>>489

「……じゅうさーん、じゅうよーん、じゅうごぉ〜〜〜」

15秒を数え終えてから、ゆっくりと振り返る。
少年の姿は見当たらない。
かくれんぼなのだから当然だ。

「――よし!!じゃ、さがすよー!!」

しかし、立っている場所からは動かない。
その代わりに、自身の傍らに『ドクター・ブラインド』を発現する。
メスのような爪を持つ盲目のスタンドが、夢見ヶ崎の隣に立つ。

「むむむ……むむむむむむ……むむむむむむむむむ……」

両手の人差し指を左右のこめかみに当て、目を閉じて意識を集中する。
といっても、この仕草はほとんど見せかけだけのものだ。
ポーズを取りつつ、『超人的聴覚』を使って、冷泉少年の音を探る。
呼吸する音や、微かな衣擦れの音などを掴む。
街中と違って雑音が少ないので、聴き取りやすいだろう。

491冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』:2018/09/07(金) 00:35:10
>>490

発現したスタンド。
その力は超常的なそれに相応しい。
冷泉咲はその存在に気付けていない。
自分から見えるということは相手から見えるという事である。
木に背中を預けてじっとしている。

「ふぅ……」

規則正しい呼吸。
木と服がすれる音。
後ろに上げた木に靴が当たる音。
普通なら気付けないほどの音だが、それを捉えることが出来るのがスタンドだ。

492夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2018/09/07(金) 00:56:59
>>491

「ほうほう――」

微かな音を『超聴覚』が捉えた。
少年の発する、ほんの僅かな音。
それが、彼の居場所を教えてくれる。

「なるほどなるほど――」

『ドクター・ブラインド』を解除する。
そして、木陰に向かって歩いていく。
その歩みに迷いはなく、一直線だ。

「――みーつけた!!」

淀みなく木の裏側に回り、冷泉少年の姿を視認する。
人を探すのなら得意分野だ。
音を立てず匂いもしないので、落としたサングラスを探すのは苦労するが。

493冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』:2018/09/07(金) 01:17:26
>>492

「えー!」

見つけられて少年は目を丸くした。
丸い目がさらに真ん丸だ。

「おかしいよ。だって、見えないところにいたのに……」

不満気な様子だ。
納得はしていない。

「……むぅ」

494夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2018/09/07(金) 01:44:49
>>493

「ふふ〜〜〜ん」

驚かせたことに気を良くし、自慢げに笑う。
どうやら、少し調子に乗ったらしい。
その勢いで、もう一つ披露することにした。

「とくいだからさー、こういうの」

「たとえば――」

冷泉少年が自分と同じ力の持ち主であることも知らず、
再び『ドクター・ブラインド』を発現させる。
そして、周囲の音に耳を澄ます。
小さな音が聴こえた。
それは鳥の羽音だ。
木立の中から、こちらに向かって飛んでくる鳥の羽音が微かに聴き取れた。

「トリが、にわ。おおきいのとちいさいの。もうすぐ、あのヘンからでてくる」

宣言通り、大きさの異なる二羽の鳥達が、二人の頭上を通過していった。
それを指差し、堂々と胸を張る。
当然、スタンドを見られることなど考えていない。

「ほら――ね??」

495冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』:2018/09/07(金) 02:05:40
>>494

「!」

突然のスタンドに少年が表情をこわばらせる。
直感的に理解できた。
そして、それが正解であることを少女が自分自身で証明する。

「確かに……二羽……」

少年の眉間にしわが寄った。
同時に背後に『ザ・ケミカル・ブラザーズ』が現れる。
球体についたアームと手。
五本指が少女の頬をつねろうと動く。

「インチキだ。明日美そういうのはよくない……!」

少年が指を差す。
まるで自身のスタンドにターゲットを教えるように。

496夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2018/09/07(金) 02:24:19
>>495

「でしょ??ちゃんと、にわ――え??」

二本のアームを備えた球体を目の当たりにして、両目を見開く。
それは予想外の光景だった。
調子に乗ったツケと呼んでもいいかもしれない。

「あ……」

「あ、あっはっはっ〜〜〜」

「はは、は……」

少年の迫力に押されて、思わず苦笑いする。
そして、無意識に後ずさろうとした。
しかし、『ザ・ケミカル・ブラザーズ』が動く方が速かった。

「――むぎゅッ」

よって、そのまま頬をつねられてしまった。
ズルをしたバチが当たったというところだろう。
両手を動かしてジタバタしているが、実質ほぼ無抵抗だ。

497冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』:2018/09/07(金) 22:58:49
>>496

「騙されたっていうより、騙したうえで詰めが甘いのはかなり減点だよ明日美」

「むっとした。怒ってはないけどむっとした」

より眉間のしわが深くなっている。
本人曰く怒ってはいないらしいが、不機嫌ではあった。

「なので、赤面の刑だ」

ぐにぐにと『ザ・ケミカル・ブラザーズ』が頬を動かす。
つねるというよりは強く押して揉んでいるような感覚だ。

「血行を良くしてやる。覚悟したまえ」

498夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2018/09/08(土) 00:11:38
>>497

「いやいや〜〜〜ベツにだますつもりはなくって……」

「むぐッ」

「カンペキじゃないのは、まぁ『アイキョウ』があるってコトで……」

「むぐぐッ」

「なんていうか……ちょっとしたオチャメだから、ね??」

「むぐぐぐッ」

言い訳している口を、『ザ・ケミカル・ブラザーズ』に封じられる。
そして、なすがままにされる。
口では弁解しているが、ズルをしたという負い目は一応あった。
なので、本格的な抵抗はしていない。
『ドクター・ブラインド』も、ただ後ろに突っ立っているだけだ。

「だからさぁ――」

「むぐぐぐぐッ」

「そろそろ――」

「むぐぐぐぐぐッ」

「ゆるしてくれない??」

「むぐぐぐぐぐぐ〜〜〜ッ」

やがて、両方の頬が赤みを帯びてきた。
といっても、別に照れているワケではない。
手荒なマッサージを受けて、血の巡りが十分に良くなったせいだろう。

499冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』:2018/09/08(土) 00:38:22
>>498

「うんうん。そういう気持ちになるよね、分かるー」

スマホを立ち上げる。
画面をスライドしてアプリを選択する。

「許すよ。もう顔真っ赤で見てらんないし」

「じゃあ、はいチーズ」

スマホの内カメラを起動して自撮りをする。
『ザ・ケミカル・ブラザーズ』の手がそれっぽい笑顔を浮かべさせようと動いた。

「解放」

手が離れた。

500冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』:2018/09/08(土) 00:39:15
>>499

自分と彼女がフレームに収まるように自撮りする。

501夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2018/09/08(土) 01:06:44
>>499

「あっはっはっはっ〜〜〜。そうなんだよね〜〜〜。
 なにせ、そういうトシゴロだからさぁ〜〜〜」

「――むぐぅッ」

二本のアームによって、明るい笑顔が形作られる。
そして、撮影が行われた。
スタンドである『ザ・ケミカル・ブラザーズ』が写ることはない。
だから、夢見ヶ崎が自分で笑っているように見えるだろう。
その隣には、仕掛け人の少年が一緒に写っている。

「あ〜〜〜あぁ〜〜〜」

「ねぇねぇ、ちょっとカオがちっちゃくなったんじゃない??」

「なんとなくスリムになったようなカンジするんだけど、どう??」

両手で頬を包み込むようにしながら、そんなことを言っている。
実際には、ちょっと膨れているかもしれない。
そうであったとしても、少しすれば元に戻るだろう。

「あ――」

「わたしのはさ、『ドクター・ブラインド』っていうんだ」

「――レーゼーくんのは??」

物珍しそうな視線を向けながら、アームを持つ球体を指差す。
今まで見たことのない形だ。
それだけが理由ではないが、大いに興味があった。

502冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』:2018/09/08(土) 02:37:18
>>501

「ちっちゃくはなってない」

「なってないよ」

ずばっと言ってのけた。
言い切ってしまった。

「これは『ザ・ケミカル・ブラザーズ』」

「たった一人で兄弟なんだ」

くるくるとその場で回転する。
ロボットアニメのキャラクターのような動きだ。

「そういうもの」

503夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2018/09/08(土) 02:57:39
>>502

「そうかなぁ〜〜〜??」

「いやいや、これはきっと『かくど』のモンダイだ」

「たとえば、ななめのアングルからみると、ほそくみえるとか……??」

適当な理屈を並べて、顔を左右に動かしてみる。
もちろん変化はないが、今はそれよりも気になることがあった。
言うまでもなく、『ザ・ケミカル・ブラザーズ』の存在だ。

「ふんふん――」

「ところで、なにか『とくぎ』があるんじゃない??
 『ザ・ケミカル・ブラザーズ』だけのさ」

「アリスのブンセキリョクで、いまからソレをあててあげるよ」

興味深げな様子で、回転の動作をじっと見つめる。
機械的なヴィジョンのスタンドだ。
一体どんな能力を持っているのだろうか。

「ふぅ〜〜〜む……」

「――わかった!!」

「いまはガッタイしてるジョウタイで、ブンリして『フタツ』になるんだ!!
 だから、『ブラザーズ』!!」

504冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』:2018/09/08(土) 23:40:09
>>503

