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【ミ】『フリー・ミッションスレッド』 その1

755知覧吉彦『モンキー・ビジネス』:2020/07/10(金) 20:42:50
>>754
「ああ、よろしくなー」

去り行く『サトル』を見送り、
テーブルに置かれた手袋を拾い上げる。

   「ここまで肝っ玉が冷え切ったのは、
    お袋が『ヨットスクール』の話題を出して以来だぜ……」

額の冷や汗をおしぼりで拭き取り、
念願の『手袋』をしげしげと眺め、両手に嵌める。

   「だが、――――上手くやり切ったぁぁ〜〜〜〜ッッ

    ……って、わけじゃあないんだけどさ。
    『三刀屋』さん、最後の押し切りは助かったッ」

肩の荷が下りたように息を漏らしたが、
序盤に過ぎないと思い返せば、やおら立ち上がる。

   「ここは人目に着くから、場所を変えよう。

    ――――隣の『カラオケルーム』に移動しようぜー。
    あそこからワンドリンクフリータイムで、
    好きなだけ『作業』が出来るからさ」

756三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/10(金) 22:51:57
>>755
「知覧くん・・・・ここまできたら後は『やりきる』しかないよ
『彼』のためにも・・・・・『我々』のためにもねぇ」

知覧に促され、『カラオケルーム』へと移動する
茶器や食器を割ってしまった事はまあ・・・・次に来た時に埋め合わせする事にしよう
それくらいの良心は残っている

「さあ、『道具』は用意しているよ・・・後は君の『技』が頼りだね」

757『It's dirty work』:2020/07/10(金) 23:08:45
>>756(三刀屋)

     ゴ    ゴ


       ゴ    「じゃあ」
                              ゴ
                    「やるぜ」         ゴ
                              ゴ

二階の個室に通された『知覧』と『三刀屋』。
マイクとデンモクにも触れず、テレビ音量もミュートにする。
そして、卓上に並べられた『インク壺』に『原稿用紙』、


      ドシュッ!
                 シュバッ!

―――――『Gペン』ッ!
『手袋』をハメた『知覧』はネームを切ることさえなく、
迷いなく『ペン入れ』を施し、瞬く間に『原稿』を仕上げていく。

    「ヤ、ヤッベェぞこれ!」

    「俺の手じゃあないみてぇーだッ!

     手が、勝手にトレースを『補正』してくれるッ
     こりゃあ『コミスタ』なんかより、よっぽど上だぜェェ〜〜〜ッッ」

『モンキー・ビジネス』の持続時間は『2時間』だ。
どんなプロであろうと、『1ページ』の漫画原稿を完成させるのに、
どう見積もっても『1〜2時間』は掛かるのが当たり前だ。

しかし、『我孫子サトル』は『トーン』を使わない作風だ。
極端な話、『Gペン』さえあれば『トレース』は可能。
ましてや、一度はその『技術』によって描いた『漫画』、
『12ページ』の読み切りであれば、ギリギリで仕上げられる――――

      「基本の『絵』だけ、どんどん仕上げさえすればッ
       モノローグや台詞なんかは、後から『写植』すりゃあいいッ!

       スッゲェ、気持ちいいくらいにドンドン描けるぜェェ〜〜〜〜ッッ
       俺、漫画家になれるんじゃないか、ってカンちがいしちゃうってぇー!」

『知覧』は一心不乱に『Gペン』を振るっていく。

         P R R R R R r r r . . .

『三刀屋』のスマートフォンから着信音が鳴る。
『サトル』からだ。ついさっき会ったばかりなのに、電話で呼ばれている。

758三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/10(金) 23:26:52
>>757
>      ドシュッ!
>                 シュバッ!

「す、凄い・・・・やはり僕の見立てに狂いはなかった・・・彼は『天才』だッ!
明らかに『異常』過ぎる・・・・知覧くんのスタンドの持続時間が
『2時間』しかないと聞いたときは不安しかなかったが・・・逆だ、いけるよ、これなら!」

「僕は経験上、何人もの『漫画家』を見てきたが・・・・
『彼の才能』はそれらのいかなるもブッちぎりで超越している・・・・取れるね、天下」

知覧の振るう凄まじいまでの『Gペン捌き』に思わず、スタンディングオベーションで歓声を上げる
不安だらけの心中が眩いばかりの光明に満ち溢れていた!

>         P R R R R R r r r . . .


そんな三刀屋の心に陰りをもたらしたのは電子音、そして表示画面であった

「安孫子くんか・・・・何か・・・嫌な予感がしてきたね」

      ピッ


不安を抱えながら、電話を取る

759『It's dirty work』:2020/07/10(金) 23:36:39
>>758(三刀屋)
『知覧』の手によるものとはいえ、紛れもない『天才』の仕事。
若々しい才能に圧倒され、成功を確信する『三刀屋』の心中を、
じょじょに立ち込める『薄霧』のように、不安が満たしていく。

   P R R R R R r r r . . .

    ピッ
         「ああ、『三刀屋』さん。
          さっきの今でスマンが、ちょっと話があってな」

         「生憎、『手』が離せないんだ。
          大人を顎で使うようで申し訳ないんだけど、
          ちょっと『家』まで来てくれないか……?」

先程と変わらない無骨な話し方だが、
幽かな『焦り』を感じられる。申し訳ないとは、確かに思っているようだ。

『サトル』のアパートはこの近くだ。
高校生だが、『漫画』に本気で打ち込みたいのだと、
両親を説得した上で、一人暮らしをしている。

※この説得には『三刀屋』も駆り出され、一緒に両親の下に同席している。

760三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/10(金) 23:50:35
>>759
「知覧くん・・・すまないけど、少し席を外すよ
ちょぉぉぉ〜〜〜っとばかし、我孫子くんの方がトラブルにあっているみたいだ」

『執筆作業』を続ける知覧に語りかけ、部屋を出る
スマホを耳に当てたまま、サトルとの話を続ける

「わかった 今すぐに行くよ
道すがら、何の用なのか教えてもらってもいいかな?」

アパートの場所は覚えている
道すがら、話を聞き、どんな用件があるのか情報を集める

761『It's dirty work』:2020/07/11(土) 00:09:16
>>760(三刀屋)

   「あらら、なんだろーね?

    画材も揃ってるし、こっちは大丈夫だって。
    変に断って、俺達を探されてもマズいしさー」


     ブシュッ
              バシィッ!

余裕の態度を見せる『知覧』だが、
呑気に話しながらも『ベタ』を塗り上げていく。

>「わかった 今すぐに行くよ
>道すがら、何の用なのか教えてもらってもいいかな?」

カラオケボックスから『アパート』まで、歩いて『4〜5分』だ。
無論、『三刀屋』の腹積もりも、サトルのアパートが近いからこそ、
この近辺を『待ち合わせ』に指定したのもあるのだろう。

     「ああ、『作業中』になるから、
      ちょっと止まったりするかも知れないが」

     「『三刀屋』さん。――――カラスの『雄雌』ってさぁ、
      どう見分けるか解るか? ……『紫外線』なんだってよ。

      カラスは『紫外線』が見えるから、
      雄と雌は、実は別々の色で見えてるんだよ。
      俺達には同じ『真っ黒』に見えるから、全然解らないけどな」

『サトル』は脈絡のない言葉を呟いている。

     「……そうだ。昔、ある本で読んだことがあるんだが、
      『鳩』ってのは、『漫画』が読めるらしいんだ。

      『鳩』はマンガで描いた『鳩』を、
      自分と同族だって、認識できると書いてあった。
      だから、『鳩』は他のマンガ文法も理解できるかって、
      『トゲトゲ』したフキダシを付けたり、効果線を引いたり、
      そーいう驚かすような『演出』があれば、鳩の行動も変わるのかって、
      わざわざ実験した『漫画家』もいたらしいぜ。結果は、どうだったかな……」

『サトル』の言葉は止まらない。
ふと、確信を切り出すように、『サトル』は声を潜めた。

     「なあ、『三刀屋』さん。
      貴方もこの世界は長いだろ、一度聞いてみたかったんだ」

     「――――『トレース』だよ。
      人のマンガを映して、パクって発表するヤツ」

     「そーいうヤツ、貴方はどう思う?」

762三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/11(土) 00:24:01
>>761
「・・・・へぇ、凄いね、うん、まさに動物奇想天外って感じだね
それで・・・・・動物関連おもしろトリビアが言いたくて僕を呼んだわけじゃないだろう?
君はそういう意味のないことはやらない人間だからね」

『カラス』?『鳩』?
サトルの意図が分からず、焦燥感ばかりが膨れ上がる
サトルは動物に関して多くの事を知っている、それはわかっている
だが、意味のない話をする人間ではない・・・何かの前座か?あるいは・・・


>     「――――『トレース』だよ。
>      人のマンガを映して、パクって発表するヤツ」

>     「そーいうヤツ、貴方はどう思う?」

  ぶわっ と冷や汗が止めどもなく出てくる
背筋が一気に冷えた・・・・まさか、気が付いているのか?



いや、そんなはずはない!

「サイテーだと思うよ、僕は
パロディとか二次創作とか、そーいうのなら作品として昇華しているって思うけどさ
人が描いたのをパクるのはダメだよねぇ〜
(あ〜〜〜・・・・言っちゃったああああ! これで後には引けないぞ!)」

「それで・・・・・そろそろ本題に入りなよ
何も剽窃がどうだの、海賊版がどうだの、そういう小賢しい社会問題を語りたくて電話したんじゃないだろ?
君が電話をしてくるって事は・・・・もっと直接的なことなんじゃないかい?」

763『It's dirty work』:2020/07/11(土) 00:39:17
>>762(三刀屋)
>「サイテーだと思うよ、僕は
>パロディとか二次創作とか、そーいうのなら作品として昇華しているって思うけどさ
>人が描いたのをパクるのはダメだよねぇ〜〜〜」

    「そういうと思ったよ」

勿体ぶった質問に付き合った、『サトル』の反応は素っ気なかった。
本題に入ろうとする『三刀屋』の問い掛けにも、しばしの沈黙を保ち。

    「……ああ」

    「単刀直入に言うよ。
     ――――あの『原稿』、返してくれないか?」

      ド
                    ド

            ド

    「世の中には、『カラス』や『鳩』よりも、
     見る目を養えてない連中が多すぎる」

    「だから一度、修正しなくっちゃあならない。
     頼むよ。そう、時間を取らせないからさ」

『サトル』の居る『アパート』が見えた。
二階建ての木造アパート、その『101号室』に住んでいる。
暑いからか、ドアも窓も開けっぱなしだ。開いたドアから『サトル』が見える。

    「今、描いてるからさ――――」

『サトル』は一心不乱に、『原稿用紙』に鉛筆を走らせている。
『ネーム描き』だ。本気で『原稿』の一部を差し替えようとしている。

764三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/11(土) 00:57:50
>>763
「ふぅ〜〜〜・・・・」

ドアの奥、サトルの姿を視認した
もはや、電話を使う必要もないだろう、電話を切り、玄関の前で直接話をする

「理由を聞いてもいいかい?
僕が見る限り、あの作品は『完璧』・・・
技術的には修正する必要がまったくないくらいサイコーな作品だと思ったけど?」

ドアの前に身を置きながら、部屋の中を覗き込む
部屋の中に怪しいものはないだろうか、前来た時と違う点はないだろうか?

「まあ、どっちにしろ今すぐに君に『原稿』を返すことはできない
君も知っているだろ?あーゆー物は社内で大事に保管されてさ、なかなか返却できないんだよねぇ」

「(僕はそれ破っちゃったわけだけどね・・・・・あー・・・・)」

「理由を聞こうか そういうルールを破ってまで『修正』したい理由を」

内心では自分の過去の罪を思い出して、軽い自己嫌悪に襲われつつも
表情は変えず、毅然とした編集者の表情でサトルと応対する

765『It's dirty work』:2020/07/11(土) 01:20:02
>>764(三刀屋)
玄関に立った『三刀屋』。
『六畳間』に台所が付いたワンルームだ。
エアコンも、風呂場もない。部屋の隣に『共同トイレ』がある。
吹き込む風だけを涼として、『サトル』は原稿を描いている。

>「理由を聞いてもいいかい?

    「貴方は、そう思うんだろう。
     俺だって、別に『完璧』を求めちゃあいない。

     だが、『完璧』じゃあ困るんだよ。
     それじゃあダメなのか――――」

部屋の中を覗き込む。
『作業机』と『本棚』、申し訳程度の『卓袱台』と『座布団』だけが置かれた部屋だ。
卓袱台の上には、真新しい付箋の貼られた『単行本』がズッシリと積まれ、
『作業机』には『原稿』を書くのに用いた、様々な『資料』が置かれている。

>「まあ、どっちにしろ今すぐに君に『原稿』を返すことはできない
>君も知っているだろ?あーゆー物は社内で大事に保管されてさ、

    >「なかなか返ky

               「『ウソ』を吐くなァ!」

      ゴォウ!

『サトル』が吼える。
その両目は血走って、一直線に『三刀屋』を睨み付ける。

    「『三刀屋』さん。
     アンタ、『原稿』を持ってたよな?

     ――――『喫茶店』で、確かに持っていたよな?
     今は持ってないな。『鞄』に入れて、何処かに置いたのか?」

『執筆道具』の詰まった『鞄』は、カラオケルームに置いてある。
確かに、『三刀屋』は『原稿用紙』を持つ手を滑らせていたが、
それは『知覧』の機転と店主の『損害』によって、
『サトル』の目には映らなかったはずだ。

    「アンタの持ってる『原稿』を、
     こっちに寄こすだけなんだ」

    「『原稿』を寄こさなきゃあ、
     ――――俺は、俺は……」

『サトル』は作業の手を止め、机上から一枚の紙を取る。

766三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/11(土) 01:37:23
>>765
「ハハハ・・・少し冷静になってくれよ、我孫子くん」
(この反応・・・・さっきの喫茶店の時にもしかしてチラッとみられたのかな
 だとすると・・・・下手にすっとぼけるのは逆に危険か)

突然の剣幕に内心ビビるが、この程度の『逆ギレ』に動じる程『やわ』ではない
過去に経験した『マジでヤベェ漫画家達』とのやりとりを脳裏に思い起こし、勇気を得る


「確かに僕は今日『原稿』を持ってきてしまったよ、コンプライアンス違反を犯してね
こーゆーのがバレると凄く厄介な事になるから黙ってたんだけどねぇ」

ここは認めよう
自分がコンプライアンス違反を犯すような不良編集者である事は彼も知っている
ただし・・・・・

「でもさ、『保管した原稿の持ち出し』程度ならバレなきゃなかった事に出来るけど
『保管した原稿の改竄』は・・・・ちょっとバレずにやるのは『不可能』だよ」

『コンプライアンス』という言葉を盾にして、『原稿』を渡さない理由をでっちあげる
もし天に神がいて、三刀屋の行動を見つめていたとしたら「お前が言うな!」と言うであろう図々しさで


「だから冷静に・・・・・なんだい、その紙は?」

サトルの持つ紙を見つめる

767『It's dirty work』:2020/07/11(土) 23:55:41
>>766(三刀屋)
>「だから冷静に・・・・・なんだい、その紙は?」

   「『三刀屋』さん。理由を説明することは出来ないが、

    この世には『モバイルバッテリー』や、
    『スマートフォン』が急に『燃え上がる』ような、
    不幸な事故ってのが、時たま起こるじゃあないか」

『サトル』が手にした紙は、『漫画原稿』だ。
水没した『原稿』と瓜二つ、描き直したかのように『そっくり』な一枚。
その『枠線』が大きく『歪み』、

      ブワッ
               サァァァ〜〜〜〜ッッ!!!

