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【場】『自由の場』 その1

1『自由の場』:2016/01/18(月) 01:47:01
特定の舞台を用意していない場スレです。
他のスレが埋まっている時など用。
町にありえそうな場所なら、どこでもお好きにどうぞ。

188小石川文子『スーサイド・ライフ』:2016/09/21(水) 00:41:00
>>187

   「はじめまして、朝山さん。私は小石川――小石川文子よ。」

そして、目の前では、先程から少女が活発に動き回っている。
『とても元気な子』というのが第一印象だった。
まるで真夏の太陽を思わせる眩しさだ。
その言動から、自分とは正反対といった感じを受けた。
こういった溌剌とした姿を見ていると、こちらも元気を分けてもらえる気がする。

       パチパチパチパチ

   「――本当にとっても賢いのね。凄いわ」

権三郎の見せた芸に素直に感心し、拍手で応じる。
どのようなものであれ、両者の間で意思疎通ができていなければ、芸はこなせない。
それができるということは、やはり賢いということなのだろう。

   「それに、とっても仲がいいのね。なんだか羨ましいわ」

意思疎通を行うためには、お互いの心が通じ合っていなければならない。
この一人と一匹の間には、確かな絆が感じられる。
不意に、自分にも、そんな相手がいたことを思い出す。
一瞬、表情に陰が差したようだった。

189朝山『ザ・ハイヤー』:2016/09/21(水) 19:27:15
>>188

悪の首領並び、パワフルな少女朝山は褒められて鼻高たかだ!

 「ふっふっふ! 権三郎は生まれた頃からずっと私と
一緒なんっス! 一緒に御飯を食べて、そして一緒に眠った頃もあるっス!
今でも冬とかは一緒に寝るっス! あんまり、布団で一緒に寝るのは
お行儀よくないから、他の季節では犬小屋で寝るっスけどね」

「だけど、そう言う事を抜きにしても権三郎と私の絆は鉄よりも固いんっス!
パワフルっス! うおおおおぉぉ!! 権三郎!! 大好きっスぅぅぅうう!!」

 ごろごろごろごろごろっ!!

 『パァァアゥゥウッ!!』ゴロゴロゴロ!!

 権三郎に抱き着いて、地面をゴロゴロするっス! 権三郎もパワフルにゴロゴロっス!

砂がいっぱい体にくっつくけどパワフルの前にそんなのは無問題なんっス!!

 ―ピタ。

 と、ゴロゴロと砂浜を転がるのを止めて、起き上がるっス。

「……大丈夫っスか? なんか、おねーさん辛そうっス」

そう、朝山は野生の勘なのか小石川を真顔で見つめて言った。

「あっ! お腹が痛いとかなら権三郎を抱いてみるといいっス!
 あったかいから、多分お腹のズキズキにも効くっスよ!
私も食べ過ぎた時、権三郎をぎゅーっと抱きしめると苦しいのが薄れてくるっス!」

 何だか、目の前のおねーさんが少し痛そうな顔をしてたのを見逃さなかったっス!
きっとお腹が痛かったりとかしてるっス! 悪の首領の目は誤魔化されないっス!
 正露丸とかないけど、そー言う時は権三郎をぎゅっと抱き着くと痛いのも薄れるっス!

 権三郎を抱きかかえて、おねーさんのお腹の場所に近づけさせてあげるっス。
権三郎も、優しい奴っスから。痛がってる人にはちゃんと大人しく抱きしめられるっス!!

190小石川文子『スーサイド・ライフ』:2016/09/21(水) 21:56:33
>>189

   「――ありがとう。……いい子ね」

権三郎を受け取り、両手で抱きかかえる。
無垢な温かさに、胸の中にある痛みが引いていくようだった。
顔の上に差した陰も、徐々に和らいでいく。
しばらく触れ合ったのち、権三郎を地面に下ろした。
その表情は、いくらか明るくなっている。

   「本当はね、身体が悪いわけじゃないのよ」

   「私にも、あなた達のように一緒にいた人がいたんだけど……お別れしちゃったの」

   「それで……少し寂しくなってたんだと思うわ……」

そう言って、海の方を見つめる。
まるで、その先に別れた相手がいるかのように。
やがて、再び一人と一匹の方へ顔を向けた。

   「でも、ありがとう。朝山さんと権三郎のおかげで、元気になれたから」

最初に見た時と比べると、少し明るくなった微笑が、その顔に浮かぶ。

191朝山『ザ・ハイヤー』:2016/09/21(水) 22:22:15
>>190

>あなた達のように一緒にいた人がいたんだけど……お別れしちゃったの

「ふ〜む、そうなんっスか。遠いところなんっスか? ブラジルとかだと
日本に戻ってくるのも大変っスよねぇ……」

 『パゥーゥ……』

 小石川おねーさんが海を見てるので、こっちも背伸びをして海を見るっス。
権三郎も私と一緒に首を伸ばして海を見てるっス。まぁ、誰かが海から来る事はないっスけども。

 朝山 佐生には、隣の彼女がどのような悲しい離別を体験したかは露とも知らない。
だから、発言通りに海の向こう側の外国にでも行ったのだろうと思った。

>朝山さんと権三郎のおかげで、元気になれたから

 「ふっふっふっ! こんな事で良ければ何時だって私は
小石川おねーさんの為に権三郎をっ、手を貸してあげるっスよ!」

 シャキーンッ!

 「私はいっつもパワフルっス! 海は綺麗だし見てるとすっごく
パワフルになれるっス! そして、今日は小石川おねーさんとも
出会えたっス。  むむっ!? ちょっと待って欲しいっス…いま、私は凄く重要な事に気づいたっス」

 両目の端のくぼみに、両手の人さし指を当てるっス。そして二秒ほどして
パンパカパーン! と両手を上げるっス。そうっス! これは気づかなかったっス!

「いま、私は気づいたっス! 我が愛犬にして相棒かつ無二の家族である権三郎は
小石川おねーさんに抱き上げ、抱き上げられた関係になったっス。
 そして私もたびたび権三郎を抱きしめ、抱きしめられる関係っス。
 ―つまり、こりゃーもう小石川おねーさんと私は友達の関係に収まったと言う事っス!
大発見っス! 私と小石川おねーさんは友達のようだっス!
 おお! 改めて友よ!! 友達の悩みは私の悩みっス! もし今が悩みあるならば
この朝山 佐生に話してみるといいっス。何でも解決してあげるっス!」

 シャキ シャキーンッ!

 どうやら、貴方と朝山は既に友達のようだっ!
悪のポーズと共に、貴方の悩みを聞く準備を整わせている。

192小石川文子『スーサイド・ライフ』:2016/09/21(水) 22:59:44
>>191

   「ありがとう……。朝山さんと友達になれて、とても嬉しいわ」

それは、単なる社交辞令などではなく、心からの言葉だった。
失った絆を取り戻すことはできない。
しかし、新しい繋がりを作っていくことはできる。
それが自分の心の傷を癒し、生きる糧ともなってくれる。
生き続ける道を選んだ今の自分にとっては、それが何よりも大切なことだ。

   「そうだわ……。友達の記念に――」

   「これをどうぞ」

バッグから取り出したのは、ガラスの小瓶だった。
その中には、ドライフラワーとなったラベンダーの花が詰っている。
蓋を開ければ、芳しい香りが周囲に漂うだろう。

   「いつも持ち歩いているのよ。この香りがあると、気持ちが落ち着くから……」

小瓶を差し出して、にこりと微笑む。

   「悩み……。そうね……。実は凄く悩んでいることがあるの……」

そう言って、深刻そうな表情をしてみせる。
そして、おもむろに口を開いた。

   「今夜の夕食のメニューが決まらないの……。
   これから買い物に行こうと思うんだけど、何を買えばいいか……。
   良かったら、一緒に考えてもらえないかしら?」

自分の心に纏わりつく死の衝動――それを打ち明けるには、彼女は純粋すぎる。
そう思い、考え出した悩みが、これだった。
実際、メニューが決まらずにいたのは事実であり、嘘ではなかった。

193朝山『ザ・ハイヤー』:2016/09/21(水) 23:17:50
>>192(かしこまりました。では、此処らへんで自分は〆させて頂きます。
お付き合い有難う御座いました)

 「わぁ! 有難うっス! ん――ッ! とっても良い香りっス!!
いつも枕元に置いて眠る事にするっス! 小石川おねーさん有難うっス!
今日は良い夢が見れそうっス! 今度会った時、私も素敵なプレゼントあげるっス!」

 小瓶を大事に持って、跳ねつつお礼を言うっス!
ラベンダーの胸がすーって癒されるような香りが素敵っス! パワフルっス!!

 「今日の夕飯のメニューっスか!
ふふんっ! ならば私が良い魚屋で秋刀魚を安く勉強して貰うようにしてあげるっス!
 あと良い秋ナスと柿が売ってる所も知ってるっス! 秋刀魚を焼いて
ナスを焼くか浸して、柿を切ってサラダにすると美味しいっスよ!
 それじゃー レッズ ラ ゴ―ッ ス!!」

 『パァ〜ウゥッ!』

 朝山の無垢さに、大人の彼女はあえて深い部分の傷を出す事はなかった。
それは、きっと今日の出逢いの中では賢良な考えであっただろう。

 貴方を導くように、駆け足で朝山は貴方を置いていかない速度で走る。

 きっと、今もその先も 朝山は明るい世界が広がってると信じてるから。

194小石川文子『スーサイド・ライフ』:2016/09/21(水) 23:38:49
>>193

   「力になってくれてありがとう。とっても助かるわ」

砂浜を踏みしめて、少女の後に続く。
きっと、本当に人を幸せにできるのは、彼女のような人間なのだろう。
実際、今の自分がそうなのだから。
願わくば、彼女――朝山佐生には、いつまでもその輝きを失わないで欲しい。
少女の背中を追いながら、そんなことを考えていた。

     ザァァァ……

                 ザァァァ……

波が寄せては引いていく。
いつも通りの変わらない光景。
しかし、今は、立ち去っていく二人と一匹を見送っているようにも思えた――。

195小石川文子『スーサイド・ライフ』:2016/10/15(土) 22:45:18
――AM6:00――

カーテンの隙間から差し込む朝日を受けて、ゆっくりと目を開き、静かにベッドから起きあがる。
寝間着である薄手の白いワンピースの上に、まとめていない長い黒髪が垂れ下がった。
簡単に髪を括ってからガウンを羽織り、二階の寝室から一階に降りていく。
家の中には、自分以外に誰もいない。
時々まだ寂しさを感じることはあるが、一人きりの生活にも、今はだいぶ慣れた。
キッチンに立ち、簡単な朝食の支度に取り掛かる。

「――いただきます」
今朝の朝食のメニューは、クロワッサンとスクランブルエッグとコールスローサラダだ。
このクロワッサンは、昨日の夜に成型まで済ませて冷蔵庫に入れておいた生地を、
今朝オーブンで焼いたものだった。
天気予報によると、今日は一日を通して快晴のようだった。
今日は、これから出かける予定がある。
天気に恵まれたのは、とても有り難いことだった。

食事と後片付けを済ませた後で、出かける準備に取り掛かる。
着慣れた喪服を身に纏い、髪を丁寧に整え、黒いキャペリンハットを被った。
そして、一枚の写真を懐に忍ばせ、郊外にある自宅を出て行く。

196小石川文子『スーサイド・ライフ』:2016/11/19(土) 22:46:30

H湖の岬に位置する天文台。
その展示室に、黒い帽子と喪服に身を包んだ人影が、静かに足を踏み入れる。
夜空をイメージした薄暗い照明の下で、各所に配置された惑星のオブジェが、仄かな光を放っている。
今は『隕石』の展示をやっているようだ。
ガラスケースに視線を落とし、その中にある『隕石の欠片』を鑑賞する。

宝石のように美しい訳でもなく、貴重な資源になる訳でもない。
言ってみれば、『ただの石』だ。
それでも、宇宙から来たと言われれば、なんとなく不思議な魅力があるように感じられた。
それは物質的な価値ではなく、それを見た人間の心の中に、何かを生じさせる精神的な価値なのだろう。
そうした力が天文学を発達させ、ロケットを飛ばせ、人間を地球の外まで行かせたように思える。

  「――不思議ね」

物思いに耽りながら、小さく呟いた。

197雑賀 華『イッツ・ショウ・タイム』:2016/11/19(土) 23:41:36
>>196

「?」

「隕石……?」

あなたの隣で隕石の欠片に釘付けになっているものが一人。
サイズの大きな服を着ている。

「……不思議」

198小石川文子『スーサイド・ライフ』:2016/11/20(日) 00:04:30
>>197

いつから隣にいたのだろうか。
傍らに立つ少年に気付き、静かに顔を上げる。

  「こんにちは」

微笑と共に挨拶したのち、再びガラスケースに目を向ける。

  「そう――不思議……ですね……」

  「なんでもない石かもしれないけど――」

  「何か……不思議な魅力があるような気がします」

幸い、今は人も多くないので、ゆっくりと展示を鑑賞することができる。

199雑賀 華『イッツ・ショウ・タイム』:2016/11/20(日) 00:39:24
>>198

「あぁ、どうも。こんにちは」

礼をする。
それから顔を上げて。

「えぇ、不思議、です」

「この石があった場所になにがあるのか、とてもとても」

200小石川文子『スーサイド・ライフ』:2016/11/20(日) 21:00:16
>>199

  「そう……ね……」

何があるのか――その言葉を心の中で反芻する。
この欠片が、どこか遠い星の一部だとしたら、そこには何があるのだろうか。
それは砂や石しか見当たらない不毛の土地かもしれないし、
高温の気体に包まれた灼熱の世界かもしれない。
あるいは、そこには豊富な水がたたえられ、新鮮な空気と豊かな自然があるのかもしれない。
もし、そんな場所だとしたら、そこに住む生き物だっていないとは言い切れない。

