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連載中スレの楽屋裏避難所

1名無しさん:2008/06/12(木) 14:52:10 ID:???
楽屋裏の避難所としてお使いください

■現行スレ
連載中スレの楽屋裏 第26幕
http://anime3.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1209028846/

2名無しさん:2008/06/12(木) 14:59:54 ID:???
マロンが落ちてるので避難所作ってみました
規制で書き込めない時にもご利用ください
代理投下依頼とかもどうぞ

今回の鯖落ちはHDが逝ったらしいのでdatは死んでる可能性も…

3名無しさん:2008/07/14(月) 08:06:10 ID:q.fpnnc.
test

4帯ギュスレあらすじ:2008/07/14(月) 08:09:51 ID:gniSWLb.
ご迷惑をおかけしております。帯ギュスレあらすじ書きです。
何か自分の使っているところがひどい規制で復帰のメドがたちません。
こちらにあらすじを書いておきますので、どなたか代理投下お願いします。

51/3:2008/07/14(月) 08:10:33 ID:gniSWLb.
第40話 柔道部強化案?

合宿所のお風呂にて練習の汗を流す浜高柔道部。
巧は頭を洗いながら、杉は頭を剃りながら、今後の柔道部の練習について話す。
このままの調子で練習をしていて強くなれるのか。
まあ、地区ベスト4は充分に強いといえるのだが。
「オレがいってるのは三方ヶ原工に勝てるくらい強くなれるのかってことだよ」
泡を流し落として巧が顔を上げると――杉の頭が真っ赤に染まっていた。
「失敗しちゃった…」
「おわ――っ!」
もちろん、これは杉のイタズラ。空のシャンプー容器の中に赤絵の具を入れていたのだ。
「巧のいってたことだけど…確かにこのままじゃ、いつまでたっても三工にかてねえかもな」
「…誰だあんた?」
巧は髪をおろした斉藤が誰なのか分かりませんでした。

とはいえ――どうしたらいいものか。
浜高の部員は一年生が五人だけ。顧問の龍子先生は柔道のシロウト。
他校との合同練習も、月一のいい刺激程度である。
龍子先生とは別に、コーチになってくれる人がいれば良いのだが。
結論は後回し。風呂から上がろうと脱衣所の戸を開くと――なぜかそこには脱ぎかけの龍子先生。
「こ、このエロガキ共が――!」
「ちょ、ちょっとそりゃないぜ!」
男湯と女湯を間違えた先生でしたとさ。

62/3:2008/07/14(月) 08:11:18 ID:gniSWLb.
その頃、浜高女子テニス部部長の栗末は、海老塚桜子の情報収集にいそしんでいた。
桜子と同じ中学出身の部員によると、確かに桜子は中学時代にテニス部、
それも二年の夏にはレギュラーとして試合に出ていたのだという。
その後、すぐに辞めてしまったというのだが。
続いて桜子と今同じクラスの部員に現在の運動能力を尋ねる。

「ハイ、それはもうスゴイです。
 50メートル走で7秒フラットは、クラスの女子では彼女だけです。
 幅跳びでも5メートル以上跳んで、みんなをおどろかしたし。
 ハンドボール投げ40メートルも、たぶん学年トップじゃないでしょうか?」

驚異的な桜子の才能に戦慄を禁じえない栗末部長。
副部長の丸智奈も「放っておけない」と意気込む。

「海老塚桜子!あのコを手にいれれば、きっと我が浜高テニス部の黄金時代がやってくる!」

そんなテニス部の野望もつゆ知らず…寝こける桜子であった。

73/3:2008/07/14(月) 08:11:58 ID:gniSWLb.
翌朝五時半、起床。
「清修〜!逆だよ逆。そりゃズボンのほうだよ…」
「ほらミッタン起きろ!」「朝、弱いんだよ〜低血圧だから…」
「桜子、起きてもう40分よ」「朝は弱いの…低血圧だから…」
「先生、メガネが逆さですよ!」
こんな調子で合宿の朝は始まる。
朝の練習は主に体力づくり。ランニング、ダッシュと走り込みに重点を置いたトレーニング。
その間にマネージャー陣は朝食作り。テニス部のマネージャーと共同作業である。
朝食後少し休憩し、9時から午前の稽古である。

差し入れのスイカを手に合宿の様子を見にやってきた倉田典善。
何か思いつめた様子の巧は、真剣な表情でその前に正座をする。
「生まれて初めてこの頭下げて頼むぜ!おっさんを男と見込んでな!」

その頃、桜子の前に現れたテニス部の栗末部長たち。
桜子にはテニス部に入る気はまるで無いのだが――。
「あいにく、そっちがその気になるまでつきまとってやる覚悟なの、こちらは」
彼女らも真剣そのものである。

巧は典善に柔道部のコーチを依頼する。
「引き受けてもいい」という典善だったが。「ただし!」
「こっちにも弟子を選ぶ権利がある。
 おまえらにオレのケイコを受ける資格があるかどうか、テストさせてもらうぜ」

8帯ギュスレあらすじ:2008/07/15(火) 08:32:21 ID:d6NmGY1k
規制がかなり大事になっているらしく、しばらくこちらに書き込んで
代理投下を依頼する形が続きそうです。
申しわけありませんが、どうかよろしくお願いします。

91/2:2008/07/15(火) 08:33:00 ID:d6NmGY1k
第41話 試験

倉田典前六段が課した試験の内容、それは乱取り一分間。
一分の間、彼に投げられなければ合格である。
口で言うのは簡単だろうが――。
「万一合格しても、オッサンが毎週シゴキにくるだけ」とあまり乗り気ではない茂。
だが、合格してコーチを受けられるヤツが、
受けられないヤツよりどんどん強くなると聞かされ、目の色が変わる。
そして、ものすごくヤル気になってるヤツも約一名いた。

一番手に自ら立候補する巧。
一分間ずっと攻め続け、典善に反撃の機会を与えないつもりであったが――。
ほんの一呼吸、間をおいたその瞬間に投げ飛ばされていた。
「はい35秒。不合格ね」
一分間もぶっ通しで技をかけまくるとしても、どうしても隙は生まれてしまう。
それにしても、あの太った体格でどうしてこれほど素早い動きができるのか。
もう一回チャンスを求める巧だったが、ここは後回し。二番手は杉が出る。

「まかしとけ!巧とはここが違うのよ」
確かに巧は頭が光らない。何か作戦でもあるというのか。
「倉田典善破れたり!さあ、投げられるものなら投げてください!手かげんは無用ですよ!」
いきなり畳の上で丸くなり、亀の体勢になる杉。
確かにこれなら投げられることは無いのだろうが――。
「杉は寝技で勝負がしたいらしい。
 こうゆう時は30秒抑えこんだらオレの勝ちにするからな」
ルールブックは典善です。
あっさりとひっくり返され抑えこまれる杉。自業自得であった。

102/2:2008/07/15(火) 08:33:49 ID:d6NmGY1k
三番手は茂。(よーするに、動きを止めるからつかまって投げられる!)
「それなら一分間逃げまくり作戦!」
体にさえ触らせず逃げ回る作戦を取る茂だったが、驚くべき素早さで捕まり、投げ飛ばされる。
「14秒、不合格」

四番手のミッタンは長い腕をつかって懐に入らせない作戦。
しかし肩をつかんでいた両手をあっさり外され、そのまま一本背負い。
「ハイ15秒、不合格ー!」

下手な小細工は通用しないと踏んだ五番手の斉藤。当たって砕けろの真っ向勝負に打って出る。
得意の連続技で攻め立てるものの――。
「斉藤、おまえは技はキレるが、いかんせん力不足だ。
 上半身の引きつけがなければ、相手は倒れてくれんぞ」
大内刈り、一本。斉藤ですらまるで相手にもならず。改めて化け物じみた典善の強さを実感する。

「たのむ、もー一回だけチャンスをくれ!」
「ああ、何度でも相手になってやらあ」
再び巧が挑む。
一本背負いを小外刈りで返されるが、落下寸前、畳に手をついて持ちこたえる。
(いつまでも、そーやすやすと投げられてばかりいられるか!)
しかし実力の差は歴然。逆に一本背負いで畳に叩きつけられる。
「どうだ、まだやるか坊主!」「やるっ!勝つまでやるっ!」
それを杉が止める。だがそれは、勝てっこないという諦めからではなかった。
「次はオレの番だろが!順番は守れよな」
結局、全員やる気になっていたのだ。
何度でも相手になる、といったのは典善の方である。嫌でも彼らに付き合うしかなかった。
その後も、結局みんな合格できなかったけど、倉田のおっさんもダウンということで…。
後日、あらためてテストの続きをすることになったのであった。

「ひょっとしてこれ、コーチしてもらってんのと同じなんじゃない?」

11名無しさん:2008/07/15(火) 08:59:29 ID:t01GAwa6
規制大変ですね。お疲れ様です
いつも投下されてた21時頃に投下しますね
あとできればトリップつけていただけると助かります

12test ◆nbMIGZGDNo:2008/07/15(火) 17:09:10 ID:jRpPg6Tk
test

131/3 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/16(水) 08:47:40 ID:???
第42話 恐怖のキモだめし

合宿恒例、夜の怪談話に興じる女子の皆さん。
龍子先生自信の「夜な夜なひとりでに鳴り出すピアノ」の評価はイマイチ。
ちなみに彼女はこの学校のOGらしい。
盛り上がってきたところで保奈美が肝試しをしないかと提案し、皆さん乗り気に(桜子除く)。
男女混合が肝試しの鉄則、ということで柔道部と男子テニス部も参加することになった。
まずはくじ引き。同じ番号の者同士がペアを組むことになるのだが――それは巧妙な罠だった。
桜子をテニス部に入部させようと企む栗末部長は使い捨てカメラを取り出す。
「海老塚桜子はどうやらコワイのが苦手らしい。
 これで彼女のあわてふためくブザマな姿を撮るのよ」
他人には見せられないような写真を抑えられれば、ナマイキな桜子も聞き分けよくならざるをえない。
それが栗末部長の策略だったが、どう見てもそれは脅迫です。本当にありがとうございました。

美人ぞろいの女子テニス部とお近づきになれると感涙にむせぶ茂。
番号は2番。同じく2番を引いたのは、女子テニス部副部長の丸智奈。別の意味で涙にむせぶ茂であった。
保奈美は4番で巧が5番。4番を引いたミッタンが代わろうとするが、それは不正だということで遠慮。
参加するつもりのなかった桜子は強制的に6番に。
桜子の順番を知った栗末部長は部員の麻礼葉を呼ぶ。
「いい?あなたは5番になって、後からくる彼女を脅かす役をやってもらうわ。
 私は7番になって、逃げてくる海老塚をはさみうちにするわけね」
さて、肝心の桜子のパートナーは誰かというと――。
「ボク男子のテニス部長、マイケル・知安。ヨロシクね」
彼は日系二世の上に帰国子女だそうです。
「なんだ、ヤツか、心配ないわ。あいつは逃げ足速いからかえって好都合よ」
女子部部長の男子部部長に対する評価は限りなく低いようだった。

142/3 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/16(水) 08:48:46 ID:WBNV6w.o
肝試しのルールは、体育館のピアノの上にあるジュースを取って戻ってくること。
麻礼葉によると巧は結構女の子に人気があるようで、パートナーになった彼女もどこか嬉しそうな様子。
反対に保奈美はひどく不機嫌だったが――それも巧妙な罠だった。
(たのんだわよ、麻礼葉。うまく、その男をのせるのがこの作戦のカギなんだから)
そのとき、ほくそ笑む栗末部長の後ろに迫る影。
「わっ!な、なによあなた!」
「あっ!柔道部部長の杉といいます。そちらが7番と聞いたので。よろしくお願いしますよ先輩」

体育館では保奈美・ミッタンのペアが順調にジュースを取っていた。
戻ろうとしたそのとき、次の巧と麻礼葉の声。
そのただならぬ様子に保奈美たちは物陰に隠れて様子を見る。
巧の手まで握って積極的な態度の麻礼葉に、保奈美は無意識にコーラのアルミ缶を持つ手に力が。
入り口で待っているからジュースを取ってきてほしい、と麻礼葉は巧にお願いをする。
そして――。
「暗くてよくみえないから不安なの。ピアノのところについたら、音を鳴らして合図して」
「わかった――!弾きましょう、モーツァルトだろーが、ショパンだろーが!」
つくづくお調子者だった。
鍵盤の上を舞い踊る巧の指。奏でられるその曲は――。
「ドードーソーソーラーラーソー♪っとね」
(き、キラキラ星)(なにがモーツァルトだ!)
そのピアノの音が体育館の外まで響く。
それを耳にした瞬間、マイケル・知安、脱兎のごとく逃走。
「キャ――まって!薄情者――っ!」置き去りにされる桜子。
走ってくる人影に(うまくやったわね、麻礼葉)栗末部長はカメラを構える。それは人違いなのだが。
「栗末先輩あぶなーい!」
突進してきたマイケルに杉の前蹴りが炸裂。その拍子に転んだ栗末は足を痛めてしまった。

153/3 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/16(水) 08:49:29 ID:WBNV6w.o
「も――やだあ〜。こんなとこ一人でいけるわけないじゃないのよう」
マイケルが逃げてしまったために、仕方なく一人で体育館に入る桜子。
彼女に迫る白い影。「ギャ――!!」
響く絶叫。驚く巧。杉も栗末を背負って走る。
「おろしてよ杉クン、たいしたケガじゃないわよ――!」
「なんだ、どーした?海老塚か?」駆けつけた巧の顔面にバレーボールが激突。「でっ!」
「やだやだやだやだやだやだやだーっ!くるな、くるな、くるな、くるな、くるな――っ!」
パニックに陥った桜子。白い影に向かって親の仇を討つかのごとく、バレーボールを投擲、投擲。
これにはたまらず白い影――白い布を被った麻礼葉は正体を現して謝る。
やってきた保奈美はとりあえずコーラを巧にぶっかけ、桜子を慰めるのだった。
杉に背負われたまま現場に到着した栗末に、駆け寄る麻礼葉。
この瞬間、桜子は全てを理解した。
「逃げるのよ麻礼葉!」「またんかい!」

後日談。
「キャーッ!こないだの使い捨てカメラの写真に変なモノが写ってる――!」
心霊写真の正体は、杉に蹴り飛ばされて顔のひしゃげたマイケル・知安でしたとさ。

16 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/16(水) 08:51:43 ID:WBNV6w.o
>>11
トリップって使ったこと無いんですけど、
こんな感じでよろしいでしょうか?

