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【場】『 湖畔 ―自然公園― 』

1『星見町案内板』:2016/01/25(月) 00:04:30
『星見駅』からバスで一時間、『H湖』の周囲に広がるレジャーゾーン。
海浜公園やサイクリングロード、ゴルフ場からバーベキューまで様々。
豊富な湿地帯や森林区域など、人の手の届かぬ自然を満喫出来る。

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                 ミ三ミz、
        ┌──┐         ミ三ミz、                   【鵺鳴川】
        │    │          ┌─┐ ミ三ミz、                 ││
        │    │    ┌──┘┌┘    ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
        └┐┌┘┌─┘    ┌┘                《          ││
  ┌───┘└┐│      ┌┘                   》     ☆  ││
  └──┐    └┘  ┌─┘┌┐    十         《           ││
        │        ┌┘┌─┘│                 》       ┌┘│
      ┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘     【H城】  .///《////    │┌┘
      └─┐      │┌┘│         △       【商店街】      |│
━━━━┓└┐    └┘┌┘               ////《///.┏━━┿┿━━┓
        ┗┓└┐┌──┘    ┏━━━━━━━【星見駅】┛    ││    ┗
          ┗━┿┿━━━━━┛           .: : : :.》.: : :.   ┌┘│
             [_  _]                   【歓楽街】    │┌┘
───────┘└─────┐            .: : : :.》.: :.:   ││
                      └───┐◇      .《.      ││
                【遠州灘】            └───┐  .》       ││      ┌
                                └────┐││┌──┘
                                          └┘└┘
★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
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346夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/11/01(水) 21:47:24
>>345

再び暴れ始める水瀬に文句を言うわけでもなだめるでもなく、ただじっと見つめる。
その様子をよく観察するためだ。
目が見えなかった自分にとって、見たことのないものというのは人よりも多い。
どんなものであれ、それが見たことがないものであれば興味を引かれる対象になる。
今、隣にいる水瀬留美子も例外ではない。

「イイ名前じゃん」

「じゃ、ミナセさん」

ホントはもっとひねった名前で呼んでみたかったけど仕方なく妥協した。
またボーソーされたら困るし。
ベツに私はいいけど、周囲への配慮というヤツだ。

「なんつーかさ――」

「ウチらって、わりと似てるとこある気がするかも」

「たまたま隣に座っただけのヒトに、こんなこと言うのもヘンな話だけど」

「ま、気にしないで」

「なんとなくそう思っただけだから」

その言葉には二つの意味が含まれていた。
一つは人間としてという意味。
ほんの少し会話しただけの知人ですらない相手だが、
心の奥底に横たわる闇とその中で輝きを放つ一筋の光が感じられた。
もう一つはスタンド使いなのではないかという感覚だ。
この水瀬留美子という女性から漂う『奇妙な雰囲気』に、
どことなく『非日常の力』の匂いを感じ取った。
もちろん、これはただの勘でしかないし、確かめるつもりもない。
なんの根拠もなく何となくそう思ったことを口にしただけのことだ。

347水瀬 留美子『ブラックボトム・ストンプ』:2017/11/01(水) 22:23:48
>>346

  「似てる?」

  「アタイとあんたが?」

  「フヒッ」

目を細め、意味深な事を口にする『星見ヶ崎』に
「何言ってんだこいつ」って視線を向ける。
その傍らに――

               『パミィーッ』
     ズギュン

子供程の背丈の人型スタンドを発現する。
スタンドは濁水で人を象ったような容貌をしており、
その臀部にはドラゴンボールで『セル』が生やしていたものに
酷似した全長1m程の『尻尾』が生えており、所在なさげに宙で畝っている。

「アタイって言っちゃったけど、
 今時アタイはねーよな。ヒヒヒ。

 アタシがあんたみたいな二次元美少女とそっくりだってなら
 めっちゃ張り切ってコスプレして『インスタ』しまくるっての」

348夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/11/01(水) 23:26:52
>>347

            チチチチチ……

木立の向こうで鳥が鳴く。
なんてことのない穏やかな日常の風景。
そんな中に出現した非日常の異形。

「いいや、そうでもないね」

「今、思ったわ――」

「私のカンも捨てたもんじゃないってさ」

水瀬留美子に向けていた視線が、その傍らに発現した『ブラックボトム・ストンプ』に移る。
サングラスの奥の瞳を細めて、その特徴的な姿を観察する。
そして――。

  『 L(エル) 』 『 I(アイ) 』 『 G(ジー) 』 『 H(エイチ) 』 『 T(ティー) 』

水瀬の隣に座る夢見ヶ崎の更に隣に、人型のスタンドが姿を現した。
男とも女ともつかない無機質な声で、傷のついたレコードのように、
途切れ途切れに『一つの単語』を呟いている。
その両目は閉じられており、両手には『医療用メス』を思わせる形状の鋭利な爪が伸びていた。

「――どうよ」

「『似てる』でしょ」

片手を軽く上げると同時に、人型スタンドも同じ動作で片手を上げる。
付け爪のある指とメス状の鋭い爪のある指が重なる。

「顔をウリにできるほどイケてるとは思ったことなかったなぁ」

「自分の顔、見たことなかったから」

349水瀬 留美子『ブラックボトム・ストンプ』:2017/11/01(水) 23:38:33
>>348


「…」


   「ああ〜ッ」  

夢見ヶ崎の傍らに現れた『医療従事者』を思わせる人型と、
そして自らの分身を見比べ、
少しの間を置き、思わず口をあんぐりと開く。


            「”?!”」
「ぎィえッ!
 私だけに目覚めたものだと思ってたのにッ!
 朝起きて、とうとう『中二病』拗らせて幻覚見始めたと思って、
 30年生きてきて、すげー勢いでやべー焦ったのにッ!」

          「て、てか!!」

「あ、あんた、それッ!ペル、
 フヒッ!ゴホンッ!あんたも、ペペペペ!
           ――『ペルソナ』ぁぁ!?」

350夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/11/02(木) 00:07:16
>>349

「え?寝言は寝てから言うもんでしょ?」

水瀬に対して辛辣な突っ込みを入れる。
そう言いながらも、彼女の反応には新鮮さを感じた。
今まで会ったことがあるスタンド使いなんて、まだちょっとしかいないけど。

「ベツに誰がどう呼ぼうがジユーだと思うけど――」

「持ってるヒトの間じゃ、『スタンド』っていうらしいよ」

「『これ』とか『それ』とか」

『ブラックボトム・ストンプ』と『ドクター・ブラインド』を交互に指差す。

「名前を教えたんだし、ついでだから『そっち』の名前も教えてよ」

「私のは『ドクター・ブラインド』」

「サイコーにクールでマジ超イケてる私のバディ」

351水瀬 留美子『ブラックボトム・ストンプ』:2017/11/02(木) 00:21:31
>>350

「ンゴ」


辛辣な突っ込みを受け、
思わず変な声を漏らした。


「『ス』『タ』『ン』『ド』――。
         へ、へぇ〜…」

「そういう『ルール』が既にあるって事は、
 もしかしてクソみたいに人気のない『地下アイドル』のライブに
 足繁く通うオタクの常連客連中程度には、
 その、『スタンド使い』っていうのがいるのかな…」


            『パミッ!パミッ!』

死にかけのセミの様な呻き声を漏らす、
自身の醜悪な一面を顕在化した自分自身と、
夢見ヶ原の『スタンド』を見比べると、ため息を漏らす。

「これは、なんだっけ。
 ああ、そうだ。『ブラックボトム・スタンプ』って名前。
 まだ、どうにも名前がパッと出てこないんだけど」

「やっぱ明日美氏の『スタンド』の方が、格好いいわね。
 『トレード』機能とか実装されてないのかしら」

352夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/11/02(木) 00:43:00
>>351

「まあ、私とミナセさんだけじゃないことは確かねー」

「私も何人か会ったことあるし」

「もうすぐメジャーデビューするインディーズバンドの取り巻きくらいの数はいるんじゃない、たぶん」

なんとなくだが、この町だけでも探せば結構いるだろうと思う。
私が持ってるんだから、他のヒトだって持ってるでしょ。
夢見ヶ崎はそんな風に考えている。

「そお?」

「私は結構かわいいと思う」

「この尻尾とかチャーミングだし」

興味深そうに、『ブラックボトム・ストンプ』の尻尾を眺める。
純粋な人型である自分のスタンドにはないものだ。
どのような機能を果たしているのだろうかと好奇心が湧く。

353水瀬 留美子『ブラックボトム・ストンプ』:2017/11/02(木) 23:00:37
>>352

「メジャーデビュー間近のインディーズって
 億が一、売れた場合にも『方向性』が違うって、
 その世界にどっぷり浸かってる、
 バカで無駄に歳食った古参のバンギャが発狂する奴じゃねーのぉ!

 『みかたん@3日目C-21』さんも、
 カラオケで『嘘』と『モノクロのキス』を歌われると、
 そのオタク女をブチ殺したくなるって言ってたわ」


   ウネッ ウネッ

           スッ

夢見ヶ崎の視線が『ブラックボトム・ストンプ』の『尻尾』に、
注がれている事に気付き、その動きをすっと止めさせる。

「「『切り札』は先に見せるな」
 って私の『初恋の人』がドヤ顔で語ってた フヒッ。
 ん、ん〜ッ、と言っても何が出来るか、って私が知らないんだけど」

354夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/11/02(木) 23:35:06
>>353

「どーでもいいんだけどさ、『数』の話をしてるんじゃなかったの?」

「ま、とにかく分かりにくいけど結構たくさんいるってことだよ」

「たまたま隣に座ったウチらが持ってるみたいにね」

ふと『ブラックボトム・ストンプ』の尻尾が止まる。
それを見て、クスッと笑った。
ほんの少し、いたずらっぽい笑み。

「それってさ――」

「『そこ』に秘密があるって考えていいんだよねえ?」

「ただのカンだけど」

     スッ

『ドクター・ブラインド』が、手術前の執刀医のように両手を掲げる。
両手にあるのはメスではなく爪だ。
これは逆に『ブラックボトム・ストンプ』にはない部分だろう。

「まあ、私のも似たようなもんかもね」

「別に、『ここ』に秘密があるとは言ってないけどさ」

そう言って軽く笑う。

「何ができるか知っとくと普段の生活で役に立つかもよ」

「私もちょくちょく使ってるし」

355水瀬 留美子『ブラックボトム・ストンプ』:2017/11/03(金) 11:14:15
>>354

 「フヒヒッ」


「そうね、造形は必然性。
 ゲームのボスってやたら触手を生やしたり、
 別に飛びもしないのに背中に何枚も翼を生やしたり、
 そういう機能美と造形美を両立できていないものが、大嫌いッ!

 『ブラックボトム・ストンプ』が私の頭の中の友達だっていうなら、
 この『尻尾』にも何かしら意味がある筈。明日美氏の『爪』と同様にね
 ――まッ!いいでしょう!!」

腕時計で時刻を確認すると、
ベンチから立ち上がる。

「帰ろうッ。
 これから無数の『いいね』と『リツイート』が、
 私の『承認欲求』を満たそうと油田の様に噴流するのフヒヒッ」

356夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/11/03(金) 21:23:24
>>355

「んじゃ、ばいばい」

「またどっかでばったり会うこともあるかもね」

「スタンドを持ってるヒト同士は会いやすいんだってさ」

ひらひらと手を振って水瀬を見送る。
もし会ったら、その時は『ミッちゃん』ってよぼっかな。
それとも『ルーミン』の方がいい?
またなんかのスイッチ入っちゃうかもしれないけど。
ま、その時はその時ってことで。

「――私って、好奇心が強いから」

一人になり、ぽつりと呟く。

「次は、その『秘密』も見せてもらおっかな」

「『アリス』の名にかけて――ってね」

森の近くに出かけたアリスは、一人の変わった女の人と出会いました。
その人とお喋りしたアリスは、自分とその人が似ていることを知りました。
なぜなら、その女の人は、長い尻尾を持つ『友達』を連れていたからです。

今日のお話はここまで。
次のお話は、また今度――。

357石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2017/11/04(土) 23:27:16
スィ〜
   スィ〜
      スィ〜

秋深い10月の湖水を、男子が背泳ぎで泳いでいる。

『寒中水泳』だ!

「フィ〜やっぱり、水はいい……俺の頭をクールにしてくれる。」

358石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2017/11/04(土) 23:27:34
age

359硯 研一郎『RXオーバードライブ』:2017/11/05(日) 20:33:10
>>357
「やはり、『ポッポー』は良いな。
まさか『ドクターイエロー』を見えるとは、僥倖だ」

伸びっぱなしの金髪に耳にピアスをびっしりとつけた男子高校生が、
樹木に腰を預け、手にしたデジカメの画面を覗き込んで、
撮影した写真を吟味してる。

「見れば幸せに」
「…」「!!」

そこでこの11月の寒空の下、
寒中水泳をしている男子中学生の存在に気付いた。

360石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2017/11/05(日) 20:55:23
>>359
「むっ、盗撮の気配……!」
盗撮の気配を感じた。

「ならばやることは一つ……!」



シンクロッ!

 ヾ/       ズッ
~~~|~~~
 ●┘


ナイズドッ!

 ヾ●/       ザッ
~~~~/~~~
 ┘|


スイミングッ!