まるで『ハチドリ』のように小さな『火の鳥』が、
一羽、二羽、――――合わせて『六羽』、原稿用紙から飛び出した。

    「きっと、そういう事故が、
     『三刀屋』さんの『鞄』にも起きると思う。

     ――――『ガソリンスタンド』には、
     まさか『鞄』を置いちゃあいないよね」

思い詰めたように、『サトル』が確認を取る。
飛び出した『スタンド』、『サトル』はその存在を教えぬまま、
『原稿』を焼却しようとしている――――

768三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/12(日) 00:19:36
>>767
「へえ、まるでコピー機にかけたかのようにそっくりな『原稿』だね?
確かに凄い技術だって関心はするけどさ、そんな芸を見せられて心変わりするつもりは・・・」

>      ブワッ
>               サァァァ〜〜〜〜ッッ!!!


「な、何ィ―――――――ッ!?」

サトルの取った行動に驚愕する
同じような『能力』を持っていた事・・・・それだけではない
サトルが自分の『納得』のためなら『作品』すら焼く男だと気が付いたからだ

                 ・・・・
「それは・・・・・・その『能力』は・・・・『僕と同じ』・・・・!」

「彼を止めろ!『ブラック・アンド・ホワイト』ォォ!」

玄関に一歩踏み込み、そのままの勢いでスタンドだけを前進させる!
そのままの勢いでサトルが手にした『原稿』に手刀の『突き』を入れて破いてやりたい パス精CCB

「(彼の言動が何のブラフでもないなら、『描いた原稿』と同じ物を焼く『能力』か?
 ガソリンスタンドの心配をするところを見ると、宛先の状況は彼自身確認できない、はず
 まずはあの『スタンド』を止めないと!)」

本体は後ろ手で開いた玄関のドアを閉じようとする

769『It's dirty work』:2020/07/12(日) 20:44:03
>>768(三刀屋)

>「彼を止めろ!『ブラック・アンド・ホワイト』ォォ!」

    バシュゥゥ!!!

発現した『ブラック・アンド・ホワイト』。
その手刀が真っすぐ、『サトル』の手に持つ『原稿』へと伸びる。

       シュボッ!

触れた『手刀』が炎上し、右腕全体に燃え広がる。
『熱』も痛みも感じられない。だが、熱の入った『炭』のように、
右腕がボロボロと崩れていくのが解る。

―――――この『原稿』は、スタンド能力の保護下にある。

    「驚いたよ、『三刀屋』さん。
     アンタも『スタンド使い』、だったとは……」

心底の驚愕を、『サトル』は両目を開いて表現していた。
その間、『三刀屋』は後ろ手に玄関の扉を閉める。

    バタムッ
              ブワァァ――――

『火の鳥』は回れ右をし、開けっぱなしの『窓』から逃げようとする。
僅かではあるが、時間を稼げたのは間違いない。

     「俺のスタンドは、『トレース』を燃やす。
      たったそれだけだ。他の何も出来やしない」

     「だが、たったそれだけでいいんだ。
      多くは求めちゃあいない。俺がこの道で生きるには、

      『ニセモノ』は全部燃やし尽くす、灰からは『本物』だけが残る」


      クルッ
                 シュバッ

『サトル』は背を向け、窓から飛び降りる。
ここは『1階』だ。逃げるだけなら容易いだろう。
作業机、漫画、それだけが室内に残る。

770三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/12(日) 21:08:20
>>769
質問です

・『火の鳥』はまだ室内にいますか?
・サトルが新たに描いた『原稿』は1枚だけですか?
・『火の鳥』の速さは目測でどの程度です?

771『It's dirty work』:2020/07/12(日) 21:51:55
>>770
>・『火の鳥』はまだ室内にいますか?
窓から外に出る直前です。

>・サトルが新たに描いた『原稿』は1枚だけですか?
一枚のみです。

>・『火の鳥』の速さは目測でどの程度です?
『スピード:B』です。

772三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/12(日) 22:14:09
>>769
「フ・・・フフフ・・・いいねぇ、我孫子くん
その『決断力』、その『爆発力』、やはり君は次代を代表する漫画家になれる!
そして、もう一つ、僕にとってとても素晴らしいGood Newsがあったよ!

我孫子くん・・・・君の『技術力』はまったく同一の『原稿』をもう一つ作る事が出来る程卓越していた!
素晴らしい朗報だ、僕たちの未来を保証してくれるくらいに、ねぇ」

『火の鳥』の速さはかなり素早い・・・
『ブラック・アンド・ホワイト』で叩き落としにしても、必ず『何体か』は取り逃がしてしまうだろう
では・・・・・どうするか?

             ピッ

スマホを起動し、電話をかける
相手は現在も絶賛作業中であろう『知覧』だ

「あ〜〜、知覧くん、時間がないから簡潔に言わせてくれ・・・・我孫子くんは『スタンド使い』だった
そして、理由は詳しく語れないけど君の持っている『元原稿』を狙って『火の鳥のスタンド』を『6体』放った

それで頼みなんだが・・・・君の持っている元原稿と、トレス原稿の該当ページにベタで大きく『×』をつけてくれ!
該当するページは・・・・」


知覧に向けて、サトルが描いた該当ページに×を付けるように依頼する
サトルのスタンドが『自動追尾型』だとすればその条件は『同じ絵』であることの可能性が高い
まずは『同じ絵』をこの世から消す!

×を描くだけなら恐らく後でまた再度描くのも簡単なはず・・・

773『It's dirty work』:2020/07/12(日) 22:45:53
>>772(三刀屋)

    P R R r r . . .

         ピッ

   「で、オニオンリングとハンバーガー、
    オードブルセット盛り合わせで――――」

   「おっ、『三刀屋』さーん。
    こっちはバッチリよォー、2ページ目が仕上がるぜ」

デリバリーを注文していたであろう、
『知覧』が呑気な口振りで電話に出てきた。
あれからの時間を考えると、『2ページ』の完成は上々な進捗だ。

>「あ〜〜、知覧くん、時間がないから簡潔に言わせてくれ・・・・我孫子くんは『スタンド使い』だった
>そして、理由は詳しく語れないけど君の持っている『元原稿』を狙って『火の鳥のスタンド』を『6体』放った」

   「えっ、えええェェ〜〜〜〜〜ッッ!!

    ま、マジかよ。やべぇじぇねェか!!
    何、ここにいるってバレてるのかよ!?」

慌てふためく『知覧』だが、『三刀屋』の指示を聞く。

    「クッソぉー、折角仕上がったばっかりなのに!

     あーもー、おりゃあ!」

『知覧』は覚悟を決めて、大きく『×』を付けたようだ。

    「じゃ、じゃあ先に『3ページ目』を描きゃあいいのか?
     しっかし、なんで自分の描いた『原稿』を狙うんだよ。
     『火の鳥』って、要は『燃やす』ってことだろォォ〜〜〜〜ッッ」

    「なんかマズいモンでも描いてあるのかよぉ?」

       バッ

何かを蹴り上げるような音が聞こえる。
『自転車』のスタンド脚、『サトル』は自転車でスタンドを追うようだ。

774三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/12(日) 23:01:50
>>773
「なんでせっかく描いた『原稿』を自分から燃やすか気になるかい?
僕にもまぁ〜〜〜〜ったくわからない でもさ、ときどきいるんだよねぇ
・・・・・・・そーいう『情熱』が溢れちゃったヤツがさぁ」

    バッ!

窓から外に出て『火の鳥』、そして『サトル』の様子を見る
『火の鳥』はまだ迷いなく行動しているだろうか?


「他のページも狙われてるかどうかわからないけどさ
とにかく、急いで他のページも仕上げてくれ! 時間内に終わらなかったら・・・・彼にバレるかもしれない!
自分の『原稿』を燃やそうとするクレイジーな男だ・・・・何をされるかわからんぞ」

『火の鳥』の様子が確認出来たら、サトルを走って追う
追いつくことは出来ないかもしれないが、出来るだけ長くサトル達の様子を観察するためだ

775『It's dirty work』:2020/07/12(日) 23:17:47
>>774(三刀屋)

    バッ!

飛び出した『三刀屋』は『サトル』を視線で追う。
『自転車』に乗ったサトルは、既に『10m』は離れている。
『火の鳥』達は依然として飛行を続けている。

>自分の『原稿』を燃やそうとするクレイジーな男だ・・・・何をされるかわからんぞ」

     「ひ、ひぇェ〜〜〜〜ッッ

      なんだってんだ、もー!」

既に『サトル』に走って追い付くことは出来ないだろう。
部屋の中には『作業机』と『漫画』の詰まれた『卓袱台』が置いてある。

776三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/12(日) 23:23:17
>>775
「ダメだね、『射程距離外』だ・・・彼自身をどうこうするのは難しい
それにしても・・・・『火の鳥』がまだ飛び続けているのが気になるね
『同一の絵』であること以外にも何か・・・・・・見落としているものが・・・?」

部屋の中に戻り、『作業机』と『卓袱台』を見てみる
彼は直前まで何をしていたのだろうか・・・?

777『It's dirty work』:2020/07/12(日) 23:31:07
>>776(三刀屋)
既に追い付くことは難しいだろう。
物理的に『サトル』を止めるのは困難だ。

>『同一の絵』であること以外にも何か・・・・・・見落としているものが・・・?」

コピー機でも使わない限り、『同一の絵』を描くことは出来ない。
事実、『サトル』の原稿は元に比べれば『そっくり』というレベルだった。
単純な『絵』ではない、何か別の『トリガー』があるのは間違いなさそうだ。

まずは『作業机』に目を向ける。
祖父か父親と『狩猟』に行った時の写真が、
イノシシの牙と一緒に飾られている。

机には原稿用紙、Gペン、インク壺が並んでいる。
他にもスクリーントーンのファイル、雲形定規など、
漫画を描くための道具一式が並んでいる。

『卓袱台』に乗っているのは、漫画の単行本だ。
いずれも『サトル』が好きだと言っていた漫画ばかりだ。
どれもページの所々に真新しい『付箋』が貼られている。

778三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/12(日) 23:38:54
>>777
「困ったねぇ・・・困ったねぇ・・・早く彼らを止めないと知覧くんが燃やされてしまう
彼のスタンドが『原稿』を狙うための『条件』を突き止めないと」

サトルが描いた『原稿』のページを思い起こす
どんな場面のページだっただろうか?

「これは・・・我孫子くんが好きな漫画だね
『付箋』が張られてる・・・何かの研究をしていたのかな?」

漫画を手に取り『付箋』のついたページを捲ってみる
彼は直前に何を参考にしていたのだろうか?

779『It's dirty work』:2020/07/13(月) 00:04:17
>>778(三刀屋)
『サトル』の掲げた『原稿』のページを思い起こす。
確か、『2ページ目』だ。

所謂、『終末モノ』と呼ばれる類のマンガだ。
主人公が狩猟をし、肉を食べながら世界を思う。
単純な内容だが、世界情勢の映し方、構図の妙、
狩猟者の独白する台詞、それらがアマチュアとは一線を画していた。

アバンギャルドな構図は、この『2ページ目』からも主張されている。
『三刀屋』は漫画を手に取り、付箋のページをそれぞれ捲っていく。

漫画自体に統一性はなく、ページの内容もバラバラだ。
だが、どれも奇抜なコマ割り、凝った構図、派手な描画、
とどのつまり、漫画家のセンスが炸裂しているページばかりだ。

780三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/13(月) 00:13:45
>>779
「よく読めているね、我孫子くん
漫画の『エッセンス』を捉えるのが上手い・・・勉強はちゃんとしているみたいだ
でも、これはあんまり関係なさそーだね」

付箋の漫画を元の位置に戻す

「さて・・・・あと怪しいのは彼の作業机だけど・・・」

作業机の上の道具を調べてみる
一般的に売られている(三刀屋が知覧に与えたような)道具以外に何かおかしなものはあるだろうか?

「そういえば我孫子くん、おじいさんとよく『山』に入ってたって言ってたね
うん、『経験』が生きてるなぁ」

781『It's dirty work』:2020/07/13(月) 00:37:59
>>780(三刀屋)
付箋の漫画を元の位置に戻す。

>「す、凄い・・・・やはり僕の見立てに狂いはなかった・・・彼は『天才』だッ!

>「僕は経験上、何人もの『漫画家』を見てきたが・・・・
>『彼の才能』はそれらのいかなるもブッちぎりで超越している・・・・取れるね、天下」

>僕が見る限り、あの作品は『完璧』・・・
>技術的には修正する必要がまったくないくらいサイコーな作品だと思ったけど?」

『三刀屋』は『サトル』の才能を信じている。
――――故に、『三刀屋』はそれに気付けなかった。

作業机の道具を見るが、怪しい点は見当たらない。

782三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/13(月) 00:44:37
>>781
質問ですが
『参考にした漫画』と『サトルの原稿』の構図やコマ割に似通った点はありますか?

783『It's dirty work』:2020/07/13(月) 00:49:57
>>782
>『参考にした漫画』と『サトルの原稿』の構図やコマ割に似通った点はありますか?

じっくりと見ないと解らない。

784三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/13(月) 17:47:30
>>781
「・・・・・・・・?」

ほんの少しだけ・・・些細な『違和感』があった
三刀屋は自分自身を『信用』していない・・・故に往々にして他者を『信用』しがちだ
(それは多くの場合自分自身の無責任さからくる『信用』なのだが)

もし・・・・それが根本的に間違えていたとすれば?
この騒動における一番の『悪』とは三刀屋自身だと思っていたが・・・

 ・・・     ・・・        ・・ 
『もしも』・・・・・・『サトル』にも何らかの『瑕疵』があったのだとすれば・・・・?


