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【個】『学生寮 清月館』

138斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/12/14(土) 13:35:31
>>137

 「成程、正論だ。」

言っている事は実に正しい

 「……じゃあ、その『品位』に来る前のノックとか不法侵入の拒否を期待するのは駄目なんですか?」

だがそれに行動が伴うとは限らない
その好例を垣間見た気がした

おまけに『鎖』が『紐』の如く断ち切られた
『ぬいぐるみにする能力』……人型の実体が出ていた所から、器物型では無い
おそらく、ここに入ってきたのも『壁』を『ぬいぐるみ』にしたのだろう、物音がしないのも道理である

 「――?別に『喧嘩とかした覚え』はないけど。 その、『外れやすいボタン』を治そうとするのも…困る
 それは僕のお祖母ちゃんにやってもらわなきゃいけない事なんだ、理由は言わないけど。」

隻眼の事は気にしないことにした、僕に事情がある様に、彼にも事情があるのだろう
態々眼帯で隠そうといているソレを追求する事は彼の言う通り、『品位』に欠ける。

 「だから、清掃と洗濯までなら……まだ……ゆ……」

それはそれとして直視したくないのもあった。

 「くっ!負けるな僕!立ち向かえ僕!恐怖を燃やすんだ!
 たかが野郎のメイドが押しかけてきてるだけだ!!斑鳩翔はうろたえなぁい!」

両親の、ひいては自分の為に戦うと決めていた、影と鎖はその為の力だと思っていた
でも予想外の出会いに心が折れそうだった。予想できるかこんなもん。

 「清掃と洗濯までは許すし、何なら不法侵入の件も許すから、ボタンなおすのはやめろ……大事な家族の事情なんだ」

首を絞められた雄鶏が絞り出すような声は震えていて
悪魔に魂を売り渡した気がした

実際にはメイドだが。


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