  「もしかしたら――そこには、誰かがいるのかもしれませんね」

  「この欠片が、その誰かから届いたメッセージだとしたら、素敵なことだと思います」

  「あなたは何があると思いますか?」

201雑賀 華『イッツ・ショウ・タイム』:2016/11/20(日) 22:46:28
>>200

「この石のある場所……ですか」

むむむと悩んで顎に手を当てる。
ただし顔はにへらと笑っている。
それから少ししてくるんとその場で一回転。
指パッチンの要領で指を鳴らせばそこから花が現れる。

「綺麗な花畑、というのは素敵、でしょうか」

「……宇宙を旅する根性のある石ならもっと荒れた土地の生まれかもしれませんが」

「あ、花いります?」

202小石川文子『スーサイド・ライフ』:2016/11/20(日) 23:11:13
>>201

突如として現れた花を見て、目を丸くする。
やがて腕を伸ばし、その花を受け取った。
その後、手にした花を胸に挿した。

  「ありがとう」

  「あなたは……魔法使いなのかしら?」

  「もし、あなたが手品師でなければ、ね」

控えめながら、やや冗談めかした口調だった。
そして、くすりと笑う。
その顔に奥ゆかしい微笑が浮かぶ。

203雑賀 華『イッツ・ショウ・タイム』:2016/11/20(日) 23:24:00
>>202

胸に右手を当て、左手はスカートをつまむジェスチャーで礼。
もはやどちらか分からない。

「残念ですが、私は魔法使いでなく手品師。でなければ奇術師、ペテン師、もしくはそれら全てです」

ふふっと声を漏らすが顔は無表情。

「もしくは学生」

「ところでどうしてここに?」

204小石川文子『スーサイド・ライフ』:2016/11/20(日) 23:43:30
>>203

  「そのどれだったとしても――」

  「あなたが手品が上手なことだけは変わらないでしょうね」

胸にある花に手をやりながら、そう返した。

  「まだ来たことがなかったから、かしら」

  「この町のことをよく知りたいから」

  「だから、できるだけ色んな場所へ行きたいと思っているの」

言いながら、ほんの少し目を伏せる。
そして、再び少年に向き直った。

  「あなたは?」

205雑賀 華『イッツ・ショウ・タイム』:2016/11/21(月) 00:22:08
>>204

「おほめいただき、少々照れます」

「照れ照れ」

と言いつつ両手をほおに添える。
微妙な笑みを口に浮かべながら。

「この町を。それはそれは」

「いいですね。地元愛、いえ街への愛」

「……私、ですか?」

両手で顔を挟みながら小首をかしげる。

「強いてあげるなら、暇だったからですか」

「もしくは寂しかっただけです」

206小石川文子『スーサイド・ライフ』:2016/11/21(月) 00:54:12
>>205

  「私も時々そんなことがあるわ……」

ため息をつくように言葉が口から出る。
少年の言葉には、少なからず共感を覚えた。
思わず陰りが差す表情を隠すように、顔を伏せた。

  「――でも、今は違うわね」

まもなくして、顔を上げる。
その表情は先程と同じに戻っていた。

  「こうしてお話させてもらっているから」

ふと、先程の花に視線を向け、続いて隕石の欠片を見つめる。

  「なんだか……似ているような気がするわ」

誰ともなしに、ぽつりと呟く。

  「違う星同士と違う人間同士――」

  「そして、その間を繋ぐものがあって……」

  「ごめんなさい。変なことを言って」

207雑賀華『イッツ・ショウ・タイム』:2016/11/21(月) 23:51:06
>>206

「そうですか。それは良きこと」

二三度頷き、花を見る。

「変なことなど」

「いえ、私の感覚が人と同じかはわかりませんが」

また指パッチンのような仕草。
今度は花は出ない。

「人と人をつなげるのなら私はいくらでも出しましょう」

「雑賀華。私の名にある花をいくらでも」

208小石川文子『スーサイド・ライフ』:2016/11/22(火) 00:20:02
>>207

両手を胸に当て、少年の言葉を噛み締める。
心の中に何か温かいものが生じるのを感じた。
物質的なものではなく、精神を満たしてくれる何か。
もしかすると、それは隕石の欠片を見た人が感じるものと、少しだけ似ていたかもしれない。

  「ありがとう――」

  「私は小石川文子」

  「もし、よかったら、少しご一緒しませんか?」

  「ご迷惑でなければ」

生憎こちらには渡す花はない。
その代わり、花が開くような微笑みを、彼に見せた。

209雑賀 華『イッツ・ショウ・タイム』:2016/11/22(火) 00:28:48
>>208

「いえ、私はお礼を言われることなんてしていません」

開いてた手を向ける。
そして、微笑みに少し赤くなりながら。

「……えぇ」

「もちろん……です」

「よろしくお願いしますね。えぇ、えぇ」

そういって彼もまた笑った。

210小石川文子『スーサイド・ライフ』:2016/11/22(火) 00:43:22
>>209

  「こちらこそ、どうぞよろしく」

そう言って、彼の傍らに立つ。
ふと先程の隕石の欠片が脳裏を掠める。
偶然地球にやって来た石と同じように、こうして偶然出会って同じ時間を共有している。
そのことを改めて意識した。

  「……不思議ね」

そんな台詞を思わず呟いていた――。

211?????『??ー?・??ー?ー』:2016/12/17(土) 19:47:01
「『窓用振動センサー』」
「『防犯砂利』」
「『窓に貼るだけ防犯フィル厶』」

「個人レベルではここまでですか…
 俺が『不法侵入』できる程度のセキュリティである必要もありますからね」


若い男が何十個もの防犯グッズが入った袋を持って歩いている。

212朝山『ザ・ハイヤー』:2016/12/17(土) 22:32:05
>>211

 ぴくっ

「んんっ!?? いま、不法侵入って言ったっスか!?」

『パゥっ!』

 権三郎の散歩してる最中っス。
不法侵入されないようにって言うなら、わかるっス…
 けど、不法侵入するって言うと 今から空き巣でも決行しようと
してる見たいに聞こえたっス!

振り向いて、声のほうこうを見るっス! こりゃーきっと
悪い事を企む人間の筈っス!! 悪の組織に入るべき人間かも知れないっス!

213?????『??ー?・??ー?ー』:2016/12/17(土) 23:27:01
>>212
「えッ俺ですか」

その時、男は所謂『オフ』であった。職場を離れていて、そのため数少ない私服を引っかけて歩いていた

そのため朝山の目に入ったのは、
長髪を邪魔にならぬよう後ろにまとめ、
ポケットがたくさんついてて物がいっぱい入るジャケットと黒のカーゴパンツ、安全靴を履く、
『仕事用具』の詰まった巨大なバッグを背負っている…

…という、男がむかし『事情有って不法侵入とかに明け暮れていた』ときの装備のままである。

特筆事項として、目に眼帯を当てている。男の姿は、見る人が見ればアヤシイと思うだろう。


 「………ハイ俺です!!!!!!!!」
 「でも俺の防犯意識ゆえですよ
   見てくださいこの防犯グッズぅ!!!!!!!」

ビニールに入った、とても一人用とは思えない量の防犯グッズを見せびらかす!

214朝山『ザ・ハイヤー』:2016/12/17(土) 23:36:13
>>213

朝山は私服だ。今は冬の時節だから厚着はしてるものの
比較的動きやすいコートと冬のズボンを、同色の明るい色で統一させ纏っている。

 「うわーーー!! 凄いいっぱいの防犯グッズっス!
むむむ…成る程、成る程。おにーさんは防犯グッズの
マーケティングを行ってる人っスね!」

 ビシッと、指して告げるっス!

朝山からすれば、まさか泥棒が防犯グッズを見せびらかすとは露とも知らない。

「けど、こんなに一杯あると言う事は売れ残ってるって事っスね。
可愛そうにっス……これ程売れ残ってなら、上司さんにも怒られるっスよね」

『パウゥンッ』

同情の眼差しを、朝山+権三郎は男を見上げて呟く。
 悪の首領は、素直な感性で男を哀れんだ。

215?????『??ー?・??ー?ー』:2016/12/17(土) 23:51:59
>>214
もちろんそんな事はないので否定する。

「職場のそばに不審者が出るとの噂なので俺が自費で買ったんです!!」

「俺は売りませんよ買うんだったらむこうの店で買ってきてください」
「そこの二番目の信号の、左に曲がって、脇の大きな看板のあるビルの3階です」
「俺がこれだけ買ってもまだ余ってましたよ」

丁寧に店舗の場所も教えちゃう。

 >『パウゥンッ』
「何です?」

216朝山『ザ・ハイヤー』:2016/12/17(土) 23:59:47
>>215

「いま、権三郎は『そうだねぇ』って言ったんスよ!
私の言葉に同意してくれたんっス」

『パウッン!』

「いまのは、『そうだよっ!』って同意の相槌っス
権三郎は、とっても頭の良い犬なんっス。私ともお喋り出来る
スーパードッグなんっスよ。まぁ、信頼あっての賜物っス」

権三郎がいかに天才であるかの紹介を終えて、話を戻すっス!

「フッフッフ! 自分、以前は恐ろしき敵をもパワフルに倒した
実績があるっス! 防犯グッズに頼るような甘さはないのっス!!」

 クルクル  シュッ  タンッ シャキーンッ!

決めポーズと共に、力を自慢するっス。

「けど、お店を教えてくれたのは有難うっス。いまの世の中
何があっても可笑しくないっスからね。私の友達にも、お店のほうは
紹介しておくっス! その防犯意識の高さに対し、私もパワフルに敬意を抱くっス!」

シャキーンッ!!

 今日は調子が良いので、更にパワフルにポーズの二回目も決めるのだっ!

217?????『??ー?・??ー?ー』:2016/12/18(日) 00:22:54
>>216
「…犬かこれ」「犬?」「これスタ……」


> クルクル  シュッ  タンッ シャキーンッ!

 「防犯意識なんてそんな」
 「『俺が不法侵入できる程度』の防犯設備に留めてますからハハハ」
 「入れなくなったら困っちゃいますからねえ」

>シャキーンッ!!

「ハハっ何ですかそれ変なポーズですね」

218朝山『ザ・ハイヤー』:2016/12/18(日) 22:12:03
>>217

 貴方は、権三郎を見て首を傾げた。
権三郎の見た目は、比較的柴っぽい白色の犬だ。
良くCMで活躍してるお父さん犬と同種の、ちょっと雑種が
混じってる感じだと想像して貰えれば早い。スタンドを使えそうな気配は余りない

「……?? 不法侵入できる程度、っスか。
ん〜〜〜、もしかしてももしかしなくても……わかったっス!
 ――ズバリ、そっちは泥棒っスね!」

 いま、私は看破したっス。この目の前にいる人はきっとドロボーっス!

「ドロボーならば容赦しないっス……
我が、必殺技を喰らうが良いっス!! いざ――!!」


      ――エクリプス ダンス!!

219朝山『ザ・ハイヤー』:2016/12/18(日) 22:24:36
               ∩___∩
                / ⌒  ⌒ 丶|     エクリプス ダンス♪ エクリプスダンス♪
                 (●)  (●)  丶        ダンスダンス♪ エクリプス♫
              ミ  (_●_ )    |
             ミ 、  |∪|    、彡____
                 / ヽノ      ___/
                〉   〉 /\    丶
                 ̄   \    丶
                      \   丶
                       /⌒_)
          } ヘ /
                 ♪  J´ ((

 ――――――――――――――――――――――――

説明しよう! 『エクリプス・ダンス』とは、悪の首領モーニングマウンテンが
発案した必殺技の事である!
 目前の相手に対し、かつて星見町を侵略せんと大いなる恐怖を起こした
エクリプスの力を僅かにでも感じさせる舞いを披露するのである!
 この恐ろしき技は、かつてエクリプスと相対したものや、そうでないものにも
決して拭いきれぬ衝撃を与える事であろう!!

