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『劇場版プリキュア』を楽しもう!

215makiray:2023/01/12(木) 20:23:34
Juvenile (03/11)
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「開かない…」
 あゆみはドリ―ミアの門の大きな扉を何度か動かした。びくともしない。
「ランチタイムが終わった、というわけでもないでしょうに」
「あれ…なんだろう」
「ぬいぐるみでしょうか」
 ゲートのところにいくつもぬいぐるみのようなものが落ちている。売店で売られていたのだろうか。それがなぜゲートに。あんなにたくさん。
「何かが起こっていると考えるべきでしょうね」
「子どもたちは?」
 目を凝らす。ゲートの向こうでアトラクションが動いているのは見える。だが、そこに人が――子どもたちがいるかどうかはを見極めるには遠すぎた。
「変身すれば飛び越えられそうだけど」
 ふたりは高い塀を見上げた。
「それしかないでしょうね」
「お、行くか?」
 グレルはなぜか嬉しそうだった。
「まずは上空から偵察がいいと思います。いきなり入るのは危険です」
「わかった。フーちゃん、グレル、エンエン、お願い」
 あゆみとグレルとエンエンが成す三角形を、エコーキュアデコルからほとばしるフーちゃんの光が満たす。その光がはじけ飛ぶと、あゆみの姿は、長いツインテール、草色の飾りが走る白いドレスの、キュアエコーに変わっていた。
「思いよ届け。
 キュアエコー」
「気をつけて」
 光の力の助けを借りてジャンプ、キュアエコーはドリーミアを一望できる高さにまで飛び上がった。
「?」
 ドリーミアの敷地に赤い点がいくもか浮かぶ。
「エコー、ロボットが!」
 亜久里の声。ゲートの隙間から、入口にいたアテンダント ロボットよりははるかに屈強なロボットたちが見上げているのが見えた。その目が赤く光ったかと思うと、ロボットたちは腕を上げた。
「!」
 その腕が飛んでくる。手は不気味に開閉を繰り返し、キュアエコーを拘束しようと迫ってくる。キュアエコーは身軽にかわしはしたが、数が多かった。よけきれず、手や足、体にぶつかってきた。ついにはバランスを崩し、地上に落下した。
「エコー!」
 亜久里が駆け寄る。グレルが亜久里の腕から飛び降り、キュアエコーの腕をとらえた機械の手をいつもの剣で叩くと、それはパカっと開いて外れた。
「隠れましょう」
 亜久里が駆け出す。キュアエコーがその後を追う。エントランスから遠く離れた岩場の陰に隠れると、ロボットの手はふたりを見失ったようで物音も聞こえなくなった。
「警備ロボットまでいるなんて」
「悪いことをしていると白状したようなものですわ」
 ということは、いきなり戦い、ということになる。自分がどこまで役に立つかは疑問だ、とキュアエコーは思った。
(キュアエコーは戦うプリキュアじゃない。だとしたら)
 中に入って状況を確認する。もし「敵」があの中にいるのなら、その思いを捉えたい。これまでだって、害をなす存在がすべて「敵」なわけではなかった。こちらの「思い」を届けて、あちらの「思い」を受け入れれば、戦わずに解決することはできるかもしれない。
「どうしたの?」
 亜久里が首を振っていた。
「マナたちに連絡が取れないかと思ったのですが、圏外です」
「圏外?」
 道や時間を確認するために何度もスマートホンを見ている。さっきまでは使えたはずだった。
「電波妨害を始めたのでしょう。さすが世紀の発明家、手抜かりはありませんわ。
 ということはやはり、私を排除したのは、子どもかどうかということではなかった、と考えるべきでしょう」
「私は子どもだったんだ」
 キュアエコーは笑ってみせた。
「変身していなかったのですからね。現に、今は攻撃対象となっています」
 亜久里は岩陰からわずかに顔を出した。門のあたりにロボットたちが立っている。
「帰ったかも、とは思ってくれないようですわね」
「亜久里ちゃんは、やっぱり大人だね」
 落ち着いている。
 当然だ。亜久里はトランプ王国の守護神、アン王女なのだから。
「いいえ」
 言下に否定する亜久里。頼りにしている、と続けるつもりだったキュアエコーは言葉を失った。
「今は無力な子どもに過ぎません。足手まといになっています」
「そんなこと」
「私がいなかったら、キュアエコーは中の敵と思いを通わせるためにとっくに突入していたと思います。あなたにはそういうところがあります」
「うん…」
 それがいい結果をもたらし得たかどうかは難しいところですが、と小さな声で言う。


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