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【場】『 湖畔 ―自然公園― 』

1『星見町案内板』:2016/01/25(月) 00:04:30
『星見駅』からバスで一時間、『H湖』の周囲に広がるレジャーゾーン。
海浜公園やサイクリングロード、ゴルフ場からバーベキューまで様々。
豊富な湿地帯や森林区域など、人の手の届かぬ自然を満喫出来る。

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                 ミ三ミz、
        ┌──┐         ミ三ミz、                   【鵺鳴川】
        │    │          ┌─┐ ミ三ミz、                 ││
        │    │    ┌──┘┌┘    ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
        └┐┌┘┌─┘    ┌┘                《          ││
  ┌───┘└┐│      ┌┘                   》     ☆  ││
  └──┐    └┘  ┌─┘┌┐    十         《           ││
        │        ┌┘┌─┘│                 》       ┌┘│
      ┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘     【H城】  .///《////    │┌┘
      └─┐      │┌┘│         △       【商店街】      |│
━━━━┓└┐    └┘┌┘               ////《///.┏━━┿┿━━┓
        ┗┓└┐┌──┘    ┏━━━━━━━【星見駅】┛    ││    ┗
          ┗━┿┿━━━━━┛           .: : : :.》.: : :.   ┌┘│
             [_  _]                   【歓楽街】    │┌┘
───────┘└─────┐            .: : : :.》.: :.:   ││
                      └───┐◇      .《.      ││
                【遠州灘】            └───┐  .》       ││      ┌
                                └────┐││┌──┘
                                          └┘└┘
★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
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284ジェイク『一般人』:2017/02/26(日) 00:05:07
>>283

声に反応して男が目を開く。
静かに帽子を手に取って頭の上に持っていく。

「必要はない」

「……何をいている」

男は静かに言った。

285<削除>:<削除>
<削除>

286小林『リヴィング・イン・モーメント』:2017/02/26(日) 19:00:02
>>284

 >何をしている

青年と思える年若い顔に、歳月を幾分経たかのような古びた光を黒い瞳へと
宿した私は、貴方の言葉に少しだけ目を閉じて言葉を吟味して、そして手を動かす。

 カリシャリ クリ シャ カリカリカリ

「天光は鈍く二人の間を交差する中、問われた枠組みはそっと静けさの中を通り過ぎた」

 「……私が何をしてるかと言えば、文を 冊子の中を飾るに相応しい言葉を
捜しに夜更けの中を探索しに参った次第で……謂わば。
 小説を作るにあたっての気紛れな散歩ですよ」

 シュゥ ゥ……

 夜が髪を梳かす それはやや乱暴であって また優しい

 「此処の辺りの風は、冷たく それでいて木々を吹きすさぶ中に
想像と創造をつかさどっている。
 私はこの湖畔が好きです。このような常闇も、夜明けも 
燦と明るい日中もね。……貴方は此処で何を?」

 自身を一介の名もない小説家と称する若者は、柔らかな闇夜と同じほどの
温度を伴った目線で、帽子を被る彼へと言葉を投げかけた。

287ジェイク『一般人』:2017/02/26(日) 23:35:25
>>286

「そうか」

そういうとまた目を閉じる。
ただ静かに座っている。

「黙とうだ」

「魂が震えている」

何をと問い返され男は答えた。
目は閉じたまま、その体は石のように動かない。

288<削除>:<削除>
<削除>

289小林『リヴィング・イン・モーメント』:2017/02/27(月) 00:02:46
>>287

 更に若者は、筆を滑らせる。

 カリカリカリ シャッ カリカリカリ キュ

 「木枯らしの中で、余多の安らぎの喧騒が耳打ちながら……」

 そこで、筆を止め。男に再度視線を向ける。

 「何へ、と訊くのは無粋ですかね?」

「ですが、私は貴方が只たんに狂人のように野晒しに此処で佇んでるようには見えません」

 「宜しければ、貴方の胸の内に秘める。その心情を教えてくれませんか?」

 小林には、ジェイクの石のような無機質さの中に確かなるものを
肌に脈動のようにして感じ得た。

 それを『文章』にしたい。そう願望を抱き、彼へと尋ねる

290ジェイク『一般人』:2017/02/27(月) 00:29:46
>>289

「聞いてなんとする」

「俺の空間を踏み荒らすか?」

目を開き、相手を見る。
特に興味もなさそうな目線だ。

291小林『リヴィング・イン・モーメント』:2017/02/27(月) 19:41:17
>>290

>俺の空間を踏み荒らすか?

 「お気を悪くされたのなら、謝罪します。
物書き故の、性分のようなものでして。
 誰かの明確な意思や情熱を秘めた科白は、生きてる言葉です。
私は、生きてる言葉を包み込んだ墨として、まっさらな無地へ埋め
息衝いた本へ変えたい……まぁ、そう言う俗な欲から来る行為です」

 ペンを若者は仕舞い込む。そして、踝を返すのを見ると来た道を引き返すのだろう。

「貴方の様子を見るに、反響するのは鉛色で余り澄ますような時でないんでしょう。
また、日を改めて私の望む答えを頂けたら、と所望します。
 ……名前は小林と言います。宜しければそちらの名前をお伺いしていいですか?」

 これ以上暇はしないと暗に告げ、小林は名乗って彼へと尋ねた。

292ジェイク『一般人』:2017/02/28(火) 00:04:26
>>291

「謝罪は必要ない」

「作家はみな勝手な人間だ。物語を書き、その結末がどれだけ悲惨であってもけろりとした顔でいる」

「人魚姫の結末に涙した少女に救いの手は差し伸べない」

ランタンを持ち上げる。
そしてしばらくいじった後、中の火を息で消してしまった。

「お前の望む答えをか……」

「……」

「ケイディだ」

男はただそうとだけ答えた。

293小林『リヴィング・イン・モーメント』:2017/02/28(火) 22:06:42
>>292

 「では、また何時か月夜でなくとも。
お会い出来る事を望みます ケイディ」



 ……

 
 シャリカリカリ クリ シャッ カリカリ カリカリカリカリ シャ キュリキュリ シュッ…

 「硝子の涙を透かす中に映える現世に 天の架け橋を渡すかのような
山谷を駆け抜けた一番風の音を感じ起こすように あの胸に秘める熱を私は欲するのだ」

 「……うん、良い文字が書き起こせそうだ。
しかしケイディ ケイディ……こう言う事を呟くのは如何だと思うが
名と姿に少し一致しないような気がしたな」

 別離を果たす後に、青年は嘯く。僅かに見える月光を少し仰ぎ見たあと
闇夜を伴として、あるべき場所へ あるべき場所へとと追い風にせかされるまま。

294伊須河 梨央奈『ウィッシュフル・シンフル』:2017/04/20(木) 23:29:40
「はぁ……」
湖畔のほとりで、やや憂鬱そうな様子で
一人の少女が湖を覗き込んでいる。

光が反射して鮮明にその顔が映る。

「第二の人生…
 なーんて、どうすりゃいいんスかね……」
自分の頬をぱちぱち叩く。

まるで漂白剤を頭からかぶったかのように
自分の姿は全身蒼白だ。

自分の体に「黒」という色は殆ど全く見られない。
過去の自分の姿を思い起こして

「とりあえず……
 学校に行って大丈夫なのかなぁー……」
自分の制服も色落ちしたかのような雰囲気である。

命を落としたショックよりも
これからどうすりゃいいのか、そんな思いで彼女は悩んでいるのであった。

295小石川文子『スーサイド・ライフ』:2017/04/21(金) 23:57:36
>>294

人影もまばらな、静かな湖畔のほとり。
そして、湖の傍で思い悩む全身に白みを帯びた少女。
そこから少し離れた所に、一人の女が座っていた。

年の頃は二十台後半。
すらりとした細身の体型で、女性にしては背が高い。
楚々とした喪服に身を包み、つばの広い黒い帽子を被っている。

少女とは対照的に、その姿には『黒』が際立っていた。
ただ、左腕にはギプスが付けられ、三角巾で腕が吊られている。
そのため、そこだけは『白』が目立っていた。

  ――……『第二の人生』?

少女の発した言葉が耳に入り、不思議に思った。
年若い少女が口にする言葉にしては不釣合いだ。
まるで、既に『第一の人生』が終わっているかのような……。
そんなことを考えながら、つい少女の方を見つめてしまっていた。
もしかすると、こちらの視線に気付かれるしれない。

296伊須河 梨央奈『ウィッシュフル・シンフル』:2017/04/22(土) 10:23:31
>>295
「とりあえず染めてみるかなぁー…」
などと悩みながら、湖に映る自分の姿をずっと見ていたが、

「おや…
 誰かに見られている気配がスるっス…」
ハッとして、顔を上げる。
蘇ったから感覚が鋭敏になっているのかは定かではないが
とにかく、じっと見られているような感覚を覚えたのである。

(いやー、この格好は目立ってしょうがないスからねー…
 興味津々なヒトもいるのかも……)
と、周囲を見渡していると

「…おんなじ白いのが…!」
と、文子の腕を保護しているギプスを指差して驚いている。
この時同時に二人の目があった。

彼女、梨央奈の姿は
『真っ白』という言葉がふさわしいくらい
全身白ずくめであった。
かなり特異なのは、文字通り
肌から髪の毛、僅かな濃淡で判別できるものの
眼球まで、まさしく『全身が』白ずくめなことであった。

297小石川文子『スーサイド・ライフ』:2017/04/22(土) 21:40:51
>>296

  「――あ……ごめんなさい……。つい、見つめてしまって……。   
   気に障ったのなら謝ります」

少女に近寄っていき、頭を深く下げて謝罪する。
自分の骨折した左腕に対して、少女は驚いているようだ。
どちらかというと、ギプスよりも『色』に反応しているのが気にかかったが……。

実際の所は、こちらの方が内心よほど驚いていた。
ただし、表情には出さないようにしている。
あからさまに驚いた顔をしてしまっては相手に失礼だ。

けれども――確かに不思議な姿だとは思う。
肌が色白だというなら分かる。
自分も肌の色は白い方だ。

しかし、ここまで全身が真っ白というのは見たことがない。
そういえば『アルビノ』という言葉を聞いたことがある。
遺伝子や色素の問題で身体全体が白くなるらしい。
もしかすると、彼女もそうなのだろうか?

  「……隣に座っても構いませんか?」

了承が得られたなら、彼女の隣に静かに腰を下ろす。

298伊須河 梨央奈『ウィッシュフル・シンフル』:2017/04/22(土) 22:14:36
>>297
「えーあ、気にしないデも大丈夫スからー…
 白いのが見えてちょっとびっくりしただけっスー」
と、随分と元気そうに答える。
そういう自分なんて真っ白なのにだ。

「あ、隣デスか?
 私は別に構わないスけど……」
不思議そうにしながらも返す。

「あー、えっと…
 怪我大丈夫スかね…?」
ギプスとかが気になってしょうがないようだ。

299小石川文子『スーサイド・ライフ』:2017/04/22(土) 22:53:10
>>298

  「ありがとうございます」

お礼を言って梨央奈の隣に座る。
その顔に浮かぶのは柔らかい微笑み。
しかし、どこか陰のある微笑だった。

  「これは――道で転んで、手をついた拍子に腕を折ってしまったんです」

これは嘘だ。
実際は、ある事件に巻き込まれて負った怪我だった。
とはいえ、初めて会った人にする話でもないと判断した。

  「全治一ヶ月だそうですけど……。
   でも、もうすぐ治りますから大丈夫です」

これは本当だった。
あれから、もうすぐ一月が経過する。
もうじきギプスも外れるだろう。

ギプスが付いているのは左腕。
それを目で追っていたなら、左手の薬指に指輪がはまっているのが見えたかもしれない。
位置を考えれば、それが何か分かるだろう。

  ――『白』が気になるのかしら……。

この少女の真っ白な姿と関係しているのだろうか?
確かに、気にかかることではあった。
しかし、それを直接尋ねてもいいものかどうか……。
そんな時、二人の間を一匹の蝶が横切った。
その色は――『白』だ。

