したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が900を超えています。1000を超えると投稿できなくなるよ。

【場】『 歓楽街 ―星見横丁― 』

1『星見町案内板』:2016/01/25(月) 00:01:26
星見駅南口に降り立てば、星々よりも眩しいネオンの群れ。
パチンコ店やゲームセンター、紳士の社交場も少なくないが、
裏小路には上品なラウンジや、静かな小料理屋も散見出来る。

---------------------------------------------------------------------------
                 ミ三ミz、
        ┌──┐         ミ三ミz、                   【鵺鳴川】
        │    │          ┌─┐ ミ三ミz、                 ││
        │    │    ┌──┘┌┘    ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
        └┐┌┘┌─┘    ┌┘                《          ││
  ┌───┘└┐│      ┌┘                   》     ☆  ││
  └──┐    └┘  ┌─┘┌┐    十         《           ││
        │        ┌┘┌─┘│                 》       ┌┘│
      ┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘     【H城】  .///《////    │┌┘
      └─┐      │┌┘│         △       【商店街】      |│
━━━━┓└┐    └┘┌┘               ////《///.┏━━┿┿━━┓
        ┗┓└┐┌──┘    ┏━━━━━━━【星見駅】┛    ││    ┗
          ┗━┿┿━━━━━┛           .: : : :.》.: : :.   ┌┘│
             [_  _]                   【歓楽街】    │┌┘
───────┘└─────┐            .: : : :.》.: :.:   ││
                      └───┐◇      .《.      ││
                【遠州灘】            └───┐  .》       ││      ┌
                                └────┐││┌──┘
                                          └┘└┘
★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
---------------------------------------------------------------------------

602芦田『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト』:2019/04/17(水) 21:23:49
>>601

「ウィゴーちゃん ウィゴーちゃん ウィゴぉ〜〜〜〜ちゃぁ〜〜〜ん
こっちの兎のぬいぐるみか、そっちの熊ちゃんならどっちが良いよ?」

『いや 別にぬいぐるみなんぞ欲しくありませんが』

「おいおいおい おいおいおい おいおいおいおいおいおいおいおぉぉいって
ウィゴーちゃん 可愛い女の子は一つぐらいフワフワなもんを所持しとくのが
乙女の嗜みってもんだぜぇ?」

『誰が乙女だ UFОキャッチャーの中に閉じ込められろや』

「そうツンツンすんのも良いけどよぉ〜 たまにゃー俺もウィゴーちゃんの
デレがそろそろ見たい時期だぜ。なんかとびっきりな血腥いインパクトが
欲しいよぉなぁ〜  ・・・あぁまた落ちた」

UFОキャッチャーでスタンドと共にぬいぐるみを獲得しようとしてる
危ない雰囲気の男がいる。貴方には気づいてない

603竜胆『ブラックシープ・シンドローム』:2019/04/18(木) 00:33:01
>>602

(うわ)

「うわぁ……」

あれは近づかない方がいいタイプだろう。
遠巻きに見つつ刺激しないようにしよう。

604芦田『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト』:2019/04/18(木) 20:07:16
>>603

『それと、ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト
私の名前は何回でも言うがウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト!
いい加減に脳味噌に叩き込まないと晩御飯は全部流動食にするからな!』

「ウィゴーちゃんが口移してくれんなら、俺はウンコでも喜んで……」

『シャラップ! 誰が誰の下痢を口移ししろって言うんだ?
私にも堪忍袋の緒があるからなっ。それを口にした瞬間に
げの語を喋る前に道連れ覚悟のボディブローお見舞いするからっ』

「……ちっ やっぱクレーンが甘いわ。しょーがねぇから
あっちの菓子取りメダルゲームにする?」

『話聞けよ! はぁーーーーーー・・・っ
えぇ 行きましょう。とりあえず今の話題からチョコレート以外で』

「何でチョコ駄目なのよウィゴーちゃぁん。おりゃあ三度の飯より
ウィゴーちゃんの手作りチョコ食べる為なら喜んで這いつくばって
ウィゴーちゃんの足先から股の上の臍まで舐め上げるってのぉに」

『それ、何の罰にもなってねぇよ! 私の尊厳もろとも全てが
ミキサーで粉々になる奴だわ、それ!
今の品性って表現皆無なワールド空間で茶色い連想ゲーさせるのとか
本当乙女的に無理だからね!』

「………ぅ ぐす。ウィゴーちゃん、やっと自分が雌だってことを
認知してくれて」

『アァ クソ コロシテェ』

「モンキーパンチの事は、本当 心底残念だぜ ファンだったってのぉによ」

『脈絡ゼロかパンチドランカーマスター けどソレは同感です』

喧嘩してるのか何なのか、よく解らない会話をしつつ貴方のいる方向に
奇しくも次にやるゲームの目的が近いようだ。
 このまま無駄に疲れる羽目が嫌なら……無視も最良だろう。

605竜胆『ブラックシープ・シンドローム』:2019/04/18(木) 20:40:21
>>604

(あれスタンドとやってんのかな……)

(クスリとかやってる系?)

横目に眺めつつ格闘ゲームのコーナーに向かう。
触らない方がいい。

(スタンドが何かは知らないけど、自分の半身だとしたらくっそでかい独り言だねぇ)

606芦田『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト』:2019/04/18(木) 21:07:19
>>605

「今日もウィゴーちゃんと気ままにデートな刺激もなんもねぇ
一日だったねぇ」

『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライトですって。
なんかどっかから視線もありましたけど、まぁ奇行が日常ですからね』

「別に話しかけられたら、普通に返事すんだけどな」

 そのままチロルなり何なり、適当なウィゴーちゃんの好きなもん
幾つか取って俺とウィゴーちゃんの愛の巣へ帰ったわ

607日沼 流月『サグ・パッション』:2019/06/13(木) 21:35:25

              ザッザッ

「……」

         〜〜〜♪

「もしもし、流月ですけどセンパイまだです?
 ……え? なんですかそれェ! なんですか!
 今日来れないって〜〜〜、え〜良いですけどォ」

   「はい、はい、『逆に』ね〜ッ」

          「にへ、分かりました、じゃあまた」

  ピ!

          ツー ツー ツー

「暑〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ」

           「しかも雨だし……」

耳に当てていたスマホを下げ、電柱にもたれかかった。
ここは屋根がある通り――――だが、外では、雨が降っている。

                   ・・・帰るに帰れない。

608ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/06/15(土) 22:38:46
>>607

パシャパシャ

小さな少女が走ってきた。
まだ小学校に上がったくらいのように見える。

「ふー」

屋根の下に入り、取り出したハンカチで水滴を払う。
それから、隣に立つ相手に顔を向けた。

「こんにちはー」

挨拶する少女の手には『リード』があり、彼女の足元には一匹のイヌがいる。
『チワワ』だ。世界最小の犬種として知られている。

チラッ

『チワワ』が、少女――『日沼』を見上げた。
その様子からは、これといった喜びや不安は感じられない。

609日沼 流月『サグ・パッション』:2019/06/16(日) 23:01:35
>>608

「あん?」

          クルッ

走ってきた少女に振り向く。
日沼には知らない顔だったが……
特に邪険にする気分でもないので、少し身をかがめる。

「こんちは。急に降ってきたねェ〜〜〜ッ。
 朝、天気予報で雨とか言ってなかったのにさあ」

   「『逆に』雨ってった時は晴れだったりするしさ、
    予報だけは『ストレート』に当ててほしいワケよッ」

            チラッ

挨拶がてら天気への鬱憤を表明していたが、
犬の視線に、それを取りやめて……目を合わせる。

(チワワだ)

「てゆーか犬の散歩? えらいね。この子なんで言うの?」

(なんかチワワにしては珍しい感じ。達観してるってゆーか)

               (犬に達観も何もない気はするけど)

610ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/06/16(日) 23:50:00
>>609

ブルルッ

チワワは体を震わせて、毛に付いた水滴を落とした。

「今は『ツユ』ですからねー。
『ツユ』だと、よく雨が降るって、テレビで言ってました!」

《…………》

ヨシエは近くに人がいると、こうして話しかけようとする。
孤独を埋めるために、誰かと関わりを持ちたいのかもしれない。
そして、いつものように俺は相手を観察した。
見た所、若い娘だ。
少しばかり『はねっかえり』の匂いはするが、危険は感じない。

「この子は『ディーン』っていうんです。男の子ですよー」

そう言って、ヨシエは俺を抱き上げた。
人間と比べて遥かに小柄な俺の体は、小さな子供でも持ち上げられる。
それによって、俺と『先客』の距離は近付いた。

「いつも一緒にいてくれる大事なお友達ですよー」

チワワは愛想を振りまくでもなく、吼えるでもなく、黙って日沼を見つめた。

「お姉さんは、お買い物の途中ですかー?」

611日沼 流月『サグ・パッション』:2019/06/17(月) 00:48:52
>>610

「詳しいじゃん! 頭いいんだね〜、えーと。
 あっやば、犬の名前だけ聞いて、 
 『逆に』きみの名前聞くの忘れてたわ!」

           ルナ
「先行っとくけど、流月は『日沼 流月(ひぬま るな)』ね」

自己紹介をしつつ、抱えあげられた犬を見る。

「んで、『ディーン』?」

「良い名前じゃん! 『ポチ』って顔じゃないもんね〜ッ。
 可愛いじゃん、チワワってもっとはしゃぐイメージだけど」

       「おりこうさんでさァ〜」

『ディーン』の腹を触ろうと、ゆっくり手を伸ばす日沼。
差し出された犬相手にエンリョをするような殊勝さはない。

「ん? いや〜、待ち合わせしてたんだけど。なくなっちゃったワケよ」

             「だからなんの途中でもないかなァ〜」

612ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/06/17(月) 01:14:04
>>611

「はーい、えっと――」

「『嬉野好恵(うれしのよしえ)』っていいまーす」

「一年生ですよー」

名前を名乗られ、ヨシエは嬉しそうに名乗り返す。
それは『良い事』だと思った。
何となく俺も嬉しい気がしたのは、多分そのせいだろう。
尻尾が軽く揺れているのが自分でも分かった。

《――これぐらいなら良いか……》

ちょっとした礼の代わりだ。
そう考えて、そのまま触られた。
手触りは柔らかく温かい。

「じゃあ、今は『太陽さん』と待ち合わせですねー」

俺を抱いたヨシエは、雲に覆われた空を見上げる。
俺も同じように空を見つめた。

「『太陽さん』まだ来ないのかなー。『雲さん』とお話してるのかなー」

613日沼 流月『サグ・パッション』:2019/06/17(月) 02:12:32
>>612

「『ヨシエ』ちゃんね。よろしく!
 流月のことも『流月』ちゃんでいいよ。
 子供に敬語使わせるとか、流月はしないからさァ」

「てゆーか一年生!? しっかりしてるゥ〜」

      「流月といい勝負かな……」

小学生相手に張り合うのは、半分は冗談だ。
そうしてディーンの毛並みを撫でていたが・・・

「ん!?」

「……??」

「あ、そーね、ヨシエちゃんカッコいい事言うじゃん」

       (今の誰の声!??)

「むしろ『お月様』とダベってて戻って来るの忘れてんのかもね」

   (ヤバ、焦っておかしなこと言っちゃった)

詩的――――というより、子供らしい純粋さなのだろう。
それはいい、すごくいいんだが、今何か声がしなかったか?

少なくとも、それっぽい人間はいないのだが・・・?

(携帯きり忘れてたかな、でもセンパイあんな声じゃないしィ〜〜〜)

           (いや、普通に切ってたわ・・・今の声何!?!?)

614ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/06/17(月) 02:50:42
>>613

「じゃあ、『ルナのお姉さん』って呼ぶねー」

どこまでも無邪気に、ヨシエは言葉を返す。
そして、俺は二人のやり取りを見ていた。
何の問題もなかった。
少なくとも、そこまでは。

「あっ、そうかも!
ヨシエとディーンみたいに、太陽さんとお月様も仲良しなんだー」

独り言のつもりだった。
だが、どうやら『聞かれた』らしい。
という事は、『聞く事が出来る人間』だった訳か。

「?」

「どーしたんですかー?『ルナのお姉さん』?」

《…………》

チワワの特徴の一つは大きな目だ。
その両目が、やや細められる。
細めた両目が、日沼を見やる。

「もしかして、ルナのお姉さんのお友達がいたんですかー?」

キョロキョロ

あるいは、首輪に繋がっている『リード』が一瞬光っていたように見えたかもしれない。
それは、見間違いかと思う程にほんの僅かな時間だった。

615日沼 流月『サグ・パッション』:2019/06/17(月) 02:55:50
>>614

「んん、好きに呼んでいいよ。…………?」

(このチワワ!)

