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穂乃果「千歌ちゃん」千歌「穂乃果お姉ちゃん」雪穂(………)
1
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/13(水) 06:17:46 ID:h4dW1d8.
・雪穂視点(全編)
・穂乃果と千歌は同学年の設定
・他オリジナル改変設定有り
・穂乃果ハーレム要素有り
・キャラ崩壊要素多少有り
・全体的に地の文比率高め
・安心と信頼のご都合主義展開
・全十章(予定)
※SS初挑戦&初投稿です(ネタで原型の一部となる短文を書いた事はあります)
※以前別所で見かけたネタコメをきっかけに妄想を膨らませたものです
※多くのSS作品の影響を受けまくっているためネタ被りが色々あると思います
以上、OKの人はどうぞ宜しくお願いします
277
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/21(木) 07:30:11 ID:IyMqktUM
穂乃果「私も!穂乃果も!千歌ちゃんがねっ?大好きっ!大大大好きーーーーっ!!」
千歌 「ちょ!?ほ、穂乃果…お姉ちゃん、くっ、苦しいよぉ〜っ!」
穂乃果「大好き!大好きだよっ!千歌ちゃん♪ぎゅーーーーーーーーーーーーーっっ!!!」
千歌 「だ、だから…苦しいってば!……もう…………クスッ…」
穂乃果「…やっと…」
千歌 「……え?」
穂乃果「やっと……笑ってくれたね…千歌ちゃん。」
千歌 「……あ…」
穂乃果「よかったぁー…」
千歌 「穂乃果……お姉ちゃん…」
穂乃果「…おかえり…千歌ちゃん……おかえりなさい…」
千歌 「…うん…ありがとう…穂乃果…お姉…ちゃん…」
278
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/21(木) 07:38:46 ID:IyMqktUM
二人は、お互いを優しく包み込む様に抱き合った。
それぞれの腕の中の温もりを…しっかりと確かめ合いながら。
それは、とても温かくて…とても綺麗な…光景だった。
穂乃果「………」
そして…
ゆっくりと、千歌さんからお姉ちゃんが離れ。
そのまま千歌さんの方を向いたまま、数歩後ろへ下がっていく。
少し離れた位置まで移動すると、立ち止まって…視線を別の方へと変えた。
その間。お姉ちゃんの表情は、ずっと柔らかくて穏やかだった。
今までお姉ちゃんの方を見ていた千歌さんは、その視線の先を…追う。
そこには。
千歌 「……雪穂、ちゃん。」
279
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/21(木) 07:48:20 ID:IyMqktUM
千歌さんの顔に…再び影が差すのが…分かった。
その表情を目にした瞬間から…胸の痛みが……激しくなった。
だけど私は、それでいいと思った。その方がいいと思った。
だって…千歌さんは今、私以上に苦しい気持ちでいるに違いないから。
私が、そうさせてしまい・・・今も、そうさせてしまっているのだから。
だから。
せめて、この痛みよ。
私が…本当に赦される、その瞬間が来るまで…
私に向けて千歌さんが、心から笑ってくれる、その時まで。
どうか、この胸の痛みよ…
決して、消えないでいて。
280
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/21(木) 07:55:37 ID:IyMqktUM
章の途中ですが、時間の都合により今回はここで一旦終了となります。
まだお付き合い頂けてる方がもしみえるのでしたら、本当にありがとうございます。
始めてのSS投稿も、あと残り二章と半分まで来る事が出来ました。
折角ここまで来られたので、何とか最後まで頑張ってみようと思います。
281
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/22(金) 06:39:06 ID:UQ1BX1aE
雪穂 「千歌さん。」
千歌 「…あ…」
私は千歌さんの前にゆっくりと歩いて行き、
正面に立ってから、そう呼びかける。
雪穂 「…おかえりなさい。」
千歌 「…え…?」
雪穂 「おかえりなさい、千歌さん。」
千歌 「あ……た、ただいま…」
千歌さんは、私からの挨拶が予想外だったのか、最初は戸惑っていたけど、
二回目の挨拶では、拙いながらも挨拶を返してきてくれた。
たったそれだけの事でも、私は嬉しいと感じた。
でも慌てない。私にはまだ、やるべき事が…あるんだ。
282
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/22(金) 06:45:41 ID:UQ1BX1aE
千歌 「…あ、あのね……私、雪穂ちゃんに…」
雪穂 「千歌さん。」
今、何を言おうとしたかなんて…容易に想像出来てしまう。
千歌さんは…本当に、優しい人だ。
だから私は、敢えてその言葉を遮った。
そして再び、その名前を呼んだ。
雪穂 「千歌さん。」
千歌 「…あ……は、はい。」
雪穂 「私から一つ、お願いがあります。」
千歌 「え…?」
雪穂 「今から、私の話す事を…最後まで、静かに聞いて下さい。」
千歌 「…あ…あの…でも……私…」
283
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/22(金) 06:50:51 ID:UQ1BX1aE
雪穂 「お願いします。」
千歌 「あ……えっと…」
雪穂 「………」
千歌 「……うん。」
雪穂 「ありがとうございます。」
千歌さんの表情が…少し強張ったのが分かる。
既にネガティブな思考が、頭を巡っているのかも知れない。
でも……もう、大丈夫だから。
雪穂 「…まず、私は…貴女に謝らなくてはいけません。」
千歌 「……え?」
雪穂 「…いえ……私は、ずっと貴女に謝りたかったんです。それは…」
千歌 「な、なんで雪穂ちゃんが…?謝らなくちゃいけないのは、私…」
284
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/22(金) 06:57:28 ID:UQ1BX1aE
雪穂 「静かに終わりまで、話を聞いて貰う約束です。」
千歌 「あ……ご…ごめんなさい…」
雪穂 「……私は、あの時…確かに千歌さんの言葉で…胸が痛くなりました。」
千歌 「………」
雪穂 「その理由は…私が、お姉ちゃんとの姉妹という大切な場所を、
千歌さんに……奪われてしまったんだと…・・・思ったからです。」
千歌 「…っ!」
雪穂 「そして私は、その痛みに耐えられなくなって…千歌さんの前から逃げました。」
千歌 「……っ…」
雪穂 「…そして、私を傷付けたと感じた千歌さんは、自分の言葉を激しく悔いて…」
雪穂 「私が、怒鳴って逃げてしまった理由にも、気付いて…さっき、私に…謝罪をしようとした。」
千歌 「……!」
285
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/22(金) 07:02:00 ID:UQ1BX1aE
雪穂 「身勝手ですが…返事だけ、どうかお願いします……そうですか?」
千歌 「………うん。」
雪穂 「ありがとうございます……でも……本当は…違ってたんです。」
千歌 「……?」
雪穂 「あの時、私が…胸が苦しくなって、逃げ出したのは……本当は…
姉妹の絆を取られたからと、思ってた訳じゃ…なかったんです。」
千歌 「…え…?」
雪穂 「本当の理由は…別にあったんです。まだ私が、気付いてなかっただけで。
いえ……ただ、気付かないフリをしてただけ…だったのかもしれません。」
千歌 「……あ、あの…」
雪穂 「すみません。後でちゃんとお話しますから、もう少し…話を聞いて下さい。」
千歌 「あ…う、うん……ゴメン…」
286
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/22(金) 07:11:45 ID:UQ1BX1aE
雪穂 「…その理由というのは、本当は…私自身の気持ちの問題で…
千歌さんに、非があった…という訳では…無かったんです。」
千歌 「……え…?」
雪穂 「むしろ、私自身が…もっと早く、その気持ちを受け入れて…
そして、もっと早く…自分に対して、正直になっていれば…」
千歌 「………」
雪穂 「私が、千歌さんを傷付ける事は無かったんです。」
千歌 「…っ!」
雪穂 「私が、自分を誤魔化し続けていた結果……私は…貴女を傷付けてしまいました。」
千歌 「ゆ、雪穂ちゃん…!?」
287
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/22(金) 07:24:17 ID:UQ1BX1aE
雪穂 「自分の発した無神経な発言で、私の事を傷付けてしまったんだ、と…
大好きな人の大切な妹を傷付けてしまったと…気に病ませてしまった。」
千歌 「ま、待って…!違うよっ、雪穂ちゃん…!」
雪穂 「貴女が歩み寄ってくれていると知っていたのに…私が背負わせてしまった…
ショックで雨の中を彷徨わせて…危うい状況にまで…追い込んでしまった…」
千歌 「違う、違うんだよ…!雪穂ちゃんのせいじゃ…!」
雪穂 「私が臆病だったせいで…千歌さんを…そんなにも傷付けてしまった。」
千歌 「だから、雪穂ちゃんのせいなんかじゃ!全部、私が…!」
雪穂 「まだ、話は全部終わってないですよ…千歌さん。」
千歌 「…だって……だってぇ…!」
雪穂 「…私は、謝りたかったんです。自分の…してしまった事を。」
千歌 「…雪…穂、ちゃん……う…う…っ…」
288
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/22(金) 07:41:13 ID:UQ1BX1aE
雪穂 「そして……許して欲しかった……貴女に。」
千歌 「…そんな……ダメだよ……雪穂ちゃんは、悪くなんか…ない、のに…っ」
雪穂 「…千歌さん…」
千歌 「ダメ、だよ…そんなの……私が、私の…方が……うっ…うっ………」
雪穂 「………」
千歌さんは…その痛みを・・・今も一人で背負おうとしていた。その優しさ故に。
もう私に、これ以上背負わせたくないからという…本当に、不器用な…その優しさ故に。
人によっては、その気持ちを…ただの傲慢、自己満足、と…称する人もいるのだろう。
だけど…私にとっては、
