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えばんふみ先生について語るスレ

4二雪:2010/07/11(日) 02:30:12 ID:eETmOAnY0

       小説/木々のゆくえ――もう1つの最終回――


7月の青い海の中で、三神樹里と夏目葉が生まれて初めてのキスを交わしている頃。
樹里の部屋の扉がそっと開けられた。
部屋に入ってきたのは、ほんの少しだけ深刻な表情をした樹里の母。
樹里の机の上には、何やら意味深な小箱と1枚のハガキ。
母はハガキの存在に気付くと、黙ってそれを取り上げ、
裏の面に記されている樹里の自筆の文面に目を通す。

お母さん。私、今ね。恋してるの。

中3の春、もう手の施しようがないと医師から宣告された、ひとり娘の樹里。
あれ以来、樹里は進学も夢も何もかもあきらめ、三神家は激しい絶望のうちに、
やがて来る樹里の死を受け入れるための準備だけを進めてきた数ヵ月だった。
その樹里が何日か前、嬉しそうにしゃべった言葉が、母の頭の中によみがえる。
あの時のことを思い出した母は、文面を読み終えると、寂しげな表情を浮かべて、
静かに微笑んだ。

「……ああ、そうか。あの子は。最後の最後まで、恋をするつもりなんだね。」


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