「まさか、ね? 彼は『完璧』で『最高』で『清廉』な『漫画家』さ
 そんな事はあるはずがない」

疑念を振り払うべく、もう一度『付箋のページ』と『サトルの原稿』の構図を確認していく
『サトルの原稿』はこの場にはないが、あの不思議な『道具屋』で何度も『トレス』している(結局はあきらめたが)
構図については何も見ずとも覚えているはず

785『It's dirty work』:2020/07/14(火) 20:52:56
>>784(三刀屋)
疑念を振り払うべく、
『三刀屋』は付箋の書かれたページを開く。

   パラ

┌──────────────────────────┐
│『三刀屋』が気付けなかったのは、無理もなかった。       .│
│それは決して、無責任な信頼感だけを指した訳ではない。   │
└──────────────────────────┘

           パララ

┌────────────────────────────┐
│作り手の意図的な『剽窃』、または意図せぬ『ネタ被り』を、       .│
│編集者が見付けられず、出版されてしまうケースは珍しくない。   │
│それは新人どころか、ベテランにだって起こり得る。           .│
└────────────────────────────┘

>「出版社の人間ならまだしも、彼は完全に部外者ではないのか?」
>静かな口調ではあるが、硬い口調からは少しずつ不信感が滲み出る。

『三刀屋』の思った通り、『サトル』の才能は完璧だった。
――――『完璧』だった。狩猟と解体で培った『観察眼』は、
線の強弱さえ反映した、完璧な『トレース』を『肉眼』で可能とした。

描画技術だけではない。コマ割りは『ツギハギ』を感じさせず、
異なる漫画の『構図』同士でさえ、淀みなく読ませる『センス』が光る。

『三刀屋』の脳裏に浮かぶ『原稿』の構図と、
『真新しい』付箋の貼られたページの構図は、奇妙なまでに一致する。

これが『剽窃』なのか、意図せぬ『ネタ被り』なのか、
それはまだ、『三刀屋』には解らない。

     ┌───────────────────┐
     │だが、この類稀なる『共通性』を、         .│
     │世間は決して見逃さないだろう――――     │
     └───────────────────┘


.

786三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/14(火) 22:53:18
>>785
    パラ・・


ページを捲るたびに『疑念』が『確信』へと変わってしまう
『疑念』を抱いているうちはガンガンと頭を打ち鳴らすような焦燥感だけがあった
『確信』に変わってからは胃に重いものが詰め込まれるような緊張感がそれに加わった


「参った・・・・ね・・・・・」

前提が変わる 今日の『サトル』の様子を思い返すと一つの筋が通ってしまう
サトルが何故『原稿』を燃やそうとするのか・・・・『理由』がわかってしまう

『初対面の知覧に対する不信感』・・・・当然だ
『原稿』を読む人間が増える程に『この事実』に気づく可能性が高くなる

恐らく、彼は気づいてしまったのだろう・・・いずれ誰かが『この事実』に気づいてしまう、と

>「サイテーだと思うよ、僕は
> パロディとか二次創作とか、そーいうのなら作品として昇華しているって思うけどさ
> 人が描いたのをパクるのはダメだよねぇ〜」

サトルに言ってしまったセリフが想起させられる
『三刀屋』は確かに・・・・『否定』してしまった

  ・・・・・・・・・・・
『 完全に否定してしまった 』のだ

「『罪悪感』・・・・・彼が今動いている理由はそれか?
だとしたら、僕が彼の行動を止める理由はあるのかな・・・?」

サトルを止めなければ、自動的に『原稿』は燃えて無くなるだろう
サトル自身も『この事実を含む原稿』が燃える事で満足する
諸々の罪を『なかったこと』にできるチャンスだ
『原稿を無くした罪』 『原稿を湖に落とした罪』 ――――『剽窃の罪』。
絶好の機会を不意にする理由がどこにある?


「・・・・・・・・・・・あるね
ここで全てが『なかったこと』になると・・・彼は『何も学ばない』
悪い事をして何かを得ようとして、バレそうになったからなかったことにする

それじゃあ・・・・いずれまたどこかで『同じように繰り返してしまう』!
『僕たち』は向かい合わなきゃあいけないみたいだね・・・・・・罪とその結果に」

そうと決めたからには行動を起こさなければならない!


「我孫子くんは言ってたね 『ニセモノ』を全て焼く、と
なら・・・・・『本物』が消えてしまったらどうなる?」

ビリリィィ―――――――ッ!

卓袱台の上に積まれた『参考漫画』たち
それらの『付箋がついたページ』を完膚なきまでに破り捨て、バラバラにする!

787『It's dirty works』:2020/07/14(火) 23:34:09
>>786(三刀屋)
『三刀屋』は『盗作』を真っ向から否定した。
『サトル』の原稿は勿論、『知覧』の原稿も『剽窃』に過ぎない。
双方を『なかったこと』にしてしまえば、それに越したことはない。

   ド

┌────────────────────┐
│しかし、『三刀屋路行』は許さない――――   .│  ド
└────────────────────┘

              ド

    ビリリィィ―――――――ッ!

決意を固めたかのように、『付箋』のページを破り捨てる。
何かが変化した様子はない。――――媒体は『漫画原稿』だ。
これらの参考資料に、スタンド能力は作用していないだろう。

引き千切ったページをバラバラにしようとした時、

    P r r r r . . .

『スマートフォン』が鳴り響く。
『知覧』が電話を掛けてきている。

788三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/14(火) 23:47:24
>>787
    ビリリィィ―――――――ッ!



               シ―――――――ン・・・・

「あ、あれぇ? せっかく気合い入れてかっこつけてみたけど、これも違うのかい?」

意を決して『ページ』を破り捨ててはみたが特に変わった様子はない
このままでは・・・・まずい 何か打開する手段が必要だが・・・

>    P r r r r . . .

「はい!もしもし、三刀屋です!
ごめんよ、知覧君! 『火の鳥』の進行をまだ止められてないんだ!」

知覧からの電話を取るや否や
開口一番に『ヤバイ』事を伝える

789『It's dirty works』:2020/07/15(水) 00:20:54
>>788(三刀屋)
>「はい!もしもし、三刀屋です!
>ごめんよ、知覧君! 『火の鳥』の進行をまだ止められてないんだ!」

    「やっ、やっぱりッ!」

    「もう、ドアの外に『一羽』いるんだよー。
     ドアを開けたり、燃やしたりするパワーはなさそうだが、

    ――――『サトル』君にドアを開けられたら、
    折角描いた『原稿』が台無しだぜェェ〜〜〜〜〜ッッ」

半ば『悲鳴』に近い声色で『知覧』は捲し立てる。
先行して『火の鳥』だけが到着したようだが、
この分だと『サトル』の到着は時間の問題だ。

手元には引き千切った漫画のページがある。
どれも『サトル』の『トレース元』となった漫画ばかりだ。

――――『サトル』の言う『ニセモノ』を追尾し、
『火の鳥』によって『焼却』させるのが『サトル』の狙いだ。

何を基準とした『ニセモノ』なのだろうか。
『知覧』がバツ印を付けても『追尾』が続く以上、
単純な『絵』そのものではないのは間違いない。

>『三刀屋』の脳裏に浮かぶ『原稿』の構図と、
>『真新しい』付箋の貼られたページの構図は、奇妙なまでに一致する。

790三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/15(水) 00:43:50
>>789
「不味いね、もう到着しているのか・・・」

知覧の狂騒から『ヤバイ』状況は伝わってくる
『火の鳥』を避ける方法・・・・『自動追尾』の条件を外す方法を考えなければ


「いいかい、知覧くん
詳しい話は後から伝えるけど、サトルくんは『ニセモノを燃やすスタンド』を使う
だからさ・・・・その原稿を『ニセモノではない新しい何か』にしないといけない」

脳裏に一つの『条件』が思い浮かぶ
奇妙なまでに似通った『構図』・・・ 『構図』? これか?


「『元原稿』と『キミの原稿』・・・・そう『例の2ページ目』だけどさ
『ホワイト(修正液)』を使って『描き直してくれ』 ・・・まったく別の構図、ポージングになるように
なぁに、君なら出来るさ 何せ・・・・我孫子くんの『手』を持っているのだからね」

サトルは・・・『剽窃』をしていたとしてもその技術力は確かだ
その『技術』があればこの程度の『即興』、どうにかしてくれるはず


「僕はぼくでちょっとこっちで頑張ってみるからさ」

     ズギュンッ!


サトルの作業机に座って『ブラック・アンド・ホワイト』を発現する・・・そして

「さぁて、『トレス』なら僕もそれなりに頑張れるからね
一丁、知覧くんを援護する『オトリ』でも作ってやろうじゃないか」

     カキカキカキカキカキカキカキカキカキカキカキカキカキカキカキカキカキカキカキカキカキカキカキカキカキカキ!


『問題の2ページ目』・・・それを
先ほど破り取った『参考文献』を参考にして自分でも似たような原稿を書いていく! パス精CCB

791『It's dirty works』:2020/07/15(水) 22:22:28
>>790(三刀屋)
「つまり、全く『別物』にすりゃあいいんだな。

 よっしゃ、さっさと鳥公を追っ払ってやるかー」

『知覧』は納得し、作業に取り掛かったようだ。
一方、『三刀屋』は破り取ったページを元に、
『オトリ』を作りはじめる。

あくまでも『構図』のみをトレースするのであれば、
『ネーム』程度の書き込みで事足りる。
そう、時間は掛からないだろう。

┌─────────────────────────────────────┐
│貴方は漫画家ではありませんが有効的な『コマ』の使い方を知らなければならない。   ..│
│何せ貴方は編集者、なんですから。                                .│
└─────────────────────────────────────┘

トレースに使用する『コマ割り』をしながら、
ふと、『道具屋』の言葉が脳裏を過ぎていった。
ある意味では、この展開を予言していたのだろうか――――

792三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/15(水) 22:31:25
>>791
「知覧くん、『火の鳥』はまだそこにいるかい?」

『別物』に変えた『原稿』と『トレースの囮』
考えられる妨害策はとりあえず打った・・・・後はこれがどう転ぶか

「それにしても・・・『コマ』の使い方にここまで頭を悩ませる事になるとはねぇ
事実は小説よりも・・・・いや、漫画よりも奇なりって感じだね」

『火の鳥』がこちらにやってくるかもしれない
周囲を警戒しながら、知覧の待つカラオケルームに戻ろうとする

793『It's dirty works』:2020/07/15(水) 23:28:21
>>792(三刀屋)

   シュババッ バッ

       ――――ボォゥ……

しばらくして、『三刀屋』は『構図』を切り終えた。
ふと、触れた『構図』が熱を持っているのが伝わって来る。
『囮』としてスタンド能力の対象になったのは、間違いないだろう。

   「ひ、引いてくぜ――――」

『知覧』がホッとしたかのように声を漏らした。
それを聞いてから、『三刀屋』はカラオケルームへと向かうべく、
来た道を真っすぐ戻っていく。

   バサァ
              バササァ

途中、『火の鳥』が『三刀屋』の頭上を通り過ぎ、
まっすぐに『アパート』へと戻っていくのが見えた。
『サトル』の自室に置きっぱなしの『トレース構図』を
追っていったのは、火を見るよりも明らかだった。

794三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/15(水) 23:37:53
>>793
「安心してくれよ、知覧くん
『火の鳥』は無事に無力化できたようだ、君はこのまま『原稿』を描いてくれ
もっとも・・・・・『必要はなくなった』かもしれないけどね」

無事に『火の鳥』による攻撃を防いだことにほっとしつつも
『電話』を続けながら歩き続ける

「知覧くん、巻き込まれた君にも聞く権利はあると思うから伝える
我孫子くんが何故こんな凶行に及んだか、そのあらましをね

彼は・・・・他人の漫画を参考にしていた、参考にし過ぎていたんだ
彼の部屋を漁ってみたらね、『構図の参考にした漫画』がいくつも出てきた
要するに『今の君と同じことをやっていた』という事だよ

僕は彼の行動の理由は『罪悪感』から来ていると思っている
だからこそ、僕たちは彼と話をしないといけない、そんな気がするんだ」

「巻き込んでしまって悪かったね、知覧くん」

795『It's dirty works』:2020/07/15(水) 23:55:13
>>794(三刀屋)
『三刀屋』は『サトル』がスタンドを使った理由について、
推察を交えながらも、ありのままに『知覧』へと説明した。

   「そ、そうか。……まあ、でもそうだよなー。

    十代にして『天才』なんて、
    なんか『裏』がある方が当たり前だよなー」

     ブツッ

何処か『やっかみ』も混じった感想が返ってきたが、
事態を理解したのか、『知覧』は通話を切った。

そして、小さな『児童公園』に横倒しになった自転車と、
遊具の前で途方に暮れたように立ち尽くす、『サトル』の姿があった。

    「待ってたよ。……『三刀屋』さん。

     ――――『バーニング・エアラインズ』。
     俺のスタンド能力が解ったってことは、
     ……俺のしたことも、解ったってことか……」

『バーニング・エアラインズ』を誘導した以上、
原稿の『トレース』を新たに複製したのは明白だった。
それは即ち、『トレース』の元を発見したということに他ならない。

    「俺は、ずっと『本物』になりたかった。
     ボロいアパートに漫画道具だけ持ち込んで、
     学校に通いながらも、ずっと執筆に熱中していった」

    「本物になりたいから、好きな漫画じゃあなくって、
     センスが光って唯一無二の漫画だけを集めていた」

    「本物になりたいから、わざわざ『狩猟』に同行して、
     狩った獲物を解体して、生命のリアリティを探求しようとした」

    「――――やればやるほど、本物から遠のいていった。
     そりゃあ、そうだよな。鳩やカラスは最初から飛べるのに、

     俺はずっと、鳥のマネをして『両腕』を振り回していただけだった」

   ポタ……

『サトル』は長身を項垂れて、やるせなさを吐露していく。

796三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/16(木) 00:58:15
>>795
「だとしても・・・・彼の『才能』は最高だ
それは『彼の技術』を使った君の方がよくわかっているはずだよ?
だからこそ、彼に直接会って話をしてくるよ」