300伊須河 梨央奈『ウィッシュフル・シンフル』:2017/04/22(土) 23:24:41
>>299
「まぁー、誰かがいると
 なぜだかちょっとだけ安心してたりスるんス…」
何か不安だったのかもしれない。
自分の姿を見てもあんまり動揺してなさそうなのが
安心したのだろうか

「へー、それは大変スね…
 でも大変なことにはならなくて何よりデスよー」
骨折で済むならまだいいなーなどと考えながら、
そのギプスをじっと見る。

と、そこに横切るのは一匹の『白』い蝶
「んぁ!?何時の間に……ん?」
ひどく驚いた様子で蝶の姿をじっと見る。
なんだか妙なことを口走っているようにみえる

「…何だただの蝶だった……
 はぁびっくりした…」
(…無意識に能力を使ったのかと思ってしまった…)
白い蝶、白い生物に妙に反応するようになった
そんな自分を思い返しているようだ。

文子から見るとそれはどう映るのだろうか……

301小石川文子『スーサイド・ライフ』:2017/04/22(土) 23:54:27
>>300

梨央奈から見ると動揺していないように見えたかもしれない。
しかし、実際には少なからず動揺はしていた。
それを表に出していなかったというだけのことだ。

けれども、今は既に落ち着きを取り戻していた。
それなりに人生経験を積んでいるがゆえだった。
それでも、目の前の少女のような姿をした人間には出会ったことがない。

  「――『何時の間に』……?」

梨央奈の反応を見て、小さく呟く。
ただの蝶に対する反応にしては大げさだった。
蝶が苦手という感じでもない。

今までのことから考えると、やはり『白』に反応しているのだろう。
なぜ彼女は『白』に過剰な反応を示すのだろうか?
それが気にかかる。

  「あの――失礼ですけれど、高校生の方ですか?
   それとも中学生でしょうか……?」

気にはなるが――いきなり訊くのは躊躇われた。
まずは答えやすい所を尋ねた方がいいだろう。
そう思い、とりあえず無難な質問をしてみることにした。

302伊須河 梨央奈『ウィッシュフル・シンフル』:2017/04/23(日) 00:12:00
>>301
「ん…ん?」
ちょっと何かつぶやいたらしい文子のことを軽く見つめる。
(もしかして、変に思われてる…?)
なんだか心配そうである。

「あ、在学はってことっスね?」
と、話題が変わったのに安堵している。

「あー、一応中学生デス…
 確か中学3年位スかねー
 14、うん、14歳スからねー」
そう言ってウンウン頷く。

「と、そういうあんた…じゃなくて、
 あなたはどのくらいの学年なんスかね?」

303小石川文子『スーサイド・ライフ』:2017/04/23(日) 00:47:46
>>302

  「ふふッ――」

梨央奈の質問を聞いて、帽子の陰で思わずクスリと笑う。
まさか今になって、そんな質問をされるとは思わなかった。
なぜなら、自分が学生だったのは昔の話なのだから。

  「ごめんなさい、笑ってしまって。
   あんまりにも意外だったものだから」

  「もう学校は卒業しているの。
   今は28歳。ちょうど、あなたの『倍』ね」

やや砕けた言い方で訂正するが、特に気を悪くした様子はない。
若く見てもらえたと解釈すれば悪い気はしなかった。

  ――それにしても……。

『一応』、『確か』という言い方が妙に引っかかる気がした。
自分のことを話している割には、妙に客観的な印象だ。
まるで、『本当にそうだったか』確認しながら話しているような……。

  「私は、よくここへ散歩に来ているの。今日も、ね……」

  「――あなたは?」

そういえば、彼女は何かしら思い悩んでいた様子だった。
『第二の人生』という言葉のこともある。
この真っ白な少女が抱えているのは、何かとても大きな悩みであることが察せられた。

304伊須河 梨央奈『ウィッシュフル・シンフル』:2017/04/23(日) 01:00:51
>>303
「あ、そうだったんデスか?
 じゃあチョー後輩じゃないスか!
 びっくりしたなー!みえないっス!」
取り繕うように慌てた様子で答える。
ちょっと失礼だったかなと思っているんだろうか


「へー、じゃ先輩はココの常連なんスねー!
 私?あー私は……」
と言って少し湖を覗き込んでいた。

「まーその、色々と
 今後の進路についてかんがえて…おりましてスねー…」
ちょっと悩んだ表情をしている。

305小石川文子『スーサイド・ライフ』:2017/04/23(日) 01:24:52
>>304

  「進路……。学校のこと?」

中学三年生で進路といえば、まず思いつくのは進学のことだ。
それは自分にも経験がある。
しかし、彼女の様子を見ていると、単に進学で悩んでいるとも思えなかった。

もっと何か別のことのような気がする。
それが何かまでは分からないが……。
彼女の真っ白な姿のことも含めると、少なくとも普通の悩みではなさそうに思えた。

  「もし――嫌じゃなければだけど……。
   良かったら、聞かせてもらえないかしら……」

  「ほんの少しだけでも、あなたの手助けができるかもしれないから」

  「もちろん、無理にとは言わないけれど……」

そう言って、慎重に話を切り出す。
梨央奈の素性が気にならないと言えば嘘になる。
だけど今はそれよりも、目の前で悩んでいる少女の苦しみを、
少しでも軽くしてあげたいという気持ちの方が強かった。

306伊須河 梨央奈『ウィッシュフル・シンフル』:2017/04/23(日) 01:36:47
>>305
「あー、まぁそっちでもありまスがねー…
 もっとこう……大きな…」
と探るように答えるが…
暫く考える。

「ん…そうスか?
 言ってもいいスけど…
 信じられない話だと思うっスよ?」
と言ってからしばらく考え…
口を開いた。

「まぁその…
 あれはちょうど一昨日くらい…」
と言って彼女は語りだした。

いつもの学校の帰り
普段通りの帰り道だったのだが

その日、一台の車が信号を無視して高速で
横断歩道を渡る自分に接近して……

「…ココで記憶が途切れたんスよねー…
 それで…気がついたらこんな感じに…」
と言って自分を指差した。

(えーっと…
 此処から先は…)
「なんて言ったかなー…
 そうそう『音仙』!
 悩みを聞いてくれるっていう噂があった
 あの人のところに行ったんス!」

307小石川文子『スーサイド・ライフ』:2017/04/23(日) 08:36:41
>>306

  「……」

真剣な表情で、黙って梨央奈の話に耳を傾ける。
その内容は、確かに信じられないくらい不思議で奇妙なものだった。
普通なら、とても信じられなかったかもしれない。

しかし、自分は信じる気になれた。
奇妙な現象を現実に起こし得る可能性に心当たりがあったからだ。
そうした類の能力は自分の中にも存在している。

  「――『音仙』。そう、あなたも……」

思い出すように、ぽつりと静かに言った。
自分も、そこへ行ったことがある。
梨央奈と同じように、胸の内にある悩みを聞いてもらうためだった。

その結果、自分の中に眠っていた異能の存在を知らされることになった。
おそらくは梨央奈も同じなのだろうと思った。
そう思うと、なんとなく彼女に対して親近感を覚えた。

  「それで――その後はどうしたの?」

穏やかな口調で先を促す。
今この時――湖の水面に映っているのは、
漂白されたかのように真っ白な少女と、喪服と黒い帽子を身に纏った黒尽くめの女。
対照的な白と黒のコントラストが、そこにあった。

308伊須河 梨央奈『ウィッシュフル・シンフル』:2017/04/23(日) 11:16:15
>>307
「はぁーえっと…
 その後はどうしたんだっけな…」
と、少し考えるが…
文子の『音仙』を知るらしき発言に耳を傾ける。

「知ってるんスか?
 それじゃぁー…
 先輩も何か相談を…?」
と興味津々に彼女の言葉を聞いている。
そういえば自分はそれで自分の能力を自覚したのだった、と思い出し、

「あー、あの人の言うことにゃーね…
 私は一度死んで生き返った…とか言う話らしいんス…
 そして何か…『能力』?そういうものを持っていると
 教えてもらったんスよね…」
ふう、とため息を付いて顔を上げる。

「試しに出してみたらまさしくその通りの『モノ』が
 現れたんで信じるしかなかったっスねー…
 それで今後どうしようかな〜とお悩み中なんスね……」
と、湖に映るのは黒と白の2つの姿。
対極の色であった。

309小石川文子『スーサイド・ライフ』:2017/04/23(日) 18:47:50
>>308

  「……ええ。
   私も相談に行ったことがあるわ。
   今のあなたと同じように『進路』についての相談を……」

やや曖昧な返事を返しながら、視線を手元に落とす。
右手の薬指には、左手の薬指と同じ指輪がはまっている。
左手の指輪は自分のもの、右手の指輪は夫の形見だった。

生きるべきか死ぬべきか。
それが自分の抱えている悩みだ。
今も消えてはいないし、おそらく生涯に渡って消えることはないだろう。

夫が死んだ時、後を追って命を絶つつもりでいた。
しかし、彼は『自分の分まで生きてくれ』と言い残した。
だから、死にたいという衝動を抑えて生きてきた。

しかし、いつまで抑えていられるか不安を感じていた。
自分の中にある死を望む気持ちが高まっていくことが怖かった。
『音仙』に行ったのは、ちょうどそんな時だったと思う。

  「――『死んだ』……?」

梨央奈の言葉に、今までとは少し違う反応を見せる。
哀れみの中に、ほんの少しの羨みが混じっているような、複雑なニュアンスがあった。
そんなことを思ってはいけないと思いながらも、それを止めることができなかった。

ともかく――梨央奈が言った『第二の人生』という言葉の意味が、これで分かった。
事故で命を落としながらも、彼女は新たな姿で蘇った。
それはつまり、梨央奈自身が生きることを強く望んでいたということだろう。

なんという偶然だろうか――。
生きることを願いながら死んでしまった彼女と、死ぬことを望みながら生きている自分が、
こうして同じ場所にいる。
そのことに対して、奇妙な縁を感じていた。

  「私は、あなたのように死んで生き返るという経験をしたことがないから……。
   だから、そういう時にどうすればいいか――
   その助言をしてあげることは、とても難しいことかもしれないわ……」

     スッ・・・・・・

そう言いながら、おもむろに左手を開く。
その中には何もない。
ただ空っぽの手があるだけだ。

  「でも……私もあなたと『同じもの』を持っているの」

唐突に、左手の中に一本の『ナイフ』が現れ、次の瞬間には幻のように消えてしまった。
多くの人間には見えないが、梨央奈には見えたはずだ。
形は違えど、彼女が持つ『能力』と同質のものなのだから。

  「だから――もし良かったら、お友達になってもらえないかしら……?
   私にできることは、それくらいだから……」

梨央奈の悩みは特異かつ深刻であり、簡単に解決できるものではないだろう。
けれど、同じ『能力』を持つ者が近くにいれば、少しは心強いかもしれない。
そう考えた上での提案だった。

310伊須河 梨央奈『ウィッシュフル・シンフル』:2017/04/23(日) 21:01:03
>>309
「へー…
 やっぱあそこは人生相談…みたいなところなんスねー・・・」
と感心するように答える。

「あはは、そのー…
 びっくりしちゃったっスかねー?
 自分もわけわかんなかったんスけどね…はぁ」
そう言ってまたため息を付いた。
見れば彼女も、文子も
互いに悩みを持つかのような表情に見えた。

「まぁ、そんな体験できる人なんて
 めったにいないスからねー…
 助言は無理かも…デス」
と、空っぽの手があるのみの
文子の手を見る。

「ん…なにか…」
と思ってじっと手のひらを見ていると
突然ナイフが現れ、消える。
「うおっ!
 これってあれっスか?!
不思議な力ってやつ!」
やけに興奮した様子で答えている。

