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【場】『 歓楽街 ―星見横丁― 』

1『星見町案内板』:2016/01/25(月) 00:01:26
星見駅南口に降り立てば、星々よりも眩しいネオンの群れ。
パチンコ店やゲームセンター、紳士の社交場も少なくないが、
裏小路には上品なラウンジや、静かな小料理屋も散見出来る。

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                 ミ三ミz、
        ┌──┐         ミ三ミz、                   【鵺鳴川】
        │    │          ┌─┐ ミ三ミz、                 ││
        │    │    ┌──┘┌┘    ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
        └┐┌┘┌─┘    ┌┘                《          ││
  ┌───┘└┐│      ┌┘                   》     ☆  ││
  └──┐    └┘  ┌─┘┌┐    十         《           ││
        │        ┌┘┌─┘│                 》       ┌┘│
      ┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘     【H城】  .///《////    │┌┘
      └─┐      │┌┘│         △       【商店街】      |│
━━━━┓└┐    └┘┌┘               ////《///.┏━━┿┿━━┓
        ┗┓└┐┌──┘    ┏━━━━━━━【星見駅】┛    ││    ┗
          ┗━┿┿━━━━━┛           .: : : :.》.: : :.   ┌┘│
             [_  _]                   【歓楽街】    │┌┘
───────┘└─────┐            .: : : :.》.: :.:   ││
                      └───┐◇      .《.      ││
                【遠州灘】            └───┐  .》       ││      ┌
                                └────┐││┌──┘
                                          └┘└┘
★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
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558成田 静也『モノディ』:2019/02/02(土) 22:50:55
>>557

彼女の素っ頓狂な受け答えに少し面くらいながらも彼女に質問に答える。

「ああ、チャーハンのグリーンピースか…好きだよ。俺の苦手は納豆だけさ」
「それとキミ耳が良いんだね。オレも耳の良さには少し自信があるんだ」

何気ない会話で間を繋ぐ。そうでもしないとまた彼女があの細く暗い裏路地に
フラフラと迷い込んでしまうように思ったからだ。

559夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/02/02(土) 23:33:26
>>558

「ほうほう、わたしは『あまなっとう』がスキだぞ。たべる??」

          ゴソゴソ

タイミングが良かったのか、ポケットから『甘納豆』を取り出す。
それを少年に向けて差し出してきた。
自分でも手に取って口に運んでいる。

「まぁな!!わたしのミミのよさは『セカイイチ』だし??
 『このマチのなかでのセカイイチ』ってイミだけど!!」

「サイテーでも『チョージンテキ』なぐらいにはジシンあるね〜〜〜。
 とおくでおとした『コゼニのしゅるい』もあてられるぜ!!」

何かしらの根拠があるらしく、やたら豪語している。
もしくは、単に適当な事を言っているだけかもしれない。
しかし、さっき少年の呟きを聞く事ができていたのは事実だ。

「――――あ、つぎのカドはミギにまがって」

560成田 静也『モノディ』:2019/02/03(日) 00:16:19
>>559

もらった甘納豆を飲み込みながら彼女のスタンドについて考える。
ひょっとしたら自分と似たような能力なのでは?
試してみる意味と『セカイイチ』という言葉に何か感じるものもあり、
オレの能力…『モノディ』を自分と一瞬だけ重ねるように発現させ周囲を探った後、
彼女にちょっとした『賭け』を吹っ掛けてみる。

「ふーん…『セカイイチ』ね…じゃあさ、ちょっとした賭けをしてみないか?」
「キミが連れて行こうとする店に着くまでの道の曲がり角でに何人の人とすれ違うかを当てるんだ」
「勝った方がこの先にある店のメニューの一つを奢るってのはどうかな?」
「もちろん『セカイイチ』でも調子の悪いせいで負けてしまうかもしれないから賭けに乗らなくてもてもいいですよ?」

我ながら安い挑発だと思う。
だが趣味のミステリー好きからか、それとも最初にあったときに感じた彼女へのシンパシーからか
彼女のスタンドを知りたいと不躾ながらに思ってしまっていた。
この勝負次第で何か能力のヒントがつかめるかもしれない。何よりも自分の一番の特技で負けたくない。
そのような幼稚な対抗心があった。

561夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/02/03(日) 00:57:44
>>560

「――『かけ』ぇ〜〜〜??」

少年の提案を受けて、ニヤリと不適に笑う。
相手の方にも相当の自信があるのだろう。
しかし、『耳の良さ』に関しては同じくらいの自信を持っているのだ。

「なんとぉ〜〜〜??『チャレンジャー』とうじょ〜〜〜う!!
 この『アリス』にショウブをいどむとは、かなりジシンがあるな??
 『アリス』にチョーシのわるいトキなどない!!いつでもパワーぜんかいだ!!」

「――――やったろーじゃん」

よって、賭けに乗った。
自身のスタンド――『ドクター・ブラインド』は、視覚以外の『四感』が『超人的』だ。
その中の一つである『超人的聴覚』に意識を集中させる。
足音を聞くことで、曲がり角の向こうから近付いてくる人数を特定する事は容易い。
もちろん、それは同等の『超聴覚』を持つ『モノディ』も同じことだ。

「――よし、わかった」

「じゃあ、どうじにはっぴょうする??」

「『にんずう』は――――だ!!」

自信満々に、『超人的聴覚』で導き出した答えを告げる。
そして、『モノディ』と『ドクター・ブラインド』の『聴覚』の精度は『同等』。
だから、二人の答えが『同じ』になったのは当然の結果だった。

「――――おん??」

呆気に取られたような表情で、少年の顔を見つめる。
自分が当てたのは当然として、相手も同じように当ててくるとは……。
予想外の結果に、驚きを隠せなかった。

「つまり??」

「『ひきわけ』か??」

562成田 静也『モノディ』:2019/02/03(日) 01:15:56
>>561

「みたい…ですね…しまった引き分けの時のことを考えてなかった…」

熱くなり過ぎて引き分けの時にどういう処理なのかを全く考えていなかった。
なんと子供じみたことか。恥ずかしくなって顔を赤面させてしまう。

「とりあえず…どうするかは店についてからってことで…ね…?」

まあこの恥ずかしさを対価に彼女の能力も『モノディ』と同じ何かしらの超感覚である
と能力のおおよその見当がついたので良しとしよう。

そう思いこむことでいまさらながら遅すぎる体面を保とうとしていた。

563夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/02/03(日) 01:35:19
>>562

「よし、『ドロー』のばあいは『ワリカン』だな!!」

そういうことにしたらしい。
断ることはできるだろうし、断ったとしても機嫌を損ねることはなさそうだ。
そんなこんなで二人は店に着いた。

「ココ、なかなかイイみせなんだ〜〜〜。
 『アリス』のオススメスポット『ナンバー75』!!
 あじヨシふんいきヨシで、おねだんもリーズナブル。
 『ツウごのみ』のかくれがてきレストラン!!」

辿り着いたのは一軒の『洋食屋』だ。
『隠れ家的』という紹介の通り、確かに分かりにくい場所にあった。
こじんまりした小さな店で、知る人ぞ知るという趣きも感じられる。

564成田 静也『モノディ』:2019/02/03(日) 14:11:20
>>563

「おおっ…」

思わず言葉に出てしまった。
何しろ目の前の店はまさしくオレが求めていた
落ち着ける場所の条件を満たしていたからだ。

クイッ…クイッ…

彼女が笑顔で呆けている俺を手真似にしている。

彼女に誘われ店の中に入ってみると…
完璧だ。落ち着いた照明と音楽。清潔感ある内装。香ってくる料理のいい匂い。

『いらっしゃいませ、お席へどうぞ』

ウェイターの人も厨房の人もとてもやさしそうだ。

『メニューをどうぞ』『お決まりになったらお呼びください。』

接客もとてもいい。特に声がやわらかなのが特にいい。

「キミは何を頼む?オレはこのコーヒーとセットになっている
Bランチを頼もうと思うんだが…」

彼女に聞こうとした時、まだオレはまだ彼女に名前を聞いていないし、
自分の名前を名乗りもしていないことに気が付いた。
ここまで至りに尽くせりで「キミ」呼ばわりは失礼だ。
自分のあまりの浮かれっぷりに少し恥ずかしくなりながら名前を聞いてみた。

「ああ、すまない…まだ名前を聞いていなかったね…オレは成田静也っていうんだ」
「キミの名前を教えてくれないかい?」

565夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/02/03(日) 17:12:47
>>564

「ところでさぁ〜〜〜。
 トシゴロのダンジョが、ふたりでレストランにはいってショクジするコトを、
 なんてよぶかしってる??」

        ニヤッ

「――――『ひるメシ』ってよぶんだよ」

『Bランチ』はハンバーグとコロッケのセットのようだ。
値段は980円。
ライスとスープも付いている。

「――あ、きまった??
 フフフフフ、わたしはコレだ!!ボリュームまんてん『Dランチ』!!
 ココにきたら、コレをたのむのが『ツウ』ってもんよぉ〜〜〜」

『Dランチ』のメインはステーキだった。
ハーブとオリーブオイルに漬け込んで鉄板で焼いたサーロインステーキ。
写真で見る限り、かなり食べ応えがありそうなサイズだ。

「おっと〜〜〜??さては、この『アリス』にヒトメボレしたな??
 シズナリくんはラッキーだぞ。いま、わたしにコイビトはいない!!
 さぁ、くどいてモノにするチャンスだ!!」

        ニヤニヤ

少年の態度を見て、笑いながら茶化すように煽る。
しかし、本気とは思えない。
おそらくは、ただの冗談だろう。

「トモダチからは『ユメミン』ってよばれてる。アリーナでは『アルカラ』。
 だいたいは『ユメミガサキ』か『アスミ』ってよばれる。
 『アリス』ってよんでもいいよ」

「――どれでもスキなのをえらんでくれ!!」

話している途中で、鼻をヒクヒクと軽く動かす。
厨房からは良い香りが漂ってくるが、細かく嗅ぎ分けることはできない。
『普通なら』だが――。

「きょうの『Bランチ』の『つけあわせ』は…………
 『ベイクドポテト』に『ザワークラフト』、『フライドオニオン』だな」

付け合せは日替わりで、何が出てくるかはメニューに書かれていない。
まもなく『Bランチ』が運ばれてきた。
そこには、言った通りの付け合せが乗せられている。

566成田 静也『モノディ』:2019/02/03(日) 17:42:31
>>565

彼女のジョークで飲んでいたお冷を気管に入れかける。

「ゴホッ!ゴホッ!」

改めて水を流し込み一息ついた後に
彼女の呼び方について思案する。

「ふむ…」

あまり馴れ馴れし過ぎず、尚且つ他人行儀ではない呼び方…

「『アスミさん』って呼んでもいいですか?」

そう彼女に尋ねた後に自分の目の前にやってきた皿を見る。

うん、少しボリュームがあり過ぎる気もするが今日みたいな日にはガッツリといくのも
いいものだろう。ハンバーグも手ごねでソースはおそらく自家製だろう。
コロッケは揚げたてで油のいい匂いがする。付け合わせもスープもおいしそうだ。やはりここはいい店だ。

ここに連れてきてくれたアスミさんには感謝しかない。

それと同時に聞き捨てならないこともあったがその件は食後でいいだろう。

567夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/02/03(日) 19:34:26
>>566

「そういえばさぁ、さっきの『アレ』だけど――――」

       ムッシャッ ムッシャッ

「『アレ』をあてたのは、わたしと『おなじやりかた』でしょ」

「――ちがう??」

食べやすく切り分けられたステーキの一片を口に運びつつ、声をかける。
『アレ』というのは先程の『賭け』のことだろう。
『同じやり方』というのは、『耳の良さ』のことを言っているようだ。

「ウチらのチカラって、チョットにてるのかもね〜〜〜」

          ムッシャッ ムッシャッ

料理は次第に減っていく。
食べるペースは、それなりに早い。
街を歩き回っていたのか、結構ハラが減っていたらしい。

「――――『ナマエ』は??」

尋ねたのは少年の名前ではなく、スタンドの名前だった。
『アリス』は『ウサギ』を追う者。
そして今は目の前の少年が、『アリス』である自分にとっての『ウサギ』なのだ。

568成田 静也『モノディ』:2019/02/03(日) 20:18:48
>>567

コロッケを切り分けながら考える。
スタンドの名か、最初にもらった時に自分のスタンドは
極力他人に話さないのが不文律と聞いたがスタンド名くらいなら大丈夫だろう。

「――――コイツの名前は『モノディ』って言いうんだ。」
「オレもアスミさんとの会話でもしかしたら同じものかもとは思いましたがね」
「それは流石にオレのうぬぼれだったみたいです」

バツの悪そうに苦笑し、切ったコロッケを口に運ぶ。
サクサクした衣の中にホクホクのジャガイモとひき肉が引き立て会っていておいしい。

ハンバーグに至っては肉のジューシーさとほろ苦さが味を引き立てるソースのハーモニーで
箸が進み過ぎてもう一口分しか残っていない。とてもおいしい。

それに目の前の彼女の食べっぷりも見ていて気持ちのいいものだ。

569夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/02/03(日) 20:40:29
>>568

「――――『モノディ』」

聞いたばかりの名前を繰り返す。
能力までは聞かない。
とりあえず『ドクター』と同程度の『超聴覚』を持っていることが分かれば十分。

「わたしのは『ドクター・ブラインド』っていうんだ。
 『ミミがいい』ってのは、わかってるとおもうけど。
 シズナリくんのも『ミミ』にはジシンあるんでしょ。
 わたしのとおなじくらいに」

「まぁ、『イロイロ』あるからね〜〜〜。
 『ハーゲンダッツのアイスクリーム』みたいに『イロイロ』と」

     ズズズズ

あらかた食べ尽くし、残ったスープを飲み始める。
聞き捨てならないことについて、そろそろ尋ねてもいい頃合かもしれない。
それを言った本人は、特に気にしていない様子だった。

570成田 静也『モノディ』:2019/02/03(日) 21:23:35
>>569

「………。」

アズミさんはどうやらこちらの様子を察したみたいだ。
ちょうどお互い食事はほぼ食事も済んでいる。
頃合いと読んで飲んでいたコーヒーを皿に置き、
ポケットからこの前自然公園で出会ったあの人からもらった
名刺を出し、テーブルに置いた。