「『ザ・ケミカル・ブラザーズ』」

「まぁ、特技はあるよ」

少年の体の上をすべるようにスタンドが動く。

「分離はしない。くっつくのさ」

「化学でつながった兄弟なんだ」

505夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2018/09/09(日) 00:03:34
>>504

「ふぅん??」

瞳を輝かせ、『ザ・ケミカル・ブラザーズ』の動きに目を凝らす。
何かを期待しているような視線だ。
その視線が、球体から少年に移っていく。

「とくぎがあるんなら、ソレみたいな〜〜〜。
 みてみたいな〜〜〜。
 みせてもらえたらウレシーなぁ〜〜〜」

「わたしのも、さっきちょこっとみせたしさぁ〜〜〜」

「――ダメ??」

冷泉少年は、この街に住んでいる。
つまり、彼のスタンドも街の一部と言える。
だから、『ザ・ケミカル・ブラザース』の特技も見てみたいのだ。

506冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』:2018/09/09(日) 01:01:14
>>505

「しょうがないなぁ……」

「ちょっと人のいないところに行こうか。これは目立つから」

そういって木の枝を折って人気のない方に歩いていく。

「僕の『ザ・ケミカル・ブラザーズ』は二つを一つにする」

「まずはこれだ」

右のアームで木の枝を掴ませる。

「1、2、3……完了」

次に取り出したのはライター。
火をつける。

「今度は左」

左の手が火に触れる。

507夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2018/09/09(日) 01:23:33
>>506

「いいねいいね〜〜〜。そうそう、そうこなくっちゃ。
 レーゼーくんなら、そういってくれるとおもってたよ〜〜〜」

調子のいいセリフを言いながら少年についていく。
目立つということは、きっと派手なのだろう。
心の中で、ひそかに期待を強める。

「ふたつをひとつに……??」

「『えだ』と『ひ』でしょ??それで『カガク』……。
 えーと……えだがもえる??」

「――っていうのは、いくらなんでもアタリマエすぎるか……。
 もしコレをあてたら、いっとうのハワイりょこういけるなー」

それくらい難しいという意味だ。
頭をひねって考えてみるが、どうにも想像がつかない。
何が起きるのかを見届けるため、
しっかりと『ザ・ケミカル・ブラザーズ』を見据える。

508冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』:2018/09/09(日) 01:38:14
>>507

「3秒」

指で作られた三。
同時に手が火から離れた。

「あぁ君はハワイに行けるよ。ただし、今すぐではないけど」

認識は完了した。
『ザ・ケミカル・ブラザーズ』の姿が変化する。
体、足と部位が生まれてくる。
それが完成したらしい時には、アームがついていた球体の部分は胸に格納されてしまった。
2mほどのあまりにも大きなモノ。
どうやら実体化しているらしい。
右腕は木で出来ており、左腕は火で出来ている。

「『ザ・ケミカル・ブラザーズ』これが化学の子だよ」

509夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2018/09/09(日) 02:02:07
>>508

「えっ??ホントに??」

そう言っている間に、目の前で変化が始まる。
まるっきり予想外の光景だった。
出現した巨体を目の当たりにして、思わず両目を大きく見開く。

「す……」

「――スゲェ〜〜〜ッ!!デケェ〜〜〜ッ!!」

その両腕に木と火を宿した化学の子を見上げる。
サングラスの奥の瞳が、星のようにキラキラと輝いている。
下ろされた視線は、右腕と左腕を交互に見比べる。

「スゴいスゴい!!
 これだけでもじゅうぶんスゴいんだけど……。
 ほかにも、なんかヒミツがありそうだよねぇ〜〜〜。
 とくに、そのウデにさぁ〜〜〜」

510冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』:2018/09/09(日) 02:37:39
>>509

「そりゃこんだけ大きければ目立つさ」

「そして、いかにもって感じの腕だろ?」

能力の発動過程からして腕にキーがあるのは確かだ。

「本来二つの腕は反応しあわない」

ガンガンと腕をぶつけ合うが燃え移ることは無い。
体も木と火が混じったようだが燃えはしない。

「だけど、このゴーレムの終わり3秒は違う」

解除するとゴーレムが解けていく。
その瞬間、片腕の火が木の腕に燃え移った。

「たった3秒の化学実験だ」

規定通り、3秒間のうちにゴーレムは消えていった。

511夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2018/09/09(日) 17:28:34
>>510

「ふんふん――」

「ほーうほーう――」

「おぉぉ〜〜〜ッ!!」

いちいち頷きながら、少年が行う実験の経過を見守る。
最後に大きな歓声を上げ、両手をパチパチ叩く。
とりあえず満足したようだ。

「ソレ、『ゴーレム』っていうんだ。
 いやぁ〜〜〜きょうはイイものがみられたなぁ〜〜〜うんうん」

「オマケにハワイにもいけるし、いうことなし!!
 レーゼーくん、いっしょにいく??」

いや、それはダメか。
彼の隣人と話す時、また何か言われそうだ。
まだ一度も見たことがない未知の存在。
しばらく部屋に篭りきりらしいが、いつか会ってみたい。
ひとまず、それは頭の隅っこに置いといて――。

「まぁ、ハワイには、ちかいうちにいくとして……。
 なんか、ほかのアソビしない??
 レーゼーくんがとくいなヤツでいいよ」

今は、今の出会いを楽しむことに専念する。
――森の中で『アリス』は『ゴーレム』を見た。
その新たな一ページを、『光の国のアリス』の物語に書き加えよう。

512一色 直『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』:2018/09/16(日) 19:54:33
――秋の風が吹いている。

「……夏も終わってしまった。僕の中学最後の夏……
これから僕はどうする……?どうしたいんだろう」

 自然公園の片隅、湖のほとりに少年が腰掛けている。掌サイズのメモ帳を片手に、
自分に問いかけるように、あるいはここにはいない誰かに語りかけるように、
中空に目をやり、やや芝居がかった台詞回しで言葉をぽつぽつと紡いでいる。

「未来の全てが輝かしいものだなんて幻想はいわない。でも、
自分の進む先はきっと素晴らしいと思っている……都合のいい話だけど、
そうしないと不安で仕方がないんだ。それに」

            ズ ギ ャ ン ッ

「君と一緒なら、きっと大丈夫だって、不思議とそう思えるんだ。
そうでしょ、僕の『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』」

 見える者は見えるだろう。
少年の目線の先に、半透明のビジョン――『スタンド』が現れている。

 ちなみに見えない者には「なんかブツブツ独り言呟いてるやべーやつ」
に見えるだろうが、まあ、しょうがないね。

513花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2018/09/16(日) 21:38:26
>>512

(――あン?なんだァ、ありゃあ?)

その光景を遠くから見かけた時、最初はそう思った。
ぼちぼち涼しくなってきたってのに、頭が残暑でやられちまってんのかってな。
だが、興味が湧いて近寄ってみると『人型スタンド』の姿が目に入った。

(ははァ、なるほどなァ……)

    ザッ

「青春してんなァ。ちっとばかし羨ましいぜ」

「――隣、いいかい?」

気安い調子で声を掛けると、返事を待たずに隣に腰を下ろす。
レザーファッションで固めた二十台半ばの男だ。
ウルフカットにした髪を真っ赤に染めている。

「さっき『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』ってフレーズが聞こえてよ。
 そいつは、あんたの好きなバンドの名前か何かか?」

ここに来る途中で、『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』は遠目から見えていた。
しかし、そちらには視線を向けず、正面の湖を見つめたまま問い掛ける。
いきなり明かしちまうってのも面白味が足りねえ。
相手が、どんな奴かも分からねえしな。
まずは軽く探りを入れさせてもらうぜ。

514一色 直『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』:2018/09/16(日) 22:22:02
>>513

「……はっ」
「隣ですか? えっと、どうぞ……」

『花菱』に声を掛けられて、我に返ったように返事をする少年。
さっきの発言からしても『中学生』なのだろうが、
歳相応の幼さを残した顔立ちで、体格はやや小柄だ。

「……ええと、『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』は……
バンドの名前、とかじゃあ無いんです」
「ううん……なんて言うか、上手く言えないんですけど、
僕の中にある『特別な存在』の……その名前なんです」

探りを入れる『花菱』の思惑を知ってか知らずか、
慎重に考えながら、しかし誤魔化しはせずに答えを返していく。

「…………」
チラッ

喋りつつ、ちらっと『花菱』の派手なヘアスタイルに目を留め、
思い付いたように言葉を継ぎ足す。

「あの、ところで……ちょっと聞いても良いですか?」
「『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』って聞いて、
そこで『バンドの名前』か、って思うのは
もしかして、貴方がバンド活動してたりするから……だったりしますか?」