(何か目ェ細めてるし)

616日沼 流月『サグ・パッション』:2019/06/17(月) 03:01:28
>>614

「んん、好きに呼んでいいよ。
 お姉さんってのはいい響きだしね!

            …………?」

(……このチワワ!)

(何か目細めてるし! ウケる!
 けど、いや……『何か違和感があった』、ような)

         (んん……この、ヒモ?
           今変な光り方しなかった?)

   ズズ
         ズギャン

――――日沼の背後に立つ、『長ラン』を纏う『ヴィジョン』。

「ん〜いや、気のせいかなァ。
 流月の友達が来てたらよかったんだけどね。
 流月以外ヨシエちゃん以外、見当たらないワケで。
 や、もうヨシエちゃんは友達みたいなもんだけどさ」

        「あっ」

「あとは、『ディーン』もね! 忘れちゃいけないとこだよね〜〜〜ッ」

その手が、『リード』へとゆっくりと伸びる。『光るような素材だったか』?

617ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/06/17(月) 03:26:43
>>616

「そうだねー。『ヨシエ』と『ルナお姉さん』と『ディーン』だよー」

「三人でお話してるところ!」

『リード』は革製で、首輪も同じだった。
光る事は普通ないだろう。
光を反射するような加工がされていたとしても、『太陽』は隠れている。

《!》

「あっ――」

バッ

『それ』が見えた瞬間、俺はヨシエの腕から飛び降りた。
現れた『スタンド』の手が、俺とヨシエを繋ぐ『リード』に届く前に。
ほとんど反射的な行動だったと言っていい。
『それ』が危険かどうか判断するのは、その後だ。

「さっきからずっと抱っこしてたの忘れちゃってた。
ごめんね、ディーン」

ヨシエは、日沼の『ヴィジョン』に気付いた様子はない。
不意に地面に降りたディーンに気を取られている。
そして、ディーンの視線は『ヴィジョン』に向けられていた。
ヨシエの足元で、『ヴィジョン』をジッと見据えている。

618日沼 流月『サグ・パッション』:2019/06/17(月) 03:53:09
>>617

「ヨシエちゃんディーンとお話しできんの!?
 流月、あんまり犬の言葉ってわかんないんだよね。
 動物が苦手とかじゃ、ないんだけどさァ〜〜〜ッ。
 昔『バウリンガル』……って、犬語わかる機械使ったら、
 鳴き声の意味が流月の想像してたのと全然違ってばっかだったワケよ」

「だからさ〜。よかったら『ディーン』が何言ってるか通訳してくんない?」

一種の予防線でもあるし、単なる雑談の範疇でもある。

地面に降りたディーンを、
そしてその視線の先を見る。
・・・すると、疑問は大きく膨らんでいく。

――――『サグ・パッション』を見ているんじゃないか?

(……あれ!? こいつっ! この犬っ!
 まさかって感じだけど……見えてるワケ!?
 ヨシエちゃんには見えてなさそうなのに、
 『ディーン』には『サグ・パッション』が見えてる……)

     (つまり)

        (――――犬のスタンド使い!?)

  ジリ

(となると、今の声は……まさか、まさかだけど、もう状況は『逆転』してる!)

(声の出所をあてもなく探すよりは、こっちのが早い!)

≪……もしもォ〜〜〜〜〜し≫ 

≪って、こっちから話しかけて聞こえるのかわかんないけどさ≫

           ≪さっき声出したのさァ……『ディーン』?≫

長ランに、とてもじゃあないが『温厚』そうには見えない、大柄で屈強なヴィジョン。
それが、『心の声』のようにして、日沼の考えをディーンの精神へと届けてくる。

619ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/06/17(月) 19:13:09
>>618

「できるよー。ルナお姉さんも、ディーンとお話しますかー?」

ヨシエは、そんな事を言い始めた。
これだけなら、単に『子供の言う事』だと片付けてしまう事も出来る。
だが、このルナから見れば、『別の意味』も出てくるだろう。
『シラを切り通す』事も考えたが……今さら――か。

《…………》

ポゥッ

再び『リード』が『光』を得た。
『ワン・フォー・ホープ』を発現したからだ。
これによって、ヨシエは『スタンド』を『目撃可能』になる。

「わっ!?」

『スタンド』を見て、ヨシエは驚きの声を上げた。
俺のヤツ以外は見た事がないから無理もない。
実際、俺も驚いていた。
ヨシエを落ち着かせるために、俺は語り始める。

「――――え?うん」

「そうなんだー」

「うん、分かったよー」

ヨシエには、『俺が話す』と言っておいた。
そして俺は、この『図体のデカい用心棒』に向けて『意思』を発した。

《……『俺達』と『アンタら』の間には、『生き物』として大きな隔たりがある。
                      サプライズ
 だが、同じ部分もあるだろうな――『驚 き』ってヤツさ》

《『犬の声が分かる人間』に出くわした時に、どうすれば良いか教えてくれ。
代わりに、俺は『人間の声が分かる犬』に出くわした時の対処法を教えるよ》

《『何もしない』――それが『人間の声が分かる犬』に遭遇した時の対処法さ。
そうすりゃ『その犬』も、アンタには何もしてこないはずだ》

《アンタに尻尾を捕まれたのは俺のミスだ。
アンタのイカつい『ボディーガード』の腕が、俺の尻尾を握り締めてないのが救いだが》

《――――生憎、まだ『人間と喋る』のには慣れてないんだ。
『最初の挨拶』は、こんなもんでどうかな?》

『サグ・パッション』のヴィジョンから目を離さず、『意思』を返す。
口ではこう言ってるが、『油断』はしていない。

620日沼 流月『サグ・パッション』:2019/06/18(火) 00:21:06
>>619

「ヘェ〜〜〜ッ。じゃあ、ちょっとやってみよーかな」

と言いつつもう『やってた』わけだが・・・

            「っとォ!?」

「あれ、『見えるようになった』!??
 なにそれ! 見たことない『能力』……
 って、『逆に』見たことあるヤツのが少ないけどね」

「ごめんごめん、『ヨシエ』ちゃんを驚かす気はなかったんだけどさァ〜〜〜」

ヨシエに『見えている』事に気づくと、
一瞬スタンドを解除しかけてしまう。
怖がらせる気なんてのは、毛頭ないからだ。

≪ちょっ、とりあえずだけどさ、『ディーン』めっちゃ頭いいじゃん!
 犬ってかなり賢いとは聞いてたワケだけどさァ〜〜〜ッ!
  人間語が普段使えないだけで、めっちゃ色々考えてんだね。ビビるわ≫

が、『ディーン』のとりなしを眺める限り、その必要はないらしい。
スタンドの視線を返しつつ、特に構えなどは取らせず……会話をつなぐ。

≪んで、『犬の声が分かる』ヤツに会ったら〜〜〜?
  そんなん真剣に考えたことなかったわ、ウケる。
  ん〜どうだろ、『無視』でいいんじゃないのって気はするけど!
  今話してるコレは、犬語が分かるとかそういうのじゃない気がするし≫

     ≪特にヨシエちゃんと一緒んときは変なのに絡まれてもヤバいでしょ。
       犬の言葉が分かるって自称してるヤツとかさ〜、絶対ヤバいヤツじゃん!?≫

621ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/06/18(火) 01:00:10
>>620

《ああ、そうするさ。
危険なヤツには近付かないのが一番だ。危険そうなヤツにもな》

『ルナ』は危険そうには見えない。
『ボディーガード』の方は――危険な事も『やろうと思えば』出来そうだが。

《『力』がありそうだ。図体がデカい》

《大体の場合、体が大きいもの程、出せる力も強い。
『自然の法則』ってヤツさ。
俺よりアンタの方が力があるだろうし、アンタより『後ろのヤツ』の方が力があるんだろうな》

『ルナ』と『サグ・パッション』を観察するように見比べて、感想を言った。
俺の『スタンド』とは全く違うタイプだ。
だから、『興味』があった。

《別に深い意味はない。ただ、世の中には『危険なスタンド使い』だっているはずだ。
もし、『そういうヤツ』のスタンドがアンタみたいなタイプだったらどうしようか少し考えてたのさ》

幸いまだ出会った事はないが、人間の世界で言う『犯罪者』のスタンド使いもいるだろう。
そういうヤツらと出くわした時のために、知らない事は知っておきたかった。

《ヨシエを危険から守るには、必要な事だから――な》

622日沼 流月『サグ・パッション』:2019/06/18(火) 01:34:13
>>621

≪センパイにさ〜。『格闘技』ファンやってる人いるんだけど、
  あ、格闘技わかる? 人間の強いヤツが戦うヤツね!
  でさ、体重に差があったりすると全然強さ違うらしーよ。
  まあ、流月の『サグ・パッション』は、デカいから強いってワケでもないし≫

≪『逆に』小さいからパワーが凝縮されてる!
  みたいなのも、マンガとかだとありがちだよね〜ッ≫

        ≪流月達の力も『マンガ』っぽいしさ≫

(犬としゃべってんのが一番漫画っぽいけど! ウケる……)

今のところ、『サグ・パッション』を凌駕する力のスタンドは知らない。
スタンド自体をほとんど知らないのだから、当然ではあるが。
だから『図体』と『破壊力』に関係があるのかも、知らないところだ。

・・・知ってるヤツがいるのかも謎だが。

≪いや〜〜〜ディーンめっちゃ忠犬じゃん!
  今犬派か猫派か聞かれたら犬にしそうだわ、流月。
  まー流月は今んとこ危険なヤツには逢ってないけど、
  明らかに『生きてる世界違うヤツ』とかはいたしな〜≫

≪ヤバい奴に会った時のこと考えとくのは大事なのかもね。
 特にディーンは人間と違って護身用の物とかも持っとけないもんね≫

そういいながら毛並みに触れようとしたが・・・
なんとなく『大人の男』っぽいディーンの雰囲気に、無意識でそれは止めた。

623ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/06/18(火) 02:04:41
>>622

《ほう?》

『生きてる世界が違うヤツ』という部分が気になった。
事実、『そういうヤツ』がいるという事だ。
危険そうでない『ルナ』が出くわすという事は、俺が出くわす事だってあるだろう。
それは構わない。
出くわすのがヨシエでなければ。

《俺はアンタ達と違って道具を持ったりは出来ない。
後ろ足で立ち上がる事ぐらいは出来るけどな》

ヒョイッ

そう言って、俺は二本足で立ち上がってみせた。
元の高さは人間の言う『20cm』くらいだが、こうすれば少しだけ高い場所に届く。
もっとも、跳び上がる方が早い事もあるが。

《だが、身を守る武器なら用意してある。『牙』と『爪』さ》

人間にはないもの。
それが、『犬』としての俺の最大の武器だ。
今は、それに加えて『スタンド』という武器もある。

《……さて、雨もボチボチ上がってきたな。
待ち合わせに遅れた太陽も、ようやく顔を見せる気になったらしい。
どんな言い訳をするのか楽しみだ》

空を見上げる。
気付けば、雨足もだいぶ弱まっていた。

《さっき、ヨシエは友達みたいなものって言ったな。
だからって訳じゃないが……ヨシエを見かけたら声を掛けてやってくれ
『寂しがり屋』なのさ、ヨシエは》

《……ヨシエには言わないでくれよ。『強がり』だからな》

624日沼 流月『サグ・パッション』:2019/06/18(火) 03:17:23
>>623

「うおっ、芸達者〜〜〜!!」

二足歩行には、思わず喉から声が出た。
ヨシエに笑みを浮かべてディーンを指さす。

≪や、流月にも爪と歯はあるけどさ〜〜〜、
  流石にディーンのがそこは強いか。
  へへ、別に張り合う気はないケド……≫

         スイッ

手を見せる。
爪は丸い。笑みのたびに見える歯は白い。

そして・・・いつの間にか、雨音は遠ざかっていた。

≪ディーンわりと詩的だね〜。
 飼い主に似るってやつかな。
 それとも、『逆』だったりして〜〜〜ッ≫

≪あと、いい子ってとこも『似てる』のかな、言わない、言わない。
  流月、そーいうとこは『逆らわない』し、ちゃんとやるからね≫

            ≪今度は流月から声かけるよ≫

   ザッ ザッ

「ヨシエちゃん、流月そろそろ行くわ。
 お日様が出てきたら『帰る途中』になるワケだからさ」

「んじゃ、『また』ね」

ここで待っていても何も来ないのだし、ヨシエも帰るべきだろう。
挨拶をして、ディーンに手を振ってからスタンドを解除し――――その場を去る。

625ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/06/18(火) 03:48:45
>>624

《ああ、またな。次に会う事があれば》

「ルナお姉さん、また今度お話しようねー!」

俺とヨシエは、立ち去るルナを見送った。
雨は上がり、雲は晴れて太陽は顔を覗かせている。
遅い到着だが、今日は勘弁してやろう。
そのお陰で、意味のある出会いに恵まれた。