      ブツッ

「『話をする』・・・・かぁ〜
どうしたもんだろうねぇー・・・ 僕自身、偉そうな事言える立場じゃないんだけどねぇ
ねぇ、その辺どう思う?知覧くん」

「切れてる」


ふと、倒れた自転車が見えた
サトルが乗っていた自転車によく似ている
首を振ると公園で項垂れるサトルの姿があった

「やあ、追いついたよ」

サトルの目の前に立つ 彼の表情は見えない
立ったまま 彼の独白を聞く


>俺はずっと、鳥のマネをして『両腕』を振り回していただけだった

「なるほど、ね
君は・・・・『ニセモノ』でい続ける事に耐えられなくなったのか」


サトルの本心の吐露
そんな彼を『正しい道に導くための言葉』を考え・・・・考えるのをやめた
そんな『おりこうさんの論理』はまったく性に合わない


「『本物は努力なんてしない』『ライオンが強いのはライオンだからだ』
そんなトートロジーめいた言葉はさぁ、僕、嫌いなんだよねぇ」

語り始める 自分自身の性格のように『でたらめででこぼこな言葉』を

「それじゃあさ、『学ぼうとすること』は悪なの?『鍛えること』はニセモノなの?
シーン・・・という擬音を最初に漫画に使い始めたのは、『漫画の神様』だといわれているけどさ、
『それ以降の漫画家』がそれを使う事は『ニセモノ』かい? いいや違う!」

「それらは『普遍化』したんだ!
『優れたもの』を皆が取り入れ、改良し、世の中に広めて、『当たり前のもの』として使うようになった
より面白い漫画を作ろうとした漫画家たちの情熱がその『流れ』を動かした」


「だから・・・・その・・・なんだ・・・・上手くは言えないけどさ
君が漫画を面白くするために、他の漫画を学んだこと自体は・・・・・・悪い事じゃないと思う
だって、君の『才能』はそうやって鍛えられたんだからさ」

797『It's dirty works』:2020/07/17(金) 00:21:43
>>796(三刀屋)
『サトル』の技術に間違いはなかった。
『三刀屋』の表現するところの『完璧』かつ『最高』の才能だ。

だが、それは『アーティスト』として飛翔するための『翼』ではなかった。
優れた『才能』が必ずしも、活躍できる場所が宛がわれるとは限らない。

それを理解した上で、『三刀屋』は半端に寄り添うことを止めた。
耳を傾けていた『サトル』はたどたどしい言葉達を最後まで聞き遂げ、

    「『三刀屋』さんさぁ、何が言いたいか解らないけど、
     ……俺はまだ、『漫画家』を目指していいんだよな」

      バサァ
                  バササァ

夕暮れの空を飛ぶ『火の鳥』達が、『サトル』の下へ集っていく。
スタンド能力を『解除』したのだろう。スタンドは己の傍で解除できる。

    「今回のは、丸パクリになってしまったが、
     俺はまた、描くよ。俺が『才能』に頼らないで、

     『才能』が俺に息づいて、『当たり前』になるまで、
     描いて描いて、……きっとそれが、俺の『オリジナル』になる」

798三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/17(金) 00:41:15
>>797
「うん! やっぱり慣れない事はやるもんじゃあないねぇ
人に何かを『伝える』というのはやっぱり難しい、君たちは当たり前のように使ってる技術だというのにね」

伝えたいことを伝えたいように言葉にする事の難しさ
久々に他人に『本気で』何かを伝えようとしたため、
思ったように言えたか自信はない


「我孫子くん、僕はさ、だからさ、君のその『技術』は本物の才能だと思ってるよ
バラバラの個性を繋ぎ合わせて作品を作ったのに、何の違和感もなく僕たちに『伝える』事が出来た
それは・・・・とても素晴らしい事だと思う

丸パクリはいけないけどさ・・・・そのくらいの欠点なら僕が支えられるよ
『ネタ出し』とか・・・・『超えちゃいけないセーフティラインの見極め』とかね
だからさ、作っていこうじゃないか、僕らで
また初めから・・・・・ね?」

一言一言、言いたい言葉を汲み上げながらサトルに伝えていく
そして、サトルの肩を ぽんっ と叩いた

799『It's dirty works』:2020/07/17(金) 21:20:38
>>798(三刀屋)
『三刀屋』は『サトル』の才能を素直に褒め、
その上で助力を申し出る。肩を叩き、彼への信頼を示すように。

    「ああ、……ありがとうな。『三刀屋』さん。
     また、一から付き合っちゃあくれない、ですか」

ぎこちない敬語を交え、『サトル』は協力を頼みこんだ。
漫画家と編集者。ビジネスである以上、その付き合い方は様々だ。
だが、たった今。二人は互いを認め合っている。

『三刀屋』は『サトル』の危うくも若々しい『才能』を。
『サトル』は己の才能に気付く程に強烈な、『三刀屋』の『執念』を。

    「それだったら、やっぱり『原稿』は描き直させてくれないか?
     トレースしたの俺から言うのはおかしなことだとは思うが、
     あの『漫画』が世に出たら、編集部だって困るはずだ」

    「――――ああ、いや。この件を編集部にしっかりと、
     説明をしなくっちゃあいけないから、虫のいい話だとは思っている」

    「どの道、あの『原稿』は、『破棄』しなくっちゃあならないよな。
     俺の手で、ってよりは、『三刀屋』さんが処分した方がいい」

そしてやはり、『サトル』は『原稿』の描き直しを再度申し出てきた。
『三刀屋』が天才と見込んだ『原稿』ではあるが、まだ『編集部』には提出していない。
コピーもデータ化も為されていない以上、他の編集者が見る余地もなかった。

    「おーい、ここにいたのかよー」

二人を探していたのか、『知覧』がノコノコと現れた。
手には『三刀屋』の鞄。そして、『原稿用の封筒』を持っている。

800三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/17(金) 22:45:26
>>799
「『編集部』には僕の方から説明しておくよ
君はほら、『新作』、書かないといけないだろう?」

『原稿』はまだ編集部に見せてないから・・・やろうと思えば握りつぶせるけど
ここでそんな事しちゃったら流石にダメすぎるなぁ、と思いつつ
サトルの信頼には応えてやらなきゃなぁ、と再度決意する

「(あれぇ? どうやら『いい感じの和解ムード』っぽい感じになってきたね
 この流れなら・・・・言っても怒られないんじゃない?)」

「あー・・・ゴホン、実は僕も君に『告白』しなきゃあならない事があるんだけどね
おっ?ちょうどいいところに来たね おーい!知覧くぅーん!」

「あー・・・まあ今となっては割とどうでもいいことかなぁって思うんだけどね
ちょっと君に謝りたい事があって・・・・こういう事なんだよ」

     バッ

言うや否や、知覧の持つ『封筒』をひったくり『中の原稿』をブチまける
そして、『よれよれになった原稿』を見つめて、言う

「実は僕・・・・君の原稿を湖に落としちゃったんだ、ごめんね」

801『It's dirty works』:2020/07/17(金) 22:56:34
>>800(三刀屋)
>「あー・・・ゴホン、実は僕も君に『告白』しなきゃあならない事があるんだけどね
>おっ?ちょうどいいところに来たね おーい!知覧くぅーん!」

『知覧』が近づいてくる。
手にした『原稿』を見る『サトル』の表情は強張ったが、
何故か『濡れた』後があるのを見つけると、不可解そうに眉を顰める。

    「なんか、心なしか濡れてないか?」

至極当然の疑問を口にする『サトル』だが、
中の原稿をぶちまけられると、その両目が丸くなる。

    「こ、これ……。ビショビショじゃねェか……」

>「実は僕・・・・君の原稿を湖に落としちゃったんだ、ごめんね」

    「そ、そーなんだよー。
     だから、俺のスタンド能力で、
     何とか『描き直そう』と思ってさー」

『知覧』が『三刀屋』の鞄から、
描き終わっていた原稿の一ページ目を取り出す。

    「と、トレースの再トレース!?

     し、しかし、なんだって『湖』に原稿を落とすんだ?
     まっすぐ『編集部』に届けるわけでもなく、――――『三刀屋』さん」

     ギロ・・・

『サトル』の双眸が怪しく光る。
その両目は二人を代わる代わる睨み付けている。

802三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/17(金) 23:13:38
>>801
「ハッハッハハ・・・」

「(あ、あれぇ〜? さっきまで結構いい感じの雰囲気だったのに
 なんだか雲行きが怪しくなってきたなぁ・・・どういう事だい?知覧くん)」

    ヒソヒソヒソヒソ

知覧と目配せをしながら、サトルの顔をちら〜と見る
ヤバイナー コワイナー 

「えー・・・ごほん、『マジでやばい原稿』だなーっと思って・・・・
開放感のあるところで読みたいなーって思っちゃって・・・・
『野外』で読んでました・・・・・ごめん」

「で、でもさぁ!おかげで知覧くんとも出会えたんだよ!
見てくれ!このとてつもなく精確な作画!
彼の能力で描いたものなんだけどさぁ・・・・この『技術』なら
将来、君のアシスタントとしてどうかなぁ!?」

サトルの目が怖い・・・・
言葉の勢いでごまかすためにメチャクチャにまくし立てる

803『It's dirty works』:2020/07/17(金) 23:27:08
>>802(三刀屋)
>「(あ、あれぇ〜〜? さっきまで結構いい感じの雰囲気だったのに
> なんだか雲行きが怪しくなってきたなぁ・・・どういう事だい?知覧くん)」

焦りによってチラつく視線を『知覧』に送るが、
当の本人も同じように冷や汗を掻いている。

トレースした『原稿』を提出したのは確かだが、
それが不当な扱いをされたのは、また別の話なのだろう。

>見てくれ!このとてつもなく精確な作画!
>彼の能力で描いたものなんだけどさぁ・・・・この『技術』なら
>将来、君のアシスタントとしてどうかなぁ!?」

    「『技術』どころか、俺の筆致そのままだな。
     なんだこれ? どーいう能力なんだ……?」

    「その、手袋をハメた方から、
     技術を丸コピするスタンド能力でして……」

    「ほう」

『モンキー・ビジネス』のスタンド能力を聞き付けた『サトル』は、
二人に近づき、その両肩を叩く。
                      . . .
    「将来と言わず、――――『今から』やろうじゃあないか。

     何故か、『原稿』を描く道具も揃ってるみたいだしなぁ。
     その手袋、俺にやったみたいに、『他人』にもハメられるんだろ?」

     ズギャッ
              ブワッサァァ――――

『サトル』は原稿の一枚を拾い、『バーニング・エアラインズ』を発現させる。
炎上した『火の鳥』は地面を滑空し、『知覧』の描いた『トレース』に突撃。
『トレース』は瞬く間に燃やし尽くされる。

    「俺の『パクリ癖』がなくなるまで、『原稿』を描き続ける。
     トレースかどうかは、『バーニング・エアラインズ』が判断する」

    「えぇー、ニートの俺が『労働』なんて……」

    「トレースした『構図』さえ修正できれば、あの原稿を提出できる。
     ――――どうした。『三刀屋』さんにも付き合ってもらうぜ。

     最終的には、アンタの『判断』が必要になるからな」

804三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/17(金) 23:48:17
>>803
「フ・・・・フッフフフ! 望むところだよ!
我孫子くんの欠点をしっかりと評価出来るのは僕しかいないからね
3人で最高の『漫画』を作ってやろうじゃあないか!」

聞くも間抜けなミステイクから生まれた今回の騒動だったけど
こんな風に終わりを迎えられるなら『ちょっと頑張ってみた』価値はあったなぁ
無責任でいい加減な僕だけどさ、少しはマシなところもあるみたいだね

心の中に爽やかな風を吹かせながら三刀屋はそう思う
ダメな大人の『汚い仕事ぶり』から生まれた騒動だったが
全力のぶつかり合いの中で、虚飾も汚濁も振り落とされ、『輝けるなにか』だけが残っていた

805『It's dirty works』:2020/07/18(土) 00:25:16
>>804(三刀屋)

    「え、ちょ、俺はそーいうのは」

    「いいから来てもらおうか」

すっかり『サトル』に顎で使われている『知覧』。
三人は連れ立って、ボロアパートへと閉じこもった。

    ・

    ・

    ・


    シュボォォッ!!


   「ダメだ! まだ一コマ、『トレース』してやがる……。
    『知覧』、描き直しだ。14ページ、スクリーントーン用意!」

   「だ、ダメだァ〜〜〜ッッ もう寝かせてくれェー!
    だいじょーぶだって! 1コマくらいパクったって――――」

   「休んでもいいが、絶対に寝るなよ。
    『手袋』さえあれば『三刀屋』さんがサポートできるが、
    『モンキー・ビジネス』を発現し続けてなくっちゃあならないからな」

   「う、うげェェ〜〜〜〜〜ッッ」

    ・

    ・

    ・

三日後、何処に出しても恥ずかしくない形で、
『サトル』の原稿は完成した。

この作品がどう評価されるかは『読者』次第だ。
今、『原稿』を手にした『三刀屋』に、その評判は予想できない。
編集長の肝入りで挑んだ企画がモノの見事に滑ることもあれば、
代原で乗せた読み切りが大反響を巻き起こすこともあるのが、この世界だ。

決して日の目を見ることのない、失敗の連続が生み出した事件。

         works
お互いの『 剽 窃 』によって起こった騒動は、こうして幕を閉じる。

    三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』 → 新たな『原稿』を編集部に提出。
         知覧『モンキー・ビジネス』 → 帰ってから泥のように眠った。
我孫子サトル『バーニング・エアラインズ』 → 自らの『才能』と向き合った。


   『It's dirty work "s"』 → そのどちらも『未完結』。

806『It's dirty works』:2020/07/18(土) 00:38:33
『漫画』から発現する『火の鳥』のヴィジョン。
おおよそ5〜6羽ほどの『群れ』で発現される。

『トレース』を『焼却』する能力。
発現した『漫画』と同じ『構図』を『第六感』で探知し、
『火の鳥』は『トレース』を追って飛翔する。

『トレース』を『3m以内』に収めた時点で、
『火の鳥』は激しく炎上し、『トレース』目掛けて突っ込み、
着弾した『原稿』は跡形もなく『焼却』されるだろう。

あくまでも『構図』自体を対象とするため、
コマ同士を切り合わせた『コラージュ』や、
下書きだけであっても、『追尾』の対象となる。

本体は『トレース』の才能に長けており、
無意識ながらも『構図』を真似ていることに気付いていた。
強烈な『自罰感情』を源にしたスタンド能力。

『バーニング・エアラインズ』
破壊力:E スピード:B 射程距離:A
持続力:C 精密動作性:C 成長性:A

807『星見町の終わらない夏』 〜ウインターじいさん編〜:2021/10/10(日) 19:47:55

―――『商店街』の片隅にある古ぼけた『おもちゃ屋』。

『昭和の時代』からありそうなその佇まい。
余計なお世話だが商売として成り立っているのだろうか。
店前には1mほどの『サンタ人形』がおいてあり、
外からでも『クリスマスの玩具』が置いてある事が分かる。
これは『三刀屋』達の働きのおかげか、
あるいは『ウインターじいさん』というくらいだから元からこうなのか。

