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【ミ】『フリー・ミッションスレッド』 その1

815三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2021/10/11(月) 00:00:41
>>813-814

「なるほどねぇ・・・・」

店を営む者にとっては切実な願いだ
それだけにブームに乗れる者と乗れない者、商店街の中で格差が生まれてしまう

(商店街の分断はちょっと嫌な感じだからねぇ・・・・)

「うーん・・・・僕は自炊なんてほとんど出来ないし、料理については門外漢ですけど
『うなぎ』・・・・・なんてものはどうでしょうか?」

「『うなぎ』はこの町の名物ですし、
 定食屋を営んでいる方には釈迦に説法かとも思いますが、
 うなぎは夏の食べ物・・・・だと皆には思われていますが、実際の旬は『初冬』・・・・冬の食べ物です」

「その辺を町の人達にアピールすれば、『冬』らしい感じになりませんかねぇ?
『クリスマス』とはちょっと違いますけど、それも商店街の人情ある愛嬌って事で」

「他の方々に対しては・・・・どうしましょうか?」

816『星見町の終わらない夏』 〜ウィンターじいさん編〜:2021/10/11(月) 00:10:48
>>814(百目鬼)
「『さま食堂』ってンだよ。サマーってのが夏だろ?
 だからオレは『夏好き』で、この『冬キチ』と
 相性が悪いじゃあないかと思ってンだがね」

『定食屋の老人』がシシシと笑う。

「繁盛しそうな『献立』を考えてくれりゃあ、オレは文句ねェよ。
 『献立』つってもこう見えて『50年』ずっとメシ作ってきたんだ。
 そんなに細かくなくても『こういう感じのモン』って、
 アイディア言ってくれりゃあ後はサッと作ってやらあ」

『頭がコッチコチじゃから流行りそうなメニューなんて考えられんのじゃよ』
などと『ウィンターじいさん』が混ぜっ返す。

>>815(三刀屋)
そんな中、『三刀屋』が『うなぎ』を提案するが………

「フォッフォッフォ。うなぎは旬はともかく、
 やはり『夏』のイメージが強すぎないかの?
『クリスマス』ぽくないし………『冬』をアピールしてる間に
 『ブーム』が終わってしまいそうじゃ」

なぜか『ウィンターじいさん』の方から駄目だしを食らってしまった。

とりあえず『クリスマスツリー』のために「『冬のメニュー』が必須。
その他の物品などは、あれば結果的に『商店街』の
クリスマス化が強まる形となるというところか。

今すぐ解決できるのならそれでもいいが、
一度持ち帰って『知り合いたち』と相談してもいいのかもしれない。

817三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2021/10/11(月) 00:32:55
>>816

「うーん・・・・イメージが重要なら『ラッコ』をモチーフに使ってみるのはどうでしょう?
 ご存じでしょうか?今起きている『クリスマスブーム』
 その大本の一つはSNSでバズったこの画像にあるという事を」

三人に『Electric Canary Garden』公式アカウントの『ラッコ画像』を見せる

「『ラッコ』をイメージした見た目の料理を作ればSNS映えも狙えますし、
 折角のこの機会に乗らない手はないですよ」

「例えば、普通のハンバーグ定食の上に飾りの貝・・・この辺だと『あさり』が名物でしたよね
 それを乗せて、ニンジンとブロッコリー、それにポテトサラダを使って赤緑白でクリスマスカラーを作ってみるとか」

「メインはハンバーグ定食なのでさま食堂さんにとってもそれ程手間にはならないでしょうし
 ハッピーセットみたいに袋詰めしたおもちゃを配ったりすると
 お子様にも、子供にニンジンを食べさせたいお母さまにも喜ばれるんじゃあないでしょうか?」

「あるいは、おもちゃを配るというのは商店街の皆さんが公平にやれるキャンペーンかもしれませんねぇ
 『ウィンター』さんの店ならそういうアイテムがたくさんあるんじゃないですか?
 それを提携店に融通して配ってもらうとか・・・・」

818『星見町の終わらない夏』 〜ウィンターじいさん編〜:2021/10/11(月) 00:57:22
>>817(三刀屋)
「フォッフォッフォ、孫から聞いたのォ。
 『ラジオ』とか『いんたーねっと』で流行っているとか」

『クリスマスラッコブーム』について『ウィンターじいさん』は知っているようだ。

「『オモチャを配る』、なるほどのォ。
 ただ、どうせ配るんなら『サンタ』が配った方がよさそうじゃな。
 ワシが『サンタ』になって配ってもいいんじゃが………ウチの孫にバレちゃうからのォ。
 『サンタ』信じとるからの、ウチの孫」

『サンタ』を信じる頃合いの純真な孫が居るのだろう。
まあ、この祖父がいれば信じているのはむしろ当然か―――

 ………

「なるほどォ、『ハンバーグ』で『ラッコ』、ソイツが砕く『貝』を乗せるって寸法か。
 さすが若ェヤツのアイデアは一味ちがうね」

『さま食堂の老人』は早速、『三刀屋』のアイディアをメモし始める。
とりあえず一案………『老人』はもう少しアイディアが欲しそうな顔をしている。
確かにタマは多い方がいいか―――

819百目鬼小百合『ライトパス』:2021/10/11(月) 00:58:43
>>816-817

三刀屋のスマホを見て、『ラッコの画像』を確認する。
その存在は、どこだかで聞いた覚えがあった。
典型的な『便乗商法』ではあるものの、
だからこそ売れるかもしれない。

「『さま食堂』――――『名は体を表す』とは良く言ったもんだよ」

「『夏』と『冬』じゃあ、確かに『水』と『油』だね」

そうは言うが、ここまでのやり取りを見ている限り、
そこまで険悪という訳でもなさそうだ。
良きライバルといった所だろうか。
張り合いのある相手がいるのはいい事だ。

「『冬らしい献立』だと、ちょっと範囲が広すぎて難しいねぇ」

「『クリスマス』に絞ると……見た目だけでもいいなら、
 『クリスマスツリー』の形に盛り付けるとかさ」

真っ当な『冬らしさ』を出すには邪道な気もするが、
三刀屋の言うように、そういうのも一つの手段だろう。

「それを『冬らしい食材』でやれば、
 説得力が増すかもしれないよ」

820『星見町の終わらない夏』 〜ウィンターじいさん編〜:2021/10/11(月) 01:10:00
>>819(百目鬼)