「あーえっと…いいっス!
 おんなじ能力なんて私にとって
 とても嬉しいことスよ!!」
とても嬉しそうに彼女のお友達になってほしいという
提案に笑顔で答えた。

311小石川文子『スーサイド・ライフ』:2017/04/23(日) 22:06:27
>>310

  「――ありがとう」

そう言って微笑を浮かべる。
少しでも梨央奈の悩みを軽くすることができたなら幸いだ。
自分にとっても、同じような能力を持つ友人が増えるのは嬉しい。

自分自身の悩みが何なのかは――今は黙っておくことにした。
相手のことを聞いておいて自分のことは話さないのは失礼かもしれない。
ただ、今はやめておこうと思った。

別に秘密にしているわけではない。
ただ、梨央奈は彼女自身のことについて悩んでいる最中だ。
今話したとしても、余計に混乱させてしまうだろう。

  「私の名前は小石川……。小石川文子よ」

  「あなたは?」

自分の名前を名乗り、同時に少女の名前を尋ねる。
友達になった記念といったところだ。

312伊須河 梨央奈『ウィッシュフル・シンフル』:2017/04/23(日) 23:54:18
>>311
「はぁー、こちらこそっスねー。
 能力を持ってる人が一人じゃない…
 って思うとなんだかやってけそうだなーと
 思えてきましたス!」
と、ニカニカと笑ってみせる。
友人というのは素晴らしいもんだなーと考えていた。
今の友人のことをきにしながらもそう思った。

「あー、文子先輩どうもよろしくっス!
あーえっとうちの名前は伊須河…伊須河梨央奈(いすかわれおな)ともうしまスっス!
 こ、これからよろしくっす!」
そう言って深々と頭を下げた。
まるで舎弟みたいである。

313小石川文子『スーサイド・ライフ』:2017/04/24(月) 00:46:36
>>312

  「そう――良かったわ。少しでも力になれたなら、私も嬉しいから……」

屈託なく笑う梨央奈を見て、こちらも微笑んでみせる。
誰かが救われるのを見るのは好きだ。
自分も希望を失わずに生きていこうと思えるから。

  「こちらこそ。どうぞ、よろしく」

大げさな梨央奈の様子を見て、思わずクスリと笑う。
そして、こちらも頭を下げる。
年の離れた友人が、これで一人増えた。

それからしばらくの間、梨央奈と二人で色々なことを話し合った。
大体は客観的に見れば他愛のない内容だった。
けれど、少なくとも自分にとっては、とても有意義な時間を過ごすことが出来た。

その後、梨央奈と別れ、帰っていく彼女を見送った。
やがて、自分も湖畔から立ち去っていく。
湖面から白と黒の人影は消え去り、透明な水をたたえた湖だけが後に残された――。

314斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2017/08/26(土) 01:31:03
――星見町 自然公園 森林区域 川のほとり

ジッ ザザ……
『星見町レイディオ、11時になりました
 ……今日も素晴らしい  ……日差しが……』
ザッ…

木々の木漏れ日を顔に受けながら
川のせせらぎと木の葉の風に揺れる音を子守歌に
15メートル以上の樹上でマフラーを首に巻いた少年が
ラジオをから流れる音楽を聞きながら寝そべっている

枝葉の隙間にはバスケット、小型ラジオ、そして長い鎖が巻き付いていた。

鎖は約15メートル程で、そのまま幹に垂れ下がり
それを使って登ったのだろうと推測はできる。

「こんなにいい天気何だから表に出なさい、かあ…ふぁー…。」

寝ぼけ眼に一つ欠伸をして目を擦る。

「『お弁当』は嬉しいけど、そうそう見つからない物なあー
『秘密基地』でグッスリするのは悪い事でしょぉーかっ」

バスケットは中身のおかげで生き物のように温かい

ただ、中に何が入っているかは少年にもわからないので
12時を待って食べるのを楽しみにしているのだ

「ニョホホホ …この笑い方も面白いなあ。」

そんなのんびりとした笑顔に陽光がちらついていた。

315??『?????・???』:2017/08/26(土) 20:26:56
>>314


   ……!  ……ッ  ガサッ   ザッ

 斑鳩が、穏やかな風に頬をくすぐられて正午を待ちわびていた時。
唐突に、その大樹の下から声が聞こえて来た。

 ……女性の、か細い哀願するような声と。
そして、それを罵る中世的な声だ。

 『ごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさい……』

 「……ッ       ……!」

何度も、泣いて謝罪する女性の声が下から聞こえてくる。
 それに対して、相手は何度も強く命令口調で何か告げている……が
この高度だと、風向きもあいまって余り良く聞こえない。

 このまま、無視しても複数の人物達は貴方に意識を向ける事なく
通り過ぎていくかも知れないが……。

316斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2017/08/26(土) 21:48:23
>>315
「んん、何か煩いな…?」

――ラジオから流れている曲から意識を逸らして体を起こし
樹下を覗くと罵りと泣く女性が目に入る

(え、ええーっ…人が寝てる下で …そうか僕は気づかれてないのか!
人間注意しないと上なんて見ない物なあーっ)

眼は寝ぼけから覚醒し、表情が苦笑いに変わる
だが口角はこの奇妙な出会いに引きつっていた

(……理由は解らないけど叱られているのかな?
泣くほど謝らせるってのもやり過ぎだよなあ…ど、どうしよう)

(ここで『無視』するのは簡単だ、気づかれてないんだから寝てればいいんだし
……でもそんな事したら安眠できないんだよなあ、僕の心に良くない物を残すじゃないか!)

無意識に右手首の腕時計に触る、『迷った時』の彼の癖だ
――数秒の思考の後に軽く首を振った

(――取り合えず声を掛けてみるかな、『事情』は知らないけど
『同じ立場』だったら僕だって少しは『助け』が欲しいものな。)

――樹上から乗り出した体に『大量の鎖』が巻き付き始める
半透明の鎖……『スタンド』だ
そして右手首から延ばした鎖を右手に巻き付けて切り離す。

(『ロスト・アイデンティティ』切り離した鎖は実体化してるから音もなる
これを手に巻き付けて木の幹を叩いて音を出せば気づかれるかな、ついでに少し声大きくしとこ)

「あのー…(樹木を)ノックしてもしもーし、其処の人 そう、そこで怒ってる人!」

「事情は知りませんし、個人の主義や主張は勝手」

  「でもそれを僕の下で出して
  公然と『女の子』を泣かせるほど謝らせるのもどうかと思うんですけどね、僕は」

「――具体的に言うと、やめていただけませんか?彼女、謝ってるじゃあないですか。」

そう言いながら斑鳩は僅かに微笑んだ
(…アトツイデニアンミンボウガイ!)

317??『?????・???』:2017/08/26(土) 22:15:13
>>316

 貴方は、鎖……『ロスト・アイデンティ』を出して
大樹の腹へと軽く叩きつけて音を鳴らす。

 安眠妨害への文句、そして普通の人として兼ね備えている親切心で。

 
見下ろした先にいるのは……大体、同じ背丈で中肉中背の男女? らしき二人だ。
一人は、泣いて膝を抱えて頭を下げている。病院服らしいものを身に着けている。

対して……もう一人はレインコートらしきものを身に着け、片手には……破片だ。

廃材などの、鋭いガラスの破片らしきものを薄い布で巻いた簡易な刃物を。何かしら
謝罪してる少女らしき人物に向けている。それは、傍から見て危うい光景だ。

レインコートの、向かいの少女を傷つけてる人物は。貴方の声のするほうに顔を向ける
深くフードを被ってるために表情は伺い知れない。

 ……二ィ

 しかし、何処か貴方を見て哂ったようにも見えなくもなかった。


 「……そっちには」

 ガンッ  アッ ィ……

 「関係ない」
 
 ガンッ  ヤメ……

 「ことさ」

 ガンッッ  イタイ

 少女らしき人物の髪を掴んで、貴方の丁度真下の木へと。その頭を複数回
返答と共に叩きつける。乱暴にされてる少女は、か細く制止をあげてる。

 「……これは お仕置きなんだよ。無関係の子猿には……どうでも良い事だろ?
家庭の事情って奴さぁ   」

 ヒヒヒヒ

 
 ……コートの人物は、愉快そうに貴方へ告げる。

318斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2017/08/26(土) 23:05:35
>>317
「あ、あ……」

(ぼ、僕は何でこの木を秘密基地にしちゃったんだ?
何でここに出かけようなんて思ったんだ? 何故気づいて起きてしまったんだ?
どうしてこの人達はこんな所でこんな事しているんだ…?)

――後悔に指先と喉が震える

(どうして『首を突っ込んじゃった』んだ僕はァーッ!!?)

汗が頬を伝う、夏の暑さのせいでは無かった、『恐怖』のせいだった

(どう見ても危ない人じゃあないか、覗かなきゃよかったあじゃないか!
こんな事だから僕はいつも『期末テスト』で赤点ギリギリなんだよなぁーッ!
『後悔』と『恐怖』がムンムンと湧いてきたじゃあないか!)

左手をまた無意識に右手首の『時計』に持っていく

チャリ…

左手に巻き付けた鎖のミサンガが動揺に揺れる

(や……やめよう、人の『家庭の問題』なんだ 謝って寝なおそう、『ラジオ』を全開にすればいい
30分耐えればいいだけさ、僕がこんな怖い人と関わる必要ないじゃないか)

(第一、これが『家庭の問題』なら僕が関わったところで
見えないところでまたやらされるだけじゃあないか『無駄』じゃあないか
無駄にカッコつける奴の方が『馬鹿』なんだ……)

掌が汗ににじむ

(こんなの警察がやる事じゃあない……か……)

「……ご、ごめ」

手には鋭利な刃物、家庭の事情、女の子の悲鳴 
確かに逃げるには十分だ それを誰が責めると言うんだ?
これを責めるなら『クラスでいじめを知らない、知っていても無視する人』まで悪になるじゃあないか。
誰も責めない、それをすれば自分も『悪』になるから。

――ところで、『私達』の時は誰か助けたのか?

「……や……」



 「やめろって言っただろうがあーッ!
 その『女の子』を傷つけるのは今すぐやめろぉーッ!」

  「アンタが気づく前に『写真』を取ったし『録音』もしてるんだからな!
  さもないと……さもないと『警察』に突き出すぞ!」

「アンタ、それでもいいのかッ!」

震える声を張り上げながら、斑鳩は同じように震える指先で『フードの男』を指さした。

(――全部嘘でたらめの上に何を何で言ってるんだ僕の口はぁーっ!!?
謝るんじゃあなかったのかぁー!?
でも頼むからこれで止まって下さぃぃーっフードの人ぉぉぉ!)

319??『?????・???』:2017/08/26(土) 23:50:53
>>318

>さもないと……さもないと『警察』に突き出すぞ!

>アンタ、それでもいいのかッ

 「……はは、ははは」

「俺を? 俺を警察に突き出すってか? 水面に浮かぶ月を切るって言うのか?
ははっ、出来ない 出来やしない。
 こいつが泣いてるのを止める事も、俺を警察に突き出す事も。
何一つ 解決なんてしやしないさ。
 だが、それでも俺には出来る事がある。なぁ? 
俺はこの子に罰を与える事が出来る。それが、俺の宿命さ
 肌を切り裂いて、爪を剥いて、髪の毛を引き抜いて泣き喚いてでも
止めて と言っても、ちゃーんと罰を遂行させる。それが俺だよ」

 フードの人物に、動揺した様子は見受けられない。
だが、しかしながら返答は返される。まるで、何かのお芝居のように
饒舌に貴方に喋りかける。

 「……さぁ、次は……爪切りだ」

   「いやぁ。。爪切りはいや  いやぁ…」

 少女へと、そのコートの人物は手首を掴み爪の付け根にガラスの先端を当てる。

震え声で、少女はいやいやと首を振り、制止の声をあげる。
 だが、そんな言葉が聞こえないように。じょじょに、ガラスの刃は
少女の爪と指の肉の間に入り込もうとしている……。

320斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2017/08/27(日) 00:18:58
>>319

――駄目だ

(と、止まる様子がない!それどころか爪切りィ〜!?
『硝子』で『爪』を『えぐる』って事なのかぁ!?
想像だけでも震えるほど怖いッ!)

現在地は樹上15メートル!
人間が無事に降りられるのは5メートルが限度!
でも……でも減速していたら『間に合わないかもしれない』!
この『事実』を前にもはや斑鳩に『違和感』を感じる脳の隙間は無かったッ!

