したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

【ミ】『フリー・ミッションスレッド』 その1

1名無しさん:2016/01/18(月) 01:58:24
短編、単発のミッションなどにお使いください。
長編やシリーズものの予定でしたら、自分のスレで行うことをお勧めします。

476『オータム・リーブス』:2018/05/08(火) 18:13:23
川本に借用して頂いたスタンド

平均的なサイズの黒猫のスタンドヴィジョン。
 『半自立』型であり。このスタンドは極めて他者に
利用や、見下される事を嫌う。過去の背景としてスタンドの
本体が仲間の、そういった行為で死に至らしめられたからだ。
 額の月は欠けてしまった。彼女の『月(希望)』を取り戻す
時はもう二度とないのだろう……。

 『シルバー・ムーン』

破壊力:D(B) スピード:B  射程距離C(10m)
持続力:C 精密動作性:C 成長性:C

(※破壊力のBは爪の強度)

第一の能力『シルバー・ストリーク』
高低差でマーキング(爪痕)を付ける事により、射程内で
黒い霧状の移動を行える。本体ど同等の重量か以下の半径10m内の
爪痕を付けたものも、移動線状の中心に引き寄せられる(パスCC)
 それより重い物は、引き摺るようにして中心に動くが。パCで動かせる程度の
重い物なら十数cm、もっと重ければ数cm引き寄せられるぐらい。
 移動時は、スタンドの攻撃は干渉されない。また、六回使用した後は
3分ほどのインターバルが必要となる。


第二の能力『シルバー・ブレット』
 スタンド猫『ドライ』が本体(川本)と信頼関係が最高潮に達した場合
発揮させるつもりだった。ミッション内では発動ギリギリまでの関係に至っていた。
 『ドライ』に宣言した『全てを出し切る』と言う内容にそった行動を成功した時
月は満月となり、黒猫は銀色の猫となり本来の能力を発揮する。
 爪痕に対しスBの高速で移動し、その移動時に『シルバー・ストリーク』で
予め付けたマーキング品に銀色の閃光となって移動するドライが触れると
『自動追尾弾』となり、半径十メートル内の敵へホーミング弾となって
襲い掛かると言う、えげつない能力だった。
 
能力概要


…………実は川本PCの設定が『信頼』を主体としたものであった為
 最初の『ドライ(シルバー・ムーン)』との交流、行動に関しても
序盤、中盤にかけて最適解に至っていた。元々、このスタンドは
ベテランスタンド使いへのメタファーといった、スタンドは道具として
活用すればいいと言う思考の人物に対し喝を入れるために産みだしたが
川本PCは、リタイアするまで完全にスタンドの内容を網羅してるかのように
動いていた。上記の能力から見てわかる通り、今回の戦闘ではかなり
有利に立てる為に、あえてシルバー・ブレットが発動するまでの信頼に至る
速度は遅滞させていたが、GMの想定が正しければ、残り2レスか3レスで
能力が発動されて完勝する可能性も考えられた……。
 色々と、そう言う部分も含め。今回の打ち切りは遺憾な結果と思わなくもない。

477『街角のS』:2018/05/10(木) 23:14:39





     「 朝は四本足、昼は二本足、夜は三本足。これは何だ? 」

478『街角のS』:2018/05/10(木) 23:23:10

その日、鈴元涼は町を歩いていた。
時刻は夕暮れ。
黄昏時の夕日が、星見町を茜色に染め上げている。

近くにいる人の数は、それほど多くない。
学生や主婦や会社員などが、時折通り過ぎる程度だ。
その中に、少年――鈴元涼の姿があった。

   《朝は四本足。昼は二本足。夜は三本足》

        《――それは何だ?》

不意に、何者かの声が聞こえてきた。
やや甲高く、よく通る男の声だった。
他の人々は、その声に気付いている様子はない。

声は、表通りに面した路地の方から聞こえてきた。
その中の様子は薄暗く、ここからでは少々見えにくい。
路地の中に少し踏み込んでみれば、声の主が誰なのかが分かるだろう。



(※鈴元PLは、外見・所持品・簡易プロフィール・能力詳細を併記して、レスをお願いします)

479鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/11(金) 00:00:55
>>478

「……」

鈴元涼は散歩をしていた。
なんということはない暇つぶしだった。
珍しいことではなく、気が向けば彼は当てもなく歩くことがある。
ちょっとした趣味だ。

「?」

声が聞こえる。
誰だろうか。記憶にはない。だけど自分に話しかけられているような気がする。
分からない。だが興味本位で路地に足を踏み入れた。

「……人間、やろか」

「赤ん坊の時は這い這いで四つ足、大人になれば二本の足で立って、歳をとれば杖をついて二足す一の三本」

外見:灰桜色の着物に羽織。
    癖のある黒髪をうなじの辺りで結んでいる。
    足元は下駄。

所持品:和傘。きんちゃく袋(中には小さな箱に入った一口大羊羹とスマホ)

簡易プロフィール:京都生まれ。思春期。和菓子屋の次男坊。

能力詳細:ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1453050315/76

480『街角のS』:2018/05/11(金) 00:36:22
>>479

聞き覚えのない声に興味を引かれ、鈴元少年は路地へ入っていった。
しかし、そこに人影らしきものは見えない。
だが、ここから声が聞こえたことは確かだ。

     《そう、その通り》

     《――ご明察》

また声が聞こえた。
高く積まれた箱の裏側から聞こえてくる。
まもなく、そこから何かが現れた。

    《この声は、同じ力を持つ者にしか聞こえない》

    《そして、君には私の声が聞こえている》

    《つまり、『出会えた』わけだ》

物陰から出てきたのは、一匹の猫だった。
ただ、普通に目にする野良猫とは大きく異なる特徴があった。
耳が大きく、全身の毛とヒゲがない。

    《――素晴らしい》

よく通る甲高い声が、猫が座っている付近から発せられる。
正確には、猫の背後に積まれた箱の裏側から聞こえてくるようだ。
こちらからは、その裏側に何があるかは確認できない。

481鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/11(金) 00:55:32
>>480

「どちらさんか知らへんけど縁があったみたいで嬉しいわぁ」

言った次の瞬間猫を見つけ硬直。
猫が嫌いなわけではない。むしろ好きだ。
しかしその見た目が見慣れないものだったことに驚いていた。

「それで、えっと……なんか御用やろか?」

箱に向かって声をかける。
箱には近づかない。

482『街角のS』:2018/05/11(金) 01:29:10
>>481

   《――『スフィンクス』さ》

   《といっても、先程の謎かけをした神話上の怪物のことではない》
   
   《私は、そういう種類の猫なのだよ。エジプトではなくカナダ原産だがね》

奇妙な姿の猫は、そのように言葉を続けた。
実際は、声を発したのは猫ではなかった。
箱の裏から静かに出てきた『それ』が、猫の言葉を代弁している。

   《失礼、『これ』は私のスタンドだ》

   《なにしろ、君と私の間には、大きく隔たる種族の違いというものがある》

   《これを通さなければ、私は君と意志の疎通を行うことができないのでね》

猫の背後に立つのは、異形のスタンドだった。
胸から上は人間の女性、体は獅子、背中には翼が生えている。
その姿を一言で表現するなら、神話の『スフィンクス』そのものだった。

   《私が君を呼び止めた理由は、私の遊びに付き合ってくれる相手を探していたからさ》

   《ただ、遊びといっても、体を動かすような類のものではない》

   《私が出す『謎』を、君に解いてもらいたいんだ》

スフィンクスのスタンドは、その場に座った状態で動きを止めている。
猫と同様に、鈴元少年との距離を一定に保ったままだ。
特に攻撃を仕掛けてくるような気配は見受けられない。

   《無理にとは言わない。君にも都合があるだろう。君が断るなら、私は別の相手を探すことになる》

   《しかし、君が承知してくれるのなら、その手間が省け、私は大いに喜ぶことになるだろう》

   《どうだろうか?私のために君の時間を割いてくれるのなら、それなりの礼はしよう》

483鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/11(金) 01:45:05
>>482

「スヒ……スフィンクス」

発音がぎこちない。
外国語は苦手だ。

「遊びも謎も別に問題はないんやけど」

そう言って近づいていく。
しかし表情は少し硬い。

「スフィンクスって問題解けへんかった人、食べるんやなかった?」

484『街角のS』:2018/05/11(金) 22:09:11
>>483

   《もし答えを間違えた時は君の命を頂戴する――》

   《君の前にいるのが本物のスフィンクスなら、そのように言ったかもしれないな》

   《だが、これはスフィンクスではない。名は『ストーン・エイジ』》

スフィンクスのスタンドから感じられる生物的な印象は、どちらかというと希薄だった。
その全体が、石像を思わせる無機質な質感を持っている。
神話に登場するスフィンクスと、エジプトに実在する石造りのスフィンクス像のハイブリッドといった雰囲気だ。

