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梨子「リライフ?」千歌「してみませんか」
1
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/14(水) 14:03:54 ID:5rFYohg6
梨子(なに言っちゃってんのこの子……)
千歌「……」ニコッ
梨子「えっと……すみません、どちら様ですか?」
千歌「ああ、自己紹介してませんでしたね。私はリライフ研究所の高海千歌と申します」
梨子「リライフ研究所?」
千歌「名刺です」スッ
梨子(こんな企業、受けた覚えないんだけど)
2
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/14(水) 14:05:21 ID:5rFYohg6
千歌「諸々の事は後に話すとして。桜内梨子さんですよね」
梨子「なんで私の名前を?」
千歌「3才の頃からピアノを弾き、類稀な才能を発揮して、小学校中学校と様々なコンクールで入賞を果たしてきた」
千歌「将来を期待された貴方は、音楽で名高い音ノ木坂学院へ推薦入学を果たしたものの、高校2年生の秋にピアノをぱったりとやめ、大学進学のため受験勉強」
千歌「2年間の浪人生活を経て、ようやく東京の国立大学に合格することができたものの――」
梨子「ちょちょ、ちょっと待って!!」
千歌「はい?」
梨子「どうしてそんなこと知ってるんですか」
梨子「あなた……私のストーカー?」
千歌「まさか。無職の女性にストーキングする女性がいると思います? まあ、桜内さんは確かに美人ですけど」クスクス
梨子「びじっ……からかわないでください!!」
梨子「……もうやめて。赤の他人と話している暇は無いんです」スタスタ
3
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/14(水) 14:05:40 ID:5rFYohg6
千歌「――面接、落ち続けてますよね」
梨子「っ……!」
千歌「大学を卒業後東京の上場企業へ入社したものの、4ヵ月で会社を辞職。再就職先では5ヵ月で辞職。その理由を面接で説明することができず、以後1年以上フリーター生活を続けている」
千歌「いいんですか? このままでも」
梨子「……いいわけないでしょ」
千歌「私なら、あなたを助けることができると言ってるんですよ」
梨子「――本当に?」
千歌「ええ」ニコッ
4
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/14(水) 14:06:16 ID:5rFYohg6
―――
―
梨子'sアパート
梨子「はい、お茶」
千歌「お気遣いはいりませんよ」
梨子「一応客だから」
千歌「ところで、どうしてスーツだったんですか?」
梨子「……!」ギクッ
千歌「今日面接の予定は無かったはず……バイト先にスーツで? そんなわけないですよね」
梨子「どうせ知ってるんでしょ?」
千歌「知りませんよ。報告書には簡単な履歴しか記載されてませんでしたから」
梨子「報告書……私の個人情報、裏で取引でもされてるの?」
千歌「いえ。我々の方で厳重に管理しております」
梨子(女の子だし、外は暗いから家に入れたけど)
梨子(新手の詐欺? でも、悪い子には見えないんだよなあ)
梨子「服装のことは……察して。言いたくないの」
5
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/14(水) 14:07:47 ID:5rFYohg6
千歌「あ、もしかしてご友人とお会いしてました?」
梨子「――っ」
千歌「大学の同級生は今頃入社後2、3年目くらいですかね。立派に働いて、お給料ももらって……もしかしたら結婚されている方もいらっしゃるかもしれない」
千歌「そんな中、あなただけは……無職」
千歌「惨めだなぁ、そりゃあ嘘もつきたくなりますよね」
梨子「――うっさい!!」
千歌「……」
梨子「ハァ…ハァ…」
梨子「早く要件を言って。言わないなら……出てってよ」
千歌「……では、単刀直入に申し上げます」
千歌「あなたはリライフの被験者に選ばれました。我々の実験に協力していただきたいんです」
梨子「リライフ……?」
6
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/14(水) 14:08:22 ID:5rFYohg6
千歌「我々リライフ研究所は、社会からドロップアウトした……まあ、いわゆるニートを対象に、」
梨子「……」カチン
千歌「社会復帰のためのプログラムを検証している組織なんです。そのプログラムを『リライフ』と呼んでいて……」
梨子「ちょっと待って」
千歌「はい?」
梨子「私はニートじゃない。ちゃんとバイトしてるし就活もしてるの!」
千歌「アハハ、これは失礼しました」
千歌「存じております。あなたの経歴は、勝手ながら全て調べさせていただきましたから」
千歌「実験期間は1年間。もちろんあなたの貴重な1年間をいただくことになりますので、それに見合った対価もご用意いたします」
千歌「まず1つ。一年間の桜内さんの生活費用は全てこちらで負担させていただきます」
梨子「全部っ……!?」
千歌「ええ。食費から家賃、光熱費……その他諸々、一年間を過ごすために必要な出費全てです」
千歌「我々の実験にお付き合いしてくださるのなら、桜内さんは1円も払うことなく1年間生活することができます」
千歌「そしてもう1つ。1年間の過ごし方次第では、最終的にこちらから就職先のご紹介もいたします」
梨子「ホントっ!?」
千歌「そちらに関しては桜内さんの成績次第ですので確約はできませんが、桜内さんの生活をこちらで観察・記録して企業に推薦する、という形です」
7
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/14(水) 14:08:50 ID:5rFYohg6
梨子(丁度今月苦しかったところだし、もしかしてスゴイいい話なんじゃない?)
梨子(待って……やっぱり詐欺なんじゃ? こんないい話、あるわけが……)
千歌「あ、今『詐欺かも』って思いましたね」
梨子「……!」ギクッ
千歌「別にいいんですよ。実験を受けていただかなくとも」
千歌「私共は、また別の被験者を探しますので」
千歌「ですが、多分二度とないチャンスだと思いますよ」
梨子「……そういうのも詐欺の常套手段でしょ」
千歌「では、このお話は無かったということで」
梨子「……」
千歌「貴重な時間を割いていただきありがとうございました」スッ
8
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/14(水) 14:09:16 ID:5rFYohg6
梨子(この話を受けなかったら)
梨子(私、このままずっとフリーターのまま?)