(ガラスのナイフだ!…ナイフを動かされる前に蹴り飛ばせばいい!
でもそこまでの時間稼ぎが……僕に……でき……)

「やめろぉーッ!『ロスト・アイデンティティ』!」

(畜生ーッ、これで怪我したら誰を怨めばいいんだーッ!)

枝に巻き付いた鎖を右腕で掴みながら落下していく
その最中に左腕を『振りながら手首から伸びている鎖を切り離してナイフの持ち手めがけて投擲する』

そして両足の鎖を解除し、『自分の足で地上から3メートル地点で両足と右腕で減速し』
『影の両足でナイフを蹴り飛ばす』

そして4本の足で着地後に2人の間に割り込んでフードの男の手首を抑えにかかるだろう。

321遊部『フラジール・デイズ』:2017/08/27(日) 22:19:47
>>320(昨日は寝落ち失礼しました)

 
>やめろぉーッ!『ロスト・アイデンティティ』

 シュォォオ!!    バシッッ!!

 「おぅ……?」

 さながらスパイダーマンのように、斑鳩は颯爽と鎖を操り
鞭の如く振った銀色の線流は、そのフードの人物のガラスの刃の先を持つ手へ
見事に命中し 弾き飛ばした!!

 その硬直の隙をつき、スタンドの四肢を扱い十五メートルの高度からの
落下に対する衝撃も、鎖を利用していた事も相まって足が少し痺れるものの
見事に、その手首をキリキリと強く拘束出来る。そして……

   ――バサッ


 「――へぇ 子猿と思いきや、何処ぞの蜘蛛男の真似事かよ?
随分とユニークな力を使うじゃねぇか」

 お    『女だ』!!

 中性的な声であったが、そのフードの取り払われた顔は正しく女性の顔立ち。
だが、その眼光や歪んだ口元は。女性らしくない残忍な男性の表情の面影もちらついてる。

 「だが、お前……俺の間合いに入るって事は
それだけ  ――俺の牙が手に届くって事だぜぇ?」

   ビュンッ

 『女』は、斑鳩へと。掴まれてる方とは別の手をポケットに入れたかと思うと
弾き飛ばすように、小瓶を顔目がけて投げた!

322斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2017/08/27(日) 23:59:24
>>321(おきになさらず)

「――あれっ、えっ 女のひ」

ガシャアン!

鎖の音と同時に小瓶が落ちる
斑鳩の全身に巻き付かれた『ロスト・アイデンティティ』の鎖は頭部にも健在であった
ダメージはほぼ無いが、無論本人が驚かないかどうかとは別である
おまけに彼は相手が(中身は兎も角)女性だとは思ってなかったのだ

「いたぁぁぁあああ……くないっ!」

驚愕と同時に手首への拘束は緩む
――そして数秒すれば彼の思考にも『余白』が生まれる

「ッ違う!貴女 僕の『鎖』はともかく『手足』が見えてるな!『新手のスタンド使い』か!」

(――でも、この感覚は何だ?『懐かしい』? いや、僕は初めて会う筈だ……)

(でも不味いぞ…もしこの人が『スタンド』で僕を攻撃してきたら…!
じょ、女性相手に手を挙げるのかぁ〜ッ? いやもう既に挙げてるのか…
『バスケット』と『ラジオ』は悲しいけど諦めて逃げるしかないッ!)

323遊部『フラジール・デイズ』:2017/08/28(月) 00:12:29
>>322

 「女?  あぁ、そうだな。この体の、この姿なりは
間違う事なき 女さっ」

 「だが、それだからどうだって言うんだ?
いまさらフェミニストを気取るかっ? ――不愉快なんだよ
 見てくれだけで、侮られるのも 逆に畏まれるのも
俺は、俺なんだぜ。……なぁ」

  ブンッ!

 フードの女は、斑鳩の『ロスト・アイデンティティ』に向かって蹴りを放つ。

 普通なら、スタンドに対し生身の人間が蹴りを加えても。透過するだけだが……

「俺が 『スタンド使い』だってぇ〜〜〜?

違うね

 俺は『悪霊』さ。複数の一人 ただし 俺の名を覚えていいのは 一人だけさ」

324斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2017/08/28(月) 00:56:48
>>323

(ま、不味い…足の方の鎖はさっき『解除して』『影の足』にしちゃったんだった!)
(『影』で防御しても『ダメージ』は僕に来るんだよなぁーッ!
蹴りだと倒れこんでも避けられない……)

「……なら上だッ!」

――斑鳩の両腕の鎖が崩れ落ちる、それと同時に重なるような影の腕がフードの女性の肩を掴み
それを起点として『4本の足』で『跳躍』する…『二倍の脚力』で飛んだ身体が、
丁度フードの女性の上で逆立ちをしようとしていた。

――うまくいけば という前提だが、無論手首を緩くとはいえ掴んだままなので 
このまま背後から『腕関節を決められる』…が

(……駄目だ拘束としては荒すぎるし、かけていい技じゃない!)

  「よく聞きますけどねそういう理屈!」

「でも『見た目』っていうのは『中身』の上澄みの部分って考え方も…有るッ!」

チッ チッ チッ……

325遊部『フラジール・デイズ』:2017/08/28(月) 19:01:48
>>324(申し訳ありません。本日この1レスのみになります)

 >でも『見た目』っていうのは『中身』の上澄みの部分って考え方も…有るッ!

「ほほぅ! 『メラビアンの法則』かいぃ!! おたく、面白い事を唱えるねぇ!」

『ロスト・アイデンティ』は優秀なスタンドだ。影の足は、普通の脚力の倍以上の
跳躍力を生み出し フードを着る危険な女の蹴りを回避して、頭上を取る。

 「おおぅ! 本当身軽だねーっ。俺にも頂戴よ、その鎖
もっと上手く操ってやるのになー はははははッ!!」

  ……シクシク

 女は楽し気だ。崩れ落ちるように座り込んでる、家族 と言われた少女の
ほうは俯いて泣いている。いまだに顔をあげたりはしない。
 そして、フードの女と違い。少女のほうは病院服を身に纏っている。

 「こいつは病院帰りでねぇ。そんで、俺も同じく病院帰り。
さぁて、なぞなぞなーに。病院から帰って来た俺達ふたり、なーにを
ポケットに入れてますかー? ――これだぁ!」

 ビュッッ!   ピシャァ!!

 フードの女は、懐に手を伸ばすと。頭上をとる貴方目がけて……『輸血パック』だ!
予め、切れ込みを入れてたのか。投げた拍子と勢いで、それは貴方の目と鼻の先で
真っ赤な波紋が飛んでくる! 

 「さぁさぁ次は、どう防いでみるんだよー 似非蜘蛛男さんよー!! 
あはははははははは!!!」

326斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2017/08/28(月) 23:46:42
>>325
「ぶっ……!」

物を投げられた事により反射的に目をつぶる
しかし、視界がふさがれたことには変わりが無い

(ゆ、輸血パック…『血液』ッ!?『鎖』で『液体』は防げない…)

――チッ チッ チッ

(こ、ここまでされるともう手段を選べない……のかぁー!)

――影の両腕は未だ『フードの少女』の肩を掴んでいる
その状態で背後に着地し、『背負い投げ』をしたら?

「悪いけど、ちゃんと『受け身』取ってくださいよぉー!」

4本の足が地面を捉え、影の両腕が力任せに遠くへ投げ飛ばそうとする
パワーは人間並程度だが……

「『ロスト・アイデンティティ』!、頭部の『鎖』も解除する!」

投げ飛ばそうとした瞬間に頭部の『鎖』も解除され
『影の頭』がズレるように現れる、斑鳩の目が見えていなくても
影の頭部の眼は泣いている少女を捉え、其方に斑鳩は駆け出し

「失礼お嬢さん!アーンド……逃げるんだよおぉーっ!」

――4本の腕で抱え上げて走り出そうとした!

(この人も戦うと元気になるタイプとみた、じゃあ相手にしていられるかー!
今はここを離れるのが先決だ!)

327遊部『フラジール・デイズ』:2017/08/29(火) 21:18:37
>>326

>悪いけど、ちゃんと『受け身』取ってくださいよぉー!

パワーは人並みと言えど……影の手を使えば、飛距離は上がる!

 「ふわっ!?」

 女は投げ飛ばされる。茂みの奥へと消える。その間に、泣きじゃくり
顔を伏せる少女を、見事に貴方は抱きかかえてフードの女と逆方向に進めた!
 少女は、少し驚いた声を上げ硬直するが。貴方の行動に拒絶する事は無く
大人しく抱えられている。

「おい 待てよ似非蜘蛛男よー! 逃げずに遊べよぉ!!」

そう、貴方を呼び止める声が背中に張り付いてくるのを聞こえながら
100m程走り……唐突に、体に付着した血液が『消失』した。
 どうやら、その血はスタンドで出来たものだったようだ。

泣いている少女は、髪の毛の先端がピンクっぽい栗毛の子だ。
 
 「ぅ ぅ えぅ ひぐっ いぅ……あ あり  がとう。
た  たすけ……て くれて」

 双子なのだろうか? フードの女に随分顔つきが似ていた。
もっとも、涙を流し嗚咽とひゃっくりを上げる様子は。フードの残忍な
女とは全く真逆の雰囲気を醸し出している……。病院服のタグには『遊部』とある。

328斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2017/08/29(火) 23:13:14
>>327

>おい 待てよ似非蜘蛛男よー! 逃げずに遊べよぉ!!

「誰が蜘蛛じゃーッ!精々手足が8つなのと鎖を伸ばせるだけだろうが!
あと女性だろうと男性だろうと人を殴るのとか御免です、さよならグッバイ!」

ズダダダダダダッ

(……あれっ?もしかして僕かなり蜘蛛なのでは?)

――血濡れの顔を振りながら影の頭部で視界を確保しつつ森林の中を『走りながら跳躍して』逃げ回る

(いやいや今考えるのはそこじゃないそこじゃない『今の僕の恰好』だ。)

傍目今の斑鳩は『顔面にべっとりと血が付いていて』
『拘束具の少女を抱きかかえて運んでいる』
『軽業等の運動で汗をかいた男』である。

(――役満!不審者の数え役満だよこれ!
お巡りさんに助けを求めたらそのまま僕がお巡りさんに連行間違いないよこれ!)

3択―ひとつだけ選びなさい
答え①ハンサムの翔は突如完璧なアイデアがひらめく
答え②メイドさんがきて助けてくれる
答え③かわせない。現実は非情である。

選びたいのは2……いやなんだこの選択肢メイドって何?
洋館なら兎も角森林に居たら不審者その3だよコレ、前門の不審者後門の不審者だよ。
却下で!

3…絶対選びたくない、もし捕まったらお爺ちゃんとお祖母ちゃんにまであらぬ噂がかかってひぇぇぇぇ
却下で!!