「フォッフォッフォ。今来てるのは『クリスマスブーム』らしいから
 確かに、『クリスマス中心』のメニューがいいのかものう」

『ウィンターじいさん』が『百目鬼』に賛同する。

「形くらいは盛り付けられるが、『冬らしい食材』ねェ。
 ウチのメニューは年中一緒だからなァ」

料理人ならばその食材くらい自分でアイディアを出してほしいものだが、
『さま食堂の老人』は全てこちらにお任せにするつもりらしい。
二人で話し合って煮詰めてもいいし、
誰か、『料理が得意そうな』知り合いがいればそこに聞くのもいいか―――

821百目鬼小百合『ライトパス』:2021/10/11(月) 01:13:34
>>819

「いや……今『ブロッコリー』って言ったね」

「ブロッコリーを『クリスマスツリー』に見立てるってのはどうだい?
 多分、見た目のクリスマスらしさはあるんじゃないかねぇ」

「ブロッコリーを積み上げてツリーらしい形にしてさ。
 そこに飾り付けをする。
 要するにサラダの一種だよ」

「星型に切った野菜だとかチーズだとかベーコンだとか何でもいい。
 色んな色を取り入れて、出来るだけ派手にするんだ」

「ま――これだと『単品メニュー』になっちまうか」

822百目鬼小百合『ライトパス』:2021/10/11(月) 08:41:26
>>821

「あとは、適当なドレッシングを細く引いて、
 電飾の代わりにしてもいいね。
 マヨネーズでもケチャップでも、
 見栄えが良ければどんなものだっていいんだ。
 細かい部分は作る側に任せるよ」

823三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2021/10/11(月) 08:56:10
>>818-822

「おじいさん、おじいさん、お孫さんの事ならきっと大丈夫ですよ
 最近の子供は賢いですからねぇ、『サンタ』の事を信じていても、
 そうじゃない『商業用サンタ』がいるって事も受け入れてますよ」

クリスマスシーズンになれば街中にサンタ衣装の客引きが多く出回る
サンタを信じている子供達も、それら全てが本物だと信じているわけではないだろう

「なるほど、『クリスマスツリー』をイメージしたサラダ盛りですねぇ
 山盛りにしたサラダを皆でシェア出来る形式にしたら
 見た目が派手で映えそうですし、皆で盛り上がりますねぇ」

「ちょっとした一工夫で出来るものとしては『七面鳥』を意識してみるのはどうでしょう?
 普通の鳥の照り焼きやチキンステーキでも、添え物のポテトサラダを二段に積み重ねて雪だるまみたいにしたり、
 あとはクリスマスカラーのリボンやヒイラギの小枝を飾り物に使えば、
 意外とクリスマスっぽい感じになりますしねぇ」

824『星見町の終わらない夏』 〜ウィンターじいさん編〜:2021/10/11(月) 20:32:10
>>821-822(百目鬼&三刀屋)

「『ブロッコリー』を『クリスマスツリー』、
 ドレッシングが『電飾』―――
 なるほどねェ……ヤングな発想だな! それはよォ。

 あとは『七面鳥』ってのもシャレてるねェ―――
  色んな食材で『クリスマス』を再現してくってわけか。

   おお、段々、上手くいきそうな気がしてきたぞッ!」

『さま食堂の老人』の目が輝いてきた。
二人のアイディアはなかなか好評なようで、
この分だと意外とスムーズに『許可』が得られそうだ。

「まァ、『ニセモノのサンタ』………
 君がいう『商業用サンタ』が居るというのは
 さすがの孫も理解しているようじゃがの。
 それはそれとして『ホンモノのサンタ』がいると信じているようじゃ。
 まァ、ワシの孫じゃし、血筋と環境のタマモノかの」

 『ウィンターじいさん』はそういうとフォッフォッフォと笑う。

「そういえば、『クリスマスツリー』を飾るとして、いつがいいとかあるのかの?
 ワシはずっと出しておいてもいいんじゃが、
 メンテナンスもあるし、一番、効果的な時に出したいって意見も多いんじゃよ」

825三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2021/10/11(月) 20:43:38
>>824

「いいですねぇ!その調子ですよ!」

『さま食堂』の主人の語気をみる限り、どうやらなかなかに『その気』になってきているようだ
ご老人とはいえとても頭の柔らかい方で良かった、と三刀屋は思う

「ハハハ、『ホンモノのサンタ』ですか
 いや〜、僕も会えるものなら会ってみたいですねぇ・・・・でも」

ふと『ラジオ局の怪電波』を思い出す
ラジオ番組をジャックした『彼』なら・・・・あるいは・・・・・

「案外、会えるかもしれませんよ?本物に」

「・・・・っと、そうそう、『クリスマスツリー』を飾る日程ですね
 そうですね・・・・どうも『〇〇日(Xデーの日)』にイベント事が集中しているみたいですからねぇ
 その日の1週間前から当日にかけて飾るというのはいかがでしょうか?」

826『星見町の終わらない夏』 〜ウィンターじいさん編〜:2021/10/11(月) 23:48:42
>>825(三刀屋)
「『ホンモノ』に会えたらワシも嬉しいのォ〜〜〜。
 この恰好を見ればわかるとおり、『ファン』じゃからのォ〜〜」

『ウィンターじいさん』がまたもや笑う。
『さま食堂の老人』も熱心にメモをしている。

「〇〇日といえばもうすぐじゃのッ。コイツも納得してくれたようじゃし、
 じゃあ早速、『商店街』の他のヤツらにも掛け合ってこようかのッ!」

どうやら『巨大クリスマスツリーの設置』は上手くいくようだ。
『さま食堂』の新たなメニューや『商店街』の他の面子への融通などは、
後でこの『ウィンターじいさん』に伝えてもいいだろう―――

827三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2021/10/12(火) 00:13:24
>>826

