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【場】『自由の場』 その1

1『自由の場』:2016/01/18(月) 01:47:01
特定の舞台を用意していない場スレです。
他のスレが埋まっている時など用。
町にありえそうな場所なら、どこでもお好きにどうぞ。

427三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/01/08(火) 02:28:11
>>426

「こちらこそありがとうございます」

    ペコリ

「その時は頑張ります」

「その時のために、今は今を頑張ります」

千草は鉄先輩の願い事は分かりません。
鉄先輩も千草の願い事は分かりません。
だけど、願い事を叶えたいと思っていることは同じです。

「お手数をおかけします」

「知ってる場所まで、そんなに遠くないと思います」

「ここまで歩いてこられたので」

町の方を見つめて答えます。
あっちに学校があります。
家もあります。

「鉄先輩にお任せします」

「しばらく歩いていたら、分かる場所が見つかると思います」

     テク テク

ゆっくりとした足取りで歩き出します。
そして、鉄先輩の顔を見上げます。

「鉄先輩の妹さんのお話が聞きたいです」

「――してくれますか?」

お互いのことを知るために色々な話をするのが大事だと、
小銭を拾ってくれた宮田さんが教えてくれました。
それに、鉄先輩は立派な人です。
だから、立派な鉄先輩の妹さんの話は気になるのです。
他の人達から、見習えるところを見習いたいです。
そうして少しずつ積み重ねていけば、目標に近付いていけると思います。

428鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/01/08(火) 02:59:21
>>427

「分かった、学校の近くで目立つ建物にしようか」

道に迷ったといえど、流石に右も左も分からない状態ではないか。
おおよその方向は分かっているなら、後は自分がそちらへ向かう道を歩けばいいのだ。
しかし道すがらの話として提案されたのは、妹の話だ。
思わず、眉根を寄せてしまう。

「妹か…アイツは君と違って、あまり立派なヤツじゃないぞ」
「朝陽(あさひ)はワガママで感情的だし、すぐに手が出る方で…」

「…まぁ、しかし素直で裏表はないし、情にも厚いタイプだよ。友人も多いみたいだ。君の二個上だな、中等部三年生」
「特技はピアノ。身内へのひいき目かもしれないけど、結構上手いと思う」
「………今は、ちょっと腕をケガして演奏できないんだけどな」

竹刀袋を握る手に力がこもる。
自分があの店へと赴くことになった、その原因だからだ。とはいえ、彼女に話していたずらに怖がらせることもあるまい。

「君のことを話しておくよ。きっと立候補の際の支援者、その第2号になってくれるはず」
「もっとも、オレより先にもっといるのかもしれないけどな」『ハハハ』

そんな他愛もない話をしながら、のんびりと道を歩いていく。
鉄にとって守りたいものが、人が、また一つ増えた日だった。

429稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2019/01/15(火) 19:58:36

星見町で密かに熱を帯びるスポットといえば、
通りに根を張るように存在する『地下アーケード』。

アンティークグッズやジャンクショップ、
特殊な専門店、怪しげな異国料理屋など、
表通りや歓楽街ではあまり見かけないような、
どこか『マニアック』な店が並ぶ地帯で……

「…………」

        トコ トコ

恋姫のような『子ども』は、わりと目立つ事になる。

430降神志一『プラガーシュ』:2019/01/18(金) 01:48:10
>>429

しょぼくれた顔の男がいる。
目にかかるくらいの癖毛と、黒縁の眼鏡。
背中を丸めて俯き気味に歩いている。

「……」

(あれ、あの人どっかで見たかな……)

ふと、前から歩いてくる子供を見た。

431稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2019/01/18(金) 02:10:38
>>430

「………………??」

(なんだあいつ……僕の顔見てるな。
 見るからにオタクっぽいし…………
 ファンか……? ただのロリコンか……?)

         トコトコ
               …ピタ

距離が詰まり切る前に、
恋姫の方から脚を止めた。

「……」

(エンカは避けたいけど……
 この距離で、目ぇ合っちゃったし、
 ファンならスルーするのはヤバいよな……)

    (でもロリコンならもっとヤバいぜ……)

一仕事終えた帰りで、自意識が高まっていた。
あるいはこの場所特有の『アングラ』な空気が、
恋姫の中のそういう成分と反応したのかもしれない。

「……何、僕の顔になんかついてる?
 あー……僕の方から話しかけたから、
 『声かけ事案』にはならないわけだが……」

           「……気のせいなら、すまん」

結局、声を掛けることにしたのだった。

432降神志一『プラガーシュ』:2019/01/18(金) 23:10:01
>>431

「いや……」

(声かけられ事案だな。まぁ、多分、そっちが声かけられたって言えば警察は信じるけども)

アングラな空間であることはよく知っている。
なので、ここで何か起きると良からぬ考えをされることもある程度予測できる。

「どこかで見た顔だと思ってね」

「そういうことよく言われない?」

433稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2019/01/19(土) 00:23:51
>>432

「……ふぅん……じゃあ何で……え?」

    アンダーグラウンド
まさに『地下の世界』なこの商店街は、
当然、『水面下』の悪いウワサにも事欠かない。

恋姫としても、それは承知している。

「……え、やばぁ〜っ」

「それ……ナンパのテンプレトークじゃん。
 『マンガ』でしか聞いた事なかったわ」

           ニタァ

「流石にナンパされた経験はそんなにないぜ……
 『YESロリータ・NOタッチ』って言うじゃん。
 僕とか、常識的に考えて完全アウト…………えひ」

からかっているのかなんなのか、
陰気な笑みを浮かべて妙な事を口走る。

        「で、……どこで見たと思う?
         『夢で見た顔』とかはNGで」

逃げ出してもよかったのだが、
害意という物を感じない気がするし、
なにより――――自分も無力ではない。

いかにもひ弱そうな少女が妙に自信ありげに話す姿は、
奇異に映るかもしれないし、『イキってる』だけに見えるかもしれない。

434降神志一『プラガーシュ』:2019/01/19(土) 01:37:01
>>433

(やべぇ、何だこの人)

(リアルにこんな人なのか)

「ナンパじゃないよ……」

ちょっと眉をひそめて言葉を返した。
そういうことをするタイプではない。

「テレビとかで見たかな……現実の……」

435稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2019/01/19(土) 01:56:53
>>434

「えひ……違うならいいや。
 変な事言って悪かったな……」

(なんか……普通のやつっぽいな、こいつ。
 ファンってわけでもなさげだし……
 最近変なヤツのが多かったから麻痺してたか)

どこまで本気なのか分からないが、
妙な口調は完全に演技という風には見えなかった。

「テレビ………………テレビかぁ」

         「……お正月に見た?
          ……『地方ローカル局』で?」

    スッ

小さく手ぶりしたジェスチャーは、『餅つき』だ。
すぐにポケットの中に手を戻し、笑みを浮かべる。

「今のは、超イージーモードの特大ヒント。
 当たっても賞品とかは無いけど……えひっ」

そういえば――――そんな番組を、観たかもしれない。
地元のアイドル(らしい)少女たちが『神社』で餅をついていた。気がする。

                 ・・・この桜色の瞳も、そこにあった気もする。

436降神志一『プラガーシュ』:2019/01/19(土) 02:27:13
>>435

(まぁ、前にあったやつよりは全然普通……)

人に会うといいことも悪いことも起きる。
そういうのは面倒だがそういうことが人生に厚みを持たせる。
だから無下にしにくい。
まぁ、無下にするが。

「あぁ、見てたよ」

(その番組のエキストラ落ちちゃったけど……)

「稗田こいひめさんだろう? Veraisonの」

437稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2019/01/19(土) 02:51:45
>>436

「えひ、当たり……今日は、オフだけど……」

           「……ん?」

撮影現場で会った事もない。
顔も、見た記憶はない。

(先入観抜きで……普通にしゃべると、
 なんか……なんだ……引っかかるな……)

さっきまでは何も感じなかった。
それくらい『僅かな』印象だった。

「お前……あれ、なんか、喋った事ある?
  ……えひ、もちろんナンパじゃないけど」

「……なんだろ、まあいいや……?」

握手会とかで似た顔はいた気はするが、
流石に『知ってる顔』なら気づけるのに。

声も聴いた事はないのに。
『何かわずかに引っかかる』気分があった。

「……とりあえず……見てくれてありがとな。
 ……面と向かって言うのも……あー、照れるけど」

                 「……えひ、礼は言うぜ」

438降神志一『プラガーシュ』:2019/01/19(土) 03:06:44
>>437

「喋ったことはなくても、会ったことはありますよ」

「多分、覚えてないと思いますけど」

目を逸らし、少し硬い口調で答えた。
どこか投げやりな雰囲気があった。
多分本人にはそんなつもりは無いのだろうが。

「いえ、ファンなので」

(それが理由でこの世界に来たので)

(それだけじゃないけど)

間違いはないと思いたい。

「応援してますこれからも」

(一緒に仕事がしたいので)

439稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2019/01/19(土) 03:57:09
>>438

「あー…………」

「…………握手とか、した事あったっけか。
 ライブ来てたりとか…………あー……ごめん。
 ファンみんなの顔、覚えるくらいじゃないと、
 ……『みんなのお姫様』としては不合格だわな」

全てのファンの顔を覚えていられたら、
それが本当に理想的な偶像なんだと思う。

稗田こいひめは『ローカルアイドル』であり、
そんな狭い世界も、全てを理解してはいなかった。
投げやりな返しで、それを指摘されたように思えた。

「そんな僕でも……応援してくれるならさ……
 僕はそれに……期待に応えるよ。
 えひ、ちゃんと出来るか分からないけど」

「…………ありがとな」

            「……えひ、本気だぜ?」

だから、せめて、覚えておこうと思っていた。
この青年の言葉は……何か熱を感じるから。

「……今日オフだし、特別扱いは出来ないから、
 こいひめとしてサービスとかは出来ないけど」

           「僕は……稗田恋姫は、お前が……
            僕のファンだって事、ちゃんと覚えとく」

440降神志一『プラガーシュ』:2019/01/19(土) 19:18:15
>>439

「あーライブ入ったことある、かな」

「現場でも見た事あると思います」

(がっつり会ったのは今日が初めてかな)

この場合の現場とはライブ会場ではなく、仕事の現場で間違いない。
いつだったかすれ違っていたかもしれない。

「不合格なんてことはないです!」

不意に大きな声が出て、自分でも驚いた顔をした。
慌てた素振りを見せずに口を一旦閉じる。

「無理だし、全員覚えるのは。そういう心意気っていうのは大事だけど」

「いい事ばっかりじゃないし」

良いファンも悪いファンもいる。
良くも悪くも熱狂的だ。

「……覚えてくれてたら、ありがたいです」

「励みになる」

441稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2019/01/19(土) 23:11:44
>>440

「そっか……まあ、ライブ来るだけがファンじゃないし、
 …………ファンだって言ってくれるやつは、大切なファンだよ」

「えひ、またどっかで見かけたら……応援ヨロシクな」

『降神』の事は知らない。『現場』で見たかもしれないし、
いわゆる養成所に足を運んでレッスンを受けたこともあるが、
恋姫は『芸能人の卵の男』に、さほどの興味を持って接して来なかった。

なにせ自分達以外でアイドルといえば、
よほど親しい面々を除いてしまえば、あとは、
『スマホゲーム』のキャラクターというくらい。
まして『男性芸能人』に至っては『推し』を聴かれて、
思わず言葉に詰まってしまうほどに『遠い』存在だ。

「僕も応援しとく……何に励んでるかは聞かないけど」

           「……ファンのする事だからな。
            僕が応援してやれるなら、してやんよ」

恋姫は『華やかな天上界』でなく、『光輝ける舞台』として芸能界を見ていた。
そして、その輝きが自分の『ファン』たちの心を照らす太陽になるなら、とてもうれしくて。

「えひ」

・・・笑みが浮かぶのだ。

「…………それじゃ、僕はそろそろ買い物してくるよ。
 次会う時は……僕はステージの上かな。えひ、なるべくデカいステージがいいよな」

                 「なるべく、いい席で見てくれよな……んじゃ」

442降神志一『プラガーシュ』:2019/01/20(日) 01:06:35
>>441

「応援してます」

多分これからも応援する。
が、この距離が縮まることはないのかもしれない。
確率からいえばそちらの確率の方が高い。
悲しいことだが、現実は花開かぬものの方が多い。

「はは」

励む。
何に励む。

(当然、芸事)

迷いなし。

「はい。大きなステージじゃなくても行きますけど」

「……さようなら」

去っていく人の背中にそう告げた。

(次は舞台袖にいられたらいいな)

443美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/01/23(水) 20:48:54

ある晴れた日の午後。
この街の何処かで誰かが『ラジオ』を聴いている。
スピーカーから流れてくるのは、カナリアを思わせるような明るく澄んだ声だ。

「――――今日ご紹介するお店は、星見街道商店街南口から徒歩5分っ!
 口コミで人気上昇中のベーカリー『Milky Way』です!」

「こちらは『クリームパン専門店』なんですねぇ〜。
 定番のカスタードクリームやホイップクリームから始まって、
 チーズクリームやチョコレートクリーム、
 メープルクリームやコーヒークリームなどなど、
 豊富な種類のクリームパンが選べるお店となっていますっ」

「お店の奥にイートインスペースが併設されていますので、
 そこで焼き立てのパンを食べる事も出来ますよぉ。
 お好みのパンとセットでドリンクも頂けちゃいます!
 ちょっとした休憩場所として、カフェ代わりに立ち寄るのもいいですねぇ〜」

「中でも特に人気なのが、その名も『幻のクリームパン』ッ!
 厳選された素材を惜しみなく使った、オーナーこだわりの特製クリームパンで、
 こちらは一日限定20個なのですが、
 いつも販売と同時に完売してしまう大人気商品なのです!」

「さて――この『幻のクリームパン』なのですが……。
 なんと今日は、私くるみの手元に届いております!
 そういった訳で、この味をリスナーの皆様にレポートしたいと思いますッ!」
 
   「では、早速…………」

           ムシャッ

          「――はむ……おぅふ……」

「――まずですねぇ……口当たりは思ったよりも軽くて、とても食べやすいです。
 糸が一本ずつ解けていくような甘さと言いますか、
 ふわっと香るような甘さと言いますか……」