17名無しさん:2008/07/16(水) 09:42:39 ID:RkBiSyng
>>16
おkですよ。またいつもの時間に投下しときます

18 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/17(木) 08:10:59 ID:tI2wFPqA
本日分です。よろしくお願いします。

19 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/17(木) 08:12:07 ID:tI2wFPqA
第43話 三溝の受難

今日は二学期最初の日。
不真面目な学生さんたちは夏休みの課題の処理に大わらわ。
そのとき、茂が不機嫌そうな表情で小さく(?)なったミッタンを連れ、教室に現れる。
聞けばミッタン、なんとトイレでカツアゲされそうになっていたらしい。
トイレで煙草を吸っていた不良どもに対し、
火事と間違えてバケツの水をぶっかけ、からまれてしまったのである。

弱い者には強いのが不良。
ミッタンの気が小さいことを知っていた彼らは金を出せと要求。
そこで大便所から出てきたのが茂だったのだ。
ヤル気かと凄む不良に対し、茂はまるで動じない。
「やってもいいけど、カクゴしとけよおまえら。ここはトイレなんだぜ。
 オレが勝ったら、容赦なく、てめえらのツラ、便器につっこんでやるからな!こいよ、オラァ!」
見事な啖呵に尻尾を巻いて不良は退散。

そんな武勇伝に「デンジャラス茂」の称号が密かに与えられることに。
それはそれとして――ミッタンのその性格は損である。
この体格があれば、たいていのヤツはビビるというのに。
というわけで、ミッタンの性格改造、今日の放課後から実行、決定。

202/2 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/17(木) 08:13:06 ID:tI2wFPqA
道場の前でアイスをかじりながら待ちぼうけの典善。今日の練習は休みでした。
そんなことでは三工に勝てるチームになれないと怒るも、もう皆、学校の中にはいない。

街中のナクドマルドにて、ミッタン改造計画スタート。
手始めに、女連れのヤンキーっぽい男にチャレンジ。
女の背中越しに男に向かって睨みをきかせるミッタン。
どういうつもりかと訝る男だったが、不意に立ち上がったミッタンの体格を見て驚愕。
ミッタンがそのまま脇を通り抜けてトイレに入ったのを確認し、大きく安堵の息を吐く。
女に気づかれないうちにそのまま店を出ようとするが、反応を確かめようとしたミッタンとそこで鉢合わせ。
「ごめんなさーい!」と謝り、女を置き去りに逃走した。

続いて第二弾、今度は路上でチャレンジ。
坊主頭に薄眉、目つきの鋭いヒゲともみ上げが立派な男がターゲット。
一応学生のようだが、半フレームの眼鏡といい厳つい風貌といい、
どちらかといえばヤクザのそれに近い風情である。
真正面から視線を交わす男とミッタン。しかし、男は退くことなく歩を進める。
(うっ、ビビってない!ハッタリの通用する相手じゃなかった!)
振り返るミッタン。危ないときには皆が助けに入る約束だったが、もちろん既に誰の姿もありません。
ミッタンの肩に置かれる男の手。万事休すかと思われたそのとき――。
「キ、キミは神の存在を信じるかい?」「はあ?」
「まあ、少しお茶でも飲んで話さないか?」「えっ、いえ、その!」
そういう方面の人だったらしい。

ミッタンの受難はまだまだ続く…しかし負けるなミッタン、次回の相手はちょっと手強いぞ!

21 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/18(金) 08:02:52 ID:sCOxjGXQ
帯ギュスレあらすじ、本日分よろしくお願いします。

221/2 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/18(金) 08:03:30 ID:sCOxjGXQ
第44話 花の三溝組、高校与太郎哀歌

三溝の性格改造のための試練はまだ続いていた。
それは、ただもう不良っぽいヤツとみれば、あたりかまわずガン飛ばすという、
ホントにしょうもないコトであったが…。
この時、すでにこのコトが、意外な方向に進みはじめていたとは…。

街中のスポーツ用品店で柔道着の注文をする、赤石林業柔道部新部長の酒井と、同じく新副部長の西村。
せっかく街には出てきたものの、遊ぶにもあいにく先立つものを持っていない。
「しょうがねえ、おとなしく帰るか。赤石山脈のふもとへ」
その二人を呼び止める声。「おい、まてっ!」だが、二人には聞こえていなかった。
最近この近辺でウロチョロしているデカイやつ、ということで、彼らは西村に目をつけたらしいのだが、
もちろん二人には何のことやら分からない。勘違いだろうが、少しつきあってやることにする。

不良四人を相手に圧倒的な強さを見せる酒井と西村。
「てめえら、素人の動きなんざ二段のオレには丸みえだよ」
逃げ出す不良たちの中から金髪リーゼントを一匹捕獲した二人は、喫茶店に連れ込み事情を聞く。
なんでも最近、身長2メートル近い大男がでかい顔をしてウロチョロするようになったというのだが――。
(まさか…?)二人にはその大男に心当たりがあった。
噂では既に五、六人が病院送りにされているという。
もちろん、それはあくまでも噂で、実際にケンカをしているのは誰も見たことが無い。
そして男は土曜日の夕方にしか現れないというのだ。
それを確認した酒井は何か思いついた模様。
「もしかして、オレのしってるやつだとすると、手出ししねえほうが身のためだぜ」
「と、いいますと?」
「そいつには4人の命しらずの兵隊がついているんだ。こいつらがもう、強い、強い。
 しかもそれだけじゃねえ、そいつらを影であやつっているヤツがいる。
 闇のマネージャーと呼ばれる…影のスケ番が二人!」
もちろん、全部デタラメである。
“浜の最終兵器(リーサルウェポン)”の情報を熱心にメモする金髪リーゼントに、大笑いする酒井であった。

232/2 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/18(金) 08:04:12 ID:sCOxjGXQ
これ見よがしなサングラスをかけ、肩で風を切って歩くミッタン。
どうも本当に性格が変わってしまったらしい。
その頃、巧と保奈美はウィンドウショッピング。清らかな男女交際というヤツである。
さすがにそろそろ止めにしないかと茂はミッタンに言う。一応、やりすぎたという気持ちがあるらしい。
と――ミッタンの姿を見た男が大声を上げて逃げ出す。
「で、でたあ――っ!“最終兵器”だ――っ!」
何か有名になってきたらしいミッタン。「ザコめ…」と呟くその声も渋い。
ところが――。
「やっと現れたか、“最終兵器”!!」
「逃がすな――っ!」
いったいどこから集まってきたのか、十人以上もの不良学生の団体さん、ご到着。

さて、アイスクリーム屋から機嫌よく出てきたジャージ姿の男。
その背中を逃走途中の茂とミッタンが突き飛ばす。
バランスを崩し、危ういところで三段重ねのアイスをこぼしてしまうところだったが――。
ミッタンたちを追いかけてきた不良どもに止めを刺され、哀れアイスは道路の上に。

「チョ、チョコミン…ト、キャラメルマーブル…、スペシャルストロベリー〜!あのガキ共〜!」
アスファルトに抽象画を描いて散ったアイスたち。
その仇を討つべく一人の修羅が、涙をにじませ立ち上がった。

24 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/19(土) 08:21:37 ID:vSJ8Tq5U
帯ギュスレあらすじです。本日分、投下よろしくお願いします。

251/2 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/19(土) 08:22:14 ID:vSJ8Tq5U
第45話 魁!!ろくでなし爆走族疾風怒濤編

茂とミッタンを捜す柔道部の面々。
その頃、二人はついに高架下で不良たちに取り囲まれてしまった。
絶体絶命かと思われたそのとき――ロシア人の被っている帽子のような頭をしたジャージ姿の男が現れる。
男は不良の一人に上段回し蹴り一閃。
さらに続けてもう一人を瞬殺。恐るべき切れ味の空手技を見せ付ける。
「空手は小学生の時!そんでもって中学ん時ゃこっちよ!」
今度は左フック、ボクシングである。

まるで人間凶器。十人相手にしてジャージ男は紙でもちぎるように不良たちを蹴散らしていく。
「そこまでだぁ!てめーが空手で鍛えた拳と木刀とどっちがかてえかなー!」
不良の一人がついに定番アイテムを持ち出してくるものの――。
「けっでたなヒキョー者!グダグダぬかしてねーでくるならこい!」
本物の凶器を前にしてさえ怯む様子もまるで見えないジャージ男。
と、そのとき――驚愕の声が。

日本の誇るHONDAスーパーカブ(※車両重量約80キロ)を振り上げて、ミッタン登場。
あまりにも格の違いすぎる武器を目の前に、クモの子を散らすように不良たちは逃げ出していく。
危ないところを助けてもらった礼をいう茂であったが、修羅の怒りは納まっていなかった。
「よけーな世話だってんだよ!」素手の拳による右ストレート。
すんでのところで茂はそれをかわしていた。
「あ、あぶね――!本気かよあんた!?」
「ほお…ボクサー以外でオレの右ストレートをかわしたヤツは初めてだぜ…。
 しかし三度続けてかわしたやつは、プロのライセンスもってたヤツだけだったがな…」

262/2 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/19(土) 08:23:07 ID:vSJ8Tq5U
茂たちの様子を遠くから眺めていた不良ども。
どちらか倒れるまで待って、残った方を総攻撃する算段である。

その、さらに後からうかがっていた保奈美はついつい声を出してしまう。
「だめえ、ケンカしちゃあ!ここにいるヒトたちがなにかたくらんでるわっ!」
あっさりと不良たちに捕まってしまう保奈美と桜子。
こうなってしまってはしかたがない。
何とかジャージ男にも抵抗しないよう頼むしかないのだが――。
なんと彼は自ら無抵抗を示し、その場に座り込んでしまったのだ。その彼を見た保奈美が気づく。
「あなたは…!平ちゃん、平八郎クン?」「…やっぱり保ちゃんか…」
なんとこの二人、知り合いだったらしい。

思わぬ収穫に得意がり、不良どもは茂たちに土下座を強要する。
そこに――救世主登場。「ハーイ!」
いきなり現れた巧に驚く不良。
「い、いつの間に…!誰だてめえ!?」
「オレはこーゆー者だっ!」
巧の怒りの鉄拳炸裂。保奈美を解放する。
さらに杉と斉藤もかけつけて形勢逆転。不良たちはたまらず逃げ出していった。
「あ、そう、巧クン。誰だかわかる?」
「よお、変ってないなあ…タッちゃん」
平八郎は巧を愛称で呼ぶのであった。

27 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/20(日) 08:43:13 ID:W6BcYfG.
帯ギュスレあらすじ本日分です。投下よろしくお願いします。

281/2 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/20(日) 08:44:00 ID:W6BcYfG.
第46話 10YEARS AGO

かつていイジメられっ子だった平八郎をいつも助けていたのが巧だった。
巧、保奈美、平八郎の三人は家が近所の幼なじみだったのだ。
四年生のときに転校した平八郎は、
自分の身を自分で守らなければならなくなり、空手を始めたのである。
「わかる、わかる。はじめはみんなそうなんだ格闘技って。強くなりたいっていう一心でね――」
納得して頷く茂だったが、ミッタンは少し違った。
彼は本当は文化部希望だったのが、むりやり茂につき合わされたのである。
実際にケンカにも勝つようになって格闘技に興味の湧いてきた平八郎は、
中学時代にはボクシングへ転向。
まあ、そちらに熱心すぎたばかりに勉強のほうは見事に落ち込んだらしいのだが。

彼の現在通っている学校は『暁泉学園』という新設の私立校。
彼はその体育科に在籍するスポーツエリートなのだ。
5月の地区予選での浜高の活躍を平八郎は賞賛する。
その上で――来週の市民大会に出るのか尋ねた。

「いいおくれたけど…堀内平八郎は、暁泉学園柔道部主将なワケだ、これが」

平八郎はべつに柔道が好きというわけではない。
しかし、学校側が力を入れている部活なので奨学金がもらえる。
インターハイ出場ともなれば系列の大学に推薦入学もあり、彼には部活が受験勉強のようなものなのだ。
「だから悪いけどタッちゃんにも負けるワケにゃいかない。こっちは一生の問題なんでね」
暁泉の柔道部も全員一年生部員。
だからこそ地区予選での浜高の活躍がくやしかったのだ。

292/2 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/20(日) 08:44:44 ID:W6BcYfG.
「まあ、気が向いたらみにきてくれよ、市民大会。
 浜高に負けねえくらいのド派手なデビューにするから」

帰り道、トーンの低い巧。
ずっとごぶさたしてた親友が、出会ってみたらライバルになっていたでは無理もないが。
巧は茂から平八郎の強さを聞かされる。
(そっか…あの泣き虫だった平ちゃんが…)
それを聞き、笑い出す巧。
落ち込むどころか、むしろ嬉しげな様子であった。

日曜日。休日返上で市民大会を見に来た浜高柔道部に典善は感心する。
「そりゃあもう、我われは倉田典善先生の応援団っスよ。でるんでしょ?高齢者の部で」
「なっ!?」
唖然とする典善。
「バカヤロウ!わしゃまだ五十過ぎたばかりだ!今日は県警のカントクとしてなあ!」

まあ、それはそれとして、何だか不機嫌な様子の保奈美を巧が諭す。
「別に敵同士とか勝負事とかじゃなくてさ。あの泣き虫だった頃の平ちゃんとは違うんだよ」
少し寂しい気もするが、それは仕方のないこと。
試合場で整列する平八郎に、巧は手を振る。

(…本当に変ってないなタッちゃん。
 でも、オレの実力をみてからでもそうやって笑っていられるかな?)