「ねえ、お姉さんとどんなお話したのー?」

《『色々』さ》

「えー?色々って?」

《帰ってから話す――もう『切る』ぞ》

ずっと出しっぱなしにしていると目立つ。
人目についたら面倒な事になるかもしれない。
そうなる前に、俺は『ワン・フォー・ホープ』を解除した。

(さて、家に着く前にヨシエにどう説明するか考えておかないとな)

どうやら言い訳を考えるのは太陽じゃあなく、俺の方だったようだ。
そんな事を思いながら、俺とヨシエは雨上がりの町を後にした。

626宗像征爾『アヴィーチー』:2019/06/27(木) 22:10:43

ゲームセンターの一角に作業服を着た中年の男が立っていた。
目の前にはクレーンゲームの筐体が設置されている。

「――難しいな」

持ち上げられたアームの先には何も無い。
失敗を重ねたせいか景品は開口部の間近まで来ていた。

「位置は悪く無さそうだが」

硬貨を投入する事を止めて筐体を別の角度から観察する。
その間に別の誰かが筐体の前に立ったとしても不思議は無いだろう。

627宗像征爾『アヴィーチー』:2019/07/06(土) 00:31:43
>>626

ほぼ同じタイミングで少年が筐体に硬貨を投入するのが見えた。
そのままの位置に立って彼が操作する様子を眺める。

「なるほど――」

彼はアームで持ち上げるのではなく転がしていた。
その方法を使って慣れた手付きで景品を開口部へ落としている。

「そんな手があったか」

少年が立ち去った後で再び筐体の前に戻る。
そして俺は銀色に光る一枚の硬貨を投入した。

628斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/07/28(日) 11:07:38
最近、お前ばっかりだなって?そうだな
確かに入った映画館の上映スケジュールが、全部『ネコドラくん劇場版』だったら俺だって呆れる
俺もそう思うんだが、まあ我慢していただく他は無いな。

 *beep*

真夏の分厚く重い雲が、空の3割を覆い、風が雨後の匂いを運んでくる中
俺はゲームセンターの路地裏で椅子に座り、溜息をついていた。
途中で途切れる事がない、1秒以上かかるヤツを


 「まいったな。」


――正確に言うと?

呻きながら倒れ込んでいるヤンキーどもを椅子がわりにして路地裏に座り込んでいた。
辺りには実体化した『鉄球』とヤンキーが同じ数転がっていて、ゲーセンの室外機がブンブンとうるさい
両親を侮辱した連中に同情は無い、が……どうしたもんかな。

或いは、怒りが覚めた後はただ燃え尽きるだけで、ぼーっとするしかないのかもしれない。
スマホから適当に音楽を再生すると、『ボヘミアン・ラプソディー』が流れ出してきた、やっちまったな、ママ。

手のひらで転がしている鉄球が、空の青色を映していた。

629夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/07/28(日) 21:25:58
>>628

音楽に耳を傾けていると、唐突に斑鳩のスマホが着信する。
これは――――『ライン』のメッセージのようだ。
送り主は『アイツ』だった。

   『アゲていこうぜ!!(大量のスタンプ。たぶん29個くらい)』

              …………意図は不明だ。

その場のノリで送ってきたのか、それとも何らかの力で今の斑鳩の気分を察したのか……。
おそらくは、『前者』の線が濃厚な気がする。
いずれにしても、きっと気にする必要はないのだろう。
それほど重要な事ではないだろうから――――。

630斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/07/29(月) 23:07:58
>>629

ふと見るとスマホに妙な記述が……えーっとライン?ナニコレ。
夢見ヶ崎からだって?なになに……『アゲていこうぜ』?

……意味が解らん。

ついでと言わんばかりに刺身のツマが29個ほど自己主張してくる
彼女のファッション並みにパンキッシュなラインだな、おい。

――お陰で肩の力が抜けちまった、怒るに怒れねえ。
さっさとこの五つ子の小指へし折って、アンチョビとマリナーラのピザでも食うかな。

しっかし、此奴らが難癖つけて来た理由が、今思い出しても笑えるな

「惚れた女にいい所見せようとしたら、ガン・シューティングの前で
俺が現代のジョン・プレストンしてたから。」なんて。

……ジョン・プレストンを知らない?じゃあ『リベリオン』を見ておいてくれ。
きっと退屈はしないだろうから。

俺は『鉄球』を裾から取り出し、チンピラ共の小指に叩きつけてグッドバイだ
枯れ枝を踏み抜いたような音がしたが、まあ俺の両親を馬鹿にしたのが悪い。

631宗像征爾『アヴィーチー』:2019/09/24(火) 22:19:23

ゲームセンターの中に、カーキ色の作業服を着た男が立っていた。
その手には『銃』を握っている。
目の前に置かれているのは、『ガンシューティングゲーム』の筐体だ。

「――やはり鈍っているな」

画面に表示されたスコアを見て、短い感想を漏らす。
いつだったか、ここで『コツ』を教わった事がある。
しばらく経っているせいか、その時と比べて点数は落ちていた。

「もう一度やってみるか」

待っている人間がいない事を確認し、再びコインを投入した。
銃を模したコントローラーを構え、照準を合わせて引き金を引く。
その度に、画面の中で敵が弾け飛ぶ。

「――悪くない」

最終的に表示された点数は、先程よりも上がっていた。
余り人気のないゲームだからか、ランキングにも入っているようだ。
下ろしたコントローラーを、おもむろに元の位置に戻す。

632宗像征爾『アヴィーチー』:2019/10/01(火) 19:01:45
>>631

やがて筐体に背中を向け、出口へ向かって歩き出した。
残された画面には、ハイスコアランキングが映し出されている。
その上位五名の中に、『Avicii』という名前が記録されていた。

633斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/12/08(日) 13:56:51

 「『牡蠣とマッシュルームのアヒージョ』ね。」

陶器の皿には黄金色の液体……オリーブオイルに浸され、輝く具材たちが
香ばしい香りと共に湯気をあげている、すぐ隣のバゲットは僅かに焦げ目がつき
口に入れなくてもその食感が想像できるようだ

銀のスプーンで牡蠣を掬い上げ、千切ったバゲットをオリーブオイルに浸す。
口に放り込むと心地よい鷹の爪とニンニクの風味が鼻を突き抜ける

 「うん、美味い。」

 (客も少ないし当たりかもな、この店、『運動』の後には美味しく食べられる。)

少し前までは『チンピラ狙いの通り魔』の話も合ったが
今ではとんと聞かなくなってしまった、この町の噂は足が速いのだろう

クラスメイトも今では病院から戻って、元気にクラス内でバカ騒ぎをしている
彼の妹も病院のベッドの足元で、縋りつく必要もなくなった

だからこうして、僕もゲーセンの裏側にこじんまりと構えた店のテラスで
こういう料理を食べられる、立地の割には随分と静かだし、有難い事だ。

 「……つまり、目下の僕の問題は『通り魔』より『ボーイズギャング』の方か。」

目と目が合って2秒でガン付け、ポケモンじゃあるまいしと言いたいが

『ヤクザ』と『チャイニーズマフィア』だのが三つ巴で仲良くしていたところに、
隣の県から別のボーイズギャングが入ってシマ争いになったり、ロシアンマフィアが出張って来たり
挙句の果てには、それにエクリプスの残党が絡んでもう訳が分からない。

おまけでこの前、スタンドの事で『聞き込み』をしたらそいつがボーイズギャングで
双方に眼を付けられた上にお呼ばれする。

 (『治療の能力を持つスタンド使いを探す事』を条件に幾つか仕事を引き受けたけど)
 (見つかるかは怪しいかな。)

 (――体育倉庫の壁に大穴を開けた奴も見つかっていないし。)

他に手はないので致し方ない事だ、そう自分に言い訳をしながら牡蠣をもう一つ口に放り込む
新鮮な牡蠣の食感が舌で踊る、食べたら無くなるのが口惜しい。

634宗像征爾『アヴィーチー』:2019/12/08(日) 17:01:11
>>633

ゲームセンターの方向から、
カーキ色の作業服を着た男が歩いてきた。
おもむろに顔を上げた彼の視線が、
テラス席に座る斑鳩の姿を認める。
そして、男は近付いて来た。

635斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/12/08(日) 17:10:23
>>634

多少陰鬱な気分だが料理の美味しさに舌鼓を打つ
そんな折に此方へ歩みを進める姿を、視界がとらえた

猛禽類のように鋭い眼光、カーキ色の作業服
暫くして律儀な男性だと言う事を思い出す、そうだ、前にあったのはあの湖だった

 「――おーい、宗像さん」

笑顔で手を振る
こういう場所で会うとは思わなかったが、意外な発見もある物だ

 「どうしたんです?宗像さんもお昼ですか?」
 「ゲーセンやった帰りには見えませんけど。」

彼は確かスタンド使いだった……筈だ。

636宗像征爾『アヴィーチー』:2019/12/08(日) 18:06:53
>>635

「この前は世話になったな」

男が近付く。
セーフティーブーツの底がアスファルトを踏む音が響く。
やがて、テラス席の前で立ち止まった。

「そんな時間だったか」

「――気付かなかった」

一旦その場を離れ、入口の方へ歩いていく。
自動ドアの前に立ち、開くのを待つ。
しかし、ドアは一向に開かなかった。
数秒間の後に、
ボタンを押さなければ開かないタイプがある事を思い出した。
社会から遠ざかっていた期間が長いと、忘れてしまう事も多い。

「君を見掛けたから寄っただけだ」

「――よく来るのか?」

間もなく店に入り、斑鳩の向かいの席に腰を下ろす。
注文を取りに来た店員に、
メニューの中で最初に目に付いた料理を告げた。
斑鳩と同様に、男はスタンドを持っている。
右腕に長大な鋸を備えた人型のスタンドだった。
その能力は不明だ。

637斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/12/08(日) 18:37:55
>>636

 「えっと……ああ、釣りの事ですか?どういたしまして!」

彼が向かいの席に座ると
作業服は兎も角、顔立ちとか佇まいはこういう場所に似合う気もしてきた
もっとも、厳格な理屈ではなく、『なんとなく』という曖昧なものだが。

 「まさか、知る機会も無いでしょうけど僕は学校だと優等生で通ってるんですよ?『基本』は。」

苦笑しつつも首を振る
とはいえ偶然ではなく、此方にはちゃんと理屈がある
フォークをナプキンの上に置き、数日前の事を回想する

 「この前、学校……清月学園の先生と先輩で飯に行くことになったんですけどね?」

 「3人だけだと寂しいなあと思って、知る限りの先輩とその知り合いとかを呼んだんですよ」

 「その時に先輩の1人から教えてもらったんですよね、ここ。」

 「そしたら結構いい店で、今驚いてるんですよ、嬉しい発見という奴です。」

肩を竦める、あの時は奢ると言ったら、結局払いが『何故か』割り勘になってしまったが
まあそれは些細な問題だろう、仲のいい相手が増えるのは良い事だと思う、それが美女なら尚更。

 「それで、僕に用でも無いしここに足を運んだと言う事は……宗像さんは、お仕事関係で?」

638宗像征爾『アヴィーチー』:2019/12/08(日) 19:16:13
>>637

しばらくして、皿に載った料理が運ばれて来た。
血の滴るようなレアに焼かれた赤味肉だ。
カットされた肉を、箸を使って食べ始める。

「あのゲームセンターを知っているか?」

「俺は暇潰しに行く事がある」

自分が歩いて来た方角に視線を向けた。
言葉の通り、そこにはゲームセンターが立っている。
視線を戻し、再び口を開く。

「裏手に設置された室外機の配管が壊れていた」

「――その修理だ」

経年劣化という部分もあっただろう。
だが、それを考慮に入れても使い物にならなくなるには早かった。
誰かが乱暴に扱わなければだが。

639斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/12/08(日) 20:56:14
>>638