515花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2018/09/16(日) 22:58:29
>>514

「いやァ、オレはマトモに楽器を扱ったこともねェな。
 バンド活動とは、生まれてこの方ご縁がない身さ。
 こんな外見だがよ」

否定の言葉と共に、笑いながら片手を軽く振った。
言われてみれば、そう思われても不思議ではないかもしれない。
今言ったように、もちろん実際は違うが。

「まァ、しがない『スタントマン』だ。
 こんな頭で良いのかって思うかもしれねえが、
 仕事中はヘルメットやらカツラやら被るからな。
 だから、それほど問題にはならねえのさ」

(……『素直』だなァ。どうやら悪い奴じゃあねえらしい)

少年の受け答えを見て、そう感じた。
万が一『マジにヤバイ奴』だったら、
見えてることを明かした時に厄介なことになりかねないからよォ。
しかし、この様子なら大丈夫そうだな。

「――で、『特別な存在の名前』ねェ……。
 なるほどなァ。それなら、オレにも分かるぜ」

そう言って、視線を『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』に向ける。

「『スウィート・ダーウィン』ってのが、『オレの中にある奴』の名前さ」

516一色 直『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』:2018/09/16(日) 23:18:08
>>515

「えっ、『スタントマン』……そうだったんですか!」
「いや、その、ごめんなさい。正直なところ、その髪型を見て『バンドマン』の方かな、
と思ったんです」

誤解したことを申し訳なさそうに、ぺこっと頭を下げる。

「『スウィート・ダーウィン』? あッ、もしかして……!」

『花菱』の言葉にちょっと戸惑った後、自分の『スタンド』を見る彼の視線に
気付いたように声をあげ、立ち上がる。

   パサッ

その弾みに、手に持った大学ノートを取り落とす少年。開いたページには、
何やら細々とした文章が書き込まれている。

「貴方には『見える』んですね、僕の『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』が!
驚きました……家族にも友達にも、彼は『見え』なかったのに」
「初めてです。えっと、『見えて』いるんですよね……?」

念を押すように確認する少年。傍らの『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』が、
ひらひらと『花菱』に手を振る。

517花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2018/09/16(日) 23:47:09
>>516

「ハハハ、なァに構わねえさ。
 『バンドマン』と『スタントマン』か。響きはちっとばかり似てるな」

反射的に、地面に落ちたノートに目を向けた。
他人のものを見て喜ぶ趣味はねえが、これはまぁちょっとした事故って奴だ。
全然興味がないかっていうと、まぁ多少はあるけどな。

「あぁ、しっかり『見えてる』ぜ。『鍵』と『鍵穴』か。
 なかなかイカしたデザインじゃねェか」

『ステイル・トゥ・ヘブン』の腕を見て、感想を漏らした。
スタンドが手を振るのに合わせて、それを追うように視線も動く。
間違いなく『見えている』ことが分かるだろう。

「もっとも、『オレの』とは大分『形』が違ってるがよ。
 オレとあんたが違うように、『人それぞれ』ってことなんだろうな。
 だからこそ面白いと、オレは思うぜ」

    スゥゥゥ……

そう言って、おもむろに片手を持ち上げる。
意識を集中すると、そこに『精神の象徴』が姿を現していく。
それは、一丁の『リボルバー拳銃』だった。

    ドギュンッ!

「これが『スウィート・ダーウィン』――『オレの中にある特別な奴』さ」

518一色 直『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』:2018/09/17(月) 00:14:34
>>517

地面に落ちたノートに目を向けると、細々と書かれた文章が、『脚本』の体裁を
とっていることが分かる。何かの『演劇』だろうか?

「あっ、ありがとうございますッ!
この『鍵穴』と『鍵』の意匠、僕、大好きなんです……なんと言うか、
『未来』への象徴、みたいな感じがして。だから、いいデザインだ、って
言ってくれたこと、嬉しいんです」

笑顔を浮かべて、そう『花菱』の言葉に応える。心底『嬉しそう』だ。
そして『スタンド』――『スウィート・ダーウィン』を発現する『花菱』の様子を、
落としたノートを拾うこともせずにじっと見守る。

「うわッ!?」

    ドテッ!

「……失礼しました。えっと、それ、『拳銃』ですよね?
それが――貴方の『スウィート・ダーウィン』、特別な力なんですね」

パッ パッ

 『花菱』の掌中に現れた『リボルバー』のビジョンに、びっくりした様子で
尻餅をついた。暫くして立ち上がり、気恥ずかしそうに、服についた草葉を払うと、
二人の『スタンド』のビジョンをしげしげと見比べながら口を開く。

「本当に……僕のとは形も、何もかも違うみたい……一人一人違う形と
性質を持っているもの、なんでしょうか」
「……だとしたら、ひょっとして……貴方の『スウィート・ダーウィン』、
特別な『特徴』みたいなものを持っていたりしませんか?」

519花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2018/09/17(月) 00:39:45
>>518

(……『演劇部』か何かか?いや、そうとは限らねえか。
 ついさっき、オレも『外見』で間違われたばっかりだしなァ)

とりあえずノートからは視線を外した。
あんまりジロジロ見てんのも悪いしな。
それよりも、今は『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』が気になった。

「あぁ、『拳銃』でも『ピストル』でも『リボルバー』でもいいぜ。
 ここの『トリガー』を引くと、銃口から『タマ』が出る。
 オレは触ったことはねえが、『本物』と同じようにな」

物騒なヴィジョンだが、『本物の弾』は一発だけだ。
残りの五発は『偽りの死』をもたらす『偽死弾』。
それが、『スウィート・ダーウィン』の『能力』だ。

「『特徴』か――あるぜ。
 折角だし、ご披露したいところだが……
 この場で『ブッ放す』のは、それこそ物騒だからなァ。
 『あんたの』を見せてくれたら考えるが……」

思案顔で『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』に目をやる。
物騒だというのは本当だが、実際はそれだけではなかった。
少年の『スタンド』が持つであろう『能力』に興味を引かれたからだ。

520一色 直『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』:2018/09/17(月) 01:14:58
>>519

「やっぱり!一人に一つの『外見』、そして『特徴』……『これ』には
そういう性質――いや、現象としてのルールがあるんですね……」
「あれ、ノート……あっ」

感心しながら、何か書き込もうとして……思い出したようにノートを拾い上げる。
立ち上がった拍子に取り落としたことを忘れるほど、『スタンド』に『興味』があったようだ。

「ううん、確かに……『拳銃』ですからね。何となく、特徴も『物騒』な予感があります」
「僕の『特徴』ですか?ええっと、お見せするのは構わないです。
『力』を使うのに、周りに配慮できる貴方は(見た目は怖いけど)……
『悪い人』とは思えないです。ただ、ちょっと準備がいるので――」

ビッ

そう言いながら、さっき尻餅をついた『地面』に、『スタンド』が指を突き立てる。
『鍵』のかたちをした指先が地面に触れ――

 ズ ォ オ ォ オ ォ オ

そこに、『A4サイズ』の『扉』が現れる。もっとも、本物の『扉』というわけではなく、
明らかに『イメージの扉』であることが、スタンド使いである『花菱』には分かるはずだ。

「ええと、ご覧の通り、『扉』です。これを設置することが『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』の
『特徴』……でも、『扉』だけじゃあ、どこにも繋がらないですから、これはまだ
『途中』なんです」

521花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2018/09/17(月) 01:42:54
>>520

「そうみてェだな。もっとも、オレもそれほど詳しい訳じゃねェが……。
 今までオレが見かけたことがあるのは、
 あんたの『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』みたいな奴だったぜ」

(えらく『スタンド』に関心があるらしいなァ……。
 この感じだとスタンド使いになったのは『最近』ってとこか……)

「ハハハ、そいつはどうも。
 さァてと――それじゃあ『特等席』で鑑賞させてもらうとするか」

『スウィート・ダーウィン』を手の中で弄びながら、
『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』の動きに注目する。
『鍵』と『鍵穴』の意匠を備えたスタンドだ。
『扉を』生み出すというのは理に適っているように感じられた。

「ははァ、なァるほどな。
 『扉』が出てきたってことは……
 それが『どこかに繋がる』って考えるのが自然だよなァ。
 ここから、更に何かが起きるって訳かい?」

『扉』を眺めて、顎に手を当てながら自身の考えを呟く。
それが当たっているかは分からない。
何しろ『スタンド』というのは、常識では計れない存在だからだ。

522一色 直『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』:2018/09/17(月) 02:03:23
>>521
          、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
「そう――扉はどこかに繋がらなければならないんです」

ビッ

ノートのページを一枚破り、それを『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』の
素早く精密な動きで『紙飛行機』のかたちに折り、それを右手で持って
左手で翼に触れる。すると――