30 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/21(月) 08:43:13 ID:2eoAh91c
帯ギュスレあらすじです。投下お願いします。

311/2 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/21(月) 08:43:44 ID:2eoAh91c
市民大会にはけっこういろんな学校が出場しており、その中には三工の名もある。
とはいえ、藤田は今回は出場しない。今日の三工は実は補欠組、Bチームなのだ。
正選手は昨日まで東京へ遠征、今日は自宅休養の日とのこと。
「藤田のヤローナマイキに…東京ってツラかよ…」
巧の妄想の中の藤田はとてもステキな格好をしていた。

さて、暁泉学園の一回戦。先鋒にはいきなり巧の友人、堀内平八郎が出る。
その彼にむかって何故か味方のスキンヘッドから野次が飛ぶ。
長髪のキレイ目の少年がそれを抑えようとするが、いきなり二人で揉めはじめる。
「うるさいっての!ヒトが試合すんだから、おとなしく見てろ!」
主将として平八郎が一喝。
(なんでウチの部はこんなヤツらばっかなのかなー?)
と悩む彼だが、どうみても類が友を呼んでます。
「キミ、試合の時は帽子を取りなさい」「これは髪の毛っスよ、モノホンの!」
本当に、随分と個性的な学校のようだった。

相手の城南高は前の大会で三回戦まで勝ち進んでいる、それなりに強い学校である。
いくらケンカが強くても、柔道を始めてまだ半年の平八郎がどこまで戦えるものか――?
「ダンスやりにきたんじゃねーぞ、平八郎!」「とりあえず得意の足技でもかけてみれば、平八郎!」
平八郎平八郎と連呼されて怒る平八郎。やはりこの名前は気にしていたらしい。(以下、堀内で)
堀内は城南高の先鋒に対し足払いを仕掛けるが、やはり素人らしくタイミングはメチャクチャ。
踏ん張っている足を払っても、誰も倒れてはくれない。
ところが――相手が脂汗を浮かべて畳に崩れる。
審判が「待て」をかけ、メンバーが集まる。
なんと負傷により相手の先鋒は棄権。
メンバーに抱えられて戻ってくる彼の右足は、すごい腫れ方をしていた。
「ヤツの足、変だよ。人間の足じゃねえよ。石をぶつけられたみてえだよ」
空手をやっていたとはいっていたが、まさか足払い一つで大ケガとは。
堀内平八郎、まさに全身凶器である。

322/2 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/21(月) 08:44:46 ID:2eoAh91c
続いて次鋒は、先ほどの口の悪いスキンヘッドが出る。
「よかったね、杉くんお仲間がふえたよ」
「ゆーと思ったわ!」

やたらと腕が長く、懐の深い彼であったが、
中に入ってしまえばこっちのものとばかりに城南の次鋒が仕掛ける。
背負い投げ。しかし技に入ろうとしたその瞬間――、
まるで蛸の足のようにスキンヘッドの腕が彼の体に絡みつく。
「うおらあああーっ!」
そのまま無造作に持ちあげ、畳に落とす。
審判の手が上がって「一本」。
「まァ、直弼のあのパワーだけは認めるけどね。水泳やってるより、こっちのほうがあってるわよ」

城南高の選手は審判に抗議。
あんなのが柔道技として認められるのか――ということだが、おそらくは無駄。
多少強引ではあっても、あれは「すくい投げ」には違いない。
先鋒の堀内にしろ今のスキンヘッドにしろ、タダ者ではないのは間違いなかった。

「おーい、永田ァ!うれしいだろ、初めて他校の男と試合ができて」「おだまりっ!」
暁泉学園三人目は、何故かお姐言葉の長髪美形。
「…ホントにタダ者じゃないヒトもいますけど」
「…約一名ね」

33 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/22(火) 08:15:49 ID:GB5.xnIg
前回のサブタイトル部分、コピペミスしました。
お手数をおかけして申しわけありませんでした。

次回は単行本5巻のオマケになります。

341/3 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/22(火) 08:16:22 ID:GB5.xnIg
第48話 新たな宿敵

暁泉学園三番手の永田は白帯の初心者とは思えないほどのキレのある身のこなしを見せる。
見かけとは裏腹のまともな柔道。元々の才能が違うということだろうが――。
業を煮やした相手は永田の襟をつかんでいた左手で、そのまま彼の顔面を殴る。
見た目には組み際の事故。
予想外のラフプレーに体勢を崩した永田は小内刈りで「技あり」を奪われてしまう。
勝ち誇る相手であったが、その瞬間、永田が豹変した。
驚くべき敏捷さで後方を取り、相手を片羽絞めに捕らえる。
「さっきのはワザとだなあ、えっ?ワザと顔をなぐったんだな、あ――?
 安心しろ、そんなんで根にもって苦しめようってんじゃねーから」
相手の肩関節を極めると同時に頚動脈を絞め上げる。
心なしか彼の表情までサディスティックに一変していた。
「気持ちよく落としてやるよ。いってらっしゃい(ハァト)」
逃げられないと悟った相手は「まいった」しようとするが――、
二回タップする間もなく失神してしまった。

この時点で暁泉学園の三連勝。二回戦への進出が決まった。
おさまらないのは城南高で、白帯相手に3タテくらった挙句、選手はケガ人だらけのボロボロ状態。
せめて一矢報いてやろうと意気込む副将だったが――その目の前には小山のような巨体の男。
「あ、あの…ちょっとお聞きしますけど…体重、なんキロあるんで…」
「140キロだ」
ヤケクソになって城南高副将は背負い投げを仕掛けるものの、やはり持ち上がらずに圧殺。
そのまま押さえ込みになり、一本。さしずめ、相撲部出身というところだろうか。

352/3 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/22(火) 08:17:53 ID:GB5.xnIg
いずれ劣らぬ化け物ぞろいの暁泉学園。となると、残る一人もタダ者とは思えない。
ゆっくりと立ち上がる大将。外見からして高校生ばなれをしている。
「ダンナ、ラストきめてねっ」
「勝負師といわれた腕前みせてくれよ、ダンナ!」
なんともゆるりとした自然体の構えをみせる暁泉の大将。
まるで一分のスキもないという風情である。

ダメでもともと組み際が勝負、とばかりに仕掛ける城南大将だったが、
相手がまるで抵抗せず一本。「えっ?」
「…ダメだったか…」
「やっぱ、ゴルフから柔道への転向はムリだったみたい…」
「ホントにバンカーの勝負師といわれてたんだけどよー…」
結局、暁泉学園は4−1で一回戦を突破。その後も順調に勝ち進んでいった。

決勝戦の相手はやはり三工である。
想像以上に強かった暁泉学園。浜高とやっていたら勝てたかどうか、微妙なところ。
「彼らの素性をなにもしらなかったら、もしかして負けてたかもしれない。でも…」
「しょせんは素人集団。ちゃんとした対策を立てれば攻略できるってワケか」
現れたのは石塚。彼も暁泉学園を偵察に来ていたのである。
「この地区では今までああゆうスポーツに力をいれてる私立校がなかったからな。
 近い将来強豪になるかもしれないトコだし、他の学校のヤツも情報を集めてるらしいよ」
やはり注目度の高い暁泉学園。石塚によると、藤田もこの会場に来ているらしい。

363/3 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/22(火) 08:18:43 ID:GB5.xnIg
三工の顧問、吉岡先生は暁泉学園のことを聞いてもあくまで余裕。
何しろ三工のBチームとはいえ、彼ら五人は全員が、
他の学校ならポイントゲッターになれるぐらいの実力者ぞろいなのだ。

そのとき、喚声が上がる。
すでに決勝戦が始まっており、先鋒戦に決着がついたところだったのだ。
得意がる吉岡先生だったが、しかし、勝ったのはなんと堀内の方。
彼は開始十秒とかからない瞬殺劇で、しかもまともな柔道技で三工の先鋒を倒してのけたのである。

(みたか、タッちゃん…いや、粉川巧!)
(やるな平ちゃん、相手にとって不足はないぜ。次に会う時は勝負する時だな!)

闘志を漲らせる巧であったが――。
「でも、オレたち他のヤツらとはなるたけやりたくないんですけど…」
他のメンバーはヤル気がおきない様子であった。

37 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/23(水) 08:24:30 ID:S7lnywVA
わざわざ業務連絡まで書いていただき、ありがとうございました。
本日は単行本5巻のオマケになります。

381/2 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/23(水) 08:25:06 ID:S7lnywVA
○単行本5巻 (表紙:三溝幸宏 裏表紙:海老塚桜子)

・四コマその1

1.この巻にでてくる巧の少年時代について少し語ろう。
  もともと巧と保奈美は近所同士で幼なじみだった。

2.しかし、二人は別々の中学に進学した。
  父親が他界して、しばらくたった後、母親の実家の近くにひっこししたからである。

3.二人はそれでもしょっちゅう連絡をとりあっていたらしい。
  そして、そのつきあいは現在に至るわけだ。

4.その一方で巧より前に転向していった平八郎とは今回、偶然出会うまで音信不通だった。
  彼がひがむのもムリはない。 平「うるせえんだよっ!」

392/2 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/23(水) 08:25:50 ID:S7lnywVA
・四コマその2

1.ついでだから永田の少年時代についても語ろう。
  もともと彼はごくふつうの子供であった。

2.小さい頃はおとなしく内向的ではあったが、
  心のやさしい素直な少年であった。

3.しかし、ある日家の者の留守の間、それがすべての始まりであった。

4.永「シャレにならねえんだよっ!」(化粧までしてねーっての!)
  河合:(バキッ!)ゴン!(殴られて机に顔面から激突)


・ついに第5回『絵筆をもってね!』

 選評/河合克敏 応募総数:544点 入選:40点

 グランプリ:岡山県・ゆうき喬史〔巧・茂・保奈美・桜子〕
 準グランプリ:富山県・小林みく〔桜子・豊〕
        神奈川県・佐藤加世子〔巧〕

 topix:東京都・杉薫命〔魅惑のブラン・マクシモビッチ〕
     投稿者の若年化傾向強まる。
     誰かが描くと思った謎のマイナーキャラ丸智奈登場!! 東京都・井上英樹〔丸智奈〕

40 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/24(木) 08:26:24 ID:w4PXkGJY
本日分です。投下よろしくお願いします。

411/2 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/24(木) 08:26:59 ID:w4PXkGJY
第49話 焦り

夜、巧は寝転がってライバルたちを思い浮かべる。脳裏をよぎる堀内、石塚、藤田の姿。
(負けるワケにゃいかねーぜ。あいつらだけには…)
翌日の練習、今日も典善に稽古をつけてもらったものの、誰一人としてかなわずボロボロ。
「あんたたちが弱いんじゃないの?」桜子のこの発言にはさすがにカチンときた。
「ホントにひとこと多いね、コイツ」「クチでゆってわからんヤツは…」「げっ、ま、まさか…」
柔道着を脱ぎ捨てた杉たちは感情のままに桜子に襲いかかる。
「筋肉攻撃――!こらっ巧も斉藤もいっしょにやらんか!」
むくつけき男たちによる筋肉と筋肉の競演。これには桜子もたまらない。
「ゲ――気持ち悪りー、やめてやめてやめてー!」
「いつまでもバカやってんじゃないの!もうすぐ秋の選手権なのよ!」
竹刀を振り回し皆に活を入れる龍子先生。それを巧が止めた。「そのとおりです、先生!」
巧に顔を近づけられ、龍子先生赤面。まあ、それはともかく――。

春の地区予選で好成績を残した浜高は、他校のマークがきつくなるのは当然。
そして三工、佐鳴といった強豪に加えて今度は暁泉学園という新たな敵が現れた。
「そんな中でオレ達が勝つためにはどうしたらいいんでしょう!それがわかんないんですよ先生!」
「わ――またきた!」
自分のするべきことが分からず焦る巧を、龍子先生は思わず竹刀でぶったたく。
「巧クンの気持ちはよくわかったわ。でも、私たちは教師と生徒という関係であって…」
「そーじゃないでしょ」
強くなりたいのなら練習するしかない。しかし、今の練習を続けて優勝ができるかというと、
それはどう考えても難しい。何か決め手を、例えば新しい技の研究するのはどうかと巧は提案する。
しかし、典善がそれを止めた。大会まで二ヶ月も無い今から練習しても身につくような技などない。
だが、巧も納得できない。事実、巧の背負いは石塚や藤田には通じなかった。
背負い投げだけでは勝てないという巧を「まるで背負いを極めたようないいかただな」と典善は咎める。