  V
●■\    ザパァッ!
    ヾ
~~~~~~~~~

とりあえず技術美を見せつけた。

361硯 研一郎『RXオーバードライブ』:2017/11/05(日) 21:10:29
>>360
だが金髪の男子高校生は、既にデジカメを降ろし、
無表情のまま石動のシンクロを眺めていた。


「今は『11月』だ。
 学校側が危険だからという理由で運動会で組み体操を行わないこのご時勢に、
 自主的に寒中水泳を行っているとは。
 ひょっとして、君は気が狂っているのかい」

「それともこの近くにスパルタな『フリースクール』でもあるのかい」

362石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2017/11/05(日) 21:17:37
>>361
ザパッザパッ……声をかけると泳いで近づいてきた。

「ハハッ、気が狂ってるはひでぇなぁ……」

「俺は水が好き。それだけさ。季節なんて関係ないね。」

「まぁ、ちょっとした『能力』で、寒さとか通じねーってのはある、が。」

363硯 研一郎『RXオーバードライブ』:2017/11/05(日) 21:30:53
>>362
「それはやせ我慢じゃあないのかい。
 もしくは、『気』ではなく『交感神経』が狂ってるか、だ。
 一度お医者さんに行って、診察してもらうといい」

「なあに」「恥かしいかもしれないが、
      行っておいて損はない筈だ」


バリッ 「…」 ボリッ 「…」 ボリッ 「…」 ボリィッ!


学生カバンにデジカメを仕舞い、
代わりに真空パックに包装された沢庵の1本漬けを取り出し、
包装を剥がすと、水上がりの石動を眺めながら無言で、
スナック菓子感覚で漬物を食べ始める。

「君はひょっとして水泳部か何かなのかい。
 練習したいのなら、あっちの方に冬季も開放している温水プールがあったが。
 そこじゃあ駄目なのかい」「あ」

「もしかして、『温水』は温いから『水』じゃあなく『湯』って、
 自分ルールだったりするのかな」

364石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2017/11/05(日) 21:50:45
>>363
「『お医者さん』ねぇ……」

「まぁ、医者というか、『ある所』で心の声を聴いてもらってからなんだが、深くは突っ込んでくれるなよ。
 ポケモンの『海パンやろう』みてーなもんだ。」

「お、いいね、その沢庵。自家製?」

「泳いだら腹が減ったな……ちょっと荷物取ってくるか。」

ブゥン……海パン少年の傍らに人魚型のスタンドが浮かび上がる。

    人魚型のスタンド『オオオッ……』

365硯 研一郎『RXオーバードライブ』:2017/11/05(日) 21:59:32
>>364
「近所のスーパーで買ってきた
 『ボリッ』もの『バリッ』だ『ボリッ』が『バリ』」

         >『オオオッ……』

石動の傍らに発露した人魚型のスタンドを一瞥、
特に表情を変える事はない。

「君は荷物を取る為だけに、
 その、ス……なんだっけ。まあ、いいか。
 その『アレ』を使うのかい。随分と物臭なんだな。
 朝、お母さんに起こして貰っておいて、
 「ババア!なんでもっと早く起こさなかったんだよ!」っと逆ギレするタイプと見た」

366石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2017/11/05(日) 22:17:44
>>365
「キレねー、って。
 うちの母ちゃん、いつもニコニコしてるけど怒るとコエーからな」

「ったく、君の中で俺はどんだけ『狂犬』なんだよ……。」

「荷物は盗まれねーよーに、『上』に置いてあるのさ。」

    人魚型のスタンド『オオオッ……』

    人魚型のスタンドが一泣きすると『涙の泡』が飛び、樹上に向かい……

    バキン! …… ドサッ!

    カバンが落ちてきた。

「な?」

367硯 研一郎『RXオーバードライブ』:2017/11/05(日) 22:30:26
>>366
「な?」

スタンドを使い、木の上の荷物を取る石動。
そんな彼の挙動を眺め、鼻の頭に指を添え、考え込む仕草をする。
(既に漬物は食べ終えた)


               「!!」

               「わかった。
                成る程、理解できた」

「君はもしかして――『中二病』ってやつかい?
普段から、例えば学校の教室でもこれ見よがしに『それ』をそんな風に使ってるのかい。
俺は、『それ』が見えるし使えるから『そんな風』に『アレ』したい気持ちはわかるが、
『それ』が見えない同級生からしたら、
君はかなりの『奇行種』に思われてしまうんじゃあないかな」

368石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2017/11/05(日) 22:38:24
>>367
「中二病の奇行種って……
 面と向かって言うことか、それ……
 せめてマイペースとかそういう、さぁ……」

「はぁ……」

「ミニ羊羹食べる?」

モキュモキュ……カバンからミニ羊羹を取り出して、食べている。

369硯 研一郎『RXオーバードライブ』:2017/11/05(日) 23:02:03
>>368
「俺の町内では寝転びながらスマホで『youtube』を観る感覚で、
『それ』を使う人をマイペースと形容した実例はないんだ。
俺はスマホも持ってないし、パソコンも人差し指で打つレベルだから、
人に頼まなければyoutubeを観れないがね」

カバンを漁り和菓子をたべる石動を眺める。
差し出されたのならば丁重にお断りする。

「しょっぱい物を食べたし、甘い物も欲しい。
甘いものを食べたし、しょっぱい物も欲しい。
ってなるから、遠慮しておくよ」
「しかし」「アレだな」

「『マイメン』の『斑鳩』の『翔』ちゃんに初めて遭った時も、
彼の持っていたアメリカンドッグを勧められたよ。
純粋な『好意』からくれたってのはわかってるんだが、
ひょっとして俺は『物乞い』か何かに見えるのかい」

370石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2017/11/06(月) 18:30:39
>>369
「よくわからんが考えすぎじゃないかな。そんなに深い意味はないと思うぜ。」

「それじゃ俺は着替えてくるんで、チョイとおさらばな。」
スササと茂みに隠れていった。

「覗くなよ。」

371硯 研一郎『RXオーバードライブ』:2017/11/06(月) 23:14:32
>>970
「覗かないさ。
 覗きはバレた時に最高に恰好が悪いじゃあないか」

  カパッ

手首に巻いた時計で時刻を確認する。
そろそろ帰らなければいけない時間だ。

「それじゃあ、俺は行くさ。
 しかし、君といい翔ちゃんと良い、
 『それ』を持っている人達は随分と『個性的』だ。
 俺なんかより、ずっと。ずっと」

茂みで着替える石動に言葉をかけ、
帰路へとついた。

372<削除>:<削除>
<削除>

373有栖川 絢子『ワールド・ウィズアウト・ヒーローズ』:2017/11/27(月) 21:58:26
ある日の夕方。
自然公園の木製のベンチに、紺色のセーラー服を来た一人の少女が座っていた。

「……」

髪は前下がりのボブカットで、良く見れば微かに茶色がかかっている。
首からは黒いヘッドホンをかけ手には参考書を持ち、
それを無感情な瞳で読み解き続けていた。


「……そう簡単には、変わらないか」

参考書を読みながら突く溜息。

『力』を得てから数日がった。
それからという物、彼女は下校時刻から塾へ行くまでの間
こうして外を徘徊している。

『何か』が変わる事、或いは起こる事を望んで。

それでもいつも手放す事の無かった『参考書』と『ヘッドホン』は持ち歩いている。
彼女自身も、結局何も変わらずに生活しているのだ。


彼女が望む『ラスボス』への道はまだまだ遠いらしい。

374有栖川 絢子『ワールド・ウィズアウト・ヒーローズ』:2017/11/27(月) 23:04:25
「今日はこれぐらいかな」

参考書を学生鞄に仕舞い、木製のベンチから立つ。

「やっぱり、『力』をもっと積極的に使う必要があるのかしらね」

『レプラコーン』を使えばちょっとした騒ぎくらいは起こせるだろう。

そうすれば、『何か』は起こるか。

「……ま、もう少し気長に待ってみましょうか!」

少しだけ楽しげに笑うと、去っていく。

375花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2017/12/08(金) 23:16:52

これといった目的もなく、ただ何の気なしに自然公園へやって来た。
湖の側まで歩き、どさりと胡坐をかく。
やや気だるげな視線が、静かな湖面に注がれる。

「――湖の近くで『水死』を味わう」

誰に言うでもなく、ポツリと呟いた。
周囲に人気はない。
いつの間にか、その手の中にリボルバー拳銃が握られている。
自身のスタンドである『スウィート・ダーウィン』だ。
腕を上げ、銃口を自分のこめかみに突きつける。

「それもオツなもんかもしれねえな」

躊躇することなく引き金を引き絞り、発砲する。
銃声と共に、一発の弾丸が発射された。
当然の帰結として、それは自分の頭に撃ち込まれる。

「う、ぐ――」

「ぐ、がが……!」

「が……あッ……!!」

水没による窒息死を再現した『偽死弾』。
その効果により、まるで本当に溺れているかのように、酸素を求めてもがき苦しむ。
もちろん本当に溺れているわけではないが、本人にとっては実際に溺れているのと同じことだ。
深く暗い水底に引きずり込まれ、確実に死が間近に迫る。
そして、死ぬ直前で能力は解除され、死の幻は跡形もなく消え失せた。

「……かぁ――ッ」

強い酒を一気に呷った時のような声を上げ、草の上に寝転がる。
俺は酒よりも、こいつの方が好きだ。
酒は止められても、『スリル』を味わうのは止められそうにない。

「――たまんねえぜ」

未だ手の中にある『スウィート・ダーウィン』を眺める。
こいつが与えてくれる刺激は、どんな女よりも『スウィート(素敵)』だ。
やがて、一呼吸と共に、『スウィート・ダーウィン』を解除する。

376稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2017/12/14(木) 23:19:04
>>375

白い肌、青い眼鏡、桜色の目。
それ以外は長い髪含め、黒ばかりの――
西洋人形のような顔つきの少女、稗田恋姫。

「うわっ…………」

が、離れたところでそれを見ていた――――
といっても、『水死』から、『蘇るまで』であり、
銃のスタンドの『能力』にまでは気づけない。

(あれ……スタンド使いか?
 何してんだ…………『酔っ払い』か?)

          ジト

(ゲームオーバー感あるな……ちかよらんとこ)

             ザッ
                  ザッ

こういう場合よくある事だが、
相手は見られている事に気付いているものだ。

・・・恋姫は『ヒく』あまりそういう可能性に行きついていないが。

377花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2017/12/15(金) 00:26:36
>>376

「いや、違うな――」

「俺は酔っ払いじゃあねえぜ」

ゆっくりとした動きで、草の上から体を起こす。
まるで少女の心を読んだかのような言葉と共に。
実際は単なる当てずっぽうだが。

「半分は正解だな」

「だが、酔ってるってのは酒に――じゃあねえ」

「もっと別のもんさ」

見てた、か。
まあ、だからどうってこともないんだが。
こんな場所で『死んでる』俺が悪いんだからな。

「――分かるか?」

だが、少しばかり興味が湧いた。
『あれ』を見て驚きはしても、さほど動揺はしていない少女に対してだ。
単なるカンだが、ひょっとすると――ひょっとするかもな。

378稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2017/12/15(金) 01:22:03
>>377

           ビクッ

「っ…………!?
 えひ……なに、電波でも受信してた?」

思わず背が跳ねた。
流石にこうなれば知らんぷりもしづらい。

恋姫は足を止めて、言葉を返す。

「……それともぉ、『3D酔い』とか……?」

(……やばい、スルー安定だったかも。
 でも、急に話しかけられたら……
 反応するだろ、常識的に考えて……)

               タジ

不気味だと思った――少し退き気味に話す。
もしかすると本当にアブないかもしれないから。

「僕……あー、『PSY』とか『霊感』とかないから、
 全然わかんないんだけど……答えはくれるの?」

      「……『拳で教えてやるぜ』とかはNGで」

   ズ
      ズ

傍らには――――『青い焔』に包まれた、
ペスト医師のようなのヴィジョンが浮かぶ。

異様な状況に、警戒している……冬の風が汗を冷やす。

379花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2017/12/15(金) 01:59:51
>>378

「なるほどな」

特に警戒している様子もなく、少女の傍らに出現したスタンドを見やる。
やはり俺と同じように、持ってる奴だったらしいな。
そして、人型――この前に見たのと似たタイプか。

「――拳で教えるか。ハハハ、そいつは面白いな」

「それなら――『銃で教える』ってのはどうだい?」

上体だけを起こした姿勢のまま、手の中に『リボルバー拳銃』のスタンドが発現する。
ただ出しただけであり、銃口は向けていない。
しかし、それでも緊迫した空気が流れているのを肌で感じる。

同時に、今にも争いが起こりそうな強い緊張感を感じる。
『スリル』――俺にとっては心地良い感覚だ。
しかし、このまま続けていたら、マジのやり合いが始まっちまいそうだ。

「いや、すまん」

「冗談だ。危害を加えるつもりはねえよ」

「勘弁してくれ」

争いになる前に『スウィート・ダーウィン』を消して謝罪の言葉を口にする。
両手を上に上げるジェスチャーをして見せながら。
敵意がないことを示すためだが、どう受け取るかは相手次第だ。

「いきなり呼び止めて悪かったな」

そう言って、再び草原に寝転がる。
先程の『答え』を言わないまま――。
勿論、わざとだ。

380稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2017/12/15(金) 22:26:52
