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【場】『 星見スカイモール ―展望楼塔― 』

1『星見町案内板』:2016/01/25(月) 00:02:24
今世紀に建造された『東海地方』を対象とする集約電波塔。
低層エリアには『博物館』や『ショッピングモール』が並び、
高層エリアの『展望台』からは『星見町』を一望出来る。

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                 ミ三ミz、
        ┌──┐         ミ三ミz、                   【鵺鳴川】
        │    │          ┌─┐ ミ三ミz、                 ││
        │    │    ┌──┘┌┘    ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
        └┐┌┘┌─┘    ┌┘                《          ││
  ┌───┘└┐│      ┌┘                   》     ☆  ││
  └──┐    └┘  ┌─┘┌┐    十         《           ││
        │        ┌┘┌─┘│                 》       ┌┘│
      ┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘     【H城】  .///《////    │┌┘
      └─┐      │┌┘│         △       【商店街】      |│
━━━━┓└┐    └┘┌┘               ////《///.┏━━┿┿━━┓
        ┗┓└┐┌──┘    ┏━━━━━━━【星見駅】┛    ││    ┗
          ┗━┿┿━━━━━┛           .: : : :.》.: : :.   ┌┘│
             [_  _]                   【歓楽街】    │┌┘
───────┘└─────┐            .: : : :.》.: :.:   ││
                      └───┐◇      .《.      ││
                【遠州灘】            └───┐  .》       ││      ┌
                                └────┐││┌──┘
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★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
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654ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2020/01/02(木) 04:43:33
>>652
『ラピスラズリ』は、宝石って程ではないけど比較的高価な石よ。
とはいえ、これくらいのオマケ用の小さな粒であれば
100グラム500〜1000円くらいで調達できるわ。

  「『200円』…のところを」
  「お詫びも兼ねて『100円』で」

だから50%オフにしてもそんなに痛くないのよね。
わたしん所の石の価格、相場より高いから。

 「もっと大きなサイズもありますよ 
  『球』になっていてパワーの効率が段違いです。500円!」
 「こちらのブレスレット!5000円!」

ちなみに『ぼったくり』ではない。
なんでかっていうと私が時間をかけてしっかりパワーを込めているからだ。
効果なんて知ったことではないが誠意を込めてパワーを込めているから、
決してウソのある商品ではないのだ。ところでパワーって何なんだろう?

655比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2020/01/02(木) 05:06:23
>>654

「――――では、『500円』の物を頂きましょう」

    スッ

財布から五百円硬貨を取り出し、机の上に置く。
その代わりに、『ラピスラズリ』を受け取る。
本当に効果があると信じている訳ではなかった。
しかし、そうかさばる代物でもない。
『話題の一つ』として持ち歩いてもいいだろう。

「『良い手』ですよ。『三つ挙げる』というのはね」

「『値段の違う物』が並んでいる時、
 人間は心理的に『真ん中』を選びやすい。
 売れ行きが悪くて在庫が余っている物は、
 『高い物と安い物の間』に挟むと、
 購入される確率が向上するそうです」

「ですから、もし『五千円のブレスレット』が余った時には、
 『もっと高い物』と『それより安い物』の間に入れてみる事を、
 お勧めしますよ」

懐から懐中時計を取り出し、蓋を開く。
時間を確認する動作だが、それ自体に大した意味はない。
自然に立ち去るための『予備動作』だ。

「そろそろ失礼します。
 お蔭様で、非常に『有意義な時間』を過ごさせて頂きましたよ」

「機会がありましたら、
 また何処かでお会いできる事を楽しみにしています」

「それでは――――」

穏やかな微笑を送り、帽子を軽く持ち上げて会釈する。
特に呼び止められなければ、そのまま立ち去るつもりだ。
『有意義な時間』――その言葉に『嘘』はない。

656斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/01/23(木) 01:14:12
僕がこの展望台に来たのは
梅の枝につくつぼみが膨らみ、もう目に見える頃だった

 カツン!

ラジオに小鳥のぬいぐるみ、手には硬く小さいボーラーハット
待ちゆく人は白いマスクを口元に、灰色のスーツを着こなして歩いて行き、空には眼にも留めないし
こんな場所に来る気も起きないんだろう。

いつも通りのジャケットとスカーフは、この寒空にも色褪せる事は無い
吐く息は白く、肺が少し痛む青い空、僕はラジオから流れる音に合わせて踊っていた。

 「〜♪」

金属製の踊り場にて流麗な脚さばきでタップダンスを踊る
もっとも、履いているのはそれ用の靴ではなく、スニーカーに鎖が踵とつま先に幾重にも巻きつけられた奇妙な靴だ
そんな異形の靴でも、それがどうしたと言わんばかりに脚を捌き、頬を紅潮させながら踊り狂う

 (……どうしようかな)

僕は迷っていた、即断即決といえば聞こえはいいが
逆に言えば考えなしに行動するという事だ、だからと言って、今の僕は天才でも何でもない。
ただの斑鳩だ。

無駄に考え込むよりは、体を動かしてみよう
ネガティブになるのは3割くらいは運動不足だと言うしね。

小刻みに軽快な音が鳴る、1月の昼の事だった。

657百目鬼小百合『ライトパス』:2020/01/23(木) 22:05:47
>>656

パチパチパチパチ

不意に、背後から手を叩く音が聞こえた。
一人の人物が、壁に背中を預けて煙草を咥えている。
ベリーショートの黒髪の、パンツスーツを着た中年の女だった。
外見から窺える年齢は四十台程だが、詳しくは分からない。
身長は180cm近くあるようだ。

「上手いもんだね。見事な足捌きだよ」

「ま、ほんの素人の見立てだけどねえ」

煙草を口元から離した女が、軽く笑いながら言った。
指の間に挟んだ煙草には、火が付いていない。
ここは『喫煙所』ではないからだ。
それでも咥えていたのは、そうしないと落ち着かないからだった。
要するに、ヘビースモーカーの性という奴だ。

658斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/01/23(木) 23:57:16
>>657

  カツン!

振り返る前に額の汗を拭う
手すりにかけておいた白いふわふわのタオルは、運動後には実に有難い事だ

 「――それはどうも」

素直に見知らぬ相手からの賞賛に感謝する

しかし一息ついて、さて考えてみると背後の声には覚えがない
一瞬、祖母の親戚かなとも思ったが、それにしては随分と若い。
 
 「素人目に見事だと映るなら、芸は半分成功しているようなもんですよ。」

まあ実際には『感心』させたら芸は失敗なのだが、素人の僕ではその辺りが限度だろう
帽子を頭に戻すと彼女に向き合った、知らない顔だ。

仕草、体型、煙草の銘柄、見える範囲の掌……少なくとも見覚えは無い
少なくとも、僕のファンと言う事は無いだろう まだ『活動前』だし、仕込みは半分終わった処だし。

 「それで、貴女誰です? 踊りに興味が有る様には……見えませんけど。」

(体系からみると肉体労働者、この距離で香るならヘビースモーカーだな、食品系を外すか?)
(軍人かどうかは歩き方を見ないと解らないが、長年仕事を続けると掌には蛸も出来る)
(銃や警棒を吊ってるなら靴の減りは片側だけ増す……と ただ、減りの方は薄いなあ、よく解らないや。)

 「あ、まったまった、当ててみせましょうか? ん――……『警察官』!」

 (…あの『口元の黒子』に『切れ長の細目』…何処かで聞いたような、聞かなかったような)
 (『やっちゃん』に前に聞いて忘れたかなー、試験と重なったからなー。)

659百目鬼小百合『ライトパス』:2020/01/24(金) 00:34:34
>>658

その女の実際の年齢は定かではない。
少なくとも四十は超えているだろうし、もっと上かもしれない。
だが、そういった部分を感じさせない若々しさと力強さがあった。

「いや、邪魔して悪かったね。
 アタシは、ただの通りすがりだよ。
 何やら音がするんで来てみたら、アンタがいたって訳さ」

言葉を返しながら、煙草を手の中で弄ぶ。
未点火の煙草が、くるくると回転する。
銘柄は不明だが、くしゃくしゃになったりはしていない。

「はは、さぁてねえ……。
 そうかもしれないし、違うかもしれないよ」

その答えの『半分』は正解だった。
しかし、自分から明言はしない。
その義務がある訳でもないし、
『情報』というのは簡単に開示するものではないというのが、
体に染み付いた癖なのだ。

「ただ――『何故そう思ったのか』は聞きたいねえ」

それらしい格好をしていれば直ぐに分かるだろうが、
今の自分はそうではない。
『警官』という結論を出した理由には、興味はあった。
初対面の人間に対して、いきなり『職業』を尋ねるというのも、
何か引っ掛かるものを感じる気はする。

660斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/01/24(金) 00:59:26
>>659

道化がおどけたように肩を竦める

 「――適当ですよ?」

実際たいしたことではない、命中率は2割切っているのだ
4割打者とくらべるべくもない、他愛のない暇つぶし

 「歩き方、掌の形、体型に口調、体の動きの癖、その煙草の銘柄が何処で買えるか」

 「それで大体を絞って、後は適当に一つ放り投げる 偶々当たると……『相手が驚く』。」

 ――ニッ

 「僕の些細な『暇つぶし』ですよ、下らないでしょ?」

ダーツを放るジェスチャーと共にチシャ猫のように笑って見せる

実際、警官だとは思っていなかった、体育教師、…いや、警備員だろうか?大穴でパン屋
まあ『聞き返してくれた』辺り、暇つぶしの妄想ごっことしては、多少上手くいったところだろう。

 「『シャーロック・ホームズ』ならもう少し上手にやるでしょうね、貴女の靴についた土なんかを見たりして」

 「彼のモデルは実際に実在して、その人は医者だった、患者さんが医務室に入ったと同時に、どんな人か言い当てたとか。」

それだけ言ってラジオに向かうとチャンネルを変える
隣にまどろんでる『靴下をはいたような模様の猫』は、のんびりと尻尾を振るばかりだ
まあ、彼女も僕には飽き飽きしている事だろう。

 「今日のカナリアは……っと」

帰ったら何の映画を見ようか、ヴィヴァルディの嵐を一人で弾くのもよさそうだ。

 「それで 回答はお気に召しました? ……えーと、『ヘビースモーカーさん』。」

661百目鬼小百合『ライトパス』:2020/01/24(金) 01:31:16
>>660

「はは、そりゃあいい――――」

    カンカンカンカンカン
           カンカンカンカンカン
                  カンカンカンカンカン

「――――『もし当たってたら』驚いた所だねえ」

緩やかな歩調で階段を上がり、少年に近付く。
手を伸ばせば届くような距離で立ち止まった。
それから猫を一瞥し、すぐに視線を外す。

「そうさね、『まあまあ』気に入ったよ」

「ああ、いや――」

「アンタの顔を、どこかで見た覚えがあるんだけどねえ。
 それが、どこだったか……。
 年のせいか、物覚えが悪くなったかねえ」

煙草を持った手を額に当て、目を閉じる。
再び目を開けると、視線を猫の方に戻した。
切れ長の瞳が、猫を見下ろしている。

「――まあ、いいさ。忘れちまうくらいだ。
 どうせ大した事じゃあないだろうからねえ。
 そこの猫は、アンタの連れかい?」

662斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/01/24(金) 02:50:39
>>661

「そうですか?」

爪先で地面を叩くと、小気味いい音がする
これなら問題はないだろう

 「別に誰とも仲良くする必要なんて、無いと思いますけどね。」

「みんなでお手手繋いでニコニコ……なんて、気持ち悪いし、不気味だし。」

勢いをつけて、階段の手すりに飛び上がる
身体をすり抜けるように吹く風は、火照った身体には気持ちがいい。

 「その猫ですか?欲しければどうぞ」

手摺りの上で風車みたいにクルクルと回ってみせると
手すりの下の風景にも、多少は色がつくように見えた、誰も見上げはしないこの風景が。


「ただ、悪食で大食いで学校だと怪談になるヤツです」

手すりの上でステップを踏んだり、ヤジロベエみたいに身体を開くと、古い手すりでも小気味いい音を出す。
一足事に、深海で佇むような息苦しさも取れる気がする。

 「この事を知っていれば、6月に丸くなって死ぬ必要も無いのになあ……」

どうして落ちないか?
スタンドって便利だよな。

663百目鬼小百合『ライトパス』:2020/01/24(金) 06:26:16
>>662

全員と仲良くする必要は無い。
それは正論だ。
だが、それを口に出してしまう所に『若さ』を感じた。
しかし、敢えて言葉にはしなかった。
それこそ『必要の無い事』だ。

「ははぁ、折角だけど丁重にお断りさせて貰うよ。
 何しろ『ガキ』の世話で手一杯なんでねえ。
 これ以上は面倒見切れないのさ」

言葉を紡ぐ女の視線が、少年の後姿に移った。
手すりの上の少年を見つめ、その瞳が細く引き絞られる。
僅かな音も動作も無く、短く息を吸い、吐き出す。

        「ところで――――」

     シ   ュ   バ   ァ   ッ

  「――――『危ない遊び』は程々にしときな」

その刹那、展望台に『一陣の風』が吹いた。
両肩に『白百合』の紋章を刻んだスタンドだ。
人間も獣も超えた『音速』に匹敵する『超高速』。
『身投げを止めようとする人間』のように少年の腕を掴み、
手すりの上から引き下ろす。
続けざまに、両腕を使って流れるような動作で抱き止めた。

「特に、『このアタシ』の前ではね」

あるいは、『落ちない自信』があるのかもしれない。
だが、根拠があろうとなかろうと関係ない。
目の前で、『子供が手すりの上でフラフラしている』。
そんな『危険行為』を見てみぬ振りなどしない。
それが百目鬼小百合の『正道』だ。

「やれやれ、つい『勝手に手が出ちまった』よ。
 ま、お節介なのに出くわしたと思って諦めておくれ」

我が子に語る母親のような口調で告げて、少年を下ろす。
優しさを漂わせる言葉とは対照的に、
スタンドの片手には『特殊警棒』が握られていた。
その表面は、鋼鉄を思わせる鈍色の光沢を放っている。