   《承諾してくれるとはありがたい。それは非常に素晴らしいことだ》

   《では、場所を変えなければな。この近くに、落ち着いて話せる場所がある》

   《ついて来てくれたまえ。そこまで案内しよう》

猫の背後にいた『ストーン・エイジ』が消えた。
そして、猫が近付いてくる。
鈴元少年の横を通り抜けて、路地の外へ出ていく。
少し歩いてから、猫が振り返った。
ついて来ているか確認しているようだ。

485鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/11(金) 23:19:26
>>484

(スタンド、かな)

恐らくそうだろう。
というか自分の知識の中ではそう結論付けるしかない。

「はいな」

猫についていこう。

486『街角のS』:2018/05/11(金) 23:47:23
>>485

少しの間、一人と一匹は通りを歩き続けた。
やがて、猫が足を止める。
そこは、一軒のカフェの前だった。
入り口に店の名前が掲げられている。
『Priceless』――そう記されていた。

   《――ここだ》

再びスタンドを出した猫が、その前足で扉を開けた。
偶然か、店内には他の客はいない。
ウッド調で統一された店内は、落ち着いた雰囲気が漂っている。

   《奥の席に座ろう》

特に遠慮する様子もなく、猫は店の中を歩いていく。
その様子を、店主らしき初老の男性が一瞥した。
瞳の色は青く、彫りの深い顔立ちで、見る限り西洋人のようだった。

「いらっしゃいませ」

すぐに視線を移した店主が、鈴元に挨拶する。
流暢な日本語だった。
口元には穏やかな微笑が浮かんでいる。

487鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/11(金) 23:59:48
>>486

(喫茶店……)

猫と喫茶店。
まるで漫画の中のような状況だ。
猫に招かれて洒落た店に来てしまった。

「どうもぉ」

微笑み返して店主に会釈。
猫についていく。

488『街角のS』:2018/05/12(土) 00:31:31
>>487

明確な非日常というほど異質ではない。
かといって、何の変哲もない日常とも少し違う。
日常の中にある、ささやかな非日常――そんな状況と呼べるのかもしれない。

   《彼はスティーヴン・ステュアート――今、私は彼の所に厄介になっている》

そう言って、猫が椅子の上に飛び乗った。
慣れているのか、店主も咎めようとはしない。
スフィンクスは、猫の傍らに控えている。

「――ご注文をお聞きしてもよろしいですか?」

鈴元が腰を下ろすタイミングで、店主が注文を取りに来た。
テーブルにはメニューが置いてある。
一般的な喫茶店で扱っているものなら、大抵あるようだ。

   《好きなものを頼みたまえ。私が奢ろう》

向かいに座った猫が、そんなことを言った。
その尻尾が左右に揺れ動いている。
……とりあえず頼んでもいいようだ。

489鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/12(土) 00:50:35
>>488

「注文……ええと」

「……」

(猫にごちそうに……?)

なんだか奇妙な感覚だ。
メニュー表に目を通すがどうにも座りが悪い。
猫と意思の疎通をしていることもそうだし、猫にごちそうされそうな現状も。

『自分で払うわ』

スタンドを出して猫にそう告げる。
貸し借りをしたくないというよりは、気を遣わせたくないという気持ちだ。

「紅茶を……」

490『街角のS』:2018/05/12(土) 01:21:14
>>489

人型スタンド――『ザ・ギャザリング』を発現した。
猫の申し出を断ってから注文を出す。
猫は納得した様子で軽く頷いた。

「はい……かしこまりました」

注文を受けた店主が、カウンターの奥へ入っていく。
まもなく、湯気の立つ紅茶が鈴元の手元に置かれた。
香り高く、質の良い茶葉を使っていることが伺えた。

   《この店の名前――『Priceless』というのは、『掛け替えのない』というような意味がある》

   《訪れる人々に、有意義な時間を提供したいという思いから名付けたそうだ》

   《そして、この『遊び』を行う時間が、私にとっては『Priceless』なのだよ》

スフィンクスを通して、猫が喋る。
心なしか、その声色には喜びの色が感じられた。

   《さて、始めよう――と言いたいところだが、まだ名前を聞いていなかったね》

   《私は『ロダン』と名乗っている。君も、そう呼んでくれ》

   《――君は?》

491鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/12(土) 22:48:32
>>490

『ええ名前やね』

掛け替えのない。
素敵な響きの言葉だ。

「僕は鈴元涼っていうんよ。よろしゅうに」

「……えっと、開始やんね?」

492『街角のS』:2018/05/12(土) 23:53:16
>>491

  《よろしく、鈴元涼》

挨拶を返しつつ、ロダンは軽く居住まいを正した。
といっても、見た目は余り変わらないが。

  《では、『ルール』を説明しよう。今から、私が問題を出す》

  《君は、それに対して質問することができる。質問はイエスかノーで答えられるものだけ》

  《質問の数は一つの問題につき『九つ』まで。答えるチャンスは『一回』のみだ》

そこまで言ってから、ロダンは一度言葉を区切った。

  《まず、軽いウォーミングアップとして、一つ『例題』を出そう。
   これは本番ではないので、練習だと思って気楽に答えてくれ》

  《――生まれているが、生まれていない。それは何か?》

これが問題のようだ。
ロダンの言葉によると、あくまでも例題らしい。

493鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/13(日) 00:15:58
>>492

(いわゆるウミガメのスープってやつやね)

何かの機会で耳にしたことがある。
推理力もそうだが質問する力も求められる。
一筋縄ではいかなさそうだ。

「……」

例題。生まれているが生まれていない。

「じゃあ質問一で……『それは生物ですか?』」

494『街角のS』:2018/05/13(日) 00:31:43
>>493

それは生物か否か。
鈴元少年の質問に対して、ロダンは少し考えてから答えた。

   《その答えは『イエス』だ》

   《答えるのに少し迷う部分もあるが、決して非生物ではない》

   《確かに、生物の範疇に含まれていると言えるだろう》

ロダンの答えは、そのようなものだった。
質問回数は、残り八つだ。

495鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/13(日) 01:36:35
>>494

「おおきに……」

(生物……少し迷う……)

犬猫などでの動物であれば迷う事ではない。
迷うというのは分ける時に生じるものだろうか。

「質問二、『それは植物ですか?』」

「質問三、『それは日常的に見られるものですか?』」

496『街角のS』:2018/05/13(日) 03:17:47
>>495

自然に考えれば、犬や猫といった動物なら迷わない。
迷いが生じるということは、それらが答えではない可能性は高い。
頭の中で思考を巡らせながら、質問を重ねる。

  《順番に答えよう。まず、二つ目の質問の答えは『ノー』だ》

  《それが植物ではないことは明白だ。誰が見たとしても、判断に迷うことはないだろう》

  《次に、三つ目の質問の答えは『イエス』だ。
   君達の普段の生活において、それを目にする機会は多い》

  《もちろん、君も見たことがあるはずだ。見慣れていると言ってもいいだろう》

ウッドテーブルを挟んで、鈴元少年とロダンのやり取りは続く。
質問できる回数は残り六つになった。

497鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/13(日) 23:08:16
>>496

「なるほど」

植物ではない。
……この際生まれるという言葉をどう捉えるのかも重要に思えた。

「質問四」

目にする機会が多い。
目に見えるもの。植物ではない生物。
もう少し的を絞ろう。

「『それは今このお店にあるものですか』」

498『街角のS』:2018/05/13(日) 23:28:52
>>497

思案し、少しずつ質問の範囲を狭めていく。
そうすることで、確実に選択肢を絞り込むことができる。
問題にある『生まれる』という言葉の意味も、導き出せるかもしれない。

  《その答えは――『イエス』だ》

  《それは、この店の中に存在する。ただし、今の君に見える範囲にはない》

軽く視線を巡らせてから、ロダンは答えた。
カウンターの奥では、店主がカップを磨いている。
残り質問数は五つだ。

499鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/14(月) 23:05:48
>>498

「……んー」

「じゃあ、質問五『それは食べられる?』」

ここにはない。ではどこだ。
倉庫か、調理場か。

一応この場を見渡して何があるか確認する。

500『街角のS』:2018/05/15(火) 00:00:14
>>499

念のために周囲を確認する。
まず手元にはティーカップとソーサー、そしてティースプーン。
もし紅茶を注文する際に頼んでいたなら砂糖とミルクもあるだろう。

テーブルの上には最初に目を通したメニューと、ペーパーナプキン。
周りには、同じようなテーブルと椅子が置かれている。
そして、カウンター席にも椅子が並んでいる。

カウンターには西洋人の店主――スティーヴンが立っている。
その向こうには、アンティーク風のコーヒーミルが設置されているのが見えた。
カウンターの奥の方は、ここからでは見えない。