「ハハハ、『ウィンター』さんも是非この日は外を出歩いてみてください
 もしかしたら・・・・何かが起こるかもしれませんよ」

スタンド使いがこれだけの人数動いているのだ
『サンタ』に限らず、何か面白い事が起きる可能性は高いだろう

「では、『ウィンター』さん、『さま食堂』さん
 真夏のクリスマスフェアを皆で盛り上げていきましょう」

『巨大クリスマスツリー』に関してはこれでなんとかなりそうだ
後の事は若い子達に任せて、見物に回るのも悪くはないだろう
そう思いながら、三刀屋はこの場を収めて帰路につこうとする

828『星見町の終わらない夏』 〜ウィンターじいさん編〜:2021/10/12(火) 00:43:54
>>827(三刀屋)
「フォッフォッフォ。何やら楽しみじゃのォ〜〜〜。
………ところで、さすがに『あだ名』ばかりで、
     名をなのらないのも失礼じゃな」

『ウィンターじいさん』はそう言うと、

「ワシの名は、『かつま たじみ』。
 漢字はホレ、そこに書いてあるじゃろ」

手近にあった帳簿のようなものを見せて、名乗って来る。
漢字で書けば、『勝間 多治三』という名のようだ。

 ………

つまりは『勝』が英語で『ウィン』、『たじみ』の『た』と合わせて『ウィンター』、
そしてうしろの『治三』で、『じいさん』という事か?
『ウィンターじいさん』―――思った以上に下らない『あだ名』だったようだ。

しかし、こんな名前を持っていれば『冬を愛してしまうのは必然』かもしれない。
『冬を愛するもの』と腹を割って話をし、その協力が得られれば『夏の魔物』を倒す一助になる。
………本人にその自覚はないのかもしれないが。

『百目鬼』の準備が整えば、『三刀屋』はここから出ていくだろう。

829百目鬼小百合『ライトパス』:2021/10/12(火) 23:51:20
>>823-828

「これにて一件落着。話が早くて助かったよ。
 商店街の利益が上がれば、地域の活性化にも繋がる。
 願わくば、町全体の景気が良くなる事を期待したい所だねぇ」

「準備の邪魔しちゃ悪いし、アタシらは引き上げるとするか。
 『クリスマスツリー』を出してくれる事に感謝するよ」

ここでするべき事は終わった。
二人の老人に礼を言って、踵を返す。
帰る途中、おもちゃ屋から十分に遠ざかったタイミングで、
三刀屋の肩を軽く叩く。

「アンタに言ってなかったね。実は――――」

自分は直接参加していないが、
知人の『小石川』が行おうとしている行動を伝えておく。
既に全容は決定しているらしいので、
三刀屋に協力を求める訳ではない。
だが、知らないよりは知っていた方がいいだろう。

830三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2021/10/13(水) 00:23:13
>>828

「え? 『WIN』と『た』だから『ウィンター』・・・・・?
 っぷ! ははははははは! お爺さんそれ凄く受けますねぇ!
 鉄板ネタで使えますよ! それ!」

思いの外大爆笑する三刀屋
そう・・・・彼もまた『昭和』の生まれであり・・・・『ウィンターじいさん』に近いセンスなのだ

>>829

「へぇ・・・『小石川さん』という方が動いているのですね
 流石に・・・今から参加するには遅すぎますけど・・・・成功を祈っていますよ」

言外に『自分は参加しない』というニュアンスを滲ませる
緊急事態とはいえ、『アロマ』を無許可でばら撒く作戦は法的にちょっと・・・な部分もある
それなりに社会的地位もある大人としては、そこまでのリスクを取るわけにはいかない、という打算もある

831『星見町の終わらない夏』 〜ウィンターじいさん編〜:2021/10/13(水) 02:16:31
>>829-830(百目鬼&三刀屋)

『百目鬼』と『三刀屋』は、自分たちの目標が
存外早く達成された事に安堵しながら『おもちゃ屋』を後にする。
それぞれの立場からそれぞれやれる事をやる。
その集合体がきっと、『クリスマス』を呼び寄せ、『夏の魔物』を倒すのだ―――


 ……… ……… ………


「………そういや、ウチの孫、まだ、『多三子ちゃん』とつきあっているのか?」

 二人が帰った後、『さま食堂の老人』、『佐間』が、
 『ウィンターじいさん』こと『勝間』に問いかける。

「………うんにゃ、孫がつきあうのは毎年『クリスマス』の時だけじゃからの………。
 『クリスマスの時に恋人がいるのって、いかにもクリスマスっぽいでしょ!』という理屈らしい。
 『クリスマス』の時だけ、付き合って別れて、をここ数年ずっと繰り返しているようじゃ。
 それに振り回される『応太くん』も可哀相じゃのォ〜〜〜」

「へえェェえ……… ろくでもねえ冬の『織姫と彦星』って感じだなァ。
 そんなのにつきあう『応太』も人がいいっていうか、情けねェっていうか」

「うちの孫はワシが名付け、ワシが育てた『冬のサラブレット』じゃからの。
 本当はサンタにちなんで『三多子』にしようと思ったんじゃが、さすがに、嫁に叱られての。
 逆さにして『多三子』という事でなんとか納得してもらったのじゃ。」

「別に『三番目の子』でもなんでもない一人っ子だってのに、それじゃあ歪むわなァ」

「近頃は『冬の女王』なんて名乗って、関わっている『文化祭』に
 密かに『冬』を忍ばせているとかなんとか。
 ワシはとんでもない『クリスマスモンスター』を生んでしまったのかもしれん。
 よくよく考えると、これは恐ろしい事じゃあ………」