梨子(27歳の無職で……ロクな経歴だって無くて、貯金も無くて)
梨子(イヤだよ、そんなの)
梨子「――ちょっと待って」
千歌「はい?」
梨子「……1年間って、私は何をすれば?」
千歌「わあ♪ 嬉しいなぁ、興味持ってもらえて!」ニコッ
梨子「……///」ドキッ
梨子(この子、こんな可愛い笑い方もできるんだ)
千歌「この春から1年間、女子高生になっていただきたいんです」
梨子「女子……高生?」
千歌「はい。JKですよ、JK」
梨子「えええっ!?!?!?」
ドスンッ
千歌「桜内さん、深夜なのでお静かに。上の階の方が怒ってます」
9
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/14(水) 14:09:40 ID:5rFYohg6
梨子「いや、女子高生って……私もう27よ?」
梨子「しかも1年間……終わる頃には28でアラサーじゃない」
千歌「やだなー、もう片足突っ込んでるじゃないですかー」クスクス
梨子「笑い事じゃないわよっ!」
千歌「大丈夫ですよ、その辺の根回しは完璧です」
梨子「いや、まず見た目がね……」
千歌「これ、飲んでください」スッ
梨子「……なにそれ」
千歌「コ〇ン君よろしく、小さくなる薬です」
梨子「やっぱり詐欺じゃない」
千歌「まあまあ、飲んでみてくださいよ」
梨子「イヤよ! 何なの薬って、怖いよ!」
千歌「危ない成分は入ってません。飲めば高校生くらいの見た目まで若返るだけですよ?」
梨子「それが既に危ないんだって! って、若返る!?」
千歌「この薬を飲むだけであなたもピッチピチのJKに!」
梨子「胡散臭いにも程があるわよっ!」
千歌「いかがです? ご協力いただけませんか?」
梨子「っ……!」
10
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/14(水) 14:10:06 ID:5rFYohg6
梨子(今更高校生? ふざけないでよ)
梨子(あんな生活、もう二度と……)
千歌「ピアノコンクールのこと、そんなに引っかかりますか?」
梨子「……やっぱり知ってるのね」
千歌「当然ですよ。桜内さんにとって、人生の大きな転機ですからね」
梨子「無理よ。そもそも、あれから一切ピアノに触れてないの」
千歌「いえ、何もあの時をやり直せなんて言ってませんよ」
千歌「桜内さんに通っていただく高校は……ここです」スッ
梨子(入学案内……)
梨子「浦の星女学院?」
梨子「内浦……ってこれ、静岡県じゃない! 東京じゃないの!?」
千歌「住む場所の事は気にしないでください。ちゃんとご用意してますので」
梨子「そういう問題じゃ……滅茶苦茶すぎるよ、こんなの」
梨子「ごめん、やっぱりなかったことに……」
11
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/14(水) 14:10:26 ID:5rFYohg6
千歌「――また、逃げる?」
梨子「は?」
千歌「環境が変わるのって辛いですよね。その上、辛い記憶しかない高校生活をもう一度……面倒だなーって思いましたか」
梨子「……」
千歌「でもね。人生って、辛い事の連続なんだよ」
梨子「なにを……」
千歌「いつまでも逃げてばかりじゃいられない。向きわなければいけない時が必ず来る。それが早いか遅いかってだけ」
千歌「……まあ確かに急な話ですので、今日は一旦引きます」
千歌「この薬、差し上げますね」
梨子「本当に危なくないの?」
千歌「ご協力いただける決心がついたら飲んでください」
千歌「あ、ちょっと眠くなるので注意してくださいね」
千歌「今の人生を変えるチャンスだと思うか、怖気づいてニート生活を続けていくか……それは桜内さん次第です」
千歌「いいお返事をお待ちしております」
12
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/14(水) 14:10:47 ID:5rFYohg6
―――
―
チュンチュン…
梨子「ふあ……朝?」
梨子「バイト、今日休みだっけ」
梨子「……顔洗お」
〜〜〜
パシャパシャ…キュッ
梨子「……」フキフキ
梨子「え?」
梨子「誰……これ」
梨子(いや、確かに私だ)
梨子(鏡に映ってるのは、そう……高校生くらいの自分)
――危ない成分は入ってません。飲めば高校生くらいの見た目まで若返るだけですよ?
梨子「……」サー
梨子「いやああああああああああああああ!!!」
13
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/14(水) 14:11:39 ID:5rFYohg6
ピンポーン
梨子「ふぇ?」
梨子「誰……」スタスタ
千歌『どうも、高海です』
梨子「……はぁ」
ガチャッ
梨子「はい」
千歌「あれ? あ、飲んでくれたんだね!」パァァァ
梨子「勢い! 勢いで飲んじゃったの!!」
千歌「スッゴイ可愛い。ねえ、高校時代はモテたんじゃない?」
梨子「可愛いとかやめてよぉ……/// あと、女子高だったから……」
千歌「ふーん、合コンとかしなかったんだ」
梨子(こっちが見た目高校生だからって、急に馴れ馴れしくなってるし)
梨子「……あれ、この段ボールなに?」
千歌「ああ、重いから一旦床に置いてたの」
梨子「いや、そういうことじゃなくて」
千歌「中に入ってるのは、制服とか、教科書とか。重くて腰が痛くて痛くて」
梨子「静岡に持っていけばよかったのに」
千歌「あ」
梨子「ひょっとしてバカ?」
千歌「あはは……まあ、確認としてね?」
梨子「ほら、上がって」
千歌「はーい、お邪魔しまーす」
14
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/14(水) 14:12:51 ID:5rFYohg6
―――
―
千歌「これが契約書ね。内容は大体昨日話した通りだよ」
梨子「ふーん」
梨子(なんか、全然実感ないな)
梨子「……そういえば」
千歌「ん?」
梨子「1年間、ちゃんと高校生として過ごすのよね」
千歌「そーだよ」
梨子「その私が、次の年にいきなり28歳になってたら……いくら何でも矛盾が生まれない?」
千歌「心配しないで。根回しは完璧って言ったでしょ」
梨子「いや、クラスメイトの記憶とかね……」
15
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/14(水) 14:13:09 ID:5rFYohg6
千歌「確かに転校生がいたって記憶は残るかもだけど」
千歌「大体の記憶は消えるから大丈夫だよ」
梨子「消える……?」
千歌「梨子ちゃんが飲んだ薬には、ウチの企業で秘密裏に開発されたナノマシンが含有されててね」
梨子「え?」
千歌「大丈夫。体に害はないし、こっちでコントロールできるから」
梨子「まって……頭が追い付いていかないんだけど」
千歌「簡単に言うと、これから梨子ちゃんに関わった人間の記憶はこっちで多少操作できるってこと」
梨子「……」ポカーン
千歌「えへへ、ウチの科学力は凄いんだよ?」
梨子「……もういい。体が若返った時点で、なんか耐性ついた気がするから」
16
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/14(水) 14:13:33 ID:5rFYohg6
―――
―
内浦
梨子「よっと……こんな感じでいいかな」
梨子(向こうのアパートは退居の手続き済ましてくれるって言ってたし、これで私も静岡民かー)
梨子「明日から女子高生……全然実感沸かないんだけど」
プルルル…
梨子(知らない番号……)
梨子「はい」
千歌『あ、もっしもーし。梨子ちゃん?』
梨子「梨子……ちゃん?」
千歌『あ、呼び方ね。私たち、これからしばらくの付き合いになるわけでしょ? 今のうちに距離を縮めておきたくて』
梨子「それにしたって、27で梨子ちゃんは……」
千歌『歳は関係ないのだ。女の子はいつになっても女の子だよぉ♪』
17
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/14(水) 14:14:32 ID:5rFYohg6
梨子「それで、何の用?」
千歌『特にないよ。そっちの準備は順調?』
梨子「切るわ」
千歌『わわっ! 待って待って!』
梨子「なに?」
千歌『一応梨子ちゃんは被験者なんだから、近況を逐一報告する義務があるのだ』
梨子「はぁ……問題ないわ。明日から通う高校の場所も確認してきたし、制服のサイズもちゃんと合ってる」
千歌『体の調子は?』
梨子「まさか、あの薬って副作用が……?」
千歌『ないない。ただ、いきなり高校生に若返ったわけだしさ。リハビリじゃないけど、その体には慣れたかなーって』
梨子「うーん……元々あんまり運動神経いい方じゃないし」
千歌『初っ端の体育で転んだりしない?』
梨子「あり得ないわよ……うん、流石にね」
千歌『フフッ、入学早々目立ちまくる梨子ちゃんを想像したら……笑いが……ククッ』
梨子「……」
ブツッ…プー…プー…
梨子「ホント、変な人」
18
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/14(水) 18:50:26 ID:5rFYohg6
―――
―
浦の星女学院
梨子「はぁ……緊張するなあ」
梨子(呼ばれるまで教室の外で待ってるように言われたけど)
梨子(いきなり自己紹介なんて、ハードル高すぎるよぉ)
梨子(そりゃあ、1年足らずとはいえ一応社会人経験してるわけだし? この学校の生徒と比べれば多少肝は据わってるとは思うけど)
梨子(この見た目で本当に通るのか、27歳の私が今時の高校生に馴染めるのか)
梨子(そもそも本当に転入できるのか、何かの拍子にバレたりしないか)
梨子(ああ……不安が多すぎる)
担任「――じゃあ、入って」
梨子「あ、はい!」
梨子「失礼します……」スタスタ
19
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/14(水) 18:52:51 ID:5rFYohg6
ザワザワ…
カワイイ……メッチャキレイ……
梨子「うぅ……///」
梨子(視線浴びてる……恥ずかしいよぉ……)
担任「自己紹介、してくれる?」
梨子「はい。えと……両親の都合で、東京の音ノ木坂学院から転入させていただきました。桜内梨子と申します」
梨子「以後よろしくお願いします」ペコッ
梨子(よし、噛まずに言えた!)