 「室外機の配管……ああ。」

彼に運ばれてきた料理も実に美味しそうだった、だが浮気は良くない事だと皆知っている

飲み込んだバゲットをジンジャーエールで押し流す
口の中の油を流し込むと実にサッパリとするが、あそこの問題はサッパリとはいかない。

 「確か、あの辺りで乱闘を起こしたボーイズギャングがいたかな、誰かの『蹴り』でも当たったんでしょう」

実際、下手な場所だとそう言う連中が占拠して迷惑してるとかいう話だ
そして大抵の場合は店内でもめ事は起こさない、見えないところでやる方が、何方にも都合がよい。
そして『親交を深め合っている』最中に、たまたま脚の位置に近いパイプ……だのがあっても不思議な事では無い。

 「……その中に『いきなりギャングの1人が吹っ飛んだ』、っていう証言が有ったら、信じます?」

――こういう証言の方が、大概の場合は不思議だろう
ただし、何事にも例外は有る。

640宗像征爾『アヴィーチー』:2019/12/08(日) 21:19:34
>>639

「大抵の人間は信じないだろう」

多くの一般人にとっては、稚拙な作り話に過ぎない。
スタンドを知る者であれば、当然その可能性を考える。
もっとも、配管を傷付ける程度なら誰でも出来る事だ。

「斑鳩翔――それが君の名前だったな」

「珍しい名前だと思っていたが」

思い出したように、目の前に座る相手の名を口にする。
箸を置き、グラスに注がれた水を喉に流し込む。
両手を覆う革手袋を直しながら、言葉を続ける。

「『同じような名前』というのは案外いるものだ」

641斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/12/08(日) 23:15:56
>>640

 「両親から貰った自慢の名前ですからね」

ふと気が付くと、グラスが空になっていた
対して飲んだ気もしないのだが、こういう場所では仕方がない

 「とはいえ、僕が2人も3人もいる、というのは少しゾッとしますけど」
 「喧嘩とかしちゃいそうだし。」

ふと横を見ると枯葉が風に舞って渦を作るのが見える
そういう季節なのだ。

 「誰から聞いたんです?」

642宗像征爾『アヴィーチー』:2019/12/08(日) 23:53:58
>>641

「俺も自分が何人もいるとは思わない」

「同じ名前の人間なら何処かにはいるだろうが」

やがて箸を手に取り、食事を再開する。
その所作は何処か作業的だった。
実際、料理を味わっているとは言い難い。
生身の人間である以上、食わなければ十分な仕事が出来ない。
だから食っている。

「ゲームセンターにいた学生達の会話が耳に入っただけだ」

「話の中に斑鳩翔という名前が出て来た」

「詳しくは知らないが、
 『その斑鳩翔』は何か恨みを買っている様子だったな」

食べるペースは平均よりも速い。
程無くして、皿は空になっていた。
箸を置き、風に舞う枯葉に視線を移す。

「もし君なら教えておこうかと思っていた」

「だが――俺の勘違いだったようだ」

「『優等生』がボーイズギャングと関わりを持つとは考えにくい」

643斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/12/09(月) 01:12:57
>>642

 「――そうですか」

学校では少なくとも、他人を立て、愛嬌を振りまくと言う事をなんとかやってのけて来た筈だった
ただし、恨まれる心当たりがないわけでは無い、過去の行いとかなら尚更。


 「5年前から……まだ引き摺ってきたのか。」


 その台詞は掻き消えそうなほどに小声で呟かれた。

両親を壊した程度では収まらなかったのだろう
血反吐を吐き、どれだけ努力しても、其処には隔絶した差がある
俺はやったと叫んでも、それは見向きもしない、結果はそこにあり続ける。

自己が到達し得ないと考えた時、とれる手段は二つ
一つ、諦める ……一つ、自分の所まで引きずり落とす。

だが何故? ――そういう物だからだ。
恨みを買わない事も出来たのかもしれない、だが彼はそれをしなかった
才能こそ彼の『アイデンティティ』であり、それを失う事は自己の『ロスト』に他ならないからだ。

だから『しなかった』と言うよりも『できなかった』というのが正しいのだろう。

だからこうして、過去から地虫のように、這いだしてくる物がある
『恨み』という名前の『カス』が。

 「ごちそうさまでした。」

過去が自分の知らぬところで何をしようが、私にはどうでもいい事だ
しかしそれが今を脅かすなら、潰さなくてはならない
奇跡を脅かすなら、潰さなくてはならない。

 「お話、有難う御座いました 次に会えたら、また」

 「――今度はまた、釣りの話でも ワカサギ釣りとかどうです?」

微笑み、一礼し、代金を払い、歩き去る
ただし、今はあるかもわからない目標に当てもなく彷徨う事はしない。

今は目的がある
自分の名を騙る、過去からの恨みを潰す目的が。

644宗像征爾『アヴィーチー』:2019/12/09(月) 01:54:55
>>643

「ああ」

短く答え、そのまま斑鳩を見送る。
そして、背もたれに軽く体を預けた。
座っている椅子が軋んだような音を立てる。

「もし――『その斑鳩翔』が俺の知り合いだったとしたら、
 こう言うつもりだった」

振り返らず、誰に言うでもなく言葉を発する。
聞こえているかどうかは問題にはならない。
これは、単なる独り言に過ぎないからだ。

「今は大きな問題は起きていないようだが、
 それが今後も続くとは限らない」
 
「向かって来た人間の中に、
 『一般人以外』が存在しないという保証も無い」

「『目的』は知らないが、派手に暴れていれば、
 自分以外の人間に危害が及ぶ可能性も生まれる」

「それは家族かもしれないし、友人かもしれないし、
 『力を与えた者』かもしれない」

「壊れた配管は直せる。折れた骨も治る」

「だが、『心』は容易には治らない」

独り言を言い終えて、静かに席を立つ。
燃え残りの灰を思わせる虚無的な瞳が、外の景色を見つめる。
勘定を済ませ、その姿は歓楽街の中に消えて行った。

645鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/12/20(金) 00:54:32
既に辺りが暗闇に包まれた中でも、この歓楽街は『不夜城』の如く明かりが煌めいている。
このゲームセンターも、その輝きを作り出す一つだ。とはいえ、自分には少し眩しい。
あまりこういった場所を訪れたこともなく、竹刀袋を背負った学生服のこの姿も、少し浮いている気はする。

(…最近は、何の手掛かりもない)

そもそも、刃物による『通り魔』事件自体話を聞かなくなっている。
あの犯人は、身を隠すことに決めたのだろうか。だとするならば、犯人を見つける望みは薄くなる。
もちろん、これ以上犯行を重ねないに越したことはない。だが、罪を償わせないまま放置していいはずもない。
それに、いつまた犯行を始めるとも限らないのだ。

「…結局、できることは限られているけどな」

こうして地道な『見回り』程度だ。手に持っている緑茶のペットボトルに、口をつける。

646???『???』:2019/12/21(土) 00:52:43
>>645

自販機の前で私服姿の少女達が歓談している。
どうという事のない日常的な光景。
その時――――。

    ズッ

自販機の陰から、這うように『腕』が伸びてきた。
五指に鋭利な『爪』を備えた異形の手。
『スタンド』だ。
その姿が徐々に露になる。
スタンドは、『座頭市』のように目を閉じていた。

           スゥッ

スタンドが腕を持ち上げた。
『爪』の切っ先は『医療用メス』のように鋭利だ。
すぐ近くには二人の少女が立っている。

            ――――シュバッ

そして、スタンドの腕が振られる。
その動作は速い。
『高速』だ。

647鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/12/21(土) 01:12:42
>>646

少女達の歓談を見ながら、思う。
妹の朝陽(あさひ)も、あんな風な日常の中にいたのだ。それは明日からも明後日からも、ずっと続くと彼思っていただろう。
だが、魔の手というのはいつ襲いかかってくるか分からない。
だからこそ、守るのも難しいわけだが。

「────────」

キャップの蓋を閉めている時に、それは現れた。
『スタンド』。『刃物』。忍び寄っている。その先には二人の『少女』。

「『シヴァルリー』ッ!!」

スタンド、『シヴァルリー』を発現しながら全力で接近する。
『5本』の刃の内、『小指』を除く『4本』まで殺傷力を奪おうとする。手足を使い、間に誰もいない位置で吸収する。
だが、『1本』だけは無効化し切れない。間に合うか。速度はこちらより早い。
間に合わなくとも、必ず『射程距離』に収める。絶対に逃がさない。

648???『???』:2019/12/21(土) 01:37:21
>>647

スタンドの腕が振られた。
しかし、既に『シヴァルリー』は動いている。
視認した『刃』から『殺傷力』を奪う。
それが『シヴァルリー』の能力だ。
そして、その発動はスタンドの動きよりも速い。

    シュババババァァァァァ――――ッ!!

奪った『殺傷力』が飛来する。
しかし、それが誰かに当たる事はなかった。
位置取りは上手く調整されている。

          クルッ

スタンドが向きを変えた。
もう片方の手は陰になっていたが、今は見える。
そこにも『爪』があった。
『爪』は両手に備わっている。
『シヴァルリー』の能力を以ってしても、その全ては無力化できない。

              ――――ババッ

鉄の声に反応したスタンドが、自販機の裏手に素早く後退する。
やはり俊敏だ。
しかし、少女達は無傷で済んでいる。

…………一方で『妙な事』もあった。
あのスタンドが切り付けたのが『自販機』であり
(『殺傷力』を奪われたために正確には切れなかったが)、
少女達には全く触れていなかった事だ。
何が目的なのだろうか?
ともかく、スタンドの姿は陰に隠れて見えなくなった。
しかし、そう遠くには行っていまい。

649鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/12/21(土) 01:44:49
>>648

(両手とも…?!『10本』全てを無効化するのは不可能、ならば誰かを傷付けられる前に!直接斬ってやるッ!)

>              ――――ババッ

下がったのを確認した。『殺傷力』を奪われた事に気づいたか。
それとも『遠隔操作型』で、近距離戦には自信がないのか。どちらにせよ、慎重なタイプだ。
『自販機』を切った時の手応えで、こちらの能力には少し気が付いたかもしれない。
相手の能力は一体どんなタイプだ?例えば『自販機』を切ることで、次に触れたものに『斬撃』を伝播させる能力などか?

とにかく追跡を続け、自販機の裏手へと回り込む。逃走ならば、『本体』の近くへと移動するはずだ。

650夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/12/21(土) 02:07:35
>>649

退避を選んだなら、本体の下へ移動する。
その可能性は高いだろう。
そして、鉄は『シヴァルリー』と共にスタンドを追跡する。
いくら素早いとはいえ、目で追えない程のスピードではない。
今からなら十分に追いつけ――――。

          ド ン ッ !

「あたッ――――」

回り込んだ直後に、『誰か』とぶつかった。
『不思議の国のアリス』をイメージしたようなファッションの少女だ。
床の上に尻餅をついている。
もしかすると、どこかで見たような姿だと思うかもしれない。
おそらく、『神社』で遭遇したような気がしないでもない。

          「おん??」

       「え〜〜〜ッと、ココ!!」

          「あ、コッチか??」

         「いや、このヘンだなタブン」

   「なかなかやるな!!かくれるのがウマいヤツだ!!」

       ササッ       ササッ
            ササッ       ササッ

何かを探しているらしく、床の上を両手で触っている。
本人の『すぐ近く』には『サングラス』が落ちていた。
そういえば、あの時も『サングラス』を掛けていたようだ。

651鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/12/21(土) 02:26:55
>>650

>          ド ン ッ !