「だけど、その後に来る味わいは凄く濃厚ですね。
 こう『ドンッ!』と響く感じとは違って、徐々に染みてくるような……。
 それが頂点に達した瞬間に感じられる濃厚さ!いやぁ〜、絶品ですねぇ〜」

「常日頃から思っておりますが、味を『声』だけで皆さんにお伝えするのは、
 なかなかどうして『難問』なんですねえ。
 どう表現すれば、私が感じているものを上手いこと伝えられるのかと……。
 ああッ、なんとももどかしい!」

「さてさて、くるみの私情は放っておきまして、引き続きレポートをお送りしますっ!
 意外にも、後味はサッパリしていますねえ。
 しっかりとしたコクがあるのに、しつこさみたいなものがないんですよぉ」

「濃厚でありながら、口当たりや後味は爽やかで、
 相反する要素を見事に両立させた逸品ですねぇ。
 例えるなら、抑揚のある奥深い味わいが、
 口の中で『メロディー』を奏でているとでも言いましょうか……」

「評判なのも頷ける納得の美味しさです!私くるみも大満足ですねっ!
 ただ……一つだけ『欠点』がありまして……」

「一回食べるとハマっちゃって、毎日でも食べたくなっちゃうんです!
 だけど、一日限定20個ですからねぇ〜。
 毎日買いに行くのは、ちょっと大変かもですねっ!」

「ご紹介したクリームパン専門ベーカリー『Milky Way』さんは、
 星見街道商店街南口から徒歩5分。
 限定商品の他にも、様々な種類のクリームパンを取り揃えておりますッ。
 お近くにいらした際は、是非お立ち寄り下さいっ!」

「――――続きましては、このコーナー!
 リスナーの皆さんと私くるみがお届けする『ツーショット・トーク』ッ! 
 本日のテーマは『オススメのお店』ですっ!
 あなたのオススメショップを、是非ともくるみに教えて下さいねぇ〜」

       プルルルル プルルルル

「さぁ、リスナーの方(>>444)と電話が繋がったようです。
 では――――」

           ガチャ

「こんにちはぁ〜!!
 『Electric Canary Garden』パーソナリティーの『美作くるみ』です!!」

444美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/02/01(金) 17:35:56
>>443

「――――なるほど〜ッ」

「星見街道に店舗を構える老舗洋菓子店『黒猫』さん!
 『チョコレートケーキ』がオススメとの事ですッ。
 ラジオネーム『スウィート・ダーウィン』さんからでしたッ!」

「いいですねえ〜、私も食べたくなってきましたよお。
 今度はソレを頂けませんかね、ディレクター?
 あ、ダメですか?自分で買いに行けと。アハハハハ……」

「気を取り直して、ここで一曲参りましょう!
 今日のリクエスト曲は――――」


【撤退】

445御徒町『ホワイト・ワイルドネス』【29】:2019/02/03(日) 21:24:27
「なぁぁ〜〜〜んだぁぁぁ〜〜〜〜〜〜ッッ!?

 そこはねェ、『優先席』ではないかと!
 私は言ってるんですよ、それがお解りにならないかァ?

 私を無視して公衆の面前でシコシコシコシコ……
 ――――見られたものじゃあありませんよ!」

夕方、『星見町』方面へと向かう電車の中。
多少は混み合う車内、『優先席』に座った若者に対し、
唾を飛ばしながら激を飛ばす、いかにも頭の固そうな老人が一人。

    「私をねェ、誰だと思ってるんですか!?

     そうでなくても、老人を前にですねェ、
     シャンと立って、席の一つでも譲ろうかと、
     そういった『配慮』がスジってものじゃあないんですかァ!?」

『スマートフォン』でパズルゲームをしていた若者は、
面倒臭そうに睨みを利かせながら、目の前の老人をシカトしている。
言ってることはともかく、言う通りにするのは「シャク」だと言ったところか。

誰か一人、勇敢な乗客が仲裁してくれれば、上手く進みそうだが……

446御徒町『ホワイト・ワイルドネス』【29】:2019/02/04(月) 22:54:22
>>445
「よくもまぁ、ナメたマネをしてくれたなァ!

 アンタもねェ、私のゲームに出演させてやりますよ!」


         プシュゥゥ――――z_____


                 「ダァ、  シャァァリヤス」

不穏な捨て台詞を吐き、老人は忌々しげに乗客全員を睨み付け、
足早に駅のホームへと降りて行った。

447鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/02/08(金) 00:42:09
怪しげなショップ街こと『地下アーケード』。
その中の一つ、『骨董品店』の前にて一人の学生が立っていた。
竹刀袋を肩にかけたその青年は、物欲しそうにトランペットを見つめる黒人少年のような雰囲気で、ウィンドウを眺めている。

「・・・・・・・・・・」

448鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/02/08(金) 01:13:44
>>447

         ガラガラ

ドアが開いて。

              スタ
                スタ 

『エコバッグ』を持った女……少女?が出て来た。
金色の瞳と、左右で後ろ髪の長さの違う黒髪。
アンティーク趣味を思わせる白中心の服装。

・・・・・『骨董マニア』かなにかだろうか?

「…………? どうしたの?
 ドアなら見ての通り開いてるけど」

そして声を掛けて来た。鉄よりは、多少年上に見える。

449鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/02/08(金) 01:30:12
>>448

「ああ、いえ・・・」「───ッ!!」

ただのウィンドウショッピングです、という二の句を鉄は継ぐことができなかった。
店から出てきた女性の特徴的な容姿が珍しかった。それもある。
そもそも若い女性が、このような『骨董品店』に何の用があるのか?そんな疑問も出てきた。
だが、何よりも鉄の言葉を妨げるのは、この相手が『女性』だからだ。

「あっ」「あ」「ええと」『サッ』

その金色の瞳と目を合わせるも、すぐに逸らす。
質問をされたのだから返さなければと思いながらも、一日中砂漠を歩いたかのような、掠れた声しか出ない。
心臓の音がうるさくて、冷静な思考ができなくなる。
そんな鉄が声の代わりに取った行動は。

「・・・・・・・・・・」

『スッ』

震える指先で、店頭のディスプレイを指差すことだった。
そこにはいくつかの、『日本刀』が飾られていた。

450鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/02/08(金) 02:06:34
>>449

「??」   「……ああ」

鳥舟学文は首を傾げた。
が、すぐに笑みを浮かべた。

「なるほど、なるほどね。
 日本刀――――かっこいいよねえ」

         ススッ

「ボクは詳しい訳じゃあないんだけどさ」

鉄からやや距離を置いて、
ディスプレイに並んだ刀剣を見る。
視線を合わせたりは、しない事にした。

「ウィキペディアだったか本だったかで、
 作り方を読んだことがあったんだよ。
 現代ではもう再現できない技術だとか、
 それがつい最近再現出来るようになったとか。
 そういうのが、まあ、けっこう好きなんだよね」

このまま立ち去るのはかえって気まずいし、
『こちらから話に行く』という方向性を選んだのだ。

だから返答は求めていないし、笑みも曖昧なものだ。

451鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/02/08(金) 02:33:25
>>450

「・・・・・・・・・・」

鉄は内心、安堵の息を吐いた。
言葉ですらないこちらの挙動から意思を汲み取ってくれた、この女性の優しさに感謝する。
目を合わせないのも、距離を置いてくれるのも、とてもありがたい。
ほんの少しずつだが、心が落ち着いていく。

「・・・・・何度も折り返して、鉄から不純物を取り除く作業」
「好きなんです」「そういうのが」

横を見ないまま、独り言のように呟く鉄。
そうした地道な作業の繰り返しの先にできる、日本刀の美しさと強靭さ。
それに心を惹かれる、というような事が言いたかったようだが、ままならない。

(もっとも、鑑賞しに来ただけではないけれど)

「あ」「あの」

「あなたは、何を」

今度は、鉄の方から問い返す。言葉が足りなくて、やや不躾になってしまったかもしれない。

452鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/02/08(金) 03:11:06
>>451

「わかるよ、なんとなくだけど」

深い追及はしない。
言わんとする事全部は分からなくても、
なんとなく分かるし……そこに謎はない。

「ボク?」

「ボクはねえ、わりと『アンティーク』が好きなんだ。
 いや、マニア、ってわけじゃあないんだけどね」

               ゴソ

「こういう置き物なんて心を惹かれちゃうんだよ。
 ああ、下にあるのは『仕事』だから気にしないで」

エコバッグを軽く広げて中が見えるようにする。
土台のように入った『梱包』済の商品の上に、
いくつかの『動物』を模した『置物』が確かにあった。

「要は、仕事のお使いのついでに欲しい物を買ってたの」

                 「内緒だよ、これは」
     スッ

置物を差していた指を自分の口元に動かし、
『内緒』の意志を悪戯っぽいジェスチャーで示した。

453鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/02/08(金) 03:40:24
>>452

>「ボクはねえ、わりと『アンティーク』が好きなんだ。
> いや、マニア、ってわけじゃあないんだけどね」

「・・・・・意外、です」「お若いのに」

それを言ってしまえば鉄もなのだが、青年の感覚からすると
男が刀剣に憧れを抱くのは分かるが、この女性のような若い人が骨董品を好むのは、珍しいようだ。
彼女が『エコバッグ』を開けてくれたのを感じて、視線をそちらへと向ける。

(下の商品は仕事用…この女性が買いに来たのは、動物のような『置物』の方か)

なるほど。理解できたが、それにしても珍しい趣味だな、と鉄は思った。
動物が好きなのか、こういった和風の置物が好きなのか、あるいは両方だろうか。
と、そのバッグを指していた指が移り─────女性の口元で止まって、微かに笑った。

『ボッ』
「えあっ」「は」

「・・・・・・・・・・はい」

顔を真っ赤に染めた鉄は、思わず顔を背けて頷いた。消え入りそうな声が共に出る。
我ながら情けない、と心の中で自嘲する。何度か会話をしたことがあるクラスメイトなら多少はマシだが、
初対面の女性ともなると、いつもこんな風になってしまう。
例えばあの女性、『音仙』に聴いて頂いた時のように。他に緊張、あるいは集中するものでもあれば何とかなるが─────。

(…この女性との会話が終わった後でもいいが。あまり長居をして、不審に思われてしまうのも困るし)


突如、学生服の青年の腕に重なるように、スタンドの『ヴィジョン』が発現する。
そしてその腕は、ショーウィンドウのガラスへと手を伸ばした。

「お仕事…とは、その、古物商とか、ですか?」
「いえ、仕事用のものも、こちらで購入されていたなら、ですが」

454鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/02/08(金) 21:11:01
>>453

「スマホも持ってるし、ゲームとかもするよ。
 化粧っけだって見ての通りなくはないしさ。
 だから、あくまでの趣味の『一環』ってところかな。
 あんまり、普段人にアピる感じの奴ではないんだけど」

「ボクは夜にね、こういうのを持ってね、
 ちょっと考えたりするんだよ……
 『なんで嘴がへんな色なんだろう』とか、
 『なんで服を着せてみたんだろう』とかね。
 いまさら答え合わせできない問題をさ」

        「そういうロマンが好きなんだな」

赤面をからかうほど『子供』でもない。
相手も『思春期』なのだろうし――
女子と話すのが苦手な男子はいるものだ。

もちろん、『悪い気』もしない。

「……」

「ん、骨董品が仕事ってわけじゃないんだけどね。
 『新品のデジタル時計』を置いちゃうと、
 しまらないような職場にいるんだよね。『巫女』なんだ」

「うちの神社の時計が、落ちて壊れちゃってさ。
 代わりにいい感じに『古い』のを買いに来たわけ」

というと、口元にやっていた指を下ろして、
ショーウィンドウの硝子を緩やかに指さす。

「それで……そう。ボクは『巫女』さんなんだけど。
 そうだからか、ちょっとした『霊感』ってやつがあってね」

              クス…

      「そこに『落ち武者』がいるって言ったら、どうする?
        いや、武者……っていうよりは『騎士』なのかな」

その笑みは興味とも、挑発とも、緊張とも取れる。入り混じった笑みだ。

455鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/02/08(金) 22:30:45
>>454

「なるほど…」

流石に浮世離れしている、とまではいかないらしい。
自分もスマホを使うし現代人だと思うが、時代劇も見るし和菓子は好きだ。
しかしそのような哲学的な問いは、自分のような若輩者にはなかった。
答えの出ない問いを楽しむというのは、なんというか、大人な感じだ。

「─────『巫女』」
「確かに」「便利なのは分かりますが、神社に電子機器が置かれ過ぎるのはちょっと違和感がありますね」

光景を想像して、思わず破顔する。とはいえ、顔はショーウィンドウに向けたままだったが。
スタンドを扱うことに集中すれば、段々と普段のように話せてくる。
そしてガラスの中の『日本刀』に掌の照準を合わせたところだった。


>「それで……そう。ボクは『巫女』さんなんだけど。
> そうだからか、ちょっとした『霊感』ってやつがあってね」

「『霊感』…ですか?」

『ピタリ』

思わず『シヴァルリー』の手が止まり、巫女さんの足元へと視線を移す。
これが友人の言葉なら一笑に付すところだが、年上の女性の言葉だ。
改めて、目の前のガラスケースに目を移す。
だが、そこにやはり霊はいない。自分の目では見えないのだろうか?
そこにはただ、『シヴァルリー』がいるだけだ。そう、騎士のような外見の自分のスタンド─────。

「・・・・・」「まさか」
「いや、貴方はッ!」

「『スタンド使い』ッ?!」

金色の瞳を見ながら、思わず叫ぶ。

456鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/02/08(金) 22:52:04
>>455