>>379

「…………やっぱスタンド使いかよぉ」

「くそ、ヤル気満々じゃん……
 でも……銃じゃ僕には勝てないぜ……
 僕は『シューティングゲーマー』だからな」

               キュイィィィィ

(最悪だ……とりあえず逃げるべきだ、
 だけど……『銃』背中向けるのは――――)

     ィィィン ・ ・ ・

一度はスタンドの両手に『青白い光球』が浮かんだ。
それが萎むように消えていったのは、銃が消えたから。

             「…………えひ」

「悪い冗談だぜ……『暴れてた』のも冗談?
 心が読めるのも……? どこまでマジなの……」

陰気だが、緩んだ笑みを浮かべた。
スタンドは解除しないが、両手を下げる。

そして本体も、小さな歩幅で数歩歩み寄る。
警戒は解けないけど、今すぐ逃げ去るような気分でもない。

381花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2017/12/15(金) 23:40:13
>>380

「ハハハ――」

「両手を頭の上に乗せて地面に膝をついた方が良かったか?」

「『フリーズ』って言われた時には、そうするのがお決まりだからな」

寝転んだまま、軽い調子で言葉を返す。
しかし、今の言葉――ヴィジョンは違えど、俺と同じように飛び道具が使えるのか?
察するに、あの『光球』が『銃弾』代わりなんだろう。
同じ飛び道具を使うスタンド使いとしては、どんな物か見てみたい気はするな。
だがまあ、今は止めておくか。

「何も心が読めるわけじゃねえさ。
 ただ、俺がアンタの立場だったら、『酔っ払いか?』って考えるだろうなって思っただけだ」

「それから、別に暴れてたわけでもねえな。正確に言うと、もがいてたんだ」

「あとちょっとで『死ぬ一歩手前』でな」
 
「デッドラインギリギリの『スリル』を味わってたのさ」

「――それが、さっきの答えだ」

少女の動きに大きな反応を示すことなく、淡々とした口調で語る。
相手はスタンドを出していて、自分は出していないという状況だが、特に警戒はしていない。
こちらから手出ししない限り、向こうから仕掛けてくることもないだろう。
この少女は、攻撃される前から攻撃してくるタイプには見えない。
そうでなければ、とっくに攻撃されている筈だ。

382稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2017/12/16(土) 00:17:13
>>381

「…………えひ。
 戦争ゲームじゃないんだから」

そこまで大袈裟なポーズはいらないし、
スタンド使いならポーズじゃ判断出来ない。
なんにせよ、戦わずに済んでよかった。
戦争ゲームじゃないんだから。

「……頭脳派っぽいこと言ってる。
 というか……『ギャンブラー』系?」

分析力はすごい。
しかし言ってる事はもっと、すごい。

「スリル……『VRの高所体験』とか好きそう。
 一回やったけど、ほんとに落ちるかと思ったぜ。
 足元が床だってわかってても……まじで怖い」

        チラ

           「……そういう『能力』?」

向けられていた銃に視線を遣る。
『死にかけるスリル』を体験するにはお誂え向きの形。

「それとも……えひ、銃だから……
 『1人ロシアンルーレット』でもしてたか?」

    「もしそうなら超ハード超えてルナティックぅ……」

383花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2017/12/16(土) 00:49:18
>>382

「ああ、ギャンブルは嫌いじゃねえな」

「『スリル』が味わえるものは大歓迎だ」

「ついでに言うと――『これ』も好きだ」

ゴソゴソとポケットを漁り、小箱を取り出す。
遠目からだとタバコの箱にも見えるが、実際はキャラメルの箱だ。

「こう見えても甘党なんでね」

そう言って一粒のキャラメルを取り出して、口の中に放り込む。

「そういう能力かどうか――そいつは想像に任せるぜ」

「ただ、俺にとっちゃあ『うってつけ』の能力だってことは間違いないな」

これじゃあ答えを言ってるようなもんか。
まあ、ここまで話せば薄々は気付かれてるだろう。
どっちにしても似たようなもんだ。

「ハハハ、『一人ロシアンルーレット』か。
 『何発目で死ぬか』予想してみるってのも面白いかもな」

「だが、マジで死んじまったら意味がねえ。
 死んだら二度と『スリル』を味わえなくなる」

「俺は『自殺志願者』じゃねえからな」

自分でもイカれてるという自覚はある。
だからといって、『自覚があるから自分はマトモだ』とも思わないが。

384稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2017/12/16(土) 01:26:43
>>383

「…………まあ、僕も能力ネタバレする気はないから。
 そこんとこは『おあいこ』ってことでひとつ…………」

想像はつかないでもないし。
当たってても外れてても、それこそ命に別状はない。

「頭使うと甘い物欲しくなるって言うし、
 マンガの頭脳派って甘党な印象あるよ……」

「あと、サイコキャラとかも……?」

小さく首をかしげて、陰気な笑みを深めた。

自分は甘い物はそんなに好きでもない。
もちろん、嫌いじゃない甘い物もいくらかはあるけど。

「まあ……お前はサイコとかじゃないみたいだけど。
 スタンド使いってやべーやつも結構いるから……安心したぜ」

「これ、『デレ』とかじゃないから、勘違いしないでよね……えひ」

                 トコ  トコ

話しやすいように、もう数歩だけ近付いた。
話せる相手だと思ったし、『話して面白くない』相手でもないと思ったから。

                 ・・・『仲良くなれそう』、とかではない。

385花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2017/12/16(土) 01:52:04
>>384

「ハハハ」

「そりゃあ、こんなスタンドが現れるくらいだからな。
 どっかイカれてるのは確かだろうよ」
 
「だが、自分が見境なしのサイコ野郎だとは思わねえさ」

「――アンタもヤバい奴じゃあないようだな」

少女の方を見て口元を歪めて笑う。
まあ、俺みたいなのと一緒にされちゃあ不愉快かもしれないが。

「能力は明かさないが、名前くらいは教えられるぜ」

「俺は花菱蓮華だ。仲間内からは蓮華って呼ばれてるが、好きに呼んでくれ」

「――アンタは?言いたくなけりゃ言わなくても構わないがな」

少し前に出会ったスタンド使いは『アンジェ』と言った。
その前は『フラン』とかいう奴にも会ったな。
まさか今度は『エリザベス』なんてことはねえだろうが。

386稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2017/12/16(土) 02:22:56
>>385

「僕も……中二病なのかもしれんけど、
 自分が『サイコ』だとは思った事ないかな……」

             ボウ…

傍らのスタンドが揺らいで消えた。
ペスト医師の仮面。青い焔。

スタンドが『人格』にかかわるなら、
年相応に『患ってる』面はあるに違いない。

「僕も……まあ、名前くらいならいいか。
 稗田(ひえだ)。 ……恋姫(れんひめ)。
 呼び捨てでいいぜ……敬語とかめんどいし」

だが――――自分のスタンドは好きだ。
それは見た目も、能力も。己の半身。

「……慣れてるっぽけど、上級者な感じなの?
 スタンド……なんか、えひ、『こういうやり取り』も」

          「漫画っぽいよね。今更だけど……」

さすがに恋姫にとってスタンドはもう非日常じゃないが、
目の前の男――蓮華も慣れた様子に見えて、気になった。

この町はスタンド使いが多い。いつ頃からでも不思議はないけど。

387花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2017/12/16(土) 02:48:46
>>386

「いや、そうでもねえさ」

「俺がスタンドを持つようになったのは最近になってからだ」

「恋姫がそうじゃないなら、俺の方が『この手の経験』は少ないだろうな」

風が吹き、燃えるような赤い髪が左右に揺れる。
その様は、炎が揺らめいているようにも見える。
内に存在する強い意志――危険なスリルを求める心を象徴するような色だ。

「自分の能力を自覚した時、不思議と納得がいった」

「道理で俺はおかしい訳だ――ってな」

「そして、俺が持ってるんなら他にも持ってる奴がいるだろうと思った」

「実際、こうして目の前にもいる訳だしな」

「慣れてるわけじゃあない。ただ、ある物を受け入れてるってだけの事さ」

あるものをあるがまま受け入れる。
それが自分のスタンスであり、スタンドに対してもそれは同様だ。
もっとも、スタンドが奇妙なものだと思わないわけではないが。

388稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2017/12/16(土) 03:10:12
>>387

「僕は……まあ、一応それなりに。
 最近ってわけじゃないかな……」

     「……『中級者』ってとこ」

風は恋姫の髪も揺らした。
黒い、人形のような髪だが、
黒は象徴するものが多すぎた。

そのどれだけが恋姫なのかは分からず、
瞳の桜色も今は、ただその色で灯っている。

「えひ……でも、人生はお前のが、
 プレイ時間長そうだし……そこの差かな」

自分は――――落ち着けなかった。

有体に言えば酔っていたのだろう。
自分に眠っていた力に。あるいは『肯定感』に。
それを醒ましたのは大きな経験ではなく、小さな積み重ね。

「ある物を受け入れるって、結構むずいし……」
 
いろんなものが目の前にはあるとして。
どこまでが自分の物かは、なかなか分からないものだ。

・・・呟いた恋姫は、少し下がった。話が止んだ、気がしたから。

389花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2017/12/16(土) 03:28:37
>>388

「まあ、大方そんな所だろうな」

「俺も、そう長く生きてるわけじゃねえから、あんまり偉そうな事は言えないが」

「スタンド使いとしては恋姫の方がキャリアが長いんなら、ここは引き分けって事にしとくか?」

冗談めかしてニヤリと笑う。
そして、不意に少女から視線を外し、湖の方を見やった。
少女が来る前と同じように、そのまま湖面を見つめる。

「――そういえば、ここを通り過ぎる所だったよな」

ふと思い出したように、ぽつりと呟く。

「調子に乗って、つい長く引き止めちまった」

「無駄話に付き合ってくれてありがとよ」

挨拶らしき言葉を口にし、軽く片手を振ってみせる。
このまま通り過ぎて問題なさそうだ。

390稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2017/12/16(土) 14:16:49
>>389

      「……ああ、うん」

「引き分けだな。えひ。再戦もいいけど」

    ニタ

「そろそろ行こうと思ってたとこだった……
 『リベンジマッチ』は、また今度にしよう」

暗い喜びの笑みが浮かんだ。
明るい笑みじゃないが、嫌な気分ではない。

「えひ…………止まったのは僕だし。
 無駄話にしてはけっこうおもしろかったぜ」

              トコ
                トコ

               「んじゃ、また……」

 ヒラ

小さく手を振り、あらためて――――その場を通り過ぎた。

391夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2018/02/06(火) 19:48:11

湖の畔に立つ大きな樹の根元に、誰かが座り込んでいる。
ブラウスとジャンパースカートの『アリス風ファッション』に身を包んだ少女だ。
頭に巻いたリボン代わりのスカーフと、カラフルなネイル、ブルーのサングラスがパンキッシュな雰囲気を漂わせる。

「数日前から、この近辺で目撃されたらしい未知の生物――『星見UMA』。
 その姿は目撃者によって様々であり、突然変異とも宇宙から来た生命体とも言われている」

「それを探し始めて、既に一週間……。
 また今日も収穫なしか……」
 
「くそ!!諦めないぞ!!
 見つけるまで粘ってやる!!!」

持参した双眼鏡を構えて、公園内の隅々にまで視線を走らせる。
何か変わったものはないだろうか。
内心、それを期待しているのだ。
今は、とにかく手がかりが欲しい。
それが謎に包まれた『星見UMA』発見への第一歩だ。

実際は単なるガセネタなのだが、本人は当然それを知る由もない。

392七海 フランチェスカ『アクトレス』:2018/02/11(日) 02:24:55
>>391

湖畔公園が特別好きだってこともないのだが、
ヒマな日に散歩に来るならここは都合がいい。

         ザッ
              ザッ

「?」

「お〜〜〜い・・・」

何してるのかな、と聞こうとしたけど、
そんなの必要ないくらいその少女は雄弁だった。

だから余計に興味がわいた。

         「にゃは」

「『待ちぼうけ』の歌って聴いたことある?
 まあ、ここに切り株はないわけだけど……
 止まってていい方向になるとは思えないよね。
 『探す』なら『脚』! ってのはもう終わった後〜?」

雪国のような服装の、金髪の女はそう捲し立てた。
猫のような顔は笑み一色で、寒さに僅かに朱が差していた。

「まだなら一緒にどう? アタシもUMAに興味あるよ」

             「キミと遊ぶのにもね。にゃは」

393夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2018/02/11(日) 19:39:44
>>392

「おっ」

「おっ、おっ?」

「――見つけた!!」

双眼鏡を構えたまま立ち上がり、声が聞こえた方向へ歩き出す。
進行方向には、たった今この場に現れた金髪の女の姿がある。
そのまま歩みを止めずに、前進を続けていく。

「長年に渡る調査の結果、ついに我々は謎に包まれた『星見UMA』と遭遇を果たしました!!
 ふむふむ、腕が二本で足が二本、頭があって胴体があって、まるでニンゲンみたいな……。
  
        ――ん?」