  《『イエス』だ。それを君達が食べるのは決して珍しいことではない》

  《残りの質問数は四つ――折り返し地点を過ぎた。
   だいぶん答えが絞れてきたのではないかな》

見える範囲にはないが、店内にはある。
この店は、そこまで広い場所ではない。
自ずと範囲は限られてくるはずだ。

501鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/15(火) 00:39:49
>>500

「せやね……僕の予想があってればやけど」

首を傾げればそれに合わせて癖毛が揺れる。

「質問……六やっけ」

「『それは卵ですか?』」

502『街角のS』:2018/05/15(火) 01:10:34
>>501

六つ目の質問を聞いて、しばしの間ロダンは沈黙した。
鈴元少年の癖のある髪の毛と同じように、尻尾が揺れている。
やがて、ロダンは軽く頷きながら答えた。

  《それは――『イエス』だ。
   生まれているが生まれていない。それは『卵』だよ》

  《できるだけシンプルな問題を出題したつもりではいたが、
   私が考えていたよりも早く答えられてしまった。見事な解答だ》

予想より早い段階で答えが出たことに、ロダンは感心したらしかった。
先程と比べ、少し目の開き方が大きくなっている。
まもなく表情を元に戻し、ロダンが告げる。

  《では、ここからが『本番』だ。問題も少しばかり複雑になる。
   お手並みを拝見させていただこう》

  《一人しかいないならできず、二人しかいなければやっても意味がなく、三人いても二人でしかできない。
   それは何か?》

次の問題が出題された。
ロダンの言葉によると、ここからが『本番』ということだ。

503鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/15(火) 02:14:07
>>502

「正直、自信はなかったけど」

「当たったんやったらよかった」

ふぅと息を吐き胸を撫で下ろす。
自分でも確信がなかった。
だがそれが答えだった。運がよかったとも言える。

「ん……」

本番。その言葉に背筋が伸びる。

「また、難しそうやね……」

まだ答えには辿り着けないだろう。
問題文を少しずつほぐしていく必要がある。
そこから新しい部分を引き出してまた質問を続けなければならない。

「質問一『三人いても二人しかできないのは一人が二人がしていることを見ないといけないから?』」

これが肯定されるのであれば二人でしても意味が無いというのは見る側がいることが重要という認識もできるがどうか。

504『街角のS』:2018/05/15(火) 20:56:46
>>503

大きな枠の外側から徐々に範囲を狭め、少しずつ可能性を限定していく。
おそらくは、それが最も適切な方法というものだろう。
最終的に答えを導き出せるかどうかは、一つ一つの質問の積み重ねに懸かっていると言える。

  《それは『ノー』だ。その場に三人の者がいたとして、
   二人がしていることを一人が見ている必要はない》

ロダンから返ってきたのは否定の言葉だった。
見る側がいることが重要という可能性は、幾らか薄れたことになる。
しかし、また始まったばかりだ。
次以降の質問によっては、また変わってくるかもしれない。

505鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/15(火) 23:10:28
>>504

「ん……」

違うか。まだ一つ目だ。ゆっくりいこう。
焦る必要はない。

「質問二『それは運動……ええとスポーツ? ですか?』」

506『街角のS』:2018/05/15(火) 23:42:20
>>505

仮に違ったとしても、それも一つの手掛かりにはなり得る。
着実に推理を重ねていけば、思わぬところで役に立つかもしれない。
鈴元少年は、落ち着いて次の質問を出した。

  《その質問の答えも『ノー』だ。
   それをするために、激しく体を動かすというようなことはない。
   それは、運動競技の類とは全く無関係であると考えて間違いない》

ロダンの回答は、また否定だった。
これで、スポーツというジャンルそのものが選択肢から取り除かれたことになる。
確かな前進だ。

507鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/15(火) 23:59:04
>>506

「なるほど」

運動ではない。
では他の所に目を向けよう。

「質問三『それは遊びですか?』」

508『街角のS』:2018/05/16(水) 00:26:49
>>507

必要なのは、別の角度からの視点だ。
情報が少ない段階では、多角的な面から見ることが重要になる。
鈴元少年は、それを実行に移した。

  《それも『ノー』だ。それを遊びに分類する者はいないだろう。
   しかし、だからといって厳格な規則の中で行われるという訳でもない》

三度目の否定。
それによって、また的が絞られた。
少しずつではあるが、解答の範囲は着実に狭まっているだろう。

509鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/16(水) 01:10:13
>>508

(遊びでも運動でもない……)

であればもっと静的な行動か。
本当に行動かも謎だが。
続けていこう。

「質問四……えーと『それは室内でしか出来ない事?』」

「ついでに五『道具は必要ですか?』」

510『街角のS』:2018/05/16(水) 01:39:11
>>509

頭の中で、静かに思考を紡いでいく。
ここまでの情報からは、騒がしいようなものとは考えにくい。
その逆かもしれないという方向性は、少なくとも完全な見当違いではないだろう。

  《四つ目の答えは『ノー』だ。それをすることは、室内でも室外でも問題なく可能だ。
   無論、ここでもできる。『どこでもできる』と思ってくれて構わない》

『ここでも』のところで、ロダンは前足の先でテーブルを軽く叩いてみせた。
それから、さらに言葉を続ける。

  《五つ目の答えだが、これも『ノー』だ。道具は一つも必要ない。
   そこに人がいれば、それだけで行うことが可能だ》

残りの質問数は四つ――およそ半分を切った。
少しずつではあるが、この問題の終わりが見え始めている。

511鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/16(水) 02:06:25
「……」

(まだまとまらへん)

・誰かに見られている必要はない
・運動ではない
・遊びではない
・どこでもできる
・道具はいらない

半分を使い、終わりが見えてきたが全体が見えてこない。

(こういう問題で大事なんは水平思考……やっけ)

(後は納得……)

言われてみればそうだ、というのが答えになるはずだ。

「質問六『やる人は男だけ女だけでも大丈夫?』」

512『街角のS』:2018/05/16(水) 02:52:47
>>511

これまでの質問で得られた手掛かりを、頭の中で整理する。
それだけで結論が出てくるとは断言できないが、決して無駄ではないはずだ。
謎の答えに至るためには、何よりも思考の歩みを止めないことが重要であるのは違いない。

  《『イエス』だ。性別や年齢といったものは関係ない。
   それは、誰でもできることだ。とはいえ、赤ん坊には流石に無理だろう》

  《一つ補足すると、それは誰にでもできるが、多少の『傾向』はあるようだ。
   私が人間達を観察した限りでは、オスよりはメス――
   いや……『男』よりは『女』が、『大人』よりは『子供』の方が行っていることが多かった》

質問の残りは三つだ。
解答の時が着々と近付いている。
ここからは、より繊細に質問を選ぶ必要があるだろう。

513鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/16(水) 23:46:06
>>512

一旦問題文から質問しよう。
元の場所に戻るのだ。

「質問七『二人でやっても意味がないのは成立しなくなるから?』」

ここも聞いておこう。

514『街角のS』:2018/05/17(木) 00:09:04
>>513

多角的な検討。
最初に返るというのも、その一つだろう。

  《それは『ノー』だ。二人だけでも、それをすること自体は可能だ。
   しかし、普通はしないだろう。わざわざやる必要がないからだ》

  《逆に言えば、三人いる時に二人がそれをすることは意味がある》

残る質問数は二つだ。
それらを使い切るまでに、答えに辿り着かなくてはならない。

515鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/17(木) 01:00:34
>>514

「……」

(分からん……)

三人ですること。
それも子供の女の子が良くすることだ。
しかし浮かぶものは遊びに関することばかりだ。

「八『それは芸術に関係すること?』」

516『街角のS』:2018/05/17(木) 01:35:43
>>515

三人いても二人でしかできない。
やるのは二人だが、二人しかいない場合はする必要がない。
残る一人――そこに何か手掛かりがあるのかもしれない。

  《『ノー』だ。芸術とは関係していない。
   いうなれば、日常の生活の中で行われることだと言っていいだろう。
   だからといって、生活を送る上で必ず必要ということはないが》

  《それは珍しいことではない。
   そう頻繁に遭遇するものではなくとも、様々な場所で目にする機会はある。
   おそらくは――君も見たことがあるのではないかと思う。
   あるいは、やったこともあるかもしれないな》

  《――次が最後の質問だ。それが済んだ後に、答えを聞かせてもらおう》

一呼吸分の間を置いて、ロダンが告げた。
解答の時は間近だ。

517鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/17(木) 01:46:58
>>516

「……」

「九『やってない一人は参加していない?』」

最後の質問だ。

518『街角のS』:2018/05/17(木) 02:06:55
>>517

これが最後の質問になる。
この後には、解答を出さなければならない。
スフィンクスのスタンドを通して、ロダンが言葉を発する。

  《『イエス』だ。残る一人は参加していない。
   『蚊帳の外』と呼んでも差し支えないだろう。
   しかし、その一人がいないとしたら、二人がそれをする必要はない》