「『これ』わかりますよね」

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ……

「さっきの会話で『アリーナでは』って言ってましたよね?」
「聞き間違いじゃあないはずだ…」
「この町の地図を調べてもこの名刺に乗った住所を調べても『アリーナ』と呼べるような場所は『なかった』」
「『これ』には住所と時間とマークしか書いていなかった。」
「それがなんなのかわからないのにノコノコ行くほどオレは間抜けじゃあない。」
「だから知っているヤツをずっと探していたんだ。」
「まさかいきなりアタリを引くとは思ってもみかったですたがね」
「教えてもらいますよ、この『アリーナ』っていうものに関しての知っていることを…!」

この店を教えてくれた恩義は感じる。だがそれとこれは話が別なのだ。
オレはより強くならなければならない。特に精神的に強く。
弱い今と過去を乗り越えるためにも。

571夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/02/03(日) 22:08:21
>>570

「ん〜〜〜??」

食事を終えて、テーブルの上に置かれた名刺を覗き込む。
こんなのくばってるのか。
『アリス』は、またひとつおりこうさんになった。

「ああ、そんなコトいったっけ??」

そういえば、いったようなきもする。
ついウッカリして、ポロッとしゃべってしまったようだ。
まぁ、そんなトキもあるある。

「『アリーナ』に関して、ねえ……」

「――――『嫌だ』と言ったら?」

   ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ 
               ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ …………

「言っておくけど『気安い場所』じゃあない」

「相応の『覚悟』が必要だよ。『そこ』に踏み込むにはね」

「『戦場』だからさ。『アリーナ』って場所は」

         ニヤッ

「――――なーんてね〜〜〜。もしかしてホンキにした??
 ちょっとした『オチャメ』ってヤツ。いや、わたしもそんなにくわしくしらないし。
 まぁ、さんかしたコトはあるけどさぁ〜〜〜」

                 トーギジョー
「スタンドつかいがたたかう『闘技場』なんだって。
 なんかしょかあるみたいだけど、わたしがいったのは『ちか』にあった。
 スゲーデカイかいじょうでさぁ〜〜〜。
 まわりにギャラリーがいっぱいいて、そこでなぐったりなぐられたりする。
 それをみて、ワイワイさわいでたのしむってカンジ??」

      センケツノリョーケン
「わたしは『鮮血の猟犬』ってヤツとたたかった。もちろん、かったけどな!!」

「なんかしりたいんなら、『アリーナ』のしりあいショウカイしてもイイよ。
 つかえねーボンクラだから、やくにたたないかもしれないけど」

何か隠している様子もなく、意外な程あっさりと喋りだした。
知りたいことは答えてくれるだろう。
『アリーナ』の連絡先も知っているようだ。

572成田 静也『モノディ』:2019/02/04(月) 17:57:02
>>571

アスミさんは嘘を言っていないだろう。
嘘を言ったなら例え詐欺師でも脈拍なり
声のトーンが変わったりする。
それを聞き分けることは『モノディ』の耳にはたやすいことだ
そしてなによりもアスミさんを信じたいからだ。

「ふぅ…よかった」

いくら情報が得たいとは言え、恩のある人に
こんな脅しかけるようなマネをしなきゃならないなんて…
こういうやり方はきっと永遠に好きになれない。
それに最悪、アスミさんがスタンドを出されたら
こちらも応戦せざるえなかった。
…そう考えただけでゾッとする
このオレのスタンド『モノディ』は人に能力を使ったことはあっても
人を『殴った』ことは、まだ一度もないのだ。
それでも『アリーナ』に行かなければならない。
そんな気がするのだ。

「いえ、こちらこそこんなマネをしてすみませんでした。」
「お詫びってわけじゃあないですがここの昼食代、オレが全部払いますよ。」
「ここを教えてくれたこと、『アリーナ』の情報と人を紹介してくれたことに比べれば
昼飯代を払ったってまだ有り余るほどですよ。」

全部紛れもない本心だ。

573夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/02/04(月) 19:38:18
>>572

成田少年は、拳を交える可能性を危惧していた。
だが、夢見ヶ崎に『その気』はなかった。
そして少年には、それが『分かっていた』。
『モノディ』の『超聴覚』なら、それを聞き分けることは簡単なことだ。
だから、少年が夢見ヶ崎の言葉の真偽を知ることができたのは『当然』だ。

「――――『わかってる』よ。うんうん」

「だって、ウチらは『おなじチカラ』をもってるんだから」

「――――ねえ?」

    ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド

夢見ヶ崎にも、少年が殴り合いなど望んでいないことが『分かっていた』。
夢見ヶ崎は、成田少年と『同じ力』を持っている。
『ドクター・ブラインド』の『超聴覚』なら、それを聞き分けるのは簡単なことだ。
だから、夢見ヶ崎が少年の言葉の真偽を把握できたのは『当然』だ。
だからこそ、少年のことを不必要に警戒することはしなかった。

 キンイチ
「『金一』ってオッサンなんだけどさ、そいつのレンラクサキおしえてあげるよ。
 『なぐりやすい』くらいしかトリエのない、ヒンセイのカケラもないボケナスだけど。
 あんなのでも、いちおう『アリーナ』のニンゲンだから」

『アリーナ』に所属する『金一』という男の連絡先を少年に教えた。
その番号やアドレスから、その男と連絡が取れるだろう。
少年に『その気』があるなら、試してみてもいいかもしれない。

「あ、そうだそうだ。わすれるトコだった〜〜〜。
 ココって、『スイーツ』もおいしいんだよね〜〜〜」

        チラッ

「たべたいけど、オカネがたりないなぁ〜〜〜。
 ダレか『シンセツなヒト』がおごってくれないかなぁ〜〜〜」

        チラッ

わざとらしく、あからさまに少年の方にチラチラと視線を向ける。
『まだ有り余る』という言葉を聞いて、注文を追加しようという腹積もりだ。
さぁ、どうする??

574成田 静也『モノディ』:2019/02/04(月) 20:15:12
>>573

>>ココって、『スイーツ』もおいしいんだよね〜

「もちろん、お好きなのをどうぞ」

そう言いながら財布の中身を思い出す。手持ちは貯蓄しているからそれなりにはある。
大丈夫だろう。そう思った矢先、アスミさんはメニューを指さし

「う〜んと〜コレと、コレと、コレもいいな〜」

『アリーナ』手掛かりは手にいれたが、しばらくは外で外食というわけには
いかなそうだ。

苦笑しつつもこの町で出来た予期せぬ新しい知り合いに
こういうのも悪くはないと思いながら飲みかけののコーヒーを口に運んだ。

575御徒町『ホワイト・ワイルドネス』:2019/02/10(日) 23:00:22

    ウィィ――――ン


「チッ、ここもダメか――――」

忌々しげに店の前に痰を吐き、歩き出す。
いかにも苛立った表情をした老人が、不動産会社から出ていく。


      「(まぁ、いきなり『地下オフィス』を貸せ、と言っても、
       こーやって門前払いが関の山か。……それはそれでムカつくが)」

重そうなホルスターから分厚い『手帳』を取り出し、
鉛筆の先を舐めてから、メモ書きを始めている。

576矢貫 湊『ノーバディ・アンダースタンド』:2019/02/11(月) 14:45:37
>>575
 
『敷き物』なんて言われてもピンと来ないし、
そもそもどんなもんが地面に敷かれてんのかねっつって、
その辺気にしながら歩いてみようかって表に出てみて、
それで分かった事って言えば、別に敢えてそんなことしなくたって、
俺は昔っから下ばかり見て歩いてたという事実だけで。
 
 
「あのさ」
 
 
まったく皮肉な話で、その皮肉が正面から直撃して、
それで俺は多分、だいぶ、苛立ってたんだと思う。
丁度通りかかった『不動産屋』にも、『仕事』でトラブルになった嫌な思い出もあったし。
きっとそれもまた良くなかったんだ。
 
下ばかり見て歩いてた俺の目に、まず地面に吐かれた『痰』が目に入って、
次に視線を上げた先で、機嫌の悪いじいさんの顔が目に入って、
その先はもう、どうしてそんな事をしたのか自分でも分からないし、
多分どうかしてたんだと思う。
 
 
「なんだって他所様の店の前に、そんなことすんだい」
 
 
痰のひとつくらい、好きに吐かせてやれば良かったんだ。
だけどそう思った時には手遅れで、別に正義感からでもなんでもないくせに、
どうにも非難するような声色で、俺はその『老人』に声をかけちまったんだ。

577御徒町『ホワイト・ワイルドネス』【22】:2019/02/11(月) 21:54:40
>>576
>「なんだって他所様の店の前に、そんなことすんだい」

    「ハァン!  軒先にカンバン並べて『店』っていうならねェ、

     駅前でクッサイ服着て『ビッグ・イシュー』売ってるルンペンだって、
     立派な『個人商店様』になってるでしょうがッ」

    「ええ!? そうでしょう!?」

ギロリ、と睨みを利かせ、不機嫌そうな風体でまくしたてる。
吐き捨てた『痰』を踏みつけ、ゴシゴシと靴裏で地面に擦り付ける。

    「大体ねェ、『不動産』なんて、自分の家も土地も持っちゃあいないくせにねェ、

     随分とまぁエラそうに、あっちのものをこっちに引っ張るだけの書類屋が、
     堂々と幅を利かせてるんですよォ! 海のものとも山のものとも付かない輩が!」

    「ましてや、私のような『客』をないがしろにねェ……、

     そう、そうですよ……。 私をねェ、誰だと思ってるんですかァ!」

『矢貫』の発した一つきりの問いに、矢継ぎ早に『妄言』を返していく。

578矢貫 湊『ノーバディ・アンダースタンド』:2019/02/12(火) 22:21:24
>>577
 
老人のあまりの剣幕に、俺は思わず言葉を返す。
 
「あ、いや……分かったよ」
 
嘘だ。
俺は実際のところ何も分かっていなくて、
そもそも滝のように浴びせられた言葉を理解することもできなくて、
とにかく、相手の勢いに呑まれてなんとかそれらしい事を言いたくて、適当な相槌を打ったんだ。
 
「ええと、だから、不動産屋ってのは、確かにロクな商売じゃないよな。
 分かる。俺にも分かる。あいつら、最低だ」
 
思考が追いつく順に、補足するように言葉を続ける。
確かに『不動産屋』には、俺も痛い目を見させられた覚えがある。
その点は分かる。本当に、分かる。
 
すっかり目の真の老人に呑まれちまった俺は、
情けないことに何一つ言い返す事が出来なくて、
なんとか辛うじて質問を返すのが精一杯だったんだ。
 
>「そう、そうですよ……。 私をねェ、誰だと思ってるんですかァ!」
  
「いや、誰……あ、その、『どちら様』……ですか。
  俺、あんま、芸能人とか詳しくなくて」
  
情けない限りではあるんだが、俺は自分より頭一つ小さい老人にすっかりビビっちまって、
着込んだダッフルコートが妙に頼りなく思えちまって、
マフラーを口元まで引き上げて、どうにか、それだけは言葉にできたと思う。

579御徒町『ホワイト・ワイルドネス』【22】:2019/02/12(火) 22:59:30
>>578
積み重ねた『年季』が産み出す『齢圧』と、
ヒステリックに上擦った『怒声』によって、
目の前の若者を黙らせてしまったようだ。

>「あ、いや……分かったよ」

  「う、ォ っほんッ!」   カーッ   ペッ!

  「まあ、貴方のような初対面の方にねェ、

   虫の居所が悪かったからって、どちゃくそに怒鳴り散らすのは、
   ――――ええッ、驚いたと思いますよ。配慮が足りなかったですねェ」

『矢貫』の同調に気分を良くし、語調を抑えて言葉を返す。
取り出していたメモ帳をホルスターバッグに仕舞い、『矢貫』を見遣る。

>「いや、誰……あ、その、『どちら様』……ですか。
> 俺、あんま、芸能人とか詳しくなくて」

   「あのような乱痴気騒ぎの『客寄せパンダ』と
    一緒にされたくはないですがねェ、……まあ、いいでしょう」

その仔細を訊かれれば、のそのそと歩道を横切り、
バス停用の『ベンチ』に腰掛け、『長話』をする準備を見せつける。

   「元々はねェ、私のような『プランナー』は、
    世間様にに出てくるものじゃあないんですよ。

    昨今は、なんだ『CG』の傘を借りてエラそうに振る舞ってる、
    芸術家気取りの輩が増えましたがねェ、断じてバカげたものだと……!」

   「そもそも、私の名前なんかよりねェ、
    『作品』の名前が知れ渡る方が、誉れと言うものでしょう。
    『ムンクの叫び』なんて誤用はねェ、私にしたら『勲章』ですよォ」

訊かれた質問に対し、回答に至るまでが留まるところを知らない。
ベラベラと言葉を並べては崩し、やがて咳払いを始める。

   「お゙ ぉ !  ゴホッ!」

    「ほら、お兄さんのね、知ってる『パズルゲーム』をねェ、
     何か二つ、三つくらいね、言ってみてくださいよ」 

自慢気な表情を作り、『矢貫』に向けて答えを促している。

580矢貫 湊『ノーバディ・アンダースタンド』:2019/02/12(火) 23:25:45
>>579 

目の前の老人が語調を抑えたことで、多分俺は辺に気を抜いちまったんだろうな。
適当に話を切り上げてこの場を立ち去るのが一番良いに決まってるって、分かっちゃいたんだが。

>「元々はねェ、私のような『プランナー』は、
> 世間様にに出てくるものじゃあないんですよ。

> 昨今は、なんだ『CG』の傘を借りてエラそうに振る舞ってる、
> 芸術家気取りの輩が増えましたがねェ、断じてバカげたものだと……!」

> 「そもそも、私の名前なんかよりねェ、
>  『作品』の名前が知れ渡る方が、誉れと言うものでしょう。
>  『ムンクの叫び』なんて誤用はねェ、私にしたら『勲章』ですよォ」


「『プランナー』に『CG』で『作品』っつーと……アレ……ッスか。
 『ゲーム作るヒト』……みたいな」
 

分かっちゃいたんだが、バス停の『ベンチ』に座り込む老人の傍らに突っ立って、
思わず話に乗っかっちまったんだ。
自分が質問した手前ってのもあるし、最初が酷かった分、いくらか落ち着いた雰囲気を見て、
意外と普通に話せるんじゃないか、なんて思った部分もあって。
 
