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穂乃果「千歌ちゃん」千歌「穂乃果お姉ちゃん」雪穂(………)

1 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/13(水) 06:17:46 ID:h4dW1d8.
・雪穂視点(全編)
・穂乃果と千歌は同学年の設定
・他オリジナル改変設定有り
・穂乃果ハーレム要素有り
・キャラ崩壊要素多少有り
・全体的に地の文比率高め
・安心と信頼のご都合主義展開
・全十章(予定)
※SS初挑戦&初投稿です(ネタで原型の一部となる短文を書いた事はあります)
※以前別所で見かけたネタコメをきっかけに妄想を膨らませたものです
※多くのSS作品の影響を受けまくっているためネタ被りが色々あると思います

以上、OKの人はどうぞ宜しくお願いします

189 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/17(日) 13:59:56 ID:JY3zduLM
雪穂 「そうじゃないと…(私)が、やってきた事を…全部、否定する事になっちゃうって…思ったから…」

 
雪穂 「だから、思い込もうとしてたんだ…この胸の痛みは、私達の、姉妹の場所を…」
   
雪穂 「横取りしようとした…千歌さんのせいなんだって…!」

 
雪穂 「そうやって自分に、無理矢理…言い聞かせていたから…」


雪穂 「だから…千歌さんが私に歩み寄ってくれても、応えられなくて、

    そして冷たくして…それが、すごく辛くて…また胸が…痛かった…」


雪穂 「自分が…千歌さんに、寂しい思いをさせてる事に…胸が、苦しかった…」

190 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/17(日) 14:04:40 ID:JY3zduLM
雪穂 「でも、お姉ちゃんが言ってくれた…!」

雪穂 「私が、素直になっても…」

雪穂 「穂乃果お姉ちゃんとの絆は、いつまでも変わらないって…!」


雪穂 「そして、私に気付かせてくれた…私の、本当の気持ちを…!」 

雪穂 「だから…だから私は…それを信じたい!」

雪穂 「そして今度こそ、自分の気持ちに正直になりたい!」


雪穂 「だって…だって、私!」

雪穂 「もう一人の……お姉ちゃんが、出来て…嬉しいんだって…そう、思ってる位に…!」

雪穂 「千歌さんが……ううん……千歌、お姉ちゃんが…!」
 

雪穂 「本当は………大好きなんだっっ!!!」

191 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/17(日) 14:09:54 ID:JY3zduLM
気が付くと、私は…

もう一度…お姉ちゃんに強く…

ギュウッと、抱きしめられていた。


…流石にちょっと苦しいよ、お姉ちゃん…
 

穂乃果「……良かったぁ…」

雪穂 「お姉ちゃん…」


穂乃果「やっと…言えたね、ゆきほ。」

雪穂 「…うん。」


穂乃果「やっと…会えたね……雪穂…」

雪穂 「うん……いっぱい、時間かかっちゃったけど、ね……アハハ…」

192 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/17(日) 14:12:50 ID:JY3zduLM
穂乃果「ホントに、よく頑張ったよ…雪穂…」
 
雪穂 「…うん、まあ……お姉ちゃんの、おかげだけどね。」


穂乃果「ううん、そんなことないよ…雪穂が、頑張ったからだよ…」

雪穂 「まあ、その…なんて言うかさ…」


穂乃果「…?どうしたの、雪穂?」

雪穂 「……ありがとうね。」
 

穂乃果「うん…うん…!」


雪穂 (…本当に…ありがとう……穂乃果、お姉ちゃん…)

193 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/17(日) 14:21:28 ID:JY3zduLM
≪雪穂 〜集い〜≫



お姉ちゃんの、その優しい温もりに抱かれながら…

私は、あの懐かしい響きで呼ばれていた頃を…今は鮮明に思い出していた。


それは、お姉ちゃんによく甘えていて…素直に大好きと言っていた頃の〔私〕…

そして…(私)が自分自身の心に扉を創り、その向こうに堅く閉ざしていた〔私〕。


「お姉ちゃんを守るために強くなる」

そう誓って、(私)は…この道を信じて、ずっと進んできた。


……それなのに…


お姉ちゃんに甘えない様にという意識は、いつしか二人の距離を開いてゆき…

今度は自分が甘える事で、その距離を縮めようとしてくれていたお姉ちゃんにも、

(私)は…いつも素っ気ない態度で返す事で…ずっと距離を…置いてしまっていた。

194 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/17(日) 14:30:44 ID:JY3zduLM
そんな(私)が…気付いた時には…

『姉妹』という、カタチに……ただ、すがる様になっていた。

この悲劇を通り越した喜劇ともいうべき姿が、(私)の選んだ道だった。

 
ただ、この選んだ道が「私」に取って、全て無駄だったとは思ってはいない。

大切なものを間違えてしまった事は確かだけど、実年齢の割には早い段階で、

冷静さや観察力や判断力等、それなりに多くの特質を培ってくることが出来たからだ。


これらの特質は上手く生かす事が出来るなら、今後も充分に大きな利点となる筈だ。

そう、今でも信じている。そして、何より…この(私)だからこそ、

これまで何度も、お姉ちゃんを守れた事を…誇りにだって思っている。

195 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/17(日) 14:36:43 ID:JY3zduLM
それでも…先天的な人格面を、強引に閉じ込め続けて、

後天的に創り上げられていった、この(私)は…

当然の如く、「私」自身の全てではない故に、不安定だった。


その冷静さが、落ち着きぶりが、現実的過ぎるこの思考が…

一部の大人達からは、歳不相応と…時には不気味と言われた事もあった。

感情を自然に表すことが難しかったり、稀に反動で〔私〕が強く出てくる事もあった。
  

ただ世の中には、感情が不安定な事に悩まされる人も多い。

私の場合、日常生活を送る点に付いては大きな問題がなかったので、

医療関係に深く関わるまでにはいかずに済んでいたのは、

まだ幸いではあったのかも知れない。

  
そんな中…扉の向こうの、閉じ込められてしまった〔私〕は…

ずっと前から…いつか、扉の鍵が開く日を…待っていた。

196 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/17(日) 14:42:21 ID:JY3zduLM
こんな私の事情は…お姉ちゃんに取って、

恐らく…非常に、難しい問題だったに違いない。


何故なら、私がこれを解決する為には…

お姉ちゃんのチカラと、更に…別のチカラが無ければ、

多分…叶わない事だったのだから。


そう…(私)「ゆきほ」と〔私〕「ゆっきー」が向き合う為には、

あるきっかけが重要だったと…今だからこそ、私は確信出来た。


きっと、それは…

「お姉ちゃんに『近い』存在で、お姉ちゃんとは別の『ナニカ』を持つ存在。」


そして、それは…

「ゆきほ」に閉じ込められていた「ゆっきー」が、再び勇気を出して惹かれる程の人。

「ゆっきー」を閉じ込めていた「ゆきほ」が、その想いを受け入れる事が出来る程の人。

197 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/17(日) 14:49:33 ID:JY3zduLM
今もこうして、私を抱きしめてくれている、目の前の穂乃果お姉ちゃん…

そして…私が、もう一人のお姉ちゃんと思える位に、大好きになれる人…

そんな人が、恐らく私には…必要だったのだろう。


穂乃果お姉ちゃんと近しい人柄、年齢、波長等の要素を幾つも持ちながらも、

穂乃果お姉ちゃんとは、また別の…きっとそれは…心に眩しい程の、強い『輝き』を宿してる人。

そんな人が、私達の前に…現れる事が。


でも、それは…本来なら、叶う筈もない…

例えるなら、奇跡にも近かったはず。

   
その「奇跡」を、私達の元へ運んでくれたのが…

自称「普通」怪獣ちかちーこと、高海千歌さんだった。

198 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/17(日) 14:58:15 ID:JY3zduLM
それに、どんなに「ゆきほ」が扉を強く閉めていたつもりでも、

その扉の鍵は…やはり、完全ではなかったのだ。


「ゆきほ」は、「心身共に幼い少女」から無理をして創られた要素が強かった為、

不安定さが目立った上に…そして、何より「ゆきほ」には…迷いがあったから。


「ゆきほ」が「ゆっきー」を閉じた、扉の鍵は…

そう…実際の鍵で例えるなら、ドアをチェーンで繋ぐ鍵だった。

完全に閉じる事の無い、僅かに扉が開く鍵だったのだ。

 
その僅かに開いた扉の隙間から、「ゆっきー」は…

ずっと千歌さんを見ていて…その笑顔に惹かれていって…

そして…気が付くと、本当のお姉ちゃんみたいに…好きになっていた。

199 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/17(日) 15:03:36 ID:JY3zduLM
千歌さんが来てからの、そんな私の変化に…お姉ちゃんは気付いていてくれた。

私の先天性人格である「ゆっきー」が…千歌さんを、大好きと思ってる事も…

私の後天性人格である「ゆきほ」が…いつか、それを受け入れるであろう事も…


今日、遂に…扉の鍵が完全に解けたこの日に、お姉ちゃんは…

その扉をゆっくりと開いて、その奥にいた〔私〕「ゆっきー」に、

本当に、久しぶりに…会いに来てくれたのだ。 


そして(私)「ゆきほ」の前に、〔私〕「ゆっきー」を連れて来て…

ずっとずっと…離れ離れだった、私達を…こうして向き合わせてくれた。


お姉ちゃんは…まず「ゆっきー」に問いかけた後、「ゆきほ」に問いかけた。

「私達」が、千歌さんの事を…どう思っているのかを。


お姉ちゃんは「私達」がどう答えるのかなんて、もう分かっていた。

200 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/17(日) 15:07:50 ID:JY3zduLM
だって、お姉ちゃんは…
    