今も千歌さんの瞳から零れ落ち続けている、この涙は。
とても尊く輝いていて……美しかった。
289
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/22(金) 07:52:06 ID:UQ1BX1aE
雪穂 「…ねえ、千歌さん。」
千歌 「…うっ…う…っ………え…?」
雪穂 「ひとつ、提案があるんです。」
千歌 「…グスッ………提…案……?」
雪穂 「はい。千歌さんは…自分こそ、私に謝りたいと思っていて、
私が千歌さんに謝るのは違う…そう、思ってるんですよね?」
千歌 「う、うん…!だって…」
千歌 「でも。それは私も同じなんです。私も自分が謝りたくて、
千歌さんに謝って欲しいとは…全く思っていないんです。」
千歌 「…そ、そんな……じゃあ…私、どうすれ、ば……」
雪穂 「ええ……だから…」
千歌 「……だか、ら…?」
290
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/22(金) 07:58:49 ID:UQ1BX1aE
雪穂 「一緒に…『ごめんなさい』…しませんか?」
千歌 「……え…?」
雪穂 「ケンカ両成敗とも言います。せーので、二人で一緒に謝って…
それで、許し合って…この事は、もう…終わりにしませんか?」
千歌 「………」
雪穂 「ダメ…ですか?」
千歌 「……雪穂ちゃんは…それで、いいの…?」
雪穂 「はい。私の方が是非、お願いしたい位です。」
千歌 「………」
雪穂 「………」
千歌 「………」
雪穂 「………」
291
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/22(金) 08:05:58 ID:UQ1BX1aE
千歌さんは悩んでいた。
本当にそれでいいのだろうか、という表情で。
それだけ自責の念が…強かったのだろう。
本当、どこまでも不器用で…優しい人なんだ。
下を向いていた千歌さんが、ふと顔を上げて…私と目が合った。
私は、出来る限り穏やかな表情で、千歌さんの目を見つめ返した。
千歌 「……うん……わかった。」
千歌さんは、私の提案に賛同してくれた。
私は、心の中で静かに…そして深く、安堵していた。
雪穂 「…ありがとうございます。」
千歌 「お礼を言うのは、私の方だよ……ありがとう…雪穂ちゃん。」
雪穂 「……それと、ですね。」
千歌 「…?どうしたの…?」
292
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/22(金) 08:20:14 ID:UQ1BX1aE
雪穂 「済んだ後に……さっきの事、言いますので。」
千歌 「…さっきのこと?」
雪穂 「…忘れちゃったんですか?あの時の…私が本当に思ってた事です。」
千歌 「…あ…!そう言えば、まだだった…ゴメン…」
…きっと、千歌さんにとっては。
今日、一番に望んでいたに違いない未来が…もう目の前にあって。
だから、事の発端だった筈の理由なんて…もう、些細な事なのかも知れない。
そう。今こうして、私と仲直り出来るところまで…辿り着けた時点で。
ただ…私にとっては、それこそが今一番に大切な事だというのに。
そう思っている内に、私は……何だか、可笑しくて仕方無くなってしまった。
293
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/22(金) 08:28:37 ID:UQ1BX1aE
雪穂 「……もう、本当…仕方、無いですね………フフッ…」
千歌 「あ…」
雪穂 「…?どうかしましたか?」
千歌 「…初めて、雪穂ちゃん……私に…笑ってくれた、気がして。」
雪穂 「……っ」
笑った事なら…あった筈だ。
…でも、それは…いつだって…
愛想笑いや、苦笑い……ばかりだった。
千歌 「えへへ……嬉しいなあ…すっごく。」
雪穂 「………っ…」
294
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/22(金) 08:36:28 ID:UQ1BX1aE
私が、ただ楽しそうに笑ったというだけで。
こんなに嬉しそうな…こんなにも素敵な笑顔を…
見せてくれる人、だったのに…
それなのに…今までの…私は……私、は…っ
雪穂 「…じゃあ……そろそろ、行きます…よ…」
千歌 「うん。」
もう…これ以上は…限界だ。
早く、終わらせよう…今までを。
そして…さあ、始めよう……これからを。
295
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/22(金) 08:46:01 ID:UQ1BX1aE
掛け声の前に、お姉ちゃんの方を見た。
とても優しい表情で。笑顔で返してくれた。
本当は怖かった。とても怖かった。
どんな形であれ、もし千歌さんに拒絶されたら、と…
ずっと私に壁を作られ、拒絶され続けていた千歌さんが…
どれだけ勇気がある、凄い人なのかを…思い知らされていた。
だけど、お姉ちゃんは私を信じてくれた。
そして、ずっと静かに見守っていてくれていた。
そのおかげで、私は…こうして勇気を出せたんだ。
本当にありがとうね。お姉ちゃん。
296
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/22(金) 08:52:57 ID:UQ1BX1aE
雪穂 「…せーーーーのっっ!!」
雪穂 「ごめんなさいっっ!!!」
千歌 「ごめんなさいっっ!!!」
暫くして。
千歌さんが、そっと顔を上げた。
その瞬間には。
私は千歌さんに…抱きついていた。
千歌 「………え…?」
297
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/22(金) 09:02:09 ID:UQ1BX1aE
雪穂 「大好きっ!!」
雪穂 「千歌お姉ちゃんっ!!」
雪穂 「私はっ!!千歌お姉ちゃんがっ、大好きっっ!!!」
千歌 「……ゆ…き…ほ……ちゃ…ん?」
きっと今の私は、顔どころか耳まで真っ赤だろう。
でも、そんな事は構わない。
どんなに不恰好でも、どんなに不器用でも。
今は、この想いを…全部、ぶつけよう。
大好きな…もう一人のお姉ちゃんに…
私の大好きな……千歌お姉ちゃんに…!
298
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/22(金) 09:10:51 ID:UQ1BX1aE
雪穂 「…本当は、ずっと大好きだった…本当のお姉ちゃんみたいに…
私の、もう一人のお姉ちゃんみたいに……大好きだった…!」
雪穂 「でも…私は、自分のお姉ちゃんは…穂乃果お姉ちゃんだけなんだって…
そう思い込んでいたから…自分の気持ちに素直になるのが、怖かった…」
雪穂 「だから、逃げ続けていたんだ…千歌お姉ちゃんへの気持ちから…
本当は、私…大好きなお姉ちゃん達と、一緒にいたかったのに…!」
雪穂 「もっともっと…千歌お姉ちゃんと、仲良くなりたかったのに…!
それなのに…その想いから逃げ続けて…辛くなっていったんだ…」
雪穂 「あの時、私が逃げたのは…ずっと素直じゃなかった私に歩み寄ってくれた、
そんな千歌お姉ちゃんが…眩しかったから…それが、とても辛かったから…」
雪穂 「こんなに優しくて温かい、千歌お姉ちゃんを…拒絶なんてしてる自分が、
最低だと思ったから…もう自分の気持ちを抑えるのが、苦しかったから…!」
299
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/22(金) 09:16:12 ID:UQ1BX1aE
雪穂 「…でもね…穂乃果お姉ちゃんが、教えてくれたんだ…好きって気持ちは…
たくさんあって、いいんだって…だから、素直になって…いいんだって…」
雪穂 「だから…だから…私は、もう逃げないって、決めた…この気持ちを…
この大好きって想いを…今度こそ、千歌お姉ちゃんに、伝えるって…!」
雪穂 「千歌お姉ちゃん…今まで冷たくして…本当に、ごめんなさい…
その優しさから、温かさから逃げてばかりで…ごめんなさい…!」
雪穂 「でも、これからは…もう逃げたりなんか、しないから…
だって、私は…千歌お姉ちゃんと仲良くなりたいから…!」
雪穂 「もっと一緒にお喋りしたい。もっと一緒に遊びたい。
もっともっと…ずっとずっと…一緒にいたいんだ…!」
雪穂 「千歌お姉ちゃんも、穂乃果お姉ちゃんも……私の大好きな、
大好きな大好きなお姉ちゃんだから…一緒にいたいんだ…!」
300
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/22(金) 09:21:36 ID:UQ1BX1aE
雪穂 「だからね、千歌お姉ちゃん…もう一度……言うよ。」
雪穂 「私は、雪穂は……千歌お姉ちゃんが……大好きだよっっ!!!」
どの位…時間が経ったのだろう。
私の気持ちは…この、ありったけの想いは…
今、この両腕で抱きしめている、
とても温かい、千歌お姉ちゃんに…全部、伝わったのだろうか。
…ううん。全部じゃなくて、いいんだ。
私は、千歌お姉ちゃんの事が、大好き。
それだけが、伝わってくれたのなら。
私は…それで充分なんだ。
301
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/22(金) 09:31:18 ID:UQ1BX1aE
もう一度、自身の落ち着きを取り戻す為に、私は…
素直な妹の自分から…いつもの自分に、再び切り替える。
そして、少しだけ離れて…千歌さんの顔を見る。
雪穂 「…千歌…さん…?」
千歌 「………」
千歌さんは、呆然としていた。
私からの、余りにも突然で衝撃の告白が、
予想外過ぎたのは…間違いないのだろう。
ただ、こうゆう反応をしているという事は、
私の告白をちゃんと聞いてくれていた証でも…ある筈だ。
気が付いた時には、どんな答えをくれるのだろうか。
私は、それが気になって…落ち着かないでいた。
302
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/22(金) 09:38:16 ID:UQ1BX1aE
一緒に謝る前の、あの嬉しそうな笑顔が…脳裏に浮かぶ。
だから…拒絶される事は、まず無いと…信じてはいる。
笑顔で、返してくれるのだろうか?
抱きついて、喜んでくれるのだろうか?
あるいは…涙ぐんで、感激してくれるのだろうか?
