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【個】『学生寮 清月館』

904三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2023/02/28(火) 14:54:59
>>903

震える指先でページを開いた三枝は、一心に目を通し始める。
『遺言』とでも呼ぶべき文面を読み終えた後、計り知れない衝撃を受け、
危うく日記帳を落としそうになった。
信じたくない。
だが、認めざるを得なかった。
やはり、あの話は『事実』だったのだと。

「小林…………先輩…………」

『小林先輩は死んだ』。
もし相談してくれていれば…………。
いや…………そうされたとして何が出来ただろう。
きっと何も出来はしなかった。
自分は無力な人間なのだから。

      グッ

日記を握る手に、無意識に力が込められる。

「…………『スワンプマン』…………」

ふと、その言葉を思い出していた。
『一度死んで作り直された』――――三枝千草は『小林丈の秘密』を打ち明けられた事がある。
『小林の死』に直面して、その記憶が鮮明に蘇ったのだ。
『生き返った存在』なら、『死』を超越する事も可能なのでは。
『死を恐れる精神』と『小林の秘密』という二つの要因が、
他の者には辿り着けない発想に至らせたのだ。

       ジッ…………

もう一度、『最後の文章』に目を留める。

「千草は…………何が出来ますか…………?」

「『秘密』を打ち明けてくれた先輩の為に…………何が…………」

閉じた日記帳を胸に抱き、誰もいない部屋で呟く。
少なくとも、ここですべき事は終わってしまった。
他に何も見つからなければ、日記を持ったまま自室に帰っていくだろう。


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