「自惚れるなボーズ!たかだか十五、六のガキにひとつのワザが極められるか!」

422/2 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/24(木) 08:28:11 ID:w4PXkGJY
巧の背負いが通じないのは、それがまだ未完成だから。
新しい技がどうとかいう前に一つの技を磨くべし。
典善とて極めたとはいえない。しかし、何十年と磨かれた技は今の巧よりはマシだという。
こうまで言われては引き下がれない。

巧は典善と真正面から組み合う。
「いいのか?投げられんように、どんな姿勢をとろうが構わんぞ」「大きなお世話だ!」
そんな巧を鼻で笑い、典善がわずかに手首をかえすと、巧の足元がふわりと浮き上がる。
その瞬間――巧は投げ飛ばされていた。

「…わかったかボーズ?なにがどうおまえの技と違うのか?」
「だいぶ違うのはわかったけど…どういうリクツでああなるのかはわからねえ…」
今の典善のわずかな動作も「崩し」の一種。二本足で立つ人間を不安定にぐらつかせるのは、
手首一つを返すだけでも充分に可能ということなのだ。

「大事なのはいくら敵の体勢を崩すためとはいえ、大きすぎるムダな動作を極力なくすコトだ。
 敵を崩したらそのままスムーズに自分の投げにつなぐ。手足の先まで正確かつ迅速にコントロールして
 それら一連の動作を行うのが理想だ。
 ムダを省くことがスピードにつながる。鋭さを増す。技を磨くとはそういうコトだ」

それは巧のみならず、他の全員にも言えること。
やる気の無いヤツにまで教える気は無いという典善だが、
斉藤が要領のよさを見せ、杉も典善の足元に泣いてすがる。
「やります!やります!見すてないで!」
「あーっ、うるさい!わかった!わかった!」
(よーし、こうなりゃオッサンの技をてってー的に吸収してやるぜ!選手権予選までに!)
決意を新たにする巧であった。

43 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/25(金) 08:20:30 ID:VxYM/Iog
本日分です。投下をお願いします。

441/3 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/25(金) 08:21:20 ID:VxYM/Iog
第50話 授業で柔道

「いいか、いくぞ!」「おう!」「いつでもこい!!」
ダッシュ、ジャンプ、見事に着地。
「ったっ!4人飛び受身成功!」「さすが本職!」
巧の見事な前まわり受身に観客、やんやの大喝采。
受身が上達すればどんな高さから投げられても怪我をしないで済む。
浜高体育教師、来根里先生の柔道の授業では、受身を重視で行うらしい。
柔道を始めたころの思い出をしみじみ語り合う柔道部員。最初の二月は受身しかやらせてもらえず、
それでも実際にマスターできたと実感したのは半年も経ってからのこと。受身とは案外難しいのだ。
――15分後。
「よーし、受身も一通り済んだところで、立ち技の練習に入る!」
もう技の練習に入ってしまうらしい。受身を重視するのではなかったのだろうか。

柔道部ははっきりいってソンである。サッカー部とかバレー部とかなら、
体育の授業でやる時には圧倒的な実力を見せつけてヒーローになれるものである。
しかしこと柔道に関しては見本を見せるぐらいで…乱取りの時はこわがって相手をしてくれないし。
結局、同じクラスの柔道部同士で乱取りをやったりする。
「これじゃ部活と変わらねーよっ!」
個人競技だから当然のことかも知れないが…。

でも本当は柔道部のヤツとやるほうが、うまいからケガすることはまず無いし、
いろいろ訊いて実戦的なテクニックを教えてもらえば、他のヤツらより確実にうまくなる。
「くそっ、この機会にぶん投げてやるヤツちゃんと決めてきたのによ――」
こーゆーヤツはあんまりいないから誤解しないよーに!

452/3 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/25(金) 08:22:46 ID:VxYM/Iog
乱取りで余った巧は、典善に言われたムダのない動き、技の鋭さについて考えていた。
その目の前で豪快な大外刈りを決めるのはラグビー部の沖田。
実は小学生の頃、彼は柔道をやっていたのだ。
「相手してくれねえか?こいつらじゃぜんぜんものたりねえからよ」
沖田は巧に乱取りの相手を頼む。
沖田に嫌な思いをさせられたクラスメートたちは、彼が巧に投げ飛ばされれば面白いのに、と考える。
しかし、沖田はデカい割に運動神経も悪くない。
体格差で巧のほうがやられてしまうのでは?と危惧する。

沖田の側も巧相手なら「手かげんなしで技かけられる」と調子に乗るが、それに対して巧の一言。
「投げた相手があれほど痛がるってのは――おまえの技がヘタだってことじゃねえの?」
沖田のはただの力任せで技になっていないと巧は言う。
カチンときた沖田はその技になっていない技で投げられたらどうするのか?と問う。
「“天竜”のラーメンをおごってやろう。二人前でも、三人前でも」
「五人前だ!忘れんなよ!」
巧からみれば、所詮素人の沖田の動きなどまるでスキだらけ。
しかし、典善からみれば巧も同じようなものなのだろう。
巧これまであたり前にやっていた技の動作を、沖田を相手に細かく一つ一つ確かめる。
小外刈り、一本。
100キロ近い沖田の体を足をかけただけでひっくり返した巧にクラスメート一同、驚愕。
巧にしても、素人相手ならこうしてわかりやすいのだが…。
(これが有段者同士となると、ちっともうまくいかないのだ)

463/3 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/25(金) 08:23:55 ID:VxYM/Iog
おさまらないのは巧に投げ飛ばされた沖田のほうである。
一応は経験者で体格も大きく、多少なりとも自信を持っていた彼だけに、
このまま柔道部に負けたままではいられなかったのである。
その背中に茂がぶつかる。
「へっへー、どうした杉クン?ぜんぜん技かかってないよお!」
「ちょっと身軽だからって調子にノるなっ!
 だいたいテメーは寝技やらせりゃ、てんでオレの相手にならねーだろが!」

茂が寝技が苦手だと知った沖田。チャンスとばかりに寝技乱取りの相手を茂に申し込む。
「おい宮崎!」
「おう沖田!さっき、華麗に宙に舞った男」
言いたい放題の茂に体重差で押しつぶしてやると意気込む沖田だったが――。
開始と同時にひっくり返され、そのまま横四方固め。
「見ろよ、沖田のヤツ今度は宮崎におさえこまれてるぜ」
「ハハッ、ざまーねえや!」

「あんたたちねえ、なんでそんなカッコしてんのよ!今はH・Rやってんのよ!」
「だって六時間めの体育、柔道だったんだもん。どーせ、この後また着替えるんなら同じじゃん」
柔道着のまま教室に戻った巧たちだった。

47 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/26(土) 08:14:06 ID:SXnaEZjs
本日分です。今日もよろしくお願いします。

481/3 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/26(土) 08:14:53 ID:SXnaEZjs
○それぞれのバレンタイン模様
・チョコのアイデアが煮つまってきてるヤツ(今年で7回目)〔保奈美〕
・義理やる相手ばっかやたらいるヤツ〔桜子〕
・あてがあるのでホッとしてるヤツ〔巧〕
・実はけっこーいっぱいもらうヤツ〔斉藤〕
・となりの数が気になるヤツ〔杉〕
・義理しかあてのないヤツ〔茂・ミッタン〕

第51話 暁泉高校監督・市川

暁泉学園、朝の風景。さすがに体育科だけあって、合宿だの遠征だので欠席者が目立つ。
柔道部のスキンヘッド、佐野は陸上部の男に実績が出せていないことをからかわれて揉みあいになる。
授業中だろうと関係なしに暴れる佐野。体育科の生徒にとって授業は単位を取るためだけのものなのだ。
しかし、担任教師が「市川先生」の名を出したとたんに佐野はおとなしくなった。
気を取り直して出席を――と、堀内に言伝。校長室への呼び出しである。

私立暁泉学園高校。某私立大学の付属高校として一昨年、創立されたばかりの高校である。
そしてこの新設校の名を一躍、世間に知らしめたのは“体育科”の生徒。
特にこの夏の県大会では野球部がベスト4、サッカー部が準優勝という創立2年目とは思えない成績を残した。
運動能力に長けた生徒を集め、全国から有能なコーチをスカウトし、おしみなく設備に金をつかう。
周辺の高校スポーツ関係者にとって、この新しい勢力はすでに大きな脅威となっていた。

492/3 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/26(土) 08:15:23 ID:SXnaEZjs
校長室にて、堀内は二週間前の土曜日のことを問い質される。
駅近くの路上で他の高校生と乱闘騒ぎを起こしていたことを父兄に目撃されていたのである。

幸い、警察やマスコミの問い合わせもなく、内々で処理できることになったわけだが――。
本来ならば警察からの通達があろうがなかろうが、堀内は退学になるところだったのである。
事が公になって、他のクラブが出場停止などという事態になってからでは遅すぎるからだ。

市川は堀内の襟首をつかんでロッカーに叩きつける。
実は堀内を呼び出して聞くまでもなく、既に写真を見せて確認は取ってあったのだ。
他に目撃者がいなければ、この件は笑い話で済ませられる。
それを願って処分を待ってもらったのである。
もしものときは、市川自身が全責任を負う覚悟で賭けに出たのだ。

市川は万力のような腕力で堀内の頭を挟みつける。
「オレがおまえにかけてる期待がどれだけ大きいか分かってくれたか?
 同時にこのオレを裏切るようなマネをしたらどうなるかもよーくわかったハズだ。
 それだけは肝に命じておけ!」
廊下に突き飛ばされた堀内は市川を睨むが、それ以上のことはできなかった。
(いいてえことぬかしやがって…しかし、たとえオレたち五人が束んなってかかってみたって、
 あのオッサンの息ひとつ乱すこともできず、返り討ちにあうだろうからな…)
市川哲人31歳、私立暁泉学園高校教員柔道部顧問兼コーチ。
全日本体重別優勝三回、世界学生選手権3位――一昨年まで国際強化選手だった男である。

503/3 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/26(土) 08:16:15 ID:SXnaEZjs
ところかわって浜名湖高校。道場ではそのとき、信じられない出来事が起こっていた。
茂が巧を一本級の技で投げてしまったのである。大はしゃぎの茂であったが――。
「茂、おまえそこまでおちたのか」「へっ?」
「正直にいいなさい。巧君の食事に下剤を入れたとか、トゥシューズの中に画ビョウを入れたとか」
トゥシューズをはいて柔道をする人間などいないだろうが、それはさておき。
誰にもまともに信じてもらえない茂は巧本人に聞くように言う。
「じ、実は…さっき、部室の茂のロッカーの中で…こんなものが…」
巧が出してきたのは、彼の似顔絵が貼り付けられ、五寸釘を打ち付けられた藁人形。
動かぬ証拠に取り押さえられる茂であったが、もちろんそれは冗談。本当に巧は投げられたのだ。

巧は斉藤に「体の調子がおかしいんじゃないか?」と尋ねられる。
「なにをおっしゃるんです!月影先生!この姫川亜弓の演技になにかご不満でも!?」
どうやらおかしいのは頭の方らしかった。

実際、ここしばらくの巧の調子はおかしい。
しかし、それはべつに手抜きをしているわけではなかった。
「考えがあってのことさ。最近ようやくわかりかけた気がするんだ」
「えっ、なにが?」
振り返った巧の表情は、静かな自信に満ちていた。
「オッサンのいったコトの意味がさ。今はそれだけしかいえない」

高校柔道選手権地区予選まで――あと41日。

51 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/27(日) 08:30:47 ID:AAa9SBU.
本日分のあらすじです。よろしくお願いします。

521/3 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/27(日) 08:31:19 ID:AAa9SBU.
第52話 袴田(弟)登場

『チャッチャッチャラチャラチャラッチャーン!ミナミちゃんをさがせ!』
『S県H市佐鳴高校柔道部のミナミちゃんは――袴田今日子さんです!』
合宿所のテレビの画面に登場したのは、なんとあの袴田さん。野郎どもの野太い声が飛ぶ。
「いっち、にーの!ぎょうごおー!」
杉、茂、ミッタンはいつのまにやら袴田今日子親衛隊を結成していたらしい。

高校二年で県大会優勝、全国ベスト8の成績を残し、注目を浴びる袴田さん。
放送が終わってなお、親衛隊の三人は興奮冷めやらず。ウィーン、ガチャコン。
「え、海老塚!それはまさか!?」「今の番組ビデオで録画してたとか!?」
即座にダビングを申し入れる三人。そこで桜子に悪魔の尻尾が生える。
「一人千円。テープ代なしで」「てめええ!」
暴利を貪る悪徳商法に抗議の声が上がるが――その後ろで保奈美がポツリ。
「あの番組って…マネージャーはでれないのよね」
そんな極上の釣り餌に食いつかない柔道部員ではなかった。
「近藤、おまえでたいの?」「う、ううん、ただいってみただけで…」「そーか、テレビにでたかったのか」
「テレビ出演されたことがくやしーワケだ、同じ女として!」「そ、そんな…」
「なによ、袴田なんて、アタシのほーがかわいいのにとか思ってんな、コイツ?」「あ、あの…」
「もしもアタシがテレビにでてたらもー、芸能界がだまっちゃいないわよとか思ってんだろ!?」
「『帯ギュ』のヒロインの座はわたさないわよとか…」
調子に乗る杉の頭に龍子先生の竹刀一閃。
「まったく…高校生にもなって女のコイジメてよろこんでるんじゃない!」