1…やっぱこれしかないな、これが血なら水で何とか洗い落とせば…幸い自然公園なんだし
水場とかは困らない筈!よし、そうと決まればこの僕の目が……

「あれっ、血が落ちてる……?」

顔をぺたぺたと触るとどこも濡れていない
「これで不審者扱いは逃れる…かもだけど、如何いう事なんだ? 夢じゃあないもんな……」

影の頭で後方を確認しつつ、追ってこないと解れば歩みを止めて息を整える
(これ以上追ってこなくてよかったな…下手したら『ターザン』しないといけない所だった)

チッ チッ チッ……

>ぅ ぅ えぅ ひぐっ いぅ……あ あり  がとう。
た  たすけ……て くれて

「…あっ、起きたぁー? ごめんね急に抱きかかえちゃって……ハンカチいる?」

懐から影の腕でシルクのハンカチを取り出して差し出す
何とか顔を笑顔にするように努めながら、ゆっくりと彼女を降ろそうとした。

「僕 斑鳩、斑鳩 翔 空は飛べないけどね……
君の名前、教えてくれると嬉しいな。」

(『遊部』……この子…そっくりだなさっきの子と…『姉妹』?
『スタンド』は見えてたけど…参ったなあ『家庭の問題』か
見えてる割には出さなかったのも気になるし……。)

――右手首の腕時計を弄りながら

329遊部『フラジール・デイズ』:2017/08/30(水) 19:29:45
>>328


>僕 斑鳩、斑鳩 翔 空は飛べないけどね……
君の名前、教えてくれると嬉しいな

 「……えぅ ひぐっ、い い 斑鳩 さん……
わ 私の いぐっ うっ  な 名前……」

      ポロポロポロ

少女は丸い透明な大小ばらばらな球を地面へと落としながら
不規則にしゃっくりを繰り返し、呟く。

 「な  なまぇ   わ  『わからない』
わたし  だ  だれ?   
 ぅぅぅ゛ な なんにも  『わからない』
わからない よぉぉ゛  うっ  えぅ゛」

 少女は泣きじゃくる。

   ……パサッ

 激しく泣く、少女の検査衣に。元々入れていたらしい
何やら『メモ用紙』らしいものが零れ落ちた。

 この子の苗字は恐らく『遊部』である。検査衣からも
恐らく『城址学区』の『総合病院』の患者である事も理解出来る。

 だが、それより更に。この娘の『真実』を知りたければ
メモ用紙を開く事で、僅かなりでも情報を知れるはずだ。

330斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2017/08/30(水) 22:40:38
>>329

「そっか、解らないかあ……
まあまあそんなに泣かないでさ……僕もショックだけど」
――取り出したハンカチでそっと目元を拭こうとしつつ思索にふける

(名前が「わからない」?…目に見えてるし衣服にも書いてあるけど
本当に知らないみたいに言うんだな ……拘束服なんて見覚え……有るけど。)

少年は目線を合わせるためにしゃがみ込み
笑顔で話しかけ続ける

「ほら、女の子に泣き顔なんて似合わないんだから……って僕の家のじいちゃん言ってたし。
落ち着いてゆっくりお話ししよう。」

(不味いなあ…僕『転校生』なんだからここの地理に明るくないのが裏目に出たか?
……あっ『スマートフォン』!……家に忘れてたんだった。ここらの地図入ってるのアレだよなぁーッ!
こういう時に僕の『スタンド』って役に立たねえ!)

「どうしよっかな、安全な場所まで君を連れていきたいけど……?何だろうコレ、紙切れ?」

(――この子には悪い気がするけど見せてもらおうかな、もしかしたら
『安全な場所』か……あるといいなぁー。)


足元に落ちた紙切れを拾い上げて開こうとする
赤いマフラーが八月の風に揺れていた

(そういやあの子も『スタンド使い』の筈なのに…ビジョンの無いスタンド?
それとも、『もう見えてた』のかな?……うーん)

331遊部『フラジール・デイズ』:2017/08/31(木) 19:15:24
>>330(次レスで〆させて頂きたいと思います)


 「ぅう えぐっ は、はい。斑鳩おにーさん」

 貴方の、献身的で朗らかな態度は。彼女の焦燥を幾らか減らしたらしい。
まだ嗚咽は残るものの、幾らか受け答えは出来ている。
   
 そして、貴方は紙片を開く……。

 カサッ


 『 これを読んでる―――(文字が潰れている)へ

きっと 何が起きてるのか分からず途方にくれているでしょう。
ひとまずは、清月館に向かってください。寝床はこちらで用意出来ています

 ――(黒く塗りつぶされてる)は閉じ込めています   

  ですが支配権は未だあちらにあります  そう長くは保ちません

貴方の事を愛しています

どうか 安らかな永久の眠りが 貴方に訪れん事を      』


   ……

       ……

    ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨


 「…………」

 何時の間にか、少女の嗚咽としゃっくりは止まっていた。

紙片を覗く、貴方に強い視線が突き刺さる感覚が起きる。
泣きじゃくっていた『遊部』の方向からだ。

332斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2017/08/31(木) 21:29:38
(おにーさん、か 僕に妹がいればこんな感じなの…?)

(……所々読めないけど、これ 妙だな)

思考の癖として顎を触る だんだん泣き声が遠くに聞こえるように

(これは多分この子に宛てた手紙何だろうけど…)
(清月館に向かえ?病院の拘束服を着てるのに?)
(『閉じ込めてある』……ふつう使わない言葉だよな)
(支配権…?何の支配権だ?)
(愛しています…保護者からの手紙なのか?)
(一番奇妙なのは…『安らかな永久の眠りが 貴方に訪れん事を』
娘に使う表現じゃないよな?まるで……死人とか……もっと別の)

閉じ込める 支配権 悪霊 家庭の問題 拘束服 病院

        「――まさか」

 頬を伝って汗が流れる……暑さが原因ではない

    「まさか、あのフードの少女!まさか!」

 (見えないスタンドではなく!自身を『悪霊』と言った!)

         (……僕の『スタンド』が纏う形だったのでピンと来なかったが)

  (もし僕に発現していたのが『人型のスタンド』だったらどう表現した!?)

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨

  ――視線を感じる 突き刺さるような視線を少女の方から

 「ま、まさか……『この女の子』! いや…『この女の子達』なのか!?」

   嗚咽としゃっくりが聞こえていない……?

バッ!

――メモ用紙から顔をあげて視線の方を見る。
腕時計の秒針が斑鳩の焦燥と共に未だに音を立てている

333遊部『フラジール・デイズ』:2017/08/31(木) 21:47:06
>>332(長らくのお付き合い 有難うございました)





''' ゙  ,,,,,,,,,,,   :::::    .:::''         ゙''-
  三,, - 'i': : : : :゙:'ヽ. ::   :::'' ,, -'':゙:゙:゙゙:':'ヽ-,, 彡
   'ヽ, |': :(●): :| 'ヽ:::  .::'.'/ |: :(●): :| ゙''-,,,,
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゙・ ''゙゙, -・-゙'''''''''゙-=≡_丶 '''',ヾミミ゙゙''''__-'''_彡ヾ''''
'' ,  ゙                   ̄   ゙゙



  
 ……こいつは         『消す』べきか?

 ……いや      『感じる』

   ―――これは  『異なる道へと旅する自分』だ。

…………ならば       辿るべき   下すべき事は分かりきっている


  
――――――――――――――・・・


『斑鳩』は、一瞬だが 確かに見た。

 少女とは思えぬ、眼光。それがエックス線のように貴方の内側まで
通り抜けるように 見透かすように貴方へと向けられていたのを。


 「……うぅ」

   ドサッ

 少女は倒れる。貴方は、この『遊部』が気絶したのを視認する。
打って変わって、倒れ込んだ少女の顔は年相応の 泣き疲れた顔だ。

 紙に書かれた場所に送り届ける事が必要かどうかは分からない。

ただ、この少女は……何処か人と異なる事だけは。はっきりと貴方には理解出来る。

334斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2017/09/01(金) 01:52:22
>>333
(――何だ今の眼、僕の中を見たような
この胸の中をかきむしるような感覚……)

 「――もしかしたら、君が僕に運んできてくれるかもしれないな……人の出会いか
   偶々偶然の積み重ねかもしれないけど、人間はそれを『運命』って言うんだろ。」

寝顔の涙跡をそっとハンカチで拭いて仕舞い込み
そのまま斑鳩は聞こえる筈もない独り言を言い続ける。

「『心を治せる』もしくは『時間を巻き戻す』……いない筈はない
そう子供のように無邪気に信じているんだ、僕は 僕だけは」 

拘束服に書かれている名前を一瞥する
…その瞳は笑ってはいない。

  「遊部ちゃんか、『君達』とは今度ちゃんと…『友達』になりたいな ゆっくりと…お話して。
   お互いを『尊重』しなくっちゃあな……君は『異常』ではない、きっと『私』と同じだろう?」

――解離性同一性障害
(おそらくは、それに関連するスタンド 自動操縦型か……)

   (精神の形状は似ている筈だが『役の分離』と『鎖の枷』……私とは真逆だな。)

そこまで言って深呼吸すると顔に間抜けな印象を与える笑顔を戻す
……頬を指でかきながら

「実際かなり怖いんだけど僕も人の事言えないし……まあ、それはそれとして」



 「寝顔は可愛い女の子なんだから放置は男の子としてできるわけないよなぁ〜ッ!
  幸い場所は解るし、抱えて清月館に行ってみるかぁ……。」オマワリサンニアイマセンヨウニ!

少女を起こさないように抱え上げて清月館に歩みを進める。
――ところで何か忘れていないだろうか?

  (……はっ、僕の晩御飯のバスケット&ラジオ! 何処だぁぁぁッ〜!!?)



                             ……to be continued?

335神『フライト800』:2017/09/15(金) 00:47:12
「……」

「ふむ」

和服の男が一人。
ベンチに座っている。
膝の上には金魚鉢があるが中に金魚はいない。
いくつかビー玉が入っている。

「この色味、美しさをなんという」

「難しい問題だなぁ」

336神『フライト800』:2017/09/23(土) 00:22:18
>>335
答えは出ず。

「帰ろ」

337水瀬 留美子『ブラックボトム・ストンプ』:2017/10/29(日) 22:31:51

   「ぎぃや“あぁぁ〜〜〜〜!!!!!!!!」

ベンチに腰掛ける眼鏡の女。
横持ちしたスマホ、この世のものとは思えない絶叫。

「い、一万円でき、来てしまったッ。
 今回の『ガチャ』の目玉の『英霊』……
 フヒッ、フヒヒヒヒッ!!
 こりゃあ笑いが止まりませんなッ!ヒヒ。
 …さ、さっそくスクショを取って(カシャ)画像をツイッターに」

即座にスマホを縦に持ち替え、
バックグラウンドで起動していたSNSアプリを起動、
投稿画面を開きスクショ画像を張り付ける。

「――待って。
 たかだが1万で引いたって面白くないし、
 そうだッ!せっかくだし1万じゃなく10万『課金』したって『嘘松』して、
 うんうんッ!!そっちの方が絶対面白い!!」

 『10万円ぶち込んだ結果、無事お迎え。
  これで給料日までもやし生活。助けてクレメンス』
 
「…っとよぉ〜しッ!投稿!!!!
 こぉ〜りゃあ、いっぱい『いいね』が来るぞ。
 フヒッ、フヒヒヒッ、ウヒヒヒヒヒヒッ!!!」

338夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/10/30(月) 00:04:45
>>337

「ふぅぅぅぅぅ〜ん……」

いつのまにか隣に誰かが座っていたことに気付くかもしれない。
サングラスをかけた少女だ。
一体いつから隣にいたのだろうか。
それは分からない。
確かなことは、眼前で繰り広げられる奇行に対し、
まるで子供が珍しい生き物でも見つけた時のような視線を向けているということだ。

「――たのしそーだね」

339水瀬 留美子『ブラックボトム・ストンプ』:2017/10/30(月) 20:38:13
>>338

ブッ ブッ

持っているスマホがバイブする。
SNSアプリの新着通知だ。

      「お!!!」

「『足利ルシファー』さん、『気象予報士』さんから
 早速おめでとうのリプライが来ましたなぁ〜〜!デュヒッ!
 すぐに返信したら暇人って思われてしまうし……、
 
 事前に描いていた『ノーメディシン・ノーポイズン』な、
 ソシャゲの『4コマ』漫画を、お迎え記念と称してうpしてぇ、
 その際にリプライ返せば、更に『いいね』と『リツイート』がドンッ!!
 フヒヒヒッ!!こりゃあ、今夜は『いいね』の通知に震えて眠れ――


            >「ふぅぅぅぅぅ〜ん……」


「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッッッッ!!!!!!!!」

刃牙に金的を食らった時のシコルスキーのような絶句の表情。
声にならない叫びを上げ、咄嗟にスマホの画面を伏せる。
そして酸欠の金魚のように口をパクパクさせながら、
恐る恐る隣に腰掛ける夢見ヶ崎の方へ顔を向ける。


「こ、こ、こ、こんにちはっ!!!
 いやァ!別に楽しそう、じゃあないよッ!
 こんばんはッ!あ、あれ?お、おはようございますっ?
 ええッと!今何時だっけ?てか!!あんた誰!!!」

340夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/10/30(月) 23:10:35
>>339