ぴたりと動きを止めると、ゆっくりと双眼鏡を下ろし、肉眼で相手の姿を確認する。
そして先程までとは一転して沈黙し、双眼鏡から手を離す。
紐で首からぶら下がっている双眼鏡が、胸元で音もなく揺れている。

「――って、おい!それ、人間じゃん!
 つまり、巷で噂の『UMA』の正体は、実は人間だった……!?
 いや、そんな夢のない話じゃ視聴者は納得させられないぞ!!」

今の気持ちを一通り喋ると、この謎の女に改めて向き直る。
謎の生物ではないが、謎の人物ではある。
心の奥にある好奇心がツンツン刺激されるのを感じる。

「そうだ!捜査の基本は脚にある!まだ私が駆け出しのデカだった頃、先輩刑事に教わった!!
 えーと、それでなんだっけ?ちょっと待って、のど渇いた」

肩に掛けている小さな鞄から小型のペットボトルを取り出してキャップを開ける。
中身はホットのレモンティーだ。
温かい液体が喉を通り、冷えた身体と渇いた身体を潤す。

「くっはー、ゴゾーロップに染み渡るぜ。
 で――今、ちょっと疲れたから休憩してたの!
 この一週間、ここら辺を歩き回ってるんだから」

「ところで誰だっけ?どっかで会ったことがあるような、ないような……。
 いや、やっぱりない?」

394七海 フランチェスカ『アクトレス』:2018/02/12(月) 00:43:28
>>393

「…………ウケる!」

女は破顔した。

          ニィ

「デジャヴってやつじゃあないかな?
 それとも、前世からの縁があるのかも。
 きっとキミは魔法の国のお姫様だったんだ。
 アタシはしがない吟遊詩人。身分違いの恋に苦しむ!」

            「キャー」

大袈裟な身振りで、羊のような手袋で顔を隠す。
すぐに手を下すと、ふざけた笑みを浮かべていた。

言葉にはからかうような響きがあったが、
どこまでが真剣で、どこまでが冗談なのか。

初対面ではあった。
だが、特に遠慮する気はなかった。

「あっそうだそうだ!アタシが『星見UMA』で〜
 人間の姿に擬態してるってのはどう?
 前に会った時は、ネコかイヌだったかな……」

両手を顔の横で、爪を構えるようなポーズ。
動物の真似なのだろう。手袋でよく分からないが。

            「なんちゃってね!」

「キミと会うのは初めてだよォ。多分だけどね。
 未知との遭遇って意味では、お互いUMAだよね〜」

そう言うと、木の下まで足を進めて、木肌に背を預けた。

395夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2018/02/12(月) 13:43:04
>>394

「ほうほう――」

「そうか!私は『ジュリエット』だったのか!
 ん?『ジュリエッタ』だっけ?いや、やっぱり『ジュリエット』?
 違うね!私は『アリス』だ!!」

「なるほど!ヘンシンするから見る人によって姿が変わる!
 道理で、あなたによく似た『猫』を見たことがあるわけだ!
 よし、謎は解けた!!ここで一旦CM入ります!」

矢継ぎ早に喋り続け、ようやく言葉を止める。
ノリのいい相手だと、こっちのお喋りにもハリが出る。
ついでに、私が年を取った後のお肌にもハリが出ると更に良し。

「あなたが『UMA』なら私も『UMA』。
 そう!実は私も『UMA』だった!
 何を隠そう、前に会った時は『白ウサギ』だったのだよ!」

さっき見せられたのと同じように、動物か何かのポーズを取る。
両手の爪には、色とりどりのネイルアートが施された長い付け爪が目立つ。
見た感じは、あまりウサギの爪らしくはない。

「はぁ――」

やがて、小さくため息をついて再び木の根元に座り込み、幹にもたれる。
青いレンズ越しの視線は、穏やかな湖面に向けられた。
水上をぷかぷかと漂う一本の小枝を、静かに見つめる。

「本当はいないのかなぁ、『星見UMA』」

「探しても、それっぽいの見当たらないし」

「ガセネタ掴まされちゃったかな」

今までの勢いとは打って変わって、ぽつりぽつりと呟くように語る。
その口調には、どこかセンチメンタルな響きがあった。
視線の先で、湖に舞い降りた一羽の小鳥が、小枝に止まる。

「でもさ、もしまだ私の見たことのない変わったものが近くにいるんだったら、すごく見たいって思うんだよね」

「だって、私は『アリス』だから」

396七海 フランチェスカ『アクトレス』:2018/02/12(月) 16:06:15
>>395

「んん〜、そういうことかもね〜」

笑顔だが、淡白な調子だった。

「ね、ね、手、寒くない?
 アタシは超寒いんだけど」

「冬ってフンイキは好きなんだけど、
 この寒さはいつになっても慣れないよね」

それから、彩られた爪に視線を走らせ、
座り込んだそれを追うように、自分もしゃがんだ。

「だからUMAも冬眠してるんじゃない?
 にゃは。チュパカブラとか、ネッシーとか、
 UMAってさァ、『変温動物』感半端ないじゃん」

それから白い息を吐いて、なんとなく小鳥を見た。

「それに、UMAである事がアイデンティティだろうし〜」

         「人前に出てくる事ってないのかもネ」

  クス

悪戯な笑みを浮かべて、
それから夢見ヶ崎に向き直る。

「でも、UMAは『不思議の国』のオバケとは違う。
 ネ。『未確認生物』だから。モンスターじゃないでしょ?
 今も毎年1万くらい、新しい生き物が見つかってるんだし」

「星見UMAってあだ名だったやつも、いつか見つかるカモね。
 それを見つけるのは〜、目の前のキミだ! ……なんちゃってね!」

なんちゃって。ともう一度付け加えたが、その声色に茶化す風はあまりなかった。
冗談の色は有ったので、まるきり真剣に『新発見』にこだわってもいないのだろうけど。

397夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2018/02/12(月) 20:13:59
>>396

「寒くないわけがない!でも私は手袋をしない!なぜなら爪が隠れるから!
 それが私にとっては寒さよりも重要!だから、私は寒さを我慢する代わりにポリシーを選ぶ!」

「でも風邪は引きたくないから、寒さ対策はしてるけど。
 ホラ、コレ。ポケットにカイロ入れてるから、時々手を入れておけばあったまれる」

そう言いながら、両方のポケットからカイロを取り出して見せる。
すぐにそれをポケットに戻し、同時に両手をポケットに突っ込んだ。
やはり寒かったらしい。

「わかるわかる。私も冬が似合う女って、よく言われるし。頭の中で」

小鳥は、ごく普通の姿をしていた。
変わった色をしているとか、変わった形をしているということはない。
よくある光景だ。

「そっかそっか、そうカモ。あ、あれってカモ?
 なわけねーか」

調子を取り戻した様子で、うんうんと頷きながら、小鳥を指差して適当なことを言う。
その時、木の上で小さな音がしたのが聞こえたかもしれない。
何か小さな動物が枝を揺らしたような音。

398七海 フランチェスカ『アクトレス』:2018/02/12(月) 22:57:58
>>397

「う〜ん、確かに凝ってるネイルだもんね。
 冬だからって隠すのはもったいないかァ、
 毛皮が無くて寒がる権利があるのが人間だもの」

       「にゃは」

              ガサ
                   ガサ

「どれどれ、アタシ鳥博士だから。
 あれは……『サンダーバード』の雛!
 北米のUMAで〜、雷を起こすんだって」

「って、UMAの話はもういいや。
 スズメも過大評価されちゃ困っちゃうよね〜」

           「いやオジロだったかな」

腕を伸ばし、カメラのよう手窓を除き込む。
品評もどこ吹く風、小鳥は小枝の上を歩く。

「鳥は良いよねェ、羽毛あるし。
 それに、空も飛べちゃうでしょ?
 アタシも羽毛布団着て出かけた〜い」

     ズギュン

「ムダな毛が全部羽毛になったらいいのにね〜」

            「冬限定!」

背中から浮き上がるように、『天使』の像が発現する。
それ――『アクトレス』はそのまま木の上へと視線と、腕を伸ばす。

399夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2018/02/13(火) 00:27:41
>>398

    コツッ

「――あたっ」

不意に、頭上から何かが落下し、軽い音を立てて頭に当たった。
地面に落ちたのは、何の変哲もない松ぼっくりだった。
何の気なしにそれに視線を向け、手を伸ばして拾い上げる。
ゆえに、『アクトレス』の発現には気付かなかった。
『天使』の像が、木上に腕を伸ばす。

    ガサリ

枝の揺れる音と共に、何かが飛んだ。
哺乳類だ。
毛むくじゃらの小さな生き物。
接近する『アクトレス』の腕から逃れて、少し離れた地面に着地する。
『アクトレス』が見えていたわけではなく、たまたまジャンプするタイミングが合っていたということらしい。

    キョロ キョロ

それは一言で言えば小型の『猿』だった。
世界で二番目に小さい猿である『ピグミーマーモセット』だ。
最近ではペットとして飼育もされている。
とはいえ、あまり一般的ではないし、自然公園で見かける生き物でもないだろう。
『UMA』ではないが、UMAと誤認された可能性はあるかもしれない。

「――へえ……」

顔を上げると、ようやく『アクトレス』に気付き、そちらを見る。
サングラスの奥の瞳が、好奇心の光できらりと輝く。
初めて目にするスタンド――これは、ある意味UMAと同じくらい珍しいものではなかろうか?

「……ジャングルの奥地に潜入した我々は……危険と隣り合わせの冒険の末に……
 人類史上初めて……幻の『星見UMA』と対面を果たすことに成功しました……!!」

続いてピグミーマーモセットに視線を移し、相手を刺激しないように小声で感想を述べる。
だったら最初から喋らなければいいんじゃないかという考えは念頭になかった。
地面に降りたピグミーマーモセットは、その場から動かず、フランの方に注意を向けている。

400七海 フランチェスカ『アクトレス』:2018/02/13(火) 01:32:29
>>399

「この……『小さいサル』!
 図鑑かテレビで見たような気がする。
 なるほどね、これが『星見UMA』の正体」

囁くような声で笑っていた。

逃げ出したペットか、
捨てられてしまったのか。

「んん〜、見てみてこの顔。
 この爪で引っ掻かれれば、
 われわれの喉笛は紙切れ同然!」

「あわや放送事故! 我々に明日はあるのか!?」

そしてこの場で真に『未確認』なのは誰なのか。

             ガサ  ガサ

少しずつ動く『ピグミーマーモセット』を視線で追う。

「なんちゃってね〜」

「この手のお話のオチはやっぱり、鉄板ってことで〜
 『逃げられてしまったがこれからも追跡を続けます』?」

      「それとも今回で最終回にしちゃう〜?」

――『アクトレス』はフランの背後に立っている。
その白磁は『彫像』や『マネキン』にも似ていて、
この止まらない女の様子とは離れたものだった。

401夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2018/02/13(火) 17:14:12
>>400

「こういうのって何て言うんだっけ?えーと、あれだあれ。
 そうそう――『天使』ってやつ。
 今、あなたの後ろに立っているのを見た、私の感想」

『天使のような彫像』と気まぐれな猫のような雰囲気の女。
一見するとメージが近いようには思えない。
スタンドというのは精神の才能だと、自分は聞いている。
彼女からこれが出てきたということに興味を引かれる。
彼女とスタンドの繋がりはどこにあるのだろうかと思えるから。

「それと、これ何だっけなぁ?サル?
 あぁ、それそれ。サルってこんな見た目してるんだった」

納得したように、ポンと手を叩く。
これまで目の見えない生活を送ってきた身。
見たものの名前と外見が頭の中で一致しにくいということが、未だによくある。

「へっへっへ、こりゃあツイてるな。
 こいつの毛皮は、いい値で売れるんだぜ。
 今夜は久しぶりに上等の酒にありつけそうだ」

密猟者か何かになりきって、冗談交じりに低い声を作りながら、自身の背後にスタンドを発現させる。
『医療従事者』のような雰囲気を持つ盲目の人型スタンド――『ドクター・ブラインド』。
本体との外見上の共通点は、あまり見られない。
共通している部分と言えば、爪くらいだ。
しかし、装飾用である本体の爪とは違い、スタンドの爪はメスのような形状であり、『実用向き』だ。

『 L 』 『 I 』 『 G 』 『 H 』 『 T 』

……何か喋っている。
だが、その口調は機械的で、言葉を発しているからといって独自の自我があるわけではない。
しいていうなら、本体自身の心の代弁なのだろう。

「ふっふー、せっかく珍しい動物と出会えたんだし、ここでお別れするのは惜しいなぁ。
 それに、飼われてたのがいきなり自然で生きていけるとも思えないし」

毛皮に埋もれていて見えにくかったが、小猿は首輪をしているようだ。
フランの考え通りだということだろう。
そして、明日美は自分の手の中にある松ぼっくりを、『ドクター・ブラインド』に渡した。

「ニンゲンの都合で連れて来られたんなら、最後までニンゲンが責任もつってことで。
 とりあえず保護しよっかなぁって私は思ってる」

「注意を引くから、その間にカクホしてもらえないかなぁ。
 私が捕まえたいのはヤマヤマなんだけど、私のは爪が『コレ』だし。
 うっかりして傷つけちゃうかもしれないから」

402七海 フランチェスカ『アクトレス』:2018/02/13(火) 18:33:43
>>401

           アクトレス
「わぁお! キミも天使様が見えるんだね〜。
 そういう人がそこそこいるってことは知ってる」

「でも、このサルよりは珍しくないでしょ!」

             ヒュン

「確かにサルって感じの野性味はない。
 けど、一番近い動物はな〜〜〜にって、
 街頭アンケートしたらきっと『サル』だよォ」

『アクトレス』に明確な『顔立ち』は無いが、
その視線は『ドクター・ブラインド』を一瞥し、
すぐにピグミーマーモセットの方へと向いた。

天使は語らない――――フランチェスカとは『対照』だ。

     キキッ

冗談に反応でもしたのか、野性的なカンなのか。
小さく鳴いた小さすぎる猿を、相貌が捉えている。

「そだね〜、やれやれ! 結局一番恐ろしいのは、
 UMAなんかじゃなくて人間のエゴなのだ! ってね」

       「にゃは」

「そういうオチはイマドキ陳腐だけど、
 エゴは悪い事ばかりじゃないからね〜