532/3 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/27(日) 08:32:00 ID:AAa9SBU.
翌朝、佐鳴高校。袴田さんは友人一同に取り囲まれ、一躍時の人となっていた。
下駄箱を開ければあふれ出すラブレターの山。これにはさすがに扱いに困る。
「もらって困るもんなら、捨てちまえばいいだろ?」
そこにいたのはオールバックに決めた背の高い少年。
「大体、テレビに出た次の日から手紙送ってくるなんておかしいぜ。
 姉さんはテレビに出る前と何も変っちゃいない。ずっと前からこの学校にいたんだからな」
「豊!」
今頃になって手紙を送ってくるようなヤツに誠意など無い。
テレビに出たヤツがいるのを面白がっているだけで、本気のヤツなどいるはずがない。
まったく正論ではあったが、デリカシーに欠ける発言が袴田さんを怒らせてしまう。
素直に謝れないのも若さというものか。落ちていた手紙の一枚を豊は踏みつけようとして、
――飛び出してきた石塚に投げ飛ばされた。

出足払い一閃。
床に頭から落ちるところを、石塚がとっさにその腕を捕まえて止め、事なきを得る。
「ごめんな、とっさのことでつい手が出ちゃって…つうより足が出たのか、この場合?」
駆け寄ってくる袴田さんたちに、石塚は爽やかに朝の挨拶。
「…アンタ、柔道部の石塚だな!」
「そう、知ってた?姉さんから聞いてたか」
姉と交際している男に対し、弟として複雑な思いが無いはずがない。
豊は跳ね起きようとして――。
「うっ!」制服の袖が破れて後頭部から床に激突。そのまま意識を失った。

543/3 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/27(日) 08:32:44 ID:AAa9SBU.
一時限目が終わって休み時間、石塚は保健室を訪ねる。
付き添っていた袴田さんによると、どうやら軽い脳震盪で済んだらしい。
「だらしない」と実の弟を遠慮なく斬り捨てる袴田さん。
彼女によると、弟の豊も柔道をやっていて、しかも黒帯だったとのこと。
袴田姉弟は熱心な父親に小学校から柔道着を着せられ、実に10年のキャリアを持っていたのだ。

しかし、豊は高校に進学してから柔道部には入らなかった。
それはおそらく姉である彼女がいたから。
一人っ子の石塚にはよくわからなかったが、姉弟とはそういうものなのだ。

ところで、話は今週の昇段審査のことに変る。審査の後で映画を見に行かないかと誘う石塚。
豊はベッドの上で、その会話を盗み聞きしていた。
(昇段審査か…たぶん市の武道館だな…)

昇段審査当日、袴田さんは杉たち(自称)親衛隊に取り囲まれていた。
その様子を物陰から見守る石塚と、さらにその後から覗いている豊。
(くそーっ!また、あいつらきてるよ…。まさか、終わった後までつきまといはしないだろうな…?)
(へっ、よくわかんねーけどイイ気味だぜ)

55 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/28(月) 08:07:00 ID:x4nNvLIA
本日分のあらすじです。今日もよろしくお願いします。

561/3 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/28(月) 08:07:25 ID:x4nNvLIA
桜「今回は柔道の段をとるハナシなので」保「段のとり方を説明します」
杉「段をとるには昇段審査というのを受けるのです。段をとりにきた白帯の者同士で試合をします」
保「一本勝ちは1点、優勢勝ちは0・5点と計算します。
  10点ためれば“優”といって文句なしに初段の免状がもらえます。
  でも、けっこー大変なので、審査に何べんも通うと低い点数でも初段をとらせてくれます」
 「また、6人連続で勝ち抜いた場合、“抜群”といって6点でも初段をもらえます」
桜「なお審査方法は地方によって違うことが多く、三段以上の審査の場合もだいぶ変ってきます」

第53話 昇段審査

市の武道館に意気揚々と乗り込んでくるのは、市川先生率いる暁泉学園柔道部である。
「いいか、初段の審査なんぞにてこずっていたは話にならん。
 お前たちの実力だったら、6人抜きの“抜群”でとって当然だ」
6人抜きしてあたりまえ、それ以外の結果は報告しに来るなと言い放つ市川。
それは彼が鍛えてきた選手たちへの自信の裏返しでもある。

「あっ原田、おまえはいい。ケガしないように気をつけろ」
原田彦蔵16歳(嘘ではない)私立暁泉学園高校一年、柔道部員。
全日本ジュニアゴルフ選手権中学生の部3位“バンカーの勝負師”と呼ばれていた男である――。
「しかし、現在なぜか柔道部に在籍している」「なんで?」「なんでだろ?」

市川先生は協会の偉いさんがたに挨拶。元国際選手も今では新参の一指導者である。
と、そこに。
「こんにちわ――!!」

572/3 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/28(月) 08:07:55 ID:x4nNvLIA
暁泉の面々の前に現れたのは保奈美であった。彼女が堀内の友人と知り、驚く一同。
永田は堀内をはやしたて、佐野はその理不尽さにブチギレ。
しかし、堀内はあくまで敵同士というスタンスを崩そうとせず、その場を立ち去る。

ただ一人残った永田が保奈美に話しかける。
「くわしいコトは知らないけど、平八郎がつらくあたっても許してあげなよ。アレもツライとこなんだから」
暁泉の立場上、ドコの学校だろうと負けられない。勝負は勝負と割り切れない堀内だからこそ、
そこまで徹底しなければ非情になりきれないのである。

しかし、どうして初対面の保奈美に対し、永田はそこまで親切なのか。
「アタシは美しいものが大好きなの。美しければ関係ないのよ、男だろうが女だろうが…ねっ(ハァト)」
乱れ飛ぶ薔薇吹雪。砂と化し風化する保奈美であった。

いきなり一番手で試合をすることになっていた袴田さん。精神を整え、いざ、というところで――。
「ぎょうごぉぉーっ!!」野太い野郎どもの声が試合場に響き渡った。
いわずと知れた杉・茂・ミッタンの袴田今日子親衛隊である。
「キミたち、袴田さんにミョーなプレッシャーをかけんのはよさないか」
「むっ!」「でたな我らの敵!」
石塚が諌めようとするものの、まったく聞く耳を持とうとしない。
「親衛隊だと?」「我々は袴田今日子“公認”ファンクラブだ」「うそよーっ!」
本当はこの三人も二段を受けにきたのだが、もうどうでもいいから今日は袴田さんの親衛隊をやるらしい。
ここで桜子が飛び出す。茂、杉から親衛隊のハチマキを奪い、ミッタンからはヒザ裏にローキックを入れ
頭が下がったところで奪取。その戦利品を斉藤に手渡した。
「あずかっとくよ、コレ。ちゃんと試合したら返してやる」
「斉藤、海老塚連合軍のこれがホントの合わせ技一本なのだ!」

583/3 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/28(月) 08:08:34 ID:x4nNvLIA
試合場では堀内が早々と6人抜きを決める。
スポーツ進学校だけはあり、他とはレベルが違いすぎる。
試合場を眺めていた豊はその実力に戦慄していた。

「初段なんて中坊も取りにきてるからな。ま、オレたちにとっちゃこんなもんお遊び同然よ!」
余裕の佐野。だが、確かにそれだけの実力を彼らが秘めているのは事実。
佐野の視線は試合場よりも、むしろ別方向に。
「でも、予想外の収穫があるかもしれねえ」
その先には保奈美に桜子、袴田さんたち佐鳴の女子柔道部。
彼のその下品さに永田は呆れる。
「身の程を知りなっ!ぬらりひょんの相手してくれる物好きなんてそーそーいないって!」
まったくその通りなのだが、杉たちといい意外にもてる姉の様子に気が気ではない豊である。
(まあ、どっちかっつーと…俺はポニーテールのほうが趣味だけど…)
彼の目には桜子の姿が映っていた。

59 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/29(火) 08:18:10 ID:SavxU89.
帯ギュスレ本日分、今日もよろしくお願いします。

601/2 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/29(火) 08:18:40 ID:SavxU89.
第54話 愛想のいい敵

内股一閃、杉が6人抜きをして、二段一番乗りを決める。
調子に乗った杉は勝因を尋ねられ、
「勝因?きまってるだろ?じ・つ・りょ・く」
などと調子に乗る。
「おーっ?いってくれたよ、こいつは!」
「謙虚ってコトバの意味知ってる?」「とにかくおめでとね!」
しかしそれは決してマグレなどではない。本当に杉の実力が二段並になったのだ。
練習を見てても特別に杉が強くなったとは感じなかった、と桜子。
「みんなが同時に少しずつ強くなったんだよ。茂やミッタンもな」
斉藤の推測どおり、浜高勢は好調に審査試合を勝ち抜いていった。
杉に続き宮崎、三溝と次々に6人抜きをしてのけたのである。

初段は14歳以上からでないととれないから中学生のうちにとれたらまあまあのレベル。
しかし、二段以上は初段をとってから一年以上たたないととらせてもらえないため、
高校一年で二段をとるということは結構大変なのだ。
しかし、杉たちは文句なしの6人抜きで二段をとったのだから、いい気になるのも当然だった。

この調子で五人とも二段ということになったら、次の大会ではダークホースどころか対抗に格上げ。
ところが、本命であるはずの三方ヶ原工の姿が今日は見えない。
三工の一年は自信が無いからまだ二段をとりに来ていない――などと話していると、いました。
「三高柔道部一年の関谷といいます」
立っていたのは体も小さく柔和な顔の、どう見ても強そうには思えないクリクリ坊主。
今日は三工からの受験者は彼一人らしい。
三工の一年生は本当にまだ二段をとりに来ていないのかと尋ねると、彼は笑顔で否定する。
「僕だけまだ、とってないんです。二段を」
聞けば十人いる三工の一年生のうち、九人までが前回までの審査で二段をとってしまったのだという。
巧が藤田はいつとったのかと質問。それはなんと、入部してすぐの五月。
「いや――あの人はほら、オバケみたいなもんでしょ?
 他の学校の二年、三年相手にバッタバッタと6人抜きですよ。いやんなっちゃいますよ」
杉たちの自信が音を立てて崩れていったのはいうまでもない…。

612/2 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/29(火) 08:19:20 ID:SavxU89.
袴田さんを応援する桜子が佐鳴の柔道部とどういう関係なのか、気になって仕方がない豊。
姉にも石塚にも尋ねるわけにはいかず、とにかく話しかけるきっかけが無い。
そこに通りかかったのは暁泉の佐野。
どうもこの男は袴田さんのことが気に入ったらしいのだが――それはともかく。
袴田さんはトータルで4勝をあげるにとどまって、今日は二段はおあずけ。
その分もがんばったのか、それとも浜高に触発されたのか、石塚も見事6人抜きを披露。
二段を一発で仕止めた。

さて、ここで我らが主役の登場であるが…相手の足元を気にしてばかりの巧。
時間いっぱいまでかけてようやく一本。それにしても、応援をしているのが斉藤だけとは。

その頃、佐野は武道館の廊下で袴田さんに言い寄っていた。
豊が止めに入ろうとしたそのとき――。

「その手をはなしな、このタッコング!
 力ずくでモノにしよーなんてサイッテーの男だっ!
 そのでけー図体をそんなことにしか使えないのかい?このコンコンチキ!」

江戸っ子調に桜子の啖呵が炸裂。
「さくらこったらイナセなんだから…」

巧は五人まで倒したものの、時間の使いすぎですでにヘトヘト。最後の六人目の前に気合を入れなおす。
その前に現れたのは…「あらら…奇遇ですねえ」三工の関谷だった。

62名無しさん:2008/07/29(火) 21:05:07 ID:3n2LljVw
レスが付いてなかったんですが一応投下しておきました
楽屋裏でも話題が出てましたが規制で書き込めない人が多いんですかね
自分が参加できればよかったんですが帯ギュは読んだことがなくて…

63 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/30(水) 08:17:35 ID:F1rC59to
>>62
ありがとうございます。
自分自身、長期にわたって規制されていますので、他人事ではありませんね。
今日の分のあらすじも置いておきます。

641/3 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/30(水) 08:18:28 ID:F1rC59to
第55話 奇策

保奈美と桜子の制止も聞かず、逆に襲いかかろうとする佐野。そこで豊のカットが入る。
「いーかげんにしろ、この変態が!」
ケツを蹴られて激昂した佐野は、豊に拳で殴りかかる。
(現役はなれてっからうまくいくか、わからんが…)
佐野の胴に飛びつく豊。その背中に肘を落とそうとする佐野だったが、その瞬間、豊の大外刈り。
もんどりうって倒れる佐野。試合ならば確実に一本の勢いだったが。
「ムチャよ、ユタカ!下はコンクリートの床なのよ!」
打ち所が悪ければ命の危険さえもあるかもしれない。だが、佐野は平然と起き上がる。
「…くそっ!いきなりこんなとこで大外刈りとは、とんでもねえ野郎だぜ」
佐野はコンクリートに頭を打ちつけないよう、とっさに両手で頭をカバーしていたのだ。