「アンタを見てると、どうも危なっかしくてねえ」

発した言葉には、複数の意味があった。
少年の雰囲気から、どこか『危うい雰囲気』を嗅ぎ取ったのだ。
それは、単にティーンエイジャー特有の不安定さとは、
性質の違うものであると直感した。

664斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/01/24(金) 16:47:53
>>663

空が遠くなったり近くなったりするのをぼうっと見ていた、正確には見ているしかなかった
流石に自分のスタンドがあっても、他人にバランスを無理やり崩された場合、下手に動くと受け身すら取れないからだ
そしてまた息苦しさが戻ってくる、また窒息しそうになる……

 (そんなに僕を殺したくっても、ほっとけば死ぬのになあ)

同時に、他人の『スタンド』相手にここまで体を預けた事も無いので、内心おっかないと思っていた
花の紋章を持った人型のビジョン、近距離パワー型、花言葉は、純潔、尊厳、ピュア……

 (……まあ精神力っていうのはピュアなパワーかな、根っこの人間は兎も角)

 「――……あーあ ラジオの歌詞を聞き間違えたなあ」

 「ボールのように丸くなって死ぬのは『7月』だった。」

ニコニコと笑いながらズボンをはたく、降ろされるというのは踊るタイミングを逃す事だ
自分にも恥という感情が有るので、また逆戻りしてしまった。

 「まあ、貴女が今ので少なくとも……『良い人』だっていうのは充分解りましたよ」

 「自殺しにいく人に、大概の人は『無関心』なのだから、貴女は相応に、自覚しているようですけど。」

つまり目の前の女性は、僕をまだまだ苦しめたいらしい 両手をあげて降参する
母親相手は僕のタブーのような物だ、少なくとも手を出す気にもならない
まあ代わりにはならないが、偽物が本物を追い越す事はあっても、偽物が本物にはならないように。

 「でも、業務用冷蔵庫とその取り巻きみたいに『ハッパ』だとか『塗料』なんかやってませんよ?」

 「僕のポケットにはそれより先に『ジェイソン・ケイ』と『フランク・シナトラ』が居ますからね。」

665百目鬼小百合『ライトパス』:2020/01/24(金) 20:51:35
>>664

    ズイッ

女の体が近付いてくる。
お互いに触れる寸前の距離だ。
女が少年を見下ろした。
その目を見る。
目の奥にあるものを見ている。

「さっきの言葉、覚えてるかい?
 『どこかでアンタを見たような気がする』って話さ」

「アタシは、『アンタみたいな危うい人間』を見た覚えがあるんだ」
 
「何もかも自分の力で出来ると思ってる。
 全て自分の力で成し遂げなきゃいけないと考えてる。
 他人の助けなんて要らないし、助けなんか借りても仕方が無い」

「ソイツは、そう思ってた。
 『慢心』・『驕り』・『過信』――呼び方は何でも良い」

「ある日、ソイツは『しくじった』。
 取り返しのつかないミスを犯しちまった。
 周りの人間を傷付け、自分自身の人生を台無しにしたのさ」

            スイッ

女が少年から離れた。
おもむろに煙草を咥え直す。
そして、ポケットから年季の入ったオイルライターを取り出した。

       カキンッ
            ――――シボッ

慣れた手つきで指を滑らせると、弾かれたように蓋が持ち上がる。
手の中で灯った炎が、風を受けて揺れる。
その炎を見つめながら、ゆっくりと煙草の先を近付けていく。

666斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/01/25(土) 00:31:06
>>665

瞳の奥は氷のように透き通り
ニコニコとした表情とは裏腹に酷く冷たく、笑わず、『何も無い』。

 「『失敗』の基準によりますね。」

 「でも、貴女のそれが実感を伴った忠告で、そして……それが『基準』だというなら、そこから推測して…」

 「僕は一度も失敗した事は無く、5年前からずっと挑戦しては、失敗し続けています。」

ニコニコと笑みを張り付けながら、煙草の煙を払っておく

副流煙って怖いよな、ガンだぜガン
『俺』は自分の行動で死ぬなら兎も角、他人に殺されるのは御免だ。

 「ところで、宇宙人の基準と僕達の基準って、同じなんでしょうか?」
 「すぐ隣の国でさえ言語が違うのに。」

同情と共感というのは優秀な道具だ
ただし万人に通じる道具では無いし、ましてや宇宙人…もとい
それほど隔絶した人間には、例えが通じる物なんだろうか?

 「――僕の瞳には、貴女の顔が見えましたか?」

一度も失敗しなかった人間と、一度でも挫折を味わった人間の
『簡単さ』は意味合いが随分違って聞こえるだろう。

――悲しい事に。

667百目鬼小百合『ライトパス』:2020/01/25(土) 01:40:08
>>666

「――――『限界』だ」

     パチンッ

唐突にライターの蓋が閉じられた。
明々と燃えていた炎が消える。
スタンドを解除した女は、しきりに片手でライターを弄る。

「実を言うとねえ、さっきからずっと『我慢』してたのさ。
 でも、そろそろ無理そうだ」

「一瞬でも気付くのが遅かったら、無意識に火を付ける所だったよ。
 あと一分でもここにいると、
 アタシは絶対に『コイツ』を吹かしちまうね」

「アタシは喫煙所に行くよ。
 『クスリ』に染まってない健康な若者の肺を、
 『タールピット』よりもドス黒いアタシの肺みたいにさせちゃあ気の毒だ」

            ザッ

軽く笑って見せてから、女は身を翻した。
ごく自然な何気ない動作。
だが、どこか訓練されたような雰囲気があった。

「ああ、そうだ。一つだけ聞きたい事があるんだけどねえ」

「最近、ちょっと気になるヤツがいてねえ。
 『目立つ』から、すぐ分かると思うんだよ。
 左目に『眼帯』を付けていて、やたらと声のデカい大男さ」

「もし見かけたら――――」

        サラサラサラサラ

「――――『ココ』に教えてくれると助かるねえ」

電話番号を書き付けた紙片を、ラジオの横に置いた。
『ツネハラヤマト』――あの男も『危うい匂い』のする人間だった。
この少年同様に、注意を向けておくべき対象だ。
それを済ませると、女は足早に立ち去ろうとする。
自身の言葉通り、『禁断症状』の兆候が現れ始めているようだ。

668斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/01/25(土) 04:28:49
>>667

女が去った後に一人空を見上げる
名前を聞かなかったが、別にそれでいいのだ
興味が無いし、そうあるべきだろう 誰も巻き込みたくは無いんだ

でも彼女はスタンド使いで…だから、手遅れなのかも

 「――なあ、『スリーピング』」

ラジオの傍に座り込むと、そう名付けた猫に語り掛けた
彼女は別に理解していないだろう、その必要もない
理解してくれないから、安心して話せるのだから。

 「君は、自分の複雑な…」
 「残酷で、無残で、救いが無くて」
 「犯人が120人もいて、誰も捕まらず、罪も償っていない」
 「警察も捕まえてないし、今も何処かで人並の生活をしている」
 「例え、時を巻き戻しても、救えないし変わらない、まるでマンガみたいな」

 「『家庭の環境』を…話したいと思うかい?」

ホントに漫画みたいで、出来の悪いジョークだ

 「それも、見ず知らずの相手を……救うような『正しい良い人』に。」

乾いた笑い声が歯の隙間から漏れて、冬の風がそれを持っていく
吐息が白み、そして流れる

 「『僕』は他人の事を傷つけたくなんかないさ」

 「でもね、スリーピング ……『間違った人間』は」
 「優しさで救えないし、親切は傷つけるし、正しさは正しさ故に加減が効かない物さ」
 「『正しい道』が舗装した下で、間違った人が生き埋めになっていても、誰も気にしないよ……『正しい』から」

きっと誰もがあの女性を称賛するのだろう
きっと……たとえ間違っても、それを正して、前に進める強さが有るのだから。

 「過去に引きずられて生きるなんてばかばかしいじゃないか」
 「今すぐ全部を諦めて、楽しい事だけ考えて生きていたいんだ」
 「ダンスしたり、楽器を演奏したり、女の子を誘ってデートしてみたり……」

 「でもそれを…他人に、それも 優しい人に言えるわけないんだよ」

 「『僕の両親はずっとねたきりで、もう声だって思い出せない、今じゃ下手糞なダイバーのシュノーケルから漏れ出るような音が、僕の愛する両親の声です』」
 「『カーテンの前で名前を呼んでも、振り向きもしないし、頭を撫でてもくれない、ずっと僕じゃないし、窓でも天井でもない何処かを見ています。』」

 「……だ、なんて。」

誰がそんな事実を信じて共感するだろう?
事実は小説よりなどと、誰が言ったんだろうか

 「起き上がったところで、もう『5年』たってるんだ、社会の居場所は?就職先は?入院にだってお金がかかる」

 「――それでも自分の為に元に戻したいんだ、でも、もう元には戻らないんだ」
 「誰かが殺してくれれば……言い訳もたつし、諦められるのにね。」

自分の全身に巻き付いた『鎖』をみる
前と変わらずにそれはそこにある、何時でも僕の全身を絡めとる様に巻き付けられて
……それは枷だと人は言った。

 「……『枷』か」
 「なあ、あの人は見抜いていたと思うかい? 音を聞いて……『僕達』は自分の事しか考えていないんだって。」



 「心は諦めてくれない」



 「『限界だ』――死にたいよ。」

笑い声をあげてみる。
ここはショーシャンクの空じゃない、冬の空の下で1人、座り込んだ子供を迎えに来る人はいない
その事に誰も同情も共感もしない、『理解できない』からだ、今日も世界は『正しく』回った。

669今泉『コール・イット・ラヴ』:2020/03/06(金) 14:22:46

『学生寮』に引っ越す手続きはもう、済んだんだ。
お部屋も確保できたし、あとは書類とかそういうの待ち。

「……」

だから今日は自分で使うコップとか、そういうのを買いに来たんだ。
一つも持ってなかったわけじゃないけど。

「……」

フツーはどういうのを使うんだろう。
洗うのが簡単なのがいいのかな。
見た目がかわいいと思うやつがいいのかな。

そう思ってたら。

                   ドンッ

    「わっ」


走ってた子供にぶつかられて、コップが手から床に落ちていく。
子供はそのまま走って行っちゃうみたい。こら!って言うべきなんだろうけど。

とにかく、私は床に真っすぐ落ちていくコップに、色々追い付いていないんだ。

670十字路荒野『ジャンクション001』:2020/03/06(金) 22:23:37
>>669

ヤバイな――――と思って、手が出た。

多分、咄嗟だったのが良かったんだと思う。
咄嗟だったから考える暇も無かったし、反射的に体が動いた。

けどまぁやっぱり、『全盛期』ほどじゃないって言うか。
別に『全盛期』の俺だったとして、間に合うかどうかはまた別なんだけどさ。
間に合わないって、長年培ったキャッチャー経験が叫んでた。
でも間に合わせないと、落ちちゃうだろ。コップ。

だから本当に『反射的』に――――『ジャンクション001』の手が伸びて、落ちるコップをキャッチした。

「っと」

遅れて、俺自身の手がコップを掴む。
……誤魔化せたかな。
多分、そこまで不自然なラグじゃなかったと思うんだけど。
咄嗟だったからさ。咄嗟だったから。

「アー……」
「……落としたよ、これ」

頼むから違和感を覚えないでいてくれよと祈りつつ、俺はコップを女の子に差し出した。

671今泉『コール・イット・ラヴ』:2020/03/07(土) 00:25:56
>>670

落ちる、と思って声を出した。

┌─────────────────────────┐
│          十字路には『それ』が見えた。             │
│   長いツインテールを揺らすその少女に重なる影。     │
│   『それ』は、彼女とは全く異なるシルエットを持つ。     │
│   そして彼女自身が『それ』を意識したようにも見えない。  │
└─────────────────────────┘

「あっ」

そしたら『手』が、掴んでくれてたんだ。
『人間の手』じゃ、なかったような気がしたんだ。
『先生』の手でもないんだよね。

「あ〜! ごめんなさいっ、落としちゃいました!」

          ┌───────────────────┐
          │ 十字路が『掴んだ』その時には消えていた。 │
          └───────────────────┘

でも、今見えてるのは間違いなく、人間が差し出すコップ。
もし『スタンド使い』だとしても、それは変わりはないわけで。

「これ、欲しかったけど」「ちょっと高くて、買えそうにないなって」

私は顔を上げて、コップを受け取る。
そして、笑った。

「だからもし落として弁償とかになってたら、フツーに払えなかったので」
「あは……ほんと〜に助かりました」「ありがとうございますっ」

ほんとは割れても、先生が直してくれるかもしれないんだけど。
先生、さっき出ようとしてた気がするしね。でもよかったって思うのがフツーなんだ。

672十字路荒野『ジャンクション001』:2020/03/07(土) 12:43:08
>>671

「アー……」

……なんか。
チラッと『見えた』気もするんだけど。
見間違い?それとも『俺と同じ』?
女の子の方は、特に何かを気にした風でもなく。
俺と同じく、なんでもない風に誤魔化してるのかな?
それともこういうのは触れないのがマナーなんだろうか?
単純にマジで俺の見間違いってこともあるよな?
もしかすると、この子とは無関係な存在ってこともあるのか?