 
> 「ほら、お兄さんのね、知ってる『パズルゲーム』をねェ、
>  何か二つ、三つくらいね、言ってみてくださいよ」
 
 
「俺が知ってる『パズルゲーム』っつーと……」
 
 
俺は何も知らない。
 
高校は出たけど出ただけで、中学英語だって怪しい始末で、
これといってヒトに誇れる特技や打ち込んだ趣味もなくて、
だからいっそ清々しいくらいにありきたりな答えを、返してみるわけだ。
 
「『降ってくるブロックを積んでいって……横一列埋まった段から消えてくヤツ』とか、
 『色違いの球が二つ一組で降ってきて、同じ色を四つ揃えると消える』とか。

 あと……ああ、アレか。
 『スマホ』の……『カラフルな球が敷き詰めれた画面をなぞって、一筆書きで同じ色を沢山繋げると消えるヤツ』とか」
 
大丈夫だ。
俺は無難な返しができたはずなんだ。
これまでも、厄介事はそれとなくこうやって回避してきた、筈なんだ。

581御徒町『ホワイト・ワイルドネス』【22】:2019/02/13(水) 00:09:00
>>580
>「『プランナー』に『CG』で『作品』っつーと……アレ……ッスか。
> 『ゲーム作るヒト』……みたいな」

     「まあ、今ではしがない講師の身ですがねェ。

      プータロー寸前の『ごくつぶし』共のケツを蹴り飛ばして、
      社会の何たるかを叩き込んでやってる、……不毛な職務ですよ」

腑抜けた生徒の面を思い返しては忌々しげに鼻を鳴らしながらも、
双眸を細め、何処か寂しげに呟いた。

>「俺が知ってる『パズルゲーム』っつーと……」

しかし、多少人間味を帯びたその表情も、
『矢貫』の言外に醸し出される『ビッグタイトル』の数々に、
表情を引き攣らせ、ハゲ上がったコメカミには『青筋』が浮かんでいく。

      「ハ、ハァン、 ……ま、まぁ、そんなところでしょうな。
                   .. . . .
       まあ、その辺りも、よく『出来た』方ですよ。
       対戦ゲームと称して、スピードを上げての『ライヴ感』に終始し、
       パズルゲーム特有の『知略性』に逃げを打ったのも、
       真っ向勝負から背を向けた、と、私は解釈してますがねェ……」

三つ上がったタイトルから、明らかに一作にのみ『敵意』を剥き出しにしながら、
ギリギリと奥歯を削ってまで擦り潰している。『無難』な返しとはならなかったようだ。

      「まあ、貴方はパッと見、25〜6と言ったところでしょうが、
       所詮は『娯楽』とはいえ、真に面白いゲームを知らないと見える。

       ネット回線を通じて、『贋作』が蔓延る世の中だからこそ、
       『審美眼』を磨いて、傑作を見抜いて頂きたいと、老骨ながら思いますがねェ」

大きなお世話を絵に描いたような言葉を口にしながら、悠々とベンチから立ち上がる。

582矢貫 湊『ノーバディ・アンダースタンド』:2019/02/13(水) 00:41:49
>>581
 
> 「まあ、今ではしがない講師の身ですがねェ」 
 
一発で合点が行った。
ヒトにモノを教える仕事ってのは教師を筆頭に、
まあ、ある程度こういう、なんだ、『偉そう』っつーか、こう、『こういう感じ』になりがちだよな。
 
「つまりアンタ、アレか」
 
質問ってワケじゃないんだ、俺はもう、ある種の確信を得ていて、
それを確かめるだけのために、敢えて口に出してみたってことなんだが。
 
「アンタ──『ゲームのセンセイ』っつーことか?」
 
往来で、感じの悪い爺さんに声を掛けて、そのまま上手いこと会話が続いたことがあるか?
俺は無い。
 
「す、凄ェよ。とんでもねえ」
 
自分でも驚くような事が起きて、それがどうにか上手いこと運んで、
だから俺はそう、なんというか、舞い上がってたんだと思う。
 
今度こそ切り上げるタイミングだったのに、
ここで別れるのがどう考えたってベストだったのに、
俺がたまたま声を掛けたこのヒトが、ひょっとしたら途轍もない大物なんじゃないか、なんていう、
そんな希望に突き動かされて、ベンチから腰を浮かせた老人を引き止めるように、
言葉を続けてしまったんだ。
 
「ひょっとして、とんでもない『有名人』なのか?
 だって、『アレ』や『ソレ』みたいな有名ドコロに対してその言い草……!
 
 なあ、セイセイ一体──『何者』だ?
 どんな『ゲーム』を作ったセンセイなんだ……?」

583御徒町『ホワイト・ワイルドネス』【22】:2019/02/13(水) 01:11:15
>>582
>「アンタ──『ゲームのセンセイ』っつーことか?」

    「あまりにも飾り気がない言い方で驚きましたがねェ、

     ……いかにも、その通り。
     正確に言えば『マルチクリエイティブインストラクター』とかいう、
     まぁなんとも舌を噛みそうな『肩書』こそ与えられてますがねェ、
     これも私の『実績』に類する『専門職』が存在しないが故に、
     経営陣がない頭を振り絞って、一生懸命考えた『カンムリ』ですよ」

肩書を敬遠するような言葉を吐きながらも、
口角をニヤつかせ、一発でスラスラと和製英語を唱えていく。

    「私は『御徒町満志』なんて立派な名前がありますがねェ、
     先ほども申した通り、これはもう覚えなくて結構ですよ」

        ブロロロロ・・・
                        ブシュゥゥゥ―――


ゆっくりと立ち上がり、勿体付けるようにのそのそと歩き始めると、
丁度いいタイミングで『バス』が停車し、その扉を開く。

    「まあ、興味があるのでしたら、
     DSでもなんでも、『移植』が出てますからねェ、
     
     貴方が、私をどういう目で『センセイ』と見るかはねェ、
     これはもう、『おかしなマーチ』をやってみる以外ありませんよ」

それだけを言い残し、パスカードを運転手に見せた後、
『優先席』に座る高校生を睨み付けて立ち上がらせると、
満足気にシートに腰掛けて、


                   ブシュゥゥ――――


乗り合いバスに揺られながら、去っていった。

584矢貫 湊『ノーバディ・アンダースタンド』:2019/02/13(水) 11:44:48
>>583
 
「『マルチクリエ……トラクター』……?
 ああ、その、凄いんだな……。凄いセンセイ……」
 
意味はひとっつも分からないが、なんであれきっと凄い肩書なのだろうと、
俺に学が無いだけで、きっとそうなのだろうと、適当に曖昧に相槌を打つ。
 
>「私は『御徒町満志』なんて立派な名前がありますがねェ、
> 先ほども申した通り、これはもう覚えなくて結構ですよ」
 
「ああ、『御徒町』センセイ……か。
 しかし『覚えなくて結構』ってのは、アレだな……」
 
『作品が広まることが誉れ』みたいなこと、確かに言ってたっけな。
ただ目の前のこのヒトから感じる強烈に『アレ』な感じ……なんて言うんだ?
こう、ゴリゴリっと来る感じ。なんて言うのかな、ええと、つまりこのこういう感じな。
そういうのからすると、自分の名前は名前で、広まって欲しいと思うんじゃないかって印象もあるんだけど。
 
「俺は『矢貫』。『矢貫湊』
 名乗られちまったから、名乗り返さないってのはこう、良くないだろ」

『挨拶はきちんと』。『名乗られたら名乗り返す』。
そのくらいのことはきちんと、きちんとやらないと、
俺みたいな『底辺』は、簡単に『本当の底辺』になっちまう。
それはマズい。『本当の底辺』になっちまったら、もう、誰も見下せなくなる。
 
 
>      ブロロロロ・・・
>                       ブシュゥゥゥ―――
 
 
そんなやり取りを続けてる内にいいタイミングでバスが来て、
どうにも御徒町センセイが乗り込む予定のバスだったみたいで、
いよいよこれでお別れ解散って具合になるんだよな。
 
感じの悪い爺さんに声掛けたと思ったら、とんでもない『業界人』に出会っちまった。
こういうことがあるんなら、下向いて歩くのもまあ悪いことじゃないんじゃないか、なんて思えて、
思えて、いたんだが……。
 
 
> 「貴方が、私をどういう目で『センセイ』と見るかはねェ、
>  これはもう、『おかしなマーチ』をやってみる以外ありませんよ」
 
 
「そんなゲーム、聞いたこともねえよ。
 アンタほんとに、偉い業界人なのか……?なあ、センセイ」
 
 
去りゆくバスの後ろ姿へ向けて、最後の疑問を、呟くように零してみた俺は、
腑に落ちないような釈然としないような気持ちを抱えたまま、歓楽街を後にする。

585今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/02/17(日) 00:31:02

             ブロロロロ…

「…………」

バスに、乗り間違えちゃったんだよ。
大通りに行きたかったんだけど。
早めに気づいて降りられてよかった。

「……」

「よいしょ」

とりあえずフツーに、逆向きのバス停で次のバスを待とう。
待ち合わせより早く家出てよかった。ギリギリ間に合うよね。

他にバス待ちをしてるのは、あの人(>>586)だけかな?

586夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/02/17(日) 05:04:50
>>585

他にバス待ちをしているのは一人だけ――『だった』。
なぜなら、視線を向けた直後に、もう一人増えていたからだ。
その人物とは……??

いや〜〜〜まいったまいった。
『ホシミカイドウ』にいきたかったのに、
まちがえて『ホシミヨコチョウ』にきちまったぜ〜〜〜。
それもこれも、バスのとまるバショがよくない!!
まったく、まえからまぎらわしいとおもってたんだよな〜〜〜!!
まぁ、はやめにきづいておりられたからヨシとするか。
まちあわせじかんより、ちょっとはやくでてきたから、ギリギリまにあうな!!
イズミンは、もうアッチついてんのかな〜〜〜??

「――おん??」

思いがけない場所で『待ち合わせ相手』の姿を見つけて、
ポカンとした表情を浮かべる。
まさか、偶然にも『同じ乗り間違え』をしていたなどとは夢にも思わない。
しかも、それに気付かなかったなどとは、そうそう起こることではないだろう。
さては『スタンド』のしわざか??
『ホンタイ』はどいつだ??

  「イズミン??あれ??」

       「ここ『ホシミカイドウ』だっけ??
        まちがえたとおもったけど、じつはあってた??」

                          「――そんなワケねーしな」

        キョロキョロ キョロキョロ キョロキョロ

辺りを見渡し、現在地を確認する。
もちろん、ここは『星見街道』ではなく『星見横丁』だ。
そのことを改めて把握してから、イズミンに向き直る。

587今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/02/17(日) 15:08:47
>>586

「あれっ!」

「ユメミン……!? あれ、今日こっち集合でしたっけ??」
「えっ?」「でも」「星見街道ってラインで」「言ってたし」

          キョロ  キョロ

これは、焦ると思う。

「こっちは星見横丁だし」「まぎらわしいけど」

行き先は『大通り』だった。
それは間違い無いはず、なんだけど。

「……あのー」

「ひょっとして」
「ユメミンも、バス乗り間違えちゃった……とか?」

フツーそんなことある?って思うけど、ユメミンはフツーじゃない友達だ。
もしかすると私と同じ間違いを偶然しちゃったってことも、あるのかもしれない。

588夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/02/17(日) 22:21:15
>>587

「――うん」

頷いた。
どうやら本当らしい。
何百億分の一の奇跡が起きたのかもしれない。

「でもまぁ、ちゃんとあえたんだし、よかったよかった。
 よのなか、めずらしいコトもあるもんだ。
 こんな『ミシュランみつぼしクラス』のハプニングがおきるなんて、
 きょうはツイてるな〜〜〜」

「そういえば、イズミンさいきんなんか『かわったコト』とかなかった??
 『バスのりまちがえた』ってコトいがいで」

いい感じに場が和んだところで、気分も新たに話題を変えてみる。
時間は立ち止まらない。
与えられた時間は十分に楽しむべきだ。
いつか自伝を出版した時に、この言葉を忘れずに入れておこう。
なによりも、『きりかえがはやい』のがユメミンのとりえなのだ。

「ユメミンは、やすみちゅうに『こもり』のバイトしてた!!
 とまりがけで『みっかかん』!!うん――まぁそんくらい!!」

589今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/02/17(日) 23:13:41
>>588

「へええっ」

「珍しい事もあるんですねえ〜っ」
「でも、そうですね、会えてよかったです」
「あは、そこのところはツイてますよね」

                ニコ

ハプニングをツイてるっていうのは、ユメミンらしい。
イズミンらしさは……そうだ。フツーであることだ。

「私は……そうですね、『旅行』行きましたよ!」
「なりゆきで、芽足さんと二人で」

ユメミンは同学年だし名前くらいは知ってるかな。

「日帰りですし」「お土産も買いそびれたんだけど」
「けっこう楽しかったですね」

ユメミンになら話してもいい気はする。
でも、先に向こうの話を聞いてみよう。
こっちの話は、ちょっと長くなるし。

「それにしてもバイト、いいですねえ。青春って感じで!」
「でも、『三日間子守り』って、知り合いのお子さんとかですか?」
「あんまり周りでは聞いた事ない仕事ですけど」

泊まりのバイトは、センパイで行ってた人がいた。
リゾートバイトっていうんだったかな。ユメミンのはちょっと違いそうだけど。

590夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/02/18(月) 00:16:44
>>589

「『チダリ』――??『チダリヨロズ』!!」

「まちがいなく『ウサギ』だな。よにもめずらしい『ロボットのウサギ』だ」

うんうんと納得したように首を縦に振る。
じつは『ロボット』だとかいうウワサをきいたことがある。
そのハナシがマジかどうか、いつかたしかめねばならんとおもってたところだ。
ちなみに『ウサギ』というコトバは、『キョーミのたいしょう』をイミする。
『アリス』は『ウサギ』をおうものであり、わたしは『アリス』だからだ。

「いや、ぜんぜん。しょたいめんで、カオもナマエもしらんかったコたち。
 わたしとサトリちゃんってコがいっしょにやったんだけど」

「じつをいうと、ちょっと『ワケありなシゴト』ってヤツでさぁ。
 イズミンの『センセー』とか、そういうカンケイのヤツっていうの??」

「かいつまんでいうと、『スタンドもってるコドモ』のせわをするっていうバイト。
 そこのシゴトは、ちょっとまえにも1かいやったコトがあってさぁ。
 そっちは『こもり』じゃなくて、『しあい』だったけど」