「参拝客がガックリしちゃいそうだしねえ。
 『雰囲気』だけで食ってるわけじゃないけど、
 雰囲気を食いに来てる参拝者さんもいるしさ」

「ボクは最近毎朝スマホの目覚ましで起きてるけど、ね」

趣味が古いと思われたくないのか、
デジタル機器も使っているアピールだ。

ともかく――――指先は『シヴァルリー』の、
頭の先から足先までをゆっくりと焦点にしていく。

「あんまり見つめないでよ。照れちゃうぞ?」

そう言いつつ目は逸らさない。

         「……『スタンド』」

「『スタンド』ね……その言葉は、知ってる。
 ボクのそれが『ヴィルドジャルタ』って名前なのも、
 なんとなく――――『直観』というか『神託』というか」

             「わかる」

        ニィーーーッ

「ま、出し方は、分からないんだけどね。
 だから『スタンド使い』っていうのは買い被りだ」

「ただ『見えるだけ』のボクにはね」

困ったような笑みを浮かべた。
それからその瞳を、『騎士』の目に合わせる。

「こういうのを、ボクも出せるのかもしれない。
 そう思うとちょっとテンション上がっちゃうわけだよ。
 気合を入れて出してるの? それとも『道具』でもあるの?」

                   「気になるんだよね」

457鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/02/08(金) 23:22:16
>>456

『スタンド使い』。
その言葉の意味を知らないものには、それだけで何故ここまで驚愕しているのか理解できないだろう。
しかし、その意味を知るものならば。見えない力で不可能を可能にする者だと分かれば、この反応も納得だろう。

「・・・・・」

もちろん、それだけで目の前の女性が危険とは限らない。どんな力も扱う者の意思次第だ。
だから、それを見極めなければならないし、同じように彼女にも伝えなければならない。
自分に敵対する意思はないと。


>「ま、出し方は、分からないんだけどね。
> だから『スタンド使い』っていうのは買い被りだ」

「・・・・・え」

だから、そんな鉄の意気込みは空振りに終わってしまった。
そんな事例を聞くのは初めてだったが、そういう事もあるのだろうか?
『音仙』に色々と教えてもらった自分には、分からない。

「その…どういう経緯で目覚めたんですか?誰かに、目覚めさせてもらったとか…」
「出し方は…オレの場合なんで、参考になるかは分かりませんが」
「心に『覚悟』を決めて、しっかりと出す『意思』を露わにすれば、この『シヴァルリー』は出せます」

458鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/02/08(金) 23:58:43
>>457

「『誰かが目覚めさせてくれる』ものなの?
 ボクは――――いつの間にか目覚めてた。
 いや、忘れてるだけなのかも、しれないけどさ」

「『意思』……」

          ググ
                バッ

          「ハッ!」

手を強く握りしめて、掛け声と共に開いた。

「うーん、気合を入れたつもりなんだけどね。
 『覚悟』ってやつも、決めてるつもりなんだけど」

何も、出ていない。
見た目が小さいスタンドとかでもなく、『何もいない』。
ヴィジョンが無いのか、目に見えないのか、
それとも――――何か『条件』が揃っていないのか。

「どうにも、あまり『都合のいい』力じゃないらしいね」

そう語る声は、悲観の色はなかった。
エコバッグを持ち直して笑みをもう一度浮かべる。

「『ヴィルドジャルタ』の事……もうちょっと考えてみようかな。
 『出ない』なんてことは、きっとないんだろうからさ、
 まあ……寝て起きたら全部『神託』されてるかもしれないけど」

         「君のおかげで『目標』が一つできた。
          そういえば『名前』を聞いてなかったかな」

                            トリフネマアヤ
「ああ、先に言うよ。ボクは『烏兎ヶ池神社』の『鳥舟学文』。よろしくね」

459鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/02/09(土) 00:34:23
>>458

「そういうパターンもあるんですね…」
「オレの場合は、とある『女性』に力を貸して頂いたので」
「ひょっとしたら、彼女なら何かを知っているかもしれませんが…」

一応『音仙』の居場所を伝えておくべきだろうか。あるいは念のために、『同行』していくべきか?
しかし、未だに能力の分からないこちらの女性ならば、危険はないか。

「・・・・・『見えない』」
「いえ、あるいはそういう『能力』なのかもしれませんが…」
「あなたにも動かしている感覚がないとなると、何らかの『条件』が必要なのかもしれません」
「『見えるだけ』…そういうことはないと思います」

推測でしかないが、自分の意見を述べる。
特にヴィジョンが出ないことを悲しんでいる様子はないが、少しでも希望になってもらえたなら。

「鳥舟さん、ですね」
「オレは清月学園高等部二年生。鉄 夕立(くろがね ゆうだち)です」
「もしよろしければ、連絡先を交換させて頂ければ」
「能力を確かめるのに、他の『スタンド使い』が必要になるかもしれません」
「もちろん、『スマートフォン』で」

そういってスマホを取り出す。
LINEで『音仙』に関する情報も後で送っておくとしようか。

460鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/02/09(土) 01:23:35
>>459

「そういう人間もいるわけなんだね。
 世の中広いな……って思う事は多いけど、
 スタンドの世界は、もっと広いのかな。
 広ければいいってものでもないけど」

『スタンドを与える女』。
何が目的なのか、何者なのかは知らないが、
それに会えば『ヴィルドジャルタ』も分かるのだろうか?

「心当たりは多いに越した事ないわけだし、
 また色々教えてよ『夕立(ゆうだち)』くん。
 もちろん――――『LINE』で、ね」

             ニィッ

「ま、別にメールでもいいけど。
 『SMS』はあんまり見てないからそれ以外ならね。
 もちろん、話す方が早いなら電話でもいいよ。
 あ、かける前にラインで確認とかしなくていいからね」

「そういうことしろって、言うヤツがいるらしいからさあ」

シックなイルカ柄のカバーに飾られたスマホを差出し、
とりあえずの連絡先交換を意外なほど手早く済ませた。

躍る指先は、やはり『古くないぞ』と主張する意図を感じた。

「それじゃ、ボクはそろそろ帰ろうかな。
 ああ――――『刀』をどうする気だったのかは、
 次までに考えとくからさ。また今度教えてよ!」

            「『教会』の『懺悔室』じゃあないけど、
             悪いハナシでもヒいたりしないからさ」

空の色が変わるような時間ではないが、偶然の出会いにしては話し込んだ。

「またボクからも連絡するよ、それじゃあね。
 あ、もし気が向いたら参拝来てね! ……じゃ!」

幸いにして、話の続きは電波に乗せていくらでもできる……止めないなら、鳥舟は立ち去る。

461鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/02/09(土) 01:58:08
>>460

「力になれることがありましたら、喜んで」

(スゴいな…むしろオレよりも『今ドキ』なんじゃあないか?)

彼女、鳥船さんの言葉に頷きながら、内心思う。
自分は『LINE』はやってはいるが、『SMS』に関してはかなり疎い。
友人に言われてアカウントを作ってみたものの、基本的に見る専門だ。連絡手段として使ったことはない。
少し冗談を込めて『スマートフォン』で、と言ったが本当に彼女は『古くない』人間のようだ。

「ああ、いえ、もちろんです」
「親に対して恥じるようなことをするつもりはありません」
「今度お会いできた時に、お話させて頂きます」

軽く頭を下げる。
実際にこの場で見せてもいいが、自分の能力は少々剣呑だ。
直に見せるより、こんなことをしたと後日口頭で話す方が良いかもしれない。

…というか、今更思ったのだが、女の子ならともかく、いきなり『女性』に対して連絡先を交換を持ちかけたのは軽薄だったのでは?
『スタンド』の話に集中し過ぎていたが、冷静になっていくと、急に羞恥心が込み上げてきた。
また赤面しながら、その金色の瞳から目を外してしまう。もう少し手順というのを踏むべきでは?
手順なんてものは全く分からないが。いや待て、そもそもそういう目的ではなくて───。
などとテンパっている内に、彼女の姿がやや遠くなっている。

「あっ、えっと、その」

「………はい」

「また、是非とも」

小声で呟き、会釈をして、背中を向けた彼女を見送った。
実際、自分にはまだ参拝しても叶ってない願いがある(>>426)。
また願掛けにいくなら、今度は『烏兎ヶ池神社』へと行くのもいいだろう。
…もっとも、その場合はもう少し女性に対して慣れておいた方がいいかもしれない。
そんな事を思いながら、『シヴァルリー』を改めて『日本刀』へと向けた。






(『扱い』は申し分なし。『携帯性』も悪くはない)
(けれども『値段』と、見つかった時の『危険性』が問題だよな…)
(それを言ってしまえば、『包丁』や『ナイフ』でも同じだが)

『バキィンッ』

(…というか、これ片方ニセモノじゃないか)
(とりあえず、ここも『メモ』に書いておこう)

(お借りしました、ありがとうございました)『ペコリ』




そして数分後、鉄も『骨董屋』の前から去って行った。

462御徒町『ホワイト・ワイルドネス』【10】:2019/02/22(金) 21:41:36

    「あ゙ 、あ゙ぁぁ〜〜〜〜〜ッッ!?」


    「だからねェ、体調が悪いと、言ってるじゃあないですかァッ

     急に、ってねェェ〜〜〜ッッ
     私みたいな年寄りを捕まえてねェ、
     ナメたことヌカしてンじゃあないですよぉ!」

    「だからこうやって、連絡してやってるんじゃあないの! ん!?
     ガキ共と違って、わざわざ『電話』を寄こしてやってるんですよ!」

    「ちょっと連絡が遅れてからってねェ、
     鬼の首でも取ったかのように、よくもまぁ粋がってくれましたねェ!」

『駅』のロータリーの前、ガラケーを片手に、
デカい声でがなり立てる老人がいる。

    「ええッ!?  『チューター*1』風情がァ!
     電話で好き勝手言えるなら、直接来てみなさいよォ!」


             カァー      ベッ!


    「アンタみたいな無能がぁ、雑用の御用聞きでおまんま食えるのもねェ、
     私がッ!  『御徒町満志』が、ガキ共のケツをケリ上げてこそでしょう!

     その威光も忘れて、『次は早めに連絡をください』だァァ〜〜〜ッッ!?
     くれくれくれくれ、やかましいわァ!   切るぞォ!」


     PI!             「ぜぇぇー    はぁぁー ……」

衆目を集めながら、『体調不良』がウソかのような罵声をがなり立て、
電話を切った頃には、息を荒げながら、ヨロヨロと歩道へと踊りだし


                   ゴッ


>>463へと身体をぶつけた。


*1 御徒町の勤める専門学校での、『職員』の呼び方。
   『講師』では手の回らない業務に注力してくれる、縁の下の力持ち。
   当然、彼らがいないと学校運営自体が成り立たない。

463御徒町『ホワイト・ワイルドネス』【4】:2019/02/28(木) 23:08:54


           ヴォォォ  オオオオンンンッ


      『な、なんだ!?』

                      『おい、ジイさん!』


       「んあ、  」

                   「えっ」


        ドォォォ――――z________ンン!!!


突如、歩道へと乗り出すように疾駆する、一台のトラック。
銀色に光るボディに気付き、あわや避けようとするも時すでに遅し。


              ピーポー
                        ピーポー

                                  ピーポー


御徒町『ホワイト・ワイルドネス』⇒『???』

464美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/03/06(水) 22:14:48

この街の何処か。
誰かが『ラジオ』を聴いている。
スピーカーからは、『カナリア』の歌声を思わせる、よく通る澄んだ声が流れていた。

    「今日も貴方の隣に電気カナリアの囀りを――――」

           「皆様いかがお過ごしでしょうか?」

     「『Electric Canary Garden』」

         「パーソナリティー・美作くるみです」

    「今回は少し趣向を変えて、
     いつもよりしっとりした『大人のムード』でお送りしていきますよ?」

 「さて……本日はリスナーの方から、くるみへの質問を頂いております」

 「『くるみさんのマイブームは何ですか?』」

 「そうですねえ……。
  趣味は色々とあるんですが、最近ハマッてるのは『小物集め』でしょうか?
  特に『小鳥モチーフ』の小物を見つけると、つい手が出ちゃいますねえ」

 「小物に限らず、鳥関係の雑貨は割とよく買ってます。
  この前も、コマドリのペーパーウェイトとインコのマグカップを買ったばかりですしね。
  あ、マグカップは『ペア』ですよ。相手もいないのに。アハハハハ……」

 「おっと――今回は『しっとりした雰囲気』で進めるんでしたねえ。
  いやいやぁ〜、うっかり忘れちゃう所でしたよぉ〜!
  では、気を取り直して……コホン」

 「本日、リスナーの皆様とお話するテーマは――『あなたのマイブーム』です。
  皆様からのお電話を、くるみは心よりお待ちしております」

 「――――早速、リスナーの方(>>465)と電話が繋がったようですね。
  もしもし、こんにちは。こちらは美作くるみでございます」

465稲崎 充希『ショッカー・イン・グルームタウン』:2019/03/06(水) 22:33:38
>>464

「≪灼熱≫と≪冷気≫の双龍が畝りを上げ咆哮する日々。
更に、無限にも等しき杉の≪木霊≫の軍勢の猛攻。
哀れな≪凡夫≫共は≪蹂躙≫されぬ為に≪回復薬≫に頼る。
≪伝播者:美作≫…、汝、患いはないか?≫」


電話口から女性の声が聴こえてきた。


「我は≪伝播者:美作≫に≪電波≫を用いて≪対話≫するのは初めて故。
≪仮初≫の名を持たぬ≪愚者≫。
なので≪真名≫である≪稲崎≫を名乗らせて貰う。
≪製造日≫はあえて伏せておくが、
この≪世界線≫では≪生死≫を司る職に就いてる」

466美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/03/06(水) 23:25:32
>>465

(――なるほどね)

電話から聞こえたのは奇妙な語り口だった。
ある意味では放送事故とも呼ぶ事も出来るだろう。
頻繁にではないが、こういった事もたまにはある。

 「はい、『稲崎さん』ですねえ。お電話、ありがとうございます。
  幸い身体は昔から丈夫な方で、病気一つした事がないんですよぉ」
  
 「お気遣いいただきまして恐縮です。お医者さんでいらっしゃるんですか?
  それとも整体とか……。いや、何しろ素人なものでして」

 「どうも不勉強で申し訳ありませんねえ」

しかし、美作は取り乱さない。
何故なら『プロ』を名乗っているからだ。
スタッフも、それを理解して特に通話を切らせようなどとはしていない。

 「――さて、本日のテーマは『あなたのマイブーム』となっております。
  そんな訳で稲崎さんの『今ハマッているもの』について、お話いただけますでしょうか?」

467稲崎 充希『ショッカー・イン・グルームタウン』:2019/03/06(水) 23:52:54
>>466

「≪木霊の群勢≫、≪季節の群勢≫など見えなき≪疫病≫は勿論脅威だが、
この≪世界≫にはありとあらゆる≪悪≫が蔓延っている…。
我と同じ≪月≫の≪院≫に所属する≪骨の騎士≫も、
先日≪鉄の牛≫に突撃され、≪脚≫を砕かれ≪民の骨≫を守る職務からの離脱を余儀なくされた。
≪伝播者:美作≫もせいぜい気をつける事だなッ!ハハハ!」


電話の向こう側のラジオ局の様子など露知らず、楽しそうに話を続ける稲崎。


「既に≪伝播者:美作≫に看破されてしまったが、我は≪月≫の≪院≫の≪騎士≫だ。
守りし≪月≫については≪凡夫≫には理解できないだろうからあえて伏せておくがな。
クックック…!≪黒魔道≫…!