想像している内に、良い方向へ行くものしか
出てこない事に気付いて、少し不安は和らいできた。
それどころか、期待の方が強くなってきた程だった。
我ながら、こうゆうところは相変わらず現金なものだ、と思う。
そして…
時は、動き出す。
303
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/22(金) 09:46:48 ID:UQ1BX1aE
千歌 「……う…」
雪穂 「……う?」
千歌 「……う…う…」
雪穂 「……千歌さん?」
千歌 「うわあああああああああああぁああぁあーーーーーーんんんっっっ!!!!!」
雪穂 「…ええぇーーっ!?」
千歌さんの返答は……盛大なガチ泣きだった。
千歌 「うわああああぁあぁーーっっ!!!うああああぁあぁーーーんんっっっ!!!!!」
雪穂 「…あ、あのっ、あれっ?あれぇ…!?」
完全に予想外の反応だった私は、ただオロオロするばかりで…
この目の前の状況を、どうしていいかも分からず。
思わず助けを求めるように、お姉ちゃんの方を見ると…
304
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/22(金) 09:55:27 ID:UQ1BX1aE
穂乃果「ニヤニヤ(・∀・)ニヤニヤ」
うわぁー…メッチャ腹立つなぁ。ここでまたその顔ですか。
まるで、こうなる事が分かっていたかの様な態度だった。
ってゆーか、その「女神様失踪事件」的なパターン、もうやめて欲しいんですけど。
…・千歌さんの性格なら、こうゆう反応になるだろうと。
先に読んでいた…という事なのだろうか…?あり得ない話ではないが。
ああ見えて、相手に対してやたら鋭いところがあるからこそ、侮れないのだ。
……ん?という事は…まさか。
話と謝罪が終わった後、この160キロ級ストレートの、
スーパ公開処刑告白を…私にやる様にと、勧めてきたのは…
実は…この展開を予想しての事、だったというのだろうか。
305
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/22(金) 10:03:52 ID:UQ1BX1aE
…もし、本当にそうなら…私は。
あの時だけでなく、今日までも…あっちで、ずっとニヤついてるお姉ちゃんの…
またしても、手の平だった…という話になる。
穂乃果「ニヤニヤ(・∀・)ニヤニヤ」
…いい加減、マジでイラつくんですけど。その顔。
おのれ……今に、見ているがいい。
それからまた、時間が経って。
ようやく千歌さんが、泣きやんだ。
雪穂 「…落ち着きましたか…?」
千歌 「……うん。」
雪穂 「もう…ビックリしましたよ。あんなに大声で泣くから。」
千歌 「だって…すっごく嬉しかったから……それに…」
306
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/22(金) 10:09:51 ID:UQ1BX1aE
雪穂 「…それに…?」
千歌 「すっごく…悔しかったから…」
雪穂 「…悔し、かった…?」
千歌 「うん…」
嬉しかった。これは分かる。
私にとっても、嬉しい答えだった。
悔しかった。これが分からなかった。
私にとっては、謎と言える答えだったのだ。
千歌 「あのね…雪穂ちゃんが、私のこと…お姉ちゃんって言ってくれて…
それに…大好きって、言ってくれて…ホントにもう…嬉しかった…」
千歌 「でもね…だから、悔しかったの。とっても…」
雪穂 「…それは……何が…悔しかったんですか…?」
307
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/22(金) 10:20:13 ID:UQ1BX1aE
千歌 「…だって…私、雪穂ちゃんに…まだ…」
雪穂 「…?」
千歌 「『大好き』って、一回も言ったこと…なかったから。」
雪穂 「…え…?」
千歌 「ホントは、私が先に言いたかったから…だから…
雪穂ちゃんに、先に言われて…悔しかったんだ。」
…一度も、私に『大好き』と言った事が無い…
そう……だったのだろうか。
私は千歌さんとの記憶を…遡ってみる。
仲良くしたいと、言われた事はある。
一緒に遊ぼうと、誘われた事も多かった。
何かしらの機会で、私を誉めてくれた事もあった。
308
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/22(金) 10:28:24 ID:UQ1BX1aE
だけど…私が、千歌さんから『大好き』と言われた事は…
確かに、記憶の中には…存在していなかった。
千歌 「いつかね。雪穂ちゃんと、ホントに仲良くなれた時に…
そう思えるようになった時に、言うつもりだったんだ。」
雪穂 「……」
千歌 「私だけが、雪穂ちゃんのことを大好きでも…それだけじゃ、
雪穂ちゃんにとっては、迷惑になるだけかも知れないから…」
千歌 「でも、雪穂ちゃんが先に言ってくれたことが…すっごく、
嬉しかったのも、ホントなんだよ?……だから、ね…?」
雪穂 「……」
千歌 「思ってた順番とは、変わっちゃったけど…私からも、言わせてくれるかな…?」
雪穂 「……はい。」
309
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/22(金) 10:35:35 ID:UQ1BX1aE
千歌 「私、雪穂ちゃんのことが大好き…ずっと前から大好き。
今も大好き。そして…これからも、ずっと大好きっ!!」
雪穂 「………っ」
千歌 「だから…だから……これからは、もっと、もっと…
私と、仲良くしてほしい…いっぱい遊んでほしい…」
雪穂 「………はい…っ」
千歌 「また、『千歌お姉ちゃん』って…呼んでほしいの…!
そして…ずっと、ずっと…私と一緒にいてほしい…!」
雪穂 「…………うんっ!!」
310
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/22(金) 10:45:20 ID:UQ1BX1aE
千歌 「えへへ……やっと、言えたぁ……」
雪穂 「千歌さん……ううん…千歌…お姉ちゃん…っ!」
千歌 「…嬉しい…なぁ……大好き…だよ…雪穂、ちゃん……グス…ッ…」
雪穂 「私、も……千歌…お姉ちゃん…が…大…好き……うっ…う…っ…」
私達は泣いた。
二人で抱き合いながら、大きな声で。
今日から…私達は始めるんだ。
これからの、私達を。
そして…私達が、落ち着いて。
お互いの顔を見て、照れくさそうに笑って。
また抱き合う私達を…優しい両手が、包み込んでくれた。
311
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/22(金) 10:54:14 ID:UQ1BX1aE
穂乃果「……雪穂……千歌ちゃん……よかっ…たぁ…」
私を信じて、ずっと見守っていてくれた穂乃果お姉ちゃんが、
本当に嬉しそうな、安心した様な声で…耳元でそう囁いた。
その横顔から見えた蒼い瞳からは…たくさんの涙が零れ落ちていた。
…もう……さっきまで…あんな顔…してたクセに……ズルイよ。
雪穂 「…穂乃果お姉ちゃん……ありがとう…」
千歌 「私からも…ありがとう……穂乃果、お姉ちゃん…」
穂乃果お姉ちゃんのおかげで、私は素直になれた。
穂乃果お姉ちゃんのおかげで、私は勇気を貰えた。
ずっと私が掌の上だったのは、正直チョッピリ悔しかったけど。
それに、あのニヤニヤ顔も、正直イラッっとはしたけど。
それでも…幾ら感謝しても足りない程…私達を、何度も助けてくれた。
312
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/22(金) 11:10:43 ID:UQ1BX1aE
そう…私だけじゃない。穂乃果お姉ちゃんは、千歌お姉ちゃんだって…あの時、助けてくれた。
私は、千歌お姉ちゃんが帰って来る前…確認の電話をしていた時の、ことりさんの言葉を思い出す。
ことり『もちろん、ことりたちも頑張ったけどね?千歌ちゃんを救ったのは…穂乃果ちゃんだよ♪』
あの時…穂乃果お姉ちゃんは、千歌お姉ちゃんがどこにいるのかも分からない状況から、
一刻を争う中、とても迅速かつ的確な行動で、そして私の安否も忘れずに気遣ってくれながら…
迷う事なく仲間の人達の力を貸して貰って…それが、千歌お姉ちゃんを助け出す道へと繋がった。
ことり『穂乃果ちゃんがみんな大好きだから、大好きな千歌ちゃんがピンチだと知って、
あの短い時間の中でも迷わずに…きっとあれだけの行動ができたんだって思うの。』
ことり『穂乃果ちゃんがみんな大好きだから、みんなも穂乃果ちゃんが大好きなの♪
だからみんな惜しまずに、いつも穂乃果ちゃんの力になりたくなるんだよ。』
313
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/22(金) 11:21:23 ID:UQ1BX1aE
ことり『だからね?ことりやみんなの力も大きいと思うけど、その力を紡いで繋げたのは…』
ことり『その繋がって広がった、いーっぱいの糸を…千歌ちゃんの所へ辿り着かせて、千歌ちゃんを救ったのは…』
ことり『危ない状態だった千歌ちゃんのために…限られた状況の中で、
自分にできることを、精一杯頑張った…穂乃果ちゃんなんだよ♪』
そのことりさんの言葉に、私は…あの日のお姉ちゃんの言葉を、思い出していた。
穂乃果『でもね、千歌ちゃん…?いつも私、おっちょこちょいで、きっと頼りないけど…』
穂乃果『もし、千歌ちゃんがピンチになって、泣きそうになった時は…』
穂乃果『絶対に、頼れるお姉ちゃんになって…千歌ちゃんを、必ず助けてみせるからねっ!』
そうだ。それは、ただ自分の力だけで全てを何とかしようとするって事じゃなくて。
信頼で結ばれている仲間と力を合わせて、大切な人を守るのが…きっと、本当のヒーローなんだ。
千歌お姉ちゃんを救った時も、μ'sのリーダーだった時も。この姿こそが…穂乃果お姉ちゃんという人なんだ。
314
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/22(金) 11:40:06 ID:UQ1BX1aE
そう思いながら……穂乃果お姉ちゃんの妹である、私は…
穂乃果お姉ちゃんの…もう一人の妹である千歌お姉ちゃんと、片手を繋ぎながら…
私達二人の…お姉ちゃんの温もりに…もう片方の手で……共に、そっと寄り添う。
穂乃果「…全く、世話の焼ける妹たちなんだから、もう…」
雪穂 「…フフ…なにそれ。穂乃果お姉ちゃんには、言われなくないよ。」
千歌 「…あはは…それには、さんせーい。」
穂乃果「あー、ひどいよ。そんなこと言うと、またお仕置きしちゃうんだからね?」
雪穂 「…あれー?いいのかなぁ…?こっちは二人なんだよ、穂乃果お姉ちゃん。」
千歌 「…そうだよー。私一人にだって、手こずってるのに。雪穂ちゃんまで、
敵にしちゃったら…勝算、あるのかな?ほ・の・か・お・姉・ちゃん♪」
315
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/22(金) 11:50:31 ID:UQ1BX1aE
穂乃果「なっ!?そ、それは……ぐ、ぐぬぬぅ…!」
雪穂 「……プッ、クク…ク……フ、フフ…!」
千歌 「……アハ、アハハッ、アハハハ……!」
穂乃果「………クスッ……フフフ……アハハ!」
そして。
居間には、大きな笑い声が響き渡った。
きっとこれからも、この部屋は…
仲の良い姉妹の、明るい声で…ずっと賑わってゆくのだろう。
そう。これからは、二人だけじゃなく。
私達、三人姉妹の…楽しそうな笑い声で。
316
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/22(金) 11:58:14 ID:UQ1BX1aE
これにて、八章はおしまいです。
妄想に身を委ねて、ただ思いつくままに書いていた初めてのSS、
文章も内容も全然な代物ですが、投稿させて貰っていて楽しかったです。
完結まであと二章、このまま最後まで突っ走ります!
317
:
名無しさん@転載は禁止
:2019/03/22(金) 19:42:12 ID:vhvw2obM
あと2章は…?
とりあえず乙
318
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/23(土) 10:30:44 ID:WEKO2rKA
第九章 【我侭】
<高坂家 雪穂の部屋>
季節は夏。
七月も終わりに入ろうという頃。
今は夏休みの真っ最中。そして今日は、部活の練習がお休みの日。
その貴重な時間を生かす為に。私は今、宿題の方を進めているところだ。
そんな私のすぐ横では…さっきから騒がしい姉が、床をコロコロと転がっている。
千歌「ねーねー、雪穂ちゃーん、遊んでよー。」
もう一人の姉は、用事で学校に行っているのもあってか、
こっちの姉は、どうやらヒマを持て余してるらしい。
それにしても…「遊ぼうよ」ではなく「遊んでよ」というのが、
実に姉らしくないというか。これでは、どっちが妹なのか分からないのでは。
319
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/23(土) 10:42:56 ID:WEKO2rKA
雪穂「今は宿題中だからダメです。」
千歌「ええ〜、宿題なんて夜でもいいじゃん〜。今は、私と遊んでよ〜。」
雪穂「夜は夜で、ゲームとかに誘ってくるじゃないですか。」
千歌「まぁー…それはそれー、これはこれー、ということで一つ。」
雪穂「…じゃあ、これから遊ぶ代わりに夜はナシで…いいんですね?」
千歌「それはダメだよー!打倒・雪穂ちゃんが、私たちの目標なんだから!