シーン
梨子(あれ?)
ヒソヒソ…
「え、もしかしてお嬢様?」
「音ノ木坂学院って、音楽で有名なところじゃなかったっけ」
「すごーい、ガチなお嬢様じゃん」
梨子「……?」
梨子(普通……だったよね?)
20
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/14(水) 18:53:22 ID:5rFYohg6
「奇跡だよっ!!」ガタッ
梨子「ふぇ?」
梨子「――あ、あなたはっ」
千歌「フフッ……久しぶり、梨子ちゃん!」
梨子(な、なんでいるの〜〜〜っ!?!?!?)
梨子(確かに、少し子供っぽいなーとか、学生でも通じるんじゃないかなーとか、こっそり思ってたけど!!)
梨子(まさか本当に女子高生だったとか、そんな話ってある!?)
曜「知り合い?」
千歌「うん。昔、東京で知り合って」
曜「ふーん、そっか」
千歌「こんな所で巡り合うなんて、まさに奇跡としか言いようがないね、うんっ!」
梨子(白々しい……)
担任「丁度いいわね。高海さん、桜内さんを案内してくれる? 軽く学校を一周する程度でいいから」
千歌「はーい」
21
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/14(水) 19:09:00 ID:5rFYohg6
―――
―
廊下
千歌「で、そこが美術室、あそこが音楽室ね」
梨子「……」
千歌「梨子ちゃん、聞いてるー?」
梨子「説明して」
千歌「説明も何も、見ての通りだけど。ちゃんと制服着てるでしょ?」
梨子「そうじゃなくて! なんであなたがいるの!」
梨子「っていうか、高校生だったの……? 高校生が研究所で?」
千歌「梨子ちゃんって、たまにバカだよね」
梨子「は?」
千歌「自分はどうやって女子高生になったのかな」
梨子「まさか、あなたも飲んでるの?」
千歌「そういうこと。研究対象を観察するには、これが一番手っ取り早いからね」
千歌「因みに、私は去年からここに通学しているのだ! 上手く馴染めてるでしょ?」
梨子「なるほど、どうりであなた……」
22
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/14(水) 19:09:29 ID:5rFYohg6
千歌「あとその、"あなた"っていうのやめない? 一応知り合い設定なんだからさ」
梨子「そういえば、なんであんなことしたのよ。余計目立っちゃったじゃない」
千歌「私なりのフォローのつもりだったんだよ? っていうか……クスクス……面接みたいだったね、梨子ちゃんの自己紹介……プククッ」
梨子「面接? ……あっ」
梨子(そっか!! だからあの時お嬢様って……!!)
梨子「うぅ……///」カァァァ
千歌「すっかりお嬢様キャラ定着しちゃったね」クスクス
梨子「笑わないでよっ!」
千歌「じゃあ第一印象を払拭するために、まずは呼び方から変えていこー!」
梨子「呼び方って言っても、なんて呼べば……高海さん?」
千歌「固い固い。もっと親しみを込めて……"千歌ちゃん"って呼んでほしいな♪」
梨子「えぇ……」
23
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/14(水) 22:06:26 ID:hDIvdSbI
やっぱり設定はいいんだよな
中身がダメだった
24
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/15(木) 04:18:59 ID:eUedfa/E
読んでるよ
25
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/15(木) 06:13:22 ID:Bhac3L7U
乙
ここの千歌は一体何者なんだ
26
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/15(木) 17:05:31 ID:Q19Gwy7A
未来のあなた自身なのです
27
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/15(木) 23:46:29 ID:3d0vfX0c
ガラッ
千歌「失礼しまーす」
梨子「ちょ、高海さん! 勝手に入ったらダメでしょ!」
千歌「もー、よーびーかーたー!」
梨子「それどころじゃ……」
千歌「大丈夫だよ。そういうの、基本自由だから」
梨子「自由に使っていいってこと?」
千歌「ウチの理事長がね。学校の設備を生徒が自由に使えないのはおかしいって」
梨子「うーん……そうかもしれないけど、防犯上の問題として……」
千歌「ねえねえ梨子ちゃん。ピアノ、弾いてみない?」
梨子「――え?」
千歌「聴いてみたいな、梨子ちゃんの演奏」
28
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/15(木) 23:46:44 ID:3d0vfX0c
千歌「だめ?」
梨子「……無理よ。もう10年近く弾いてないし」
千歌「どうして? お客さん、私だけだよ?」
梨子「誰かに聴かせられるようなものじゃないから」
千歌「私は聴いてみたいけどなぁ」
梨子「……ごめんなさい」
千歌「ふーん……ま、いいや」
千歌「戻ろっか、教室」
29
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/15(木) 23:47:06 ID:3d0vfX0c
―――
―
キーンコーンカーンコーン…
担任「はい、じゃあテスト始めるよー」
担任「春休み明けの課題テストね。みんなちゃんと勉強してきたー?」
梨子「……は?」チラッ
千歌「あ」
千歌「……てへっ」
梨子(言い忘れてたなあー!!)
