したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

仮投下スレ2

540Hard Luck Duo ◆5xPP7aGpCE:2009/07/30(木) 03:12:52 ID:HUBhMMTs

(女だから、弱いからいけないんだ! 無知だからヒドイ目にばかり遭うんだ!)

あの日以来何度も自分に言い聞かせてきた、大事だった家の手伝いも止めて努力し続けて来た。
西オアシス政府の軍人になれたのはそれだけの汗と血を流したからだ、何もせず強くなりたいなど―――自分自身を侮辱するに等しいというのに。
何と無様な事か! これでは糞に塗れたあの時の自分と変わらないではないか。

『だ、だからといってあなたのような危険のある人物を近くに置くわけには――がふっ』

何故あの時の自分はあんなに情け無い声を出した?
危険な連中など灌太を始め幾度も相手して来たではないか、姿形が違うだけであれ程取り乱すなんて!
今迄生きてきた結実がこれか、自分はここまで弱かったというのか!

己を取り戻すに従ってまざまざと記憶が蘇る。
とてつもなく耐え難い感情が渦を巻く。
衝動的に壁に頭を叩き付けたくなった、絶対にこのままの気分でいたくない!

「……殴って」
「ムハッ、何を言っているのですか夏子さん?」

それは罰。
それは二度と同じ事を繰り返さぬ為の誓い。
身に塗れた弱さを打ち払う為の夏子の選択。

「いいから殴って! これはケジメよ!」

ハムは急にそんな事を言われ戸惑いの表情を浮かべる。
だがすぐに夏子の顔を見て合点が行ったらしい、走るのを止めてブンブンとシャドーボクシングをしてみせる。

「言っておきますが我輩の拳は痛いですよ、本当に良いのですかな?」
「ええ手加減は無用よ、ガツンとして頂戴!」

目を閉じた夏子が横を向く、それは頬を殴れという意思表示。
夏子が立ち直ってくれるのはハムにとっても歓迎だ、女性を理由に断れば恐らく更に夏子を怒らせる。
ならやるべき事は只一つ、ハムは躊躇無くそれを実行した。

跳躍力に優れる兎の後脚が大地を蹴る。
更に屈めた身体がバネを効かせて上体を加速、固く握り締められた拳はフック気味の軌道を描いて夏子の顔面に激突した。

”ガゼルパンチ”

野生の獣が放ったそれを受けて夏子は3メートル余りも吹き飛んだ。
言われた通り手加減無しの本気の一撃、道路をマネキンの様に転がる彼女を見てハムの表情に不安が浮かぶ。
駆け寄ろうとした矢先、ヨロヨロと夏子が立ち上がった。

「いいパンチだったわ……、あんたウチの隊でも十分やっていけるんじゃない?」
「お褒めに預かり光栄です、正直立ち上がれないのかと思いましたよ」

鼻血と口元の血を袖で拭いながらも夏子は笑う、酷い顔だが憑き物が落ちたように目は光を取り戻していた。
これでいい、弱い自分とは決別しなければならないと彼女は自分に言い聞かせる。
砂漠で弱気になれば絶望を呼び込む、ここから新しいスタートを切れるかどうかが生死を分ける。
ぱん、と自分でも頬を叩いて気合を入れる。激痛が走るが死ぬ事と比べたらどうという事は無い。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板