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海未「私が悪の組織の怪人に!?」
1
:
◆JaenRCKSyA
:2017/07/30(日) 17:20:49 ID:.NYd9Kao
海未「くっ、もう追いつかれてしまうのですか…!」
なぜこんなことになってしまったのか、と海未は自問する。
「おまたせ、魔法戦士ホムラだよ!」
「キャプテンアンカー、到着であります!」
「瞳に翠玉、髪に黒曜!胸に秘めるは――」
海未(ええ、そんな自己紹介をされずとも当然知っています…私たちの暮らしを守るヒーローですから)
海未(昨日まではあの姿をテレビの中に見ていたはずなのに、どうして私は)
海未(怪人として相対しているのでしょうか?)
海未「ああもう!考えていても始まりません!とにかく生き延びさせてもらいます!」
海未(とは言っても、本当にどうしてこんなことになってしまったのか…朝はいつもの日常だったというのに…)
407
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/06/11(月) 19:21:59 ID:FJFEseXc
更新多くて嬉しい乙乙
ダイヤさんの闇は深いな…
408
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/06/12(火) 00:11:36 ID:vXCs/Fos
いいね
409
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/06/16(土) 23:30:31 ID:XAs5/KIo
http://url.ie/12aa4
410
:
◆JaenRCKSyA
:2018/06/25(月) 21:53:10 ID:unHae8zA
お待たせしています…今週中には更新できそう…
411
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/06/26(火) 17:37:40 ID:aTdO2cX6
まってる
412
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/06/26(火) 19:24:31 ID:xX5OCQ9M
ゆっくりあせらずな
413
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/06/27(水) 21:47:53 ID:03WWQlVw
生存報告嬉しみ
414
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/06/30(土) 11:59:03 ID:BWQdXuyA
ひょおおおお!!
415
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/01(日) 16:57:34 ID:Uq8k7ElA
海未(さて、避難所はここから少し離れていますが…向かうとしましょう)
海未は怪人と交戦した直後にヒーローが現れたことから、園内にはヒーローが多いと考え、自分は変身を解除して避難所へと移動を始めた。
海未「しかし、急に怪人が現れたからてっきり怪獣も大量にいると思っていましたが…」
先程から怪獣とも遭遇はするもののいまだに片手で数えられる回数であり、さらに小型の怪獣が単独でいるところにしか遭遇していなかった。
海未「っと…」
海未は前方に蛇の姿をした怪獣が地を這うのを見つけ、ジェットコースターの鉄骨の影に身を隠す。
海未「変身…!」
海未は漆黒の鎧に身を包むと、怪獣までの距離を一瞬で詰めると抜刀と共に怪獣の体を両断する。
海未「ふう…やはりこの程度の怪獣しか──っ!?」
次の瞬間海未は背後に嫌なプレッシャーを感じ、前方へと跳躍する。
海未(さて、避難所はここから少し離れていますが…向かうとしましょう)
海未は怪人と交戦した直後にヒーローが現れたことから、園内にはヒーローが多いと考え、自分は変身を解除して避難所へと移動を始めた。
海未「しかし、急に怪人が現れたからてっきり怪獣も大量にいると思っていましたが…」
先程から怪獣とも遭遇はするもののいまだに片手で数えられる回数であり、さらに小型の怪獣が単独でいるところにしか遭遇していなかった。
海未「っと…」
海未は前方に蛇の姿をした怪獣が地を這うのを見つけ、ジェットコースターの鉄骨の影に身を隠す。
海未「変身…!」
海未は漆黒の鎧に身を包むと、怪獣までの距離を一瞬で詰めると抜刀と共に怪獣の体を両断する。
海未「ふう…やはりこの程度の怪獣しか──っ!?」
次の瞬間海未は背後に嫌なプレッシャーを感じ、前方へと跳躍する。
416
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/01(日) 16:59:44 ID:Uq8k7ElA
なんかミスった、415は無視してください…
417
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/01(日) 17:00:30 ID:Uq8k7ElA
海未(さて、避難所はここから少し離れていますが…向かうとしましょう)
海未は怪人と交戦した直後にヒーローが現れたことから、園内にはヒーローが多いと考え、自分は変身を解除して避難所へと移動を始めた。
海未「しかし、急に怪人が現れたからてっきり怪獣も大量にいると思っていましたが…」
先程から怪獣とも遭遇はするもののいまだに片手で数えられる回数であり、さらに小型の怪獣が単独でいるところにしか遭遇していなかった。
海未「っと…」
海未は前方に蛇の姿をした怪獣が地を這うのを見つけ、ジェットコースターの鉄骨の影に身を隠す。
海未「変身…!」
海未は漆黒の鎧に身を包むと、怪獣までの距離を一瞬で詰めると抜刀と共に怪獣の体を両断する。
海未「ふう…やはりこの程度の怪獣しか──っ!?」
次の瞬間海未は背後に嫌なプレッシャーを感じ、前方へと跳躍する。
418
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/01(日) 18:27:10 ID:Uq8k7ElA
海未「閃刃・裂空!」
空中で身を捻りつつ刀を振り抜き斬撃を繰り出すと、海未の間近でそれは何かと衝突して炸裂する。
海未「あれは…!」
立ち込める粉塵が揺らめき現れたその姿は、道化師かカジノのディーラーを模したスーツを身に纏い、のっぺりとした仮面で顔を覆い隠した怪人。
「……」
海未「アルカナム…!」
海未は油断なく刀を構えながら、以前真姫と交わした会話を思い返す。
──海未『空間置換?』
──真姫『ええ、本来繋がっていない二か所をゲートとなるものを用いることで繋げる技術よ』
海未(どこから現れるか分からない…姿が消えた時は警戒する必要がありますね…)
419
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/01(日) 18:35:36 ID:Uq8k7ElA
海未と対峙したアルカナムは一度だけ首を振ると、大げさともいえる手ぶりと共に何枚ものカードを宙に浮かべる。
海未(来るっ!)
アルカナムが手を振りかざすと、宙に浮いたカードは海未へと真っすぐに放たれる。
海未「くっ…!」
海未は即座に刀を振り上げてアルカナムへ向かい駆け出し、カードを斬り払いながら接近を試みる。
海未「閃刃・断空!」
海未は最後の一枚を斬り裂くと、刀を振り上げてアルカナムへと迫る。
「……」
アルカナムはカードを一枚後ろへと放り投げると続けて後ろへと飛びずさる。
海未「ぜえい!」
海未が袈裟懸けに刀を振り抜くと、そこに残ったのは斜めに斬り裂かれた2mほどのカードの残骸。
420
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/01(日) 18:42:39 ID:Uq8k7ElA
海未(いない…!ここまで自在に…)
海未は見失ったアルカナムを探して視線を巡らせる。
海未「がはっ…!」
しかし直後に襲う背後からの攻撃に体を吹き飛ばされてしまう。
海未(死角に回るのは当然ですね…!)
足を地面へと突っ張り、その足を軸として体を回転させて視界にとらえたアルカナムへと向かって駆け出す。
「……」
それを見たアルカナムは片手を大きく頭上へと振り上げながら滑るようにして後ずさっていく。
海未「逃がしませ──っ!?」
振り上げた手を注視しながら海未が足を踏み出すと、その足元で小さな爆発が立て続けに起こり、その場でよろめき膝をついてしまう。
海未(地面から注意をそらすためのブラフ…!)
海未は離れた場所でカードを放とうとするアルカナムを視界にとらると、顔をしかめながら刀を鞘へと納め、弓を手にする。
海未「はっ!」
海未は自身を襲うカードへ向かって駆け出しながら矢を連続で放ち、撃ち落としながらアルカナムとの距離を詰める。
421
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/01(日) 19:01:01 ID:Uq8k7ElA
「──っ!」
海未「冥凶死水!」
海未は最後のカードをスライディングでかわすと共に弓を手から離し、刀を鞘から抜き去ると同時に黒い斬撃を放つ。
「ディスカード…!」
アルカナムは瞬時に海未との間に巨大なカードを壁のように並べてその斬撃の勢いを一瞬だけ止める。
「っ…!」
黒い斬撃はカードに勢いをそがれながらもアルカナムへと直撃し、海未は追い詰めるようにさらに距離を詰める。
海未「やああっ!」
海未が振り上げた刀を斜めに振り下ろすも、アルカナムはそれをバックステップでかわしながら何枚ものカードをつなげて剣の形に変えて構える。
422
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/01(日) 20:04:40 ID:Uq8k7ElA
海未(接近戦…それなら好都合です!)
近距離で迎え撃とうとしたアルカナムを見て海未は距離を取らせないように一気に攻めかかる。
「っ!」
アルカナムは縦横無尽に降りかかる斬撃を剣で跳ね除け、身を翻してかわしていくも海未の手数には及ばず、体に傷を作っていく。
海未「そこっ!」
アルカナムの体がぐらりと揺れた瞬間、海未は渾身の力で刀を振り下ろす。
「──っ!」
アルカナムは手に持った剣を咄嗟に自身の体と刀の間に滑り込ませ、刀から受ける衝撃のままに後方へと飛びのく。
「ダイスクラップス!」
海未はそのままアルカナムへと追撃を仕掛けようとするも、アルカナムの動きを見て足を止める。
423
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/01(日) 20:24:29 ID:Uq8k7ElA
海未「これは、サイコロ…?」
アルカナムが地面へとばら撒いたのは一辺10cmほどのサイコロ。海未はそれを警戒し地面から跳ね飛ばすように刀で切り上げる。
海未「くっ…さっきの爆発はこれですか…!」
海未が切り上げたサイコロは爆発を起こし、周りのサイコロも巻き込まれるように次々に爆発していく。
「ウェイジャーシュート!」
距離を取ったアルカナムは海未目がけて金色に光る弾丸を無数に放つ。
海未「くっ…黒散華!」
海未は刀から弓へと持ち替えると瞬時に無数に分裂する矢を放ち、再び距離を詰めようとアルカナムへと駆けだす。
海未(距離が開いていては常にあちらのペース…早くこちらの間合いに…!)