〔私〕が、扉の向こうで今も元気で笑っていると、ずっと信じていてくれたから。

(私)が、自ら扉の鍵を開けようとする日を、ずっとずっと待っていてくれたから。


だから…「私達」が千歌さんを想っている事を、お姉ちゃんが見抜くなんて…訳の無い事だったのだ。

     
今日という日をずっと待っていてくれた、私が大好きなお姉ちゃん。

そして…私が大好きになった、もう一人のお姉ちゃん、千歌さん。


千歌さん本人は…きっとそんな事、知る由も無いんだろうけど。

それでも、私が大好きなお姉ちゃんと一緒に…「私」を救ってくれた。


そう。

もう一人の大切なお姉ちゃん…自称・普通怪獣ちかちーさんは…

もう一人の大切な恩人でもある…スーパー怪獣ちかちーさんだったんだ。

201 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/17(日) 15:10:43 ID:JY3zduLM
穂乃果お姉ちゃんと千歌お姉ちゃん。

私が大好きな、二人のお姉ちゃんのおかげで…


(私)ゆきほと〔私〕ゆっきーは、長い時を越えて、遂に邂逅を果たし…

そして、手を繋いで……やっと「私」に…なれたんだ。


そう。これからの「私」である…高坂雪穂に。


ありがとう。

本当に、ありがとう。

私の大好きな、二人のお姉ちゃん。


大好き、だよ。

202 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/17(日) 15:16:49 ID:JY3zduLM
<高坂家 雪穂の部屋>


雪穂 「…あのね、お姉ちゃん。」

穂乃果「…ん?どうしたの?」

    
雪穂 「私、お姉ちゃんの事…大好きだよ。」

穂乃果「うん。私もだよ。」


雪穂 「えへへ……だからね。ずっと、信じてたんだ…」


雪穂 「私達の、この姉妹の想いだけは…これからも、ずっとずっと…私達二人だけのものなんだ…って。」

穂乃果「……」
 

雪穂 「だからね…怖かったんだ…」


雪穂 「千歌さんがウチに来て、すぐにお姉ちゃんが千歌さんを大好きになって…」

雪穂 「そんなお姉ちゃんを、千歌さんもすぐに大好きになって…」

203 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/17(日) 15:20:45 ID:JY3zduLM
雪穂 「そして私も、最初の頃は、仲のいい二人に…千歌さんに対して、ちょっと妬いてたけど…」

雪穂 「素直になれない私にも、ずっとくじけないで…お姉ちゃんと同じ様に接してきてくれた千歌さんを…」

雪穂 「本当の家族みたいに、本当の、お姉ちゃんのように…私も…どんどん好きに…なっていったんだ…」


雪穂 「…だからなんだ。そう想う様になっていく、自分の気持ちが…何だかとっても…怖かった…」


雪穂 「私達姉妹だけだと思っていた場所に、自然に溶け込んできた千歌さんが…」

雪穂 「それを否定したかった筈の、私自身が…その千歌さんに、惹かれていく事が…」


穂乃果「……」


お姉ちゃんは、静かに黙ったまま…

また私の頭を、優しくゆっくりと撫でてくれる。

204 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/17(日) 15:24:36 ID:JY3zduLM
雪穂 「お姉ちゃんのおかげで、やっと私は素直になれた…」

雪穂 「やっと千歌さんのことが、大好きだって…ハッキリ言えた…」


雪穂 「でもね…本当は…まだ、ちょっと怖いんだ…」

雪穂 「どうしてだろうね…まだ…ちょっと…怖い…」


雪穂 「お姉ちゃんが言ってくれた言葉を…私、信じてるのに、信じてる筈なのに…」


雪穂 「分からないよ…やっと、やっと素直になれたのに……どうして…!」


穂乃果「雪穂。」


お姉ちゃんは、私の頭を撫でていた手を止めて、

私の両肩に手を置きながら…じっと私の目を見つめる。

   
この全てを包み込む様な、深く蒼い瞳に…

昔から、私は……抗えないんだ…

205 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/17(日) 15:29:33 ID:JY3zduLM
穂乃果「雪穂は、私のことが好き?」

雪穂 「……うん。大好き。」


穂乃果「お父さんのことは?」      
   
雪穂 「…大好き。」 
    

穂乃果「なら、お母さんは?」

雪穂 「…大好き。」


穂乃果「亜里沙ちゃんはどうかな?」

雪穂 「大好き。」

 
穂乃果「雪穂のクラスや昔からのお友達は?」

雪穂 「大好き…」


穂乃果「部のみんなのことは?」

雪穂 「大好き…」

206 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/17(日) 15:32:34 ID:JY3zduLM
穂乃果「μ'sは?」

雪穂 「大好き…」
 

穂乃果「千歌ちゃんのことは?」

雪穂 「大好き。」


穂乃果「じゃあ、それでいいんじゃないかな?」
  
雪穂 「……え…?」



お姉ちゃんはニッコリ微笑むと。

私の頭の上に、ポンッと手を置いた。

  
…なんだか、ちょっと…

子供扱いされてる気分で、照れくさい…

…まあ…子供なんだけど…

207 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/17(日) 15:38:19 ID:JY3zduLM
穂乃果「雪穂は、千歌ちゃんのことが大好きで、穂乃果のことも大好き。」 

穂乃果「側に居る家族も友達も仲間も先輩も、みーんなみーんな大好き!」


穂乃果「…それだけで、いいんじゃないかな?」

穂乃果「ううん…」


穂乃果「それだけで、いいんだよ。」 


お姉ちゃんは、とても優しく…眩しく…

そして強い力を、二つの青い光に宿しながら、

穏やかに…それでいて逞しく、そう言い切った。
 

雪穂 「………」

 
穂乃果「私ね。大好きって気持ちは、たくさんあっていいと思うんだ。」

208 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/17(日) 15:46:27 ID:JY3zduLM
穂乃果「確かに、年齢とか、一緒に居られる時間とか、それぞれの性格や立場とか、色々なことで…」

穂乃果「大好きの…大きさや、色や、形や、強さは…全く変わってくるのかも知れない…」


穂乃果「だけどね…?」

穂乃果「人が人を大好きになるって、世界中のどんなことよりも、きっとステキなことだって…思うんだ、私。」


雪穂 「お姉ちゃん…」
 
 
穂乃果「誰かが誰かを大好きになって…そして、その誰かを、

    別の誰かが大好きになって…それが繰り返されていって…」


穂乃果「時にはケンカしちゃったり、ヤキモチ妬いたりすることも、きっとあるけれど…」
 

穂乃果「それでもね?大好きって気持ちは、絶対になくなったりしないの。

    今までだって、これからだって。ずーっと、ずーっと、絶対にね。」

209 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/17(日) 15:52:08 ID:JY3zduLM
穂乃果「だから、今…」


穂乃果「私たちは、ここにいるんだって思うんだ。」


雪穂 「……!」


そう、これだ。


穂乃果「数え切れないくらいの、たくさんの大好きって気持ちがあるから…」


これなんだ。


穂乃果「私たちは、きっと夢を叶えることができるんだよ。」


  
これが、お姉ちゃんからの答えなんだ。

210 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/17(日) 15:57:53 ID:JY3zduLM
例えばの話。


Aさんが、Bさんの事を大好きになって。
  
Aさんを大好きになったBさんを、Cさんが大好きになって。
 
Bさんを大好きになったCさんを、Aさんが…


もし、大好きになれたなら、それはきっと…とても尊いもの。

だって、ケンカやヤキモチになっても、おかしくはないのだから。


でも…もし、大好きという想いが、そこに生まれたのなら。

それは必ず、もっと多くの大好きに繋がってゆく、

すごく綺麗な…虹の架け橋になるから。

     
そうだよね。もし、そんな人になれるのなら…

大好きの輪は、世界中に広がってゆくんだろうなあ。

そして…それは、たくさんの幸せへと…繋がってゆくんだろう。

211 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/17(日) 16:03:43 ID:JY3zduLM
だから…もし私が、いつか…

そんな素敵な人になれたなら……ううん、なりたいんだ。


今なら、今の私なら…素直に、そう思えるんだ…
 
     
雪穂 (…)

雪穂 (……)
  
雪穂 (………ん?)


雪穂 (ちょっと待って…)
  
雪穂 (何かが、引っかかる…)


雪穂 (…)

雪穂 (……)

雪穂 (………アレ?)

212 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/17(日) 16:08:18 ID:JY3zduLM
雪穂 (あ。)
     
雪穂 (そうかぁー。)

雪穂 (なるほど、なるほど〜。)


雪穂 (…)

雪穂 (……)

雪穂 (………じゃなくてさ!)

 
雪穂 (このAさんって…お姉ちゃんの事じゃんっ!!)
      
雪穂 (ってゆうか、今頃なに気付いてんの私っ!?)

雪穂 (まんまお姉ちゃんでしょ、コレ…!)


雪穂 (…もっと早く気付こうよ…私…!)