『試合』の方は、詳しく話さなくてもいいだろう。
そこからはなしだすと、スゲーながくなるからな……。
まぁ、それはそれとして――。

「コドモたちとあそんだりゴハンつくったりキョーボーなニワトリとたたかったり、
 あいまあいまにちょっとしたトラブルもありつつ、
 さいごに『ワルいヤツ』もでてきたけど、
 ふたりがかりでビシッとやっつけてハッピーエンド!!」

「――ってカンジ??」

バイトの流れを大雑把にダイジェストで語る。
だいたい説明できたと思う。
イズミンの日帰り旅行の話も気になるところだ。

「あ!!ふつかめのディナーはわたしがつくった!!
 『トマトとツナのパスタ』と『セロリとレモンのヨーグルトドリンク』!!」

「――イズミンは??いや、メシのハナシじゃなくて『リョコー』のハナシ」

591今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/02/18(月) 01:19:57
>>590

「そうそう、『ロボット』の芽足さんです」
「楽しい人ですよね」

ロボットじゃないかもしれないけど、ロボットなんだ。
ウサギ?っていうのはよくわからないけど。
ユメミンのことだし、なにか面白いことなんだろうな。

「えーっと」「話せば長くなるんですけど」
「『見たことのない町』にいきなり迷い込みまして」
「そこから出るためにいろいろ頑張ったりしたんですよね」
「あと、砂浜でお城作ったりとか」「クレープ食べたりとか!」

「『フツーの旅行』ではなかったわけなんですけどね」
「フツーじゃない部分がちょっと語りづらい感じでして」

カレンさんとタマキさんのことは言い触らす気はしない。
多分、それはフツーに、やるべきじゃない気がするから。

「それにしても」「ほんとワケありって感じですね」

ユメミンはフツーじゃない世界に飛び込んでいける。
それにしたって、なんだか危なそうな話だ。

「試合ってたしか、『地下闘技場』でしたっけ」
「まんがみたいな」「最初に会った時話してたやつでしょ?」
「フツーじゃないですよねえ」

闘技場が『子供のお世話』を依頼するなんて、フツーじゃない。
お客さんの『託児室』とか、そういう話でもなさそうだし。
それ、闘技場をする会社とかじゃ、ない気がするんだ。

なにか私が知らない『フツーじゃないもの』があるんだろう。

「……」

「ね。パスタ、今度私にも食べさせてくださいよ」
「私も」「そこじゃないけど、おすすめのクレープとか教えますから」

ユメミンはそういう世界を夢見てるんだろう。
私は……私は、じゃあ、どういうきもちに、フツーになるべきなんだろう?

592夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/02/18(月) 02:08:28
>>591

「きづいたら、『みたコトのないマチ』にいたって??
 つまり『フシギなセカイ』にリョコーしてたってコトか〜〜〜」

興味深そうな表情で、イズミンの言葉に耳を傾ける。
『不思議な世界』の香りを受けて、サングラスの奥の瞳は輝いている。
同時にバスに乗り間違えるよりも珍しいかもしれない。

「でも、ここにイズミンがいるってコトは、ぶじにだっしゅつせいこう!!」

「――ってことて、よかったよかった!!」

もうちょっと突っ込んで聞いてみたいけど、なんとなくイズミンの歯切れが悪い。
それを察知して、あえて深く質問はしなかった。
フシギなハナシはスキだ。
だけど、イズミンはトモダチだし。
せっかくこれからあそぼうってときに、
イズミンをイヤなキブンにさせてまでききたいハナシでもない。

「あ〜〜〜そうそう、ソレソレ。そのへんのつながりで、ひきうけたってカンジ??
 『しあい』のほうは、やるコトなくてヒマだったら、またいつかやろっかな〜〜〜」

「お??じゃ、こんどつくろっか??わたしんちでもいいし、イズミンのトコでもいいし。
 それか、ガッコーのカテイカシツでもいいけど。
 けっこうコウヒョウだったからな!!イズミンもきにいるハズだ!!」

「――しかし、なんつーかアレだな……。
 こうやってイズミンとしゃべってると『ホッとする』っていうの??
 『フツーのセカイ』にかえってきたってカンジがするんだよね〜〜〜」

「『フツーのセカイ』があるからこそ『フシギなセカイ』があるっていうか。
 わたしは『フシギなセカイ』がスキだけど『フツーのセカイ』もあってほしいんだよね。
 だって、『フツー』がなかったら『フシギ』もないワケだし」

「――って、ユメミンがいってたよ」

593今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/02/18(月) 02:42:39
>>592

「そうなんですよ、多分『スタンドの世界』?」
「詳しい事は全部はわかんないんですけど」
「でられたから、いいかなって」

白い本の正体とか。
これからどうなるのかとか。
あの世界は跡形もなくなっちゃったのかな、とか。

「うーん、どうせならユメミンの家でやりません?」
「キッチンとか、使い慣れてるでしょうし」
「まあ場所はともかく――――楽しみにしてますねっ」

分からない事はあるけど。
こうして出られて、友達と『今度』を約束できる。

「……もしですよ」「もし、また『試合』とか出たりするなら」
「フシギの国に行ったりするなら」「そうしたら」
「ちゃんと最後は、こっちの、フツーの側に帰ってきてくださいね」

「イズミンは、いつでもこっち側で待ってるんで!」

『今度』。
いずれユメミンは、また別の『不思議の世界』に行ってしまうに違いない。
だから友だちの私は、フツーの『日常』のひとつであるべきなんだ。
不思議の国のアリスは……フツーの現実に帰るまでが物語だから。

私は、そういうふうに思うんだ。

「……」

「あはは、大袈裟な事言っちゃった」

私は、こっち側にいるのでせいいっぱいだから。

「あっ、そういえば……今日は最初どこ行くんでしたっけ?」

そういえば予定とか決まってたっけ。ライン見たらわかるんだけど、一応聞いてみる。

594夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/02/18(月) 20:44:48
>>593

「おう、まかしとけ!!こんどのやすみ、あけとくから!!
 イズミンも、あけといてくれよな!!」

何はともあれ楽しみだ。
ユメミンのいがいなイチメンがあきらかに!?
こんしゅうまつのランチタイムをみのがすな!!

「――――うん」

「わたしはイロんな『フシギ』をみつけたいからさ。
 そのためには、いっかいもどってこなきゃいけない!!
 ひとつのばしょへいったきりじゃあ、ほかのトコいけなくなるし」

『フツーのセカイ』は、わたしにとって『中継地点』みたいなものだ。
たくさんの『フシギなセカイ』に繋がってる特別な場所。
ある日アリスが『ウサギ』を追いかけて別の世界に行ったみたいに、
時々『フツーのセカイ』に転がっている『ウサギ』を追いかけていくと、
こことは違った『フシギなセカイ』へ行くことができる。

「『こんなコトがあった!!』って、イズミンともオシャベリしたいしさ。
 だから、かえってくるよ。そんときは、またハナシきいてね!!」

      ニッ

そう言って、明るく笑った。
なんだか安心できた――――ような気がする。
上手く説明できないけど、なんとなくそう感じていた。

「『あそびにいこう』ってハナシはしてたけど、バショきめてたっけ??
 そういえば、『たまにはノープランもイイよね』って、ユメミンがいってたきがする。
 イズミン、どっかいきたいトコある??」

「あ!!じゃあさじゃあさ、『ざっかやめぐり』する??
 ざっかやさんって、かわったモノがイロイロあってオモシロイからさぁ〜〜〜。
 『マスキングテープ』もケッコーおいてあったりするし!!」

スマホを取り出して、近そうな雑貨屋を調べてみる。
『星見街道』だけじゃなくて、今いる『星見横丁』の方も当たってみよう。
こういうトコに、いがいな『あなば』があったりするもんだしな!!

「――――『かわったモノ』っていったら、
 『こもり』と『しあい』のあいだぐらいのタイミングでみかけたんだけど」

「『かわったほん』でさ、『しろいほん』だったんだよね〜〜〜。
 なかもそともまっしろだった」

「よくわかんないけど、『スタンドをつくるほん』だってカンケーシャがいってたよ」

595今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/02/18(月) 22:49:26
>>594

「それじゃ、次の休みはそれに決まりで!」

スケジュール帳にちゃんとメモしとこう。

「あは」「きっと、また聞かせてくださいね」
「ユメミンの……不思議の国の冒険の話」

フツーじゃない旅をする友達がいる。
私は……私はやっぱり、フツーの私でいよう。

「あ、決めてませんでしたっけ」
「どうりで記憶にないと思った」

         キョロキョロ

「それなら『横丁』で遊ぶのもフツーにありですね」
「この時間から、怖い感じでもないですし」

夜に来たことがないわけじゃない。
けど、あんまり来たいって思う感じではなかった。

「雑貨屋さんも、ちょっと珍しいのがありますよ」
「今日は私が案内しちゃおっかなっ」
「ネイル用品とかも置いてますし」「……?」

でも、昼にユメミンと遊ぶならすごくいい場所なのかも。
だから意気揚々ってきもちになって辺りの地図を思い浮かべてた。

「……本?」

そしたら。

「スタンドの白い本って」「え」「またすごい偶然ですねえ」
「私が『旅行』した世界を作ってたのも、白い本だったんですよ」

偶然にしては出来すぎてる、フツーじゃない話。

「まあ、真っ白ではなかったんで……別本かもしれませんけど」

とりあえず、雑貨屋さんに歩き出そうかな。
ユメミンが話に集中したそうなら、もう一回ベンチに座ろう。

596夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/02/19(火) 00:53:54
>>595

「うんうん、イイカンジに『ノープラン』っぽくなってきたぞ。
 じゃ、このヘンをテキトーにブラブラしようぜ!!
 ちょうど、あたらしいネイルパーツもほしいとおもってたし!!
 きょうはイズミンのオススメのみせをショウカイしてもらおっかな〜〜〜??」

スマホをポケットにしまう。
イズミンが歩き出したのに合わせて、こっちも歩き始めた。
その道すがら、話を続ける。

「え??マジ??
 バスのりまちがえたコトといい、きょうはグーゼンがおおいひだな〜〜〜。
 『ミシュランみつぼし』をこえた『レジェンドクラス』のひとさらじゃないか??
 『なんびゃくおくねん』にいちどの『チョーなんかスゲーきねんび』ってなづけよう」

「――――なるほど!!『ベツのほん』ってカノウセイはあるな!!
 わたしがきいたハナシだと、ひとつじゃないっぽいらしいし」

少なくとも複数あるという話は聞いていた。
だから、イズミンが見たのはユメミンが見たのとはベツのヤツだったかもしれない。
まぁそれでもスゴいグーゼンなんだろうけど。

「ユメミンがみた『しろいほん』は、ちっちゃいコがもってたんだ。
 このマチで、そのコをおいかけてる3にんぐみがいて、
 オモシロそうだったからユメミンも4にんをおいかけた」

「3にんは『しろいほん』にようがあったんだけど、なんかカンチガイされてたみたいで、
 『しろいほん』をもってるコににげられてたんだって。
 それで、ユメミンは3にんのテツダイをして、そのコをつかまえた。
 あとは、4にんがはなしあってゴカイがとけて、いっけんらくちゃく!!」

『スタンドを作る本』を使って、誰かが何かをしようとしているらしい。
そして、夢見ヶ崎こと『アリス』は三人に協力すると約束した。
その約束は、まだ続いている。

「そのコのナマエ、なんていったっけ」

「ああ、そうそう――――たしか『カレン』だった」

597今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/02/19(火) 01:40:37
>>596

「マスキングテープとネイルのパーツだと〜」
「確かこっちの方にそれっぽいお店があったような」
「ファンシー雑貨みたいなお店で」
「確かほかのアクセも売ってましたよ」

ノープランだし、立ち止まって調べたりはしない。
ほんとに迷っちゃったらフツーに調べるけど。

「ね、すごい運命って感じしますねえ〜」
「今朝の占いは『6位』だったんですけども」

べつに運がいいってわけでもないけどね。
バスに乗り遅れたのはフツーに失敗だし。
雨降って地固まる、って感じの日なんだよね。

それから、歩きながら本の話を続ける。

「えっ、たくさんあるんですかっ!?」

大切なものって聞いてたからてっきり一つかなって。
でも、たくさんあるものでも『自分の』は大切か。

それに、結構危ないものだし。
いや……それよりその話の、子供って。

「カレンさん……やっぱり」

カレンさんを追ってた人たちは危なくないのかな。
普通に元気そうだったし、そこは心配いらないか。

「私もたぶん、そのカレンさんと知り合いですよ」
「例の『旅行先』で会いましたし」
「そうなると本自体は同じもので」
「後から表紙に文字が出てきた……のかな?」

「なんだか、本当にフツーじゃない本ですよねっ」

スタンドを作るだけじゃなく、生きてるみたいな本。
その仕組みもまた別の誰かのスタンド、だったりするのかな。

         スタスタ

「あっ、あったあった。ここですよユメミン!」

そうこう話してると、目当てのお店に着いていた。
あとのことは……ここで買い物しながら考えればいいかな。

598夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/02/19(火) 19:33:20
>>597

「カレンって、ソラにうかんだりできるカレンのコト??
 じゃあ、やっぱりイズミンのいうとおり、おんなじホンなんだろーねー」

まさか名前が一緒の別人ってことはないだろうし。
あの時に見た本が、イズミンの『旅行』した世界を作ったってことなんだろう。
ソレがどういう世界だったのかは分かんないけど。

「いくつあるかはわかんないけど、サイテーでも『2つ』はあったみたいだよ。
 さっきいった3にんぐみも、おなじホンをもってたみたいだから」
 
「『ふるほんや』からてにいれたとかナントカ。
 その『ふるほんや』は、このマチのはずれにある『おやしき』からしいれたって。
 カレンは、その『おやしき』のシュジンから『しろいホン』をあずかったんだってさ」

「わたしがみたときは、ナンもかいてなかったハズだから、
 『あとからでてきた』ってスイリがユウリョクだな!!
 3にんぐみも、おなじようなコトいってたし。
 『とつぜんモジがうかんできてバケモノがでてきたからたおした』って」

「その3にんは、ホンをみつけしだいショウキャクするきだったとか。
 だから、ジブンたちのもってたブンは、もうショブンしちゃったんじゃない??」

「――――で、3にんのハナシだと、そのホンはまだあるっぽくて。
 それをさがしてるみたい。ほら、ナニがおこるかわかんないモノだし。
 レンラクがあったら、またてつだおうとおもってるんだー」