「………まァ、今の『クリスマスムード』にはあってんじゃねえのかい?」

                                  ………

    ―――そんな二人の会話はしばらく続いた―――

832『臨時商用特殊車輌運用会議』:2021/11/06(土) 23:16:53
自分の命に付いた値段を考えない日はなかった。

それは仕事で、仕事だから、いつまでも頑張れて、
どこまでも我慢できるはずだと、そう信じていた。

そうして行くところまで行ってしまった自分のことを、
決して後悔してはいない。今を以ってなお、そう言い切れる。
 
ただ、それでも。

行き着いた先で、辿り着いた先で、ふと振り返ってしまった時の事を思い出すと、
腹の底になにか昏い気持ちが淀むのも確かだった。

あの夜の、まるで冴えない暗く青い月のような。
差し掛かった十字路で投げ掛けられた、群青色の声のような。

今でも思い出せる。
あの時の自分は、それがどんなに不吉な誘いだったのか気付けなかったけれど。
だからこそ、救いの言葉に似たそれを、信じてしまったのだと思う。
 
 
奴は短く挨拶を済ませて、慇懃に腰を折りやがった。
 
たっぷりと抑揚をつけて、淀みなく台詞を読み上げやがった。
 
互いの損得を、嘘偽りなく数字を交えて唱えやがった。
 
薄く笑って、その言葉を口にしやがった。
 
 
「おいで。助けてあげよう」
 
 
そう言って背後に佇む『それ』に、目を合わせやがった。

833『臨時商用特殊車輌運用会議』:2021/11/06(土) 23:17:55
 
【『平石基』】

【君に】

【頼みがある。時間がない】
 

土曜日の日中、『平石』の持つスマートフォンへ一通の『ショートメール』が入る。
発信元の電話番号は通知されているが差出人に心当たりはなく、
悪戯と切って捨ててもおかしくない文面だった。
 
  
【『スタンド使い』と見込んで、頼みがある】
 
【『10万円』】

【俺に出せる精一杯だ。使える『リソース』に限りがある】

【やる気が無いなら、それでいい。返信だけでも寄越してくれ。
 すぐにでも、他を当たらないとならない】

【倒してほしい奴がいる。取り戻してほしい物がある】
 
 
矢継ぎ早に送られる一方的なメッセージは、勿論信頼に足るものではない。
それでも、着信は続く。
 
 
【君のことを知るのに、良くない手段にも頼った】

【それが気になるなら、俺を殴りに来るだけでもいい】
 

『平石』の名と、その身に宿す『能力』について、知る者がどれだけいるだろう。
無下にすることでなんらかの『不利益』を蒙るかも知れない、と予感させるには十分な物言いだ。
 

【戦える『スタンド使い』を探してる】
 
 
細切れのメッセージから差出人の心情まで汲み取ることは難しい。
『平石』の性格と、スケジュールと、気の向きと……様々な要因で、どんな対応もあり得るだろう。
 
 
【俺は『更山 好晴』】
 
【弟の仇を、討てる『スタンド使い』を探してる】
 
 
(※『平石』はスタンド能力、容姿、所持品、現在地の開示をお願いします。)

834平石基『キック・イン・ザ・ドア』:2021/11/07(日) 20:58:40
>>833
見知らぬ相手、意味不明なメッセージ、無視するべきか…

>【戦える『スタンド使い』を探してる】
 
>【俺は『更山 好晴』】
 
>【弟の仇を、討てる『スタンド使い』を探してる】

フリック入力。

【やってみよう】
【どこに行けばいい?】




体の所々が歯車で構成される人型のヴィジョン。
手から『歯車』を生み出す。
『歯車』を機械に差し込むと、機械は『歯車』という異物に反応する。

『キック・イン・ザ・ドア』
破壊力:B スピード:B  射程距離:E
持続力:C 精密動作性:C 成長性:D

能力詳細
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1453050315/90


平石基:
身長189cm。スーツに革のトレンチコート着用。履物は同じく革製の登山ブーツ。
所持品は『スマートフォン』『財布(免許証と保険証とポイントカードが2枚と、1542円)』『煙草とライター』。
現在地は自宅(住宅地の隅っこにある安アパート)。

835『臨時商用特殊車輌運用会議』:2021/11/09(火) 23:29:24
>>834
 
【話が早くて助かる】
 
続く着信。
間隔は短く、確認したそばから次のメッセージが表示される。

【地図情報を送るから、それを頼りに来てくれりゃいい】
 
併せて送られるURLの先を見れば、そこには町内のとある建物が示されていた。

『城址学区』の北部に位置するその建物に、平石は心当たりがあるだろうか。
特徴的なクリーム色の外壁をした、八階建のその建物に。
 
【『受付』で、『更山』の名前を出して貰えばすぐだ】
 
『アポロン・クリニックセンター』。
町内屈指の総合病院で、メッセージの主が待っている。

836平石基『キック・イン・ザ・ドア』:2021/11/09(火) 23:43:40
>>835
地図を確認してから、フリック入力。

【総合病院。わかった】
【読みかたはサラヤマさんでいいか。間違ってたら悪い】

アポロン・クリニックセンター。世話になったことはない。
以前ケガをしたときは、近所の適当な…ナントカ医院で湿布をもらっただけだ。
ほかで医療機関に用があるというのも、せいぜい歯医者くらい。

「……まあ」

仕事が続いていれば『健康診断』くらい行く機会はあったかもしれない。
今までなかったことを考えても仕方がないし、『治療』とは真逆の目的のためなら、猶更だ。

「行くか。おっと」

その前に、と買い物袋の中身を冷蔵庫に放り込み、コートを脱ぐ間もなくドアを開けて、出かけるとしよう。
行先はもちろん、『アポロン・クリニックセンター』。

(移動手段は『原付』としたいがよろしいでしょうか?)