雪穂 (……ハア〜…)

雪穂 (……ああ〜…もう。)

213 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/17(日) 16:12:27 ID:JY3zduLM
こんな到ってシンプルな答えに、すぐ気付けなかった自分。

我ながら実に情けなくて、流石に凹んでしまいそうだ。


冷静な()クール()とか思われちゃうよ、こんなんじゃ…

…まあ、それは別にいいとして…



だから、お姉ちゃんの周りには…

いつも、あんなにも人がいっぱい集まるんだね。

  
お姉ちゃんの溢れんばかりの大好きが、

たくさんの大好きを、いっぱい引き寄せるから。

 
そして…年齢も、性別も、立場も、きっと会った事のない人にだって。

お姉ちゃんは、大好きで…通じ合うんだ。

  
それが、私の大好きなお姉ちゃん…高坂穂乃果という人なんだ。

214 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/17(日) 16:18:41 ID:JY3zduLM
我ながら、情けなくなったけど…
   
本当に長い間、気付けなかったけど…

今になって、やっと気付く事が出来たけど…


これだから、お姉ちゃんは…お姉ちゃんなんだ。 

ホントにもう、参っちゃうよ…こんなの……あはは。

  
…やっぱり、お姉ちゃんは…すごいなあ。



穂乃果「ね、雪穂。」

雪穂 「…うん。」
 

穂乃果「もっともっと、私たちで、大好きをいっぱいにして…」

雪穂 「…うん!」
   

穂乃果「もっともっと、ステキな場所へ…一緒に行こう!」

雪穂 「…うん!お姉ちゃん…!」

215 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/17(日) 16:25:40 ID:JY3zduLM
今回は、ここまでとなります。

続けて読んで下さっている方、ありがとうございます。
感想メッセージを下さった方、おかげ様で本当に頑張れています。ありがとうございます。

この話を書いている本人としましては、次の章を終えてからが、いよいよ本番と思っています。
どうかこのまま最後までお付き合い頂ければ、すごく嬉しいです。

216 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 08:46:33 ID:QCJwzo/w
第七章 【一緒】



<高坂家 雪穂の部屋>


雪穂 (…………ん……あれ…?)


目が覚めた時は、もう日が傾き始めた頃だった。

昨日の夜から夕方にかけて、私はその間ずっと眠っていたらしい。


…もう少し、こうしていたい気もしたが、流石にそうゆう訳にもいかない。
        

私はゆっくりと起き上がり、鏡を立ててある机の前に移動する。

そして、鏡に映った自分の顔を…じっと見つめる。


暫くの間そうしている内に、眠気も完全に冷めてきた様だ。

鏡には見慣れた自分の顔が、今も私を見つめている。

217 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 08:49:51 ID:QCJwzo/w
雪穂 (………うん。大丈夫。)


意識も、記憶も、ハッキリしている。

アタマは既に活動を始めているし、気分も落ち着いてる。

 
何よりも、今。

この胸に宿っている確かな想いこそが、

私、高坂雪穂は大丈夫である事の証なんだ。

 
丁度その時、扉からノックの音が聞こえた。

 
穂乃果「雪穂ー。もう起きてるー?」
 

雪穂 「お姉ちゃん?開けても大丈夫だよ。」
 

そして、立ち話もなんなので、そのまま部屋まで招き入れる。

218 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 08:52:41 ID:QCJwzo/w
最近では、これ位の時間に帰っているのは珍しかったので、

その事を聞いてみると、生徒会の仕事とかは一応あったみたいだ。


でも、頼れるお姉ちゃんの友達三人組が助っ人に来てくれたらしく、
 
そのおかげで、かなり早いスピードで今日の分は片付いたそうだ。


…それにしても、タイミングが良すぎるというか。本当、謎が多き人達だ。

とりあえず、そのおかげでお姉ちゃんも早く帰って来てくれたので、

今日のところは素直に感謝しておくことにしよう、うんうん。

  
穂乃果「身体とか気分はどう?」

雪穂 「うん、大丈夫。どっちも問題ないよ。」


穂乃果「そっか。良かった!」 

雪穂 「うん…ありがとう。」

219 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 08:56:32 ID:QCJwzo/w
穂乃果「それでね、お話したいことがあるんだけど…今でも、大丈夫かな?」

雪穂 「いいよ。それに、私もお姉ちゃんに聞きたい事があったから。」


穂乃果「わかった。それなら、先に私の方から話してもいいかな?

    多分ね、雪穂が聞きたかった事の返事にもなると思うんだ。」


雪穂 「そうなんだ。じゃあ、まずお姉ちゃんの方から宜しくね。」


穂乃果「うん。あのね……」
 
   
そして私は、お姉ちゃんの話から、昨日あった出来事を知ってゆく。

     
まずは、昨日の夜…我が家で起きていた、小さな違和感について。

220 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 09:02:07 ID:QCJwzo/w
あの後、私がお姉ちゃんの温かさに包まれて、安心して眠ってしまうまでの間。

私は結局、千歌さん、お父さん、お母さんの三人が、帰って来るのを確認していない。

そして、普段は帰りが遅いお姉ちゃんだけが、少し早めに帰ってきた事。


実は、これらは全て…お姉ちゃんの仕業だったというのだ。

      
驚いた私は、幾つか疑問に感じた点を、お姉ちゃんに尋ねる。

お姉ちゃんがそうした理由、その経緯、その時…三人はどうしていたのか。


お姉ちゃんは、何か思うところがある様で…まず初めに、その始まりから語り出した。  


穂乃果「まだ学校にいた時に、千歌ちゃんから電話があったの。

   『私、雪穂ちゃんを傷付けちゃった…ごめんなさい』って。」


穂乃果「千歌ちゃん、泣くのを必死で堪えながら…頑張って事情を話してくれた。」


穂乃果「そしてね。その時のことを、少しずつ話してる内に………」

221 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 09:08:29 ID:QCJwzo/w
千歌 『…あ……そっ…か……私……雪穂ちゃんが…ずっと、ずっと…

    大切にしてた、ものを…取ろうと…しちゃって…たん、だ……』


千歌 『雪穂ちゃんが…ずっと…昔から、大好きな…お姉ちゃんを……』


千歌 『ずっと、ずっと…大事にしてた…大好きな人の…妹っていう、

    大切な…本当に、とても…大切な…場所を……それなの、に…』


千歌 『後から来た私が…そんな事、全然、考えもせずに…浮かれて…

    穂乃果、お姉ちゃんの…優しさに…溺れて……甘え続けて……』


千歌 『お姉ちゃんとの、時間を……雪穂ちゃんとの時間を…二人の…

    時間を…私が…奪ってることに……気付いても、いなくて……』


千歌 『………なんて…なんて、ひどいヤツ…なんだろう……私は……』


千歌 『……私…こんな…ひどいヤツ…だったのに…雪穂ちゃんは……

    私を…責めたこと…なんて……一度だって……なかった…っ…』

222 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 09:13:55 ID:QCJwzo/w
千歌 『…ホントは、私のせいで……ずっと、辛かった…はずなのに…』


千歌 『それなのに…私は…そんな大事なことに…気付きもしないで…』


千歌 『…雪穂ちゃんの、あの時の気持ちを…考えようともしないで…』


千歌 『…お姉ちゃんって、呼んでなんて…無神経なこと、言って……』


千歌 『雪穂ちゃんの想いを…土足で…私は…踏みにじってたんだ…!』


千歌 『…は、はは…私…バカだ…バカだよ……本当に、バカチカだ…』


千歌 『…雪穂ちゃん…ごめんね…傷付けてしまって…ごめんなさい…』


千歌 『こんなバカで…バカチカで…本当に…ごめんなさ…い……っ…』



穂乃果「……それからね……少し、経ってから…」

223 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 09:20:45 ID:QCJwzo/w
穂乃果『………千歌ちゃん?………………………………………千歌、ちゃん…?』


   『……………………………………………………………………………………』


千歌 『……………………………………………………………ごめんなさい………』


   『……………………………………………………………………………………』


千歌 『…………雪穂ちゃんを…………大切な………とても大切な………………』


   『……………………………………………………………………………………』


千歌 『………………………………………あなたの……………妹…………を……』


千歌 『…………こんな………私…なんかが…………バカ…チカ……が…………』


千歌 『…………傷つけて…………しまって…………………ごめんなさい………』


千歌 『……………ごめんなさい……………本当に……ごめんなさい……………』

224 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 09:30:28 ID:QCJwzo/w
千歌 『………………………ごめん…………なさい…………………………………』


   『……………………………………………………………………………………』


   『……………………………………………………………………………………』


   『……………………………………………………………………………………』


千歌 『……………………………………………………………………ごめんね……』


   『……………………………………………………………………………………』


   『……………………………………………………………………………………』


   『……………………………………………………………………………………』


千歌 『……………………………………………………………………穂乃果ちゃん』


穂乃果『…千歌ちゃん!(プツン……………ツーーッ…ツーーッ…ツーーッ…)』

225 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 09:38:02 ID:QCJwzo/w
雪穂 「………っ……っ… 」


穂乃果「……そして、千歌ちゃんからの電話は…切れちゃったんだ。」

雪穂 「………っ……うっ……うっ…… 」

 
違う。違うの。


千歌さん。ううん、千歌お姉ちゃん。

本当はね。私も…二人と一緒の場所に居たかったんだよ。


穂乃果お姉ちゃんも、千歌お姉ちゃんも、

いつも、私に優しくしてくれていた。


だからね。そんな二人が、一緒に遊んでたのなら…

私は、お姉ちゃん達が大好きなんだから。


私が、その場所に行けばよかったんだよ。

226 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 09:50:08 ID:QCJwzo/w
雪穂 「………っっ(ズキンズキンズキン)」


胸が痛む。今までで、一番激しく。


でも…大丈夫。私は平気だ。

だって、もう私は。

この痛みの理由を、意味を…知ってるから。

   
想う人への愛しさから、その強さから。

想う人からの、貴き優しさから。

この痛みは、くるものだと。


もう、知ってるから。


だから私は…もう平気なんだ。       

      
穂乃果「…雪穂。」

雪穂 「……続けて、お姉ちゃん。」

227 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 09:57:05 ID:QCJwzo/w
穂乃果「……」