今日こそ私たち『お姉ちゃん's』が、絶対勝ってみせるんだからね!」
雪穂「じゃあ、今は我慢して下さい。」
千歌「そんなぁ〜!……横暴だー、卑怯だー、断固抗議するぞー!」
雪穂「千歌さん…?(ジロリ)」
千歌「ア、ハイ…」
320
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/23(土) 10:58:51 ID:WEKO2rKA
あの日から、私達の関係は…随分と変わったと思う。
ただ、あの世紀の160キロ級ド直球告白を、私が後になってから思い出す度に…
その余りの恥ずかしさに、どうしても耐え切れなくなってしまった影響によって、
千歌お姉ちゃんへの、私からの呼び方や話し方は…今では元に戻っている状態だ。
その事を、千歌お姉ちゃんからもっと強く突っ込まれるのではと思っていたのだけれど…
最初こそ不満そうではあったが、今では…意外というか、さほど気にしていない様子だ。
多分、それはきっと…今の私達の距離が、以前とは比較にならない位にまで、
自然で気兼ねのない、心地良いものに…もう変わっているからなのだと、思っている。
そして…私達の関係がそう変わってゆく事で、周りとの関係もこれまでと変わってゆく。
部の話し合いと遊びを兼ねて、部員の友達四人が家にやって来た、ある日の事。
この時の千歌お姉ちゃんは、持ち前の明るさを一切惜しむ事なくフルパワーで開放し、
気が付けば、あっとゆう間にみんなと打ち解けて、すっかり仲良くなっていた。
321
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/23(土) 11:33:00 ID:WEKO2rKA
今までに、みんなが何度か家に来た時にも、千歌お姉ちゃんと顔は合わせる機会はあったのだけれど、
あの頃の千歌お姉ちゃんは、まだ周りに気を遣っていて…あったやりとりといえば、控え目な挨拶を交わす程度だった。
それ故に四人とも、その今までとのギャップに最初こそ少し驚いていたけど…みんな流石というか、割とすぐに慣れてしまった様で。
部員1『元より只者ではないと思っていましたわ。あの穂乃果様のご親友で…今では雪穂さんが姉とお慕いする程のお人ですもの。』
部員2『まあ、色々と事情があったんでしょうけど。でも私たち、今の千歌先輩の方が、もっと好きですよ。ね?』
部員3『うんうん♪これからモットモット仲良くなれそうで嬉しいな♪』
部員4『ま、そーゆーこったな。ってコトでさ、改めてヨロシクな!ちかっち先輩!』
千歌 『…うん…!ありがとう……グスッ……私の方こそ…これからも、宜しくねっ!』
千歌お姉ちゃんの本来の魅力と、それぞれ性格は違えど、元々ノリの良い子達なのもあって。
それから意気投合して、みんなでワイワイお喋りしたり、遊んだりして…私にとっても、すごく楽しい時間だった。
千歌お姉ちゃんと私が、以前よりも気持ちがずっと強く繋がった事を、きっかけに。
千歌お姉ちゃんと四人との繋がりも、今までよりもっと強いものへと、その姿を変えていった。
これって、本当に素敵な事だなぁ…と。あの時、私はそう強く感じたのを…今もよく覚えている。
322
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/23(土) 12:11:01 ID:WEKO2rKA
そして…千歌お姉ちゃんと、私の親友である亜里沙も。
亜里沙「実は私、いちばん最初の頃からのμ'sの大ファンなんですよ!」
千歌 「え?最初っていうと…もしかして、まだ…三人だった頃からの…!?」
亜里沙「そうなんです、エッヘン!」
千歌 「す、すごい…すごいよ、亜里沙ちゃん!私のこんなすぐ近くに、私より早いファンの人がいたなんて…!」
亜里沙「えへへ…///じゃあμ'sのファンとしては、私は千歌さんの先輩なんですね!」
千歌 「うん、そうだね!…亜里沙先輩、お願いです!私の知らなかった頃の、μ'sの事…いっぱいいっぱい、教えてください!」
亜里沙「ハラショー!!任せてくださいっ!!」
千歌 「やったーーっ!!」
それからμ'sファンの同志として、何度も交流を重ねてゆく内に…今では同志の関係抜きでも、すっかり仲良しになっている。
でも、やっぱりμ'sの話題で盛り上がる時が、最もアツい時間みたいで…一緒にいる私が、たまにそのノリに付いて行けなくなって、
ちょっと疎外感を感じちゃうというか…寂しくなったりする事も、あったりして。まあ、二人が仲良しなのは、とても良い事なんだけど。
323
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/23(土) 12:36:05 ID:WEKO2rKA
たった一つの関係が変わっただけで…まるで一つの輪が、大きく広がってゆく様に。
世界って…こんなにも、素敵になってゆくものだったんだと、私は実感し続けている。
だって、千歌お姉ちゃんと私の世界は…ドンドン笑顔で、いっぱいになっているのだから。
そして、今も…私の部屋で、こうして他愛のないやりとりを二人でしている事。
たったそれだけの事でも…千歌お姉ちゃんが、本当に嬉しいんだという気持ちが伝わってくる。
だから私は、呼び方も話し方も、また自然に出来る様に…これから、ちゃんと頑張っていこうと思う。
雪穂(だって…もっともっと、笑顔が見たいから……だから、その時まで…もう少しだけ待っててね、千歌お姉ちゃん。)
そう思いながら、千歌お姉ちゃんの方を見ると……床に指をくりくりしながら、明らかにイジケていた。
千歌「ふーんだ…どーせ雪穂ちゃんはー、私なんかより宿題の方が、大事なんだ…イジイジ…」
…ハアー……と。私は、ため息を吐く。
雪穂「千歌さんも宿題やればいいじゃないですか。三年生でも、出てはいるんでしょう?」
千歌「…出てるけどー…私は雪穂ちゃんと、もっともっと遊びたいのー!それなのにー…イジイジ…」
324
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/23(土) 12:44:00 ID:WEKO2rKA
雪穂「…そんな調子で、後で慌てる事になっても知りませんよ?」
千歌「それがどーしたーっ!そんなモノで、このちかちーの…あふれる遊びたいパワーは!
もう、止められっこないんだー!がおーーーっ!どっかーーーん!!……イジイジ… 」
雪穂「……ハアーー…」
思わず私は、もう一回ため息を吐いてしまう。
本当…よくこんなんで、日頃から「お姉ちゃん」を主張出来たものだ。
そんな困ったお姉ちゃんを見て、私はヤレヤレ…と思いながら…
雪穂「…後5ページで、区切り付けますから…もう少し待ってて下さい。」
千歌「!!ホント!?」
頭の上に、ある筈の無いネコミミがピンと立つのが見えた気がした。
それに、この表情。まるで水を得た魚…そのものである。
325
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/23(土) 12:48:04 ID:WEKO2rKA
千歌「やったーーっ!!雪穂ちゃん大好きーー!!」
雪穂「あ、ちょっと!……ああ、もう……全く…」
千歌お姉ちゃんは、すごく嬉しそうに私に抱きついて、顔をスリスリしてくる。
千歌「雪穂ちゃ〜ん♪だ〜い好き〜♪」
雪穂「…もう。これじゃあ宿題、出来ないじゃないですか。」
そう言いながらも、まんざらでもない自分が…何だか可笑しい。
雪穂(…大好き……かぁ…)
ふと思った。
千歌お姉ちゃんは…私の…どこが、好きなのだろう?
自分で言ってしまうのも、ちょっとアレだけど…
客観的に見ても、私は…冷めているというか、どうも可愛げがない、というか。
326
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/23(土) 12:57:59 ID:WEKO2rKA
本来、素直で人懐っこい〔ゆっきー〕なら…まだ、分からないでもないかも知れないが、
…正直、恥ずかしくて…私は、その顔を普段は滅多に表に出さないので…だから、尚更に厳しく思えるのだ。
でも…千歌お姉ちゃんは、まだ私が心を開いてなかった頃から、
そんな私に対しても、いつも仲良くしたいと…歩み寄ってくれていた。
「私とだけ上手くいってないのは、色々と都合が悪いからなのでは?」
正直、最初の頃は…そう捻くれて考えたりもした事もあった。
だけど、私がどんなに頑なでも…決して諦めなかった、千歌お姉ちゃんの姿を見て…
本気で私自身に、確かな好意を持ってくれてる事が…しっかりと伝わってきていたのだ。
どうして…そこまで、好きになってくれたのかな…?
私の…どんなところに…千歌お姉ちゃんは、惹かれた…んだろう。
327
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/23(土) 13:04:59 ID:WEKO2rKA
丁度、私の目の前には…その答えを持っている本人がいる。
今もこうして、甘える様に私にくっついている、千歌お姉ちゃんに…
私は、思いきって聞いてみる事にした。ちょっと恥ずかしいので…なるべく、さり気なく。
雪穂「…あの……ちょっとだけ、気になったんですけど…」
千歌「…ん〜?なーにー、雪穂ちゃん…?(ゴロゴロ、スリスリ…)」
雪穂「その、なんて言うか…千歌さんって、私の…どうゆうところが…好き、なのかなって。」
千歌「……(パチクリ)」
雪穂「…あ、いえっ、だから…ちょっと、ちょっとだけ…気になった、ものですから。はは…」
…結局、慌ててる自分が、ちょっと情けない。
何はともあれ……私の聞きたい事は、一応は伝わった様で…
千歌お姉ちゃんは、顎に指を当てて…その答えを、考え始めたみたいだ。
328
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/23(土) 13:12:16 ID:WEKO2rKA
千歌「ええっと〜、う〜〜ん………う〜んとね〜?」
千歌「……う〜ん、う〜ん…うう〜〜ん……」
…そんなに悩まれる程の、難題なんだろうかと…少し凹みそうになるのを堪え、返答を待つ。
それから…暫く待った後に。
とてもさっぱりとした笑顔で、答えが返ってきた。
千歌「ごめん、よくわかんないや!」
雪穂「………え…」
千歌「だって。大好きなものは、大好きなんだもん!」
雪穂「………」
…いや、そりゃ確かに…「人を好きになるのに理由はいらない」とか、
そうゆう系統の台詞は、アレやコレやで…よく聞いたりは、するけど…
329
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/23(土) 13:18:49 ID:WEKO2rKA
せめて…せめて、何か一つ位は…欲しかったんですけど。私。
おかげで、ちょっと本気で凹んでしまいそうな気分だ。
そう思うと、何だか…だんだん悔しい気持ちが強くなってきて…
雪穂「…あーそうですか。つまり、千歌さんの私への『大好き』というのはー…」
雪穂「『よくわからない』…そんな曖昧な程度のものだった、と。そーゆう事なんですね?」
千歌「へっ?」
雪穂「よーく分かりました。ええ、よっく分かりましたとも。つーん。」
千歌「え?ええぇ〜っ!?」
私は腕を組んで大げさに怒ったフリをしながら、横を向いて両目を瞑る。
答えをくれなかった千歌お姉ちゃんに、ちょっと意地悪をしたくなったのだ。
千歌「ちょ、ちょっと…!?雪穂ちゃんっ!?」
330
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/23(土) 13:24:34 ID:WEKO2rKA
雪穂「もう知りませーん!…ふんだっ。」
千歌「そ、そんなぁ〜!機嫌直してよぉ〜!」
雪穂「…じゃあ、一つだけでいいですから…ちゃんと言ってみて下さい。私の、好きな…ところを。」
千歌「だ、だから〜、それは〜…ううう〜…!」
私は、片目だけそっと開いて…チラッと千歌お姉ちゃんの方を見る。
とても困っている姿を目にして…少し、良心が痛んだけど…
それでも私は…聞きたかったんだと、思う。
大好きな人が、自分を大好きと言ってくれる…その理由を。
千歌「…だって…ホントに、わかんないんだもん…」
それでも、答えが貰えなかった事に…私は、何だか自分が情けなくなってきた。
331
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/23(土) 13:30:40 ID:WEKO2rKA
雪穂(…え……私って…一つも言って貰えない程、そんなに、ダメ…!?)
