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本のブログ(2013年から新規)

621korou:2021/04/16(金) 17:31:18
井川聡「頭山満伝」(潮書房光人社)を読了。

読売新聞編集局次長などを務めた著者が
地元福岡で親しんできた玄洋社ゆかりの人たちの話などをまとめて
600ページを超える大著として
意外にも世に出ることの少ない近代日本の巨人である頭山満の伝記をものにした本。
著者自らあとがきで記しているように
歴史の専門家でもなければ、ノンフィクションとして定評のある書き手でもないのだが
とにかく対象となる人物への親愛の情、敬愛の念はピカ一な本になっている。
正伝というには程遠く、伝聞の事実を常識の範囲で吟味したとでもいうべき事柄を
時系列も自由に羅列している一方で
史実の検証、細部の検証などは後回しになっている印象は否めない。
その意味で、あくまでも正伝がない現状のなかで
そのうちに伝聞の事実すらもつかめなくなる最悪の事態を避けるために
とりあえず叩き台として伝聞事実を網羅し、うまくいけば入門用の書としても重宝されればよいという意図のもと
一定の決意のもとに出版されたということなのだろう。
読後の印象では、その意図は十分に達成されているように感じた。
あくまでも当座の整理の本であり、この本に示された思想、考えをどう受け止めようと
それは読者の自由だろう。
例えば、頭山の思想を阻んだのは、軍部の暴走、つまり軍という組織の崩壊が大きい要素なのだが
そのことについての記述がほとんどなく
もっぱら支配者層のミスリードという形で批判が集中しているのだが
個人的にはこういう叙述は中途半端で首肯し難いものがある。
しかし、それはそれでいいのである。
この本のおかげで、頭山の思想は十分に伝わってくるし
その人脈、交友関係もほぼ完ぺきに理解できたように思う。
その意味で、この本は、その後の知識の補充、さらなる考察を要求する本でもある。
名著ではないが、日本の近代史を考える上で重要なピースとなる人物の生き様を
自然体で描いた好著ということができるだろう。


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