「ぐっ?!」

何か、人のようなものとぶつかった。これが『本体』か?
素早く『摺り足』で後ろへと下がり、改めて正面を見る。
そいつの体格は自分より小さいのか、こちらは体勢を崩さずに済んだ─────。

「…アリス?」

その特徴的な格好には見覚えがある。あの時『神社』で遭遇した、不思議な少女だ。
すぐ側の『サングラス』に気付いていない様子だ。これも彼女なりのジョークなのだろうか。
普段ならその流れに乗る所だが、今は状況が状況だ。彼女の手を掴み、引き上げ自分の背中側へと回す。
一応彼女の持ち物らしい『サングラス』は踏ませないように気を付けよう。

「アリス、今ここを誰かが通りがかってはいないか?」
「そいつは、あるいはとても危険な人物かもしれないんだ」

『シヴァルリー』は引き続き、前へと立たせる。

652夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/12/21(土) 02:58:41
>>651

「――――おうッ??」

   グイッ

腕を力強く引かれ、そのまま立ち上がった。
そのために、まだ『サングラス』は拾えていない。
首を傾げながら、鉄の言葉に耳を傾ける。

「あ〜〜〜…………」

「『とおりがかったよ』」

「ソイツは!!とつぜんワタシのウデをつかみ!!
 おもいっきりひっぱりあげたんです!!A・Yさん(16さい)!!」

「しかもスゲーいきおいでゲキトツしたしな。これはキケンだ!!
 もしクルマだったらヤバかったぜ!!」

「まんいちのためにホケンはいっとかないとな〜〜〜」

先程のスタンドは見えない。
既に逃げてしまったのだろうか。
あるいは、ゲーセンの中に『本体』が紛れているのかもしれない。

「それより、クロガネくん。『アリスのサングラス』みてない??
 どっかにフッとんだかな??
 きのうキツクいいすぎたせいで、ジッカにかえっちゃったか??」

落ちている『サングラス』は、まず見落とさないような位置だった。
それを考えると、やはりジョークかもしれない。
ふざけてでもいない限り、普通なら気付くはずなのだから。

653鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/12/21(土) 19:37:14
>>652

>「しかもスゲーいきおいでゲキトツしたしな。これはキケンだ!!
> もしクルマだったらヤバかったぜ!!」

>「まんいちのためにホケンはいっとかないとな〜〜〜」

「…なぁアリス!ぶつかったのは悪かった、謝るよ。だが今はふざけてる場合じゃあないんだ」
「最悪、『保険』で治せない傷が付くかもしれない」

相変わらずも呑気な彼女の声に、若干の苛立ちを覚える。
アリスもあの自販機前の少女と同じだ。
『非日常』を求めていると言っていたが、やはりすぐに実感は湧かないのだろう。
こうしている間にも、『犯人』を取り逃がすかもしれないのに。既にあの『シザーハンズ』のようなスタンドは消えていた。

(『音仙』さんから聞いた話では、確か『遠隔操作型』といえど、
 本体から離れた場所では解除できないはずだ…もっとも、例外もあると付け加えていたが)

スタンドの能力を用いれば、遠隔解除も可能かもしれない。あるいは『スロウダイヴ』のように、何かを媒介して逃走したか?
だとするなら、どちらにせよ手遅れだ。どうか、まだ本体が近くにいる可能性にかけたい。

「頼むから真剣に答えてくれ───」「…?」

振り返り、アリスの方を向く。
彼女はまだ自分の『サングラス』を探していた。そこで違和感を覚える。
アリスは自分の感性では分からない冗談を言ったりするが、それをこうも繰り返すタイプだろうか。
あまり一つのことに拘泥する性質ではない。一度会ったきりだが、何となくそう思っている。

「・・・・・・・・・・」

『シヴァルリー』にサングラスを拾わせ、アリスへかけさせる。
もし全てが冗談で、彼女に目が見えているなら、突然浮き上がったサングラスに何らかのリアクションをするはずだ。

654夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/12/21(土) 21:02:08
>>653

あのスタンドは消えてしまった。
逃げ切られたかは不明だが、とにかく見失った。
だが、まだ本体は近くにいるかもしれない。

「まぁ、おちつけよ??
 シンコキュウして、まわりをよォ〜〜〜くみるんだ。
 そうしたらサングラスもみつかるかもしれない」

「『き』をかくすには『もり』のなか。
 『サングラス』をかくすには『アイウェアショップ』のなか」

「あるいは『まなつのビーチ』だ」

『シヴァルリー』がサングラスを拾い上げる。
『見えている』なら、何かしらの反応が返ってくる。
それが自然だろう。

        スッ

「おお、わるいな!!」

「コレは『アリスのおきにいり』なんだ。
 なかなおりのシルシに、
 まるでシンピンみたいにピカピカにクリーニングしてやろう」

しかし、『際立った反応』は全くなかった。
浮かんでいるサングラスが見えている様子はなく、
それを持つ『シヴァルリー』が見えている様子もない。
おそらく、鉄自身の手で掛けさせても同じリアクションだっただろう。

655鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/12/21(土) 21:25:54
>>654

「…相変わらず、元気なようで何よりだ」

やはり彼女の言っている事は、大体半分ほどしか分からない。
それは何かを暗喩しているのか?それともノリだけで、口から思いつくままに語っているのか?
─────『スタンド』を隠すなら、それが目立たない自然な空間の中に隠すと?

「・・・・・」

もっとも、アリスに『シヴァルリー』が見えている様子はない。流石にそれは考え過ぎか。
しかし同様に、浮き上がったサングラスに驚くようにも見えない。
これはつまり。彼女が相当な演技派ではないとして、だが。

「キミは」「『サングラス』がないと、目が見えないのか?」

656夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/12/21(土) 22:22:11
>>655

「――――うん」

事も無げに言葉を返す。
この言葉が冗談でない限り正しいのだろう。
よく見れば、鉄が見えているのではなく、
声の聞こえる方向を向いているのが分かるかもしれない。

「まだよくみえてないよ。
 インクがしみてくるみたいにジワジワとみえてくるんだ。
 インクのシミって、なかなかおちないよな〜〜〜。
 ガンコなヨゴレは、てあらいでこすらないと!!」

そういえば、あのスタンドは目を閉じていたようだった。
目そのものは存在していたが、開かれていなかった。
閉じておく必要があったのか、それとも開けなかったのか。

「で??なんだっけ??
 はやくいかないと『デートのやくそく』にまにあわないんだっけ??
 だったら、いそいだほうがイイぞ!!」

「さいしょのインショウはだいじだからな〜〜〜。
 わるいイメージがつくと、なかなかきえないから。
 おちにくいインクのシミみたいに」

         キョロ キョロ キョロ

衣服の乱れを軽く整えつつ、辺りを見渡す。
本人の言う通り、まだよく見えていないらしい。
黒目がちの両目が、鉄を見つめた。

657鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/12/21(土) 22:46:35
>>656

「──────」

訊ねたからには当然予測していた内容だったが、にも関わらず、その返答にショックを受けている自分がいた。
勿論、世の中にはそういう人間がいるのは知識として得ていた。
明るい光の中でしか物が見えない人間もいれば、光が強過ぎると物が見えない人間もいる。
だが、こうして実際に会ったのは初めてで。しかも、それが既に知っていた人間となれば。

「…そう、か………そういうものなんだな…」

頷き、覚えておく。いずれ彼女や、同じような症状の人間と接する時に、役に立つかもしれない。
『デート』の約束、とのたまうアリスに対して、首を振った。

「いや」「『通り魔』を追ってる」
「正確には、そうかもしれない『超能力者』だ」

だから、自分も伝える。彼女の事だけを一方的に知るのは、フェアではない。

658夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/12/21(土) 23:25:45
>>657

「そういうモンだ!!」

至って明るい口調だった。
自身のハンディキャップに対する悲痛さはない。
むしろ、今の自分を喜んでいるような雰囲気だった。

「だから『アリス』なんだぞ。
 『このセカイ』が『フシギのクニ』だから」

「――――ホント、『このセカイ』はオモシロイ」

話している内に、徐々に視力が回復してくる。
『闇に閉ざされた世界』から、『光に溢れた世界』に戻ってくる。
それこそが、自分にとっての『不思議の国』だ。

「『トオリマ』??ワルいヤツだ。
 しかも『チョーノーリョク』なんてキケンだな!!
 『チョーノーリョクのホケン』なんてないしな〜〜〜」

『ドクター・ブラインド』に視覚はない。
だから、何が起こったのか見えてはいなかった。
いきなり声と足音が聞こえたから、反射的に引っ込んだだけだ。

「ソレって、どんなヤツよ??オトコ??オンナ??
 トクチョーは??うなじのあたりにホクロがあるとか??」

自販機に『聴覚』を移植して、少女達の会話を聴こうとしていた。
ここは騒がしいから『超人的聴覚』であっても聞き取りづらいのだ。
もっとも――何故か失敗したが。

659鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/12/21(土) 23:47:30
>>658

「…成る程。キミが『アリス』を名乗るのは、そういうわけがあったんだな」

今の言葉から、視力を失っていた期間が長いことも分かる。
生まれた時からか、あるいは物心付く前には何も見えなくなっていたんだろう。
だが、それ以上境遇を深く考えるのはやめた。目の前の少女が笑っているのなら、それでいいだろう。
少しずつ、ショックから立ち直れてきた。

「そうだな、悪いヤツだ。オレの妹もそいつに『斬られた』」
「この前も言ったが、キミも気を付けろよ」

>「ソレって、どんなヤツよ??オトコ??オンナ??
> トクチョーは??うなじのあたりにホクロがあるとか??」

「分からない。オレ自身は全くその姿を見ていないからな」
「先程見つけた、もしかしたらそうかもしれない『超能力』の姿は…両手が刃物の形をしていた」

660夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/12/22(日) 00:25:36
>>659

両手が刃物の形。
『ドクター』は両手に『爪』を持っている。
しかし、両手が刃物の形をしているというのは…………。
つまり――――『違うスタンド』だ。
頭の中で、そのように判断した。

「そっかそっか。
 でも、ここでみたっていうんなら『またくる』カモ。
 ハンニンはゲンバにもどってくるっていうし」

「それに、もしかしたら『ショーコ』とかのこしてるカモ??
 イチオーてがかりにはなるんじゃない??
 もしあったらだけど」

世の中にはヤバいヤツもいる。
そして、そういうヤツがスタンドを手に入れることもある。
そういうのを『最悪』と呼ぶか、
『最高にクソ』と呼ぶかは人それぞれだけど。

「で、クロガネくんはハンニンをさがしてんのか。ほうほう」

しばし考える。
そんな人間がいたら自分や自分の親しい人間にとっても良くない。

              ウ  サ  ギ
そして、これは新しい『興味の対象』かもしれないのだ。

「ワタシもてつだおうか??
 『あぶないからいい』っていうつもりだな??
 いや、ゼッタイいおうとした!!」

「でも、『アリス』はイロイロと『ジジョーツー』だから。
 ジョーホーあつめたり、
 ナニかをおいかけたりするのトクイだからさ。
 ミカタにしとくとトクだぜ??」

661鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/12/22(日) 00:44:33
>>660


>「そっかそっか。
> でも、ここでみたっていうんなら『またくる』カモ。
> ハンニンはゲンバにもどってくるっていうし」

「…かもしれないな」「この『ゲーセン』には時々訪れさせてもらおう」
「しかし、『証拠』か」
「さっきは『女性』を狙おうとしていたかと思えば、『自販機』を切りつけようとしていた」
「生憎とオレの『超能力』で無効化させてしまったから、切り傷のようなものは残していないか」

もし自販機に傷が残っていたなら、警察から『切江』の受けた傷の写真を見せてもらい、
その切り口の称号なども出来たかもしれないが。他に切り傷のようなものがないか、辺りを探してみよう。

「…言おうとした、ではなく実際に言わせてもらおう」「『危ないから、止めておくんだ』」
「目に見えない力に抗う術を、普通の人は持たないんだ。狙われてしまえば、抵抗できない」
「『超能力』を使う人間は、普通の人と見分けがつかないんだからな」

好奇心旺盛で、色々なことに首を突っ込むアリスは、成る程情報通かもしれない。
だが、あまりに危な過ぎる。仮に彼女が何度か危険な目に遭ったとしても、スタンドのそれとは違う。

「…キミにも『超能力』があるなら話は別だが」

もし興味があるなら、『音仙』さんの事を話すべきだろうか。

662夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/12/22(日) 01:10:06
>>661

「わかりました。『あぶないからやめます』。
 ナニがあってもゼッタイにクビをつっこんだりしません。
 イマここで『チカイ』をたてます」

特に食い下がることもなく、呆気なく引き下がる。
言葉通りなら、『通り魔』の件に関わろうとはしないだろう。
しかし、『それだけ』では終わらなかった。

「でも、アリスは『ジゴクミミ』だからなぁ〜〜〜。
 もしかしたら、
 マチでグーゼン『ウワサ』とかきくコトもあるかもなぁ〜〜〜」

「そういうのをきくコトがあったら、
 クロガネくんにレンラクしたほうがイイのかなぁ〜〜〜??
 だけど、『あぶないからダメだ』っていわれたからなぁ〜〜〜。
 もしきいても、いわずにずぅ〜〜〜っとだまっとこうかなぁ〜〜〜。
 それが『ジューヨーなてがかり』かもしれなくても、
 ヒミツにしとこうかなぁ〜〜〜」

「だって、『ダメだ』っていわれたしなぁ〜〜〜」

      チラ

『大きな独り言』を言いながら、横目で鉄の顔を見る。
『情報通』という部分には、かなりの『自信』があるようだ。
それが『超能力』かどうかは定かではないが。

663鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/12/22(日) 01:22:40
>>662

>「でも、アリスは『ジゴクミミ』だからなぁ〜〜〜。
> もしかしたら、
> マチでグーゼン『ウワサ』とかきくコトもあるかもなぁ〜〜〜」

「・・・・・・・・」

大きく深く、溜め息をつく。
言って聞くような性格ではない、という事だ。それなら『情報』は得ておいた方がいい。
もしかしたら、彼女が危険な目に遭っても助けられるかもしれない。…手遅れになる可能性の方が高いが。
壁に背中を預け、腕を組む。