  《それから、君が出した最初の質問だが、着眼点はいい。
   私は『一人が二人を見ている必要はない』と言った。
   これを言い換えれば、『一人が二人を意識する必要はない』とも言えるが……。
   この場合、状況的には逆に二人の方が一人を意識していると言えるだろう。
   なぜなら、その一人がいなければ、二人はわざわざそれをしようとは思わないからだ》

そこまで言ってから、ロダンは一度言葉を区切り、また話し始めた。

  《さて――これで九つの質問を使い切った。
   答えが分かったなら、君の解答を聞かせてもらいたい。
   もし考える時間が欲しいなら、私は君の考えがまとまるまで待とう》

考えるための時間はあるようだ。
しかし、答えるチャンスは一度しかない。
今までに得た情報から推理を働かせる必要がある。

519鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/17(木) 23:31:04
>>518

(―――ん)

(二人が一人……一人は二人にとって一体何なんやろ……)
                                        (運動やない)
        (遊びやない)    

                    (子供の女の子)     

目をつむり考える。

(これは……ちゃうかなぁ……)

「誕生日、サプライズ?」

520『街角のS』:2018/05/18(金) 00:09:43
>>519

迷いながらも、深く考える。
そして、解答を出した。
その答えに対して、ロダンは少し黙った。

  《――面白い解答だ。しかし、それは私の用意した答えではない》

  《想像してみて欲しい。ここに二人の人間がいたとする。
   二人は言葉を交わしていた。
   そして、そこに第三の人間がやってきた》

  《二人は、その一人に話の内容を聞かれたくない。
   そんな時に、どうするか。
   後から来た人間に聞こえないように、小さな声でこっそりと喋るだろう》

  《一人ではできず、二人ではやっても意味がなく、三人いても二人でしかできない。
   それは――『内緒話』だよ》

  《これが、この問題の答えだ。納得してもらえたかな》

そう言いながら、ロダンが軽く片目を閉じる。
結果は不正解だった。
しかし、ロダンの様子からすると、これで終わりではなく、まだ問題は続くのだろう。

521鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/18(金) 00:25:36
>>520

「なるほどなぁ……」

頭を掻く。
外れてしまった。少しだけ残念だ。

「うん。納得した」

「それで、こん後は……」

522『街角のS』:2018/05/18(金) 00:43:40
>>521

毛の生えていない尻尾が揺れる。
そして、ロダンは口を開いた。

  《この次は――第二の問題がある。では、聞いてくれたまえ》

  《それは空にも地上にも水の中にもあり、
   時々新しく生まれたり消えてしまったり移動するのを多くの人々が認識している。
   それは何か?》

二問目が出題された。
九つの質問によって、この謎を解かなければならない。

523鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/18(金) 01:54:43
>>522

「うん……んー」

次の問題だ。
今度はどこから攻めたものか。
ひとまずは問題文を少しずつ崩していこう。

「質問一『それは目に見える?』」

524『街角のS』:2018/05/18(金) 02:07:25
>>523

まずは取っ掛かりを見つける必要がある。
そのために最初の質問を出した。
見えるものか否かだ。

  《『ノー』だ。目には見えない。
   ただ――ある意味では見えると言えなくもない。
   しかし、それ自体は、やはり目では見えないものだ》

ロダンからの返答は、幾らかの曖昧さを含んだものだった。
これで少なくとも、はっきりと目に見えるものは除外されることになるだろう。
ある意味では見えるという部分の解釈が要点になるかもしれない。

525鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/18(金) 02:28:46
>>524

「目に見えん……」

目に見えないがあらゆる場にあるものだ。
それは何か。

(目には見えん……でも見えてるといえんこともない?)

「質問二『それは気体ですか?』」

526『街角のS』:2018/05/18(金) 02:44:10
>>525

空にも地上にも水の中にもある。
見えないが見えるとも言える。
手掛かりは少しずつ増えてきている。

  《『ノー』だ。気体ではない。
   確かに気体も目には見えないが……。
   この場合の『目に見えない』というのは、もっと大きな意味で見えないと思ってくれていい》

ロダンによると、気体ではないとのことだ。
彼の説明を聞く限りでは、気体よりも見えにくいものと考えられる。
時々生まれたり消えたり移動することもあるという部分も、要点の一つになるだろう。

527鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/19(土) 23:07:35
>>526

「まぁ気体やったらあっさりし過ぎか……」

それに少し期待をしていなかった訳では無い。
近いものがあると思ったがそれは一問目の答えがだ。

「三『それは形のあるものですか?』」

528『街角のS』:2018/05/19(土) 23:56:48
>>527

空中にも陸上にも水中にあり、生まれることもあれば消えることもあり移動もする。
そして、それ自体は目には見えない。
謎を解く新たな手掛かりを得るため、自らの考えに従って三つ目の質問を出す。

  《その答えは――『ノー』だ。それは形を持たないものだ。
   しかし、多くの者が、それを明確に認識している。
   おそらくは、君も例外ではないだろう》

そのように、ロダンは告げた。
残りの質問数は六つ。
まだ選択肢を絞り込むだけの猶予がある。

529鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/20(日) 00:31:18
>>528

(形のないもん……)

となると感覚的なものなのだろうか。

「四『それは感情に関係がある?』」

530『街角のS』:2018/05/20(日) 01:08:22
>>529

形のないもの。
そこに含まれる選択肢は、多く考えられるだろう。
感情というのも、考えられる内の一つだ。

  《それも『ノー』だ。感情や衝動といった精神的なものとは無関係だ。
   言ってみれば、もっと厳密なものだと考えていい。
   分類を挙げるとするなら――ある種の『学問』……
   あるいは『政治』や『歴史』とも関わりがあると言えるだろう》

  《そして、君達がそれを認識するのは、主に『見ること』によってだ。
   最初の質問の答えと矛盾するように聞こえるかもしれないが……。
   さっきも言った通り、それ自体は見えないが、見えると呼べないこともない。
   だから、見ることで君達はそれを認識することができる》

ロダンが言うには、人々は見ることでそれを認識しているらしい。
しかし、それ自体は目には見えないという。
一見すると辻褄が合わないように思えるが、どこに答えがあるのだろうか。

531鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/20(日) 23:23:19
>>530

見るという言葉の捉え方にも目を向ける必要がありそうだ。

(学問……?)

「『それは勉強する対象である?』」

532『街角のS』:2018/05/20(日) 23:46:38
>>531

学問というなら当然学ぶものであるはずだ。
それを確認するために、鈴元少年は五つ目の質問を出す。

  《『イエス』だ。ごく一般的な学校なら、それについて生徒に教えているはずだ。
   おそらく君も習ったことがあるだろう。
   ただし、それ自体が一つの学問ではなく、ある学問の中にそれが含まれると考えた方が適切だ。
   『一要素』と言い換えてもいい》

  《それから、これは君達の世界に特有のものだが、
   我々の世界にも似たようなものはある。
   もっとも、我々の場合は、君達のそれと比べると小規模ではあるが》

残りの質問数は四つ。
およそ半分だ。

533鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/21(月) 22:57:52
>>532

(勉強か……)

既に習った可能性がある。
どの教科に関するものかがわかればより絞り込めるがどうか。
少年は腕を組んで思案する。

(……ん)

似たようなものとはなんだ。
動物と人間の間に共通するのか。

(縄張りとかかな……?)

「『それは社会に関する?』」

534『街角のS』:2018/05/22(火) 00:26:14
>>533

和装を身に纏う少年は、深く静かに思考を働かせる。
その脳裏に、『縄張り』という言葉が浮かび上がった。
動物が縄張りだとしたら、それに対応するものは何だろうか。

  《『イエス』だ。それは『社会』という分野の中に含まれている。
   『社会』という単語自体にも、密接に関わっていると言って差し支えない》

  《――残りの質問数は『三つ』だ。調子はどうかな》

質問に対するロダンの答えは肯定だった。
少なくとも、『社会』という方向性は正しいようだ。
あとは、限られた質問でどれだけ範囲を絞れるかに懸かっている。

535鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/22(火) 22:54:32
>>534

(んー)

気になるのは二つ。
問題文の水の中や空にあるという部分。
それと移動するという部分だ。

(会社……法律……)

水の中や空にある。領解や領空などであれば法律はそこにあるだろう。
しかし移動する訳では無い。
会社は概念として捉えれば移動する。
移転というものだ。しかし水の中や空にあるのだろうか。
その場合あるのは会社ではなく仕事だ。

(仕事なんか……?)