837『臨時商用特殊車輌運用会議』:2021/11/10(水) 00:17:28
>>836

>【読みかたはサラヤマさんでいいか。間違ってたら悪い】

【ああ、そう。『サラヤマ』だ】
 
【自分の名前って、相手も読めるモンだと思っちまうから、参るよな】
 
【面会が20時まで……いや、土曜は18時までだったか。
 それまでには、頼むぜ】
 
現在時刻は13時を少し回ったところで、
どんなに寄り道をしたところで面会時間には十分間に合うだろう。
 
心当たりのない病院だったところで既に地図は手中にあり、
ましてや地域でもそれなりに存在感のある『総合病院』だ。
近くまで行けば『案内板』の類いも出ている。
 
『原付』での移動であればそれほどの時間をかけることもなく、指定の場所へ着くはずだ。

道中で特別の用事がなければ、程なくして『アポロン・クリニックセンター』へと到着することになる。

838平石基『キック・イン・ザ・ドア』:2021/11/10(水) 00:37:16
>>837
「…」

ビィー(走行音

「……」

   カッチ カッチ  ブルルン(ウィンカー、一速のまま右折

「………」

 キ    カチャ(停車。

キーを抜き、周りと地図とを確認。天をあおぐ。

「……来た事あるな」

『ナントカ医院』じゃなかった。あれっ……? 「こんなデカい病院だったっけ」

ついでに頭の検査もしてもらったほうがいいのか、一瞬本気で考えた。
すぐに切り替えて、用事を済ませよう、と思った。
『受付』に出向き、『更山』の名前。これは覚えている。当然だ。

――とにかく、『受付』。

「すみません」「平石と申しますが」
「えー、『更山』さん…先生?…、『更山』という方にお会いしたいのですが…」

若干、ぎこちない感じになっている。

839『臨時商用特殊車輌運用会議』:2021/11/10(水) 01:03:51
>>838
 
慣れた調子で原付を駆り、トラブルなく目的地へと到着する『平石』。
オートバイ用の駐車場へ原付を停めると、見覚えのある『正面玄関』をくぐり『受付』へと向かう。
 

>「すみません」「平石と申しますが」
>「えー、『更山』さん…先生?…、『更山』という方にお会いしたいのですが…」
 
ぎこちないながらも端的に要件を伝える平石に対し、 
 

「『更山』……?」
 
 「あっ……ああ!」
 

受付の若い女性スタッフはやや怪訝そうな表情を見せつつ、
次の瞬間には合点が行ったように声を上げる。
 
「『平石様』ですね。うかがっております。
 右手奥のエレベータから『4階』まで──」
 
受付の女性が左手の指を揃えて指し示す先に、『エレベーターホール』があり、
大きく各階の案内図が掲示されている。
 
それに拠れば、『4階』に位置するのは『整形外科』。
 

「『403号室』の『病室』で、『更山様』がお待ちです」

840平石基『キック・イン・ザ・ドア』:2021/11/10(水) 01:17:03
>>839
「4階、『403号室』ですね。わかりました。ありがとう」

復唱・確認。
了承と、お礼はスムーズに言えただろう。
まだまだ『社会復帰』は余裕というわけだ…

「(病院。陰気なイメージがあるが、あれは昔の映画とかの印象が強いのかな)」
「(全然明るいっていうか。映画より記憶かな。小さい頃は、薄暗ーくてイヤな場所だった)」

今時の小さな子供は、少なくとも薄暗いというマイナスイメージからは解放されているのかもしれない。
そういうのはうらやましい気がする。時代の進歩というやつだ。
そういえば最近は、歯医者に行っても大して痛いわけじゃないしな。科学の勝利だ。

「(おっと…独り言になってないよな。何か程よく静かだからか、色々思いつくな)」

エレベーターを待って、乗って、4階のボタンを押そう。
もちろん自分以外の人、とくに患者や医療関係者を最優先だ。
まあ、待ち人はいるが、ここは病院。健康な自分は一番あとだ。

841『臨時商用特殊車輌運用会議』:2021/11/10(水) 01:51:39
>>840
 
平石の言葉に、受付スタッフは小さくお辞儀で返す。
淀みのないお礼、違和感のないやり取りであったと、平石は確信する。
 
大規模な増築工事を経て建設された『新病棟』は、
平石の印象通りに明るく、清潔で、怪我や病を連想させることのない内装仕上げであった。
 
大規模な総合病院という性質上、
病室のドアを一枚隔てた先にはどれだけの重症患者がいるとも知れない建物ではあるのだが。
 
あるいはそれを、時代の進歩と呼ぶのかも知れない。
誰が傷付き病んでいるか知るとも知れない、そんな時代かも知れない。
 
 
平石が思いを巡らせる内にエレベーターは『4階』へと到着する。
エレベーターから出れば、向かって左が『401号室』。正面に『402号室』。

すぐ右手に、『403号室』の扉が見える。
 
幸いというのか、エレベーターホールから特に近いその病室に向かうのに、
他の患者や見舞客、病院スタッフとの接触はなさそうだ。
周囲へ気を遣いつつも、数歩で『403号室』の扉の前へたどり着ける。
 
 
と、『平石』がエレベーターを降りたそのタイミングで。
  
 
「やあ──はじめまして」
 
 
『403号室』の扉の、その内側から、声が響いた。

ハイトーンな、ともすれば女性のそれとも聴こえかねない調子だが、
一方で無理矢理に裏声を作っているかのような硬質な声音。
 
 
「『平石サン』──だろ」

842平石基『キック・イン・ザ・ドア』:2021/11/10(水) 02:08:15
>>841
「…――はじめまして。ああ、『平石基(ヒライシ ハジメ)』だ」

正直なところ、面食らった。わかるものだろうか。
顔も見ず、どころか、病室にいて、エレベーターから出てくるのが誰なのかを――

一歩ずつ、部屋に近づこう。

「あなたは『更山』さん、で間違いないかな。だったら部屋を間違えずに済んだってことだ」
「いや、誰かが『同性』の他人を呼んだのを、自分のことと勘違いして返事をしていたら恥ずかしいなと思ってね」