……わ、わかんねぇ。
わかんねぇけど、とりあえず。

「……どういたしまして、かな?」
「まぁ、なんもなくてよかったよ」
「お金もそうだけど、破片とか危ないし。コップ含めて、怪我無くてよかった」

万事無事だったのは確かなわけで、ホッと胸を撫でおろした。

「……結構、こういうコップって」
「値段高いのもあるけど、気後れするよね」
「それこそ、割れちゃったらどうしよう……とか」
「色々考えちゃって、安くて無難な奴買いがちだな。……俺は、だけど」

673今泉『コール・イット・ラヴ』:2020/03/08(日) 02:57:28
>>672

「あ、そうですねっ」「危ないですよね、破片!」
「子供とかが踏んじゃったり、するかもしれませんし」

「それも含めて、助かりましたっ」

そうだ。フツーそうだ。
『先生』がいるからかな、忘れてたよね。
今のはフツーじゃなかった。良くないことだ。

「気後れ」「……あはは、そうかもしれませんねっ」
「私も普段は、フツーの、透明のプラスチックのやつ使ってますし!」
「買っても勿体なくって、棚に飾ったままにしちゃうかも」

実際、使うあてがあるってわけじゃないんだよね。
見た目はかわいいけど、取り扱いが難しそうだし。
ほんとに置き物にしちゃう気がするんだ。

「きっと置き物にしてもかわいいですよね、これっ」
「けど置き物じゃなくて、使う物を買いに来たので〜」


        コト…

「今日のところは、これはやめておきます」

とりあえず、受け取ったコップを置いてた場所に戻す。
また落としちゃったりしたら大変だから、そっと戻す。

「やっぱりプラスチックが使いやすいですよねっ」
「軽いですし〜、割れないですし」
「フツーに買えるお値段ですし」

             キョロキョロ

「あとはお湯も入ったりすると、便利かなあ」

そういうのって、どこに置いてあるんだろう。

このあたりはガラスコップばっかり、並んでるみたいなんだよね。
別の通路にあったりするのかな。まだここしか見てなかったから。

「……あのー、すみませんっ」
「そういうコップ、どこかで見かけたりとかしませんでした?」

そういえば、この人はどんなコップを探してるのかな。
ここってフツーに雑貨屋さんだから、別にコップとは限らないけど。

674十字路荒野『ジャンクション001』:2020/03/08(日) 03:18:05
>>673

「実際、インテリアで集めてるって人もいるらしいけど」

まぁ、そういうのは『趣味人』のやることだ。
俺はそうじゃないし、この子もそうじゃないっぽい。

「学生は学生相応の、ってとこかな……あ、学生だよね?」

その想定で話していたが、そういえばもしかすると違うかもしれない。
中卒とか、逆に見た目が幼いだけで成人してるとか、可能性としては十分あるし。
もし間違えてたら悪いことしたな、と思いつつ。

「fmmm……他のコップはこの裏のとこだけど」
「お湯入れるなら、『マグ』っぽい奴の方がいいかな」
「それならさらにもう一個隣の通路だよ」

上の案内掲示板を指で指し示す。
……と言っても『食器』ってざっくり書いてあるだけだから、まったくアテにならないんだけどさ。

「……俺もそっちで探すかな」
「使うにしてはやっぱり、気後れしそうだ」
「部屋の片付けしてたらコップ落として割っちゃってね……代わりを探しに来たんだけど」
「……ハハ、『コップ落としたら危ないよ』ってのは実体験に基づくワケだ。俺も怪我しちゃいないけどさ」

これがなかなかどうして、決められずに困っているのだった。
あれでもないこれでもないと探して、もう何分ぐらい経つのかな。30分ぐらい経ってるかも。

675今泉『コール・イット・ラヴ』:2020/03/08(日) 05:02:26
>>674

「コレクターってやつですよね〜」
「私も、マスキングテープとか集めてますけど」
「コップはフツーにかさばって、保管に困っちゃいそうですし」

「はいっ、『清月』の一年です」「あ、高等部の」

この人もフツーに学生ってことかな。
私とそんなに年は変わらなさそうだし。
見た目の雰囲気的には、多分先輩だと思うんだよね。
少なくとも同学年では見たことないし。

「あー、あっちですか! ありがとうございますっ」

指差してもらった先を見る。
食器。ざっくりしすぎだ。

「マグ……そうですね、マグカップの方が良いのかも」
「ココアとか紅茶とか、そういうの飲みたいかなって」
「白くて小さいのがいいな」「それに、安くて丈夫で」

透明か、白がいいんだよね。
そういう色が好きだと思うから。

「そうですねえ。『気後れ』しなくて使いやすそうな〜」
「って」「実体験!」「あはは、そうだったんですねっ」

「それなら、次は割れないコップが良いですねえ」
「あっちで一緒に探しましょう! 良いのあるといいな」

そういうわけで、マグカップ売り場に移動するんだ。
その通路に入ると、さっきと同じ『コップ売場』でも雰囲気が違う。
値段も。色も。親しみやすいって感じ、なのかな。多分気後れしないって事。

676十字路荒野『ジャンクション001』:2020/03/08(日) 12:35:12
>>675

「よかった」
「俺は二年。ジュージミチコーヤ。よろしく」

名乗りながら、マグカップ売り場へと移動する。
年上じゃなかったのも一安心。
高校生レベルだと童顔な先輩ぐらい普通にいるしな……

「ガラスだと、レンジにかけられないしね」
「耐熱マグならかけられるのも多いし……」

ざっと商品を眺める。
そりゃあまぁ立派で高い奴だってあるが、たいていは手頃な奴だ。
機能だのデザインだのに拘れば拘るほど高くなるし、その逆もしかり。
……なんて、さっきも見たからわかってるんだけどさ。

「fmmm……」
「……『気遅れ』はしないけど、ちょっと迷うな」

嘘。ほんとはちょっとどころじゃなくて迷ってる。

「どうするかな……キミは、どういうデザインの奴が欲しいんだい?」

677今泉『コール・イット・ラヴ』:2020/03/08(日) 23:14:17
>>676

    イマイズミ ミライ
「私は『今泉 未来』っていいます」
「よろしくお願いしますっ、ジュージミチ先輩」

        ペコ

一つ年上だった。
後輩だったら、変な感じになりそうだったよね。

「レンジにかけられるコップ、いいですね〜」
「私、今まで持ってなかったから」「そういうのが良いかな」

           ス

手を伸ばした先にあるのは、白いマグだ。
何の絵も描かれてない。フツーの白いプラスチック。

「色々ありすぎて決めにくいですよねえ」
「私はとりあえず、色は『白』が良いです!」

でも、持ち手が『持ちやすい形』なんだって。
研究とかして分かった、そういう形らしい。

「あとは、そうですね」
「持ちやすい大きさだといいですねっ」
「使う物だし」「それ以外だと……うーん、柄は無い方が好きかなあ」

「先輩はどういうのが良いんです? やっぱり、頑丈なのですかっ?」

678十字路荒野『ジャンクション001』:2020/03/08(日) 23:32:45
>>677

ああ、結構迷いなく手に取ったなぁ、とか。
内心でこっそりと感心したというか、尊敬した。
俺には中々できないことだ。それを買うと決まったわけではないにせよ。

「……俺かぁ……」
「fmmm……確かに頑丈に越したことはないんだけど」
「『白』は汚れが目立つのが気になるし……」
「いやでも洗う時のこと考えると目立った方がいいんだよな……」
「『黒』だとどこが汚れてるのかわかりにくいし……」
「大きさも結構……大きすぎると逆に困ることもあるし……」
「用途ごとに分けるのが一番なんだろうけど流石にそんなにたくさん買う余裕はないし……」

ああ、恨めしきは我が優柔不断のラビリンス。
一度こうなるとなにが最善最適の選択肢なのかわからなくなってしまい、どうにも決められないのだ。

「…………実はさっきからずっとこんな調子」
「『優柔不断』というか、こういうの迷うタイプでさ……」

「…………あ、そうだ」
「今泉ちゃん。もしよかったら、俺のも選んでみてくれないかな……?」
「人が選んでくれた奴なら、だいたい納得できる気がするんだ」

679今泉『コール・イット・ラヴ』:2020/03/09(月) 00:16:36
>>678

「な」「なるほど〜〜〜」

優柔不断。
それは『こころ』が豊かって事なんだと思う。

「先輩は色々考えてるんですねえ」
「わかりました。なら、私が選んでみますっ!」

とりあえず、今持ってるコップは置く。
探すのに邪魔ってほどじゃないけど。

「あ……でも、えーと」「もし私が選んだのが」
「……フツーじゃなかったら、教えて下さいねっ」

       ニコ

笑った。
それから、先輩の言ったことを復唱してみる。

「うーん」

「白でも黒でもなく」「大きすぎず小さすぎず〜」

そんなコップがあればいいんだけど。
そんな決め方で、いいのかな。フツーだし、良いよね?

「そうですねえ〜っ」
「ジュージミチ先輩、ベージュ色とか好きですか?」
「汚れは目立ちにくいけど、見えないほどではないし」

「例えばこれとかっ! かわいくないですか?」

手にとったのは、まさにそのベージュ色のマグカップだ。
グレーとかもあるけど、暖色って、落ち着くらしいし。

丸い形で、絵柄とかは無いけど、こういうのはフツーに良いんだと思うんだ。

680十字路荒野『ジャンクション001』:2020/03/09(月) 00:33:42
>>679

「フツーじゃない……ああ、ダメだったらってことね」

口癖なのかな、それ。
なんかさっきからちょくちょく聞いてる気がする。
まぁ、任せたって言ってもよっぽど変な奴だったらNOを突き付ける権利はある。
任せてる手前、ちょっと気になるところは呑み込むつもりだけど……
……というか、そうしないと任せた意味ないし。

「なんか、悪いね……俺がぶつぶつ言ってたこと忘れてくれてへーきだから……」

本当に、しゅっと選んでくれてもいいのだ。
自分にできないことを人に押し付けてるのも少しは気が引けるけどもさ。
そこはほら、さっきコップ拾った分ってことでひとつ。

「……『ベージュ』かぁ……」

しげしげと、今泉ちゃんが手に取ったマグカップを眺める。
無地の、シンプルなタイプ。
淡い色合いで、汚れは目立つだろうけど目立ちすぎるということもなさそうで。
なにより、中途半端な俺が使う分には、すごく丁度いい気がして。

「…………うん、いいんじゃないかな、これ」
「うん、うん、いいよこれ。これにしよう」
「ありがとう、助かったよ!」
「今泉ちゃん、結構こういうの選ぶセンスがあるんじゃない?」

681今泉『コール・イット・ラヴ』:2020/03/09(月) 23:35:58
>>680

「あ」「はいっ、そうですね」
「『よくなかったら』また選び直すので〜」

「……」

渡したベージュのカップを見る。
フツーに良いはずなんだ。
私が知ってる『良いもの』に、近いと思う。

「……あはっ! ほんとですか!」
「気に入ってもらえたならよかったですっ!」
「先輩の雰囲気にも合うかな〜、って」

雰囲気しか知らない、からね。この人の事。
でも、派手な色とか、そういうのじゃないと思ったんだ。

       ニコ

「センス、ありますかねえ〜? あはは」
「あんまり自信とか、無いんですけど」

「そう言ってもらえるのは嬉しいですっ」
「他にも選ぶものがあったら、私のセンスに任せてくれていいですよ!」「……なんて!」

なんて、ね。
それから、さっき置いたコップをもう一度手に取った。

「やっぱりこれに決めちゃおうかな」「センスで選びましたし!」

682十字路荒野『ジャンクション001』:2020/03/10(火) 00:20:38
>>681

雰囲気かぁ。
どっちつかず……ってのは穿って見過ぎだよね。
穏やかな人柄っぽい、ぐらいに考えておくべきだろう。

「はは……生憎、今日の所は他の買い物の予定は無いけど」
「でも、うん。センスあるって思ったのはほんとさ」
「ケッコー気に入ったよ、これ」
「こいつとは長い付き合いになるだろうし、キミには感謝しないとね」

と言ってもまぁ、具体的に何かできるってわけでもない。
……甲斐性のある人間なら今泉ちゃんの分のマグも買ってあげるのかもしれないが。
生憎と言うか、経済的な余裕がある方でもないのだ。

「そうやって即断即決できるの、尊敬するなぁ……」
「いやでもほんと、ありがとね。助かったよ」
「もしまたどこかで会ったら……俺で力になれることがあるなら、お礼に何かするから」

683今泉『コール・イット・ラヴ』:2020/03/10(火) 01:02:08
>>682

「あは……」

私はそんなに迷うほうじゃないんだ。
引っ越すのだって、すぐ決めたねって皆に言われた。
みんなそれを誉め言葉として言ってくれてるんだ。
でも、迷うっていうのはきっと。

「長持ちすると良いですねえ」
「そしたら私としても鼻が高くなりますし」
「私が作ったものじゃないけど」

私は笑う。

「私はもうちょっと、買い物つづけますので〜」
「そろそろバイバイですかねっ?」

      コロン

「また学校とかで……え? 力に、ですか?」

そして買い物かごに、コップを入れた。

「ええ、そうですね〜〜〜」
「掃除とかしてたら手伝ってくれたり」
「分からない宿題があったら教えてくれたり」
「そーいうの、期待してます」

「そーいうわけで」「尊敬する後輩を、よろしくお願いしますねっ」

そういうわけで、コップ以外にも色々、見ようと思うんだ。

684十字路荒野『ジャンクション001』:2020/03/10(火) 22:25:08
>>683

「すぐに壊しちゃったらキミに悪いしな……」
「せっかく選んでもらったんだから、大事に使わないと」

自分で選んだんなら、諦めもつきやすいんだろうけど。
人に選んでもらったんだから、大事に使わないとバチが当たるってなもんだ。
……いや、自分で買ったものでも大事に使うべきなんだけどさ。

「はは、勉強は中の下ってとこだけどね……」
「掃除とか力仕事ならそこそこ自信あるから、できればそっちで」

カラカラと笑いながら、マグをレジまで持っていこう。

「それじゃ、うん。バイバイだ」
「俺はもう帰るから、気を付けてね」
「またコップとか落とさないように……なんてのは、ちょっとイジワルかな!」



手を振って別れて――――ふと、帰り道。

「(……そういえばあの、最初に見えた『輪郭』……あれは結局なんだったんだろう)」
「(その後俺の『ジャンクション001』を気にしたそぶりもなかったし……)」

『スタンド』。
まだ、わからないことだらけだけど……うーん。

「(………………気のせいだったのか、な?)」

685斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/03/28(土) 22:43:07
――唐突だが、斑鳩 翔という高校生は宝くじが嫌いである。

 「『Aの123456』……『Aの123456』……。」

別に親の仇とかそういうわけではないし、宝くじにまつわる嫌な思い出があるというわけでもない

 『宝くじィ〜?ハッ!そんな物は一等に当選するよりも、自分が交通事故にあって死ぬ確率のほうが高い事を知らない奴が買う物さ!バーカバーカ!』

だが聞こえてくる話と言えば醜く不穏な物ばかり
当たった話が何処からか洩れ、名前も知らない親戚が大挙して押し寄せただの、豪遊から身を滅ぼして家族すら無くしただの……
無駄な努力は嫌いだが、過程を無視して単なる幸運で結果を得るのは尚の事嫌いだった。

 「……『A』の、『123456』。」

春の訪れを如実に感じる近頃、どうにも斑鳩は夢見が良くなかった
悪夢のような、さりとてとてもいい夢だったような、しかし起きて思い出そうとすると、全ての夢が得てしてそうであるが如く
雪が解けるように消え失せて思い出せない、しかしこうなると寝るのが億劫で、ついついスマホ片手に夜更かししては教室で欠伸をしていた。

今朝も体が妙にだるいのを理由に、桜が満開になっている休日、人ごみから離れたベンチに寝転びながら雑誌を広げ……
目を雨の日のワイパーの如く動かして確認する、何度見た所でそこに書いてある数字が変わるわけでもないのだが。

     ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
      ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ      ピッ

手にした雑誌の1頁からずらした指先の後ろには、何度も確認したナンバー、手に持ってるしわくちゃの『宝くじ』は、クラスメイトに記念とかいうよく解らない理由で
『まあ、一枚くらいなら機嫌を損ねるよりはいいか』等という軽い気持ちで購入し、ポケットに突っ込んで忘れた物。

 (A組123456 三等……100万円)

何度見ても『当たっている』、覆せない事実であるし今から持っていけば銀行員が営業スマイルを顔に張り付けながら用意してくれるであろう場面が眼に浮かぶ
その後の営業トークまで考えた所で我に返り、宝くじを胸ポケットに突っ込んで、落ち着くために深呼吸。

 (嘘だろォ〜〜〜ッ 何で『僕』の宝くじがあたってんだァ〜〜〜!? しかも100万円・・・!つまり、千円札が10枚で1万なんだから……1000枚?)