「調子はええと悪いの間やろか」

「あんさんは良さそうやけど」

「……質問『それは法律に関するもの?』」

候補である会社や職場、仕事はだいたい同じカテゴライズだ。
法律はその中では少し外れる。
ここが当たるかどうかを聞こう。

536『街角のS』:2018/05/22(火) 23:34:32
>>535

  《ほう――そう見えるかな?》

ロダンは、軽く前足を舐めながら何気ない調子で言った。
猫にとっては、特にどうということもない普通の動作だ。
一見すると、あまり様子は変わっていないように思える。

しかし、その雰囲気には変化が見受けられた。
鈴元少年の推理は、かなり近いところまで来ている。
口には出していないが、そう言いたげなものが感じられた。

  《『イエス』だ。それは法律と強く結び付いている。
   たとえばテレビをつけてみると、それを指す言葉を耳にする機会は少なくない。
   新聞の中を探せば、その言葉が一ヶ所か二ヶ所は見つかるだろう》

  《時には、それに絡んだ対立が起きることもある。
   君達の間でも我々の間でも、それは共通している。
   そして、それに関する諍いが起こった場合、争いの規模は君達の方が遥かに大きい》

ロダンの答えから、それが法律に関係していることは間違いない。
その枠の中に含まれ、空の上や水の中にあり、移動することがあるもの。
果たして、それは仕事なのだろうか。

質問の残りは――『二つ』。

537鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/23(水) 00:32:00
>>536

「見えると思うけど……」

なんとなしに言う。
少しいけずな気持ちがないでもない。

「なるほど」

結びついているということはそれそのものではない。
残り二つ、まだつかない踏ん切りをどうするか。

(……空の上、水の中。たしかに仕事はある。飛行機やら海女さんやらはそこが仕事場……)

そして移動する仕事もあるし、業務内容や業種そのものを変えることも出来る。

(一手打たんと……)

「『それは仕事ですか?』」

538『街角のS』:2018/05/23(水) 04:30:20
>>537

  《ふむ――》

  《君が正解したからといって、私が危害を加えられる訳ではない。
   君が不正解だったからといって、私が君を取って食うということはない。
   どうか気楽にやってくれたまえ》

  《私は今、この『Priceless』の時間を楽しんでいる。
   それと同じように、君にも楽しんでもらえれば幸いに思う》

緩やかに尻尾を上下に揺らしながら、ロダンが告げた。
そう言いながらも、あまり気にしているような様子はない。

  《『ノー』だ。仕事という言葉には関係がないと思ってくれていい。
   完全に繋がりがないとも言えないが、いささか強引な連想になってしまうのでね。
   一種の『概念』のようなものという点は共通しているが》

  《さっき、それに絡んだ争いもある、と私は言った。
   その結果として、この問題で述べたような現象が起きることがある。
   つまり、『新しく生まれたり消えたり移動したりする』というようなことだ》

『仕事』ではなかった。
そして、それは『概念』のようなものであるらしい。

  《次が『最後の質問』だ。
   そういえば、涼――君は『日本人』だろうね?》

ロダンは、不意にそんなことを言った。

  《最初に出会った時に言った通り、私は『カナダ原産』だ。
   だからどうだという訳ではないが……
   一般的に、日本人は諸外国人と比べて、『これ』に対する意識が薄いと言われることがあるようだよ》

残る質問の数は――『一つ』。

539鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/23(水) 23:17:08
>>538

「……ふむ」

仕事でないとするとあてが外れた。
後一問で答えを構築しないといけない。
あと一つだ。

「うん、京都の生まれやねぇ」

日本人と自称することは少ないが京都人だとはいえる。

「んー」

(こっちと異人さんの間にある溝、みたいな……)

(労働環境? それともお休みか? 歴史、社会構造、文化……?)

「質問『それは休日に関係ある?』」

540『街角のS』:2018/05/24(木) 00:04:28
>>539

  《京都――私は行ったことがないが、
   この国の歴史において重要な地位を占める地域だと聞いている。
   生憎、私が知っているのはテレビで見た程度の知識だが、興味はあるな》

ロダンは軽く頷いて言った。

  《その答えは『ノー』だ。休日に限らず、これは暦などとは無関係だ》

  《それが日本人には馴染みが薄いと言われるのは、明確な理由がある。
   この国には、『ある特徴』が存在するからだ。一言で言うなら『地理』上の話だよ。
   その点が、この国と他の多くの国との違いなのだ》

  《もっと言えば、他の多くの国の『ある場所』には『それ』がある。
   日本には『それらの国と同じ場所』には『それ』がない。
   ただし、日本にも『それ』は勿論ある。国を問わず、『それ』は必ず存在する。
   もしなかったとしたら大きな問題になるだろう》

そこまで言った時、ロダンの尻尾が止まり、椅子の上に下りた。

  《さて……以上で質問は終了した。
   空にも地上にも水の中にもあり、時折新しく生まれ消え移動する。
   『それ』は何か――君の答えを聞かせてもらおう》

質問は全て使い切った。
あとは、この謎の解答を出すのみだ。

541鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/24(木) 00:28:33
>>540

(地理かぁ……)

(概念で、外国と日本で溝がある)

「……国境?」

それが答えだった。

(いや、日本にもあるんやけど)

島国の国境は地続きではない。

542『街角のS』:2018/05/24(木) 01:04:28
>>541

『国境』――それが少年の出した答えだ。
それに対して、ロダンは深く頷いた。

  《『イエス』――それは『国境』だ。『正解』だよ。
   地上には『国境線』があり、空には『領空』、海には『領海』と呼ばれるものがある。
   そして、新しい国が誕生すれば、新たな国境も生まれる。
   その逆も然りだ。『領土』が変化すれば、それに合わせて『国境』も移動することになる》

結果は『正解』だった。
これで、例題を含めると二題を正解したことになる。

  《では――ここからは少し趣向を変えよう。
   今から、君に幾つかの『状況』を提示する》

  《それらは一見すると奇妙に思えるが、きちんとした理由がある。
   それを君に推理してもらいたい。ルールには変化はない》

ロダンが言葉を区切った。
そして、三つ目の問題が出題される。

  《制限重量ギリギリの荷物を満載した大型トラックがある。
   そのトラックが、走行中にいつの間にか制限重量をオーバーしてしまった。
   途中で荷物を追加してはおらず、新たに誰かを乗せた訳でもない。
   では、なぜ制限重量を超えてしまったのか?》

これが第一の『状況』らしい。
質問を重ねて謎を解くという点に関しては、先程までと同じ要領だ。

543鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/24(木) 22:57:31
>>542

「よかった……流石に例題だけしか答えられへんかったらちょっと恥ずかしいわ」

本当はかなり恥ずかしいと思っているけれど。

「幾つかの状況」

(ちゅうか、これって何問あるんやろか)

とにかく目の前の謎を解きに行こう。
今回も前回のように解ければいいが。

「『重量を超えたのは荷物が原因?』」

544『街角のS』:2018/05/24(木) 23:17:07
>>543

重量が超えた原因として真っ先に考えられるのは、トラックの積荷だ。
まず、その点を確認するというのは最初の一手としては妥当だろう。

  《『ノー』だ。荷物は増えていないし減ってもいない。
   従って、積荷が原因ではない》

簡潔に答えた後、ロダンは窓の外を一瞥した。
燃えるように赤い夕焼け空が見えている。

  《――それから、今の謎で概ね折り返し地点になる。
   私が用意した謎の残りは、これを含めて三つだ》
   
  《日が出ている内には終わるはずだ。もうしばらく付き合ってもらいたい》

ロダンは質問の答えに、そう付け加えた。
つまり、例題を含めれば全部で六問ということのようだ。

545鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/24(木) 23:22:25
>>544

「ふむ……」

荷物が問題ではないようだ。
では別の所か。それとも何か別の仕掛けがあったか。

「おおきに」

残りの問題の数が分かった。
折り返しか。少しずつペースをあげられればいいが。

「んー『途中で人を入れ替えた?』」

「『それは車以外に問題があって起こった?』」

546『街角のS』:2018/05/24(木) 23:42:20
>>545

荷物ではないとすれば次に想像できるのは人だ。
あるいは、その車以外の部分に鍵が隠されているのかもしれない。
それらを明らかにするために、二つの質問を出す。

  《二つ目の答えは『ノー』だ。走行中に、人の入れ替えは一切なかった。
   そのトラックにはドライバー以外の人間は乗っていないと考えていい》

  《三つ目の答えだが、それは『イエス』だ。
   重量を超えてしまった原因は、車両以外の部分にある。
   言い換えれば、『外部の要因』ということになるだろう》

残りの質問数は『六つ』。
まだ数には余裕がある。
様々な方面から推測して範囲を絞っていくことが可能だ。

547鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/25(金) 00:25:51
>>546

車両が問題ではない。
では環境から崩してみよう。

「ん……『それじゃあ、路面に問題があった?』」

548『街角のS』:2018/05/25(金) 00:41:34
>>547

トラック自体に問題がないとすれば、重量超過の原因は周囲の環境にあるはずだ。
車が走る道路も、その一つと言えるだろう。
そこに異常があったとすれば、それが原因に繋がっているというのは十分に考えられる。

  《その答えは『ノー』だ。道は平坦で、ごく一般的な舗装された国道だった。
   たとえば、何らかの事故が起きて道路の状態が悪化していたということもない。
   路面には、問題はなかったものと思って構わない》