 尚、この必殺技によって相手に及ぼす身体的ダメージは皆無である。

220?????『??ー?・??ー?ー』:2016/12/18(日) 23:40:35
>>219

  エクリプス♪   ダンス♪   エクリプスダンス  ダンスダンス♪   エクリプス♪
   Λ_Λ     /´)_(`マ      Λ_Λ       Λ_Λ      _Λ_Λ_ 
   (´・ω・`)   (( (´・ω・`) ,,    (´・ω・`)     (´・ω・`)     ) )・ω・( ( ,,
  (( /つこ/ ,,     /   /     ((  ( ∩∩ノ "     と   ノつ  ((  `/   /´
   しーJ       しーJ        しーJ        しーJ        しーJ


朝山は攻撃的ダンスを繰り出した



       / ̄ ̄ ̄ ̄\
      /;;::       ::;ヽ
      |;;:: ィ●ァ  ィ●ァ::;;|
      |;;::        ::;;|
      |;;::   c{ っ  ::;;|
       |;;::  __  ::;;;|
       ヽ;;::  ー  ::;;/
        \;;::  ::;;/
          |;;::  ::;;|
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男は困惑している。

221朝山『ザ・ハイヤー』:2016/12/18(日) 23:50:56
>>220

 「ふぅー 良い汗を掻いたっス!」

軽く額から流れた一筋の汗を拭い去り、やり遂げた顔をする朝山。

 「さて、これでドロボーさんの泥棒をする気持ちも
少しは薄れたと思うっス。
 悪事をしたいのなら、もっと世界征服などの大きな事を目指すっス!」

 と 本人はいたって大真面目に男に対し言葉を投げかける。
そこで、はたと朝山は気づいた。

 「……そう言えば、まだ名前も何も聞いてなかったス。
どろぼーさんって言い方だとみんな吃驚するっス!
 名前を教えるっス! 私は朝山 佐生っス!」

 シャキーンッ! とポーズを決めて自己紹介するっス。

エクリプス・ダンスを披露した今。目の前のドロボーさんも
私の言葉に服従するに決まっているっス!!

222常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』:2016/12/19(月) 00:09:32
>>221

 「…まだこの俺をドロボウと思っていらっしゃるのですか」
 「……ならば自己紹介をしますよ!!!!!!」

大きなカバンから取り出したるは、
……黒のワンピース!フリルのたくさんついた白いエプロン!!
リボン!!!ツヤツヤの革靴!!!
それらを目にも止まらぬ速さで纏う!

 「俺は常原マコト…『家政婦』です!!!!!」

何という事か!常原マコトと名乗る男は、その性別でありながらメイド服を着用している!?
男が。メイド服。なんたる非現実的な光景。

 「俺もシャッキイイイイ―――イイイン!!!泥棒でない事が分かりましたか!!?!?」

見栄を切った!。誇らしげな顔つきである!

223朝山『ザ・ハイヤー』:2016/12/19(月) 00:27:36
>>222


 「あ    あ    そ  その姿は」


「仮〇のメイド〇イっス  本物っス―――!!」

ド―――ン!!

 朝山は、その姿を直視すると共に悟った。

彼、常原こそアニメに出てきた伝説のメイドガイ その人だとっ!

「うわーーーすごいっス! 生のメイドガイっス!!
空を飛んでみて欲しいっス! 超能力や催眠術も使ってみて欲しいっス!
付けてる褌で戦って見て欲しいっス! あっ! サイン欲しいっス!!」

 ピョンピョンと興奮しつつ、常原ことメイドの左右を跳ねつつ喋りかける。

すっかり、常原を伝説のメイドガイであると認識したようだ。

224常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』:2016/12/19(月) 01:00:20
>>223
「はははははは凄いでしょう!!!!」
「メイドガイ・幽波紋!!!」

気をよくした常原はヌイグルミ様のスタンド『ドリーム・ウィーバー』を発現!


「メイドガイ・ソーインググッズ!!」
スタンドの手から裁縫道具を出した。

「メイドガイ・手芸用品!!!」
スタンドの手から裁縫用具を出した。

「えっと……メイドガイ・裁縫用具!!!!」
スタンドの手から裁縫用具を出した。

225朝山『ザ・ハイヤー』:2016/12/19(月) 19:06:25
>>224

 「うおぉ――! 凄いっス!!
メイドガイはスタンドも出せるっス!!」

 グンッ!!

朝山も勢いに乗ると『ザ・ハイヤー』を小脇に発現させた。
 更に一つの球体を片手に発射して自分に命中させる。

 「うおおおぉぉ!! 私もニュー・エクリプス・ダンスを舞うっス――!!」

〜〜〜♬🎵!!

 常原の周りで、高速で手やら足やら動かしつつ踊りっぽい動きを始める。
権三郎もその周りを疾走しつつ、段々と混沌が立ち込めてきた。

226常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』:2016/12/19(月) 23:51:23
>>225
悪の頭領が謎のダンスを踊っている!犬がくるくる走る!
手品が種切れを起こしたメイドガイも困ったのでとりあえず踊り出す!!!
あまりの光景に見世物とおもった観衆が集まる!

  
  ♪  ∧_∧     ♪     ∧_∧
     (´・ω・∧_∧    ∧_∧´・ω・`) )) ♪
   ∧_(,∧つ(´・ω・`) ))(( (´・ω・`)と∧_),∧
(( (´・ω・`) ( つ  )    (つ   )(´・ω・`) ))
   ( つ  ヽ  とノ ♪    〉と/ つ )
    〉 とノ )^(_)     (_)(   とノ
   (__ノ⌒(_)          (_)⌒ヽ__) ♪

   
                 (^ω^∪ )三=

   `∧_∧∧_∧ ∩_∩`∧_∧∧_∧ ∩_∩
   (   )(   ) (  )  (   )(   ) (  )
  (∧_∧ (  )∧_∧(∧_∧  ( )∧_∧
   (   )∩_∩(   )(   )∩_∩(   )


混沌は『加速』しているッ!!

227朝山『ザ・ハイヤー』:2016/12/20(火) 13:14:00
>>226

 『運命』とは 常に不規則であり予測回避などし得ないものであるッ!

朝山と常原の織り成す『混沌』のビート! それもまた星見町の破滅に
繋がり得ない熱情の坩堝の波紋が広がっていく!

 キャー! ワ―ッ  キャー!  ワー! 

 まるでライブ会場の如く、見物客達も遂に御捻りを投げ始めてくれた!

 ………………

 …………

 ……

「いやーっ、すっかり盛り上がったスねぇ」

十数分後、踊り終わった暁には手の平に収まる程度の小銭が二人の前に募っていた。

きっと、ジュースを三本程度買うには十分な額だった筈だ。

 「喉も渇いたっス! みんなでジュースを飲むっス!
権三郎は、爽やか魚座の真水を渡すっス。自分は元気モリモリ ダバデュアジュースにするっス。
常原おにーさんは何にするっス?」

 近くの自販機で飲み物を買う事にした。

228常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』:2016/12/20(火) 15:21:46
>>227
「要りませんそんなの」 
 「運動後の疲労回復には、
  ビタミン豊富な100%ジュース、カテキン豊富なお茶、タンパク質豊富な牛乳がオススメです」
 「そして体調管理にも気を遣うメイドの俺はそれら全部をカバンに入れてるんですね!!!!!」

 「全部この場で混ぜ合わせてその他体に良さそうな物をいっぱい入れて!!!」


      ドボドボドボドボドボ
                             ブヒー
              ゴポゴポゴポゴポゴポ      

    常原は『熱しやすく冷めにくい』人物である…
    でなければノリノリで悪の頭領と踊ったりなどしない…
    でなければ、『メイド』なんて気の迷いみたいな生業に就いていない…
    …つまり、熱狂的なテンション…常原マコトの混沌の渦は萎えきっていない、という事だ…

   「イヒ、イヒヒヒヒヒヒヒ」
 
  「さあ飲んでください!!!俺と一緒に飲みましょう!!!!!!!!!」



           _ ,,,,,,,,,,,_
        r ニ,,..,  ,,,  ニヽ
       τ.::ll l U ;;;;;;;,,,,,,,l
       . `.J~ i。 .::::::i:::::l. l  
         l .!。゚・;。 o 。゚ ! l,
         l .i ! 。 ゚ .! ci. l
         l {l。´・ω・` l}.l  <オイシイヨ(裏声)!!
         l .l  。 ゚   l. l
         l .l  。  ゚  l. l
       .  l└  ゚-  ┘l
         `"'ー--‐‐''"

 なんかどう考えても飲んじゃいけない感じのを押し付けてきた。
 逃げるんだ朝山!!(とりあえずお金は貰ってもいい感じだ)

229朝山『ザ・ハイヤー』:2016/12/20(火) 19:03:30
>>228(区切りも良いのでここら辺りで〆たいと思います。
お付き合い有難う御座いました)

 「ぬ

  ぬお〜っ゛ な、何て冒涜的な飲み物なんス。。。」

思わず悪の首領だが慄きを感じてしまうモーニングマウンテンこと朝山。
だが、彼女も決してそのまま退くわけにはいかない!

「メイドとは『おもてなし』の心!
 その心意気を受け取らずして、ちゃんと首領も出来ないっス!

うお〜〜〜〜〜!!!

 ふるえるぞ胃腸!! 燃えつきるほどイートッ!!」

 カッ!!

「飲むぞ!! ヤマトのヴィット(※見た目白ビールぽっかたので)!!!」


       グイィ―――ンッ!!


 そして一気に飲み干…

230朝山『ザ・ハイヤー』:2016/12/20(火) 19:06:16
>>229続き


              まず    ご  バッ!!!!??!

                                   -‐ '´ ̄ ̄`ヽ、
                                 /   、       \
 ━━┓┃┃                          ∠/  / \ 、     ヽ
     ┃   ━━━━━━━━           ノ// /ノ   \ヽ、 ヽ |
     ┃               ┃┃┃         イ / 从○    ○ |  |、|
                       ┛       |ハ {⊃ 、_,、_, ⊂⊃/ノ /
                               ゚ 。゚ 三 ≧     ゚'ゝ/⌒i
                             -== 三       ≦。  /
                               。 -=≦        ,ァ-._ ∧
                       ゚ ・ ゚。  三<       、,Jト    ノ
                            ≦ ッ       ッV´≧
                          。 ゚ 。 ミ´    、、 ハト・。\゚。



 「ぎゃああああ 退散っス〜〜〜〜〜!!!」


 余りの不味さに、権三郎と共に朝山は逃げ出した。

おめでとう! 常原は悪の首領の脅威から抜け出す事が出来たのだ!

だが、忘れるべからず……第二第三の悪の手はいずれ再び星見町に咲き返る可能性があるのだから

231小石川文子『スーサイド・ライフ』:2017/01/04(水) 23:36:46

年明けの早朝。
星見町郊外にある神社の境内を一人歩く。
辺りには多くの初詣客が見受けられる。

服装はいつも通りの喪服姿で、その上から黒いコートを羽織っていた。
しかし、洋装ではなく和装になっていて、帽子も被っていない。
どうやら、これが新年の装いのようだ。

一旦コートを脱ぎ、賽銭を投げ入れ、静かに鈴を鳴らす。
それから頭を下げ、手を合わせ、そっと目を閉じた。

  ――『治生さん』……。

  ――去年は大きな事故もなく、こうして無事に一年を終えることができました。

  ――今年も一年を何事もなく過ごし、あなたとの約束を守ることができるよう、どうか見守っていて下さい……。

神様ではなく、死に別れた『彼』に対して、心の中で祈りを捧げる。
それが済むと再び一礼し、参拝を終えてコートを羽織った。

やがて振り向き、境内の方を眺めながら、しばらく立ち止まる。
出店が出ていることもあって、とても賑やかだ。
もしかすると、この中のどこかに見知った顔もいるかもしれないという考えが、不意に頭を掠めた。

232ニュー・エクリプス:2017/01/05(木) 22:33:08
>>231


     ――カラン カランッ カランッ!!

チヤリチャリチャリチャリチャリンッッ!

 パン!! パン!!!

 「神様!今年もいっぱい友達を作るっス! 家族の健康無病息災も祈るっス!!
ニュー・エクリプスにも、いっぱいいっぱい部下を設けるっス!!
 あっ! オムライススターも皆がたくさーん奢ってくれると嬉しいっス!
ひえっチがもっとパワフルになるように祈るっス! 
天津飯の友が親友になるようにも祈るっス!!
 レイヴン・ゼロに、今度は完勝するようにも祈るっス!!!
伝説のメイドガイのサインも欲しいし、えーっと、それにそれに……」

 ポカッ!

ムーさん「欲張りすぎだろ( `ー´)ノ」
エッ子「出たっ! ムーさんの手刀っ。新年一発目だねっ!」
城生 乗「あははは…。まぁ、いっぱい今年の目標があるのって、素敵な事だよね」

 貴方の耳にも、聞こえてくるのは。つい、この間に聞き覚えがあるかも知れない
とても元気な少女の声。そして、三人の馴染みない高学年の女子含む姦しい声だ。

「んー、わかったっス!! じゃあ他の願い事は、また明日にでも祈るっス」

ムーさん「神様も、そんなに沢山お願いする子は無視すると思うぞ?」

「大丈夫っス!! 五円玉も沢山用意したっスからねっ!
 神様も、きっと聞いてくれるっス。
もし、聞き届けられないなら、自分で叶えるっス!! パワフルっス!!」

 さよか、と茶髪の長身の女の子は気怠い様子で返答する。
仲の良い先輩達と、可愛がられている後輩と言った所が。

そんな和気藹々とした集団は、貴方のほうに近づいてくる。声をかける前に
四人の中で一番背丈が低く、それでいて一番活発な娘は貴方を視認すると大声をあげた。

「あ――!! 小石川おねーさんっス!! 
明けましておめでとうっス!! 今年も一年宜しくお願いするっス!!」

  クルクルクル シュッ タン!! シャキーンッッ!!!