我の周囲での≪流行≫…!ああ!あるぞ!
ーーなんとッ!≪断罪≫の≪傍観≫だッ!
最初は他人の≪罪≫と≪罰≫が下る瞬間をデバガメするのを趣味とするのは、
些か下世話ではないかと躊躇していたのだが、
いざ出向いてみたらッ!中々に趣があるッ!

それにだッ!≪罪人≫を擁護する≪向日葵の騎士達≫がやはり弁が立ってだなッ!
あの達者な≪舌≫にはこちらも≪舌を巻く≫ッ!
加えて!≪断罪の場≫で見たとある若き≪向日葵の騎士≫は中々に男前でだッ!
最近では、≪断罪≫ではなくあの≪騎士≫目当てに通う日々だッ!ははは!」

468美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/03/07(木) 00:54:17
>>467

 「ああ〜、『交通事故』ですかぁ〜。それは、お気の毒で……。
  私も普段スクーターに乗ってるので、事故に遭うのは怖いですねえ。
  もちろん起こす側になるのも――ですけど」

 「私は声を届ける事しか出来ませんが、
  同僚の『整体師さん』の入院中の娯楽の一つになれたら幸いに思いますねえ。
  ――どうぞ、お大事に」

 「私は、まだ『整骨院』のお世話になった事はありませんけど、
  身体の調子が思わしくなくなったら、その時は是非お願いしたい所ですねえ〜。
  いざ悪くなる前に、一度見てもらうのも良いかもしれませんね。
  『治療よりも予防が大事』って聞きますからねぇ〜」

 「はい――なるほど、『裁判の傍聴』ですかぁ〜。
一風変わった感じがして新鮮ですねえ。
  ドラマで見た事はありますけど、実際に目にした経験は確かにないですねぇ〜。
  
 「何か、一種の『格闘技』のような雰囲気を感じますよねえ。
  『知恵と弁舌の格闘技』といった感じでしょうか?
  私も『舌』で仕事をしてますけど、『ジャンル』は全然違いますもんねぇ〜」

 「それで、カッコイイ『弁護士さん』を眺める事にハマッてらっしゃると。
  ありますよね、そういう事。
  何ていうか、いつの間にか目的と方法が入れ替わってるというか。
  私の場合は『逆』なんですけども。
  『新しい出会い』を求めて『ジム通い』してたら、
  何だか『鍛える方』に熱中しちゃってた事がありましたねぇ〜」

 「――――はいッ!『稲崎さんのマイブーム』でした!
  『裁判の傍聴』、なかなか見ない『マイブーム』が聴けましたねえ。
  皆さんも、今まで出掛けた事のなかった場所へ足を向けてみてはいかがでしょうか?
  新しい出会いが見つかるかもしれませんよぉ」

 「では、本日はお電話ありがとうございましたッ!
  お話して下さった稲崎さんには、『Electric Canary Gaeden』から、
  番組特製クオカードを差し上げます!」
 
稲崎 充希『ショッカー・イン・グルームタウン』⇒『500円分クオカード』Get!!

469美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/04/28(日) 00:55:13

この街のどこかで『ラジオ』が流れている。
飛び交う電波に乗って、高く澄んだ声が聞こえてくる。

「今日も、あなたの隣に『電気カナリア』の囀りを――――」

「世間では長いお休みに入りましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
 お休みの方は、どうぞ良い休日を。お仕事の方は、お疲れ様です。
 皆さんご存知の通り、私は今日も仕事に励んでおります!」

「『Electric Canary Garden』――パーソナリティーは私、
 長いお休みを頂戴した方々が羨ましい『美作くるみ』がお送りしますッ!
 お休み中のあなた!くるみの声を聴いて、もっともっと楽しんで下さいッ!
 お仕事中のあなた!くるみと一緒に、この荒波を乗り切っていきましょうッ!」

「さて――先々週から予告した通り、今日からは『連休スペシャル』という事で、
 リスナーの皆さんと、ガンッガンお喋りしていきますよぉ〜!
 完全ノープラン!くるみへの質問、悩み相談、今ハマッてることなどなど、
 どんな話題でもウェルカムですので、皆様ドシドシお電話を!!
 くるみは皆様からの愛ある『コール』を、心よりお待ちしておりまぁす!」

「――――おっと、早速リスナーの方(>>470)と電話が繋がったようです。
 もしもし?こちらは『美作くるみ』でございます!」

470今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/05/05(日) 02:00:31
>>469

「もしもーしっ」「えーと」「本名とか言った方がいいんですかっ」

なんとなく部屋に置いてたラジカセを触ってたら、ラジオがつながったんだ。
そういえばラジオ付きだからラジカセって言うんだって思ってたよね。
それで・・・知ってる声だったから、枕元に置いてたスマホを取って、電話したんだ。

471美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/05/05(日) 21:54:29
>>470

(あぁ――)

電話越しに、聞いた事のある声だなと思った。
少しだけ考えて、その時の事を思い出した。
あれは確か、自然公園だったはず。

     クスッ

「どっちでも大丈夫ですよ。
 『ラジオネーム』でも『リアルネーム』でもね」

「さて!肩の力を抜いてお喋りしましょうか。
 そう、『お休みの日』に友達と話してるようなリラックスした気分で――」

「――って、私は『お仕事中』でしたねぇ〜。
 アハハハ……それじゃあ、改めてお名前をどうぞ!」

「そうそう……。
 もし名前が決まらなければ、くるみに任せて頂いてもいいですよぉ〜。
 その場合は、私くるみが『ラジオネーム』を考えて進呈する事になりますねぇ」
 
「あくまで私のセンスなので、気に入らない場合は『返品』も可能です!
 だけど、『使い回し』はしませんよ。アハハ」

『ラジオネーム』か『本名』か『くるみにお任せ』か。
選択肢は三つ。
どれを選ぶかは自由――そういう事らしい。

472今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/05/06(月) 00:37:32
>>471
              クルクル

マスキングテープをテーブルに置いて、ラジオの音量を少し上げた。

「あははは」「えーと、それじゃあですね」

お話、上手だなあ。
直接話したときよりそういう風に感じる。
これが『お仕事中』ってことなんだろうな。

「『ラジオネーム』」「考えてもらっていいですか!」
「せっかくなのでっ」

「自分で考えても、フツーすぎるのに、なっちゃいそうだし」

『アイ』。
先生の名前が頭に浮かんできた。
勝手に先生の名前使ったら、怒られるかな。

473美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/05/06(月) 01:42:57
>>472

「Okay!!『くるみにお任せ』ですね!では、張り切って行きますよぉ〜……!」

「うぅ〜ん……んッ!来た来た――来ましたよッ!」

咄嗟に思い浮かんだのは、以前出会った時に聞いた『スタンド』の名前だった。
『彼女』は『コール・イット・ラヴ』と名乗っていた。
『ラヴ』――つまり『愛』だ。

「――あなたの『ラジオネーム』はぁ〜……『チューリップ』さんに決定しました!!」

「ちょっとだけ説明させて頂くと、『優しそうな声だなぁ〜』と感じたんですね。
 そしたら、ふと『チューリップ』の『花言葉』を思い出したんです。
 『チューリップ』の『花言葉』って『博愛』とか『思いやり』なんですよ」

「それで『チューリップ』さんってワケなんですねぇ。
 こう『親しみやすそうな印象』もあったので、その辺りの雰囲気も加味した上で。
 お気に召して頂けたでしょうかッ?」

この少女の声が何となく親しみやすく、優しい声だと感じたのは本当の話。
だから、声の印象で決めたというのもウソじゃない。
『本体』と『スタンド』の両方を考慮したといったところだ。

474今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/05/06(月) 21:01:00
>>473

「チューリップ!」「ですか〜」

「思いやり…………」「あはっ」
「ありがとうございます、すっごく気に入りましたっ」

優しいとか、親しみやすいとか、フツーに嬉しいと思う。
実際にどうかとかじゃなくて印象がそうっていうのが。

博愛、っていうのはちょっと違うけど。
でも、ちょっと違うのが良い気がする。
全部当てられたら怖いと思うし。

「それじゃ、えーと」
「あらためまして、ラジオネーム『チューリップ』ですっ」
「よろしくお願いしまーす」

「それで」「私、じつはこの番組聞くの初めてで」
「どういう感じのお話をすればいいんでしょうか?」

なんでもいいよ、って言われそうだけどね。
一応フツーの時の雰囲気っていうか、そういうのは知っときたいかなって。

475美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/05/06(月) 22:29:55
>>474

     クスッ

「気に入って頂けたなら何よりです!
 くるみも頭を捻った甲斐がありますよぉ〜。
 それでは、改めましてよろしくお願いしますね!」

「――『チューリップ』さんは、ご新規のリスナーさんなんですね!
 どうもありがとうございます〜。
 よろしければ、今後も当番組をご贔屓に!」

「さて、お喋りする内容は色々あるんですけど、
 そうですね――じゃあ『お休みの過ごし方』について、お話しましょうか!」

「『チューリップ』さんは学生さんですか?
 学生さんなら、クラブ活動なんかがなければ連休はお休みですよねえ」

「『チューリップ』さんは、何か予定を立てたりしてますか?
 ちなみに、くるみはですねぇ……『温泉に行く予定』ですねぇ〜」

「風情のある旅館に泊まって、
 のんびりと湯に浸かって日頃の疲れを落として、
 地元の料理に舌鼓を打って……」

「ただし、あくまで『予定』ですけどね!
 『突然スケジュール変更が起きて急遽長いお休みを頂けたら』実現します!
 残念ながら、しばらくは『予定』のままになりそうですけどねぇ〜アハハハハ!」

「『チューリップ』さんはいかがですか?
 連休の事じゃなくて、普通の休日の過ごし方でもオッケーですよぉ」

476今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/05/06(月) 23:28:17
>>475

「あはは、贔屓にしますねっ」

壁に貼ったマスキングテープを見る。
花柄のはあった気がするけど、チューリップはあったかな。

「あっはい、学生ですっ」

「お休みは、友達と遊びに行きますねえ」
「私、今のところ部活はしてないし」
「『遊園地』とか」「『カラオケ』とか」「いろいろ」

「フツーのお休みとそんなに変わらないですけどねっ」

遠くまで旅行とか、ちょっと考えたけどね。
部活ある子はフツーに部活だし、ない子も塾とかあったりだし。

「それにしても、『温泉』かあ」
「私も行ってみたいな。友達とかと」
「お風呂と卓球しかイメージないですけど」

「なんで温泉とか銭湯とかって卓球のイメージなんでしょうねえ?」

477美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/05/07(火) 00:27:49
>>476

「『遊園地』に『カラオケ』――楽しそうじゃないですか!
 私も時間が空いたら、行きたいところですねぇ〜」

「普通に過ごす時間も、見方を変えれば『今だけの瞬間』だと思うんですよね。
 その瞬間の積み重ねが『一日』になり、その積み重ねが『一年』になって……。
 年を重ねると、『そういうの』が身に染みてくるなと感じる今日この頃ですね〜」
 
「な〜んて――こういう話をするから余計と老けてくるのかもしれませんね!
 アハハッ、くるみの分まで思いっきりめいっぱい楽しんできて下さい!」

学生だった時、『アイドル』として活動していた私は、毎日が忙しかった。
そのせいで、『学生としての普通の楽しみ』みたいなものは縁遠かった。
だから、少女の答えを聞いて、純粋に『羨ましいなぁ』と感じていた。

「あぁ、確かに〜!では、私くるみがお答えしましょう!
 それは、『旅館の中でバレーやバスケットは出来ないから』なんですねぇ〜。
 何せボールがあっちこっちに飛んで行っちゃって、エラい事になりますからね〜」

「さて、ジョークはこのくらいにして……もう少し真面目に考えてみましょうか。
 卓球って、あまり場所を取らない球技ですよね。
 物凄く激しいスポーツってワケでもないし……。
 『軽く汗を流すのに丁度いいから』かも?
 ほら、汗をかいた後にお風呂に入るのって気持ちいいでしょ?」

「ちょっと違いますけど、くるみもちょくちょく『ジョギング』してるんですね。
 その後に浴びるシャワーが気持ち良くって。
 さらに、その後の『一杯』がまた……」

「――おっとっとっ、だいぶ『脱線』しちゃいました!
 ところで、『温泉』っていうと『グルメ』もありますねぇ〜。
 『チューリップ』さんは、特に好きな『食べ物』はあったりしますか?」

478今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/05/07(火) 01:14:25
>>477

「楽しいと思いますよ。フツーに」
「いつもみんな楽しいって言ってますし!」
「こういうの、『青春』って言うんですかね」

「とりあえず」

「今のうちに楽しめるだけフツーに楽しんでおきますっ」

机の引き出しを開けて、テープを探す。
チューリップのテープ持ってた気がするんだけど。
何かで使い切っちゃったっけ?