「ね〜〜〜!!ホントに『フシギ』だよね〜〜〜ッ!!」

イズミンが言うように、確かに全然『フツーじゃない』本だ。
だからこそ、興味を惹かれる。
その不思議な香りに、好奇心を煽られる。
また、いつかあの本と遭遇したい。
イズミンの話を聞いて、改めてそう思った。

「――――おっ、なかなかセンスイイみせじゃない??
 イズミンもやるな〜〜〜。どっからみてこっか??
 せっかくだから、ゼンブみてまわりたいな!!」

でも――――今は『フツー』を楽しもう。
気の合う友達と街に出かけて、一緒に買い物したり遊んだりする。
それも、『フシギ』を楽しむのと同じくらい大切なことだから。

599美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/03/28(木) 23:28:16

ラフなアメカジファッションの女が、路肩に停めたスクーターのシートに腰掛けている。
片手には、ついさっき移動販売車から買ったクレープ。
最近、口コミで話題になっている店だ。

「バランスは丁度良いわね。クリームが多すぎて重たいって事もないし。
 五段階評価で『星四つ』って所かしら」

職業柄、流行には敏感でなければならない。
そのために、こうして時折チェックを入れている。
とりあえず、ここも『候補』としてキープしておこう。

「――あなたも今日は機嫌が良いみたいね?」

よく故障する愛車のボディに、ポンと手を置く。
幸いな事に、今日は一度もトラブルを起こしていない。
クレープを食べながら、何の気なしに通りを眺める。

600美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/04/04(木) 23:34:44
>>599

「さてと――――」

しばらくしてクレープを食べ切り、スクーターのエンジンを始動させる。
ここで何度か仕切り直す事も少なくないが、今回は一度で掛かってくれた。
自らも上機嫌で鼻歌を歌いながら、その場を走り去っていく。

「――――あら?」

調子良く街を駆け抜けている途中で、唐突にエンジンが停止する。
どうやら、また機嫌を損ねてしまったようだ。
軽く溜息を吐いて、愛車のボディに片手を置く。

「全く本当に手が掛かる子だわ」

「ま、そんな所もあなたのチャームポイントよね?」



【撤退】

601竜胆『ブラックシープ・シンドローム』:2019/04/16(火) 00:25:33
「はぁ……」

どうにもアガらない。
調子もうだつもだ。
酒を飲む気分でもなく、なんとなくでゲームセンターに足を運んでいた。

「テーマパークに来たみたいだ、テンション上がるなぁ��」

言ってみたが、やはりアガらない。
いい事やいい刺激があればいい。
それを探しに来た。

「ははっ」

適当に店内をぶらついている。

602芦田『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト』:2019/04/17(水) 21:23:49
>>601

「ウィゴーちゃん ウィゴーちゃん ウィゴぉ〜〜〜〜ちゃぁ〜〜〜ん
こっちの兎のぬいぐるみか、そっちの熊ちゃんならどっちが良いよ?」

『いや 別にぬいぐるみなんぞ欲しくありませんが』

「おいおいおい おいおいおい おいおいおいおいおいおいおいおぉぉいって
ウィゴーちゃん 可愛い女の子は一つぐらいフワフワなもんを所持しとくのが
乙女の嗜みってもんだぜぇ?」

『誰が乙女だ UFОキャッチャーの中に閉じ込められろや』

「そうツンツンすんのも良いけどよぉ〜 たまにゃー俺もウィゴーちゃんの
デレがそろそろ見たい時期だぜ。なんかとびっきりな血腥いインパクトが
欲しいよぉなぁ〜  ・・・あぁまた落ちた」

UFОキャッチャーでスタンドと共にぬいぐるみを獲得しようとしてる
危ない雰囲気の男がいる。貴方には気づいてない

603竜胆『ブラックシープ・シンドローム』:2019/04/18(木) 00:33:01
>>602

(うわ)

「うわぁ……」

あれは近づかない方がいいタイプだろう。
遠巻きに見つつ刺激しないようにしよう。

604芦田『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト』:2019/04/18(木) 20:07:16
>>603

『それと、ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト
私の名前は何回でも言うがウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト!
いい加減に脳味噌に叩き込まないと晩御飯は全部流動食にするからな!』

「ウィゴーちゃんが口移してくれんなら、俺はウンコでも喜んで……」

『シャラップ! 誰が誰の下痢を口移ししろって言うんだ?
私にも堪忍袋の緒があるからなっ。それを口にした瞬間に
げの語を喋る前に道連れ覚悟のボディブローお見舞いするからっ』

「……ちっ やっぱクレーンが甘いわ。しょーがねぇから
あっちの菓子取りメダルゲームにする?」

『話聞けよ! はぁーーーーーー・・・っ
えぇ 行きましょう。とりあえず今の話題からチョコレート以外で』

「何でチョコ駄目なのよウィゴーちゃぁん。おりゃあ三度の飯より
ウィゴーちゃんの手作りチョコ食べる為なら喜んで這いつくばって
ウィゴーちゃんの足先から股の上の臍まで舐め上げるってのぉに」

『それ、何の罰にもなってねぇよ! 私の尊厳もろとも全てが
ミキサーで粉々になる奴だわ、それ!
今の品性って表現皆無なワールド空間で茶色い連想ゲーさせるのとか
本当乙女的に無理だからね!』

「………ぅ ぐす。ウィゴーちゃん、やっと自分が雌だってことを
認知してくれて」

『アァ クソ コロシテェ』

「モンキーパンチの事は、本当 心底残念だぜ ファンだったってのぉによ」

『脈絡ゼロかパンチドランカーマスター けどソレは同感です』

喧嘩してるのか何なのか、よく解らない会話をしつつ貴方のいる方向に
奇しくも次にやるゲームの目的が近いようだ。
 このまま無駄に疲れる羽目が嫌なら……無視も最良だろう。

605竜胆『ブラックシープ・シンドローム』:2019/04/18(木) 20:40:21
>>604

(あれスタンドとやってんのかな……)

(クスリとかやってる系?)

横目に眺めつつ格闘ゲームのコーナーに向かう。
触らない方がいい。

(スタンドが何かは知らないけど、自分の半身だとしたらくっそでかい独り言だねぇ)

606芦田『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト』:2019/04/18(木) 21:07:19
>>605

「今日もウィゴーちゃんと気ままにデートな刺激もなんもねぇ
一日だったねぇ」

『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライトですって。
なんかどっかから視線もありましたけど、まぁ奇行が日常ですからね』

「別に話しかけられたら、普通に返事すんだけどな」

 そのままチロルなり何なり、適当なウィゴーちゃんの好きなもん
幾つか取って俺とウィゴーちゃんの愛の巣へ帰ったわ

607日沼 流月『サグ・パッション』:2019/06/13(木) 21:35:25

              ザッザッ

「……」

         〜〜〜♪

「もしもし、流月ですけどセンパイまだです?
 ……え? なんですかそれェ! なんですか!
 今日来れないって〜〜〜、え〜良いですけどォ」

   「はい、はい、『逆に』ね〜ッ」

          「にへ、分かりました、じゃあまた」

  ピ!

          ツー ツー ツー

「暑〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ」

           「しかも雨だし……」

耳に当てていたスマホを下げ、電柱にもたれかかった。
ここは屋根がある通り――――だが、外では、雨が降っている。

                   ・・・帰るに帰れない。

608ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/06/15(土) 22:38:46
>>607

パシャパシャ

小さな少女が走ってきた。
まだ小学校に上がったくらいのように見える。

「ふー」

屋根の下に入り、取り出したハンカチで水滴を払う。
それから、隣に立つ相手に顔を向けた。

「こんにちはー」

挨拶する少女の手には『リード』があり、彼女の足元には一匹のイヌがいる。
『チワワ』だ。世界最小の犬種として知られている。

チラッ

『チワワ』が、少女――『日沼』を見上げた。
その様子からは、これといった喜びや不安は感じられない。

609日沼 流月『サグ・パッション』:2019/06/16(日) 23:01:35
>>608

「あん?」

          クルッ

走ってきた少女に振り向く。
日沼には知らない顔だったが……
特に邪険にする気分でもないので、少し身をかがめる。

「こんちは。急に降ってきたねェ〜〜〜ッ。
 朝、天気予報で雨とか言ってなかったのにさあ」

   「『逆に』雨ってった時は晴れだったりするしさ、
    予報だけは『ストレート』に当ててほしいワケよッ」

            チラッ

挨拶がてら天気への鬱憤を表明していたが、
犬の視線に、それを取りやめて……目を合わせる。

(チワワだ)

「てゆーか犬の散歩? えらいね。この子なんで言うの?」

(なんかチワワにしては珍しい感じ。達観してるってゆーか)

               (犬に達観も何もない気はするけど)

610ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/06/16(日) 23:50:00
>>609

ブルルッ

チワワは体を震わせて、毛に付いた水滴を落とした。

「今は『ツユ』ですからねー。
『ツユ』だと、よく雨が降るって、テレビで言ってました!」

《…………》

ヨシエは近くに人がいると、こうして話しかけようとする。
孤独を埋めるために、誰かと関わりを持ちたいのかもしれない。
そして、いつものように俺は相手を観察した。
見た所、若い娘だ。
少しばかり『はねっかえり』の匂いはするが、危険は感じない。

「この子は『ディーン』っていうんです。男の子ですよー」

そう言って、ヨシエは俺を抱き上げた。
人間と比べて遥かに小柄な俺の体は、小さな子供でも持ち上げられる。
それによって、俺と『先客』の距離は近付いた。

「いつも一緒にいてくれる大事なお友達ですよー」

チワワは愛想を振りまくでもなく、吼えるでもなく、黙って日沼を見つめた。

「お姉さんは、お買い物の途中ですかー?」

611日沼 流月『サグ・パッション』:2019/06/17(月) 00:48:52
>>610

「詳しいじゃん! 頭いいんだね〜、えーと。
 あっやば、犬の名前だけ聞いて、 
 『逆に』きみの名前聞くの忘れてたわ!」

           ルナ
「先行っとくけど、流月は『日沼 流月(ひぬま るな)』ね」

自己紹介をしつつ、抱えあげられた犬を見る。

「んで、『ディーン』?」

「良い名前じゃん! 『ポチ』って顔じゃないもんね〜ッ。
 可愛いじゃん、チワワってもっとはしゃぐイメージだけど」

       「おりこうさんでさァ〜」

『ディーン』の腹を触ろうと、ゆっくり手を伸ばす日沼。
差し出された犬相手にエンリョをするような殊勝さはない。

「ん? いや〜、待ち合わせしてたんだけど。なくなっちゃったワケよ」

             「だからなんの途中でもないかなァ〜」

612ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/06/17(月) 01:14:04
>>611

「はーい、えっと――」

「『嬉野好恵(うれしのよしえ)』っていいまーす」

「一年生ですよー」

名前を名乗られ、ヨシエは嬉しそうに名乗り返す。
それは『良い事』だと思った。
何となく俺も嬉しい気がしたのは、多分そのせいだろう。
尻尾が軽く揺れているのが自分でも分かった。

《――これぐらいなら良いか……》

ちょっとした礼の代わりだ。
そう考えて、そのまま触られた。
手触りは柔らかく温かい。

「じゃあ、今は『太陽さん』と待ち合わせですねー」

俺を抱いたヨシエは、雲に覆われた空を見上げる。
俺も同じように空を見つめた。

「『太陽さん』まだ来ないのかなー。『雲さん』とお話してるのかなー」

613日沼 流月『サグ・パッション』:2019/06/17(月) 02:12:32
>>612

「『ヨシエ』ちゃんね。よろしく!
 流月のことも『流月』ちゃんでいいよ。
 子供に敬語使わせるとか、流月はしないからさァ」

「てゆーか一年生!? しっかりしてるゥ〜」

      「流月といい勝負かな……」

小学生相手に張り合うのは、半分は冗談だ。
そうしてディーンの毛並みを撫でていたが・・・

「ん!?」

「……??」

「あ、そーね、ヨシエちゃんカッコいい事言うじゃん」

       (今の誰の声!??)

「むしろ『お月様』とダベってて戻って来るの忘れてんのかもね」

   (ヤバ、焦っておかしなこと言っちゃった)

詩的――――というより、子供らしい純粋さなのだろう。
それはいい、すごくいいんだが、今何か声がしなかったか?

少なくとも、それっぽい人間はいないのだが・・・?

(携帯きり忘れてたかな、でもセンパイあんな声じゃないしィ〜〜〜)

           (いや、普通に切ってたわ・・・今の声何!?!?)

614ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/06/17(月) 02:50:42
>>613

「じゃあ、『ルナのお姉さん』って呼ぶねー」

どこまでも無邪気に、ヨシエは言葉を返す。
そして、俺は二人のやり取りを見ていた。
何の問題もなかった。
少なくとも、そこまでは。

「あっ、そうかも!
ヨシエとディーンみたいに、太陽さんとお月様も仲良しなんだー」

独り言のつもりだった。
だが、どうやら『聞かれた』らしい。
という事は、『聞く事が出来る人間』だった訳か。

「?」

「どーしたんですかー?『ルナのお姉さん』?」

《…………》

チワワの特徴の一つは大きな目だ。
その両目が、やや細められる。
細めた両目が、日沼を見やる。

「もしかして、ルナのお姉さんのお友達がいたんですかー?」

キョロキョロ

あるいは、首輪に繋がっている『リード』が一瞬光っていたように見えたかもしれない。
それは、見間違いかと思う程にほんの僅かな時間だった。

615日沼 流月『サグ・パッション』:2019/06/17(月) 02:55:50
>>614

「んん、好きに呼んでいいよ。…………?」

(このチワワ!)

(何か目ェ細めてるし)

616日沼 流月『サグ・パッション』:2019/06/17(月) 03:01:28
>>614

「んん、好きに呼んでいいよ。
 お姉さんってのはいい響きだしね!

            …………?」

(……このチワワ!)

(何か目細めてるし! ウケる!
 けど、いや……『何か違和感があった』、ような)

         (んん……この、ヒモ?
           今変な光り方しなかった?)

