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@@@プリキュアオールスターズ小説を綴るスレ・5@@@

1ふたりは名無しさん:2012/12/25(火) 00:17:58 ID:OLZBNnBw0
プリキュアの小説を思い思いに綴るスレ。
短編から長編、それと詩などなど…。

前スレ:
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3.http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/anime/1261/1167805808/
4.http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/anime/1261/1222147723/

134ふたりは名無しさん:2013/12/15(日) 14:09:31 ID:UGsR6jYU0
 「渋谷は苦手1」

夏休みも終わってくある日、咲と舞は何の気もなく大空の樹に集まっていた。蒸し暑いがここはいつも
風がざわめいて心地よい。「あーあ…もう夏休みも最後かあ」気だるそうに咲が呟く。
「そうねえ」木洩れ日を見上げながら舞も言う。「なんか、ないかなあ」ごろんと幹に寝そべって咲が
また呟く。「そうねえ…」ぼーっとして舞も上の空でまた返す。
「ダメよっっっ!!!」「きゃあ!」突然がばっと起き上がり咲が言った。
「あたし達、中学最後の夏休みなのにこんなんじゃダメ!!!」「そんな事言われても…」
「あっ!」何をひらめいたか咲はこう言った。「舞!みんなで東京行こうよ!!!」

「東京?」薫が聞き返す。「何それ?」「あっそうか」舞が咲に言う。「まだ薫さんたち…」
「とにかく大きな街なんでしょ?」満が間に入る。「そう!良く分かってるね!満は」
咲が嬉しそうに言う。咲の店前のテーブルに四人は集まっていた。咲が満薫を呼び出したのだ。
「で、東京に何しに行くの?」舞が訊ねる。
「んー別に。この街は良い所だけどさあ。まあやっぱり田舎じゃない?
都会に比べたら退屈すぎ。だからたまには刺激が欲しいじゃん!」
「この街の外…考えた事もなかったわ」薫が遠い目で呟く。「でしょ?気になるでしょ!?」
「わたしは別に・・・」「そうね…」舞と満が言い合う。

「ダメよ!二人とも。若いのにこんな田舎でくすぶったままなんて!」
咲は立ち上がって一人、気炎を上げる。「東京に行けばなんとかなるのよ!」
(咲、その考え方が田舎っぽいわ・・・)舞はそう思ったが咲に気圧されて何も言えなかった。
「私は行ってみたいわ」薫が言う。「お!」「薫がそう言うなら」と満。「おお!」
よーし!と咲は舞の方を向き、親指を立て「決まりだね!早速あした行こう!」そう言った。
「…まあ、良いけど」舞は若干の不安を覚えたが、そう言う事になったのだった。

「はい!これで乗り換え終了」混み合う電車の中、四人はもうへばっていた。
「ふう・・・」「大丈夫?薫さん」少し顔色の悪い薫を舞が気遣う。
「ええ、でも凄い人だったわね。さっきのホーム・・・」「うん、あの駅も大きな駅だから」
「もう全然違う世界みたいね」満も言う。
「これから終点まで行くんだよ。特急に乗れたから渋谷まで30分かかんないくらいだよ」「渋谷・・・」
別の国の名前の様に薫は呟いていた。「渋谷か…久しぶりね、咲は?」
「あたしも凄い久しぶり!前行ったのもいつか思い出せないよ」
「どんな所なの?」満が聞く。「大きな街よ。とにかく人がたくさん」
「さっきの駅より?」薫も聞く。「もっちろん!」そう答える咲にしばらく薫は無言だった。
(想像できない・・・)窓の外の景色を眺めながら、薫は大空の樹を思い浮かべていた。

渋谷の交差点に出た時、薫は眩暈した。(なにこれ・・・)人人人・・。
どこにも行ってないのにもう汗だくだ。淀んだ空気、無意味なざわめき。
「こんな場所があったなんて」
朝までいた美しい自分達の街から数時間でこんな場所に着くなんて・・・。
「あ、青だ。みんな行こ!」咲が歩きだす。人の群れも縦横無尽に歩き始め、その無秩序さに薫は圧倒された。
「満は大丈夫?」「え、ええ。でも凄い所ね」
満も面食らっている。(私達が最初にいた場所より酷いわ)
咲達とはぐれない様に必死になりながら薫と満は手を繋ぎ、交差点を駆け抜けた。