「ふんふん、なるほど〜」
「確かに旅館でスポーツするなら、そうなりますねえ」
「……って、冗談ですかっ」

「あー、でも、そうですね。勝負もできて楽しいし」
「あと、たしか卓球台って折りたためますもんね」

美作さん、やっぱり頭いいんだろうなあ。
すごく勉強してるってことなんだろうな。

「食べ物ですか、そうですね〜」「うーん」
「『天むす』とか、フツーに好きかなあ」
「通学路におにぎり屋さんがあって。そこのが美味しいんですっ」

「いっときは毎日ってくらい買ってましたねえ」

カロリーが、さすがに気になるんだよね。

479美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/05/07(火) 02:03:57
>>478

「『天むす』!いやぁ、なかなか『ツウ』なお答えですねえ〜!
 おにぎりの中にエビの天ぷらが入ってるアレですね。
 しょっちゅうは食べませんけど、くるみも好きですよ〜」

「おにぎり屋さんのおにぎりって、こう……握り方が絶妙ですよね。
 柔らかすぎず固すぎない適度な握り具合っていうか。
 まるで『シフォンケーキ』みたいにフワッとしてて」

「自分で握ってみても、ああいう風にはいかないんですよねえ。
 くるみの場合は、大抵ギュギュッと固く握ってますねえ。
 食べる時に崩れるのが怖いんで。
 一度フワッとした仕上がりにしようとしたら、ご飯粒がポロポロ零れちゃって――」

「くるみも料理は好きな方なんですが、
 衝動買いして一度も使ってない調理器具があったり、
 ちょっと使っただけで余ってるスパイスが棚の奥に眠ってたり……。
 そういう事が結構よくあるんですよねえ〜」

        アハハハ

「ちなみに、その『チューリップ』さんの行き着けのおにぎり屋さんですが、
 なんというお店でしょうか?
 是非とも教えて頂きたいところですねぇ〜」

         クスッ

「もしかすると、今後『取材』させて頂く事になるかもしれませんからね!
 あ、勿論その時はお店に許可を取りますよ」

480今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/05/07(火) 03:43:36
>>479

「そうですね、N県のほうで名物の、あれですっ」
「自分でもよくわかんないんですけど、妙に好きなんですよね」

きもちはわからないけど、結果っていうか『好きな味』なのはわかる。

「あっ、確かに言われてみたらそうですねえ」
「なんで自分で作るとこうならないんだろって、思ってたけど」
「『握り方』がポイントなのかも」
「私、そこまで料理上手じゃないからアレだけど」

「お店の名前ですか? えーと、『結日(むすび)』だったかな」
「小さいお店だから、私が買う分が売り切れないくらいの宣伝でお願いしますねっ」

           ゴソゴソ

               コロン

あったあった、チューリップのマスキングテープ。
赤じゃなくって白だけど、私、白が好きだし、いいや。

それにしても。

「あっ。シフォンケーキで思い出しましたけど、甘いものも好きですよ」
「そのことも、お話ししたいかなって、思ったりするんですけど」

「まだお時間とか大丈夫ですかね」

けっこう長いこと私としゃべってくれてるけど、大丈夫なのかな。
大丈夫なら、話すことはまだちょっとは残ってるけど。無理に話すようなことでもないけど。

481美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/05/07(火) 11:19:18
>>480

「なるほど、『結日』さんですね!
 また一つ、素敵なお店を教えて頂きました!
 リスナーの皆さん、これは要チェックですよぉ〜」

ブースの外にいるディレクターに向けて、軽く目配せする。
後から下調べした上で、『取材』の申し込み候補に入れておこう。
そういった意味のサインだ。

「アハハハッ――
 穴場のお店が急に有名になっちゃって売り切れ続出!
 ……っていうのも、それはそれで困りますもんねえ。
 嬉しいんだけど何だかなぁっていう感じで。
 その気持ちは、よぉーく分かりますよぉ〜」

「実は、私も前から通ってる『キャラメル専門店』があるんですけど、
 そこの人気が最近になって急上昇してきてまして。
 ちょっと前まではのんびり選べたんですけど、今は人が多くって……」

「――あ、そのお店は我々が宣伝したワケじゃあないんですけどね」

   アハハハハ

「『チューリップ』さんも、甘いものお好きなんですね〜。
 美味しい御飯を食べた後は、やっぱりデザートも欲しくなりますもんねえ」

普段の放送なら、もう少し手前で締めくくっている所だった。
しかし、今日はリスナートーク拡大の『スペシャル版』なのだ。
だから、今もまだトークは続いていた。

「はいッ!大丈夫ですよ!
 それに、私も甘いものは大好きですから。
 そんな話を耳にしてしまったら、聞かずに終わるワケにはいかないでしょう!」

    チラ

ディレクターに、再びアイコンタクトを送る。
もう少し喋れる――というような意味の頷きが返ってきた。
丁度いい区切りだし、この話を聞いたら『締めくくり』に入ろう。

482今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/05/07(火) 22:38:37
>>481

「キャラメル専門店!」
「いいですねえ。好きなんですよキャラメル」
「変な味のやつ以外は」

フツーの味のキャラメルは、フツーにおいしいから。
でもたまにあるよね。変な味の。なぜかキャラメルに多い気がする。

「やった。それじゃあ話すんですけど」
「…………」

言おうとしたんだけど。
あれこそ『隠れ家的』なお店だし、宣伝するの良くない気がしてきた。
これ、どういう気持ちなんだろう。
こういう気持ちってあんまりわかんないや。

・・・別のに、しようかな。

「えーっと」
「星見横丁のほうに、美味しいケーキ屋さんがありまして〜」

だからなんとなく無難っていうか、元から有名なお店の話をしちゃって。
それで、電話が切れるまでフツーに、楽しいなって気持ちで話すことにしたんだ。

483美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/05/08(水) 21:54:08
>>482

数日後、今泉家に一通の封筒が届けられる。
その中には『番組特製クオカード』が入っていた。
また、小さな『メッセージカード』が同封されていた。

【お電話ありがとうございました!
 耳寄りなショップ情報もご提供いただき、感謝感激です★
 これからも『Electric Canary Garden』をよろしくお願いします!】
 
【PS.個人的に『結日』さんに行ってきましたよ〜。
  天むすをスタッフに配ったら好評でした♪
  くるみ的に『まいたけ天むす』がヒット!】


今泉『コール・イット・ラヴ』⇒『500円分クオカード』Get!!

484宗像征爾『アヴィーチー』:2019/06/04(火) 23:44:45

堤防に腰を下ろした一人の男が海に向かって釣り糸を垂れている。
カーキ色の作業服を着た中年の男だ。

「やはり素人では見込みは薄いか」

不意に気配を感じて視線を向ける。
その先にいたのは一匹の野良猫だった。

「『アビシニアン』では無いな」

再び視線を水面に戻す。
野良猫は地面に置かれたバケツに近寄って来た。

「――まだ空だぞ」

バケツを覗き込んでいた野良猫は釣り糸の行方を眺める。
既に三時間が経過していたが釣れる気配は未だ無かった。

485蒜山帆奈『ホーム・インヴェンション』:2019/06/06(木) 20:47:59
>>484

「にゃあにゃあ」


ギャル風の出で立ちの女子高生がいつのまにか宗像の背後に立っていた。
片手に持っていたであろう『タピオカジュース』のカップを足元に置き、
宗像を眺めていた野良猫をひょいと抱え、その首元を撫ぜる。


「オジさーん、釣れてないの?
『ハンナ』的には『釣り』を楽しみたいのなら『釣り堀』に行けばいいと思うし、
新鮮な『魚介類』を味わいたいなら『お寿司屋』さんに行けばいいと思うワケ。
それにさー、『暇潰し』したいなら『スマホ』だってあるわけじゃん?
オジさんはどういう意図があって、こーんなきちゃなき海で釣りなんてしてるの?

断言しても良いけど、ここで美味しい魚なんて、
ずぇ〜〜〜ッたい釣れないヨ?」

486宗像征爾『アヴィーチー』:2019/06/06(木) 23:30:31
>>485

「――『理由』か?」

少女を一瞥してから再び視線を海に戻す。
長くも短くもない程度に幾らかの間が空いた。

「少なくとも人に聞かせる程の意図は無いな」

野良猫は暴れる事も無く大人しくしていた。
見た目より人に慣れているのかもしれない。

「強いて言うなら『そうしたかったから』だ」

話しながら手応えの無い釣竿を引き上げる。
当然だが魚は掛かっていない。

「――君の『理由』を聞いても構わないか?」

487宗像征爾『アヴィーチー』:2019/06/13(木) 00:22:36
>>486

一人の男と一人の少女が居合わせた。
彼らは他愛の無い会話を交わし、それぞれの場所に戻って行った。
それが今日この場で起こった事の全てだ。

488美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/06/22(土) 18:41:02

        タッ
              タッ

タンクトップとショートパンツで、初夏の海辺を走っている。
本格的な夏の到来に向けて、春頃から身体を絞ってきた。
秋冬で蓄えがちの『余計なもの』を、しっかりと落としておかなければいけない。

「ふぅッ――」

やがて立ち止まり、首に掛けたタオルで汗を拭う。
それから自販機の前に立ち、スポーツドリンクを購入した。
近場の堤防に腰を下ろし、ペットボトルを開ける。

         グイィッ

「――ぷはァ」

正面に広がる砂浜と海を眺めながら、スポーツドリンクを呷る。
頭に被っていたキャップを脱いで、団扇のようにパタパタと扇ぐ。
運動の甲斐あってか、今年も水着が着られそうなのは良い事だった。

489美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/06/27(木) 22:15:53
>>488

立ち上がり、空になったペットボトルをゴミ箱に入れる。
キャップを被り直して、その場で軽く伸びをした。

「――よしッ、もう一頑張りするとしますか」

         タッ
               タッ

やがて、その後ろ姿は徐々に海辺から遠ざかっていった。

490美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/07/27(土) 00:27:42

星見町――――この町の何処かで『ラジオ』が流れていた。

「今日も、あなたの隣に『電気カナリア』の囀りを――――」

「『Electric Canary Garden』――パーソナリティー・美作くるみがお送りしますッ」

「いやぁ〜、『夏』ですねッ!
 夏って、こう何というかエネルギーに溢れた季節ですよね〜。
 身も心も開放的になるといいますか……。
 とにかく色々な面で『刺激的なシーズン』」ですよねえ〜」

「皆さんは、『夏』というと何が思い浮かぶでしょうか?
 旅行やレジャーの予定を立てていらっしゃる方もいるでしょうし、
 忘れられない夏の思い出もあるかもしれません。
 暑くて疲れがちな夏を乗り切る方法なんてのもアリですねえ〜」

「――――というワケで、今日のテーマは『夏』!!です!
 私くるみと一緒に、夏にまつわる話題で楽しくトークしちゃいましょう!」

       pururururu…………

「さて!リスナーの方から『コール』を頂いたようですねッ。
 もしもし?お電話ありがとうございますッ!
 こちらは『Electric Canary garden』パーソナリティーの美作くるみでございますッ」

491美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/08/05(月) 04:35:21

「――――そうそう、くるみはですねぇ……。今は『海』に行きたいですかねえ〜。
            水着も、一応買ってあるんですよ。
 今年はスポーティーな感じでいこうと思って、割とシンプルめなヤツを用意したんですけど」

「海っていいますと、昔は結構みんなでワイワイ盛り上がったりするのが好きだったんですよ。
        やっぱり海っていうと、そういうイメージが強いじゃないですか。
  でも、最近は一人で静かに過ごすのも良いかなあ――なぁんて思ったりするんですよねえ」

「砂浜にパラソルを立てて、日陰のビーチチェアに寝転んで……
    太陽が少しずつ傾いていくのを眺めるなんてステキじゃないですか?
     一度、そんな贅沢な時間の使い方をしてみたいんですよねえ」

「もし隣にハンサムな男性がいてくれたら、もっとロマンチックに感じられるんでしょうねぇ〜。
 一人で過ごすのも良いですけど、二人で過ごすのもそれはそれで良いじゃないですか!   
          何ていうか、一つの理想ですよねえ」

「リスナーの方に、『プライベートビーチ所有の独身男性』はいらっしゃいませんか?
  今なら漏れなく、『夕暮れの海辺で美作くるみと語らう権利』を差し上げますッ!
    そこから先に関しましては、『相手の方次第』という事で…………フフフフフ」

「さて――そんなワケで、今日もお別れの時間がやってまいりました!
        また次回も、このチャンネルでお会い致しましょう。
     お相手は、『パーソナリティー・美作くるみ』でお送りしましたッ」

           「――――『See you next time』!!」

492斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/28(水) 21:20:38
――音、祭囃子、臓腑に響く太鼓、一喜一憂する喧騒、ポイを破る水音。

景色、優しく誘う提灯、並び立つ屋台、きらめく氷、色取り取りの容器。

鼻腔には菓子の甘い香りや、鉄板焼きの香ばしい香りが流れ込む
最後に両親と来たのは5年も前の事だ。

だが、覚えていない筈の景色に、不思議と懐かしさを感じてしまう。

夏の祭りは不思議な事に、あんなに暑かった日々を
誰もが惜しむようにはじめる物だ。


 「……よっし、抜けたぞおっさん! 換金してくれ。」


壮年の男性が顔の皺をさらに深くしながら 受け取った完成品を睨み
忌々しいというのを隠しもせずに舌打ちして 報酬を差し出す。


 「じゃ、来年またくるぜ おっさん。」

 「賞金と型、用意しとけよな!」


しわがれた怒号を背に『か た ぬ き』と書かれた屋台から一人、満面の笑みと共に、祭囃子の中へ歩き出す

彼、斑鳩は黒地に白い海飛沫をかたどった浴衣と赤い帯に身を包み
首にはいつも通りに赤いスカーフを巻いている

軍人風に短く整えた髪が、夜風に揺れた。

                       サ イ ノ ウ
 (これで軍資金は確保ッと……ま、『スタンド』の有効活用って事で。)

 「後は、どうするかな……待ってみるか?それとも探すか?」

493?????『?????』:2019/08/28(水) 22:27:55
>>492

遠く離れた位置から、そのやり取りを聴いていた。
普通なら、決して聴き取ることはできなかっただろう。
しかし、『彼女』には可能な芸当なのだ。

「エージェントからホンブへ。モクヒョウをカクニンした。これより『コンタクト』にはいる」

「リョーカイした。すみやかにミッションをスイコウせよ」

小声で独り言を言いながら、背後から近付く『何者か』の影。
足音を忍ばせながら、少しずつ距離を詰めて歩み寄っていく。
その背後には、両手に爪を持つ『盲目』のスタンド。