梨子(くそぉ……まあ二浪もしたわけだし? それなりに覚えてるでしょ……多分ね)
30
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/15(木) 23:48:02 ID:3d0vfX0c
担任「ジャンジャン後ろに回してー、みんな早く始めたいでしょ」
梨子(あー、あったよね。後ろに回していくやつ)
梨子(流石に身体が覚えてるなあ。……あれ?)
梨子「……」キョロキョロ
梨子(どうやって書くの? ペンとか渡されてないけど)
梨子(嘘……みんな机に出してる)
梨子(――あ、そっか)
梨子(筆記用具……自分で持ってくるんだ)
梨子(あああああああああああああああっっっ!!!)
梨子(仕事ではほとんど使わないから、すっかり持ち歩かなくなってたんだった……!)
梨子(やっば、どうしよう)
梨子(高海さん……は、席離れてるし)
梨子(っていうか、試験中に話しかけられるわけがない!!)
梨子(どうしよう……先生に言うしかないよね)
梨子(でもなあ。いきなり筆記用具忘れましたーなんて言ったら、間違いなく目立つし……また変なレッテル貼られちゃうし)
梨子(でも、背に腹は代えられないし……うぅ、仕方ないかぁ……)
梨子(やば、いい歳して泣きそうなんだけど)
31
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/15(木) 23:48:38 ID:3d0vfX0c
曜「……」スッ
梨子「……ふぇ?」
曜「……」クイックイッ
梨子(シャーペンと……消しゴム)
梨子「……いいの?」
曜「シー」
曜「ん」
梨子「ありが……とう……」スッ
梨子(やばいやばいやばいっ!! 隣の人が超イケメンだった!!)
梨子(あぁ……一回りも下の子に泣かされちゃったよ)グスッ
32
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/15(木) 23:52:48 ID:3d0vfX0c
梨子(よし! 隣の子の善意に応えるためにも、頑張って解かなくちゃね!)
梨子(まずは……国語か。古文から解くのが定跡だよね)ペラッ
梨子(え? 全然読めないんだけど。文法……助動詞? この単語って意味なんだっけ)
梨子(嘘でしょ……ほとんど忘れてる?)
33
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/16(金) 00:02:37 ID:PHTmX1Fs
―――
―
キーンコーンカーンコーン…
曜「ふぁ……午前のテスト終わったぁ」
梨子「あ、あの……さっきはありがとう」
曜「ん? あー、いいのいいの。予備の置いてただけだし、問題は無かったよ」
梨子「また色々目立っちゃう所だった」
曜「えへへ。曜ちゃんのファインプレーだね!」
梨子「曜ちゃん?」
曜「あたしの名前は渡辺曜。これからよろしくね」ニコッ
梨子「渡辺さん……あ、私の名前は……」
曜「桜内梨子ちゃんだよね!」
梨子「へ?」
曜「あれ、違った?」
梨子「え……ううん、合ってる。なんで知ってるの?」
曜「だって、今朝自己紹介してくれたばっかじゃん」
梨子「それはそうだけど……」
梨子(私だったら初対面の人の名前とかすぐ忘れちゃうかも。この子偉いなあ……優しいし)
曜「あ、午後もそのシャーペン使っていいよ。持ってきてないんだよね」
梨子「うん、忘れちゃって。本当にありがとう」
曜「もしかしてドジっ子?」
梨子「違うよ……多分」
34
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/17(土) 01:48:28 ID:bA.7fZPo
おつ
30手前でも数時間で人の名前忘れたりしないだろ
35
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/17(土) 09:38:48 ID:wsJIKqus
美少女の名前はともかくオッサンの名前は数時間で忘れるかも
36
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/20(火) 11:18:16 ID:CXyiKTtE
―――
―
梨子(間近で若さを見せつけられて、午前だけで相当体力持ってかれた気がする)
梨子(なんか午後もテストあるみたいだし、せめてお昼休みだけでも一人でゆっくり食べよう)
梨子(――って思ってたのにぃ)
曜「あーん……ハムハム……んー! 新発売のチョコチップパンおいしい!」
千歌「新発売って言っても、今までのとあんまり変わんない気がするけど」
曜「全然違うよ! 今回のパンにはねー、生クリームも入ってるんだ!」
千歌「なにそれメッチャ甘そう」
梨子(いつの間にか高海さんと渡辺さんと私の三人で中庭に来てるし)
梨子(私は断ったのに、強引すぎるよぉ……)
曜「女の子は甘い物に目が無いんだよ」
千歌「私が女の子じゃないみたいな言い方やめてくれる?」
曜「胸に立派なものついてるじゃん」
千歌「よーちゃんだって大して変わんないよ!///」
梨子(凄いなあ、高海さん。今時の女子高生とこんなに仲良くなれるなんて)
梨子(今いくつなんだろう……大人の姿の彼女をまだ見てないから想像もできないよ)
37
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/20(火) 11:20:31 ID:CXyiKTtE
曜「りーこちゃん!」
梨子「わっ……り、梨子ちゃん?」
曜「あれ? 梨子ちゃんで合ってるよね」
梨子「そうだけど……"梨子ちゃん"はちょっと」
曜「可愛いじゃん」フフッ
梨子「はぁ……」
梨子(実年齢言うわけにもいかないしなあ)
梨子(っていうか、高校生くらいの年齢なら"ちゃん"はつけないと思うんだけど……私の時とは違うのかしら)
曜「じっと見つめて、そんなに私のパンが食べたかった?」
梨子「へ?」
曜「はい!」スッ
梨子「……なに?」
曜「食べない?」
梨子「食べかけじゃない」
曜「あれ、梨子ちゃんってそういうの気にするタイプ? やっぱ東京の子は違うなあ」
梨子「……食べる」
曜「へへっ♪ はい!」
梨子「……」ハムッ
梨子「モグモグ……あっま」
千歌「やっぱり?」
梨子「甘ったるくて、好き好んで食べようとは思わないかな」
曜「えー!?」
千歌「ほらー! おかしいのはよーちゃんだよ!」
曜「こんなにおいしいのに……」ムゥ
38
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/20(火) 11:53:20 ID:CXyiKTtE
千歌「そういえば梨子ちゃん、テストの出来はどう?」ニヤニヤ
梨子「あなたねぇ……」
曜「梨子ちゃん、前の学校では成績トップだったらしいね」
梨子「はぁ!?」
曜「千歌ちゃんが言ってたよ」
梨子「高海さん……?」ニッコリ
千歌「だって……ねえ?」
千歌「H大に合格したくらいだもん。地方の田舎高校のテストなんて余裕でしょ?」ボソボソ
梨子「二浪よ二浪! それに、あれから何年経ったと思ってるのよ!」コソコソ
千歌「6、7年くらい? 大丈夫だって、二年余分に勉強しても大半の人は合格できないよ。それだけ梨子ちゃんは凄いんだ」ヒソヒソ
梨子「半分以上忘れてたし……多分赤点ギリギリだよ」ゴニョゴニョ
曜「ふーたーりーとーもー!!」
ちかりこ「わあっ」
曜「仲間外れにしないでよ。内緒話、私も混ざっちゃダメかな?」
梨子「そんなことないよ」
千歌「そうそう、私とよーちゃんの仲じゃない」
曜「千歌ちゃんだけズルい! 私も梨子ちゃんと内緒話するー!」ギュー
梨子「きゃっ!」
曜「クンクン……梨子ちゃんっていい匂いするね」エヘヘ
梨子「ちょ、渡辺さん……周りの人が見てるから!」
曜「見られたらイヤ?」
梨子「イヤじゃ……ないけど」
梨子(こんなスキンシップ激しい子、私の同級生にはいなかったよね。この子が変わってるって事なのかな……?)
