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【個】『学生寮 清月館』
344
:
大神 或真『ネヴァー・グローイング・アップ』
:2021/04/07(水) 10:23:49
>>343
おやおや、常原クンが大事なシルクハットを拾ってくれたぞ。ありがたい。
鳩は出ないぞ、なんてったってボクの能力は無生物限定だからね。
「やぁ、ありがとう、常原メイド隊員。これは、お父様の大事なシルクハットなんだ。」
というわけで、ボクは常原クンからシルクハットを受け取ったのさ。
「ホントにその通りさ。油断すると、薄っぺらい手品(マジック)は解けてしまう」
そして、ボクはシルクハットを被ったのさ。
嘘も被るし、シルクハットも被る。ボクってば、そんなヤツなのさ。
「だがしかし。
ボクらは三次元の宇宙に居るわけだけど、三次元から見た二次元は薄っぺらい。
だとするならば、四次元から見たら、三次元は薄っぺらいのかもしれない。」
「はてさて、だとするならば、『薄っぺらい嘘のフィクション』と『重厚な現実のノンフィクション』の境界は、どこにあるというのか?
現実のタネを明かしたら、何が出てくるのか?」
適当な言葉を並べ立てる。
「それはともかくとして。それでも。だからこそ。ボクを『坊ちゃま』って呼んでくれてありがとう、常原メイド隊員。」
「キミは確かに、可愛い文鳥で、正真正銘、立派なメイドさんだ。
キミの真実がメイドさんであることを、ボクが観測したのだ。」
ボクはオッドアイの瞳でキョロキョロと常原クンの全身を見渡した。
一つ、大柄な体格。遠目からでもわかる、身長180以上だろう。
まるで彫刻のように、大袈裟に鍛え上げられている筋肉。
二つ、左目の『眼帯』。レース編みで飾られている。
三つ。黒いスカートワンピ。エプロン。ヘッドドレス。
リボン、たくさんの白いフリル。
低く、大きく通る、実直そうな声音。『メイド服』。
ふむ。
「この世界を虚飾が覆っていたとしても、キミは真実のメイドさんだ。
この世界の他の誰もが認めなくとも、ボクが認めよう。」
「これは嘘じゃないぞ。本当だぞ。」
うそかな? ほんとかな?
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