雪穂 「……お願い。」 


穂乃果「…うん。わかった。」

雪穂 「…ありがと。」

 
早く会いたい。千歌さんに。

早く謝りたい。千歌さんに。

早く伝えたい。千歌お姉ちゃんに。


この想いを。

    
でも…今は…まだ、その時じゃない。

     
穂乃果「…そして暫くしてから、ことりちゃんから連絡があったんだ。」

雪穂 「え…?」


ここで意外な名前が出てきた事に、私は少し驚いた。

228 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 10:10:26 ID:QCJwzo/w
でも今は話の腰を折ってる場合じゃないと、すぐに続きへと耳を傾ける。

それを見てお姉ちゃんは、そこに至るまでの詳しい事情を説明してくれた。

 
電話が切られて危機感を感じたお姉ちゃんの、その後の行動は、

理詰めタイプの私から見ても、迅速かつ適切なものだった。


お姉ちゃんは千歌さんを探しにいく事を決め、まずは高坂家に連絡をして、
      
電話を取ったお母さんに、私がもう家に帰っているかを確認した。

それは、千歌さんが傷付けたと言っていた私の安否を確認する為だった。


丁度その頃の私は、まだ自室に篭もっていた時間帯だったけど、

私が帰宅してすぐに二階に上がってゆく姿を見ていたお母さんは、

私の靴も確認して、私が家に帰って来ている事を、お姉ちゃんに伝えた。


それを確認したお姉ちゃんは、すぐに千歌さんと面識のある人達に、

もし千歌さんを見かけたら、自分に連絡をして欲しいと一斉に伝えた。

状況によっては、力になってあげて欲しいとも。

229 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 10:23:53 ID:QCJwzo/w
すると…すぐに、メッセージを見た頼もしい友達三人組がやってきて、

こっちは任せて!と、当日期限の大事な生徒会の仕事を引き受けてくれたそうだ。

…きっと今日は、私の件の為に手伝ってくれたのだろう。今度、私からもお礼をしておこう。


そしてお姉ちゃんは、千歌さんが行きそうな場所を考えながら、

学校をすぐに出て、千歌さんを探しに外へ向かう。


そして暫くすると、買出しの用事の為に街まで出ていたことりさんが、

お姉ちゃんのメッセージを見てから、千歌さんを探してくれていて…

雨でずぶ濡れになって、一人でフラフラと歩いていた千歌さんを…発見した。


ことりさんは、千歌さんを連れて…一度、自宅の南家へ移動する事にした。
 
すぐにお姉ちゃんへと連絡もしてくれたおかげで、まずは事無きを得たのだ。


穂乃果「それでことりちゃんに、その時の千歌ちゃんの様子を聞いてみたんだ。

    正直…意識もハッキリしてなくて…かなり、危うい状態だった…って。」

230 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 10:33:47 ID:QCJwzo/w
穂乃果「でもね。ことりちゃんが、何度も話しかけたり、お世話をしてる内に…

    少しずつだけど、話せる様になって…だんだん落ち着いていってるって。」


穂乃果「そう教えてくれたから…私も、すごくホッとしたんだ。」


雪穂 「…そう、だったんだ…」

 
私は、千歌さんが…一人で雨に打たれながら…

辛そうに歩いてる姿が、頭の中に思い浮かんできて…

そんな千歌さんへの悔恨で…更に胸の痛みが…激しくなった。


だが…それがどうした。


千歌さんは、私のせいで…もっと痛かったんだ。

そうだ。千歌さんは…こんな痛みなんて、比べ物にならない位…

もっともっと、苦しい思いを…していたんだ。

231 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 10:42:12 ID:QCJwzo/w
でも…もし、ことりさんが…見つけてくれていなかったなら。

……今までに、お姉ちゃんに忍び寄って来た様なヤツラに…

他に人のいない場所で…もし、先に見つかってしまっていたら…


目は虚ろで、足取りは重く。雨に打たれた全身と制服はズブ濡れで。

まるで…人形の様に無防備で、きっと無抵抗だったであろう千歌さんは。

邪な輩にとって、その姿は…最高級の…極上の獲物に、違いなかった。


……想像もしたくない最悪の可能性が、頭を過って…今更ながら怖くなった。

ことりさんには…もう、感謝してもしきれない思いで、いっぱいだ。

232 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 10:57:13 ID:QCJwzo/w
そしてお姉ちゃんは、千歌さんが少しずつ落ち着いてきていた事と、

お姉ちゃんと一緒に、ことりさんの家に何度か遊びに行ったりしてた千歌さんが、

ことりさんとも、既にかなり仲良くなっていたという事。


そして…私も千歌さんも、少しお互いの距離を置いて、

それぞれに色々と考える時間が必要と判断した結果…南家で暫くの間、

千歌さんの面倒を見てあげて欲しいと、ことりさんと理事長にお願いしたそうだ。


ことりさんも、理事長であることりさんのお母さんも、

突然の話にも関わらず、とても気持ちよく承諾してくれたらしく…
  
千歌さんが自分達の家に滞在する事を、すごく喜んでいた程だそうだ。


本当に、優しい人達で良かったと…心底、感謝している。

233 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 11:20:28 ID:QCJwzo/w
現時点での千歌さんの様子については、南家との最新の連絡によると、

大分意識もハッキリしてきて、何とか会話も普通に出来る様になっているらしい。


千歌さんにすぐに会えないのは…正直、今の私には…すごく辛いけど…

再び会える、その時の為にも…私も、自分がやるべき事を…しっかりやっておこう。


それに、ことりさんだけでなく理事長にも、ううん…協力してくれた人達、みんなにも。

必ず…私からも、お礼を言わなくては。

  
そして…お姉ちゃんの話は、昨日の夜の我が家へと、進んでゆく。
 
      
穂乃果「その後でね。家にもう一度電話をして、お父さんとお母さんにお願いしたの。」

穂乃果「今日は二人ともちょっと、遅めの時間まで外に出ていてもらえないかなって。」

穂乃果「暫くの間…雪穂を一人にしてあげたいからって。」

   
二人とも、私が何か悩んでるっぽいことは、

流石は両親というべきか、ある程度は察してたみたいだ。

234 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 11:26:39 ID:QCJwzo/w
私が眠ってしまった、あの後…暫くしてから帰って来た両親に、

二人が今までどうしていたのかを、お姉ちゃんが聞いてみたところ…


お父さんはスーパー銭湯へ行って、お風呂巡りをしてくつろいでたそうで、

お母さんは一人暮らしのお友達の家で、おしゃべりに花を咲かせてたらしい。


………


ん?
     
あれ…?

何か……何かが、おかしい気がする…


穂乃果「千歌ちゃんは、ことりちゃん達が一緒にいてくれれば、もう安心だから…」

雪穂 「………」


穂乃果「雪穂の方も、暫く一人になったわけだし。」

雪穂 「………」

235 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 11:30:41 ID:QCJwzo/w
穂乃果「後はもう、私は外でご飯食べて、帰ってから様子を見れば…」
                          雪穂「そこだよっっ!!!」

穂乃果「ぅわわぁっ!?」


雪穂 「そこだ!そこなんだよ!お姉ちゃん!!」

穂乃果「そこって、どこなの!?」


雪穂 「だからぁっ!!そこ!そこだよっ!そこなんだよ!!」

穂乃果「何で三段活用なのっ!?」


雪穂 「あ、お姉ちゃん知ってたんだ。意外ー。」

穂乃果「なんでそこだけクールなのっ!?あと結構失礼だよっ!?」

236 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 11:34:00 ID:QCJwzo/w
雪穂 「まー、それはいいからさ。」

穂乃果「いやよくないよっ!?さっきまでのそこそこ連発はどこへっ!?」


雪穂 「だからそこっ!そこなんでってば!!」

穂乃果「だから切り替え早すぎるよっ!?」 
 

雪穂 「もー。お姉ちゃんはワガママだなー。」

穂乃果「少なくとも今の雪穂にだけは言われたくないよ!?」


雪穂 「しょーがない。今から説明してあげるから、ちゃんと聞きなよ?」

穂乃果「まずは雪穂がちゃんと聞こうよっ!?」


雪穂 「いい?お姉ちゃんが家に二回めの電話をした、あのシーン!」

穂乃果「」

237 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 11:37:37 ID:QCJwzo/w
雪穂 「あそこは大事な場面なんだよ!局面なんだよ!?なのにさ!!」

穂乃果「今のこの流れは大事な場面でも局面でもないよね。」


雪穂 「いくら私達、シリアスな流れが長すぎたからってさ!!」

穂乃果「もう今までの積み重ね全否定だね。」


雪穂 「アレもうシリアスブレイカーどころかシナリオブレイカーじゃん!

    そんなの最後に持ってくるなんておかしいよ!おかし過ぎるよっ!」


穂乃果「もう雪穂が一体何を言ってるのか分からないよっ!!?」

238 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 11:43:40 ID:QCJwzo/w
雪穂 「だから!どうして私の方は、一人でほったらかしなのって話だよ!」

穂乃果「ここまで来るのに、無駄に長い道のりだったよ…」


雪穂 「しかも、お父さんもお母さんも遊びに行っちゃってるし!

    お姉ちゃんだって、ノンビリ外食してから帰って来てるし!」


穂乃果「ふむふむ…それがどうかしたの?」


雪穂 「いやいや!だからおかしいでしょ!?あれってフツーほっとく状況なの!?」

穂乃果「どうして?」


雪穂 「どうしてって…!あのねー!あの時の私は、すっごく悩んでたんだよ!?