海未が近付いてくるのにも関わらず、アルカナムは素早いとはとても言えないような動きで後ろへと下がっていく。
424
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/01(日) 20:44:33 ID:t2WN8/kQ
乙
まってたよ
425
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/01(日) 20:52:01 ID:Uq8k7ElA
海未「覚悟しなさ──!?」
一瞬前までは目の前に映っていたいたはずのアルカナムの姿が、階段を踏み外すような感覚と共に海未の視界から消える。そして次の瞬間に感じたのは浮遊感。
海未(これは…!)
海未はアルカナムが消えたのではないことに、そして、自身が今どこにいるのかにようやく気が付く。
海未「ひっ、やあああぁぁ…!」
海未の体は遊園地の上空、ジェットコースターのレールを見下ろすほどの高さまでに投げ出されていた。
海未(何が起きて…!?)
落下を始める中で海未は自身の真上に巨大なカードが浮いているのを視界にとらえる。
海未(そうか、私の足元と空間をつないで…!)
海未「って、そんな冷静に考えている場合ではありません…!」
426
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/01(日) 21:43:28 ID:Uq8k7ElA
海未は地面へと落下する中で必死に思考を巡らせる。
海未(変身していれば落ちても死にはしないはずですが絶対に避けたい…!着地…?それともどこかに捕まる…?)
何か手はないかと視線を動かしていると海未の目は自身から離れた場所にあるジェットコースターのレールを捉える。
海未「あああもう!こうするしかありません!閃刃・裂空!」
海未は半ばやけくそ気味に鞘から刀を抜き去り、何もない場所へと斬撃を放つと、その反動で海未の体はレール目がけて投げ出される。
海未「あああぁぁぁ…!届、けええぇぇ!」
必死で伸ばした手はうまくレールを捕らえ、飛ばされた勢いはそのままに、まるで鉄棒で逆上がりをするようにして飛び上がりようやくレールへと着地する。
海未「はあ、はあ…どのアトラクションよりも恐ろしいですね…!」
うるさいほどに鳴り響く左胸を抑えつつ、海未は不安定な足場の上に立ち上がる。
427
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/01(日) 22:08:57 ID:Uq8k7ElA
「……」
海未「ここまで追ってきますか…」
レールの先、海未からは離れた場所にカードが現れ、その枠をくぐるようにしてアルカナムはレールの上へと降り立つ。
海未(こんな場所で戦うなんて正気の沙汰とは思えませんが…背に腹は代えられません…!)
海未は刀を構えると、甲高い金属音を足元で鳴らしながらレールの上を駆け出す。
「……!」
アルカナムは空中に大量のカードをばら撒くと、それを海未へと放ちながら手にはカードの剣を作り出し、後ろも足元も見ることなくバックステップで海未から距離を取っていく。
海未「まったくあなたは曲芸師ですか…!?」
自身を襲うカードを斬り払いながら前へと進もうとするが、地面の透けて見える細いレールに足がすくみアルカナムとの距離は開いていってしまう。
海未(このままでは相手のペースのまま…腹をくくるしかない…!)
アルカナムが海未へと向かってサイコロをばら撒くのを見て海未は刀の代わりに弓を手にし、空中のサイコロを撃ち落としながらアルカナムへと駆け抜けていく。
海未「ぜえいっ!」
一気にアルカナムの懐に飛び込むと同時に弓を手放し、鞘からの抜刀と同時に刀を振り切る。
「……」
しかしアルカナムは自身の背後に背丈ほどのカードを作り出し、その中へと飛び込むようにして飛びずさる。
428
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/01(日) 22:20:47 ID:Uq8k7ElA
海未(逃した…!ですがこのレールの上、移動する場所は限られる!)
再び海未は弓を手にすると、細い足場の上、動きが硬くなる体を無理やりに動かし、その場で180°回転して弓を構える。
海未「黒華一閃!」
海未が構えた弓の先にはカードから現れたアルカナムの姿があり、真っすぐに漆黒の矢を放つ。
「っ!」
アルカナムは咄嗟に両腕で体をかばいながらレールの外へと飛び出すが、回避は一瞬遅く、腕に傷を作る。
海未(飛び降りるつもりですか…!?)
海未は宙へと飛んだアルカナムの姿を視線で追うと、アルカナムは器用にレールの端を掴んでおり、空中ブランコから飛ぶように体を振り上げ、再びレールの上へ着地する。
海未(今なら狙える…!)
海未はアルカナムへと狙いを定めて弓を引き絞り、矢を放とうとする。
海未「っぐ、あ…!」
しかし突如として自身の真横、何もないはずの場所からの衝撃に、ぐらりとバランスを崩してしまう。
429
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/01(日) 22:26:58 ID:Uq8k7ElA
海未(いったい、何が…!?)
海未は攻撃の放たれた方ではなく、アルカナムの方へと視線を向ける。
「……」
海未(なるほど、そういうことですか…!)
アルカナムは自身のそばにカードを浮かべており、そこに向かって手を向けていた。つまり海未を襲ったのはカードをゲートとした互いの位置を無視した攻撃。
海未「このっ…!」
海未は痛みに耐えつつアルカナムとの距離を詰めると、刀を鞘から抜き、アルカナムへと攻撃を仕掛ける。
「……」
しかし体の痛み、不安定な足場、そしてどこから攻撃が飛んでくるか分からないという状況にその太刀筋は鈍く、アルカナムはのらりくらりとそれをかわしていく。
430
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/01(日) 22:28:38 ID:C4DNSK42
更新来てる!待ってます!
431
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/01(日) 22:32:04 ID:Uq8k7ElA
「……!」
アルカナムは海未の刀をかわしつつ、ひと際大きく後ろへと飛び下がると巨大なカードを宙に浮かべてその中へと姿を消してしまう。
海未「くっ…またですか…!」
海未は正面にもう姿がないと分かるとすぐに体を反転させて自身の背後へと目を向ける。
海未「いない…?いったいどこへ…」
海未が姿を消した敵を警戒し周囲に気を張ると、一つの違和感に気が付く。
海未「これは…地震…?いや、まさか…!」
海未が踏みしめているレールは小刻みに振動を始めている。そしてこのレールは元々アトラクションを運ぶためのレール。
海未「ジェットコースター!?」
海未が血相を変えて振り向くと、その視線の先には今にも頂上まで迫るコースター。もしもこれが走り出したら、それを思い浮かべた海未はコースターから離れるようにレールの上を駆け出す。
海未「あああぁぁぁ!もう!振り回されっぱなしではないですか!!」
432
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/01(日) 22:39:44 ID:Uq8k7ElA
海未はなんとか飛び降りられる場所は無いかと探しながら走るもまるで見つからない内に、ついにコースターの先頭は頂上を越え、猛スピードで海未目がけて走り始める。
海未「飛び移れる場所は!?……ない!!」
海未はパニックになりながら視線を動かすも、地上からはほど遠く、近くに飛び移れそうなアトラクションもないと分かると、半ばやけくそ気味にくるりと振り向いてジェットコースターへと向かって走り始める。
海未「失敗したら大けがか即死か…!そんなのこの姿になってからいつものことです!!」
ジェットコースターとぶつかる寸前、海未は大きく真上へと跳躍、さらに足が巻き込まれないよう体を丸めるようにして宙返りを披露する。
海未「う、あああぁぁ!」
海未の真下、体を掠めるようにしてコースターは通り過ぎていき、海未は呼吸も荒くレールの上に膝をつく。
海未「アルカナム…もう絶っ対に許しません…!何があろうとこの手で懲らしめます…!」
433
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/01(日) 22:46:33 ID:Uq8k7ElA
海未から逃げるように地上へと降り立ったアルカナムは悠々と園内を移動しようとしていた。
海未「黒散華!」
「…っ!?」
無防備に歩くアルカナムを襲うのは黒い矢の雨。咄嗟に両腕で頭をかばうようにしてその範囲から飛び出すようにして逃げ出す。
海未「待ちなさい!もう逃がしませんよ!」
鉄骨から鉄骨へと飛び移りながら海未は地面へと降り立ち、自身から遠ざかろうとするアルカナムに向けて矢を連射していく。
「っ…ディスカード!」
海未「閃刃・断空!」
アルカナムは自身と海未との間にカードの防壁を作り出して姿を隠そうとするも、防壁は一刀のもとに斬り払われる。
「ミラージュインストール」
しかし、両断されたカードの向こうに姿を見せたのは、まったく同じ見た目をした二人のアルカナム。
海未「分身…!?次から次へと…!」
434
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/01(日) 22:51:50 ID:Uq8k7ElA
アルカナムはどちらもカードで作り出した剣を手にし、海未の周囲を回るようにして間合いを測る。
海未(一対一でも厄介だったというのに、二人相手となると…!)