 ポ ゥ

翼の表面に『鍵穴』の意匠が浮かびあがり、それと同時に左手の
『鍵穴』の意匠が消える。そしてその紙飛行機を、『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』が
ふわり、と投げる。

「そして、その『行き先』はッ」

紙飛行機はふわふわと漂い、やがて地面に、翼を上にしてぱさりと落ちる。
それを待ち、『扉』に手を押し当て、押し開けるように『進む』と――

『ガチャ』

ふ、と少年の姿が掻き消え、

         グニャア…ッ

地に落ちた『紙飛行機』の翼の『鍵穴』から、彼の姿が現れる。

「……と、こんな風に、『扉』は『鍵穴』に通じているんです。
一度通り抜けると、扉は消えて、鍵穴も『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』の
手に戻って来てしまうんですけどね」

523花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2018/09/17(月) 02:49:06
>>522

「――うおッ!?」

眼前で発揮された『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』の『能力』に、
思わず目を見張る。
目の前で繰り広げられた一連の流れは、まるで『イリュージョン』だ。
『どこかに繋がる』と予想はしていたものの、
実際に自分の目で見ると驚きを隠せない。

「『扉は繋がらなければならない』……か。
 『納得』したぜ。良いものを拝ませてくれて、ありがとよ」

口元を緩ませてニヤッと笑い、それから少し考え込む。
『能力』を見せてもらったからには、
こっちも披露するのが『フェア』ってもんだろう。
今オレが悩んでいるのは『どう見せるか』についてだ。

「さて――と……。
 『今度はオレの番』ってことになるんだが、どうしたもんかな……。
 『見せること自体』は、別に何も難しくはねェんだが……」

『スウィート・ダーウィン』の『能力』は、
『能力を受けた人間』にしか感じ取れない。
一番『分かりやすい』のは『目の前にいる少年を撃つ』ことだ。
しかし、いくら『偽り』とはいえ、
出会ったばかりの相手に『死』を体感させるというのはどうか――。

「突然だが、お前さん――『スリル』は好きかい?オレは大好きでよ。
 『病み付き』と言ってもいいくらいになァ」

      ――スゥッ……

『スウィート・ダーウィン』を握っている腕を、静かに持ち上げる。
そして、その銃口を自身の『こめかみ』に突き付けた。

「特に『死ぬ一歩手前』くらいの『スリル』が『大好物』だな。
 『デッドラインギリギリのスリル』って奴に目がねェのさ。
 『スタントマン』なんてやってんのも、それが大きな理由って訳さ」

          ガァァァァァ――ンッ!!

次の瞬間、空気を引き裂くような『銃声』が轟いた。
といっても、『スタンド使い』以外には聞こえない音だ。
『スタンドを持つ者』には、『本物の銃声』と同じように聞こえただろう。

「――が……ぎッ……!!」

着弾の直後、その場に膝をつき、前のめりに地面に倒れ込む。
顔面は蒼白の様相を呈しており、
苦悶の声を上げながらもがき苦しむ姿は演技にしてはリアル過ぎる。
あたかも、本当に『瀕死状態』のようだ。

524一色 直『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』:2018/09/17(月) 03:07:10
>>523

「あはは……まあ、ちょっと『演技過剰』だった気もしますけど、
楽しんでいただけたなら幸いです」
「それじゃ、今度は僕が『特等席』で拝見する番ですね」

ぺこり、と一礼して、その場に腰掛ける。
何が起こるんだろう、とワクワクしていたのはいいのだが……

「って、えっ……!?」

突然『拳銃』を自分自身のこめかみに突きつけた『花菱』の行動に、
思わず立ち上がってしまった。またもや、ノートが地面に転がる。

          ガァァァァァ――ンッ!!

「うっ……ま、まるで本当に『火薬』が炸裂するような音……銃撃なんて
経験したことはないけど……昔『花火』の暴発に遭ったときのような……」
「って、わあァ――――ッ! なッ、何をしてるんですかッ!?」

耳をつんざく『銃声』!思わず耳を抑えて呟くが、直後に倒れ伏す
『花菱』を目にして、「それどころじゃない」とばかりに駆け寄り、
抱え起こそうとしながら呼びかける。

「し、しっかりして下さい! 『自分』を撃つなんて……!」

525花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2018/09/17(月) 03:39:53
>>524

「うぐッ……ぐッ……がッ……!!」

地面の上に仰向けに転がり、空いている方の手を天に向けて伸ばす。
その手から徐々に力が失われていく。
やがて、力なく腕が地面に落ちる。
苦悶の声も聞こえなくなっている。
瞳から光が消え失せていき、そのまま動かなくなった……。

     ――ガバッ!

「――ハハハハハッ!!これだぜ、これ!!
 心の奥にガツンとくる『死と隣り合わせ』の『スリル』!!
 全く、いつやっても『こいつ』は『最高』に『スウィート』だ!!
 ハハハハハッ!!」

きっかり『四秒間』が経過し、不意に勢いよく上半身を起こして高笑いする。
先程までの姿が嘘のようだ。
もっとも、『偽りの死』ではあっても『演技』ではないのだが。

「――っと、つい一人で盛り上がっちまった。
 驚かせてすまねェな。いや、別に騙した訳じゃねェんだ。
 傍目から見たら分からねェと思うが、これが『能力』だ。
 『死因』を『再現』する――それが『スウィート・ダーウィン』の力ってことさ」

「さっきは『窒息死』を再現したんだ。
 ちょうど目の前に『湖』があるしよ。
 『湖の前』で『溺れ死んでみる』のも一興だと思ってな」

平静を取り戻し、自身の『能力』について説明する。
これで納得してもらえるかどうかは分からないが、
『出会ったばかりの少年を撃つ』よりはマシだろうと判断した。
目の前で『死んでみせる』というのも、心臓には良くないとは思うが。

526一色 直『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』:2018/09/17(月) 05:52:46
>>525

「ちょ、ちょっとしっかり……ああ、そんなッ!」

明らかに『絶息』せんとする『花菱』の様子に、
がくりと膝を地面につけて衝撃を受けた……のも束の間。

「え、ええ? 今度は『生き返った』……ッ!?」

平然と起き上がる彼の姿に、二度目のびっくりである。
二度目だというのに出力の落ちない驚愕を見せつつ、
彼の説明を真剣な様子で聞く。

「……なるほど……『死因』を再現する、死を演じる
『銃弾』……それが『スウィート・ダーウィン』なんですね。
先ほどの貴方の様子、『演技』にしてはあまりにも
『真に迫り』過ぎていたと思います。本当に
『死に』かけたようにしか見えなかった……」
「僕とは全く違う『力』の性質……とても面白いです」

『花菱』の説明を、少し考えて噛み砕きつつ、
それを彼に確認するように喋る。

「……今日は、とてもいい経験が出来た、そう思っています。
貴方に会えて良かったです」

そう言うと、すっくと立ち上がって声色を正し、続ける。

「僕は『一色』……『一色直(いっしき すなお)』」
「この町の学校に通っています。
色々と教えてくれたこと、ありがとうございましたッ」

びしっと頭を下げて、感謝の意を示す。

527花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2018/09/17(月) 22:53:26
>>526

「ま、そういうこったな。分かってくれたようで何よりだ。
 一人でバカみてェに転げ回ってるだけだと思われたら、
 どうしようかと思ったぜ」

「『死を演じる銃弾』とは、なかなかシャレた言い回しじゃあねェか。
 ハハハハ、気に入ったぜ。
 『瀕死の演技』だけなら、アカデミー賞も取れるかもなァ」

『スウィート・ダーウィン』を解除し、両手で服の汚れを適当に払う。
そして、少年と同じように立ち上がった。
感謝の意を示す少年に、軽く笑った後で言葉を返す。

「ハハハ――なァに、いいってことよ。
 同じ『スタンド使い』のよしみってことでな。
 オレの方こそ、滅多に見られねェようなもんを見せてくれてありがとよ」

「しかし――お前さんを見てると『名は体を表す』って言葉を思い出すなァ。
 道理で『素直』な訳だ。
 その名前を付けた親御さんは、かなり良いセンスしてると思うぜ」

「オレは『花菱蓮華』って名さ。
 またどっかで会ったら、その時はよろしくな。
 聞いた話じゃあ『スタンド使い』ってのは『惹かれ合う』もんらしいから、
 偶然出くわすこともあるかもしれねェな」

「そんじゃあ、オレはちっとそこらをブラブラしてくるとするぜ。
 またな、『一色』ィ」

ヒラヒラと片手を振って少年に別れを告げ、歩き出した。
こういうことがあるんなら、たまの散歩も悪くねェ。
『スタンド使い』と出会うのは『刺激』になる。
そういう意味じゃあ、オレにとっても『プラス』って訳だ。
『死ぬ一歩手前のスリル』程じゃあなくってもなァ。

528一色 直『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』:2018/09/17(月) 23:54:15
>>527

