したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

『劇場版プリキュア』を楽しもう!

207ゾンリー:2021/11/23(火) 22:32:06
「ふふ、今ね、みんなで旅行行きたいねーって話してたんだぁ。ちゆちゃんとひなたちゃんは何処に行きたい?」
 一階へと戻りながら、話を広げるのどかちゃん。意外なことに、二人とも即決だったみたいで。
「私は兵庫。温泉の有名どころは抑えておきたいもの」
「はいはいはいはい! 私はねー福岡! だって美味しいものいっぱいあるんでしょ〜、行ってみたいよねぇ」

 旅行の話は尽きないけど、玄関ではみんなが蝋燭と水入りのバケツを用意してお待ちかね。
「カグヤお姉ちゃーん」
「はーい! みんな行こ」
「よっしゃ花火だー!」
 各々好きな色の花火を手に取って、火をつける。鮮やかな閃光とともに、火薬の匂いが鼻孔をくすぐった。
「ねぇ、次はこれやってみない?」
 私が取り出したのは花火の代表格、線香花火。カラフルな「こより」といった風体のそれを、私は三人に手渡した。
「じゃあ誰が一番長く残せるか勝負だ!」
「またー? 二連敗しても知らないわよ?」――

 あの後、案の定二連敗を記したひなたちゃん。楽しい時間ほどあっという間に過ぎて行って、心地よい疲労感とともに迎えた、引っ越し当日。
「カグヤお姉ちゃん……ほんとに行っちゃうんだね」
「うん……ごめんね」
 通いなれたアパートの階段。その裏側で、りりちゃんの頭をそっと撫でる。
「ううん、大丈夫だもん!」
(本当に、強い子だなぁ)
 りりちゃんの目じりに浮かんだ水滴(なみだ)。私はそれを小指で拭って、ポケットから取り出した花のヘアピンを、そっと彼女の前髪に付けた。
「……!」
「よく似合ってるよ」
 スマホの内カメラでりりちゃんを映す。「なんだか自分じゃないみたい」とはしゃぐ姿に、一安心。
「それじゃ、行くね」

「待って!」

 そんな私を呼び止めたのは、りりちゃんでも、りりちゃんのお母さんでもなく……
「のどかちゃん! ちゆちゃんにひなたちゃんも!」
「よかったぁ間に合って」
 三人とも息が荒く、ここまで急いできたことが伺える。
「もー、ひなたが遅刻するから……」
「ほんっとゴメン! 作ってたら夢中になっちゃってさ」
「作る?」
 不思議そうに首を傾げる私に、ひなたちゃんは一冊のノートを差し出した。
「これ、私流のファッションアレンジまとめてみたんだ! 開けてみて」
 ページを開くと、昨日のファッションショーで着たコーディネートの解説が。蛍光ペンでアンダーバーが引かれてて、とってもわかりやすい。
「次は私。これ、よかったら車の中で食べて」
 ちゆちゃんから受け取ったのは、風呂敷に包まれたお弁当箱。中身を聞いたら「開けてからのお楽しみ」ってはぐらかされちゃった。
「私、ちゆちゃんみたいにお料理上手じゃないし、ひなたちゃんみたいにファッションセンスもないから……これ」
 のどかちゃんからは、淡い桃色のお花があしらわれたフォトフレーム。その中を見ると、写真の代わりに手紙が入っていた。
「は、恥ずかしいから車の中で読んでほしいな……」
「……うん。ありがとう」
 感情が高ぶって、うまく言葉が出てこない。本当はもっと、素敵なこと言えたらよかったのに。
「ねぇ、フォトフレームなんだから、みんなで写真撮らない?」
 そう提案した私は、お母さんにカメラを起動したスマホを渡して、皆のもとへ駆け寄る。
「ほら、もっと寄って寄って!」
 おしくらまんじゅう状態に固まった私たち。
 お母さんがスマホを構えると、全員でおそろいの横ピース! 図らずも全員っ被ったそのポーズにひとしきり大笑いして、ようやく踏ん切りがついた私は、大きなリュックを背負い車へと歩き出した。
 
 
 
 
「みんな……またね!」


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板