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Tohazugatali Economic Review

1■とはずがたり:2003/02/24(月) 18:56
経済(学)スレです。個別ネタは各スレッドでしますが一般スレが無いので立てます。
景気やマクロ動向なども。

1515とはずがたり:2014/08/19(火) 21:02:18

常葉大学というとちょっとなんかこーあれしちゃうところがある(←意味不明失敬w)けど書いてあることは非常に真っ当である。

恐らく里山資本主義が日本全体を貫く基本原理になりうると主張しているなら藻谷浩介とNHK広島取材班両名の誤りであり,里山資本主義が「マッチョな資本主義」の不毛さ(永遠に走り続けなければならないしんどさ)を指摘している(で,その不毛さがやな人にはそれから離脱する選択肢があると云う)のなら山本氏の指摘は的外れである。

多分里山資本主義では持続可能な社会を作れないのでは無く持続可能な成長経済を作れない,だけである。

「里山資本主義」では持続可能な社会を作れない
2014年08月08日(Fri)
山本隆三 (常葉大学経営学部教授)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4095?page=1

2014年の「新書大賞」に藻谷浩介とNHK広島取材班の『里山資本主義』が選ばれた。「日本経済は安心の原理で動く」と副題にあるが、里山の木質バイオマスを利用すると、安心な社会と経済が実現するのだろうか。藻谷は「マッチョな経済」との言葉で経済成長を否定し、里山資本主義を推しているようだが、その結果、実は安心が失われることに多くの読者は気づいていない。だから、新書大賞に選ばれたのだろう。

 菅直人元首相と民主党のマニフェストを覚えておられるだろうか。「最小不幸社会の実現」だった。里山資本主義が目指しているのは、最小幸福社会とまでは言わないが、少なくとも「最大幸福社会」ではない。藻谷の『デフレの正体』と同様に、著者の主張には経済の観点からみると危うい点がいくつもある。「やくざな経済」から「かたぎの経済」へと言い、リフレ論などを「数字の裏付けや論理的分析を欠いたまま出てきている」と批判しているが、その批判は本書にも正しく当てはまるだろう。

自然という言葉は美しいが、経済活動には悪影響が

 再生可能エネルギーを自然エネルギーと呼び、美しいイメージを作る朝日新聞の記者のような人もいるが、風、太陽、海、地熱、バイオマス(木などの生物資源)を利用し、二酸化炭素を出さずに、熱、電気を供給する再エネは望ましいに違いない。再エネの利用拡大に反対する人は、景観を気にする一部の人達だった。

 しかし、いま欧州では、固定価格買い取り制度(FIT)の導入で先頭を走っていたドイツ政府がFITの大幅縮小を正式決定し、さらに欧州委員会(EC)も各国政府に対しFITから電力の卸価格に一定額の上乗せを行う制度(FIP)への変更を指示している。米国ではオハイオ州が、再エネ導入数量を定めた制度(RPS)の2年間凍結による見直しを決めた。再エネ導入に逆風が吹いているのは、電気料金が大幅に上昇し、家庭と企業に悪影響が出始めたからだ。

 問題は電気料金の上昇だけでは、収まらなくなってきた。足りない送電線の能力、電力需要に合わせて発電できない不安定な再エネの電気が隣国に勝手に流れることによる送電系統への悪影響に加え、さらに大きな問題が出始めた。再エネからの電気により天然ガス火力の稼働率が低下し、電力会社が、採算の悪化した火力発電所を維持できなくなってきたことだ。欧州では、既に5000万kW以上の火力発電所が閉鎖されたが、将来の稼働率が不透明ななかで発電所の新設能力は限定されている。

 いつも発電ができない再エネでは火力の代わりにはならない。停電発生を恐れたECは、FIT制度の大幅縮小と同時に、火力発電設備を新設すれば稼働率に関係なく設備に投資を行った事業者に一定額の支払いが行われる容量市場の導入を各国に指示している。温暖化対策、エネルギー自給率向上の観点から再エネを積極的に推進してきた欧州諸国も、経済的な側面から方向転換を強いられている。