 保護しちゃおう。アタシはそれが良いと思うんだ」

                  パチッ

ウィンクを飛ばし、スタンドをしゃがみ込ませた。
草や土を動かし、勘づかれるようなことが無いように。静かに。

403夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2018/02/13(火) 21:41:08
>>402

「よし、それじゃ――」

そう言いかけて、ふと湖の方を見やる。
相変わらず、水面には小枝が浮かんでいて、その上に小鳥もとまり続けている。
何も変化はない。

(?今、なんか『音』がしたような……?ま、いっか)

「――じゃ、マンジョウイッチってことで」

松ぼっくりを持たせた『ドクター・ブラインド』を移動させる。
移動先は、ピグミーマーモセットの後方。
そこからピグミーちゃんの足元に向かって、恋人にフェザータッチするみたいに優しい手つきで、松ぼっくりを軽く転がす。

                コロロロロ……

          「 ? 」

結論から言うと、ピグミーマーモセットは、それに興味を持ったらしい。
小さく首を傾けて、一瞬そちらに注意を向けた。
必然的に、松ぼっくり以外のものに対する注意は削がれることになるだろう。
その間に、向こうの『天使』がアクションを起こしてくれたらいいなという考えだ。
もちろん、任せきりにするつもりはなく、もし逃げられそうになった場合は『ドクター・ブラインド』も突っ込む気でいるが。

404七海 フランチェスカ『アクトレス』:2018/02/13(火) 23:15:07
>>403

             ス

『ピグミーマーモセット』・・・体重は成体で『100g』。

      『トン』

『アクトレス』の指先が、繊細にその背に触れる。
能力は重量の減少。その結果は――『浮遊』。
1秒間に『1000g』を奪い去る天使の指先は、
問答無用で、逃げる隙もなくその身を空へ誘う。

「小さくてすばしっこいとさ〜、力加減が難しーよね。
 だからこうする。『天使様』の能力……」

           「詳しくは企業秘密だけど、ネ」

浮き上がったその身体であれば、
逃げようと走り回るそれよりも、
ずっと簡単に手の平で覆える。

『アクトレス』から受け取ったりとか、
そういううかつな真似はしない。離さない。

軽量化は――――あくまで一旦だが、解除しておく。

「このコ、どうする〜?
 網とかカゴとかあればいいけど、
 キミが持ってる『ハコ』って水筒くらい」

浮ついた笑みを浮かべて、
不安げに身じろぎする子猿を見た。

「それじゃ、家に帰るまでに紅茶味になっちゃうよね」

                     「にゃは」

405夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2018/02/14(水) 15:03:47
>>404

「ほうほう――」

眼前で行われる『天使』の技を興味深そうに観察する。
浮かばせる能力――そう考えれば『天使』というのも納得できる。
いつかは、その全貌も見てみたい。

「お見事!さすがはアスミくんだ。ん?アスミって誰だよ!
 そう、それが私の名前だ!覚えておいてくれたまえ」

捕まったピグミーマーモセットは、最初の内はもがいていた。
しかし、単純な方法では抜け出せそうにないと分かると、動きを止めて大人しくなった。
ひょっとすると、隙を窺うつもりなのかもしれない。

「――お?」

地面に手を伸ばし、小さな小猿よりももっと小さな首輪を拾い上げる。
ピグミーマーモセットが暴れた時に外れて落ちたらしい。
裏側を見ると、電話番号が書いてあった。

「ふっふっふっ、『小猿の紅茶煮ハニーマスタードソース・シャンピニオン添え』。
 よし、今夜のメニューはこれで決まりだ」

アクトレスに捕まったピグミーマーモセットを見て、あまり笑えない冗談を飛ばす。
言葉が分かるはずはないが、不穏な気配を悟ったのか、小猿は身を竦ませて震えている。
ちょっと脅かしすぎたみたい。
『ジチョー』しよう。
ところで、『ジチョー』ってなんだっけ?

「とりあえず、この中に入れとこう。
 あと、首輪の裏に電話番号が書いてあったから、ちょっと掛けてみる。
 あとは頼んだ!」

そう言って肩に掛けていた鞄を外し、口を開けて『アクトレス』の足元に置いた。
自分はスマホで電話を掛け始める。
そして、通話はすぐに繋がった。

「あ、もしもし???」

406七海 フランチェスカ『アクトレス』:2018/02/14(水) 19:39:54
>>405

「アタシはフランだよ〜。
 フランダースの犬のフラン。
 フランスパンのフランでもいいけど」

               ボフッ

天使の手がカバンの中に小猿を運ぶ。
隙を見ているのかもしれないが――
本体の手ですぐにチャックを閉めてしまう。

とはいえ、密封するのもどうかと思うし、
スタンドの手はカバンの中に入れたまま。

「にゃは、それじゃお願いしようかな〜
 捨てたんならこっちのものだし、
 涙ながらに生き別れってことなら、
 感動の再会を演出出来ちゃうかもね」

      グイ

「サルくんはもうちょっと大人しくしてて。
 動けば動くほどおいしそうに見えちゃうからさ・・・」

               ニヤ

しっかり捕まえて――――逃がさない。

電話にも耳を傾ける。
べつに、ある程度『どうなってもいい』けど、
いい方向に変わるならそれが一番良いことだ。

      プルルルルル
 
             『―――――もしもし?』

(※通話先の設定など決まってるようでしたら、
   そちらのロールもお任せしたいと思っています)

407<削除>:<削除>
<削除>

408夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2018/02/14(水) 20:29:48
>>406

「ふむふむ、覚えたぞ。
 フラミンゴのフランでもいい?って、それだと『フラン』にならないじゃん!
 フランケンシュタインのフラン。よし、これなら『フラン』になるぞ!
 よろしく、フランちゃん!」

通話が繋がるまでの間に、相変わらずの冗談を口走る。
視界の端でピグミーマーモセットの確保を確認し、話し始めた。

「あのー、公園で『サル』拾ったんですけどー。お宅の?」

    ピッ

スピーカーのスイッチを入れる。
これで会話の内容はフランにも聞こえることになる。

『――えっ!!それってピンクの首輪付けてるピグミーマーモセットですか!?』

声は若い女だった。
どうやら飼い主のようだ。

「ピグ……?まぁ、たぶん。じゃなきゃ電話掛けられないでしょ」

『あああああ!!今どこですか?自然公園?すぐ行きます!!!』

そこで電話は切れた。
あの様子だと、捨てられたわけではないらしい。

    ピッ

通話終了ボタンを押して、フランに向き直る。

「……ってことで、すぐ来るんだってさ、フランちゃん。
 チッ、これで今夜も、いつもの安酒をチビチビやることになっちまったぜー」

ふざけた感じの口調だった。
でも、顔は笑っていて、どこか嬉しそうだった。

409七海 フランチェスカ『アクトレス』:2018/02/15(木) 00:24:46
>>408

「――べつにフランさんでも、
 フラン様でも、フランでも、
 呼び方は何でもいいけどね〜」

「これにて『一件落着』! かな?
 お礼をたんまり貰えるかも!
 今夜はそれでパーティナイト!
 にゃは、それってまさに『皮算用』だし……
 『笑顔が報酬』なんてセリフも悪くないよね」

嬉し気なのは同じだった。
あるいは楽し気か、どちらでもいい。

明るさに違いがあっても、共有できるのは同じだ。

             クル

「そろそろ行こうと思ってたけど、
 すぐ来るなら待っておくのが人情ってやつだね」

             「どんなヒトが来るかな」

    「いない人のうわさ話なんて悪趣味か!」

その場でくるりとターンして、
待ち人に想像を巡らせる。

答え合わせがされるまでは――――ここにいよう。
この時間は楽しいものだし、もう少しは止まっていてもいい。

410夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2018/02/15(木) 17:49:17
>>409

「ウワサ話ってのは人がいないところでするもんだぜ!」

「だから、問題ナシ!」

       ――数分後――

「――おおおおおおおお!!!」

彼方から、一人の若い女がやって来た。
物凄い勢いで、こっちに向かって走ってくる。
特徴を一言で言うと、『ピンク』だった。
頭の先からつま先まで全身が『ピンク』という乙女チックを突き詰めたようなファッション。
まじりっけなし『ピンク率100%』のいでたちは、ある意味『UMA的』だった。

「『キウイ』ちゃぁぁぁぁぁん!!!」

         モゾ

その声に反応して、ピグミーマーモセットが鞄の隙間から這い出てきた。
怯えているという感じではなかった。
そのままトコトコとピンクの女に近寄っていき、肩に飛び乗った。

「はッ!あなた達が『キウイちゃん』を見つけてくれた人達ねッ!
 突然いなくなっちゃって、ずっと探してたの!
 どうもありがとうありがとうありがとう!」

ピンク女は片手にケージを下げていた。
ピグミーマーモセットの『キウイ』は、自分からその中へ入っていく。
これで事件は解決だろう。

「はッ!お礼をしなくてはッ!そうだッ!
 これを差し上げるわッ!」

ピンク女は、目にも留まらぬ速さでチケットを二枚差出し、手渡してきた。
最近話題になっている高級スイーツショップのケーキバイキング無料招待券だ。
パーティーナイトとまではいかなくとも、ティーパーティーはできるかもしれない。

「んじゃ、遠慮なく。さて、帰るかぁ。
 ん?そういえば、私なにしにここに来てたんだっけ?
 食材の調達ゲホゲホいや何でもないなんでもない」

「――フランちゃんさぁ、今度これ一緒に行かない?
 店の商品全部食べつくそうぜ!」

帰りながら、チケットを見せつつフランに声を掛ける。
ついでに、今まで出しっぱなしだった『ドクター・ブラインド』を解除する。
その時、何か忘れているような気がしたが、そのまま忘れた。

     ――ある日の自然公園で起こった、特に大きくもない些細な小事件は、こうして終幕を迎える……。

411夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2018/02/17(土) 16:41:46
>>410

                ゴポッ

三人が立ち去ってから少しして、湖の表面が俄かに波打った。
小枝が揺れ、その上で羽を休めていたオジロが、慌てたように空へ飛び立つ。
やがて、何か大きな影のようなものが、水面近くまで浮かび上がってくる。

      ザ バ ァ ッ

そして――水を掻き分けるようにして、水中から何かが現れた。
それが生物なのか、それとも単なる漂着物なのか。
確かなことは、その正体は誰にも分からないということだけだ。

ある日の静かな湖畔で起きた、ささやかな小事件。
その最後を、この言葉で締めくくろう。

『今回は逃げられてしまったが、我々は今後も追跡を続行する』――と!!!


          『 星見UMAを探そう 』 → 完

412霞森 水晶『Q-TIP』:2018/03/07(水) 23:59:01

昔古い知り合いに『自然が好きなんでしょ』と言われたが、
それは肯定でもあり、否定でもある。まあ自然は好きだけど、
この時間の自然公園は――なんというか、食傷を感じるから。

            カァーーー

                 カァーーー

「帰るのはカラスが鳴いたらだっけ。
 カエルだっけか。そっちのが語呂いいし
 まー、カエルじゃこの時期帰れねーわね」

   チチチ

「鳴かなきゃ帰れねーってわけじゃねえけどさ。
 冗談みたいなもんよ。いや、ユーモアって感じ?」

      「どっちも大して変わんねーわね、それも」

湖沿いの散歩道を歩いていると、そんなことを想う。
実際、そろそろ帰ってもいいころだ。夜は冷え込むし。

ただまあ別に数分数十分じゃあ大して変わらないし、
例えばこの『燐光を纏う独り言の多い少女』に興味を示した、
特異な奴がいるなら――そいつと話して帰るくらいの時間はある。

413美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/03/13(火) 21:25:29
>>412

やがて、向こう側から一つの人影が近付いて来た。
キャップにスタジャン、ジーンズにスニーカーというアメリカンカジュアルファッションの女だ。
不意に少女の前で立ち止まり、その傍らの燐光を見つめる。

「蛍じゃなさそうね。今の時期じゃないわ」

「それに、蛍じゃ話し相手にはなれないでしょうし」

今この時間、自然公園を散歩しようと思った理由は特になかった。
でも、それも悪いものじゃなさそうだ。
『妖精とお喋りする少女』なんて珍しい場面にお目にかかれるんだから。

414霞森 水晶『Q-TIP』:2018/03/13(火) 21:43:16
>>413

向こう側からくる人影と、三つ四つとすれ違った後の事だった。
自然に立ち止まって、燐光は肩に止まる。止まり木のように。

「蛍相手に独り言してるいてー女かもしれねーわよ。
 ま、妖精と喋ってんのも大概『ファンシー』すぎるか」

               チチチチ

「んで、そういうあんたは話し相手になってくれんの?」

「べつに催促するわけじゃーねえけど」

       チチチ

通行人などそもそも疎らだが、その声を聞いて振り向く者は女以外にはいなかった。
スタンド使いにのみ聞こえる声。直感的にそれが分かる――同じ『使い手』ならば。

415美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/03/13(火) 22:46:48
>>414

「それはそれで珍しいわね。関わりたいかどうかは別として」

「もし相手が幻聴とお話してるような人間なら、黙って通り過ぎるのが普通だと思うわ」

「でも――あなたはそうじゃないみたいね」

妖精を肩に乗せた少女と相対する女の肩には、機械仕掛けの小鳥が止まっていた。
全体的に丸みを帯びた特徴的なフォルム。
『コマドリ』だ。

「たまたま出会った相手だからこそ話せることってあるものね」

「旅の恥は掻き捨てっていうやつよ。お互いに旅って程じゃないでしょうけど」

「それに、あなたの妖精は何だか私のと似てる気がするし」