   ズズ
         ズギャン

――――日沼の背後に立つ、『長ラン』を纏う『ヴィジョン』。

「ん〜いや、気のせいかなァ。
 流月の友達が来てたらよかったんだけどね。
 流月以外ヨシエちゃん以外、見当たらないワケで。
 や、もうヨシエちゃんは友達みたいなもんだけどさ」

        「あっ」

「あとは、『ディーン』もね! 忘れちゃいけないとこだよね〜〜〜ッ」

その手が、『リード』へとゆっくりと伸びる。『光るような素材だったか』?

617ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/06/17(月) 03:26:43
>>616

「そうだねー。『ヨシエ』と『ルナお姉さん』と『ディーン』だよー」

「三人でお話してるところ!」

『リード』は革製で、首輪も同じだった。
光る事は普通ないだろう。
光を反射するような加工がされていたとしても、『太陽』は隠れている。

《!》

「あっ――」

バッ

『それ』が見えた瞬間、俺はヨシエの腕から飛び降りた。
現れた『スタンド』の手が、俺とヨシエを繋ぐ『リード』に届く前に。
ほとんど反射的な行動だったと言っていい。
『それ』が危険かどうか判断するのは、その後だ。

「さっきからずっと抱っこしてたの忘れちゃってた。
ごめんね、ディーン」

ヨシエは、日沼の『ヴィジョン』に気付いた様子はない。
不意に地面に降りたディーンに気を取られている。
そして、ディーンの視線は『ヴィジョン』に向けられていた。
ヨシエの足元で、『ヴィジョン』をジッと見据えている。

618日沼 流月『サグ・パッション』:2019/06/17(月) 03:53:09
>>617

「ヨシエちゃんディーンとお話しできんの!?
 流月、あんまり犬の言葉ってわかんないんだよね。
 動物が苦手とかじゃ、ないんだけどさァ〜〜〜ッ。
 昔『バウリンガル』……って、犬語わかる機械使ったら、
 鳴き声の意味が流月の想像してたのと全然違ってばっかだったワケよ」

「だからさ〜。よかったら『ディーン』が何言ってるか通訳してくんない?」

一種の予防線でもあるし、単なる雑談の範疇でもある。

地面に降りたディーンを、
そしてその視線の先を見る。
・・・すると、疑問は大きく膨らんでいく。

――――『サグ・パッション』を見ているんじゃないか?

(……あれ!? こいつっ! この犬っ!
 まさかって感じだけど……見えてるワケ!?
 ヨシエちゃんには見えてなさそうなのに、
 『ディーン』には『サグ・パッション』が見えてる……)

     (つまり)

        (――――犬のスタンド使い!?)

  ジリ

(となると、今の声は……まさか、まさかだけど、もう状況は『逆転』してる!)

(声の出所をあてもなく探すよりは、こっちのが早い!)

≪……もしもォ〜〜〜〜〜し≫ 

≪って、こっちから話しかけて聞こえるのかわかんないけどさ≫

           ≪さっき声出したのさァ……『ディーン』?≫

長ランに、とてもじゃあないが『温厚』そうには見えない、大柄で屈強なヴィジョン。
それが、『心の声』のようにして、日沼の考えをディーンの精神へと届けてくる。

619ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/06/17(月) 19:13:09
>>618

「できるよー。ルナお姉さんも、ディーンとお話しますかー?」

ヨシエは、そんな事を言い始めた。
これだけなら、単に『子供の言う事』だと片付けてしまう事も出来る。
だが、このルナから見れば、『別の意味』も出てくるだろう。
『シラを切り通す』事も考えたが……今さら――か。

《…………》

ポゥッ

再び『リード』が『光』を得た。
『ワン・フォー・ホープ』を発現したからだ。
これによって、ヨシエは『スタンド』を『目撃可能』になる。

「わっ!?」

『スタンド』を見て、ヨシエは驚きの声を上げた。
俺のヤツ以外は見た事がないから無理もない。
実際、俺も驚いていた。
ヨシエを落ち着かせるために、俺は語り始める。

「――――え?うん」

「そうなんだー」

「うん、分かったよー」

ヨシエには、『俺が話す』と言っておいた。
そして俺は、この『図体のデカい用心棒』に向けて『意思』を発した。

《……『俺達』と『アンタら』の間には、『生き物』として大きな隔たりがある。
                      サプライズ
 だが、同じ部分もあるだろうな――『驚 き』ってヤツさ》

《『犬の声が分かる人間』に出くわした時に、どうすれば良いか教えてくれ。
代わりに、俺は『人間の声が分かる犬』に出くわした時の対処法を教えるよ》

《『何もしない』――それが『人間の声が分かる犬』に遭遇した時の対処法さ。
そうすりゃ『その犬』も、アンタには何もしてこないはずだ》

《アンタに尻尾を捕まれたのは俺のミスだ。
アンタのイカつい『ボディーガード』の腕が、俺の尻尾を握り締めてないのが救いだが》

《――――生憎、まだ『人間と喋る』のには慣れてないんだ。
『最初の挨拶』は、こんなもんでどうかな?》

『サグ・パッション』のヴィジョンから目を離さず、『意思』を返す。
口ではこう言ってるが、『油断』はしていない。

620日沼 流月『サグ・パッション』:2019/06/18(火) 00:21:06
>>619

「ヘェ〜〜〜ッ。じゃあ、ちょっとやってみよーかな」

と言いつつもう『やってた』わけだが・・・

            「っとォ!?」

「あれ、『見えるようになった』!??
 なにそれ! 見たことない『能力』……
 って、『逆に』見たことあるヤツのが少ないけどね」

「ごめんごめん、『ヨシエ』ちゃんを驚かす気はなかったんだけどさァ〜〜〜」

ヨシエに『見えている』事に気づくと、
一瞬スタンドを解除しかけてしまう。
怖がらせる気なんてのは、毛頭ないからだ。

≪ちょっ、とりあえずだけどさ、『ディーン』めっちゃ頭いいじゃん!
 犬ってかなり賢いとは聞いてたワケだけどさァ〜〜〜ッ!
  人間語が普段使えないだけで、めっちゃ色々考えてんだね。ビビるわ≫

が、『ディーン』のとりなしを眺める限り、その必要はないらしい。
スタンドの視線を返しつつ、特に構えなどは取らせず……会話をつなぐ。

≪んで、『犬の声が分かる』ヤツに会ったら〜〜〜?
  そんなん真剣に考えたことなかったわ、ウケる。
  ん〜どうだろ、『無視』でいいんじゃないのって気はするけど!
  今話してるコレは、犬語が分かるとかそういうのじゃない気がするし≫

     ≪特にヨシエちゃんと一緒んときは変なのに絡まれてもヤバいでしょ。
       犬の言葉が分かるって自称してるヤツとかさ〜、絶対ヤバいヤツじゃん!?≫

621ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/06/18(火) 01:00:10
>>620

《ああ、そうするさ。
危険なヤツには近付かないのが一番だ。危険そうなヤツにもな》

『ルナ』は危険そうには見えない。
『ボディーガード』の方は――危険な事も『やろうと思えば』出来そうだが。

《『力』がありそうだ。図体がデカい》

《大体の場合、体が大きいもの程、出せる力も強い。
『自然の法則』ってヤツさ。
俺よりアンタの方が力があるだろうし、アンタより『後ろのヤツ』の方が力があるんだろうな》

『ルナ』と『サグ・パッション』を観察するように見比べて、感想を言った。
俺の『スタンド』とは全く違うタイプだ。
だから、『興味』があった。

《別に深い意味はない。ただ、世の中には『危険なスタンド使い』だっているはずだ。
もし、『そういうヤツ』のスタンドがアンタみたいなタイプだったらどうしようか少し考えてたのさ》

幸いまだ出会った事はないが、人間の世界で言う『犯罪者』のスタンド使いもいるだろう。
そういうヤツらと出くわした時のために、知らない事は知っておきたかった。

《ヨシエを危険から守るには、必要な事だから――な》

622日沼 流月『サグ・パッション』:2019/06/18(火) 01:34:13
>>621

≪センパイにさ〜。『格闘技』ファンやってる人いるんだけど、
  あ、格闘技わかる? 人間の強いヤツが戦うヤツね!
  でさ、体重に差があったりすると全然強さ違うらしーよ。
  まあ、流月の『サグ・パッション』は、デカいから強いってワケでもないし≫

≪『逆に』小さいからパワーが凝縮されてる!
  みたいなのも、マンガとかだとありがちだよね〜ッ≫

        ≪流月達の力も『マンガ』っぽいしさ≫

(犬としゃべってんのが一番漫画っぽいけど! ウケる……)

今のところ、『サグ・パッション』を凌駕する力のスタンドは知らない。
スタンド自体をほとんど知らないのだから、当然ではあるが。
だから『図体』と『破壊力』に関係があるのかも、知らないところだ。

・・・知ってるヤツがいるのかも謎だが。

≪いや〜〜〜ディーンめっちゃ忠犬じゃん!
  今犬派か猫派か聞かれたら犬にしそうだわ、流月。
  まー流月は今んとこ危険なヤツには逢ってないけど、
  明らかに『生きてる世界違うヤツ』とかはいたしな〜≫

≪ヤバい奴に会った時のこと考えとくのは大事なのかもね。
 特にディーンは人間と違って護身用の物とかも持っとけないもんね≫

そういいながら毛並みに触れようとしたが・・・
なんとなく『大人の男』っぽいディーンの雰囲気に、無意識でそれは止めた。

623ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/06/18(火) 02:04:41
>>622

《ほう?》

『生きてる世界が違うヤツ』という部分が気になった。
事実、『そういうヤツ』がいるという事だ。
危険そうでない『ルナ』が出くわすという事は、俺が出くわす事だってあるだろう。
それは構わない。
出くわすのがヨシエでなければ。

《俺はアンタ達と違って道具を持ったりは出来ない。
後ろ足で立ち上がる事ぐらいは出来るけどな》

ヒョイッ

そう言って、俺は二本足で立ち上がってみせた。
元の高さは人間の言う『20cm』くらいだが、こうすれば少しだけ高い場所に届く。
もっとも、跳び上がる方が早い事もあるが。

《だが、身を守る武器なら用意してある。『牙』と『爪』さ》

人間にはないもの。
それが、『犬』としての俺の最大の武器だ。
今は、それに加えて『スタンド』という武器もある。

《……さて、雨もボチボチ上がってきたな。
待ち合わせに遅れた太陽も、ようやく顔を見せる気になったらしい。
どんな言い訳をするのか楽しみだ》

空を見上げる。
気付けば、雨足もだいぶ弱まっていた。

《さっき、ヨシエは友達みたいなものって言ったな。
だからって訳じゃないが……ヨシエを見かけたら声を掛けてやってくれ
『寂しがり屋』なのさ、ヨシエは》

《……ヨシエには言わないでくれよ。『強がり』だからな》

624日沼 流月『サグ・パッション』:2019/06/18(火) 03:17:23
>>623

「うおっ、芸達者〜〜〜!!」

二足歩行には、思わず喉から声が出た。
ヨシエに笑みを浮かべてディーンを指さす。

≪や、流月にも爪と歯はあるけどさ〜〜〜、
  流石にディーンのがそこは強いか。
  へへ、別に張り合う気はないケド……≫

         スイッ

手を見せる。
爪は丸い。笑みのたびに見える歯は白い。

そして・・・いつの間にか、雨音は遠ざかっていた。

≪ディーンわりと詩的だね〜。
 飼い主に似るってやつかな。
 それとも、『逆』だったりして〜〜〜ッ≫

≪あと、いい子ってとこも『似てる』のかな、言わない、言わない。
  流月、そーいうとこは『逆らわない』し、ちゃんとやるからね≫

            ≪今度は流月から声かけるよ≫

   ザッ ザッ

「ヨシエちゃん、流月そろそろ行くわ。
 お日様が出てきたら『帰る途中』になるワケだからさ」

「んじゃ、『また』ね」

ここで待っていても何も来ないのだし、ヨシエも帰るべきだろう。
挨拶をして、ディーンに手を振ってからスタンドを解除し――――その場を去る。

625ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/06/18(火) 03:48:45
>>624

《ああ、またな。次に会う事があれば》

「ルナお姉さん、また今度お話しようねー!」

俺とヨシエは、立ち去るルナを見送った。
雨は上がり、雲は晴れて太陽は顔を覗かせている。
遅い到着だが、今日は勘弁してやろう。
そのお陰で、意味のある出会いに恵まれた。

「ねえ、お姉さんとどんなお話したのー?」

《『色々』さ》

「えー?色々って?」

《帰ってから話す――もう『切る』ぞ》

ずっと出しっぱなしにしていると目立つ。
人目についたら面倒な事になるかもしれない。
そうなる前に、俺は『ワン・フォー・ホープ』を解除した。

(さて、家に着く前にヨシエにどう説明するか考えておかないとな)

どうやら言い訳を考えるのは太陽じゃあなく、俺の方だったようだ。
そんな事を思いながら、俺とヨシエは雨上がりの町を後にした。

626宗像征爾『アヴィーチー』:2019/06/27(木) 22:10:43

ゲームセンターの一角に作業服を着た中年の男が立っていた。
目の前にはクレーンゲームの筐体が設置されている。

「――難しいな」

持ち上げられたアームの先には何も無い。
失敗を重ねたせいか景品は開口部の間近まで来ていた。

「位置は悪く無さそうだが」

硬貨を投入する事を止めて筐体を別の角度から観察する。
その間に別の誰かが筐体の前に立ったとしても不思議は無いだろう。

627宗像征爾『アヴィーチー』:2019/07/06(土) 00:31:43
>>626

ほぼ同じタイミングで少年が筐体に硬貨を投入するのが見えた。
そのままの位置に立って彼が操作する様子を眺める。

「なるほど――」

彼はアームで持ち上げるのではなく転がしていた。
その方法を使って慣れた手付きで景品を開口部へ落としている。

「そんな手があったか」

少年が立ち去った後で再び筐体の前に戻る。
そして俺は銀色に光る一枚の硬貨を投入した。

628斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/07/28(日) 11:07:38
最近、お前ばっかりだなって?そうだな
確かに入った映画館の上映スケジュールが、全部『ネコドラくん劇場版』だったら俺だって呆れる
俺もそう思うんだが、まあ我慢していただく他は無いな。

 *beep*

真夏の分厚く重い雲が、空の3割を覆い、風が雨後の匂いを運んでくる中
俺はゲームセンターの路地裏で椅子に座り、溜息をついていた。
途中で途切れる事がない、1秒以上かかるヤツを


 「まいったな。」


――正確に言うと?