「『花菱』……『花菱蓮華』さん」

その名前を、しっかりと記憶に刻むように繰り返した。

「本当にありがとうございました……貴方の言うように
『惹かれあう』のであれば、いつかまた会えるでしょう」
「その時を、楽しみにしています……それでは!」

そう言って『花菱』をその姿が見えなくなるまで見送り、
その場に腰掛けて落としたノートを拾い、開く。

「……スゴい体験が出来たぞ……それに『スタンド使い』
って最後に『花菱』さんが言ってたけど、それが
きっとこの『力』の呼び名なんだ……!」
「忘れないうちに今日のことをしっかり書き残さなくちゃ」

   カリカリカリカリ…  パタン

そう言いながら手早くメモを取り、すっくと立ち上がる。

「やっぱり、君と行く道は『良いところ』に続きそうだ。
そうだよね、『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』」

傍らの『スタンド』に一言かけて、足早に公園から出て行く少年。
その行く先に何があるのかは、まだ誰も知らない。

529美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/10/06(土) 20:05:28

「まったく――ウッカリ『なくす』なんて私のドジにも困ったもんよねえ」

双眼鏡を持った一人の若い女が歩いている。
ラフなアメカジスタイルでコーディネートした服装が特徴だ。
その肩には『機械仕掛けの小鳥』が乗っていた。

「ねぇ、今どこにいるの?」

『シゼンコウエン ノ ナカ デス。
 ソラ ト キギ ト トリ ガ ミエマス』

「いや、それは分かってるんだけど……。参ったなぁ。
 私も探すから、もし誰かに取られるとかしたら教えて」

女は肩の上の『小鳥』と喋っている。
それから双眼鏡を構える。
その状態のまま、グルッと体を一回りさせる。

「こうやって見渡してみると見つかったり――
 なぁんて都合のいい話がある訳ないわよねぇ」

530美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/10/13(土) 17:29:37
>>529

「そうだ――『音』は?何か聞こえない?」

「『アシオト』 ガ キコエマス。
 ソシテ クルミサン ノ 『コエ』 ガ キコエマス」

「……なるほどね。
 思ったよりも近い位置にあった訳だ。方向は?」

「ゲンザイチ カラ 『ホクセイ』デス」

「そこから北西方向に私がいるって事は、私から見ると南東って事よね。
 待ってて。今から迎えに行くわ」

肩の上の『小鳥』と会話しながら、森の中へ歩き出す。
程なくして、なくした『スマホ』を見つける事ができた。
それからしばらくバードウォッチングを続けた後、自然公園を立ち去っていく。



【撤退】

531三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2018/10/28(日) 22:15:14

秋――それは紅葉の季節。
鮮やかに色づいた木立の中に、一つの人影が見える。

        ザッ

「――……」

背は高くない。
小学生か中学生というところだが、どちらかは見分けにくい。
顔立ちは中性的だ。
見ようによって、少年にも見えるし少女にも見える。
これも判別しづらい。
ブレザーとスラックスといういでたちだが、制服ではないようだ。

        スッ

その場に屈んで、足元から一枚の落ち葉を拾い上げる。
赤く色づいた紅葉を手に取って、近くで眺める。
その綺麗な色合いに思わず見惚れていた。

(――キレイだなぁ……)

(僕が死ぬ時も、こんなにキレイに死ねたらいいなぁ……)

(でも――死にたくないなぁ……)

手にした紅葉を見つめて、ぼんやりと物思いに耽る。

532三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2018/11/01(木) 18:06:45
>>531

しばし紅葉狩りを楽しんだ後、その人影は姿を消した。

533スズ『ティーンエイジ・ワイルドライフ』:2018/12/19(水) 03:12:34

    ズギュン!

「『ティーンエイジ・ワイルドライフ』ッ」

          (違う)

   パッ

            ズギュン!

「『ティーンエイジ』ッ!」

          「『ワイルドライフ』ッ!」

               (これも違う)

    パッ

そいつが何をしているかと言えば、
スタンドを出したり消したりしていた。

        ズギュン!

「――――『ティーンエイジ・ワイルドライフ』」

(これもなんか違う。
 ワイルドライフだもん。
 しかもティーンエイジ。
 しっとりした感じではない。
 ……疲れてきた。
 スタンドって疲れるんだな)

            パッ

「……」

           ガサゴソ

かと思えば座り込んで、カバンから弁当箱を出す。
こういう奇行はけっこう目立つので、誰か見ているかもしれない。

534三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2018/12/21(金) 01:25:41
>>533

   《………………》

もしかすると、木立の中から視線を感じるかもしれません。
フードを目深に被り、肩にシャベルを担いだスタンドが幽鬼のように佇んでいます。
一言で表現するなら、『墓堀人』というところでしょうか。

         スッ――

スタンドが、担いでいたシャベルを地面に下ろしました。
剣先型になっているシャベルの頭部が、鈍く光っています。
『恐竜の牙』程ではないですが、使い方によっては武器にもなるでしょうか。

               ペコリ……

ふと、スタンドは頭を下げました。
どうやら挨拶のようです。
敵意とか、そういうものはなさそうに見えますが。

535スズ『ティーンエイジ・ワイルドライフ』:2018/12/21(金) 22:30:29
>>534

「ん、誰か見てるでしょ?
 人の飯をじろじろ見るのは、
 混ぜて欲しいやつか、
 盗ろうとしてるやつかって、
 相場が決まってるらしいぜ」

「――――って、何こいつ」

         スッ

「もしやオバケかな?」

スズは立ち上がった。
ダボついた服を着た、
細長い体つきで、
目の細い少女だった。

「『ティーンエイジ・ワイルドライフ』」

「……の、知り合い?
 なんていないよな。
 生き物じゃないもん」

        ザッ

    「ん」

         ザッ

「アタマ下げるとかけっこう礼儀あるじゃん。
 じゃあ『ティーンエイジ・ワイルドライフ』!」

          「も、頭下げさせるよ」

   ガグッ

幽鬼とは真逆の荒々しさで、
噛みつくように恐竜人が首を垂れる。

「なんか用? いっとくけどおにぎり一つすらあげないぜ」

スズ自身はというと、弁当を片手にそれを眺めていた。

536三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2018/12/21(金) 23:17:58
>>535

《…………こんにちは》

スタンドが喋りました。
頭巾の陰に隠れているので、表情はよく見えません。
そもそも、表情があるのかは微妙なところですが。

《たまたま歩いてきたら、同じような人がおられたので、つい見てしまいました》

《ごめんなさい》

《人様のお弁当に手をつける気はないです》

        トスッ

林から出た幽鬼は、適当な樹の根元に腰を下ろしました。
その傍らにシャベルを立てかけています。

《『ティーンエイジ・ワイルドライフ』とおっしゃるんですか》

《はじめまして》

《『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』と申します》

恐竜人を眺めて、墓堀人は名前を名乗りました。
本体らしき人間は、近くにはいないようです。

537スズ『ティーンエイジ・ワイルドライフ』:2018/12/21(金) 23:53:57
>>536

「へぇ、常識外れな存在なのに、
 常識度は素晴らしいみたいだ。
 たくあんくらいならあげてもいいね。
 それに『同じような人』だって?
 『ティーンエイジ・ワイルドライフ』とは、
 まるっきり似てないが……存在の話」

「つまりこいつは、『スタンド』だ」

        スッ

饒舌な独り言のようにスズは語り、

「……」

「『ティーンエイジ・ワイルドライフ』」

         「は口を利かない」

「だから、こいつに『自己紹介』は無い」

それからぽつぽつと返答を返した。

「だけど」

「人間の自分は『斑尾スズ』で、
 こいつは『ティーンエイジ・ワイルドライフ』」

「それは、ちゃんと口にすべき事だな」

得心したように頷く。
変わり者、なのかもしれない。

        キョロ

              キョロ

「…………『人間』はいないのかい?」

そして、少し考えてからシンプルに聴いた。
合わせて腰を下ろすわけでなく、見下ろす形で。

538三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2018/12/22(土) 00:24:28
>>537

《『たくあん』》

《嬉しいですけど、この口では食べられないので》

《『斑尾スズ』さん》

《はじめまして》

幽鬼は小さく礼をします。
見下ろされていても、それを気にした様子はなさそうです。

《『人間』は――ちょっと遠いところにいます》

《今、歩いてきてます》

そう言って、頭巾の下の目を林の方へ向けます。
徐々に、軽い足音が聞こえてきました。

     ザッ……

「……はじめまして」

「『三枝千草』と申します」

      ペコッ

木立から現れた人間が、先程の幽鬼のようにお辞儀をしました。
小柄で、キッチリしたブレザーとスラックスを着ています。
中性的な容姿と高い声のせいで、少年か少女かは分かりません。
子供なのは確かですが、年齢もハッキリはしていません。
一番可能性が高いのは中学生くらいでしょうか。