やはり格闘に関しては鋭いセンスを見せる暁泉メンバー。そこで保奈美が制止に入る。
ちょうど他人が来るところであったのだ。
「くそう!なんつータイミングの悪さだ」
(グッドタイミングだよ)
もう一度コイツを投げろといわれても、豊には自信がなかったのだ。

この決着は後日つけさせてもらう、と息巻く佐野であったが、保奈美はどう勘違いをしたのか――。
「柔道やってる者同士なんだから、今度は試合で決着をつければいいんですよ!すぽーつまんらしく!」
さすが天然というべきか。
この一言で、場の空気は一気に毒気を抜かれてしまった。

652/3 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/30(水) 08:19:02 ID:F1rC59to
試合場では巧VS関谷。関谷の大内刈りが決まり、判定は「技あり」。
寝技に入ろうとするところを巧は体を回転させ、危ういところで難を逃れる。「コイツ…!?」
(カオが弱そーなんで油断してたら…メチャクチャ強え――じゃねえかっ!)
「とわぁくみっ!このマヌケ野郎っ!」
「なにやってんだてめーわっ!」
「袴田さんがいねーから、しかたなく応援してやってんのに!」
杉、茂、ミッタン。つくづく最低な三人である。

それはそれとして――。
関谷の足さばきも組手争いも一流のもの。三工にまだこれだけの相手がいたことに戦慄する巧。
関谷は受けがうまい。特に下半身の安定が良く、どうやっても転ばない。
巧が足技で崩そうとしてもまるで動じず、崩れないから大技にも入れない。
そのため、巧は決め手である背負いが出せないでいるのである。
(こんな人に苦戦したなんて…藤田クンもまだまだだなあ…)
笑う関谷。

巧は頭をフル回転させて、この男を崩す方法を考えていた。
片足を払っても残った片足だけで安定しているような相手、いっそ両足とも払えるような技があれば――。
(あるぞ、たったひとつ!コイツの根っ子のような両足を、地面から引っこぬく方法が…!)
巧が仕掛けたのは、なんと浮技。自ら畳に沈み込み、突き出した足に相手を引っ掛けて倒す捨て身戦法。
(苦しまぎれに変ったワザを出してきたか?)
関谷は巧の足をジャンプしてかわす。その瞬間――巧の左手が関谷の足を空中でつかんだ。
(し、しまった、出した足をかわすのに飛びこえてくることを予測して!最初からコレが狙いだったのか!)

663/3 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/30(水) 08:19:39 ID:F1rC59to
「やった、ヤツの自由を奪った!このまま、後ろに投げつければ…」
……何もならなかった。関谷はそのまま難なく着地。
「えっ!なに!?なんでひっくりかえんないの!?」
そのまま押さえ込まれて巧は一本負けを喫してしまう。
「た、巧…おまえなあ〜!」
「なにがやりたかったんだよ〜?」

巧がとっさに考えたこの戦法は決して悪い手ではなかった。
これとまったく同じ原理の技が存在するからである。
その技は「球車」という。ただし巧の場合、相手の足をつかむ手が逆だった。
左手でなく右手をつかえば相手を文字通り球のごとく一回転させ、畳にたたきつけることができたのだ。
もっとも、巧はそんな技が存在するということ自体、知らなかったのであるが…。

6人目まで来て負けたことを大いに桜子に馬鹿にされて怒る巧。
そんな仲のよさそーな二人の様子を見て、豊は心中穏やかではない。
「キャー、ユタカくん助けてーおそわれる――っ!知ってる?この人袴田さんの弟なんだって!」
「あっ、そうなの?どーも、オレ、粉川っていう者で…」
「袴田豊、よろしく」

67 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/31(木) 07:55:54 ID:jpiiTuIQ
帯ギュスレ本日分です。今日もよろしくお願いします。

681/2 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/31(木) 07:56:14 ID:jpiiTuIQ
第56話 より道

電話で吉岡先生に二段をとった報告をする関谷。その後ろを浜高の面々が通り過ぎていく。
茂、ミッタンの二段取得苦労自慢が続く中、杉の言葉が巧に重くのしかかる。
「まあ、二段とってひとかわむけた我々から見れば、初段レベルの人間なぞ…すでに赤子同然!」
そう、今回の審査ではなんと5人のうち巧だけが二段をとれなかったのだ。
関谷は巧との試合でかけられた奇妙な技を思い出す。その瞬間は彼自身も、確かに「やられた」と感じたのだ。
「藤田クンが苦戦した理由がわかりましたよ。今まで数多くのヤツと試合してきましたけど、あんな男は初めてです」
報告を終えた関谷が受話器を置いたとき、既に浜高の面々は行ってしまった後だった。

ファミレスにて、石塚に昼食を奢ってもらう豊。冷ややかな姉の視線がその横顔に突き刺さる。
(せっかくの石塚クンとのデートをぶちこわしてくれて…後で覚えてなさいよユタカ…)
豊がトイレに立ったおかげで、ようやく二人きりになる。
日曜日だというのに制服でこんなところにいる自分たちの姿を気にする袴田さん。
一、二時間前までは武道館で汗だくになっていたかと思うと、このような場所にいることに違和感を覚える様子。
「柔道やってる女のコって…やっぱり普通じゃないのかな…」
それはおそらく武道をやる女子の誰もが抱く疑問。石塚はしどろもどろになりながら彼女をフォローする。
「…オレはその…いいと思うけどな…。いや…あの、柔道してる時の袴田さんもその…。
 今、こうしている袴田さんも同じ袴田さんなんだし…あれ?」
何やらいい雰囲気になるものの、石塚は自分が作ったその空気に耐え切れず、強引に話題を変える。
豊が暁泉の佐野を投げたと聞いて驚く石塚。三工Bチームに圧勝した暁泉の選手を投げ飛ばしたということは、
豊自身も相当の実力を持っているということである。

692/2 ◆nbMIGZGDNo:2008/07/31(木) 08:00:17 ID:jpiiTuIQ
トイレから戻ろうとした豊は偶然、入店してきた桜子と行き会う。
思わず浮き立つ豊だったが、そのそばにあたり前のようにいる巧に気づき、一気に苛立ちの頂点に。
(なんなんだっ!この粉川って男は!いつもいつも桜子さんのそばにひっついてやがって…)
実は、巧のそばにひっついているのは保奈美であって、桜子は親友である保奈美のそばに常にいるのである。
この3人一緒パターンになってる現状を、彼、袴田豊は知るよしもなかった!

さて、石塚は豊を柔道部に引き込むことを決める。
選手権予選まで一ヶ月。三年生が抜けてさらに戦力の落ちた佐鳴はメンバーの補強が必要だった。
袴田さんにも説得して欲しい、とその手を石塚が取ろうとした瞬間、いきなり扇子の一撃。
「人が見てないとこでこの男ときたら…いったいナニしようとしてたザマスッ!」
怒りの炎を背に現れたのは袴田今日子親衛隊。杉、茂、ミッタンだった。
「このアタシがいる限り、そーかんたんにラブコメ路線にさせないザマスよ〜っ!」

帰り道、二段をとった喜びを唐突に歌で表現する杉。
「にーだんお肩をたたきましょー」「なんやねんそれ!」
調子に乗りすぎの杉たちを怒る桜子。それを眺めていた豊はなんと、自ら柔道部入部を希望する。
(所詮、桜子さんとは違う学校だが、柔道部に入れば、試合とかで会える機会が増える。
 そうすればあの粉川とかいうヤツと対決することも…)
杉たちを諌めようとする斉藤だったが、逆に「おまえには喜びを表現することができないのか」と返される。
「そうだ斉藤ギャグをやれ!」「二段をとった喜びを表現したギャグを!」
なんというムチャ振り。しかし、こうまで言われては斉藤も引き下がれない。
「よ、よーし、やればいいんだろギャグを!」

「ニダンの考える人ーっ!」

10月も半ば、選手権予選まであと一ヶ月とせまった秋の日のことであった…。「あー夕焼け!」「秋だねえ…」

70 ◆nbMIGZGDNo:2008/08/01(金) 08:28:38 ID:wqfJ/zeQ
本日分のあらすじです。投下お願いします。

711/3 ◆nbMIGZGDNo:2008/08/01(金) 08:29:09 ID:wqfJ/zeQ
第57話 天才的発想

典善は巧に二段をとりそこなったときの技をもう一度やってみせるように言う。
これは失敗作なので巧みは嫌がるが、典善に強く求められ渋々従う。
「へいへい。最初にこーやって浮技をかけて、わざと相手に飛びこえさせるわけよ。
 で、飛びこえようとした足を左手でつかむ。いくら足腰の強いヤツでも、
 こんなときに足つかまれたらどうすることもできないだろ?
 でも、こんなカタチじゃぜんぜん投げられないって後になって気づいたんだ。
 で、そのままおさえこまれて敗け…」
巧のその説明に、典善はなんともいえない微妙な表情をした。

こんな負け方をした巧自身も恥ずかしいと思っていたが、典善の困惑は意味するところが違ったらしい。
「おまえがやろうとしてたことを完璧な技にして見せてやろう」「へっ?」
言うが早いか、典善はいきなり巧に浮技をしかける。
「そら、そこで飛びこえてみろ!」
その声に反射的に跳ぶ巧。その足を典善の“右手”が空中で払った。
(な、なんだあ〜!?)
巧の体は空中で文字通り、奇麗に一回転して畳に落ちる。
「わかったか坊主、こうすればうまく投げれたんだ。この技は“球車”という」

巧は左手で相手の足をつかんだが、それでは投げようにも投げられない。
左手で相手を引っ張り続け、もう一方の手で相手の足を払えばこのように投げられたのである。
「そうすれば空中で球を転がすように相手は一回転して、畳に叩きつけられる。
 これが三船久蔵十段のあみだした『球車』だ」

722/3 ◆nbMIGZGDNo:2008/08/01(金) 08:29:45 ID:wqfJ/zeQ
三船十段は大正から昭和にかけて活躍した超天才柔道家である。
別名「空気投げ」といわれる「角落とし」といわれる技を作ったのもこの人なのだ。
足や腰に一切乗せず、手と体のひねりだけで投げ飛ばすという「空気投げ」に興味津々の桜子。
斉藤に実演を頼むものの――。
相手役の杉をつかみ「ええっと、確か…こう下がって…」
畳にヒザをついた「こうだっけかな?」「そうそう」というだけ。
「なによ、それ!ぜーんぜん投げてないじゃない!」
「そんな神技みてーなことがカンタンにできたら、苦労はねーの!」
まあ、あたり前のことだった。

巧は「球車」をもっと詳しく教えてくれと頼むが、典善は拒否。
この技は三船十段が60歳を過ぎて編み出した技。今の巧には高度すぎるのである。

普段の練習に戻るよう言う典善。しかし、教えるつもりもない技をどうして巧に見せたのか。
「巧クンを励ましてやりたかったんでしょ?勝負に負けて二段こそとれなかったけど…
 その発想は間違いじゃなくて、逆にとてもすばらしいものだって…」
龍子先生が的確に典善の心情を説明する。
柔道の神様みたいな人と同じことを思いつく巧に典善は、
「アイツの頭の中はわしにもよくわからん…」としかいえなかった。

733/3 ◆nbMIGZGDNo:2008/08/01(金) 08:30:28 ID:wqfJ/zeQ
保奈美と一緒の帰り道、唐突に「巧クンって、本当に天才なのかも知れない」などとのたまう保奈美に
巧は自転車ごと転倒。しかし彼女は冗談で言っているわけではなかった。
巧の試合を見ていると、ドキドキしてくるのはなぜか。
「かならずなにかがおきるからよ。それを待っててドキドキするの」
どんなに強い相手と当たっても、最初のうちは負けていても、いつしか互角に戦って、
最後にはもしかして――と思わせてしまう。
巧のそういう戦いぶりは才能だと保奈美は言う。

「今度の選手権はきっと優勝しちゃうね。だって、巧クンって天才なんだもん」

優勝しちゃう、というのが巧らしくていい。しては間違いみたいなところが。
保奈美のストレートすぎる言葉に、巧は照れを隠し切れない。

いつしかいい雰囲気に――巧は保奈美の肩に手を置こうとする。
(ん…ずいぶんとこれはまたすべすべと…)
すべすべと剃り上げた杉の頭だった。
「て、てめーらはなあ!カゲで見てたな、ずーっと!」
「バカが!もうちょいだったのによっ!」
「わっはっはっは!オレの目の黒いうちはぜーったいにラブコメにはさせんのよ!」
まあ、こーゆうオチもありの。

74 ◆nbMIGZGDNo:2008/08/02(土) 08:33:24 ID:2m7WQGOE
帯ギュスレあらすじです。
今回、宮崎親子の会話に雑誌掲載時と単行本で改変された部分があったそうなのですが、
あらすじ書き当人は連載当時単行本派で、改変前の形が確認できなかったため、
その部分は誠に勝手ながらスルーさせていただきました。
ヘタレで申しわけありません。