    少なくとも!その…な、泣いちゃう、くらいは…辛かったんだからね!?」


穂乃果「うん。そうだと思ってたよ。」

雪穂 「……!!」


穂乃果「きっと、お父さんとお母さんも、そう思ってたよ。」

239 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 11:47:08 ID:QCJwzo/w
雪穂 「………じゃあ、なんで…?」

穂乃果「………」


雪穂 「なんでなの……ねえ、お姉ちゃん…!」

穂乃果「………」


雪穂 「お父さんも…お母さんも……お姉ちゃんも…!」

穂乃果「………」


雪穂 「心配じゃなかったの…?…私の事なんて…!」

穂乃果「…心配だったよ。すごく。」


雪穂 「そんなの…ウソだよっ!!」

穂乃果「ウソじゃないよ。」


雪穂 「じゃあ!なんでわざと一人にしたの!?」

穂乃果「………」

240 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 11:51:47 ID:QCJwzo/w
雪穂 「なんでわざとほっといたの!?」

穂乃果「………」


雪穂 「どうしてなの!?どうして!?」

穂乃果「………」


雪穂 「ねえ答えてよ…!!どうしてなの!?」

穂乃果「……」
 

雪穂 「……どうして…私…だけ…!」

穂乃果「雪穂…」


雪穂 「ひとりぼっちに…した…の……」

穂乃果「雪穂。」


雪穂 「……どう…して……ぅ…うっ…うっ…!」

穂乃果「雪穂だからだよ。」

241 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 11:57:32 ID:QCJwzo/w
雪穂 「…うっ…うっ……っ……え…?」


穂乃果「私も…お父さんも、お母さんも。」

雪穂 「………」


穂乃果「雪穂が大好きだから。とっても大切だから。」

雪穂 「………」


穂乃果「だから…一人にしたんだよ。」


雪穂 「………言ってることが…もう、メチャクチャだよ…!」

穂乃果「………」
 

雪穂 「だって…どう考えたって、おかしいじゃん…!」


雪穂 「……もし…私じゃ…なかったら、お姉ちゃん達は…あの時、一体どうしてたの…?」

242 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 12:03:26 ID:QCJwzo/w
穂乃果「…そうだね…きっと…」


穂乃果「自分が一緒にいようとするか、それが無理な場合なら…

    きっと誰かに、一緒にいてもらえるように…すると思う。」


雪穂 「!!……じゃあ……どうして…私は、違うの…!?」


穂乃果「さっきも言ったでしょ?雪穂だから…雪穂だったからだよ。」

雪穂 「だからっ!そんなんじゃ、分からないよ…!!」


穂乃果「(ゆきほ)が…とっても…とっても、強い子だったからだよ。」

雪穂 「……え…?」

243 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 12:10:00 ID:QCJwzo/w
穂乃果「ねえ……昨日の夜、私にウソをついちゃった時に…」

穂乃果「私が言ったこと、覚えてるかな?」


雪穂 「………覚え、てる…けど…」

 

穂乃果『雪穂は、凄いね。』


穂乃果『雪穂は、偉いね。』

    
穂乃果『雪穂は…優しいね。』



あの時、お姉ちゃんが言ってくれた言葉。


どうして言ってくれたのか、分からなかった言葉。


そして、今でも…それが分からないままの言葉。

244 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 12:14:59 ID:QCJwzo/w
穂乃果「雪穂はね。とっても頭が良いんだ。そして、とってもしっかりしてる子。」

穂乃果「他の人が気付くのが難しいようなことにも、よく気が付いて…よく見れて。」

 
穂乃果「人のことも、自分のことも、冷静に考えてることができて…

    そして、大事な答えを…ちゃんと見つけ出すことができる。」


穂乃果「これが、雪穂の『凄い』ところだよ。」

雪穂 「…お姉…ちゃん…」


穂乃果「自分が誰かに嫌な思いをさせた時でも、自分が誰かに嫌な思いをさせられた時でも…」

穂乃果「相手を責める前に…自分に悪かったところはなかったのかと、考えることができて。」


穂乃果「それを自分で見つけて…反省して…相手の人に、ちゃんと謝ることができる。」


穂乃果「これが、雪穂の『偉い』ところ。」

雪穂 「……お姉……ちゃ…ん…」

245 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 12:18:46 ID:QCJwzo/w
穂乃果「そして…もし、理由があったとしても…」

穂乃果「自分が誰かに傷つけられて、自分も、その誰かを傷つけてしまった時でも…」


穂乃果「どんなに自分が、辛く、傷ついてしまっていても…

    自分が傷つけてしまった人の、痛みを…汲み取って…」


穂乃果「その人のために…自分の涙を流して…その人のために、精一杯…今だって、頑張っている…」

雪穂 「……お姉、ちゃ…ん…っ…うっ…」

    
穂乃果「これが…雪穂の…『優しい』ところ…なんだよ?」

雪穂 「……お姉…ちゃん…お姉……ちゃん…うっ…ああっ…」


穂乃果「…それにね…?」

雪穂 「うっ…うっ…っ………え…?」

246 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 12:22:44 ID:QCJwzo/w
穂乃果「昔から、周りに…特に、家族には…自分のことで人に心配をかけるのを…」

穂乃果「ホントに、ものすごく…イヤがる子だったんだ…(ゆきほ)は。」


雪穂 「……あ…」

 
穂乃果「自分のせいで、誰かが悲しい顔や困った顔をするのは、絶対にイヤっ!て…」


穂乃果「私たちには、弱いところを絶対に見せないように、自分一人で頑張って…

    頑張って頑張って…本当に、それでなんとかしちゃう…強い子だったの。」


穂乃果「…昨日だってそうだった。自分で考えて、答えを出して、反省して…」


穂乃果「千歌ちゃんの痛みを…分かろうとして…そして今…自分がやるべきことを、

    見つけちゃったのも……一人で…本当に、全部一人で…辿りついちゃった。」


穂乃果「そんなことが、一人でできてしまう…凄くて偉くて優しい…強い子だったから。」

穂乃果「私たちが心配して手を貸そうとしても、決して曲げたりしない子…だったから…」

247 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 12:28:21 ID:QCJwzo/w
穂乃果「辛くても、自分が一生懸命、頑張れば…周りの人はいつも笑っていてくれるって。」

穂乃果「ホントに不器用だけど…そんな優しさも…持っていた子だったんだ。」
 

穂乃果「だから私は…お父さんとお母さんも…そんな雪穂を、見守っていくことにしたの。

    私たちがいつも通りに過ごしてることが、(ゆきほ)の…一番の願いだったから…」


穂乃果「でもね?実はバレないように…いざという時のスタンバイも、ちゃんとしてんだよ。

    何かあった時、すぐに駆けつけられるように。いつだって…もちろん昨日だってね。」
 

雪穂 「………そう、だったんだ…」

穂乃果「…気付いてなかったでしょ?」


雪穂 「…あはは……ゴメン…」

穂乃果「フフッ…」

248 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 12:32:59 ID:QCJwzo/w
当たり前の事だった。

ちょっと考えてみれば…すぐ分かる事だったんだ。


お姉ちゃんも、お父さんも、お母さんも…みんな家族だ。

自分の妹が…自分の娘が…悩んでたら…そんなの心配に決まってる。


…大事な人が苦しんでいると知っていて、手を差し伸べたくても…

その気持ちを、その人からは…ひたすらに拒絶されてしまう…

その苦しさにも気付かないで…今までの私は、何てワガママだったのだろう。


それでも、そんな自分勝手な私を、

お姉ちゃん達は、そっと見守りながら…

この私のワガママに…ずっと付き合ってくれていたんだ。

249 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 12:42:27 ID:QCJwzo/w
雪穂 「…私って…全然、まだまだ、なんだなぁ…」


穂乃果「ううん、そんなことないよ…雪穂は、私の自慢の妹だよ。」

雪穂 「…今、それを言うのは…ズルイと思う…///」
  

穂乃果「クス……それでもね。滅多になかったけど…本当に誰かの助けが、必要な時は…」

雪穂 「……え…?」 


穂乃果「…助けてほしい人の前でね?いっぱい泣くことで…いっぱい叫ぶことで……」

穂乃果「…その気持ちを…伝えてたんだよ。」


雪穂 「……あっ…」
 

穂乃果「〔ゆっきー〕は……昔から、泣き虫さんだったからね。」     

雪穂 「……あはは……そうだった…ね…っ…」


穂乃果「自分が、どうしても助けが必要な時は…ちゃんと教えてくれたんだ。」

雪穂 「………っ…」

250 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 12:46:24 ID:QCJwzo/w
穂乃果「…今日…雪穂は…私の前で泣いて…そして、叫んで…教えてくれた。」
 

穂乃果「もう…」

雪穂 「………っ……っ…」
 

穂乃果「ひとりは…イヤだ、って。」

雪穂 「…………っ……うん…っ…イ、ヤ…だ…」


穂乃果「……」


雪穂 「…っ……これからは…一人は…もうっ…イヤ…だ…!」

穂乃果「うん……うん…」
      

穂乃果「だから、ね……もう…」

雪穂 「………」

251 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 12:53:19 ID:QCJwzo/w
穂乃果「ひとりに…しちゃう…の…は…」

雪穂 「……うん…」


穂乃果「もう…昨日で、おしまいで……いい…よ、ね…?」

雪穂 「…うんっ……うんっ…!一緒に…一緒に、いたいよ…!」
 

穂乃果「雪、穂…」

雪穂 「お姉ちゃんと…!お父さんと、お母さんと…!もう一人の…お姉ちゃんと…!」


穂乃果「…うん。」

雪穂 「…みんなと…一緒に……一緒に、いたいよぉ…!!」


穂乃果「…雪…穂ぉ……」

雪穂 「…お姉…ちゃん……っ…」

252 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 12:56:14 ID:QCJwzo/w
そう。