 厚着で、雪の中でも目立つオレンジのコートと、黒いマフラー。白いフワっとした
耳あてをした朝山は、貴方へと元気の良いポージングと共に新年の挨拶をする。

『こんにちはー』

貴方に駆け寄った朝山に続くように、高等部の女の子達も
新年あけましておめでとう御座いますと、社交辞令と共に
各三人とも自己紹介をしつつ挨拶をかわす。

233小石川文子『スーサイド・ライフ』:2017/01/05(木) 23:39:50
>>232

  「――明けましておめでとう、朝山さん」

図らずも見知った顔と出会い、思わず表情が綻ぶ。
こちらも年始の挨拶を返しながら、深々と頭を下げた。
この元気の良い小柄な少女は知っているが、他の三人とは初対面だ。
先程のやり取りから考えて、同じ学校に通う先輩達なのだろうと思った

  「明けましておめでとうございます――」

そこで言葉を切り、三人の顔を順番に見回す。
そうして間を置いたのち、挨拶を続ける。

  「はじめまして」

  「小石川文子という者です」

  「朝山さんとは以前にもお会いして、楽しくお話させていただきました」

  「もし町でお会いすることがあれば……その時はよろしくお願いしますね」

それが終わると、再び頭を下げて締めくくった。

234ニュー・エクリプス:2017/01/06(金) 19:05:45
>>233(レス遅れましてすみません)

「城生 乗(しろお のり)と言います。清月の高校二年です」ペコッ…

「佐々木 江南(ささき こうなん)でーす! 
みんなからは、エッ子 またはエッちゃんって呼ばれてまーす!」シュパ!

「……比嘉 海霧(ひが かいむ)です。愛称はムーさん
……本日のラッキーカラーはピンクのヒトデ」

名乗る貴方に対し、三人も所作は異なれど同様に名乗り返す。
 簡単に三人の特徴を挙げるなら、城生と言う娘は素朴で清楚な何処にでも
いる17程の女の子だが、何処か芯を秘めてるように見え。
 エッ子と名乗る女の子は、何処か朝山と同じく天真爛漫さが秘めており
ムーさん告げる、四人の中で長身の女の子は。何処か浮世離れした雰囲気と
共に、貴方を眠たげながらも少し観察するように見てたのが印象的だった。

  クルクルクル シュッ タン! シャキーン!!

「そして! 同じく朝山 佐生っス!!」

 ムーさん「言われんでも知ってる(-_-)」

「ふふんっ、ムーさんは甘いっス! こうやって何度も名乗ってこその
印象付けが、後に色んな場所で役立ってくるっス!! イッツ、コミュニティっス!」

エッ子「コミュニティだ――!ヾ(@⌒ー⌒@)ノ」

 エッ子と朝山は、両手を掲げて元気に新年の空に声をこだまさせる。

ムーさんは、その様子に肩を竦めて投げやりに相槌をうち。城生は二人の
ほのぼのした、やりとりを見つめ、気づいたように貴方へ声をかけた。

「あっ、えぇっと……小石川さんは、一人で初詣ですか?
他に付き添いが居なくて、時間も空いてましたら。私達と少し
ご一緒しませんか? 佐生ちゃんも、そのほうが嬉しいでしょうし」

 城生の提案に、エッ子と騒いでいた朝山もパッと貴方に振り向き
名案とばかりにコクコクと上下に激しく首を振って告げる。

 「あっ、それは良いパワフルな思いつきっス!
小石川おねーさんも一緒に、神社を見て周るっス! もしかしたら
他にも知り合いに出逢えるかも知れないっス!! みんなで新年の一日を
パワフルに過ごしてみるといいっス!!」

 シャキーンッ! と、貴方に一緒に時間を過ごす誘いをする……。

235小石川文子『スーサイド・ライフ』:2017/01/06(金) 23:15:30
>>234

  「よろしく、皆さん……」

それぞれ個性は違えど、互いに和気藹々とした四人の少女たち。
その光り輝くような光景に眩しさを感じて、思わず目を細める。
こうした場面を目の当たりにすると、つい昔のことを思い出してしまう。

  ――初詣……あなたと来たこともありましたね……。

  ――『治生さん』……。

四人のやり取りを見つめている穏やかな表情が、少しずつ変化する。
どこか遠くを眺めるような、やや寂しさを孕んだものに変わっていく。
頭の中では、記憶の断片が浮かんでは消えていった。
それらは『彼』と過ごした幸せな日々の思い出だった。
そして、自分はそれを失ってしまった。
だからこそ、彼女たちには、今の幸せを失わないでいて欲しいと思えた。

  「――え?あ……ごめんなさい。少しぼんやりしてしまって……」

その時、城生の声が耳に届いた。
彼女の呼び掛けによって、意識は再び現実に引き戻される。
一抹の寂しさを漂わせていた表情も、元に戻っていた。

  「ありがとう――」

  「お言葉に甘えて、ご一緒させていただきます」

思いがけず出された提案に、柔らかい微笑みで応じる。

  「もし、お邪魔でなかったら」

最後にそう付け加えて、くすりと笑った。

236ニュー・エクリプス:2017/01/07(土) 11:49:16
>>235(もし、ご迷惑でなければ。再度になりますが
ミッション時と同じく、暫し『治生』の設定をこちらでも使って良いですか?)

 新年の初詣。どの県 どの地域でも其の日であれば賑わない社のほうが
特殊な場所を除き、少ないであろう。

星見町の神社も、その多いほうに入っており。出店の並ぶ通路では
老若男女様々が冷やかしや、暖かい飲食を求め人の波が作られている。

 「はふっ!(うんっ!) つふふぁはふぁいっふ!!(ツユが美味いっス!!)」

 「ふっぱっ! ひふへふふぁひひふふぁふぁふほふぁへふぁいと
ふぁひぱらふぁひね!(やっぱ! 新年は七草がゆを食べないと始まらないね!)」

「もぅ……二人とも、お行儀悪いよぉ……」

 出店に出ていた星見粥、との銘で炊かれてた七草粥を
美味しそうに口一杯に、朝山とエッ子は頬張りつつ舌鼓を打って感想述べる。
それを、やんわりと諫める城生は少しばかり彼女等の母親のようだ。

 「……」

ムーさんは、彼女ら三人に関心向けるより。貴方のほうに視線を向けていた。
 とは言うものの、貴方を注視してるようでない。貴方の少し横の何もない筈の空間を
どうも、じっ……と静かに見つめていた。 
 
 「んぐんぐ…ごくんっ!
あっ!! 甘酒もあっちで配ってるっス!! よーし!!!
権三郎! さっそく新年の初めの甘酒を頂戴するっス――――!!」

『パウゥッ!』

 「えΣ 何時から、その柴犬居たのっ!?」

ちゃっかりと、朝山の愛犬も気づけば登場して。それに驚きつつ
城生は突っ込む。だが彼女等のパワフルさの勢いに、そのツッコミも雰囲気に呑まれ消える。
 
 人数は大所帯だ。
 更に騒がしさが貴方を包み込む。 自然と貴方の側に暖かい気配が昇っていく。

237小石川文子『スーサイド・ライフ』:2017/01/07(土) 20:17:15
>>236

  「ふふッ――」

朝山とエッ子を嗜める城生を後ろから見守りながら、思わず小さな笑い声が漏れる。
知らない人から見れば、その姿は付き添いの保護者のように映るかもしれない。
しかし、実際に支えてもらっているのは他でもない自分の方だ。
こうして彼女たちと共に過ごすことで、生きる力を分けてもらっているのだから。
そして、それは今だけに限った話ではない。
また彼女たちと顔を合わせることがあるとしたら、きっとその時もそうなのだろうと思う。

  ――少なくとも……今は一人じゃない……。

  ――そう思っていてもいいんですよね……。

  ――『治生さん』……。

その時、四人の中で一番背の高い少女が、こちらを見つめているらしいことに気が付いた。
しかし、こちらを見ているにしては、少し視線が外れている。
自分もその方向に目を向けてみるが、特に何かがあるということもない。

  「あの……何か……?」

不思議に思い、先程ムーさんと名乗っていた長身の少女に呼び掛ける。
思えば、出会った時から何かを観察しているような様子だった。
そういえば、周囲が賑やかなせいだろうか。
ふと、傍らに温かい気配を感じたような気がする。

238ニュー・エクリプス:2017/01/07(土) 20:49:48
>>237(有難うございます)

 貴方はムーさんに、虚空へ向ける視線の理由を尋ねる。

「いえ……大した事じゃ」

 質問に対し、歯切れ悪く彼女は貴方の隣に視線を固定したまま返答する。
その最中にも、朝山と権三郎、そしてエッ子の元気な声が乱入してきた。

「甘酒持ってきたっス! 全員の分があるっス!!
 みんなでパワフルに乾杯っス! 友達杯を組み交わすっス!」

『パウッ!』 

 「友達さかずきー! あっ、丁度あそこの場所空いてるよ!
座って飲も飲もーっ!」

 近くに設置していた組み立て式の机、そして五人分の椅子が目に付く。
ひゃっほぅ! と権三郎を抱えて朝山は椅子につく。エッ子も続けて勢いよく座り
固定されてないから、倒さないでねと軽く注意して城生も続けて座る。
 貴方も、それに倣うなら椅子に座る事になる。だが、一人だけ様子が異なった。

「……? どうしたの、ムーさん」

――海霧は座る事なく、立ったまま渡された甘酒を片手で弄りつつ。変わらず貴方へと
非礼を感じるかも知れないが其の方向を見ていた。何もない空間である小石川の隣を。

城生の不思議そうな問いかけにも返答する事なく、数秒眺めると共に小石川の
テーブルへと甘酒を持った手を伸ばし……。

        コトン     ザッ

 「――どうぞ」


 小石川 文子の隣席……『誰もいない椅子』を軽く引いて
その席の卓上に自分の甘酒を置いて、そして数歩下がった。

 「……ん、あ、はい。遠慮せずに一緒の席に座ってください 
立ってるほうが、どちらかと言えば自分、楽ですんで」

 奇妙な光景は続く。貴方の隣の椅子の後ろに本当に誰かが立ってるかのように
海霧ことムーさんは軽く手を振って、虚空に話しかけてる。

「??? 誰にムーさんは話しかけてるんっスか??」 『パウゥッ??』

 その光景に、当然ながら疑問符を顔中に付け、不思議そうに
ムーさんと貴方の隣の空間を交互に朝山と権三郎は見る。

 「くぅ〜! この一杯が堪らんですなぁーー」

エッ子は、図太いのか鈍感なのか。甘酒の味を堪能し海霧のやってる
奇妙な出来事を視野に入れてない。

 城生 乗だけは、意を得た顔つきになり。恐る恐ると言った調子で
パントマイムのように会話するムーさんへ声をかけた。

 「あの……ムーさん。     ――いるの?」

 その言葉に、ゆっくりと彼女は僅かに首を傾げ向き直り。

「……いるよ
 いま 座ったところ」

 そう   貴方の隣席を指した。

 …………不思議と、真冬であるに関わらず僅かながらも人工的なものでない
春の木漏れ日のような暖かい空気が掠めるような気がした。

239小石川文子『スーサイド・ライフ』:2017/01/07(土) 22:10:27
>>238

三人に倣い、自分も椅子に腰を下ろす。
しかし、海霧だけは座ろうとせず、まるで誰かがいるかのように話しかけている。
眼前で展開する奇妙な光景の意味を、最初は掴みかねていた。
やがて、心の中で少しずつ理解が生まれ始める。
それと共に瞳の奥に光が宿る。

  ――これは……『あの時』と同じ……?

  ――でも、そんなことが……。

  ――いえ……もしかしたら……。

馬鹿な考えかもしれないが、頭の中に浮かんだ考えを消すことができない。
そう思うのには理由があった。
以前、とある『工場』で似たような経験をした覚えがあったからだ。
その時の情景は未だに胸に焼き付いている。
あれは、自分にとって忘れることができない体験だった。

  「――海霧……さん……?」

確信に近い感覚を抱きかけていた時、海霧の言葉が耳に届いた。
その言葉を確かめるように、彼女に向き直る。
それから、ゆっくりと視線を動かし、誰もいない隣席を見つめる。

そこには――確かに『彼』の気配が感じられた。
優しく懐かしい、忘れえぬ感覚だった。

  「は――」

  「『治生さん』……」

心から愛し、もう会うことのできない相手の名前を、小さく呟いた。
身じろぎ一つすることもなく、空席のままになっている隣席を見つめ続ける。
大きく開かれた両の瞳から、一筋の涙が音もなく零れ落ちた――。

240ニュー・エクリプス:2017/01/07(土) 22:50:04
>>239

 貴方は、『治生』の名を紡ぐ。
その言葉を唱えると、不思議と目前に漂う、冬の冷気にそぐわぬ柔らかな
包まれるような空気は、漠然とながらも何処か水面を揺らす波紋のように揺れる気がした。

 厳かになる雰囲気に、朝山も城生も自然と口を噤む。
エッ子だけは、空気をあえて読んでるのか若しくは天性の才か、甘酒の味に没頭している。

海霧だけは、軽く目元の前髪を掻きつつ口を開いた。

「……多分、だけど。貴方に対して微笑んでる。ちょっと、困った感じで」

 「泣かせる気は、無かった。そんな事を、考えてる感じ……」

海霧の説明に対し、朝山は軽く手を挙げて聞く。

「待って欲しいっス! 話が見えてこないっス!
 ムーさんには、幽霊か何かが見えてるっスか? でも、私には目を
皿のようにしても、まーったく見えないっス!!」

 「……視る、見るって言うのとは違う、かな。私 別に霊能者とかじゃないし。
しいて言うのならば…………目の中に入り込んだ映像が脳の中で
輪郭を保っていて。そのイメージを何となく受け取ってる……って言うか」

