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ネ申記事書き起こしスレ

252代々木 Vol.2:2008/01/25(金) 23:26:58
マグラ君はそうですけど、と返事をしながらブラインドを指で広げて外を見た。
ごつごつとした岩地の果てに、ぼんやりとクレーン車の陰が見える。今日は曇りだ。
「でも、もう20年もこんなこと続けてるんですよね?」「正確には25年と4ヶ月、ね」
26年前、その穴から突如として有害なガスが噴出した。それは無色無臭のガスであったために、
はじめは誰もその存在に気がつかなかった。しかし、そのガスが皮膚に軽度の異常を引き起こす
ことが判明し、ヨツバル島の政府により埋め立ての計画が進められたのである。
「いつか塞がるんですかね。この穴」マグラ君は無意味な質問を投げたなと思った。ミセルさんは
何も返事をせずにゴミ袋の口を結んでいる。いつの時代から、なんのためにあるのか。多くの人々が
それを知ろうとしてできなかった「穴」。それを塞ぐ仕事って、いったいなんなんだろう。
「でもね…」マグラ君が振り向くと、ミセルさんはマグラくんの紅茶を一口飲んでから続けた。
「塞げるか、塞げないかじゃないと思うの。塞ごうとすることと、あの穴を見守ること。
大事なのは、そういうことじゃないかと思うの」
また、地響きがした。マグラ君は目を閉じて、穴の底のことを、思った。


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