「首を突っ込むのはダメだが、手に入れた『情報』は共有したい」
「そういった危険な出来事でなければ、こちらもキミの興味のある事は伝えよう」

どちらにせよ突っ込むんだろうなと思いつつ、アリスにあの事件を話したのを若干後悔した。
とはいえ、現在『停滞』しつつあるこの事件。新たな手掛かりが得られるかもしれないなら、ワラでも掴みたいところだ。
それに彼女はワラのように見えて、意外と鋼鉄製のワイヤーかもしれない。

段々と落ち着いてきた事で、少し彼女と距離を置きながら、視線を外す。
ついでに『シヴァルリー』も解除しておこう。

664夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/12/22(日) 03:14:28
>>663

「あっ、そう??
 まぁクロガネくんがそういうんだったら、ソレでイイかなぁ〜〜〜」

    ニヤッ

「――――じゃ、『コーショーセイリツ』ってコトで」

ほくそ笑んでいる表情は、まさしく『言っても聞かない』顔だ。
制止されてもされなくても、気が向けば勝手に動いてしまうだろう。
目の届く範囲に置いておく方が、却って安全かもしれない。

「てはじめに『トオリマ』のハナシをくわしくきかしてくれ。
 『イモウトがきられた』っていうハナシ。
 ソレをしっとかないと、
 もしナニかきいてもカンケイあるかどうかわかんないから」

早速、『情報共有』を要求する。
こういうのは一日でも早い方がいい。
『シチューはアツイうちにくえ』ってコトワザもあるコトだし。
イマつくった。
でも、シチューは1ニチねかせたほうがアジがしみてウマくなるぞ。

665鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/12/22(日) 21:22:06
>>664

「妹、朝陽(あさひ)の事件に関しては、あまり分からない」
「『夕方』『人混み』『不可視の刃』ぐらいだ」
「…事件が起きてから、もうそろそろ一年になるな」

腕を切られた妹の『通り魔事件』を簡潔に話しておく。もっとも、他には特に伝えられるものもない。
その場にいなかった自分が知るのは、妹のかすれた声による説明だけだ。
警察内部なら、もう少し情報があるのかもしれないが。流石に関係者でも、捜査情報は渡してくれないだろうな。
…警察と言えば。

「顛末は省くが、以前とある『漫画家』が作った物語の中に
 そのオレの妹が出ていた。実際に切られた箇所と、同じ腕を傷付けられた状態でな」
「とはいえ、その『漫画家』は既に意識不明だ。全身を切られている」
「その場に居合わせた『警察官』も犠牲になっている…そこからは辿れないだろうな」

暗に、国家権力であり、腕の立つ警察官でも『超能力』の前には立ち向かえない、とも示している。
やはり、これで彼女が引くとは思えないが、少しでも冷静な判断の助けになればいい。
短時間の間に結構喋った。またペットボトルの蓋を開け、茶を飲む。

666夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/12/22(日) 21:51:58
>>665

「『ユウガタ』、『ひとごみ』、『ふかしのヤイバ』…………」

スタンド能力なのは間違いないだろう。
これで彼が『刃物』に拘る理由も分かった。
そんなスタンド使いがいるとすれば、確かに危険だ。

「なるほど!!わかった!!
 ソイツはゆるせんヤツだな!!
 なんかつかんだらおしえよう!!」

「ダイジョーブだ。ムリはしない。
 それに、こうみえても、それなりにイロイロやってきてるし!!」

    フフン

鼻を鳴らして、得意気に胸を張る。
その『根拠』は不明だ。
しかし、どことなく自信の色が窺える。

「そういえばさぁ――――」

      ジィッ……
              バッ!

言いながら、カラフルなネイルアートの施された爪を眺める。
その直後、不意に両手が勢い良く伸ばされた。
指先が鉄の頬に触れたかと思うと、
そのまま顔を掴んで動かないように固定する。

「『オンナがニガテ』なのコクフクした??
 さっき、ちゃんとワタシのカオみれてたじゃん」

サングラス越しの瞳が、鉄を見つめる。
口元には笑いがある。
悪戯っぽい笑みだ。

667鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/12/22(日) 22:27:38
>>666

アリスの自信満々な言葉に、僅かに口元が緩む。
彼女の元気に溢れる立ち振る舞いは、聞いているだけでも面白いものだ。
地面を見つめながら、呟く。

「くれぐれも、『ハートの女王』に縛り首にされないようにな」
「でないと、オレも犯罪者になってしまうかもしれない」


>「そういえばさぁ――――」

彼女の言葉に、そちらの方を向く。その視線は手元に向けられていた。
綺麗な付け爪だ。いや、『ネイルアート』と言うらしい。妹が言っていた。
最近のは頑丈で、そう簡単に剥がれることはないんだとか。それにしても、女性の美に対しての努力には恐れ入る。
なにかと『手作業』がやり辛そうなイメージがあるが─────。

「ッ?!」

視界が急に固定された。アリスの顔が、至近距離にある。その綺麗な顔立ちを思わず直視してしまいそうになり、目を瞑る。

「いや、あれは、そのっ…」
「急なことで余裕がないと、忘れてしまうが…落ち着いてしまうと、逆に…ッ!?」

後ろに下がろうとする。でもそう言えば壁だったかもしれない。

668夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/12/22(日) 22:57:15
>>667

「あぁ〜〜〜!!あるよねぇ〜〜〜そーいうコトって。
 『かじだ!!』っていわれたから『マクラもってにげた』とかさ。
 あわててると、ニンゲンかわったコウドウをとったりするモンだし」

    ジッ…………

正面から見つめる。
目を瞑られたが、こちらの行動は変わらない。
そのまま視線を注ぎ続ける。

「じゃあさ――――いま、ドキドキしてる??」

距離を取られてしまった。
しかし、背中に何かが当たる感触があった。
どうやら、すぐ後ろは『壁』だったようだ。

「クロガネくんってさぁ、カッコいいよねぇ。
 ちかくでみると、けっこうキュートだし」

「なんか、ワタシもドキドキしてきたかも」

         ――――パッ

「おっとぉッ!!これいじょうちかづいてるとキケンだな!!
 ドキドキしすぎてシンゾーとまるかもしれない!!」

「あぶねーあぶねー」

          クスクスクス

ふと、気配が離れる感覚があった。
同時に、微かな忍び笑いが聞こえる。
目を開ければ、そこには笑顔の『アリス』がいる。

「じゃ、またねクロガネくん!!
 『ハートのじょおう』につかまらないようにきをつけて!!」

「――――バイバイ!!」

              タタッ

元気よく手を振り、軽やかな足取りで立ち去っていく。
『不思議の国』は続いていく。
今日も、明日も、明後日も――――。

669鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/12/23(月) 00:25:28
>>668

竜胆さんの特訓で少しは慣れたつもりだったが、全くだった。いや、気持ち的には少し成長しているはずだ。
だが、この距離は近過ぎる。剣道での『鍔迫り合い』に等しい。
いや、女性と剣を交えたことはないが。

「してるしているッ!」「キミが近付いてきた時からしているさッ!」

だから離してくれ、までは流石に情けなくて言えないが。
いや、既にこれは醜態と言っても過言ではないかもしれない。妹に見られたらなんと言われてしまうのだろう。

「・・・・・?!」

褒められているのは嬉しいが、彼女の事だからほぼ間違いなく揶揄われているのだろう。
それでも、こうして面と言われるとより鼓動が早くなるのを感じる。
いや、自分は目を伏せているのだが。

「いや、それを言うなら…」

どう考えてもこの少女の方が美人であると思うのだが。
しかし、それを口にする前に彼女が手を離し、身を引く気配を感じた。
目を開ければ、やはりからかうような彼女の笑顔だ。
全く、ここまで年下に遊ばれてしまうとは。
また視線を落とし、肩をすくめながら床を見る。

「こんな所で二人の少年少女が『不審死』だなんて、笑えないな」
「ああ、またなアリス。最後には、現実に帰って来られるように」

軽やかな足取りで帰っていくアリスを見送る。
肉体的には分からないが、少なくとも精神的に彼女は強い。好奇心に負けない程の、強い意志がある。
彼女が本気で手を組んでくれるなら、心強い仲間になるだろう。
ただ、それでも相手は『スタンド使い』だ。彼女もスタンド使いだったなら、もはや言うこともないが。

「まぁ、それは望み過ぎだな」

一人呟き、自分もペットボトルをゴミ箱に捨て、帰途につく。
『通り魔』に対しての収穫はなかったが、今夜は得難いものを手に入れた時間だった。

670鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/12/23(月) 00:26:02
>>669

671日下部『アット・セブンティーン』:2019/12/27(金) 22:41:08

年の瀬だ。
師走なんて言うけど私はゆっくり歩いている。
というか走れない。走りたくない。

         ノロ…

      ノロ…

だって、ケーキの箱が両手合わせて4つもあるから。
いくら私が器用でも、走ったらグチャグチャになるから。
グチャグチャでもお腹に入ったら変わらないけど。
でも、ケーキって見た目も込みの値段だと思うし。

ちなみに、これでもケーキバイキングより安上がりだ。
…………もちろん安かったら何でも買うわけじゃない。
ケーキだけでお腹いっぱいになるやつがやりたかっただけだ。
それにしても買い過ぎたかもしれない。ちょっと座るために、ベンチを探す。

672ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2019/12/27(金) 23:18:39
>>671

    バサバサバサッ

『鳥』が飛んでいた。
それ自体は特に珍しくもない。
しかし、その鳥は珍しかった。
羽毛の色は白と青と紫のトリコロール。
背中に生えた羽毛の一部が『天使の羽』のように広がり、
頭も『パーマ』を掛けたようにキレイな巻き毛だ。

           ――――ポスッ

「ックシュン!」

「ウフフ、ヒエマスワネ」

「モウホント サイキンハ スッカリ フユデ」

『ケーキの箱の上』に留まった鳥が喋っている。
鳥は多いが、『喋る鳥』は多くない。
この『ハゴロモセキセイインコ』も、その一種だ。

673日下部『アット・セブンティーン』:2019/12/28(土) 00:10:39
>>672

      ジロッ

「わ〜何何」

日下部は箱に乗った鳥を見る。
ますます走れなくなってしまった・・・

「喋る鳥……『インコ』だ」
「『ユニコーンカラー』みたいでかわい〜」

野生の鳥じゃない気がする。
ペット? 足輪とか付けてないだろうか?
『懸賞金』とか懸かってないだろうか?

              キョロ…

「んふ、インコさんは羽毛だから寒くないと思ってたよ」

     キョロ…

「でもね〜、私『タダ乗り』は良くないと思うなあ」
「料金代わりに、私のこと『ベンチ』まで案内してくれないかな〜〜〜」

「ほらぁっ、空から探してさ……」

そこまで頭いいかは分からないが・・・頭いい猫もいたし。鳥は頭いいらしい。

674ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2019/12/28(土) 00:40:31
>>673

色も形も野生の鳥には見えない。
かといって足輪などもなく、ペットでもないようだ。
懸賞金が出ているかは分からないが、
どこかから逃げ出したというのは外れでもないかもしれない。

   「ベンチ」 「アンナイ」 「ソラ」

拾い出された言葉を繰り返す。
それから首を大きく傾げ、鳥の目が少女を見つめた。
このような動きをするのは、そうした方が見やすいからだ。

   「ソレジャア アンナイ シヨウカナ」

        バササッ

インコが飛び立った。
ある方向を目指して飛んでいる。
その先には『ベンチ』が設置されていた。
『偶然』だろうか。
もし偶然だとしたら、『すごい偶然』だろう。

675日下部『アット・セブンティーン』:2019/12/28(土) 01:18:25
>>674

懸賞金に期待したのは、『見覚え』があるから。
どこかで見たような気がするんだ、この鳥。
何処で見たのかはまったく覚えてないんだけどね。

「わ〜、飛んだ」
「案内してくれるの? インコさん頭いいんだ〜」

           ノロ…

              ノロ…

「・・・あれ」

これは、驚いた。
なんとなく追いかけてみただけなんだけど。

「すご〜い。ほんとに頭いいんだ〜〜〜」

『鳥語』が喋れる人間がいる。
『人間語』を喋れる鳥もいるってことかな?      