751/3 ◆nbMIGZGDNo:2008/08/02(土) 08:34:05 ID:2m7WQGOE
第58話 対決前夜

めずらしく桜子から保奈美に電話。明日が試合ということで、興奮して寝つけなかったらしい。
寝る、といってもまだ7時半なのだが、桜子は明日は早起きして弁当を作るのだという。
「朝5時に起きるとして、10時間は寝ないとダメだから、もう本当は寝てなきゃダメなの」
「はあ、なるほど…(ホントにすごい低血圧だなあ…)」
いてもたってもいられない気持ちなのは保奈美も同じ。さて、他の皆はどうすごしているのか――。

巧は杉の自宅の寺で夕食をご馳走に。今日のメニューはテキにカツということでトンカツ。
浄土真宗なのでナマグサものもOKです。お酒だって飲めちゃいます。
ですから遠慮なく、と巧にビールを注ごうとする杉の妹、薫。
もちろん、未成年の飲酒は法律で禁止されています。
巧の家は母一人子一人。父親は彼が12歳のときに亡くなったと聞き、
杉一家は巧を「これからもちょくちょく遊びにきなさい」と温かく迎え入れる。
「そうよ、いつでも大歓迎するから。あたしもお兄さんができたみたいで楽しいし」
「おまえのお兄さんならここにいるぞ」

斉藤の家はラーメン屋。出前から戻ってきた斉藤を母親は優しく労う。
斉藤はなんと五人兄妹の一番上。弟妹たちは宿題を手伝って欲しいとせがむ。
明日は試合なんだから、と二番目の弟が止めるが、小さい弟妹たちは今日中に宿題を終わらせて、
明日の試合を見に行くつもりなのである。仕方がないので全員がかりでさっさと片付けることに。
二番目の弟の貞夫は明日は部活で応援には行けないが――。
「でも、市民武道館はうちの中学のそばだから、兄ちゃんたちが昼過ぎまで勝ち残ってたら寄ってやるよ」
顔を上げないままそんなことをいう弟に、斉藤は「よし、わかった。絶対に来いよ」とそれだけ返した。

762/3 ◆nbMIGZGDNo:2008/08/02(土) 08:34:43 ID:2m7WQGOE
ミッタンの家は意外に大きく洒落た一軒家。なんと彼は三人の姉を持つ一番下の弟だった。
風呂に入ろうとするミッタンを姉たち全員が制止。ミッタンが入るとお湯が全部なくなってしまうため、
彼が一番最後というのが三溝家の長年のルールらしい。
とはいえ、明日は試合なので早めに体を休めたい。姉たちも鬼ではないので、そこで妥協案。
「ただし、おフロあがったら掃除して、またお湯いれといて」
やはり鬼でした。
「そんな事してたら体が冷えちまうだろっ!だいたいなんで掃除までせにゃならんわけ?」
「あんたのはいった後のおフロなんてキモチ悪くてはいれないのよっ!」
「なにーっ実の姉弟だぞっ!」「よるな汗くさい!」
数に物をいわせてワガママ放題の姉たち。腹を立てたミッタンはついNGワードを口にする。
「しかし、土曜の夜だってのにどーしてこの家には若い女が3人もテレビなんか見てんだろね!」
その夜、浜松市には局地的に大嵐が吹き荒れましたとさ。

茂の家は酒屋。夕食時にどうみても泉谷な父親が明日の試合を見に行こうかというが、
茂は断固として拒否。瞬間、父(泉谷)のボルテージは瞬間的に沸点突破。
「なんだああーっ!てめえ、親に向ってその態度わああっ!」
「怒鳴んじゃねえーっ!メシ食ってる時に!」
ノータイムでいきなり親子喧嘩をおっぱじめる両者。そのとき、店先から母親の声が飛ぶ。
「いーかげんにしなさいよ!おもてまで聞こえるだろ!」
「はいーっ!」
茂、宮崎父(泉谷)、直立不動。この家で一番強いのは母親らしかった。

773/3 ◆nbMIGZGDNo:2008/08/02(土) 08:35:36 ID:2m7WQGOE
杉の家から帰り道、巧は無性に保奈美の声が聞きたくなり、電話をかけるも通話中。
それもそのはず、保奈美はまだ桜子と話し込んでいた(すでに一時間半経過)。
どこにかけていたのかと杉に問われ、家にかけていたと嘘をつくが、あっさりと見抜かれる。
三工の藤田。佐鳴の石塚。そして新たに暁泉学園。
強敵目白押しの今大会、自分たちも強くなっているとはいえ、不安は消えない。
やるだけのことはやったのだから、後は運を天に任せるのみ。

「とりあえず明日だけはビシッと決めようぜ」
「気合はいってるな。珍しく」
杉の真剣な態度に巧も呼応する。
「なっ期待してんだから、いちおう。だから二段の時みたくヘマしないようにな」
「だーっ、しつこいってのっ!」

杉と別れ、一人で家路に着く巧。
公衆電話から再び保奈美のところへ電話をかける。
ちょうど良く、桜子の電話が終わったところですぐに保奈美は受話器を取った。

「あ、保奈美?オレ。いや、別に用ってほどのもんじゃないけど…
 明日さ、何時に出んの?うん…うん…」

78 ◆nbMIGZGDNo:2008/08/02(土) 08:36:40 ID:2m7WQGOE
次回は単行本6巻のオマケになります。

79 ◆nbMIGZGDNo:2008/08/03(日) 08:27:44 ID:e1E/XVd.
本日分です。投下お願いします。

801/2 ◆nbMIGZGDNo:2008/08/03(日) 08:28:22 ID:e1E/XVd.
○単行本6巻 (表紙:粉川巧 裏表紙:袴田今日子)


・四コマその1 『なつやすみのおもいで こがわたくみ』

1.8月18日 きょうはきんぢょのほっちゃんとへえちゃんとうみにいきました(略)

2.保「たくみくん これなに?」
  巧「ドゴラだっ!」
  平「くらげだよ、たっちゃん」

3.いっぱいつかまえてびにーるにいれといたらいつのまにかにげていた。
  巧「みずだけになってた」
  保「にんじゃみたい!」
  平「とけたんじゃないかなあ…」

4.くらげのヤツもなかなかやるとおもった。
  巧「おおきくなったらくらげのようないきかたをするんだっ!」
  保「プカプカしてきもちよさそーだね!」
  平「…………」

812/2 ◆nbMIGZGDNo:2008/08/03(日) 08:28:58 ID:e1E/XVd.
・四コマその2 

1.うみにはいろんなひとがいた。
  龍(高1)「ここか!」
  「おーさすがりゅーこちゃん!」
  「みごとな切りくちだっ!」

2.杉「かおる、おまえなに、つくろうとしてるんだ?」
  薫「おとしあな。おにーちゃんこそおーさかじょうなんかつくって…」
  桜「キャッキャッ」(このあとげきとつしてこわした)

3.茂「うきわにたよってちゃ、いつまでたっても、およげるよーにならねえっ!」
  三「うぎゃーやめてやめてえ!」
  斉(兄弟たちをお守り中)「おーい、あんまりとおくにいくなよー」

4.うみはたのしい またきたいとおもった。
  巧「ところでほっちゃん。なつやすみのとも もうやっちゃった?」
  保「ううん」
  平「…………」


・いよいよ第6回 『絵筆を持ってね』

 選評/河合克敏 応募総数:746点 入選:23点

 グランプリ:千葉県・川辺真実〔桜子〕
 準グランプリ:神奈川県・ズームイン杉田〔薫〕
        神奈川県・妖怪百人衆会〔杉〕

82 ◆nbMIGZGDNo:2008/08/04(月) 08:18:40 ID:Fyty6Jz6
帯ギュスレ本日分です。今日もよろしくお願いします。

831/2 ◆nbMIGZGDNo:2008/08/04(月) 08:19:06 ID:Fyty6Jz6
珍しく試合の応援に来たいという杉の妹、薫。
いつも柔道なんか格好悪いからやめろと言っていたのだが。
「だって、巧さんもでるんでしょ?私、だんぜんあのヒト、気にいっちゃった――!」
「な、なに――っ!おにーさんはゆるしませんよっ!」

第59話 強豪集う

武道館前、なんと、まだ予選にも関わらず三工に地元新聞の取材が来ていた。
高校総体ベスト16の実績を引っさげて今度は高校選手権への挑戦ということで、やはり注目度は高い。
試合前の様子を一枚、ということでカメラマンの構える前に並ぶ三工柔道部だったが――。
――カシャ
狙い済ましたかのような絶好のタイミングで、巧、保奈美、桜子の乗る自転車が、
ファインダーの前を横切っていった。自転車の三人乗りは危ないので止めましょう。
結果的にそうなっただけとはいえ、巧の嫌がらせに藤田は憤る。

気を取り直してもう一枚、というところで――。
「袴田さぁーん!!」暴走トレーラーのごとき勢いで茂とミッタンがカメラマンを跳ね飛ばす。
「杉クンと斉藤クンだっけ?」哀れにも袴田さんに名前を間違えられる二人。
だが「この宮崎茂、あなたが杉だといえば杉と名前をかえてもいい!」と言い切る漢の心意気。
もっとも、恋人志願というよりは下僕志願にしかみえなかったが。
と、撮影用のカメラが見当たらない。どこかの子供が勝手に写真を撮っていました。
「なにをすんだ!このガキはっ!」
カメラを取り返した彼が目にしたものは、細胞分裂でもしたかのように同じ顔のそろった子供たち。
ある意味ではホラーのような光景である。
「コラッなにやってんだおまえらっ!」「げっ親玉!」
平謝りの斉藤だったが、そろそろ待たされている藤田の苛立ちは頂点に。

842/2 ◆nbMIGZGDNo:2008/08/04(月) 08:19:45 ID:Fyty6Jz6
今度こそ、とカメラを構える彼の目の前に、今度は猫目の女の子。
「えっ写真ですか?やだっこまっちゃうな――っ!」
誰に言われるでもなく、進んで花壇の前でポーズを取る薫。カメラマン、無言でつい一枚。「撮るな!」
杉が薫の首根っこを引っつかんで回収していきました。
「変な雑誌には投稿しないでねー(ハァト)あっ学校名はふせといて」「だまれ!」
ようやくのことで撮影を終える三工。どうやら浜高とはよくよく縁があるらしい。
あんな騒々しい生徒ばかりじゃ先生も苦労するだろう――というところで、トリはこの人。
「あーん!やっちゃった――っ!新車が新車が――っ!」「このバカ!免許とりあげるぞ!」
車のタイヤを溝に落として大騒ぎの龍子先生でしたとさ。

柔道部メンバー同士でも、その家族とは初対面の場合が多い。桜子は斉藤の妹を頭なでなで。
「へえーっみんな斉藤クンの兄弟なの?何歳?」「ななつ…」
「かわいいわねーっ!」
(かわいいっつうか、オレはビクッとしたけど、初めて見たとき)
茂の感想もごもっとも。ところで、巧の隣にあたり前のように座っているのは?
「オレの妹だ」「薫ともーします」
まるで似ていない二人に茂、ミッタン、驚愕。

薫は桜子に話しかける。
「何歳ってきかないんですか?」
「えっ?あっ、い、何歳?」
「14歳です」
「ふーん、そお……」
「…………『かわいいわね』って、いわないんですか?」
臆面もなく言い放つ薫に固まる桜子。「かわいくないっ!」

開会式が終わり、発表された一回戦の組み合わせは――浜高VS佐鳴。
前大会の二位と三位がいきなりの激突である。
「もう少し後にあたりたかった」と袴田さん。しかし、決まってしまったものは仕方がない。
「豊も、やっとヤル気だしてることだし…ねっ!」
「や、やあ」
桜子の前に現れたのは、オールバックを見事な丸坊主に刈り込み、気合十分の豊だった。

85 ◆nbMIGZGDNo:2008/08/04(月) 23:14:59 ID:mOU8F3OQ
帯ギュスレあらすじ書きです。ただいま知り合いのパソコンを借りて書き込んでいます。

楽屋裏の方にも書かせていただきましたが、
規制に加えて自前のパソコンまで逝ってしまいました。
さすがにこれでは続けられませんので、しばらくの間、休載ということにさせていただきます。
ご迷惑をおかけして本当に申し訳ありません。

86名無しさん:2008/08/04(月) 23:48:55 ID:sbF9IIVQ
代理投下していたものですが了解です
大変ですね…。復帰をお待ちしてます

87 ◆nbMIGZGDNo:2008/08/06(水) 19:39:58 ID:wJExXsuQ
帯ギュスレあらすじ書きです。
楽屋裏の方にも報告しましたが、一時は完全に逝ってしまったかと思われたパソコンが
まさかの復活を果たしました。同時に規制も解除された模様です。

実際、この機械がどのくらいもつのか分かりません。
また休載宣言からわずか二日でなんなのですが、
とりあえず復帰したいと思います。

今まで長い間代理投下をしていただき、ありがとうございました。

88名無しさん:2008/08/06(水) 20:36:54 ID:L/lHHPXE
復帰おめでとうございます
もしまた何か問題があればお力になりますので
投下頑張ってください

89 ◆nbMIGZGDNo:2008/08/12(火) 21:19:01 ID:I1zH2YkA
帯ギュスレあらすじ書きです。
どうやらまたもや規制復活の模様……
今日の分を置いておきますのでどなたか代理投下お願いします。

901/3 ◆nbMIGZGDNo:2008/08/12(火) 21:19:20 ID:I1zH2YkA
そろそろ出番ということでウォームアップに入ろうとする三工の藤田。
その後から聞き覚えのある声がする。
肩を叩かれて後ろを振り向こうとすると――頬に突き刺さる太い指。古典的なイタズラです。
「そうだ、3年だからすでに受験のために現役を退いている男、久留間先輩だよ〜ん」