――道路は原因ではなかった。
この謎を解くには、その他の『外的要因』に目を向ける必要がありそうだ。
質問の残りは、『五つ』。

549鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/25(金) 01:07:17
>>548

「道ではなし」

他だ。では次の一手を考えよう。

(車やから当然道路走る……)

(ただ道路でも車両の問題でもないし)

「『それは天気が原因?』」

550『街角のS』:2018/05/25(金) 01:21:35
>>549

車に問題はない。
道路にも異常はない。
原因が車の中でも下ではなかったとすれば、目を向けるべきは『上』にある
道路を走る車の上に存在するものといえば、それは空。
つまり、『天気』だ。

  《それは――『イエス』だ。その通り、原因は『天候』にある》

ロダンは、それ以上は言わなかった。
少年の推理が的確であり、特に補足することがなかったからかもしれない。
いずれにせよ、これで大幅に絞り込めたことになる。
質問の数にも余裕がある。
正解に辿り着くのは、そう難しいことではないはずだ。

551鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/25(金) 23:56:52
>>550

「……じゃあ、次」

制限重量を超える天気。
真っ先に思いつくのは積雪などだが。

「『雪が原因?』」

552『街角のS』:2018/05/26(土) 00:45:16
>>551

天気に関係し、走行中の車の重量を増やす可能性があるもの。
鈴元少年が考えたのは『降雪』だ。
ロダンは、少しだけ間を置いてから答えた。

  《……『イエス』だ。この謎の答えが出たようだね。
   こうも早く答えられることは、いささか予想外だったが》

  《うず高く降り積もった雪が家の屋根も押し潰してしまうことは、よく知られている。
   このトラックは豪雪地帯を走っていて、車体に多量の雪が積もっていたのだ。
   だから荷物や乗員に関係なく、重量が増えてしまった》

  《それにしても、またしても質問を使い切る前に答えられてしまったか。
   ――お見事だよ、涼》

感嘆した様子のロダンが、鈴元少年の解答を称える。
推理は見事に的中した。
これで、例題を含めて三問『正解』したことになる。

  《残る謎は『二つ』だ。次の問題は、より『想像力』を要することになるだろう。
   さっきのようにはいかないかもしれないぞ》

ロダンが、前足で軽く顔を洗うような動作をしてみせた。
そして、四問目が告げられる。

  《この場所で、二人の男がテーブルを挟んで座っていると考えてくれ。
   そう――ちょうど、今の我々と同じような状態だ。
   二人とも、かなりのヘビースモーカーらしく、ひっきりなしにタバコを吸っている。
   しかし不思議なことに、テーブルの上には一枚の一万円札が乗っていて、
   どちらかがタバコに火をつける度に、その一万円札を交互に指で押す動作を繰り返している。
   この奇妙な状況を推理してもらいたい》

状況の推理。
それが、この問題の要旨だ。

553鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/26(土) 01:01:33
>>552

「早いうちに天気に行きついたからやよ」

「やから、まぁ、運が良かったわぁ」

思考が運よく運んでくれた。
他の所に注目し過ぎないで済んだのだ。

「次、ね」

次もまた奇妙な状態だ。
また腕を組んで考えて、次の質問を考える。

「『お金を指で押してるんは火をつけた方?』」

「『二人は賭け事をしてる?』」

554『街角のS』:2018/05/26(土) 01:33:56
>>553

少年の頭に浮かんだのは、『ギャンブル』の類だった。
机に乗った一万円札というのは、確かに賭け事を連想させる。
筋道は通っていて、最初の想定としては無理がない推理だ。

  《一つ目の答えは『イエス』だ。
   タバコに火をつけた後で、一万円札を指で押している。
   その認識で間違いない》

  《二つ目の答えは――『ノー』だ。
   ただ、『賭け』という考えは遠くはない。
   しかし、厳密には『賭け』とは呼べないので、ここでは『ノー』と言わせてもらう》

  《補足すると、この謎の解答は、できるだけ詳しく答えてもらいたい。
   たとえば、正解が『賭け事』であったとしたら、
   『どのような賭け事か』まで推理して初めて正解ということだ。
   だからといって、物凄く細かく考えろとは言わない。
   要点さえ掴めていれば、それだけで十分だ》

二つ目の質問に対する答えは、微妙な返事だった。
少なくとも、感覚的には近いものはあるらしい。
そこを更に追及するか、それとも別の場所を当たるか。
どちらにしても、まだ始まったばかりだ。
その両方をやるだけの質問数は残っている。

残りの質問の数は、『七つ』。

555鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/26(土) 01:56:54
>>554

「……なるほど」

賭けではない。
賭けではないのか。

(じゃあなんでお金を……?)

(厳密には、かぁ。やから近くあるはずなんよね)

もう少し深く掘るべきか。
他に目を向けるべきか。

「じゃあ『お金を相手に渡してるのは罰?』」

556『街角のS』:2018/05/26(土) 15:37:19
>>555

賭けというのは、勝った側が得をするようにできている。
『得』の反対は『損』だ。
それを考慮すると、罰として渡すというのは賭けに近い発想と言えるだろう。

  《答えは『イエス』だ。しかし、それだけで正解とするのは物足りないな。
   最初に言った通り、二人は一万円札を交互に指で押している。
   そうなるに至った『経緯』を説明してもらいたい》

『罰』という点は当たっていた。
あとは、その背景を推測しなければならない。
質問は、まだ『六つ』残っている。

557鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/26(土) 23:17:52
>>556


「正解とは言えんっちゅうことは……その先が見つかれば王手、やね?」

罰というのは分かった。
では罰になった背景の確認だ。
合っているかいないか。

「『二人は禁煙しようとしている?』」

一番罰として成り立ちそうな理由だがどうか。

558『街角のS』:2018/05/27(日) 00:49:54
>>557

タバコ、そして罰。
この二つから推測できる最も可能性の高いものは、やはり『禁煙』だろう。
鈴元少年の出した答えを聞いて、ロダンは軽く唸って見せた。

  《――『イエス』だ。君は、こういった分野が得意らしいな。
   二度も続けてあっさりと解かれてしまうとは思わなかった》

結果は正解――『王手』だ。
ロダンが、ぱちぱちと目を瞬かせた。
その反応から、連続での早解きが意外だったことが分かる。

  《概ねは君の言う通りだ。二人の男は互いに禁煙を誓い合った。
   そして、それを破ったら一本につき一万円を相手に支払う取り決めをしていたのだ。
   しかし、片方の男が我慢できなくなり、タバコに火をつけて一万円札を相手の方に押しやった。
   だが、それを見たもう一人の男も誘惑に負け、タバコに火をつけ一万円札を相手に押し返した。
   あとは、その繰り返しだ。『寸劇のワンシーン』といったところだろう》

  《涼、君は賢い少年だ。見事なものだ。
   次で最後――私も、この締めくくりに相応しいものを出すとしよう。
   準備はいいかな?》

ロダンは言葉を切り、薄く目を細める。

  《――では、『最終問題』を始めさせてもらう。
   君には、ある屋敷で起こった『殺人事件』の謎を解明してもらおう》

559『街角のS』:2018/05/27(日) 01:08:03
>>558

  《――最初に、概要を説明しよう。
   ある屋敷の一室で、主人が死体となって発見された。
   現場は地下にある書斎だ。主人は胸を一突きにされており、ほぼ即死の状態だった。
   凶器として用いられたのは一本のナイフ。そのナイフは死体の傍に落ちていた。
   そして、一つしかない部屋のドアには鍵が掛けられており、その部屋の鍵は室内で見つかった。
   つまり、世に言う『密室』ということになる。これが事件の概要だ》

  《容疑者は『三人』いる。
   主人の妻、屋敷の使用人、主人の友人であるマジシャン。
   そして、涼――君が『第一発見者』だ。
   では、詳しい事件の流れを順を追って話そう》

ロダンが説明を始める。
それは次のようなものだった。

まず、主人の友人である二人――マジシャンと鈴元少年が屋敷に招かれた。
夜になり、使用人以外の四人は、リビングルームでトランプに興じていた。

十時になった時、主人が書き物をすると言って一人で書斎に向かった。
その際、主人の妻は、主人に夜食はいつもの時間でいいかどうかを確認した。
主人は夜の十一時に軽い夜食を摂る習慣があったのだ。
主人は『その時間でいい』と答え、部屋を出て行った。
それ以降は誰も彼の姿を見ていない。

十時二十分頃、マジシャンが一度部屋を出て、数分後に戻ってきた。
事件後に彼が語った証言によると、電話を掛けていたという。
個人的な内容なので、聞かれたくなかったから部屋を出たそうだ。
しかし、それを見たものがいないため、この証言を裏付ける人間はいない。

そして、十一時になった時、ゲームに熱中していた主人の妻が、
夜食を届けなければならないことを思い出した。
だが、今は勘が冴えてきているため、場を離れることに対して愚痴を零した。
それを聞いた鈴元少年が、代わりに自分が行くことを申し出た。
彼に頼むことにした妻は、少年に書斎の鍵を渡した。
書斎に篭る時、主人はドアに鍵を掛ける癖があったのだ。
そして、仕事に没頭していると、ノックしても気付かないことがあるのだという。
少年は妻から鍵を受け取ると、キッチンに向かった。