39
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/21(水) 00:04:01 ID:3znLH2PI
期待
40
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/21(水) 20:03:35 ID:Jvw6EpTU
キーンコーンカーンコーン…
千歌「あ、もうお昼休み終わりだ」
曜「テストしんどー」
千歌「よーちゃんはいいよー、どうせ今回も一位取っちゃうんでしょ?」
梨子「一位?」
千歌「よーちゃんはね、学年で一番勉強ができるんだよ! 去年なんか全教科で一位取った事もあるんだ!」フフン
梨子「なんで貴方が得意気なのよ……でも、本当にすごいのね」
曜「いやー、それほどでも」エヘヘ
千歌「おまけにスポーツ万能だし、まさに才色兼備の美少女! よーちゃんが見てるのは、普通星人の私には想像もできない世界だよ」
曜「そんなことないよ? 私も千歌ちゃんも大して変わんないって」
千歌「……」ニヤッ
梨子「?」
千歌「今回のテスト、結果が楽しみだね」
41
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/21(水) 20:03:58 ID:Jvw6EpTU
―――
―
キーンコーンカーンコーン…
梨子「ふぁ……終わったー」
曜「千歌ちゃん! 一緒に帰ろ?」
千歌「うん、いいよー」
梨子(ふーん……あの二人、家が近いんだ)
梨子(きっと高海さんが住んでるアパート? が、渡辺さんの家と近いのね)
梨子(それにしても想像以上に疲れたわね。浪人時代は大して苦痛に感じなかったけど……久しぶりに一日中テスト受けてみると、やっぱり堪えるなあ)
梨子(浪人生の私に、敬礼)
梨子「……帰ろ」
42
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/21(水) 20:18:19 ID:Jvw6EpTU
―――
―
コンビニ
梨子(お酒買っていこうかな。頑張った自分へのご褒美、みたいな)
梨子(ワインだけでいいや)
梨子「お願いしまーす」
店員「……未成年の方ですよね」
梨子「え? ……あ」
梨子(――制服だったああああああああああああああああ!!!)
梨子「ごっ、ごめんなさい!!」パタパタ
店員「あっ、お客様!」
ウィーン…
梨子「はあっ……はあっ……はぁ」
梨子「ここまでくれば、大丈夫……かな?」
梨子(いや、監視カメラに写っちゃってるか。浦女の制服ってバレバレだし、学校に連絡されちゃうかなぁ)
梨子「やってしまった……」ズーン
43
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/21(水) 20:19:22 ID:Jvw6EpTU
クスクス…
梨子(誰かが笑ってる?)
千歌「いやー、梨子ちゃんってホント面白いよね」プクク…
梨子「って、高海さん!?」
千歌「制服のままお酒買おうとするなんて、私が今まで担当した中では初めてだよ」
梨子「うぅ……笑わないでよぉ……///」
千歌「はい」ガサッ
梨子「ふぇ? これ……」
千歌「お酒が欲しかったら、今度から私に言ってね。あんまり高いのじゃなければ何でも持ってきてあげるよ」
梨子「あ、ありがと……」
千歌「さてと。これから梨子ちゃんの家にお邪魔してもいいかな」
梨子「は?」
千歌「無事に初日が終わったわけだし、感想が聞きたいんだ。経過観察も兼ねて」
梨子「あー……なるほどね」
44
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/22(木) 21:05:05 ID:EnkVbB0c
見てるよ
45
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/22(木) 22:12:40 ID:sn469t4U
お前を見ているぞ
46
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/23(金) 00:59:47 ID:/EtyjLCI
はよ
47
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/23(金) 12:58:45 ID:cCnhpXOk
―――
―
梨子'sアパート
千歌「それで、どうだった? 高校生に戻った感想は?」
梨子「……」ジー
千歌「やだなー、そんな怖い目で睨まないでよ。はい、ワイン」
梨子「どうも」スッ
コクッ…コクッ…
千歌「赤が好きなの?」
梨子「別に。今日はそういう気分だっただけ」
千歌「苦い思い出を渋さで忘れたかった?」
梨子「うるさいなあ……意味なんてないよ」
千歌「色々思い出したんじゃない? 私もそうだったから」
梨子「……まあ、ね」
梨子「最悪だったわ。思い出したくないことが、頭の中でいくつも浮かんできた」
千歌「期待されてた頃のこと?」
梨子「渡辺さんを見てると、嫌でもね」
千歌「生徒だけじゃない、先生たちも。学校中の期待を背負ってたんだよね」
梨子「そういうのってどこまで調べてるわけ?」
千歌「企業秘密ってことで」
48
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/23(金) 12:58:58 ID:cCnhpXOk
梨子「……まあ、今の私には関係ない事よ。とにかく、この一年間を平穏に過ごす事さえできれば、それでいいの」
千歌「平穏に……か」
梨子「だから、学校の行事とかは全部忘れずに教えてよね。また忘れてましたーなんて言って、無駄に目立ちたくないの」
千歌「まだテストのこと怒ってるのー? ごめんごめん、でも結構できたでしょ? 大学じゃ外国語専攻してたわけだし」
梨子「そりゃ英語はできたけど、他の教科は知識とかほとんど抜けてたわ」
千歌「大丈夫だって、高二の春休み明けテストだもん。基礎しか聞かれなかったじゃん?」
梨子「あんなのみんな満点取ってくるだろうし。……はぁ、赤点いってなきゃいいけど」
千歌「……ちなみに、浦女の赤点基準は平均点の6割以下だから」
梨子「結構低い? それならなんとかいける……かも」
千歌(自己評価が低すぎるんだよなぁ)
梨子「そういえば、今日は渡辺さんと一緒に帰ったんじゃなかったの?」
千歌「用事思い出したーって、急いで梨子ちゃんの所に向かったんだ。観察のことすっかり忘れててさー」テヘヘ
梨子「随分と仲がいいのね。渡辺さんとは去年知り合ったばかりでしょう」
千歌「……うん、そうだよ」
梨子「やっぱり高海さんはすごいなあ。私、みんなと仲良くなれるかな」
千歌「なれるよ、きっと」
梨子「……頑張る」
千歌(ごめんね、梨子ちゃん)
千歌(私……貴方に嘘をつきました)
49
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/24(土) 19:10:18 ID:AKWKeZgA
わくわくする
50
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/25(日) 00:10:05 ID:zkjPnmPE
>>47
千歌「色々思い出したんじゃない? 私もそうだったから」
ここが気になる…千歌ちゃんも被験者だったのか観察者として高校生を1年過ごしての考えなのか
51
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/25(日) 01:07:33 ID:YuYTfXLE
大いなる蟹の味噌汁
52
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/25(日) 10:26:26 ID:s80g2Fdk
元ネタ知らないけど面白い
53
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/26(月) 14:22:19 ID:aSVVVlzg
――――――
――――
――
梨子(いつからだろう)
梨子(義務感でピアノを弾くようになったのは)
――桜内さん、セミファイナルでソナタ29番選んだってホント?