 間伐材(植林した木を成長させるために間引いた木)あるいは製材所で発生する端材を利用し、エネルギーを得る方法であれば、太陽光、風力のような不安定な供給の問題はない。里山資本主義、木質バイオマスは、安定的にエネルギー供給が可能な再エネの優等生のように思えるが、実態はそうではない。

1516とはずがたり:2014/08/19(火) 21:02:33

バイオマスは経済を活性化するのか

 企業に勤務していた時に海外でのエネルギー開発と輸入に係った後、周りからは「二酸化炭素を排出していた罪滅ぼしか」と揶揄されながら地球温暖化防止事業に係った。事業として目を付けた一つが木質バイオマスだった。10年以上前のことであり、当時日本では中国地方と岩手県を除き利用が殆どなかったことから、オーストリアに学びに行った。

 おが屑を固めカプセル状にしたペレットを利用するストーブがかなり普及していること、スーパーでペレットが売られていること、木片を燃料とするボイラーにより熱供給を行う地域があること、鶏糞とおが屑を混ぜ発電を行う養鶏場など、日本では考えられないほど木質バイオマスの利用が進んでいた。

 ストーブ、ボイラーの価格も、日本との比較では、市場規模が大きいために大量生産により安かった。日本でも導入できるのではと考え、地方自治体、大学、製材所にも働きかけ多くの検討を行った。製材所で木材を乾燥させるのに重油を利用しているのは、どう考えてもおかしいとも思った。結果、徳島県の町営設備と高知県の製材所にオーストリア製のボイラーを納入できたが、それ以上の広がりはなかった。

 なぜだろうか。山林に恵まれながらオーストリアと日本では異なる点が多くある。欧州では林業のかなりの部分が機械化されている。地形が日本ほど急峻ではないためだ。そのために、ウッドチップ、木質ペレットの価格は日本より安い。日本では一部の恵まれた条件の地域であれば、比較的安価に木質バイオマスを入手可能だが、そんな場所は多くはない。

 ただ、重油の価格が高止まりしているので、木質バイオマスが価格競争力を持つ地域も増えている筈だ。しかし、ここで問題がある。設備を作れば、その後20年、30年と安定的に燃料を得るシステムが必要だ。外材に押され製材所の減少が続く日本では、これも限定された地域だけで可能だ。『里山資本主義』で取り上げている中国地方で行われていることが、どこでも可能ではないのだ。

オーストリアと日本の最大の違いは、エネルギー消費量だ。日本とオーストリアのエネルギー供給量とその内訳を表に示した。オーストリアの消費量は日本の7%。そのうち、バイオマスの比率は20%。条件に恵まれているオーストリアでもこの程度だ。「21世紀先進国はオーストリア、ユーロ危機と無縁だった国の秘密」と『里山資本主義』が持ちあげるオーストリアの林業の付加価値額は11億7000万ユーロ、オーストリアのGDP、3107億ユーロに占める比率は0.4%、雇用者数は、林業で7300名、関連産業で14900名だ。オーストリアの雇用者数373万の1%にも満たない。木質バイオマスで地域の産業を活性化し、雇用を作り出すというのは夢物語に近い。

表 オーストリアと日本の一次エネルギー供給量
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生産人口が減少しても経済成長は実現できる 

 『里山資本主義』のなかに、NHK番組制作者の『デフレの正体』を読み「目からうろこ」で、その特集番組を作ったとの文が出てくる。生産人口の減少が不況とデフレの原因との主張を信じたのだろうが、番組を作る前に、何人かの経済学者に話を聞けば、考えが変わったかもしれない。

 生産人口の減少が経済に影響を与えることはあるが、それによりデフレになるか不況になるかは全く別の問題だ。生産人口が減少しても経済成長を実現していた国はいくつもある。例えば、90年代イタリアは生産人口が減少していたが、経済は93年を除き毎年成長していた。エストニアも90年代を通して生産人口が減少したが、90年代前半から経済は大きく成長した。働く人が減っても生産性が伸びれば、経済は成長する。