どう考えても高校生には手に余る金額だ、…………どうしよう、かつての発言がブーメランの如く後頭部に突き刺さる
そんな斑鳩の混乱と事情等どこ吹く風と言わんばかりに春一番が桜の花びらを攫い、ベンチの近くで桜色の小さな渦を巻いていた。

686<削除>:<削除>
<削除>

687斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/03/31(火) 19:32:43
>>685

桜並木の下で斑鳩 翔は考える

100万円の使い道といっても色々とあるが、真っ先に思いついたのはスニーカーだった、自分の靴はもう汚くてボロボロだ
ナ〇キの最新モデルが確か5万円くらいだった筈だ、5000円払えば1足揃う物に5万円など馬鹿らしいとも思えるが
ピカピカのスニーカーを履く事を考えるとこれがどうして胸が躍った

祖父母を誘って豪華な食事もいいだろう、自分を引き取ってくれた二人だ
あの2人に恥じない人間ではありたいと思うし、日ごろの感謝をあぶく銭ですると言う事に
少し眉をひそめたが…金は金だ、感謝には違いないのだし、100万も有ればかなりいい所に行けるだろう。

桜の散る様を眺めながらうんうんと唸り、色々なアイデアが頭をよぎっていく……

……最後に思いついたのは『入院代』の事だった。

(大人一人で一ヵ月に約『30万』、2人なら『60万』)
(……1年分なら?『720万円』)

学生が捻出できる額では到底あり得ない
だがここに全部とはいかないまでも、1ヶ月分なら充分に足りる金額が有る。

(祖父母はなんというだろうか……あの時と同じ様に、自分の為に使えというのだろうか。)
(こういう幸運は、あの人たちのような善良な人達に与えられるべきであって、何故今僕の手に有るのだろう?)

ポケットをまさぐると、確かにそこに宝くじが1枚入っている
それがこの世の不公平さを如実に表しているようで、なんだか気持ちが悪かった

起き上がって宝くじの真ん中を摘まむ
こんなものビリビリに破いてしまえばいい、少なくともそれだけ公平にはなる……

だが指に力が入らなかった、先程自分が考えた通り『金は金』なのだ
そこに付随価値を見出したり、何か特別な物を感じ出すのは人間だけだ。
公平になる、等というのも単に自分の『そうなればいい』という願望に過ぎない。

(――最低だ。)

くしゃくしゃになった宝くじを懐に仕舞い、再びベンチに寝転ぶ
紙切れ1枚の為に人が死ぬことも有り得るのだから、今使わない事だって十分選択肢だ
自分の情けなさにそう言い訳しながら、眼を閉じる。

持って生まれた力を使わずにいる者は、ただの卑怯者だ
そうでない筈なのに、その考えが頭を離れなかった。

688三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2020/04/18(土) 21:28:07

千草です。
『春眠暁を覚えず』という言葉があります。
春の夜は寝心地がいいという意味だそうです。
今は昼間なのですが、さっきから目蓋が重く感じています。
昨日の夜、遅くまで勉強していたせいでしょうか。
それとも、この喫茶店で飲んだ紅茶のせいかもしれません。
ともかく、何だか無性に眠く――――。

     スゥ……

いつの間にか、テーブルに突っ伏していました。
腕を枕にして、静かに寝息を立てています。
もちろん、千草自身は知る由もないことなのですが。

689???:2020/04/19(日) 20:33:10
>>688(目覚めるのもよし、眠り込むのも一興)

〜〜♪

一人の人物が喫茶店の戸を開いた。特有の開閉の鈴の音が
静かな室内に僅かながらの振動を満たす。

 ――コツコツ

「……、  ……」


    ――ファサ

 
三枝千草に気づくと、眠り込む千草に対して其の人物は
マスターに毛布を借り受けとると、その背中に極力柔らかにソレを掛けた。

「……」    

  ――コツコツ       スタッ……


数秒、その眠り込む姿を眺めるように見下ろすと。
満足したように、その人物は踝を返して少々離れた席に腰を下ろし
自らの作業に没頭し始める。

690三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2020/04/19(日) 22:26:06
>>689

  …………ザッ

――――――『森』の中を歩いていました。
木が多いせいでしょうか。
昼間だというのに周りは薄暗いです。

             ザッ

しばらく歩いていると、一際大きな木が見えてきました。
その根元に背中を預けるようにして、
知らない誰かが座り込んでいます。
最初は眠っているように思えました。

                     ザッ

でも――――実際は違いました。
手足は捻じ曲がっていて、表情は酷く歪んでいたからです。
その人に『息がない』のは、遠目からでも分かりました。

「ッ………………!!」

咄嗟に逃げ出そうとしましたが、出来ませんでした。
濁ったガラス球のような両目に見つめられて、
そこから動くことが出来ませんでした。
そのまま意識が遠のいていき――――――。

             ビクンッ

まるで泥の中から起き上がるように、千草の意識は、
ゆっくりと現実の世界に戻ってきたのです。
それは『夢』でした。
だけど、『現実』です。
紛れもなく『現実に起きたこと』です。
何年か前、千草は『それ』を見たことがあります。

「ふぁ…………」

目を擦りながら、頭を上げました。
てっきり『寮』だと思ったのですが、違うようです。
まだ頭がぼんやりしているせいで、よく思い出せません。

「ん…………」

これは――――『毛布』でしょうか?
千草が気付かない間に何が起きたのでしょう。
何だか恥ずかしい気がして、控えめに辺りを見渡しました。

691 小林『リヴィング・イン・モーメント』:2020/04/19(日) 23:12:03
>>690

シャリッ シャリ キュル キャルキャルキッ キュッキッ

或る果てに、群青の帳を透かすようにして 6月22日の あの頃に
隣り合ったセピアの隣人と飲み交わしたラムネの中の硝子玉を思い起こす彼のような
あの陽射しは鎹を光の剣と見立て 眼窩底を切り裂き 深意識に一筋の頂きを……

>ふぁ…………

「……うん、あぁ おはよう御座います」 ニコッ

彼(ロダン)と謎かけをした後も、幾多の出会いを心掛け様々な場所へ
足を運んでみる事にした。
 その心掛けが実ったらしい。こうやって知り合いとも偶然に出会える。

「段々と暖かくなってきましたからね。
唯だ喜ぶ簾前 風稍暖かに と言ったところでしょうか」

「……よく眠ってたようなので、起こすのは忍びなかったんですが。
こう静かな場所ですと、私の書き物も少々微睡みを濁してしまいましたね」

覚醒した千草さんに詫びの言葉を述べる。
 なるべく静かに速筆で作品を作成していたが、それでも惰眠を打ち破る程には
大きな物音をしてしまったのだろう。

692三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2020/04/19(日) 23:48:36
>>691

「――――――『小林先輩』?」

そこには見知った顔がありました。
小林先輩とは、何度かお話させて頂いています。
でも、こんな風にお会いするのは初めてでした。

         キョロ キョロ

「あ…………」

「ええと…………」

「寝てしまっていたみたいですね……」

「――お恥ずかしいです」

           ペコリ

「その……こんな場所で……」

「みっともない所をお見せしてしまいました」

『顔から火が出る』とは、こういう事を言うのでしょうか。
とても良くない事をしてしまった気がして、
視線が自然と下に向きます。
口から出る言葉も、つい早口になってしまいました。
店の中で寝ていると、お店の人に迷惑が掛かります。
こんな事では、『立派な人』にはなれません。

「……あの、この毛布は先輩が?」

「あっ――――」

「そうじゃなくて…………」

焦って舌がもつれます。
うっかりして言い忘れていた事がありました。
知っている人に会ったら、
一番最初に言わなければいけない事です。

        スゥゥゥ……

「――こんにちは、小林先輩。お久しぶりです」

人に会ったら、何よりもまず『挨拶』です。
挨拶は基本です。
基本を疎かにしてはいけません。

693小林『リヴィング・イン・モーメント』:2020/04/20(月) 22:33:00
>>692

>みっともない所をお見せしてしまいました

(……?)

その言葉の意味を、私は推し量りかねて少しだけ思考した。

別に千草さんが微睡みを、この喫茶店で行った事で誰にしも
迷惑はかけてない。店内にも、私や千草さんを除いては少数なのだから。
 
『みっともない』とは、見苦しい・恥ずかしい・見たくもないと言う意味合いだ。

瞼を閉じ、先刻の千草さんが自身の腕枕で眠る姿と横顔を思い返してみた。

……うん、やはり文章的に異なると私は思う。

「みっともない、ですか? 
私には何時まで見ていても飽きない情景でしたが」

>お久しぶりです

「えぇ、お久しぶりです。学年も異なりますから、学園では
そうそう顔を合わす機会も少ないですし、最近は寮でも余り
会う頻度は多くなかったですものね」

 こう、穏やかに話せる日々は何よりも掛け替えなく

「親友の事は覚えていますか? つい最近も、
お前(私)はマメに見えて出不精だから、知り合いには
定期的にラインなど取り留めのない事でいいから報告してやれ
と言われてましてね。……正論ではあるとは思ってるのですよ」

 きっと、ある日ふと この時の流れる砂粒が
砂金で積り隆起した山々よりも価値あると思い返すのだろう

694三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2020/04/20(月) 23:12:34
>>693

  「えっ」

        「あっ」

              「は、はい…………」

小林先輩の言葉に、何となく頷いてしまいました。
先輩の迷惑になっていないのなら良かったです。
でも、今の千草は変な顔をしていないでしょうか。
おかしな後輩だと思われていないでしょうか。
それが少しだけ心配でした。

「小林先輩は、高等部の三年生でいらっしゃいますよね?
 お友達の方も……」

確か、『宮田さん』というお名前だったと思います。
前にお会いしたのも、ここスカイモールだったと思います。
『宮田さん』もお元気でしょうか?

「学年が離れていると、
 お会いする機会は少なくなってしまいますね。
 先輩方とは同じ『寮生』ですが、
 生活のリズムまで同じではありませんし……」

「そういえば、不思議と『高等部二年生』の先輩とは、
 よくお会いする気がします」

「『鉄先輩』、『日沼先輩』、『猿渡先輩』、『斑鳩先輩』……。
 小林先輩は、ご存知の方がいらっしゃいますか?」

指を折って数えてみます。
数え忘れはないでしょうか?
もし間違いがあったら失礼です。

695小林『リヴィング・イン・モーメント』:2020/04/20(月) 23:39:15
>>694

「えぇ、私は高校三年で間違いありません。
彼(ヤジ)も……偶に、親友は同学年の筈ですが
態度や行動が突飛なので同学と思いにくいのが正直な心情ですね」

喫煙に飲酒 星見の裏路地の界隈では不良達に親身だし
彼はスタンド関連の組織にも手広く足を運ばせている。
 実際、普通の高校生の日常生活で無いだろう。

>『鉄先輩』、『日沼先輩』、『猿渡先輩』、『斑鳩先輩』

「いえ、学園では余り接しないし話もした事の無い方達だと……。
……『斑鳩』?」

……何故だろう。少しだけ、その言葉に違和感を覚えた。
 とても、とても遠い何処かで。深いとは言わざるも
浅はかならぬ連帯の一員であったような……随分と奇妙な感情だ。

「……斑鳩、斑鳩……私の親友が何処かで話した事のある人物かな?
あぁ、すいません千草さん。多分、実際に会った事は無いと思いますよ」

「接した事のある人だと、そうですね……『志田忠志』さんと言う
大学生の方とでしたら、学園や旅館のほうで会った事があります。
 目の隈が特徴的な方でしてね、慢性的な寝不足なのか……」

「……そう言えば、先程。少々魘されていましたか……?」

作業しながらでも、周囲に目は配れる。
 千草さんが覚醒する前に、一瞬何かに衝撃受けたように肩が
跳ね上がったような気がした。

696三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2020/04/21(火) 00:00:28
>>695

「――――?そうなんですね」

斑鳩先輩のことは、まだよく分かりません。
でも、きっと親切な方だと思います。
この間は、『草取り』を手伝っていただいたので。

「その方は存じ上げないです。
 大学部の方とは、
 まだ一度もお会いしたことがありませんでしたので……」

大学部といえば、成人している方が大半です。
そういう方とお話が出来ると、良い刺激になるのでしょうか。
いつか、お会いしてみたいです。

「え、ええ……」

「ちょっとだけ『夢』を見ていたようなので……」

「それで、その……」

『夢の光景』が頭に浮かびました。
それが夢なら良かったのですが。
だけど――それは『夢』ではありません。
夢であって夢ではないものです。
忘れたいけど忘れられないものでした。

「――――いえ……何でもありません」

       ニコ

頭の中に纏わりつく映像を振り払うために、
出来るだけ明るい表情を作ろうとしました。
それが成功したかどうかは分かりません。
ただ、先輩に余計な心配を掛けてはいけないと、
そう思いました。

697小林『リヴィング・イン・モーメント』:2020/04/21(火) 22:52:40
>>696

>ちょっとだけ『夢』を見ていたようなので……

「夢、ですか」

 ――夢

その単語に、少しだけだが微かに何かが脳裏を霞む。

中世時代を描いたかのような街並み  踏みつけた氷面の如き空

 怒号 濃密な血霧 眩い光

きっと、何かしらで私が見た事のある記憶なのかも知れない。普段は
全くと言って良い程、意識の途切れは全て無しか映し出さないが。

>――――いえ……何でもありません

その『微笑』に、何処となく私は誰かに似ていると感じ得た。

誰にだろう? 