「そう?なんか超たのしそーに見えたんだけどなあ」

「あ、こんにちは」

「んー?今は午後四時すぎ」

水瀬とは対照的に、至って平静な様子で挨拶し、時間を確認する。
この辺で何か面白いものはないかと思い、近くを歩いていたのが数分前。
響き渡る奇声を聞きつけ、好奇心をくすぐられた私は危険を顧みず現場に急行した!
そして、そこで調査員は衝撃の光景を目撃する!!
次週を見逃すな!!!
そんな感じで水瀬の姿を発見し、隣に座って今に至るのだ。

「私?私は通りすがりのアリス」

もちろん本名じゃない。
自分で自分につけたニックネームだ。
私は生まれつき目が見えなかった。
でも、最近になって見えるようになった。
そんな私にとって、この世界はまるで不思議の国みたいに映る。
だから、私はアリス。

「別に何ってわけでもないんだけど、ちょっと散歩してたんだ」

「何か変わったことでもないかなぁと思って――」

「そんな感じかなぁ」

そう言いながら、視線は水瀬に向けられている。
なぜかって?
そりゃあ珍しいヒトを見つけたからに決まってる。

341水瀬 留美子『ブラックボトム・ストンプ』:2017/10/30(月) 23:25:03
>>340
「ブフォッ!」

予想の斜め上の返答に思わず吹き出す。
此方の容貌はむっちりめのアラサーメガネだ。
それ以上に特筆すべき点はない。

「こいつ何言ってんだ……。
 え、ちょ、こいつ何言ってんだ!!!
 通りすがりのアリスって、何なん…?
 もしかして『オフ会』の待ち合わせでもしてらっしゃるんですか!?
 こんな人気もクソもない自然公園で!? フヒヘッ…」

アリスと名乗る女に、怪訝な目を向けながら。

「えっと、その、だな、
 休みの日に散歩してて、休憩ついでに『ソシャゲ』をやっていただけですって。
 ホラ、今流行ってるじゃん。
 別に怪しい事はやってねってッ!と、通りすがりのアリスさん…?」

342夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/10/30(月) 23:59:13
>>341

「『アリス』でよし」

「それか『明日美』でもいいよ」

「『夢見ヶ崎明日美』っていうのがフルネームね」

喋りながら、それとなく水瀬を観察する。
なるほど、とりあえず見た目は奇妙なところはない。
ゲームしてたっていうのも本当だろうし、別に突っ込むところじゃない。
でも、ゲームしてる人間みんなが、家の外で大声で叫んでるわけはない。
しかも、あんな聞いたこともないような妙ちくりんな叫び声で。
このヒトに対して、好奇心が刺激されるのを感じる。

「そーだよね。やってることはぜんぜん怪しくないよ。これっぽっちもね」

「ところで、お姉さん――」

「ゲームする時、いつもあんなデカい声で叫んでんの?」

こちらの年齢は十台半ば。
高校生のようだ。
頭にはリボンのようにスカーフを巻いている。
爪には、カラフルなネイルアートの付け爪が見えた。
掛けているサングラスの色はそんなに濃くない。
よって、レンズの奥の黒目がちの瞳が透けて見えている。

343水瀬 留美子『ブラックボトム・ストンプ』:2017/10/31(火) 00:20:35
>>342

「『明日美』で行きましょうッ!
 あんたを『アリス』って『HN』で呼ぶと、
 必然的に私も『鬼龍院”ベルフェゴール”颯樹』ッて
 名乗らなきゃいけないからなァ!うんッ!ウヒヒヒッ!」

上擦った、下卑た印象を与える笑い声を漏らす。


             「いやッ!」

「だってッ!『シモ・ヘイヘ』よッ!!
 周りの『フォロワー』が、5万、10万とか課金しても
 出ない『シモ・ヘイヘ』を1万でお迎えできたんだって!
 そりゃあ、一目も憚らず半狂乱でござろうよッ!!
 周りの雑魚どもに自慢して、『イキリ』たいっすわァ〜〜」

どうにも要領を得ない説明だが、
どうやら『当たり』を引けたらしい。


「ッて!!!『高校生』ッ!?
 わ、若ッ!うわ!まぶしいッ!!
 随分と『キラキラ』な恰好してるけどぉ…、
 うわあ、頭に『リボン』、うらやましい」

344夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/10/31(火) 00:49:17
>>343

「ながっ」

告げられたHNに対して、極めてシンプルな感想を漏らす。

「長いから『ベル姉』って呼んでいい?」

「それか、教えてくれるんなら、HNじゃない方でもいいんだけど」

そして、ある意味で専門的な説明に耳を傾ける。

「ふむふむ」

「なるほどね、なっとくなっとく」

「分かる分かる、うんうん」

うなづきながら同意の意思を示す。
『ソシャゲ』はちょっとやっただけなので、本当はあんまり分かってない。
だって、それ以外に興味の対象になるものが多すぎるから。
まあ、当たりが出たら嬉しいってのは理解できるし。
懸賞とか福引とか宝くじとかと似たようなもんでしょ、たぶん。

「ありがと」

その表情に、邪気の感じられない屈託のない笑いが浮かぶ。

「なんていうか、色んな色が好きだから」

「色がたくさんあるといいなって思ってさ」

345水瀬 留美子『ブラックボトム・ストンプ』:2017/11/01(水) 19:29:47
>>344

「ベ、『ベル姉』……。
 ふふふッ、懐かしいなぁぁ。
 『獅子損損ポジャパン』ちゃんにも、
 昔そんな風に呼ばれてたなぁ…。

 『mixi』時代にファンですってメールくれて…、
 そこから『オフ会』で意気投合して、
 絵や同人のイロハを教えてあげて一緒に『イベント』行って…」

             「楽しかったなぁ」

――ダンッ!

顔をくしゃりと歪め、
腰掛けているベンチの背もたれを拳で叩く。

「なのに、あのクソオタク女!
 絵を覚えてチヤホヤされ初めた途端に、
 私の『ツイッター』と『pixiv』のフォロー外しやがってッ!
 今期の流行りものをいっちょかみするわっ!
 大手には尻尾をきゃんきゃん振るわっ!
 私の絵をまんまトレスして、私より『いいね』を貰うわっ!
 ふざけんじゃねェーッつの!!!私は踏台かっ!?なァ!!!!」

「毎日、毎日スパム報告して、
 この間、とうとう『凍結』に追い込んでやったわッ!
 ざまあみろだよッ!…フヒ、フヒッ オエッフヒヒィ」

ドンッ  ドンッ  ドンッ

横に座る夢見ヶ崎の事などお構いなしに、
ベンチを小刻みに叩き、気味の悪い笑みを浮かべる。
だが、直に表情を戻し――

     ミナセ  ルミコ
「本名は『水瀬 留美子』って言います。
 水曜日の『水』に浅瀬の『瀬』、『留』まる『美』しい『子』。
 『ベル姉』でも『水瀬』でも『留美子さん』でも好きに呼んでよ。
 あんたと同じで『色々』な『色』があるのよ私にも」

346夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/11/01(水) 21:47:24
>>345

再び暴れ始める水瀬に文句を言うわけでもなだめるでもなく、ただじっと見つめる。
その様子をよく観察するためだ。
目が見えなかった自分にとって、見たことのないものというのは人よりも多い。
どんなものであれ、それが見たことがないものであれば興味を引かれる対象になる。
今、隣にいる水瀬留美子も例外ではない。

「イイ名前じゃん」

「じゃ、ミナセさん」

ホントはもっとひねった名前で呼んでみたかったけど仕方なく妥協した。
またボーソーされたら困るし。
ベツに私はいいけど、周囲への配慮というヤツだ。

「なんつーかさ――」

「ウチらって、わりと似てるとこある気がするかも」

「たまたま隣に座っただけのヒトに、こんなこと言うのもヘンな話だけど」

「ま、気にしないで」

「なんとなくそう思っただけだから」

その言葉には二つの意味が含まれていた。
一つは人間としてという意味。
ほんの少し会話しただけの知人ですらない相手だが、
心の奥底に横たわる闇とその中で輝きを放つ一筋の光が感じられた。
もう一つはスタンド使いなのではないかという感覚だ。
この水瀬留美子という女性から漂う『奇妙な雰囲気』に、
どことなく『非日常の力』の匂いを感じ取った。
もちろん、これはただの勘でしかないし、確かめるつもりもない。
なんの根拠もなく何となくそう思ったことを口にしただけのことだ。

347水瀬 留美子『ブラックボトム・ストンプ』:2017/11/01(水) 22:23:48
>>346

  「似てる?」

  「アタイとあんたが?」

  「フヒッ」

目を細め、意味深な事を口にする『星見ヶ崎』に
「何言ってんだこいつ」って視線を向ける。
その傍らに――

               『パミィーッ』
     ズギュン

子供程の背丈の人型スタンドを発現する。
スタンドは濁水で人を象ったような容貌をしており、
その臀部にはドラゴンボールで『セル』が生やしていたものに
酷似した全長1m程の『尻尾』が生えており、所在なさげに宙で畝っている。

「アタイって言っちゃったけど、
 今時アタイはねーよな。ヒヒヒ。

 アタシがあんたみたいな二次元美少女とそっくりだってなら
 めっちゃ張り切ってコスプレして『インスタ』しまくるっての」

348夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/11/01(水) 23:26:52
>>347

            チチチチチ……

木立の向こうで鳥が鳴く。
なんてことのない穏やかな日常の風景。
そんな中に出現した非日常の異形。

「いいや、そうでもないね」

「今、思ったわ――」

「私のカンも捨てたもんじゃないってさ」

水瀬留美子に向けていた視線が、その傍らに発現した『ブラックボトム・ストンプ』に移る。
サングラスの奥の瞳を細めて、その特徴的な姿を観察する。
そして――。

  『 L(エル) 』 『 I(アイ) 』 『 G(ジー) 』 『 H(エイチ) 』 『 T(ティー) 』

水瀬の隣に座る夢見ヶ崎の更に隣に、人型のスタンドが姿を現した。
男とも女ともつかない無機質な声で、傷のついたレコードのように、
途切れ途切れに『一つの単語』を呟いている。
その両目は閉じられており、両手には『医療用メス』を思わせる形状の鋭利な爪が伸びていた。

「――どうよ」

「『似てる』でしょ」

片手を軽く上げると同時に、人型スタンドも同じ動作で片手を上げる。
付け爪のある指とメス状の鋭い爪のある指が重なる。

「顔をウリにできるほどイケてるとは思ったことなかったなぁ」

「自分の顔、見たことなかったから」

349水瀬 留美子『ブラックボトム・ストンプ』:2017/11/01(水) 23:38:33
>>348


「…」


   「ああ〜ッ」  

夢見ヶ崎の傍らに現れた『医療従事者』を思わせる人型と、
そして自らの分身を見比べ、
少しの間を置き、思わず口をあんぐりと開く。


            「”?!”」
「ぎィえッ!
 私だけに目覚めたものだと思ってたのにッ!
 朝起きて、とうとう『中二病』拗らせて幻覚見始めたと思って、
 30年生きてきて、すげー勢いでやべー焦ったのにッ!」

          「て、てか!!」

「あ、あんた、それッ!ペル、
 フヒッ!ゴホンッ!あんたも、ペペペペ!
           ――『ペルソナ』ぁぁ!?」

350夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/11/02(木) 00:07:16
>>349

「え?寝言は寝てから言うもんでしょ?」

水瀬に対して辛辣な突っ込みを入れる。
そう言いながらも、彼女の反応には新鮮さを感じた。
今まで会ったことがあるスタンド使いなんて、まだちょっとしかいないけど。

「ベツに誰がどう呼ぼうがジユーだと思うけど――」

「持ってるヒトの間じゃ、『スタンド』っていうらしいよ」

「『これ』とか『それ』とか」

『ブラックボトム・ストンプ』と『ドクター・ブラインド』を交互に指差す。

「名前を教えたんだし、ついでだから『そっち』の名前も教えてよ」

「私のは『ドクター・ブラインド』」

「サイコーにクールでマジ超イケてる私のバディ」

351水瀬 留美子『ブラックボトム・ストンプ』:2017/11/02(木) 00:21:31
>>350

「ンゴ」


辛辣な突っ込みを受け、
思わず変な声を漏らした。


「『ス』『タ』『ン』『ド』――。
         へ、へぇ〜…」

「そういう『ルール』が既にあるって事は、
 もしかしてクソみたいに人気のない『地下アイドル』のライブに
 足繁く通うオタクの常連客連中程度には、
 その、『スタンド使い』っていうのがいるのかな…」