結構ショックというか…そろそろマジで…ちょっと、泣きそうなんですけど。私。
雪穂「…なら……理由の一つも分からない、私なんかを…どうして…大好きだ……なんて、言うんですか…」
千歌「……だって…だって……私は……雪穂ちゃんが、大好き…なんだもん……」
雪穂「………え…?」
千歌「どこが〜、とか…そんなんじゃ、なくて……雪穂ちゃんが…私…大好き、だから…」
雪穂「………あ……」
……『雪穂ちゃん』が……大好き………
332
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/23(土) 13:36:58 ID:WEKO2rKA
千歌「私よりも年下なのに、すっごくしっかりしてて、落ち着いてて…
アタマも良くってなんかカッコよくて、すごいなーって思うし…」
『雪穂は、凄いね。』
千歌「いつも礼儀正しいし、自分のことは全部、自分でちゃんとやっちゃうし。
それにそれに、とっても頑張り屋さんで、ホントにえらいなって思うし…」
『雪穂は、偉いね。』
千歌「私が、雪穂ちゃんを…傷つけちゃった時なんて、自分の方が辛かったはずなのに…
私のこと、心配してくれて…謝ってまでくれて…なんて、優しいんだろう…って。」
『雪穂は…優しいね。』
雪穂「…………っ……っ…」
333
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/23(土) 13:42:45 ID:WEKO2rKA
千歌「そりゃ、時々冷たかったり、怖かったりすることもあるけど…そうゆうのも全部で、
雪穂ちゃん、なんだし…それに、いつも目立たないところで、気を遣ってくれてて…」
雪穂「…………っ……ぅ…っ…」
千歌「・・・いつも…あんまり、気持ちを…顔には、出してくれない…意地っ張り屋さんだけど、
だから…笑ってくれた時の顔が、とっても可愛くて、優しくて…すっごく、ステキで…」
千歌「………っ……っ…ぅ…うっ……っ…」
千歌「だから、だから……私は、そんな雪穂ちゃんが…雪穂ちゃんが…全部、大好…」
そう言い終える前に…
私は千歌お姉ちゃんを…強く、強く、抱きしめた。
千歌「…え……雪穂…ちゃん?……泣いてる…の?」
雪穂「う…うっうっ……うああっ……あああ…っ…っ…!!」
334
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/23(土) 13:48:21 ID:WEKO2rKA
私は…本当にダメな奴だった。
何も、何も分かっていなかった。
千歌お姉ちゃんは…
私の、大好きな人は…
こんなにも…私の事を…
ずっと見ていてくれて。
ずっと大好きでいてくれて。
だから。何度でも…歩み寄っていてくれたのに。
雪穂「……ごめんなさい……ごめん、なさい……千歌、お姉…ちゃん…っ…」
千歌「あ…………フフッ…どーして謝るの…?何か悪いことでも、したのかな…?」
そう言って微笑みながら…千歌お姉ちゃんは、私の頭を撫でてくれた。
335
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/23(土) 14:05:06 ID:WEKO2rKA
雪穂「……いつも…素直に、なれなくて……ごめん、ね……千歌…お姉ちゃん……」
千歌「そんなの、気にしなくていいんだよ…そうゆう雪穂ちゃんも私、大好きなんだから。」
雪穂「…恥ずかしくて…なかなか…言えないけど……私、千歌…お姉ちゃんが…大好き…」
千歌「ありがとう……えへへ、嬉しいなぁ……私もね…?雪穂ちゃんが…大大大好き、だよ…!」
…私の頭を優しく撫でてくれていた、千歌お姉ちゃんは…
そっと、私を抱き寄せて…耳元で…そう言ってくれた。
…普段は危なっかしいのに、こうゆう時は…お姉ちゃんなんだから…ズルイなあ…
そんなところは、穂乃果お姉ちゃんとソックリで…本当に、お姉ちゃん達は……ズルイよ。
だから…私もズルくなってみようと思う。
私も、もっとワガママになってみようと思う。
だって…千歌お姉ちゃんと、穂乃果お姉ちゃんと、お姉ちゃん達と。
私は、もっともっと…一緒にいたいから。楽しい事をしたいから。
336
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/23(土) 14:15:52 ID:WEKO2rKA
…本当なら、明日の夜に……それを言うつもりだった。
でも、止まらない。もう、明日まで待てない。
そう…私の気持ちは……今にも溢れて弾ける寸前なんだ。
だから私は、今から言う。千歌お姉ちゃんに。
この想いを…願いを、叶える為の一歩を…踏み出すんだ。
雪穂「……ねえ……千歌、お姉ちゃん……」
千歌「……ん?……もう…落ち着いた…?」
雪穂「……あのね。」
千歌「うん…どうしたの?」
雪穂「…私も…穂乃果お姉ちゃんも…ことりさんも…亜里沙も…部のみんなも、いる…」
千歌「?…雪穂ちゃん?」
雪穂「音ノ木坂へ、来ない?」
337
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/23(土) 14:21:15 ID:WEKO2rKA
章の途中ですが、時間の関係により今回はここで一旦終了となります。
次回の投稿でこの九章を完結、その次から最後の十章に入れればと思います。
コメントを下さった方、まだ読んで下さっていて本当にありがとうございます。
あと残り僅かですが、このまま最後までお付き合い頂けます様、どうか宜しくお願いします。
338
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/24(日) 15:00:16 ID:pdLfhU8w
その計画を私が思いついたのは、七月に入って間もなくの頃だった。
まず真っ先に、ことりさんのお母さん…音ノ木坂学院・理事長に時間を作って貰って、
私の我侭から生まれた、この余りにも唐突な計画が…現実として、可能なのかどうかを相談した。
その問いに対しての返答…従来、高校三年生になってからでは難しい学校の方が大半だと、聞いた時は…正直、絶望しかけた。
ただ、まだ廃校から立て直して間もない音ノ木坂学院については…今後も、一人でも多くの生徒が入って来るのを、
あらゆる形で歓迎してゆく方針だという事だった。そして、私が持ち出した今回のケースも…その中に含まれていた。
つまり…条件さえクリアすれば、理論上は可能であると教えて貰って…私は、何とか希望が湧いてきた。
但し…各方面での手続きや書類関連等、試験の準備、千歌お姉ちゃんの親御さんへの連絡・相談・承諾等に加え、
他にも必要な事は非常に多く、そして…私では出来ない事も、とても多い。そう…これが困難な道である事には…変わりないのだ。
何よりも、一番大事なのは…千歌お姉ちゃんが、心からそれを受け入れてくれるか…という事だ。
ただ、それでも。もし実現出来たのなら…そこには、本当に素敵な世界が待っていると、私は強く信じていた。
そして、そう感じていたのは…とても心強い事に…私一人だけではなかったのだ。
339
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/24(日) 15:08:01 ID:pdLfhU8w
南家での滞在時から、千歌お姉ちゃんの事をスッカリ気に入っていた理事長とことりさんは、
この無謀ともいえる私の計画に、喜んで全面的に協力してくれると、約束してくれた。
理事長に関しては、この時期に学校を変わる事、その事の重さを…まず、私に伝えてきた。
その上で、もし千歌お姉ちゃんから快く承諾が得られた暁には、学校関連の手続きの件は全て引き受けると…
それに、現時点で出来る準備も一通り進めておく…とまで言ってくれた。そう…本当に、頼もしい味方になってくれたのだ。
ことりさんは、中学時代の友達で千歌お姉ちゃんの学校に行ってる子がいるからと、
今の学校の中での千歌お姉ちゃんの事を、さり気に聞いて確認してくれると言ってくれた。
その人は同じ三年生なので、普段の学校での様子を、色々と知る事が出来るかも知れない。
何だかスパイみたいではあるけど。千歌お姉ちゃんの気持ちを、最低限知っておく事も重要だと思う。
もしも千歌お姉ちゃんが、今の学校での生活に充分満足している、というのであれば…
私は、この計画を強引に実行する訳にはいかなくなるし…場合によっては…する事もなくなるのだから。
その場合には…私としては非常に不本意だが、大事なのは千歌お姉ちゃんの意思なので、
まだ…諦めの折り合いも、付く…と思う。だからこそ、事前に…私はちゃんと知っておきたかった。
340
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/24(日) 15:19:05 ID:pdLfhU8w
そして私は、穂乃果お姉ちゃんと両親に相談して、これから協力して貰える様に頼んだ。
この我侭な計画の実現の為に、どうしても助けて欲しいと…一生懸命に、お願いした。
穂乃果お姉ちゃんは目をキラキラさせて、『私に出来る事なら何でも協力するよ!』と、すごく嬉しそうに約束してくれた。
そう。いつもは色々と危なっかしくても、いざという時は、本当に頼れるお姉ちゃんである事を…私は、充分過ぎるまでに知っている。
だから…こんな時だからこそ、溢れてくるその頼もしさと。それ以上に、溢れてくるその気持ちが…私は、素直に嬉しかった。
ウチの両親については、千歌お姉ちゃんのご両親と話し合いをして、必ず理解と了解を得てみせるから任せろ、と言ってくれた。
「大事な子供の親」という、あちらのご両親と同じ立場である二人が味方になってくれる事が、どれだけ心強いかを…私は実感していた。
私は…お姉ちゃんと、お父さんと、お母さんの三人に…大切な、家族に……心からの「ありがとう」を、濡れた顔が見えない様に…口にした。
他にも、千歌お姉ちゃんと仲良くなった人、面識があった人達にも、色々と協力をお願いしたい事を…精一杯の気持ちを込めて伝えた。
私と穂乃果お姉ちゃんの大切な人であり、そして何よりも、これまでに広がり伝わっていた千歌お姉ちゃんの人徳によって、
その誰もが喜んで力になってくれると言ってくれて……私は、涙が止まらなくなる程に…嬉しかった。
こんなにも多くの人達に、協力して貰えて…そして、助けて貰えるなんて…本当に私は、恵まれていると思う。
だから…これが、ただの私の我侭であっても……この素敵な輪の世界の、もっと近くに…千歌お姉ちゃんを連れて来たかった。
341
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/24(日) 15:35:05 ID:pdLfhU8w
それから、着々と各方面での準備は進んでいった。
みんなが本当に頑張ってくれたので、準備は順調そのものだった。
そのみんなの想いに応える為にも…私は、この私の「我侭」を…必ず成し遂げてみせる事を、胸に誓っていた。
それから暫く経った、ある日…私はことりさんと、千歌お姉ちゃんの学校での件を話し合っていた。
これまでの話や情報を、完結にまとめると…可もなく不可もなく…というところだった。
どうやら千歌お姉ちゃんは、学校ではそこまで活動的ではないという事が、ほぼ結論として出ていた。
クラスメートと上手くいってない等の問題が、特別これといって有る訳ではなく、
言葉を交わす位の相手は何人かいるけど、自ら進んで友達を作ろうとしてる感じでもなく。
実は私も、あれから学校が早く終わった日に、千歌お姉ちゃんの下校時の様子を何度か見に行った事があるけど…
そのまま一人で出てくるか、校門で他の子と別れて一人で帰るか…そのどちらかだった。
…これは、どうゆうことなのだろう?と、私は少し…疑問に思った。
もし千歌お姉ちゃんが、今の学校に余り思い入れがある訳では無いのであれば…
実に勝手な話ながら、それは私にとっては、好都合では…ある筈なのだけれど。
342
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/24(日) 15:40:45 ID:pdLfhU8w
ただ、千歌お姉ちゃんなら…その気になれば、今とは別の形で…もっと楽しい学園生活を送れていたのでは?
