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闘争の系統 〜ネタバレノート〜
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***フィリピン・パラワン島***
その日、サラジア共和国のアフマド・アルハザード議員は、
南沙諸島にほど近いフィリピンのパラワン島を訪れていた。
目的は無論、遂に始まった中国とベトナムの軍事衝突の様子を間近で視察し、
現地の生の情報を仕入れてサラジア本国へと送る事である。
アルハザード「あれは何だ…?」
昼下がり、仕事の息抜きにパラワン島の海岸を歩いていたアルハザードは、
浜辺に人らしきものが流れ着いているのを目にした。
少女「………」
アルハザード「子供ではないか」
女の子だ。意識を失っているがまだ命はあるらしく、
アルハザードが腹をゆっくり押してやると口から水を吐き出し、
苦しそうに痙攣を繰り返していた。
アルハザード「ホイミ!」
少女に向けて手をかざし、回復魔法をかけて生気を注ぎ込む。
しばらくすると少女は意識を取り戻した。
少女「………」
アルハザード「気がついたかね」
あまり人相の良くない見知らぬ男の顔を見て、
少女は驚き怖気づいてしまう。
その怯えようを見て、アルハザードはかえって毒気を抜かれた。
アルハザード「怖がらなくていい。何も悪さはせん」
言葉が通じないため、ジェスチャーでアルハザードは
まずは安心するよう少女に訴えた。
アルハザード「さては戦争に巻き込まれた避難民の子か…」
ボートの破片らしき木片が一緒に浜に流れ着いているのを見て、
アルハザードは海の向こう、南沙諸島の方角をじっと眺めやりながら唸った。
天候は晴れていたのが一転にわかに曇り出し、沖では嵐が起きていそうな気配である。
戦火に煽られ、島からボートで逃げ出したが嵐に遭って敢えなく難破…と、
成り行きはおおよそ推察できた。
この子の両親は恐らく、もう生きてはいないだろう。
アルハザード「火傷をしているな。
塩水がさぞ沁みるだろう。どれ、薬草を塗ってあげよう」
アルハザードは胸ポケットから薬草を取り出し、
火の粉を浴びて少女が手に負っていた火傷の上に塗りつけた。
するとすぐに、火傷は綺麗に治ってしまったのである。
少女は驚いて目を丸くした。
少女「すごい…!」
アルハザード「フフフ…。驚いたかい。
おじさんは魔法使いなんだ。
ついておいで。悪いようにはしない。
君の名前は……そうだな、ナウラと呼ぼう。
アラビア語で花という意味だ」
少女の手を引いて、アルハザードは歩き出した。
なぜこんな慈悲深い善人のような真似をしたのか、
自分でも説明がつかない不思議な気持ちだった。
しかし天涯孤独のアルハザードにとって、
これは股肱の臣を得る事になる運命の出会いだったのである。
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