――流石だよ、プロも口を揃えて難しいって言う曲なのに。
梨子『選んだのはコーチだよ。……まあ、私がやるって言ったんだけどね』
――みんな応援してるんだ。桜内さんは全校生徒の期待を背負ってるんだから。
――まあ、どうせ今回も優勝しちゃうんでしょ?
梨子『あはは……頑張るね』
――それにしてもすごいよねー、G級で優勝した次の年に特級に参加だなんて。
――ジュニアに参加したのは中学の時だっけ?
――違うよ、小学校の時。確かその時も優勝したんだよね。
――先生たちも言ってるよ、桜内さんは十年に一人の天才だって。
――羨ましい……私もそういうこと言われてみたいなぁ。
54
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/26(月) 14:22:43 ID:aSVVVlzg
―――
―
梨子『あの……』
コーチ『なにかしら』
梨子『曲を変更してもいいですか』
コーチ『どうして?』
梨子『弾けるかどうか不安なんです』
コーチ『自信を持ちなさい。練習で音を外したことはないでしょう』
梨子『そうじゃない……この楽譜を、私に表現できるのか』
梨子『彼がこの曲に込めた想いを、本当に理解できているのか……不安なんです』
コーチ『貴方の年齢で、数々の楽曲を精密に演奏できる人は少ない。貴方は選ばれた人間なのよ』
梨子『私は……』
コーチ『断言するわ。貴方は必ず優勝する』
梨子『……』
梨子『はい』
55
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/26(月) 14:23:23 ID:aSVVVlzg
―――
―
『お待たせいたしました』
梨子(来た)
『ただいまより、20××年度、第××回、ぺティ〇ピアノコンペティション、特級セミファイナル、演奏番号1番の審査を開始致します』
梨子(大丈夫、コーチの言われた通りにすればいい)
梨子(練習の通りに弾けばいいの)
梨子(それが、私のピアノなんだから)
『それでは、1番の審査を開始致します』
56
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/26(月) 14:23:48 ID:aSVVVlzg
―――
―
梨子『コーチ……お待たせしました』
コーチ『ええ、流石よ。今年のファイナルは貰ったようなものね』
梨子『その件ですが……』
――ああっ、見つけましたよ桜内さん。
コーチ『あなたは、審査員の?』
――まさに機械のような演奏……人間業じゃない。
コーチ『この子は将来必ず業界のトップに立ちますよ』
――我々も、今年のファイナルは桜内さんに決定しようと話し合っていた所なのです。
コーチ『いいんですか、そんな事を話して』
――どうか内密に。まあ、あんな演奏を聴かされて他の演奏者を推薦する審査員はいないでしょう。
コーチ『そうでしょうそうでしょう、この子は特別ですから』
梨子『あのっ!』
コーチ『うん? どうしたの、そんな大きい声を出して』
梨子『辞退……させてください』
――はい?
梨子『ファイナルは……辞退します』
57
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/26(月) 14:35:06 ID:aSVVVlzg
――
――――
――――――
梨子「う……ん」
梨子「……夢?」
梨子(最悪な朝ね)
ピンポーン
梨子(誰よ、こんな朝っぱらから)
梨子(お願いだからもうちょっと寝かせて……)
ピンポーン
梨子(留守ですよー……)
ピンポーンピンポーンピンポーン
梨子「あーもうっ!」バサッ
スタスタ…ガチャッ
千歌「おはよー梨子ちゃん」
梨子「……貴方ねぇ」
千歌「なにしてるの? でかけるよ」
梨子「……は?」
千歌「だからー、早く着替えて!」
梨子「いや、意味わかんないんだけど」
千歌「はやくはやくー!」グイグイッ
梨子「わわっ、わかったから! せめて顔洗うまで待って!」
58
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/26(月) 14:42:21 ID:aSVVVlzg
―――
―
梨子「ふぁ……まだ眠いよぉ」
千歌「家に籠っててもどうせ何もしないでしょ」
梨子「何もしないんじゃなくてできないの。テレビがないとかあり得ないから」
千歌「学生は勉強しないとね」
梨子「気分転換くらいさせてよ……」
千歌「確かに、ピアノが無いんじゃ気分転換できないよねー」
梨子「なんでそこでピアノが出てくるわけ?」
千歌「弾きたくないの?」
梨子「弾きたくないの」
千歌「ふーん……まあ、そんなわけでコレだよ!」
梨子「これ?」
千歌「気分転換♪」
梨子「休日の真昼間から学校に来ることが?」
千歌「部活動見学なのだ!」
梨子「勘弁してよ、この年で今更スポーツなんてできないって」
千歌「やってみないと分かんないよ」
59
:
◆PChhdNeYjM
:2018/02/26(月) 14:42:52 ID:aSVVVlzg
よしみ「千歌、おはよー」
千歌「おはよー! 今日の練習はどんな感じ?」
よしみ「いつも通りだよ。グラウンド2周軽く走って、ストレッチしたらもも上げやって――」
梨子(うげー、走ってばっかじゃん)
千歌「それじゃ梨子ちゃん、一緒に走ってみようか♪」
梨子「……は?」
千歌「ランニング」
梨子「どういうこと?」
千歌「そのまんまの意味だけど」
梨子「……え?」
千歌「あ、みんなもうスタートしたよ! レッツゴー!!」グイッ
梨子「わわっ、高海さーん!!」アセアセ
60
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/27(火) 00:27:17 ID:JwMgvOXU
おつ
61
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/01(木) 10:30:54 ID:ESTgZWPg
つづきはよ
62
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/02(金) 21:56:25 ID:u0JcE0hA
あくあく
63
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/02(金) 22:53:56 ID:JnWctC1Q
追いついた
期待
64
:
◆PChhdNeYjM
:2018/03/05(月) 16:47:30 ID:EFtJM9BU
―――
―
梨子「ゼェ…ハァ…ヒュー……ケホッ…」
千歌「梨子ちゃん」
梨子「ハァ…ハァ……なに……」
千歌「高校時代の体力測定ってどんな感じだったっけ?」
梨子「いじわる……どうせ……わかってる……くせに」
千歌「そういえば、シャトルランの回数はじゅう――」
梨子「言わないでぇ!!」
よしみ「その調子じゃ、練習に参加は無理そうだね」アハハ
梨子「ごめんなさい……」
よしみ「大丈夫、体力なんてこれからいくらでも身に付くからね。入部してくれるなら歓迎するよ!」ニコッ
千歌「だってよ梨子ちゃん」
梨子「うぅ……もう走りたくないよぉ」
65
:
◆PChhdNeYjM
:2018/03/05(月) 16:47:49 ID:EFtJM9BU
梨子「そういえば、高海さんは陸上部なの?」
千歌「ううん、安心と安定の帰宅部なのだ!」
梨子「誇って言う事? それにしては、すっごい体力あるのね」
千歌「まあ……去年頑張ったしね」
梨子(あ、なるほど)
よしみ「どうする、まだ見学してく? 校庭使ってるのウチだけだし、他の部活見るなら移動しなきゃだけど」
千歌「うーん……とりあえず、いくつか他も回ってみようかな」
よしみ「わかったー! 梨子ちゃん、いい返事待ってるよ!」パタパタ
梨子「あ、ありがと……行っちゃった」
千歌「いい子でしょ」
梨子「うん。優しくて、頼りがいがありそうで」
千歌「まるで正反対だね」
梨子「言わなくていいから、わかってるから」
66
:
◆PChhdNeYjM
:2018/03/05(月) 16:48:10 ID:EFtJM9BU
「――あっ、あの!」
千歌「お?」
梨子「はい……私?」
「貴方ですよねっ、音ノ木坂から来た2年生!」
梨子「そうだけど……」
ルビィ「私、黒澤っ……ルビィでしゅ!」
梨子「?」
千歌「クスッ」
ルビィ「ひゃっ……/// あの、ちがくて……ぅゅ……」
梨子(リボンは黄色だから、この子は1年生ね)
梨子「とりあえず落ち着いて?」
梨子「私は桜内梨子、音ノ木坂学院から転入してきました」
ルビィ「よろしくお願いしますっ!」
梨子「よ、よろしく……」ニコッ
67
:
◆PChhdNeYjM
:2018/03/05(月) 16:53:21 ID:EFtJM9BU
千歌「ところでルビィちゃん、今日は部活動見学?」
ルビィ「あ、はい……花丸ちゃんと」
梨子(花丸ちゃんって、お友達のことかな?)