そう、『三刀屋』は『百目鬼』を誘い、
『巨大クリスマスツリー』を出してもらいにおもちゃ屋の『店主』、
『ウインターじいさん』に会いに来たのだった。

 ………

             ガラァ――――ッ

『三刀屋』と『百目鬼』が店に入ると、レジに一人の老人の姿が見える。
サンタの恰好をし、ふわふわの『白い髭』を蓄えた老人。

「フォッフォッフォ、君が『三刀屋さん』かねェ?
 ようこそ、ようこそ! ワシが『ウインターじいさん』じゃあ!」

『ウインターじいさん』というより『サンタじいさん』と行った方がふさわしいか―――?
そしてレジの左隣には、しかめ面をして腕組みをするもう『一人の老人』が存在する………。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
※フィールドワークミッション『終わらない夏休み』絡みの単発イベントです。
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1617983099/445-449n
基本は『会話』となるため、参加者のレスを待たない形で進めます。
究極的には片方が『黙ったまま』でもイベントが終わる可能性がある事をご承知ください。

808百目鬼小百合『ライトパス』:2021/10/10(日) 20:21:13
>807

「こりゃあ『天然記念物』だね。
 懐かしいというか何というか……」

店の概観を見て、そんな感想を抱いた。
自分の幼少期には、まだ多かったが、
今の世の中で、こんな店が残っているとは驚きだ。
ともかく、三刀屋と共に『入店』した。

「――どうも、こんにちは」

(おやおや、また偉いのが出てきたもんだ)

「アタシは『百目鬼』で、こっちが『三刀屋』だよ」

(このじいさんに町を歩いてもらっても良さそうだねぇ)

現れた『ウインターじいさん』を前にして、
さすがに驚きを感じるが、表には出さない。
普段通りに挨拶し、会釈を送る。
まさしく『サンタ』のような風貌は、
『クリスマスの雰囲気作り』にも利用できそうだ。
だが、おそらくは店の仕事があるだろうし、無理は言えない。
客観的には、忙しそうには見えないが。

「ここで『クリスマスツリー』を管理しているって話を、
 耳にしたんだけどねえ」

先だって口を開いてから、三刀屋に視線を向ける。

809三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2021/10/10(日) 20:39:36
>>807-808

「こんにちわ。急な申し出にも関わらずご丁寧な対応をいただきありがとうございます」

趣のある店構えを見回し、この店の歴史に思いを馳せる
店前にどんっと置かれた『サンタ人形』に『クリスマス玩具』・・・・
『クリスマスツリー』が預けられたのはただの『お役目』というだけではなく、
店を持つ本人の趣味嗜好も関係しているのだろう・・・・

「僕がご連絡を入れました『三刀屋路行』です
 本日は『クリスマスツリー』の使用許可を願いたく参りましたが・・・・
 ところで、そちらにいらっしゃるお方は?」

『ウィンターじいさん』に挨拶を行った後、首をレジ横のご老人へと向ける

810『星見町の終わらない夏』 〜ウィンターじいさん編〜:2021/10/10(日) 21:35:15
>>808-809(百目鬼&三刀屋)

「フォッフォッフォッ。
 確かにワシが『クリスマス好き』な関係で、『クリスマスツリー』の管理もしておる。

 そして、最近、流行ってきてるじゃろう? 『クリスマス』。
 君達に言われずとも出そうと思って、
 つい先日の『商店街の会合』でもアピールしていたんじゃよ」

思わぬところに野生の味方がいたものだ。
『夏の魔物』が居れば、『冬好き』『クリスマス好き』もまた居る。
たとえば個人で『イルミネーション』を飾るような家も結構ある。
今更だが、そういう『冬好き』達を探して、
そこを着火点にするという方法もあったのかもしれない。

「フォッフォッフォッ じゃがのう………コイツが猛烈に反対しておっての。
 あ、コイツは何を隠そう、向かいの『定食屋』のジジイじゃ」

『ウィンターじいさん』が説明がてら老人を紹介する。
『定食屋の老人』は軽口を叩く『ウィンターじいさん』を睨んでいる。

「………こんなまだ暑い盛りによォ、
 『クリスマス』なんて、ちィと早すぎるんじゃあねェかァ?
 若い衆が何を考えているかは知らねェが―――」

『定食屋の老人』はそう言うと、今度は『三刀屋』と『百目鬼』を睨む。
確かに彼からしてみれば、二人は『若い衆』といえるか―――

「オレァ、反対だねッ! 『夏が好き』って事もあるし、
 コイツの『冬キチガイ』ぷりも前々から気に入らねェからなァ―――」

どうやらこの『定食屋の老人』が障害となっているようだ。

811三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2021/10/10(日) 22:12:56
>>810

「なるほど、『ウィンター』さんにとって今のこの『ブーム』は絶好の機会ですね
 僕もこの町の学生さん達と話す機会があったのですが、『クリスマスブーム』が確かに来ているみたいです
 せっかくの機会なので僕の会社でもクリスマスフェアをやっている所ですよ」

スマホの画面を見せて自社で行っているキャンペーンの画像を見せる
各漫画の『クリスマス回』が無料公開されている画面だ

「まあまあ、夏が好きというのもわかりますよ
 僕だって夏の暑い盛りには海で磯遊びをしますしねぇ」

嘘である
三刀屋は暑いのも寒いのも嫌いなので、真夏はたいてい空調の利いた室内にいる

「でもですねぇ、夏なのに冬っぽい事をするのもなかなか面白くはないですか?
 ほら、冬場なのにアイスを食べたりするようなもので・・・・」

「っと、話が逸れてしまいましたね
 それで『クリスマスツリー』を使わせていただく事は・・・・?」

812百目鬼小百合『ライトパス』:2021/10/10(日) 22:13:27
>>810

「こんにちは。さっき名乗ったから、
 自己紹介は省略させてもらうよ」

理由はどうあれ、『若い』と言われる事に悪い気はしない。

(おっと、今はそんな事を考えてる場合じゃあないか)

『冬キチガイ』というのは言い得て妙だ。
もし『冬の魔物』なんていうのがいたとしたら、
相当な『危険人物』になっていただろう。
『夏キチガイ』でなくて良かったという所か。

「まぁ、確かに『時期』には早いね。それは認めるよ」

「ただ――世の中で『クリスマス』が流行ってるんなら、
 それを取り入れる事は、
 商店街の『利益』に繋がらないものかねえ」

まず切り出すとしたら、この辺りだろう。
だが、自分が見る限り、この『定食屋のジジイ』は、
『計算』よりも『感情』で動くタイプに思える。
流行に流されず、気骨がありそうな所は尊敬に値するが、
今回ばかりは厄介だ。

(しかし、なんでこう『ジジイばっかり』に縁があるのかねぇ)

813『星見町の終わらない夏』 〜ウィンターじいさん編〜:2021/10/10(日) 22:47:51
>>811-812(三刀屋&百目鬼)
「『クリスマスツリー』は管理こそワシがやっておるが、
 『商店街』のものである事には間違いない。
 ワシもそうじゃが、そこのジジイも『商店街』ではそれなりの立場におるからの。
 コイツが拒否している以上、出すのは難しいのォ」

『三刀屋』の話に『ウィンターじいさん』は残念そうにそう答える。

「『利益』―――

            『利益』ねェ。

 ………

 そうなんだよなァ、オレも『商売人』だし『商店街』の一員だ。
 まァ、儲かるってンなら、『ツリー』くらい寛大な心で
  目を瞑ってやってもいいんだが………」

『定食屋の老人』は『利益』という言葉に強く反応する。
文字通り現金な話だが、『金銭』は『感情』に大きく影響を与えるものだ。
『定食屋の老人』の『冬嫌い』は強い信念というものではなく、
単純に『ウィンターじいさん』あたりへのやっかみなのかもしれない。
だが、途中で口ごもってしまったのはどういうわけか―――

「フォッ フォッ フォッ。
 コイツ、親の代からずゥっと同じ『定食メニュー』出してるもんだから、
 『クリスマス』だとか『冬』の『メニューの発案』なんて出来ないんじゃよ。
 ただし『市販の料理本』なんかに載っているメニューなんかはイヤだと来た。
 どうせやるなら『唯一のもの』をなんて一丁前に考えておるみたいなんじゃ。

 さっきは恰好よさげなタンカを切っておったが、
 つまるところ、この『ブーム』に乗れないってのが一番の反対理由ってことじゃの」

『ウィンターじいさん』が笑いながらそう告げる。
『定食屋の老人』は舌打ちをするが、反論はしない。
おそらく説得の過程ですでにこの話は出ていたのだろう。

『冬やクリスマスのメニュー』………
別にプロのレシピじゃなくても『料理上手』の
発案したものでもいけるのかもしれないが、
『三刀屋』や『百目鬼』にその知識があるのかどうか―――

「あ、後はついでじゃ。

 『商店街』の中には他にも、どうやって『クリスマス』に便乗すればいいか悩んでいる連中がおる。
 店内で扱う商品や飾りが余っておったり、何かアイディアがあれば
 分けてもらえれば、そういった連中に貸してやったり、教えてやったりも出来るんじゃが―――」

814百目鬼小百合『ライトパス』:2021/10/10(日) 23:11:31
>>813

「ははぁ、なるほど」

(詰まる所は『先立つ物』か)

いかにも筋金入りの頑固者という風情が漂っていたが、
思っていたよりも反応があったようだ。
意地を張るだけでは世の中は渡っていけない。
『定食屋の老人』も、その辺りは理解しているという事だろう。

(何だろうねぇ。嬉しいやら悲しいやら)

説得に骨を折る必要がないのは良かった。
だが、目の前の現実と向き合う老人の姿には、
何処となく物悲しさを覚えた。
もっとも、現実と向き合わなければならないのは、
こちらとしても同じ事だ。

「つまりは、『そこでしか味わえない冬らしい料理』を、
 どうにか捻り出せばいいって訳だ」

「参考までに聞きたいんだけど、
 アンタの『定食屋』は何ていう名前なんだい?」

『定食屋の老人』に尋ねながら、三刀屋に視線を向ける。

「『飾り』に関しては、学生達が色々やってるようだから、
 その辺りからでも調達できないかねえ」

815三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2021/10/11(月) 00:00:41
>>813-814

「なるほどねぇ・・・・」

店を営む者にとっては切実な願いだ
それだけにブームに乗れる者と乗れない者、商店街の中で格差が生まれてしまう

(商店街の分断はちょっと嫌な感じだからねぇ・・・・)

「うーん・・・・僕は自炊なんてほとんど出来ないし、料理については門外漢ですけど
『うなぎ』・・・・・なんてものはどうでしょうか?」

「『うなぎ』はこの町の名物ですし、
 定食屋を営んでいる方には釈迦に説法かとも思いますが、
 うなぎは夏の食べ物・・・・だと皆には思われていますが、実際の旬は『初冬』・・・・冬の食べ物です」

「その辺を町の人達にアピールすれば、『冬』らしい感じになりませんかねぇ?
『クリスマス』とはちょっと違いますけど、それも商店街の人情ある愛嬌って事で」

「他の方々に対しては・・・・どうしましょうか?」

816『星見町の終わらない夏』 〜ウィンターじいさん編〜:2021/10/11(月) 00:10:48
>>814(百目鬼)
「『さま食堂』ってンだよ。サマーってのが夏だろ?
 だからオレは『夏好き』で、この『冬キチ』と
 相性が悪いじゃあないかと思ってンだがね」

『定食屋の老人』がシシシと笑う。

「繁盛しそうな『献立』を考えてくれりゃあ、オレは文句ねェよ。
 『献立』つってもこう見えて『50年』ずっとメシ作ってきたんだ。
 そんなに細かくなくても『こういう感じのモン』って、
 アイディア言ってくれりゃあ後はサッと作ってやらあ」

『頭がコッチコチじゃから流行りそうなメニューなんて考えられんのじゃよ』
などと『ウィンターじいさん』が混ぜっ返す。

>>815(三刀屋)
そんな中、『三刀屋』が『うなぎ』を提案するが………

「フォッフォッフォ。うなぎは旬はともかく、
 やはり『夏』のイメージが強すぎないかの?
『クリスマス』ぽくないし………『冬』をアピールしてる間に
 『ブーム』が終わってしまいそうじゃ」

なぜか『ウィンターじいさん』の方から駄目だしを食らってしまった。

とりあえず『クリスマスツリー』のために「『冬のメニュー』が必須。
その他の物品などは、あれば結果的に『商店街』の
クリスマス化が強まる形となるというところか。

今すぐ解決できるのならそれでもいいが、
一度持ち帰って『知り合いたち』と相談してもいいのかもしれない。

817三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2021/10/11(月) 00:32:55
>>816

「うーん・・・・イメージが重要なら『ラッコ』をモチーフに使ってみるのはどうでしょう?
 ご存じでしょうか?今起きている『クリスマスブーム』
 その大本の一つはSNSでバズったこの画像にあるという事を」

三人に『Electric Canary Garden』公式アカウントの『ラッコ画像』を見せる

「『ラッコ』をイメージした見た目の料理を作ればSNS映えも狙えますし、
 折角のこの機会に乗らない手はないですよ」

「例えば、普通のハンバーグ定食の上に飾りの貝・・・この辺だと『あさり』が名物でしたよね
 それを乗せて、ニンジンとブロッコリー、それにポテトサラダを使って赤緑白でクリスマスカラーを作ってみるとか」

「メインはハンバーグ定食なのでさま食堂さんにとってもそれ程手間にはならないでしょうし
 ハッピーセットみたいに袋詰めしたおもちゃを配ったりすると
 お子様にも、子供にニンジンを食べさせたいお母さまにも喜ばれるんじゃあないでしょうか?」

「あるいは、おもちゃを配るというのは商店街の皆さんが公平にやれるキャンペーンかもしれませんねぇ
 『ウィンター』さんの店ならそういうアイテムがたくさんあるんじゃないですか?
 それを提携店に融通して配ってもらうとか・・・・」

818『星見町の終わらない夏』 〜ウィンターじいさん編〜:2021/10/11(月) 00:57:22
>>817(三刀屋)
「フォッフォッフォ、孫から聞いたのォ。
 『ラジオ』とか『いんたーねっと』で流行っているとか」