「『同じような人』を見かけたのは初めてです」

「あの…………」

「たくあん、僕は食べられます」

539スズ『ティーンエイジ・ワイルドライフ』:2018/12/22(土) 01:39:23
>>538

「今のはいわゆる、独り言だね。
 たくあんを本当にあげるとは、
 こいつには一言も言っていない。
 もっとも、これも独り言だけど」

「……」

     ザッ

       ザッ

年の頃は、互いにそう離れてはいない。
少女は冷涼な雰囲気を纏っており、
長身と相まって年齢を掴みづらくしている。

「スズも、初めてだ」

「いるとは思ってたけど」 

「…………・『三枝千草』」

「やる」

          スッ

そして、はしで摘まんだたくあんを差し出した。

「『食べられる』ということは、
 欲しいという事だと理解するぜ。
 そして欲しがった以上は、
 こいつは食べなければならない。
 このたくあんは中々うまいもんだが、
 たくあんだけで食べるのはどうなんだろうね」

    スゥーッ・・・

           「食べるといい。その口で」

540三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2018/12/22(土) 02:07:36
>>539

「――――いただきます」

       パクッ

言われるがままに口を開けて、差し出されたたくあんを食べました。
口の中で咀嚼します。
味が染みてます。

          ゴクン

「おいしかったです」

「ご馳走様でした」

       ペコリ

スズさんにお礼を言います。
でも、お返しできるものが何もないです。
その時、ふと思いつきました。

   「『イッツ・ナウ』」
              「『オア・ネヴァー』」

スタンドの名前を呟くと、墓堀人が動き出しました。
手前の地面を、シャベルで掘っていきます。

     ザック ザック
              ザック ザック

「まず穴を掘ります」

          ポイッ

     「埋めます」

胸ポケットから抜いた万年筆を穴の中に落とします。
その上から土をかけて、埋め直していきます。
やがて、完全に穴は埋まりました。

         「掘り起こします」

     ザック ザック
              ザック ザック

そして、穴を埋めた場所から離れたところを掘り返します。
すると、さっき埋めた万年筆が出てきました。
それを穴から取り出して、手で軽く土を払います。

「たくあんのお礼です」

「楽しんでもらえたら嬉しいです」

541スズ『ティーンエイジ・ワイルドライフ』:2018/12/22(土) 02:23:23
>>540

「うさぎに餌をやってる気分だよ。
 ザリガニ釣りの気分でもいいな。
 人間にこういうことをするのは、
 スズとしては初めてなわけだ」

「……」

       スッ

「おいしかったなら良かった。
 なにせあと3切れ、残ってるから」

はしを引っ込めて、ケースにしまう。
そして穴を掘って埋めるのを見ていた。

「……ちょっと手品みたいだ。
 それが『能力』というやつかな?
 けっこう楽しいよ。なにせ初めてだもの」

「ああ」

「初めての事は楽しい物だ」

不思議な現象だと、声に実感があった。
スズもまた『スタンド使い』ではあるが、
能力というのはあまりに一つ一つ違う。

「『ティーンエイジ・ワイルドライフ』」

            ズズ

「こいつは『キバ』が武器だよ」

開かせた口には、ナイフのような牙が並んでいた。

「……」
 
「それ位は口にすべきだと思ったわけだ。
 たくわんのお返しが能力だなんて、
 いくらなんでもお釣りが必要だから。
 特に『平等』を重んじてはいないけど、
 『義』ってやつに、反する気がするからさ」
 
          「このキバを見るのは楽しい?」

542三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2018/12/22(土) 02:46:40
>>541

「大丈夫です。僕も『全部』は披露してないです」

残っていた穴を埋めておきます。
それから、『仮死状態』になっていた万年筆を胸のポケットに戻します。
物が物なので、ほとんど変わっていないですが。

「キバ――――ですか」

「とても強そうです」

『ティーンエイジ・ワイルドライフ』の牙を、まじまじと見つめます。
『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』は遠くまで行ける代わりに力は弱いです。
だから、余計に注意を引かれてしまいます。

「楽しいです」

「固い肉も食べやすそうです」

そして、視線を動かしてスズさんの方を向きます。

「『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』は『妖甘さん』に出してもらいました」

「スズさんも『妖甘さん』に会ったんですか?」

『同じような人』なら、出所も同じかもしれません。
そんなことを思ったので、スズさんに尋ねてみました。

543スズ『ティーンエイジ・ワイルドライフ』:2018/12/22(土) 03:23:19
>>542

「なら、たくあんでよかったか」

       ク ク ク

「だけど」

「もう見せてしまったもの、な。
 見せた物をなかった事にはしない」

           ガチンッ

「というか出来ないけど」

音を立てて牙が閉じる。
空気が噛み潰される。
味はしないのだろうが、
まるで捕食するかのように。

「『妖甘』? ……ちがうね、それは。
 スズが会ったのは『道具屋』と言った」

「……」

「『ティーンエイジ・ワイルドライフ』は、
 そこで肉を食べたら目覚めた『力』だ。
 固い肉だった。味付けは良かったけど。
 ただ、多分肉を食べたからじゃあなくッて、
 肉って『品』を選んだのが原因だろうな。
 そういう風な事を聴いたような気がする」

         スゥーッ

息を吸い込む。
独り言ではなく語り掛けるとき、
スズはそのような姿勢をする。

「与える側が『複数人』いるなら、
 受け取る側は、もっといると思う」

「……そうなると、あまり見せびらかすのは不味いな、これは」

544三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2018/12/22(土) 03:51:07
>>543

「『道具屋さん』ですか。『妖甘さん』みたいな人が他にもいるんですね」

「初めて知りました」

自分のことを思い出します。
『妖甘さん』に会った時のことです。
そのことは、よく覚えています。

「僕は『絵』を描いてもらいました」

「『根で棺桶を包む花畑』――それが僕の絵だと」

「そしたら目覚めたみたいです」

幽鬼のような墓堀人が僕の隣に立ちます。
二つの視線が、息を吸い込むスズさんを少し不思議そうに見ています。

「そうですね…………」

もしかすると、中には危険な人もいるかもしれません。
運が悪いと、それが原因で死んでしまうかもしれません。
それは怖いし、とても嫌です。
もし惨い死に方をしたらと思うと、恐ろしいです。
まだ『一番素晴らしい死に方』を見つけられてないのに、そんな目には遭いたくないです。

「じゃあ、このことは僕とスズさんの秘密にしましょう」

「僕は誰にも言いませんから」

言うと同時に、『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』を解除します。

「僕はこれで」

「スズさん、楽しかったです。ありがとうございます」

「またどこかで会えたら嬉しいです」

「失礼します」

         ペコリ

別れの挨拶をして、また歩いていきます。
たくあんのお礼のお釣りに力を少しだけ教えてくれたスズさんは良い人です。
こういう人に出会っていけば、『素晴らしい死に方』が見つかるかもしれません。

545スズ『ティーンエイジ・ワイルドライフ』:2018/12/22(土) 04:02:30
>>544

「『絵』……あまりにも違うな。
 『与える手段』も能力と同じで千差万別、か」

         バシュン

『ティーンエイジ・ワイルドライフ』は、
閉じた牙から広がるように消えていく。

「ああ、秘密にするのが良いだろう。
 能力の事も――――持ってること自体も、
 スズがここで掛け声の練習をしていたのも、
 今から、こいつしか知らない事になった」

         フリ
             フリ

袖で隠れた手を振る。

「お礼はいらない。
 もう『等価』だからな」

「だけど」

「口にした方がいいか……楽しかった。じゃあな」

   ザ ッ

         「……」

そうしてそいつは元の位置に戻って、
また弁当の残りを食べ始めたのだった。

546草摺十三『ブレーキング・ポイント』:2018/12/22(土) 22:54:48
バチ
バチ

パチッ

「ンン…すっげー煙い」「生木は煙いな」「生木だもんな」

寒い時期で人もあまり来ない、湖畔の『キャンプ場』。
夏はバーベキューだとかで盛り上がるわけだが、寒いのでみんなワザワザ外で遊んだりとかはしない。
なので、一人で焚き火をしたりとかして遊ぶにはモノスゴくうってつけの時期ってわけだ。