……あぁ、そうか。

「――泣いているのですか?」

その『微笑』の主は『私』だ


ずっと、随分前に 自分自身の心は欠け落ちて 
悲しいのか 楽しいのか 虚しいのか 怒りか 諦観か
 理解してるのか 目を背けているのかすら覚束なかった。

けど、今 貴方の微笑を見ていると……

「私には……千草さんが泣いているように、見えます」

手を伸ばし、その見えない涙を拭うべきなのではと思えてしまう。

698三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2020/04/21(火) 23:16:53
>>697

      「それ、は――――」

思わず言葉に詰まってしまいました。
先輩に気を遣わせてはいけないと、そう思ったのです。
それなのに気を遣わせてしまいました。
良くありません。
これでは『目標』に辿り着けません。

      「そんな、事は――――」

『そんな事はありません』――そう言おうとしました。
ですが、言えませんでした。
その言葉が『嘘』になってしまう気がしたからです。
嘘をつくのは悪い事です。
悪い人は『立派な人』ではありません。

        「っ――――――」

言葉が出てきません。
何を言えばいいのか分かりません。
『何かを言うべきなのかどうか』も分かりません。
今、どんな顔をしているのでしょうか。
もしかすると――
『今にも泣き出しそうな表情』をしていたのかもしれません。

699小林『リヴィング・イン・モーメント』:2020/04/22(水) 00:13:08
>>698(宜しければ次で〆たいと思います)

在りし日々 憧憬の一幕 今や亡き故郷の景観

そこに私は幾つもの失ってはいけなかったであろうものを置いてきた
 いや……堕としてしまった と言う表現が似合いなのか

その中には、『心』もあったのだろう 
 埋められる事もなく 今も未だ もう陽の射さぬ場所で其の形は
元に戻る事を願い彷徨っているのかも知れない

 取り戻せぬ半ば抜け殻の木偶の坊は、こうやって無為に日々を生き
『貴方』と言う 奇しくも既視の陰りを見咎めて……

「――いいんです」

 だから 私は『指を絡める』 あの時の謎掛けの時のように

その時は勇気を授かりたく だが、今は毛布を掛けた時のように
ただ ただ見えぬ五月雨を凌ぐ布になればと願い

「いいんですっ……」

この瞬間 『貴方』は『私』だった 
『私』もまた『貴方であった

 姿も形も性別も 進みし岐路も違えども 鏡合わせのように
その心境は、何も言わずとも理解出来るのではと
 
 既に何も居ぬ器の中で 一つ 水泡が生じる音が胸の内で高鳴っていた

700三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2020/04/22(水) 00:37:33
>>699

『あの時』の事を思い出していました。
以前、学校でお会いした時の事です。
小林先輩は、こう言われました。

   「私は何に見えますか?」――――と。

それは難しい質問でした。
どう答えるべきか悩みました。
そして、千草はこう答えました。

     「『人』に見えます」――――と。

千草には『人の心』は分かりません。
ただ、今は何となく、
先輩の『心』に少しだけ触れられたような気がします。
そう思うのは、勝手な思い込みかもしれませんが。

        「――――――」

      「――――――あっ……」

   「――――――ありがとう……ございます……」

     ニコ……

今、千草はそう言って頭を下げました。
先輩が掛けてくれた毛布を、
無意識の内に両手で握っていました。
きっと今の千草は、
『無理のない笑顔』でいられているんだろうと、
そう思います――――。

701比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2020/05/01(金) 20:44:33

――――展望台。
見物客達に交じって、モノトーンのストライプスーツを着た男が立っていた。
特に何をするでもなく、ただ静かに街を見下ろしている。

その数メートル後方。
ベンチの下に、何かが落ちていた。
一枚の『トランプ』――いや、『カード』だ。
四隅に『スート』が配され、中央には『道化師』の顔が描かれている。
まだ誰も、それに気付いている様子はない。

702逢瀬 泰葉『ガンジャ・バーン』:2020/05/03(日) 02:41:46
>>701
躊躇なくカードを手に取り裏表を確認する。
好奇心に従って拾ったが…

「オーギュストかな? それともクラウン?」

よく病院に来てくれたピエロは明るく楽しい人だった。
カードのピエロを眺め過去を振り返る。

703比留間彦夫『オルタネイティブ4』:2020/05/03(日) 04:46:59
>>702

誰かの落し物だろうか。
逢瀬の指先が『カード』に触れる。
しかし、『拾い上げる』事は出来なかった。

       ポンッ

何故なら、『カード』が『兵士』に変わったからだ。
『黒い鎧』を身に着けた『兵士』。
逢瀬には、それが『スタンド』だと分かるだろう。

           ――――ジッ

出現した『兵士』は、逢瀬を見上げている。
様子を窺っているようだ。
それ以上、何かをしてくる気配は見られない。

704逢瀬 泰葉『ガンジャ・バーン』:2020/05/03(日) 06:09:38
>>703
「これは驚いたね。私以外に『超能力』の使い手が存在するなんて」

「こんにちは。君のお名前は?」

そうじゃないかな、って感じの白町さんを除く『超能力者』との初遭遇だ。
『超能力』が意思の発露なら人の形を取るのにも意味があるはず。
そして、『ガンジャ・バーン』のように不思議な力を持っているのだろう。

「私の『ガンジャ・バーン』に比べて率直な形だね。可愛い。現れ方もセンスがある」

705比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2020/05/03(日) 09:37:48
>>704

『兵士』は、逢瀬を観察していた。
そして、『兵士の視界』を通して、
『比留間彦夫』は逢瀬を観察していた。
『兵士』は『実体化したスタンド』であり、
『力』を持たない一般人にも見る事が出来る。
だが、この落ち着き方は一般人のそれではない。
彼自身の言葉と考え合わせると、
この少年も『スタンド使い』と見て間違いないだろう。

《――――私の名は『オルタネイティヴ4』》

逢瀬の呼び掛けに応じて、奇妙な声が語り掛けてくる。
それは『スタンドが発する声』だ。
『黒い兵士』は、更に続ける。

《突然現れた失礼はお詫びします。
 どのような反応が返ってくるのか、
 それを確かめたかったものですから》

《恐縮ですが、不用意に『本体』を曝す事は出来ませんので、
 このような形でお話する事を御了承下さい》

『ガンジャ・バーン』がそうであるように、
スタンドとは『精神の顕現』。
『オルタネイティヴ4』も、本体の精神を象徴している。
『嘘』を糧とするのが、『オルタネイティヴ4』の本質だ。

706逢瀬 泰葉『ガンジャ・バーン』:2020/05/03(日) 22:34:18
>>705
「面白かったから良いよ」

「私の名前は逢瀬泰葉。見ての通り学生だよ」

日本式に目鼻立ちが細く楚々とした中性的な青年が自己紹介をする。
顔の左半分を覆う火傷を隠そうとするが途中で諦めて困った顔を浮かべる。

「私の『ガンジャ・バーン』を警戒してるのかな? 安心して、ほぼ無害な花だから」

自分の足を軽く蹴って『ガンジャ・バーン』を発現する。
何の変哲もない花が一本だけ逢瀬の片足に生えてくる奇妙な光景が『戦士』を通して見えるだろう。

「かつて恐竜を絶滅させたという植物の学説…を模した能力。食べない限りは無害なだけ」

「それが『ガンジャ・バーン』」

風向き次第で独特な、しかし、不快ではない甘い香りが本体に届くかもしれない。

707比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2020/05/04(月) 01:06:39
>>706

甘い匂いが風に乗り、比留間の下まで届いた。
その香りに、目を細める。
大抵の場合、『良い香り』というのは、
生物を引き寄せるためのものだ。
引き寄せて何かをする。
それは『罠』を連想させた。

《ご説明に感謝します。
 ですが――『本体』は曝せません。申し訳ありませんがね》

《第一に、私は『能力の説明』を要求してはいません。
 第二に、それと引き換えに、
 『本体を教える』という約束もしていない。
 つまり、『本体を教える義務はない』という事になるのですよ》

《教えて頂いた内容は決して口外しませんので、
 その点はご安心を》

勿体ぶるような言い回しで、『兵士』は告げた。
口には出していないが、
逢瀬の言葉が真実である保障がないというのも、
簡単には本体を教えない理由の一つだ。
別に、この少年を疑っている訳ではない。
彼に限った話ではなく、口では何とでも言えるという事だ。
他ならぬ自分が、『嘘』を好んでいるように。

《ですが、何も教えないというのも『アンフェア』というもの。
 そうですね、一つ『耳寄りな情報』をお教えしましょう》

《『ラフィーノ石繭』という名前をご存知ですか?
 巷で話題の『占い師』ですよ。
 よく当たるという評判で、私も占って頂きました》

《もし機会があれば、是非とも占って貰う事を勧めますよ。
 彼女の実力は、『本物』ですから》

彼女の占いが『本物ではない』事は知っている。
それを知っていて宣伝しているのは、彼女の下へ、
一人でも多くの人間を送り込むためだ。
純粋な好意――――というと『嘘』になるが。

708逢瀬 泰葉『ガンジャ・バーン』:2020/05/04(月) 02:39:59
>>707
「単なる自己紹介だから対価は要らないよ。でも、ありがとう」

「普通は『本体』とか隠すものなのかな…
 能力バトル漫画みたいで格好良い」

『ガンジャ・バーン』は『本体』を必要としないし、自分も『ガンジャ・バーン』を平気で絶滅させる。
この『オルタネイティヴ4』と『本体』の関係は私たちと異なるものなのだろうか。

「『絶滅』してなかったんだ、占い師…」

「本当に人の『運命』を見通せるなら、精神を病んでもおかしくないのに。何も知らなければ無責任な事を言えるから楽なんだろうけどなぁ」

「気になるから行ってみようかな」

面倒な客が『ラフィーノ石繭』の元に襲来する可能性が高まった瞬間であった。
撃退できるかについては彼女次第である。

「うーん、そっちだけ最初に面白いことをしてズルい気がしてきた」

「私も、君を楽しませてみたい」

唐突に不思議なことを言い出した逢瀬が靴に生えた花を引っこ抜く。
そして、躊躇なく口に放り込み食べてしまった。

「本当は『化石化』するまでを見せたかったけど…」

709比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2020/05/04(月) 10:18:03
>>708

《是非どうぞ。
 彼女の事務所は歓楽街方面にありますが、
 『出張占い』もやっているようですからね。
 運が良ければ出会えるかもしれません》

何しろ『宣伝』をしているのだから、悪い事ではないだろう。
少なくとも、『客観的』には。
そして、比留間はラフィーノを嫌ってはいない。
『趣味』と『仕事』の差こそあれど、
『同じような方向性』を持つ者として、
『親近感』を抱いていると言ってもいい。
だから、どのような手口で彼女が客を捌くか見てみたいのだ。

《『恐竜を絶滅させた植物』ですか……。
 幼い頃は、私も『恐竜』が好きでした。
 彼らから感じる独特の『力強さ』には憧れたものです》

『黒い兵士』を通して、逢瀬の奇妙な行動を見守る。
彼は、『食べなければ無害』と言っていた。
逆に言うと、『食べれば有害』と解釈できる。
この少年は、それを自ら口にした。
一体どういうつもりなのだろうか。

ちなみに、『恐竜が好きだった』というのは『嘘』だ。
自分の少年時代、両親は『英才教育』を施そうとし、
少しでも『悪影響』を及ぼすと判断されたものは、
全て遠ざけられていた。
楽しみと言えば『嘘』をつく事くらいだった。

710逢瀬 泰葉『ガンジャ・バーン』:2020/05/04(月) 22:54:55
>>709
        パキッ
               メキッ

「かつてジュラ紀の生態系を支えていた植物は『奴隷』でしかなく、葉は無惨に喰い尽くされ、花粉さえ餌として奪われていた」

「一日一頭当たり600キロから1トンもの植物を食べていたとされる草食恐竜はまさに天敵」

逢瀬の皮膚が徐々に『鱗』らしき物体に覆われていく。
全体的に『爬虫類』寄りの姿となっている。

「そこで植物は花という革命を起こす。蜜を使い虫たちに花粉を付着させ、受粉してから生殖に必要な時間を僅か3分に縮め、世代交代を繰り返し勢力を広げた」

「一方で『草食恐竜』を敵と見なした花は毒性を獲得し、味覚の無かった彼らを『絶滅』に追い込んだ…」

「この学説を再現するのが『ガンジャ・バーン』。私の『精神』の象徴だよ」

『オルタネイティヴ4』の本質が本体の執着する『嘘』ならば、『ガンジャ・バーン』の本質は『破滅』。
学説通りなら花は増えていくことになる。
そして、摂食した生物は逢瀬のように『草食恐竜』と化してしまう。

「びっくりしたかな? 四本食べて『化石』になった姿も見せたかったなぁ」

「流石に『草食恐竜化』したら危ないからね。カードの時にびっくりしたお返し」

711比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2020/05/05(火) 01:00:47
>>710

《――――ははぁ、なるほど……。
 その『花』を食べると、あなたのように、
 『タイムスリップ』してしまう訳ですか……。
 『外見』だけではなさそうですね。
 いや、何とも『スケールの大きな能力』のようで》