『クリスマスラッコブーム』について『ウィンターじいさん』は知っているようだ。

「『オモチャを配る』、なるほどのォ。
 ただ、どうせ配るんなら『サンタ』が配った方がよさそうじゃな。
 ワシが『サンタ』になって配ってもいいんじゃが………ウチの孫にバレちゃうからのォ。
 『サンタ』信じとるからの、ウチの孫」

『サンタ』を信じる頃合いの純真な孫が居るのだろう。
まあ、この祖父がいれば信じているのはむしろ当然か―――

 ………

「なるほどォ、『ハンバーグ』で『ラッコ』、ソイツが砕く『貝』を乗せるって寸法か。
 さすが若ェヤツのアイデアは一味ちがうね」

『さま食堂の老人』は早速、『三刀屋』のアイディアをメモし始める。
とりあえず一案………『老人』はもう少しアイディアが欲しそうな顔をしている。
確かにタマは多い方がいいか―――

819百目鬼小百合『ライトパス』:2021/10/11(月) 00:58:43
>>816-817

三刀屋のスマホを見て、『ラッコの画像』を確認する。
その存在は、どこだかで聞いた覚えがあった。
典型的な『便乗商法』ではあるものの、
だからこそ売れるかもしれない。

「『さま食堂』――――『名は体を表す』とは良く言ったもんだよ」

「『夏』と『冬』じゃあ、確かに『水』と『油』だね」

そうは言うが、ここまでのやり取りを見ている限り、
そこまで険悪という訳でもなさそうだ。
良きライバルといった所だろうか。
張り合いのある相手がいるのはいい事だ。

「『冬らしい献立』だと、ちょっと範囲が広すぎて難しいねぇ」

「『クリスマス』に絞ると……見た目だけでもいいなら、
 『クリスマスツリー』の形に盛り付けるとかさ」

真っ当な『冬らしさ』を出すには邪道な気もするが、
三刀屋の言うように、そういうのも一つの手段だろう。

「それを『冬らしい食材』でやれば、
 説得力が増すかもしれないよ」

820『星見町の終わらない夏』 〜ウィンターじいさん編〜:2021/10/11(月) 01:10:00
>>819(百目鬼)

「フォッフォッフォ。今来てるのは『クリスマスブーム』らしいから
 確かに、『クリスマス中心』のメニューがいいのかものう」

『ウィンターじいさん』が『百目鬼』に賛同する。

「形くらいは盛り付けられるが、『冬らしい食材』ねェ。
 ウチのメニューは年中一緒だからなァ」

料理人ならばその食材くらい自分でアイディアを出してほしいものだが、
『さま食堂の老人』は全てこちらにお任せにするつもりらしい。
二人で話し合って煮詰めてもいいし、
誰か、『料理が得意そうな』知り合いがいればそこに聞くのもいいか―――

821百目鬼小百合『ライトパス』:2021/10/11(月) 01:13:34
>>819

「いや……今『ブロッコリー』って言ったね」

「ブロッコリーを『クリスマスツリー』に見立てるってのはどうだい?
 多分、見た目のクリスマスらしさはあるんじゃないかねぇ」

「ブロッコリーを積み上げてツリーらしい形にしてさ。
 そこに飾り付けをする。
 要するにサラダの一種だよ」

「星型に切った野菜だとかチーズだとかベーコンだとか何でもいい。
 色んな色を取り入れて、出来るだけ派手にするんだ」

「ま――これだと『単品メニュー』になっちまうか」

822百目鬼小百合『ライトパス』:2021/10/11(月) 08:41:26
>>821

「あとは、適当なドレッシングを細く引いて、
 電飾の代わりにしてもいいね。
 マヨネーズでもケチャップでも、
 見栄えが良ければどんなものだっていいんだ。
 細かい部分は作る側に任せるよ」

823三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2021/10/11(月) 08:56:10
>>818-822

「おじいさん、おじいさん、お孫さんの事ならきっと大丈夫ですよ
 最近の子供は賢いですからねぇ、『サンタ』の事を信じていても、
 そうじゃない『商業用サンタ』がいるって事も受け入れてますよ」

クリスマスシーズンになれば街中にサンタ衣装の客引きが多く出回る
サンタを信じている子供達も、それら全てが本物だと信じているわけではないだろう

「なるほど、『クリスマスツリー』をイメージしたサラダ盛りですねぇ
 山盛りにしたサラダを皆でシェア出来る形式にしたら
 見た目が派手で映えそうですし、皆で盛り上がりますねぇ」

「ちょっとした一工夫で出来るものとしては『七面鳥』を意識してみるのはどうでしょう?
 普通の鳥の照り焼きやチキンステーキでも、添え物のポテトサラダを二段に積み重ねて雪だるまみたいにしたり、
 あとはクリスマスカラーのリボンやヒイラギの小枝を飾り物に使えば、
 意外とクリスマスっぽい感じになりますしねぇ」

824『星見町の終わらない夏』 〜ウィンターじいさん編〜:2021/10/11(月) 20:32:10
>>821-822(百目鬼&三刀屋)

「『ブロッコリー』を『クリスマスツリー』、
 ドレッシングが『電飾』―――
 なるほどねェ……ヤングな発想だな! それはよォ。

 あとは『七面鳥』ってのもシャレてるねェ―――
  色んな食材で『クリスマス』を再現してくってわけか。

   おお、段々、上手くいきそうな気がしてきたぞッ!」

『さま食堂の老人』の目が輝いてきた。
二人のアイディアはなかなか好評なようで、
この分だと意外とスムーズに『許可』が得られそうだ。

「まァ、『ニセモノのサンタ』………
 君がいう『商業用サンタ』が居るというのは
 さすがの孫も理解しているようじゃがの。
 それはそれとして『ホンモノのサンタ』がいると信じているようじゃ。
 まァ、ワシの孫じゃし、血筋と環境のタマモノかの」

 『ウィンターじいさん』はそういうとフォッフォッフォと笑う。

「そういえば、『クリスマスツリー』を飾るとして、いつがいいとかあるのかの?
 ワシはずっと出しておいてもいいんじゃが、
 メンテナンスもあるし、一番、効果的な時に出したいって意見も多いんじゃよ」

825三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2021/10/11(月) 20:43:38
>>824

「いいですねぇ!その調子ですよ!」

『さま食堂』の主人の語気をみる限り、どうやらなかなかに『その気』になってきているようだ
ご老人とはいえとても頭の柔らかい方で良かった、と三刀屋は思う

「ハハハ、『ホンモノのサンタ』ですか
 いや〜、僕も会えるものなら会ってみたいですねぇ・・・・でも」

ふと『ラジオ局の怪電波』を思い出す
ラジオ番組をジャックした『彼』なら・・・・あるいは・・・・・

「案外、会えるかもしれませんよ?本物に」

「・・・・っと、そうそう、『クリスマスツリー』を飾る日程ですね
 そうですね・・・・どうも『〇〇日(Xデーの日)』にイベント事が集中しているみたいですからねぇ
 その日の1週間前から当日にかけて飾るというのはいかがでしょうか?」

826『星見町の終わらない夏』 〜ウィンターじいさん編〜:2021/10/11(月) 23:48:42
>>825(三刀屋)
「『ホンモノ』に会えたらワシも嬉しいのォ〜〜〜。
 この恰好を見ればわかるとおり、『ファン』じゃからのォ〜〜」

『ウィンターじいさん』がまたもや笑う。
『さま食堂の老人』も熱心にメモをしている。

「〇〇日といえばもうすぐじゃのッ。コイツも納得してくれたようじゃし、
 じゃあ早速、『商店街』の他のヤツらにも掛け合ってこようかのッ!」

どうやら『巨大クリスマスツリーの設置』は上手くいくようだ。
『さま食堂』の新たなメニューや『商店街』の他の面子への融通などは、
後でこの『ウィンターじいさん』に伝えてもいいだろう―――

827三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2021/10/12(火) 00:13:24
>>826

「ハハハ、『ウィンター』さんも是非この日は外を出歩いてみてください
 もしかしたら・・・・何かが起こるかもしれませんよ」

スタンド使いがこれだけの人数動いているのだ
『サンタ』に限らず、何か面白い事が起きる可能性は高いだろう

「では、『ウィンター』さん、『さま食堂』さん
 真夏のクリスマスフェアを皆で盛り上げていきましょう」

『巨大クリスマスツリー』に関してはこれでなんとかなりそうだ
後の事は若い子達に任せて、見物に回るのも悪くはないだろう
そう思いながら、三刀屋はこの場を収めて帰路につこうとする

828『星見町の終わらない夏』 〜ウィンターじいさん編〜:2021/10/12(火) 00:43:54
>>827(三刀屋)
「フォッフォッフォ。何やら楽しみじゃのォ〜〜〜。
………ところで、さすがに『あだ名』ばかりで、
     名をなのらないのも失礼じゃな」

『ウィンターじいさん』はそう言うと、

「ワシの名は、『かつま たじみ』。
 漢字はホレ、そこに書いてあるじゃろ」

手近にあった帳簿のようなものを見せて、名乗って来る。
漢字で書けば、『勝間 多治三』という名のようだ。

 ………

つまりは『勝』が英語で『ウィン』、『たじみ』の『た』と合わせて『ウィンター』、
そしてうしろの『治三』で、『じいさん』という事か?
『ウィンターじいさん』―――思った以上に下らない『あだ名』だったようだ。

しかし、こんな名前を持っていれば『冬を愛してしまうのは必然』かもしれない。
『冬を愛するもの』と腹を割って話をし、その協力が得られれば『夏の魔物』を倒す一助になる。
………本人にその自覚はないのかもしれないが。

『百目鬼』の準備が整えば、『三刀屋』はここから出ていくだろう。

829百目鬼小百合『ライトパス』:2021/10/12(火) 23:51:20
>>823-828

「これにて一件落着。話が早くて助かったよ。
 商店街の利益が上がれば、地域の活性化にも繋がる。
 願わくば、町全体の景気が良くなる事を期待したい所だねぇ」

「準備の邪魔しちゃ悪いし、アタシらは引き上げるとするか。
 『クリスマスツリー』を出してくれる事に感謝するよ」

ここでするべき事は終わった。
二人の老人に礼を言って、踵を返す。
帰る途中、おもちゃ屋から十分に遠ざかったタイミングで、
三刀屋の肩を軽く叩く。

「アンタに言ってなかったね。実は――――」

自分は直接参加していないが、
知人の『小石川』が行おうとしている行動を伝えておく。
既に全容は決定しているらしいので、
三刀屋に協力を求める訳ではない。
だが、知らないよりは知っていた方がいいだろう。

830三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2021/10/13(水) 00:23:13
>>828

「え? 『WIN』と『た』だから『ウィンター』・・・・・?
 っぷ! ははははははは! お爺さんそれ凄く受けますねぇ!
 鉄板ネタで使えますよ! それ!」

思いの外大爆笑する三刀屋
そう・・・・彼もまた『昭和』の生まれであり・・・・『ウィンターじいさん』に近いセンスなのだ

>>829

「へぇ・・・『小石川さん』という方が動いているのですね
 流石に・・・今から参加するには遅すぎますけど・・・・成功を祈っていますよ」

言外に『自分は参加しない』というニュアンスを滲ませる
緊急事態とはいえ、『アロマ』を無許可でばら撒く作戦は法的にちょっと・・・な部分もある
それなりに社会的地位もある大人としては、そこまでのリスクを取るわけにはいかない、という打算もある

831『星見町の終わらない夏』 〜ウィンターじいさん編〜:2021/10/13(水) 02:16:31
>>829-830(百目鬼&三刀屋)

『百目鬼』と『三刀屋』は、自分たちの目標が
存外早く達成された事に安堵しながら『おもちゃ屋』を後にする。
それぞれの立場からそれぞれやれる事をやる。
その集合体がきっと、『クリスマス』を呼び寄せ、『夏の魔物』を倒すのだ―――


 ……… ……… ………


「………そういや、ウチの孫、まだ、『多三子ちゃん』とつきあっているのか?」

 二人が帰った後、『さま食堂の老人』、『佐間』が、
 『ウィンターじいさん』こと『勝間』に問いかける。

「………うんにゃ、孫がつきあうのは毎年『クリスマス』の時だけじゃからの………。
 『クリスマスの時に恋人がいるのって、いかにもクリスマスっぽいでしょ!』という理屈らしい。
 『クリスマス』の時だけ、付き合って別れて、をここ数年ずっと繰り返しているようじゃ。
 それに振り回される『応太くん』も可哀相じゃのォ〜〜〜」

「へえェェえ……… ろくでもねえ冬の『織姫と彦星』って感じだなァ。
 そんなのにつきあう『応太』も人がいいっていうか、情けねェっていうか」

「うちの孫はワシが名付け、ワシが育てた『冬のサラブレット』じゃからの。
 本当はサンタにちなんで『三多子』にしようと思ったんじゃが、さすがに、嫁に叱られての。
 逆さにして『多三子』という事でなんとか納得してもらったのじゃ。」

「別に『三番目の子』でもなんでもない一人っ子だってのに、それじゃあ歪むわなァ」

「近頃は『冬の女王』なんて名乗って、関わっている『文化祭』に
 密かに『冬』を忍ばせているとかなんとか。
 ワシはとんでもない『クリスマスモンスター』を生んでしまったのかもしれん。
 よくよく考えると、これは恐ろしい事じゃあ………」

「………まァ、今の『クリスマスムード』にはあってんじゃねえのかい?」

                                  ………

    ―――そんな二人の会話はしばらく続いた―――

832『臨時商用特殊車輌運用会議』:2021/11/06(土) 23:16:53
自分の命に付いた値段を考えない日はなかった。

それは仕事で、仕事だから、いつまでも頑張れて、
どこまでも我慢できるはずだと、そう信じていた。

そうして行くところまで行ってしまった自分のことを、
決して後悔してはいない。今を以ってなお、そう言い切れる。
 
ただ、それでも。

行き着いた先で、辿り着いた先で、ふと振り返ってしまった時の事を思い出すと、
腹の底になにか昏い気持ちが淀むのも確かだった。

あの夜の、まるで冴えない暗く青い月のような。
差し掛かった十字路で投げ掛けられた、群青色の声のような。

今でも思い出せる。
あの時の自分は、それがどんなに不吉な誘いだったのか気付けなかったけれど。
だからこそ、救いの言葉に似たそれを、信じてしまったのだと思う。
 
 
奴は短く挨拶を済ませて、慇懃に腰を折りやがった。
 
たっぷりと抑揚をつけて、淀みなく台詞を読み上げやがった。
 
互いの損得を、嘘偽りなく数字を交えて唱えやがった。
 
薄く笑って、その言葉を口にしやがった。
 
 
「おいで。助けてあげよう」
 
 
そう言って背後に佇む『それ』に、目を合わせやがった。

833『臨時商用特殊車輌運用会議』:2021/11/06(土) 23:17:55
 
【『平石基』】

【君に】

【頼みがある。時間がない】
 

土曜日の日中、『平石』の持つスマートフォンへ一通の『ショートメール』が入る。
発信元の電話番号は通知されているが差出人に心当たりはなく、
悪戯と切って捨ててもおかしくない文面だった。
 