「――――またせたな、『フリーマン』。レイのブツは??」

       ポンッ

適当な距離まで近付いてから、彼の肩を軽く叩いて唐突に声を掛ける。
ところで『フリーマン』ってダレ??
わたしもしらない。

494斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/29(木) 01:11:36
>>493

肩への挨拶に振り返ると
見知ったスタンドの姿を視界に捉えた

「そういう君はトランプガール。」

人間、慣れる物である
後ろからの攻勢にも、落ち着いて

495斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/29(木) 01:29:42
>>493

肩への挨拶に背を向けたまま答える
最近はもう台詞回しだけで解る気がした

「そういう君はトランプガール。」

人間、慣れる物である
後ろからの攻勢にも、慣れた調子で肩をすくめる

「生憎、今持ってるのは笑顔くらいだけど。」

型抜き屋の親父から分捕ったのはノーカウントとする。
少し恥ずかしいから。

「それで?」
「『新しいドレス』はちゃんと着てきた?」

多少の期待を込めて、斑鳩は振り返った。

496夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/08/29(木) 01:51:31
>>495

「『エージェント・アリス』――――やくそくどおりに、ただいまサンジョー」

肩を叩いたのは予想通りの人物だった。
ただ普段と違っていたのは、その格好だ。
ブルーを基調とした爽やかな浴衣と、同系統のダイヤ柄の帯に身を包んでいる。

「どう??スマイルといっしょに『おほめのコトバ』くらいきたいしてもイイよねぇ??」

ニヤッと笑って、その場でクルリと一回転してみせる。
この日のために、『イズミン』に相談までしたのだ。
初デートということもあって、内心ドキドキする部分も正直あった。

「せっかくだから、イエまでむかえにきてくれてもよかったんだよ??
 『え!?あのコだれ!?』ってカンジで、アリスのパパとママにサプライズできたのに。
 いやぁ〜〜〜おしかったなぁ〜〜〜」

心の中を隠すため――というワケでもないが、至っていつも通りに振舞う。
『フツーに楽しめばいい』と、アドバイスをもらったからだ。
だから、思いっきり楽しもう。

「うわぁッ――――」

「ね、ね、ね!!コレすごくない??ホンットにキレイだよね〜〜〜ッ!!」

改めて――初めて目の当たりした『夏祭り』の光景に、興奮した様子で目を見張る。
『音』や『匂い』で感じたことはあったが、『目』で見たことはなかった。
サングラス越しの瞳が、祭りの灯りに勝るとも劣らない輝きを放つ。

497斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/29(木) 20:38:25
>>496

 「…………。」

浴衣姿の美しさに一瞬、言葉を失う

眼前の光景に、数週間前の自分へ盛大な称賛を送る
よくやったぞ 僕 君は最高の仕事をした。

……お陰で称賛を忘れかけていた。

 「普段もいいけど、今日の服装も一段と可愛いね、アリス。」

彼女がくるりと回ると、金色の髪が祭りの明かりを抱えて煌めく
和風にアレンジしたアリスが、絵本から出てくればこんな感じだろうか。

スマホを取り出して、祭囃子と屋台を背景に一枚
後でクラスメイト共に送ってやろう、倒れろ男子。

 「これもサプライズ、か」

肩を竦め、悪戯を思いついた児子のように口角を吊り上げる

 「んー、それは次の機会にしようかな」

実際は彼女の家を知らないだけだが、次の機会が有れば
彼女の両親のど肝を抜くのも悪くはない。

しかし、彼女のはしゃぎ様を見ると、本当に初めてのようであるらしい
その様子に親戚の小さい子が『神社が逃げる』という理由で急いでいたのを思い出した
何にせよ可愛らしい所作である。

頬が熱くなるのを無視して髪をかきあげ、視線をずらす
いけない事だ、きっと夏祭りの熱気のせいだろう、そう結論すると

 「そうだね、夏の最後だからかな ……行きたい所は有る?」


 「それとも僕がエスコートするべきかな? デートだし。」

柔らかに笑ってそう告げる。

彼女の眼の輝きの先に任せてもいいだろう
なにせアリスにとって、初めての事なのだ。

498夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/08/29(木) 21:53:36
>>497

「あ――――ありがと…………」

「そんなフウにいってもらえるなんて、なんかウレシイな」

「…………へへ」

実際は賞賛の言葉よりも、無言で見つめる表情の方が印象的だった。
そんな風に見られるのは珍しい経験だ。
ただ、イヤな気分ではなかった。
いつものように冗談の一つでも飛ばしてやろうと思っていたが、何となく茶化す気になれない。
だから、今は素直に感謝を示しておくことにした。

「『モデルだい』の30まんエンは、ベツりょうきんになりますので。
 イマのアリスは『チョーげんていレアバージョン』ですので、プラス10まんエンですね〜〜〜。
 『ぶんかつばらい』は2かいまでとなっております」

「はらえないなら――――こうだ!!」

           パシャッ

「――――トクベツにコレで『チャラ』にしてあげよう」

不意打ち気味にスマホを向けて、お返しとばかりに浴衣姿を撮影する。
よし、これはジューヨーなショーコだ。
あとでエージェント・イズミンにみせよう。
クチでセツメイするより、シャシンのほうがわかりやすいからな。
まぁ、ソレはソレとして――――。

「そんじゃ、きょうはイロイロとアンナイしてもらおっかな〜〜〜。
 わたしだけだと、わかんないコトもあるだろうし」

「それに、ホラ――――『アリス』には『シロウサギ』や『チェシャネコ』がヒツヨウでしょ??」

           ワンダーランド
「はやくいこう!!『おまつり』がおわっちゃうよ!!」

夜を彩る鮮やかな色と暖かい光。
それは、少し前まで『私がいた世界』にはないものだった。

                   アリス
『この世界』は本当に――――『私』にとっての『不思議の国』だ。

499斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/29(木) 22:22:58
>>498

フラッシュに目をしばたかせると
既に彼女は群衆の中へ行こうとしていた
その姿は楽しい事が有り過ぎて、待ちきれないようだ

 「あまり走って案内役を置いて行かないでくれよ?」
 「手を繋ぐことになってしまうぜ、僕。」

兎か猫か悩んでいる間に、主役に1人置いてかれてはたまらない
早々に彼女に歩調を合わせ、数ある屋台の内から一つを選んで歩いて行く

色とりどりの大衆をかき分けながら進んでいくと
ここが夢の中なのではないかと思える

斑鳩は、今だけは2人の事を思い出さない事にした。

 「じゃあ、まずは……ここかな」

2人が到着したのは『お面屋』だった
動物を模した物や、日曜にテレビでやっているヒーロー、ヒロインの物
神社に縁のある狐等、さまざまな顔が手に取られるのを待っている。

 (……あんまり早くわた菓子とかに行くと、手がベタベタになるしなあ。
  歯に青のり付けるのも論外、最初はこれかな、両手も空くし。)

周囲には店主から買ったのか、思い思いのお面をつけた子供たちが
笑顔と共に声をあげている。

 「アリスは何か、好きなのとか有る?」

縁日特有の光景を背景に、隣の少女を覗き込む。

500夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/08/29(木) 23:03:55
>>499

「――――はやくしないと『アリス』をみうしなっちゃうよ??」

「これじゃ、ドッチが『あんないやく』だかわかんないね」

    クスクス

迷子にならない自信はあるが、ここで一人になってしまっては意味がない。
だから、少し歩くスピードを落とすことにした。
まがりなりにも『デート』という名目で来ているということもある。

「ほほう!!イッパイあるもんだな〜〜〜!!」

             キョロ
                    キョロ

ズラリと並んだお面の群れを前にして、ウィンドウショッピングを楽しむように視線を泳がせる。
そして、その内の一つに指先を向けた。
ファンタジーの世界から出てきたような『白ウサギ』のお面だ。

「――――コレがイイ!!」

わたしは『アリス』だ。
『アリス』のぼうけんは『ウサギ』からはじまった。
まさに、この『フシギのくに』のはじまりにふさわしいといえるだろう。

「えっと、『おねだん』は…………なかなかリョーシンテキじゃないか!!」

値段を確認して、帯に結んである巾着袋に手を伸ばす。
浴衣に合わせるために購入しておいた。
今日は、その中に財布やらスマホやら入れてあるのだ。

501斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/29(木) 23:50:29
>>500

並んだお面をふたつ、ひょいと取ってみる 
プラスチック製のそれはチープだが、縁日の思い出は大抵そういう物だ。

 「じゃ、店員さん この兎のやつと僕のぶんでふたつ」
 「くださいな。」

代金を払って品を受け取ると
デフォルメされた意匠のうさぎを、夢見ヶ崎の頭に乗せ

自分も頭にかける、ニワトリのお面が祭りの明かりを遮って、視界に影を落とす
普段なら絶対につけないが、だからこそ祭りの夜ならではの楽しみだろう。

(まあ、飛べない鳥のほうが僕には丁度いいだろう。)
(僕の名前だと猫にくわれるしな。)

代金は先程の賞金から勝手に支払ってしまった
有難う、型抜き屋のオヤジ、来年も謹んで鴨にさせて頂く。

 「あら、粋な小物入れ」
 「……そんなに楽しみだった?それとも、友達と買いに行った?」

お面を乗せた彼女を見やると、手元の巾着袋に眼が行った
わざわざ合わせる辺りに、何かしらの想像も出来る物だ。

……先程から自分のスマホに通知がやたら来て震えているが
目の前の微笑ましい光景の前には気にしない事にした、さらばクラスの男子共。

 「それで、次は何処に行こうか、アリス
  ヨーヨー釣り、射的に輪投げ、綿あめ、水飴、金魚救い や チョコバナナ、まだまだ有りますよ?」

再び喧騒の中を歩きだす、花火の時間までは確か、まだ余裕有った筈だ ……斑鳩の勘違いでなければ。

502夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/08/30(金) 00:26:06
>>501

「なんだなんだ〜〜〜??
 こんやはズイブンとハブリがイイじゃないの??
 ウラヤマしいヤツめ!!」

そう言いながらも、ちゃっかり奢ってもらった。
もらえるモノはもらうのがポリシーだ。
いや、チョットちがったか。もらいたいモノはもらうのがポリシーだ。

「あ、『コレ』??『コレ』にめをつけるとはセンスがイイな!!イケてるでしょ??
 『コレ』がなかったら『100てん』、『コレ』があったら『150てん』だ!!
 このカッコウにリュックとかバッグとかだと、シックリこねーしな〜〜〜」

財布を取り出し損ねた手で、巾着袋を持ち上げてみせる。
それを言ったらサングラスやネイルも合わないかもしれない。
しかしサングラスは『生活必需品』だし、ネイルも――――まぁスキだから!!

「それにイチオー『はじめてのデート』なワケだし」

「ビシッとキメたいじゃん??」

ややマジメなトーンで、そう付け加えた。
今夜の『不思議の国』は、『夏祭り』だけじゃない。
『祭り』と『デート』の豪華二本立てだ。
どうせなら、その両方を思いっきり楽しみたい。
だからこそ、『デート』の方にも人並みには気を遣ってきたのだ。

「――――じゃあさぁ、アレやんない??」

指差した先にあるのは、『輪投げ』の屋台だった。
『輪投げ』は得意だ。
『輪投げ』なら、力を入れる必要もないし。

「ただやるだけじゃナンだし、せっかくだから『ショーブ』しようよ」

ニヤッと笑って、そんな提案を持ち出す。
『かたぬき屋』での一件は、途中からだが確認していた。
それも加味しての提案だ。

503斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/30(金) 22:08:49
>>502

『150点の用意』に口笛を一つ吹いて称賛する
彼女はこの祭りも楽しむことに本気らしい、自分ではこうはいくまい

浴衣の懐に、雑に財布とスマホを入れてる自分とはえらい違いである。

そんな夢見が次に楽しもうと言ってきたのは『輪投げ』だった
その名の通り、輪を投げて杭に入れれば得点になるゲーム。

 「そりゃあ、構わないけど」

ビニールテープをグルグル巻きにして作られた輪っかを手に取る
何時も使う鎖と違って、それは酷く軽い。

 「……勝った方は 何か頂けるのかな?」

ニヤリと笑う彼女に意地の悪い笑みを返す
『才能』が使えるなら、負けるつもりは全く無いし
勝負事なら手加減する方が失礼だろう

 「ただ勝っただけ、じゃあ、あまり面白くないけど。」

が お互いが『スタンド使い』なのだ
彼女が 自身の腕だけで挑んでくるのか
それとも スタンドを奇想天外に使うのか

興味が無いと言えば嘘になった。

504夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/08/30(金) 22:40:00
>>503

「――――『トーゼン』」

        フフン

報酬の話に対して、自信に満ちた表情で笑い返す。
当然、やるからには勝つつもりだ。
だからこそ、この提案に同意することには何の躊躇いもない。

「『まけたほうはかったほうのキボウをナンでもヒトツきく』ってのは??
 ようするに『バツゲーム』みたいなモン。
 ただし、ジョーシキのハンイで。『キスする』とかはナシだよ」

「――――『はじめてのデート』なワケだし」

         チラ

輪っかを手に取った腕に視線を向ける。
考えていることは、こちらも同じだった。
お互いに条件は似たようなものなのだから。

「じゃ、イカルガセンパイ??おさきにドーゾ。
 アリスは、ここでおてなみハイケンさせてもらうから」

                スッ

観戦するために、少し後ろに下がろう。
そして、じっと挑戦の様子を見つめる。
さて、ウデマエをみせてもらおっかなぁ〜〜〜??

505斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/30(金) 23:24:46
>>504

 (――先輩?)