第66話 休憩

一回戦の五人抜きのためにバテバテの巧。
パンパンの筋肉をほぐそうと杉に「肩もんで」と尊大な態度。
「よーし、もんでやる。ミッタン!」「ま゛っ」
ベンチに寝転ぶ巧の背中を重量級のミッタンが踏みつけてマッサージ。こうかはばつぐんだ!
と、ミッタンの足を安全ピンで突き刺す薫。思わず悲鳴を上げるミッタン。
「こんなに疲れてる巧さんになにをするの!」
「おまえこそいきなり恐ろしいコトすんじゃねーよ!」
さすがに杉の妹というべきか――薫は横たわる巧にそっと寄り添う。

(長い闘いの後のつかの間の休息なのよ…せめて、今だけは眠らせてあげたい、私の手の中で…)
「なにが“私の手の中で”だ、中学生がっ!」

こんなところを保奈美が見たらまた泣き出すところだったが、彼女の姿が見えない。
それどころか斉藤の兄弟たちもいない。桜子もいなかった。

912/3 ◆nbMIGZGDNo:2008/08/12(火) 21:19:51 ID:I1zH2YkA
久々の一回戦負けに落ち込む佐鳴高ベンチ。また一から出直しかと気持ちを立て直しているところに、
「豊クン!話ってなーに?」
笑顔で桜子登場。試合後に話があるというから待っていたのに、豊が来ないので訪ねてきたのだ。
「いやあ、スミにおけないなあ、袴田クン」「試合の当日にもかかわらずマメだこと」
ごゆっくりどーぞ、と去っていく佐鳴の面々。
「はあ?なんか誤解があるんじゃないの?」鈍い桜子はまだ気づいていなかった。

「ふーん、意外だなあ。豊クンと、浜高の海老塚サンがね…」
思わぬカップリングに驚く石塚。しかし、相手が浜高の子と聞いて他のメンバーの目の色が変わった。
村上と落合が豊を捕まえ問い質す。
「試合前に敵のマネージャーと会ってなにを頼まれた、あーん?」「そーゆうのを八百長というのだぞっ」
あらぬ疑いに全力で否定する豊と桜子。しかし村上たちもおさまらない。そこで石塚が仲裁に入る。
「よーし、では百歩ゆずって不正はなかったとしよう。
 しかし、つきあってる女がマネージャーやってる学校が敵になっても、本当に勝負に集中できるのか?」
手心を加えたのではないか、という石塚の問いに豊は激昂。「冗談じゃない!!」

「むしろ逆だ、オレは彼女の目の前で粉川に勝ちたかった!
 もし、そうなってたら、海老塚サンに告白するふんぎりがついたのに!」

本人を目の前にして、豊クン大自爆。絶叫を上げてその場から逃走。
「…どーやら悪いコトしちゃったよーだな」「まだまだつきあうとか以前の段階だったんだ」
とりあえず石塚たちは桜子に向って手を合わせる。「頼むっ!海老塚サン!」
「あいつと、袴田とつきあってやってくれ!」「いっ!?」
「悪いヤツじゃないよ、ちょっと単純だけど!」
「背も高いしさあ!」「ちょ、ちょっと!!」

923/3 ◆nbMIGZGDNo:2008/08/12(火) 21:20:24 ID:I1zH2YkA
その頃、保奈美はようやく斉藤の兄弟たちを発見。そこは赤石林業のベンチだった。
保奈美の「こんにちわ」攻撃に相好を崩す赤石メンバー。成長の無い連中である。
赤石もまた五人抜きとはいかないものの、先鋒の酒井と次鋒の西村の二人で相手を片付け、
一回戦突破を果たしたところであった。
「おまえらとあたるのは順調にいけば準決勝だ。今度はこの前のようにはいかねえからな」
せいぜい途中でくたばらないよう巧に伝えろという酒井。ところが、それが保奈美変換にかかると、
「それまで負けないようにがんばれってコトですか?」
ニュアンス的には確かにその通りなのだが。人の良すぎる保奈美に調子の狂う酒井であった。

三工も試合終了、先鋒の関谷が巧同様の五人抜きを決めていた。
自分がいなくても三工の強さは変らない、と手放しで賞賛する久留間先輩。ただ、その格好が。
「なんでー?いいじゃん、なにしろホラ、バンドブームだしィ」
久留間先輩としてはビギンを意識してるようなのだが。
(ってゆーより「たま」の石川のほーじゃないの?)
三工には藤田だけではない、自分もいるのだ、と静かな闘志を漲らせる関谷であった。
「ほら見ろ、やっぱしヤツはタダ者じゃなかったじゃん。オレが苦戦したんだぞ」
「負けたんだろ、苦戦どころか!」

さて――これで一回戦全試合が終了し二回戦が始まる。
その第一試合は赤石林業VS暁泉学園。
「じゃ――ん!」「そろそろ出番だと思った」「ムダ口たたいてないでいくぞ」

93名無しさん:2008/08/12(火) 21:24:44 ID:XpmOdrB.
投下しときました
また規制とは大変ですね…

94 ◆nbMIGZGDNo:2008/08/13(水) 08:05:41 ID:yPasEVhI
本当、うちの回線どうなってるんだか……。
今日の分のあらすじも置いておきます。

951/2 ◆nbMIGZGDNo:2008/08/13(水) 08:06:04 ID:yPasEVhI
第67話 暁泉学園VS赤石林業

いよいよ始まる注目の一戦。
暁泉の堀内にも赤石の酒井にも因縁のある巧としては、どちらにも負けて欲しくはなかったが――。
暁泉は選手全員が経験の浅い素人集団だが、その油断が三工Bチームの敗北を招いた。
それさえ心がければ勝てない相手ではないと赤石林業顧問の松田は選手を鼓舞する。
暁泉の市川も珍しく選手たちのところへ。それほどに赤石が強豪なのかと永田が問う。
「バカをいえ、つきあいみたいなもんだ。オレはおまえらをあんなヤツらに負けるような選手に仕込んではおらん」

桜子の下から逃げ出した豊は武道館の外にまで出ていた。なぜ逃げてしまったのか、豊は自分自身に問う。
(だいたい桜子サンには粉川がいるんだし、どーせフラれる運命だったんだよな…
 いまさら告白したところで困るのは向うのほうだ…)
ここは自ら身を引くことを選ぶ豊。時にはカッコ悪くフラれるのも男の優しさ、と一人で結論付ける。
「豊クン!」そこに桜子が到着した。
桜子に告白などというのはほんの軽い気持ちだった、他校にガールフレンドがいればカッコイイと思った――。
などと誤魔化そうとする豊。しかし、桜子の反応は彼の想像と違っていた。
「そう…そんなコトゆうの?誰だって傷つくのはこわいけど…こんなに臆病なヤツとは思わなかった」
初めて会ったときに桜子たちを助けてケンカをしてくれた豊を、彼女も少しカッコイイと思っていたのに。
「こ――のいくじなしが!」

「桜子ビ――ンタ!」

駆け去っていく桜子は石塚、袴田さんとすれ違う。
外に出た二人が目にしたものは、鼻血を滝のように流し放心状態の豊だった。
(なんか変だな、あそこまで怒るなんて…)
そこで豊が石塚に告げられた真相。巧が付き合ってたのは桜子ではなく、一緒にいた保奈美の方だったのだ。
「で、でも桜子サンはいつも粉川といっしょに行動して…!」
「そお?近藤さんもだいたいいっしょにいただろ?」
石塚の言葉に固まる豊。今の今まで気がつかなかったのだ。
「なっ、なんてことしちまったんだ――っ!!」
桜子の名を呼び、大慌てで会場に戻る豊であった。
「もう遅いと思うけどね…」「笑いごとじゃないでしょ!」

962/2 ◆nbMIGZGDNo:2008/08/13(水) 08:06:42 ID:yPasEVhI
その頃、試合場では暁泉の先鋒、佐野が赤石林業を相手に三人抜きを決めていた。
赤石の副将は西村。酒井は佐野を「力にモノいわせて押しつぶしてるだけ」と言い切る。
「力ならオマエも引けをとらねえ、本物の技をヤツらにみせてやれ!」
市川は酒井を71キロ以下級の優勝候補だと説明する。
その酒井を相手に春の団体戦で巧が一本勝ちしたと聞き、堀内の表情が変った。

佐野VS西村。西村はこの地区ではミッタンの次にでかい怪物選手である。
二人とも百キロ超の巨体同士、高校生離れしたすごい試合になると予想された。
仕掛けてくる西村の両腕を佐野がつかむ。
「いくらオレでもてめーみてえなヤツとまともに組み合う気はねえぜ」
なんと西村が動けない。力だけなら佐野はミッタンをも上回るかと思われたが――そのとき。
「バカいってんじゃねえぜ、西村だって前の大会のときとはワケがちがう!
 筋力トレーニングをさらにふやしてみちがえるほどパワーアップしてんだ!」
咆哮と共に佐野を上から押しつぶし、畳に叩きつける西村。そのままひっくり返して押さえ込み。
見事な一本勝ちで勝負を終えた。

腕力のみの佐野ではこの辺りが限界か――あくまでも冷静な市川。
そこに堀内が酒井との勝負を希望する。
「…まあいいだろ。永田、わかってるな」
一見して優男風で強そうにはとても見えない暁泉次鋒・永田。「一分でしとめろ」と酒井が檄を飛ばす。
が、その後赤石林業にとって悪夢のような信じられないことがおこった!

永田のスピードは西村に柔道をさせなかった。つかずはなれずスキあらば小技を放ち、
最初から引き分けを狙っていたのだ。そのまま時間切れとなり、西村は畳を叩いて口惜しがった。

そしていよいよ、赤石林業大将・酒井、そして暁泉学園中堅・堀内の戦いである。
(そこで見てろよ粉川巧。おまえと闘った酒井をオレがどう料理するか!)

97 ◆nbMIGZGDNo:2008/08/14(木) 07:51:34 ID:sAopCvOg
帯ギュスレ本日分です。今日もよろしくお願いします

981/2 ◆nbMIGZGDNo:2008/08/14(木) 07:52:00 ID:sAopCvOg
第68話 蹂躙する力

酒井VS堀内。赤石の酒井は春の地区予選で巧が接戦の末に倒している相手である。
つまり、この勝負で堀内の具体的な強さが明らかになるというわけなのだ。

(けっ、やはり暁泉のヤツらはシロウトばかりってのは本当か!?ラクに組手のいいとことらせてくれるぜ!)
酒井は出足払いで堀内をぐらつかせ、そのまま得意の背負いに入る。ところが――。
酒井が背を向けた一瞬、堀内は酒井の後ろ頭をつかんで体ごと払いのけてしまった。
(背負いは通用しない…そういいたいみてーだな、平ちゃんよ…)
そう、これは巧最大の得意技が堀内には効かないということを意味していた。

並の技では堀内に通用しないと判断した酒井は「例のヤツ」を仕かける。
「また背負い投げか!バカのひとつ覚えが!」
再び外そうとする堀内――だが、ここで酒井の体が逆回転。
「うおりゃああ!」
酒井得意の左変化の背負い投げ。たまらず手をつく堀内。畳に転がり、判定は「有効!」
「見たか!バカ力だけで通用してたまるかよ!」

しかし――この攻撃が堀内に火をつけてしまった。
首元をつかまれ、頭を上げることもできず、力任せに酒井は振り回される。
(調子にのりやがって、てめえはここで終わりだ!)
酒井の懐にもぐりこもうとする堀内。肩車の体勢である。
(冗談じゃねえ、そんな大技くらってたまるか!)
間一髪のところでこらえる酒井。ところが、そんな抵抗もおかまいなしに堀内は酒井の体を担ぎ上げ――。
そのままボディスラムのように畳の上に叩きつける!

992/2 ◆nbMIGZGDNo:2008/08/14(木) 07:52:33 ID:sAopCvOg
最近の肩車は、小さいヤツが背の高いヤツの下にもぐりこんで投げるテクニックの要る技である。
それを堀内は単純な力のみで相手を担ぎ上げて投げてしまったのだ。
「堀内には常識が通用しない。このさき勝ち進んでいけば、いずれオレたちともあたるぞ。どうすんだ?」
昔のよしみで堀内に手加減を頼めないか、と情けないことを言う杉。もちろんそんなことはできないが。

そのとき、暁泉の市川が堀内の頬を音高く張り飛ばした。
「あんなヤツに有効とられやがって…気を抜くからだバカ者!」
 優勝したいなら二度とこんなミスを犯すな――市川の態度になぜか桜子が怒る。
「今どきあんなのってアリ!?体罰っつうんじゃないの!?」
向うも必死なのはわかるのだが、桜子にはそんなの関係ない。
「あんな人に負けちゃったら世の中のマチガイをみとめたことになっちゃう!絶対にまけちゃダメよ!」

というわけで奮起した浜高の五人。
二回戦、三回戦を余裕で突破し、ベスト4進出。
そしてついに決勝進出をかけて暁泉学園と争うことになったのだ!
「い、いいの?こんなに早くて…」
「いいの、いいの、こういうのはポンポンっていかなきゃ!」

100 ◆nbMIGZGDNo:2008/08/14(木) 07:54:04 ID:sAopCvOg
次回は一回休載して、単行本7巻のおまけを紹介します。


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