詳しい説明は、面倒だし複雑だし、無理。と、ムーさんは話半ばで
自分のスピリチュアル方面の説明を放り投げた。そして
再度無人の席にぼんやりと焦点を合わせる。

 「……あぁ、うん」

「こう言ってる と思う。
     ――何処にも僕は行かないよ    ……て」

「ちゃんとしたメッセージとして、耳で聞いてる訳じゃなく
頭の中に伝わってくる全体的なイメージとして私が受け取った者だから
大まかな感じだけど……そう言ってる、と思う」

 海霧の言葉は、悲しき別離を体験した小石川への優しい虚言か。
もしかすれば、本当に『彼』が新年の呼び起こした一つの奇跡として
実体なく、スタンドの目を以てしても見えないかも知れないけれど
魂としての有り体で貴方の側に現れたのかも知れない。
 
 真実は何処にもない、だが この場で大切なのは
何が真実かを追求するでない、何を真実として創るか と言う事だから。

241小石川文子『スーサイド・ライフ』:2017/01/08(日) 00:19:53
>>240

これは真実なのだろうか。
それとも気遣いから出た優しい嘘かもしれない。
でも――そんなことはどちらでも良かった。
大事なのは自分が確かに『彼』の気配を感じ、それを『魂の触れ合い』だと受け止めていることだ。
たとえ儚い幻影だったとしても構わない。
少なくとも、自分にとっては、それは紛れもなく尊い真実なのだから――。

  「――……!」

何か言おうとするが、胸が詰って言葉が出てこない。
海霧から聞いたイメージが、記憶の中にある過去の思い出を呼び覚ます。
困ったような笑い顔――それは生前の彼がよく見せていた表情だった。
ふと、記憶の中にある彼の姿が、無人の席と重なる。
この時だけは、まるで本当に彼がそこにいてくれているような、そんな気がした。

  「『治生さん』……。ああ……。『治生さん』……!」

  「あなたが傍にいてくれる限り……私も何処にも行きません……!」

  「たとえ引き裂かれようとも、私達は……いつも――どんな時でも……一緒です……!」

祈りを捧げるような形で、胸の前で両手を握る。
指の間では、二つの指輪が小さな煌きを放っている。
それらは、『真実の愛』の証であり、『不滅の愛』の証でもあった。

242ニュー・エクリプス:2017/01/08(日) 20:11:59
>>241(よろしければ、この辺りで〆たいと思います)

 貴方は誓う。神にではなく、いま確かにある形なくも有り続けるものへ。

「……うん、うん」

 海霧は、小石川の挙動に対し反応するでもなく。虚空に対し
僅かに相槌を数度打つと共に、貴方に顔を向け。

 「――ありがとう
それ以外には、貴方に伝えたいものは、彼には無いみたいです。
 ……ん、えぇ、わかってます。
……あと、私達に。よろしく……って」

 バックでは、甘酒を飲み干して今の状況の軽い異変に気付いたエッ子を
意図的に城生が別の屋台へ誘い、場を外していた。

 朝山は、ムーさんの言葉に自分の胸を強めにトンっと叩いて宣言した。

「言われずともっス! 私は誰に命じられずとも小石川おねーさんの
友達を続けるっス!! これからも、よろしくして されての関係を続けるっスよ!」

 魂は不滅。聖書で述べられる言葉であるが、彼を貴方が想う限り
目に見えずとも、その想いは無為にはならない。
 目に見えるものだけが真実ではない。貴方は彼の言葉と共に生きる事を選択して
力『スタンド』を得た。そして、彼の想いを秘めて未来への道を踏みしめた。

 数々の其の選び取った道の途中で、貴方は光を得た……これは、きっとそう言う事なのだ。

「……ぁ」

 ムーさんは、小さく声を上げる。朝山がすかさず、どうしたっスか? と聞く。

「いなく、なったな……」

「えーっ? いま、何処にも行かないって告げたばっかじゃないっスか!!」

朝山のあげる声に、眉を顰め海霧は騒ぐ彼女を見下ろす。その目つきは僅かに険しい。

「そう言う訳にもいかないだろ。あっちの存在には、あちらなりのルールもあるんだ
……ただ、簡潔に何処かに行ったって言う表現で纏められるものじゃないし。
言う成れば、その空間一帯に、同調するような変化になったって時もあるし、完全に
何処から知らぬ場所に行ったって時も、私のチャンネルと合わないし。
……あぁ、たくっ 長々と言っても理解出来ないんだって 普通は」

 「私なら解るっス! 天才っスし!!」

「なら、要約しようか? 消えたけど、消えてない まる。以上」

 「ぜーんぜん解んないっス!!!」

貴方を蚊帳の外に、二人は軽く騒ぐ。
 そんな折に、エッ子と城生が屋台で他に買ってきたのだろう。
湯気の立つ飲み物を持ってきたのを二人は見て、朝山は彼女らに近づき口論は止まる。

ムーさんは、三人が離れてる中で良い機会とばかりに貴方へ告げた。

 「……彼は、貴方の傍にいます」

「永く続くかは、私には把握出来ませんが
……ただ、一つだけ確かな事があります。
  ――彼が望んでいる事を、貴方が今も実現し続けている」

 彼女は、その言葉を最後に四人の輪へ収まると
何時もの気怠く、人を余り相容れない空気を保って出店の変わった食べ物を
咀嚼して外部との交流を軽くシャットアウトする。

 この、新年が過ぎても朝山は変わる事なく貴方を見かければ
子犬のように躍り、貴方との付き合いを変わらず続ける。
 城生、佐々木、海霧も同じく同様に貴方を年の離れた友として
出逢う機会あれば接するだろう。

 その幾多の邂逅の中で、光は舞う。きっと、目に見えずとも 光は。

243小石川文子『スーサイド・ライフ』:2017/01/09(月) 09:16:54
>>242

     スッ

海霧の言葉を聴き、自身の指にはまった二つの指輪に視線を落とす。
『真実の愛』とは、滅びることのない『不滅の愛』――自分自身は、そう信じている。
たとえ『死』によって分かたれたとしても、決して打ち消されることのない『永遠の絆』だと。

『彼』は、私に掛け替えのない愛を与えてくれた。
そして、私も『彼』に無償の愛を捧げた。
だからこそ、私は『彼』の想いに報いたい。

『彼』の最後の望み――『彼』の分まで生き続けること。
甘美な死の誘惑が耳元で囁こうとも、それに屈する訳にはいかない。
それが『彼』に対して自分のできる『真実の愛』の証明になるのだから。

  「ありがとう、海霧さん、朝山さん。ありがとう、皆さん……」

顔を上げて、感謝の言葉と共に、四人に微笑みかける。
その後、元気に前を歩く彼女たちに続く。
ふと一人立ち止まり、空を仰ぎ見た。
頭上には、雲一つない真冬の空が広がっている。
軽く深呼吸すると、凛と澄み切った冷たい空気が、心と体に染み渡っていく。
とても安らかで清々しい気分だった。

  ――あなたは今も近くにいてくれている。

  ――だから、私は一人じゃない。

  ――そう思っていてもいいんですね、『治生さん』。

その時、誰かの視線を感じ、後ろを振り向く。
しかし、目を向けた先には誰もいない。
その無人の空間を見て、何かを悟ったかのように、柔らかい微笑みを浮かべた。
やがて正面に向き直り、再び四人に合流する。
その背中に、微かではあるが、確かな光を感じながら――。

244小石川文子『一般人』:2017/03/05(日) 00:44:02

今――私は町を歩いている。
様々な店が軒を連ねる華やかな表通り。
日曜の昼過ぎということもあって人通りは多い。

  「この辺りは、とっても賑やかですね」

この身を包んでいるのは、白いブラウスに白いスカート、白い帽子。
つい最近、この町のブティックで見つけたお気に入りの装い。
それらは一緒に行った『彼』が選んでくれたものだった。
だからこそ、余計に気に入っていた。
自分の隣に視線を移すと、そこには『彼』がいる。
私が誰よりも愛し、そして誰よりも愛してくれる人が――。

  「今夜は何が食べたいですか?」

話しかけると、『彼』は微笑みながら答えてくれる。
新婚旅行から帰ってきてから一週間が経過していた。
旅行中は、とても幸せだった。
もちろん、それは今も変わっていない。
これからも、この幸福が続いて欲しいと心から願っている。

  「――治生さん?」

ふと気付くと、『彼』がいなくなっている。
辺りを見回しても、雑踏の中に『彼』の姿はない。
いや――見えた。
遠くの方に、『彼』らしき後姿が微かに見える。
早く追いかけなくては。
そうしないと二度と会えなくなってしまうような気がする。

  「待って下さい!待って!!」

叫ぶように呼び掛けながら、急いで駆け出そうとする。
その途端、急速に意識が薄れ始める。
伸ばした手から力が抜けていき、同時に視界から光が消えた。

245小石川文子『スーサイド・ライフ』:2017/03/05(日) 00:53:33

――どこからか、規則正しい時計の音が聞こえてくる。
ゆっくりと目を開けると、見慣れた自宅のリビングが視界に入った。
どうやらソファーに座ったまま眠っていたらしい。

目の前にある机の上には新聞紙が広げられている。
そこには、乾燥させたラベンダーの花と、いくつかのアロマオイルの瓶が乗っている。
それを見て、ドライフラワーの瓶詰めを作っていたことを思い出した。

意識が戻っても、しばらくの間は呆然としたままだった。
さっき見た映像が頭に焼き付いている。
あの中の自分は、とても幸せだった。

  「……夢」

思わず、ぽつりと呟く。

そう――あれは夢。
幸せな夢。
そして、決して叶うことのない夢。

さっきの夢を思い出すと、どうしようもない寂しさが胸の中に込み上げてくる。
その気持ちを慰めるため、無意識の内に自らの肩を抱いていた。
やがて、静かにソファーから立ち上がり、リビングから出て行く。

身支度を整えると、玄関の前に立ち、扉に手をかけた。
喪服と黒い帽子に身を包み、家の外へ出る。
一人でいることが、今は辛かった。
心に生じた寂しさを埋めるために、人のいる場所へ行きたかった。
夢の中で『彼』と歩いた『あの町』へ――。

246薬師丸 幸『レディ・リン』:2017/04/28(金) 07:23:53

「…………ん?」

   バッ

       「あっ」

夢を見ていた。

スタンドを得るより前の事。
朧気な記憶を、夢の中でたどっていた。

「……」

良い夢とは言えない。
魘されていたかもしれない。

あたりを見渡すと、電車内。

「――――わっ!」

星見町に停車していると気づき、
薬師丸は慌ててホームへと駆けだした。

    タタッ

(ついてるんだかないんだか)

そして、改札を出てすぐに立ち尽くしている。
外出から帰ってきたが、これからどうするか。
家に帰るのは当然だが……

    (お腹、空いてるのよねぇ)

 キョロ

          キョロ

白髪赤目、フリルの多い黒いワンピース。
一見すると『コスプレ』じみた格好の少女が、
あたりを見渡しているのは、傍目にどう映るだろう。

247薬師丸 幸『レディ・リン』:2017/04/30(日) 00:01:25

「……ん?」

→『オープンチャレンジin星見町』/『映画スター編』へ
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1459695075/817

248冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』:2017/08/15(火) 23:56:45
「うーみーは広いな。大きいぃなぁ」

「大きすぎるけど」

砂浜をざくざく歩いている。

249夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/08/21(月) 21:40:37
>>248

「その歌の続きなんだっけ?」

同年代くらいの少女がフランクに声をかけた。
白いビキニの水着を着て腰にパレオを巻き、サングラスをかけている。
砂浜にパラソルを立て、シートを敷いて寝転がっている。

250冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』:2017/08/21(月) 23:35:50
>>249

「ん?」

「月は昇るし、日が沈むっていうんだよ」

この方向へと振り向いた。
耳には黒いリングのピアス。
右手の中指と左手の人差し指にシルバーの指輪。
長く伸びた黒髪は海風で揺れている。
膝丈の海水パンツに白いシャツを着ており、足元はビーチサンダルだ。

「えっと……君は誰?」

「僕は冷泉咲。咲でも冷泉でも好きなように呼んで?」

251夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/08/22(火) 00:47:18
>>250

「――ふんふん、なかなかフーリューじゃないの」

「ありがと」

ウェービーなショートボブが潮風を受けて軽く揺れる。

「じゃ、冷泉くんって呼ぼ。
 私、明日美。夢見ヶ崎明日美。苗字が長いから明日美でいいよ」

サングラスのレンズは色がそれほど濃くないので、奥にある瞳が透けて見える。
黒目がちの大きな瞳。
その視線が、ピアスと指輪に向けられる。

「いいな、そのアクセサリー。私もピアス空けよっかな」

そう言いながら、シートの上をごろりと転がる。

252冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』:2017/08/22(火) 00:57:20
>>251

「僕の作った曲じゃないし」

「別にお礼なんていいよ。明日見」

サングラスの奥の瞳を見つめて言葉を返す。

「ピアス? あぁ、今道具持ってないな」

「あったら今ここであけたんだけど」

「あ、病院であけたいタイプ?」

253夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/08/22(火) 01:20:41
>>252