梨子「ちょっと高海さん」コソコソ
千歌「ん?」
梨子「この子1年生でしょ、どうして仲いいわけ?」ヒソヒソ
千歌「浦女は人数が少ないからねー、入学式の日に1年生全員とお話できちゃうくらいには」ボソボソ
梨子「確かに1学年1クラスにはびっくりしたけど……」ゴニョゴニョ
梨子(しかも普通の半分くらいの人数だし。地方と都内を比べるのもどうかと思うけど、それにしても……ね)
ルビィ「あの……」
千歌「あ、ごめんねー、ほったらかしにしちゃって」
梨子「私に用があるんだっけ?」
ルビィ「はい! いつかお話できればと思って……」
ルビィ「私たち、今日は図書館にいたんですけど。校庭を見たら、桜内さんが走ってるのが見えたので」
梨子「げっ」
千歌「プククッ、今思い出しても笑えるなあ」
梨子「からかわないでっ!」
ルビィ「い、一生懸命走ってて、すごいなあって思いました!」
梨子(フォローで逆に抉られる……)
68
:
◆PChhdNeYjM
:2018/03/05(月) 16:56:23 ID:EFtJM9BU
梨子「それで、私と話したくて来てくれたのね」
ルビィ「はい!」
梨子「えと……音ノ木坂に興味があるの?」
ルビィ「μ'sの話を聞きたいんです」
梨子「ミューズ……石鹸?」
ルビィ「ふぇ?」
千歌「えぇ……」
梨子「え? え? 何、その反応」
千歌「梨子ちゃん……母校での出来事くらい知っておこうよ」
梨子「は?」
千歌「まあ無理もないか。卒業して5年近い話だし」
ルビィ「えと……ああ、μ'sの事ですね」
千歌「うん、そうだよ」ニコッ
梨子「どういうこと?」
千歌「嘘は言ってない」
梨子「???」アセアセ
69
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/08(木) 01:02:14 ID:H10LVxGQ
乙
70
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/09(金) 16:22:15 ID:pENyBZOo
マダー
71
:
◆PChhdNeYjM
:2018/03/10(土) 18:56:43 ID:BenPRDwQ
ルビィ「私、μ'sが大好きで……ホントは音ノ木坂に行きたかったんですけど、お姉ちゃんがダメって」
梨子「お姉ちゃん?」
千歌「黒澤ダイヤさん。この学校の生徒会長だよ」
梨子「へー……」
梨子(まあ、わざわざ東京の学校に通わせる理由はないよね)
梨子「なんかごめんね? せっかく来てくれたのに、何も話せなくて」
ルビィ「いえ、仕方ないですよ……」シュン
梨子(露骨に落ち込んでるし)
千歌「梨子ちゃん」
梨子「え?」
千歌「ピアノ、弾いてあげたら?」
梨子「……なんでピアノが出てくるのよ」
千歌「μ'sの曲を弾いてあげるとか」
梨子「無理だって。聴いたこともないのに」
千歌「今から覚えるのだ」
梨子「簡単に言わないでよ……」
72
:
◆PChhdNeYjM
:2018/03/10(土) 18:57:17 ID:BenPRDwQ
ルビィ「――弾けるんですかっ!?」
梨子「へ?」
千歌「うん、弾けるよ。梨子ちゃんが!」エッヘン
梨子「ちょっ……高海さん!!」
ルビィ「わあ!! 流石です!!」キラキラ
梨子「いや、期待されても……えぇ……」
花丸「――ルビィちゃん」トコトコ
ルビィ「あ、マルちゃん」
千歌「久しぶり、文学系美少女の国木田さん!」
花丸「わっ、高海さん……お久しぶりです」カチコチ
千歌「そーんな固くならないでよぉ」ニコニコ
花丸「いえ……」
73
:
◆PChhdNeYjM
:2018/03/10(土) 18:58:11 ID:BenPRDwQ
ルビィ「ごめんね、置いてっちゃって」
花丸「それはいいんだけど、どうして急に飛び出したの?」
ルビィ「あ、えと……」チラッ
梨子「あー……コホン。初めまして、私は桜内梨子。音ノ木坂学院から転入してきました」
花丸「音ノ木坂って、あのμ'sの!?」
ルビィ「そうだよマルちゃん! すごいよねー!」
花丸「すごいずらー! 東京の人ずらー!」
梨子「ずら?」
花丸「あ! えっと、これは……その」
千歌「口癖なんだよねー」
花丸「うぅ、直したいとは思ってるずら……あ、思ってるんです」
千歌「やっぱり可愛いなあ、マルちゃんは♪」クスクス
花丸「可愛いなんて……からかわないでください!///」プンプン
ルビィ「じゃあ、私たちは図書室に戻ります」ペコッ
千歌「またねー2人とも!」
花丸「さようなら、ずら」トコトコ
千歌「えー? いけずぅ」
梨子「ごめんね、力になれなくて」
ルビィ「気にしないでください。……わわっ、マルちゃん待って〜」パタパタ
74
:
◆PChhdNeYjM
:2018/03/10(土) 19:02:32 ID:BenPRDwQ
千歌「……さてと。梨子ちゃんから見て、あの二人はどう?」
梨子「かわいい」
千歌「だよね」
梨子「なんでもしてあげたい」
千歌「モフモフしたい! モフモフ!」
梨子「飴あげたいなあ」
千歌「道端でうゆうゆしてるルビィちゃんに?」
梨子「近づいてきたところを抱きしめてあげたい!」
千歌「軽く犯罪の匂いがするけど」
梨子「……お互い様よ」
75
:
◆PChhdNeYjM
:2018/03/10(土) 19:36:38 ID:BenPRDwQ
―――
―
ガラッ
千歌「ずっと外で疲れたでしょ」
梨子「……疲れたけど」
千歌「ちょっと休憩ね」
梨子「……音楽室で?」
千歌「だって聴きたいんだもん、梨子ちゃんのピアノ」
梨子「イヤなものはイヤなの」
千歌「どうして?」
梨子「どうしてって……」
千歌「ピアノは嫌い?」
梨子「……嫌い」
千歌「ホント?」
梨子「いつまでも好きでいられると思う?」
千歌「嫌いな事を15年も続けられるわけないよ」
梨子「あの頃と今じゃ状況が違う」
76
:
◆PChhdNeYjM
:2018/03/10(土) 19:37:21 ID:BenPRDwQ
千歌「じゃあ、なんで今でもドレスを飾ってるの?」
梨子「――っ」
千歌「初めて梨子ちゃんのアパートに入った時、すっごいビックリしたんだよ? 梨子ちゃん、高校時代に着てたコンサート用のドレスを飾ってたから」
梨子「飾ってたわけじゃない、クローゼットに入らなくて……」