海未は動き回るアルカナムをどちらも視界に入れようと身を躍らせ、距離を詰めて斬りかかってきたアルカナムの剣を打ち払おうとする。
海未「…っ!?」
しかし、海未が振るった刀は確かにアルカナムの斬撃を捕らえたはずだったが、手ごたえは全くなく、そのままアルカナムの体を通り抜けていってしまう。
海未(そうか、幻…!これならなんとか…)
海未は空を切ってよろけた体勢を戻し、即座に二人を視界に入れる。
海未「くっ…!」
しかしアルカナムは巧みに偽物と位置を入れ替えながら動き回り、海未に狙いを定めさせない。
海未「ああ、もう!黒散華!」
海未は目まぐるしく動き回るアルカナムにしびれを切らし、海未は弓を上空に構え周囲に黒い矢の雨を降らせる。
435
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/01(日) 23:00:55 ID:Uq8k7ElA
海未「そこですねっ…!」
二人のアルカナムは同時に防御態勢を取ったが、矢が体を通り抜けていく方を海未は無視し、本物へと刀を振るう。
「…っ!」
海未の連撃を受け止めきれないアルカナムはカードを出現させてその中へと飛び込む。
海未「空間置換…ですがもう通用しません!閃刃・裂空!」
海未はアルカナムが消えていったカードには目もくれずに、後ろへと振り返りざまに漆黒の斬撃を放つ。
「──!」
海未の死角へと降り立とうとしたアルカナムはその斬撃に反応できずに正面から攻撃を食らう。
「……」
しかしアルカナムはひるむことなく海未から遠ざかるようにその場を飛びのき、手元にカードを作り出し、手をかざす。
海未「その攻撃はもう一度見ています!」
アルカナムのその動作を見た海未は視線をアルカナムから外し、自身の死角へと弓を向ける。
436
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/01(日) 23:12:04 ID:Uq8k7ElA
海未「黒華一閃!」
海未が弓を構えた先にはカードが浮かんでおり、放たれた矢はそのカードの中を潜り抜け、アルカナムの手元のカードから現れてアルカナムの体を射抜く。
「…っ!」
海未「さあ、いい加減覚悟して──」
海未が再び刀を抜きアルカナムへと構えると、アルカナムはそれを見て地面に投げ出された体を起こす。
「バンクラプトプレス!」
アルカナムはその声と共におろしていた両腕を振り上げ、その手から放たれたのは2枚のコイン。そのコインは海未に迫る中で巨大化、海未の背丈をはるかに超えるほどとなる。
海未「当たらなければ──!?」
自分の横を通り過ぎる軌道を描くコインに海未は気を払わなかったが、2枚のコインは海未の真横に到達すると、互いに引き寄せられるかのように動き出し、海未の体ごと空間を押しつぶす。
437
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/01(日) 23:16:30 ID:Uq8k7ElA
「……」
その光景を見ていたアルカナムは一瞬だけうつむくと、左右に首を振りその場から立ち去ろうとする。
「──!?」
海未「ぐ、うおおおぉぉぉ!!」
しかしアルカナムが放った2枚のコイン、それは海未の事を押し潰せてはいない。海未は以前の戦いでそうして見せたように刀を巨大化、それを支えとしてコインの壁を押しとどめていた。
海未「ぜやあああぁぁぁ!!」
海未は渾身の力で刀を振り切り、自身を押し潰そうとするコインを粉砕する。
海未「黒烈断・逆鱗!!」
海未はそのままの勢いで頭上へと振り上げた刀を真っすぐに振り下ろし、巨大な漆黒の斬撃をアルカナムへと放つ。
海未「いっ…けええぇぇ!!」
「…っ!」
438
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/01(日) 23:20:39 ID:Uq8k7ElA
しかし、刀を振り下ろした海未が次の瞬間に感じたのは、肌を刺すような冷気。
海未(っ…これは…!)
そして海未が放った斬撃とアルカナムの間に何枚もの巨大な氷のプレートが降り注ぎ、斬撃は次々にそれを砕いていくものの、ついにはアルカナムに届くことなく消えてしまう。
海未「グレイシア…!」
砕け散った氷が消えた先には膝をついたアルカナムへと手を差し伸べる、氷でできた鎧を纏った怪人、グレイシアの姿があった。
「……」
海未(三連戦の最後にこの怪人を相手取るのは厳しい…ですが、やるしかない…)
海未は緊張と共に刀を構えたが、グレイシアは海未にはまるで気を払わずにアルカナムを立ち上がらせると、ちらりと海未へと視線を向ける。
「……」
そしてアルカナムへと頷くと、アルカナムはカードを取り出して二人の姿はその中へと消えていく。
海未「消えた…?」
海未は注意深く周囲を見渡すも、どこにも表れる気配を感じられない。
海未「撤退した、と考えていいのでしょうか…」
海未はもう一度だけ周囲を見渡し、怪人の姿も怪獣の姿も見えないと分かると変身を解き、大きく息を吐き出す。
海未「さて…また遠ざかってしまった気もしますが、そろそろ避難所へと向かいましょうか…」
439
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/01(日) 23:28:01 ID:Uq8k7ElA
海未は傷ついた体にため息をつきながら避難所へと向かうと、その道中には怪人とも怪獣とも遭遇することは無かった。
海未(どうやら本当にあれで撤退していったようですね…)
疲労がたまった体では遥か彼方に思えた避難所へやっとのことでたどり着いた海未は、入口の警備員に傷だらけの体を見られると即座に中の救護スペースへと連れていかれた。
「ここで待っていてください!今治療専門のヒーローをお呼びします…!」
海未「い、いえ、そこまで重症ではありませんので…って、聞いていませんね…」
慌てたように駆け出す警備員の背中を見送りながら案内された場所へと腰を下ろす。
海未「いたた…やっぱりそこそこ痛みますね…まあ、この間ほどではありませんが…」
海未が体の傷の具合を見ていると、後ろから自分の事を呼ぶ声が耳に入る。
穂乃果「海未ちゃあああん!!」
ことり「海未ちゃん…!」
海未「穂乃果…ことり…!わっ、とっと…」
海未が振り返ると同時に飛び込んできた幼馴染の二人を咄嗟に抱き留め、鍛えている体幹で倒れないよう持ちこたえるも、体の傷に顔を歪める。
440
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/01(日) 23:34:37 ID:Uq8k7ElA
海未「痛っ…!もう、心配をかけたことは謝りますがいきなり飛びつかないでください…!」
穂乃果「わっ、ご、ごめん…海未ちゃん、怪我してるの…!?」
ことり「大変…誰か呼んでこないと…!」
海未「いえ、大丈夫です…!先ほど、警備員の方が呼びに行ってくれましたので…」
弾かれたように立ち上がり、そのままでは走り出しそうな勢いの二人を落ち着かせて座らせていると、奥から白衣を模したスーツを纏ったヒーローが近づいてくる。
「さっき避難してきたっていう子は…ああ、君かな?」
穂乃果「あ、あの…海未ちゃん、治りますか…?」
心配そうに穂乃果はヒーローに問いかけるも、そのヒーローは海未の体をざっと見渡して穂乃果へと笑顔を向ける。
「ああ、もちろん!傷は多いけど全部浅いみたいだからね、この場ですぐ跡も残らずに治せるよ」
ことり「よかったあ…」
441
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/01(日) 23:42:35 ID:Uq8k7ElA
「それにしても、こんなにたくさんの傷…怪人と会ってしまったのかい?」
聴診器のような器具から暖かな光を傷へと当てながら、心配そうな顔でヒーローは海未へと尋ねる。
海未「えっと、そうですね…サイのような怪人に…」
どう答えたものかと困りながら海未が口を開くと、ヒーローは納得したように何度もうなずく。
「そうか、なるほど…じゃあ君が怪人を引きつけて皆を逃がした女の子なんだね?ここで話題になっていたよ…無事でよかった」
海未「え、ええ、まあ…」
「しかし、よく無事に逃げ切れたね?誰か他のヒーローに?」
海未「い、いえ、動きの遅い怪人だったので、なんとか逃げられて…」
「そうか…本当に勇気も度胸もすばらしい…!…うん、治療も終わりだ!きっともう痛みもないはずだよ」
海未はようやくこの質問地獄から逃れられると内心でほっと息をつき、改めてヒーローへとお礼を口にする。
海未「ありがとうございました…!」
「いやいや、お礼を言われることじゃないよ、ヒーローだからね!」
そう言ってそのヒーローは三人に手を振りながら去っていく。
442
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/01(日) 23:52:17 ID:Uq8k7ElA
穂乃果「じーっ」
ことり「じーっ」
海未「…二人してなんですか?」
ヒーローが去っていった直後、穂乃果とことりは半目で海未の事をじっとりと見つめる。
穂乃果「海未ちゃん、何か隠してるよね?」
ことり「ことりもそう思います…」
海未は幼馴染の鋭さに内心で舌を巻きつつ、先ほどのヒーローとの会話では隠していたことを一つ告げる。
海未「はあ…二人には敵いませんね…騒ぎになりそうだったので言いませんでしたが、実はサイの怪人から逃げた後に、怪人アルカナムを見つけて…」
ことり「アルカナムって…!」
穂乃果「あのすごい強いっていう怪人だよね…!?海未ちゃん大丈夫だったの…!?」
海未「ええ…幸い、遊園地には姿を隠せる場所が多いので、なんとかやり過ごせました…」
海未(隠し事をするのは胸が痛みますが、余計な心配をかけたくありませんしね…)
443
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/02(月) 00:05:02 ID:GnnDvKBs
穂乃果「けどよかったあ…穂乃果たちは避難所が近くだったからすぐに逃げちゃったけど、海未ちゃんにもし何かあったらって心配で…」
ことり「うん…穂乃果ちゃんなんて、ここ飛び出してっちゃいそうだったんだよ?」
ことりもそうしたいくらい心配だったんだから、と頬を膨らませることりと、子犬のような表情の穂乃果、二人の頭をなでながら海未は口を開く。
海未「本当に心配をかけて申し訳ありません…けど、私はこの通り無事です!…これで許してはもらえませんか?」
穂乃果「もー…最近海未ちゃん私たちに心配かけすぎだよお…無事だからいいけど…」
心配そうな表情は引っ込み、唇を尖らせる穂乃果に苦笑いを返しつつ、ふと湧いた疑問を投げる。
海未「そういえば、希と絵里先輩は見ていませんか?」
ことり「うーん…ことりたちは結構すぐに避難所に着いたけど、見てないかなあ…」
穂乃果「ちょっと早めに遊園地出た、のかなあ…?」
海未「ええ、そうであることを祈ります…希はかなり気にしている様子でしたし…」