部屋の扉の前に立つ最後の一歩。
別に止められる理由は無いだろうが、一応。

「入ってもいいか?」

承諾は得ようと思った。OKなら、扉を開けて入室しよう。

843『臨時商用特殊車輌運用会議』:2021/11/10(水) 02:22:43
>>842

「ん?ああ……」
 
「あれで『ハジメ』と読むんだな。
 いや、俺も漢字が苦手ってコトは無いと思うんだが、人名となるとどうもね」
 
平石の言葉に対し、扉の向こうからはピントのズレた答えが返ってくる。
心中の驚きはもっともだ。
扉越しに相手を認識できるというのは、明らかに常識では有り得ない。
 
「ただ、そう──俺が『更山』で間違いないよ。
 恥をかくのは俺だけでいいんだ。君は何も間違っていない」
 

>「入ってもいいか?」


「どうぞ。
 それに、ようこそ、だ」

844『臨時商用特殊車輌運用会議』:2021/11/10(水) 02:36:49
>>842
 
平石が扉を開けたそこは、4人の入院患者を収容できる病室だった。
部屋の四隅にそれぞれ簡素なベッドと、仕切りとなるカーテンが配置されている。
 
しかしその4つのベッドに患者の姿は見当たらず、病室の中央には、
 
 
「こんにちは」
 
 
スチール製の椅子を、背もたれを入り口側に向けるように置き、
 
 
「改めて、俺が、『更山』だ」
 
 
椅子に腰掛け、その背もたれに体重を預けるように前傾になり、
 
 
「こんな……自分で言うのもおかしいが、『こんな誘い』に応じてくれて、
 君には本当に感謝してるんだ」
 
だらりと下げた両腕の先に『スマートフォン』を一台ずつ握り、
  
 
「『事情』があって、ここから一歩だって動くことのできないこの俺の代わりに」
  
 
室内にも関わらず、薄いオレンジ色のサングラスで顔を隠し、
 
 

「俺の『弟』の仇を討ってくれるんじゃないかっていう君に」
 
 
 
病室にも関わらず、『入院着』ではなく緩く胸元の開いた臙脂色のシャツに身を包んだ、
 
 
「俺は本当に、感謝しているんだ」
 
 
一人の、白い肌をした男が待ち構えていた。

845平石基『キック・イン・ザ・ドア』:2021/11/10(水) 21:16:58
>>844
「こんにちは」

病室の真ん中。そこに座る男の風体。
最初は謎のメールの送り主で、ここの医療関係者かと思って、病室にいるなら患者のほうかと思い直したところなのに。
見て頭に浮かぶのは、結局、初めのイメージとあてはまる単語だ。

「ああ、こちらこそ、興味深いメールをありがとう。思った通り」
「怪しげなやつだな、『更山』さん」

できるだけ冗談めかして本心から声をかけながら、一歩入室。
扉は――閉めるべきだろうか。まあ、閉めるべきだ。
それに今、こちらから言うべきことはもう言った。
『用事があるのは彼の方だ』。

「(オレは『好奇心』で、やってみようと思いついただけだからな)」

服装や姿かたちではない、『動けない事情』と、『弟の仇討ち』。
『スタンド使い』が絡んでいるのは承知しているから、
『彼が何か話したり、促したりしないかぎり』、こちらからこれ以上話したり、動いたりすることもない。
立ったまま、一服しながら窓の外に目線を向けるように、そんなふうに『更山』を眺めていよう。

846『臨時商用特殊車輌運用会議』:2021/11/12(金) 20:59:30
>>845
 
>「こんにちは」
 
>「ああ、こちらこそ、興味深いメールをありがとう。思った通り」
>「怪しげなやつだな、『更山』さん」
 

「そう言ってもらえて、嬉しいぜ」

挨拶と、軽口に載せた本音を口にしながら『403号室』へ入り込む『平石』。
後ろ手に扉を閉めるその様子を、目の前の男はその言葉通り一歩たりとも動くことなく、
ただ見ていた。
 
「『怪しい』と──『興味を持って』もらわないとならなかったンだ。
 だってそうだろ?本来『10万』ぽっちで頼めるようなことじゃあない」
 
目の前の男は脱力したように椅子にもたれながら、口元に笑みを浮かべつつそう語る。
 
「『家族』の『カタキウチ』をお願いする金額じゃあ、ないもんな」
 
ヒヒヒ、と小さく上げるその声には僅かに自嘲の色が混じっているが、
それに平石が気付くかは当人次第と言ったところだろう。
  
 
「まあ、話は実際単純なンだ。
 ああ、立ち話もナンだし、その辺のベッドにでも腰掛けてくれよ。
 どうせ誰も使っちゃいないンだ」」
 
顔は平石の方へ向けたままその両手の指だけが忙しなく動き、
両手にそれぞれ握られた『スマートフォン』のディスプレイを撫でている。
 
「それでさ。ある『スタンド使い』をとっちめて、
 『弟』の『遺体』を──もう『遺骨』かな──を、取り返してきてくれよ」
 
「居場所も、どんなヤツかも分かってる。
 俺だって、できる限りのバックアップはする」
 
「君が『戦える』『スタンド使い』だって言うンなら、
 そう難しいコトじゃあないハズなンだ」 
  
恐らくはこれが『本題』で『核心』なのだろう。
それでも男はこれまでとまるで変わらぬ調子で、煙を吐き出すようにそう言ってみせた。 
 
「頼まれちゃ、くれないモンかね」

847平石基『キック・イン・ザ・ドア』:2021/11/12(金) 23:56:12
>>846
一通り、『更山』の言葉を聞き終える。
煙草を取り出そうとして、やめた。病院の、しかも病室だからだ。喫煙室で吸うべきだ。
少なくともここじゃない。

「意外なことを言うんだな、更山さん」

だから深く息を吸って、それから長く息を吐いて、それから、
できるだけ落ち着いて、そう見えるように、何でもないことのように、思ったことを言う。

「頼まれるつもりでここにきた。オレはあなたに『面接』されるつもりだった。
 『弟さんのかたき討ち』なんて大事なことを頼むのに、オレが相応しいのかどうか、ってことをだ。
 まあ、だから、立ったままでいいよ。立つのは慣れてるし、何より好きだからね」

彼が動かない(動けない?)なら、ベッドに座ると、真正面で向かい合ってお話ができない。
それは大事なことだ、と平石基は考える。

「確かに、相手の居場所が分かっているのはたいへん結構なことだ、と思う。そのうえで、『難しいことじゃない』かどうか、だ。
 それはあなたが判断するべきことだと思うから、言っておく」

   ズ

『キック・イン・ザ・ドア』を、傍らに。はた目に見ても屈強な、『歯車』の意匠の人型スタンドだ。
できるだけカッコつけたしぐさにならないよう(平石なりに)気をつけて、その掌を示し、500円玉大の『歯車』を一枚、発現してみせる。