  
【『スタンド使い』と見込んで、頼みがある】
 
【『10万円』】

【俺に出せる精一杯だ。使える『リソース』に限りがある】

【やる気が無いなら、それでいい。返信だけでも寄越してくれ。
 すぐにでも、他を当たらないとならない】

【倒してほしい奴がいる。取り戻してほしい物がある】
 
 
矢継ぎ早に送られる一方的なメッセージは、勿論信頼に足るものではない。
それでも、着信は続く。
 
 
【君のことを知るのに、良くない手段にも頼った】

【それが気になるなら、俺を殴りに来るだけでもいい】
 

『平石』の名と、その身に宿す『能力』について、知る者がどれだけいるだろう。
無下にすることでなんらかの『不利益』を蒙るかも知れない、と予感させるには十分な物言いだ。
 

【戦える『スタンド使い』を探してる】
 
 
細切れのメッセージから差出人の心情まで汲み取ることは難しい。
『平石』の性格と、スケジュールと、気の向きと……様々な要因で、どんな対応もあり得るだろう。
 
 
【俺は『更山 好晴』】
 
【弟の仇を、討てる『スタンド使い』を探してる】
 
 
(※『平石』はスタンド能力、容姿、所持品、現在地の開示をお願いします。)

834平石基『キック・イン・ザ・ドア』:2021/11/07(日) 20:58:40
>>833
見知らぬ相手、意味不明なメッセージ、無視するべきか…

>【戦える『スタンド使い』を探してる】
 
>【俺は『更山 好晴』】
 
>【弟の仇を、討てる『スタンド使い』を探してる】

フリック入力。

【やってみよう】
【どこに行けばいい?】




体の所々が歯車で構成される人型のヴィジョン。
手から『歯車』を生み出す。
『歯車』を機械に差し込むと、機械は『歯車』という異物に反応する。

『キック・イン・ザ・ドア』
破壊力:B スピード:B  射程距離:E
持続力:C 精密動作性:C 成長性:D

能力詳細
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1453050315/90


平石基:
身長189cm。スーツに革のトレンチコート着用。履物は同じく革製の登山ブーツ。
所持品は『スマートフォン』『財布(免許証と保険証とポイントカードが2枚と、1542円)』『煙草とライター』。
現在地は自宅(住宅地の隅っこにある安アパート)。

835『臨時商用特殊車輌運用会議』:2021/11/09(火) 23:29:24
>>834
 
【話が早くて助かる】
 
続く着信。
間隔は短く、確認したそばから次のメッセージが表示される。

【地図情報を送るから、それを頼りに来てくれりゃいい】
 
併せて送られるURLの先を見れば、そこには町内のとある建物が示されていた。

『城址学区』の北部に位置するその建物に、平石は心当たりがあるだろうか。
特徴的なクリーム色の外壁をした、八階建のその建物に。
 
【『受付』で、『更山』の名前を出して貰えばすぐだ】
 
『アポロン・クリニックセンター』。
町内屈指の総合病院で、メッセージの主が待っている。

836平石基『キック・イン・ザ・ドア』:2021/11/09(火) 23:43:40
>>835
地図を確認してから、フリック入力。

【総合病院。わかった】
【読みかたはサラヤマさんでいいか。間違ってたら悪い】

アポロン・クリニックセンター。世話になったことはない。
以前ケガをしたときは、近所の適当な…ナントカ医院で湿布をもらっただけだ。
ほかで医療機関に用があるというのも、せいぜい歯医者くらい。

「……まあ」

仕事が続いていれば『健康診断』くらい行く機会はあったかもしれない。
今までなかったことを考えても仕方がないし、『治療』とは真逆の目的のためなら、猶更だ。

「行くか。おっと」

その前に、と買い物袋の中身を冷蔵庫に放り込み、コートを脱ぐ間もなくドアを開けて、出かけるとしよう。
行先はもちろん、『アポロン・クリニックセンター』。

(移動手段は『原付』としたいがよろしいでしょうか?)

837『臨時商用特殊車輌運用会議』:2021/11/10(水) 00:17:28
>>836

>【読みかたはサラヤマさんでいいか。間違ってたら悪い】

【ああ、そう。『サラヤマ』だ】
 
【自分の名前って、相手も読めるモンだと思っちまうから、参るよな】
 
【面会が20時まで……いや、土曜は18時までだったか。
 それまでには、頼むぜ】
 
現在時刻は13時を少し回ったところで、
どんなに寄り道をしたところで面会時間には十分間に合うだろう。
 
心当たりのない病院だったところで既に地図は手中にあり、
ましてや地域でもそれなりに存在感のある『総合病院』だ。
近くまで行けば『案内板』の類いも出ている。
 
『原付』での移動であればそれほどの時間をかけることもなく、指定の場所へ着くはずだ。

道中で特別の用事がなければ、程なくして『アポロン・クリニックセンター』へと到着することになる。

838平石基『キック・イン・ザ・ドア』:2021/11/10(水) 00:37:16
>>837
「…」

ビィー(走行音

「……」

   カッチ カッチ  ブルルン(ウィンカー、一速のまま右折

「………」

 キ    カチャ(停車。

キーを抜き、周りと地図とを確認。天をあおぐ。

「……来た事あるな」

『ナントカ医院』じゃなかった。あれっ……? 「こんなデカい病院だったっけ」

ついでに頭の検査もしてもらったほうがいいのか、一瞬本気で考えた。
すぐに切り替えて、用事を済ませよう、と思った。
『受付』に出向き、『更山』の名前。これは覚えている。当然だ。

――とにかく、『受付』。

「すみません」「平石と申しますが」
「えー、『更山』さん…先生?…、『更山』という方にお会いしたいのですが…」

若干、ぎこちない感じになっている。

839『臨時商用特殊車輌運用会議』:2021/11/10(水) 01:03:51
>>838
 
慣れた調子で原付を駆り、トラブルなく目的地へと到着する『平石』。
オートバイ用の駐車場へ原付を停めると、見覚えのある『正面玄関』をくぐり『受付』へと向かう。
 

>「すみません」「平石と申しますが」
>「えー、『更山』さん…先生?…、『更山』という方にお会いしたいのですが…」
 
ぎこちないながらも端的に要件を伝える平石に対し、 
 

「『更山』……?」
 
 「あっ……ああ!」
 

受付の若い女性スタッフはやや怪訝そうな表情を見せつつ、
次の瞬間には合点が行ったように声を上げる。
 
「『平石様』ですね。うかがっております。
 右手奥のエレベータから『4階』まで──」
 
受付の女性が左手の指を揃えて指し示す先に、『エレベーターホール』があり、
大きく各階の案内図が掲示されている。
 
それに拠れば、『4階』に位置するのは『整形外科』。
 

「『403号室』の『病室』で、『更山様』がお待ちです」

840平石基『キック・イン・ザ・ドア』:2021/11/10(水) 01:17:03
>>839
「4階、『403号室』ですね。わかりました。ありがとう」

復唱・確認。
了承と、お礼はスムーズに言えただろう。
まだまだ『社会復帰』は余裕というわけだ…

「(病院。陰気なイメージがあるが、あれは昔の映画とかの印象が強いのかな)」
「(全然明るいっていうか。映画より記憶かな。小さい頃は、薄暗ーくてイヤな場所だった)」

今時の小さな子供は、少なくとも薄暗いというマイナスイメージからは解放されているのかもしれない。
そういうのはうらやましい気がする。時代の進歩というやつだ。
そういえば最近は、歯医者に行っても大して痛いわけじゃないしな。科学の勝利だ。

「(おっと…独り言になってないよな。何か程よく静かだからか、色々思いつくな)」

エレベーターを待って、乗って、4階のボタンを押そう。
もちろん自分以外の人、とくに患者や医療関係者を最優先だ。
まあ、待ち人はいるが、ここは病院。健康な自分は一番あとだ。

841『臨時商用特殊車輌運用会議』:2021/11/10(水) 01:51:39
>>840
 
平石の言葉に、受付スタッフは小さくお辞儀で返す。
淀みのないお礼、違和感のないやり取りであったと、平石は確信する。
 
大規模な増築工事を経て建設された『新病棟』は、
平石の印象通りに明るく、清潔で、怪我や病を連想させることのない内装仕上げであった。
 
大規模な総合病院という性質上、
病室のドアを一枚隔てた先にはどれだけの重症患者がいるとも知れない建物ではあるのだが。
 
あるいはそれを、時代の進歩と呼ぶのかも知れない。
誰が傷付き病んでいるか知るとも知れない、そんな時代かも知れない。
 
 
平石が思いを巡らせる内にエレベーターは『4階』へと到着する。
エレベーターから出れば、向かって左が『401号室』。正面に『402号室』。

すぐ右手に、『403号室』の扉が見える。
 
幸いというのか、エレベーターホールから特に近いその病室に向かうのに、
他の患者や見舞客、病院スタッフとの接触はなさそうだ。
周囲へ気を遣いつつも、数歩で『403号室』の扉の前へたどり着ける。
 
 
と、『平石』がエレベーターを降りたそのタイミングで。
  
 
「やあ──はじめまして」
 
 
『403号室』の扉の、その内側から、声が響いた。

ハイトーンな、ともすれば女性のそれとも聴こえかねない調子だが、
一方で無理矢理に裏声を作っているかのような硬質な声音。
 
 
「『平石サン』──だろ」

842平石基『キック・イン・ザ・ドア』:2021/11/10(水) 02:08:15
>>841
「…――はじめまして。ああ、『平石基(ヒライシ ハジメ)』だ」

正直なところ、面食らった。わかるものだろうか。
顔も見ず、どころか、病室にいて、エレベーターから出てくるのが誰なのかを――

一歩ずつ、部屋に近づこう。

「あなたは『更山』さん、で間違いないかな。だったら部屋を間違えずに済んだってことだ」
「いや、誰かが『同性』の他人を呼んだのを、自分のことと勘違いして返事をしていたら恥ずかしいなと思ってね」

部屋の扉の前に立つ最後の一歩。
別に止められる理由は無いだろうが、一応。

「入ってもいいか?」

承諾は得ようと思った。OKなら、扉を開けて入室しよう。

843『臨時商用特殊車輌運用会議』:2021/11/10(水) 02:22:43
>>842

「ん?ああ……」
 
「あれで『ハジメ』と読むんだな。
 いや、俺も漢字が苦手ってコトは無いと思うんだが、人名となるとどうもね」
 
平石の言葉に対し、扉の向こうからはピントのズレた答えが返ってくる。
心中の驚きはもっともだ。
扉越しに相手を認識できるというのは、明らかに常識では有り得ない。
 
「ただ、そう──俺が『更山』で間違いないよ。
 恥をかくのは俺だけでいいんだ。君は何も間違っていない」
 

>「入ってもいいか?」


「どうぞ。
 それに、ようこそ、だ」

844『臨時商用特殊車輌運用会議』:2021/11/10(水) 02:36:49
>>842
 
平石が扉を開けたそこは、4人の入院患者を収容できる病室だった。
部屋の四隅にそれぞれ簡素なベッドと、仕切りとなるカーテンが配置されている。
 
しかしその4つのベッドに患者の姿は見当たらず、病室の中央には、
 
 
「こんにちは」
 
 
スチール製の椅子を、背もたれを入り口側に向けるように置き、
 
 
「改めて、俺が、『更山』だ」
 
 
椅子に腰掛け、その背もたれに体重を預けるように前傾になり、
 
 
「こんな……自分で言うのもおかしいが、『こんな誘い』に応じてくれて、
 君には本当に感謝してるんだ」
 
だらりと下げた両腕の先に『スマートフォン』を一台ずつ握り、
  
 
「『事情』があって、ここから一歩だって動くことのできないこの俺の代わりに」
  
 
室内にも関わらず、薄いオレンジ色のサングラスで顔を隠し、
 
 

「俺の『弟』の仇を討ってくれるんじゃないかっていう君に」
 
 
 
病室にも関わらず、『入院着』ではなく緩く胸元の開いた臙脂色のシャツに身を包んだ、
 
 
「俺は本当に、感謝しているんだ」
 
 
一人の、白い肌をした男が待ち構えていた。

845平石基『キック・イン・ザ・ドア』:2021/11/10(水) 21:16:58
>>844
「こんにちは」

病室の真ん中。そこに座る男の風体。
最初は謎のメールの送り主で、ここの医療関係者かと思って、病室にいるなら患者のほうかと思い直したところなのに。
見て頭に浮かぶのは、結局、初めのイメージとあてはまる単語だ。

「ああ、こちらこそ、興味深いメールをありがとう。思った通り」
「怪しげなやつだな、『更山』さん」

できるだけ冗談めかして本心から声をかけながら、一歩入室。
扉は――閉めるべきだろうか。まあ、閉めるべきだ。
それに今、こちらから言うべきことはもう言った。
『用事があるのは彼の方だ』。

「(オレは『好奇心』で、やってみようと思いついただけだからな)」

服装や姿かたちではない、『動けない事情』と、『弟の仇討ち』。
『スタンド使い』が絡んでいるのは承知しているから、
『彼が何か話したり、促したりしないかぎり』、こちらからこれ以上話したり、動いたりすることもない。
立ったまま、一服しながら窓の外に目線を向けるように、そんなふうに『更山』を眺めていよう。

846『臨時商用特殊車輌運用会議』:2021/11/12(金) 20:59:30
>>845
 
>「こんにちは」
 
>「ああ、こちらこそ、興味深いメールをありがとう。思った通り」
>「怪しげなやつだな、『更山』さん」
 

「そう言ってもらえて、嬉しいぜ」

挨拶と、軽口に載せた本音を口にしながら『403号室』へ入り込む『平石』。
後ろ手に扉を閉めるその様子を、目の前の男はその言葉通り一歩たりとも動くことなく、
ただ見ていた。
 