   ザッ

軽やかに笑いながら、名も知らない少女に歩み寄る。
帽子の下で、ショートボブの茶髪が小さく揺れる。
全体的にボーイッシュな服装の中で、唇に塗られた艶やかなルージュが女らしさを際立たせている。

416霞森 水晶『Q-TIP』:2018/03/13(火) 23:08:57
>>415

「すすんでオカシな奴だと思われたかねーからね。
 声が聴こえんのは、『分かる奴』だけにしてんですのよ」

「そーいうやつと喋んのは、結構悪くねー」

統計とかを取ってるわけでもないし、そんな趣味もないが、
スタンド使いと呼ばれる人間には面白い者が多い気がする。

「あ? 鳥? まー、似てなくもないけど。
 スズメ……じゃなくて、コマドリか。
 別に鳥に詳しいってわけでもねーけどさ」

            チチチ

アオスジアゲハのようなリボンと、カラスアゲハ風のポンチョが風に揺れる。
それに挟まれ微動だにしない、切り揃えた黒い前髪、鋭い目つき、化粧っけの薄い顔。

「それで、何の話をするってーのよ。
 夕食の献立? シゴトの愚痴? それとも、
 昨日見た夢の話? なんでもいいんだけど」

歩み寄る女に対し、自然に少しだけ退がるが、距離は元より近い。

「あんたには『話したい事』がある、そーいう言い方よね」

たまたま出会った相手、旅の恥。
話し相手を求めているのはまあ自分もなのだが、
相手もそうなのかもしれない――そう思ったのだ。

417美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/03/13(火) 23:59:16
>>416

「まあ、あなたのと違ってお話してくれるわけじゃないけどね」

「お喋りするのは私の方だから」

年の頃は24、5歳程度だろうか。
年齢もあるだろうが、少女とは対照的にメイクは入念だ。
目元にはアイシャドウが引かれ、頬にはチークも塗られている。
ただ、水商売という雰囲気でもない。
そのことは、極めてラフな印象のファッションが証明している。

「いいわね、そういうの。
 献立っていうのも地味だし、いきなり愚痴なんて聞かされても困るでしょ。
 今日のトークテーマは『最近見た夢』なんてどうかしら」

「私が見た最近見た夢は――『アイドル』になってる夢かな。
 ステージの上で歌って踊って人気者って感じ」

なんでもないような口調で、そんなことを話す。
実際、これは単なる夢の話だ。

             リアル
しかし、十年近く前は現実だった。
本当にアイドルとして活動していたし、結構な人気もあった。
しかし、それにサヨナラした今となっては夢でしかない。

世間からは完全に忘れ去られ、その筋のマニアでもなければ知る者はいない。
それに対しては色々と想いはあったが、今は今の自分に納得している。

「まあ、夢の中なんだし、なんでもアリよね」

そう言うと、足元の小石を拾って水面に向けて投じる。
小石は五回ほど水面を跳ねた後で、水中に沈んでいった。
その光景に、なんとなく過去の自分自身が重なって見えた気がした。

418霞森 水晶『Q-TIP』:2018/03/14(水) 00:47:31
>>417

   チチチ

「静かでいいじゃねーの。
 うるさいのが嫌、って訳じゃないけど」

      チチチチ

霞森の顔は年齢を読ませない。
10代には思えるが、若い輝きには無縁で、
枯れた印象があった。老けてるわけではないが。         

「夢? ま、初対面だものね。
 身の上話なんかよりは、
 ずっと親しみやすい話題だわ」

       チチチ

なんでもいいとは言ったが、
面白い話題であればより良い。
他人の夢の話はつまらないなんて言うが、
そういう捉えどころのない話は嫌いじゃない。

「ふーん、あたしにはわからねー世界だけど、
 なりたがるヤツが多いってのは理解出来るわ。
 文字通り『夢見る舞台』ってェーところかしらね」

水面を跳ねる石を目で追ったが、
沈むのを見届けて顔を上げた。

「ああ、あたしも夢で歌手になってた事があるわね」
 
     チチチ

      「あたしは、夢見てるってわけじゃねーけど。 
       まー、その辺はまさに何でもアリってとこか」

軽い口調だった。霞森は確かにそこにあった現実を知らない。

419美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/03/14(水) 01:13:07
>>418

「そんなところね。まあ、どこかしらに繋がりみたいなものはあるのかもしれないけど」

「夢っていうのは本人の無意識が関わっているって言うじゃない」

少女と同じように何気ない調子で言葉を返す。
自分の場合は、過去の栄光を忘れきれないからだろう。
だから、時々そういう夢を見ているのだ。
今までも、そしてこれからも。
その辺りは自分でも受け入れている。

「ところで――その子が何て言ってるのか聞きたいわ」

ちらりと燐光に視線を向ける。
少女が何か言うたびに話しているように見えた。
それが気にならないと言えばウソになるだろう。

「妖精は一体どんな話をしてくれるのかしらね?」

自分がやってるラジオ番組のトークのネタになるかもしれない。
もっとも、妖精とお話したなんて話は使えないけど。
ただ、全く使えないってわけでもない。
ちょっとだけ置き換えればいいんだから。
たとえば、従兄弟の子供と話したとか。

420霞森 水晶『Q-TIP』:2018/03/14(水) 01:48:17
>>419

「こいつが? 最近よくそれを頼まれるわ。
 別に大しておもしれ―ことは言ってねえけど、
 ま、妖精みたいなのが喋ってんのは面白いか」

            チチチ

「ちなみにこいつは『Q-TIP』。
 そう呼んでやると良いわ。
 こいつは私にそう名乗ってるし、
 今名前を教えろって頼まれたから」

「本当はあんたにも聞こえるように喋れるけど、
 なんつーか人見知り? ってやつらしいのよね」

羽音を鳴らす燐光を見ていると、
その中にいる『妖精』と目が合った。

       チチチ

なにか『思考が波立つ』ような感覚がある。
それが、具体性を帯びる事はないのだが。

「あんたの鳥は――って、
 名乗ったりはしないのか。
 でも名前はあるんでしょ?
 何にだって名前はあるんだから」

  チチチ

「ああ、『Q-TIP』もそいつの事を知りたがってるわ。
 好奇心がつえーのよ。『名前が知りたい』って言ってる」

421美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/03/14(水) 02:08:02
>>420

「『Q-TIP』――洒落た名前じゃない。よろしくね」

ふと奇妙な感覚を覚え、頭の中に疑問が浮かぶ。
しかし、それが何なのかは分からない。
目の前の妖精――『Q-TIP』に原因があることは間違いないのだが。
けれど、敵意がありそうな様子でもない。
だから今は気にしないことにした。

「この子の名前は『プラン9・チャンネル7』。
 まあ、好きなように呼んでもらっていいわ。 
 『プラン9』でも『チャンネル7』でもね」

『小鳥』は微動だにしない。
囀ることもなく、ただ肩に止まり続けている。
『Q-TIP』とは対照的だ。

「――そして、私の名前は美作くるみ。
 『ラジオDJ』やってるの」

「せっかくだから、これを渡しておくわ。
 番組の宣伝も兼ねてね」

差し出されたのは一枚の名刺だ。
所属する放送局や担当する番組について記されている。
番組名の下に、今さっき告げた名前が併記してあった。

422霞森 水晶『Q-TIP』:2018/03/14(水) 02:31:34
>>421
       チチチ

「『こちらこそよろしく』ってさ」

「ま、あんま似合わねーんだけどね。
 そんなロマンチックなもんでもねーし」

     チチチ

「って言うと、あたしの名前をこいつは茶化すの。
 ちょうど良いから自己紹介を返しとくけど、
 あたしの名前は『霞森 水晶(かすみもり すいしょう)』」

茶化し合える仲、だなんて美化する気はないけど。
まあ悪い仲じゃあない。打算が無い関係じゃないが、
なんだかんだ行動を共にしている――『悪友』なのだ。

「ラジオ? へえ、夢とそう離れちゃいねーのね。
 あんたが言った通り『繋がり』はあるってことか」
 
   ス

「これで『ミマサカ』って読むのね。
 覚えやすくていいわ、良い名前」

「電波がわりーとこに住んでるんで、
 聴けるかどうかはわかんねーけどさ。
 なんかの縁だしこれは無くさないようにしとくわ」

名刺を懐に入れ、薄い表情で笑った。
ポンチョが捲れた時、その中に燐光が3、4、と見えた。
黒い布地に輝くそれらは星空のようでもあったけれど、
日が沈み、覗きつつある夜空に比べれば歪な輝きだった。

423美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/03/14(水) 03:05:46
>>422

「へえ、水晶なんて洒落てるじゃない。イケてる名前だと思うわ」

そのまま芸名としても使えそう。
なんてことを、ふと思った。
まあ、彼女はアイドルなんて興味はなさそうだけど。

「毎回テーマを決めてリスナーからのメッセージを募集してるの。
 この町のニュースとかイベント情報なんかも取り上げてるわ。
 それから、私のフリートークとかゲストと喋ったりね」

「新旧洋邦問わず曲のリクエストも受け付けてるから、もし聴けたらヨロシク頼むわ」

少女の薄い笑いに対し、こちらは軽やかに笑い返す。
その時、夜空の星のように輝く燐光が目に入った。
おもむろに空を見上げ、やや目を細める。

「暗くなってきたわね」

「名残惜しいけど、そろそろお暇することにするわ。夜道での女の一人歩きは物騒だっていうし」

「それじゃあね、水晶さん。それから『Q-TIP』も」

肩に止まっていた『小鳥』のヴィジョンが消える。
そして、ゆっくりと歩き始め、その場を離れていく。

(そう離れちゃいない、か)

(今の私だって、そう捨てたもんでもないわよね)

少女の発した言葉を思い出し、立ち去りながら人知れず小さく笑った。

424霞森 水晶『Q-TIP』:2018/03/14(水) 03:47:08
>>423

    チチチチ

「そう? そりゃ嬉しいわね。
 つけた親に感謝ってやつだわ。
 ま、そ―いう柄でもないんだけどさ」

「たまには柄じゃない事をするのもアリか。
 ラジオ聴いてみるってのもね。
 気が向いて、電波が通りゃだけど」

          チチチ
  
         「ああ、もう夜か。
           あたしも帰らねーと」

空を見上げるでもなく、そう呟いて、踵を返した。

「今時夜でも明るいけどさ、
 この辺は電灯も少ねーものね」

         「――――んじゃ」

燐光は消えないまま、自然公園の奥へと遠ざかっていく。

425霞森 水晶『Q-TIP』:2018/03/14(水) 03:47:40
>>424(目欄忘れ)

426小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/06/02(土) 22:00:46

ふとした瞬間、胸の奥がざわめき出すことがある。
そんな時は、庭で育てているラベンダーの香りが気持ちを落ち着けてくれる。
それでも治まらない時は、こうして森を散歩することにしている。

自然の中を歩いている内に、少しずつ心に穏やかさが戻ってきてくれる。
でも、時にはそれでも足りないこともある。
心に芽生えた思いは次第に強くなり、いずれは私の心を完全に埋め尽くす程に大きくなってしまう。

  「――……」

そんな時、私は自分の身体に傷をつける。
そうすれば、この気持ちを抑えられるから。
喪服の袖を捲り上げて露になった腕に、いつも持ち歩いている果物ナイフの刃を押し当てる。

  「……ッ……!」

おもむろに刃を引くと、裂けた肌から一筋の血が流れる。
肌を伝って滴り落ちる赤い雫が、この乱れた心を静めてくれる。
ゆっくりと深呼吸すると、徐々に気持ちが落ち着いてくる。

  「――あっ……」

ぼんやりしていたせいで指先が滑り、思わずナイフを取り落としてしまった。
血は、まだ流れ続けている。
いつもより、少し深く切りすぎてしまったのかもしれない。

   ――止血……しないと……。

半ば夢見るような曖昧な意識の中で、どうにかそのことを思い出す。
木の根元には、バッグが置いてあった。
その中に入れてある包帯を取り出そうと、緩慢な動作で身体の向きを変え、ゆるゆると腕を伸ばす。

427杉夜 京氏『DED』:2018/06/03(日) 19:28:16
>>426

 ――だりぃ

日勤 日勤 日勤 日勤 夜勤 夜勤 

……そのローテーションの繰り返しだ。好きでもねぇ仕事を
繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して、んでもって
気のきかねぇ年下の上司が鬼の首をとったように、人のミスを
延々と言い続ける毎日。

 ガリガリガリ……。

頭を掻きむしりつつ歩く。休む暇なく動いてる所為か、熱っぽい脳と
痛む目頭、万力をゆっくり押し付けられたかのような米神。

 (……苛々するなぁ、全部ぶっ壊せれば良いんだがなぁ)

目に付く木々をぶっ倒す事が出来る力は手に入れた。だが、へし折った
ところで俺の中に何か残るのだろう?
 気に食わないバイトの上を殴り殺す事はできる。だが、それをした
所で俺の人生の先がクソである事実は変わらないし、変えれない。

 「……んぁ?」

ふと、緩慢に地面を見つめながら歩き。何気なく顔を上げる。
 目に見えるのは……果物ナイフを持つ女、肌から流れた血……。

「何やってんだ、あんた……」

 思わず声をかけたが、直ぐに後悔も湧いてきた。
どうみたって、正気の行動とは思えねぇ。見た瞬間に背を向けて別の
道へと何事もなく向かったほうが良かったとも思えて来た。

428小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/06/03(日) 20:46:30
>>427

――木々の中に立っていたのは、黒い女だった。
洋装の喪服を身につけ、つばの広い黒の帽子を被っている。
声を掛けられたことに気付いていないのか、自傷を行った直後の状態のまま佇んでいる。


不意に、遠くの方で誰かの声が聞こえたような気がした。
しかし、少しの間、声を掛けられたことには気付かなかった。
やがて、意識が少しずつ明確になる。
緩やかに、視線が声の方を向いた。
先程の声が自分に対して向けられたものであることを理解し、軽く目を伏せる。

  「――いえ……」