            『パミッ!パミッ!』

死にかけのセミの様な呻き声を漏らす、
自身の醜悪な一面を顕在化した自分自身と、
夢見ヶ原の『スタンド』を見比べると、ため息を漏らす。

「これは、なんだっけ。
 ああ、そうだ。『ブラックボトム・スタンプ』って名前。
 まだ、どうにも名前がパッと出てこないんだけど」

「やっぱ明日美氏の『スタンド』の方が、格好いいわね。
 『トレード』機能とか実装されてないのかしら」

352夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/11/02(木) 00:43:00
>>351

「まあ、私とミナセさんだけじゃないことは確かねー」

「私も何人か会ったことあるし」

「もうすぐメジャーデビューするインディーズバンドの取り巻きくらいの数はいるんじゃない、たぶん」

なんとなくだが、この町だけでも探せば結構いるだろうと思う。
私が持ってるんだから、他のヒトだって持ってるでしょ。
夢見ヶ崎はそんな風に考えている。

「そお?」

「私は結構かわいいと思う」

「この尻尾とかチャーミングだし」

興味深そうに、『ブラックボトム・ストンプ』の尻尾を眺める。
純粋な人型である自分のスタンドにはないものだ。
どのような機能を果たしているのだろうかと好奇心が湧く。

353水瀬 留美子『ブラックボトム・ストンプ』:2017/11/02(木) 23:00:37
>>352

「メジャーデビュー間近のインディーズって
 億が一、売れた場合にも『方向性』が違うって、
 その世界にどっぷり浸かってる、
 バカで無駄に歳食った古参のバンギャが発狂する奴じゃねーのぉ!

 『みかたん@3日目C-21』さんも、
 カラオケで『嘘』と『モノクロのキス』を歌われると、
 そのオタク女をブチ殺したくなるって言ってたわ」


   ウネッ ウネッ

           スッ

夢見ヶ崎の視線が『ブラックボトム・ストンプ』の『尻尾』に、
注がれている事に気付き、その動きをすっと止めさせる。

「「『切り札』は先に見せるな」
 って私の『初恋の人』がドヤ顔で語ってた フヒッ。
 ん、ん〜ッ、と言っても何が出来るか、って私が知らないんだけど」

354夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/11/02(木) 23:35:06
>>353

「どーでもいいんだけどさ、『数』の話をしてるんじゃなかったの?」

「ま、とにかく分かりにくいけど結構たくさんいるってことだよ」

「たまたま隣に座ったウチらが持ってるみたいにね」

ふと『ブラックボトム・ストンプ』の尻尾が止まる。
それを見て、クスッと笑った。
ほんの少し、いたずらっぽい笑み。

「それってさ――」

「『そこ』に秘密があるって考えていいんだよねえ?」

「ただのカンだけど」

     スッ

『ドクター・ブラインド』が、手術前の執刀医のように両手を掲げる。
両手にあるのはメスではなく爪だ。
これは逆に『ブラックボトム・ストンプ』にはない部分だろう。

「まあ、私のも似たようなもんかもね」

「別に、『ここ』に秘密があるとは言ってないけどさ」

そう言って軽く笑う。

「何ができるか知っとくと普段の生活で役に立つかもよ」

「私もちょくちょく使ってるし」

355水瀬 留美子『ブラックボトム・ストンプ』:2017/11/03(金) 11:14:15
>>354

 「フヒヒッ」


「そうね、造形は必然性。
 ゲームのボスってやたら触手を生やしたり、
 別に飛びもしないのに背中に何枚も翼を生やしたり、
 そういう機能美と造形美を両立できていないものが、大嫌いッ!

 『ブラックボトム・ストンプ』が私の頭の中の友達だっていうなら、
 この『尻尾』にも何かしら意味がある筈。明日美氏の『爪』と同様にね
 ――まッ!いいでしょう!!」

腕時計で時刻を確認すると、
ベンチから立ち上がる。

「帰ろうッ。
 これから無数の『いいね』と『リツイート』が、
 私の『承認欲求』を満たそうと油田の様に噴流するのフヒヒッ」

356夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/11/03(金) 21:23:24
>>355

「んじゃ、ばいばい」

「またどっかでばったり会うこともあるかもね」

「スタンドを持ってるヒト同士は会いやすいんだってさ」

ひらひらと手を振って水瀬を見送る。
もし会ったら、その時は『ミッちゃん』ってよぼっかな。
それとも『ルーミン』の方がいい?
またなんかのスイッチ入っちゃうかもしれないけど。
ま、その時はその時ってことで。

「――私って、好奇心が強いから」

一人になり、ぽつりと呟く。

「次は、その『秘密』も見せてもらおっかな」

「『アリス』の名にかけて――ってね」

森の近くに出かけたアリスは、一人の変わった女の人と出会いました。
その人とお喋りしたアリスは、自分とその人が似ていることを知りました。
なぜなら、その女の人は、長い尻尾を持つ『友達』を連れていたからです。

今日のお話はここまで。
次のお話は、また今度――。

357石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2017/11/04(土) 23:27:16
スィ〜
   スィ〜
      スィ〜

秋深い10月の湖水を、男子が背泳ぎで泳いでいる。

『寒中水泳』だ!

「フィ〜やっぱり、水はいい……俺の頭をクールにしてくれる。」

358石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2017/11/04(土) 23:27:34
age

359硯 研一郎『RXオーバードライブ』:2017/11/05(日) 20:33:10
>>357
「やはり、『ポッポー』は良いな。
まさか『ドクターイエロー』を見えるとは、僥倖だ」

伸びっぱなしの金髪に耳にピアスをびっしりとつけた男子高校生が、
樹木に腰を預け、手にしたデジカメの画面を覗き込んで、
撮影した写真を吟味してる。

「見れば幸せに」
「…」「!!」

そこでこの11月の寒空の下、
寒中水泳をしている男子中学生の存在に気付いた。

360石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2017/11/05(日) 20:55:23
>>359
「むっ、盗撮の気配……!」
盗撮の気配を感じた。

「ならばやることは一つ……!」



シンクロッ!

 ヾ/       ズッ
~~~|~~~
 ●┘


ナイズドッ!

 ヾ●/       ザッ
~~~~/~~~
 ┘|


スイミングッ!

