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闘争の系統 〜ネタバレノートⅡ〜
101
:
凱聖クールギン
◆COOLqGzyd.
:2018/11/22(木) 21:42:22
≪逆襲の魔女≫
今から十二年前のこと。
メルヴィオン聖王国の宮廷が突如として震撼した。
国王アディラス十六世が有力貴族のモルゲグ・ヒルガノスを突如として死刑に処したのである。
ナレイン「父上、一体何が起こったのですか?」
クゼイン「分からぬ。だが陛下のご叡慮によって下された処断だ。
我らの考えの及ばぬ何かの理由がおありとは思うが…」
まだ十一歳のナレイン・レンドルフ少年も、
ただならぬ事態が起きたという空気を察して不安げな顔を見せる。
国の至高者たる国王は気分一つで臣下に死を命じることも可能なほどの権力があるとは言え、
名君の誉れ高いアディラスは今まで王権をそのように乱用したことはなく、
しかも粛清されたのは寵臣としてずっと重く用いられていたモルゲグである。
なぜ殺されるに至ったのか様々な憶測が噂となって飛び交ったが、
アディラスはただ「重大な不正を犯したゆえ」とのみ語り、
モルゲグの罪状を明らかにしようとはしなかった。
アディラス「ヒルガノス公爵家は改易。
没収したモルゲグの領地は、ラプエンテ家など他の貴族家に分け与えよ」
エフェリーナ「恐れながら陛下…
モルゲグにはまだ五歳の娘がおります。
父親は大いなる罪を犯したとは言え、幼い彼女には何の咎もありません。
せめて命だけはご容赦頂けますようお願い申し上げます」
アディラス「分かっておる。
モルゲグの娘は命を奪うに及ばず。
ひとまず流罪と致し、どこか辺境の修道院にでも預からせよう。
神にかしずいてひっそりと生きてゆく分には、
殊更むごく扱う必要もあるまい」
当時まだ五歳だったモルゲグの娘イェシカ・ヒルガノスは、
彼女を哀れんだ王妃エフェリーナの嘆願もあって死を免れ、
配流先で修道女として創造神セイロスに祈りを捧げながら、
俗世を離れて静かに長い余生を送るよう取り計らわれたのであった。
それから十二年後。
地球からサラジア共和国の黒三日月隊が時空を超えてメルヴィオンに襲来。
敗れたアディラス王は王宮に火をかけて自害し、
生き残ったラウール王子がメルヴィオンの存亡を賭けて黒三日月隊と戦うことになる。
モルゲグ「ウルヤーヴ様、現在の大いなる国難に際し、
メルヴィオンの王となってこの国を救うのはあなた様しかおられませぬ」
ウルヤーヴ「承知している…。
俺に擬態したあのワームと黒三日月隊とを潰し合わせ、
その間に戦力を蓄えていつか王都を我が手に収めてみせるさ。
俺が王になれば、かつて父上に死を賜ったお前の罪も、
新たな国王の名において俺が許してやる」
死刑となったはずのモルゲグはオルフェノクに覚醒して生きていた。
そしてワームに擬態され殺されたという本物のラウール王子とされる青年もまた、
同じくオルフェノク化し、ウルヤーヴという仮の名前を名乗って密かに生存していたのである。
モルゲグ「ところでウルヤーヴ様。
この荒れ狂う戦火の中、心配なのはかつて流刑となった我が娘…。
凶暴な黒三日月隊の兵どもに酷い目に遭わされはせぬかと、
親としては心配でなりませぬ」
ウルヤーヴ「将来、俺と縁組するはずだったというお前の娘か。
いいだろう。あの憎きワームの様子を見に行くついでに、
迎えに行ってやるとするか。
その娘の器量とお前のこれからの功績次第では、
昔の婚約を守って我が妃に迎えてもいいぞ」
モルゲグ「はっ、それはありがたき幸せ…!」
イェシカが追放されウルヤーヴと生き別れになったのは二人が五歳の時のこと。
ウルヤーヴも幼馴染のイェシカについておぼろげな記憶はあったが、
さすがにお互い幼すぎてよく覚えていなかった。
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