「『怪しい』と──『興味を持って』もらわないとならなかったンだ。
 だってそうだろ?本来『10万』ぽっちで頼めるようなことじゃあない」
 
目の前の男は脱力したように椅子にもたれながら、口元に笑みを浮かべつつそう語る。
 
「『家族』の『カタキウチ』をお願いする金額じゃあ、ないもんな」
 
ヒヒヒ、と小さく上げるその声には僅かに自嘲の色が混じっているが、
それに平石が気付くかは当人次第と言ったところだろう。
  
 
「まあ、話は実際単純なンだ。
 ああ、立ち話もナンだし、その辺のベッドにでも腰掛けてくれよ。
 どうせ誰も使っちゃいないンだ」」
 
顔は平石の方へ向けたままその両手の指だけが忙しなく動き、
両手にそれぞれ握られた『スマートフォン』のディスプレイを撫でている。
 
「それでさ。ある『スタンド使い』をとっちめて、
 『弟』の『遺体』を──もう『遺骨』かな──を、取り返してきてくれよ」
 
「居場所も、どんなヤツかも分かってる。
 俺だって、できる限りのバックアップはする」
 
「君が『戦える』『スタンド使い』だって言うンなら、
 そう難しいコトじゃあないハズなンだ」 
  
恐らくはこれが『本題』で『核心』なのだろう。
それでも男はこれまでとまるで変わらぬ調子で、煙を吐き出すようにそう言ってみせた。 
 
「頼まれちゃ、くれないモンかね」

847平石基『キック・イン・ザ・ドア』:2021/11/12(金) 23:56:12
>>846
一通り、『更山』の言葉を聞き終える。
煙草を取り出そうとして、やめた。病院の、しかも病室だからだ。喫煙室で吸うべきだ。
少なくともここじゃない。

「意外なことを言うんだな、更山さん」

だから深く息を吸って、それから長く息を吐いて、それから、
できるだけ落ち着いて、そう見えるように、何でもないことのように、思ったことを言う。

「頼まれるつもりでここにきた。オレはあなたに『面接』されるつもりだった。
 『弟さんのかたき討ち』なんて大事なことを頼むのに、オレが相応しいのかどうか、ってことをだ。
 まあ、だから、立ったままでいいよ。立つのは慣れてるし、何より好きだからね」

彼が動かない(動けない?)なら、ベッドに座ると、真正面で向かい合ってお話ができない。
それは大事なことだ、と平石基は考える。

「確かに、相手の居場所が分かっているのはたいへん結構なことだ、と思う。そのうえで、『難しいことじゃない』かどうか、だ。
 それはあなたが判断するべきことだと思うから、言っておく」

   ズ

『キック・イン・ザ・ドア』を、傍らに。はた目に見ても屈強な、『歯車』の意匠の人型スタンドだ。
できるだけカッコつけたしぐさにならないよう(平石なりに)気をつけて、その掌を示し、500円玉大の『歯車』を一枚、発現してみせる。

「名は『キック・イン・ザ・ドア』。『歯車を差し込んだ機械を、停止させる能力』だ」
「予め知ってくれていたら、余計なことだったかな。でも直接見てもらうのも大事だと思って。『面接』気分だから」

戦闘経験だとか、何人殺しただとか、そんなことも言うべきだろうか。あるいはすでに知っているだろうか。
いや、「(まあ、別に関係ないといえば無いよな。カーチェイスだのゾンビだの、あってもなくても、出来るやつは出来るから)」考えなくてもいい…。
金の話は実際興味もないし、突っ込んで話すことも無い。十万円。大きいが、貯金はまだあるわけだし。

「あなたの眼鏡にかなうなら、ぜひやらせてもらいたい、と思っている」

848『臨時商用特殊車輌運用会議』:2022/05/23(月) 22:00:59
>>847
 
>「意外なことを言うんだな、更山さん」

その言葉を聞いて、初めて『更山』は明確に動揺を示す。
勿論サングラスに覆われてその表情こそ隠されてはいるが、
それでも醸し出す雰囲気が大きく揺らいだことを、平石は感じ取れるだろう。

「意外、なのは俺の方だぜ、『平石サン』」

その言葉に嘘はないのだろう。『意外』というフレーズに相応しい狼狽具合だ。

「俺には支払える報酬が、『リソース』が……『10万円』ぽっちしかない。
 その上使える『時間』も『伝手』も殆どない。
 いいか?俺はそもそも、『選り好み』できるような『立場』じゃあない」

いっそ開き直ったように立て続けに言葉を吐き出す『更山』。
その台詞からは既に動揺は感じられず、代わりに僅かな自嘲の響きがあった。
 
「だから『ダメモト』って奴のつもりだったんだ。
 端金で俺の『お願い事』を聞いてくれる相手が、
 『スタンド使い』で──『戦えるスタンド使い』、で」

言いながら、その輪郭に重なるように姿を見せる『力のビジョン』。
全身が酷くひび割れた、恐らくは『飛行機』の意匠をイメージしたであろう人型の『像』。

「そんな君が『家族のかたき討ち』を『大事なこと』だと言ってくれたのが、すごく意外だ。
 俺は癇癪を起こして八つ当たりをしようとしているっていうのに、それを、そんな風に」

発現された『更山』の『スタンド』は、『更山』自身の顔面に手を伸ばし、
震える指でその両目を覆う『サングラス』を摘み上げる。

「そんな風に、言ってくれたことがとても嬉しい。
 君を見るのに眼鏡はナシだ。是非ともこちらから、よろしくお願いしたい」

レンズ越しでないそのグリーンの瞳を『平石』へ向け、どこか泣き出しそうな声でそう告げた。
同時に右手に持つ『スマートフォン』を僅かに持ち上げ、『平石』へと向ける。

「俺の『イルーシヴ・エデン』は動けない。
 もし本当に頼まれてくれるなら、この『スマートフォン』を受け取っちゃあ、くれないモンかね」
 
機械越しの握手が、恐らくこの場で契約の意味を持つのであろう。
そういう意思の宿った、言葉であった。

849平石基『キック・イン・ザ・ドア』:2022/05/23(月) 22:15:17
>>848

「あぁ」

『事情』がある。誰にでも、ある。
自分のことや、他人のこと――家族、恋人、友だち、個人で、仕事で、その他諸々。
そういう、いろんなことに関わる『事情』がある。
大体のことは、普通に片付く。
諍いがあったり、愛しんだり、事務的だったり、情熱的だったりするんだろう。
そうした普通の手続きがあって、それで普通に終わっていく。大抵、そうだ。

 『スタンド使い』が『戦う』ことは、そうではない。

だから来た。そう、平石基はここでは言えない。
平石基にとって、その理由とこの感情は、完全に個人的だ。勝手だ。自分の都合だ。
他人の事情によってしか、今はまだ、理由をつけられないからだ。
だからこそ、とても大事なことだ。戦う理由と、その事情は、平石基にとって最も尊重するべきことだ。
それは、オレのものじゃ無い。

「大事なことだよ。お互いに」

少し本心が漏れる。口数が多い方でも無いつもりだが、余計なことは言い忘れない。
自嘲に見えぬよう気を付けて、笑い顔を向け、『更山』の目と、『イルーシヴ・エデン』を順に見て、

「だから、うん。頼まれた。じゃあ、借りるぞ」

『スマートフォン』を受け取ろう。

850『臨時商用特殊車輌運用会議』:2022/05/23(月) 23:21:05
>>849
 
「ヒヒ……」
 
『スマートフォン』を受け取る『平石』を見て、
どこか諦めたような寂しげな笑みを零す『更山』。

「契約成立だな。改めて宜しく、お願いするぜ。平石サン。
 その『スマートフォン』にはちょうど今回の『ターゲット』の、
 『公式サイト』の――」

 
『更山』が言うが早いか、『スマートフォン』の『スピーカー』から大音量で流れる『それ』は、

 
 ♪♪♪〜♪#〜♪♪♪

       ♪〜〜♪♪〜♪〜♭
     ♪♪#〜♪♪♭♪〜〜〜♪#♪〜〜〜♪♪


           ♪♪♪〜〜♪♭♪〜♪♪#♪〜〜〜♪♪♭♪♪


 ♪♪〜〜♪♪#♪♪〜〜♪♭♪♪


             ♪#♪♪〜〜♪♪〜〜〜♪♭♪


チープな音源でありながら、何かを鼓舞するような力強い曲調で流れる『それ』は、
 
「『社歌』のページを開いてたトコだ。
 つまり平石サンに相手して欲しいのは、 ある『企業』」
 
「────『スカイ・スパイス・スター』と名乗ってる。

 具体的には、そこの『取締役』を一人とっちめて、
 俺の『弟』の『遺骨』を取り戻してほしい」

言いながら一度顔を伏せ、体を震わせ、堪えきれない様子で笑い声を漏らす。

「フザけた会社だろ……今ドキ、モバイルサイトに『社歌』なんか載せるかね。
 舐めてんだよ、完璧に。なあ、平石サン」

「『協力者』がいるんだ。
 『標的』の居場所も、奴が一人でいるタイミングも、分かってる。
 マップはその『スマートフォン』に入ってるし、
 常に『スピーカーホン』で通話を繋いでおいてくれれば、こっちからもバックアップできる」

言いながら更山は左手のスマートホンのディスプレイを素早く撫でる。
殆ど同じタイミングで、平石の手の中のスマートホンが震え出す。
眼の前の更山からの『着信』だ。
 
「その『スマホ』は特別製だ。きっと平石サンの助けになる。
 俺はこう見えて結構、機械に強いお兄ちゃんなんだぜ。

 それを踏まえてここまででなンか……聞きたいことはあるかい」

851平石基『キック・イン・ザ・ドア』:2022/05/23(月) 23:49:48
>>850
着信。通話状態。音量設定、胸ポケットに入れて、声が問題なく聞こえる程度。
マップはどれか、探して、開く。位置確認だ。スマートフォンは、触ってれば分かるように出来ている。
分からなければ訊く。
『協力者』や『タイミング』についても、『バックアップ』に含まれるという意味だろう――必要なことを。

「……分かった。更山さん。通話は繋いでおくよ。独り言が多いかもしれないが、気にしないでくれるとありがたい」
「『スカイ・スパイス・スター』か」

反復。聞き覚えのある社名だろうか。
つまり、その会社が、かたき討ちの、

その『取締役』が、仇なのか?と訊こうとしてしまって、開きかけた唇を少し舐める。
『バックアップ』。『居場所とタイミング』。『相手』。『目的』。『スタンド使いを呼んだ意味』。
十分だ。それ以上の『事情』は彼のものであってオレのじゃない。
笑っちまうほどの事は、なにも面白い事だけじゃない。

「確かに、今どき『社歌』は古くさいな」

だから軽口にした。

「それと、その『取締役』とやらの能力なんかは、分かっているのか?」

軽口だけだともったいないから、気になることも訊いておくことにした。

852『臨時商用特殊車輌運用会議』:2022/05/29(日) 10:40:36
>>851
 
受け取った『スマートフォン』の設定を手早く済ませる。
初めて触れる機種の上、見慣れない『インターフェース』ではあったが、
画面に並ぶアイコン等は既知のものと大差なく、直感的に操作が可能だ。
 
『マップ』のアイコンをタップすると見慣れた地域の地図が開いた。
『星見駅』の周辺を示す地図の、駅からさほど遠くない地点に『ピン』が打たれている。

「もし『イヤホン』の類いを……有線でも、無線でも、持ってるンなら、
 勿論繋いでくれてもイイんだぜ。
 いや、『俺の』を貸すのはお互いな、アレだろ?
 『新品』を用意できなかったのは、俺の手落ちッてトコではあるが」

「独り言だって、好きにしてくれて構わないんだぜ。
 俺は今回の件で平石サンの何を知ったところで決して口外しない……し、
 できない、からな」
 
「証明できるわけじゃあ、ないけれど」
 
平石の連絡先やそもそも『スタンド使い』であることを知った経緯など、
あまりに不可解な点の多いこの男の手を、それでも平石は取った形だ。
決してそれが信用に基づくものではないとしても。
 
「そう。『株式会社スカイ・スパイス・スター』。
 県内で何店舗か店を出してる『カレー屋』だよ。聞いたことあるか?
 時々駅前に『キッチンカー』を出して、『移動販売』みたいなマネもしてるらしい」
 
「フザけた歌を作るワリに、古い会社ッてワケでもない。
 ここ最近になって、SNSやらで宣伝するようになって多少伸びてるようだけどよ、
 『法人』としてはまったく、大した規模じゃあない」
 
平石がグルメ情報に詳しければ、ひょっとすると名前くらいは知っているかもしれないし、
実際に店舗に足を運んだこともあるかもしれない。
ただ、『街の誰もが知っている』という規模の人気店ということもなかった。

「この『株式会社』が俺の八つ当たりの相手だ。
 そこの取締役の──『瀬輿 星那(セゴシ セナ)』ッてのが、
 今日、これから、本社の事務所で一人になる。
 マップに印のある通り……ここしかないッてタイミングだ」

そこまで立て続けに口にして、白い肌をしたその男は一度言葉を切った。
 
  
「『車』の。 
 『自動車』の『スタンド』を使うと聞いている。
 詳しい『能力』までは分からない──アイツは、結局『それ』を使ったことがないそうだから」
 

「『株式会社スカイ・スパイス・スター』は、
 俺の死んだ弟の『スタンド』を使うと、聞いている」

853平石基『キック・イン・ザ・ドア』:2022/05/29(日) 12:55:52
>>852
「イヤホンか…便利かもしれないな」

だが持っていない。無線のやつは、ハンズフリー通話ができる。それは知っている。
病院を出るときにでも、コンビニで探そう。(だいたい病院にはコンビニがあると思うが、許可をいただけるなら、調達しておきたい)
それに、何を知られたところで、だ。そんな大した秘密は無い。
しいて言えば『スタンド使い』ってことだが、それは既知だ。

「『キッチンカー』の『カレー屋』……」
「ああ。見たことがあるな。買ったことはないが」

『スカイ・スパイス・スター』で試しに検索してみると、確かにSNSは確認できた。
更新は止まっている。味や店そのものの評価なんかも、皆無だ。
なるほど、『大した規模じゃない』ことが分かった。

「本社の事務所」

「『車』のスタンド能力。…(縁があるな。車)」

つぶやくように復唱。『弟のスタンド』には反応しない。覚えておくだけだ。
それは、何度も繰り返すが平石基にとっては関係が無い。
『弟』と、その『スタンド』まで奪われて、八つ当たりだと自嘲しながら言う彼が、
無作為とはいえ平石基に声をかけ、面白そうだとその手を取ったこのオレが、
目の前に座る怪しい男に、更山好晴と名乗る彼に何か言うべきことがあるならば、
それは好意ではなく憐みでもなく、愚痴でもなく軽口でもなく、まして感謝や虚勢では無く、

「分かった。お互い、大して知った仲じゃないが」 「手は抜かないよ」

ただの事実であるべきだ。


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