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仮投下スレ2
606
:
狼少年の午後
◆qa9kJ2E3OY
:2009/08/29(土) 06:45:31 ID:DJQC8KhE
「すみません冬月さん、手伝えなくて。
気分の方はだいぶマシになりましたし、何か手伝える事があれば……」
そこまで語ったところで周囲の異様な空気に気付き、口を噤む。
「……あの、出来れば状況を説明して頂けたら――」
いかにも不安げな表情で再度口を開いたキョン。あたりを見回す彼の目前にリインフォースが躍り出た。
『説明!? そんなの無くてもリインの姿を見ればどんな状況かわかるはずです!
ここが年貢の納め時ですよ、キョン!』
言葉と共にビシッと人差し指を向けるリインフォース。
対するキョンは不意打ちの登場に目を白黒させる。
むごんで固まるキョンに追い討ちをかけるように、リインフォースは続けざまに言葉を並べ立てる。
『ここでもまたよからぬ事を企んでいたようですが、このリインフォースが来たからにはそうはいきません!
リインの目の黒い内は――
って、キョン? ちゃんとリインの話聞いてるですか?
そんなにリインがここにいる事が信じられないのなら――』
「…………ぅ」
『――え? 何ですか?」
キョンの様子に違和感を覚え、詰問するような口調になったリインフォースだったが、彼が何かを呟いたのを聞きとめ、再度言うよう促す。
「あ、いや……」
『だから、なんて言ってるか聞いてるです!』
「……えーとだな。もしかして俺はとてつもなく間抜けな事を聞いてるのかも知れないが――
おまえ、なんだ? 人形……な訳無いよな」
『な、なに言ってるですか! ふざけるのもいい加減にするです!
シラをきろうとしても無駄ですよ! リインは騙されないです!」
キョンの発言をあくまでとぼけようとしているものだと取ったリインフォースは、激しい口調で彼を攻め立てる。
「待ってくれ! 騙すって何だ? 一体俺が何をしたっていうんだ!
――またハルヒの仕業か? 今度は何だってんだ!」
声を荒げるキョンの様子に、もはや引っ込みがつかなくなったリインフォースは感情のままに言葉を紡ぐ。
『本当に記憶を無くしたって言いたいんですか!?
冗談じゃないです! あれだけの事をしておいて、その全てを忘れてしまったなんて、そんなの……許されるはずが無いです!
キョンの為に、スバルがどれだけ頑張ったか! キョンのことをどれだけ心配していたか!
それなのに、自分が何をしたのか覚えていないだなんて、スバルの苦労はどうなるんですか!』
「な……」
「リイン、もう止めよう?」
“信じられない”てはなく、“信じたくない“。
スバルの行動を間近で見ていたリインフォースだからこそ、キョンの記憶喪失を強く否定してしまう。もはや完全に感情論だ。
キョンとリインフォースのやり取りを呆気に取られながら見ていたなのはも、ここに来てリインフォースを制止に入る。
だが、増幅した憤りは止める事ができず、はけ口たるキョンへと殺到し、ついに臨界点を越え――
『何をしたのか忘れたんだったら思い出させてあげます!
キョン、これはあなたが言ったんですよ!
この島に来てすぐの頃、学校にいた中学生の子と――』
「リインフォース君、止めるんだ!」
「リイン、それは――!」
キョンの精神が不安定である事を直に目にしている二人はリインフォースを止めようと声を掛ける。
だが、一度出た言葉は止まらず――
『――涼宮ハルヒって人を殺したって!』
「――っ! ぐ、あぁぁーーっ!」
「「キョン君!」」
――どうしてこんな事に――
リインフォースは、頭を押さえ崩れ落ちるキョンを目前にしながら、呆然とした表情でそんな事をふと思った。
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