「名は『キック・イン・ザ・ドア』。『歯車を差し込んだ機械を、停止させる能力』だ」
「予め知ってくれていたら、余計なことだったかな。でも直接見てもらうのも大事だと思って。『面接』気分だから」

戦闘経験だとか、何人殺しただとか、そんなことも言うべきだろうか。あるいはすでに知っているだろうか。
いや、「(まあ、別に関係ないといえば無いよな。カーチェイスだのゾンビだの、あってもなくても、出来るやつは出来るから)」考えなくてもいい…。
金の話は実際興味もないし、突っ込んで話すことも無い。十万円。大きいが、貯金はまだあるわけだし。

「あなたの眼鏡にかなうなら、ぜひやらせてもらいたい、と思っている」

848『臨時商用特殊車輌運用会議』:2022/05/23(月) 22:00:59
>>847
 
>「意外なことを言うんだな、更山さん」

その言葉を聞いて、初めて『更山』は明確に動揺を示す。
勿論サングラスに覆われてその表情こそ隠されてはいるが、
それでも醸し出す雰囲気が大きく揺らいだことを、平石は感じ取れるだろう。

「意外、なのは俺の方だぜ、『平石サン』」

その言葉に嘘はないのだろう。『意外』というフレーズに相応しい狼狽具合だ。

「俺には支払える報酬が、『リソース』が……『10万円』ぽっちしかない。
 その上使える『時間』も『伝手』も殆どない。
 いいか?俺はそもそも、『選り好み』できるような『立場』じゃあない」

いっそ開き直ったように立て続けに言葉を吐き出す『更山』。
その台詞からは既に動揺は感じられず、代わりに僅かな自嘲の響きがあった。
 
「だから『ダメモト』って奴のつもりだったんだ。
 端金で俺の『お願い事』を聞いてくれる相手が、
 『スタンド使い』で──『戦えるスタンド使い』、で」

言いながら、その輪郭に重なるように姿を見せる『力のビジョン』。
全身が酷くひび割れた、恐らくは『飛行機』の意匠をイメージしたであろう人型の『像』。

「そんな君が『家族のかたき討ち』を『大事なこと』だと言ってくれたのが、すごく意外だ。
 俺は癇癪を起こして八つ当たりをしようとしているっていうのに、それを、そんな風に」

発現された『更山』の『スタンド』は、『更山』自身の顔面に手を伸ばし、
震える指でその両目を覆う『サングラス』を摘み上げる。

「そんな風に、言ってくれたことがとても嬉しい。
 君を見るのに眼鏡はナシだ。是非ともこちらから、よろしくお願いしたい」

レンズ越しでないそのグリーンの瞳を『平石』へ向け、どこか泣き出しそうな声でそう告げた。
同時に右手に持つ『スマートフォン』を僅かに持ち上げ、『平石』へと向ける。

「俺の『イルーシヴ・エデン』は動けない。
 もし本当に頼まれてくれるなら、この『スマートフォン』を受け取っちゃあ、くれないモンかね」
 
機械越しの握手が、恐らくこの場で契約の意味を持つのであろう。
そういう意思の宿った、言葉であった。

849平石基『キック・イン・ザ・ドア』:2022/05/23(月) 22:15:17
>>848

「あぁ」

『事情』がある。誰にでも、ある。
自分のことや、他人のこと――家族、恋人、友だち、個人で、仕事で、その他諸々。
そういう、いろんなことに関わる『事情』がある。
大体のことは、普通に片付く。
諍いがあったり、愛しんだり、事務的だったり、情熱的だったりするんだろう。
そうした普通の手続きがあって、それで普通に終わっていく。大抵、そうだ。

 『スタンド使い』が『戦う』ことは、そうではない。

だから来た。そう、平石基はここでは言えない。
平石基にとって、その理由とこの感情は、完全に個人的だ。勝手だ。自分の都合だ。
他人の事情によってしか、今はまだ、理由をつけられないからだ。
だからこそ、とても大事なことだ。戦う理由と、その事情は、平石基にとって最も尊重するべきことだ。
それは、オレのものじゃ無い。

「大事なことだよ。お互いに」

少し本心が漏れる。口数が多い方でも無いつもりだが、余計なことは言い忘れない。
自嘲に見えぬよう気を付けて、笑い顔を向け、『更山』の目と、『イルーシヴ・エデン』を順に見て、

「だから、うん。頼まれた。じゃあ、借りるぞ」

『スマートフォン』を受け取ろう。

850『臨時商用特殊車輌運用会議』:2022/05/23(月) 23:21:05
>>849
 
「ヒヒ……」
 
『スマートフォン』を受け取る『平石』を見て、
どこか諦めたような寂しげな笑みを零す『更山』。

「契約成立だな。改めて宜しく、お願いするぜ。平石サン。
 その『スマートフォン』にはちょうど今回の『ターゲット』の、
 『公式サイト』の――」

 
『更山』が言うが早いか、『スマートフォン』の『スピーカー』から大音量で流れる『それ』は、

 
 ♪♪♪〜♪#〜♪♪♪

       ♪〜〜♪♪〜♪〜♭
     ♪♪#〜♪♪♭♪〜〜〜♪#♪〜〜〜♪♪


           ♪♪♪〜〜♪♭♪〜♪♪#♪〜〜〜♪♪♭♪♪


 ♪♪〜〜♪♪#♪♪〜〜♪♭♪♪


             ♪#♪♪〜〜♪♪〜〜〜♪♭♪


チープな音源でありながら、何かを鼓舞するような力強い曲調で流れる『それ』は、
 
「『社歌』のページを開いてたトコだ。
 つまり平石サンに相手して欲しいのは、 ある『企業』」
 
「────『スカイ・スパイス・スター』と名乗ってる。

 具体的には、そこの『取締役』を一人とっちめて、
 俺の『弟』の『遺骨』を取り戻してほしい」

言いながら一度顔を伏せ、体を震わせ、堪えきれない様子で笑い声を漏らす。

「フザけた会社だろ……今ドキ、モバイルサイトに『社歌』なんか載せるかね。
 舐めてんだよ、完璧に。なあ、平石サン」

「『協力者』がいるんだ。
 『標的』の居場所も、奴が一人でいるタイミングも、分かってる。
 マップはその『スマートフォン』に入ってるし、
 常に『スピーカーホン』で通話を繋いでおいてくれれば、こっちからもバックアップできる」