たとえ無事だったとして、今連絡をしてもきっと返事をよこさずに心配が募るだけだろう、と考え、海未は友人の無事を祈るのだった。
444
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/02(月) 00:07:35 ID:GnnDvKBs
ここまで、遊園地編終わりです
亀更新でごめんなさい
445
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/02(月) 00:17:03 ID:NgwIkB9c
乙です!最近は毎度楽しみにしてます
446
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/02(月) 03:39:04 ID:Kv1End9I
いいね
447
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/02(月) 13:52:04 ID:sU9Dk55g
http://pr4.work/g/kiyo
448
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/04(水) 22:09:46 ID:C1M4xV8E
その日の晩、騒ぎが終息を迎え家に帰っていた穂乃果は、自分の部屋で携帯を耳に当てていた。
穂乃果「もしもし、ことりちゃん?うん…ごめんね、夜遅くに…」
ことり『ううん、大丈夫だよ?ことりも、穂乃果ちゃんに話したいことあったから…』
穂乃果「…海未ちゃんの事、だよね?」
ことり『うん…やっぱり海未ちゃん、まだ何か隠してる、よね…?』
穂乃果「たぶんそうだと、思う…」
ことり『大丈夫かな…最近、怪獣とかが出るたびに巻き込まれてるし、何か危ないことになってたりしたら…!』
穂乃果「穂乃果も、心配だけど…だけど、海未ちゃんはきっと何か理由があって隠してるんだって思ってる」
ことり『理由…』
穂乃果「うん、それが何かは分からないけど…だから、海未ちゃんが話したくなった時に聞いてあげられるようにしてたいな、って思うんだ」
ことり『うん…そう、だよね…』
穂乃果「えへへ、ごめんね?なんか自分でもしゃべっててよく分かんなくなっちゃったけど、そんな感じ!」
449
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/04(水) 22:10:11 ID:C1M4xV8E
雪穂『お姉ちゃん!遅くなると近所迷惑だから早くお風呂入ってー!お姉ちゃんが最後なんだから!』
穂乃果「わわっ、ごめんねことりちゃん、雪穂に怒られるからもう切るね!もし何かあったらいつでもかけてきていいから!またね!」
ことり『ふふ、うん、ありがとう穂乃果ちゃん!またねっ』
穂乃果「……」
通話が切れても穂乃果は自分の部屋で立ったまま、ぼんやりと窓の外を眺める。
穂乃果「隠し事、か…」
雪穂「お姉ちゃんってば!早くしないともうお湯抜くよ!?」
穂乃果「わーっ!待って待って待ってえ!今入るからあ!」
バタバタと部屋から出る時に穂乃果は自分の机の上に、手にしていたものをコトン、と置く。それは、太陽を閉じ込めたかのような、オレンジ色の石だった。
450
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/04(水) 22:10:35 ID:C1M4xV8E
ことり「ふふ、うん、ありがとう穂乃果ちゃん!またねっ」
電話が切れると、ことりは小さくため息をついてベッドの上にぽすんと腰を下ろす。
ことり(私も海未ちゃんの事を信じたい、けど…やっぱり、心配だよ…)
──海未『心配をかけて申し訳ありません…けど、私はこの通り無事です!』
──穂乃果『だから、海未ちゃんが話したくなった時に聞いてあげられるようにしてたいな、って思うんだ』
ことり(穂乃果ちゃん、海未ちゃん…ことりの事、置いて行かないで…!)
二人の言葉を思い出して不安が一気に押し寄せ、ことりはお気に入りの枕を抱きしめて目を強く瞑る。
451
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/04(水) 22:10:57 ID:C1M4xV8E
理事長『ことり?』
部屋のドアをノックする音と共に部屋の外からことりの母親が声をかける。
ことり「お母さん?」
枕をベッドへと戻し、ことりは部屋のドアを開ける。
理事長「お母さん、明日は少し早いからもう寝るわね?もしまだ起きてるんだったら、寝る前に電気だけ消してちょうだい」
ことり「うん、まだちょっと起きてるから、寝る前に消しておくね…」
理事長「ことり?どうかしたの?」
ことり「あっ、ううん、大丈夫…!今日、色々あってちょっと疲れてるみたい…」
理事長「そうよね…あんなに危ない事、無くなってほしいんだけれど…」
うつむいたことりの頭を撫でながら、部屋の中に目を留めてことりの母は少しうれしそうに口を開く。
理事長「ことり、今日もあれ、着けて行ってくれたの?」
ことり「あれ?…うん、もちろん!お母さんがくれたお守りだもんっ!」
ことりは嬉しそうに笑顔を返す。二人の話題に上るそれは、羽根のモチーフをあしらった、ペンダントだった。
452
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/04(水) 22:11:43 ID:C1M4xV8E
めっちゃ少ないですがここまで
453
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/05(木) 06:28:45 ID:0oppAyPc
乙
ことりちゃんにも何やら秘密が?
454
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/05(木) 07:08:11 ID:WizGNK8w
理事長って背後でなんかやってそうだし
455
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/05(木) 18:51:05 ID:zYooQQJc
めっちゃ乙です
理事長は悪役ポジ似合い過ぎる!そこも魅力的だけど!
456
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/10(火) 21:04:46 ID:3oHADIkM
海未「やあああぁぁぁっ!!めええぇぇん!!」
声を張り上げ、海未は手にした得物を振るう。しかしその手に握られているのは竹刀であり、身に着けているのは白の道着に黒の袴、そしてその場所は海未の自宅の道場だった。
海未「こてぇっ!めえぇぇんっ!!」
休日の午前中、海未は自己鍛錬のために道場で一人竹刀を振るっていた。これは海未にとって戦闘訓練としてではなく、ずっと前からの習慣としての物だった。
海未(怪人に変身しての戦いは型破りな動きが要求される…ですが、型を破れるのはこういった基本の稽古をおろそかにせず、型を修めてこそ)
海未「やあああぁぁぁっ!!めええぇぇん!!」
海未(本当なら、父に対面での相掛かりでも頼みたいのですが…改めてそんなことを言って何か聞かれるのも嫌ですしね…)
海未は空へと向けた打ち込みを終えると、最後に軽い素振り──海未にとっての軽い、ではあるが、素振りを始める。
海未「めぇんっ!」
素振りを終えた海未はふっ、と短く息を吐き出し、蹲踞、そして納刀。海未は立ち上がり、一人稽古を終えたあとの道場へと礼をする。
457
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/10(火) 21:48:29 ID:3oHADIkM
海未(一度穂乃果が稽古を見に来た時にはあの大声に驚いていましたね…気剣体一致に欠かせないのだと言ったらぽかんとしていましたが…)
シャワーで汗を流した海未は首からタオルを下げてぼんやりと考え事をしながら居間へと入り、麦茶のコップを片手にテレビの電源を付ける。
『こちらは秋葉原です!SWコーポレーション、月面研究所完成記念式典はもう間もなく!会場には大勢の人が詰めかけ──』
海未「そういえば、そろそろ始まる時間でしたか…」
SWコーポレーション、ヒーローシステムを普及させた会社の月面研究所完成記念式典、海未は元々、今テレビに映っている場所へと穂乃果に誘われていた。
海未「穂乃果には申し訳ありませんが、日舞の稽古はすっぽかせませんからね…」
けれど穂乃果が頼み込めば母は簡単に折れそうだ、と思い海未はおかしくなってクスリと笑う。
『SWコーポレーションの関係者も式典の開始時間を今か今かと待ちわびている様子です!』
そのリポーターの声と共にテレビへと映し出されたのは、赤い髪を短く切り揃え、ぎこちない笑顔を周囲に向ける眼鏡の男。
海未(これが、真姫の父上…)
真姫から聞いた話とメディアからの情報しか持っていない海未はなるべくフラットな目線で見ようとする。
海未(それにしても…)
真姫の父のぎこちない笑顔、海未はそれを緊張からくるものではなく、まるで表情の浮かべ方を忘れてしまったかのような印象を受けた。
458
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/10(火) 22:09:35 ID:3oHADIkM
海未「っと、いけない…」
勝手に冷たい印象を持ってしまっている、と海未は頭を軽く振りテレビへと視線を戻す。
海未「さて、穂乃果が映っていたりしたら面白いのですが…さすがにそんなことはないでしょうね」
『式典を前にして快晴、天気にも恵、まれ…?』
今まではつらつとした笑顔で話し続けていたリポーターの表情が、怪訝なものとなる。それと共にテレビに映る秋葉原の町並みは薄暗くなっていく。
海未「…?」
『突然の曇り空…あれ、でも青空…?黒い霧、でしょうか…?』
海未「黒い霧…まさか…!」
海未が嫌な予感を感じ取り腰を浮かせると同時、テレビから爆発音が轟き、映像が激しく揺れる。
459
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/10(火) 22:22:03 ID:3oHADIkM
『ひっ…!怪獣…!』
カメラは地面へと落ちたのか、低いアングルのまま動かなくなり、おびえたようなリポーターの声と、周囲の悲鳴と怒号が響く。
『怪人がこっちに…!』
『変身…!』
悲鳴に交じってヒーローの物か怪人のものか分からない声が聞こえ、直後に映像は放送局へと切り替わる。
『秋葉原にて行われる予定のSWコーポレーション月面研究所完成記念式典の会場に怪獣及び怪人が現れたとの情報が入りました…!近隣の住民の方は避難施設への移動、また、施設から離れた場所に住む方は家から出ないよう──』
テレビから聞こえるアナウンサーの声を聞き流しながら海未は自分の部屋へと走り、小刀型のシステムを掴み取って服の中へと隠し、踵を返して廊下を走る。
海未(穂乃果…!)