驚いたような声色だった。
『嘘』ではない。
規模の大きさという点では『オルタネイティヴ4』を超える。

《それに比べると、私は大した事はありませんよ。
 『本体』を見せないのも、その辺りが理由とお考え下さい》

《せいぜい『人間以上に力強く』、『人間以上に素早く』、
 『人間以上に器用』で、『長い射程距離』を持ち、
 『ダメージの伝達も無い』というくらいですから》

滑らかな口調で言葉を続ける。
『事実』だ。
もっとも、全てを同時に発揮する事は不可能だが。

《フフ――――もちろん『冗談』ですよ。
 もし本当なら、『本体』を隠す意味はありませんからね。
 『驚かされたお返し』に、少し驚いて頂こうかと思いまして》

712逢瀬 泰葉『ガンジャ・バーン』:2020/05/05(火) 03:08:39
>>712
「私の個人的な欲望は『醜い』ものを『破滅』させたい、または人生で最も『美しい』時に『破滅』させたい程度」

「でも、不思議と愛着のようなものがあるよ」

     ボロッ

              ボロッ

逢瀬の肉体を覆う『鱗』が剥がれ落ちて消え去っていく。
『ガンジャ・バーン』が根絶された証だ。
調子に乗って1日放置したら元果樹園を越えて近隣の住宅地に侵食した時は驚いたものだ。

「そこまで強いのに姿を見せないのは発現条件が厳しいみたいだね。『ガンジャ・バーン』のようにスロースターターなタイプ」

「と、言っても『超能力』に気づいたのが最近だから適当な推測だよ。数年ぶりに目覚めたら知らない間にね?」

逢瀬は天然物のスタンド使いだ。
本人は『スタンド』の概念すら知らない。
人為的に目覚めたわけでもないから『親』に値する者もいない。

「『冗談』が好き? 騙したりするのが発動条件っぽいね」

「こっちも仕返しさせてもらうよ。実はね、私の精神年齢は小学6年生+1年なんだ」

713比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2020/05/05(火) 03:58:11
>>712

《お蔭様で貴重なものを見せて頂きました。
 『人と恐竜の中間の状態』を目撃するというのは、
 なかなか得難い経験でしたよ》

《私の『能力』について詳しい事は、ご想像にお任せします。
 考えるのは『タダ』ですからね》

『教える気はない』事を暗に示す。
実は、『能力の一つ』は既に『発動中』だった。
『黒い兵士』の『正体』は『ジョーカー』(>>701)だ。
『ジョーカー』には、『ダメージフィードバック』が存在しない。
『カード』に触れた相手が攻撃的な人物だった時の事を考え、
用心のために『ジョーカー』を設置していたのだ。

《ただ、『冗談が好き』というのは少し違いますね。
 『ウィットが好き』と呼んで頂いた方が近いでしょうか?》

《フフ、『ヒント』はこれくらいにしておきましょう。
 あなたは鋭い方のようですからね。
 仮に分かったとしても、『内密』にお願いしますよ》

もっとも、正解かどうかは確かめようがないだろう。
見せる気はないし、当たっていたとしても否定すればいい。
例えば、今この少年と自分が戦うというような場合は別だが。

《なるほど――――不躾で失礼ですが、その『火傷』。
 大きな『事故』で長期入院されていたようで。
 お察しします》

『火事』という言葉を避けたのは、相手に配慮したからだ。
何気ない一言が、思わぬ問題となる事もある。
『司法書士』である比留間は、そういった点には慎重だ。
比留間彦夫は『嘘つき』だが、『外道』ではない。
その辺りは、両親の『英才教育』が成功したと言える。

《私の入院経験というと、
 『小学生の頃に腕を折った』時くらいですよ。
 『スキー』の最中に、うっかり転倒しましてね》

《当時、同じクラスに『好きな女の子』がいたもので。
 つい見栄を張ってしまって、身の程も弁えずに、
 『上級者コース』に行ったのが悪かったんでしょうねえ》

気遣いの言葉を掛けた直後、流暢な『嘘』の話で締めくくる。
比留間は『外道』ではない。
しかし、やはり『嘘つき』なのは変わらない。

714逢瀬 泰葉『ガンジャ・バーン』:2020/05/05(火) 06:30:22
>>713
「うーん、全然分からない。こういった能力はカラクリが知られると不味いから仕方ないね」

名前的に残りの『手札』が三枚……と見せ掛けて四枚はあるかもしれない。
私が見つけたカードの絵柄は『ジョーカー』。
残りは『クラブ』『ハート』『ダイヤ』『スペード』だろう。
『本体』の性格的に残り52枚全部が『兵士』の可能性もある。

「火傷は一家心中で生き残った罰みたいなもの。死ぬべきだったのにね」

「パパは植物学者で果樹園経営からフルーツ食品業界に進出した成金。不況や不幸が続いて幅広く手を拡げてた分だけ損失も大きかったよ」

「借金は返せるだけ返したけどパパも、ママも精神的に追いつめられて一家心中。そして、私は1年前に目覚めた」

「時代に取り残された恐竜の『化石』みたいにね? ふふっ、嘘だよ…?」

精神年齢に見合わない逢瀬の言動は達観しているようにも見える。
実際は、みんなどうせ『破滅』する存在だから大差無いと思い込んでいるだけだなのだが。
揺るぎない『結果』を知ったばかりに『過程』を美醜で大雑把に処理しているのだ。

「オルタさんは大人っぽいのに子供の時はやんちゃさんだったの?」

「話し方は上品で立ち回りが堅実な性格とばかり思ってた。先生が気に入るタイプの良い子みたいな感じだ」

715比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2020/05/05(火) 10:15:27
>>714

《フフ、当てずっぽうで正解が出るほど簡単ではありませんよ。
 私が困ってしまいますからね》

『オルタネイティヴ4』の『正体』が明かされるのは、
『図柄』を言い当てられた時だけ。
逢瀬からは、その『黒い兵士』が『ジョーカー』である事実を、
窺い知る事は出来ない。
目に見えるのは、単に『黒い鎧を身に纏う兵士』というだけだ。

《…………私から言える事は、あまり無いでしょう。
 ただ、『人生の残り時間』は、私よりも貴方の方が長い》

《『長く生きればいい』というものでもありませんが、ね》

そう言って、『兵士』は肩を竦めた。
展望台には、他の人間も何人かいる。
逢瀬より年上と思われる者も少なくない。

《人間とは『一組のトランプ』のようなものです。
 『赤』があれば『黒』があり、『スート』があれば『数字』がある》

《『一枚のカード』ではなく、様々な『カードの集合体』。
 だから、一人の人間も『様々な面』を持っている》

《――――という話を前に聞いた事がありましてね。
 外国の作家だったか政治家だったか……》
 
《とにかく『誰かが言った言葉』です》

716逢瀬 泰葉『ガンジャ・バーン』:2020/05/05(火) 22:21:45
>>715
「人間が様々な絵柄の集合体であるカードだとして、その多彩な面は『美しく』もあり『醜く』もある」

「その辺はタロットカードの領分かな?」

絵柄の解釈1つで様々な一面を見せるタロットカードの起源は寓意画という説がある。
今、持っていれば話の種にもなるが持っていない。

「タロットカード占いのやり方を知ってるからやってみようかな、と思ったけど家に有るんだった」

「あまり引き止めるのも悪い気がしてきたし、ラフィーノ石繭さんの事務所でも探そうかな。長々と話しちゃってごめんね?」

「また会えた時に備えてびっくりさせるネタを探しておくから。またね」

真っ黒い『兵士』に手を振って歩き始める。
次の目標をラフィーノ石繭に定めて…

717比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2020/05/05(火) 22:48:14
>>716

《ええ、楽しみにしておきますよ》

《それでは、『御機嫌よう』》

       ――――シュンッ

逢瀬が立ち去るのを確認し、『黒い兵士』の姿が消えた。
手元に戻った『カード』を見下ろし、そのヴィジョンも解除する。
反応を試す『実地テスト』としては有意義だった。

「丁度『あの辺り』でしょうか?」

「――――『彼女の事務所』は」

『歓楽街』の方向を見つめ、誰に言うでもなく呟く。
あの少年が『彼女』に出会うとすれば、一悶着ありそうだ。
それを確かめられないのが残念ではあるが――――。

718斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/05/25(月) 00:32:28
ふと気が付けば5月もそろそろ終わりが近づいていた
もはや春の季節は足早に過ぎ去りつつあり、あの蒸し暑い夏に向けての最後の日々と言えない事も無い

学友たちと中身の無い話を延々としたり、新入生の歓迎会を寮で開いたり
そういった事柄も桜の花びらと供に過ぎ去っていった

 (――期末テストの用紙も一緒にふきとばないかな。)

ガッコーに隕石落ちて休みになんないかな、とも思っている
実際に落ちたら3分は顎が外れたままになりかねないが、あの時と比べればそこまで驚かないだろう。

       ―真昼の展望台にある塗装の禿げたベンチに一人寝転んで斑鳩は考える―

カーネーションの花束は病室に飾り、足音を立てぬようにその場を逃げるように去った 130万もあれば2か月は両親を入院させておける。
その為に役に立った右腕を動かすと、まるで何事も無かったかのように動いてくれる あの質量が掠ったとはいえよくも原型が残った物だとも思う。

 (そーいえばGB崩れと戦った時も右腕が折れてなかったっけ?)

我らが被害担当になりつつある右腕であった。
今はしっかりと動くのは有りがたい事だ、これが祖母にバレたら冗談を抜きに死ぬ覚悟をせねばならない処である
――しかし、遠目から見ると愚かな事でしかないが……眼を瞑ると今でもハッキリと、あの瞬間を思い出せるのだ。

        あの『皇帝』との戦いを。

しかし今はこうしてゴロゴロと腹のくちくなった猫のように寝転んでいると
なんだか悪い…否、いい夢だったのではと思えるのだ。

 (1…2…4……。)

そんな風に考えだすと、なにやら体がむずがゆく、フワフワとして落ち着かない
帰る場所の無い雲のような心持で、斑鳩は5月の空の雲を数えだした。

719一抹 貞世『インダルジェンス』:2020/05/25(月) 10:20:52
>>718
1…2…3…4…視界の隅を人型スタンドが通り過ぎた。
十字架の意匠を各部に持つ、それは明らかに近距離パワー型と分かる体格だった。

「最近、心が荒れた方々が多いですね。
『インダルジェンス』で悪感情を『鎮静』して歩いたら疲れました」

スタンドの主と思わしき人物は変声期前のハスキー声で愚痴っている。
警戒心が薄いのかスタンド能力まで喋っている。
珍しいタイプの能力を持っているようだが…

720斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/05/25(月) 19:11:40
>>719

あの雲の向こうにラピュタがあるんだ!
……さすがにそんな積乱雲は何処にも存在していないが、それよりも目を引かれるものが視界の端をよぎった。

例えるなら一般女性が「あ、このバック可愛い〜!」とショーウィンドウに眼が引き寄せられるような物だ
男性視点からの例えは少しばかり品が無いのでここではスルーする物とする。

斑鳩翔の真っ黒な目玉が捉えたのは『スタンド』だった
おまけにその本体らしき男まで共に歩いているでは無いか!

 (なんだありゃ?スタンド使いがスタンド丸出しで、自分の能力の事までベラベラ喋ってるぞ?)

罠だろうか?にしては杜撰過ぎるし、見た限りでは他に人影も無い
襲われる覚えは無くはないが、だからといって流石にここまではないだろう…とは思う。

 (……なんにせよ『悪感情を鎮静』って部分は聞き逃せない部分だな、俺達の目的もある。)

効力があるかどうかは聞いてみないと解らないが
例えそれが砂漠の中の砂金粒の厳選作業だったとしても、逃す手は無い
風に揺れるスカーフを払いのけながら、僕は体を起こして彼に話しかけることにした。

 「――へいッ!そこのハスキーボイスがイカした少年!」
 「『十字架』背負ってる君だぜ君、そんなヤツ連れて何してんだ?仮装パーティーか?」

なお呼びかけるセリフはテキトーだった だって寝起きだからね。

721一抹 貞世『インダルジェンス』:2020/05/25(月) 21:10:53
>>720
「少し昔のライダーみたいな人…
 あっ、えっと、これが見えてるみたいですね」

近距離パワー型スタンドの本体と思わしき玲瓏とした風貌のあどけない少年が振り返る。
女子生徒ならナンパの類いと勘違いしそうな気軽さに少しビビっている。

「仮装パーティー? 私の外見のことでしょうか…?」

透き通った肌は血管が薄く見えて、瞳には淡い青色に微かなエメラルドの反射が混じっている。
中1ぐらいだろうか。少年は明らかに怯え始めた。

722斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/05/25(月) 23:27:16
>>721

第一印象?『上手くできた蝶の標本』のようだというのが一つ ピンを胴体にすっとね
昔読んだロシア文学の一つに彼のような眼をした女が出てきた気がしなくもない。

 (……むしろガラス細工みたいだな?スタンド使い何てそんなものか。)

 対して僕と言えば一昔前のヒーローショー。
 何方がグッドかというのは実に議論の余地がある。

 まあそれはそれとして、怯えさせておくのは別に本望では無いのだが
 他人に配慮し続けるとそもそも友人とかは出来ない物だ、社会人がそれを証明している。

 「ん――君の方は別に……えー……その十字架張り付けた君の『スタンド』って言うヤツ」
 「僕が興味あるのはそっちだな、丸出しにして出歩く奴はそんなにいない。理由知ってるか?」

 今の彼みたいに怯える羽目になるから。というのが一つ
 スタンドだしっぱというのは例えるなら、抜き身のポン刀ぶらさげて商店街をあるくようなものだ
 大抵の人は芸の小道具かな?と思う、残りの少数が警察に通報する 捕まる チャンチャン。

 「何を思ってそんな事してるのか、実に聞きたい所だ、端的に言えば知的好奇心。」

ア ナ タ ノ ナ マ エ ハ ?
 「僕は斑鳩 斑鳩 翔 名乗ったぜ誰かさん。 What's your name?」

723一抹 貞世『インダルジェンス』:2020/05/26(火) 00:10:16
>>722
「わ、私の名前は一抹 貞世。中学一年生です!」

「あっ、また仕舞い忘れてる…」

本人も出しっぱなしにしていたのを忘れていたらしい。
近距離パワー型なら数分で疲れてしまうはずだが少年に疲れている様子はない。

「もしや、お兄さんは正義のスタンド使い…」

「け、消さないでください! 助けて、宗像さん…小林さん…鉄先輩…アリスさん…宗像さん!!」

続々と頼りになりそうな人達の顔を思い出す。
真っ先に宗像さんを思い出し、最後も宗像さんの名前を呼ぶ。

724斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/05/26(火) 00:37:15
>>723