言いながら更山は左手のスマートホンのディスプレイを素早く撫でる。
殆ど同じタイミングで、平石の手の中のスマートホンが震え出す。
眼の前の更山からの『着信』だ。
 
「その『スマホ』は特別製だ。きっと平石サンの助けになる。
 俺はこう見えて結構、機械に強いお兄ちゃんなんだぜ。

 それを踏まえてここまででなンか……聞きたいことはあるかい」

851平石基『キック・イン・ザ・ドア』:2022/05/23(月) 23:49:48
>>850
着信。通話状態。音量設定、胸ポケットに入れて、声が問題なく聞こえる程度。
マップはどれか、探して、開く。位置確認だ。スマートフォンは、触ってれば分かるように出来ている。
分からなければ訊く。
『協力者』や『タイミング』についても、『バックアップ』に含まれるという意味だろう――必要なことを。

「……分かった。更山さん。通話は繋いでおくよ。独り言が多いかもしれないが、気にしないでくれるとありがたい」
「『スカイ・スパイス・スター』か」

反復。聞き覚えのある社名だろうか。
つまり、その会社が、かたき討ちの、

その『取締役』が、仇なのか?と訊こうとしてしまって、開きかけた唇を少し舐める。
『バックアップ』。『居場所とタイミング』。『相手』。『目的』。『スタンド使いを呼んだ意味』。
十分だ。それ以上の『事情』は彼のものであってオレのじゃない。
笑っちまうほどの事は、なにも面白い事だけじゃない。

「確かに、今どき『社歌』は古くさいな」

だから軽口にした。

「それと、その『取締役』とやらの能力なんかは、分かっているのか?」

軽口だけだともったいないから、気になることも訊いておくことにした。

852『臨時商用特殊車輌運用会議』:2022/05/29(日) 10:40:36
>>851
 
受け取った『スマートフォン』の設定を手早く済ませる。
初めて触れる機種の上、見慣れない『インターフェース』ではあったが、
画面に並ぶアイコン等は既知のものと大差なく、直感的に操作が可能だ。
 
『マップ』のアイコンをタップすると見慣れた地域の地図が開いた。
『星見駅』の周辺を示す地図の、駅からさほど遠くない地点に『ピン』が打たれている。

「もし『イヤホン』の類いを……有線でも、無線でも、持ってるンなら、
 勿論繋いでくれてもイイんだぜ。
 いや、『俺の』を貸すのはお互いな、アレだろ?
 『新品』を用意できなかったのは、俺の手落ちッてトコではあるが」

「独り言だって、好きにしてくれて構わないんだぜ。
 俺は今回の件で平石サンの何を知ったところで決して口外しない……し、
 できない、からな」
 
「証明できるわけじゃあ、ないけれど」
 
平石の連絡先やそもそも『スタンド使い』であることを知った経緯など、
あまりに不可解な点の多いこの男の手を、それでも平石は取った形だ。
決してそれが信用に基づくものではないとしても。
 
「そう。『株式会社スカイ・スパイス・スター』。
 県内で何店舗か店を出してる『カレー屋』だよ。聞いたことあるか?
 時々駅前に『キッチンカー』を出して、『移動販売』みたいなマネもしてるらしい」
 
「フザけた歌を作るワリに、古い会社ッてワケでもない。
 ここ最近になって、SNSやらで宣伝するようになって多少伸びてるようだけどよ、
 『法人』としてはまったく、大した規模じゃあない」
 
平石がグルメ情報に詳しければ、ひょっとすると名前くらいは知っているかもしれないし、
実際に店舗に足を運んだこともあるかもしれない。
ただ、『街の誰もが知っている』という規模の人気店ということもなかった。

「この『株式会社』が俺の八つ当たりの相手だ。
 そこの取締役の──『瀬輿 星那(セゴシ セナ)』ッてのが、
 今日、これから、本社の事務所で一人になる。
 マップに印のある通り……ここしかないッてタイミングだ」

そこまで立て続けに口にして、白い肌をしたその男は一度言葉を切った。
 
  
「『車』の。 
 『自動車』の『スタンド』を使うと聞いている。
 詳しい『能力』までは分からない──アイツは、結局『それ』を使ったことがないそうだから」
 

「『株式会社スカイ・スパイス・スター』は、
 俺の死んだ弟の『スタンド』を使うと、聞いている」

853平石基『キック・イン・ザ・ドア』:2022/05/29(日) 12:55:52
>>852
「イヤホンか…便利かもしれないな」

だが持っていない。無線のやつは、ハンズフリー通話ができる。それは知っている。
病院を出るときにでも、コンビニで探そう。(だいたい病院にはコンビニがあると思うが、許可をいただけるなら、調達しておきたい)
それに、何を知られたところで、だ。そんな大した秘密は無い。
しいて言えば『スタンド使い』ってことだが、それは既知だ。

「『キッチンカー』の『カレー屋』……」
「ああ。見たことがあるな。買ったことはないが」

『スカイ・スパイス・スター』で試しに検索してみると、確かにSNSは確認できた。
更新は止まっている。味や店そのものの評価なんかも、皆無だ。
なるほど、『大した規模じゃない』ことが分かった。

「本社の事務所」

「『車』のスタンド能力。…(縁があるな。車)」

つぶやくように復唱。『弟のスタンド』には反応しない。覚えておくだけだ。
それは、何度も繰り返すが平石基にとっては関係が無い。
『弟』と、その『スタンド』まで奪われて、八つ当たりだと自嘲しながら言う彼が、
無作為とはいえ平石基に声をかけ、面白そうだとその手を取ったこのオレが、
目の前に座る怪しい男に、更山好晴と名乗る彼に何か言うべきことがあるならば、
それは好意ではなく憐みでもなく、愚痴でもなく軽口でもなく、まして感謝や虚勢では無く、

「分かった。お互い、大して知った仲じゃないが」 「手は抜かないよ」

ただの事実であるべきだ。


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