「え――?」

今ここで、という言葉に少し驚いた。
それと同時に興味も出てきた。
ピアスというより、この少年に。

「ねえ、空ける道具ってどんなの?私、知らないんだ」

「なんかさ、そういうのセンモンの人がやるのかと思ってた」

「やっぱりチクッてする?」

「――ところで、暑くない?ここ、入っていいよ」

寝転がるのをやめて座り、やや横に移動して場所を空ける。

254冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』:2017/08/22(火) 01:26:36
>>253

「え、ピアッサーって知らない?」

右手の親指と人差し指を広げて二本の指の間隔を広げたり狭めたりする。

「じゃあお邪魔するね」

開けられた場所に座り込んだ。
そしてピアスをつまむ。

「針のついた器具であけるんだよ」

「しっかり殺菌しないとうんじゃうから気を付けないといけなくてさ」

「チクっとはする」

255夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/08/22(火) 01:40:07
>>254

「いやー、私って結構世間知らずだから。箱入りっていうの?
 自分で言うのもなんだけど」

そう言って軽く笑った。

「だから、教えてもらえるのは嬉しいな。
 色んなこと知りたいと思ってるから」

「ふんふん」

「へえ……。まーそうだよね。自分の体に穴空けてんだもんね」

「それも自分で空けたの?」

ピアスを指差して言う。

「何かきっかけとかあったの?空けようと思ったことの」

256冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』:2017/08/22(火) 23:21:40
>>255

「へぇそうなんだ」

箱入り娘。
冗談か本当かは分からない。

「いや、これは両方ともお姉さんに開けてもらったんだ」

「病院じゃないけど自分でも開けてないって感じかな」

それから顎に手を当てる。

「きっかけ……開けてみたらって言われたんだよ。そのお姉さんに」

「痛いけど、放っておけば閉じられるしいいかなって」

257夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/08/22(火) 23:47:52
>>256

「そう。だから生まれた時から、あんまり外を出歩けなかったんだ。
 最近になって色んな場所に行けるようになってさ」

言葉を続けながらサングラスの位置を直す。

「ふんふん、お姉さん…・・・ねぇ……」

興味の矛先は話に出てきたお姉さんに移った。

「お姉さんってことは姉弟なの?」

「私、一人っ子だから羨ましいな」

258冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』:2017/08/22(火) 23:59:27
>>257

「なるほどぉ」

うんうんとうなずいてみる。
別にだからといって何かをするわけでもない。

「ううん。血は繋がってないよ」

「近所に住んでるんだ。お姉さん」

259夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/08/23(水) 00:10:54
>>258

「ご近所さんってやつ?」

ピアスの穴を開けることを勧めてくる近所のお姉さん。
興味は、より強くなった。

「その人ってどんな人?」

「スゴイいっぱいアクセサリーつけてたりするの?」

なんとなくパンク風ファッションの女性を想像していた。

260冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』:2017/08/23(水) 00:48:17
>>259

「そう、ご近所さん」

ご機嫌さんに言葉を返す。

「んー? アクセサリーはいっぱい持ってるけど」

「そんなにつけてないかな。ピアスも耳に三個開けてるだけだし……」

「綺麗な人だよ」

261夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/08/23(水) 01:04:24
>>260

「三つ空けてたら結構空けてる方じゃない?」

基準は知らないが、そんなに付けてる人を見たことがないので、そんな気がした。

「外見は分かったけど、内面はどんな人?」

「性格とか趣味とか特技とか」

口には出さないが、何か変わった部分がないかなという期待を込めて質問する。

262冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』:2017/08/23(水) 01:13:40
>>261

「そうかな。お姉さんの友達にもっと開けてる人いたからなぁ」

感覚が違うのかもしれない。
少なくとも彼にとっての基準はその人達らしい。

「あー」

「実験が好きで、化学の先生になるって言ってたかなぁ」

「色々薬品とか家に置いてあったよ」

「後は色々教えてくれる」

263夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/08/23(水) 01:25:20
>>262

「えー、なんかスゴイね。インテリって感じ。白衣とか着てそう」

期待した通りだと内心で思った。

「教えてくれるって何を?化学のこと?」

「モノを溶かしたり爆発させたりとか?」

あまり縁がないからか、化学という言葉にかなり偏見があるらしい。

264冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』:2017/08/23(水) 02:14:10
>>263

「あぁ、白衣、持ってた」

「着せてもらったことあるよ」

あっけらかんと笑っている。

「爆発はちょっとだけ……水素でこう、ポンとやるくらいなら」

「液体窒素の実験とか面白かったな」

「バナナで釘を打つやつ」

手で釘を打つジェスチャー。

「後は生活に役立つこととか立たない事とか、色々教えてくれるよ」

265夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/08/23(水) 06:53:13
>>264

「バナナで釘――あ、それなら、この前テレビで見た」

その時の映像を頭の中で思い出した。
そこで、ふと疑問が浮かぶ。

「でも、エキタイチッソとかって家にあるものなの?うちにはないけど」

「ああいうのって、どこかの研究所とかに置いてると思ってた」

「その役立つこととか立たないことって、それも化学系の話なんでしょ?」

「たとえば、どんなの?
 黒豆を煮る時に一緒に古釘を入れると、表面にツヤが出るっていうのは知ってるけど」

生活という言葉から、ちょっとした豆知識みたいな話かなと想像した。

266冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』:2017/08/23(水) 23:49:32
>>265

「さぁ?」

「でも、あの人の家にはあったね。もしかしたらどっかから勝手に持ってきちゃったのかもしれないけど」

それから顎に手を当てて考えたような顔をする。

「酢で十円玉を綺麗にするとか教えてもらったなぁ」

「あとは料理とか、遊びとか色々」

267夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/08/24(木) 00:33:38
>>266

「えぇ〜?」

(マッドサイエンティストだ!)

大丈夫かなぁと思った。
色々な意味で。

「ところで、冷泉くん。今日は何しに海に来たの?」

「私は夏らしいことしようと思って来たんだけど」

「ヒマだったらさ、一緒にビーチバレーしないかね?」

自分の背後からビーチボールを取り出して見せた。

268冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』:2017/08/24(木) 20:19:55
>>267

「不思議だよね」

けらけら笑う少年の顔に危機感はない。
少なくとも彼にとってお姉さんがマッドなのかどうかは気にならないところらしい。

「お姉さんと遊ぼうって約束してきたんだけど」

「お姉さん寝坊で遅刻してるんだ」

「昨日寝られなかったからって、酷いよね」

「だから、うん。一緒にしよっか」

ビーチボールを見てそれに触れた。

269夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/08/24(木) 22:52:02
>>268

(昨日寝られなかった――夜遅くまで怪しい実験してたんだ!)

少年をよそに、勝手に危ない想像を膨らませる。
反面、そのお姉さんに会ってみたいとも思った。

「よーし、いっくぞー!」

「そりゃっ」

緩やかな放物線を描いてボールが宙を舞う。
夏のある午後のことだった。

270斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2017/09/14(木) 22:24:05
「――わかるよ。」

長い呼吸を一回、目を擦る

 「『辛抱』がさ、大事なんだ」

    「昨日お爺ちゃんがピカピカの釣竿持ってたのもお古の奴プレゼントしてくれたのも」

 「結果としてお爺ちゃんがお祖母ちゃんにボコボコにされてたのもすげーよくわかる」

        「わかるわ」

喧騒から離れた砂浜に一人、首に赤いマフラーを巻いた少年が椅子に座り
少し古びた釣竿を支えながら、欠伸を嚙み殺しつつのんびりと生温い潮風を堪能している
傍に置かれた青いクーラーボックスのコントラストが白い砂浜に映えるようだ

「……もう9月って感じするんだけどな。」

271夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/09/14(木) 23:09:02
>>270

「ほうほう、それは一大事ですな」

カラフルなネイルアートの付け爪とサングラスが目立つ少女が隣に座った。
待ち合わせしていた友達に「待った?」と声をかける時のような気軽さで。
間違いがあるとすれば、少年の友達でも知り合いでもないということ。

「だよねぇ。もう九月なんだよねぇ」

「夏も終わりかぁ。私は今年の夏は病院で終わったなぁ……」

「――あ、それ引いてるんじゃない?」

言葉の世途中で不意に釣竿を指差す。
もしかしたらかかってるかもしれない。

かかってないかもしれない。

272斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2017/09/15(金) 00:00:24
>>271

>「ほうほう、それは一大事ですな」

「でしょ――まあ、お爺ちゃん頑丈な上に自業自得だからそれは置いといて。」

苦笑しながら
少女の方をちらとも見ず会話に応答する
顔は未だに寝ぼけまなこのようだが……

>「だよねぇ。もう九月なんだよねぇ」

>「夏も終わりかぁ。私は今年の夏は病院で終わったなぁ……」


「ああ、『俺』は如何でもいいんだけど、僕もさぁ……」

そこまで言って首裏を右手で掻き
数えるために自分の眼前で、右手の指を一本ずつ折り曲げていく

 「ズッコケ4人組相手に『装甲車』と『スプレー缶』と組んで喧嘩したり」

  「公園の中で病院の拘束服付けたDVに泣いてる少女抱えながら逃げ回ったり」

 「いや貴重な出会いなんだけどさ、文句も言えないんだけど、あえて言うならこう……もう少し」

  「可愛い女の子と今しかできない、甘い!酸っぱい!甘い!酸っぱい!って感じの」

「イベント欲しかったなあ……6月くらいに。」

(――あれ?今僕誰と話して……まあいいのか? これも『重力』かな。)

其処まで言うと項垂れた感じで釣竿の方から目を背け、少女の方を見……ようとして

>「――あ、それ引いてるんじゃない?」


「おっ、引いてるぅー?マジでか!有難う!」
   「やったぜお婆ちゃん、今日は焼き魚だ!」

顔を喜びに綻ばせ満面の笑みを浮かべながら釣竿を握りだす
――そしてその腕に、いや全身に『大量の半透明の鎖』が巻き付きだす

(……『ロスト・アイデンティティ』! 僕の精密さを強化する!)

少年は全身に鎖が巻き付くを関せず、そのまま竿のリールを巻きながら感触を確かめている


 「ん、んん――? ……この感覚 あっ」

……少ししてその顔が苦笑いに変わった
失敗したことを誤魔化す笑みに


「根がかりしたぁ……まあいいかな、たった今1人釣れたみたいだし。」

――「失敗失敗」そんな軽い感覚で少女の方に握手をするために右手を差し出す
ショートカットの黒髪が揺れる、少しバツの悪そうな笑顔で。

「僕、斑鳩 『斑鳩 翔』空は飛べないけどね、君、名前は……爪、奇麗だね?君がやったの?」

273夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/09/15(金) 00:55:56
>>272

「なにソレ、すっごいキョーミあるぅ」

興味津々といった眼差しで相槌を打つ。
サングラスの奥にある黒目がちの大きな瞳。
それが好奇心の光でキラキラと輝いた。

「私はぁ……ちょっと前に海水浴しに、ここ来たなぁ……。
 それで、たまたま近くにいた男の子と一緒にビーチバレーやってた」

「あとは……ビルの地下にある『トーギジョー』で血まみれになりながら殴り合ってた。
 で、手がボキボキ折れた」

「あのアレ――『ポッキー』みたいに。
 チョー痛かったなー。もう治ったけど」

その最中、『鎖』の発現が視界に入り、しばし押し黙る。
『鎖』の正体には大方の見当がついた。
興味深げに、それを見つめる。

「私は夢見ヶ崎明日美。
 夢見ヶ崎でも明日美でも、名前の最初と最後をくっつけてユメミでもいいよ」

「あ――」

「『なあ、ボブ。俺、船乗りになりたいけど泳げないんだ。
 気にすんなよ、ジョージ!俺だってパイロットになりたいけど空飛べないぜ!』」

「――っていうジョークがあるんだって」

躊躇することなく差し出された手を握った。

「へっへっへっ、まーね。色んな色があってキレーでしょ。
 私、好きなんだ」

「『イカルガ君』……なんか言いづらいな。
 『ショー君』も、いい感じじゃない。
 カッコイイよ――その『アクセサリー』」

おそらくは、その言葉が『鎖』を指していることに気付くのではないだろうか。

274斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2017/09/15(金) 01:37:14
>>273

「病院とか何でいたの?とか聞きたい事、僕も有るけど……」

「ワァオ、同い年くらいなのに2/1殺伐してる青春だぁ……
 ポッキーとか想像したくないなあ すっごい痛そう。」

  「でもビーチバレーか、『何でも有り』なら負ける気しないな僕
   ……まあ勝負よりは君とビーチバレーした男の子の方が羨ましいけど。」

苦笑いしながら左手をまるで自分が痛めたかのように降りつつも
右手1つで器用に新しい釣り針と餌を釣竿に付けていく
『手慣れた職人のような手つき』で。

「ん、よろしくね ――ゆめみ?夢を見る……かな。 じゃあ『夢見ちゃん』で。」

(事実飛べないからなあ…カッコよく落ちるは出来るけど。)

張りなおした釣竿を改めて構え、投擲する

 ヒュッ……ポシャン

遠くの波間に赤い浮きがぷかぷかとゴムのアヒルの如く浮かんだ
潮風にマフラーが僅かに揺れる


「笑顔は会話の潤滑油だよねー、この名前も気に入ってるんだ、ジョークにも使えるし
 両親から貰ったからね……ショウでもショーでも好きに呼んでくれていいよ。」 ニッ

(……見えてるか 態々『人気のない場所』を選んだけど)
  (スタンド使いの『重力』……ますます強くなっている気がする 素晴らしいな)
 (この子との出会い、僕と僕のスタンドにどんな影響を与えるんだろう。)