二人称に妙な既視感を覚えたが、心の隅に追いやった
言われた事は無い……と斑鳩は思っているが。

 「乗った。」

 (ま、いいや)

 「それじゃ、遠慮なく。」

輪っかをみっつ、指にひっかけてくるくると回す
やった事は無いが、投擲の経験なら多少はあった。

その時の対象はチンピラだったが
アレも動かない杭も、特に変わりはしないだろう。

 (彼我の距離は約2m前後、障害物無し、風はこの距離なら無視できる)


                 ジジ……


 (見た所、背後の彼女が仕掛けてくる気配は無い……が、何もしないなら確実に入るだけだ)

斑鳩の胴に大小の鎖が蛇のように這いずり、そのまま肩を経由して右腕から手首までを覆う
――『ロスト・アイデンティティ』 斑鳩 翔の精密動作を達人の域まで跳ね上げる、鎖の鎧。

          サ イ ノ ウ
 (それが僕の『スタンド』なのだから。)

風を切る音すらなく、みっつの輪っかが一度に放られた
……それぞれが吸い込まれるように、杭に向かって飛んでいく。

506夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/08/31(土) 00:04:54
>>505

『イカルガセンパイ』――それを言った本人には、何の意図も存在しない。
しかし、斑鳩翔にとっては割と最近言われた言葉だ。
多分、学校かどこかで。
もちろん、夢見ヶ崎は知る由もない。
それは『斑鳩自身』も同様だ。

そして――――。

         カコンッ
               カコンッ
                     カコンッ

右手を離れた三つの輪は、小気味良い音を立てて見事に杭に収まった。
輪の内側が杭に触れることもなく、まさに『お手本』のような投擲だ。
『ボーラ』と『輪っか』という違いはあるが、大した差はないだろう。
『ロスト・アイデンティティ』の精度なら、何の問題もなく可能な芸当なのだから。

「ほほう!!やるじゃん??それでこそ、アリスのライバルにふさわしいな!!」

     パチパチパチパチ

後ろから、惜しみない拍手を送る。
そして一歩前に出よう。
同じように、三つの輪を手に取る。

「ツギは、わたしのばんだよねぇ??イイ??」

                スッ

そう言って、サングラスを外して胸元に引っ掛ける。
目を光から保護しなければならない自分にとって、サングラスは『生活必需品』だ。
それを外すということは、一時的に『視力を喪失する』ことを意味する。

507斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/31(土) 00:33:21
>>506

夢見ヶ崎の拍手と称賛に
左腕に重なるようにしていた『影』が、うやうやしく礼をする

 「それじゃあ、お手並み拝見。」

やるき120%の彼女の動きに合わせて一歩下がると
自身のスタンドを解除して後ろから見守る事にした。

 (……サングラスを外した?)

困惑の感情に眉をひそめる

斑鳩も彼女のサングラスが、如何なる物かという事くらいは知っている
それは彼女が『盲目』の状態で投擲する事に他ならない

 (勝負を捨てた、というわけではない筈。)

 (そのまま投げるのか、今のままではまず当たりやしない、が
  既に位置を完璧に記憶しているか、視覚以外の感覚が無ければ……視覚以外?)

斑鳩は、過去に彼女と会った時の記憶を回想する
夢見ヶ崎のスタンドは、確か――。

508夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/08/31(土) 01:06:19
>>507

     《L(エル)》
                   《I(アイ)》
           《G(ジー)》
   《H(エイチ)》         
                《T(ティー)》

『かたぬき屋』のやり取りを聴いたのは、『ドクター』の『超聴覚』だ。
そして、まだ『解除』はしていない。
だから、先程の『音の位置』は大体覚えている。

      ヒュッ
          ヒュッ
              ヒュッ

本体の手に重なるようにして、『ドクター』の手から輪が一つずつ放たれる。
『ドクター』の精度は『高度な外科手術』並みだ。
しかし、いくら精密な動きができたとしても、『盲目』の状態では易々と成功するものではない。

「『だけど』――――」

先行である斑鳩の投げた輪が落ちた時の『音』を、『ドクター』で聴き取っていた。
その『方向』と『距離』は、ほぼ完全に把握している。
さらに『ドクター』の精度が合わされば、輪の中に杭を通すことは難しくない。

「――――さて、『けっか』をごらんいただきましょう」

それを確かめるために、サングラスを掛け直す。
ただし、すぐに視力が回復するわけではない。
徐々に輪郭を取り戻し、少しずつ鮮明さを得ていく視界の中で、自身の結果を確認する。

509斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/31(土) 01:27:24
>>508

……かけなおされたグラスの向こうで、ぼやけた視界が重なり、輪郭をはっきりとさせる
背後から、四本の腕による拍手の音が鳴る。

三重になっていた輪っかは、いまや一つずつが正確に杭にかけられていた。


 「――やられた!」


背後から斑鳩の称賛と驚愕の入り混じった声がする

 「僕に先に投げさせたのかい?
  引き分けにさせて頂きたいのだけどね!」

 「君には、いつも驚かされるばかりだな。」

ニワトリのお面を帽子がわりに脱帽する

彼女のスタンドの優秀さを見事証明してのけたのだ
今の自身では称賛の語彙が足りない事が、斑鳩は少しだけ口惜しかった。

 「それで、次は如何しますか、お嬢さん。」
 「罰ゲーム?それとも次の屋台?」

自身の投てきはあくまで手本であり
曲芸としては向こうが上だろうと考える斑鳩は

ふたつの脳を回転させ、彼女の罰ゲームからどう逃げ出すかを考え始めた。

510夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/08/31(土) 01:56:09
>>509

「イィエェ〜〜〜スッ!!」

      グッ

喜びを表現するために、両拳を力強く握り締める。
確かな自信はあったが、実際に確認するまでは分からなかった。
成功できたのは幸いだ。

「フフン!!まだまだこんなもんじゃない!!アリスの『ワザ』は、あと『216コ』あるぞ!!」

堂々とハッタリをかましながら、得意げに胸を張る。
客観的に見れば『引き分け』だ。
実際、もし『お先にどうぞ』と言われていたら、このワザは成り立たなかった。

「じゃ、『バツゲーム&ツギのみせ』ってコトで。イイよねぇ〜〜〜??」

しかし、あえて『引き分けにしよう』とは口に出さない。
相手の考えをいいことに、その流れに便乗することにした。
『フシギのくに』をボウケンする『アリス』は、ときとして『コウカツ』でなければならないのだ。

「――――てをつないでくれる??『ツギのみせにつくまで』、ね」

       スゥッ

そう言って、おもむろに片手を差し出す。
冗談ではなく、本気だ。
表情には悪戯っぽさがあったが。

「『おまつり』をたのしむだけじゃなくて、すこしは『デート』らしいコトもしたいじゃん??
 ほら、ツギはアソコいこ!!」

視線を向けたのは『綿あめ』の屋台だった。
まだ、綿あめを生で見た経験はない。
あのファンタジックなヴィジュアルには、ヒジョーにキョーミをそそられるトコロだ。

511斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/31(土) 03:22:32
>>510

 「…………。」

罰ゲームに対して頭を掻く、目を白黒させるのも忘れずに

これは罰ゲームなんだろうか、落ち着け僕
これはデートなので何も不自然ではない、言い訳完了、覚悟未完了。

 「僕も男の子だからな、喜んで。」

なんでもないさと、簡単な事のように微笑んで、お姫様の手を取るように手を繋ぐ
自分が嘘つきで本当に良かった、さもなければ醜態を晒していただろうから。

それはそれとして、次の店の道までをエスコートする時間が
もう少しだけ長くなってくれと考えるのは悪い事だろうか?

次の屋台につくまでは、何故か太鼓が妙にうるさく聞こえた。
中央からは結構離れている筈なのだけれど。


 「綿あめ、わた飴……ザラメと割り箸しかないな?」


次の屋台には店主がいなかった

有るのは纏められた割りばし、容器に入れられたカラフルなザラメと言う名の砂糖の砂
そして中央にふんぞり返る、ドーナツの鋳型のようなマシンだった。

視界の隅に、(おそらく砂糖で)汚れた張り紙を見つけ、コインを取り出して
マシンに恐る恐る投入する

すると、低く唸り声をあげながら
マシンが熱を持ち始めた。

 「ザラメを穴に注いで、型の中に雲が張り出したら、はしを回す……と。」

       スゥッ

箸を回すたびに、溶けたザラメが蜘蛛の糸のように絡みつき
どんどんと大きくなっていく

数分して唸り声が止んだ時には
割りばしに突き刺さる真っ白な入道雲のようなわた飴の姿が合った。

 「へぇ〜〜 こういう風に作るんだな、魔法みたいにできる物だ。」

下手なスタンドよりファンタジックな光景である
子供たちが夢中になるのも無理はない……

 「ね、これ凄いなぁ〜 知ってた?」

……チラッと横目で夢見ヶ崎を見た。

512夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/08/31(土) 18:42:15
>>511

「ええ、イカルガさま。よろしくオネガイいたしますわ。それでは、まいりましょうか??」

   ガシッ

逃がさないように、しっかりと手を握り締めた。
お姫様らしからぬ豪快な掴み方だ。
自分から言い出したとはいえ、経験がないので適切なやり方が分かっていないのかもしれない。

「ほうほう、ジブンでつくるのか〜〜〜!!オモシロそーじゃん!!」

そして綿あめを作りながら、隣にいるはずの夢見ヶ崎に呼び掛ける。
しかし、返事がない。
横目で確かめると、その理由が分かった。

         ジィィィィィ…………

魔法のように綿あめが完成していく過程を、身じろぎ一つせずに見つめている。
サングラスの奥で、いっぱいに見開かれた両目がキラキラと輝いている。
夜空のような瞳の中に、無数の星が眩く瞬いていた。

「なにコレ〜〜〜!!フッシギィィィ〜〜〜ッ!!
 『モコモコ!!』ってふくらんでいって『クモ』みたいだ!!
 コレしってた??ね!?ね!?ね!?」

興奮した様子で、離した手の代わりに斑鳩の浴衣をグイグイ引っ張る。
『綿あめが出来る場面』は、今まで見たことがない全くの『未知』の存在。
『アリスにとっての不思議の国』のように、この世界は『夢見ヶ崎にとっての不思議の国』なのだ。

513斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/31(土) 20:18:51
>>512

 「……なんだ、随分と可愛いな、君?」

見たままの感想がするりと舌から滑った
成程、祭りとは彼女のこういう反応を引き出す事を言う物か
デートでこういう行事を選ぶ人間の理由が、多少分かった気もする

 (しかし袖が伸びる、伸びる……まあいいのか?夢見ヶ崎も喜んでいるし。)

横目にでも、彼女の瞳がグラス越しに輝いているのが解る
事実その通りなので、着物の袖が伸びて帯がずれるくらいは許容すべきだろう

後で直せばよろしいのだし、他では見れない反応というのも価値がある
どうせならもっと驚かせたい物だが


             ――ズルリ


そんな折に『影の頭部』が、独立した思考でイメージを伝えて来た
酷く珍しい事なので、一瞬首筋に妙な冷たさが走ったが、自分の事だ
ザラメは多々有るのだ、では試してみるのも一興だろう

 「えっと?緑とピンクのザラメ……は、有るな なら――」

ピンクと緑のザラメを8:2の割合で注ぎ、再び硬貨を入れてマシンを稼働させる

            ヴヴゥン……

再びマシンが唸りをあげて糸を吐き出し、それを割りばしで絡めとる
ピンク色の綿を中心に、その周囲を緑色の綿が覆う……

 「はい、どうぞアリス。 少しは薔薇に見えるかな?」

完成した『綿飴』はピンク色の花弁と緑の萼片を持った薔薇のようにできた
『不思議の国のアリス』としては赤と白が混ざったバラの方が良かったかもしれないが

デートなら此方でもいいと斑鳩は思った
なにせ花言葉と言うのは花弁の色で違う意味になるのだから。

 「手がベタベタにならない内にどうぞ?」

そういうと斑鳩は、自分の白い綿あめをぱくりと噛みつき
白い雲が歯形にかけた。

514夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/08/31(土) 21:00:06
>>513

「――――カワイイ??なにスカしたコトいってんだよ!!
 デートだからってカッコつけやがって!!」

普段と変わらない調子で返すが、頬に赤みが差している。
それは未知との接触によるものか、あるいは褒められたことによるものか。
もしくは、その両方かもしれない。

「おん??おおッ!?うおぉぉぉ〜〜〜ッ!!」

「コレはマボロシのショクブツとよばれる『バラクモソウ』ではないか!!
 『バラのようなウツクシさ』と『クモのようなヤワラカさ』をあわせもつチョーレアなヤツ!!
 ウワサにはきいていたが、こんなトコロでおめにかかれるとは…………」

         パクッ

「――――しかもウマい!!」

綿あめで出来た『バラの花』を受け取り、かじり付く。
夢見ヶ崎は花言葉など知らない。
しかし、『目で見える美しさ』は誰よりも敏感に感じ取れる。
それは『超感覚』ではなく、かつて『盲目』だった夢見ヶ崎自身に起因するものだ。
もちろん、『舌で感じる甘さ』も分かる。

「あッ!!コレもシャシンとっとこ。
 ココはかじっちゃったから、ベツのカクドから…………」

          パシャッ

巾着からスマホを取り出し、抜け目なく撮影も行っておく。
そうしていると、周りの人が徐々に移動し始めた。
どうやら、花火の時間が近付いてきているようだ。

515斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/31(土) 22:00:00
>>514

紅の刺した頬を見て(そういう風だから可愛いというのではないかな)などと考える
普通なら思っても言わぬかもしれないが、これはデートでもある。

 「そりゃ言うさ、デートだし、僕はエスパーじゃないし」
 「閉まっておくには勿体無い気持ちなら言うしかないだろ?」
 
 「それとも、普段から言ってほしい?」

とぼけた調子で綿飴に齧りつく
舌先で雲が甘くほどけた。

 「あまぁい」
 (こんなに甘かったっけかな?)