投げ掛けられた言葉が、自分の行為に対するものであることは分かった
ただ、突然のことで、何を言えばいいのかが分からなかった。
その結果、口をついて出たのは、これといった意味のない言葉だった。

  「何でも……ありません……」

何かを言うべきなのだろうか。
そう思っていても、相応しい言葉が見つからず、か細い声で呟くように言う。
そして、地面に腕を伸ばして、今しがた落とした果物ナイフを拾い上げた。

自傷の止血をするよりも、まず刃物をしまってしまわなくてはいけない。
自分にとって必要なものでも、人前で見せておくようなものではない。
片手に握っていた鞘の中に、果物ナイフの刃を収める。

まだ止血はしていない。
血は流れ続けている。
細く赤い筋が、色の白い腕を伝って滴り落ちている。

429杉夜 京氏『DED』:2018/06/03(日) 22:52:00
>>428

「何でもねぇって、いや……」

あるだろう、と言いかけるが。表立って、そう告げて余計に
話をややこしくするのもどうかと思えた。
 何より、この様子を第三者が見たら。最悪、自分が女性に
何か襲い掛かるような、そんな場面に見えない事もない。
 華奢な女性と、徹夜明けで目の下に隈のある大柄な男なら
どう考えても後者の犯罪者度合いに軍配があがる。

「あぁ……うん、何でもないんならな」

 「…………」

それ以上、どう言葉を紡ぐべきか皆目見当もつかなかった。

「……あんた、何しに此処に来てんの?」

 重苦しい空気に耐えかねて、また結局いらぬ言葉が口から飛び出て来た。

430小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/06/04(月) 19:58:47
>>429

森の中で向かい合う見ず知らずの男女。
お互いの間に、長いようで短い沈黙が流れる。
木々の間を風が通り抜け、枝葉が微かに揺れる音がする。

  「すみません……少し失礼します」

一言言ってからバッグの中に果物ナイフをしまい、代わりに包帯を取り出す。
ついさっき自分で裂いた腕の傷に、慣れた手つきで包帯を巻いていく。
手早く止血を終えて捲っていた袖を下ろし、目の前の男性に向き直る。

  「――私は……『散歩』です……」

  「この場所を歩いていると、気持ちが落ち着くので……」

それは本当だった。
事実、ここに来たのは乱れた心を落ち着かせるためだった。
しかし、今日はそれだけでは足りなかった。
普段と比べて、胸の奥に感じるざわめきが大きかった。
だから、この果物ナイフに――『鎮静剤』に頼らなくてはいけなかった。

  「……あなたは?」

ややあって、自分がされたのと同じ質問を返した。
同時に、男性の纏う雰囲気に意識が向けられる。
何かとても疲れているように見え、自然と表情が心配を含んだものに変わる。

431杉夜 京氏『DED』:2018/06/04(月) 20:19:46
>>430

 「散歩 ……ねぇ。まぁ、この時節は散歩日和、だよな……」

女性が、いやに包帯を巻くのが上手な事など特に気に掛けない事にした。
 所詮、他人だ。俺にとっても、彼女にとって余計な深入りは何も有益にならない。

そして、返された言葉に数秒程、頭に空白が出来た。
 ゆっくりと、何を尋ねられたのか脳に染みこむ。何をしに此処に来たか。

「……あぁ、家に、変える所だな。早く帰らないと」

「お袋が、待ってるんだ。ヘルパーも、俺が帰らないと別の場所に
行けないだろうし、早く帰らないと延滞料金が発生するし
……そうだ、早く帰らないと」

そうだ、俺は家に帰るために歩いているんだ。
 俺の事なんて、もう分からない人のために。
そして、明日も早く仕事に出ないと。稼がないと。
 多分、朝も お袋の奇声染みた声に起こされて、飯を作って。
オムツを、取り換えて。そうだ、その為に……。

「…………」

 俯いた顔をあげる時。目は無意識に果物ナイフに注がれた。

真っ赤な血  それを見ると、狂ったように喚きながら爪を突き立てて
肌が裂かれ、それを抑え込みつつ着替えをする自分の姿が思い起こされる。

 「…………何でだろうなぁ」

「…………はぁ」

 理不尽だと思い続けて来た。最初は怒りだって湧きあがってた筈だ。
下火はあり、何時だって遣る瀬無い苛立ちはある。
 けど、それを誰かや何かにぶつけるのは筋違いであるのも知ってる。

 「…………なぁ」

「腕って切り裂くと、あんたにとって幸せなのか?」

432小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/06/04(月) 21:52:28
>>431

淡々と紡がれる言葉に黙って耳を傾ける。
その内容から、おぼろげに彼の辛さが察せられた。
しかし、何も言わなかった。
安易に慰めを掛けることは失礼に当たると考えたからだ。
その代わり、瞳に映る気遣いの色が、やや濃くなった。

  「――……」

それは、自分にとって非常に難しい質問だった。
すぐに答えることはできず、顔を俯かせて深く考える。
やがて面を上げ、静かに口を開く。

  「いいえ……」

幸せかと言われると、そうではないと思う。
なぜなら、自分が本当にしたいのは、自分の身体を傷つけることではないのだから。
私が心から望んでいるのは、この命を断ち切ってしまうこと。

だけど、私には、それが許されていない。
だから、私は自分の身体に傷をつけている。
甘美な死の誘惑に負けてしまいそうな心を抑えるために。

  「あの……」

  「この近くに……お住まいですか?」

433杉夜 京氏『DED』:2018/06/04(月) 22:26:06
>>432

 「…………あぁ?」

「近く? ん…………あぁ、こっから森を抜けて十五分ほど
歩いて行けば、な。……けど、なんで そんな事聞くんだ?」

「それを聞いて、あんた俺になにかしてくれんのか?
それとも、これ以上 俺になにかしようって事か?」

 ガリガリガリガリ

 苛つきが収まらない。痒む後頭部の辺りを鬱血しそうに
なるほどに爪をたてつつ掻きながら、声色は刺々しくなっていく。

「疲れてんだよ……本当に、疲れてんだ。寝る暇もないぐらい
倉庫の整理やら、書類の抜けの訂正とかしたり。運搬やったりとさ。
 頑張ってんだよ、頑張ってんのに何かミスして。それに延々と無能だの
根性が足りないだの、お前何年この仕事つとめてるんだの……人が下手に
出てりゃ言いたい放題に言いやがって。
 なのに、何だって見ず知らずの奴に俺の事詮索されなくちゃいけないんだ?
俺、そんなに不審人物か? 俺は責められるような奴か?? なぁ???」

 ガリガリガリガリ……ッ  スゥ― ハァ……ッ

 「いや……うん、あんたの事を責めてるわけじゃないんだ。
お、俺は……落ち着いてるんだ、うん」

 瞼が痙攣する。目の裏が赤く点滅する。

434小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/06/04(月) 23:05:08
>>433

叩きつけるような勢いで矢継ぎ早に発せられる言葉の数々。
それを聞いて、ひどく胸が痛んだ。
非難されたことに対してではなく、彼にそんな言葉を言わせてしまったことに対して、
後悔の念が込み上げてくる。

  「……お気を悪くさせてしまったことを謝ります」

  「あなたを不愉快な気持ちにさせてしまい、申し訳ありませんでした……」

  「どうか――お許し下さい」

謝罪の言葉と共に、その場で深々と頭を下げる。

  「――私も……あまり遠くないところに住んでいるのです」

  「先程、帰るところだとおっしゃられていたので……」

  「近くまで……ご一緒できればと……」

  「……ご迷惑でしたでしょうか?」

自分が助けになってあげられるなどと大きなことは言えない。
でも、ほんの少しでも彼の痛みを和らげたいと思っていた。
自分が彼の言葉を聞くことで、僅かでも彼の気が楽になればと考えていた。

それに、彼の体調も気掛かりだった。
彼の疲れようを見ていると、途中で倒れてしまうということも絶対にないとは言えない。
かといって、あまり踏み込みすぎるのは却って気を遣わせてしまう。
だから、家まででなくてもいい。
その近くまででいいから、彼が無事に帰り着くのを見届けたかった。

435杉夜 京氏『DED』:2018/06/04(月) 23:19:22
>>434(切りが良いので、ここら辺で〆たいと思います。
お付き合い有難う御座いました)

 俺は膿みたいだと、喋りながら思う。
圧し潰しても、薄汚れた汚らしいものばかりしか出ない。残るのは
鼻水みたいな色合いと、血が混ざりあった残骸だけだ。

 「いや、いや……気持ちは、有難いけど 結構だ。
あんた、見ず知らずの奴にさ。女だろ? お節介をやくと
絶対に痛い目にあうって。関わらないべきなんだからな」

 軽く手を上げて、どの口が吐くんだと思える言葉を告げる。

 善意だけの発言だとわかるからこそ、自分の存在がいやに
薄汚く、それでいて惨めである事が再三と自覚出来ていた。

 そんな相手を見続けると、否応なしに自分自身が愚図だと言う事が
わかってしまうが為に、遮二無二この場から去りたいと言う感情のみが襲う。

 「あんた……あんたも、自分を傷つけるような真似は止めたほうがいい」

 「じゃ じゃあ……」

 そこまでが限界だった。背を向けて一気に走る
早く帰るんだ。あの、もはや自分自身も、俺もわからない母親の元へ。
 そう言えば、もう二日は便が出てない。浣腸液は買い置きしてただろうか?
支払いも滞っている。暴れた所為で壊れた窓も早く修理しないと

 それから、後は 後は 後は 後は。

……俺は、これから何度 やり残した事と処理を考え続けるんだろう。

振り返って、あの女性が見えなくなった事に安堵しつつ。果物ナイフと
 腕に走る赤い雫が脳裏にこびり付いた。

 「……楽になりたいなぁ」

「何時になったら……楽になれるんだろうなぁ」

436斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2018/06/19(火) 23:18:08
――夏の陽気、じっとりとした湿気が汗ばんだ肌にシャツを貼りつかせ
温い風が通るのを頬に感じられる、雨の匂いは土から乾燥して別れを告げ
蝉の鳴き声はいよいよ持って唸る自販機とタッグを組んで静寂にジャブをかましている。

そして木々の木漏れ日がちらちらと、緑の塗装が剥げかけたベンチに座る首に赤いスカーフを巻いた少年と
隣で丸くなっている赤い首輪を付けた黒猫一匹の顔に降り注いでいた。

「解ってるよクロ『善意』なのはさ、だからこうして散歩にも付き合ってるじゃないか。」

少年の方が渋い顔をしながら何処か尖った口調で喋りながら、公園内を見回している
手首に付けた古めかしい腕時計のゼンマイを巻きながら
――猫の方は……何故か得意げに目を細めているように見える、気がする。

「でも仕方ないだろ?朝起きて顔の傍に『鯉』が有ったら誰だって驚くよ
……魚の『鯉』だぜ?君の頑張りはまさしく『スタ……跡』みたいだけど
むしろマーライオンにならなかったのを褒められたい所だぜ、僕。」

必至に喉から上がる酸っぱさは塞いだが、その後僕が騒いだので勿論お世話になっている叔母に見つかる
結果は僕の不機嫌な様で察してほしいが、この『同居人』は理由なくこういう事はしない奴だ。

「そりゃあ……落ち込んでたさ、父の日に白い薔薇を
母の日にカーネーションを渡すのに、何故か『病室』に行かなくちゃ行けないんだからな。」

病院は嫌いだ、むしろ好きな奴がいるのか疑わしい所だ
健康な筈の自分まで病気の気分になってしまうのが本当に僕は嫌だ
叶うなら僕も全部投げ出してすぐさまお世話になりたい所だ、病名:ファザマザコン。

「――でもさ。」

すっかり温くなった瓶コーラを飲み、一息つく
残念ながら、現実問題困っていても『誰か』はやってくれない
一緒に怒られた猫の散歩一つも、僕がやらなくてはいけない、だから。

「『再確認』だよクロ、解る?『目標の再確認』どんなに辛くても、『人生の目標』があるならそれに進む為に。」

(その為なら過去をほじくり返して、悪戯に傷つくのにも意味が有る。 ……と僕は思ってる
じゃなきゃやってるのはただのマゾヒスト君だ、ゲップを一つ。)

「『きっと明日は、今日よりいい日』さ、だからこうして君の散歩ついでに……探しているんだ
『父と母を治せるスタンド使い』をね。」

僕は元気をプラスチックボトルの切れかけマヨネーズみたいに振り絞り、顔をくしゃくしゃに歪めて笑い猫を撫でる
猫は解っているのかいないのか、目を細めて欠伸を一つ――信じられなくても、信じなくてはいけない。

(……でも 人がいる箇所を探すべきだった気がするな、彼の散歩ついでだから仕方ないけれど。)

ゼンマイを巻きなおした腕に巻き付く『膨大かつ半透明の鎖』が、常人に聞こえない音を立てて揺れた。

437小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/06/19(火) 23:52:35
>>436

空から降り注ぐ日の光は、すっかり初夏の色味を帯びている。
それが、不意に生じた影によって遮られた。
ベンチに座る少年の頭上から、何かが降ってきたのだ。
つばの広い黒い帽子が、綺麗に少年の頭に覆い被さっている。
その直後、足音と共に、少年の背後から穏やかな声が聞こえた。

  「――そこの方……すみません」

  「急に帽子が飛ばされてしまったもので……」

振り返れば、そこに喪服を着た女が立っていた。
ややあって、申し訳なさそうな表情で、丁寧に頭を下げる。
被っていた帽子が飛ばされ、それが少年の頭上に降りてきたらしかった。

  「――……」

腕に巻き付いた鎖――無意識の内に、そこに目がいってしまう。
しかし、それについて言い及ぶことはしなかった。
ただ、その様子を見れば、同じ力を持つ者であることが少年には分かるだろう。

438斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2018/06/20(水) 01:15:34
>>437

「――?あっ……と」

背後からかけられた優しげな声に、僕は驚きを隠せない
急いで立ち上がって一礼する、だいぶ間抜けな姿。

しかたない、頭が二つあっても目が後ろを向いているわけじゃないんだから。
それよりは笑顔で対応する事と、帽子を返す事だ。

「いえ、風のせいですから仕方ありませんよ な、クロ。」

――猫はそっぽを向いて欠伸を一つ、そうだな君はあの家で僕の先輩かつ空気を読まずに吸う奴だ。
彼女に視線を戻し、肩を竦めて苦笑いをしてみせる、そして頭から取って相手の眼を見ながら彼女の黒い帽子を両手で差し出す
……同時に『鎖』が揺れて音を鳴らす。