「……そっか、この『アクセサリー』かっこいいって言ってくれた人は
 夢美ちゃんが初めてだな。」

 「――他の人は『蜘蛛』だの『蛸』だの言うんだぜ?」

……そう言うと肩をすくめながら顔を綻ばせる まるで長年の親友に会ったような笑顔で。

  「――別に驚かせるつもりは無かったし、謝っておくよ ごめんね。
  僕も気に入ってるんだけどね、『ロスト・アイデンティティ』それが僕の『アクセサリー』の名前
  君の『アクセサリー』も……その爪と同じ様に、きっと奇麗なんだろうな。」

275夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/09/15(金) 02:23:00
>>274

「――タコ?クモ?」

よく分からない、といった表情をする。
『鎖』のヴィジョンから、どうしてそんな感想が出てくるんだろう。

気になる。知りたい。見たい。

心の中で好奇心が強くなっていくのを感じた。

「ショー君ってさ、器用なんだね。
 ――っていっても、釣りのこと分かんないんだけど……。
 釣竿を見たのも釣りしてる人を見たのも、これが初めてだから」

「でも、さすがに魚くらいは見たことあるよー。
 『ちょっと前に』初めて見た。
 キラキラしてて、思ってたよりキレーだったなぁ」

今度の言葉はジョークじゃない。
あくまでも本気の発言だ。
生まれつき視力がなかった自分には、見えるものは何もなかった。
目が見えるようになったのは、ごく最近のこと。
だからこそ、目に映るあらゆるものに好奇心をくすぐられ、興味をそそられる。
ただし、今のようにサングラスで強い光を遮断していなければほとんど見えなくなるのだが、
そんなのは些細な問題だ。

「で、なんだっけ?
 あー、『アクセサリー』ね……。
 その器用さも、それのゴリヤクってやつ?」

「私も持ってるよ。ちょーイケてる『私だけのアクセサリー』」

「見せてもいいんだけど……。
 その『タコ』とか『クモ』って言われた理由を教えてくれたら見せちゃおっかな」

276斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2017/09/16(土) 00:37:36
>>275

「君って大分ガッツ、あるよねぇ 好奇心も旺盛みたいだし。」

そこまでを笑顔で言うと少年は深呼吸をする
これから喋るのに必要な事のように。

「君に会えた時、とても嬉しかったんだ、きっと『スタンド使い』だと思ったから、同時に疑問もあった
 ――夢美ちゃんをさ、最初に見た時サングラスだけ付けてるのに、帽子を被ってない、って思った
 『弱視』か、『盲目』なのか……でも今は見えるなら『おめでとう』って言うべきかな。」

「僕には当たり前のように見えてきた世界だけど……そうだよな、奇麗だよな『色』って。」

(――最初から無い物に不自由は感じない、けど こういう人が傍にいると気付かされるな
 僕達が当たり前のように持っているの は『奇跡』の産物だって事 ……だから僕も失いたくないんだ)

――息ができる、5年間『スタンド』を身に着けるまで彼が息を出来なかったように
少女に少し共感したのかもしれない、してないのかもしれない。

「ん?ん―……そんなに見たい? なーんて、僕から見たいって言ったようなものだものなぁー」

……そう言うと鎖の一欠片を親指にのせてコイントスのように空に跳ね飛ばす
見つめるならそれは上空で消えるだろう

瞬間、クーラーボックスの開閉音と同時に
斑鳩の左手に『アイスキャンデー』が2本握られている。

「はい、今どうやったんでしょーか!
 ……紫がブドウ、白がリンゴ味だよ 食べる?」 ――ニッ



意地の悪そうな笑顔と同時に答えが少女が答えを言うか言うまいかの内に告げられる
――鎖の巻き付いていない両腕から、『影のような腕』が現れると同時に。

「正解はぁー……デレデレデレデレ デデン!『腕が4本ある』!でしたぁー!どっじゃぁぁ〜ん!」

影の腕が敬礼するかのように挨拶する

「『鎧』にすれば僕の器用さを上げ、『鎖』を生み出し、解除すれば
 その部分に『影』が出来る、腕4本 脚4本 頭2つ
 ……そういう(ご利益)『スタンド』なんだ。『胴体』は解除されないんだけどね。」

そこまで喋ると少年はふと空を見上げる ……少女からは太陽の逆光で顔の表情が見えない

「――もちろん、ただ話したんじゃない 君に会えて嬉しいっていうのは
 君が僕の求める『スタンド使い』だったらいいなあ……って話なんだ。」

――遠くに浮かぶ釣竿の浮きが波間に揺れている。

277夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/09/16(土) 01:55:27
>>276

「くっくっくっくっ――」

言い当てられた内容を聞いて含み笑いを漏らす。

「気付いてしまったか……。
 私の正体に気付かなければ平和に暮らせたものを……。
 そのカンの鋭さが……命とりだぁーッ!!」

ババッと勢いよく立ち上がり、唐突に襲い掛かる――フリをする。
そして再び座り直し、しばし海を眺め、やがて静かに口を開く。

「『アリス』ってあるじゃない。『不思議の国のアリス』。
 一人の好奇心旺盛な女の子が、ある日ヘンテコな世界に迷い込んで――
 色々と珍しいものを見たり色んな変わった人に出会ったりして冒険するってヤツ」

「私もおんなじ。
 私は生まれてから、こことは違う真っ暗な世界にいたけど、
 ある日突然この眩しい世界に迷い込んできた。
 それからは色んなものを見て、色んな人に出会って、この世界を冒険してる」

「だから、私は『アリス』――『光の国のアリス』」

そう言って、邪気のない表情で笑う。
曇りのない明るい笑顔だった。

「――?」

飛ばされた『鎖』の破片を目で追い、その消失を見届けた。

「???」

続いて行われた動作を見て、不思議そうに首を傾げる。
目の奥でチカチカと灯る光が、その強さを増す。

「な――」

「な、なんだってぇぇぇ――ッ!?」

「一ヶ月前に匿名で寄せられた未確認情報……。
 この星見町の海に『腕が四本ある生物』が存在するという噂は本当だったッ!
 その詳しい生態を解解き明かすべく、我々科学調査班は危険を省みずに更なる接近を試みた!」

「――ふぅぅぅ〜ん。ほぉぉぉ〜う。へぇぇぇ〜え……」

グイグイと至近距離まで近付き、『影の腕』をしげしげと眺める。
他のことは目に入っていないといった雰囲気がある。
しばらく観察して満足したのか、また少し離れた。

「『求めるスタンド使い』、ねえ……」

「ついでにそれも教えてよ。言うだけならタダだし」

「それとも、代わりの情報も出さないで私ばっかり聞いてちゃダメかな。
 世の中ギブ!アンド!テイク!でしょ。 
 それが『シホンシュギ』ってヤツ?なんだし?たぶん」

適当なことを混ぜた台詞を言いながら、釣竿の浮きを見つめる。

278夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/09/16(土) 06:22:51
>>277

「くれるの?くれるんなら私はなんでももらうよ。
 ケガとビョーキ以外なら。
 あっ、それ『なんでも』じゃないか。
 ほぼ『なんでも』ね」

「ふぅん……。じゃ、ブドウにしよ。リンゴは今朝『ジョナゴールド』食べたから」

「あ――ちょっとしたことなんだけど、袋から出して中身だけ渡してくれる?」

紫のアイスを選んだ。
そして、遠慮なく貰う。
貰ったら、当然の帰結としてそれを味わう。

279斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2017/09/16(土) 22:19:39
>>277
>>278

  「……きゃー、おそわれるー って言うのもなんだけど
   僕が『ジャバウォック』で『トランプ兵』みたいに飛びかかってきたら
   どうするつもりだったんだい『光の国のアリス』ちゃん!
   その素敵な笑顔が『ヴォーパルの剣』だったり?」

襲い掛かってくるフリに怖がるフリで返す
ケラケラと笑う表情は面白くて仕方がないと言うかのようだ

    「そんなに近づくと危ないですよー夢美ちゃん
     『ロスト・アイデンティティ』は独自に考えて動くんだからね
      ……ほら君のほっぺた摘まもうとしてる。」

 影の頭部が少女の方を見て、左腕からずれるように現れた影がほっぺたを人差し指で
 そっとつつこうとする

 「ま、それも冗談、この『影』の手が君の『光』を奪う事なんてないしね
  ――どうぞお嬢さん!『グレープ味のフラミンゴ』ですよ。」

袋から出して、と言う声に包んでいたビニールの端を影の手先が摘まんで振り回す
……当然反動で紫のアイスキャンデーが切れた包装から零れ落ちる
その瞬間を影の頭部が見つめながら持ち手の部分だけを摘まんで少女に差し出した。


「言うだけタダだからね――『心を治せるスタンド』もしくは『時を巻き戻すスタンド』
 可能性はあると思うんだ、それこそこの『スタンド』って言うのは
 まるで『アリス』に挿入されている詩や童謡のように奇妙だから。」

そう言う少年の顔は微笑んでいたとしても瞳だけは笑っていないように見える
透明な氷の欠片が黒い瞳に入っているようだ。

 「ま、シホンシュギ?が好きなら……そうだな
  もっと君の事が知りたいな、それか見つけたら教えてくれるとか、もしくは……」

2本の右腕がクーラーボックスの蓋を開ける
……中には大量の氷と多種多様なドリンク、そしてアイスキャンデーが入っている

  「クーラーボックスの容量減らしにご協力クダサーイ、お祖母ちゃん僕に魚釣るんじゃなくて
   砂浜で遊んでくるために中にぎゅうぎゅうに氷とドリンク+アイス詰め込んでんだよね。」

280夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/09/17(日) 00:14:54
>>279

「いや、『剣』はないな。さすがにね――」

「――『爪』ならあるけど。ホラ」

色鮮やかなネイルアートの施された指先を軽く突き出す。
同時に、そこから剥離するように、もう一本の腕が姿を現した。
その指先には、『医療用メス』を思わせる形状の鋭利な爪が備わっている。

               『 L(エル) 』

            『 I(アイ) 』

         『 G(ジー) 』
  
      『 H(エイチ) 』
  
   『 T(ティー) 』

不意に、男の声とも女の声ともつかない無機質で機械的な『声』が聞こえる。
まるで傷の付いたレコードが同じ部分をリピートし続けているような声だ。
その声は、少女の背後から発せられたものだった。
いつの間にか、少女の傍らに人型のヴィジョンを持つスタンドが佇んでいた。
その両目は開くことなく、固く閉ざされている。

   『 L 』

「これが――」

   『 I 』

「私の『アクセサリー』――」

   『 G 』

「――『ドクター・ブラインド』」

   『 H 』

「イケてるでしょ?」

   『 T 』

そして、突き出していた手を伸ばして、差し出されたアイスキャンデーを受け取った。
それを舐めながら少し考える。
何のために、そのスタンドを探しているのだろうか――と。

「……知らないなぁ。私が持ってる力とも違うし。
 ま、もし『冒険』の途中で見つけたら教えてあげてもいいよ」

その一瞬、少年の心に巣食う何かを垣間見たような気がした。
もちろん詳しいことは知らない。
ただ、彼の心に何かがあることは理解できた。
濃い暗闇にも似た何か。
それは、かつて私がいた『闇の世界』にも似ているのかもしれない。

「ふっふっ――じゃ、教えてあげるよ」

少年の言葉を受けて彼に向き直り、悪戯っぽくニヤリと不適に笑う。

「『果汁64%』。内訳は『巨峰』が『40%』、『ピオーネ』が『24%』」

「――合ってるよね?」

わざわざ中身だけ受け取ったのは、包装に書いてある表示を見ないためだ。
絶対とは言えないが、おそらく正解だろう。
もし間違いがあったとしても、わずかな誤差だ。

「さて――どうして分かったんだろーねえ?」

281斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2017/09/17(日) 02:23:44
>>280

 「――へえ『人型』って多いんだなあ
  人間の精神から生まれたのだから、事実そうなるのが近いんだろうけど。」

(掠れたような人の声……か 喋れるスタンド?)

「中々にイカした…と言うより『君らしさ』が出てるアクセサリーかな。
 僕の主観だけど、素敵だと思う その『勇気』とか 
 ……そして今気づいたけど『アクセサリー』褒めたり褒められたりって結構照れるな!」

影の腕が少女の『アクセサリー』に対して挨拶に手を振る
腕を振る速さが多少早めなのは――照れ隠しも混じっているのだろう
そして少年は知らないという声に少しだけ目をつむる。

   「――そっか、残念 と考えるよりは
    教えてくれる方に感謝しようかな 有難うね。」

少し経てば何事もなかったかのように再びの感謝と笑顔をみせる『斑鳩翔』はそういう人格だ
ただ悲しんだりを別の場所に斬り捨てているというよりは
他人との協調の為に『感謝』したり『笑顔』を見せる。

そしてそれ自体を本人は気づかない
故に少女が言ったことに対して素直にアイスの包装を見て驚愕する

「包装……合ってる、舐めただけで解る……ウソォ スタンドも月まで吹っ飛ぶ衝撃的ッ
 (僕のスタンドが吹っ飛ぶと僕まで月に行くけど。)
 今度は僕が考える番かぁー ヒントはもう出てるし推理できる のかな?」

影の手足が思考の癖なのか少年のジョークか、『考える人』のポーズで固まる
笑顔には少しの滑稽さと問題を解く事への楽しさが滲み出ていた。

「んん――僕の2つの脳みそが唸るぜ、学校の期末テスト赤点『ギリギリ』だけど」
 
自分の手でこめかみを叩きながら思考に入る――そのせいで沖で赤い浮きが沈んでるのに気が付いてない。

 「――眼が見えなくなった人は、代わりに視力を補うために別の『感覚』を強化する事が有る
  そして夢では『匂い』や『味』を夢として見るという記録もある
  舐めただけで成分まで解る、『味覚の感覚の発達』は流石に人間離れしているし……
  『五感の超感覚』かな? ……違うかな?だったら『サングラス』必要ないか
  多くても『4つ』くらいだと見た! どう?」

――ニッ!

282夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/09/17(日) 07:46:05
>>281

「ふぅん……私は他のスタンドってあんまり見たことないんだけど、
 私が『トーギジョー』で対戦したのも人型だったし、そうなのかもね」

「ありがと」

誉められたことに対して、短く感謝の言葉を述べる。

「それと、これは喋ってるっていうより、独り言を言ってるっていうか……。
 ずっと同じ単語を繰り返してるだけで、他のこと言わないんだ。
 一つの曲の一ヶ所をリピートしてるような感じ。
 私もよく分かんないだけど、こういうものだと思ってるから。
 しいて言うなら、私だから……かな……」

少年の表情を察して説明を付け加えた。
『ドクター・ブラインド』からは自我のようなものは感じられない。
本体である少女の『光』に対する強い憧れが、
『光』を意味する言葉を発し続けさせているのだろう。

「――『85点』……かな。その答えは……。
 かなりイイ線いってて、100点まで後もうチョイってトコ。
                  パーフェクト
 ほとんど正解なんだけど、『百点満点』じゃないね」

「『超感覚』って部分は正解だよ。
                     ブースト
 今さっき、私は自分の『味覚』を『鋭敏化』」した。
 だから、『甘味』と『酸味』のバランスから、成分がよく分かったの」

「『正解』は――」

ゆったりとした動作で、『ドクター・ブラインド』が少年に近付いて行く。
そして、鋭い爪を備えた指先を、そっと少年の腕に伸ばした。

「ちょっとチクッとするけど、別に攻撃するわけじゃないからね。
 実際に体験した方が分かりやすいと思うから」

拒否されなければ、爪で軽く撫でるようにして、見えないくらいに薄い『切り傷』を付ける。

                         ソ レ
「ところでさ――かかってるんじゃない?『釣竿』」

浮きが沈んでいるのを見て、少年に注意を促す。
そして、釣竿を握ったなら、すぐに気付くだろう。
自らの『触覚』が『超人的』なものになっていることに。

竿に掛かっている力から、その力の『方向』や『強さ』を鮮明に感じ取れるのは勿論、
普通の感覚ではまず気付かないような、
波の振動がもたらす『微細な変化』までも正確に読み取ることができる。
さらには、糸の先に繋がっているであろう獲物の『大きさ』や『重さ』、
あるいは『種類』までも、頭の中に思い描くことが可能だ。

「『超感覚の移植』――それが『ドクター・ブラインド』の能力だよ」

(ホントは、これも『満点』じゃないんだけどね……)

正確に言えば、『ドクター・ブラインド』の能力は『五感の移植』だ。
『ドクター・ブラインド』は、『超人的四感』と『存在しない視覚』を持つ。
それらを他者に移植することが、『ドクター・ブラインド』の能力。
それを話さなかったのは、『存在しない視覚』の移植が『切り札』だからだ。
だから、少年の答えの中の『四つ』という部分は訂正しなかった。

夢見ヶ崎明日美は、生まれつき全盲だった。
そして、この世界は見えない人間が生きていくためには作られていない。
危険を回避して生きるためには、人一倍の用心と最大限の慎重さを必要とした。
それがなくては命に関わる。

だからこそ、見えなかった頃の明日美は、今よりも内向的で警戒的な性格だった。
現在の性格は、これまでの『見えない人生』の中で満たされなかった好奇心が爆発した結果だ。
しかし、体に染み付いた『過去の自分』は、表に出ることはなくなっても、
依然として心の奥に残り続けている。

「私の『超触覚』とショー君の『器用さ』。
 その二つをミックスすれば、クーラーボックスの容量いっぱいになるまで釣れると思うよ」

「あぁ、この中ギッシリ詰まってるんだったよね。
 じゃ、少しはスペース空けとかなきゃ」

そう言いながら、野生の豹のように俊敏な動きで、素早く氷を掻き分ける。
もちろん、自分ではなく『ドクター・ブラインド』の両手を使っている。
そして、手頃なドリンクを手に取って飲み始める。

283斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2017/09/17(日) 18:09:53
>>282

誰にでも、見せたくない物は有る
自分がそこに踏み入ったのかもしれないと言う考えが頭をよぎる
何から感じたのかは解らないが、あるいは影の頭部がそう考えたのか

「LIGHT『光』か、僕のが『鎖と影』だったように
 この子は君を確かに表している ――別に恥ずかしい事じゃあない
 むしろ素直な良い子じゃないか、君の『アクセサリー』」

  (――他の人が『スタンド』を見せたがらないのを解った気がするな
   見れば、何となくどういう人間か想像できてしまうからか
   心を見られて良い気がする人間って言うのはあまりいないだろうし。)

全身に巻き付く鎖、解除して現れる影
斑鳩に取っては求める『奇跡』の為の『チケット』だが
同時に少年自身の『精神性』を表しているという事実が有る

  「僕のアクセサリー何て全然自己主張しない上に、蛸やら蜘蛛やらと間違われるんだもんなぁ
   な、『ロスト・アイデンティティ』。」

 そう言いながら少年は影の頭を軽い調子ではたく ――にこやかに笑いつつ

 アイデンティティの喪失――まさしく『名前通り』なのだ。
 スタンドを手に入れるまでの5年間 自身の存在理由を社会から奪われ 
 取り戻すために息の出来ない日々を送り続けた『彼ら』の『悩み』の発露
『器用にする鎧』『影の五体』『縛る鎖』それが現実からの逃避から生まれた
『三つの人格』それぞれの『能力』彼は理不尽に対して歪まなかったのではなく
 正しく人の為に歪みから剥離した人格なのだ。 

 つとめて明るく、笑顔で振舞い続ける為の。

「うーん、赤点回避って所だけど満点じゃあないのか
 ま、予習復習無しでやった割には良い点数かな。」

『ドクター・ブラインド』に抵抗せずに切り傷を付けられる
ほんの少しの痛みだが医者の注射を思い出して少しだけ口角がひきつった

   「えーっと、これが君の能力って事か えっ あっほんとだ! 
    やった、フィーッシュ……!?」

釣竿を握った瞬間、即座に混乱と理解が押し寄せる
自身の感覚に驚愕すると同時に理解できたことによる歓喜で笑みが零れる。

「何だろうこの『感覚』……これが君の『能力』なのか
 糸の先が解る、得物の大きさ、動き 全部解るぞ……凄い。」

4本の腕が釣竿を掴み正確な捌きで糸を巻き取っていく
……そして細い糸の先にいる獲物は数分とかからずに空中に引きずり出された
魚と水の飛沫が同時に二人に飛翔し、それを影の腕が捉える

 「――釣れたッ!僕達二人なら、君の言う通りこの砂浜の魚が逃げ出すのも時間の問題だね
  『魚』に対しては無敵のコンビ!って所かな。 ……ってあれ?何かこの魚おおき」

――眼が再び見開かれる、糸の先にいた『獲物』のせいで。

「……クロダイだぁーッ!?鯛が釣れたってウソォ!『砂浜』で釣れるのかコレ!?」
落ち着くためにクーラーボックスから氷をかき分けてドリンクをあさりだした。

284夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/09/17(日) 22:54:26
>>283

「私も別に恥ずかしいとは思ってないけど。
 耳元でブツブツ言われてると、ちょっとうるさいけどね。
 もう慣れたよ」

少年の考えを知ってか知らずか、事も無げに応じた。
その言葉通り、特に気にした様子はないらしい。

「イェス!そーいうこと。
              ブースト
 さっきので『触覚』を『鋭敏化』してるから、全身がセンサーみたいに超ビンカンになってるワケ。
 あ、『音』が弱くなってきた。そろそろ終わりかなぁ」

そう言いつつ、こちらは『音』で魚の様子を捕捉していた。
『ドクター・ブラインド』の『超聴覚』を使えば、音の方向や大きさ、種類も聞き分けることができる。

「うわ、デカッ!!こりゃ大物だねぇ。水も滴るっていうけど、今日は濡れたくないなぁ……。
 海水浴に来たわけでもないし」

引き上げられた獲物の大きさに、思わず声を上げた。
同時に、『ドクター・ブラインド』を高速で自分の前に立たせ、水滴を浴びるのを防ぐ。
その直後に、少年が放った驚愕の声を耳にして、小首を傾げる。

「……サカナなんだから海にいるのがフツーなんじゃないの?
 確かにおっきいけどさ。
 そのサカナに足でも生えてたんならビックリだけど」

少女にとっては、さして驚くようなことではないらしく、不思議そうに返した。
魚に関する知識がないということだけは確かなようだ。
かつて目が見えていなかったせいで、やや一般的な認識とズレているせいもあるかもしれない。

「あ、ちょっと――」

少年の行動を見て声を発したが、間に合わなかった。
超人的になった触覚は、皮膚に伝わる刺激を非常に鋭敏に感じ取ることができる。
それは『温度感覚』も同じことだ。
氷に触れたら、その冷たさも通常の何倍も強く感じることになるだろう。

「――『解除』っと。やっぱりフツーに釣るのが一番かもね。
 この辺の魚がゼツメツしちゃっても困るしぃ」

アハハ、と苦笑いしつつ、少年に与えた能力を解除した。

「気長にやろうよ。私、ここで見てるから。
 クーラーボックスの中身減らしながら。ね」

今度はクスリと笑い、クーラーボックスに手を突っ込む。

「とりあえず――はい、コレ」

手を引き抜くと、そこから一本のドリンクを引っ張り出し、少年に差し出した。
その後は近くの適当な場所に座って、時折横槍を入れながら、釣りの様子を眺め続ける。

(――砂浜に出かけたアリスは、そこで変わった男の子に出会いました。
    その子は『不思議な鎖』と『影の腕』を持っていました。
    『見たことのないもの』を見られて、アリスはとても嬉しく思いました。
    そして、『まだ見たことのない沢山のもの』を、もっともっと見てみたいと思いました――)

285斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2017/09/18(月) 22:02:20
>>284

   「いやさ、流石に砂浜にこんなでかい鯛がいるとは思わな かっ 」

――顔が急速に青くなる
まさか彼自身釣れるとも思っていなかったのが針にかかった事
そのせいですっぽりと頭から『ドクター・ブラインド』が抜け落ちたのだ。

      「た たた ――冷たぁぁぁぃぃぃいいい!
       『超感覚』を『頭』じゃなく『冷たさ』で理解出来たぁ!」

ひっくり帰りそうになるのを『ロスト・アイデンティティ』が影の両腕で支え
ブリッジの体制と化す 見えない人からすれば空中で浮いてるように見えるのだろうが
スタンド使いから見ればまるで『蜘蛛』のようだ。

  「おおお……次から気を付けます 僕『セイウチ』じゃないしね」

   「ホント、ゆっくりやるのが良いんだろうな『回り道』だろーと
    今の僕の『最短の道』なんだしな、『辛抱』が大事さ。」

右手をさすりながら能力を解除されたことを確認する
ドリンクを差し出されたことに対して笑顔で答える
腕時計の影以外の皮膚が多少赤くなっていた

「ん、サンキュ夢美ちゃん。
 もう少しだけ付き合ってもらおうかな……ズルはよくないからな!」

もう能力は解除されているので怯える必要は無いのだが
恐る恐る受け取って冷たくならないのを感じると中身を飲んで一息を付く
左手首のミサンガが三重に絡まり、陽光を受けて煌めいた



 (――彼女が『光の国のアリス』なら『僕達』は何だろうね?
  『奇妙な国の……』)

――砂浜の波打ち際、釣りをする2人に未だに陽光は降り注いでいる
 時折の飛沫が小さな虹を作り出していた。

                           to be continued・・・?

286弓削 和華『アンタイトル・ワーズ』:2017/09/22(金) 22:11:07
平日、夕方。
そろそろ学生達も街に繰り出し始めてきた時間帯に、
溜息を吐きながらブランコに腰掛ける女性が一人。

「ふう……」

黒髪をまとめた、清潔感のある女性だ。
モノトーンのリクルートスーツは、今は夕日で僅かに赤みがかっている。
足元にカバンを置いた彼女の横顔は、途方に暮れているように見えた。

287弓削 和華『アンタイトル・ワーズ』:2017/09/22(金) 23:28:23
>>286
「どうしましょうかねぇ……」

口から漏れた呟きも、風によって儚くかき消されるくらいに弱々しい。
途方に暮れているように見える。-、という印象は単なる印象ではなく、
本当に途方に暮れている、というのが正解だった。何故ならば――

         「早く見つけないとですね」「仕事」

弓削和華、27歳、女性。
『前職』役員秘書。
つまり『現職』は自宅警備員的なアレなのだった!!


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