460
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/10(火) 22:31:20 ID:3oHADIkM
海未母「きゃっ…!海未さん…!?いったい何を…!」
海未が玄関へと走る途中、部屋から飛び出した自分の母と鉢合わせてしまい、母は海未の姿を見ると青い顔をして海未の肩に両手をかける。
海未母「ニュースを見たでしょう…!?何があったかは分かりません、ですが今外に出たら──」
海未「穂乃果が…!穂乃果があそこにいるんです!それなら私は行かなくてはなりません!」
その言葉を聞いた海未の母ははっと息をのみこみ、海未はそんな母の手を握りまっすぐに目を見つめる。
海未「お願いです…止めないでください…!」
青い顔のまま顔を歪めた母を見て、海未は一つ頭に思い浮かぶことがあった。
海未(きっと、今の私と、姉の事を…)
目まぐるしく色んなことが頭に渦巻いていたが、海未は一度深呼吸をして頭をクリアにすると、母に笑顔を見せて口を開く。
海未「大丈夫です、絶対に生きて帰ってきます…私も、穂乃果も!だから、心配しないで…というのは難しいかもしれませんが、待っていてください」
461
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/10(火) 22:43:39 ID:3oHADIkM
その言葉を聞いた海未の母は大きくため息を吐くと、憂いはそのままに、けれど毅然とした表情で海未に語り掛ける。
海未母「海未さん…いいえ、海未、私にはあなたが何か大きなことを隠している気がしてならないの…あの子のように…」
海未(隠し事…姉さんが…?)
海未母「そしてあの子は帰ってこなかった…海未、お願いです、あなたは──」
海未「当然です…何があっても、帰ってきます」
小さく、しかし力強く海未は頷き、もう一度だけ母の手を握ると、振り返ることはせずに玄関から外へと飛び出していった。
海未母「お願い…神様でも、仏様でも、誰でもいい…あの子の事を…」
462
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/10(火) 22:54:51 ID:3oHADIkM
海未たちの住む古くからの住宅街を駆け抜け、繁華街に近付くにつれ、破壊の音と粉塵の匂いが近くなっていく。
海未(被害が大きいのでしょうか…とにかく、早く穂乃果を見つけなくては…!)
流れていく景色の背丈が高くなってきた頃、ついに海未は怪獣の姿を視界に捉える。
海未(数は少ない…どちらかというと迷い込んできた感じですね)
様々な動物の姿をした怪獣を視界に入れたまま海未はビルの間の路地へと飛び込む。
海未「変身!」
漆黒の鎧をまとい、路地から飛び出すと同時に海未は抜刀とともに怪獣をまとめて切り伏せる。
海未「さあ、出し惜しみは無しでいきます!」
鋭い踏み込みとともに大口を開けたトカゲのような怪獣へと切っ先をねじ込み、返す刀で地を這う蛇の怪獣を両断する。
海未「黒散華!」
さらに建物の壁に這う蜘蛛の姿をした怪獣に刀を投げてその体を貫くと、即座に手の中へ弓を作り出し矢の雨を降らせる。
海未「ふう…」
宙に浮かんでいた怪獣も全て撃ち落とすと海未は軽く息を吐くとすぐに繁華街へと視線を向けて走り出す。
463
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/10(火) 23:06:19 ID:3oHADIkM
大通りへと近づくに連れて海未の耳におぼろげながら聞き覚えのある音が聞こえてくる。
海未(これは、銃声…?ですが、やけにファンシーな──)
そこまで考えた所で海未はようやくその音の心当たりに思い至る。
海未「そうか、これはにこの…!早く助太刀に…!」
一刻も早く駆けつけようと足を早めると、銃声に混じって聞き覚えのある声が聞こえてくる。それも、二人分。
海未「あ、あれ…?これはまさか…」
先程までとは全く違う嫌な予感を感じ、海未はその場所まで駆け抜ける。
にこ「待ちなさいこの猫怪人!私が懲らしめてやる、わ、よっ!」
凛「わー!待って待って待って!まだ何もしてないにゃー!」
にこ「まだって事はこれから何かするってことでしょうが!!」
凛「誤解だよー!理不尽すぎるにゃー!」
海未が大通りの開けた場所で見た光景は、頭にフードを目深に被った凛が泣き声をあげながら逃げ回り、にこがそれに銃を乱射しているというものだった。
464
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/10(火) 23:15:19 ID:3oHADIkM
海未「にこ!待ってください!一旦落ち着いて!」
にこ「あぁ!?…って何よ、海未じゃない…ゴツくなってたから一瞬分かんなかったわ…何?イメチェン?」
海未「イメチェンの一言で片付けられるのはさすがですね…」
ピンクのファンシーな衣装に似合わぬ荒んだ目付きで海未を睨むと、一瞬の間を置いてにこは落ち着いたように言葉を返す。
凛「う、海未ちゃん…」
目深に被ったフードを脱ぎ、目に涙を溜めながら凛は海未へとすがりつく。
その姿は普段の物とは異なり、頭からは猫の耳が生え、さらに手には手甲をはめたような爪、そして体の要所要所がオレンジ色の毛で覆われていた。
にこ「あー、もしかしてこの怪人、あんたの知り合い?」
海未「ええ、そういう事です…凛、前に話していた矢澤にこというのがこの方です」
凛「こ、この人が…?」
怯えたような表情で凛がにこの事を伺うと、にこはバツの悪そうに口を開く。
にこ「あー、うん、悪かったわ…話も聞かずにいきなり襲いかかったりして…」
465
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/10(火) 23:21:35 ID:3oHADIkM
凛「う、うん…凛もこんな見た目だから気をつけなきゃだったから…」
お互いに態度を和らげた二人を見て海未はホッとしたようにため息をつく。
海未「まあ、大事になる前でよかったです…それにしても凛、一体何をしていたのですか?それにその姿は…」
凛「凛が変身するとこんな感じになるの!ほら、海未ちゃんに前話した…」
海未「ああ…少しの間だけ怪人に変身できるという…」
凛「そう!それで、急に怪獣が出てきたからなるべく怪獣をおびき寄せようと思って走り回ってて…」
にこ「そこで私に会った、ってわけね…」
海未「なるほど…何があったかは分かりました…が、凛、あなたは元々戦えないのですから無茶をしてはいけません」
凛「はーい…ごめんなさいにゃ…」
しゅんとうなだれた凛を見て苦笑を浮かべながら海未は二人に向けて口を開く。
海未「さて…ヒーローのにこと私達が一緒にいてはにこにあらぬ疑いがかかりますし、ここは二手に別れて──」
海未がそこまで言った時、晴れ間に照らされていたはずの周囲が急激に暗くなる。
466
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/10(火) 23:31:37 ID:3oHADIkM
にこ「やばっ…これって…!」
海未「怪獣の出現…!」
周囲に漂う黒い霧は海未たちの周囲、様々な場所で凝り固まっていき、怪獣の群れが姿を現す。
凛「嘘っ…なんかすごい多いよ…!?」
にこ「やっぱ今日なんかおかしいわよ!」
周囲に視線を動かす二人に対し、海未は一つ深呼吸をすると静かに刀を正眼に構える。
海未「二人はなるべく自分の身を守ることを優先してください」
凛「えっ!?けど海未ちゃん…!」
海未「大丈夫です、この程度なら──」
海未は駆け抜けざまに怪獣の群れを撫で斬り、さらに体を反転させながら刀を振り下ろし反応できていない怪獣を両断する。
海未「苦戦することはありません」
467
