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ネ申記事書き起こしスレ

242大塚:2007/10/25(木) 23:25:10
全てのプロジェクトは同時進行で処理しなければならない。頭の中でプログラムされたコードがループする。ビシュタウト少年はその真っ白くなってしまった自分の頭髪を自分の手で執拗になでていた。自分の体の一部に触れる行為はなんらかの精神的負荷を和らげる逃避行為の一種であることを昔。行動心理学か何かの本で読んだことを思い出しながら。ESPカードをめくり、脳裏に浮かぶ不可思議なイメージの出所をさぐっていた。千手観音…。
千手観音は、その千本の腕をどのようにコントロールしていたのか。一見、千本も手であると何事にも有利であると思いがちだが、それを有効に操作するには尋常ならぬ脳の処理速度が要求されるはずだ。現に、二本しか腕のない我々ですら、右手と左手を同時に別行動させることは容易ではない。たとえば、右手でTVゲームをしながら左手づドラムを叩く。どちらもおろそかになるか、片方だけに集中するか。である。翻って、千手観音にしても、おそらく感嘆および畏怖すべき点は、その形態や思想というよりも、その「脳」のスペックなのではないだろうか…。
自分がQZ五号のパイロットに任命されたときのことをよく覚えている。その日、顔なじみのドクターたつが妙にこわばった顔をしているので不思議に思った。ドクターがエレベーターの中でパネルにIDキーを差し込むと、それまで48階建てだと思っていたラボの49階へなボタンがパネルに現れた。隠し階。一瞬、廃棄されるのではないかという不安がよぎったが、廃棄されるのならば22階に一度搬送されるという噂からするとそうでもなさそうだった。そうして49階に着くと、その広間にいたのは木崎専務であった。顔を直接見たのは初めてだが、コブタクル社の実権を握るとされる人物であることは知っていた。
「君か。君がビシュタウト・ジルルか…」
木崎専務は続けた。
「私は君のことをよく知らない。そして、私には誰なのか選ぶ眼ももはらないだろう。だが、誰かいないのかと聞くと、周りのドクターたちがこぞって君の名をあげた。だから、君なのだろう。せいぜい、がんばれ」
それだけ聞かされて初めての謁見は終了した。エレベーターを降りながら、ドクター・麦田は言った。「えらい大きなもん背負わされたな。でも、それは光栄なことだ。廃棄された仲間たちのぶんも、がんばれ」
あの日のことを時々思い出す。
…疲れた。少し眠ろう2時間後には、出動だ。


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