呻きながら倒れ込んでいるヤンキーどもを椅子がわりにして路地裏に座り込んでいた。
辺りには実体化した『鉄球』とヤンキーが同じ数転がっていて、ゲーセンの室外機がブンブンとうるさい
両親を侮辱した連中に同情は無い、が……どうしたもんかな。

或いは、怒りが覚めた後はただ燃え尽きるだけで、ぼーっとするしかないのかもしれない。
スマホから適当に音楽を再生すると、『ボヘミアン・ラプソディー』が流れ出してきた、やっちまったな、ママ。

手のひらで転がしている鉄球が、空の青色を映していた。

629夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/07/28(日) 21:25:58
>>628

音楽に耳を傾けていると、唐突に斑鳩のスマホが着信する。
これは――――『ライン』のメッセージのようだ。
送り主は『アイツ』だった。

   『アゲていこうぜ!!(大量のスタンプ。たぶん29個くらい)』

              …………意図は不明だ。

その場のノリで送ってきたのか、それとも何らかの力で今の斑鳩の気分を察したのか……。
おそらくは、『前者』の線が濃厚な気がする。
いずれにしても、きっと気にする必要はないのだろう。
それほど重要な事ではないだろうから――――。

630斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/07/29(月) 23:07:58
>>629

ふと見るとスマホに妙な記述が……えーっとライン?ナニコレ。
夢見ヶ崎からだって?なになに……『アゲていこうぜ』?

……意味が解らん。

ついでと言わんばかりに刺身のツマが29個ほど自己主張してくる
彼女のファッション並みにパンキッシュなラインだな、おい。

――お陰で肩の力が抜けちまった、怒るに怒れねえ。
さっさとこの五つ子の小指へし折って、アンチョビとマリナーラのピザでも食うかな。

しっかし、此奴らが難癖つけて来た理由が、今思い出しても笑えるな

「惚れた女にいい所見せようとしたら、ガン・シューティングの前で
俺が現代のジョン・プレストンしてたから。」なんて。

……ジョン・プレストンを知らない?じゃあ『リベリオン』を見ておいてくれ。
きっと退屈はしないだろうから。

俺は『鉄球』を裾から取り出し、チンピラ共の小指に叩きつけてグッドバイだ
枯れ枝を踏み抜いたような音がしたが、まあ俺の両親を馬鹿にしたのが悪い。

631宗像征爾『アヴィーチー』:2019/09/24(火) 22:19:23

ゲームセンターの中に、カーキ色の作業服を着た男が立っていた。
その手には『銃』を握っている。
目の前に置かれているのは、『ガンシューティングゲーム』の筐体だ。

「――やはり鈍っているな」

画面に表示されたスコアを見て、短い感想を漏らす。
いつだったか、ここで『コツ』を教わった事がある。
しばらく経っているせいか、その時と比べて点数は落ちていた。

「もう一度やってみるか」

待っている人間がいない事を確認し、再びコインを投入した。
銃を模したコントローラーを構え、照準を合わせて引き金を引く。
その度に、画面の中で敵が弾け飛ぶ。

「――悪くない」

最終的に表示された点数は、先程よりも上がっていた。
余り人気のないゲームだからか、ランキングにも入っているようだ。
下ろしたコントローラーを、おもむろに元の位置に戻す。

632宗像征爾『アヴィーチー』:2019/10/01(火) 19:01:45
>>631

やがて筐体に背中を向け、出口へ向かって歩き出した。
残された画面には、ハイスコアランキングが映し出されている。
その上位五名の中に、『Avicii』という名前が記録されていた。

633斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/12/08(日) 13:56:51

 「『牡蠣とマッシュルームのアヒージョ』ね。」

陶器の皿には黄金色の液体……オリーブオイルに浸され、輝く具材たちが
香ばしい香りと共に湯気をあげている、すぐ隣のバゲットは僅かに焦げ目がつき
口に入れなくてもその食感が想像できるようだ

銀のスプーンで牡蠣を掬い上げ、千切ったバゲットをオリーブオイルに浸す。
口に放り込むと心地よい鷹の爪とニンニクの風味が鼻を突き抜ける

 「うん、美味い。」

 (客も少ないし当たりかもな、この店、『運動』の後には美味しく食べられる。)

少し前までは『チンピラ狙いの通り魔』の話も合ったが
今ではとんと聞かなくなってしまった、この町の噂は足が速いのだろう

クラスメイトも今では病院から戻って、元気にクラス内でバカ騒ぎをしている
彼の妹も病院のベッドの足元で、縋りつく必要もなくなった

だからこうして、僕もゲーセンの裏側にこじんまりと構えた店のテラスで
こういう料理を食べられる、立地の割には随分と静かだし、有難い事だ。

 「……つまり、目下の僕の問題は『通り魔』より『ボーイズギャング』の方か。」

目と目が合って2秒でガン付け、ポケモンじゃあるまいしと言いたいが

『ヤクザ』と『チャイニーズマフィア』だのが三つ巴で仲良くしていたところに、
隣の県から別のボーイズギャングが入ってシマ争いになったり、ロシアンマフィアが出張って来たり
挙句の果てには、それにエクリプスの残党が絡んでもう訳が分からない。

おまけでこの前、スタンドの事で『聞き込み』をしたらそいつがボーイズギャングで
双方に眼を付けられた上にお呼ばれする。

 (『治療の能力を持つスタンド使いを探す事』を条件に幾つか仕事を引き受けたけど)
 (見つかるかは怪しいかな。)

 (――体育倉庫の壁に大穴を開けた奴も見つかっていないし。)

他に手はないので致し方ない事だ、そう自分に言い訳をしながら牡蠣をもう一つ口に放り込む
新鮮な牡蠣の食感が舌で踊る、食べたら無くなるのが口惜しい。

634宗像征爾『アヴィーチー』:2019/12/08(日) 17:01:11
>>633

ゲームセンターの方向から、
カーキ色の作業服を着た男が歩いてきた。
おもむろに顔を上げた彼の視線が、
テラス席に座る斑鳩の姿を認める。
そして、男は近付いて来た。

635斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/12/08(日) 17:10:23
>>634

多少陰鬱な気分だが料理の美味しさに舌鼓を打つ
そんな折に此方へ歩みを進める姿を、視界がとらえた

猛禽類のように鋭い眼光、カーキ色の作業服
暫くして律儀な男性だと言う事を思い出す、そうだ、前にあったのはあの湖だった

 「――おーい、宗像さん」

笑顔で手を振る
こういう場所で会うとは思わなかったが、意外な発見もある物だ

 「どうしたんです?宗像さんもお昼ですか?」
 「ゲーセンやった帰りには見えませんけど。」

彼は確かスタンド使いだった……筈だ。

636宗像征爾『アヴィーチー』:2019/12/08(日) 18:06:53
>>635

「この前は世話になったな」

男が近付く。
セーフティーブーツの底がアスファルトを踏む音が響く。
やがて、テラス席の前で立ち止まった。

「そんな時間だったか」

「――気付かなかった」

一旦その場を離れ、入口の方へ歩いていく。
自動ドアの前に立ち、開くのを待つ。
しかし、ドアは一向に開かなかった。
数秒間の後に、
ボタンを押さなければ開かないタイプがある事を思い出した。
社会から遠ざかっていた期間が長いと、忘れてしまう事も多い。

「君を見掛けたから寄っただけだ」

「――よく来るのか?」

間もなく店に入り、斑鳩の向かいの席に腰を下ろす。
注文を取りに来た店員に、
メニューの中で最初に目に付いた料理を告げた。
斑鳩と同様に、男はスタンドを持っている。
右腕に長大な鋸を備えた人型のスタンドだった。
その能力は不明だ。

637斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/12/08(日) 18:37:55
>>636

 「えっと……ああ、釣りの事ですか?どういたしまして!」

彼が向かいの席に座ると
作業服は兎も角、顔立ちとか佇まいはこういう場所に似合う気もしてきた
もっとも、厳格な理屈ではなく、『なんとなく』という曖昧なものだが。

 「まさか、知る機会も無いでしょうけど僕は学校だと優等生で通ってるんですよ?『基本』は。」

苦笑しつつも首を振る
とはいえ偶然ではなく、此方にはちゃんと理屈がある
フォークをナプキンの上に置き、数日前の事を回想する

 「この前、学校……清月学園の先生と先輩で飯に行くことになったんですけどね?」

 「3人だけだと寂しいなあと思って、知る限りの先輩とその知り合いとかを呼んだんですよ」

 「その時に先輩の1人から教えてもらったんですよね、ここ。」

 「そしたら結構いい店で、今驚いてるんですよ、嬉しい発見という奴です。」

肩を竦める、あの時は奢ると言ったら、結局払いが『何故か』割り勘になってしまったが
まあそれは些細な問題だろう、仲のいい相手が増えるのは良い事だと思う、それが美女なら尚更。

 「それで、僕に用でも無いしここに足を運んだと言う事は……宗像さんは、お仕事関係で?」

638宗像征爾『アヴィーチー』:2019/12/08(日) 19:16:13
>>637

しばらくして、皿に載った料理が運ばれて来た。
血の滴るようなレアに焼かれた赤味肉だ。
カットされた肉を、箸を使って食べ始める。

「あのゲームセンターを知っているか?」

「俺は暇潰しに行く事がある」

自分が歩いて来た方角に視線を向けた。
言葉の通り、そこにはゲームセンターが立っている。
視線を戻し、再び口を開く。

「裏手に設置された室外機の配管が壊れていた」

「――その修理だ」

経年劣化という部分もあっただろう。
だが、それを考慮に入れても使い物にならなくなるには早かった。
誰かが乱暴に扱わなければだが。

639斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/12/08(日) 20:56:14
>>638

 「室外機の配管……ああ。」

彼に運ばれてきた料理も実に美味しそうだった、だが浮気は良くない事だと皆知っている

飲み込んだバゲットをジンジャーエールで押し流す
口の中の油を流し込むと実にサッパリとするが、あそこの問題はサッパリとはいかない。

 「確か、あの辺りで乱闘を起こしたボーイズギャングがいたかな、誰かの『蹴り』でも当たったんでしょう」

実際、下手な場所だとそう言う連中が占拠して迷惑してるとかいう話だ
そして大抵の場合は店内でもめ事は起こさない、見えないところでやる方が、何方にも都合がよい。
そして『親交を深め合っている』最中に、たまたま脚の位置に近いパイプ……だのがあっても不思議な事では無い。

 「……その中に『いきなりギャングの1人が吹っ飛んだ』、っていう証言が有ったら、信じます?」

――こういう証言の方が、大概の場合は不思議だろう
ただし、何事にも例外は有る。

640宗像征爾『アヴィーチー』:2019/12/08(日) 21:19:34
>>639

「大抵の人間は信じないだろう」

多くの一般人にとっては、稚拙な作り話に過ぎない。
スタンドを知る者であれば、当然その可能性を考える。
もっとも、配管を傷付ける程度なら誰でも出来る事だ。

「斑鳩翔――それが君の名前だったな」

「珍しい名前だと思っていたが」

思い出したように、目の前に座る相手の名を口にする。
箸を置き、グラスに注がれた水を喉に流し込む。
両手を覆う革手袋を直しながら、言葉を続ける。

「『同じような名前』というのは案外いるものだ」

641斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/12/08(日) 23:15:56
>>640

 「両親から貰った自慢の名前ですからね」

ふと気が付くと、グラスが空になっていた
対して飲んだ気もしないのだが、こういう場所では仕方がない

 「とはいえ、僕が2人も3人もいる、というのは少しゾッとしますけど」
 「喧嘩とかしちゃいそうだし。」

ふと横を見ると枯葉が風に舞って渦を作るのが見える
そういう季節なのだ。

 「誰から聞いたんです?」

642宗像征爾『アヴィーチー』:2019/12/08(日) 23:53:58
>>641

「俺も自分が何人もいるとは思わない」

「同じ名前の人間なら何処かにはいるだろうが」

やがて箸を手に取り、食事を再開する。
その所作は何処か作業的だった。
実際、料理を味わっているとは言い難い。
生身の人間である以上、食わなければ十分な仕事が出来ない。
だから食っている。

「ゲームセンターにいた学生達の会話が耳に入っただけだ」

「話の中に斑鳩翔という名前が出て来た」

「詳しくは知らないが、
 『その斑鳩翔』は何か恨みを買っている様子だったな」

食べるペースは平均よりも速い。
程無くして、皿は空になっていた。
箸を置き、風に舞う枯葉に視線を移す。

「もし君なら教えておこうかと思っていた」

「だが――俺の勘違いだったようだ」

「『優等生』がボーイズギャングと関わりを持つとは考えにくい」

643斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/12/09(月) 01:12:57
>>642

 「――そうですか」

学校では少なくとも、他人を立て、愛嬌を振りまくと言う事をなんとかやってのけて来た筈だった
ただし、恨まれる心当たりがないわけでは無い、過去の行いとかなら尚更。


 「5年前から……まだ引き摺ってきたのか。」


 その台詞は掻き消えそうなほどに小声で呟かれた。

両親を壊した程度では収まらなかったのだろう
血反吐を吐き、どれだけ努力しても、其処には隔絶した差がある
俺はやったと叫んでも、それは見向きもしない、結果はそこにあり続ける。

自己が到達し得ないと考えた時、とれる手段は二つ
一つ、諦める ……一つ、自分の所まで引きずり落とす。

だが何故? ――そういう物だからだ。
恨みを買わない事も出来たのかもしれない、だが彼はそれをしなかった
才能こそ彼の『アイデンティティ』であり、それを失う事は自己の『ロスト』に他ならないからだ。