そう思えて、この疑問をことりさんに伝え始めた時に、穂乃果お姉ちゃんがやってきた。
用事を終えて帰宅した後、お茶とお菓子を持って来てくれた穂乃果お姉ちゃんにも、話に加わって貰った。
穂乃果『きっと、千歌ちゃん自身が…まだ、本当にやりたいことを…
今の学校では、見つけられてないから…なんじゃないかな。』
その時、あっ…と、私は思った。
…そうだ……確か、前に聞いた話では…スクールアイドルには、興味を持っていたけど…
学校の部での方針が、自分のやりたかったものと、余りにも違い過ぎて…縁が無かったと、言っていた。
それに、もう三年生である事も…多かれ少なかれ影響しているのかも知れない。
343
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/24(日) 15:47:58 ID:pdLfhU8w
…でも…それも確かに、理由であるには違いないとは、思うのだけど……それだけ、なのだろうか。
まだ…まだ、何か…他に……決定的とも言える様な、理由が…ある気が、する。
それは、多分……最近になって、ようやく私も気付き始めている筈の…とても大きな理由……それは……
穂乃果『あと…例えばだけどね。もし一人でも、一緒に頑張ってくれる…ううん…応援してくれるだけでもいい。
そんな人が、千歌ちゃんの側に、誰か一人でもいてくれたなら…今とはまた、違ってたって…思うんだ。』
ことり『そうだね……私も、まだ一人だった小さい頃に…あの日、あの時に…もし穂乃果ちゃんに出会って、
友達になってもらってなかったら…やっぱり今の私とは、全然違う私になってたって…そう思うの。』
……そう、そうだ…これなんだ。千歌お姉ちゃんの側にいる、大切な人の存在。
千歌お姉ちゃんは、穂乃果お姉ちゃんや私、ことりさんや私の友達との繋がりはあっても、
一日の間で長い時間を過ごしている、今の学校には…本当の意味での親しい人は…まだ一人もいないんだ。
344
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/24(日) 15:53:42 ID:pdLfhU8w
私は改めて考える。穂乃果お姉ちゃんと千歌お姉ちゃんは、性格面で似ているところも多い。
だけど、当然ながら二人は別の人間であり、別の存在なのだから…異なる面は大きく異なる。
穂乃果お姉ちゃんは人の手を引っ張って前に進んでゆき、千歌お姉ちゃんは人と支え合って前に進んでゆく。
あくまで私個人の印象ではあるけど…千歌お姉ちゃんはそうゆう人だと、私は思っていた筈だ。
だからこそ…親しい人が、支え合う人がいない状況では、周りに迷惑を掛けない様に気を遣う人で。
その影響で、自分の気持ちを抑えてしまいがちで…それに、自己への評価を低くみている傾向もあった。
でも…もし一人でも、誰かが側にいてくれて…応援をくれたり、手を取り合ってくれる…そんな人が、いるのなら…
きっと。その想いを、優しさを、エネルギーに変えて。元より持っていた、溢れんばかりのパワーと共に。
自分だけでなく、周りまでも照らして元気にしてしまう様な…とても強く、眩しい輝きを…胸に持っている人なんだ。
345
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/24(日) 16:01:35 ID:pdLfhU8w
たった一人の存在…それが、どれだけの大きな力を生み出すものなのか。
そうだ。μ'sのファーストライブの時だって、少し形こそ違えど…その源は、同じではなかっただろうか。
ステージの幕が開いた時…穂乃果お姉ちゃん達の、目の前の観客席には…誰もいなかった。
流石の穂乃果お姉ちゃんも…その時は、心が折れそうになったと聞いた。
だけど、その時。花陽さんが走って駆けつけてくれた。
たった一人の観客…それが…その時の穂乃果お姉ちゃん達に、どれ程の勇気を…力を…与えてくれた事だろう。
そして…ステージは開いた。それによって…後のμ'sのメンバーが、あの場に集い。
ネットに公開されたライブの動画も多くの人に観て貰えて、それからのμ'sに…大きく繋がっていた。
そう。全てが終わりへと傾きかけていた道が…たった一人の存在を、きっかけに…伝説への、始まりの道へと…変わったのだ。
…もし千歌お姉ちゃんが…大切な人が近くにいて…その秘めた光を、在りのままに…たくさんの人達の前で、輝かす事が出来たのなら…
一瞬。千歌お姉ちゃんの…とても眩しいそんな姿が、脳裏を過った私は……胸から湧き踊る、高揚感を…確かに感じていた。
346
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/24(日) 16:30:57 ID:pdLfhU8w
そうだ。たった一人の想いでも…それは、とても大きな力の源になるんだ。
それに…千歌お姉ちゃんを想っている人は…一人じゃない。あの場所には…たくさんいるんだ。
だから、その集まった想いは…果てしないまでの大きな力の源となって…千歌お姉ちゃんの輝きへと…繋がるんだ。
私は、改めて強く思った。
絶対に…千歌お姉ちゃんを音ノ木坂に迎えたい、と。
もう、綺麗事なんかいい。例え、自己満足と言われたっていい。
私は。私が。千歌お姉ちゃんを、音ノ木坂に連れて来るんだ。
もし迷ったり、断ろうとしたら…その手を引っ張ってでも…連れていくんだ。
今の私は、それ位の強引さでいいんだ。時には穂乃果ちゃんみたいな大胆さだって、必要なんだ。
それすら出来ない様じゃ……夢なんて…叶えられっこないんだ!
そう。今の私には、夢がある。
そして、この私の我侭は…その私の夢への、第一歩。
叶えてみせる。必ず。
347
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/24(日) 16:40:21 ID:pdLfhU8w
そして私も。千歌お姉ちゃんも。穂乃果お姉ちゃんも。みんなも。
もっともっと。今よりもっと。幸せにするんだ。
そう決意した私は…千歌お姉ちゃんと直接話し合うという、この大事な役割を…
どうか自分に任せて欲しいと。今のありったけの気持ちと共に、穂乃果お姉ちゃんに伝えた。
穂乃果お姉ちゃんは、一度静かに頷いた後…微笑みながら、私のお願いを受け入れてくれた。
穂乃果『私もね、その方がいいかなって思ってたの。決してそんなつもりはなくっても、
もし、私からだと…軽く聞こえてしまうかも知れないって、そう思ってたから。』
穂乃果『私から話しても、千歌ちゃんは受け入れてくれるかも知れない…でも……
このこと自体の重さは…私では、伝わりにくい。そんな気がしてたんだ。』
穂乃果『だからこそ…現実的な考え方が、しっかりできて…それを知って、大事な判断ができて。
それをわかった上で、自分の想いを伝えられる雪穂こそが…私は、ふさわしいと思うよ。』
348
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/24(日) 17:04:27 ID:pdLfhU8w
穂乃果『それにね、このすっごく素敵なアイディアを、思いついてくれたのは…
他の誰でもない、雪穂なんだもん♪………だからね。頼んだよ…雪穂!』
雪穂 『……穂乃果、お姉ちゃん……ありがとう…!』
こうして私は、また穂乃果お姉ちゃんに…勇気を貰った。
…本当は、穂乃果お姉ちゃんだって、自分で伝えたかったのを…強く感じていた。
それでも…私の方が適任だと思ってくれて、私を信じてくれて……私に、託してくれたんだ。
雪穂 『…本当にありがとう、穂乃果お姉ちゃん……私…絶対に、叶えてみせるからね…!』
穂乃果『うん…!雪穂、千歌ちゃんを……お願いねっ!』
うん…任されたよ。
私、絶対に…千歌お姉ちゃんに、受け入れて貰える様に…頑張るから。
だから、だから……見ててね、穂乃果お姉ちゃん…!