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/10(火) 23:37:42 ID:3oHADIkM
凛「すごいにゃ…!」
にこ「あいつ、前より全然強くなってるじゃない…!」
瞬時に何体もの怪獣を葬り去った海未にあっけに取られていた二人は、自分たちへと襲い掛かろうとする怪獣を見て我に返ったかのように動き出す。
凛「よーし…凛もいっくよー!」
にこ「はあ…もう、にこはアイドルだっていうのに…!」
凛は体勢をほぼ四つん這いになるほど低くしながら怪獣の間を駆け抜けながら爪で怪獣を引き裂いていき、にこはピンク色の光弾をばら撒きながら着実に怪獣の数を減らしていく。
海未「閃刃・裂空!」
海未は自分たちから距離のある怪獣へと斬撃を放ち、その行く先を見ることもせずに近付く怪獣へと刀を構える。
凛「海未ちゃん後ろ!ソニッククロー!」
突如として黒い霧が海未の背後に集まると狼のような姿の怪獣となるが、凛それを見ると一気に加速をしながら爪で斬り裂く。
海未「ありがとうございます!」
468
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/10(火) 23:42:25 ID:3oHADIkM
にこ「ラブリーバレット!」
海未と凛が地上の怪獣を相手にしているうちに、虫や鳥のような姿をした怪獣は一気に高度を上げて飛び去ろうとする。しかし目ざとくそれを視界に入れていたにこは上空に向けて光弾をばら撒き、それを一掃していく。
にこ「ほらもうあと少し!さっさと終わらせ──」
にこがそこまで言ったところで、先ほどまでに怪獣が現れる時とは比べものにならないほどに黒い霧が立ち込め、一気に三か所に寄り集まっていく。
凛「なんかこれって…!」
凛が顔を引きつらせながら声を上げるのとほぼ同時、2mを越えるほどの大きさの怪獣が三体出現する。
その姿はそれぞれ、大斧を手にしたミノタウロス、鶏のような羽毛が全身に生えた巨体に熊の手足が伸びた怪獣、そして爬虫類の下半身からザリガニの体が生えたような怪獣だった。
にこ「うわキモっ…!どうすんのよこれ…!」
海未「さっき言ったことは変わりません!とにかく自分の身を守って!…黒華一閃!」
海未は鋭くミノタウロスのような怪獣を睨むと同時に刀を鞘へと納め、手に作り出した弓を引き絞り漆黒の矢を放つ。
469
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/10(火) 23:49:04 ID:3oHADIkM
「ブルルッ!!」
怪獣は手にした斧で海未が放った矢を撃ち落とすと、矢の放たれた方向へと突撃しようとする。
海未「冥凶死水…!」
しかし、すでに怪獣の懐には海未が飛び込んでおり、黒いエネルギーを蓄積した鞘から放たれる居合いが怪獣の体を斬り裂く。
凛「海未ちゃんすごーい!」
にこ「バカっ…!よそ見してる場合じゃ──」
凛が目を丸くして海未を見た隙に、羽毛の生えた怪獣は身体を震わせ、凛へと無数の羽根を弾丸のように放つ。
にこ「ラブリーバレットっ…!」
にこは横からピンク色の光弾をばら撒き、その羽根の弾丸を撃ち落としていく。
にこ「今よ!」
凛「ありがとっ…!ビーストスティング!」
凛は足のばねを使ってその場から一気に怪獣の頭上にまで跳ね上がり、その頭部目がけて肘を叩き下ろす。
にこ「ラブリーバレット!」
さらに追い打ちをかけるようににこは光弾を怪獣へと叩き込んでいく。
「──!!」
しかし怪獣の体から黒い霧が漏れ出していくもののまだ倒れることは無く、二人へと丸太のような腕を振り上げる。
470
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/10(火) 23:58:14 ID:3oHADIkM
海未「閃刃・裂空!」
両腕を振り上げた怪獣はその体勢のままに、海未が放った斬撃に体を斬り裂かれ、黒い霧となって消えていく。
凛「海未ちゃんナイスタイミング!」
にこ「よっしあと一体!」
鈍重な動きで三人から遠ざかろうとしていたザリガニのような怪獣へと三人は目を向ける。
海未「黒華一閃!」
海未が先んじて漆黒の矢を放つと、それはトカゲの下半身へと突き刺さり、風穴を開ける。
「──!」
そしてその怪獣はその傷をつけられたことでのたうち始め、三人から離れようと動きを速める。
凛「待って!向こうに人が…!」
「うう…おかあ、さん…ひっく…」
怪獣の向かう先へふらふらと、泣きじゃくりながら少女がさ迷い出てきてしまう。
471
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/11(水) 00:08:22 ID:gNadS55.
海未(まずい…ここからでは間に合わない…!)
海未が一か八か弓で怪獣を仕留めようと構えるのとほぼ同時、にこが弾かれたように手に持った銃を構える。
にこ「届けえええぇぇぇ!!」
にこがあらかじめばら撒いていたピンク色の光球は少女のそばにまで漂っており、にこはそこ目がけて銃口からロープ状のエネルギーを放つ。
にこ「ルミナスブレード!!」
一気にロープは縮んでにこの体を運んでいき、それと同時ににこはもう一方の手に握った銃の銃口からピンク色に輝く刃を作り出す。
にこ「ふんぬうううぅぅぅ…!!」
にこは怪獣へとその刃を突き立て、運ばれる勢いのままに怪獣を両断していく。
にこ「…っぶはあ!」
怪獣の体を真っ二つに斬り裂ききると、にこの体は少女の前へと投げ出されてしまう、が、にこはすぐに立ち上がり、少女と目線を合わせて笑顔を見せる。
にこ「ほらっもう大丈夫!怪獣もいなくなったし、お母さんの所には私が連れて行ってあげる!」
「ほんと…?おかあさんと、あえる…?」
にこ「もちろん!だからほら、お母さんに会った時笑った顔見せてあげよう?にっこにっこにー!だよっ!」
「にっこにっこにー…!えへへ…」
にこ「うん!かわいい!忘れないでね?笑顔は魔法、だよ!」
472
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/11(水) 00:23:50 ID:.U7bPEmI
うひょー更新来てるぅ乙です!
473
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/11(水) 00:23:56 ID:gNadS55.
海未「にこ…」
凛「さすがアイドルだにゃ…!」
ついさっきまで泣きじゃくっていた少女を笑顔に変えてしまったにこに二人は感心しきってしまう。
にこ「ごめん、ってわけだから私はこの子と一緒に避難所まで行くわね…」
海未「分かりました、私たちが避難所に行けば大変なことになるでしょうから、ここからは別行動としましょう」
「ねえねえ、お姉ちゃんは怪人とも仲良しなの?」
にこ「う、うん…!お姉ちゃんの笑顔はね、怪人さんもいい人に変えられる魔法なの…!」
「わああ…すごい…!」
キラキラとした純粋そうな目でにこを見つめる少女に苦笑いをしながら海未は口を開く。
海未「それではにこはここから避難所へ、凛は…」
凛「凛も一人で大丈夫!…っていうより、なるべく手分けした方がいいかなーって思うんだけど…どうかにゃ?」
海未「ええ、そうですね…恐らく被害は広範囲ですし、その方が効率的です…が、絶対に無茶をしてはいけませんよ?」
凛「うん!分かってるにゃ!」
海未「それでは、何かあったら適宜連絡を取りましょう──二人とも、どうか無事で」
凛「うん!」
にこ「分かってるわよ!」
三人は互いに手を振り合い、別々の方向へと駆け出して行った。
474
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/11(水) 00:24:23 ID:gNadS55.
