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仮投下スレ2

679鎧袖一触〜鎧の端の心に触れろ〜 ◆2XEqsKa.CM:2009/10/30(金) 21:02:34 ID:wOPEoI2k


さわわっと、夜風が草根を分けそよぐ。
草原に群ぐ雑草たちが、陽光の名残を惜しんでさんざめき。
明日の我が身を鑑みることもなく、ただただ光を求めて揺れる刹那草。
この殺人ゲームを模すかのように、今を生き足掻いていて美しい。
そんな草叢を掻き分け、夜闇に熔けて強殖装甲が駆ける。
草原を、抜ける。次なるフィールドは水辺。強化された脚力で泥底を踏みしめたその瞬間。
異形が、割れる。甲殻を思わせる鎧が弾けるように外れ、"中身"が露出していく。
泥と藻に足を取られ、"中身"は転倒した。押し寄せる水に、全身が翻弄される。
熱を、寒気を、怖気を、良識を、後悔を、内外あらゆる障害物を排除し、装着者を守ってきた鎧が、今はもうない。
そうして"中身"は無防備だった。肉体はもちろん、精神すらも、磨耗しきっていた。
辛うじてそんな"中身"に存在意義と存在理由を与えていた強殖装甲。
無機質なそれは、自己を否定する者に恩恵を与える情など持ち合わせない。
不幸と失態の果てに、全てを拒絶した"中身"は。
遂に、己の『根』をも手放しつつあった。

「う……ごおええええ!!! ごえええええ!!! 」

嘔、吐。黄色じみた血の混ざった吐瀉物が、水面を汚して広がって。
たった今まで仮面に覆われていた顔からは苦痛しか読み取れない。
体内の全ての水分を吐き出した、と思えるほどの穢れを垂れ流しながら、"中身"は泣いていた。

「――――●∴→!! φ〆!!!」

のたうちまわり、仰向けになった"中身"が激しく痙攣しながら声にもならない雄叫びを飛ばす。ズキン、ズキン。
はて、"中身"の頭にズキン、と響くもの。それは痛み? 心の痛み? いや、"中身"の心は既に痛みを感じない。
何故なら"中身"は壊れているから。この場の仲間を見捨て、この場の肉親を見捨て、日常へ戻る事だけを求めてきた。
そう、"中身"はその実最初から――この島に降りたった瞬間から、その為だけに生き、殺してきたのだ。


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