135ふたりは名無しさん:2013/12/15(日) 14:10:05 ID:UGsR6jYU0
   「渋谷は苦手2」

しばらく歩き続けて舞が尋ねた。
「咲!どこに向かってるの?」「い・ち・ま・る・きゅ・う!」
「え」「知ってるでしょ?舞も」「うん、名前だけは・・・」「やっぱ渋谷と言えばあそこでしょ!」
(咲、その発想も田舎っぽいわ・・・)舞はそう思ったが何も言わなかった。自分も詳しい訳ではないし。
「どこにいくの?」満が舞に聞いた。
「えーと、洋服屋さん、かな?。あと化粧品とか、とにかく女の子がお洒落する
為に必要なものが沢山あるお店よ」「ふうん」と満。
「どうでもいいわ」と薫。薫はさっきから少し機嫌が悪い。
「そんな事言わないでよ。薫は美人なんだからお洒落したらもっと綺麗になれるよ!」「別にいい」
「まあ、まあ。みのりも喜ぶと思うけどなあ」「・・・そうかしら」
結構、咲って人を乗せるの上手いのね。舞と満は顔を見合わせてそう思った。
「早く行きましょ」率先して歩き出した薫を先頭に一行は109に辿り着いたのだった。


(なんなの・・・)何度目かの酷い眩暈を薫は味わっていた。大音量の音楽は拷問の様であったし、
何百種類のネイル・アート、ハイヒールに禍々しさを感じずにはいられなかった。
何より露出の高い服を着て元の顔が分らなくなるほど化粧をした女の子達はダークフォールの人間にしか
思えなかったのだった。
「ひゃあ!」咲が声を上げる。「何この水着!どうやって着るのかわかんないよ」
「これじゃ全然隠せないんじゃ・・・」舞も驚いている。
「あたし学校の水着しかもってないから何か買おうと思ったけど・・・」
咲がそう言うのを聞いた、近くにいた女の子2人が馬鹿にした様な顔をして去っていくのを
舞は悲しい気持ちで見送った。「私、ここにいたくない」薫がそう言った。
「え!来たばかりなのに・・・」そう言う咲に舞も言う
「わたしも・・・こういう所にがて。咲もう行きましょ?」「う、うん。みんながそう言うんなら・・・でも」
「センター街にいきましょう。普通のお店がたくさんあるじゃない」舞がうながす。
「そうしよっか。ここうるさいもんね」咲も納得した。
「私達、場違いみたいね」ぽつんと満が呟いた。

人ごみは相変わらずだがあの建物にいるより外の方がまだましだった。何軒目かで見つけた古着屋に四人は
いた。「あ!舞これ」「うん可愛いかも」咲と舞はそれなりに楽しんでいる様だったが薫と満はそれを
見守るだけだった。「薫、大丈夫?」心配そうに満が声をかける。
「なんなのかしらね、あれ」「え?」
「さっきの店にいた子達よ。あんな塗りたくって」
「そうね」「満の方が可愛いわ」「薫?」
「だから」薫は満に向き直って言う。「満も咲も舞もあんな事しなくて良いって言ってるのよ」
そのままで十分なんだから。そう言う薫に満は呟く。
「私は、ちょっと興味ある、かな」「満!?」
照れ臭そうに満は続ける。「別にあんな濃い化粧はしたくないけど、可愛い服は着てみたいわ」

薫はショックだった。(そんな満・・・)なぜか裏切られた様な気分になったのだ。
私達、服あんまり持ってないじゃない?そう呟き続ける満を薫は呆然と見ていた。
「ねえ、二人とも!」咲が呼ぶ。「二人も試着してごらんよ」
「私はいい」つっけんどんな薫。
「薫・・・」「満行って来なさいよ。興味あるんでしょ?」「・・・」満はしばらく薫を遠慮がちに見ていたが
「うん、そうする」そう言って二人の方へ行くのだった。
(何よ!)理不尽な怒りに薫は囚われていた。
何だかんだ言っても満は自分に合わせてくれると思ったのだ。咲と舞が選んでくれた服を持って
恥ずかしそうに、でも嬉しそうに試着室に入っていく満を薫は複雑な顔で見送った。

「どうかしら・・・」「あ!!」「お、おおー!」着替えた満に咲達は驚きの声を上げた。「可愛いよ満!」
それは、夏らしい、胸元が開いたギャザーのたっぷりしたティアードのキャミソールワンピースで
いつものどちらかと言うと地味な彼女からはかけ離れたイメージだったが、意外なほど良く似合っていた。
「似合う?なんだか派手だし薄くて頼りない感じ・・・」
「似合ってるよ!すっごく色っぽい。なんて言うか・・・うーん、TVの女の子みたい!」
「胸元が・・・落ち着かないけど」白くはだけた胸の辺りを押さえる。
「ううん、大人っぽくて素敵よ満さん、とっても綺麗」絶賛する咲と舞。はにかみながら自分自身を
鏡で見ていた満はおずおずと薫に聞いた。「どう?薫」