ここまで
475
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/11(水) 07:52:00 ID:AxJCeqaY
乙です
色々気になってた情報がちらほら…
476
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/13(金) 14:23:17 ID:0IzTafyk
いいね
477
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/15(日) 02:56:57 ID:PA7SHG/A
http://nazr.in/11y6
478
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/21(土) 22:48:18 ID:WYJRfBi2
海未「はああっ!」
次から次へと現れる怪獣を斬り伏せながら通りを駆け抜ける海未は、足元から感じる違和感に気付く。
海未「これは…水…?」
海未が走る先の地面が水に濡れており、その水位は段々と上がり走る度に水音が響くほどになる。
「……」
海未「…っ!あれは…!」
海未の視線の先に佇むのは、鮫肌のようにざらついた表皮、そして水棲哺乳類の特徴を持った姿。
海未「モビィディック…!」
真姫からは警戒する必要がないとは言われたものの、海未は油断無く刀を握りしめる。
「…ハイドロスパウト」
モビィディックは海未を視界に捉えると、腕の振りと共に幾筋もの水流を海未へと放つ。
479
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/21(土) 23:00:39 ID:WYJRfBi2
海未「…ここまで接近を許すとは、何を企んでいるのですか?」
刀は油断無く構えたまま、海未はモビィディックへと問いかける。
海未(攻撃を仕掛けてきてはいたものの、まるで当てる気がなかった…)
「…それが分かってて近付いてきたってことは、応じる気があるって事でいいんだよね?」
モビィディックは海未に言葉を返しながら、敵意がないことを示すように両手をひらひらと挙げて見せる。
海未「……」
それを見て海未も、警戒はしたままに刀をひとまず下ろす。
「ふう…ニュース見たり噂聞いたりして、もしかしたらって思ってたから、話が通じそうな相手でよかったよ」
海未「…あなたも街に被害は出していても、人的な被害は出していないと聞きました」
「まあそりゃあさすがに人に怪我はさせらんないよ──って、このかっこのままじゃあんまり信用できないか」
未だ警戒を解いていない海未に気付き、そう言ってモビィディックが頭を振ると、水しぶきと共に頭だけ変身が解ける。
そして紺色のポニーテールを踊らせながら海未の事を見つめ、笑顔を見せる。
果南「私は松浦果南、浦女の3年生!よろしく!」
480
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/21(土) 23:39:59 ID:WYJRfBi2
海未(まさか、モビィディックが私と同じくらいの歳とは…というより、この方は私に対する警戒は無いのでしょうか…)
モビィディックの正体に驚くと同時に、警戒心のない相手を試すように海未は口を開く。
海未「…簡単に正体を明かして、私があなたを騙していたらどうするつもりなのですか?」
果南「あれ、私騙されてるの?…ま、その時は戦って倒すだけだから別に良いけどね」
海未の言葉に一瞬だけ不思議そうな顔をするものの、果南はすぐに自信に満ちた好戦的な笑みを浮かべる。
海未「いえ、冗談です…では…」
海未は果南に短く言葉を返すと、見様見真似ではあるが自身も頭部の変身を解除する。
海未「ふう…園田海未、音ノ木の2年生です」
果南「へえ…年下だったんだ…」
海未の姿を見た果南は何度もうなずきながら目を丸くする。
481
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/22(日) 00:00:11 ID:u9jhLXaI
果南「さてと、自己紹介も終わったわけだし──」
果南が言いかけた時、海未にとってはもう見慣れてしまった黒い霧が周囲に立ち込める。
海未「くっ…またですか…」
果南「いったん話は中断かな?」
海未と果南は互いに背中合わせになり、重心を低く落として周囲へと意識を向ける。
果南「なんだ、このくらいの数だったら…!」
海未「問題ありませんね…!」
周囲に現れたのは10体程度の小型の怪獣。海未と果南は一気に踏み込み、海未は刀を一気に振り抜き怪獣をまとめて撫で斬り、果南は正面の怪獣に蹴りを叩き込み、そこから片足を軸にしつつ周囲の怪獣に回し蹴りを放ち、さらに近付いてきた怪獣へと拳を振り下ろす。
果南「ハイドロスパウト!」
流れるように果南は掲げた片腕を振り下ろし、水流を海未へと向けて放つ。
海未「はあっ!」
海未はそれを視界に入れると同時に果南へと踏み込み刀を突き出す。
果南「ん、オッケー!」
海未「ふう…ひとことぐらい声をかけてくれればいいのに…」
果南が放った水流と海未が突き出した刀は互いの背後に迫っていた怪獣を狙ったものであり、怪獣は黒い霧へと消えていく。
482
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/22(日) 00:14:32 ID:u9jhLXaI
果南「あはは、ごめんごめん、まあ大丈夫かな?って思ったからさ」
海未「まったく…」
あっけらかんと笑う果南に海未が苦笑を返すと同時に、周囲の建物の窓ガラスがびりびりと振動を始める。
果南「お?どうしたんだろ…?」
海未「…地面も揺れていませんか?」
周期性を持った振動も地面を通して伝わり始め、海未と果南は目つきを鋭くしてその発生源へと目を向ける。
果南「っ!海未下がって!」
果南が声を上げると共に海未の事を突き飛ばし、重心を低くしながら右腕を後ろへと振りかぶる。
建物の上部を砕きながら巨大な赤茶けた拳が現れ、果南へと振り下ろされる。
果南「ハンマーヘッド…インパクト!」
果南の右腕の肉が蠢いてハンマーのような形状へと変化し、果南は振り下ろされる拳へと渾身の力で振り抜く。
483
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/22(日) 00:28:06 ID:u9jhLXaI
果南「ぜえええい!!」
果南の腕と振り下ろされる拳が交わると同時に果南の足元のアスファルトがひび割れ、拳は果南から逸れた場所へと打ち下ろされる。
果南「…っはあ…はあ…」
海未「果南!大丈夫ですか!?」
果南「へーきへーき、パワーと頑丈さが取り柄だからね…!それにしても…」
振り抜いた腕をぶらぶらと振りながら果南は少しひきつった笑顔を海未へと向け、すぐに真剣な表情となって姿を現した相手を見据える。
果南「いや、でかすぎない?」
海未「ええ…これを相手にするのはなかなか無茶ですね…」
地面を軋ませてビルの間から姿を現したのは10mはあろうかというほどの体躯をした怪獣。その体は赤茶けた筋肉で覆われ、頭には短い二本の角が生えた、『赤鬼』とでも言うような怪獣だった。
484
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/22(日) 00:43:21 ID:u9jhLXaI
果南「来るよ!」
海未「ええ!」
怪獣は建物やアスファルトの砕けた破片──怪獣にとっては小さいが、海未達にとっては大岩と言っていいような大きさの瓦礫をぶちまける。
海未「黒散華!」
果南「ハイドロスパウト!」
海未と果南が放つ矢と水流は降りかかる瓦礫を次々と撃ち落としていく。
「──!!」
海未「っ…!黒華一閃!」
怪獣が低く吠えると同時に角が発光し、その間から勢いよく電撃が迸る。海未は即座にそれへと狙いを定め漆黒の矢を放ち相殺する。
海未「このままではじり貧ですね…!」
果南「…海未さあ、一発であの怪獣の頭落とせたりとかしない?」
海未「はあ!?無理に決まって──」
海未は突然何を言い出すのかと果南の事を見るも、果南の表情はいたって真剣なそれであり、海未は思考を巡らせる。
485
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/22(日) 00:54:06 ID:u9jhLXaI
海未「…高さとタイミングが揃えば、可能性はあります」
果南「高さね…じゃあ、あのビルあたりかな?」
果南が指さしたのは少し離れた場所に建つ怪獣の背丈よりも少し高い建物。
果南「よっし…それじゃあ海未はあそこの屋上にスタンバってて!」
海未「スタンバってと言っても…怪獣をあそこまで誘導しないと意味が──」
果南「もちろんそれは私の役目!まあまかせといてよ!」
海未は一瞬の逡巡の後、果南の軽やかな笑顔を見て心を決める。
海未「分かりました…とどめは任せてください!」
果南にそう言い残して海未は果南が指し示したビルに向かって駆け出していく。
果南「さーてと…」
果南は腕を伸ばして一度背伸びをすると、眼をギラつかせて怪獣を睨み付ける。
果南「こっからは私が頑張る番かな?」
486
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/22(日) 01:02:02 ID:u9jhLXaI
果南「ハイドロスパウト!」
果南は無数の水球を発生させ、一斉に怪獣へと向けて水流を放つ。
果南「んー、やっぱり威力足んないよねえ…」
怪獣はその大木のよな両腕でそれを防ぎ切り、果南へと拳を振り下ろす。
果南「よっと…ハンマーヘッドインパクト!」
真っすぐに振り下ろされる拳を身を翻してかわすと、右腕をハンマーの形へと変化させて地面へとめり込んだ腕へと叩きつける。
「──!」
怪獣は低く吠えると果南の攻撃によって抉れた腕を地面から引き抜き、頭の角から雷撃を繰り出す。
果南「うっわ…スワールブリーチ!」
果南は雷撃へと向かって広い円錐状に渦巻く水の塊を作り出し、雷撃を防ぎきる。
果南「げっ…!」
水の渦が消え、開けた果南の視界の先に現れたのは怪獣が投げつけた巨大な瓦礫。
果南「プリスティスブラント…!」
咄嗟に果南は右腕を鋸のような形状へと変化させ、迫る瓦礫へと飛び掛かりながら真っ二つに斬り裂く。
487
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/22(日) 01:20:41 ID:u9jhLXaI
果南「はああぁぁっ!!」
さらに果南はその勢いを止めることなく怪獣の巨体へと飛び蹴りを叩き込む。
「──!」
怪獣は身体をぐらりと揺らすが、下がったのは一歩だけ。果南は怪獣が動き出さないうちに即座にその場から飛びのく。
果南「さてと…」
「──!!」
離れるように動いた果南に向けて怪獣は拳で殴りかかるも、果南は顔色一つ変えずにその場から動こうとしない。
果南「よっと!」
果南が前方へと突き出した手を上に振り上げると、怪獣の拳の真下にあるマンホールから勢いよく水が吹き上げ、怪獣の腕を真上へと跳ね上げる。
果南「よーしタイミング完璧!まだ行くよ…!」
マンホールから吹き上がった水は空中へと留まり、まるで生きているかのようにその形を変える。
果南「ディープパイソン!!」
488
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/22(日) 01:31:12 ID:u9jhLXaI
大蛇が鎌首をもたげるようにうねる水塊は一瞬だけその動きを止めると、一気に怪獣めがけて放たれる。
果南「いっけえええ!!」
果南が声と共に腕を思い切り前へと突き出すと同時に水の大蛇は怪獣へと直撃する。
「──!!」
怪獣は真正面からの激流に地面を軋ませながら一瞬だけ持ちこたえたが、その勢いに逆らえずに後方へと押し流される。