千歌「バレバレの言い訳はしない方がいい。頻繁に手入れしないと、あんなにきれいな状態は保てないから」
梨子「……」
千歌「未練、あるんでしょ?」
梨子「……そんなの」
千歌「正直、経歴見ただけじゃわからないんだ。なんで梨子ちゃんがピアノを辞めたのか」
千歌「大きな失敗をしたわけでもない。寧ろこれ以上ないくらい順調だったはず」
千歌「あの時梨子ちゃんが、何を思って、何を諦めたのか……それが知りたい」
梨子「……それは友達として聞いてる? 研究員として聞いてる?」
千歌「両方、かな」
77
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/10(土) 21:47:59 ID:xlzW4Brk
きた!
78
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/11(日) 01:27:14 ID:FVKkDINg
乙
記憶あるまま高校生に戻れるって羨ましいな
79
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/11(日) 02:14:15 ID:C0qd0RiQ
もし高校生に戻ったら..とりあえずムダ毛を剃り落としたいな
80
:
◆XnOODp4O6w
:2018/03/12(月) 23:50:48 ID:nG6mtdN.
梨子「ハァ………………いいよ」
千歌「え?」
梨子「ピアノ、弾くから」
千歌「……いいの?」
梨子「弾けって言ったのはそっちじゃない」スタスタ
梨子「がっかりしないでね」
千歌「しないよ」
グッ……ガコン
梨子(蓋の重さ……何年ぶりだろう)
梨子「……」スッ
千歌(ピアノに指を添えた瞬間、梨子ちゃんの表情が変わった……)
梨子「――」
ダンダーンダダーン…
81
:
◆XnOODp4O6w
:2018/03/12(月) 23:53:54 ID:nG6mtdN.
千歌(静かな曲……かと思いきや、段々とテンポアップしていく)
千歌(目まぐるしく曲調が変化する)
千歌(高音と低音が混在して、聴いているだけで頭がおかしくなりそう)
千歌(こんなふざけた難易度の曲を弾きこなせる人なんて、そうそういるはずがない)
千歌(10年近く弾いていなかったなんて嘘だよ……だって)
千歌(毎日練習してる人が、馬鹿みたいじゃん)
千歌「……あれ?」
千歌(校庭の陸上部が、みんな走るのをやめてる)
千歌(聴き入ってるんだ……梨子ちゃんのピアノに)
梨子「――っ」ポタポタ
千歌(汗、かいてる……どうしてそこまで必死に弾けるんだろう)
千歌(梨子ちゃんの視界には、聴いてる人なんて私しか映ってないはずなのに)
千歌(嫌いになったんじゃなかったの?)
千歌(なんで今更、そんなに真剣になれるの?)
82
:
◆XnOODp4O6w
:2018/03/12(月) 23:54:38 ID:nG6mtdN.
ポロン…
梨子「スー……ハー……」
梨子「――ごめん、これ以上は指がもたないや」
千歌「あ……ううん」
千歌(もう10分も経ってたんだ)
梨子「アハハ……やっぱり全然思うように弾けないっていうか、最悪だったよね」
千歌「なんでそういうこと言うのさ」
梨子「え?」
千歌「すごい上手だったよ。びっくりした、長いブランクを疑うくらいに」
梨子「そんなこと……ないよ」
千歌「やっぱりそれも才能ってやつ? いいなあ、ホント羨ましいや」
梨子「……高海さん?」
千歌「――あ……ううん、なんでもないよ」
千歌「結局、全然わかんなかった。どうして梨子ちゃんがピアノをやめちゃったのか」
千歌「私みたいな普通の人間から見れば、天才にしか見えないんだもん」
83
:
◆XnOODp4O6w
:2018/03/13(火) 00:08:04 ID:rTFOK2Wg
梨子「……私のピアノ、どうだった?」
千歌「どうって、すっごく上手だったって言ったでしょ? まるでプロのお手本を聴いてるみたいだった」
梨子「だよね」
千歌「……へ?」
梨子「他人のコピーでしかないんだよ、私」
梨子「私の指が奏でる曲は、私自身の曲じゃない」
梨子「小さい頃から、イヤになるくらい、耳がおかしくなるくらい、頭が狂うくらい、何度も何度も聴かされた"完璧な曲"」
梨子「それを再現しただけなんだよ」
千歌「プロと同じレベルで弾けるってことでしょ? 相当才能がないとできないじゃん」
梨子「……耳に焼きつけられた曲を再現することが私の使命。それさえできればいいと思ってた」
梨子「でも実際は、何の価値も無かったんだ」
梨子「だって――機械と何が違うの?」
84
:
◆PChhdNeYjM
:2018/03/13(火) 00:18:23 ID:czEipnHc
トリップ間違えた
85
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/13(火) 00:57:10 ID:y0.xFI2c
表現者の悩み
86
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/13(火) 04:39:14 ID:azQzNHjg
千歌ちゃんにも色々な事情がありそうで面白い
87
:
スペシャル
:2018/03/13(火) 15:13:30 ID:M0Zhuz2.
http://ssks.jp/url/?id=1451
88
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/13(火) 15:48:56 ID:.LgvwX7w
この梨子は作曲はやってないんだな
89
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/14(水) 00:22:34 ID:I9EWPd/s
続き気になるな
90
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/17(土) 01:34:37 ID:/5ARke82
原作が最終回迎えたな
91
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/25(日) 19:44:28 ID:vDcQs3nA
はよ
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