だから『しなかった』と言うよりも『できなかった』というのが正しいのだろう。

だからこうして、過去から地虫のように、這いだしてくる物がある
『恨み』という名前の『カス』が。

 「ごちそうさまでした。」

過去が自分の知らぬところで何をしようが、私にはどうでもいい事だ
しかしそれが今を脅かすなら、潰さなくてはならない
奇跡を脅かすなら、潰さなくてはならない。

 「お話、有難う御座いました 次に会えたら、また」

 「――今度はまた、釣りの話でも ワカサギ釣りとかどうです?」

微笑み、一礼し、代金を払い、歩き去る
ただし、今はあるかもわからない目標に当てもなく彷徨う事はしない。

今は目的がある
自分の名を騙る、過去からの恨みを潰す目的が。

644宗像征爾『アヴィーチー』:2019/12/09(月) 01:54:55
>>643

「ああ」

短く答え、そのまま斑鳩を見送る。
そして、背もたれに軽く体を預けた。
座っている椅子が軋んだような音を立てる。

「もし――『その斑鳩翔』が俺の知り合いだったとしたら、
 こう言うつもりだった」

振り返らず、誰に言うでもなく言葉を発する。
聞こえているかどうかは問題にはならない。
これは、単なる独り言に過ぎないからだ。

「今は大きな問題は起きていないようだが、
 それが今後も続くとは限らない」
 
「向かって来た人間の中に、
 『一般人以外』が存在しないという保証も無い」

「『目的』は知らないが、派手に暴れていれば、
 自分以外の人間に危害が及ぶ可能性も生まれる」

「それは家族かもしれないし、友人かもしれないし、
 『力を与えた者』かもしれない」

「壊れた配管は直せる。折れた骨も治る」

「だが、『心』は容易には治らない」

独り言を言い終えて、静かに席を立つ。
燃え残りの灰を思わせる虚無的な瞳が、外の景色を見つめる。
勘定を済ませ、その姿は歓楽街の中に消えて行った。

645鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/12/20(金) 00:54:32
既に辺りが暗闇に包まれた中でも、この歓楽街は『不夜城』の如く明かりが煌めいている。
このゲームセンターも、その輝きを作り出す一つだ。とはいえ、自分には少し眩しい。
あまりこういった場所を訪れたこともなく、竹刀袋を背負った学生服のこの姿も、少し浮いている気はする。

(…最近は、何の手掛かりもない)

そもそも、刃物による『通り魔』事件自体話を聞かなくなっている。
あの犯人は、身を隠すことに決めたのだろうか。だとするならば、犯人を見つける望みは薄くなる。
もちろん、これ以上犯行を重ねないに越したことはない。だが、罪を償わせないまま放置していいはずもない。
それに、いつまた犯行を始めるとも限らないのだ。

「…結局、できることは限られているけどな」

こうして地道な『見回り』程度だ。手に持っている緑茶のペットボトルに、口をつける。

646???『???』:2019/12/21(土) 00:52:43
>>645

自販機の前で私服姿の少女達が歓談している。
どうという事のない日常的な光景。
その時――――。

    ズッ

自販機の陰から、這うように『腕』が伸びてきた。
五指に鋭利な『爪』を備えた異形の手。
『スタンド』だ。
その姿が徐々に露になる。
スタンドは、『座頭市』のように目を閉じていた。

           スゥッ

スタンドが腕を持ち上げた。
『爪』の切っ先は『医療用メス』のように鋭利だ。
すぐ近くには二人の少女が立っている。

            ――――シュバッ

そして、スタンドの腕が振られる。
その動作は速い。
『高速』だ。

647鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/12/21(土) 01:12:42
>>646

少女達の歓談を見ながら、思う。
妹の朝陽(あさひ)も、あんな風な日常の中にいたのだ。それは明日からも明後日からも、ずっと続くと彼思っていただろう。
だが、魔の手というのはいつ襲いかかってくるか分からない。
だからこそ、守るのも難しいわけだが。

「────────」

キャップの蓋を閉めている時に、それは現れた。
『スタンド』。『刃物』。忍び寄っている。その先には二人の『少女』。

「『シヴァルリー』ッ!!」

スタンド、『シヴァルリー』を発現しながら全力で接近する。
『5本』の刃の内、『小指』を除く『4本』まで殺傷力を奪おうとする。手足を使い、間に誰もいない位置で吸収する。
だが、『1本』だけは無効化し切れない。間に合うか。速度はこちらより早い。
間に合わなくとも、必ず『射程距離』に収める。絶対に逃がさない。

648???『???』:2019/12/21(土) 01:37:21
>>647

スタンドの腕が振られた。
しかし、既に『シヴァルリー』は動いている。
視認した『刃』から『殺傷力』を奪う。
それが『シヴァルリー』の能力だ。
そして、その発動はスタンドの動きよりも速い。

    シュババババァァァァァ――――ッ!!

奪った『殺傷力』が飛来する。
しかし、それが誰かに当たる事はなかった。
位置取りは上手く調整されている。

          クルッ

スタンドが向きを変えた。
もう片方の手は陰になっていたが、今は見える。
そこにも『爪』があった。
『爪』は両手に備わっている。
『シヴァルリー』の能力を以ってしても、その全ては無力化できない。

              ――――ババッ

鉄の声に反応したスタンドが、自販機の裏手に素早く後退する。
やはり俊敏だ。
しかし、少女達は無傷で済んでいる。

…………一方で『妙な事』もあった。
あのスタンドが切り付けたのが『自販機』であり
(『殺傷力』を奪われたために正確には切れなかったが)、
少女達には全く触れていなかった事だ。
何が目的なのだろうか?
ともかく、スタンドの姿は陰に隠れて見えなくなった。
しかし、そう遠くには行っていまい。

649鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/12/21(土) 01:44:49
>>648

(両手とも…?!『10本』全てを無効化するのは不可能、ならば誰かを傷付けられる前に!直接斬ってやるッ!)

>              ――――ババッ

下がったのを確認した。『殺傷力』を奪われた事に気づいたか。
それとも『遠隔操作型』で、近距離戦には自信がないのか。どちらにせよ、慎重なタイプだ。
『自販機』を切った時の手応えで、こちらの能力には少し気が付いたかもしれない。
相手の能力は一体どんなタイプだ?例えば『自販機』を切ることで、次に触れたものに『斬撃』を伝播させる能力などか?

とにかく追跡を続け、自販機の裏手へと回り込む。逃走ならば、『本体』の近くへと移動するはずだ。

650夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/12/21(土) 02:07:35
>>649

退避を選んだなら、本体の下へ移動する。
その可能性は高いだろう。
そして、鉄は『シヴァルリー』と共にスタンドを追跡する。
いくら素早いとはいえ、目で追えない程のスピードではない。
今からなら十分に追いつけ――――。

          ド ン ッ !

「あたッ――――」

回り込んだ直後に、『誰か』とぶつかった。
『不思議の国のアリス』をイメージしたようなファッションの少女だ。
床の上に尻餅をついている。
もしかすると、どこかで見たような姿だと思うかもしれない。
おそらく、『神社』で遭遇したような気がしないでもない。

          「おん??」

       「え〜〜〜ッと、ココ!!」

          「あ、コッチか??」

         「いや、このヘンだなタブン」

   「なかなかやるな!!かくれるのがウマいヤツだ!!」

       ササッ       ササッ
            ササッ       ササッ

何かを探しているらしく、床の上を両手で触っている。
本人の『すぐ近く』には『サングラス』が落ちていた。
そういえば、あの時も『サングラス』を掛けていたようだ。

651鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/12/21(土) 02:26:55
>>650

>          ド ン ッ !

「ぐっ?!」

何か、人のようなものとぶつかった。これが『本体』か?
素早く『摺り足』で後ろへと下がり、改めて正面を見る。
そいつの体格は自分より小さいのか、こちらは体勢を崩さずに済んだ─────。

「…アリス?」

その特徴的な格好には見覚えがある。あの時『神社』で遭遇した、不思議な少女だ。
すぐ側の『サングラス』に気付いていない様子だ。これも彼女なりのジョークなのだろうか。
普段ならその流れに乗る所だが、今は状況が状況だ。彼女の手を掴み、引き上げ自分の背中側へと回す。
一応彼女の持ち物らしい『サングラス』は踏ませないように気を付けよう。

「アリス、今ここを誰かが通りがかってはいないか?」
「そいつは、あるいはとても危険な人物かもしれないんだ」

『シヴァルリー』は引き続き、前へと立たせる。

652夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/12/21(土) 02:58:41
>>651

「――――おうッ??」

   グイッ

腕を力強く引かれ、そのまま立ち上がった。
そのために、まだ『サングラス』は拾えていない。
首を傾げながら、鉄の言葉に耳を傾ける。

「あ〜〜〜…………」

「『とおりがかったよ』」

「ソイツは!!とつぜんワタシのウデをつかみ!!
 おもいっきりひっぱりあげたんです!!A・Yさん(16さい)!!」

「しかもスゲーいきおいでゲキトツしたしな。これはキケンだ!!
 もしクルマだったらヤバかったぜ!!」

「まんいちのためにホケンはいっとかないとな〜〜〜」

先程のスタンドは見えない。
既に逃げてしまったのだろうか。
あるいは、ゲーセンの中に『本体』が紛れているのかもしれない。

「それより、クロガネくん。『アリスのサングラス』みてない??
 どっかにフッとんだかな??
 きのうキツクいいすぎたせいで、ジッカにかえっちゃったか??」

落ちている『サングラス』は、まず見落とさないような位置だった。
それを考えると、やはりジョークかもしれない。
ふざけてでもいない限り、普通なら気付くはずなのだから。

653鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/12/21(土) 19:37:14
>>652

>「しかもスゲーいきおいでゲキトツしたしな。これはキケンだ!!
> もしクルマだったらヤバかったぜ!!」

>「まんいちのためにホケンはいっとかないとな〜〜〜」

「…なぁアリス!ぶつかったのは悪かった、謝るよ。だが今はふざけてる場合じゃあないんだ」
「最悪、『保険』で治せない傷が付くかもしれない」

相変わらずも呑気な彼女の声に、若干の苛立ちを覚える。
アリスもあの自販機前の少女と同じだ。
『非日常』を求めていると言っていたが、やはりすぐに実感は湧かないのだろう。
こうしている間にも、『犯人』を取り逃がすかもしれないのに。既にあの『シザーハンズ』のようなスタンドは消えていた。

(『音仙』さんから聞いた話では、確か『遠隔操作型』といえど、
 本体から離れた場所では解除できないはずだ…もっとも、例外もあると付け加えていたが)

スタンドの能力を用いれば、遠隔解除も可能かもしれない。あるいは『スロウダイヴ』のように、何かを媒介して逃走したか?
だとするなら、どちらにせよ手遅れだ。どうか、まだ本体が近くにいる可能性にかけたい。

「頼むから真剣に答えてくれ───」「…?」

振り返り、アリスの方を向く。
彼女はまだ自分の『サングラス』を探していた。そこで違和感を覚える。
アリスは自分の感性では分からない冗談を言ったりするが、それをこうも繰り返すタイプだろうか。
あまり一つのことに拘泥する性質ではない。一度会ったきりだが、何となくそう思っている。

「・・・・・・・・・・」

『シヴァルリー』にサングラスを拾わせ、アリスへかけさせる。
もし全てが冗談で、彼女に目が見えているなら、突然浮き上がったサングラスに何らかのリアクションをするはずだ。

654夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/12/21(土) 21:02:08
>>653

あのスタンドは消えてしまった。
逃げ切られたかは不明だが、とにかく見失った。
だが、まだ本体は近くにいるかもしれない。

「まぁ、おちつけよ??
 シンコキュウして、まわりをよォ〜〜〜くみるんだ。
 そうしたらサングラスもみつかるかもしれない」

「『き』をかくすには『もり』のなか。
 『サングラス』をかくすには『アイウェアショップ』のなか」

「あるいは『まなつのビーチ』だ」

『シヴァルリー』がサングラスを拾い上げる。
『見えている』なら、何かしらの反応が返ってくる。
それが自然だろう。

        スッ

「おお、わるいな!!」

「コレは『アリスのおきにいり』なんだ。
 なかなおりのシルシに、
 まるでシンピンみたいにピカピカにクリーニングしてやろう」

しかし、『際立った反応』は全くなかった。
浮かんでいるサングラスが見えている様子はなく、
それを持つ『シヴァルリー』が見えている様子もない。
おそらく、鉄自身の手で掛けさせても同じリアクションだっただろう。

655鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/12/21(土) 21:25:54
>>654

「…相変わらず、元気なようで何よりだ」

やはり彼女の言っている事は、大体半分ほどしか分からない。
それは何かを暗喩しているのか?それともノリだけで、口から思いつくままに語っているのか?
─────『スタンド』を隠すなら、それが目立たない自然な空間の中に隠すと?

「・・・・・」

もっとも、アリスに『シヴァルリー』が見えている様子はない。流石にそれは考え過ぎか。
しかし同様に、浮き上がったサングラスに驚くようにも見えない。
これはつまり。彼女が相当な演技派ではないとして、だが。

「キミは」「『サングラス』がないと、目が見えないのか?」

656夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/12/21(土) 22:22:11
>>655

「――――うん」

事も無げに言葉を返す。
この言葉が冗談でない限り正しいのだろう。
よく見れば、鉄が見えているのではなく、
声の聞こえる方向を向いているのが分かるかもしれない。

「まだよくみえてないよ。
 インクがしみてくるみたいにジワジワとみえてくるんだ。
 インクのシミって、なかなかおちないよな〜〜〜。
 ガンコなヨゴレは、てあらいでこすらないと!!」

そういえば、あのスタンドは目を閉じていたようだった。
目そのものは存在していたが、開かれていなかった。
閉じておく必要があったのか、それとも開けなかったのか。

「で??なんだっけ??
 はやくいかないと『デートのやくそく』にまにあわないんだっけ??
 だったら、いそいだほうがイイぞ!!」

「さいしょのインショウはだいじだからな〜〜〜。
 わるいイメージがつくと、なかなかきえないから。
 おちにくいインクのシミみたいに」

         キョロ キョロ キョロ

衣服の乱れを軽く整えつつ、辺りを見渡す。
本人の言う通り、まだよく見えていないらしい。
黒目がちの両目が、鉄を見つめた。

657鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/12/21(土) 22:46:35
>>656

「──────」

訊ねたからには当然予測していた内容だったが、にも関わらず、その返答にショックを受けている自分がいた。
勿論、世の中にはそういう人間がいるのは知識として得ていた。
明るい光の中でしか物が見えない人間もいれば、光が強過ぎると物が見えない人間もいる。
だが、こうして実際に会ったのは初めてで。しかも、それが既に知っていた人間となれば。

「…そう、か………そういうものなんだな…」

頷き、覚えておく。いずれ彼女や、同じような症状の人間と接する時に、役に立つかもしれない。
『デート』の約束、とのたまうアリスに対して、首を振った。

「いや」「『通り魔』を追ってる」
「正確には、そうかもしれない『超能力者』だ」

だから、自分も伝える。彼女の事だけを一方的に知るのは、フェアではない。


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