547薬師丸 幸『レディ・リン』:2018/12/23(日) 00:53:19
>>546

「あら、先客がいた」

         スタ

    スタ

「お邪魔じゃなければ話しかけるけど、
 それって何かを焼いてたりするの?
 私、キャンプって詳しくなくってさあ」

確かに草摺に話しかけているようだった。
白い髪と赤い目が異様な少女だった。

「それとも、それはそーいう遊び?」

「春になったら家族で来ようと思っててね。
 もしよかったら、教えてくれないかしら」

言葉通り、アウトドア大好きって風ではない。
あまり動きやすくも無さそうな黒いダッフルコートが揺れる。

548草摺十三『ブレーキング・ポイント』:2018/12/23(日) 08:39:43
>>547
「ゲッホっ」「うん?」

話しかけられているのに気付いてそちらを見る。
白い髪と赤い目に少し驚くが、自身も金髪でピアスだ。そーいうオシャレもあるよな。

「これからテント張って、何か食べるもん作って、寝るだけっていう遊びッスよぉ」

アウトドア派だ。
焚き火はいま、火が大きくなり始めたところ。
傍らには大量の薪と、煤けた飯盒と、重そうな鉄の鍋が置いてある。

「春、あったかいし良いッスねェ」「人も多くなるし」「でも虫も出てくるからねェ」

薪を折っては火にくべながら応えを返す。柄のわるそーな見た目だが人当たりは良さそうだ。

549薬師丸 幸『レディ・リン』:2018/12/23(日) 23:02:19
>>548

「ふぅん、そういう感じなのね。
 それってけっこう楽しそうじゃん。
 やる事に『ゆとり』があるっていうかさ」

「『スローライフ』って感じなのかな。
 『やらなきゃいけない』遊びじゃなくて、
 『やりたいことをやる』遊びっていうのかな」

飯盒や鍋などキャンプ道具に、
それなりの好奇の視線を向ける。

「ああ、虫は嫌ねぇ。
 地面が冷たいのと、
 どっちが嫌かって話だけど」

               スッ

「あったかいのと混んでないの、
 どっちが『良いか』って方が前向きか。
 冬に来るってのもありかもしれないわね」

屈んで、地面に手を付ける。
すぐに離して白い息を吹きかけた。

「その口ぶりだと、結構ベテラン?」

「もしよかったら、だけどさあ。
 もうちょっと色々教えて欲しいな。
 お勧めのキャンプ料理とか。どう?」

その姿勢のまま、見上げる形で問いかける。
兎のような見た目に反し、弾むというより落ち着いた声色で。

550草摺十三『ブレーキング・ポイント』:2018/12/24(月) 15:55:43
>>549
「『ベテラン』ってこともねーッスけどぉ」

初心者のようなぎこちなさは無いが、ベテランのような無駄の無い動きでもない。
厚手のシートを焚き火の前に敷いては道具を並べ、火加減から料理までそこに座って行えるように整え、
「あっ」と気付いて小さな折りたたみの椅子を開いて『薬師丸』に寄越す。
支柱を一本立ててテントを広げ、六ヶ所ペグダウンすれば完成だ・・・あとは火の前に座ってぼけーっとしているだけだ・・・

「料理スか」「米たくだけでも楽しいッスけどねェ。でも最近ハマってんのは鍋ッスねェ」
「安物だけどこーいう『ダッチオーブン』ってんですけどこの鉄の鍋がね。煮炊きがスッゲーウマく出来るんよね」

微妙にオタクっぽい早口になってきた。

551薬師丸 幸『レディ・リン』:2018/12/24(月) 22:35:03
>>550

「あら、どうも。気が利くのねぇ〜え」

              カチャ
                   ストン

椅子に座って、膝に肘をつく。
頬杖をつくような姿勢で見守る。

「へえ、そうなの? じゃあ、奥が深い遊びなのね。
 素人目には、けっこう手際が良さそうに見えたからさ」

(見てても上手いのか下手なのかわかんないけど、
 まあ、本人がそういうのならそういう事にしとくべきね)

素人目にはぎこちなさが無いだけで十分。
しかし恐らくもっと上手い人間もいるのなら、
そこを下手におだてるつもりもないのだった。

「鍋、良いわね。え、なに、『ダッチオーブン』?
 ……あ、料理名じゃなくて鍋の名前なの。
 へ〜、じゃあ、今日もその鍋で何か作るんだ?」

鉄鍋に視線を向ける。。
普通の鉄鍋と違うのだろうか?
そもそも普通の鉄鍋も、そう詳しくない。

「当てて良い? ……カレーライス!」

「当てずっぽうだけどね。
 私、結構運が良い方だからさ、
 もしかしたら当たってたりしない?」

知っている鍋を使う料理を挙げただけだと思われる。

552草摺十三『ブレーキング・ポイント』:2018/12/24(月) 23:53:23
>>551
蓋まで鉄で出来ている、重そうな鍋だ。
それを焚き火にかけ、蓋の上にも炭を置いていく。『ダッチオーブン』ならではの調理法だ・・・

「オーブンってだけあって下からも上からも加熱可能っつーワケでね、蓋も重いしけっこー密閉性あって『圧力鍋』みてーに」
「でも今日はライスは無いけど、カレーは良い線いってるッスね。や、カレールー使ってないけど、中身はスパイス効かせた鳥の蒸し焼きでね」
「かなりウマいはず」「で、ビールもあるしね」

出来上がりまで時間はかかるようだ。
口調は早口だが動きはのんびりと、ヤカンだとか小さな鉄板だとかを焚き火にかけていく。

553薬師丸 幸『レディ・リン』:2018/12/25(火) 01:01:48
>>552

(すっごい熱弁……よっぽど好きなのね。
 にしてもビール? ハタチ超えてるのかな。
 まあ、超えてなくても別にいいんだけど)

車に乗るわけでもないのだろうし、
まるきり子供にも見えない。自己責任でいい。

「ああ、それでオーブンっていうんだ。
 なるほどね、ちょっと合点がいった。
 鍋なのにオーブン? って思ってたのよ」

感心したような顔で、焚き火を見つめる。
炎を見るのが趣味という訳でなくても、
なんとなく見ていたい惹きつける物がある。

「あら、外しちゃったか。ざ〜んねん。
 でも、鍋で鳥の蒸し焼きってのは良いね。
 キャンプっぽいっていうかさ……
 家庭料理とは違う感じが良いと思うわけ」

「こういう遊びってさあ、多分だけど、
 そういう『それっぽさ』が大事なのよね」

凝った調理法ではなく、豪快な蒸し焼き。
あるいは最新の器具ではなく鉄の鍋と飯盒。
家があるのに外で寝るという遊びには、
そーいうのが大事なのだろうと、なんとなく思う。

554草摺十三『ブレーキング・ポイント』:2018/12/25(火) 22:03:47
>>553
「そーそー」「そーなんスよねェ〜」
「違う感じとかそれっぽさとか、何かそーいう『感じ』がねー」「いいんよ」

いくらでも便利で簡単にできるのだ。
別に蒸し焼きしたいなら良い圧力鍋と良いガスコンロなりIHヒーターなりでよほどウマいのができるだろう。
失敗もないし。清潔だし。楽だ。

「『あえて』!『あえて』焦げるかもしれねーってちょっと気にしながらやるのが『良い』んスよなぁ〜ッ」

「・・・」
「・・・」
「・・・ゴホン」

「まーこういう遊びッスよ」「ウン」

熱く語っているうちにもう出来上がりだ。蓋を持ち上げれば肉と香辛料の混ざったにおいが流れてくる。

「今日のもウマくいった」「へっへ」「もし良かったら一口たべます?」「これフォーク。今水で洗ったからキレーッスよ」

気さくに勧める。
もはや友達気分だ。親友だったのかもしれないな・・・

555薬師丸 幸『レディ・リン』:2018/12/25(火) 22:46:51
>>554

「『既製品』のステキな洋服と、
 『手縫い』のセーターだと、
 違う魅力があるっていうかさ」

「なんとゆーかそんな感じだよね。
 『洗練』されてないからこそ、っていうか」

裁縫好きから妙な例えになったが、
要は草摺と同じ考え、『そういうこと』だ。

薬師丸はてまひまってものを礼賛しないが、
てまひまが生む『雑味』は確かに楽しめる。

「なんとなくわかって来た。
 キャンプって遊びの入り口が」

「ん、貰っていいの?」

食べ物はありがたい。

「それじゃ、遠慮なくもらっちゃおうかな。
 実はそれ見ててけっこーお腹空いて来てたの」

               「ありがとね」

フォークを受け取り、小さめの一口をむしろう。

「あのさ、貰うばかりじゃ私の『良心』がうずく。
 今はあんまりいいもの持ってないけどね、
 何かきっとお返しするから……ぜひ覚えといて」

食事を共にすればそれはもう、知った仲。そうだ、親友でもいい。
だが、そのためには『お返し』の約束が必要だ。薬師丸はそういう『線』を愛する。

556草摺十三『ブレーキング・ポイント』:2018/12/25(火) 23:06:56
>>555
「へっへっへ」

同意の笑みだ。口一杯に肉をほおばっているのでマトモに喋れないということもある。

「へっへ」「むぐ」

ビールで流し込んだ。おいしい!