キッチンでは、使用人が夜食の準備をしていた。
皿にはサンドイッチが乗っていて、グラスにはトマトジュースが注がれている。
鈴元少年は、その二つが乗せられたトレイを持って、地下の書斎に下りていった。
しかし、ノックをしても応答はなく、ドアには鍵が掛かっている。
仕事に没頭しているのだろうと考えた少年は、妻から預かった鍵を使ってドアを開けた。
室内に入ると、中は真っ暗だった。
慎重に足を踏み出した少年は、何かに躓いて倒れてしまった。
手探りでスイッチを見つけて電気をつけると、胸から血を流した主人が倒れているのが目に入った。
少年が躓いたのは、主人の死体だったのだ。

凶器のナイフは、すぐ近くの血だまりの中に落ちている。
そして、その傍で書斎のドアの鍵も見つかった。
その鍵は主人が持っていたもので、少年が妻から預かった鍵は、その合鍵だった。
このドアの鍵は取り替えたばかりで、これ以外の合鍵はない。
また、妻は鈴元少年以外の人間に自分が持っていた合鍵を貸したことはなかった。
つまり、現場は『密室』だったということになる。

その後、容疑者である三人のアリバイが調べられた。
主人が最後に目撃された十時から、事件が発覚した十一時までの間のものだ。
マジシャンは前述の通り、一度席を立っている。
使用人はキッチンで夜食の準備をしていたと言った。
妻はゲームを続けており、一度も席を立っていない。
これが、事件発生時の三人の行動だ。

  《図らずも第一発見者となった君は、この事件の犯人ではないかと疑われている。
   この嫌疑を晴らすためには、事件の真相を解き明かさなければならない。
   『真犯人の特定と、犯人が使ったトリックの解明』――それが私からの『最後の謎』だ》

560鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/27(日) 01:25:15
>>558-559

「さいですか……」

早解きに関して過度の喜びはしない。
嬉しくないのではなく、そうするように無意識化でしている。
はしたなくないように、振る舞えるように。

「相性が良かったんやと思うわ」

謙遜。それから微笑み。
そして、最後の謎に取り掛かる。

「なんや、今までとは雰囲気がちゃうけど」

「そやね……」

この場合、席を立っている以上マジシャンが怪しい気もするがそういう単純なものでもないだろう。

「『主人の死体、その死亡時刻』」

まずはそこを確認しておこう。

「『僕が発見した時はまだ死んで間もない状態やった?』」

561『街角のS』:2018/05/27(日) 01:47:42
>>560

鈴元涼は、過剰に喜ぶようなことはしなかった。
それが尊ぶべき美徳であると考えていたからだ。
和装の少年の殊勝な振る舞いは、それを前にした相手にも何かしらの影響を与えたらしい。
その相手――ロダンも、心なしか姿勢を正したように見えた。
人ではなく猫であるため、やはり分かりにくい部分はあるが。

  《その答えは『ノー』だ。『たった今』という感じではない。
   少なくとも、死後三十分以上は経っているようだ。
   それ以上経過しているかどうかは分からないが、それ以下ということはない》

まず死亡時刻を確認するというのは妥当な判断だ。
それと各々のアリバイを照らし合わせれば、何かが見えてくるかもしれない。
あるいは、他の場所に探りを入れるのもいいだろう。

質問の残りは『八つ』。

562鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/27(日) 23:11:11
>>561

「三十分以上」

マジシャンが部屋を出たのは十時ニ十分ごろから数分の間だ。
三十数分前の出来事。まぁ一応殺せないこともない。

「じゃあ次『僕らの部屋からその書斎に行くまでの時間は数分で済む?』」

「それと『全員はその時になにしてたかを見てた人……アリバイ? の保証が出来る人がおる?』」

563『街角のS』:2018/05/27(日) 23:51:30
>>562

まず疑わしいのは、主人の退出後に席を離れたマジシャンだ。
時間的にも、それほど無理はない。
思考を進ませながら、次の質問に移る。
現場までの時間とアリバイの確認だ。

  《まず最初の答えは『イエス』だ。遠い距離ではない。
   数分あれば、君達のいた居間と書斎を往復できる。
   急いで行けば、もっと短縮することも可能だろう》

  《『アリバイの裏付けがある人間がいるかどうか』という質問なら、答えは『イエス』だ。
   主人の妻が、それに当たる。
   彼女は事件が発覚するまでの間、一度も席を立たなかった。
   主人が退出した後は君が一緒にいた。
   君が夜食を持っていく時には、マジシャンが同じ場所にいたことになる》

現場までは、そう離れていないようだ。
そして、事件発覚までの妻のアリバイは、鈴元少年自身によって裏付けられた。
これで妻の容疑は相応に薄くなったことになる。
残る質問の数は――『六つ』。

564鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/28(月) 00:43:27
>>563

「……」

一瞬思いいたる。
見落としていた低い可能性。
つまりは主人の自殺という終わりの形。
不自然なく密室を行う一手だ。

「じゃあ『書斎には扉の他に出入りできるような場所がある?』」

「『使用人のアリバイを証明できる人間がいる?』」

565『街角のS』:2018/05/28(月) 01:24:30
>>564

鈴元少年は考える。
もしかすると、犯人は主人自身ではないだろうか。
つまり、他殺に偽装した自殺という可能性も有り得るのだ。
絶対にないとは言い切れない。
それを否定するような大きな矛盾も、今のところは見当たらない。

  《最初の答えは『ノー』だ。初めに説明した通り、書斎は地下にある。
   窓はなく、出入りができるのは入り口だけだ。
   つまり、君が入室したドアのみということになる》

  《次の答えも『ノー』だ。使用人のアリバイは、本人の申告によるものだった。
   君がキッチンに行くまで、誰も彼の姿を見ていない。
   従って、彼のアリバイを裏付けることのできる人間はいないことになる》

書斎には他の出入り口はない。
よって、犯人が逃げたとすれば、そこから出るしかない。
しかし、部屋の中に鍵が残されていたという問題が残る。
席を立ったマジシャンも疑わしいが、使用人も同様だ。
誰も見ていないことを考えると、マジシャン以上に疑わしいとも言えるだろう。

残る質問の数は、『四つ』。
およそ半分だ。
出す質問も、慎重に吟味する必要があるだろう。

566鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/29(火) 00:02:05
>>565

「……」

他の移動手口はない。
正面突破のみ。密室であるという事実が強固になった。
次の手はどうするか。

「『死体は胸に傷がある以外、他の場所に傷や血がついたりはしていなかった?』」

567『街角のS』:2018/05/29(火) 00:36:46
>>566

殺人の現場は密室状態だった。
犯人が外から鍵を掛けたとすれば、中に鍵を残すことはできない。
また、中から鍵を掛けたとしたら、外へ出ることができなくなってしまう。

しかし、現に犯人は部屋の中にはいなかった。
今しがた考えたように、自殺という線も確かにある。
しかし、はっきり自殺だと断定できる根拠がないのも、また事実だ。

  《それは『イエス』だ。他に外傷はなく、傷口以外に血が付着している様子はない》

  《それから、主人の死体は入り口付近に横たわっていた。
   鍵とナイフも近くに落ちていたが、より正確に言えば、
   床の血だまりとナイフは、死体や鍵よりもやや奥側だった。
   つまり、ドアの前から見て手前に死体があり、その少し奥にナイフと血痕があったということだ》

死体には死因となったもの以外の傷はなかった。
そして、死体と血だまりの位置には、ややズレが存在するようだ。
これが何を意味するのだろうか。

残りの質問数は――『三つ』。

568鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/29(火) 23:20:41
>>567

「んー……」

そこ以外に傷がないというのは中々の状態だ。
半狂乱で襲われたとしたら他に傷がありそうだし。
そうでなかったとしても胸を刺されるという事は相手と向き合っていることだ。
刃物に気付いていればもみ合いになって他に傷もつきそうなものだが。

「……」

気付かなかった可能性はある。
もしくは気付いたが対処しきれなかったか。

「『死体……えっと、ご遺体に引きずられた跡とかはあった?』」

569『街角のS』:2018/05/30(水) 00:22:36
>>568

死因となった傷以外の傷が見当たらない。
決め手はないが、可能性は幾らも考えられる。
問題は、それが密室の謎を解く上で必要なのかどうかだ。

  《『イエス』だ。よく観察すると、そのような痕跡が見受けられた。
   つまり、死体が入り口付近に移動させられた形跡があったということだ。
   死体が本来あったらしい場所は、もう少し部屋の中心寄りだった》

  《仮に……死体が動かされていなかったとしたら、君は躓かなかったかもしれない。
   繰り返すが、死体は入り口の手前に横たわっていて、
   部屋は明かりが消えて真っ暗な状態だった。
   ――だから、君は死体に躓いてしまったのだ》