5年前の記憶では、現在より美しく脚色される物か
そんな事を考えながら、祭囃子の中を2人で歩いていると
人の波が急に変わり始めた。

周囲の人々は何かしらにそわそわしている様子で
ふと思い至って、腕時計を覗き込む

 「――おおっと」

手巻き式のそれは、花火の時刻が着た事を報せていた。
夢見ヶ崎の手を引いて、土手の方まで歩きだす

 「いけない、もう花火の時間だ
 それでデートも終わり、あと少しだけだぜアリス。」

 「驚く準備は良い?」

それだけ言うと、土手を上がった、この向こうで花火が上がる。

516夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/08/31(土) 22:47:18
>>515

「いってくれてもイイよ??いいたいんならね!!」

冗談めかした言葉を返す。
『デート』ってタノシイんだな――――ふと、そんなコトを思った。
だから、時間が経つのを忘れていたのかもしれない。

「――――『オワリ』??」

最初に浮かんだのは、キョトンとした表情だった。
それが次第に、寂しそうな色合いを帯びていく。
最後には、寂しさを残しながらも納得した表情に変わる。

「そっかそっか――」

「――ザンネンだなぁ」

楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。
今の時間が、まさにソレだ。
本当に心から楽しめるデートだった。

「よし!!ウチらもいくよ!!はやくしないと、いいバショとられちゃうから!!」

    ニッ

一転して表情を笑顔に変えて、手を繋いだまま早足で歩き出す。
このデートは、まだ終わっていない。
最後の最後まで楽しまなきゃならないんだから。

517斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/09/01(日) 00:20:47
>>516

祭りの灯が、人影に遮られながらも横目に流れていく光景が
一瞬、何かの川のように見えた

つないだ手に温かさを感じながら、生温い風の吹く夜を
花火の場所へと駆けていく

『其処』につくと、屋台と人の波にに狭まっていた視界が開けた
祭囃子の太鼓の音も、もう遠くでかすかに流れるだけだ

そして、それが空を割くような音でかき消された
見上げると一筋の光が、今まさに空昇っていく所だった。

 「夢見ヶ崎。」

一瞬の後に、それは大輪の花を咲かせた
それを皮切りにして、様々な色の花びらが、空へと咲いては散っていく。

夏を懐かしむ人々が、今この時だけは
言葉にせずとも同じ様な事を考え、この光景を見上げている。

 「――楽しかった?」

自分の生きる理由について、今だけは考えないと決めていた
故に、斑鳩は『それ』を考えない事にした。

 「僕は、勿論。」

微笑みと自分の言葉が、空に咲く花が散る音にかき消されていく
ふと、息苦しさが無い事に気づいて。

その時の斑鳩の表情は、華の色にかき消された。

518夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/09/01(日) 00:59:49
>>517

口を利くことを失ってしまったかのように、ただ空を見上げていた。
『闇』を切り裂いて咲き誇る『光』の花々。
どんなに言葉を並べても表現できない程に美しい光景だった。
その美しさが、記憶の中に残る『ある光景』を思い起こさせる。          リンク
眼前に広がる『闇を照らす光』が、生まれて初めて『光ある世界』を見た瞬間と『同期』していく。

「そんなの――――」

問い掛けられて、斑鳩の方に視線を向けた。
その間も、花火は次々に空へ放たれる。
鮮やかな光が、二人の輪郭をシルエットとして浮かび上がらせた。

「たのしかったにきまってるじゃない」

夜空を彩る光によって、夢見ヶ崎の表情を窺い知ることは出来ない。
しかし、その返事が『本物』であることは間違いないだろう。
発せられた言葉の響きが、何よりも雄弁に『事実』を物語っていた。

「ね、さいごに『オネガイ』があるんだけど…………」

「…………えっと」

花火が終わりを迎えた時、おずおずと話を切り出す。
やや『躊躇い』が見られるものの、その表情は真剣だ。
少しの間だけ口ごもったが、やがて意を決したように口を開く。

「あの…………『め』をとじてほしいな」

「――――みられてると『ハズカシい』から、さ…………」

いつになくしおらしい態度で、上目遣いに斑鳩を見つめる。
これは『デート』であり、もうすぐ終わってしまう。
だからこそ、どうしても最後に『やっておきたいこと』があった。

519斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/09/01(日) 04:03:11
>>518

 「……。」

夢見ヶ崎の最後の願いに斑鳩は迷い、内心冷や汗をかいていた
からかい好きの夢見ヶ崎の事なので、十中八九いたずらだろうとは踏んでいた、が
残りの一が、『スタンドによる奇襲』だった場合、自分に取れる手段と勝ち目があまりにも少なかったからだ

自分が消えて無くなるのは、おおむね問題では無かった、好きで倒れたくはないが、まだ諦めがついた
しかし、自分が消えた後に、祖父母が悲しみにくれたり、両親が二度と目覚めないのは、斑鳩にとって耐えがたい事であった。

しかし目の前にはいつになくしおらしい様子で夢見ヶ崎が居る
何より最初に誘ったのは自分である、そういう覚悟を持てないと至らなかった自身の不覚であった
牛歩の如く鈍い思考で、自身の身と目の前の女を天秤にかけ……

納得できないまでも、諦める事にはした
ここで奇襲を受けて倒れ、両親が目覚めなかったとしても
まだ自分が間抜けで済むが、ここで拒絶するのは彼女にも自分にも失礼であると認めた。

自身より大事な両親を下に見たのではない
ただ、これが最後ならせめて両親に恥じないようにしようと愚考しただけである。

結論として斑鳩は何も言わず、『スタンド』もしまって目を瞑った
ここまでの影の頭との並列処理による思考経過時間 約0.02秒である。

これで終わりかもしれないと考えると恐ろしかったが
はじめての女性とのデートも、失敗を考えると大変恐ろしい物ではあったので、あまり変わらぬと1人ごちた。


――この思考結果、実際は『影の頭部』の第二人格が、俺は怒るばかりなのにお前何楽しんでるんだと
嫌がらせとばかりに『不安』と『まずありえないが、起こるかもしれない可能性』を第三人格の斑鳩に叩き込んだせいなのだが。
まったく難儀な奴である。

提灯の明かりが、祭囃子を伴いながら地を覆い
花火の花弁が惜しみながら、8月に手を振る夜の事であった。

520夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/09/01(日) 21:28:54
>>519

斑鳩の両目が閉じられた事を確認する。
もちろん、『影の頭部』もだ。
それが出ていると台無しにされてしまう。

「きょうはアリガトね」

『不意打ちを食らって再起不能にされる』という可能性は確かにある。
『今すぐ地球に巨大隕石が落下して全人類が死滅する確率』と同じくらいには。
結論から言うと――そうはならなかった。

「『コレ』はカンシャのシルシ」

背伸びをして、少しずつ顔を近付けていく。
その先にあるのは斑鳩の顔。
次の瞬間、『唇』と『唇』が軽く触れ合った。

        トスッ

「『シロウサギ』からアイをこめて」

        クスッ

片手に持った『ウサギのお面』を離し、悪戯っぽく笑う。
自分の代理として、『シロウサギ』にキスしてもらったというワケだ。
やはり、このまま『マジメな雰囲気』で終わるのが耐えられなかったらしい。

(ジツは『マジ』でやっちゃおうかとイッシュンだけおもったケド…………)

たとえば、『額のキス』なら『友情のキス』だし。
『そういうの』ならイイかなとも思った。
イカルガくんのコトはキライじゃないし。
しかし、いきなり初デートでやるのはハードルが高い。
だから、今回は見送るコトにしたのだ。

「――――とちゅうまでイッショにかえろうよ。
 なにせ、よるはブッソーだしさぁ〜〜〜
 『バール』もったヤツにイキナリうしろからなぐられるかもしれないし!!」

         ザッ

『斑鳩翔』と『夢見ヶ崎明日美』の『デート』は、夏祭りの終わりと共に幕を下ろす。
それは、『アリス』にとって一つの『冒険』の終幕だ。
明日からは、また新しい『未知』が『アリス』を待っているだろう。

521夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/09/18(水) 22:06:12

まだまだアツさキビシーまいにちですが、
みなさまいかがおすごしでしょうか??
ジブンとしては、いいカンジにナツをしめくくれたとおもってる。
だけど、こじんてきに『やりのこしたコト』があったのだ。

「――――よし!!いくか!!」

夜の闇を前にして、気合いを入れ直す。
いま、わたしは『でる』とウワサされている
『しんれいスポット』にきております!!
まだ『オバケ』ってみたコトないしイッカイくらいみておきたい。
そんなこんなで、いまからタンケンするコトにするぜ!!
ホラーのくにのアリス・
ウワサのバショでカノジョがモクゲキしたものとは!?

      カチッ

用意してきた懐中電灯のスイッチを入れて、人気のない道を歩き出す。
場所は分かってる。
色んな場所で、『ドクター』の『超人的聴覚』を使って聞き耳を立ててきた。
事前の情報収集はバッチリ。
『アリス』は、リューコーにビンカンなのだ。

「このヘンで『みた』って、さいきんウワサになってるらしいからな〜〜〜」

            ザッ ザッ ザッ

もちろん、『ドクター』は今も出している。
『超人的四感』を駆使して、怪しい気配を察知するためだ。
では、ココでモクゲキシャのインタビューをごらんいただこう…………。
あのトキはトモダチにさそわれてカルいキモチでいったんですが、
まさか『あんなコト』になるなんて……。(T.Yさん、だいがくせい)
きもだめしちゅうのワカモノたちにおきた、
みのけもよだつキョーフのエピソード…………つづきはCMのあとで!!

522リカオン『アタランテ・オーバーチュア』:2019/09/19(木) 22:07:43
>>521

君『夢見ヶ崎』が懐中電灯片手に向かう先は人通りも少ない
草むらが歩道もはみ出る場所だ。真夏なら薮蚊も舞いそうながら
今の季節だと既に飛んでる虫も程ほどと言うところだろう。

すると、ぼんやりと人魂のような光がぼんやり見えてくる・・・

「ヤブカンゾウ、それと芹か」 ガサガサ

近くへ行くと、その草むらの中を屈んで何かしている怪しい人影が
電灯の下に映った。幽霊と言う感じでは無さそうだ
腰に提げてるランタンタイプの懐中電灯が人魂らしき正体だ。

「んっ、なに? 眩しいな」

屈んだ人影が立ち上がる。17、8程度の女性だ。
眩しそうに懐中電灯より先の貴方に、目を細めよく見ようとしている。

523夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/09/19(木) 23:06:04
>>522

    ピクッ

「――――おん??」

草葉が揺れる物音を、『ドクター』の『超聴覚』が素早く捉える。
そこにダレかがいる。
コレは、ついに『でた』か!!

「ワレワレしゅざいはんがモクゲキしたモノとは!?
 いま、ウワサのショータイがあきらかになる!!」

               バッ

その方向に懐中電灯を向けた。
ユーレイにはみえない。
みえないっつっても、みたコトないんだけど。
ココは、たしかめてみるヒツヨウがあるな!!
すぐにあきらめてしまっては、『アリス』はつとまらないのだ。

「みたところ、おなじくらいのトシらしいぞ。
 はたして、『ウワサのユーレイ』はニンゲンだったのか??
 ワレワレは、さっそくカガクテキなケンショウをこころみた!!」

                       ザッ ザッ ザッ

『カガクテキなケンショウ』――つまり、『近付いて確かめる』というコト。
眩しそうにしているから、懐中電灯は下ろした。
そういうワケで、傍らに人型スタンドを連れた少女が歩いてくる。

524リカオン『アタランテ・オーバーチュア』:2019/09/19(木) 23:19:42
>>523

「やぁ、こんばんわ。・・・元気だなぁ」 フフ

ユーチューバーとか、そう言ったノリを彷彿とさせるけど
カメラは見当たらない。代わりに独特なものを隣に引きつけてる。
人によっては物騒に感じるだろうけど、殺気立った『餓え』は感じない。
どちらかと言えば、月夜に浮かれて散歩する中型犬と言う感じだね。

「そちらも、こんばんわ。私は尾月
尾月 李下と言う名前なんだ。けど、リカオンって呼んで欲しいな」

彼女の片割れ『ドクター・ブラインド』にも挨拶。そして

「そして、こちらは私の片割れ」  ズッ・・・

『アタランテ・オーバーチュア』を数秒程発現させて挨拶しておく。
彼女は啓蒙深いが、余り社交的では無いからね。ガールズトークが
出来るようなら私も願ったり叶ったりなんだけど。

「こんな夜更けに散歩かい? まぁ、その子がいれば安心だろうけど」

「私はルーチンワークの野草チェックで此処にいるんだけどね」

525夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/09/19(木) 23:47:33
>>524

「『リカオン』??じゃあ――――」

『リカちゃん』だな。
そう言おうかと思ったが、止めた。
何かコダワリがありそうだし、そういうキモチは分かる。

「まぁいいや。『リカオン』かぁ〜〜〜。
 わたしは『アリス』というモノ!!はじめまして、どうぞヨロシク」

「ほうほう!!『リカオン』も『スタンドつかい』なのかね。
 なんだかたのしくなってきた!!なかよくしようぜ!!」

『ミチ』とのファーストコンタクト。
アイサツは、しっかりしておく。
ダイイチインショウがダイジだからな!!

「いやいや、さんぽってほどじゃないな。
 このヘンでウワサされてる『ナゾのユーレイ』をしらべにきたのだ!!」

「そのショウタイは『リカオン』だった!!これはスクープだな!!」

     キョロ キョロ キョロ
                  キョロ キョロ キョロ

「――――で、ナンか『おもしろいショクブツ』とかはえてんの??
 『ウサギ』みたいなカタチしてるとか、『フランスこっき』みたいなイロしてるとか、
 『ブルーチーズ』みたいなニオイしてるとか??」

526リカオン『アタランテ・オーバーチュア』:2019/09/20(金) 00:10:08
>>525

「アリス、アリスね。スナーク狩り」 ヒュ〜ッ


「良い名だ」
口笛一つ。こんな夜更けに少々毛色の異なる少女が二人。
蛇もブージャムも誘われる事は無いだろうけど。

>『おもしろいショクブツ』とかはえてんの??

「生えていたら面白いけどね。ただ、私のしてる事は他の人には
酷く退屈に見える作業だよ。オオバコとか犬麦とか、ありふれた物が
何処に咲いてるか確認して地図に印すだけだから。
なんでそんな事するかって?
植物は、私達の支えだからね。タンポポだって根を乾燥して粉末状にして
飲めば快便開通 ウンの字もさっぱりっ! てね」

少々下品な話だったかなと、軽く笑いつつ告げる。

「昔はずっと山に祖父と入り浸って、茸なり何なり味見してたもんだよ。
今でも時間が許せば行くけど・・・・・・日常生活を送ると、どうしても
行く機会が少なくなって参っちゃうよ。だから、少しでも山の気配って言うのかな。
慣れ親しんだ自然を都会の中で見つけて憩いたいんだ」

変かも知れないけどねと呟きつつ微笑む。
けど、私は根っからの『狩り』に生きる者だから。
山と生きて山と共に死したいから。そこは譲りたくない。

「因みにアリスさんは、不思議とは縁があるのかい?」

幽霊を追い求めるアリス。中々斬新だ
鏡や不思議の国でも地下室でもない。


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