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ネ申記事書き起こしスレ

276御徒町:2008/05/25(日) 21:36:11
公園の陽だまりの中で、芝生に座っているときを想像してほしい。ふと、手に触れていた大きめの石を持ち上げてみたときに、その石の裏から無数の虫がいっせいにほうぼうへ放たれたときのような。そんな、ぞっとする瞬間のこと。そういうことで人間社会は満ち溢れているんじゃないか?ほのぼのとした空間をぺらりとめくると、そこには黒い宇宙が口をあけている。人が闇を恐れ嫌うのは、きっと、同族嫌悪なのだ。自分の中の、薄暗いそれを、見せられているような気分になるからだ…。
謙太郎は、石段をゆっくりと上がりながらとりとめのない考えを巡らせていた。ようやく少し初夏らしい暖かさを帯びてきた夜に、謙太郎は一人で近所の神社へ来たのだ。どうしてこんな時間になっても眠くならないのか、不思議だった。真夜中と明け方の間に、しんとした空間は自分の体の輪郭だけをくっきりと浮かび上がらせているようだった。そういえば今日の昼間はまったく体に力が入らなかった…。この国を取り巻く軽いウツに自分も飲み込まれたのかと一瞬不安になったが、それも違う気がした。あれは、自分が空っぽになったような、感覚だった。(そうだ、かつてペストやら結核やら、その時代に社会に蔓延した病があったが、それが今はウツなのかもしれない。どうでもいいけど…)。とにかく今は、この真夜中の空気が自分にぴったりと「合っている」ということだけが、確かなことなのだ。
石段をあがりきると、境内をまっすぐ伸びる道。そして、数え切れないほどの「鳥居」があった。この、鳥居を見たときにいつも襲われる妙に落ち着かない感じはなんなのだろう。くぐると、もう戻ってはこれないような気にさせられるのだ。それが、いくつも、いくつも…。鳥居は確か縁起のいいものだったと思うが、びっしりと並ぶだけで、こうまである種のマガマガしさをだせるものなのか。この、感覚的に恐れてしまう状態こそが「神性」なのだろうか。得体の知れない…。朱色…。
ひたひたと、鳥居をくぐり行く謙太郎。雑念と名づけられた、脳の中を行き交う電気信号たちが息をひそめ始めた。謙太郎は白い狐の面をつけた。いつの間にこんな面を持っていたのだろうか…。いや、そもそもこんなところに神社なんてあったか…?
鳥居をくぐり終えたと同時に、全ての音が姿を消した。月明かりに照らされて、ふと振り返ると狛犬がついてきていた。謙太郎はぽろりと涙を流し、狛犬を抱きしめた。


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