泣き虫で、人に甘えてばかりだった〔私〕…
     
意地っ張りで、人に頼ろうとしなかった(私)…

     
そして…
  
ここにいる、今の「私」…


そうだ。

これからの、高坂雪穂は。


もう、ひとりは…イヤなんだ。




穂乃果「…ねえ、雪穂…」  

雪穂 「………ん…?」

253 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 13:00:12 ID:QCJwzo/w
穂乃果「…私、ね?……ううん…」

雪穂 「………?」


穂乃果「…穂乃果…ね…?」

雪穂 「……あ…」


穂乃果「ずっと前から、雪穂に…ね…?言いたかった、ことが…あるんだ。」

雪穂 「………」


穂乃果「実は、千歌ちゃんにも、言って…あるんだけどね…でも、雪穂にも…ちゃんと、言いたかったん、だ…」

雪穂 「………」


穂乃果「ずっと……ずっと、前、から…」

雪穂 「……うん。」

254 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 13:05:21 ID:QCJwzo/w
うん…知ってるよ。お姉ちゃん。

その時、見てたから…私……隠れてだけど、ね。

だから、お姉ちゃんが…今から言ってくれる言葉も、知ってる。


私、お姉ちゃんが…

その言葉を言ってくれるのを、今…

ううん。本当は、きっと…


ずっとずっと前から…待っていたんだ。


穂乃果「ちょっと…だけ、雪穂が…後に…なっちゃったけど…

    それでも……今、から…言っても、いい…か、な…?」


雪穂 「…うん。言ってほしい。」


穂乃果「……よかっ…たぁ…」

255 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 13:10:33 ID:QCJwzo/w
お姉ちゃんは、本当に嬉しそうな顔で笑ってくれた。

私の前で、ここまでの眩しい笑顔は…本当に久しぶりだった。
     
例えどんなに…溢れ続けている、熱い雫が…ずっとその頬を、伝っていても。
 

…そしてお姉ちゃんは、私を優しく…温かく…抱きしめてくれた。


穂乃果「…それ…じゃ…言う、よ…?」

雪穂 「…うん。お願い…お姉ちゃん。」


今度は…私を、強く抱き寄せて。


お姉ちゃんは……口を…開いた。



穂乃果「……雪穂、は…」


…ねえ…千歌お姉ちゃん…

256 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 13:14:24 ID:QCJwzo/w

穂乃果「…雪…穂、は……」


私ね…今なら……


穂乃果「…っ…も、う…っ」


あの日…この言葉を……


穂乃果「っ……っ…も…う…っ」


穂乃果お姉ちゃんから、受け取った…

      
穂乃果「っ……ひ………り……………な……い………っ…!」


千歌お姉ちゃんの、気持ちが…


穂乃果「……っ……と…………じゃ…………………よ………っ!」



…きっと、分かる気が…するんだ…

257 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 13:19:21 ID:QCJwzo/w
穂乃果「!!!〜〜…」


穂乃果「!!〜〜……」


穂乃果「!〜〜………」








穂乃果「……雪穂は……」


穂乃果「……もう………」


穂乃果「……ひとりじゃ…ないよ……!」
   
     

雪穂 「……っ…あぁ…ああっ…ひっく…う、あぁ……っ…うっ…うあ…あっ…」


雪穂 「うあああぁああああぁぁーーーーーーーーーーーーーーっっっ!!!!!」

258 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/18(月) 13:23:14 ID:QCJwzo/w
今回は、ここまでになります。

ここまでお付き合い頂いている方、本当にありがとうございます。
明日は丸一日用事が有る為お休みしますので、明後日以降にまた再開させて頂きます。
今後もどうか宜しくお願いします。

259 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/21(木) 05:39:05 ID:IyMqktUM
第八章 【姉妹】



<高坂家 居間>


あれから数日が経って。

そして、今日の夜。

いよいよ千歌さんが、帰って来る。


今、私とお姉ちゃんは居間にいて、

二人で一緒に千歌さんの帰りを待っている。

恐らくは、後一時間もしない内に帰ってくる筈だ。


お父さんとお母さんは私達に気を遣ってくれて、今は二人で外に出ている。

『全部済んだら、自分達も千歌ちゃんに早く会いたいからすぐ呼んでくれ』と託っているけど…

なにそれ、かっこいい。

260 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/21(木) 05:54:31 ID:IyMqktUM
あの日、二人で目を真っ赤にしながら、

抱き合って大声でワンワン泣いていた、私とお姉ちゃん。

二人してひどい顔だったけど…私達の確かな絆を、心から実感出来て…本当に嬉しかった。

     
ただ…あれから私は、また気付いた事がある。

私と千歌さんの事があった、あの日…お姉ちゃんが私に放ってきた例の必殺ワードが、

実は、一芝居打たれていたものだった、という事を。


今までをよく思い出してみたら…アレを私に噛ましてくる時のお姉ちゃんは、

私の動向なんて一切お構いなしで、いつも無条件広範囲ダイレクトアタックなのだ。


でも。あの時のお姉ちゃんは、まるで私の様子を探るかの様に、

見てると吸い込まれそうなその目で、私を暫くの間ジッと見つめてきて。

261 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/21(木) 06:02:38 ID:IyMqktUM
私が話をしたくても、なかなか上手く切り出せず…いざ口を開いてもドモって…という時に、

まるで、ここぞと狙い済ましたかの様な絶妙なタイミングで、アレを仕掛けて来ていた。

多分、ワザと私をシラけさせるなり怒らせるなりで刺激させて…一度、素の自然な状態に戻す為に。


後に私が気持ちを思いっきり露呈した時の、あの落ち着いた態度からしても、それは間違いないだろう。

その直前に、あれだけバカバカコンボをお見舞いされたのは、流石に本人的には予想外ではあっただろうけど。


要するに、あのタヌキ芝居といい、ぼっちトラップの件といい。

あの時の私は、五回転半ジャンプを完璧に決めるかの如く、実に見事に。

完全にお姉ちゃんの掌の上で、華麗に踊らされていたのだ。


どんだけ余裕なかったんだろう、あの時の私…と、ちょっとヘコみそうな気分になってくる。

普段の私なら、或いは気付けていたのかも知れないと思うと、まんまとハメられたのが…実に悔しい。


まあ…結果的に考えれば、気付けなかったから良かったんだろうし、

そのおかげで、感謝してる事も…たくさんあるんだけどさ。

262 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/21(木) 06:07:31 ID:IyMqktUM
しかし、その件だけでは飽き足らず。

この賢くて可愛い妹に対して、この最終鬼畜MY姉は…


とても血の通った人間が考えたとは思えない、非常に残酷で無慈悲な、

それこそ七十五日は、その羞恥に耐えなくてはいけない様な(実質全て私が)、

そんな行為を…これから私にやるようにと、既に強要しているのだ。


あれからというもの、まるで心がガラス細工の如く繊細になっている今の私が、

そんな案を出されたら、絶対に断れないと知っておきながら。実に許すまじ姉である。

邪道・非道・外道と三拍子揃った、このデビルロードマスターめ。


そんなこんなで。さっきから、その案の件を度々思い出しては私の顔を見て、

(・∀・)とニヤニヤする目の前の人物が、煩わしくて憎らしくて仕方ない。

本当にコレが、あの時の姉と同一人物なのだろうか…あの慈愛の女神、どこ行った。

263 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/21(木) 06:12:30 ID:IyMqktUM
とにかく…姉は妹に越えられるものだという、この世の厳しい現実を…

いつか必ず。その目の前に突きつけてやると…そう私は、心に強く誓うのだった。

………あれ?この台詞……何か、どっかで聞いた様な気が…?
 

そして…


   「こんばんは。夜分遅く失礼します。」

    
   「穂乃果ちゃ〜ん、雪穂ちゃ〜ん、こんばんは〜♪」


   「…あの…ただいま…帰りました…」

     
お別れが惜しくて、ちょっとでも長く千歌さんと一緒にいたいと、

そう言って我が家まで送ってくれた、理事長とことりさんと共に。
  

千歌さんが、この家に帰って来た。

264 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/21(木) 06:22:55 ID:IyMqktUM
<高坂家 玄関>
    
     
ことり「ねえ、千歌ちゃん?絶〜対、また遊びに来てね♪」

千歌 「あ、うん…ことりちゃん…本当に、ありがとう…」


ことり「うん♪次もまた、お泊まりで来てほしいなぁ〜!えへへ♪」

理事長「あら。それでは、このまま連れて帰ってもいいのかしら?」   
             
雪穂 「いやいやダメですからねっ!!?」」


理事長「そう……残念ね…(シュン)」

雪穂 (しかもガチだったっ!?)