「はいどうぞ、お返しします。葬式帰りでこの時期の日差しは辛いでしょうから。」

完璧だ、2つの疑問以外は
探偵でもあるまいし放置すればいいのに。

(そうだ、喪服なんだから葬式の帰り……で、あれ?公園に寄り道をするんだろうか?
お祖母ちゃんは葬式時にしてはいけないと言う人だけど……それに。)

帽子の影が無い穏やかで憂いを帯びた顔、僅かにそよぐ風で揺れる、長い髪をうなじの部分でまとめたアップヘア
初夏の木漏れ日の下で見える……『眼の動き』

(視線が帽子から腕に来て一瞬止まった、この人は『鎖』が『見えている』
 ――『新手のスタンド使い』だ!やった!)

心の中で手を叩いて喜ぶ、目的に近づけるのだから表情にも隠しようがない
クロの奴が招いたと言われても今なら僕は信じ込むだろう。

「あの、聞いていいのならお尋ねしたいのです…が…」

笑顔のままに
すぐに聞こうとして僕は言葉に詰まって目線を泳がせた、『罪悪感』で

――もっと言うと、自分の事しか考えてなかった僕は
口に出した後にようやく『喪服を着た相手の事』に脳が回った。

(……いや、でも遠慮しないと、だって相手は親しい人が無くなって辛い時かもしれないのに。
それに何を聞くって言うんだ?スタンド?経緯?聞きたい事は山ほどある
でも、そんなに人にずけずけと聞くのはいい事か?違う、悪い事だ、やめよう。)

「――貴方は、貴方の『力』を知っていますか?僕と『同じ人』。」

……『同じ人』がスタンド使いだと解るだろうか?
それともしらばっくれるだろうか、何方でも構わな……くはない、必要がある
でも『僕』はどっちつかずだ、迷っている。

(けれど声を優しく感じた理由は解った、顔の憂いと影がまるで西洋人形のようで、この人まるで死んでるみたいなんだ。)

439小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/06/20(水) 18:27:53
>>438

思わず腕の鎖に向いてしまった視線を、再び帽子に戻す。
それから、改めて少年の顔と向き合った。
少年を見つめる表情には、陰を帯びたような微笑みがある。

  「……ありがとうございます」

そっと両手を伸ばして帽子を受け取り、元通りに被り直した。
左手の薬指には、飾り気のないシンプルな銀の指輪が光っている。
それと全く同じデザインの指輪が、右手の薬指にも嵌っていた。

  「はい……なんでしょうか?」

投げかけられた質問が途中で途切れるのを聞いて、
生じた間を埋めるように言葉を発する。
それは、質問をされることに対する肯定の意思表示。
そうすることで少年の背中を押し、彼が質問しやすくするために。

  「――私は……特別に優れた人間ではありません」

  「私にできることは、決して多くありませんから……」

静かに言葉を紡ぎながら、穏やかに微笑する。
柔らかく、人当たりの良い微笑み。
しかし、それは太陽のような笑顔とは違っていた。
どこか月の光にも似た憂いを含んだ微笑。
日差しを遮る黒い帽子の下に、それが存在している。

  「ですが――私は、私の力を知っています」

その声と同時に、左手の中に一振りのナイフが現れる。
質問の答えとしては、こうすることが一番だと考えたからだった。
ただ、これを見せることには抵抗もあった。

自身のスタンドを見られることに対してではなく、この凶器を思わせるヴィジョンが、
少年に不快感を与えてしまうのではないかという不安だった。
少し前、ここで自傷の最中に出会った見ず知らずの男性の姿が頭に浮かぶ。
あの時も、自分の不用意な発言のせいで、
彼に不愉快な思いをさせてしまっていた。

自分の行動が原因で、人の心を傷付けてしまうかもしれない。
内心では、そのような結果になってしまうことが怖いとも思っていた。
しかし、何か理由がありそうな少年の助けになりたいという気持ちの方が、
今は強かった。

440斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2018/06/20(水) 23:21:43
女性の左手に一振りのナイフ、本来なら警察物だろう……ただしそれが『器物型スタンド』なら話は別だ
『スタンド』は僕が纏う『鎖』のように周囲の一般人には見えない。

それに、自慢ではないけど僕にとっては驚く光景じゃない、奇妙だが少し見慣れた光景だ。

「――まずは質問に答えてくださって、有難う御座います。」

彼女の『スタンド』を見て『何でも無いよ』と言う風に受け流し、微笑む
返答へのお礼を言う、左手を首元に、安心するために無意識に『短くなった母のマフラー』を触る。

(嫌いだ、つまらない、押し殺す、もどかしい、でも必要だ。)

――左手を戻す、楽な姿勢に。
今すぐにでも質問攻めにしたい、でもそれはいけない事だ
頭の中が蝉の鳴き声と思考で酷く騒がしい、汗が頬を伝っている気もする。

「自己紹介が遅れました
 僕の名前は斑鳩、『斑鳩 翔』貴方は『短剣』なんですね……えっと。」

言外に後押しはしてくれているのかもしれない
それでもやっぱり言葉に詰まるのは『鎖』のせいだろうか。
――スタンドは使う人間の『精神』だと言う、その姿形も似るだろう。

「……あ、座りませんか?僕とお話を続けてくれるなら、ですけど。」

名前を聞きながらベンチに座る事を促してその間に考えよう
夏の暑さと歓喜に茹だったこの時の僕の考えだ。

隣の猫(クロ)は退く気が無いので、僕は立ったままだが仕方ない
それに、あまり良くない質問をこれからしなきゃいけない。

(落ち着いて……する事は1.僕の両親を治せる能力かを聞く。2.他のスタンド使いを聞く。
 ――ぼかして聞かないといけないかな、何て言おうか。)

……夏の日差しが差し込む中、木漏れ日が差すベンチの上で猫が貴方の事を見つめる
目の前の少年は一つ深呼吸をした。

441小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/06/21(木) 00:31:17
>>440

この少年には、どこか思いつめたところがあるような気がした。
もちろん、それは単に自分がそう思っているだけかもしれない。
ただ、少年の真剣な態度からは、思い過ごすだと言い切れない何かを感じていた。

  「私は……小石川文子です」

  「――はじめまして……」

少年の内面にある葛藤を察して、自身の名前を告げた。
そして、また軽く頭を下げる。
その間も、表情は穏やかなままだった。

  「ご一緒にお話ができるなら……私は嬉しく思います」

  「一人で歩いていて、少し寂しさを感じていたところだったので……」

そう言って、口元に柔和な微笑を浮かべる。
それは、偽りのない本心からの言葉だった。
普段、自分は静かな場所を好んでいる。
でも、時々どうしようもなく物寂しくなることがあり、
そんな時は無性に誰かと話をしたくなる。
今も、ちょうどそんな気持ちだったのだ。

  「――お気遣い、ありがとうございます」

  「よろしければ……私は、こちらに座らせていただけませんか?」

お礼を言ってから、ベンチが設置された歩道から少し外れた芝生に立つ。
新緑の上に白いハンカチを敷いて、そこに腰を下ろした。
今の少年の様子を見ていると、立ったまま話し続けるのは辛そうに思えた。
自分は、どちらかというと暑さには強い方なので、熱気をそれほど厳しく感じない。
だから、一人しかベンチに座れないのなら、彼が座る方がいいと考えたのだ。

  「どうぞ、ご遠慮なく――」

  「私にできることは多くありませんが……できる範囲で、お答えします」

木漏れ日の下で、少年に向けて微笑む。
左手には、まだ『ナイフ』が握られている。
それを消さないのは、そうした方が少年の希望に沿えると思ったからだ。

442斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2018/06/21(木) 02:41:10
>>441

「有難う、小石川さん。」

笑顔のままに感謝を言う斑鳩の眼には、小石川の両指の結婚指輪が嫌でも視界にちらついた
力を持てばそれを狙う人間は少なからずいるのだ、平穏を望むならば持たないほうが良い
――故に斑鳩には『ナプキンを取った理由』が何処か想像がついた気までしてきた。

(喪服、結婚指輪、前に会ったスタンド使いは両目のせいなのか感覚に関するスタンドだった。
彼女がスタンドのナイフを持っていて、僕に親身に話を聞く理由……)

「――スタンドには固有の『能力』が有ります、貴方もご存知の通り
僕が知りたいのは、貴方の『能力』が誰かを治せる類かという事なのです。」

真っすぐと相手の眼を見て答える、小石川文子の憂いを湛える瞳を見て
その奥に死を垣間見ている気すらしてくる、彼女が共感したのは僕と同じような目に合っているからだ
――『呪われている』過去か、人か、頭の片隅にそんな言葉がよぎる。

(何を馬鹿な……僕の想像のし過ぎだ、それとも僕の『スタンド』のせいなのか。
 こんな事を表情にだけは出したくない、笑顔のままでいないと。)

指を折り、拳を作り、また開く

合間に夏の喧騒と、遠くで子供の元気な声が聞こえる数人で遊んでいるのだろう
それらが耳に入らず、彼女が芝生に座っても気に出来ない程には焦っている

数度繰り返して続けて、やっと口を開く。

「代わりに僕の『スタンド』を知りたいと言うなら教えます
 ……それでも聞きたいのです。」

(……そして可能なら、僕の両親を治して貰いたい
我ながら砂漠で砂金粒を探すような賭けだが、これ以上に確率の高いギャンブルが無いから仕方ない。)

443小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/06/21(木) 20:17:33
>>442

人知れず悩む少年の姿を見つめる瞳に、気遣いの色が浮かぶ。
しかし、今は気軽に声を掛けるべきではないと判断した。
黙って少年の言葉に耳を傾け、やがて小さく頷いた。

  「……よく分かりました」

短く答えてから、おもむろに左手を軽く持ち上げる。
そして、何気ない動作で右手の親指を切り落とした。
普通なら指は地面に落下し、切り口から滴る鮮血が芝生を赤く染めているだろう。

  「『スーサイド・ライフ』――」

しかし、実際には、そのどちらも起きてはいなかった。
血は一滴も流れておらず、切断された指は重力に逆らうように宙に浮かんでいる。
自身の表情にも、痛みを感じている様子は全く見られない。

  「私は、そう呼んでいます」

不意に、手中からナイフが消える。
それと同時に、浮遊していた指が灰のように崩れ去った。
欠けていた親指が、徐々に元通り再生していく。

  「……私にできることは、これだけです」

  「――ごめんなさい……」

謝罪の言葉と共に、静かに目を伏せる。
『スーサイド・ライフ』に、誰かを癒す力はない。
考えてみれば、それは当然のことかもしれない。

自らの命を絶つことを望む衝動と、それに抗い生きようとする意思。
その相反する葛藤の狭間から、『スーサイド・ライフ』は生まれた。
人を治すことのできる力など、持てるはずがない。

少年のスタンドのことを聞き出そうという意思はなかった。
質問されたとはいえ、こちらの能力を教えたのは、あくまで自分の意思だ。
だから、引き換えに少年の能力を教えて欲しいという気持ちは持っていなかった。

444斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2018/06/21(木) 23:28:46
僕は正直な所、自分で頼んでおいて予想外に動揺していた
何せ目の前の優しそうな女性がいきなり自傷行為をするのだ。

……素直に見せて貰えるとも思っていなかったし
何よりギャップのせいで悲惨かつショッキング&ヘビーだ。

「……ええっ!?」

それでも目は釘付けになる、なにせ斬られた指が『宙に浮いている』のだ
そして一滴の血も流れず、『スーサイド・ライフ』を消すと共に灰の如く崩れ消え去る

「『スーサイド・ライフ』……。」

(器物型のスタンド、能力は切断部位の空中浮遊と操作かな、分離して動かしたりできそうだ
でも、残念ながら治す能力では無かった……。)

一瞬眼前に眩暈を覚え、視界が暗転しかけるが、すぐに失望を振り払うかのように顔を振る

(……大丈夫、僕は大丈夫 勝手に期待して勝手に失望してるだけさ
もう10回は繰り返しているんだ、人間慣れる生き物だからね!)

「――あ、いえ 謝らないでください
もう何回も繰り返した事ですし、貴方に非が有る事では有りませんから。」

事実、この人に非があるわけでは無いのだ
もし有る等と言えば、僕は生まれつきの肌色等で差別する連中と同じになってしまう
両親にも顔向け出来ない、どれも嫌だ、故に頭を下げさせてはいけない。

「そんなに深く頭を下げられたら、なんだか僕は申し訳なくなってしまいます。
僕は大丈夫ですよ、教えて頂いて有難う御座いました。」

そう言いながら朗らかに笑顔で返す
この人に暗い顔を向けてはいけない気さえするのだ。

「自分の都合なのに親切に答えて頂いて、それで暗い顔をさせては
 僕の両親にも、祖父母にも顔向けできませんから。」

445小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/06/22(金) 00:21:44
>>444

謝らないで欲しいという言葉を聞いて、また頭を下げそうになるが、
途中で思い止まった。
これは自分の悪い癖なのかもしれない。
良かれと思ったことでも、相手を不快にしてしまう時もあるのだから。

  「――はい……」

頭を下げる代わりに微笑を送る。
自分が笑うことで、この少年が笑ってくれるのなら、
それが一番いいと思った。
思いつめた様子の彼に、気を遣わせては申し訳ない。

  「お差し支えなければ……連絡先を教えていただけませんか?」

自分には人を治せる力はない。
それでも、できることがある。
ほんのわずかな助けかもしれないけれど。

  「もし……治せる方を見つけたら――」

彼が治せるスタンド使いを捜し求める理由は知らない。
だけど、きっと大切な誰かを治したいのだろう。
その気持ちには、大きな共感を覚えた。

  「その時は、お知らせします」

もし自分と少年の立場が同じだとしたら、私も同じ行動を選ぶだろう。
私にも、大切な人がいた。
『生きて欲しい』という彼の最後の言葉を守るために、
私は今を生きている。

  「私にできるのは、それくらいですから……」

だからこそ、この少年の助けになりたいと思った。
自分と少年に似ている部分があると感じられるから。
心の中で思いを重ねながら、穏やかな微笑みと共に言葉を告げた。


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