彼の礼儀正しい名乗りにゆっくりと拍手する パチパチパチ
ただ理由の方は眉をひそめるほど想像つかない物だった

 「よくできました――しまい忘れェ?」

そんな馬鹿な。
しかし正義のスタンド使いかと言われると何方かと言えば邪悪よりなのでスルーする事にした
集団気絶事件とかこわいねー、ぼくにはとてもできない。スタンド的にも。まるでこころあたりがない。

 「ワハハ そうとも怖いパイセンだぞー 君、結構知り合い多いな?」
 「色々知ってる名前がちらほらと……宗像?」

その名前から思い出されるのは、かの作業着の眼光だけで2.3人殺してそうな男

 「――君、彼と知り合いなのか (じゃあ強硬手段無しだな、面倒だし。)」

『皇帝』以外の近距離型に負ける気はさらさらない が、勝つのは少々面倒くさい
また右腕に犠牲になって頂くわけにもいかないのだが。親から貰った身体なのだ。

 「まあ僕が気になったのは『精神の鎮静』って君が言った所だけさ、アリーナとか興味無かろうしネ」
 「それがどの程度まで行けるか教えて頂きたいが……対価に払えるのがないんだよな、僕。」

130万がふと頭によぎったが、この年頃に与えて親に露見すると芋づる式に僕に猜疑がかかる
それだけは御免被りたい、祖父母に妙な心配をかけるのだけは御免だ。

 「あ〜〜……『なんか聞きたい事』とかある?それを僕が出来る限り教えるか……」
 「『等価交換』の対価ってそれくらいしか思いつかないな…後は見逃すとかくらいか。」

寝ぼけた頭部を気だるげに振りながらぐだぐだと舌を回す
……今自分が喋っているのはどう言う意味だったか?

725一抹 貞世『インダルジェンス』:2020/05/26(火) 01:19:42
>>724
宗像さんの名前が出た途端に勢いが止まった。
おそらくは『アヴィーチー』の脅威を知っている。
それに仕掛けて来ないということは純近接パワー型のスタンド使いではない。

「あわわ、宗像さんの知り合いなんですね
 寡黙な人だけど悪い人じゃないんですよ」

「色々と凄まじいだけで…」

私自身に『インダルジェンス』の『鎮静』を使う。
即座に冷静さを取り戻す様が能力の証拠だ。

「いえ、死ぬ目に二回遭う間に色々と知ったので情報は要りません」

「例えば、町に変な組織が存在したり人々の夢の中に魂を弄る男が潜伏してるとか色々…?」

目の前の彼も色々な修羅場に身を投じたのだろう。
出来れば戦いには発展したくない。

「精神というより『悪感情』の『鎮静化』です。
 薬品と違って後遺症無し、依存性も無いようです」

「目の前に『危険』が無い限りは確実に状態を『好転』させます。
『インダルジェンス』が手を離すと解除されますけど、触れてる間に何とかすれば大丈夫です」

726斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/05/26(火) 20:20:56
>>725

 「知ってるか?『それが無ければいい人』は『それが有るから駄目な人』なんだぞ。」

少なくとも時と場合によって『再起不能』でなく『殺害』に舵を切りそうなのは、知る限りでは彼だけだ。
――なんでそんなことわかるかって?ひみつ。

 「――ああ、『喧嘩』を期待してるのか?それならNOだ」
 「僕が欲しいのは『協力』だからな」

           スタンドツカイ
 「今聞いただけで『お仲間』が3人以上はいただろう?」
 「ここでオタクに危害を加えたとしよう、そしたら残りの知り合いからは僕が危険視されるわけだ。」

 「『そんな危険なヤツ生かしちゃおけない!縄で縛って吊るさなきゃ!』ドーン!終わり。そんなの僕に何一つメリットが無い。」

 「ある意味では抑止力みたいなものだな、国家同士が『核爆弾』持ってにらみ合うみたいに――」
 「僕達は『スタンド』を持って睨みあいをするわけだ……それが解らないのは脳みその代わりにおがくずが詰まった案山子か」

肩を竦める

 「――それ以上にメリットが上回ると判断した奴くらいだな いねーと思うけど。」

 「しかし……そっかあ …… そ っ か あ 」

ガクーンと首を垂れる、別に彼に落ち度があるわけでは無い
勝手に期待して勝手に失望しただけだ、つまり、人類の悪癖だ。

『手を離すと解除される』……それだと意味が無いのだ。

727斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/05/27(水) 21:35:03
>>726

 *おおっと*

展望台のベンチに誰でも座れるようになった。

728小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2020/06/17(水) 20:24:56

ベンチの近くに『喪服』の女がいた。
身を屈め、床の上に散らばった品物を拾い集めている。
うっかりしてバッグの中身を落としてしまったのだ。
ハンカチ、携帯電話、小さな香り袋、果物ナイフ、包帯。
それらを一つずつ手に取っていく。

729成田 静也『モノディ』:2020/06/17(水) 22:11:09
>>728

・・・女性がベンチの前で屈んで物を拾っている。

見たところ服装から葬式の帰りだろうか?

どうやらカバンの中身を何かの拍子にぶちまけてしまったようだ。

・・・ここ数日のオレならば見て見ぬふりもあり得たことだが、葬式…か。
親しい人物の喪失、オレもここ最近ずっとそれを引きずっている。

そう思ったら喪服の女性に声をかけていた。

「すみません、大丈夫ですか?良ければ拾うのを手伝いますよ?」

・・・声をかけてしまったのならば助けなければ無責任というものだ。

落ちている小物を見る。

ハンカチ、携帯、香り袋とここまでは普通だった、しかし…むき身の果物ナイフ、それと包帯とあまりいい想像が
できないものまで落ちており、背筋に冷たいものが走った。

・・・念のために果物ナイフだけでも『モノディ』で素早く回収しておく。

「すみません、危なそうだったので思わず拾ってしまいました。」

「オレが口出しするのもなんですが誰に使うにしろ、こういうのはあまり良くないですよ?」

何かがあってこうなったのならば、話を聞くことで何か変わるかもしれない。

730小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2020/06/17(水) 22:54:28
>>729

つばの広いキャペリンハットを被った頭が、僅かに揺れる。
それから、ゆっくりと声の方へ顔を向けた。
女の視線が、眼鏡を掛けた少年に向けられる。

  「ええ、大丈夫です……」

『果物ナイフ』は木製の鞘に収まっており、
『抜き身』ではなかった。
もし誰かが触れたとしても危険はない。
足元に落ちていた『それ』を、『モノディ』で拾い上げる。
無意識の内に、その動作を目で追っていた。
『速い』が『見える』。

  「それは……」

  「――『果物を剥くためのもの』です」

        スッ

  「……拾って頂いて、ありがとうございます」

片手を伸ばし、『果物ナイフ』を受け取ろうとする。
『モノディ』の『聴覚』は、
その声色の中に若干の『動揺』を感じ取った。
『理由』までは分からない。

731成田 静也『モノディ』:2020/06/18(木) 20:19:54
>>730

・・・この女の人、『モノディ』の動きを『目で追っていた』。
それに声の中に『聴こえた』震え、それと荷物に紛れていた『包帯』・・・これはただ事ではなさそうだ。
さて、どうするべきか…手で持ったナイフを見て考える。

「すみません貴女の言動から見て、これを返すは少し話をしてからでいいですか?」

再び『モノディ』を出し残りの小物をバッグへ素早く詰める。

「たかがイチ学生のオレが言うのもアレですが…」
「ここで話しにくいのなら他の落ち着ける場所に移動してもいいので話すだけでも少しは楽になるかもしれませんし。」

一番にあり得るのは…『自殺』…だろうか。喪服…さっきも思ったが誰かを亡くしたのだろう。
それを引きずって後追いの為に・・・と言った所だろうか。

兎にも角にもここで見逃して後で新聞に載りました。なんてことになっては目覚めが悪い。
本当に自殺する気ならば思いとどまらせなければ。

732小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2020/06/18(木) 21:37:19
>>731

持ち物の中には『包帯』があった。
『包帯』というのは手当てのために使うものだ。
本当に『自殺』するつもりなら必要ない。

  「――『大丈夫』です」

『モノディ』には分かる。
女の声には、もう動揺は聴こえなかった。
短い言葉の中に『強い意志』が秘められている。
それは、単に表面的なものではない。
『裏打ちされた何か』を感じさせる。

  「すみません……」

  「『それ』を……返して頂けませんか?」

  「お願いします……」

懇願するように言葉を続け、深く頭を下げる。
『果物ナイフ』は『大事なもの』らしい。
それゆえの執着は見えるものの、態度は落ち着いていた。

733成田 静也『モノディ』:2020/06/18(木) 23:11:19
>>732

「・・・」

女性にナイフを返還する。

彼女の顔、そして声に自分を害するという様子が見られなかったからだ。

「・・・すみません、これは返します。」

「そしてどうやらオレの早とちりだった(?)みたいですね。」

しかし、お節介を終わらせる気はない。

「そのナイフ…大事な物なんですね・・・何か思い出でも?」

少しだけ興味が湧いた。

相手の感情の境界・・・怒りや嫌悪を抱かないように注意しながら少しずつ探っていく。

734小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2020/06/19(金) 00:07:26
>>733

  「――ありがとうございます」

『自傷用のナイフ』を受け取り、丁寧にバッグに戻す。
『第二の刃』を得ている今、これは必ずしも必要ではなくなった。
それでも、『使い慣れたもの』というのは手放しにくい。

  「……ええ、大事なものです」

  「『これ』は……」

  「これは――『薬』です……」

少年に向き直り、穏やかな微笑を浮かべる。
『薬』――『鎮静剤』。
『成長』を経た今も、それは自分にとって必要なものだった。

  「あなたも――お持ちのようですね……」

           スッ……

人型スタンド――『モノディ』に視線を移す。
自分のそれとは大きく異なるヴィジョン。
そこに込められた『意味』も、また違うのだろう。

735成田 静也『モノディ』:2020/06/19(金) 00:21:10
>>734

「『薬』・・・ですか…ならば取り上げるような真似をしてしまいすみませんでした。」

アスリートなどがよくやる『スイッチ』というやつだろうか?
だとしてもナイフが薬(スイッチ)とは少し変わっているが・・・

やはりというか何というか…分かっていた事だが彼女もまたスタンド使いのようだ。

「そうですね…オレも『スタンド使い』という奴ですね。この街ではそこまで珍しくもないようですが…」

「オレは『成田 静也』って言います。そしてコイツはオレのスタンドの『モノディ』です。」

相手の女性は比較的無害そうなので名前とスタンド名を晒す。

ここで会ったのも何かの縁、それにこの人の音はオレの平和を妨げることはなさそうだ。

736小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2020/06/19(金) 21:31:51
>>735

  「ええ――『この街』では、よくお会いします……」

  「私と成田さんも……『その一人』ですね」

         ニコ……

柔らかな微笑が、少年に向けられる。
これまで、『スタンド使い』と出会う機会は少なくなかった。
この街には多くの『スタンド使い達』がいる。
その中には、人を傷付けるために力を使う人間もいた。
悲しい事だが、『事実』として存在する。
知らない場所で、今も誰かが傷付いているかもしれない。
それを考えると、微かに胸の奥に痛みを感じた。

  「……『小石川』と申します」

  「成田さん――よろしければ、少しお話をしませんか?」

          スッ……

ベンチに腰を下ろし、バッグを膝の上に置く。
背筋は伸びており、座り方は丁寧だった。
その視線は、遠くを行き交う人々を眺めている。

  「――『スーサイド・ライフ』」

  「そういう『名前』です……」

『名前』に対し、『名前』を返す。
人と人との繋がりにおいて、それが『礼儀』。
だからこそ――『第一のスタンドの名』を告げた。

737成田 静也『モノディ』:2020/06/19(金) 23:20:35
>>736

「小石川さんですね、改めてよろしくお願いいたします。」

この人はオレ以上に『スタンド使い』との戦いを経験しているのかもしれない。

「ベンチの隣、座らせてもらいますね。」

ベンチに腰を掛ける。

そうしてまず、オレの方から今までの体験を掻い摘んで話始める。
そうすることで小石川さんも話しやすい雰囲気を作っていく。

738小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2020/06/19(金) 23:45:54
>>737

  「『不思議な夢』――ですか……」

少年の口から語られる話に、静かに耳を傾ける。
その中に、気に掛かる部分があった。
『夢の中』で『奇妙な女性』に出会ったという話。

  「私も……その方とお会いしたような気がします」

  「成田さんと同じように、『夢の中』で……」

あれは確か『冬の出来事』だったように思う。
『不思議な夢』を見た翌日、『スタンド使いの争い』に直面した。
その時は、『薬師丸』という名前の少女も、
同じ場に居合わせていた。

  「私達は……『スタンド使い』ということ以外にも――」

  「『共通点』があるのかもしれませんね……」

最初の頃は、
『スタンド』で人を傷付けることに大きな動揺を覚えた。
だけど、今の自分は落ち着いてしまっている。
誰かを『斬る』時にも、以前のように心は乱れなくなった。
『斬る瞬間』も『斬った後』も平静なまま。
慣れてしまったのだろうか。

  「成田さん……失礼ですが、『何年生』ですか?」

739成田 静也『モノディ』:2020/06/20(土) 00:38:07
>>738

まさかオレや石動さんたち以外に『夢』を見たことのあるひとがいるとは…
やはりあれはただの夢ではなく、スタンドか何かによる現実だったのだろう。

「そうですね…『スタンド使いはお互い惹かれ合う』・・・そんな重力が働いたのかもしれませんね…」

>「成田さん……失礼ですが、『何年生』ですか?」

「ええっと…一応ですが『3年』・・・『中学3年生』です。何か問題でもありましたか…?」

小石川さんに申し訳なさそうに尋ねる。

この人は『スタンド使い』としても…『戦う人間』としても『先輩』に当たる人だ。
『敵』ならばともかく、無駄ないざこざは起こしたくはない。

740小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2020/06/20(土) 01:07:24
>>739