349
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/24(日) 17:21:37 ID:pdLfhU8w
これにて、九章は終わりとなります。
気が付けば、いよいよ残り一章というところまで何とか来る事が出来ました。
あと残り僅かとなりましたが、どうか最後まで見届けて頂けます様、宜しくお願いします
350
:
名無しさん@転載は禁止
:2019/03/26(火) 06:36:57 ID:i7oc/.dc
今一気見させていただきやした
支援してるので最後まで頑張って
351
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/27(水) 06:54:25 ID:lqHlZxEQ
今回から、最後の十章へと入らせて頂こうと思います。
都合により、恐らく何回かに分けての投稿となりますが、どうか宜しくお願いします。
支援メッセージを下さった方、本当にありがとうございます。最初から読んで貰えた様で凄く嬉しいです。
まだお付き合いして下さってる方々に、最後まで見届けて頂ける事を切に願いつつ。
もう残り僅かの間も、ラストスパートで頑張りたいと思います。
352
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/27(水) 07:02:36 ID:lqHlZxEQ
第十章(終章)【笑顔】
<高坂家 雪穂の部屋>
それから時間は過ぎて…
七月も終わりに入りかけた今。
遂に私は、千歌お姉ちゃんに……この事を話した。
予定よりも早くなってしまったが…どの道やる事は、同じなんだ。
雪穂 「私は…千歌お姉ちゃんに…音ノ木坂に…来て欲しい。」
千歌 「…私が…音ノ木坂、に…?」
雪穂 「うん……突然言われて…きっと、ビックリしてるよね…?」
千歌 「……う、うん……まあ…」
雪穂 「…勿論、すぐに答えが出せる話じゃないって事も、分かってる。」
千歌 「………」
353
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/27(水) 07:14:56 ID:lqHlZxEQ
雪穂 「でも……穂乃果お姉ちゃんも、ことりさんも…理事長も、亜里沙も、みんなも…」
千歌 「……え…?」
雪穂 「そして、誰よりも……私がそれを強く…望んでるんだ。」
千歌 「…雪穂…ちゃん。」
雪穂 「きっとね、手続きの事とか、今の学校の事とか、ご実家の事とか…
本当に、色々な事を…考えなくちゃいけなくなると思う…だけど…」
千歌 「………」
雪穂 「それが、とても大事だと分かった上で…千歌お姉ちゃんに…私は聞きたいんだ。」
千歌 「……私に…聞きたい…?」
雪穂 「千歌お姉ちゃんは…千歌お姉ちゃんが、どうしたいかを。」
千歌 「!………私、が……」
354
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/27(水) 07:24:26 ID:lqHlZxEQ
雪穂 「今の学校に、ずっといたいのか…それとも…音ノ木坂に来たいと、思ってくれるのか…」
千歌 「……それは…」
雪穂 「それだけで、いいんだ…それだけが、聞きたいんだ。」
千歌 「……雪穂、ちゃん…」
雪穂 「………なんてねっ!」
千歌 「……え?」
雪穂 「まあ、私もね?最初は今みたいな路線で行くつもりだったし、もし千歌お姉ちゃんが、
今の学校の方がいいって言ったら…残念だけど、諦めようかなーって…思ってたんだ。」
千歌 「…え?え?」
雪穂 「でも、やめたの。そして決めたんだ。もし千歌お姉ちゃんが、そう言っても…
私は力ずくでも、千歌お姉ちゃんを…絶対に音ノ木坂に、連れて行くんだって!」
千歌 「え?……えええーーっ!?」
355
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/27(水) 07:46:22 ID:lqHlZxEQ
雪穂 「もう、ぶっちゃけちゃうとね?厄介な学校関連の面倒な手続きの準備に、ご実家からのご理解と承諾でしょ?
あと試験勉強の為の助っ人の準備と、それ以外の事も、やれる範囲の事は全部。もう用意…出来てるんだよ?」
千歌 「……へ?…な…な、なな……なんだってーーーっ!!?」
雪穂 「だからね?後はさー、千歌お姉ちゃんさえ、首を縦に振ってくれたらー…」
千歌 「ちょっ…ちょちょっ、ちょっとぉっ!?」
雪穂 「万事解決!一件落着!めでたしめでたし!って訳だよ♪」
千歌 「ちょーっと待ってっ!?ななっ、なにそれ!?聞いてないよっ!?」
雪穂 「今言ったよ?(サラッ)」
千歌 「っ!?……だ、だから…そうじゃなくって…!!」
雪穂 「何か問題でも?」
千歌 「も、問題だらけだよっ!!」
356
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/27(水) 08:08:24 ID:lqHlZxEQ
雪穂 「どの辺りが?」
千歌 「そ、それは…!だから、その……わ…私の、気持ち、とか…!」
雪穂 「だから後はそれだけだって、さっき言ったよ?」
千歌 「っ!?……で、でも!…もしかしたら私が、断ったりすることだって…あ、あるかも、知れないんだよ…!?」
雪穂 「その時は、私が問答無用で連れてくって言ってるじゃん。」
千歌 「っっ!!?」
私の余りにも一方的な発言の数々に、ただ圧倒されて行く千歌お姉ちゃん。
だが、私はもう決めたのだ。逃がすつもりなんて全く無い。
それは…この私の我侭が、必ず千歌お姉ちゃんと私達の、更なる幸せの道と信じているからだ。
その為には、強引だろうと無理矢理だろうと、例え今の時点で嫌われてしまおうと。
今、私にやれる事なら何だってやってやる覚悟が…今の私には、もうあるんだ。
千歌 「…ど…どど、どうしちゃったの、雪穂ちゃん…?その…き、気持ちは、うれしいんだけど……」
357
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/27(水) 08:16:58 ID:lqHlZxEQ
雪穂 「私は本気だよ。」
千歌 「…っ!!」
雪穂 「私は絶対に、千歌お姉ちゃんに音ノ木坂に来て欲しい。それに…
その為になら、どんな努力だって手段だって、何一つ惜しまない。」
千歌 「……雪穂、ちゃん…」
雪穂 「…私が望んだ、信じた、選んだ…私の、この我侭が……絶対に…
今よりもっと素敵な、私達の道になると…誓って言えるからっ!」
千歌 「…っっ!!!」
千歌お姉ちゃんは…言葉を失う。
それ程までに私は…自分の想いを、千歌お姉ちゃんに容赦なく叩きつけた。
そして私は、こんな時のお約束の(ゆきほ)モードに切り替えて、先を続ける。
ちなみに、千歌お姉ちゃん呼びはそのままで。この辺に関しては、流石に大分慣れてきたみたいだ。
358
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/27(水) 08:23:08 ID:lqHlZxEQ
雪穂 「さて、言いたい事は一通り言ったので…千歌お姉ちゃんには、
気持ちの整理をする為の時間を、来月の頭まで与えましょう。」
千歌 「……………(ハッ!?)」
雪穂 「その時に、千歌お姉ちゃんの気持ちを改めて聞きます。一応。」
千歌 「気付いたら話が勝手に進んでるよっ!?それに一応ってっ!?」
雪穂 「ですから。それまでの間に、よーく考えてくださいね。一応。」
千歌 「ええっ!?そのまま進んじゃうの!?しかもまた一応…っ!?」
雪穂 「まあー私としては、良い返事を期待していますけど。もしも…」
千歌 「…も、もしも…!?」
雪穂 「期待している返事では、無かった場合は…(ゴゴゴゴ…)」
千歌 「…ば……場合…は…!?(ゴクッ…)」
359
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/27(水) 08:27:13 ID:lqHlZxEQ
雪穂 「『YES』と言ってくれるまで、ずっと説得し続けちゃいますから!」
千歌 「………へ…?」
雪穂 「食事の時も遊ぶときも寝る時も。一緒に居る間は、ずっとそうし続けますからね。
だから、千歌お姉ちゃん?その時は…覚悟しておいて、くださいね♪(パチッ☆)」
千歌 「………(ポカーーーーン)」
まるで、狐に包まれたみたいな顔の千歌お姉ちゃん。
でも。これで私の本心は…伝えたい事は…全部伝わったと思う。
千歌 「……あ…はは……あはは……あはははっ…!」
我に返った千歌お姉ちゃんが、何だか可笑しそうに笑い出した。
千歌 「今日の雪穂ちゃん…なんか、穂乃果お姉ちゃんみたいだぁ…あはは。」
360
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/27(水) 08:31:56 ID:lqHlZxEQ
雪穂 「…今回ばかりは、穂乃果お姉ちゃんを参考にさせてもらいましたので。」
千歌 「あはは、そうなんだ……すっごく強引なトコとか…もう、ソックリだったよ。」
そう言うと、少し眉を八の字気味にしていながらも…
千歌お姉ちゃんは、穏やかな雰囲気で柔らかく微笑んだ。
千歌 「いきなりだったから、すっごくビックリしちゃったけど……でも、なんか…嬉しかった、かも。」
雪穂 「……」
千歌 「普段はクールな雪穂ちゃんが、穂乃果お姉ちゃんのマネしてまで、あんなに強引になったのは…
そこまで私のこと、大好きって…一緒がいいって、想ってくれてるんだって…伝わってきたから。」
雪穂 「……///」
千歌 「あれ…?雪穂ちゃん、もしかして…テレてる?」
雪穂 「///…私の気持ちが、伝わったというのなら…ちゃんと、真剣に…考えてみて下さいねっ///」
361
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/27(水) 08:37:46 ID:lqHlZxEQ
千歌 「クスクス……うん、わかった。私なりに、頑張って…これからの事…いっぱい、考えてみるね。」
雪穂 「……はい。」
そして私は、千歌お姉ちゃんに。
次の「その時」まで、この話はしない事を約束して。
この場での、この話を終わらせたのだった。
…私にやれる事は…全部やれたと思う。
後は、その答えを聞く日を待つ事にしよう。
いざという時は、強引に説得するまでとは言ったものの。
それでも…やっぱり私は…千歌お姉ちゃんの気持ちが、本心から…
私と、一緒になってくれる事を……強く願わずには、いられなかった。
362
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/27(水) 08:39:43 ID:lqHlZxEQ
今回は、ここまでとなります。ありがとうございました。次回もどうぞ宜しくお願いします。
363
:
名無しさん@転載は禁止
:2019/03/27(水) 18:09:02 ID:aL166PEU
乙
364
:
名無しさん@転載は禁止
:2019/03/27(水) 18:10:55 ID:ZG.ffyOc
とても良いな
365
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/28(木) 11:38:40 ID:BmS4aA0Q
<高坂家>
あの約束の日から、時間は過ぎて。
今日は八月一日。
そう。千歌お姉ちゃんの誕生日だ。
誕生日パーティーは、私達の家で盛大に行われる事になった。
参加者は、主役の千歌お姉ちゃん、穂乃果お姉ちゃんと私、お父さんとお母さん。
そして、ことりさん、亜里沙、部の友達の四人に、ヒデコさん、フミコさん、ミカさん。
それから、部の先輩で元μ'sのメンバーの、海未さん、花陽さん、凜さん、真姫さん。
今日来てくれた人達は、関わった時間の違いはあれど、これまでに千歌お姉ちゃんと交流があって、
あの時にも千歌お姉ちゃんを助ける為に、穂乃果お姉ちゃんの呼びかけに応えて協力してくれた人達だ。
そして今日も、千歌お姉ちゃんの誕生日を祝福する為に…こうして、みんな集まってくれたのだ。
366
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/28(木) 11:52:10 ID:BmS4aA0Q
お祝いしてくれる人達が、こんなにも来てくれるとは思っていなかったのか、千歌お姉ちゃんは驚いていたけど、
まず最初に、あの時にお世話になった事へのお詫びとお礼を、改めてみんなに伝えて…感謝の涙で、いっぱいになっていた。
雪穂(千歌お姉ちゃん?気持ちは分かるけどね。でも、まだ泣いちゃダメだよ。パーティーは…これからなんだから!)