死体に引きずられた痕跡は確かにあった。
それが真犯人の仕業であることは、まず間違いない。
では、何のために動かしたのか。
何の意味もなく動かすはずはない。
重要なのは、その目的だ。

残る質問の数は――『二つ』。

570鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/30(水) 01:16:33
>>569

「遺体の移動……」

動かした理由だ。
完全に移動させ切ったわけではない。
密室を作れる計画性があるのなら移動させる必要はないはずだ。

「『ご遺体が移動したのは何かを隠すため?』」

571『街角のS』:2018/05/30(水) 02:07:04
>>570

犯人は、何かを隠すために死体を動かしたのではないか。
鈴元少年は、そのように推理した。
『可能性』はある。
それを確かめることは全くの無駄にはならないはずだ。
この質問で事件の核心を突くことができれば、より最良だろう。

  《答えは『ノー』だ。しかし、死体の移動が密室を作り上げる上で重要だったと考えて構わない。 
   その位置――ドアの手前に死体を置く必要があった。
   補足すると……『死体が動かされた理由』は『明かりが消えていた理由』と大きな関わりを持っている》

死体の移動は何かを隠すためではなかったが、それが重要な行為であったことは間違いない。
しかも、『その位置』に置いておく必要があったとのことだ。
部屋の明かりが消えていたことも、それと関係しているらしい。

  《――ところで、覚えているかな。死体を発見した際、君は『夜食』を運んでいたことを。
   そして、死体に躓いて倒れてしまった。
   その時、君は『夜食の乗ったトレイ』を持っていたわけだが……。
   君が倒れたということは、当然それらは床の上に投げ出された状態になっている》

鈴元少年が運んでいた夜食のサンドイッチやジュース。
ロダンが話したように、それらは倒れた時に投げ出されて散乱しているらしい。
この点については、改めて確認の質問をする必要はないように思える。

  《さて……推理の調子はどうかな?
   次が『最後の質問』――最後の問題の最後の質問だ。
   その後は『この事件の犯人』と、『犯人が使ったトリック』に関する君の見解を聞かせてもらう。
   涼――ここまで私の遊びに付き合ってくれた君に敬意を表し、
   君の出す『最後の解答』を楽しみにさせていただこう》

残った質問の数は――あと『一つ』だけ。
次が最後の一手だ。
その後は、この密室殺人の謎を解き明かさなければならない。

572鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/30(水) 23:33:21
>>571

「……罠にかけるためやろねぇ」

動かして電気を消す。
光が消えた状態で動けば自分のように死体にけつまずくことになる。
それで第一発見者となり、密室状態が判明すれば罪をなすりつけられる。
自殺の線は完全に消えている。他殺。では誰がやったか。
妻は暫定的にシロだ。
怪しいのはマジシャンか使用人。
問題はこの主人が部屋にこもるのをあらかじめマジシャンが知っていたかだ。
知らなかったのなら犯人は消去法的に使用人になり、手口を考える段に入る。
しかしこれを質問するとその手口を考える質問が打てないのが事実だ。

「……んー」

「『書斎の鍵穴もしくは鍵に何か付着されたり細工をされた痕跡はあった?』」

573『街角のS』:2018/05/31(木) 00:22:00
>>572

真っ暗な室内で足元に死体があれば、それに躓いて体勢を崩し、倒れてしまう確率は高い。
それで事件が発覚すれば、第一発見者に真っ先に疑いが掛かることになる。
死体が動かされている以上、自殺ではない。
アリバイがある妻を除くと、考えられるのはマジシャンか使用人だ。
そのどちらが犯人なのかを特定しなければならない。

  《それは――『イエス』としておこう。
   鍵穴には特に何もなかったが、鍵は『濡れていた』。
   鍵は赤い液体で濡れている。
   血ではなく、『トマトジュース』だ。
   君が夜食として運んできて、躓いた拍子に落としたものだ》

  《補足すると、今の質問は良いところを突いている。
   トリックの解明において、かなり重要な部分だからだ。
   君が言ったように、電気を消したことと死体の移動は『罠に掛けるため』という点は当たっている。
   それで君は第一発見者となったのだから》

  《しかし……ここには、もう一つ『重要な意味』が隠されている。
   君を死体に躓かせたのは、君に罪をなすりつけるためだけではない。
   このトリックを成立させるためには、それが『絶対に必要』だったのだ》

一通り話し終えると、ロダンは少しの間を置いた。

  《さて――これで質問は終了したが……最後に少しヒントを出そう。
   今まで出てきた情報だけで、密室のトリックを推理することは可能だ。
   そして、そのトリックが解明できれば、同時に犯人も特定することができる。
   そのトリックを仕込める人間は一人しかいないからだ》

ロダンが言うには、現在までの情報だけで、トリックを推理することは可能らしい。
そして、それが分かれば犯人も特定できるという。
この謎を解くには、手口を突き止めてから犯人を特定するという順番が適切かもしれない。

  《では、考えてみてくれたまえ。
   犯人の使った『密室トリック』と『犯人は誰か』――その二つを推理して欲しい。
   そして、君の解答を聞かせていただこう》

574鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/05/31(木) 01:21:11
>>573

「……」

もう一度考える。

・死体は死後30分以上経過している
・居間と書斎は数分で移動できる
・妻のアリバイは立証されている
・書斎は地下にあり他に移動できる場所はない
・使用人のアリバイを立証するものはいない
・死体に他の外傷はない
・死体を動かした痕跡がある
・死体を動かしたのは何かを隠すためではないが、明かりが消えていたことと関係している
・鍵にトマトジュースが付着していた

「……鍵にトマトジュース?」

血ではないのか。
ナイフが死体の近くにあるのは偽装の為だとは思うが、鍵が死体の近くにある理由はなんだ。
血だまりが出来ているという事は恐らく主人はが死んだあと、動かすまではそこに死体があったという事だ。

「マジシャンは多分シロ……奥さんも……」

マジシャンが犯人だとして、数分でことを済ませられるだろうか。
たしかに急げば書斎までの時間は短縮できるが、密室の仕込みが出来るほどの時間があるかという事だ。
最も、密室の種が分かっていないためそうは断定でいないが。

「ちょっとだけ待ってもらえる?」

575『街角のS』:2018/05/31(木) 16:42:24
>>574

鍵には『トマトジュース』が付着していた。
『床の上にあった鍵に鈴元少年が落としたトマトジュースが掛かった』とも考えられる。
現場の状況を見れば、それは不自然な解釈ではない。
しかし、それが必ずしも間違っていないとは言い切れない。
見方を変えれば、そこに別の意味があるとも思える。

床の血だまりは、最初は死体がその位置にあったことを示している。
ナイフが死体の近くにあるのは、それを誤魔化すための偽装である可能性が高い。
では、なぜ鍵が死体の傍にあるのか。
あるいは、それはトマトジュースが鍵に付着していたことと関係しているのかもしれない。
『死体』と『鍵』と『トマトジュース』――この三つの関連性が明らかになれば、推理の助けとなるだろう。

アリバイのある妻が犯人である可能性は限りなく薄く、時間を考慮するとマジシャンにも難しい。
そうなると、残っているのは使用人ということになる。
仮に使用人が犯人だとすれば、どのようなトリックを使って密室を作り上げたのだろうか。
使用人にはアリバイがないが、事件が発覚する前に、鈴元少年は彼に一度会っている。
その時に、使用人が『どこで何をしていたか』を思い返せば、何かが見えてくるかもしれない。

  《――分かった。考えがまとまったら声を掛けてくれたまえ》

ロダンは待つ姿勢のようだ。
考える時間は十分にある。
その時、不意に店の扉が開き、一人の客が来店した。

「いらっしゃいませ」

店の主――スティーヴン・ステュアートが挨拶する。
やって来たのは、二十歳前後の若い女性客だった。
見たところ大学生だろう。
スティーヴンに軽く会釈し、彼女は席に着いた。
メニューに目を通し、注文する。

「何にしようかなあ……。ええっと……それじゃカプチーノで」

「はい、かしこまりました」

注文を受けたスティーヴンが、カウンターの奥へ向かう。
女性は、鞄を膝の上に乗せ、何かを探していた。
なかなか見つからないらしく、しきりに手を動かしている。

「わっ――」

ふと、勢いよく手を引き抜いた拍子に鞄が引っくり返り、逆さまの状態で床の上に落ちてしまった。
その際に、鞄の中に入っていたものが、床の上に散乱する。
鈴元少年の足元にも、その内の一つが転がってきた。
銀色に光る金属製の小さな物体――『鍵』だ。
おそらく自宅の鍵か何かだろう。

「あぁ、またやっちゃったぁ」

言葉から察するに、よく同じようなドジをやるようだ。
そそっかしい性格なのかもしれない。
女性は席を立ち、散らばったものを拾い集めている。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板