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仮投下スレ2

151 ◆h6KpN01cDg:2009/05/26(火) 01:50:56 ID:L7g3hoig


夢は叶います。
私はほんの小さなころ、お父さんとお母さんにそう教わりました。
私がいい子でいて頑張りさえすれば、私の願いはなんだって叶えられるんだって。

でも、今の私はちゃんと知ってます。
本当は、叶わないこともあるんだってことくらい。
もう、それも分からないほど、子供じゃあないんです。

だって。
人の夢って書いて、儚いって読むのですから。
お兄ちゃんに教わりました。

それでも。
私の夢なんて、儚いものだったとしても。
それでも信じたい。
信じてみたい。

夢は叶うって。
奇跡は、きっと起こるって―――



『……くそっ』
『ま、まずいでありますよ、もっとスピードは出ないでありますか!?』
B−6地区。
かつては住宅地が広がっていたそこは今―――赤に包まれている。
赤色の正体は、炎。
膨大な量の炎が―――街を呑みこんでいた。
住宅地は炎により火柱を上げて燃え上がり、緑はところどころしか残されていない。
この中で気絶している人間がいたならば―――間違いなく命は助からないだろう。

しかし、『彼女』はまだ生きていた。
自らの武器であるナビ達の力によって。
『……これが限界だ!我慢しろ!……くそ、まずいな……』
思った以上に、事態は悪化していた。
炎は市街地全域を覆い尽くし、炎を縫って進むだけでも時間がかかる。
更に言うならば―――このシールド機能は、あと数十分しか持たないのである。
殺し合い下の制限で使用時間を6時間にまで抑えられた防衛型強化服は、じきに限界が来てしまうのだ。
それまでにここを抜け出せるか―――可能性は、五分五分―――いや、それ以下だろう。
地図上の一ブロックは縦横約1キロメートル。この移動方法で、この速度で、いったいその距離を進むのにどのくらいかかるというのか。
何せ、移動速度があまりにも遅い。
土をざりざりとこすりながら、少しずつ妹の体を動かすことしかできないのだから。
妹が意識さえ取り戻せば助かる確率は段違いに上がるのだが―――そんなことに期待はできない。
彼女が精神的に落ち、そして不安定だというのは彼らが一番良く知っていた。

『……中尉、あっちも通れないですぅ!』
タママの人格を持ったナビが声を上げたその先には、ごうごうと燃え上がる大木。
炎が高く宙まで伸びており、そのまま進めば妹の体は炎に焼かれてしまうことは明白だった。
『……くそ、避けるぞ!北に舵を取れ!』
『くーくっくく、しかし、北は行き止まりだぜ?どうするんだ?』
『北に向かえば海があるはずだ!さすがに海までくれば炎は途絶えているはず。……やるぞ!』
『イエッサー!』
妹の体は、ところどころ火傷を負っている。
シールドは確かに存在している。しかし、制限故か、それとも所有者である妹の意識がないからか、防御が完璧ではないのだ。
体に傷を負っても尚、妹は目を覚ますことはない―――このまま死んでしまってもおかしくない状態だといえた。
それでも、まだあきらめない。
少しずつでも進み続けること、それがナビ達にできる唯一のことだった。
『妹殿……負けてはいかんでありますよ……どうか……』


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