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『プリキュアシリーズ』ファンの集い!2

500猫塚 ◆GKWyxD2gYE:2022/01/01(土) 08:27:49

 ミナの声を聞く余裕もなく、手に乗せられたすこやかまんじゅうにかじりつく。
 そんな彼のほうへ、シートに座ったままズルズルと移動してきたひなたが、
「ツナグ、他にもお菓子あるよ〜〜。はい、あーんして」
 と、クリームチーズをはさんだクッキーサンドを右手でつまみ、その下に左の手のひらを添えて、ツナグの口元へと近づける。
 ツナグは興味津々といった感じですこやかまんじゅうから口を離して、差し出されたクッキーサンドを一口かじった。サクサクしたクッキー生地の歯触りと、スウッと歯が通るクリームチーズの柔らかさが一緒に口の中に飛び込んでくる。そして、口の内側全体が甘み一色に染まってしまうような感覚。

「…………っ!」

 すごい!という言葉の代わりに目を輝かせるツナグ。
 ひなたも嬉しそうに両目を細めて、ツナグが食べ終わるまで、その姿勢を維持。

「今日は遠慮しないでいっぱい食べて。ツナグはあたしの両目の恩人なんだから」
「あっ、そうだツナグ、これも美味いぞ」
 と、ニャトランがニボシを差し出す。
「いや、ニャトラン、お菓子食べてる流れで、ニボシはちょっと……」
「え……ダメか?」

 ショックを受けた顔になるニャトラン。
 でもツナグは、そんなニャトランの差し出したニボシを、はむっ、と咥えて、ほくほく顔で食べてしまう。これも気に入ったようだ。
 そばで見ていたミナが、眼鏡のブリッジを中指でクイッと中指で上げた。

「くくく…、ツナグは魚も嫌いやないんやね。せやったら、いずれ機会を見て、私と一緒にシュールストレミングを食べてみよっか」

 ―― シュールストレミング。ニシンを発酵させた缶詰。最大の特徴として、食べ物の中では世界一と言われるほどの凶悪な臭気を発することが挙げられる。
 そんな事は露も知らず、とりあえずシュールストレミングが料理名だと理解したツナグが、ミナを見上げて両目を期待でキラキラさせる。
 ちゆがにっこりと慈母のように微笑み、氷みたいに冷えた声でアスミに声をかける。

「いいわよ」
「ハイ」

 返事こそ丁寧だが、声に宿っているのは、容赦を感じさせない鉄の響き。『メガネメガネ』を執行すべく、アスミがミナの顔へと両手を伸ばした。
 ―― だが、いち早く両目の危機を覚えたひなたが、悲鳴を上げながら両手で顔を覆ってレジャーシートの上を転げ回る。全員、お菓子とジュースを持って散り散りに避難。

 一緒にバルコニーの手すりのほうへ逃げてきたちゆとのどかが、互いに顔を見合わせて苦笑。バルコニーの壁に背を預けるように並んで座る。

「こうしてると、ちゆちゃんとのどかちゃんって、なんか姉妹みたいやねぇ」

 突然話しかけてきた声に、二人そろって妖怪に出くわしたような驚き方をする。

「ミナさんっ!?」
「ヒッッ」

 のどかのすぐ隣に座っているのに、まったく気配がなくて気付かなかった。
 妖怪扱いの反応に気を悪くした様子もなく、ミナが再び話しかけてくる。

「別に二人の顔が似てるとかやなくて、ほら、ちゆちゃんって常に、のどかちゃんをサッと守ってあげられる位置におるやん? その気にかけ方がお姉ちゃんっぽいっていうか」

「そうなの?」と、キョトンとした顔で尋ねてくるのどかに、ちゆは困惑しながら「さあ、どうかしら?」と返す。
 でも、のどかがクスッと笑って、「ちゆちゃんが本当のわたしのお姉ちゃんになってくれたら、すごく嬉しいのにな」と裏表のない表情で言うので、ちょっと照れつつも「わたしはかまわないわよ」と冗談めかして答える。

 二人のほうは見ずに、ミナが独り言っぽくつぶやく。

「まあ、のどかちゃんを無意識に気にかけてたってコトやね。 ―― のどかちゃんに、昔、何かあったんかな?」


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