「ガアアァァ!!」
果南「悪いけど、あともうちょい後ろなんだよね…!!」
大きく吹き飛ばされた怪獣は雄叫びを上げながら立ち上がるも、果南はその隙を逃さずに追撃を仕掛ける。
果南「ぜええぇぇい!!」
果南が作り出した激流は果南の体を飲み込み、その勢いのまま一直線に怪獣へと飛び蹴りを叩き込む。
489
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/22(日) 01:44:46 ID:u9jhLXaI
「──!!」
怪獣は今度は倒れこむことは無く、地面に降り立った果南を襲うため前掲した姿勢で拳を振り上げる。
果南「あっはは、タフだなあ…けど、もう私の出番は終わりだからさ──」
怪獣の真横に伸びるビルの屋上、そこから漆黒の影が躍り出る。
果南「あとよろしく、海未」
海未「黒烈断・堕椿!!」
空中へ舞った海未が振り上げた刀は一気にその大きさを変え、どす黒いオーラを纏う。
海未「はああぁぁっ!!」
海未は漆黒の軌跡を残しながらその巨大な刀を振り下ろし、怪獣の首を斬り落とした。
490
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/22(日) 02:02:59 ID:u9jhLXaI
果南「よっと…お疲れさん!さすが強いねえ」
果南は上空から落ちてくる海未を粘性のある水の塊で受け止め、からりとした笑顔を向ける。
海未「ありがとうございます…ですが、果南がスムーズにあの場所まで誘導させてくれたおかげです」
元の形に戻った刀を鞘へと納め、海未は果南へと返事を返す。
海未「さて…新たに敵が現れる気配もありません…一般人に見られる前にここから離れた方がいいでしょうね」
果南「私達が一緒にいたら完全に黒幕だもんねえ…それだったら私、浦女がある方に向かってもいいかな?別行動にはなっちゃうけど…」
海未「ええ、もちろんです…が、浦女の周辺というならジュエルに遭遇しないよう気を付けてくださいね?」
果南「あっはは、分かってる分かってる!まあ、私が行かなくてもダイヤがいれば心配ないとは思うんだけどね…」
491
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/22(日) 02:19:46 ID:u9jhLXaI
困ったような、どこか寂しそうな表情で言う果南に海未は口を開く。
海未「黒澤ダイヤ…知り合いなのですか?」
果南「まあ幼馴染ってやつかな?出身同じなわけだしね──っと、あんまりのんびりもしてられないか」
気を取り直したように果南は首を振り、戦いの最中で半開きになったマンホールの蓋を蹴とばして退かせる。
海未「果南?マンホールを空けてどうするつもりですか…?」
果南「ん?もちろんこの中を泳いで行くんだよ?」
海未「……あまり言いたくはありませんが、衛生的によくないと思います…」
果南「へーきへーき、私水は自由に動かせるから汚くない水で泳げるし、あとでシャワー浴びれば大丈夫!」
海未「まあ、果南が気にしないのであればいいのですが…」
あまりにもあっけらかんと言う果南に海未は若干引きながら言葉を返す。
果南「それじゃあまた今度!なんかあったら連絡してきていいから、絶対無事でいるんだよ?」
海未「ええ、果南の方もご武運を!」
ひらりとマンホールに飛び込む果南を見送って海未も走り出してその場を離れていった。
492
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/22(日) 04:33:02 ID:l3ELSDc6
ここまで
493
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/22(日) 10:21:12 ID:.NXG6cv6
乙!果南と交流出来たか…
494
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/23(月) 01:08:25 ID:5tq55MOo
このコンビは熱い
495
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/23(月) 12:51:53 ID:WLK3OxKg
>>478
と
>>479
の間が抜けてたので
海未「くっ…閃刃・断空!」
海未は自分に当たる軌道の水流へと刀を振り抜き、足を止めずにモビィディックへと接近する。
「……」
モビィディックは足を止めたまま海未を見ながら、腕を前に伸ばし、手を上に振り上げる。
海未「地面から…!」
海未が走る周囲のマンホールから蓋を跳ね上げながら水しぶきが上がっていく。
海未(しかし、これはもしかして…)
足元、そして正面から襲う水流を、海未はさして大きな動きもせずにかわしていき、ついにモビィディックの眼前にまで迫る。
496
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/28(土) 00:16:11 ID:fje2bcyM
明日のどこかで更新します
497
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/28(土) 12:42:24 ID:WZH9hH5E
やったぜ
498
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/28(土) 13:43:14 ID:/HZABERg
明日もどこかで園田海未〜
499
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/28(土) 16:22:26 ID:0Av.NjrQ
更新待ってます〜〜!
500
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/28(土) 20:44:51 ID:/3hw.65k
善子「あああぁぁ!もう!」
既に変身していた善子は周囲に次から次へと湧き出てくる怪獣相手に大鎌を振り回しながらうんざりしたような声を上げる。
善子「ただ買い物しに来ただけなのにい!」
秋葉原へと買い物に来ていた善子は唐突に現れた怪獣に追い掛け回され、咄嗟に変身をして戦っていた。
善子「ピアシングシェイド!」
善子が大鎌の刃を地面へと突き立てると、怪獣の足元から漆黒の棘が突き上がりその体を貫く。
善子「ふう…さすがにもう出てこないわよね…」
周囲を注意深く見渡してこれ以上怪獣が出てこないことが分かると善子は大鎌の構えを解き、石突を地面に付ける。
「さすがの手際ですね?」
善子「…っ!」
突如として背後から聞こえた声に善子は咄嗟に体を反転させて大鎌の柄を水平に自身の前に構える。
501
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/28(土) 21:05:08 ID:/3hw.65k
「ふふ、反応も良いですね?」
善子「くうっ…!」
善子が自身の前に構えた大鎌の柄は、繰り出された短剣を受け止めていた。
「はっ!」
善子「ごほっ…!」
善子は腹を蹴飛ばされ、咳き込みながら後ろへと吹き飛ばされる。
「悪いとは思いますが…ここで倒させてもらいます」
善子は吐き気をこらえながら改めて襲い掛かってきた相手の姿を観察し、自身の記憶にある怪人の特徴を見つけて絶句する。
善子「嘘…ジェミシス…?」
紫色を基調とした体のラインがはっきりとしたスーツを身に纏い、両手にはシンプルな形状の短剣を持ち、頭には紺色のサイドテールが揺れる。
「ご存知でしたか?ふう…もう少し隠密を徹底しなくてはいけませんね…」
ため息をつきながら首を振ると、余裕のある笑みを浮かべたかと思うと一気に善子との距離を詰める。
502
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/28(土) 21:21:11 ID:/3hw.65k
善子(やばいやばいやばい!こんなのと戦って勝てるわけない!けど…!)
善子は何とかジェミシスの動きに反応して鎌の柄で短剣を受け止めると、視線を周囲へと向ける。
善子(絶対まだ逃げ遅れた人、いるわよね…!)
視界に入るだけでも逃げ遅れ、建物の影からこちらを伺っている人影を善子は確認する。
「戦闘の中でよそ見とは…感心しませんね!」
ジェミシスは鎌の柄を跳ね上げると、体を屈めながら駆け抜けざまに善子の腹部を撫で斬る。
善子「痛っ…このっ…!」
スーツが破られることは無かったが痛みの走る体を庇いながら善子がその場で反転すると、視界に入ったのは大きく足を振り上げるジェミシスの姿。
「はっ!」
善子「くうぅ…!」
鋭く放たれた回し蹴りを咄嗟に鎌の柄を立てて防ぐも、勢いを殺しきれずにバランスを崩し地面に倒れこんでしまう。
「そこですっ…!」
善子「ピ、ピアシングシェイド…!」
善子は倒れこみながらも鎌を地面へと突き立て、短剣を振り上げて迫るジェミシスの足元から黒い棘を突き出させる。
503
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/28(土) 21:41:42 ID:0Av.NjrQ
更新来てたーー!!乙です!!
504
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/28(土) 21:49:55 ID:/3hw.65k
「っ…!」
ジェミシスは咄嗟に短剣を体へと引き寄せ、真下から襲う棘に添わせるようにして受け流す。
「なるほど…動けないわけではないようですね?ですが、これで私とやりあえるとは──」
善子「くっくっく…矮小な人間があまり大きい口を開かない方がいい…」
「……!?」
ゆらりと立ち上がり、ゆっくりとした動きで振り返ると大鎌を構えながら善子は余裕の笑みを浮かべ、大仰に口を開く。
善子「今宵、この鎌が選んだのはあなたの生き血…覚悟するといい…」
「…あの、昼、ですが…」
善子「……」
505
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/28(土) 22:05:46 ID:/3hw.65k
善子「さらばっ!」
沈黙を破って善子はジェミシスへと背を向けて駆け出す。
「逃げる気──」
善子「ブラッディサイズ!」
「っ…!」
少し走り出した所で善子はジェミシスへと振り返り、その勢いで鎌を振り抜いて斬撃を放つ。
善子「この程度かしら?」
斬撃を正面から食らい、膝を付くジェミシスへと挑発するようにそう言って善子は再び走り始める。
善子(とにかく、人がいない場所に…!)
「…ヒーロー気取り、英雄気取りですか…本当に──」
ジェミシスの顔から表情が消え、翳りを帯びた目で善子の背を追いながら吐き捨てる。
「本当に、忌々しい」
506
:
◆JaenRCKSyA
:2018/07/28(土) 22:22:14 ID:/3hw.65k
善子「はっ…はっ…思ってたよりも、速いわねあいつ…!」
善子は瞬く間に距離を詰めてくるジェミシスの気配を感じながら必死に足を動かす。
「癪ではありますが、鬼ごっこに乗ってあげましょう…!」
善子「っ…!クリミナルアビス!」
声が聞こえるほどにジェミシスが近付き、善子は顔を引きつらせながら鎌の石突を地面へと何度か打ち下ろす。
「っ…!」
善子とジェミシスとの間の地面に何か所にも黒くインクを垂らしたような染みが広がり、それは底なし沼のように瓦礫を沈み込ませていく。
「子供だましですね…」
ジェミシスは大きく跳躍してその黒く染まった地面を飛び越えると、技を繰り出すためにスピードを落とした善子の真横にまで迫る。
善子「やば──」
「はあっ!」
視線だけしか反応しきれなかった善子の脇腹に深々とジェミシスの回し蹴りがめり込む。
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