「草摺十三(くさずり じゅうざ)」「ッス」「同じ鍋のメシ食った仲ってことで」

町中にある小さいが老舗の『造園屋』の屋号と苗字が同じである。
薬師丸は気付かなくても良いしこの先まったく知らなくても構わない。

「でもお礼ーとかお返しーとか気にしねーッスよ」「俺は」
「あんたさんの気が済むならいーし覚えとくけど、あ、水コレ。はい」「辛いっしょ」

557薬師丸 幸『レディ・リン』:2018/12/25(火) 23:18:14
>>556

「『薬師丸 幸(やくしまる さち)』」

「好きに呼んでくれていーよ。
 薬師丸でも、幸でも。
 なにせ『同じ鍋のメシ』だからね」

薬師丸はまっとうな『市民生活』と縁が薄く、
造園という立派な仕事の屋号にもまた縁薄い。

     モグ

「! ……ありがと、やっぱあんた気が利く。
 辛いねこれ。でも、それが『良い』。今日は寒いし」

        ゴクゴク

受け取った水を飲み、笑みを浮かべる。
それでも、確かな縁がここにある。

「お返しは、ま、私の自己満足だからさ。
 こう見えて『人を幸せにする』のが生業でね。
 あ、変な宗教とか、悪徳商法じゃないけど」

                ス

「『幸せ』が欲しくなったらこの番号に電話してちょーだい」

それに自分の満足を上乗せするのは、
幸運を売る少女としての『サガ』のようなもの。

兎の絵が描かれたポップな『名刺』を、そっと差し出した。

558草摺十三『ブレーキング・ポイント』:2018/12/27(木) 00:31:02
>>557
(さっちゃんだな)

造園屋の息子は名刺を受け取る。
自分のは無いので渡せない。軽く詫びる。

「『幸せ』ッスか〜」

怪しむとかではなく単純に『よくわからない』って声だ。

「まーこうやって」「遊んでたら友達が増えていくのが今は『幸せ』ッスからねェ」「へっへ」

その意味では充分『生業』とやらは果たせているというわけだ。
日も落ちかけ、薪を放り込んで火を大きくした。

559薬師丸 幸『レディ・リン』:2018/12/27(木) 01:10:58
>>558

名刺を返されないのは普通だ。
ビジネスではないのだから。
詫びには気にしないで、と一言返した。

「そ? 嬉しい事言ってくれちゃって」

    ニコ

「じゃ、改めて言うけどさ。
 今日から私たちは友達。
 よろしくね、ジューザくん」

「私も、友達が増えて嬉しい」

満面の笑みを浮かべて、そう宣言する。
言葉にするなんて無粋かもしれないけど、
言葉にするから確かなものになる気もする。

「っと、ちょっと暗くなって来た。
 私、家族を待たせてるから……そろそろ帰るね」

「チキンとお水、ご馳走様」

          ザッ

「ね、なんとなく、また会う気がする。それじゃあね」

完全に暗くなる前に、帰路につくことにした。
もし何か言葉があれば、それを聞いて、答えて帰ることにしたのだ。

560草摺十三『ブレーキング・ポイント』:2018/12/28(金) 22:00:05
>>559
「『なんとなく』、俺もそんな気がするッスねェ」
「へっへ。じゃあ。気ィつけて」

友達が増えることは良いことだ。
一人で遊ぶのも友達と遊ぶのもとても楽しい。
遊び始めたときに仲良くなって、その余韻のまま遊べるのは最高に良い。

「♪」

    パチ ッ

鼻歌混じりに薪をくべ、寒くて長くて、楽しい夜を待つとする。

561薬師丸 幸『レディ・リン』:2018/12/28(金) 22:15:48
>>560

「寒くなるから、あんたも気を付けて。
 寒いのも楽しいのかもしれないけど、ね」

         スタ
            スタ

それだけ返して、去っていった。

『スタンド使い』として『惹かれ合う』時も、
いずれ来るかもしれないが――――

少なくともはじまりは異能など関係のないただの友達だ。

562鉄 夕立『シヴァルリー』:2018/12/30(日) 20:20:54
「・・・・・・・・・・」

『ブン』『ブン』

日も沈みかけた夕暮れ。公園の片隅で、一人の学生服の少年が素振りをしていた。
その手は竹刀を握り、頭上に掲げ。そして正面、次は手元まで振り下ろす。
同時にすり足で前へと進み、そして下がる。それをひたすら繰り返している。

563鉄 夕立『シヴァルリー』:2018/12/31(月) 22:32:47
>>562

『ブゥン』『ピタリ』

「・・・千五百」

間に休憩を挟み、300×5セットを振り終える。
ゆっくり呼吸を整えると、竹刀から鍔を外し、まとめて竹刀袋に入れた。
そして身体が冷えない内にマフラーと上着を羽織って、スマホの画面を見る。

「年越しそばを食べたら・・・初詣か」

家族への連絡を入れると、鉄は帰途に着いた。

564<削除>:<削除>
<削除>

565鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/01/25(金) 22:46:25
既に夜の帳が下りた公園、その端にある雑木林。
学生服姿の少年が、大きな黒い革製の袋を背負って入り口に立っていた。

「・・・・・・・・」『キョロキョロ』

辺りを見回した後、こっそりと目の前の林の中に入っていく。
いかにも怪しげな姿だった。

566???:2019/01/25(金) 23:12:58
>>565

……シュピッ !!

背後の暗闇から『何か』が『鉄』の足元目がけて、投げつけられた!

「青少年がこんな夜中に、怪しい荷物……怪しいですね。」

少女の声が響いた。

567鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/01/25(金) 23:23:23
>>566

『ビクッ』

「・・・・・なッ!?」

実際に後ろめたいことでもあったのだろう。
少年はたじろぎながら、飛んできた何かの正体を確かめる。

「何者だッ!」

どこにいるかも分からない声の主に、そう訊ねながら。

568松尾 八葉『ターゲット・プラクティス』:2019/01/25(金) 23:36:14
>>567
地面に刺さった飛んできたモノを確かめる……

  これは……!
    これは……!!
      これは……!!!
        『メガネ』 だ。MEGANEだ。英語で言うとGlasses。

「私の『メガネ』は非行行為を見逃さない。」
メガネをクイッと整えながら、14歳ぐらいの黒髪メガネ制服少女が闇の中から現れた。

「何者かと問われれば……」

「清月学園中等部2年 風紀委員 松尾 八葉(まつお やつば)!」

「夜の風紀の乱れに即参上!」
少女が参上した。

569鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/01/25(金) 23:52:38
>>568

「─────」

(メガネ?)
(いや、何故メガネを?そもそも投げつけるものではないはずだろう?)

『ゴシゴシ』

目をこすってみたが、やはり飛来物はメガネにしか見えなかった。
これは自分にこそメガネが必要なのではないか?暗闇でよく見えていないのかもしれない。
だが、近づいてみてもそれはメガネだった。鉄は困惑した。

「…こんばんは」
「オレは清月学園高等部二年生、鉄夕立(くろがね ゆうだち)だ」
「ええと…松尾さん、よろしく」

「その…何故、メガネを投げたんだ?」

色々と気になるところはあったが、まず先にツッコミたいところを訊ねてみた。
ひょっとしたら、お互いに何か勘違いをしてるのかもしれない。

570松尾 八葉『ターゲット・プラクティス』:2019/01/26(土) 00:08:03
>>569
「なぜ、メガネを投げたか?」

「いい質問です。
 夜中に風紀パトロールをしていたら、
 怪しい人影が見えたので、手近にあったメガネを投擲したまでです。」

「鉄さんは高等部2年生ですか、先輩にあたるわけですね。」

「風紀委員としてお尋ねしますが、鉄さんこそ、この夜中にそのような出で立ちでどこへ向かわれるのでしょうか?」

「特にその『黒い袋』!怪しすぎます!」
ビシッと袋を指さす。

571鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/01/26(土) 00:26:55
>>570

「・・・・・・・・・・」

ダメだ、説明を聞いても全く分からなかった。
いや、ほとんど成り行きは分かったのだが、怪しい人影を見つけたのでメガネを投げた、この部分が全く分からなかった。
ひょっとして、どこかの家系にはメガネを暗器として扱う技術もあるのだろうか?
いや、とりあえずそうしておこう。この部分に突っ込んでも理解できる気がしない。

「あぁ、これか」「今日は自主練に来たんだよ」
「オレは『剣道部』だから」

確かに鉄が背負っていたのは、普段防具を入れておく『防具袋』だ。
しかし、疑問が残る。剣道の練習に来たならば、何故『竹刀袋』はないのか?

「夜間に出歩いたのは申し訳ないな…今度からはもう少し早めにしておくよ」

(中学生でよかった…緊張せずに済むからな)(流石に苦手なタイプだったら、隠し切れなかったかもしれない)

572松尾 八葉『ターゲット・プラクティス』:2019/01/26(土) 00:35:59
>>571
「むむむ、防具袋。
 確かに一見おかしくなく見えますが……ズバリ言いましょう。」

「『防具』だけで練習をするのですか?
 素振りなどの練習ならむしろ、『竹刀』だけでよいのでは?」

「と、このように、私の『メガネ』は不正を見逃さないのです。」
メガネの奥から不審な視線を向けている。


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