もしかしたら全部偶然かもしれないけど、偶然でこんなことある?
目の前で起きたことを信じる。とりあえずは、ベンチに座りに行こう。

676ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2019/12/28(土) 01:43:31
>>675

    バサッ

偶然かもしれないし、あるいは『何か』あるのかもしれない。
とにかく、目的地には到着した。
舞い降りたインコは、ベンチの背もたれを止まり木にして着地する。

   「アタマ イイ?」 「アタマ イイ」

   「ソッカア ソウダヨネエ」

   「ノーミソ ノ オーキサ ミタコト ナイケド」

インコは、また喋っている。
何処かで聞いたような言葉かもしれない。
そうでもないかもしれない。

   「コンサルタント ノ ヨウナコトナドハ シテイマスガ」

   「ワリト ケーキガイイッテ ヨクキキマスヨ」

   「フフ ワタシッタラ オシャベリ スミマセンネ」

そうかと思うと、何処で覚えたか分からないような言葉を喋りだした。
どこまで賢いのかは分からない。
しかし、実際に目的地に着いたのは『事実』としてある。

677日下部『アット・セブンティーン』:2019/12/28(土) 02:24:13
>>676

「頭いいよ〜。もう人間と変わんないんじゃない?」
「脳みそは私より小さいだろうけど」

           クルッ

「『使い方』が良いのかな〜〜〜?」

座ってから、振り向いて『インコ』を見る。

既視感。既知感。
『見たことない』はずなのにどこかで知っている。
『聞いたことのある』ような言葉を使っている。

「えー。今『ケーキ』が気になるって言った?」
「『ケーキ』」「もしかして『景気』?」「『ケーキ』でしょ」

どこかで聞いた言葉を『使っている』
ただ発してるだけじゃあないんだ。

         ガサ…

「や〜、まいっちゃうなあ」

袋を一つ、少しだけ開く。
このインコは頭が良い。
価値が無い事を言ってるとは思えない。

「んふ……インコってケーキ食べるの? 太りすぎて死なない?」
「私ね、動物ってあんまり飼ったことないから、心配しちゃうな〜」

678ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2019/12/28(土) 02:55:59
>>677

『ケーキ』と『景気』。
口に出すと似ている言葉だ。
言葉の前後から判断すると、
インコが口にしたのは後者の意味だろう。
しかし、
このタイミングで言うというのは何か意味があったのかもしれない。
あるいは、やはり単なる『偶然』なのだろうか。

        チラ
             ――――チラッ

インコが袋の中を覗き、また覗いた。
いわゆる『二度見』というやつだ。
用心深く警戒しているのかもしれない。
その辺りは野生の動物らしさがある。
だが外見は野生らしくなく、どこか『文明的』な雰囲気が漂っていた。

      「ニンゲン」 「ケーキ」 「タベル」

      「ルナ ソレ ワカンナクハナイカモ」

    「ギャクニ ワカンナイコトモ ダイジナ キガスル」

     「ナンカ ソレコソ オカシナハナシ ダケド!」

          「ププ ウケル!」

成立しているのかいないのか、微妙な答えが返ってくる。
そう、『答え』が返ってきた。
客観的には、そのように見えなくもない。
内容は別として。
『どこで聞いたか』は不明だが、
やや『軽いノリ』のイントネーションのような気もする。

679日下部『アット・セブンティーン』:2019/12/28(土) 03:54:40
>>678

「??」

ルナ、という人間のことは一応覚えはある。
喋り方も似ている……『言葉を覚えている』
それを『使う』……この言葉にも価値があるはず。

「人間はケーキも食べる」
「インコさんも食べられるかは分かんない?」
「分かんないことが大事」「んん……」
「食べたことないけど食べてみたいってこと〜?」

      ジ…

「それって不安〜。食べて急に倒れたりしそうだよお」

もう会話をすることに躊躇はない。
このインコは絶対に会話ができている。
それこそ、鳥語と人語の間で翻訳をするレベルで。

「どうしよっかな、私責任とか取るの嫌い〜」
「はっきりしないのに重たいし……」
「ちょっとだけなら大丈夫かなあ?」

      カパ

ケーキのふたを開ける。
この箱は売れ残りのフルーツタルト。

「フルーツなら野生にもあるし大丈夫かな〜」
「インコさぁん、ちゃんと食べられそうなの選んでね」

こんな珍しそうな鳥の責任とかは取れない。
なので、あくまでも鳥の方に選んでもらうことにした。

680ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2019/12/28(土) 17:27:16
>>679

普通、動物と人間は会話が出来ない。
それは当たり前のことだ。
しかし、世の中には何事にも『例外』はある。
このインコが、その一つかは定かではない。
ただ、そう思われてもおかしくない程度の『賢さ』はありそうだ。

      「カンガエゴトカイ オジョーサン」

         「ソレハ タイヘンダネ」

 「アナタノヨーナ ヒトガ キズヲオウナンテ カナシイコトダ」

口調と声色が変わった。
今度は先程よりも落ち着いた色合いだ。
『言葉の主』は『ルナ』よりも幾つか年上の女性らしい。

     クリンッ
             ジッ

首を大きく傾げながら、箱の中身を見つめる。
タルトは自然界に存在しないが、フルーツは存在する。
インコの視線が、フルーツタルトの天辺に注がれる。

           ヒョイッ

やがて、インコが『ブラックベリー』を持ち上げた。
嘴を器用に使い、『柄』の部分を銜えている。
こうして見ると、なかなか絵になる図かもしれない。

681日下部『アット・セブンティーン』:2019/12/28(土) 23:26:00
>>680

「あ〜食べた」
「インコさんが勝手に食べたんだし、いっか〜」
「考えごとはなくなったよ」

         シュッ

ポケットからスマホを出す。
絵になる光景は『記憶』にしか残らない。
写真にすればいつまでも残るものになる。

「『モデル料』はタダでいいよねえ?」
「『案内』は『箱』に乗った運賃〜」
「『ケーキ』が『モデル料』って考えよう」

「インコさんにそこまでは分かんないかな? どうかな?」

「撮るよ〜」

――――絵になる光景を、画にする。

682ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2019/12/29(日) 00:02:49
>>681

写真を撮られた。
しっかりカメラ目線で写っている。
なかなか良い画だ。

    バササッ

チェリーを銜えたまま、背もたれから座面に舞い降りる。
そこで一旦チェリーを置いた。
さすがに、背もたれでは食べづらかったらしい。

      ブンッ
          ブンブンッ

チェリーを前にしたインコが首を上下に振る。
『ヘッドバンギング』のような動作。
今の感情を表現しているようだ。
犬や猫ほど分かりやすくはない。
ただ、少なくとも、マイナスの感情ではなさそうに見える。

     「ソッカソッカ ソレハソウダヨネ」

   「オシゴトダカラ アイマイナノハ ヨクナイシネ」

      「アトデ モメタリシタラ イヤダモン」

         ツンッ ツンッ

どこかで聞いたかもしれない言葉。
それを口に出すと、チェリーを啄ばみ始めた。
急に倒れたりもしそうになく、大丈夫そうだ。

683日下部『アット・セブンティーン』:2019/12/29(日) 00:38:08
>>682

「インコさんは私みたいなことを言うんだねえ」
「というか、それ、私がどっかで言ったことだ」
「どこだっけな〜」

カメラに映ったインコを見つめる。
それから、本物のインコを見つめる。
既視感。既視感。……色。

色合いがどこかで見たんだ。

「あっ、あ〜。わかった」
「インコさんさあ……『ハーピーさん』だ〜」

      ニタァ…

記憶の中にある名前だ。
インコを見ていたら頭の中に浮かんできた名前。

「んふふ」「ハーピーさんの『仕事仲間』なんでしょ〜?」

鳥語と人語の通訳が出来る人の、鳥側の仲間。
野鳥だけじゃなく、こういう固有の鳥もいるんだろう。

「『色』似てるしねえ。というかハーピーさんが似せてるのかな」
「そこんとこ、どうなのかな〜。んふ、別にどっちでもいいけど」

684ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2019/12/29(日) 01:10:52
>>683

チェリーを啄ばむインコと、『ハーピー』と名乗った女。
確かに色合いが似ている。
それも『当然』だろう。

    ジッ…………

食べるのを中断し、少女を見上げる。
『ハーピー』は人間社会に紛れ込むための名前と姿。
そして、ここにいる『インコ』こそが、その『正体』なのだ。

      「インコサン」
             「ハーピー」
                    「シゴトナカマ」

少女の言葉を部分的に抽出し、繰り返す。
『ハーピー』の下には、多くの鳥が集う。
今の自分は『その一羽』――そういうことにしておこう。

         ツンツン

そして、またチェリーに集中し始める。
そうする内に、あらかた食べ終えていた。

        「♪♪♪」

食事を終えたインコは、『鳥本来の声』を発した。
『満足』したようだ。

685日下部『アット・セブンティーン』:2019/12/29(日) 01:44:09
>>684

「やっぱり? んふふ、私ね、最近冴えてるんだ〜」
「調子がいいんだよ、すごく」

         パタン

「頭の中も、体の中も〜」
「『数字』でもわかるくらい調子がいいんだよ」

ケーキの蓋を閉じる。
タルトのフルーツがずいぶん減ってしまった。
その分は『恩』とか『他人の喜び』とか・・・
目に見えなくて、分からないものになってしまった。

まあ、たまには、そういうこともある。
私の喜びだってある・・・それは分かるものだ。

「よいしょっと〜。行こうかな」
「インコさん、私そろそろ帰るね」

「ハーピーさんにね、『日下部さんにケーキ貰った』って伝えといて〜」

そういうわけで、ケーキを持ってベンチから立ち上がり、その場を去った。

686ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2019/12/29(日) 02:04:28
>>685

       「アッ ア〜 ワカッタ」

    「『クサカベサンニ ケーキ モラッタ』」

          「ンフフ」

インコが、少女の言葉を繰り返す。
おそらくは『伝わる』だろう。
明確な根拠こそないが、そう思わせる『雰囲気』があった。
『恩』は目に見えないが、
『恩返し』は目に見える形で戻ってくるかもしれない。
そうだとするなら、きっと意味のないものではない……はずだ。

          「ヨイショット」

     バサァッ

少女が立ち去ったベンチで、おもむろに翼を広げる。
人間のように――あるいは『ハーピー』のように、
物を持つことは出来ない。
その代わりに、空を自由に飛ぶことが出来る。

       「ワタシ ソロソロ カエルネ」

                     バササササッ

『別れの挨拶』を残し――――冬の空に飛び立つ。

687百目鬼小百合『ライトパス』:2020/01/14(火) 22:33:22

    フゥゥゥ…………

歓楽街の片隅で、中年の女が煙草を吹かしている。
外見から窺える年齢は四十の半ば程。
短く切り揃えたベリーショートの黒髪、白いパンツスーツ。
長身で、口元にはホクロがあった。
特に何かするでもなく、静かに煙を吐き出している。

        バッ!

不意に、一台の自転車が飛び出した。
乗っている男の手には、女性物のハンドバッグがある。
一人の女性が、何事か叫びながら自転車を追いかけていた。

        ドギュンッ
                 シュバッ

自転車が女の近くを通り過ぎる瞬間、『それ』は現れた。
両肩に『白百合』の紋章を持つ『人型のスタンド』だ。
その手に携えた『警棒』が、目にも留まらぬ速さで、
男の背に叩き付けられる。

                  ――――ガッシャァン!