あの…親鳥事長さん。そんなに本気で、残念な顔しないで頂きたいのですが…

そもそも今、ウチに何の為に来てるんですか。


大体、もう千歌さんはすっごく大事なウチの家族で、私のお姉ちゃんなんですから。

幾らお世話になった方々といえど、これだけは譲る訳にはいかないんです。

265 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/21(木) 06:26:27 ID:IyMqktUM
ことり「まあまあ、お母さん。今日のところは我慢しようよ、ね?」

鳥事長「そうね。名残惜しいけど……まだ、チャンスはあるわよね…(☆8☆)」


雪穂 「っっ!!?(ゾク!)」

千歌 「…?」


…な、何だか、今…背筋に、寒気が走ったんだけど… 


千歌 「あ、あの…!ありがとう、ございました…!」


穂乃果「私たちからも、ありがとうございました!」

雪穂 「本当に、ありがとうございました…!」


理事長「フフ、いいのよ。とっても楽しかったから。」

266 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/21(木) 06:30:45 ID:IyMqktUM
穂乃果「あの、すみません。お父さんとお母さんは、今ちょっといなくて…」

理事長「大丈夫よ。連絡を頂いているし、ちゃんと事情も伺っているわ。」


穂乃果「あ、そうでしたか…良かったです、ちょっと安心しました。」

理事長「高坂さん、いえ…穂乃果ちゃんも、すっかり頼もしくなったわね。フフ。」


穂乃果「え?あ、いや〜…う〜ん、どうなんでしょう?えへへ…」

理事長「クス。それに雪穂ちゃんも、本当にしっかりしてて…優しくて。」


雪穂 「あっ、い、いえ…!私は全然、そんな事ないですけど……」

理事長「…本当に、みんな良い子ね……雪穂ちゃんも、穂乃果ちゃんも、千歌ちゃんも。」


雪穂 「え?あ、あの…」

理事長「フフ、何でもないわ。」


ことり「もー、さっきからお母さんばっかりお喋りしてて、ズルいよ〜!」

理事長「あらあら、ごめんなさい。」

267 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/21(木) 06:40:30 ID:IyMqktUM
雪穂 「ことりさん…本当に色々と、ありがとうございました。

    あの日の事も、それからの事も…すごく感謝してます。」


ことり「いえいえ〜。雪穂ちゃんも元気になって嬉しいな♪」


雪穂 「はい…ありがとうございます…!」

ことり「うん!本当に良かった♪」


穂乃果「ことりちゃん!ホントにホントーに、ありがとうね!」

ことり「ううん、これくらいお安い御用なのです〜♪」


ことり「だって、他ならぬ穂乃果ちゃんの頼みだもん!だから、気にしないで?」

穂乃果「うう、ことりちゃーん…(ジーン)」


ことり「それにー。千歌ちゃん、とっても可愛くて!すっごく楽しかったから♪」

千歌 「え…?あ、あの……えっと…///」

268 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/21(木) 06:45:15 ID:IyMqktUM
穂乃果「そっか〜!ことりちゃんにお願いして、ホントによかったよ〜。」

ことり「いえいえ〜、どういたしまして♪」


穂乃果「じゃあ今度は、穂乃果がことりちゃんのお願いを何でも聞くからねっ!」 

ことり「え、ホントに!?」


穂乃果「うん!もちろんだよ!」


こ鳥 「じゃあじゃあ〜!久しぶりに〜、次は穂乃果ちゃんも〜♪

    ことりの家に、泊まりで遊びに来てほしいなあ〜♪(☆8☆)」


雪穂 「……っっ!!?(ゾクッ!)」


い、今……また背中に、寒気が……こ、これは……
 

穂乃果「え?そんなので、いいの?」

269 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/21(木) 06:49:27 ID:IyMqktUM
ことり「だって、最近の穂乃果ちゃん…ずっと忙しそうだし、モテモテさんだから…

    たまに家に遊びに来てはくれても、全然泊まっていってくれないんだもん…」


ことり「だから…ことりは、とっても寂しいのです!…クスン…」


穂乃果「わ、わかったよ、ことりちゃん!穂乃果でよければ、絶対にいくからね!」

ことり「…ホントに?ホノカチャ〜〜ン…?(上目遣い)」


穂乃果「うん!約束するから!だから、もう泣かないで!ね?」
 
ことり「やったあ♪ありがとう穂乃果ちゃ〜ん!」


鳥事長「良かったわね、ことり。私も娘がまた増えて…楽しみだわ(☆8☆)」

こ鳥 「うん、お母さん!ことりも〜、今からとっても楽しみ〜♪(☆8☆)」


雪穂 「っっっ!!!!(ゾクゾクッッ!!)」


穂乃果「?」

千歌 「?」

270 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/21(木) 06:56:22 ID:IyMqktUM
雪穂 (ヤバイ…!この親子は…やっぱり、ヤバすぎる…っ!)

雪穂 (このままでは、我が家の大事なお姉ちゃん達が…この二人に…いいや、

    野生の眼光で狙う、この二羽に……おやつに、されてしまう……っ!!)
 

ことり「ではでは〜、お邪魔しました〜♪ちゅん♪」

穂乃果「こっとりちゃーん!まったねー!」
 
  
理事長「では、私もこれで…」

千歌 「あ、はい…!ありがとう、ございました。」


理事長「次回には手続きに必要な書類を用意して、千歌ちゃんを正式に南家の…」

雪穂 「だ・か・らっ!!ダメですってばっっ!!!」

千歌 「あ、あはは…」


雪穂 (…あの超猛禽類系親子…マジで手を打たないと…手遅れになるかも知れない…!)

雪穂 (……アレさえなければ、本当に良い人達なんだけどなあ…)

雪穂 (………塩、撒いとこうかな…?)

271 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/21(木) 07:00:06 ID:IyMqktUM
穂乃果「気を遣ってくれたんだね、きっと。私達が、少しでもリラックスできるように。」

雪穂 「……そうだね。」


それも確かだとは思う…お姉ちゃん達二人を狙ってるのは、流石に行き過ぎだけど…

ただ、時折そうゆう暴走気味なとこさえ気を付けて頂けるのであれば。

いつも優しくて、思いやりがあって、本当に素敵な…すごく良い人達なんだ。
 

千歌 「……」
  

まだ少し名残惜しそうに、

入り口の方を向いてる千歌さんを…

私は、チラッと横目で見る。


まだ表情は、やや暗めで…やはり元気は余り無さそうだ。

完全に以前の状態まで回復するまでには、まだ結構掛かるかも知れない。

272 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/21(木) 07:05:09 ID:IyMqktUM
でも…目に生気は感じられるし、しっかりと自分の足で立てている。

今の私には、それで充分に…嬉しい事なのだ。


だって私は、今から千歌さんを。

元気に、笑顔になってもらえる様に。

全力で頑張る事が…出来るのだから。

     
ことりさん達は、危うい状態だった千歌さんを、

こんなに自然に近い状態に戻れるまでに…癒してくれた。
     

だから、ここからは私の番。

今まで伝える事が出来なかった沢山の想いを、今から千歌さんに届けるんだ。  

千歌さん…覚悟していてくださいね…!


さあ、始めよう。

私らしい…高坂雪穂らしい、やり方で。

273 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/21(木) 07:09:15 ID:IyMqktUM
<高坂家 居間>


立ち話も何なのでと、私達三人は居間に移動した。


そして、私とお姉ちゃんが部屋に入り、

後から付いて来ていた千歌さんが、部屋の入り口で…止まった。


千歌 「あ…あの…」

穂乃果「どうしたの、千歌ちゃん?」


千歌 「ご、ごめんなさい…私……いっぱい迷惑、かけちゃって…」

穂乃果「ううん、気にしてないよ。それより千歌ちゃんが帰って来てくれたことが、嬉しいからね!」


千歌 「穂乃果……ちゃん。」

穂乃果「なっ!!そ、そんなぁ〜〜!?(ガーーーーーーン!!!)」 

千歌 「え…?」

274 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/21(木) 07:13:32 ID:IyMqktUM
穂乃果「穂乃果ちゃん、だなんて…そんな、他人行儀な…ヨヨヨォ…」

千歌 「え、え…?」 


穂乃果「いつも、私のこと…穂乃果お姉ちゃん♪って……あんなに、

    あんなに可愛らしく、呼んでくれてたのにぃ…シクシクゥ…」


…実に見事な三文芝居としか言いようがない。

スノハレの切ない表情や、もぎゅっとの艶っぽい表情で絶賛された、あの表現力は…

残念ながら今の演技力には、これっぽっちも生かされなかった様子だ。 
  

千歌 「あ、あの…!で、でも…それ、は…」
 

それでも、今の精神面で余裕の無いであろう千歌さんには効果があった様だ。

むしろ、目の前で我が姉が繰り広げてる茶番などにではなく、

自分が言われたその話の内容にしか、意識が行ってないのかも知れない。

275 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/21(木) 07:19:13 ID:IyMqktUM
穂乃果「クスン…千歌ちゃんは、穂乃果のこと…もう、キライになっちゃったの…?(ウルウル)」

千歌 「…え?そ、そんなわけ、ないよ…!穂乃果…ちゃんのこと、キライに…なんて…」


穂乃果「でも…お姉ちゃんって、呼んでくれないし……クスン、クスン…」

千歌 「だ、だって…私は……その…えっと……」


一瞬だけ、千歌さんが少し離れた位置にいる私を見た。

すぐに視線をお姉ちゃんに戻したが、私はそれに気付いていた。

でも。今はまだ…私の出番じゃない。ここはお姉ちゃんに、任せよう。
 

穂乃果「……じゃあ、これだけは、教えて…?」

千歌 「え…?あ、その…な、なに、かな……」


穂乃果「…千歌ちゃんは…私の事、どう思ってる?(ジーーー)」

千歌 「そ、それは……そんなの……好きに、決まってる…よ。」

276 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/21(木) 07:25:08 ID:IyMqktUM
穂乃果「…ホントに?(ジーーー)」