136ふたりは名無しさん:2013/12/15(日) 14:10:44 ID:UGsR6jYU0
   「渋谷は苦手3」

「薫さん?」気が付くと薫は呆然と満を見ていた。
「薫?どしたの?」咲も聞く。「満・・・かわいい・・・」目を見開いて薫はそれだけぽつんと呟いた。
「そ、そう?似合ってたら嬉しいけど」じっと見つめる薫に、さらにはにかむ満。
「うん・・・私、気が付かなかった。いつも一緒だったのに、満がこんなに・・・」
そう言われて満は嬉しそうに顔を赤らめた。
「ほんとかわいー。満!アイドルみたいだよ!写真とって皆に見せびらかしたいな!」
「やめてよ咲!・・・薫も何か着てみたら?」満は薫に水を向ける。「私は・・・」
「そうだよ!もったいないよ。薫はボーイッシュな感じが似合うと思うな」
「ううん、薫さんは大人っぽいから黒い服とかもっと・・・」咲と舞がはしゃぐ。
「薫にも服を選んであげて。私は一人で少し見てるから」
突然お洒落に目覚めた満は試着したままアクセサリーを物色し始めた。咲と舞は薫に着せ替え人形の様に
色々な服をあてがうのだった。

しばらくして薫がやっと自分の服を決めた時、満の声がした。
「あの・・・」咲が目をやると3人の男の子が満に話しかけていた。
「満さんどうしたのかしら」舞が心配そうに呟く。どうやら彼らは満に遊びに行こうと
誘っているらしい。「咲、これって・・・」「うん、ナンパってやつ?」
訳がわからず呆然としている満に咲と舞は駆け寄る「あ、あのこの子は」
咲達に気付いた彼らはみんなで遊びに行こうとさらに誘ってきた。
「あの、私達。そんな・・・」咲も舞もどうしたら良いか分からない。1人の男の子がネックレスを取り
満に、これ似合うんじゃない?良かったらプレゼントするよ、そう言って満の首にかけようとした、その時。
「満に触らないで!!!」薫の声が店中に響いた。


帰りの電車の中、四人は無言だった。あの後、男の子達にくってかかる薫をなだめ、満に服を着替えさせ
もう帰ると言ってきかない薫に押し切られて、そのまま渋谷を後にしたのだった。
「あーあ、結局、渋谷に2時間くらいしかいなかったのかあ」
「咲ちょっと・・・」薫を横目うかがいながら舞は咲をたしなめる。
「薫・・・」満が薫に声をかける。しばらく薫は何も言わなかったが「ごめん・・・」小さく呟いた。
「みんな楽しくしてたのに」「ううん、わたし達もあんな事になると思わなかったから」
舞も薫を気遣う。「びっくりしたね」と咲。「でも満も満よ」満の方を向いて薫は言う。
「何で?」「あんな服着て浮かれてるからよ」「・・・浮かれてるって、そんな言い方ないじゃない」
「じゃあ、なんであんな人達の相手するのよ!」「仕方ないじゃない!あんなの初めてなんだから」
「そうかしら?可愛いとか言われて嬉しかったんじゃないの!?」「薫そんな風に思ってたの?・・・ひどい!」
「だ、だって!満が私の気持ちも知らないで」「それは薫でしょ!?いつだって私の事・・・」
まあまあ喧嘩しないで、咲が間に入る。

「あの服、薫だって可愛いって言ってくれたじゃない・・・」
悲しそうに呟く満。「それに私ってそんなに頼りない?知らない人達にふらふら付いていくと思ったの?」
ちょっと泣きそうな満に、むきになって譲らない薫。咲も舞もこんな二人を見るのは初めてだった。
薫はやがて言った。「分ってるわよ!満がそんな子じゃないって。でも分らないのよ!」「・・・何よそれ」
「だから、なんでこんなにイライラするか分らないの!」そう告げると薫はじっと押し黙った。
しばらくして「満さんが大事なんでしょ?薫さん」うかがう様に舞が言った。
薫は窓の外を見たままだったが「・・・決まってるじゃない、そんな事」小さな声でそう言った。
「なんかお姉さんみたいだったねー、さっきの薫」咲が笑う。

「とにかくね!」みんなの方を向いて薫は宣言する。
「もう満は可愛い格好しちゃ駄目!そんな必要ないんだから」「そんな横暴な・・・」

やっと街に帰ってくると何も言わずに薫はすたすた歩きだした。「あ!待ってよ薫・・・咲舞またね!」
満は薫を追いかけようとする。「うん、またね!もう喧嘩しちゃ駄目だよ!」と咲。
「満さん!」「え?」舞が声をかける。
「薫さんが怒ってくれて満さん嬉しかったでしょ?」悪戯っぽく言う。
満は照れ臭そうな顔をしたが、にこっと笑うと何も言わず、薫を追いかけて行った。
「嬉しいかな?怒って」「誰だって好きな人に気を掛けて貰ったら嬉しいよ」「・・・そうかあ」
二人は笑いあうと家路を急いだ。今年の夏ももう終わりを告げていく。

おわり


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