  「いいえ……何でもありませんよ」

微笑みを湛えたまま、言葉を続ける。
『共通点』――確かに、それはある。
『同じ夢』を見たという『共通点』。

  「成田さんに楽しい学生時代を送って欲しいと……」

  「ただ――そう思っただけです……」

  「突然おかしな事を言ってしまって、ごめんなさい……」

一方で、疑問に思うこともあった。
人を傷付けることに慣れてしまった自分は、
彼と『同じ』なのかどうか。
考えてみても、その答えは出てこなかった。
しばし目を閉じ、自分の心の奥を見つめる。
やがて、ゆっくりと両目を開け、少年に向き直った。

  「成田さん……お話して下さって、ありがとうございました」

  「私は、これで失礼させて頂きます……。
   いつか――また何処かでお会いしましょう」

  「――それでは……」

       スッ……

別れを告げて立ち上がり、静かに歩いていく。
『自分のようになって欲しくはない』――
その言葉は口に出さなかった。
喪服の後姿が、徐々に遠ざかる。

741成田 静也『モノディ』:2020/06/20(土) 01:44:42
>>740

彼女の…小石川さんの音には様々な思いが入り混じっていた。『思いやり』、『慈しみ』、そして『悲しみ』・・・

そんな小石川さんにオレは…

「小石川さん!…オレが言うのもおこがましいかもしれませんが…あまり思いつめ過ぎないでください。」

「貴女と話をした時間は少ないですが、貴方が思っている以上に貴女は良い人だとオレは思いますよ。」

思いを口にする。言葉は音にしなければ伝わらない。

これで小石川さんの憂いが晴れるなんて思わないが、少しは重荷が軽くなってくれることがあれば…
去っていく彼女の背にそう願うほかなかった。

742関 寿々芽『ペイデイ』:2020/06/29(月) 23:18:12

「ふぅ……」

        ガサッ

セールの時間帯だった。
買い物袋を3つも持った少女が『ベンチ』に座る。
おだんごにまとめた髪と、温和そうな顔立ち、
そして『エプロン』を付けているのが、特徴的だった。

「……」

             チラ

視線の先には『クレープ』や『タピオカジュース』など、
その場で食べられるような『甘味類』の店があった。

                          パラ

それを見ていた目を、手元に伏せる。
いつの間にか『そこに開いている』ノートの名前は――『ペイデイ』という。

743霜降 寒夜『ヘパティカ』:2020/06/30(火) 00:27:46
>>742

視線の先の甘味屋…その店先、3m。さっきから、少女が立っている。
中等部の制服の上から、白いウィンドブレーカーを着た少女だ。


「 ………………………………………」


立っているが…何も注文しに行かない。じっと店を観察している。



    スッ…

ふと、振り向いた。君の店への視線に気づいたのかもしれない、近寄ってくる。



 スタスタ…

   「 ……………『あなたも』?」

744関 寿々芽『ペイデイ』:2020/06/30(火) 00:47:36
>>743

            パタンッ

声に『ノート』を閉じ、近付いてくる少女を見る。

「あっ……ふふ、気付かれちゃいましたか〜。
 私ったら、想像以上に欲しがってたみたいですねえ」

当人としては、そこまで『見ていた』つもりはなかった。
実際にはノートに視線を落とすまで『ガン見』だったが。

「『タピオカミルク』……
 流行りが終わったって人もいますけど。
 すっかり『定着』した感じだと、思うんですよう」

      「ただ」

           じ ・・・

『Mサイズ』500円。

「ちょっと……ジュースにしては、『お高い』んですよねえ」

745霜降 寒夜『ヘパティカ』:2020/06/30(火) 01:17:48
>>744

「 …ここのお店、ちょっとイマイチで」
「 …『専門店』じゃないからしょうがないけど、タピオカが茹でたてじゃないの」
「 … 何時間かごとに茹でたのを、作り置きしてて…」


       ジーーーーーーーーーーーーーーッ

  「……ちょうど『今頃』。いつものタイミングならそろそろ、『茹でたて』が来る。」


白いウィンドブレーカーの少女は店を睨んでいる。並々ならぬ執念。




>「ちょっと……ジュースにしては、『お高い』んですよねえ」


「 ………『タピオカ』って『ラーメン一杯』ぐらいのカロリーがあるんだって…」

「 …水分補給でジュース代わりに『タピオカ』は、高いし くどいし ノド乾くし だけど…」

「 ……『カロリー補給』になら向いてる すぐ飲めるし もうどこでも買えるし わたし『ラーメン』嫌いだし」


   ズイッ

…立ったままの少女は、屈みこみ、君の手元の方に目線を向けた。

「 ……なんか、『家計』やってるの?
   袋、ずいぶんいっぱい有るし ノート睨んでるし」

746関 寿々芽『ペイデイ』:2020/06/30(火) 01:46:13
>>745

「まあ〜っ、そうなんですか!
 よく調べて……というか、よく待てるんですねえ。
 私ならきっと、知っててもすぐ買っちゃいますよう」

「その方が『コスパ』が良いかなあ、って……」

劇的に変わるなら別だが……
コンビニのソレが『規準』になっていると、
店で作ってさえいれば『余程でないと』分からない。
少なくとも関は、待つ気にはなれないだろう。

「そうですね……カロリーも、お高くって。
 ……って、ご飯代わりにしてるんですか!? 
 だめですよう、栄養が偏っちゃいますよ。
 まあラーメンも、別に身体に良くはないでしょうけど」

買い物袋の中からは、
ちょうどその『ラーメン』も覗く。
袋麺……安くて、幾つも入っているものだ。

「ええ、家計簿をちょっと……
 ここ最近あまりバイト代も稼げてなくて、
 あんまり大盤振る舞いは出来ないんですよねえ。
 特に困窮してる、ってわけではないんですけど」

ノート……『市販品』では、なさそうだが、帳簿のようだ。
手を表紙に添えて閉じており、中は窺えないが…………

「それで……ほら。Sサイズなら50円安いでしょう?
 今日はそっちにしておこうかな……と、迷ってまして」

それでも飲むのは飲むあたり、困窮はしていないのは事実なのだろう。

747霜降 寒夜『ヘパティカ』:2020/06/30(火) 02:19:13
>>746

>「……って、ご飯代わりにしてるんですか!?」

「 …ウッ」
ちょっと苦い顔をした。

「 …お昼ごはんって食べちゃうと…こう…ボヤーってするし…」
「 …放課後に『運動』するとお腹痛くなっちゃうし…」
「 …朝と夕はお米五杯おかわりするし…」

言い訳をしている。量は十分だが、バランスの面には不安が残るようだ…


「 …オトナびている…
  …わたしも中学のうちから、そういうの書いた方がいいのかなぁ…」


>「今日はそっちにしておこうかな……と、迷ってまして」

「 …大きいのにした方がよくない…?」
「 …食べ物に使うお金は、『贅沢』じゃないし」

「 …オトナは飲み過ぎたら太っちゃうけど…
  …今の私たちは『成長期』なんだし むしろ、たくさん食べないほうが……『損』、じゃない?」
「 …あと、そうだ せっかくの『茹でたて』、沢山食べないのも『損』じゃない?」

進言。『利害』に絡んだ用語を使うあたり、霜降なりに『家計』の手伝いをしようとしているのかもしれない。

748関 寿々芽『ペイデイ』:2020/06/30(火) 02:48:01
>>447

「えっ、5杯も!!」

「……ほ、他の食事でちゃんと栄養取れてるなら、
 問題はないんでしょうけど…………ああ、それに、
 背もお高いですしねえ、勝手な心配してすみませえん」

関はいま座っているためわかりにくいが、
年下であろう『霜降』と背丈はほぼ変わらない。
肉のつき方も、どちらも健康的な範疇だろう。

「ふふふ、子供ですよう……私なんてまだまだ。
 ……だから、あんまり誘惑されると、揺れるんですけど」

霜降の進言に耳を傾ける。
たしかに……そうかもしれない。

「あなたは……どれをいつも飲んでるんですか?
 せっかく『ぜいたく』するなら、
 一番美味しいのを飲むのがコスパが良いと思うんです」

とはいえ、タピオカドリンクは嗜好品で、
嗜好品は『ぜいたく』だとは思っているが……

「やっぱり、あの、アイスが乗ってるやつが美味しいんですかねえ?」

749霜降 寒夜『ヘパティカ』:2020/06/30(火) 03:29:58
>>748

「 …アイスが乗ってるやつなら…マンゴー味とか、いいよ…」
「 …掛かってるマンゴーソースが、マンゴーって感じで…」


「 …私は今日は…『焦がし黒糖』…
  …ミルクティーに黒糖入れて黒糖で煮たタピオカ入れてミルクの泡を乗せたのの上に黒糖かけて炙ったやつ…」


「 …モールが涼しくて体冷えちゃった…
     …ホットにしようかな…
               …………」
                    …グイッ ニュッ

 
おもむろに霜降は体を伸ばし、甘味屋のほうに顔を向けた。


  フ ワ…

「 …匂いがする…鍋から揚がったタピオカの匂い 」


「…そろそろ頃合いかぁ」
「…どうする?ツルツルもちもちの『ぜいたく』を味わえるのは『今だけ』だけど」
「…買い物袋で動きにくいなら、私がタピオカ買ってベンチまで持ってくるよ」

霜降は、上着のポッケから財布を引っ張り出し、目を爛爛とさせて店を睨んでいる。
今にも駆けだしそうな感じだ。

750関 寿々芽『ペイデイ』:2020/06/30(火) 05:05:42
>>749

「あぁ、いいですねえ。マンゴー。
 『タピオカドリンク』って甘あ〜いですし、
 フルーツソースがかかっていると、
 さわやかになって最後まで楽しめそうで」

           ゴソ

「『におい』……? 私ったら向こうのお店の、
 『ソースの匂い』しか分からないです」

『粉もの』を売る店が、視界の端にある。

「鼻がいいんですねえ〜・ええと、じゃあ」

                ゴソ
     チャリ

「お金はお渡しするので……ご厚意に甘えます。
 買い物袋から、出来たら目を離したくないので……」

食料品が主な買い物だったが、
総額を考えれば安くはない。
走り回っている子供等も多い中、
あまり目を離したくはないのは確かだ。

「これを……お役立てください〜」
                        スッ

『タピオカマンゴーミルク』『アイストッピング』『Mサイズ』――『650円』。
モスグリーンの財布から、500円玉に加え、『100円玉二枚』を、包むように握らせる。

751霜降 寒夜『ヘパティカ』:2020/06/30(火) 22:21:31
>>750
「…炭水化物が出来上がるにおいって、独特じゃない?」
「…ほら、ご飯が炊けるにおいか…それと似たようなにおい…」

  ストトト…

霜降は君から受け取った硬貨を握り、店へ早歩き。
店員に注文を告げ、お釣りの一部を財布に放り込み、
すぐに出てきた二つの容器のうち、片方を持って、またベンチに寄ってくる…


「はいこれ と、『お釣り』」

左手のオレンジ色の『マンゴーミルク』、右手の『50円玉』を同時に差し出してくる。





関が両方を受け取り次第、また店先まで歩いていき、
自分の『黒糖ミルク』を改めて受け取り、また帰ってくる…

  ズ…
    「 …うん、甘い…すごい甘い…上のホイップもカワイイ…」


「 …でも熱いな…思ったより熱いやこれ…
  …上のホイップが『断熱』してるから…」


「 …どうしよっか…ちょっと冷めるのを『待つ』なら……」

…そう呟き、何故か鞄から『ポケットティッシュ』を取り出す霜降、その隣。
『ネコ科動物』の『氷像』のような…そんな『ヴィジョン』が、いつの間にか…

      『korrrrrrrrrrrrrrrrrr…』

752関 寿々芽『ペイデイ』:2020/06/30(火) 22:45:48
>>751

「そう言われてみたら〜……『良い匂い』なような?」

それは『甘いドリンクの匂い』だ。
ともかく、ドリンクを受け取って傍に置き、

「まあ! これはこれはご丁寧に……
 はあい、ありがとうございます」

        スッ

「たしかに……『50円』受け取りましたよ」

それから両手で包むように、お釣りを受け取る。
『貰っておいてくださいよう』とは言わない。
貰うつもりなら渡すつもりだった……それだけ。

「あぁ〜、本当……甘いですねえ。
 タピオカドリンクの甘さって、こう、
 舌と喉だけじゃなくて『脳』に響きますよね。
 糖分の処理に脳の容量を割かれる甘さっていうか、
 甘さのことしか、考えられなくなりますよう」

「ふふ……それが良いんですけどねえ」

実際はカロリーの事とかも考えているが……
だが、それ以上に強く、『考えを引かれる』物が見えた。

「……………………!」

      シャッ―

帳簿を片手で開く。
名を、『ペイデイ』と言う。

「……あのう。見えますよ? 私」

端的にそう告げる。そうするのが『無駄がない』からだ。

753霜降 寒夜『ヘパティカ』:2020/06/30(火) 23:27:25
>>752

容器を分解し、タピオカドリンク特有の太いストローの先に
ポケットティッシュの口を引っ掛け…緩慢に動く『ヴィジョン』の鼻先に差し出す。

  『korr…』

      パキッ 
        コッチーーz___ン


そしてポケットティッシュは唐突に…『凍り付いた』。


>「……あのう。見えますよ? 私」
「 …ムムム」
  「 ……『初めまして』?」


凍ったポケットティッシュを無造作に『黒糖ミルク』に放り込み、呑気に啜る。

「 ……割と『いる』のかな…『見える』人…」
「 …あなたがその…『敵』なら、今これって、危ない状況なのかなぁ…」


「 ………ウン、良い感じにヌルイや」
「 …甘さって冷たければ冷たいほど甘くなるって言うし…」
「 …甘さでなんも考えらんない…どうしよ……」


観念しつつ、タピオカの甘さに現実逃避。

「 …せめてタピオカ無くなるまでは、襲い掛からないでくれると嬉しいなぁ……」


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