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24
:
名無しさん
:2013/12/15(日) 04:34:35
―例えるなら、黄色い深海だ。
視界は、ちかちかと眩く揺れる。
時折走査線のように光が横切って、すごく綺麗。
ここはパイプの中。
水で満たされてるかのように自由に泳ぎまわれるけど、
呼吸もできるし、何より重力がないみたい。
…いや、少し、嘘だ。 息を止めても、苦しくない。
ここでは、呼吸を必要としない。
はじめは、強い力で流されるように。
でも今は、流れは止まってしまっている。
はじめは、ここから出たかったのだけど。
でも今は、どちらから来たかも、覚えていない。
ずっと一本道なパイプの中を泳ぎ続け、その出口を探してきた。
確かこちらに流されていたはずだ、という確信も、体感で3日もすると不安になる。
…ここではなかなか時間がわからない。
私はその体ひとつだけ。 時間のわかるものなんて持っていない。
時間を見ることができるといえば、
パイプの中にある窓のようなものから外を覗いたときくらいで。
もしかすると、その先に誰かがいるんじゃないかと思って。
愛しい人が、助けに来てくれるんじゃないかと、思って。
疲れることはないが、気持ちの動きだけは現実と変わらない。
時間がわからないと、不安だ。
次の窓から時計が見えるとは限らない。
…不安なままじゃ、体は動かない。
だから時計の見える窓を見つけたときは、
12時を迎えるまでそこで休憩を取ることにしていた。
…ここでは、ずっとおなかがすくこともない。
のどが渇いて死にそうになることもないし、
そもそも寂しくたって涙すら流せない。
長い長い時間だけを幾度も、幾度も浪費していって。
気の遠くなるような、数えられないだけの12時を迎えた頃、
私は初めて「出口」らしいものがついた、窓をみつけた。
しかも、そこには
たった一人、だけどもこの長い、永い海の中でやっと見つけた、一人の人影。
私は急いでその出口に飛び込む。
…何も起こらない。
この出口は、こちらからでは開かないらしい。
声を張り上げようとするけれど、
走査線のような光が奔って、
視界がちかちかと眩く揺れるだけだった。
私と彼は、そこで窓越しに向かい合う。
やがて、向こうからこちらを覗き込む彼が、外で何かを操作するのが見えた。
…止まった世界が、再び動き出す。
私は、窓を覗き込んだまま。
ああ。あなたが、助けてくれたん、ですね。 あなたを、ずっと、待っていました――
…私の体が溶けて、出口に吸いだされていく。 …そんな気がした。
ゆらゆらと遠ざかっていく、明るく黄色い世界。
そうして私の電子紀行は、現実と入れ替わるようにして…
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