 当たり前だが、生産人口の減少とデフレには関係がない。日本で需要が落ち込みデフレになったのは、多くの働く人が一人当たり付加価値額の相対的に高い製造業から、相対的に付加価値額が低い医療・福祉の分野に移動したからだ。要は平均給与の減少に輪をかけて、給与の高い人が減り、給与の低い人が増えたので消費も不振になった。図-1は日本の産業別労働人口の変化を、図‐2は業種別の給与を示している。製造業、建設業から医療・福祉に約300万人の移動があるが、この300万人の人達の給与は大きく下落している。消費も落ち込むわけだ。デフレの正体は産業構造の変化に伴う、付加価値額、即ちGDPの減少、給与の減少、消費の落ち込みだ。

1517とはずがたり:2014/08/19(火) 21:03:05
>>1515-1517

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日本での生産人口の移動

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業種別平均給与

 データをよく読むことが必要だが、『里山資本主義』でも同じような早とちりがありそうだ。

里山資本主義が目指すのは
多くの人が幸福な社会ではない

 『里山資本主義』には、自給自足で生活する人の話が出てくる。何により幸福感が得られるかは人により異なるから、自給自足の畑仕事と木片ストーブの生活を好む人がいてもいい。しかし、多くの人が自給自足経済を選択すると日本経済は壊滅する。最貧国の多くは自給自足経済から抜け出そうとしている。自給自足では国民生活が困窮するからだ。

 日本が直面するいくつかの問題は貧困とも絡んでいる。例えば、児童虐待は貧困家庭で発生することが多いと報道されている。自殺と犯罪の背景にも貧困があるだろう。2000万人の貧困層と200万人の生活保護受給者を抱える社会で、自給自足可能な人をどの程度抱えられるのだろうか。

 日本は燃料の輸入に27兆円、食料の輸入に6兆5000億円など81兆円を超える輸入を行っている。それを賄っているのは輸送機器、鉄鋼、化学製品などの輸出70兆円だ。工業製品の製造がなければ、食料輸入の代金も出せなくなる。いまは、海外投資の配当で経常収支は何とか黒字だが、製造業が衰退すれば、これもなくなる。日本では、自給自足で生きていける人の数は限られている。

持続可能で安心な社会を作る努力を

 私たちは持続可能な社会を目標にしている。持続可能の意味は、将来世代が現世代と同等、あるいはそれ以上の生活レベルを享受できることと理解されている。里山で生活可能な一部の人が幸福感を得られても、持続可能な社会を日本で作り出すことはできない。

 自然、里山、大切だし誰もが好む言葉だろう。「マッチョな20世紀」から「しなやかな21世紀」を好む人も多いだろう。しかし、言葉だけで、安心な社会が作られるわけではない。安心な社会は、全ての人に仕事が保証され、生活上の不安がないことが前提だ。里山が作り出す安心は、一部の人だけのものだ。残りの多くの人の安心はどうなるのだろうか。「里山資本主義こそ、お金が機能しなくなくなっても水と食料と燃料を手にし続けるための究極のバックアップシステム」と藻谷はいうが、それは、日本経済が直面する問題を解決し、本当の社会の安心を保証するシステムではない。

 経済活動には、環境問題、雇用、競争、様々な問題が伴う。その問題にすべての先進国は真正面から取り組んでいる。日本だけ、競争は嫌だから里山で生きますと言えば、多くの国民は不幸になるだろう。我々が将来世代を考え持続可能な社会を作り上げるためには、多くの課題に取り組み解決する必要があることをよく自覚すべきだ。理想、目標を掲げることは必要かもしれない。しかし、本当に安心な社会を作ることから逃げることはできない。

山本隆三(やまもと・りゅうぞう)
常葉大学経営学部教授

京都大学卒業後、住友商事入社。地球環境部長などを経て2008年から10年までプール学院大学国際文化学部教授。近著に「いま「復興」「原発」とどう向き合えばよいのか」(共著PHP研究所)がある。


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