  V
●■\    ザパァッ!
    ヾ
~~~~~~~~~

とりあえず技術美を見せつけた。

361硯 研一郎『RXオーバードライブ』:2017/11/05(日) 21:10:29
>>360
だが金髪の男子高校生は、既にデジカメを降ろし、
無表情のまま石動のシンクロを眺めていた。


「今は『11月』だ。
 学校側が危険だからという理由で運動会で組み体操を行わないこのご時勢に、
 自主的に寒中水泳を行っているとは。
 ひょっとして、君は気が狂っているのかい」

「それともこの近くにスパルタな『フリースクール』でもあるのかい」

362石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2017/11/05(日) 21:17:37
>>361
ザパッザパッ……声をかけると泳いで近づいてきた。

「ハハッ、気が狂ってるはひでぇなぁ……」

「俺は水が好き。それだけさ。季節なんて関係ないね。」

「まぁ、ちょっとした『能力』で、寒さとか通じねーってのはある、が。」

363硯 研一郎『RXオーバードライブ』:2017/11/05(日) 21:30:53
>>362
「それはやせ我慢じゃあないのかい。
 もしくは、『気』ではなく『交感神経』が狂ってるか、だ。
 一度お医者さんに行って、診察してもらうといい」

「なあに」「恥かしいかもしれないが、
      行っておいて損はない筈だ」


バリッ 「…」 ボリッ 「…」 ボリッ 「…」 ボリィッ!


学生カバンにデジカメを仕舞い、
代わりに真空パックに包装された沢庵の1本漬けを取り出し、
包装を剥がすと、水上がりの石動を眺めながら無言で、
スナック菓子感覚で漬物を食べ始める。

「君はひょっとして水泳部か何かなのかい。
 練習したいのなら、あっちの方に冬季も開放している温水プールがあったが。
 そこじゃあ駄目なのかい」「あ」

「もしかして、『温水』は温いから『水』じゃあなく『湯』って、
 自分ルールだったりするのかな」

364石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2017/11/05(日) 21:50:45
>>363
「『お医者さん』ねぇ……」

「まぁ、医者というか、『ある所』で心の声を聴いてもらってからなんだが、深くは突っ込んでくれるなよ。
 ポケモンの『海パンやろう』みてーなもんだ。」

「お、いいね、その沢庵。自家製?」

「泳いだら腹が減ったな……ちょっと荷物取ってくるか。」

ブゥン……海パン少年の傍らに人魚型のスタンドが浮かび上がる。

    人魚型のスタンド『オオオッ……』

365硯 研一郎『RXオーバードライブ』:2017/11/05(日) 21:59:32
>>364
「近所のスーパーで買ってきた
 『ボリッ』もの『バリッ』だ『ボリッ』が『バリ』」

         >『オオオッ……』

石動の傍らに発露した人魚型のスタンドを一瞥、
特に表情を変える事はない。

「君は荷物を取る為だけに、
 その、ス……なんだっけ。まあ、いいか。
 その『アレ』を使うのかい。随分と物臭なんだな。
 朝、お母さんに起こして貰っておいて、
 「ババア!なんでもっと早く起こさなかったんだよ!」っと逆ギレするタイプと見た」

366石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2017/11/05(日) 22:17:44
>>365
「キレねー、って。
 うちの母ちゃん、いつもニコニコしてるけど怒るとコエーからな」

「ったく、君の中で俺はどんだけ『狂犬』なんだよ……。」

「荷物は盗まれねーよーに、『上』に置いてあるのさ。」

    人魚型のスタンド『オオオッ……』

    人魚型のスタンドが一泣きすると『涙の泡』が飛び、樹上に向かい……

    バキン! …… ドサッ!

    カバンが落ちてきた。

「な?」

367硯 研一郎『RXオーバードライブ』:2017/11/05(日) 22:30:26
>>366
「な?」

スタンドを使い、木の上の荷物を取る石動。
そんな彼の挙動を眺め、鼻の頭に指を添え、考え込む仕草をする。
(既に漬物は食べ終えた)


               「!!」

               「わかった。
                成る程、理解できた」

「君はもしかして――『中二病』ってやつかい?
普段から、例えば学校の教室でもこれ見よがしに『それ』をそんな風に使ってるのかい。
俺は、『それ』が見えるし使えるから『そんな風』に『アレ』したい気持ちはわかるが、
『それ』が見えない同級生からしたら、
君はかなりの『奇行種』に思われてしまうんじゃあないかな」

368石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2017/11/05(日) 22:38:24
>>367
「中二病の奇行種って……
 面と向かって言うことか、それ……
 せめてマイペースとかそういう、さぁ……」

「はぁ……」

「ミニ羊羹食べる?」

モキュモキュ……カバンからミニ羊羹を取り出して、食べている。

369硯 研一郎『RXオーバードライブ』:2017/11/05(日) 23:02:03
>>368
「俺の町内では寝転びながらスマホで『youtube』を観る感覚で、
『それ』を使う人をマイペースと形容した実例はないんだ。
俺はスマホも持ってないし、パソコンも人差し指で打つレベルだから、
人に頼まなければyoutubeを観れないがね」

カバンを漁り和菓子をたべる石動を眺める。
差し出されたのならば丁重にお断りする。

「しょっぱい物を食べたし、甘い物も欲しい。
甘いものを食べたし、しょっぱい物も欲しい。
ってなるから、遠慮しておくよ」
「しかし」「アレだな」

「『マイメン』の『斑鳩』の『翔』ちゃんに初めて遭った時も、
彼の持っていたアメリカンドッグを勧められたよ。
純粋な『好意』からくれたってのはわかってるんだが、
ひょっとして俺は『物乞い』か何かに見えるのかい」

370石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2017/11/06(月) 18:30:39
>>369
「よくわからんが考えすぎじゃないかな。そんなに深い意味はないと思うぜ。」

「それじゃ俺は着替えてくるんで、チョイとおさらばな。」
スササと茂みに隠れていった。

「覗くなよ。」

371硯 研一郎『RXオーバードライブ』:2017/11/06(月) 23:14:32
>>970
「覗かないさ。
 覗きはバレた時に最高に恰好が悪いじゃあないか」

  カパッ

手首に巻いた時計で時刻を確認する。
そろそろ帰らなければいけない時間だ。

「それじゃあ、俺は行くさ。
 しかし、君といい翔ちゃんと良い、
 『それ』を持っている人達は随分と『個性的』だ。
 俺なんかより、ずっと。ずっと」

茂みで着替える石動に言葉をかけ、
帰路へとついた。

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373有栖川 絢子『ワールド・ウィズアウト・ヒーローズ』:2017/11/27(月) 21:58:26
ある日の夕方。
自然公園の木製のベンチに、紺色のセーラー服を来た一人の少女が座っていた。

「……」

髪は前下がりのボブカットで、良く見れば微かに茶色がかかっている。
首からは黒いヘッドホンをかけ手には参考書を持ち、
それを無感情な瞳で読み解き続けていた。


「……そう簡単には、変わらないか」

参考書を読みながら突く溜息。

『力』を得てから数日がった。
それからという物、彼女は下校時刻から塾へ行くまでの間
こうして外を徘徊している。

『何か』が変わる事、或いは起こる事を望んで。

それでもいつも手放す事の無かった『参考書』と『ヘッドホン』は持ち歩いている。
彼女自身も、結局何も変わらずに生活しているのだ。


彼女が望む『ラスボス』への道はまだまだ遠いらしい。

374有栖川 絢子『ワールド・ウィズアウト・ヒーローズ』:2017/11/27(月) 23:04:25
「今日はこれぐらいかな」

参考書を学生鞄に仕舞い、木製のベンチから立つ。

「やっぱり、『力』をもっと積極的に使う必要があるのかしらね」

『レプラコーン』を使えばちょっとした騒ぎくらいは起こせるだろう。

そうすれば、『何か』は起こるか。

「……ま、もう少し気長に待ってみましょうか!」

少しだけ楽しげに笑うと、去っていく。

375花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2017/12/08(金) 23:16:52

これといった目的もなく、ただ何の気なしに自然公園へやって来た。
湖の側まで歩き、どさりと胡坐をかく。
やや気だるげな視線が、静かな湖面に注がれる。

「――湖の近くで『水死』を味わう」

誰に言うでもなく、ポツリと呟いた。
周囲に人気はない。
いつの間にか、その手の中にリボルバー拳銃が握られている。
自身のスタンドである『スウィート・ダーウィン』だ。
腕を上げ、銃口を自分のこめかみに突きつける。

「それもオツなもんかもしれねえな」

躊躇することなく引き金を引き絞り、発砲する。
銃声と共に、一発の弾丸が発射された。
当然の帰結として、それは自分の頭に撃ち込まれる。

「う、ぐ――」

「ぐ、がが……!」

「が……あッ……!!」

水没による窒息死を再現した『偽死弾』。
その効果により、まるで本当に溺れているかのように、酸素を求めてもがき苦しむ。
もちろん本当に溺れているわけではないが、本人にとっては実際に溺れているのと同じことだ。
深く暗い水底に引きずり込まれ、確実に死が間近に迫る。
そして、死ぬ直前で能力は解除され、死の幻は跡形もなく消え失せた。

「……かぁ――ッ」

強い酒を一気に呷った時のような声を上げ、草の上に寝転がる。
俺は酒よりも、こいつの方が好きだ。
酒は止められても、『スリル』を味わうのは止められそうにない。

「――たまんねえぜ」

未だ手の中にある『スウィート・ダーウィン』を眺める。
こいつが与えてくれる刺激は、どんな女よりも『スウィート(素敵)』だ。
やがて、一呼吸と共に、『スウィート・ダーウィン』を解除する。

376稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2017/12/14(木) 23:19:04
>>375

白い肌、青い眼鏡、桜色の目。
それ以外は長い髪含め、黒ばかりの――
西洋人形のような顔つきの少女、稗田恋姫。

「うわっ…………」

が、離れたところでそれを見ていた――――
といっても、『水死』から、『蘇るまで』であり、
銃のスタンドの『能力』にまでは気づけない。

(あれ……スタンド使いか?
 何してんだ…………『酔っ払い』か?)

          ジト

(ゲームオーバー感あるな……ちかよらんとこ)

             ザッ
                  ザッ

こういう場合よくある事だが、
相手は見られている事に気付いているものだ。

・・・恋姫は『ヒく』あまりそういう可能性に行きついていないが。

377花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2017/12/15(金) 00:26:36
>>376

「いや、違うな――」

「俺は酔っ払いじゃあねえぜ」

ゆっくりとした動きで、草の上から体を起こす。
まるで少女の心を読んだかのような言葉と共に。
実際は単なる当てずっぽうだが。

「半分は正解だな」

「だが、酔ってるってのは酒に――じゃあねえ」

「もっと別のもんさ」

見てた、か。
まあ、だからどうってこともないんだが。
こんな場所で『死んでる』俺が悪いんだからな。

「――分かるか?」

だが、少しばかり興味が湧いた。
『あれ』を見て驚きはしても、さほど動揺はしていない少女に対してだ。
単なるカンだが、ひょっとすると――ひょっとするかもな。

378稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2017/12/15(金) 01:22:03
>>377

           ビクッ

「っ…………!?
 えひ……なに、電波でも受信してた?」

思わず背が跳ねた。
流石にこうなれば知らんぷりもしづらい。

恋姫は足を止めて、言葉を返す。

「……それともぉ、『3D酔い』とか……?」

(……やばい、スルー安定だったかも。
 でも、急に話しかけられたら……
 反応するだろ、常識的に考えて……)

               タジ

不気味だと思った――少し退き気味に話す。
もしかすると本当にアブないかもしれないから。

「僕……あー、『PSY』とか『霊感』とかないから、
 全然わかんないんだけど……答えはくれるの?」

      「……『拳で教えてやるぜ』とかはNGで」

   ズ
      ズ

傍らには――――『青い焔』に包まれた、
ペスト医師のようなのヴィジョンが浮かぶ。

異様な状況に、警戒している……冬の風が汗を冷やす。

379花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2017/12/15(金) 01:59:51
>>378

「なるほどな」

特に警戒している様子もなく、少女の傍らに出現したスタンドを見やる。
やはり俺と同じように、持ってる奴だったらしいな。
そして、人型――この前に見たのと似たタイプか。

「――拳で教えるか。ハハハ、そいつは面白いな」

「それなら――『銃で教える』ってのはどうだい?」

上体だけを起こした姿勢のまま、手の中に『リボルバー拳銃』のスタンドが発現する。
ただ出しただけであり、銃口は向けていない。
しかし、それでも緊迫した空気が流れているのを肌で感じる。

同時に、今にも争いが起こりそうな強い緊張感を感じる。
『スリル』――俺にとっては心地良い感覚だ。
しかし、このまま続けていたら、マジのやり合いが始まっちまいそうだ。

「いや、すまん」

「冗談だ。危害を加えるつもりはねえよ」

「勘弁してくれ」

争いになる前に『スウィート・ダーウィン』を消して謝罪の言葉を口にする。
両手を上に上げるジェスチャーをして見せながら。
敵意がないことを示すためだが、どう受け取るかは相手次第だ。

「いきなり呼び止めて悪かったな」

そう言って、再び草原に寝転がる。
先程の『答え』を言わないまま――。
勿論、わざとだ。

380稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2017/12/15(金) 22:26:52
>>379

「…………やっぱスタンド使いかよぉ」

「くそ、ヤル気満々じゃん……
 でも……銃じゃ僕には勝てないぜ……
 僕は『シューティングゲーマー』だからな」

               キュイィィィィ

(最悪だ……とりあえず逃げるべきだ、
 だけど……『銃』背中向けるのは――――)

     ィィィン ・ ・ ・

一度はスタンドの両手に『青白い光球』が浮かんだ。
それが萎むように消えていったのは、銃が消えたから。

             「…………えひ」

「悪い冗談だぜ……『暴れてた』のも冗談?
 心が読めるのも……? どこまでマジなの……」

陰気だが、緩んだ笑みを浮かべた。
スタンドは解除しないが、両手を下げる。

そして本体も、小さな歩幅で数歩歩み寄る。
警戒は解けないけど、今すぐ逃げ去るような気分でもない。

381花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2017/12/15(金) 23:40:13
>>380

「ハハハ――」

「両手を頭の上に乗せて地面に膝をついた方が良かったか?」

「『フリーズ』って言われた時には、そうするのがお決まりだからな」

寝転んだまま、軽い調子で言葉を返す。
しかし、今の言葉――ヴィジョンは違えど、俺と同じように飛び道具が使えるのか?
察するに、あの『光球』が『銃弾』代わりなんだろう。
同じ飛び道具を使うスタンド使いとしては、どんな物か見てみたい気はするな。
だがまあ、今は止めておくか。

「何も心が読めるわけじゃねえさ。
 ただ、俺がアンタの立場だったら、『酔っ払いか?』って考えるだろうなって思っただけだ」

「それから、別に暴れてたわけでもねえな。正確に言うと、もがいてたんだ」

「あとちょっとで『死ぬ一歩手前』でな」
 
「デッドラインギリギリの『スリル』を味わってたのさ」

「――それが、さっきの答えだ」

少女の動きに大きな反応を示すことなく、淡々とした口調で語る。
相手はスタンドを出していて、自分は出していないという状況だが、特に警戒はしていない。
こちらから手出ししない限り、向こうから仕掛けてくることもないだろう。
この少女は、攻撃される前から攻撃してくるタイプには見えない。
そうでなければ、とっくに攻撃されている筈だ。

382稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2017/12/16(土) 00:17:13
>>381

「…………えひ。
 戦争ゲームじゃないんだから」

そこまで大袈裟なポーズはいらないし、
スタンド使いならポーズじゃ判断出来ない。
なんにせよ、戦わずに済んでよかった。
戦争ゲームじゃないんだから。

「……頭脳派っぽいこと言ってる。
 というか……『ギャンブラー』系?」

分析力はすごい。
しかし言ってる事はもっと、すごい。

「スリル……『VRの高所体験』とか好きそう。
 一回やったけど、ほんとに落ちるかと思ったぜ。
 足元が床だってわかってても……まじで怖い」

        チラ

           「……そういう『能力』?」

向けられていた銃に視線を遣る。
『死にかけるスリル』を体験するにはお誂え向きの形。

「それとも……えひ、銃だから……
 『1人ロシアンルーレット』でもしてたか?」

    「もしそうなら超ハード超えてルナティックぅ……」

383花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2017/12/16(土) 00:49:18
>>382

「ああ、ギャンブルは嫌いじゃねえな」

「『スリル』が味わえるものは大歓迎だ」

「ついでに言うと――『これ』も好きだ」

ゴソゴソとポケットを漁り、小箱を取り出す。
遠目からだとタバコの箱にも見えるが、実際はキャラメルの箱だ。

「こう見えても甘党なんでね」

そう言って一粒のキャラメルを取り出して、口の中に放り込む。

「そういう能力かどうか――そいつは想像に任せるぜ」

「ただ、俺にとっちゃあ『うってつけ』の能力だってことは間違いないな」

これじゃあ答えを言ってるようなもんか。
まあ、ここまで話せば薄々は気付かれてるだろう。
どっちにしても似たようなもんだ。

「ハハハ、『一人ロシアンルーレット』か。
 『何発目で死ぬか』予想してみるってのも面白いかもな」

「だが、マジで死んじまったら意味がねえ。
 死んだら二度と『スリル』を味わえなくなる」

「俺は『自殺志願者』じゃねえからな」

自分でもイカれてるという自覚はある。
だからといって、『自覚があるから自分はマトモだ』とも思わないが。


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