お父さんが用意してくれた、自慢のラインナップのお菓子達と、
お母さんが用意してくれた、たくさんの美味しそうな料理達を、前に。
元気で明るい乾杯の音頭と共に…パーティーは、幕を開けた。
みんなから千歌お姉ちゃんへの、HAPPY BIRTHDAY SONG♪
みんなから渡される、両腕でも抱えきれない程のプレゼントの山。
パーティーは時間と共に…更に、大いに盛り上がってゆく。
そんな賑やかで楽しいパーティーの主役である、千歌お姉ちゃんは…
何度も涙を浮かべながらも…本当に嬉しそうに、幸せそうに、ずっと笑っていた。
367
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/28(木) 12:03:57 ID:BmS4aA0Q
真姫「…明るくなったわよね、千歌。今までは、何だか無理してるように見えたけど…安心したわ。」
海未「そうですね…きっと今の姿が、千歌さんの……いいえ……千歌の…本来の姿なのだと思います。」
凛 「凛は、前の大人しい千歌ちゃんも好きだけど、今の千歌ちゃんはもっともっと大好きにゃー!」
花陽「クス。そうだね……千歌ちゃんの、あの嬉しそうな顔……まるで…お日様、みたいかも…」
千歌「…あー!おーい、海未ちゃーん、真姫ちゃーん!凛ちゃんと、花陽ちゃんもー!こっちで一緒に、コレやろうよーっ!」
凛 「おおーと、凛たち呼ばれてるよ!今、いっくにゃーっ!!」
花陽「あ、凛ちゃん待って!私も、行くから………フフ、本当に……太陽、みたいな人…」
千歌「あ、待ってたよ!凛ちゃん、花陽ちゃん!ほーらー、真姫ちゃんと海未ちゃんも、早く早くー!」
真姫「ヤレヤレ、仕方ないわね……なら、いいわ。この真姫ちゃんの実力、とくと見せてあげるわ!」
海未「フフ…穂乃果一人でも、大変だったのに……これからまた、色々と大変そうですね……今行きます…千歌…!」
368
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/28(木) 12:11:10 ID:BmS4aA0Q
元μ'sのメンバーで部の先輩でもある、三年生の海未さんと、二年生の花陽さん、凛さん、真姫さん。
今この場にいる人達の中では、千歌お姉ちゃんとの交流は、そんなに多くはなかったのだけれど…
そう。何も心配なんて要らなかった。だって…この素敵な輪の世界で、いつも繋がってくれる…とても大切な人達なのだから。
ヒデコ「フミコ!ミカ!ちかっちに、J・S・アタックを仕掛けるよっ!!」
フミコ「OK!やるんだね!」
ミカ 「了解!いっくよーー!!」
千歌 「ええーっ!?ちょっとちょっと、なにそれぇっ!?そんなのズルいよぉーーっ!!」
そして…いつも目立たない場所から、みんなを支えてくれている、ヒデコさん、フミコさん、ミカさんとも。
元々、あの穂乃果お姉ちゃんと長く友達をやっている人達だけあって、三人とも実に逞しくて頼もしい人達で。
私が思ってた通り、今日の千歌お姉ちゃんとすぐに仲良くなっていた。またも、輪は…繋がって、広がってゆく。
それにしても。今の時点で、こんなにも盛り上がっちゃって…今日の誕生祝いは、夜までずっと続く予定なのに。
この調子で、二日後の穂乃果お姉ちゃんの誕生日パーティーの時に、みんなパワーは残っているのだろうか。
…なんてね。みんななら、そんな心配は無用に違いない。だってパーティー♪終〜わらない〜♪…ってね☆
369
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/28(木) 12:20:18 ID:BmS4aA0Q
それでも…楽しい時間は、あっとゆう間に過ぎてゆき…
日も暮れて…月がハッキリと、その姿を見せ始めた頃。
「片付けはいいから、気をつけて行っておいで!」と言ってくれたお母さんと、
その横で、指を立てて頷いてくれたお父さんに、「ありがとう!」と、感謝の気持ちを大きな声で伝えて。
私達は家を出て、今日の主役である千歌お姉ちゃんを連れて…ある場所へ向かった。
千歌お姉ちゃん本人には、どこに行くかは内緒なので、不思議そうにキョトンとしていた。
でも仕方無い。だってこれは、千歌お姉ちゃんへの…サプライズなのだから。
そのサプライズの為に…千歌お姉ちゃんには、現地へ着く少し前から、目隠しをして貰う事にした。
ちょっとの間だけ辛抱して欲しいと、私はお願いをして…やや不安そうではあったけど了解してくれた。
そして…移動を初めて暫く経ってから…いよいよ、目指す場所が見えて来た。
千歌お姉ちゃんの両肩を、私は自分の両手でしっかりと支えながら、
お互いに転ばない様に、気を配りつつ…ゆっくりと目的の場所へと歩いて向かった。
370
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/28(木) 12:46:10 ID:BmS4aA0Q
…実は、目隠しをされている千歌お姉ちゃんは、まだ気付いていないけど…
今、千歌お姉ちゃんの側にいるのは…こうして横で身体を支えてる、私一人だけだ。
その私達二人は、目的地に着くまでの残り僅かな間も、これまで通り慎重に歩き続けた。
それから十数分後…私達二人は、ようやく目的の場所へと辿り着いた。
そして…今、目の前にある扉を、私が片方の手で開けると…ここから奥の位置、舞台の側には…理事長がいた。
ゆっくりとこちらを向いた理事長は…今日、これからの私達を優しく見守る様に…微笑んでくれた。
理事長『…急な講堂の使用許可…しかも夏休みの時間外で……本来、最低でも二週間前には申請が必要なのは…分かっているわね?』
雪穂 『…はい。本当に、すみません……でも…ご無理を承知で……どうか、どうか…お願いします…っ!』
理事長『…………ハア……もう………こうゆうところは、お姉ちゃん譲りなのかしらね………でも……』
雪穂 『………』
理事長『……もしかしたら…また、私が…見落としてただけなのかも、知れないわね……あの時みたいに。』
雪穂 『?……えっと…その………あの時と…言うのは……』
371
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/28(木) 12:59:58 ID:BmS4aA0Q
理事長『以前にね。μ'sの人達と学校で宿泊したいって、ことりが言ってきた事があったのよ。
その時も、私ったら…うっかり…ね。本当、嫌だわ……歳って、取りたくないものね。』
雪穂 『………それって……確か……』
…その時の話は、穂乃果お姉ちゃんやことりさんから聞いていたので…私も知っていた。
μ'sが全国大会で優勝を果たした、その前日。後に聞いた…9人の想いが、本当に一つになれた気がしたという、その大切な日。
そして、そこには…こうして影で支えてくれていた人の存在が、理事長の優しさがあった事を…私は思い出していた。
雪穂 『……っ………理事長……ありがとう、ございます…っ!』
理事長『フフッ。私も応援してるわ……しっかりね。』
雪穂 『……はいっ!!』
本当に…いつも理事長には……何から何まで、助けて貰ってばかりだった。
私は、舞台の側の理事長へ向かって…あの時と同じ様に、心からの感謝を込めて…もう一度、頭を深く下げた。
372
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/28(木) 13:39:27 ID:BmS4aA0Q
それから私は、周りを見渡して…もう準備はOK、という合図を確認すると。
まず千歌お姉ちゃんに、ここに着くまでに不安と不自由を与えてしまった事を謝り、
その後…軽く深呼吸を、一つしてから……大きな声で、こう言うのだった。
雪穂 「さあ、始まるよ…!これは…みんなから千歌お姉ちゃんへの……サプライズプレゼントだよっ!!」
それと同時に。
もう必要の無くなった目隠しを、千歌お姉ちゃんから…外した。
暗闇から開放されて。
少しずつ視界が戻って来たであろう、千歌お姉ちゃんの前では…
千歌 「……ん………………え…………え…っ……………あ…………あ…あっ………っ……う…っ……う、そ……!?」
今…自分が立っている場所よりも、少し高い位置から。
煌びやかな衣装と、照明のライトで…その身を眩いまでの光に包まれた…
今も「伝説」と謳われ続けている女神達が……優しく微笑んでいた。
373
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/28(木) 13:45:13 ID:BmS4aA0Q
今回は、ここで一旦終了です。また次回も、どうか宜しくお願いします。
コメントを下さった方々、とても励みになっています。本当にありがとうございます。
374
:
名無しさん@転載は禁止
:2019/03/30(土) 00:11:40 ID:NfIbgG32
とても良いです
あなたは最高です
375
:
◆bK3.D2B8eM
:2019/03/30(土) 09:01:58 ID:7fu6HE0s
私は……余りにも突飛な、このサプライズを思いついてから……悩みに悩んでいた。
もし実現すれば、きっと…ううん……絶対に、最高の贈り物になるという自信があった。
…だけど……もう「μ's」は……世に宣言している通り…その活動を…既に終了しているのだ。
元μ'sの先輩達は、現在ではソロやユニットだったり、時に一年生の部員の子達と一緒に活動をしている事もある。
現実的に考えるなら、そういった方面からみんなに協力をお願いするのが、本来なら最良の選択と言えるのかも知れない。
あるいは、現アイドル研究部の全員でステージに立つ、という形ならば…それはきっと、大きな期待が持てるに違いないだろう。
それでも…やっぱり私は…「μ's」に拘りたかった。どうしても「μ's」である事に、拘りたかったのだ。
千歌お姉ちゃんが、その輝きに惹かれて、焦がれた、大好きな「μ's」に。
亜里沙といくら熱く語り合っても足りない位までに、今でも夢中で仕方ない…本当に大好きな「μ's」に。
だけど…これは私一人の我侭だ。それに、ただでさえ私は…今も自分の我侭を、みんなに聞いて貰っていると言うのに。
それを頭では理解していながらも、私は……もしかしたら、という身勝手な希望と共に……結局、諦める事が…出来なかった。
そして遂に、私は……断られるのも、咎められるのも、覚悟の上で……元μ'sメンバーの先輩達に……
止まる事のない、自責の念からの涙を…堪えながら……今の私の想い、この我侭な願いを……正直に伝えた。
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◆bK3.D2B8eM
:2019/03/30(土) 09:38:10 ID:7fu6HE0s
ことり『うん!雪穂ちゃんのアイディア、とっても素敵だよ♪千歌ちゃん、絶対に喜んでくれると思うな♪』
海未 『それにしても、これが貴女からの案だなんて…正直、驚きました。やっぱり、姉妹なんですね…フフ。』
真姫 『まあ、いいんじゃない?私も賛成するわ。それにしても、なかなか粋なこと思いついたわね。』
凜 『凜もさんせーい!すっごく面白そう!よーし、凜も千歌ちゃんに、いいトコ見せるにゃー!』
花陽 『な、なんかこうゆうのって…ドキドキ、するよね…!でも、私も…何だか、楽しみかも…!』
穂乃果『……すごい……うん!すごいよ、雪穂っ!よーし、私も!穂乃果も!全力で頑張るからねっ!!』
雪穂 『……穂乃果、お姉ちゃん……ことりさん……海未さん……』
もう…私は……ずっと、堪えていた涙が……止まらなかった。
雪穂 『……真姫さん……凜さん……花陽さん……っ…ありがとう……ござい…ます……っ…』
だから…せめて……例え、ほんの少しでも……今の、私の気持ちが…伝わってくれる様に……
精一杯に、深く頭を下げて……震えが止まらない声ながらも…感謝の言葉を、懸命に伝えた。
そんな私の頭を、穂乃果お姉ちゃんが…笑顔で優しく、撫でてくれた。
私が顔を上げると…先輩のみんなも…笑顔だった。
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