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ネ申記事書き起こしスレ
254
:
鶯谷
:2008/02/25(月) 14:36:21
鳥は走るのが遅い。魚は飛ぶことができない。象は泳ぐことができない。猫は人になじめない。犬は強いものにすぐ服従する。木は動くことができない。花はすぐ枯れる。星は夜にしか輝けない。それは、恥ずべきことなのか?
灰皿に使われた紙コップ。ドアを開けたままにしておくために置かれている椅子。飾られている日本刀。窓を拭くために使われた新聞紙。それを見た時にふと湧き上がる、この気持ちはなんなのか?
マズレイ氏はそんなことを考えながら、サンドウィッチをほおばり、口をもごもごさせて、手札の中から「スペードの2」を切った。プルクは、渋い顔をして言った。
「マズレイ様。ここでスペードの2を切られるとは…なんとも…悪いお人だ」
マズレイ氏はその言葉が耳に入らないふうな顔をしている。どこか、目の焦点があっていないような様子である。
「プルク君…」
「はい?」
「ジグソーパズルの、正しい楽しみ方を知っているかい?」
暖かい日差しの中を、ふわりと風がぬけた。幾何学的なまでに見事に手入れされた庭園は、少しだけ草のいい匂いをさせている。
「ジグソーパズル…ですか」
「ジグソーパズルを買うとね、その箱の表紙に、完成したときの絵が何か描いてあるだろう? あれを見てしまってはダメなんだ。だから、ジグソーパズルは誰かに買ってきてもらった上で、箱を捨ててもらって、ピースだけ頂くんだ。」
「…はあ。そうすると、どのようにいいのでしょうか」
「わからんかね。そうすると、作っている間、この先いったい何が完成するのかがわからないから、ワクワクするんじゃないか。これは、なんなんだって。」
「ずいぶんと、完成させるのに手間取りそうですがねえ」」
「確かに。しかし、手間取ることを楽しめないようじゃあアレだよ」
「はい」
「そうだろう? 私はね。そのことに気づいてからようやく救われた気がしたんだよ」
プルクにはなんのことだかわからなかった。
マズレイ氏はその後、貴族をやめて寿司屋になり、またやめて谷底で暮らし、それもやめて配管工になり…
そんなことを繰り返したらしい。7年が過ぎた。
「マズレイ様…今、なにをしているんでしょうね」
プルクが庭を掃除しながら独り言をつぶやいた。
「ホーホケキョ」
鶯が鳴いた。それはちょっとびっくりするぐらい。美しく喜びに満ちた声だった。
みなさんはお気づきでしょうが、あえて説明しておきましょう。そう、この鶯こそが、マズレイ氏です。
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