男は体勢を崩し、自転車が倒れる。
あれよあれよという間に、『引ったくりの男』は取り押さえられた。
ちょっとした騒ぎが起きたが、警察が男を連行した後は、
それも落ち着いてきた。
いつの間にか、女の傍らから『スタンド』は消えてる。
煙草を指の間に挟み、女は煙を吐き出していた。

    フゥゥゥ…………

688常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』:2020/01/18(土) 23:17:55
>>687
「うおおおおおおおおッ!!」
「すごかったです!!!!今の!!!!!」

 『男』の声。

「スゴイ正義感です!!!!尊敬いたしますよ俺!!」

『筋骨隆々な、フリルでフリフリの服装、スカートを履いた男』
…が『白百合』に話しかける。

689常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』:2020/01/18(土) 23:25:54
>>688
訂正
『白百合』→『小百合』

お名前を間違えてしまいました。大変申し訳ありません

690百目鬼小百合『ライトパス』:2020/01/18(土) 23:59:14
>>688

チラ……

(『見えていた』――――ようだね)

『奇怪な男』の方に視線を向け、少し考える。
『同じ力を持つ人間』か。
それは良いとしよう。
しかし、この『格好』は、どういう事だ?
常識って尺度に当てはめると、
まず『不審者』なのは間違いないだろう。

(まぁ……『通報』する必要は無いとは思うがねえ)

確かに怪しい身なりだが、『それだけ』だ。
少なくとも、今の時点では。
もっとも、これから何かある可能性は否定出来ないが……。

「それはどうも。大した事はしてないよ」

「たまたま目に付いたから手を出しただけさ。
 どうも口より先に手が出るタイプでね」

『スタンドを持っている人間』ってだけなら、別に問題じゃあない。
『ただの不審者』も……まぁ、大きな問題にはならないとしよう。
しかし、『スタンドを持っている不審者』となると、
何かしらの問題になりかねない。

「ところで――――アンタも『御同輩』って事で良いのかい?」

だから、ちょっとばかり探りを入れてみようという気になった。
この男が危険な人間かどうか。
『昔の癖』という奴かもしれない。

691常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』:2020/01/19(日) 00:20:23
>>690

  「同輩…………?」

  「………!!!!!  はい!!!」

『白と黒のフリフリの服装』の男はしばし考え込んだ後、
何か思い当たったようだった。

 「そうですよ!!俺も
  ―――――――――『 家政婦 』 です!!!!!!!」

…何か思い当たったようだった。

 「納得です!その力強さ!!そして正義感!!!」
 「あなた様も『メイド』でしたか!!!」
 「せっ『先輩』とお呼びしてもよろしいでしょうか俺!!!」
 「今日は『制服』は着られていないんですか!!!」
 「あッ いえ すみません!!お休みの日でしたか!!!!!」

男の左目は『レースの眼帯』で覆われていた。
残った右目を子供のようにキラキラ輝かせ興奮している。

692百目鬼小百合『ライトパス』:2020/01/19(日) 00:42:48
>>691

「ああ、ええっと…………」

男の言葉を聞いて、思わず煙草を取り落としそうになった。
『俺も』と言ったのか?
つまり、この男は自らを『家政婦』だと自称している事になる。

「――アンタ、『家政婦』なのかい?
 まぁ、その格好を見れば分かる事か……。
 我ながらバカな質問だったね」

口ではそう言いながら、頭の中では次の言葉を練っていた。
一見した所、この怪しい外見はともかく、
他人に危害を加えようとする人間には見えない。
まともな神経なら、この格好で街を歩かないとは思うが。

「けど、ただの家政婦って訳じゃあないんだろうね?
 例えば、『こんな風』にさ」

           ――――ドギュンッ

『白百合』の紋章を刻んだスタンドが、再び現れた。
先程と同じく、その手には『警棒』が握られている。
さっき見た時とは異なり、その長さは短かった。

「こっちが出して見せたんだ。
 出来れば、アンタのも披露して貰えると嬉しいねえ」

害はなさそうに見えても、『スタンド使いの不審者』だ。
念には念を入れて、一応の確認をしておいてもいいだろう。
今は警官ではない身だが、『街を守る』という意志は変わらない。

693常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』:2020/01/19(日) 01:24:32
>>692

「はい!!!!!現代は多様性の時代!!!!」
「男の家政婦がいたってよいではありませんか!!!」
「『たまに』変な目で見られますが、メゲすにやっております!!」

そういうわけで常原ヤマトは家政婦である。


>  ――――ドギュンッ

「そう!!!それです!!!」
「『先輩』のはお花の模様が入ってるうえ、
 強そうで『カワイイ』ですよ!!!」
「俺は…俺のは」

   モコ  モコ

男の足元から、『三つ編みの女の子を模ったヌイグルミ』
という感じの外見の『ビジョン』が出現する。
大柄な男に反して、スタンドの背丈は小学生くらいだ。

「こんな風で『カワイイ』感じですよ!」
「非力ではありますが、仕事には役立てております!!!」

694百目鬼小百合『ライトパス』:2020/01/19(日) 01:48:22
>>693

「ま…………『そういうもの』かもしれないねえ」

色々と言いたい事はあったが、敢えて口には出さなかった。
女性の社会進出などと言われて久しい時代だ。
『その逆』があっても不思議ではない――のだろうか?

「おや、随分と可愛らしいじゃないか。
 言われてみれば、『家庭の仕事』には似合いの姿だね」

ただ、目の前の男が『家政婦らしい』とは思わないが……。
しかし、スタンドは『精神の象徴』だ。
見てくれはともかく、内面はそうなのかもしれない。

      ライトパス
「コイツは『正 道』――そう呼んでるよ。アンタのは?」

「いや、『アンタ』ってのも何だねえ……。
 良ければ、名前を聞いても構わないかい?」

「アタシは『小百合』だよ。小さい百合と書いて小百合さ。
 ほら、ここに咲いてる『花』と同じだよ」

煙草の先で、傍らに立つスタンドを指し示す。
両肩に刻まれた紋章。
それは、本体である自身と同じ名前の花だ。

695常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』:2020/01/19(日) 02:24:42
>>694
「百合でございますか!それに『警棒』!!なるほどカワイイです!!!」

男はキラキラした目で『小百合』と『ライトパス』を交互に見て、
ときおり『カワイイ!』と発している。
こいつにとっては小百合もカワイイらしい。

 「俺は『常原 大和(ツネハラ ヤマト)』です!!!
  男らしい名前をという事で、父が付けた名ですよ!!!」

 「こっちは……『ドリーム・ウィーバー』。夢を編むもの」
 「そう『名付けてもらった』のですが、気に入っております」

常原は自分のスタンドを見やる。
『女の子の見た目』ではなく『女の子のヌイグルミを模倣した見た目』、
なので、手足や目、口の位置が変ではある…。
まあ、それ込みでも自分らしいな、と常原は内心思った。

 「俺はご主人様、奥様、お坊ちゃまお嬢様、その家庭を」

 「ひいては『夢』を守り、つなぎ留める」

「……と、志すことにしております。
 先輩がたに比べれば、俺なんて若輩者でお恥ずかしい限りですが!!!!!!」

696百目鬼小百合『ライトパス』:2020/01/19(日) 02:55:35
>>695

『名前』を聞いたのは『万一』を考えたからだった。
つまり、『スタンド使いの不審者』によって、
『何か事が起きた時』の手掛かりにするためだ。
勿論、必要でなければ、それに越した事は無い。

「ハハッ、『可愛い』だなんて言われたのは何時ぶりかねえ。
 忘れかけてた娘時代以来のような気がするよ」

正直、褒められて悪い気はしない。
こうして年を食った今、
そんな台詞を言ってくれる相手がいる筈も無い。
昔は昔で、『鬼の小百合』などと陰口を言われていた。
仕事一筋で生きてきた自分にとっては、
それも一つの勲章のようなものだ。
きっと自分は死ぬまで、その生き方を続けていくのだろう。

「『常原大和』、『ドリームウィーバー』――立派な名前じゃないか。
 その志も大したもんだよ。
 胸を張って、自分の目指すものを口に出来るっていうのはね」

「『たまに変な目で見られる』って言ったね。
 自分の意思を貫き続けるってのは大変な事だろうけどさ」

    ポンッ

「でも、ま……頑張りなよ。
 アタシなんかが偉そうに口出しする事じゃないと思うけどね」

「いや、アタシも『似たような経験』はあるもんでねえ。
 ついお節介な事を言いたくなっちまったのさ。
 勘弁しておくれよ」

大和の肩を軽く叩き、砕けた調子で笑いかける。
かつて自分は『警察官』であり、今は『警備員』だ。
そうした『男社会』の中でやっていくのは決して楽な道では無かった。
男でありながら家政婦を名乗るというのも、
逆ではあるが似たようなものではないだろうか?
だからこそ、目の前の奇妙な男――大和に、
何となく『親近感』のようなものを覚えたのかもしれない。

697常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』:2020/01/19(日) 03:42:22
>>694
「ありがとうございます!!!!光栄ですよ俺!!!」
「今後とも、男、常原ヤマト、メイドとして邁進いたします!!!!」

 そうかあ…小百合先輩も苦労してたんですね
 昔のメイド史は詳しく知らないけど、
 現代に比べて大変なことも多かったって『家政婦の師匠』も言ってたからなあ)」
 『メイド』って概念が普及しきってなかった時代とかあるでしょうし…

…などと常原は考えた。
目の前の女性は『同業者』だ、と完全に思い込んでいる。

  「…失礼でなければ、ひとつ伺いたいのですが」

  「『正道』とはいったい何でしょうか?」

「『完璧な家事』『カワイイ』『愛』『正義』」
「など、色々あるでしょうが……あっいえ!!失礼!!!!」
「変なことを聞いてしまいましたよ俺!!!!すみません!!!!」

698百目鬼小百合『ライトパス』:2020/01/19(日) 06:16:28
>>697

「いやいや、それは尤もな質問だよ。
 だけど、なかなか難しい質問でもあるねえ」

『正道』とは何か。
以前、同じような質問をされた事がある。
それは、自分が『刑事』だった時だ。

「単に言葉の意味を答えるなら、
 『人として在るべき姿』って事になるだろうけどね。
 アタシの考えで言うなら、『自分に嘘をつかない事』さ。
 だから、アタシは自分が正しいと思う事を言うし、
 正しいと思う事をする」

「『自分の正しさ』と『他人の正しさ』が食い違うのは珍しくない。
 この世に『絶対』と呼べるものなんて、
 そうそう見つかるものじゃあないからねえ。
 それは仕方ない事さ」

「でも、『自分が考える正しさ』と、
 『自分の中から出る言葉や行動』は、
 一致しているべきだと思ってるよ。
 『自分自身の心と食い違う』っていうのは苦しいもんだからねえ。
 勿論この世の中には、
 『自分が正しいと思う道を進む』のが難しい場合もあるけど、
 『自分で正しいと思えない生き方』をするよりは、
 良いんじゃないかねえ」

「もし、それが出来なくなるようなら――――
 舌を噛んで死んだ方がマシだね」

そう言って、『正道』の名を冠する自身のスタンドを一瞥する。
自らの『精神の象徴』。
『自分自身の正道』を貫く意志の象徴でもある。

「アタシから言えるのはそんな所さ。
 何かの足しにでもなれば幸いだよ
 我ながら、ただの小言になってるだけの事も多くてねえ」

699常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』:2020/01/19(日) 21:42:19
>>698
「自分に嘘をつかない」
「正しいと思う道を進む」

眼帯メイド筋肉男はしばし、その言葉を噛みしめた……


 「――――ありがとうございました!!」
 「俺も!自分がすべきとおもう道を、
  まっすぐ突き進みますよ、俺!」

どこかを見やる。『引力』を感じる。

 「『家事』を!!!!しなければいけません!!!」
 「お宅に行かねばなりませんよ!!!!」
 「俺は俺の『メイド道』を突き進みます!!!!!」

常原ヤマトは『流れの家政婦』である。
己が『なんとなく引力を感じ』ればその家庭に向かい、
なにがなんでも家事をする。そのためには『不法侵入』をも辞さない、
物盗りも殺しもしない、しかし『住居侵入犯』ではある。
だが、それは真っすぐな愛ゆえの行為。悪気はないのだ……

 「『小百合先輩』!!!」
 「貴重なお時間いただき感謝いたします」

 「―――いつか『メイドの引力』が俺たちをふたたび引き寄せたら!!
  またその時はお話を伺いたいです!!」

常原は大きくお辞儀をした後、走り去ろうとする――

700百目鬼小百合『ライトパス』:2020/01/19(日) 22:09:54
>>699

「――――ま、達者でねえ」

煙草を持つ手を軽く振り、謎の男・常原大和を見送る。
やがて、一つの考えが頭に浮かんだ。
つい励ましてしまったが、これで良かったのだろうか?

    ゴソ

    「『ツネハラ ヤマト』……」

           「『ドリーム・ウィーバー』……」

                      サラサラサラサラ

ペンと手帳を取り出し、咥え煙草で名前を書き入れる。
もし――もし万が一『何かやらかす』現場に出くわしたら、
その時は『手』を出さねばならない。

       フゥゥゥゥゥ――――ッ…………

               ライトパス
それが百目鬼小百合の『正 道』だ。

701神谷『デミリタライズド・ゾーン』:2020/02/08(土) 22:22:27
「うおっさむっ……」

冬の寒空の下、ショートパンツに黒タイツという出で立ちの少女がいた。
黒縁の眼鏡をして寒そうに立ち止まっている。

「こっ、今年の冬……暖かいんじゃなかったか……? 寒いもんは寒いぞ……?」

「あれか? 暖冬暖冬言われ過ぎてここに来て本気出しちゃったか? 夏休み終盤かよ……」

寒そうにしながら辺りをキョロキョロ見渡していた。
何かを探しているのだろう。

「や、ヤバすぎ……」


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板