千歌 「う、うん…ホント、だよ…」


穂乃果「どれくらい?(ジーーー)」

千歌 「…え、ええ〜っ?」


穂乃果「どれくらい?(ジーーー)」

千歌 「え、ええっと……あ…あの……す、好き…」


穂乃果「………………(ジーーーー)」

千歌 「も、もうっ………好き……好き、大好き…!」


穂乃果「………………(ジーーーー)」 

千歌 「ほ、穂乃果……お、お姉ちゃ…んの、こと…大好き…大好きだから、私…!」


穂乃果「やったああぁぁーーーーーーーっっ!!!(ギューーーーッッ)」

千歌 「え!?…わ、わわわっ!!?」

277 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/21(木) 07:30:11 ID:IyMqktUM
穂乃果「私も!穂乃果も!千歌ちゃんがねっ?大好きっ!大大大好きーーーーっ!!」

千歌 「ちょ!?ほ、穂乃果…お姉ちゃん、くっ、苦しいよぉ〜っ!」


穂乃果「大好き!大好きだよっ!千歌ちゃん♪ぎゅーーーーーーーーーーーーーっっ!!!」

千歌 「だ、だから…苦しいってば!……もう…………クスッ…」


穂乃果「…やっと…」

千歌 「……え?」


穂乃果「やっと……笑ってくれたね…千歌ちゃん。」 

千歌 「……あ…」


穂乃果「よかったぁー…」

千歌 「穂乃果……お姉ちゃん…」


穂乃果「…おかえり…千歌ちゃん……おかえりなさい…」

千歌 「…うん…ありがとう…穂乃果…お姉…ちゃん…」

278 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/21(木) 07:38:46 ID:IyMqktUM
二人は、お互いを優しく包み込む様に抱き合った。

それぞれの腕の中の温もりを…しっかりと確かめ合いながら。

それは、とても温かくて…とても綺麗な…光景だった。


穂乃果「………」


そして…

ゆっくりと、千歌さんからお姉ちゃんが離れ。

そのまま千歌さんの方を向いたまま、数歩後ろへ下がっていく。


少し離れた位置まで移動すると、立ち止まって…視線を別の方へと変えた。

その間。お姉ちゃんの表情は、ずっと柔らかくて穏やかだった。

今までお姉ちゃんの方を見ていた千歌さんは、その視線の先を…追う。


そこには。


千歌 「……雪穂、ちゃん。」

279 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/21(木) 07:48:20 ID:IyMqktUM
千歌さんの顔に…再び影が差すのが…分かった。

その表情を目にした瞬間から…胸の痛みが……激しくなった。


だけど私は、それでいいと思った。その方がいいと思った。


だって…千歌さんは今、私以上に苦しい気持ちでいるに違いないから。

私が、そうさせてしまい・・・今も、そうさせてしまっているのだから。     
    

だから。

せめて、この痛みよ。


私が…本当に赦される、その瞬間が来るまで…

私に向けて千歌さんが、心から笑ってくれる、その時まで。


どうか、この胸の痛みよ…


決して、消えないでいて。

280 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/21(木) 07:55:37 ID:IyMqktUM
章の途中ですが、時間の都合により今回はここで一旦終了となります。

まだお付き合い頂けてる方がもしみえるのでしたら、本当にありがとうございます。
始めてのSS投稿も、あと残り二章と半分まで来る事が出来ました。
折角ここまで来られたので、何とか最後まで頑張ってみようと思います。

281 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/22(金) 06:39:06 ID:UQ1BX1aE
雪穂 「千歌さん。」

千歌 「…あ…」

 
私は千歌さんの前にゆっくりと歩いて行き、

正面に立ってから、そう呼びかける。


雪穂 「…おかえりなさい。」 
   
千歌 「…え…?」


雪穂 「おかえりなさい、千歌さん。」    

千歌 「あ……た、ただいま…」


千歌さんは、私からの挨拶が予想外だったのか、最初は戸惑っていたけど、

二回目の挨拶では、拙いながらも挨拶を返してきてくれた。

 
たったそれだけの事でも、私は嬉しいと感じた。

でも慌てない。私にはまだ、やるべき事が…あるんだ。

282 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/22(金) 06:45:41 ID:UQ1BX1aE
千歌 「…あ、あのね……私、雪穂ちゃんに…」
                雪穂 「千歌さん。」  

      
今、何を言おうとしたかなんて…容易に想像出来てしまう。

千歌さんは…本当に、優しい人だ。

だから私は、敢えてその言葉を遮った。
 

そして再び、その名前を呼んだ。


雪穂 「千歌さん。」   

千歌 「…あ……は、はい。」


雪穂 「私から一つ、お願いがあります。」

千歌 「え…?」


雪穂 「今から、私の話す事を…最後まで、静かに聞いて下さい。」

千歌 「…あ…あの…でも……私…」

283 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/22(金) 06:50:51 ID:UQ1BX1aE
雪穂 「お願いします。」

千歌 「あ……えっと…」


雪穂 「………」

千歌 「……うん。」


雪穂 「ありがとうございます。」


千歌さんの表情が…少し強張ったのが分かる。

既にネガティブな思考が、頭を巡っているのかも知れない。


でも……もう、大丈夫だから。
 

雪穂 「…まず、私は…貴女に謝らなくてはいけません。」

千歌 「……え?」


雪穂 「…いえ……私は、ずっと貴女に謝りたかったんです。それは…」

千歌 「な、なんで雪穂ちゃんが…?謝らなくちゃいけないのは、私…」

284 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/22(金) 06:57:28 ID:UQ1BX1aE
雪穂 「静かに終わりまで、話を聞いて貰う約束です。」

千歌 「あ……ご…ごめんなさい…」


雪穂 「……私は、あの時…確かに千歌さんの言葉で…胸が痛くなりました。」

千歌 「………」


雪穂 「その理由は…私が、お姉ちゃんとの姉妹という大切な場所を、

    千歌さんに……奪われてしまったんだと…・・・思ったからです。」


千歌 「…っ!」
 

雪穂 「そして私は、その痛みに耐えられなくなって…千歌さんの前から逃げました。」

千歌 「……っ…」


雪穂 「…そして、私を傷付けたと感じた千歌さんは、自分の言葉を激しく悔いて…」

雪穂 「私が、怒鳴って逃げてしまった理由にも、気付いて…さっき、私に…謝罪をしようとした。」


千歌 「……!」

285 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/22(金) 07:02:00 ID:UQ1BX1aE
雪穂 「身勝手ですが…返事だけ、どうかお願いします……そうですか?」

千歌 「………うん。」


雪穂 「ありがとうございます……でも……本当は…違ってたんです。」

千歌 「……?」


雪穂 「あの時、私が…胸が苦しくなって、逃げ出したのは……本当は…

    姉妹の絆を取られたからと、思ってた訳じゃ…なかったんです。」


千歌 「…え…?」


雪穂 「本当の理由は…別にあったんです。まだ私が、気付いてなかっただけで。

    いえ……ただ、気付かないフリをしてただけ…だったのかもしれません。」

 
千歌 「……あ、あの…」


雪穂 「すみません。後でちゃんとお話しますから、もう少し…話を聞いて下さい。」

千歌 「あ…う、うん……ゴメン…」

286 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/22(金) 07:11:45 ID:UQ1BX1aE
雪穂 「…その理由というのは、本当は…私自身の気持ちの問題で…

    千歌さんに、非があった…という訳では…無かったんです。」


千歌 「……え…?」


雪穂 「むしろ、私自身が…もっと早く、その気持ちを受け入れて…

    そして、もっと早く…自分に対して、正直になっていれば…」


千歌 「………」


雪穂 「私が、千歌さんを傷付ける事は無かったんです。」

千歌 「…っ!」
 

雪穂 「私が、自分を誤魔化し続けていた結果……私は…貴女を傷付けてしまいました。」

千歌 「ゆ、雪穂ちゃん…!?」

287 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/22(金) 07:24:17 ID:UQ1BX1aE
雪穂 「自分の発した無神経な発言で、私の事を傷付けてしまったんだ、と…

    大好きな人の大切な妹を傷付けてしまったと…気に病ませてしまった。」


千歌 「ま、待って…!違うよっ、雪穂ちゃん…!」


雪穂 「貴女が歩み寄ってくれていると知っていたのに…私が背負わせてしまった…

    ショックで雨の中を彷徨わせて…危うい状況にまで…追い込んでしまった…」


千歌 「違う、違うんだよ…!雪穂ちゃんのせいじゃ…!」


雪穂 「私が臆病だったせいで…千歌さんを…そんなにも傷付けてしまった。」

千歌 「だから、雪穂ちゃんのせいなんかじゃ!全部、私が…!」


雪穂 「まだ、話は全部終わってないですよ…千歌さん。」

千歌 「…だって……だってぇ…!」


雪穂 「…私は、謝りたかったんです。自分の…してしまった事を。」

千歌 「…雪…穂、ちゃん……う…う…っ…」

288 ◆bK3.D2B8eM:2019/03/22(金) 07:41:13 ID:UQ1BX1aE
雪穂 「そして……許して欲しかった……貴女に。」


千歌 「…そんな……ダメだよ……雪穂ちゃんは、悪くなんか…ない、のに…っ」

雪穂 「…千歌さん…」


千歌 「ダメ、だよ…そんなの……私が、私の…方が……うっ…うっ………」

雪穂 「………」


千歌さんは…その痛みを・・・今も一人で背負おうとしていた。その優しさ故に。

もう私に、これ以上背負わせたくないからという…本当に、不器用な…その優しさ故に。

人によっては、その気持ちを…ただの傲慢、自己満足、と…称する人もいるのだろう。


だけど…私にとっては、

今も千歌さんの瞳から零れ落ち続けている、この涙は。

とても尊く輝いていて……美しかった。


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