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闘争の系統 〜ネタバレノートⅡ〜

25凱聖クールギン ◆COOLqGzyd.:2017/12/01(金) 17:36:34
≪王子誕生――メルヴィオン王室、世紀の大陰謀劇≫

それは今から十七年前の事。
メルヴィオン聖王国の王妃エフェリーナが懐妊した。
夫である国王アディラス十六世にとっては、既にいる三男一女に続く五番目の子供である。

アディラス「モルゲグよ、この度の商人ギルドを対象とする税制改革の采配ぶり、
 まことに見事であった。褒美は存分に取らせるぞ」
モルゲグ「ハハーッ、ありがたき幸せ」
アディラス「ところで、そちには昨年生まれたばかりの娘がおったのう。
 せっかく歳も近い事じゃ。
 もしエフェリーナが男子を生んだならばそちの娘を娶らせ、
 代々功績のあるヒルガノス家の血を我が王家と交えるようにしてはどうか」
モルゲグ「そ、それは光栄の極み!
 この上なき栄誉、誠に痛み入りましてございまする!!」
アディラス「いや待て待て、そう舞い上がるでない。
 もし王子が生まれればの話じゃ。まだ分からぬぞ」

信頼を置く重臣のモルゲグ・ヒルガノスに、
気を良くしたアディラスは宴の席でうっかりそんな約束をしてしまった。
王族に自家の娘を嫁がせてその縁戚となるのは貴族にとっては大変な名誉であり、
また当然ながら自分や一族の地位の向上、権勢の強化に多大な影響力を及ぼす。
だが、この時点ではエフェリーナの胎内にいる子が男か女かはまだ誰にも分からないのだ。
有力貴族であるヒルガノス家との政略結婚は前から考えていた事だったとはいえ、
「もし」と仮定の話をしてモルゲグに巨大な夢を抱かせてしまったアディラスはやはり迂闊であった。
偉大な名君らしからぬこの口の滑りが後に、多くの者の運命を巻き込んだ血みどろの大騒動の発端となる…。

エフェリーナの出産がいよいよ間近となったある日の夜、
王都ネクナールの空に時空クレバスが出現した。
時空の歪みが局所的な暴風を引き起こし、城下では教会の建物が崩れる被害が発生。
そして翌朝、時空クレバスが消えて嵐が収まったのを見た神父が外へ出てみると、
まだ生まれたばかりと思われる一人の赤ん坊が路傍に打ち捨てられて泣いていたのである。

神父「捨て子か? 可哀想に…」

神父はセイロス神が説く慈愛の心でその男の子を抱き上げ、
温かい教会の中へと運び込んで保護した。
そこへ昨夜の嵐の被害状況の視察のため、
モルゲグが配下の騎士らを引き連れてやって来る。

モルゲグ「む? 何じゃその子は」
神父「今朝方、教会の門前に置き去りにされていた赤子です。
 何やら見た事のない珍しい服を着ていたのが少々気になったのですが、
 哀れにも外の寒さの中で震えて泣いておりましたので保護いたしました」
モルゲグ「ふむ、まあ良かろう。
 神の御心に従い、お前達の教会で面倒を見てやるがよい」


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